(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0044】
以下、本発明に係る照明装置の各種実施形態について、図面を参照して詳細に説明する。
【0045】
本発明に係る各実施形態の照明装置は、いずれも旅客機の機体内に配置される機内部材に設置されている。そこで、まず、
図1を用いて、照明装置が設置される旅客機の客室の簡単な構成について、
図1を用いて説明する。
【0046】
客室は、床材61、天井材63、側壁材65、窓70、この窓70の周囲を覆う機内側窓枠材71で、この客室が画定されている。この客室内には、床材61上に設置されている座席装置80と、この座席装置80上方の天井に設置されている荷棚90とが配置されている。以上の床材61、天井材63、側壁材65、機内側窓枠材71、座席装置80、荷棚90は、いずれも前述の機内部材を成している。
【0047】
座席装置80は、2つの座席81と、これらの座席81を支持する支持体と、を有している。各座席81は、いずれも、乗客の臀部が載る座部82と、この乗客の背が凭れる背凭れ部83と、この乗客の腕が載る肘掛部85と、を有している。支持体87は、2つの座席81の各座部82の下部に配置されている座部支持梁88aと、この座部支持梁88aの両端に設けられている脚89と、脚89相互の連結する脚連結梁88bと、を有している。
【0048】
客室内には、旅客機の左右方向で、間隔をあけて2つの座席装置80が並んでいる。さらに、客室内には、左右方向で間隔をあけて並んでいる2つ座席装置80の組が旅客機の前後方向に並んでいる。床材61上であって、左右方向に並んでいる2つの座席装置80の間は、客室通路61pを成している。
【0049】
荷棚90は、左右方向に並んでいる2つの座席装置80のそれぞれの上に配置されている。荷棚90は、通路側を開口92とする棚本体91と、この棚本体91の開口92を塞ぐ蓋93と、を有している。
【0050】
「第一実施形態」
本発明に係る第一実施形態の照明装置について、
図1〜
図5を用いて説明する。
【0051】
本実施形態の照明装置は、
図4に示すように、有機EL照明パネル10と、制御装置35からの指示に従って、この有機EL照明パネル10を駆動するパネル駆動回路30と、を備えている。
【0052】
有機EL照明パネル10は、複数の発光ユニット11と、複数の発光ユニット11の相互間に配置されている電荷発生層15と、発光ユニット11と電荷発生層15とを有して構成される積層体16にパネル駆動回路30からの電力を供給する一対の電極(正極17aと負極17b)と、正極17aの負極側と反対側に配置されている透明基板18と、負負極17bの正極側とは反対側に配置されている封止基板18bと、封止基板18bの正極側とは反対側に配置されている放熱板19と、積層体16及び電極17a,17bの外周をシールするシール材21と、を有している。
【0053】
発光ユニット11は、蛍光性有機材料や燐光性有機材料等を含む発光層12と、正孔を輸送するホール輸送層13と、電子を輸送する電子輸送層14と、を有している。これらの複数の層12,13,14は、前述の積層体16の積層方向に積層されている。なお、ここでは、発光層12と電子輸送層14とホール輸送層13とで発光ユニット11を構成しているが、本発明ではこれに限定されない。例えば、発光ユニットを、ホール輸送層と発光層とで構成しても、ホール注入層とホール輸送層と発光層と電子輸送層とで構成しても、ホール注入層とホール輸送層と発光層と電子輸送層と電子注入層とで構成してもよい。
【0054】
正極17aは、例えば、ITO(Indium Tin Oxide)等で形成されている透明電極である。また、負極17bは、AgやAl等で形成されている反射電極である。放熱板19は、その表面が絶縁加工されたAl板等で形成されている。透明基板18は、透明なガラス板やプラスチック板等で形成されている。封止基板18bは、積層体16及び電極17a,17bの積層方向における負極17b側を封止するためのキャップとして機能し、ガラス板やプラチック板等で形成されている。積層体16の積層方向において、この封止基板18bと負極17bと間には、若干の隙間が確保されている。この隙間には、吸湿剤が充填されている。なお、この隙間には、吸湿剤の替りに、例えば、窒素等の不活性ガスやシリコーンオイル等を充填してもよい。
【0055】
シール材21は、積層体16が外部の酸素や水分による劣化を防ぐために設けられるものである。このシール材21は、例えば、積層体16及び電極17a,17bの外周側にであって透明基板18と封止基板18bとの間に配置され、両基板18,18bを貼り合せている。
【0056】
本実施形態では、複数の発光ユニット11と、複数の発光ユニット11の相互間に配置されている電荷発生層15とを有するマルチフォトエミッション(MPE)構造を採用している。有機EL照明パネルとしては、1つの発光ユニット11でも成立する。しかしながら、ここでは、旅客機の照明装置として、信頼性を高めると共に、長寿命化及び省電力化を図るために、MPE構造を採用している。
【0057】
MPE構造における複数の発光ユニット11の発光層12は、各発光ユニット11で同一である必要性なく、赤色発光の発光層12と緑色発光の発光層12と青色発光の発光層12の組み合わせや、オレンジ色発光の発光層12と青色発光の発光層12との組み合わせ等でもよく、これらの組み合わせによる光の混色作用によって、全体として白色等に発光する。また、1つの発光ユニット11に、赤色、緑色、青色のうち2つの発光層12を設け、もう1つの発光ユニット11に、残りの色の発光層12を設け、両者の発光ユニット11の組み合わせによって、白色発光を実現してもよい。さらに、1つの発光ユニット11に、赤色、緑色、青色の発光層12を設け、ユニット単体で白色発光を実現し、これらの発光ユニット11を複数個組み合わせて積構体を構成してもよい。
【0058】
発光ユニット11を構成する各層の材料は、逐次、新しいものが開発されている。このため、発光ユニット11を構成する各層の材料として、公知のものを適宜選択して使用してよい。また、発光層12の有機材料は、低分子系または高分子系のいずれであってもよい。なお、発光層12の有機材料として、燐光性有機材料を使用すれば、蛍光性有機材料の4倍の発光効率を得ることが可能である。
