(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
雌ねじ型の挿通孔を備えたステータ内に雄ねじ型のロータを回転可能に挿通し、駆動源を介して前記ロータを偏心回転させることにより移送物を移送するように構成された一軸偏心ねじポンプのステータであって、
エラストマーにより成型され、内周面に前記雌ねじ型の挿通孔がステータの軸線方向に延びるように形成されるステータ本体と、
前記ステータ本体の外側に取り付けられる外筒とを有し、
前記ステータ本体が、少なくとも一方の端部にフランジ状のガスケット部を備え、
前記ステータが、前記ガスケット部と前記外筒とが固着される固着領域を備え、
前記外筒及び前記ガスケット部の双方又は一方に、前記ステータの前記軸線方向に突出あるいは退入した起伏部を有し、
前記起伏部において、前記外筒及び前記ガスケット部のうちの一方の少なくとも一部が、他方に対して嵌め込まれた形状とされ、
前記ステータの両端部のうち少なくとも一方の端部に、前記起伏部及び前記固着領域が設けられたものであり、
前記ステータの軸線方向からの押圧による前記ガスケット部の少なくとも一部における変形を抑制するものであることを特徴とするステータ。
前記外筒の端部に設けられた前記起伏部が、前記外筒端部に前記ステータの前記軸線方向への段差を有するものであることを特徴とする請求項1〜6のいずれかに記載のステータ。
前記外筒の端部に設けられた前記起伏部が、前記ステータの前記軸線方向に向けて凹状に形成された凹部、及び凸状に形成された凸部のいずれか一方又は双方を備えたものであることを特徴とする請求項1〜7のいずれかに記載のステータ。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1に開示されているステータ520は、一軸偏心ねじポンプへ組み付けられる際にエンドスタッド513(ノズル)等から受ける押圧力の影響等により、ガスケット部546,547が径方向に拡大するように弾性変形する。これにより、ガスケット部546,547と外筒端部532,533との相対位置のズレが発生し、接着領域Aの端付近において大きな応力が作用する懸念がある。
【0006】
より具体的に説明すると、
図17等に示すように、ステータ520を一軸偏心ねじポンプへ組み付ける際に、ガスケット部546,547は、外筒端部532,533と隣接する部材(エンドスタッド等)との間に挟まれて、ステータ520の軸線方向両側から押圧される。この際、ガスケット部546,547は、ステータ520の軸線方向両側からの挟持力により、径方向外側へ拡張するように弾性変形する。また、ステータ520をポンプから取り外すと、ガスケット部546,547は、ステータ520の軸線方向両側からの挟持力から開放され、径方向内側へ縮小するように弾性変形する。
【0007】
このように、ステータ520の一軸偏心ねじポンプへの組み付け及び取り外しが繰り返されると、ガスケット部546,547と外筒530との接着領域Aにおいて、ガスケット部546,547の弾性変形に伴う応力の作用(変化)が繰り返されることになる。これにより、ガスケット部546,547と外筒530との接着領域Aの負荷が蓄積され、やがて接着領域Aに剥離や亀裂等による破損が生じる懸念がある。
【0008】
上述したようにして接着領域Aの一部が剥離すると、ガスケット部546,547(ステータ本体542)と外筒530との間に隙間ができる懸念がある。このような隙間に移送液が浸入すると、接着領域Aの剥離や亀裂等による破損が広がり、ステータ520の寿命を縮めてしまいかねない。
【0009】
また、昨今では微少量の移送液を移送するための小型のステータの需要が高まっている。このような小型のステータの場合には、ガスケット部と外筒も自ずと小型化することとなり、必然的にガスケット部と外筒との接着面積が減少して接着力が弱まる。そのため、小型のステータの場合には、上述のような接着領域Aの剥離や亀裂等が発生する可能性がさらに高まるという懸念がある。
【0010】
そこで本発明は、一軸偏心ねじポンプへの組み付け及び取り外しの繰り返しによるステータの破損を抑制して、比較的長期間の使用を可能とする寿命の長いステータ及びこれを備える一軸偏心ねじポンプを提供することを目的とした。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上述した課題を解決するため提供される本発明のステータは、雌ねじ型の挿通孔を備えたステータ内に雄ねじ型のロータを回転可能に挿通し、駆動源を介して前記ロータを偏心回転させることにより移送物を移送するように構成された一軸偏心ねじポンプのステータであって、エラストマーにより成型され、内周面に前記雌ねじ型の挿通孔がステータの軸線方向に延びるように形成されるステータ本体と、前記ステータ本体の外側に取り付けられる外筒とを有し、前記ステータ本体が、少なくとも一方の端部にフランジ状のガスケット部を備え、前記ステータが、前記ガスケット部と前記外筒とが固着される固着領域を備え、前記外筒及び前記ガスケット部の双方又は一方に、前記ステータの前記軸線方向に突出あるいは退入した起伏部を有し、前記起伏部において、前記外筒及び前記ガスケット部のうちの一方の少なくとも一部が、他方に対して嵌め込まれた形状とされ、前記ステータの両端部のうち少なくとも一方の端部に、前記起伏部及び前記固着領域が設けられ
たものであり、前記ステータの軸線方向からの押圧による前記ガスケット部の少なくとも一部における変形を抑制するものであることを特徴とするものである。
【0012】
本発明のステータにおいては、軸線方向に突出あるいは退入した起伏部が設けられている。これにより、本発明のステータは、起伏部においてガスケット部及び外筒が軸線方向に嵌め込まれた構造とされている。そのため、本発明のステータにおいては、起伏部において形成された嵌め込み構造が、ステータ本体の膨張収縮等に伴って想定されるガスケット部の径方向への弾性変形を制限するために有効に作用する。従って、本発明によれば、ガスケット部と外筒との相対位置のズレを抑制することができる。また、これにより、本発明のステータは、ガスケット部と外筒とが固着された領域(固着領域)が、ガスケット部の弾性変形に伴って破損するのを抑制できる。その結果、ステータの寿命が縮まることを抑制することができる。
【0013】
また、本発明によれば、起伏部の全部又は一部を固着領域とすることができる。これにより、本発明のステータは、固着領域が従来のステータの接着領域Aのように平坦な面とされている場合と比較して、ガスケット部と外筒とが隣接(接触)する部分の面積を拡大させて固着領域を拡大することができる。
【0014】
本発明のステータは、前記外筒の端部に設けられた前記起伏部の側面をなす壁面を有し、前記壁面が、前記ガスケット部の少なくとも一部において前記ステータの前記軸線方向に対して交差する方向への変形を制限するものであることが望ましい。
