特許第6245720号(P6245720)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6245720
(24)【登録日】2017年11月24日
(45)【発行日】2017年12月13日
(54)【発明の名称】クッション
(51)【国際特許分類】
   A61G 7/057 20060101AFI20171204BHJP
   A47C 27/10 20060101ALI20171204BHJP
【FI】
   A61G7/057
   A47C27/10 Z
【請求項の数】2
【全頁数】13
(21)【出願番号】特願2017-532237(P2017-532237)
(86)(22)【出願日】2015年7月31日
(86)【国際出願番号】JP2015003883
(87)【国際公開番号】WO2017021996
(87)【国際公開日】20170209
【審査請求日】2017年6月21日
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】505038977
【氏名又は名称】有限会社小池経編染工所
(74)【代理人】
【識別番号】100095337
【弁理士】
【氏名又は名称】福田 伸一
(74)【代理人】
【識別番号】100174425
【弁理士】
【氏名又は名称】水崎 慎
(72)【発明者】
【氏名】小池 隆
【審査官】 大谷 謙仁
(56)【参考文献】
【文献】 特開2014−073359(JP,A)
【文献】 特表平11−502447(JP,A)
【文献】 特開2002−272563(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61G 7/057
A47C 27/10
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
チューブの一端側に接続された手動ポンプと、
弾性体からなる袋体とを有し、
前記チューブの他端側を前記袋体に接続して構成されるクッション構成部が複数存在し、
外カバーは、区画線によって複数の収納室に区画され、複数の前記収納室内には、前記袋体をそれぞれ収納し、
前記外カバーは、使用者の大腿部を支持する外カバー前部と、臀部を支持する外カバー後部から構成され、
前記外カバー前部は、第1の前記クッション構成部の袋体を収納する第1の前記収納室と、第2の前記クッション構成部の袋体を収納する第2の前記収納室とが、前記区画線によって、非収納室を挟んで区画され、
前記外カバー後部は、第3の前記クッション構成部の袋体の長辺側と、第4の前記クッション構成部の袋体の長辺側とを、前記外カバーの幅方向に対して並列にそれぞれ収納する、第3の前記収納室と、第4の前記収納室とが、前記区画線によって区画されることを特徴とするクッション。
【請求項2】
前記袋体は矩形状であることを特徴とする、請求項1に記載のクッション。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、クッションに関するものである。
【背景技術】
【0002】
褥瘡とは、皮膚の同じ部分への持続的な圧迫により、毛細血管が押しつぶされて血流が阻害され、皮膚組織が壊死する現象を言う。例えば、下半身麻痺や、立ち上がりや歩行などが自力では不安定なため、車椅子に長時間乗っていることが多い要介護者において、皮膚が要介護者の体重により、持続的な圧迫を受けた場合に生じる。
【0003】
ここで、身体全体に対する褥瘡を予防するためのマットなどに加えて、車椅子などを使用する要介護者などに対する、褥瘡防止のためのクッションが多数存在する。
【0004】
例えば、以下の特許文献1に記載の椅子用床ずれ防止クッションは、エアセルの給排気動作の自動調節などにより、身体の特定部分への連続的加圧を防ぐことで床ずれを防止しながらも、車椅子などへの移乗時の不安定さを解消することができる。特許文献2においては、交互に自動加圧された第1空気袋と第2空気袋により、空気袋ユニット全体における膨張箇所が変更され、使用者の臀部に加わる圧力が分散、及び移動することで褥瘡を防止する臀部褥瘡予防装置が開示されている。さらに、特許文献3においては、車椅子用ではないが、主に寝たきりの人を対象とした床ずれ防止マットが開示されている。当該特許文献3においては、手動操作によって膨らませることができるマットを二つ並べることで、身体の所望の箇所を浮かせたり、沈めたりできるようにして褥瘡の防止を図っている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2013−31710号公報