【0059】
電荷発生層15としては、例えば、1.0×10
2Ω・cm以上の比抵抗を有する電気的絶縁層、又は1.0×10
2Ω・cm以下の半導体層や導電体層が用いられる。この電荷発生層15は、一つの層、または複数の層から構成されており、各々の層は単一の有機材料、または無機系酸化物(酸化モリブデン、酸化バナジウムなど)、あるいはそれらの混合体等で形成される。電荷発生層15は、n型有機材料がドープされた有機層とp型有機材料がドープされた有機層の積層構造であってもよい。さらには、n型有機材料がドープされた有機層とp型有機材料がドープされた有機層の間に、両者の相互作用を抑制し、電荷発生層15が電流の受け渡しを良好に行えるようにするために、比抵抗が1.0×10
2Ω・cm以上の電気的絶縁層を挿入した構造であってもよい。
【0060】
MPE構造の有機EL照明パネル10では、各発光ユニット11に同一の電流が流れ、それぞれの発光ユニット11が発光に寄与するので、通常の1つの発光ユニット11から成る有機EL照明パネルに比べて、少ない電流でも、多くの光を放出することができる。例えば、3つの発光ユニット11を有する有機EL照明パネル10では、この有機EL照明パネル10に流す電流を1/3に減らしても、1つの発光ユニット11で構成される有機EL照明パネルと同等の光を放出することができる。
【0061】
このように、MPE構造の有機EL照明パネル10では、1つの発光ユニット11で構成される有機EL照明パネル10と比べて、同一の光量を得る場合、少ない電流で済むので、各有機層に与える負荷も少なく済み、結果、前述したように、信頼性を高めると共に、長寿命化及び省電力化を図ることができる。
【0062】
ここで、初期輝度から輝度が70%になるまでの時間を寿命時間とすると、現状の技術において、MPE構造で色温度が昼白色タイプの有機EL照明パネル10では、
図5に示すように、初期輝度を300cd/m
2、1000cd/m
2、2000cd/m
2、3000cd/m
2で使用した場合に、それぞれ、約300,000時間、約50,000時間、約18,000時間、約10,000時間の寿命になる。また、MPE構造で色温度が電球色タイプの有機EL照明パネルでは、初期輝度を1000cd/m
2、2000cd/m
2、3000cd/m
2で使用した場合に、それぞれ、約25,000時間、約9,000時間、約5,000時間の寿命になる。
【0063】
発光ユニット11を構成する各層、さらに、発光ユニット11相互間に配置される電荷発生層15、さらに正極17a及び負極17bの厚さは、いずれも、数十〜数百nmである。従って、これらの積層物の厚さは、複数の発光ユニット11を有するものでも、サブμm〜μmオーダである。また、透明基板18や放熱板19の厚さは、0.5〜0.9mm程度である。従って、有機EL照明パネル10の厚さを3mm以下にすることができ、仮に、有機EL照明パネル10の剛性を高める等、他の要求が求められて、他の層や、シート、板等を追加しても、有機EL照明パネルの厚さを5mm以下にすることができる。
【0064】
有機EL照明パネルは、その形状として、正方形、長方形、円形、さらには特殊なシンボリックな形等、その目的や設置場所等から様々な形状を実現することができる。また、有機EL照明パネルは、そのサイズとして、例えば、正方形の場合には、5×5cm
2のような小型のものから、10×10cm
2、15×15cm
2、さらには、30×30cm
2といった比較的大型のもの等、様々なサイズを実現できる。また、長方形の場合でも、サイズとして、3×15cm
2のような小型のものから、6×30cm
2、7.5×30cm
2、さらには、10×30cm
2といった比較的大型のもの等、様々なサイズを実現できる。なお、有機EL照明パネル10は、透明基板18の外周部分に、パネル駆動回路30からの電力を一対の電極17a,17bに供給するための配線を含む枠等の部材が存在する。このため、有機EL照明パネル10の外形サイズの7割程度が発光面積になる。
【0065】
有機EL照明装置では、一般的に、以上で説明したような有機EL照明パネルの背後に、この有機EL照明パネルと一体的に駆動回路が設けられる。しかしながら、本実施形態では、有機EL照明パネル10とパネル駆動回路30とは、互いに離れて別な場所に設置されている。
【0066】
本実施形態において、有機EL照明パネル10は、
図1〜
図3に示すように、荷棚90の棚本体91における床側の面に、その透明基板18を床側に向けて設置されている。なお、この有機EL照明パネル10を駆動するパネル駆動回路30を、例えば、棚本体91における開口92と対向する側板や、荷棚90と天井との間等、この有機EL照明パネル10に比較的近い位置に設けてもよいが、荷室を画定する部材等、この有機EL照明パネル10から比較的遠い位置に設けてもよい。
【0067】
有機EL照明パネル10は、接着剤、両面テープ等の接着媒体や、ビス等の固定具で、棚本体91の床側の湾曲している面に、この湾曲している面に沿って湾曲させて固定されている。なお、湾曲している面に有機EL照明パネル10を固定する場合、この面の極率半径が比較的大きな場合には、透明基板18として、ガラス板を用いてもよいが、極率半径が比較的小さな場合には、ガラス板よりも可撓性の高いプラスチック板を用いることが好ましい。また、以下で説明する実施形態においても、有機EL照明パネルを固定する面が湾曲している場合には、この有機EL照明パネルをこの面に沿って湾曲させて、この面に固定させてもよい。
【0068】
ところで、旅客機の客室照明の照度基準は、米国の自動車技術者協会(Society of Automotive Engineers、以下、SAEとする)が発行する、一連の航空宇宙分野に係る工業規格、SAE Aerospaceで定められている。このSAE Aerospaceの「Aerospace Information Report 512」(以下、AIR 512)では、荷棚下面の座席空間における照度が、搭乗時に53.82 lx以上、夜間飛行時に21.53 lx以上と定められている。
【0069】
そこで、ここでは、荷棚90直下1mの空間にて、先の照度基準を満たすために、荷棚90の床側の面に、例えば、輝度が1000〜2000cd/m