【0015】
本発明のステータは、外筒の端部に設けられた起伏部の側面をなす壁面を有する。また、本発明のステータにおいては、ガスケット部の少なくとも一部がステータの軸線方向に対して交差する方向(例えばステータが筒形である場合には径方向。以下、特に断りのない限り「ステータの軸線方向に対して交差する方向」を「径方向」と略称することもある。)に変形するのを制限するために壁面を有効に機能させ得る。そのため、本発明のステータは、ガスケット部と外筒とが固着された領域(固着領域)が、ガスケット部の弾性変形に伴って破損等するのを抑制できる。
【0016】
本発明のステータは、前記外筒の端部に設けられた前記起伏部の側面をなす壁面を有し、前記壁面の全部又は一部が、前記ガスケット部の周面の輪郭の全部又は一部に沿うように形成されることが望ましい。
【0017】
本発明のステータは、外筒の端部に設けられた起伏部の側面をなす壁面を有する。また、本発明のステータにおいては、壁面の全部又は一部が、ガスケット部の輪郭の全部又は一部に沿うように形成されており、ステータの軸線方向に対して交差する方向へのガスケット部の弾性変形を制限できる。従って、本発明によれば、ガスケット部及び外筒が固着された領域(固着領域)が、ガスケット部の弾性変形に伴って破損等するのを抑制できる。
【0018】
本発明のステータは、前記外筒の端部に設けられた前記起伏部の側面をなす壁面を有し、前記壁面の全部又は一部が、前記ガスケット部の周面の少なくとも一部に対して、向き合うように配置されることが望ましい。
【0019】
上述の構成によれば、壁面が、ガスケット部の外側であって周面に対向するように配置される。そのため、本発明のステータは、ガスケット部の径方向外側への弾性変形を効率的に制限することができる。すなわち、ガスケット部は、軸線方向から押圧された場合に径方向外側の領域は、変形が大きくなり大きな応力が生じる。本発明のステータは、上述の構成により、大きな応力の発生が想定されるガスケット部の周面に隣接する部分において、ガスケット部の径方向外側への弾性変形を制限することができる。
【0020】
ここで、従来のステータでは、外筒の端部に設けられた略平坦な端面に対し、略平坦な形状に形成されたガスケット部を接合した領域(接合領域)を設けた構成とされていた(
図17参照)。しかしながら、このような構造とされている場合には、ガスケット部と外筒との間から爪や細い器具等が入り込むなどして、前述した接合領域の破損(例えば、接着剤の剥がれ等)が生じる原因となりかねない。そのため、ガスケット部と外筒とが隣接する部分は、細い器具等の他部材の侵入を抑制可能なように対策が講じられることが望ましい。
【0021】
上述の課題等を鑑みれば、本発明のステータは、前記外筒の端部に設けられた前記起伏部の側面をなす壁面を有し、前記壁面の全部又は一部が、前記ガスケット部の周面を取り囲むように配置されるものであることが望ましい。
【0022】
かかる構成によれば、ガスケット部の周囲に壁面が配された部分において、爪や細い器具等がガスケット部と外筒との間から侵入することを抑制できる。これにより、ガスケット部と外筒との接合部分で剥離や亀裂等の予期せぬ不具合が発生する可能性を低減できる。
【0023】
また、上述した構成とした場合、ガスケット部の周囲に壁面が配された部分において、ガスケット部が径方向に弾性変形するのを制限できる。さらに、上述した構成とした場合、ガスケット部の周囲と壁面とを固着することが可能となり、ガスケット部と外筒とが固着される領域(固着領域)をより一層大きくとることができる。これにより、ガスケット部と外筒とをより一層強固に固着させることが可能となる。
【0024】
さらに、本発明のステータを上述したような構成とすることは、金型を用いてステータ本体を成型するものである場合に好適である。具体的には、金型を用いたステータ本体の成型を行う場合には、金型を離型する工程が行われる。その際、ガスケット部が金型に張り付いた状態で金型を離型させようとすると、ガスケット部が金型に牽引され、固着領域において剥がれ等が発生する原因となりかねない。しかしながら、本発明のステータは、上述したようにガスケット部の周囲に壁面が配された部分を設けた構成とされている。そのため、上述した構成によれば、ガスケット部の周面のうち周囲に壁面が存在する部位の面積の分だけ、ガスケットをなす部分と金型との接触面積を減少させることができる。従って、本発明によれば、金型を用いてステータ本体を成型する場合であっても、固着領域において剥がれ等が発生することなく製造可能なステータを提供できる。
【0025】
本発明のステータは、前記外筒の端部に設けられた前記起伏部の側面をなす壁面と、前記壁面の内側に構成された収容領域とを有し、前記壁面の全部又は一部が、前記ガスケット部の周面を取り囲むように配置され、前記ガスケット部が前記収容領域に収容される部分と、前記収容領域から前記ステータの前記軸線方向に突出した部分とを有するよう構成されることが望ましい。
【0026】
かかる構成によれば、ガスケットのうち収容領域からステータの軸線方向に突出した部分(以下、「突出部」とも称す)を、接合対象物である他部材との間に介在させ、接合対象物に対する十分なシール性能を確保することができる。具体的には、一軸偏心ねじポンプに本発明のステータを組み付ける場合には、ガスケットの突出部を接合対象となる他部材(例えば、エンドスタッドと称される部材等)との間に介在させ、シール性能を確保するために有効に作用させることができる。
【0027】
また、本発明のステータにおいても、上述したのと同様にガスケット部の周囲に壁面が配された部分が存在している。これにより、爪や細い器具等がガスケット部と外筒との間に侵入することを抑制し、ガスケット部と外筒との接合部分の剥離等に伴う予期せぬ不具合の発生を低減できる。
【0028】
また、上述した壁面を設けることにより、壁面が配された部分において、径方向へのガスケット部の弾性変形を制限できる。さらに、壁面をガスケット部と外筒とを固着させることとすれば、ガスケット部と外筒との固着領域の拡大のために壁面を活用できる。従って、本発明によれば、ガスケット部と外筒とをより一層強固に固着させることが可能となる。
【0029】
さらに、本発明は、金型を用いてステータ本体を成型する場合に高品質なステータを製造する場合にも有効である。具体的には、本発明のステータは、ガスケット部の周囲に壁面が配された部分があり、その分だけガスケットをなす部分と金型との接触面積を減少させることができる。従って、本発明によれば、金型を用いてステータ本体を成型する場合であっても、固着領域において剥がれ等が発生することなく、高品質なステータを提供できる。
【0030】
本発明のステータは、前記外筒の端部に設けられた前記起伏部が、前記外筒端部に前記ステータの前記軸線方向への段差を有するものであってもよい。
【0031】