【特許文献2】特開2014−73359号公報
【特許文献3】特開2003−260089号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
特許文献1に記載の発明は、高さの異なるエアセルを椅子用床ずれ防止クッションに配置して、押圧力の度合差をつけている。このように押圧力の度合差をつけることにより、座った時に使用者の褥瘡が起こりやすい、仙骨部や座骨部分の荷重を分散させて、褥瘡の原因となる持続的な圧迫が起こらないようにしている。しかし、特許文献1の椅子用床ずれ防止クッションは4層構造であり、まず、ベースクッションの上に、上記エアセルが配置されているセルユニットが存在する。さらに、当該セルユニットの上にサイドクッションがあり、当該サイドクッションの上にカバークッションが存在し、使用者は当該カバークッション上に座る。したがって、エアセルの配置による押圧力の度合差が適切なものでなく、当該エアセルの配置を変更したい場合は、当該クッションを車椅子から取り外してセルユニットを取り出すために、使用者はいったん車椅子などから降りる必要がある。しかし、使用者に介護が必要な場合、車椅子から使用者を降ろし、再度車椅子に使用者を移乗させるという行為は、使用者、及び介護者の双方にとって大変な労力を要求するため、エアセルの配置をし直すたびに使用者、及び介護者の双方に大きな負担が生じることになる。
【0007】
また、特許文献1の椅子用床ずれ防止クッションは、制御部により、椅子用床ずれ防止クッションの第1のエアセルと第2のエアセルに空気を交互に給排し、自動的に、各エアセルの膨張状態を5秒程度維持させた後、所定時間だけ排気している。また、当該制御部より、第1のエアセル、及び第2のエアセルの両方とも、加圧が生じる刺激モードと、減圧が生じる体圧分散モードの秒数が自動的にそれぞれ決められている。したがって、使用者が椅子用床ずれ防止クッションに自ら空気を給排する必要がない。しかし、このように給排時間が制御部により決定されているため、特許文献1の椅子用床ずれ防止クッションの使用者は、自由に各エアセルの給排時間を調節して圧力を調整することができない。よって、例えば、使用者の体の褥瘡ができかかっている部分など、加圧し続けない方が良い部分を長めに加圧する可能性が存在する。また、特許文献1の椅子用床ずれ防止クッションは、多数のエアセルを有するなど構造も複雑であり、さらに制御部により、自動的に第1のエアセルと第2のエアセルへの空気の給排を行うため、比較的高額となる。また、特許文献1の椅子用床ずれ防止クッションは、リモコンのボタンを押すのみで操作できるため、手で握るといった行為により脳の活性化を図ることができず、老人性痴呆症の進行を招くことが考えられる。
【0008】
特許文献2の褥瘡予防装置は、第1空気袋と第2空気袋が交互に給気されて加圧状態となったときに、膨張する箇所が二次元角度上で45度の位相差を持つように吊り部が構成されている。したがって、第1空気袋と第2空気袋がそれぞれ交互に加圧状態となることで、それぞれの膨張箇所により、使用者の臀部が浮上し、また、使用者の仙骨部の周辺領域に加わる圧力分布が変化することで、臀部中心部、及び周辺部の褥瘡を防止している。更に、第1空気袋と第2空気袋を膨張時に使用者の臀部の形状に沿うように変形させることで、使用者の仙骨部の周辺領域に加わる圧力分布を変化させると同時に、座り心地も良くしている。しかし、特許文献2の褥瘡予防装置において、第1空気袋、及び第2空気袋は、制御部を有する自動給排気装置により、それぞれの空気袋の給排気サイクルが自動的に調節される。ここで、当該給排気サイクルの長さ自体を使用者が調整することはできるが、給排気サイクルの中での給気の時間と排気の時間を使用者が自由に調節することはできない。したがって、特許文献2の褥瘡予防装置においては、例えば、「給気時間はもう少し短くして、排気時間はもう少し長くしたい。」といった微妙な圧力の調整が難しい。
【0009】