2で、外形サイズが7.5×30cm
2の2枚の有機EL照明パネル10をその長辺方向に並べて設置することにした。
【0070】
以上で例示した有機EL照明パネル10の輝度及び外形サイズは、以下の式(1)及び式(2)により求めた。
【0071】
光源の光度I(cd)と、この光源からの光によって照らされる部分の照度E(lx)とは、以下の式(1)に示すように、距離R(m)の2乗に反比例する。
【0073】
また、光源の光度I(cd)は、以下の式(2)に示すように、光源の輝度L(cd/m
2)と、光源の直下から見た見掛けの面積S(m
2)との積である。
【0075】
なお、式(1)は、点光源での照度計算に用いる式だが、ここでは簡易計算のため、面状光源である有機EL照明パネルの場合にも適用した。また、光源の直下から見た見掛けの面積S(m
2)は、有機EL照明パネルの発光面積(m
2)を代用した。また、この発光面積は、前述したように、有機EL照明パネル10の外形サイズの7割程度あるため、上記外形サイズの7割を発光面積とした。
【0076】
仮に、有機EL照明パネル10の初期輝度を2000cd/m
2にすると、その寿命時間は、前述したように、この有機EL照明パネル10が昼白色タイプであれば、約18,000時間、この有機EL照明パネル10が昼白色タイプであれば、約9,000時間となる。よって、このような有機EL照明パネル10は、照度的に、寿命時間が約10,000時間の蛍光灯の代替になる。
【0077】
以上のように、本実施形態では、荷棚90の床側の面に、厚さが5mm以下の有機EL照明パネル10を設置しているので、荷棚90とその直下の座席81の座部82との間の空間、さらに、荷棚90とその直下の床面との間の空間を実質的に狭めることなく、座部82や床面を照らすことができる。なお、現存する一般的な旅客機では、荷棚とその直下の座席の座部との間の空間を狭めないため、荷棚の床側の面に蛍光灯等の照明装置は設置されていない。このため、現存する一般的な旅客機で、荷棚とその直下の座席の座部を明るくする場合、例えば、読書灯を代用することになる。
【0078】
「第一実施形態の変形例」
次に、以上で説明した第一実施形態の変形例について、
図6及び
図7を用いて説明する。
【0079】
本変形例の照明装置では、
図6に示すように、荷棚90の棚本体91における床側の棚板に、貫通開口92a、又は凹部を形成し、そこに、その透明基板18を床側に向けて有機EL照明パネル10aを設置している。
【0080】
本変形例でも、荷棚90の床側に有機EL照明パネル10aを設置しているので、先に説明した第一実施形態と同様の効果を得ることができる。
【0081】
なお、荷棚90の棚本体91における床側の棚板に貫通開口92aを形成し、そこに有機EL照明パネル10aを嵌め込む場合、この有機EL照明パネル10aには、荷棚90内に入れられる荷の荷重がかかるため、比較的高い剛性を確保する必要がある。このため、このような場合、
図7に示すように、透明基板18と、放熱板19と、これらの間に配置されている複数の発光ユニット11等をまとめて、これらの外周及び放熱板19の背面側を覆う枠22を設けることが好ましい。また、枠22には、放熱板19の放熱効果を確保するために、この放熱板19の背面側を覆う部分に貫通孔を形成してもよい。なお、このように、比較的に高い剛性を確保するために、枠22を設けても、この有機EL照明パネル10aの厚さは、前述したように、5mm以下に抑えることができる。
【0082】
「第二実施形態」
次に、本発明に係る照明装置の第二実施形態について、
図1及び
図8を用いて説明する。
【0083】
本実施形態の照明装置も、第一実施形態と同様、有機EL照明パネルと、制御装置からの指示に従って、この有機EL照明パネルを駆動するパネル駆動回路と、を備えている。なお、有機EL照明パネル及びパネル駆動回路は、それぞれ、第一実施形態又はその変形例で示した構造と同様の構造である。
【0084】
本実施形態において、有機EL照明パネル10bは、
図1及び
図8に示すように、客室の上部を画定する天井材63の部分であって、通路61pの真上の部分に、その透明基板18を床側に向けて設置されている。
【0085】
通路61pの真上の天井材63の部分には、複数の有機EL照明パネル10bが、この通路61pの長手方向に沿って並んで設置されている。複数の有機EL照明パネル10bは、通路61pの長手方向に直線的に並べてもよいが、
図8に示すように、左右方向にわずかにズラしつつ、通路61pの長手方向に並べて、機内空間のデザイン性を向上させてもよい。
【0086】
ところで、前述のAIR 512では、通路の照度が、搭乗時及び夜間飛行時に21.53 lx以上、夜間就寝時に1.08 lx以上と定められている。
【0087】
そこで、ここでは、天井面直下2mの空間にて、先の照度基準を満たすために、天井材63に、例えば、輝度が2000cd/m
2以上で、外形サイズが10×30cm
2の有機EL照明パネル10bを設置することにした。なお、ここで例示した有機EL照明パネル10bの輝度及び外形サイズも、前述の式(1)及び式(2)により求めた。
【0088】
仮に、有機EL照明パネル10bの初期輝度を2000cd/m
2にすると、その寿命時間は、前述したように、この有機EL照明パネル10bが昼白色タイプであれば、約18,000時間、この有機EL照明パネル10bが昼白色タイプであれば、約9,000時間となる。よって、このような有機EL照明パネル10bは、照度的に、寿命時間が約10,000時間の蛍光灯の代替になる。
【0089】
以上、本実施形態では、通路61pの真上の天井材63に、厚さが5mm以下の有機EL照明パネル10bを設置しているので、天井面とその直下の床面との間の空間を実質的に狭めることなく、言い換えると、通路61p上を歩行する搭乗者(乗客の他、乗務員も含む)と頭と天井面との間隔を実質的に狭めることなく、床面等を照らすことができる。このため、天井面とその直下の床面との間の間隔が狭い小型のリージョナルジェット機に、本実施形態を採用することは極めて好ましい。
【0090】