かかる構成によれば、ガスケット部の径方向への弾性変形を制限できる。
【0032】
本発明のステータは、前記外筒の端部に設けられた前記起伏部が、前記ステータの前記軸線方向に向けて凹状に形成された凹部、及び凸状に形成された凸部のいずれか一方又は双方を備えたものであっても良い
【0033】
かかる構成によれば、起伏部をなす凸状の部分や凹状の部分により、ガスケット部及び外筒端部に嵌め込み構造を形成することができる。
【0034】
本発明のステータは、前記ガスケット部と前記外筒とが、接着剤による接着又は熱による圧着により固着されるものであることが望ましい。
【0035】
本発明のステータは、上述したように起伏部においてガスケット部及び外筒を軸線方向に嵌め込んだ構造とすることにより、ガスケット部の径方向への弾性変形を制限可能な構成とされている。そのため、本発明のステータは、ガスケット部の径方向への弾性変形等が発生するような状況においても、ガスケット部と外筒との接着部分や圧着部分に無理な力が作用せず、安定的に使用できる。
【0036】
本発明の一軸偏心ねじポンプは、上述した本発明のステータを備えることを特徴とするものである。
【0037】
本発明によれば、長寿命のステータを備えた一軸偏心ねじポンプを提供することができる。
【発明の効果】
【0038】
本発明によれば、一軸偏心ねじポンプへの組み付け及び取り外しの繰り返しによるステータの破損を抑制して、比較的長期間の使用を可能とする寿命の長いステータ及びこれを備える一軸偏心ねじポンプを提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0040】
以下、本発明の一実施形態に係る一軸偏心ねじポンプ10及びステータ20について、図面を参照しつつ詳細に説明する。なお、一軸偏心ねじポンプ10は、ステータ20に特徴を有するものではあるが、以下の説明ではステータ20の説明に先立って全体構造について説明する。
【0041】
≪一軸偏心ねじポンプ10の全体構造について≫
一軸偏心ねじポンプ10は、いわゆる回転容積式のポンプである。
図1に示すとおり、一軸偏心ねじポンプ10は、ポンプケーシング16及びステータケーシング18の内部に、ロータ50、ステータ20、及び動力伝達機構60等を収容した構成とされている。より具体的には、一軸偏心ねじポンプ10は、ポンプケーシング16の内部に動力伝達機構60などが収容され、ステータケーシング18の内部にステータ20やロータ50等が収容された構成とされている。
【0042】
ポンプケーシング16は、金属製で筒状の部材であり、長手方向一端側にステータ取付部16aが設けられている。また、ステータケーシング18は、長手方向一端側に取り付けられたエンドスタッド13に第一開口部14aが設けられている。また、ポンプケーシング16の外周部分には、第二開口部14bが設けられている。第二開口部14bは、ポンプケーシング16の長手方向中間部分においてポンプケーシング16の内部空間に連通している。
【0043】
第一開口部14a及び第二開口部14bは、それぞれ一軸偏心ねじポンプ10の吐出口及び吸込口として機能する部分である。一軸偏心ねじポンプ10は、ロータ50を正方向に回転させることにより、第一開口部14aを吐出口、第二開口部14bを吸込口として機能させることができる。また、メンテナンス等のためにロータ50を逆方向に回転させることにより、第一開口部14aを吸込口、第二開口部14bを吐出口として機能させ、ポンプケーシング16の内部空間等の洗浄等を行うことができる。
【0044】
ステータ20は、一端がエンドスタッド13に隣接し、他端がポンプケーシング16のステータ取付部16aに嵌め込まれた状態でステータケーシング18内に収容される。
【0045】
ステータ20は、略円筒形の外観形状を有する部材である。ステータ20は、金属製で筒状の外筒30と、ゴム等の弾性体や樹脂等のエラストマー等で形成されるステータ本体42とを有している。ステータ20は、外筒30の内側にステータ本体42が形成された構成とされている。
【0046】
ステータ本体42は、後述の筒状部44を外筒30内に収容している。ステータ本体42の外径は、外筒30の内径と略同一である。そのため、ステータ本体42は、その外周面が外筒30の内周面30aに略密着するような状態で取り付けられて、接着剤等の固着手段により一体的に形成されている。
図1に示すように、ステータ本体42には挿通孔48が形成され、内周面42aがn条で単段あるいは多段の雌ねじ形状とされている。本実施形態では、挿通孔48は、内周面42aが2条で多段の雌ねじ形状とされている。なお、ステータ20の構造については、後に詳述する。
【0047】
ロータ50は、金属製の軸体であり、n−1条で単段又は多段の雄ねじ形状とされている。本実施形態では、ロータ50は、1条で偏心した雄ねじ形状とされている。ロータ50は、長手方向のいずれの位置においても断面形状が略真円形とされている。ロータ50は、上述したステータ本体42に形成された挿通孔48に挿通され、挿通孔48の内部において自由に偏心回転可能とされている。
【0048】
ロータ50をステータ20に対して挿通すると、ロータ50の外周壁50aとステータ本体42の内周面42aとが両者の接線で密接した状態になり、ステータ本体42の内周面42aとロータ50の外周壁50aとの間に流体搬送路52(キャビティ)が形成される。流体搬送路52は、ステータ20やロータ50の長手方向に向けて螺旋状に伸びている。
【0049】
流体搬送路52は、ロータ50をステータ本体42の挿通孔48内において回転させると、ステータ本体42内を回転しながらステータ20の長手方向に進む。そのため、ロータ50を回転させると、ステータ20の一端側から流体搬送路52内に流体を吸い込むと共に、この流体を流体搬送路52内に閉じこめた状態でステータ20の他端側に向けて移送し、ステータ20の他端側において吐出させることが可能である。
【0050】
動力伝達機構60は、駆動源58から上述したロータ50に対して動力を伝達するためのものである。動力伝達機構60は、動力伝達部64と偏心回転部62とを有する。動力伝達部64は、ポンプケーシング16の長手方向の一端側に設けられている。また、偏心回転部62は、中間部54に設けられている。偏心回転部62は、動力伝達部64とロータ50とを動力伝達可能なように接続する部分である。偏心回転部62は、従来公知のカップリングロッドや、スクリューロッドなどによって構成された連結軸63を備えている。そのため、偏心回転部62は、駆動源58を作動させることにより発生した回転動力をロータ50に伝達させ、ロータ50を偏心回転させることが可能である。
【0051】
≪ステータ20の構成について≫
以下、本発明のステータ20について詳細に説明する。
図2(b)に示すとおり、本発明のステータ20は、外筒30及びステータ本体42を備えている。
【0052】