特許文献3の床ずれ防止マットは、非通気性材からなるマットを独立して二基並べて連結させており、手動エアポンプによる空気の給排により当該マットを膨縮させることができる。したがって、上記特許文献1、及び特許文献2で記載されているように、自動で空気の給排が行われる場合と異なり、マットへの空気の給排による、加圧及び減圧が自在にできる。また、操作も容易である。しかし、マットに凹線が2本ずつ形成されているのみなので、例えば、車椅子の使用時に下半身において褥瘡になりやすい仙骨部分や左右の坐骨部分をカバーすることは難しい。
【0010】
本発明は上記実情に鑑みて提案されたもので、弾性体からなる袋体を、手動ポンプによって給排気を行うといった容易な操作により、圧力、及び加圧時間の自在な調整を可能とすることで、特に下半身の褥瘡を予防すると共に、手で握って操作することにより脳の活性化を図ることができ、更には低コストなクッションを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記目的を達成するために本発明のクッションは、チューブの一端側に接続された手動ポンプと、弾性体からなる袋体とを有し、前記チューブの他端側を前記袋体に接続して構成されるクッション構成部が複数存在し、外カバーは、区画線によって複数の収納室に区画され、複数の前記収納室内には、前記袋体をそれぞれ収納し、前記外カバーは、使用者の大腿部を支持する外カバー前部と、臀部を支持する外カバー後部から構成され、前記外カバー前部は、第1の前記クッション構成部の袋体を収納する第1の前記収納室と、第2の前記クッション構成部の袋体を収納する第2の前記収納室とが、前記区画線によって、非収納室を挟んで区画され、前記外カバー後部は、第3の前記クッション構成部の袋体の長辺側と、第4の前記クッション構成部の袋体の長辺側とを、前記外カバーの幅方向に対して並列にそれぞれ収納する、第3の前記収納室と、第4の前記収納室とが、前記区画線によって区画されることを特徴とする。
【0012】
また本発明は、前記袋体は矩形状であることを特徴とする。
【発明の効果】
【0014】
すなわち、チューブの一端側に接続された手動ポンプと、弾性体からなる袋体とを有し、前記チューブの他端側を前記袋体に接続して構成されるクッション構成部が複数存在し、外カバーは、区画線によって複数の収納室に区画され、複数の前記収納室内には、前記袋体をそれぞれ収納することを特徴とするため、使用者は弾性体からなる袋体を、座ったままで手動ポンプによって給排気を行うといった容易な操作により、クッションの圧力、及び加圧時間を自在に調整することが可能となる。したがって、褥瘡の原因となる「皮膚の同じ部分への持続的な圧迫」を軽減し、特に下半身の褥瘡を予防することができる。更に、手動ポンプのチューブ側の端部を、弾性体から成る袋体に接続した複数のクッション構成部をそれぞれ収納室に収納して車椅子用クッションを作成する、といった単純な構造、及び工程によりコストを削減することができる。また、手動ポンプを、使用者の手で握ったり離したりする行為によってクッションに給排気するため、当該行為により脳の活性化を図ることができる。更には、脳の活性化を図ることにより、老人性痴呆症の予防にもつながる。
【0015】
本発明において、前記袋体は矩形状であることを特徴とするため、単純な形体であることから、当該袋体作成のための時間が少なくて済む。従って、更にコストを削減することができる。
【0016】
本発明において、前記外カバーは、使用者の大腿部を支持する外カバー前部と、臀部を支持する外カバー後部から構成され、前記外カバー前部は、第1の前記クッション構成部の袋体を収納する第1の前記収納室と、第2の前記クッション構成部の袋体を収納する第2の前記収納室とが、前記区画線によって、前記非収納室を挟んで区画され、前記外カバー後部は、第3の前記クッション構成部の袋体の長辺側と、第4の前記クッション構成部の袋体の長辺側を、前記外カバーの幅方向に対して並列にそれぞれ収納する、第3の前記収納室と、第4の前記収納室とが、前記区画線によって区画されることを特徴とする。したがって、弾性体からなる袋体が、第1の前記収納室と、第2の前記収納室、及び非収納室によって、大腿部を支持し、第3の前記収納室と第4の前記収納室によって、臀部を支持するため、仙骨部分や座骨部分に対する圧力が調整しやすい。従って、特に座った時に褥瘡になりやすい、当該仙骨部分や坐骨部分の褥瘡を予防することができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
図1】本発明に係るクッションの平面図である。
図2】本発明に係るクッションを構成するクッション構成部の平面図である。