なお、有機EL照明パネル10bの構造として、赤色、緑色、青色に単色発光する、ミクロンオーダーの微細な有機EL素子をマトリックス状、もしくはライン状に並列配置したもの、言い換えると、有機EL表示パネルの構造と同様の構造を採用してもよい。この構造を採用することで、これら三色の適度な混色効果により、白色をはじめ、様々な色を表現することが可能となり、調色機能を高めることができる。但し、この構造では、有機EL照明パネル10bとパネル駆動回路との間の配線数が多くなる上に、その配線が複雑になるため、この有機EL照明パネル10bを駆動するパネル駆動回路は、この有機EL照明パネル10bの近くに設置することが好ましい。
【0091】
また、以上では、通路61pの真上の天井材63の部分にのみ、複数の有機EL照明パネル10bを設置する例を説明したが、通路61pの真上を除く天井材63の部分に有機EL照明パネル10bを設置してもよい。
【0092】
「第三実施形態」
次に、本発明に係る照明装置の第三実施形態について、
図1、
図9及び
図10を用いて説明する。
【0093】
本実施形態の照明装置も、以上の各実施形態と同様、有機EL照明パネルと、制御装置からの指示に従って、この有機EL照明パネルを駆動するパネル駆動回路と、を備えている。なお、本実施形態も、有機EL照明パネル及びパネル駆動回路は、それぞれ、第一実施形態又はその変形例で示した構造と同様の構造である。
【0094】
本実施形態において、有機EL照明パネル10cは、
図1、
図9及び
図10に示すように、荷棚90の蓋93における棚本体91の内部側に透明基板18をこの内部側に向けて設置されている。
【0095】
ところで、前述のAIR 512では、荷棚の照度が53.82 lx以上と定められている。
【0096】
そこで、ここでは、荷棚90の蓋93を全開にした状態で、蓋直下30cmの空間にて、先の照度基準を満たすために、この蓋93に、例えば、輝度が300cd/m
2以上で、外形サイズが7.5×30cm
2の有機EL照明パネル10cを設置することにした。なお、ここで例示した有機EL照明パネル10cの輝度及び外形サイズも、前述の式(1)及び式(2)により求めた。また、初期輝度が300cd/m
2の場合、その寿命時間は、前述したように、色温度に関係せずに、約300,000時間となる。
【0097】
以上、本実施形態では、荷棚90の蓋93における内側に、厚さが5mm以下の有機EL照明パネル10cを設置しているので、荷棚90の内部空間を実質的に狭めることなく、荷棚90内を照らすことができる。このため、本実施形態では、荷棚90内の視認性を向上させることができ、乗務員による荷棚90内の確認時間短縮化、及び、乗客の荷物忘れ防止に貢献できる。また、荷棚90の蓋93を全開にした場合には、荷棚90の内部空間のみならず、通路61p等も照らすことができるで、乗客による荷棚90への荷物の搬入及び搬出を容易に行うことができる。
【0098】
なお、本実施形態において、制御回路からの指示で、離着陸時間帯に有機EL照明パネル10cをオンするようにしてもよいが、荷棚90の蓋開閉に応じて有機EL照明パネル10cをオンにするようにしてもよい。この場合、扉の開閉をスイッチで検知し、扉が開くと、有機EL照明パネル10cをオンにし、扉が閉じると、有機EL照明パネル10をオフすることが好ましい。
【0099】
「第四実施形態」
次に、本発明に係る照明装置の第四実施形態について、
図1、
図11〜
図13を用いて説明する。
【0100】
本実施形態の照明装置も、以上の各実施形態と同様、有機EL照明パネルと、制御装置からの指示に従って、この有機EL照明パネルを駆動するパネル駆動回路と、を備えている。
【0101】
本実施形態において、有機EL照明パネル10dは、
図1及び
図11に示すように、客室の下部を画定する床材61の部分であって、通路61pの部分に、その透明基板18を天井側に向けて設置されている。より、具体的には、通路61p中であって、左右方向で間隔をあけて並んでいる2つの座席装置80のうちの一方の座席装置80寄りの位置と、他方の座席装置80寄りの位置とに設置されている。
【0102】
本実施形態の有機EL照明パネル10dは、
図12に示すように、第一実施形態及びその変形例における有機EL照明パネル10,10a(
図4、
図7)に、蓄光材を含む蓄光層23を追加したものである。蓄光材としては、例えば、硫化亜鉛系、アルミン酸ストロンチウム系、アルミナ系酸化物等がある。この蓄光層23は、蓄光材を含む塗料や、蓄光材をシートで覆ったもので形成されている。
【0103】
この蓄光層23は、その厚さが薄く光透過性があるため、例えば、透明基板18の正極17a側とは反対側の面や、正極17aと透明基板18との間に配置してもよい。また、この蓄光層23は、負極17bと放熱板19と間、具体的には、負極17bと封止基板18bとの間又は封止基板18bと放熱板19との間に配置してもよい。この場合、負極17bは、正極17aと同様、透明電極である必要がある。さらに、蓄光層23を封止基板18bと放熱板19との間に配置する場合には、封止基板18bも透明である必要がある。また、放熱板19の蓄光層23側の面は、反射面を成すことが好ましい。なお、この蓄光層23の厚さも、他の層とほぼ同様の厚さであるため、この蓄光層23を追加しても、この有機EL照明パネル10dの厚さが5mmを超えることはない。
【0104】
ところで、前述のAIR 512では、通路における照度が、搭乗時及び夜間飛行時に21.53 lx以上、夜間就寝時に1.08 lx以上と定められている。
【0105】
そこで、ここでは、床面直上10cmの空間にて、先の照度基準を満たすために、床材61に、例えば、輝度が15cd/m
2以上で、外形サイズが7.5×30cm
2の有機EL照明パネル10dを設置することにした。なお、ここで例示した有機EL照明パネル10dの輝度及び外形サイズも、前述の式(1)及び式(2)により求めた。また、初期輝度が15cd/m
2の場合、その寿命時間は、前述したように、色温度に関係せずに、300,000時間以上になる。
【0106】
以上、本実施形態では、通路61pに、厚さが5mm以下の有機EL照明パネル10dを設置しているので、搭乗者の歩行を妨げずに、この通路61pを示すことができる。さらに、この有機EL照明パネル10dは、蓄光層23を含むので、機内電源が全て落ちた非常時でも、通路61pを示すことができるので、誘導灯としての機能を果たすこともできる。
