(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6245721
(24)【登録日】2017年11月24日
(45)【発行日】2017年12月13日
(54)【発明の名称】エアコン吸気口用フィルター
(51)【国際特許分類】
B01D 46/10 20060101AFI20171204BHJP
F24F 13/28 20060101ALI20171204BHJP
【FI】
B01D46/10 B
F24F1/00 371A
【請求項の数】7
【全頁数】11
(21)【出願番号】特願2012-18758(P2012-18758)
(22)【出願日】2012年1月31日
(65)【公開番号】特開2013-154325(P2013-154325A)
(43)【公開日】2013年8月15日
【審査請求日】2014年12月28日
【審判番号】不服2016-16456(P2016-16456/J1)
【審判請求日】2016年11月2日
(73)【特許権者】
【識別番号】000222141
【氏名又は名称】東洋アルミエコープロダクツ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100105821
【弁理士】
【氏名又は名称】藤井 淳
(72)【発明者】
【氏名】足立 将司
(72)【発明者】
【氏名】山岸 拓人
【合議体】
【審判長】
大橋 賢一
【審判官】
三崎 仁
【審判官】
永田 史泰
(56)【参考文献】
【文献】
特開2002−085927(JP,A)
【文献】
特開2009−209320(JP,A)
【文献】
特開2000−256638(JP,A)
【文献】
特開2001−123145(JP,A)
【文献】
特開2006−182795(JP,A)
【文献】
国際公開第2010/137699(WO,A1)
【文献】
特開2006−124693(JP,A)
【文献】
特開2001−192636(JP,A)
【文献】
特開2003−221570(JP,A)
【文献】
重森一範他「中粘着力と再剥離性を両立するウレタン粘着剤の調整と物性」日本接着学会誌Vol.38、No.10(2002)、364ー371頁
【文献】
大槻司他「粘着用ウレタン樹脂の開発と応用」日本接着学会誌Vol.36、No.6(2000)、231ー235頁
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B01D46/00-46/54, C01J1/00-201/10
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
エアコンディショナーの吸気口を覆うプラチックス製カバーに貼り付けて使用するフィルターであって、
(1)前記フィルターは、不織布及びその不織布の一方面の全面又は一部に形成された粘着剤層を含み、
(2)前記粘着剤層は、主剤及び硬化剤を含む2液混合型ポリウレタン系粘着剤により形成されており、
(3)前記主剤は、重量平均分子量が15000〜25000のポリウレタンポリオールを主剤中95〜100重量%含み、
(4)前記硬化剤は、脂肪族系多官能イソシアネートであって、前記主剤100重量部に対して6〜8重量部含まれる、
ことを特徴とするエアコン吸気口用フィルター。
【請求項2】
粘着剤が、主剤100重量部に対して紫外線吸収剤0.25〜0.5重量部をさらに含む、請求項1に記載のエアコン吸気口用フィルター。
【請求項3】
不織布が、厚み1.0〜2.0mm及び目付け20〜50g/m2である、請求項1又は2に記載のエアコン吸気口用フィルター。
【請求項4】
粘着剤層の厚みが100〜300μmである、請求項1〜3のいずれかに記載のエアコン吸気口用フィルター。
【請求項5】
カバーの表面が樹脂コーティング又は梨地加工されている、請求項1〜4のいずれかに記載のエアコン吸気口用フィルター。
【請求項6】
不織布に対する粘着剤層の面積割合が10〜30%である、請求項1〜5のいずれかに記載の吸気口用フィルター。
【請求項7】
粘着剤層上にさらに剥離シートが積層されている、請求項1〜6のいずれかに記載のエアコン吸気口用フィルター。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、エアコンディショナーの吸気口に貼り付けるフィルターに関する。
に関する。
【背景技術】
【0002】