図3】本発明に係るクッションの第1の使用状態例を説明する説明図である。
図4】本発明に係るクッションの第2の使用状態例を説明する説明図である。
図5】本発明に係るクッションの第3の使用状態例を説明する説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、本発明に係る実施形態を図面とともに説明する。
【0019】
図1、及び図2に基づいて、本発明に係るクッション1、及びクッション構成部10について説明する。
【0020】
まず、図2では、手動ポンプ2のチューブ側の端部を弾性体から成る袋体3に接続したクッション構成部10が示されているが詳しくは後述する。
【0021】
図1において、クッション1は、第1のクッション構成部10aと、第2のクッション構成部10bと、第3のクッション構成部10cと、第4のクッション構成部10dとを備え、更に外カバー4を有する。
【0022】
図1の外カバー4は略正方形状であり、高さ47cm程度、幅47cm程度である。外カバー4は、使用者の大腿部を支持する外カバー前部8と、使用者の臀部を支持する外カバー後部9から構成される。ここで、クッション1の外カバー前部8側をクッション1の下方とする。一方、車椅子用クッション1の外カバー後部9側をクッション1の上方とする。なお、外カバー4の形状は、クッション1の使用者の臀部の形状に沿うように変形したものなどでもよい。
【0023】
また、外カバー4の材質は、特に限定されず、例えば綿などの天然素材や、ポリエステルやポリウレタンなどの合成繊維が挙げられる。あるいは外カバー4の表地には天然素材を用い、裏地には合成繊維を用いてもよい。ここで、ポリエステルやポリウレタンなどの、防水効果のある合成繊維を外カバー4の材質に用いることにより、クッション1の使用者が失禁した場合でも、外カバー4に収納されている第1のクッション構成部10a、第2のクッション構成部10b、第3のクッション構成部10c、及び第4のクッション構成部10dや、車椅子本体を汚しにくくなる。
【0024】
ここで、外カバー前部8と外カバー後部9は、外カバー4の上端から23.5cm程度下方位置においてクッション1の幅方向と平行に引かれている、区画線5aによりそれぞれ分断されている。なお、この区画線5aはミシン目で作成されており、以下全ての区画線5a乃至区画線5kについて同様である。
【0025】
外カバー前部8は、縦が約23.5cm、横幅が約47cmの大きさである。一方、外カバー後部9は、縦が約23.5cm、横幅が約47cmの大きさである。
【0026】
外カバー前部8には、上記区画線5aの左端から2.5cm程度右方向の位置から、外カバー4の下端まで略垂直状に下ろした区画線5cが存在する。また、上記区画線5aの左端から16.5cm程度右方向の位置から、外カバー4の下端まで略垂直状に下ろした、区画線5dが存在する。さらに、外カバー4の下端から0.2cm上方位置において、クッション1の幅方向と平行に引かれている、区画線5hが存在する。
【0027】
ここで、外カバー前部8においては、上記区画線5c、5a、5d、及び5hにより、第1の収納室6aを分断している。この第1の収納室6aには、第1のクッション構成部10aの弾性体から成る袋体3aが収納されている。
【0028】
また、外カバー前部8には、上記区画線5aの右端から2.5cm程度左方向の位置から、外カバー4の下端まで略垂直状に下ろした、区画線5fが存在する。更に、上記区画線5aの右端から17cm程度左方向の位置から、外カバー5の下端まで略垂直状に下ろした、区画線5eが存在する。
【0029】
ここで、外カバー前部8においては、上記区画線5e、5a、5f、5hにより、第2の収納室6bが分断されている。この第2の収納室6bには、クッション構成部10bの弾性体から成る袋体3bが収納されている。
【0030】
上記第1の収納室6aと、上記第2の収納室6bとが、クッション構成部10を収納していない非収納室7aを挟んでいる構造によって、クッション1の使用時に、第1のクッション構成部10aの弾性体から成る袋体3aを収納した、第1の収納室6aにより、使用者の右大腿部を支持することができる。同様に、クッション構成部10bの弾性体から成る袋体3bを収納した、第2の収納室6bにより使用者の左大腿部を支持することができる。さらに、上記非収納室7aのスペースにより、使用者は、右大腿部及び左大腿部をクッション1に適切に配置することができる。ゆえに、座った状態で大きな圧力がかかることから褥瘡になりやすい座骨部や仙骨部だけでなく、大腿部にも使用者の体重による圧力を分散させることが可能となる。そのため、使用者が座った時の座骨部分や仙骨部分への持続的な圧迫を軽減し、当該座骨部分や仙骨部分の褥瘡を防ぐことができる。