【0107】
また、
図13に示すように、この有機EL照明パネル10dに座席番号を示す文字を施すことで、座席番号のサイン灯として機能を担わせることも可能である。この場合、
図26〜
図28を用いて説明する第十及び第十一実施形態で説明するように、この有機EL照明パネル10dに、座席番号が施されているシートを追加するとよい。一般的に、旅客機における座席番号は、荷棚に付されていることが多い。このように、座席番号のサイン灯として機能する有機EL照明パネル10dを通路61pに設置すると、離着陸時の混雑時に、荷棚90の座席番号を視認しにくい小柄な人や子供にとっても、座席番号を確認することができる。
【0108】
「第五実施形態」
次に、本発明に係る照明装置の第五実施形態について、
図1及び
図14を用いて説明する。
【0109】
本実施形態の照明装置も、以上の各実施形態と同様、有機EL照明パネルと、制御装置からの指示に従って、この有機EL照明パネルを駆動するパネル駆動回路と、を備えている。なお、本実施形態も、有機EL照明パネル及びパネル駆動回路は、それぞれ、第一実施形態又はその変形例で示した構造と同様の構造である。
【0110】
本実施形態において、有機EL照明パネル10eは、
図1、
図14に示すように、座席装置80の座部82の床側、より具体的には、座部82を支える座部支持梁88aの床側に、透明基板18を床側に向けて設置されている。
【0111】
ところで、前述のAIR 512では、通路における照度が、搭乗時及び夜間飛行時に21.53 lx以上、夜間就寝時に1.08 lx以上と定められているが、座席下部の足元空間における照度は、AIR 512に定められていない。しかしながら、座席下部の足元空間も、通路における照度と同等の照度が確保されることが好ましいと考えられる。
【0112】
そこで、ここでは、座席直下30cmの空間にて、通路61pにおける先の照度基準を満たすために、座部支持梁88aに、例えば、輝度が150cd/m
2以上で、外形サイズが7.5×30cm
2の有機EL照明パネル10eを設置することにした。なお、ここで例示した有機EL照明パネル10eの輝度及び外形サイズも、前述の式(1)及び式(2)により求めた。また、初期輝度が150cd/m
2の場合、その寿命時間は、前述したように、色温度に関係せずに、300,000時間以上になる。
【0113】
以上、本実施形態では、座部支持梁88aの床側に、厚さが5mm以下の有機EL照明パネル10eを設置しているので、荷物空間や足元空間となる座席下部の空間を実質的に狭めることなく、座席下部を照らすことができる。このため、本実施形態では、座席下部の視認性を向上させることができ、座席下部からの荷物の出し入れを容易に行うことができると共に、落し物や通行時における障害物の確認を容易に行うことができる。さらに、本実施形態では、足元空間が明るくなることで、乗客は足元空間を広く感じることができ、乗客の快適性を向上させることができる。
【0114】
なお、ここでは、有機EL照明パネル10eを座部支持梁88aに設けたが、この座部支持梁88aに光が遮られなければ、座席81の座部82の床側の面に直接有機EL照明パネル10eを設置してもよい。
【0115】
「第六実施形態」
次に、本発明に係る照明装置の第六実施形態について、
図15〜
図19を用いて説明する。
【0116】
本実施形態の照明装置は、
図16に示すように、以上の各実施形態と同様、有機EL照明パネル10fと、制御装置からの指示に従って、この有機EL照明パネル10fを駆動するパネル駆動回路30と、を備えている。さらに、本実施形態の照明装置は、有機EL照明パネル10fを座席81における背凭れ部83の背面83aに取り付けるパネル連結具31と、有機EL照明パネル10fからの光の拡散を遮る遮光板32と、有機EL照明パネル10fをオン/オフさせるスイッチ33と、を備えている。
【0117】
本実施形態の有機EL照明パネル10fは、第一実施形態の変形例としての有機EL照明パネル10a(
図7)と基本的に同様で、枠を有し、比較的剛性の高いものである。
【0118】
有機EL照明パネル10fは、前述のパネル連結具31により、
図15(A)に示すように、この有機EL照明パネル10fの透明基板18が背凭れ部83の背面83aに対向している閉状態と、同図(B)に示すように、この背面83aと角度を成している開状態との間で、開閉可能に背凭れ部83に取り付けられている。パネル連結具31としては、乗客がこの有機EL照明パネル10fを背凭れ部83に対して所望の角度にした際に、この角度を維持できる、例えば、フリクションヒンジが採用されている。
【0119】
このパネル連結具31は、背凭れ部83の背面83aに沿い且つ床面に対して平行な仮想軸線を基準にして、有機EL照明パネル10fを揺動可能に背凭れ部83に取り付けることで、この有機EL照明パネル10fの開閉を実現している。有機EL照明パネル10fは、この例では長方形であり、長方形の一対の長辺のうちの一方の長辺が床面に対して平行に、パネル連結具31により背凭れ部83に取り付けられている。
【0120】
前述の仮想軸線が延びる方向、つまり機体の左右方向における有機EL照明パネル10fの両端部には、それぞれ、前述の遮光板32が透明基板18に対向している閉状態と透明基板18と角度を成している開状態との間で開閉可能に取り付けられている。なお、機体の左右方向における有機EL照明パネル10fの両端部は、ここでは、長方形の有機EL照明パネル10fの両短辺である。
【0121】
座席81の背凭れ部83の背面側であって、閉状態の有機EL照明パネル10fで覆われる部分には、前述のスイッチ33が配置されている。このスイッチ33は、パネル駆動回路30と、有機EL照明パネル10fとを接続する配線中に設けられている。このスイッチ33は、有機EL照明パネル10fの開閉を検知し、開状態の際にパネル駆動回路30と有機EL照明パネル10fとを電気的に接続し、閉状態の際にはパネル駆動回路30と有機EL照明パネル10fとの電気的な接続を断つ。
【0122】
本実施形態において、座席81に座っている乗客が読書等をする場合には、前の座席81の背凭れ部83に取り付けられている有機EL照明パネル10fを開状態する。開状態にすると、スイッチ33がこれを検知して、パネル駆動回路30と有機EL照明パネル10fとを電気的に接続し、この有機EL照明パネル10fをオン状態にする。