エアコンディショナーでは、その吸気口から室内の空気を装置内に吸気し、その空気を装置内の熱交換器に接触させることによって、空気の冷却又は加熱が行われる。この装置内には、空気中のホコリ等を除去するためのフィルターが設置されているが、フィルターの洗浄等の煩わしさを緩和するため、エアコンディショナーの吸気口を覆うプラスチックス製カバーには前記フィルターとは別に吸気口用フィルターを設ける方法が提案されている。このような吸気口用フィルターは、不織布の一方面に弱粘着性の粘着剤層を形成し、粘着剤層を介して吸気口に取付けられるようにしたものがほとんどである。例えば、対象物を貼着して通過する気体をろ過するためのフィルターであって、シート状の不織布と、前記不織布の一方面であって前記不織布の外周縁においてその一部のみに塗布された粘着剤とを備えたフィルターが知られている(特許文献1)。
【0003】
このようなエアコンディショナー用フィルターでは、不織布の一方の面にアクリル系粘着剤を塗布したものが一般的に使われている。近年では、換気扇フィルター等の貼着フィルターでは、ポリウレタン系粘着剤が使われるようになっている。ポリウレタン系粘着剤は、糊残り又は貼着耐久性の面において、アクリル系粘着剤よりも優れた性能を発揮することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2002−85927
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、エアコンディショナーの吸気口を覆うプラスチックス製カバーは、意匠性を向上させるために、特殊な塗装を施したり、梨地加工を行っているため、表面部がカバーと異なる材質から構成されることがあるため、通常のポリウレタン系粘着剤では対応できなくなっている。すなわち、このような異なる材質からなる表面部を有するプラスチック製カバーに対し、上述のようなポリウレタン系粘着剤でフィルターを貼着しても所望の粘着性が得られないため、吸気口用フィルターが脱落することがある。この場合、吸気口用フィルターが脱落しないように粘着力を強化する方法も考えられるが、粘着力を強くすると使用済みのフィルターを取り除く際にカバーの表面の塗装が剥がれ落ちたり、吸気口用フィルターの粘着剤が残る現象(糊残り)が生じる。
【0006】
従って、本発明の主な目的は、フィルターの脱落を防止するとともに使用後のフィルター剥離時における糊残りが低減ないしは解消できる吸気口用フィルターを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者は、種々の市販の2液混合型ポリウレタン系粘着剤について研究・実験を重ねたところ、メーカー指定の割合で硬化剤を主剤に混合した上で不織布に適用しても糊残りは改善しないことが判明した。この原因は、不織布のように表面に凹凸を有するような材料に対しては、印刷機、コーター等で粘着剤層を形成する過程で、均一かつ平滑な表面を有する塗工膜を不織布表面に形成できない結果、被貼付体であるカバーから不織布から脱落しやすいものになっていることを突き止めた。
【0008】
そこで、本発明者は、特定の分子量をもつポリウレタンポリオールに対して特定割合で硬化剤を主剤に配合してなる2液混合型ポリウレタン系粘着剤を不織布に適用することにより、上記目的を達成できることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0009】
すなわち、本発明は、下記のエアコン吸気口用フィルターに係る。
1. エアコンディショナーの吸気口を覆う
プラチックス製カバーに貼り付けて使用するフィルターであって、
(1)前記フィルターは、不織布及びその不織布の一方面の全面又は一部に形成された粘着剤層を含み、
(2)前記粘着剤層は、主剤及び硬化剤を含む2液混合型ポリウレタン系粘着剤により形成されており、
(3)前記主剤は、
重量平均分子量が15000〜25000のポリウレタンポリオールを
主剤中95〜100重量%含み、
(4)前記硬化剤は、
脂肪族系多官能イソシアネートであって、前記主剤100重量部に対して6〜8重量部含まれる、
ことを特徴とするエアコン吸気口用フィルター。
2. 粘着剤が、主剤100重量部に対して紫外線吸収剤0.25〜0.5重量部をさらに含む、前記項1に記載のエアコン吸気口用フィルター。
3. 不織布が、厚み1.0〜2.0mm及び目付け20〜50g/m
2である、前記項1又は2に記載のエアコン吸気口用フィルター。
4. 粘着剤層の厚みが100〜300μmである、前記項1〜3のいずれかに記載のエアコン吸気口用フィルター。
5. カバーの表面が樹脂コーティング又は梨地加工されている、前記項1〜4のいずれかに記載のエアコン吸気口用フィルター。
6. 不織布に対する粘着剤層の面積割合が10〜30%である、前記項1〜5のいずれかに記載の吸気口用フィルター。
7. 粘着剤層上にさらに剥離シートが積層されている、前記項1〜6のいずれかに記載のエアコン吸気口用フィルター。
【発明の効果】
【0010】