なお、以下の説明において、ステータ20の軸線方向(長手方向)を「軸線方向X」と称して説明する。また、ステータ20をエンドスタッド13側から軸線方向Xに視認した状態を「正面視」と称して説明する。
【0053】
ステータ20は、ステータ本体42の外側に外筒30が取り付けられた構成とされている。ステータ20は、例えば接着剤を付着させた外筒30にステータ本体42の成型材料を注入する等の手法により、外筒30とステータ本体42とを一体化して形成されている。なお、ステータ本体42の成型については、後に説明する。
【0054】
図2(b)に示すとおり、ステータ20は、軸線方向Xの両端部にステータ端部22,23を有する。ステータ端部22,23には、固着領域24,25が設けられている。また、外筒30は、軸線方向Xの両端部に外筒端部32,33を有する。ステータ本体42は、長手方向の両側にフランジ状のガスケット部46,47を有する。ステータ20は、外筒端部32,33とガスケット部46,47との接触部分に固着領域24,25を有する。ステータ20は、外筒端部32,33とガスケット部46,47とを固着領域24,25において接着等により固着させたものとされている。
【0055】
また、ステータ20は、起伏部26,27を有する。起伏部26,27は、外筒端部32,33の両端部に形成された凹状の部位である。ステータ20は、外筒端部32,33に対してガスケット部46,47を外筒端部32,33に対して軸線方向Xに向けて嵌め込んだ(あるいは侵入させた)構造とされている。本実施形態のステータ20は、ステータ端部22に、起伏部26及び固着領域24が設けられている。また、ステータ20は、ステータ端部23に、起伏部27及び固着領域25が設けられている。
【0056】
図2(b)に示すとおり、外筒30は、金属製で中空の筒状部材である。外筒30は、上述のとおり、ステータ本体42の外側に取り付けられる。なお、外筒30の材質は、硬質の材料を適宜選択可能である。例えば、外筒30の材料として、樹脂素材等の素材を選択することも可能である。
【0057】
本実施形態の外筒30は、断面形状が略円形の筒体である。
図3(b)に示すとおり、外筒30は、軸線方向Xに向けて貫通した貫通孔40を有する。外筒30には、貫通孔40の内周面30aに略密着するようにステータ本体42が収容される。
【0058】
なお、外筒30は、略円柱状の外観を有するものであるが、ステータ本体42の形状に沿ったものであればいかなるものであっても良い。例えば、外筒30は、略長円形状の断面形状を有するもの(
図15(c)参照)や、略三角形の断面形状を有するものであってもよい。
【0059】
図2(b)に示すとおり、外筒30には、外筒端部32,33に起伏部26,27(凹部)が設けられている。起伏部26はエンドスタッド13側の外筒端部32に設けられ、起伏部27はポンプケーシング16側の外筒端部33に設けられている。本実施形態では、ガスケット部46,47が正面視で略円形の形状とされているため、起伏部26,27は正面視が略円形の凹部とされている。なお、起伏部26,27は、同様の構成とされている。そのため、以下の説明において、起伏部26について詳細に説明し、起伏部27の説明を省略する。
【0060】
図3(a)に示すとおり、起伏部26(凹部)は、外筒端部32の端面32aから軸線方向Xに退入した略円形の窪みとして形成されている。また、
図2(a)に示すとおり、起伏部26は、正面視において外筒30の外周全域に沿うような直径D1を有する略円形の輪郭を有している。これにより、起伏部26は、ステータ本体42のガスケット部46を略隙間なく嵌め込み可能な大きさ及び形状とされている。言い換えれば、起伏部26は、ステータ本体42のガスケット部46を外筒端部32の端面32aよりも軸線方向Xの中央側に向けて突出(侵入)させ、ガスケット部46の一部が外筒30に嵌め込まれた形状とするために設けられている。
【0061】
図3(a)及び(b)に示すとおり、起伏部26をなす凹部は、外筒端部32において段差を形成している。より具体的には、起伏部26は、端面32aから軸線方向Xに距離L1分だけ退入した底面34bを有し、端面32aと底面34bとの間に段差が形成された形状とされている。
【0062】
図3(a)及び(b)に示すとおり、起伏部26は、側面(内周面)をなす壁面34aを有している。より具体的には、起伏部26は、端面32aと底面34bとの間に軸線方向Xに沿って拡がる壁面34aを有する。壁面34aは、いわゆるアール加工等により湾曲した形状とされている。底面34bは、端面32aと略平行であって、壁面34aに取り囲まれるように形成された面である。起伏部26は、壁面34aの内側にガスケット部46を収容可能な収容領域36を有する。
【0063】
図2(b)に示すとおり、ステータ本体42は、筒状部44及びガスケット部46,47を一体的に形成した筒状の部材である。ステータ本体42には、上述した雌ねじ形の挿通孔48が軸線方向Xに延びるように形成されている。ステータ本体42は、ニトリルゴムやエチレンプロピレンゴムやフッ素ゴムなどのゴム、シリコーンなど弾性のあるエラストマー等、適宜の材料により形成されている。また、ステータ本体42は、接着剤が付着された外筒30に対して成型材料を流し込み成型する等の手法により、外筒30に対して固着されている。
【0064】
筒状部44は、両端近傍にゆるやかに拡径したテーパー状の部分を有する。ガスケット部46,47は、筒状部44の両側に形成され、フランジ状の形状とされている。また、
図2(a)に示すとおり、ガスケット部46,47は、正面視において略円形の形状を有している。
【0065】
なお、ガスケット部46とガスケット部47とは、同様の構成とされている。そのため、以下の説明においてガスケット部46について詳細に説明し、ガスケット部47の説明を省略する。
【0066】
図2(b)に示すとおり、ガスケット部46は、ステータ本体42の端部において径方向外側に向けて拡張されたフランジ状の部分である。
図2(a)に示すとおり、ガスケット部46は、正面視において直径D2を有する略円形の外観とされている。ガスケット部46の直径D2は、起伏部26の直径D1と概ね一致する。さらに、
図4に示すとおり、ガスケット部46は、軸線方向Xに距離L2の厚みを有している。
【0067】
図4に示すとおり、ガスケット部46は、接着面46aと、シール面46bと、周面46cとを有する。接着面46aは、外筒30の端面32aに接着される面であり、外筒30の端面32aに隣接(対向)している。また、シール面46bは、ステータ本体42の先端に形成された面である。接着面46a及びシール面46bは、略平坦な面とされている。また、周面46cは、壁面34aの湾曲形状に沿うように湾曲した面とされている。具体的には、周面46cは、軸線方向Xの略中央を径方向に膨出させた湾曲面とされている。
【0068】