【0123】
有機EL照明パネル10fは、背凭れ部83との角度が大きくなるほど、この有機EL照明パネル10fから乗客の手元側に届く光量が多くなる。このため、乗客は、自分の手元空間(テーブル上の空間を含む)を明るくしたい場合には、背凭れ部83に対する有機EL照明パネル10fの角度を大きくすればよい。
【0124】
また、例えば、隣の乗客が睡眠中で、この隣の乗客にこの有機EL照明パネル10fからの光が届かないようにしたい場合には、有機EL照明パネル10fに対する遮光板32の角度を適宜調節すればよい。
【0125】
ところで、前述のSAE Aerospaceの「Aerospace Recommended Practice 378」(以下、ARP 378)では、
図19に示すように、テーブル面内であってテーブル84の中央位置aでは、最小照度269 lx、最大照度591 lxと定められ、テーブル面内であってテーブル84の端位置dでは、最小照度54 lx、最大照度215 lxと定められている。さらに、テーブル面の延長面上であって、テーブル84の端位置dから左右114mmのテーブル外部の位置fにて最大16 lxと定められている。なお、ARP378では、これらの照度基準がfc、すなわちfootcandleの単位で示されているが、ここでは、1fc=10.75 lxの換算式を用いて、照度は全てlxの単位にした。
【0126】
そこで、ここでは、テーブル面に対して平行になるように、外形サイズが10×30cm
2の有機EL照明パネル10fを開いた状態で、この有機EL照明パネル10fとテーブル面との間の距離が30cmとした場合に、先の照度基準を満たすために、この有機EL照明パネル10fの輝度を2000cd/m
2以上にすることにした。
【0127】
以上で例示した有機EL照明パネル10fの輝度は、以下の式(3)により求めた。具体的には、まず、有機EL照明パネルの輝度として、複数の輝度を仮定し、以下の式(3)を用いて、各輝度におけるテーブル面及びその延長面上の複数個所の位置a〜fでの照度E
hを求める。次に、テーブル面及びその延長面上の複数個所の位置a〜fでの照度E
hが先の照度基準を満たすか否かを判断して、この照度基準を満たすときの有機EL照明パネルの輝度を、採用する有機EL照明パネル10fの輝度とした。
【0129】
ここで、式(3)中、E
h:水平面照度(lx)、L:面光源の輝度(cd/m
2)である。また、式(3)では、
図17に示すように、テーブル面及びその延長面上の特定位置を原点pとし、機体の左右方向における座標軸をx、機体の前後方向における座標軸をyとし、機体の上下方向における座標軸をhとしている。また、式(3)では、長方形の面光源Lの一つの角がx=0、y=0、h=hに存在していることを前提としている。言い換えると、式(3)では、照度を求める位置の直上に長方形の面光源Lの一つの角が存在していることを前提としている。
【0130】
しかしながら、
図19に示すように、ここでは、テーブル面及びその延長面上の位置であって、照度を求める位置a〜fは、いずれも、その直上に面光源の角が存在しない。そこで、テーブル面上の位置c〜fの各照度E
hに関しては、以下の式(4)を用いて求め、テーブル面及びその延長面上の位置a,bの各照度E
hに関しては、以下の式(5)を用いて求めている。
【0131】
E
h=E
h1−E
h2−E
h3+E
h4 (4)
E
h=E
h1−E
h2+E
h3−E
h4 (5)
【0132】
ここで、式(4)は、
図19中の位置c〜fのように、照度を求める位置pのx方向及びy方向に面光源Lが存在しない場合の式である。つまり、式(4)は、
図18中の左側に示す状態の場合の式である。また、式(5)は、
図19中の位置a,bのように、照度を求める位置pのx方向に面光源Lが存在しないものの、y方向に面光源Lが存在する場合の式である。つまり、式(5)は、
図18中の右側に示す状態の場合の式である。また、E
h1は、照度を求める位置(原点)pの直上に仮想面光源の角の一つが存在し、この角と対角に位置する仮想面光源の角が位置1に存在するときの原点pの照度を示し、E
h2は、原点pの直上に仮想面光源の角の一つが存在し、この角と対角に位置する仮想面光源の角が位置2に存在するときの原点pの照度を示す。以下、E
h3、E
h4も同様である。なお、これらE
h1、E
h2、E
h3、E
h4の値は、いずれも式(3)で求める。
【0133】
前述した外形サイズが10×30cm
2で輝度が2000cd/m
2以上の有機EL照明パネル10fを用いた場合、
図19に示すように、位置a〜dのそれぞれの位置で、先の照度基準をほぼ満たす。しかしながら、テーブル面の延長面上であって、テーブル外部の位置e,fの照度は、ARP378で定める最大照度基準を上回ってしまう。つまり、上記有機EL照明パネル10fを用いると、光の横漏れが多くなってしまう。
【0134】
そこで、本実施形態では、有機EL照明パネル10fの左右両端部に遮光板32を設け、この有機EL照明パネル10fからの光の横漏れを抑えることができるようにしている。具体的に、有機EL照明パネル10fに対する遮光板32の角度αを45°にすると、テーブル面の延長面上であって、テーブル外部の位置fの照度が16 lxになり、この位置fに関するARP378で定める最大照度基準を満たすことになる。
【0135】
仮に、有機EL照明パネル10fの初期輝度を2000cd/m
2にすると、その寿命時間は、前述したように、この有機EL照明パネル10fが昼白色タイプであれば、約18,000時間、この有機EL照明パネル10fが昼白色タイプであれば、約9,000時間となる。よって、このような有機EL照明パネル10fは、照度的に、寿命時間が約10,000時間の蛍光灯の代替になる。
【0136】
以上、本実施形態では、前席の背凭れ部83の背面83aに、厚さが5mm以下の有機EL照明パネル10fを設置しているので、座席81に座っている乗客の手元空間を実質的に狭めることなく、この手元空間を照らすことができる。さらに、本実施形態では、乗客の手元空間に近い位置に有機EL照明パネル10fを設置しているので、隣の座席81に座っている乗客側への光の広がりを最小限に抑えることができる。しかも、本実施形態では、有機EL照明パネル10fに遮光板32を設けているので、隣の座席81に座っている乗客への光漏れを確実に防ぐことができる。