本発明のエアコン吸気口用フィルターによれば、所定の分子量を有するポリウレタンポリオールとともに特定量の硬化剤を含む2液混合型ポリウレタン系粘着剤を不織布に適用していることから、当該粘着剤をエアコンの吸気口に貼着した場合は、所定の粘着力が得られ、エアコンからのフィルターの脱落をより効果的に抑制ないしは防止できる一方、フィルターの取り外し時には糊残りの問題も解消することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【
図1】本発明フィルターをエアコンに適用した状態を示す概略図である。
【
図2】
図1で示したフィルターの取付け前の展開状態を示す平面図である。
【
図3】
図2で示したフィルターの一部を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
本発明のエアコン吸気口用フィルターは、エアコンディショナーの吸気口を覆うカバーに貼り付けて使用するフィルターであって、
(1)前記フィルターは、不織布及びその不織布の一方面の全面又は一部に形成された粘着剤層を含み、
(2)前記粘着剤層は、主剤及び硬化剤を含む2液混合型ポリウレタン系粘着剤により形成されており、
(3)前記主剤は、分子量が15000〜25000のポリウレタンポリオールを含み、
(4)前記硬化剤は、前記主剤100重量部に対して6〜8重量部含まれる、ことを特徴とする。
【0013】
本発明のエアコン吸気口用フィルター(本発明フィルター)は、エアコンディショナーの吸気口を覆うカバーに適用することができる。
図1には、エアコンディショナー(家庭用エアコン)に本発明フィルターを適用した例を示す。この家庭用エアコン20では、1)エアコン20のカバー前面21には室内の空気を吸込むための空気吸入口22及び2)吸込まれた空気を冷却又は加温した後に室内に吹出すための空気吐出口23を有する。また、
図1に示すように、エアコン20には、必要に応じて3)室内の温度を検知して吹出し温度を制御するための温度センサー24が取付けられていても良い。また、空気吸入口22は、一般にエアコン20の幅方向に平行に伸びる複数の桟によって構成されている。
【0014】
そして、
図1では、本発明フィルター15はエアコン20のカバー前面21及びカバー上面25に取付けられている。本発明では、吸気口を覆うカバーの全面又はその一部に本発明フィルターを貼り付けることができる。特に、吸気口を覆うカバーの全面に本発明フィルターを貼り付けることが望ましい。
【0015】
本発明フィルターで使用される不織布そのものは、公知又は市販のものを使用することができる。すなわち、天然繊維、合成繊維、これらの混合物からなる不織布をいずれも使用することができるが、例えばポリエステル繊維、ポリアミド繊維、ポリイミド繊維等の合成繊維製不織布を好適に使用することができる。従って、例えばポリエチレンテレフタレート(PET)繊維からなる不織布も好適に使用することができる。不織布の製造方法も限定的でなく、例えばサーマルボンド法等の公知の製法によって製造された不織布を好適に用いることができる。
【0016】
また、前記不織布の厚みは限定的ではないが、厚みは例えば1.0〜2.0mm、特に1.2〜1.5mmであることが好ましい。また、不織布の目付けは、特に制限されず、例えば20〜50g/m
2、特に30〜40g/m
2であることが好ましい。
【0017】
本発明フィルターは、不織布及びその不織布の一方面の全面又は一部に形成された粘着剤層を含む。例えば、
図2には、
図1で示した本発明フィルターを取り付ける前の展開状態を示す。
図3にはそのフィルターの平面図の一部を示し、そのIV−IV断面図を
図4に示す。吸気口用フィルター15は、粘着剤層32が不織布35の一方の面の一部に形成されている。より具体的には、粘着剤層32が不織布35に対してストライプ状に形成されている。本発明では、粘着剤層が不織布の一方の面の全面に形成されていても良いし、前記のように一部に形成されていても良い。さらに、不織布の片面の一部に粘着剤層を形成する場合は、
図2及び
図3のようにストライプ状に形成しても良いし、その他にも格子状、散点状、絵柄模様等のいずれの形態であっても良い。特に、不織布の片面の一部に粘着剤層を形成する場合、粘着剤の塗布面積を大きくすると、被貼付体(カバー)からフィルターが剥がれにくくなり、フィルターの保持力は向上するが、粘着剤の塗布部分は通気性がないために通気性を損うことがある。従って、吸気口フィルターとしてより効果的に機能させるためには、フィルターの不織布の貼着面側の面積に占める粘着剤の塗布部分の面積割合は通常10〜30%程度、特に15〜20%とすることが望ましい。
【0018】
また、本発明フィルターは、粘着剤層上の剥離紙等の剥離シートを積層していても良い。例えば、
図2のフィルターでは、