続いて、本実施形態の外筒30にステータ本体42を形成する手順の概要、及びステータ本体42の成型時におけるガスケット部46,47の破損抑制について説明する。
【0069】
外筒30に対してステータ本体42を成型する際には、先ず、外筒30の内周面30a及び外筒端部32,33に接着剤を付着させる。次いで、外筒30を所定の金型Mに入れ、雌ねじ形状の中子(図示を省略)を外筒30の内部に配置する。次に、ステータ本体42の成形材料となるエラストマーを流し込む。このようにして、雌ねじ型の挿通孔48及びガスケット部46,47を有するステータ本体42が、外筒30に固着された状態で成型される。
【0070】
図5に示すとおり、上述の工程が終了した後にステータ20から金型Mを取り外し、中子(図示を省略)を取り出す。金型Mを分離させる工程の際に、成型物であるガスケット部46,47には、金型Mに引っ張られて金型Mの離反方向に牽引力(
図5中の矢印参照)が作用する。
【0071】
ここで、本実施形態のステータ20は、ガスケット部46の一部が外筒30の起伏部26に嵌め込まれた状態となるように成型される。より具体的には、ガスケット部46は、周面46cのうち軸線方向Xの一部が収容領域36に嵌め込まれた状態となる。また、ガスケット部46の収容領域36に収容される部分以外の部分は、収容領域36から軸線方向Xの外側に突出した状態で形成される。言いかえれば、ステータ本体42の成型過程において、ガスケット部46の周面46cの一部は、壁面34aと向かい合うように隣接して配置され、その他の部分は、金型Mと接触する部分とされる。
【0072】
さらに説明すると、
図4等に示すように、ステータ20においては、軸線方向Xに対して交差する方向(径方向)に拡がる底面34bだけでなく、軸線方向Xに拡がるように形成された壁面34aにおいても接着剤を塗布する等してガスケット部46が外筒30に対して固着されている。そのため、ステータ20は、従来のステータ520のように径方向に拡がる面(端面)においてのみ外筒530及びステータ本体542を固着する場合に比べて、接着面積(固着面積)を大きくとることができる。さらに、壁面34aは、金型Mの離型方向に対して交差する面でもある。そのため、壁面34aにおいては、底面34bよりも金型Mの離型に伴って作用する応力の影響を受けにくい。従って、ステータ20においては、金型Mの離型に伴い発生する力(引っ張り力)を、底面34bだけでなく壁面34aにおいても分散支持できる。これに加え、ステータ20においては、ガスケット部46の周面46cの一部が収容領域36に収容されるため、この部分の面積の分だけ成型時に金型Mと接触する面積が小さくて済む。これらの効果により、ステータ20の成型に際して金型Mを離型させる際に発生する力の影響によって予期せずガスケット部46が外筒30から剥がれてしまう等の問題が発生するのを抑制できる。
【0073】
なお、本実施形態のステータ20は、外筒30を収容した金型Mにステータ本体42の成型材料を注入してステータ本体42が成形されるものとしたが、本発明のステータはこれに限定されない。
【0074】
例えば、本発明のステータは、接着剤等の媒介材料を用いず、外筒30に対してエラストマー等の成型材料自身が有する接着力を利用する等により、ステータ本体42を外筒30に対して固着するものであってもよい。また、本発明のステータは、外筒30を樹脂製の硬質材料により構成し、熱などの作用により外筒30及びステータ本体42を圧着して固着するものであってもよい。さらに、本発明のステータは、あらかじめ成型されたステータ本体42と外筒30とを準備して、成形されたステータ本体42を外筒30に接着剤による接着、又は加熱による圧着により固着して一体的化するものであってもよい。このように、本発明のステータは、外筒30及びステータ本体42の固着手段を適宜選択可能である。
【0075】
続いて、ステータ20の一軸偏心ねじポンプ10への組み付け及び取り外し作業における、ガスケット部46,47の変形抑制について説明する。
【0076】
図6(a)に示すとおり、ステータ20を一軸偏心ねじポンプ10に組み付ける際には、ガスケット部46,47が、軸線方向Xの両側より押圧される。より具体的には、ステータ20の一軸偏心ねじポンプ10への組み付けの際、ガスケット部46は、外筒端部32及びエンドスタッド13に挟まれて軸線方向Xの両側より押圧される。また、ガスケット部47は、外筒端部33及びポンプケーシング16に挟まれて軸線方向Xの両側より押圧される。これにより、ガスケット部46,47は、径方向外側に拡大するように弾性変形しようとする(
図7参照)。
【0077】
ここで、本実施形態のガスケット部46は、周面46cの軸線方向Xの一部が、壁面34aに取り囲まれた状態で成型される。すなわち、ガスケット部46の周面46cは、壁面34aに取り囲まれた状態となる。
図7に示すように、壁面34aに取り囲まれたガスケット部46の部分(収容領域36に収容された部分)は、壁面34aと接触して径方向外側への弾性変形が制限される(
図7中の矢印d1参照)。また、ガスケット部47についても、壁面35aに取り囲まれたガスケット部47の部分(収容領域37に収容された部分)が、壁面35aと接触して径方向外側への弾性変形が制限される(図示を省略)。
【0078】
そのため、ステータ20は、一軸偏心ねじポンプ10への組み付けに際してガスケット部46,47に対して軸線方向Xの両側から挟持力が作用したとしても、少なくともガスケット部46,47のうち収容領域36,37に収容された部分については径方向への弾性変形が抑制される。これにより、固着領域24,25においてステータ20の径方向へのせん断力が作用するのを抑制できる。また、径方向への弾性変形が抑制された状態でガスケット部46,47が組み付けられるため、ステータ20を一軸偏心ねじポンプ10から取り外す際に、ガスケット部46,47が径方向に縮小するように弾性変形することも殆どない。そのため、ステータ20は、一軸偏心ねじポンプ10への組み付け及び取り外しに際してガスケット部46,47に作用する挟持力が変化しても、ガスケット部46,47の径方向への変形が殆ど起こらない。従って、ステータ20は、外筒端部32,33からガスケット部46,47が剥がれる等の不具合が起こりにくい。
【0079】
続いて、本実施形態のステータ20における、ガスケット部46,47のシール部材としての機能について説明する。
【0080】
図2や
図4に示すように、ステータ20は、ガスケット部46,47の一部が収容領域36,37に収容される一方、これ以外の部分(以下、本実施形態の説明において「突出部分」とも称する)が収容領域36,37から軸線方向Xの外側に突出している。また、
図6に示すとおり、ステータ20が一軸偏心ねじポンプ10に組み付けられた状態において、ガスケット部46の突出部分は、エンドスタッド13に設けられた凹部に嵌め込まれる。ガスケット部47の突出部分は、ポンプケーシング16に設けられた凹部に嵌め込まれる。また、ガスケット部46,47の収容領域36,37に収容された部分が、壁面34a,35aにより径方向外側への弾性変形を制限される(