【0137】
「第七実施形態」
次に、本発明に係る照明装置の第七実施形態について、
図20を用いて説明する。
【0138】
本実施形態の照明装置も、以上の各実施形態と同様、有機EL照明パネルと、制御装置からの指示に従って、この有機EL照明パネルを駆動するパネル駆動回路と、を備えている。なお、本実施形態も、有機EL照明パネル及びパネル駆動回路は、それぞれ、第一実施形態又はその変形例で示した構造と同様の構造である。
【0139】
本実施形態において、有機EL照明パネル10gは、窓70の内側にこの窓70に沿って設けられているシェード72の機内側に、透明基板18を機内側に向けて設置されている。
【0140】
ところで、前述のAIR 512では、座席空間における照度が、搭乗時に53.82 lx以上、夜間飛行時に21.53 lx以上と定められている。
【0141】
そこで、ここでは、シェード72の真横30cmの空間にて、先の照度基準を満たすために、シェード72に、例えば、輝度が300cd/m
2以上で、外形サイズが15×15cm
2の有機EL照明パネル10gを設置することにした。なお、ここで例示した有機EL照明パネル10gの輝度及び外形サイズも、前述の式(1)及び式(2)により求めた。また、初期輝度が300cd/m
2の場合、その寿命時間は、色温度に関係せずに、ほぼ300,000時間以上になる。
【0142】
乗客は、一般的に、直射日光がまぶしいときにシェード72を下げるが、この場合、機内が暗くなりすぎることが多い。また、シェード72を下げると、窓70からの視界が遮られることから、乗客は多少の圧迫感や閉塞感を感じる。本実施形態では、シェード72の機内側に、厚さが5mm以下でまぶしくない程度の光を発する有機EL照明パネル10gを設置しているので、日光が機内に入ってきているときに、シェード72を下げても、窓70の機内側空間を実質的に狭めることなく、機内が暗くなりすぎるのを防ぐことができる。また、有機EL照明パネル10gは、光を発しているとき、蛍光灯と異なり、奥行き感があるため、シェード72を下げた際の圧迫感や閉塞感を解消することができる。
【0143】
なお、乗客が就寝のためにシェード72を下げる場合には、この乗客の周りは暗い方が好ましいので、この有機EL照明パネル10gをオン/オフするスイッチを別途設けることが好ましい。この場合、窓70の周囲を覆う機内側窓枠材71や、座席81の肘掛部85等にスイッチを設けることが好ましい。
【0144】
「第七実施形態の変形例」
次に、以上で説明した第七実施形態の変形例について、
図21を用いて説明する。
【0145】
本変形例の照明装置では、窓70の周囲を覆う機内側窓枠材71の上部に、その透明基板18を機内側に向けて有機EL照明パネル10hを設置している。
【0146】
本変形例では、機内側窓枠材71の上部に有機EL照明パネル10hを設置しているので、第七実施形態と同様に、日光が機内に入ってきているときに、シェード72を下げても、窓70の機内側空間を実質的に狭めることなく、機内が暗くなりすぎるのを防ぐことができる。
【0147】
「第八実施形態」
次に、本発明に係る照明装置の第八実施形態について、
図22〜
図24を用いて説明する。
【0148】
本実施形態の照明装置も、以上の各実施形態と同様、有機EL照明パネルと、制御装置からの指示に従って、この有機EL照明パネルを駆動するパネル駆動回路と、を備えている。なお、本実施形態も、有機EL照明パネル及びパネル駆動回路は、それぞれ、第一実施形態又はその変形例で示した構造と同様の構造である。
【0149】
本実施形態において、有機EL照明パネル10iは、
図22に示すように、ラバトリーの鏡100に、透明基板18を鏡100の反射方向側、つまりラバトリー内側に向けて設置されている。この有機EL照明パネル10iは、鏡100における上部の左右側の各位置、及びその下部の左右側の各位置に設置されている。なお、鏡100の上部に設置した有機EL照明パネル10iは、主として、乗客の顔周りを照らす役目を担い、鏡100の下部に設置した有機EL照明パネル10iは、主として、乗客の手元や蛇口周りを照らす役目を担う。
【0150】
鏡100は、一般的に、
図23及び
図24に示すように、透明なガラス板等の透明板101と、この透明板101の一方の面に施された反射層102と、で形成されている。有機EL照明パネル10iは、
図23に示すように、透明板101の反射層102が形成されている側に設置されても、
図24に示すように、透明板101の反射層102が形成されていない側に設置されてもよい。但し、有機EL照明パネル10iを透明板101の反射層102が形成されている側に設置する場合、透明板101と有機EL照明パネル10iとの間に反射層102が存在しないようにする必要がある。なお、透明板101の反射層側とこの反対側のいずれの側に有機EL照明パネル10iを設置する場合でも、透明板101の設置側に凹部を形成して、そこに有機EL照明パネル10iを埋め込んでもよいし、単に、透明板101の設置側に有機EL照明パネル10iを貼り付けてもよい。
【0151】
ところで、前述のAIR 512では、ラバトリー内のタスク空間の照度が215.28〜322.92 lxと定められている。
【0152】
そこで、ここでは、パネル設置位置から下50cmの空間にて、先の照度基準を満たすために、鏡100に、例えば、輝度が2000cd/m
2以上で、外形サイズが7.5×30cm
2の有機EL照明パネル10iを設置することにした。なお、ここで例示した有機EL照明パネル10iの輝度及び外形サイズも、前述の式(1)及び式(2)により求めた。また、仮に、有機EL照明パネル10iの初期輝度を2000cd/m
2にすると、その寿命時間は、前述したように、この有機EL照明パネル10iが昼白色タイプであれば、約18,000時間、この有機EL照明パネル10iが昼白色タイプであれば、約9,000時間となる。よって、このような有機EL照明パネル10iは、照度的に、寿命時間が約10,000時間の蛍光灯の代替になる。
【0153】