【0031】
更に、外カバー前部8には、上記区画線5aの左端から0.2cm程度右方向の位置から、外カバー4の下端まで略垂直状に下ろした区画線5bが存在する。同様に、上記区画線5aの右端から0.2cm程左方向の位置から、外カバー4の下端まで略垂直状に下ろした区画線5gが存在する。
【0032】
上記区画線5bのうち、区画線5aから約14.5cmの位置から、下方約5cmほどは縫合されていない状態になっている。なお、上記区画線5cのうち、区画線5aから約14.5cmの位置から、下方約5cmほどは区画線がなく、縫合されていない状態になっている。
【0033】
上記区画線5fのうち、区画線5aから約14.5cmの位置から、下方約5cmほどは区画線がなく、縫合されていない状態になっている。また、区画線5gのうち、区画線5aから約14.5cmの位置から、下方約5cmほどは縫合されていない状態になっている。
【0034】
したがって、第1のクッション構成部10aの手動ポンプ2aをチューブ部分と共に、第1の収納室6aから、区画線5b、及び5cの上記縫合されていない部分を通して外に出すことができる。同様に、第2のクッション構成部10bの手動ポンプ2bをチューブ部分と共に、第2の収納室6bから、区画線5g、及び5fの上記縫合されていない部分を通して外に出すことができる。
【0035】
したがって、クッション1の使用者は、第1のクッション構成部10aの手動ポンプ2aを用いて給排気を行うことにより、第1のクッション構成部10aの弾性体から成る袋体3aの圧力、及び加圧時間を自由に、かつ容易に調整することができる。同様に、クッション1の使用者は、第2のクッション構成部10bの手動ポンプ2bを用いて給排気を行うことにより、第2のクッション構成部10bの弾性体から成る袋体3bの圧力、及び加圧時間を自由に、かつ容易に調整することができる。したがって、クッション1の使用者の右大腿部の下面と左大腿部の下面にかかる圧力を自在に調節することができ、褥瘡の原因となる「皮膚の同じ部分への持続的な圧迫」を軽減することができる。
【0036】
また、使用者が手動ポンプ2a、及び2bを自らの手で握ったり離したりする行為によって車椅子用クッション1の給排気を行うため、当該行為により脳の活性化が図られ、脳の老化を防ぐことができる。したがって、クッション1の使用により、使用者が老人性痴呆症になることを予防することが可能となる。
【0037】
一方、外カバー後部9には、図1の外カバー4の上端から8.5cm程度下方位置において、クッション1の幅方向と平行に引かれている、ミシン目による区画線5kが存在する。
【0038】
一方、当該区画線5kの左端から0.2cm程度右方向の位置から、上記区画線5aにまで略垂直状に下ろした区画線5lが存在する。同様に、区画線5kの左端から23cm程度右方向の位置から、上記区画線5aに至るまで略垂直状に下ろした区画線5iが存在する。外カバー後部9においては、上記区画線5a、5l、5k、及び5iにより、第3の収納室6cを分断している。この第3の収納室6cには、第3のクッション構成部10cの弾性体から成る袋体3cが収納されている。
【0039】
同様に、当該区画線5kの右端から0.2cm程度左方向の位置から、区画線5aに至るまで略垂直状に下ろした区画線5jが存在する。外カバー後部9においては、上記区画線5a、5i、5k及び5jにより、第4の収納室6dを分断している。この第4の収納室6dには、クッション構成部10dの弾性体から成る袋体3dが収納されている。なお、上記第3の収納室6cと、上記第4の収納室6dの上部には、クッション構成部10が収納されていない非収納室7bが存在する。
【0040】
したがって、上記第3のクッション構成部10cの弾性体から成る袋体3cの長辺側と、第4のクッション構成部10dの弾性体から成る袋体3dの長辺側が、それぞれ第3の収納室6cと、第4の収納室6dにより、並列に収納されていることになる。よって、クッション1の使用時に、使用者の臀部を当該第3の収納室6cと第4の収納室6dにより支持することができる。したがって、下半身で褥瘡になりやすい座骨部や仙骨部に対する圧力を分散させて、当該座骨部分や仙骨部分に対する褥瘡を防ぐことができる。