図7中の矢印d1参照)一方、突出部分については、径方向外側への弾性変形がある程度許容される(
図7中の矢印d2参照)。そのため、一軸偏心ねじポンプ10に対するステータ20の組付に伴ってガスケット部46,47に対して軸線方向Xの両側から押圧力が作用すると、ガスケット部46,47の突出部分が径方向外側へ弾性変形する。そのため、エンドスタッド13やポンプケーシング16と外筒30との隙間がガスケット部46,47の突出部分によって埋められ、液体や気体の漏れが抑制される。すなわち、ガスケット部46,47の突出部分が、シール部材として機能する。
【0081】
図4等に示すように、ステータ20では、ガスケット部46,47の接着面46a,47a、及び外筒端部32,33の底面34b,35bが、共に略平坦な面とされている。さらに、ステータ20では、壁面34a,35aが、接着面46a,47aや底面34b,35bの径方向外側において取り囲むように設けられている。そのため、ステータ20の着脱作業等の際に細い器具等がガスケット部46,47の近傍で用いられたり、ガスケット部46,47近傍を作業者が手で掴んだりしたとしても、壁面34a,35aが邪魔になり、前述の器具や爪などが接着面46a,47aや底面34b,35bの間に侵入することがない。これにより、接着面46a,47a及び底面34b,35bの間に器具等が挟まって固着領域24,25において?がれる等の不具合を抑制できる。
【0082】
≪第二実施形態≫
続いて、本発明の第二実施形態に係るステータ120について説明する。なお、以下のステータ120の説明において、ステータ20と同様の構成についてはステータ20の説明において付した符合と同じ符合を用いて説明し、詳細な説明を省略する。
【0083】
図8に示すとおり、ステータ120は、外筒130及びステータ本体142を有する。ステータ本体142には、筒状部44の両側にフランジ状のガスケット部146,147が一体的に形成されている。また、ステータ本体142には、雌ねじ型の挿通孔48が形成されている。ステータ120は、第一実施形態のステータ20と同様に、接着剤を付着させた外筒130にステータ本体142の成型材料を注入する等の手法により、外筒130とステータ本体142とを一体化されている。
【0084】
図8(b)に示すとおり、ステータ120は、外筒130の軸線方向Xの両端部にステータ端部122,123を有する。ステータ端部122,123には、固着領域124,125が設けられている。ステータ120には、ステータ端部122,123に固着領域124,125が構成される。また、外筒130は、軸線方向Xの両端部に外筒端部132,133を有する。ステータ本体142は、長手方向の両側にフランジ状のガスケット部146,147を有する。ステータ120は、外筒端部132,133とガスケット部146,147とを固着領域124,125において接着等により固着させたものとされている。
【0085】
また、ステータ120は、起伏部126,127を有する。起伏部126,127は、外筒端部132,133に形成された凸状の部位である。ステータ120は、ガスケット部146,147に設けられた凹部に対し、外筒端部132,133に設けられた起伏部126,127を軸線方向Xに向けて嵌め込んだ(あるいは突出させた)構造とされている。
【0086】
図8(b)に示すとおり、起伏部126は、外筒端部132からエンドスタッド13に向けて突出するように設けられている。また、起伏部127は、外筒端部133からポンプケーシング16に向けて突出するように設けられている。なお、起伏部126と起伏部127とは、同様の構成とされている。そのため、以下の本実施形態の説明において起伏部126について説明し、起伏部127については詳細な説明を省略する。
【0087】
外筒130は、上述のとおり、起伏部126(凸部)を有している。本実施形態の起伏部126は、外筒端部132に形成された凸部とされている。また、起伏部126は、エンドスタッド13に向けて軸線方向Xに突出するような段差を、外筒端部132に形成している。
【0088】
図9(a)及び(b)に示すとおり、本実施形態における起伏部126は、外筒端部132の端面132aから環状に突出した形状とされている。より具体的には、
図9(a)に示すとおり、起伏部126は、端面132aの周縁132bから径方向内側に外れた位置に設けられている。また、起伏部126は、端面132aの周縁132bに沿うように形成されている。
【0089】
図9(a)及び(b)に示すように、起伏部126は、凸形状を形成する側面(周面)として内周側の内壁面134aと、外周側の外壁面134bとを有する。内壁面134a及び外壁面134bは、軸線方向Xに概ね沿うような側面(周面)として形成されている。また、起伏部126は、内壁面134aと外壁面134bとの間に先端面134cを有する。先端面134cは、端面132aと略平行な面であり、外筒130において軸線方向Xの最先端に位置している。起伏部126は、端面132aと先端面134cとの間に段差を形成している。
【0090】
図10等に示すとおり、ステータ120は、起伏部126をガスケット部146に対して嵌め込んだ状態とされる。より具体的には、ステータ120は、ガスケット部146の径方向中間に起伏部126が嵌め込まれた形状になるように、外筒130に対してステータ本体142が成型される。また、ステータ120においては、ガスケット部146の周面146cが、起伏部126が設けられた位置よりも外筒130の径方向外側に位置している。
【0091】
続いて、ステータ120のガスケット部146,147の変形抑制について説明する。なお、ガスケット部146,147は同様の構成であるため、以下の本実施形態の説明では、ガスケット部146について説明し、ガスケット部147については説明を省略する。
【0092】
第一実施形態のステータ20と同様に、ステータ120は、一軸偏心ねじポンプ10に組み付けられると、ガスケット部146が外筒端部132とエンドスタッド13との間に挟まれ、軸線方向Xの両側から押圧された状態になる。ガスケット部146は、軸線方向Xの両側から押圧力を受けることで、ステータ120の径方向外側に弾性変形しようとする。
【0093】
ここで、本実施形態の起伏部126は、ガスケット部146の径方向の中間において、アンカーのような機能を発揮する。具体的には、起伏部126は、内壁面134aの内側に配置されるガスケット部146の拡径を制限する。これにより、ステータ120は、ガスケット部146と外筒端部132とが接着される固着領域124に作用する応力を低減して、固着領域124の接着が剥がれることを抑制することができる。また、ステータ120は、一軸偏心ねじポンプ10から取り外される際のガスケット部146の径方向内側への弾性変形を、外壁面134bにより制限する。