以上、本実施形態では、ラバトリー内の鏡100に、厚さが5mm以下の有機EL照明パネル10iを設置しているので、ラバトリー内における手洗い等のタスク空間を実質的に狭めることなく、このタスク空間を十分に照らすことができる。
【0154】
また、
図22に示すように、ラバトリー内に3枚の鏡100,105,105を互いの向きを変えて設置する場合、照明の奥行きが広がり、ラバトリー内を華やかに演出することができる。
【0155】
なお、本実施形態において、ラバトリー内における搭乗者の有無を検知するセンサを設けると共に、このセンサによりラバトリー内に搭乗者の存在が検知されると、有機EL照明パネル10iをオン状態にするスイッチを設けてもよい。
【0156】
「第九実施形態」
次に、本発明に係る照明装置の第九実施形態について、
図25を用いて説明する。
【0157】
本実施形態の照明装置も、以上の各実施形態と同様、有機EL照明パネルと、制御装置からの指示に従って、この有機EL照明パネルを駆動するパネル駆動回路と、を備えている。なお、本実施形態も、有機EL照明パネル及びパネル駆動回路は、それぞれ、第一実施形態又はその変形例で示した構造と同様の構造である。
【0158】
本実施形態において、有機EL照明パネル10jは、ギャレーの戸棚110の内部側に透明基板18を内部側に向けて設置されている。
【0159】
ところで、前述のAIR 512では、荷棚における照度が53.82 lx以上と定められているが、ギャレーの戸棚110の内部の照度については特に定められていない。しかしながら、ギャレーの戸棚110の内部空間も、荷棚における照度と同等の照度が確保されることが好ましいと考えられる。
【0160】
そこで、ここでは、有機EL照明パネル10jから30cmの空間にて、先の照度基準を満たすために、戸棚110の内側に、例えば、輝度が300cd/m
2以上で、外形サイズが7.5×30cm
2の有機EL照明パネル10jを設置することにした。なお、ここで例示した有機EL照明パネル10jの輝度及び外形サイズも、前述の式(1)及び式(2)により求めた。また、初期輝度が300cd/m
2の場合、その寿命時間は、前述したように、色温度に関係せずに、約300,000時間となる。
【0161】
以上、本実施形態では、ギャレーの戸棚110の内部側に、厚さが5mm以下の有機EL照明パネル10jを設置しているので、戸棚110の内部空間を実質的に狭めることなく、戸棚110内を照らすことができる。このため、本実施形態では、戸棚110内の視認性を向上させることができ、ギャレー内での乗務員による作業効率を高めることができる。
【0162】
なお、本実施形態において、戸棚110の扉111の開閉に応じて有機EL照明パネル10jをオンにするようにしてもよい。この場合、扉111の開閉をスイッチで検知し、扉111が開くと、有機EL照明パネル10をオンにし、扉111が閉じると、有機EL照明パネル10をオフすることが好ましい。
【0163】
「第十及び第十一実施形態」
次に、本発明に係る照明装置の第十及び十一実施形態について、
図26〜
図28を用いて説明する。
【0164】
第十及び十一実施形態の照明装置も、以上の各実施形態と同様、有機EL照明パネル10と、制御装置35からの指示に従って、この有機EL照明パネル10を駆動するパネル駆動回路30と、を備えている。
【0165】
第十及び十一実施形態の有機EL照明パネル10m,10nは、いずれもサイン灯としての役目を担っている。具体的に、第十実施形態の有機EL照明パネル10mは、
図26に示すように、非常口120の周りを囲む壁材121の機内側に透明基板18を機内側に向けて設置され、非常口120の位置を示すサイン灯の役目を担っている。この有機EL照明パネル10mは、長方形で、そこに「非常口 EXIT」の文字が施されている。また、第十一実施形態の有機EL照明パネル10nは、
図27に示すように、仕切壁材130の客室内側に透明基板18をこの客室内側に向けて設置され、ラバトリーの使用の有無を示すサイン灯の役目を担っている。この有機EL照明パネル10nは、円形で、そこに人の絵が施されている。
【0166】
このように、サイン灯としての役目を担う有機EL照明パネル10m,10nは、サイン灯として、搭乗者に知らせる内容に応じて、その内容を示す文字や図を施すことはもちろん、その内容に応じた形状にすることが好ましい。
【0167】
第十及び十一実施形態の有機EL照明パネル10m,10nは、いずれも、
図28に示すように、第一実施形態の有機EL照明パネル10(
図4)に、さらに、搭乗者に知らせる内容を示す図又は文字が施されているシート25を追加したものである。このシート25は、例えば、透明な樹脂シートで、例えば、透明基板18に貼り付けられている。
【0168】
ところで、前述のSAE Aerospaceの「Aerospace Recommended Practice 503」(以下、ARP 503)では、非常脱出口付近でのサイン灯の照度が86cd/m
2以上、客室間の仕切上でのサイン灯の照度が1.3cd/m
2以上と定められている。このため、サイン灯としての役目を担う有機EL照明パネル10m,10nは、その初期輝度が100cd/m
2程度あれば十分である。なお、初期輝度が300cd/m
2の場合、有機EL照明パネル10m,10nの寿命時間は、前述したように、色温度に関係せずに、300,000時間以上になる。
【0169】
以上、第十及び十一実施形態では、壁内やこの壁で仕切られる空間中に設置スペースを実質的に確保せずとも、有機EL照明パネル10m,10nをサイン灯として機能させることができる。また、サイン灯は、面光源であり、しかも、搭乗者に知らせる内容の誤認識を避けるために、面の各位置での輝度が均一であることが要求される。第十及び十一実施形態の有機EL照明パネル10m,10nは、これらの要件を満たすものであるため、第十及び十一実施形態のように、有機EL照明パネル10m,10nにサイン灯としての役目を担わせることは極めて有用である。
【0170】
なお、サイン灯は、機内電源が全て落ちた非常時でも点灯していることが好ましいので、
図12を用いて説明した第四実施形態のように、有機EL照明パネルに蓄光層を追加してもよい。さらに、その他の実施形態における有機EL照明パネルにも、同様に、蓄光層を追加してもよい。