特許第6245728号(P6245728)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6245728
(24)【登録日】2017年11月24日
(45)【発行日】2017年12月13日
(54)【発明の名称】疲労寿命回復熱処理方法
(51)【国際特許分類】
   C22F 1/10 20060101AFI20171204BHJP
   C22F 1/00 20060101ALN20171204BHJP
【FI】
   C22F1/10 K
   !C22F1/00 630G
   !C22F1/00 630A
   !C22F1/00 650A
   !C22F1/00 650D
   !C22F1/00 682
   !C22F1/00 691B
   !C22F1/00 692A
   !C22F1/00 691C
   !C22F1/00 602
   !C22F1/00 651B
   !C22F1/00 692Z
【請求項の数】4
【全頁数】8
(21)【出願番号】特願2013-66035(P2013-66035)
(22)【出願日】2013年3月27日
(65)【公開番号】特開2014-189830(P2014-189830A)
(43)【公開日】2014年10月6日
【審査請求日】2016年2月23日
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】000006208
【氏名又は名称】三菱重工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100149548
【弁理士】
【氏名又は名称】松沼 泰史
(74)【代理人】
【識別番号】100162868
【弁理士】
【氏名又は名称】伊藤 英輔
(74)【代理人】
【識別番号】100161702
【弁理士】
【氏名又は名称】橋本 宏之
(74)【代理人】
【識別番号】100189348
【弁理士】
【氏名又は名称】古都 智
(74)【代理人】
【識別番号】100196689
【弁理士】
【氏名又は名称】鎌田 康一郎
(74)【代理人】
【識別番号】100210572
【弁理士】
【氏名又は名称】長谷川 太一
(72)【発明者】
【氏名】金子 秀明
(72)【発明者】
【氏名】唐戸 孝典
(72)【発明者】
【氏名】大原 利信
(72)【発明者】
【氏名】佐藤 洋一
【審査官】 瀧澤 佳世
(56)【参考文献】
【文献】 特開2003−034853(JP,A)
【文献】 特開2000−080455(JP,A)
【文献】 特開2003−342617(JP,A)
【文献】 特開平11−236655(JP,A)
【文献】 特開平04−032546(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C22F 1/10
C22F 1/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
Ni基合金からなりγ’相が析出している構造部材に熱処理を行うことにより疲労寿命を回復する疲労寿命回復熱処理方法であって、
前記構造部材を構成するNi基合金を各温度、各時間で加熱処理を行い、観察を行うことによって、前記γ’相が固溶する温度未満であって前記構造部材中の転位が回復する温度である転移回復温度を予め把握する工程と、
疲労が生じた前記構造部材に対して前記転移回復温度で加熱処理を行う転位回復熱処理工程と、
前記転位回復熱処理工程の後に、前記γ’相が残存した状態で時効処理を行うことで、γ’相をさらに析出させる時効処理工程と、
を備えることを特徴とする疲労寿命回復熱処理方法。
【請求項2】
前記転位回復熱処理工程では、温度1100℃以上1200℃以下、保持時間1時間以上10時間以下の加熱処理を行った後に、急冷処理を行うことを特徴とする請求項1に記載の疲労寿命回復熱処理方法。
【請求項3】
前記時効処理工程では、温度840℃以上860℃以下、保持時間1時間以上24時間以下の加熱処理を行った後に、急冷処理を行うことを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の疲労寿命回復熱処理方法。
【請求項4】
前記転位回復熱処理工程は、微細き裂が発生する前の前記構造部材に対して行われることを特徴とする請求項1から請求項3のいずれか一項に記載の疲労寿命回復熱処理方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、構造部材に熱処理を行うことにより疲労寿命を回復する疲労寿命回復熱処理方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
ガスタービン翼(構造部材)は、高温環境で使用されるため、例えばNi基耐熱合金(Ni基合金)で構成されている。このNi基耐熱合金では、γ’相(Ni(Al,Ti))を時効析出させることによって強度の向上が図られている。
ガスタービン翼には、ガスタービンの起動及び停止に伴い、ガスタービン翼の内部に大きな熱応力が発生する。このような熱応力がガスタービン翼に繰り返し負荷されると、疲労き裂が発生するため補修が行われる。また、ガスタービン翼に生じた疲労き裂が、補修の基準を超えた場合には、ガスタービン翼は廃却処分される。