【0094】
このように、ステータ120は、一軸偏心ねじポンプ10への組み付けの際及び取り外しの際に想定されるガスケット部146の弾性変形を制限する。また、ステータ120は、ガスケット部146の弾性変形を制限して、固着領域124の応力を低減し、外筒130とステータ本体142とが剥離することを抑制している。その結果、ステータ120の破損を抑制することができる。
【0095】
また、ステータ120は、端面132a及び先端面134cに加え、内壁面134a及び外壁面134bの全域又は一部を固着領域124とすることができる。すなわち、ステータ120は、起伏部126の周面(側面)を構成する内壁面134a及び外壁面134bが有する面積の分、ステータ本体142と外筒端部132との接着面積を拡大することができる。そのため、従来のステータ520と比較してガスケット部146と外筒端部132との接着力を向上し、ガスケット部146が外筒端部132から剥がれることを抑制することができる。
【0096】
≪第三実施形態≫
続いて、本発明の第三実施形態に係るステータ220について説明する。なお、以下の説明において、ステータ20と同様の構成については同一の符合を用いて説明し、詳細な説明を省略する。
【0097】
図11に示すとおり、ステータ220は、外筒230及びステータ本体242を有する。ステータ本体242は、両端部にフランジ状のガスケット部246,247を有する。また、ステータ220は、第一実施形態のステータ20と同様に、接着剤を付着させた外筒230にステータ本体242の成型材料を注入する等の手法により、外筒230とステータ本体242とが一体化されている。
【0098】
ステータ220は、軸線方向Xの両端部にステータ端部222,223を有する。ステータ端部222,223には、固着領域224,225が設けられている。また、外筒230は、軸線方向Xの両端部に外筒端部232,233(端部)を有する。ステータ220は、外筒端部232,233とガスケット部246,247との接触部分に固着領域224,225を有する。ステータ220は、外筒端部232,233とガスケット部246,247とを固着領域224,225において接着等により固着させたものとされている。
【0099】
ステータ220は、軸線方向Xの両端部に起伏部226,227を有する。ステータ220は、ステータ端部222に起伏部226及び固着領域224を有し、ステータ端部223に起伏部227及び固着領域225を有する。なお、本実施形態の説明において、起伏部227、外筒端部233、ガスケット部247及び固着領域225についての説明を省略する。
【0100】
図11に示すとおり、起伏部226は、外筒端部232に形成された凹状及び凸状の部位である。具体的には、起伏部226は、外筒端部232に形成された凹部236及び凸部238とを備えている。起伏部226は、凹部235及び凸部238の組合せにより外筒端部232に段差を形成している。凹部236は、端面232aから軸線方向Xに退入した略円形の窪みとして形成されている。凸部238は、軸線方向Xに突出した環状の突出部分として形成されている。また、凸部238は、凹部236の径方向内側に形成されている。また、起伏部226は、端面232aの周縁232bから径方向内側に外れた位置に設けられている。起伏部226は、端面232aの周縁232bに沿うように形成されている。
【0101】
ステータ220においては、ガスケット部246が、凹部235及び凸部238の形状に合わせて起伏した形状(凹凸形状)とされている。具体的には、ガスケット部246は、凹部235に対応する位置において外筒端部232に向けて軸線方向Xに突出した凸形状とされている。また、ガスケット部246は、凸部238に対応する位置において軸線方向Xに退入した凹形状とされている。そのため、ステータ220は、起伏部226が設けられた部位において、外筒端部232及びガスケット部246の凹凸部分(起伏部分)が軸線方向Xに相互に嵌入された形状とされている。
【0102】
起伏部226についてさらに詳細に説明すると、
図11に示すように、起伏部226は、凹凸形状を形成する複数の側面(周面)を有する。具体体には、起伏部226は、凹部236を形成する内周面として第一壁面234aを有する。また、起伏部226は、凸部238を形成する側面(周面)として外周側の第二壁面234bと、外周側の第三壁面234cとを有する。第一壁面234a及び第三壁面234cは、外筒230の径方向内側に向く側面として形成される。また、第二壁面234bは、外筒230の径方向外側に向く側面として形成される。
【0103】
また、起伏部226は、端面232aと略平行な面として、第一底面234d、天面234e及び第二底面234fを有する。第一底面234dは、第一壁面234aと第二壁面234bとの間に形成される。天面234eは、第二壁面234bと第三壁面234cとの間に形成される。第二底面234fは、第三壁面234cの内側に形成される。起伏部226は、端面232aと第一底面234d及び第二底面234fとの間に段差を形成している。
【0104】
図11に示すように、凹部236は、第一壁面234aの内側に形成されている。また、凹部236には、収容領域240が形成される。収容領域240は、ガスケット部246の軸線方向Xの一部を収容可能とされている。外筒230に対してステータ本体242が成型された状態において、ガスケット部246は、径方向の全域であって軸線方向Xの一部が収容領域240に収容された状態となる。また、凸部238は、収容領域240に収容されたガスケット部246に対して、軸線方向Xに突出した状態となる。このように、ステータ220は、外筒230にステータ本体242が形成された状態において、外筒端部232及びガスケット部246を相互に嵌め込んだ構造とされる。
【0105】
ステータ220は、一軸偏心ねじポンプ10に組み付けられると、ガスケット部246が外筒端部232とエンドスタッド13との間に挟まれ、軸線方向Xの両側から押圧された状態になる。ガスケット部246は、軸線方向Xの両側から押圧力を受けることで、ステータ220の径方向外側に弾性変形しようとする。ステータ220は、ガスケット部246の径方向への弾性変形を、ガスケット部246の周面246cに対して第一壁面234aが径方向外側から接触することにより制限する。また、凸部238は、収容領域240に収容されたガスケット部246に対して、径方向中間においてアンカーのような機能を発揮する。これにより、ステータ220は、ガスケット部246の径方向外側への弾性変形を制限しつつ、ガスケット部246の中間において、ガスケット部246の径方向外側及び内側への弾性変形を制限する。すなわち、ステータ220は、ガスケット部246の弾性変形を二重に制限する。これにより、ステータ220は、ガスケット部246の弾性変形に起因して、ガスケット部246が外筒端部232から剥がれることを抑制することができる。