【0041】
なお、区画線5kのうち、区画線5kの左端から約4cmの部分から、約6cmほど右側に渡っては区画線がなく、縫合されていない状態になっている。さらに、区画線5kのうち、区画線5kの右端から約4cmの部分から、約6cmほど左側に渡っては区画線がなく、縫合されていない状態になっている。
【0042】
したがって、クッション構成部10cの手動ポンプ2cを、第3の収納室6cから、区画線5kの左側の上記縫合されていない部分を通して外に出すことができる。同様に、クッション構成部10dの手動ポンプ2dを、第4の収納室6dから、区画線5k右側の上記縫合されていない部分を通して外に出すことができる。
【0043】
したがって、クッション1の使用者は、第3クッション構成部10cの手動ポンプ2cを用いて給排気を行うことにより、第3クッション構成部10cの弾性体から成る袋体3cの圧力、及び加圧時間を自由に、かつ容易に調整することができる。よって、当該弾性体から成る袋体3cを膨張させることにより、クッション1の使用者の臀部の右部分、特に、下半身で褥瘡が生じやすい仙骨部分の圧力を分散させて当該仙骨部分の褥瘡を防ぐことができる。
【0044】
同様に、クッション1の使用者は、第4クッション構成部10dの手動ポンプ2dを用いて給排気を行うことにより、第4クッション構成部10dの弾性体から成る袋体3dの圧力、及び加圧時間を自由に、かつ容易に調整することができる。よって、当該弾性体から成る袋体3dを膨張させることにより、クッション1の使用者の臀部の左部分、特に、下半身で褥瘡が生じやすい仙骨部分の圧力を分散させて当該仙骨部分の褥瘡を防ぐことができる。
【0045】
また、使用者が手動ポンプ2c、及び2dを自らの手で握ったり離したりする行為によってクッション1の給排気を行うため、当該行為により脳の活性化が図られ、脳の老化を防ぐことができる。したがって、クッション1の使用により、使用者が老人性痴呆症になることを予防することが可能となる。
【0046】
図2に基づいて、本発明に係るクッション構成部10について説明する。
【0047】
クッション構成部10は、手動ポンプ2のチューブ側の端部を弾性体から成る袋体3に、T字型のチューブコネクタ11を介して接続することによって構成される。
【0048】
ここで、手動ポンプ2には、ゴムなどでできた弾性体からなるボール体12と、ボール体12の後部に外気に連通する吸気口13が形成されている。ここで、ボール体12を手で握ると、ボール体12の中の空気は、ボール体12のチューブ部分を通って弾性体から成る袋体3に送られて、当該弾性体から成る袋体3を膨張させる。一方、手動ポンプ2のチューブ部分には、摘み14の操作で開閉できる排気通路(図示せず)が存在し、摘み14を回して排気通路が外気と連通すると、弾性体から成る袋体3の空気が外部に排気できる。
【0049】
なお、上部チューブコネクタ11はT字型で、ポリプロピレンなどのオレフィン系樹脂やホウケイ酸ガラスなどからできている。
【0050】
弾性体から成る袋体3は、ゴムなどの弾性体から形成される。したがって、車椅子用クッション1の使用時に弾性体から成る袋体3を膨張させた場合、当該弾性体から成る袋体3が、使用者の臀部や大腿部に広範囲にわたってフィットするため、使用者の体重による圧力を分散させやすくなる。また、使い心地も良くなる。
【0051】
弾性体から成る袋体3は略長方形状であるため、比較的容易に製造することができ、コストを低く抑えることができる。
【0052】
また、当該弾性体から成る袋体3は、高さ21cm程度、幅13cm程度である。さらに、当該弾性体から成る袋体3の厚さは0.4cm程度である。したがって、クッション構成部10の弾性体から成る袋体3に、手動ポンプ2により給気して膨張させて、クッション1を使用する場合でも、弾性体から成る袋体3に十分な厚みがあるため、使用者の体重による型崩れや破損などが生じない。
【0053】
ここで、弾性体から成る袋体3は、当該弾性体から成る袋体3の右端から11cm程度下方位置において、更に下方に6cm程度の切り込み15が入っている。手動ポンプ2のチューブ側の端部に、T字型のチューブコネクタ11を接続した後、この切り込み15に当該チューブコネクタ11部分を入れ、当該切り込み15を接着剤などで密閉することで、クッション構成部10が完成する。このように、クッション構成部10は作成が容易であるため、コストの削減になる。