上記のように、補修基準を超える疲労き裂が発生することは、ガスタービン翼の信頼性を低下させるとともに、使用コストを増大させることになる。
【0003】
ところで、従来、ガスタービン翼の疲労寿命を向上させるために、Ni基合金に含まれる添加元素の組成を変更することで材料強度及び耐熱性を向上させたり、ガスタービン翼の設計を変更することで熱応力を低減したりすることが行われている。しかしながら、このような材料変更や設計変更を行うことは、コストが大幅に増加する問題がある。
【0004】
そこで、例えば特許文献1には、疲労(熱疲労)による損傷が生じたガスタービン翼に対して、高圧下で行われる高圧熱処理を施し、さらに溶体化熱処理と時効処理を施す疲労寿命回復熱処理方法が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2005−350744号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ところで、特許文献1に記載の疲労寿命回復熱処理方法においては、高圧熱処理と溶体化熱処理とが高温で施されるため、これらの熱処理の後にはγ’相は母相中に固溶することになる。このようなγ’相が固溶する高温域で熱処理を施すと、ガスタービン翼(構造部材)が変形するおそれがあるとともに、熱処理にかかるコストが大幅に増加してしまう問題があった。
【0007】
この発明は前述した事情に鑑みてなされたものであって、構造部材の疲労寿命を回復することができ、かつコストが低い疲労寿命回復熱処理方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者らは、上述した課題を解決すべく検討した結果、Ni基合金からなる構造部材の疲労寿命回復熱処理方法において、疲労によって構造部材中に生じた転位が回復する温度で熱処理を行った後にさらに時効処理を施すことによって構造部材の疲労寿命を回復(向上)させることができることを見出した。
本発明は、上記の知見に基づき完成させたものであって、その要旨は以下の通りである。
【0009】
すなわち、本発明の疲労寿命回復熱処理方法は、Ni基合金からなりγ’相が析出している構造部材に熱処理を行うことにより疲労寿命を回復する疲労寿命回復熱処理方法であって、前記構造部材を構成するNi基合金を各温度、各時間で加熱処理を行い、観察を行うことによって、前記γ’相が固溶する温度未満であって前記構造部材中の転位が回復する温度である転移回復温度を予め把握する工程と、疲労が生じた前記構造部材に対して前記転移回復温度で加熱処理を行う転位回復熱処理工程と、前記転位回復熱処理工程の後に、前記γ’相が残存した状態で時効処理を行うことで、γ’相をさらに析出させる時効処理工程と、を備える。
【0010】
本発明の疲労寿命回復熱処理方法によれば、構造部材中の転位が回復する温度で加熱処理を行う転位回復熱処理工程を備えているので、疲労によって構造部材中に生じた転位を回復させ、構造部材中の転位密度を使用前における構造部材の転位密度に近づけることができる。そして、この転位回復熱処理工程の後に、時効処理を行う時効処理工程を備えているので、構造部材の強度を十分に高めることができるとともに、構造部材中の転位が回復しているため、疲労寿命も向上させることができる。
さらに、転位回復熱処理工程における加熱温度は、γ’相が固溶する温度よりも低温域で行うことができる。すなわち、γ’相の固溶を抑制した上で、構造部材中の転位を回復させることができるのである。したがって、上述の疲労寿命回復熱処理方法では、比較的低温で熱処理を行うことができるので、熱処理の際にかかるコストを低減することができる。また、構造部材が熱劣化することも抑制することができる。
また、上述の転位回復熱処理工程においてγ’相を残存させたまま、さらに時効処理を行う構成とされているので、2段時効の効果によってさらに構造部材の時効強度を向上させることが可能となる。
【0011】
前記転位回復熱処理工程では、温度1100℃以上1200℃以下、保持時間1時間以上10時間以下の加熱処理を行った後に、急冷処理を行うことが好ましい。
この場合、構造部材中の転位を確実に回復させ、疲労寿命を向上させることができる。
前記転位回復熱処理工程において加熱温度が1100℃未満の場合は、構造部材中の転位を回復させることができないおそれがあり、1200℃超の場合は、温度が高いためコストが増加する問題がある。保持時間が1時間未満の場合は、構造部材中の転位を十分に回復できないおそれがあり、保持時間が10時間超の場合は、時間が長いためコストが増加する問題がある。
以上のような理由により、好ましい転位回復熱処理工程の温度及び保持時間は、上記の範囲に設定されている。
【0012】
前記時効処理工程では、温度840℃以上860℃以下、保持時間1時間以上24時間以下の加熱処理を行った後に、急冷処理を行うことが好ましい。
この場合、構造部材の時効強度を十分に確保することができる。時効処理工程において、加熱温度が840℃未満の場合は、温度が低いために時効強度が不足するおそれがあり、860℃を超える場合は、過時効となり時効強度が低下するおそれがある。また、保持時間が1時間未満の場合、時間が短いためにγ’相の析出が不十分となり強度が低下するおそれがあり、24時間超の場合、時間が長いためコストが増加する問題がある。
【0013】