【0106】
また、ステータ220は、外筒230にステータ本体242を形成する過程において、第一底面234d、天面234e、及び第二底面234fに加え、第一壁面234a、第二壁面234b及び第三壁面234cを固着領域224とすることができる。すなわち、ステータ220は、起伏部226の周面(側面)を構成する第一壁面234a、第二壁面234b及び第三壁面234cが有する面積の分、ガスケット部246と外筒端部232との接着面積を拡大することができる。そのため、ステータ220は、ガスケット部246と外筒端部232との接着力を向上させて、ガスケット部246が外筒端部232から剥がれることを抑制することができる。
【0107】
以上、本発明の第一実施形態、第二実施形態及び第三実施形態について説明し、ステータ20,120,220の起伏部について詳細に説明したが、本発明のステータはこれに限定されない。
【0108】
第一実施形態の説明において、軸線方向Xに湾曲する形状を有する壁面34aについて説明し、第二実施形態において軸線方向Xに沿って形成される内壁面134a及び外壁面134bについて説明したが、本発明の起伏部が有する壁面の形状はこれに限定されない。
【0109】
例えば、
図12(a)に示すように、本発明のステータが有する壁面は、第一実施形態の湾曲面を有する壁面34aにかえて、底面34bと略垂直をなすように形成される壁面301としてもよい。また、
図12(b)に示すように、本発明のステータが有する壁面は、壁面34aにかえて、軸線方向Xに対して傾斜した形状を有し底面34bと鈍角をなすよう形成される壁面302としてもよい。あるいは、本発明のステータが有する壁面は、
図12(c)に示すように底面34bと鋭角をなすよう形成される壁面303としてもよい。
【0110】
さらに、本発明のステータが有する壁面は、第二実施形態における内壁面134a及び外壁面134bを、
図12(a)に示す壁面301のように底面と略垂直をなす壁面として構成してもよいし、軸線方向Xに対して湾曲する壁面として構成してもよい。さらに、本発明のステータが有する壁面は、第三実施形態における第一壁面234a、第二壁面234b及び第三壁面234cの壁面を、軸線方向Xに対して傾斜した面又は軸線方向Xに対して湾曲する面としてもよい。いずれにしても、壁面の形状は種々選択可能である。
【0111】
さらに、第一実施形態において、円形の窪み形状とされた凹形状(凹部)を有する起伏部26を有するステータ20について説明したが、本発明のステータはこれに限定されない。例えば、本発明のステータは、
図13(a−1)及び(a−2)に示すような環状の溝とされた起伏部312を有するものとしてもよい。
【0112】
また、本発明のステータは、第二実施形態において説明した外筒130に対して、
図13(b−1)及び(b−2)に示すように、ステータ本体322を成型したものであってもよい。具体的には、本発明のステータは、起伏部126(凸部)の径方向内側にガスケット部324を収容させるように、ステータ本体322を外筒130に対して成型するものとしてもよい。
【0113】
さらに、上述した本発明のステータにおける各実施形態の説明において、1の凹部又は凸部、あるいは凹部及び凸部の双方を有する起伏部について説明したが、本発明のステータはこれに限定されない。
【0114】
例えば、本発明のステータは、
図14(a)に示すステータ330のように、2つの凸部を備える起伏部を有するものであってもよい。また、本発明のステータは、
図14(b)に示すステータ340のように、1つの凸部及び1つの凹部を備える起伏部を有するものとしてもよい。さらに、本発明のステータは、
図14(c)に示すステータ350のように、2つの凸部を備える起伏部を有するものであってもよい。あるいは、本発明のステータは、
図14(d)に示すステータ360のように、軸線方向Xに対して傾斜して形成される2つの壁面を備え、段状の形状を形成しない起伏部を有するものであってもよい。
【0115】
いずれにしても、本発明のステータの起伏部は、外筒及びステータ本体のうちの少なくとも一方を他方に対して嵌め込んだ形状とするものであれば、いかなる形状のものであってもよい。
【0116】
さらに、上述の本発明のステータの各実施形態において、円形の断面形状を有する外筒30,130,230と、円形又は環状の凹部又は凸部を有する起伏部26,134,234を有するステータ20,120,220について説明したが、本発明のステータが有する外筒及び起伏部はこれに限定されない。
【0117】
例えば、
図15(a)に示すように、本発明のステータは、外筒端部の外縁に沿って、一部が分断された環状の形状を有する凹部又は凸部とされた起伏部372を有するものとしてもよい。又は、本発明のステータは、外筒端部の外縁に沿って、一部に設けられた環状の凹部又は凸部とされた起伏部を有するものととしてもよい。また、
図15(b)に示すように、本発明のステータは、外筒端部の外縁に沿って形成された多角形の形状を有する窪み又は凸部とされた起伏部374を有するものとしてもよい。さらに、
図15(c)に示すとおり、本発明のステータは、外筒及びステータ本体が、長円の断面形状を有するものである場合には、外筒端部の外縁に沿って長円形状の窪み又は凸部とされた起伏部376を有するものとすることも可能である。さらに、本発明のステータは、外筒が円形の断面形状を有するものであり、ステータ本体が略三角形等、多角形の形状を有するものである場合には、ステータ本体に形成されたガスケット部の形状に沿うような形状とされた起伏部を適宜選択可能である。
【0118】
また、本発明のステータは、軸線方向Xの両側端部のうち一方に起伏部を設けたものとしてもよい。さらに、本発明のステータは、軸線方向Xの両側端部に、それぞれ異なる形状の起伏部を設けてもよい。例えば、本発明のステータは、両側端部のうち一端側の起伏部を凹部とし、他端側の起伏部を凸部としてもよい。
【0119】
また、本発明のステータは、外筒及びステータ本体の材質を、一軸偏心ねじポンプ10を用いて移送する被搬送物である移送物の種類や性状などにあわせて適宜選択することができる。
【課題】本発明は、一軸偏心ねじポンプへの組み付け及び取り外しの繰り返しによるステータの破損を抑制して、比較的長期間の使用を可能とする寿命の長いステータ及びこれを備える一軸偏心ねじポンプの提供を目的とした。
【解決手段】ステータ20は、外筒30と、フランジ状のガスケット部46,47を備えるステータ本体42とを有し、ステータ20が、ガスケット部46,47と外筒30とが固着される固着領域24,25を備え、外筒30及びガスケット部46,47の双方又は一方に、軸線方向Xに侵入あるいは退入し、前記外筒及び前記ガスケット部のうちの一方の少なくとも一部を他方に対して嵌め込まれた形状とする起伏部を有している。