【0054】
なお、図2の弾性体から成る袋体3の形状は略長方形状に限定されず、略円形状や、クッション1の使用者の臀部の形状に合わせて形成したものなどでも良い。
【0055】
図3に基づいて、本発明に係るクッション1の第1の使用形態について説明する。
【0056】
図3においては、クッション1の斜線部分によって、第1のクッション構成部10aの弾性体から成る袋体3aを収納した、第1の収納室6aと、第3のクッション構成部10cの弾性体から成る袋体3cを収納した、第3の収納室6cとが説明されている。また、図3においては、本発明に係るクッション1を車椅子用クッションとして用いている。
【0057】
ここで、第3の収納室6cに収納されている弾性体から成る袋体3cは、使用者16が手動ポンプ2cを用いて給気することにより膨張している。さらに、使用者16は、手動ポンプ2aを握って、第1の収納室6aに収納されている弾性体から成る袋体3aに給気することにより、弾性体から成る袋体3aを膨張させている。
【0058】
したがって、車椅子17の使用者16の右側の臀部の下面、及び右大腿部の下面がそれぞれ、膨張した弾性体から成る袋体3cと膨張した弾性体から成る袋体3aによって持ち上げられる。これにより、例えば、使用者16が側弯により脊椎が右に弯曲している場合、右座骨に大きな圧力がかかりやすいが、この右座骨にかかる圧力を、上記弾性体から成る袋体3cと上記弾性体から成る袋体3aによって分散して、座骨付近の褥瘡を予防することができる。さらに側弯により脊椎が右に弯曲している人の姿勢の傾きが、上記弾性体から成る袋体3cと上記弾性体から成る袋体3aによって矯正されるため、側弯を改善することができる。また、使用者16が、手動ポンプ2a、及び2cを手で握って給排気するため、側弯の程度に応じて、弾性体から成る袋体3a、及び3cの膨張の程度を容易に調節することができる。なお、図3においては、弾性体から成る袋体3aよりも、弾性体から成る袋体3cの方がより多く給気されており、膨張している。
【0059】
図4に基づいて、本発明に係るクッション1の第2の使用形態について説明する。
【0060】
図4においては、クッション1の斜線部分によって、第1のクッション構成部10aの弾性体から成る袋体3aを収納した、第1の収納室6aと、第2のクッション構成部10bの弾性体から成る袋体3bを収納した、第2の収納室6bとが説明されている。また、図4においては、本発明に係るクッション1を車椅子用クッションとして用いている。
【0061】
ここで、車椅子17の使用者16は、第1の収納室6aに収納されている弾性体から成る袋体3aを、手動ポンプ2aを握って給気することにより膨張させている。さらに、使用者16は、手動ポンプ2bを握って、第2の収納室6bに収納されている弾性体から成る袋体3bに給気することにより、弾性体から成る袋体3bを膨張させている。
【0062】
したがって、使用者16の右大腿部の下面、及び左大腿部の下面がそれぞれ、膨張した弾性体から成る袋体3aと膨張した弾性体から成る袋体3bによって持ち上げられる。
【0063】
ここで、猫背など、脊柱の変形が強い場合、車椅子の使用者の体幹が前方に倒れる傾向にある。そこで、車椅子の使用者の体幹が前方に倒れることを防止するために、当該使用者の臀部をシートの前方に滑らせて車椅子に座らせることにより、骨盤が後傾し、脊椎が後弯する、いわゆる「仙骨座り」が多く見られる。しかし、この「仙骨座り」により、車椅子の使用者の仙骨部分に圧力がかかり、当該仙骨部分の褥瘡が起こりやすくなる。そこで、上記膨張した弾性体から成る袋体3aと、上記膨張した弾性体から成る袋体3bによって使用者16の左右大腿部の下面が高くなるため、仙骨座りを避けることができ、仙骨部分の褥瘡を減少することができる。また、使用者16が、手動ポンプ2a、及び2bを手で握って給排気するため、「仙骨座り」の程度に応じて、弾性体から成る袋体3a、及び3cの膨張の程度を容易に調節することができる。
【0064】
図5に基づいて、本発明に係るクッション1の第3の使用形態について説明する。
【0065】
図5においては、クッション1の斜線部分によって、第4のクッション構成部10dの弾性体から成る袋体3dを収納した、第4の収納室6dが説明されている。なお、図5は、クッション1の使用者16を背後から見た図となっている。
【0066】