図4に示すように使用前には粘着剤層32上に剥離紙37が積層されている。そして、使用時には、剥離紙37を粘着剤層32から剥がしてエアコンのカバーに貼着する。この際、粘着剤層32の端部側の位置が内方に距離L2の位置に形成されていると、その端部まで粘着剤層32が形成されているのに比べて剥離紙37がより剥がし易くなる。この剥離紙37の剥がし易さは、粘着剤層32の形成方向の端部におけるフィルター15の上辺16及び下辺17の位置においても同様である。
【0019】
本発明フィルターでは、粘着剤層が、主剤及び硬化剤を含む2液混合型ポリウレタン系粘着剤により形成されている。前記粘着剤における主剤としては、主成分として分子量15000〜25000(好ましくは18000〜23000)であるポリウレタンポリオールを含む。本明細書では、分子量は、すべて重量平均分子量を示す。分子量の測定方法は、島津製作所製「Prominence」を用いて実施した(カラム:TOSOH製 TSKgelGMHx2本連結、検出器:RID−10A、溶媒:THF、流速;1ml/分)。
【0020】
ポリウレタンポリオールは、ポリエステルポリオールと、ポリエーテルポリオールとを、触媒存在下又は無触媒で有機ポリイソシアネ−ト化合物と反応させてなるものであり、それ自体公知又は市販のものを使用することができる。
【0021】
主剤中におけるポリウレタンポリオールの割合は、通常95重量%以上とし、さらには99重量%以上とする。従って、主剤中のポリウレタンポリオールの割合は100重量%であっても良い。
【0022】
前記硬化剤としては、例えば脂肪族系多官能イソシアネート等を好適に用いることができる。本発明において、硬化剤は、前記主剤100重量部に対して6〜8重量部とする。このように、本発明では、特定の分子量をもつポリウレタンポリオールを含み、なおかつ、特定量の硬化剤を含む粘着剤を使用することによって、糊残りの問題及びフィルター脱落の問題を一挙に解決することが可能となる。
【0023】
上記のような2液混合型ポリウレタン系粘着剤で使用する主剤及び硬化剤そのものは、公知又は市販のものを使用することもできる。市販品としては、例えば主剤として製品名「サイアバインSH−101」(東洋インキ(株)製)と、硬化剤として製品名「サイアバインT−501」との組み合わせを好適に用いることができる。
【0024】
本発明では、本発明の効果を妨げない範囲内において、必要に応じて2液混合型ポリウレタン系粘着剤中に他の添加剤が含まれていても良い。例えば、紫外線吸収剤、充填剤、着色剤、酸化防止剤、消泡剤、光安定剤等の添加剤が挙げられる。特に、本発明では、紫外線吸収剤が含まれていることが望ましい。紫外線吸収剤の添加量は、所望の特性に応じて適宜設定することができるが、例えば主剤100重量部に対して0.25〜0.5重量部添加することができる。
【0025】
さらに、粘着剤(主剤又は硬化剤)は、必要に応じて溶媒で適宜希釈することができる。例えば、酢酸エチル等の有機溶剤を使用することができる。この場合の希釈率は限定的ではなく、例えば主剤100重量部に対して1〜30重量部の溶媒を配合することにより希釈することができる。
【0026】
粘着剤層の形成は、公知の方法を採用すれば良く、例えば粘着剤を不織布に塗布することにより塗膜を形成した後、前記塗膜を乾燥(固化)させる方法を採用することができる。塗布方法も限定的でなく、例えばローラー、スプレー、刷毛、印刷等によって実施することができる。この場合、公知の装置を使用することができ、例えばロールコーター法、コンマコーター法、ダイコーター法、リバースコーター法、シルクスクリーン法、グラビアコーター法等をいずれも採用することができる。また、塗膜を固化させる方法は、加熱による方法、紫外線による方法等のいずれも採用することができるが、特に加熱による方法を好ましく採用することができる。この場合の加熱温度は、所望の粘着剤層を形成できれば特に限定されないが、通常は120〜140℃、特に125〜130℃の範囲が好ましい。
【0027】
粘着剤層(固化後)の厚みは、所望の粘着性等に応じて適宜設定することができるが、通常は100〜300μm、特に180〜230μmとすることが好ましい。
【0028】
本発明フィルターは、公知のエアコン吸気口用フィルターと同様の方法によって使用することができる。すなわち、エアコンの吸気口を覆うカバー表面上に本発明フィルターの粘着剤層を当接することにより貼着すれば良い。また、必要に応じて、本発明フィルターをカバーのサイズに合致させるために、本発明フィルターを裁断しても良い。本発明フィルターを適用するエアコンは、吸気口を覆うカバーを有するものであれば良く、例えば家庭用、業務用等のいずれであっても良い。カバーの材質も特に限定されないが、例えばABS、PS(ポリスチレン)等の合成樹脂が好適である。