使用者16は、手動ポンプ2dを握って、第4の収納室6dに収納されている弾性体から成る袋体3dに給気することにより、弾性体から成る袋体3dを膨張させている。
【0067】
したがって、車椅子17の使用者16の左側の臀部の下面が、膨張した弾性体から成る袋体3dによって持ち上げられる。したがって、例えば、座った姿勢が不安定で左側の臀部に圧力がかかる場合、膨張した上記弾性体から成る袋体3dが、使用者16の左側の臀部にフィットすることによって、左側の臀部の圧力を分散させることができる。よって、左側の臀部部分の褥瘡を防ぐことができる。また、使用者16が手動ポンプ2dを手で握って給気するため、座った姿勢の傾きの程度に応じて、弾性体から成る袋体3dの膨張の程度を容易に調節することができる。
【0068】
本発明のクッション1は、第1の収納室6a、第2の収納室6b、第3の収納室6c、及び第4の収納室6dという様に、クッション構成部10の弾性体から成る袋体3を収納する場所が4か所存在する。したがって、使用者16の左右の臀部の下面における圧力と、左右の大腿部の下面における圧力を、例えば側弯の方向など、使用者16の体の状態に応じてそれぞれ的確に調節することができる。
【0069】
なお、上記実施形態1乃至実施形態3のいずれの場合においても、使用者16が手動ポンプ2を手で握って給気するため、手で手動ポンプ2を握るという行為により、脳の活性化も図ることができる。ひいては、このように脳の活性化を図ることにより脳の老化を防ぐことができ、クッション1の使用者16が老人性痴呆症になることを予防することが可能となる。また、機械の操作が不得手な老人などであっても、手動ポンプ2を握るだけで容易に弾性体から成る袋体3に給気し、膨張の程度、及び加圧時間を自由自在に調節することができる。さらに、使用者16は座ったまま弾性体から成る袋体3の圧力を調整することができるため、クッション1の圧力の調整のために車椅子などから降りたり、再度移乗するといった負担を、使用者16及び介護者の双方が負わなくてすむ。
【0070】
以上、本発明に係る実施形態について説明したが、本発明はかかる実施形態に限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲で種々なる態様で実施し得ることはもちろんである。例えば、第1の収納室6a、第2の収納室6b、第3の収納室6c、及び第4の収納室6dの収納口を大きくして、容易に第1のクッション構成部10a、第2のクッション構成部10b、第3のクッション構成部10c、及び第4のクッション構成部10dの収納及び取り外しができるようにする。さらに、当該収納口はチャックやマジックテープ(登録商標)によって開閉できるようにすることで、外カバー4の洗濯が可能となる。
【0071】
また、クッション構成部2の手動ポンプ2部分を取り外し可能にすることで、車椅子用クッション1の使用時に、手動ポンプ2部分が車椅子の操作を妨げるようなことがなくなる。
【0072】
本発明のクッション1は、使用者16の臀部と大腿部部分を支持するために作られているが、例えば、使用者16の背中部分など、使用者16の臀部と大腿部以外の部分を支持するように形成することもできる。
【0073】
本発明のクッション1は、車椅子や椅子などに座っている時に使用するだけでなく、布団など、シート類の上に置いて使用することもできる。例えば、当該シート類の上で使用者が横になっている時に、使用者の臀部と大腿部部分の下面にクッション1を置くことにより、就寝時などにも下半身の褥瘡を防ぐことができる。さらに、シート類の広範囲、あるいは全面に渡ってクッション1を置くことができるようにクッション1を形成することにより、使用者の横臥時において、下半身だけでなく、全身の褥瘡も防ぐことができる。
【符号の説明】
【0074】
1 クッション
2、2a、2b、2c、2d 手動ポンプ
3、3a、3b、3c、3d 弾性体から成る袋体
4 外カバー
5a、5b、5c、5d、5e、5f、5g、5h、5i、5j、5k 区画線
6a 第1の収納室
6b 第2の収納室
6c 第3の収納室
6d 第4の収納室
7a、7b 非収納室
8 外カバー前部
9 外カバー後部
10 クッション構成部
10a 第1のクッション構成部
10b 第2のクッション構成部
10c 第3のクッション構成部
10d 第4のクッション構成部
11 チューブコネクタ
12 ボール体
13 吸気口
14 摘み
15 切り込み
16 使用者
17 車椅子
図1
図2
図3
図4
図5