【実施例】
【0029】
以下に実施例及び比較例を示し、本発明の特徴をより具体的に説明する。ただし、本発明の範囲は、実施例に限定されない。
【0030】
実施例1〜7及び比較例1〜7
(1)2液混合型ポリウレタン系粘着剤の調製
表1には、本実施例で用いた市販のポリウレタンポリオールA〜Eの主剤の平均分子量の測定結果を示す。これらのポリウレタンポリオールを表2に示すように市販の脂肪族系多官能イソシアネート系硬化剤と所定の割合で混合し、さらに酢酸エチルで5〜20重量部希釈することによって2液混合型ポリウレタン系粘着剤をそれぞれ調製した。硬化剤としては、製品名「サイアバインT−501」を使用した。
【0031】
【表1】
【0032】
【表2】
【0033】
(2)粘着加工
フィルターに用いる不織布として、市販の不織布(目付け35g/m
2、厚み1.2mm±10%(メーカー公称値))を準備した。ポリウレタン系粘着剤は、不織布に対して幅5mmの粘着剤層が30mm間隔の格子状になるように印刷機で塗工した。このようにして得られたフィルターにおいて、不織布に対する粘着剤層が占める面積割合は全体の17.7%であった。粘着剤の乾燥条件としては、全長10mの乾燥炉の中を125〜130℃、18〜25m/分の速さで通過させることにより乾燥させた。得られた粘着剤層(乾燥後)の厚みは、200μm±20μmの範囲にあった。
【0034】
試験例1
実施例及び比較例で得られた各フィルターを基材(市販のエアコンのカバー等)に取り付けて脱落の有無及び糊残りの有無をそれぞれ調べた。その結果を表2に示す。
【0035】
(1)フィルター脱落の有無
ABS板(表面粗度:鏡面)、PS(ポリスチレン)板(表面粗度:鏡面)及び東芝製エアコン木かげのカバー(表面クリヤー塗装品、表面粗度:鏡面)に各フィルター(4cm×11cm)を貼り付け、垂直に立掛け、室温(平均25℃)及び湿度75%(エアコンは除く。)で3ヶ月静置し、脱落の有無を確認した。なお、貼り付け(圧着)は、ローラーで圧力2kg/cm
2にて1往復させる方式で実施した。得られたサンプルについてフィルター脱落の有無を調べた。全く脱落が認められなかった場合を「○」と評価し、一部に剥離はあるものの、脱落しなかった場合を「△」と評価し、脱落した場合を「×」と評価した。
【0036】
(2)糊残りの有無
被着体として試験例1と同じABS板、PS板及び東芝製エアコンディショナー:木かげ(表面クリヤー塗装品)に各フィルター(4cm×11cm)を貼り付け、室温(平均25℃)及び40℃で湿度75%の恒湿恒温炉に3ヶ月間保持した。その後にフィルターを被着体より剥がした際に、被着体に視認できる糊残りが全く無い場合を「○」と評価し、影響の無い程度にわずかに残っている場合を「△」と評価し、糊残りが視認でき、残った糊を拭き取る等の処置をしないと新たにフィルターを貼り付けできない状態を「×」と評価した。
【0037】
表2の結果からも明らかなように、硬化剤の含有量については、主剤100重量部に対して6.0重量部から8.0重量部の範囲において、被貼付体に対する糊残り性の問題ない上、フィルターの脱落の問題もないことがわかる。特に、硬化剤の含有量を8.0重量部とした場合が最も優れた効果が認められた。次に、ポリウレタンポリオールの分子量についてみると、ポリウレタンポリオールの分子量は20000〜25000が特に優れた効果があることが確認された。粘着力を上げる目的で実施した低分子量(10000〜15000)のポリウレタンポリオールでは、硬化剤を削減できると考えたが、糊残りの問題を解決できなかった。また、糊残りの問題を解決する目的で、分子量(25000〜30000)の第1液に対して、硬化剤を減らした粘着剤については、塗工性が悪く、フィルターの脱落も認められた。
【0038】
ちなみに、ポリウレタンポリオールC(分子量20000)に対する硬化剤のメーカー指定の配合割合は4重量部である。ところが、表2の比較例7に示すように、4重量部の配合割合では、糊残りが生じることがわかる。このことは、メーカーが推奨する配合割合の適正値は、不織布に対するものではないことが起因しているものと考えられる。
【0039】
このため、本発明の目的を達成するために、メーカー指定の配合割合とは別に、硬化剤量を検討し、配合割合をメーカー指定から外れる6〜8重量部にあえて設定したところ、エアコンディショナー用フィルターとして必要な粘着力が得られるとともに、糊残りは認められないという所望の結果を得ることができ、このような粘着剤がによりエアコンディショナーに適したフィルターを得ることができた。すなわち、表2の「評価」の欄にも示すように、比較例のフィルターは実用上問題があった(×)のに対し、実施例のフィルターは実用性の高いもの(○)が得られた。