また、前記転位回復熱処理工程は、微細き裂が発生する前の前記構造部材に対して行われることが好ましい。
この場合、微細き裂が発生していない構造部材の転位を回復させることで、より確実に構造部材の疲労寿命を回復させることができる。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、構造部材の疲労寿命を回復することができ、かつコストが低い疲労寿命回復熱処理方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
図1】本発明の一実施形態に係る疲労寿命回復熱処理方法のフロー図である。
図2】本発明の実施例において、転位回復熱処理工程前の構造部材の金属組織の図である。
図3】本発明の実施例において、転位回復熱処理工程後の構造部材の金属組織の図である。
図4】本発明の実施例の評価結果を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下に、本発明の実施の形態について添付した図面を参照して説明する。
本発明の実施形態に係る疲労寿命回復熱処理方法は、ガスタービン翼等の構造部材を対象として、構造部材に疲労が生じた場合に、疲労を回復させる方法である。
【0017】
ガスタービン翼等の高温環境下において使用される構造部材は、高強度かつ耐熱性に優れることが求められており、Ni基耐熱合金(Ni基合金)が使用されている。このNi基合金では、γ’相を析出させることにより高強度と耐熱性の両立が図られている。具体的に、Ni基合金としては、インコネル(登録商標)738LC、MGA1400CC(三菱重工業株式会社商標)、MGA1400DS(三菱重工業株式会社商標)等が挙げられる。
本実施形態においては、このNi基合金で構成された構造部材を対象とし、特にインコネル738LCで構成された構造部材を対象としている。
【0018】
例えば、インコネル738LCをはじめとするNi基合金からなるガスタービン翼は、ガスタービンの起動及び停止時に熱応力が負荷されることになり、この熱応力が繰り返し負荷されると疲労き裂が生じる。この疲労き裂が生じた場合、補修が行われたり、き裂が補修基準を超える場合、廃却されたりする。このような補修の回数を低減したり、き裂の進展を遅らせたりすることによりコストを低減できるため、疲労寿命の改善を図ることが必要である。
したがって、本発明の実施形態である疲労寿命回復熱処理方法は、ガスタービン翼に熱応力が繰り返し負荷され疲労破壊が生じる前の段階において、疲労を回復させることを目的としている。すなわち、疲労が生じたガスタービン翼(構造部材)の疲労を回復させ、疲労寿命を向上させることを目的としているのである。
本実施形態に係る疲労寿命回復熱処理方法は、例えば図1に示すように、転位回復熱処理工程S01と時効処理工程S02とを備えている。
【0019】
(転位回復熱処理工程S01)
疲労が生じた構造部材に対して、構造部材中の転位が回復する温度で加熱処理を行う。転位の回復する温度は、例えば構造部材を構成するNi基合金を各温度、各時間で加熱処理を行い、透過型電子顕微鏡(TEM)で観察を行うことによって転位の回復する温度を予め把握しておけば良い。
なお、転位回復熱処理工程S01における加熱温度はγ’相が固溶する温度未満(溶体化温度未満)とされている。
また、転位回復熱処理工程S01において加熱処理は例えば窒素雰囲気で行われる。
さらに、加熱処理後は急冷処理が行われ、窒素ガスやアルゴンガス等を用いたガス冷却などによる急冷とされている。この急冷速度は、例えば3000℃/hrとされている。
【0020】
ここで、転位回復熱処理工程S01では、温度1100℃以上1200℃以下、保持時間1時間以上10時間以下の加熱処理を行うことが好ましい。より好ましくは加熱温度1110℃以上1130℃以下、保持時間2時間以上6時間以下である。
【0021】
(時効処理工程S02)
上記の転位回復熱処理工程S01の後に、時効処理工程S02を実施する。この時効処理工程S02は、γ’相を析出させる工程である。時効処理工程S02の温度は、予め構造部材を構成するNi基合金を各温度、各時間で加熱処理を行い、強度を測定する等によって時効の温度条件を把握しておけば良い。
【0022】
また、時効処理工程S02において加熱処理は例えば窒素雰囲気で行われる。
さらに、加熱処理後は急冷処理が行われ、窒素ガスやアルゴンガス等を用いたガス冷却などによる急冷とされている。この急冷速度は、例えば3000℃/hrとされている。
【0023】
ここで、時効処理工程S02では、加熱温度840℃以上860℃以下、保持時間1時間以上24時間以下の加熱処理を行うことが好ましい。より好ましくは保持時間4時間以上16時間以下である。
以上の工程によって本実施形態である疲労寿命回復熱処理方法が完了する。
【0024】
以上のような構成とされた本実施形態である疲労寿命回復熱処理方法によれば、構造部材中の転位が回復する温度で加熱処理を行う転位回復熱処理工程S01を備えているので、疲労によって構造部材中に生じた転位を回復させ、構造部材中の転位密度を使用前における構造部材中の転位密度に近づけることができる。そして、この転位回復熱処理工程の後に、時効処理を行う時効処理工程S02を備えているので、構造部材の強度を十分に高めることができるとともに、構造部材中の転位が回復しているため疲労寿命も向上させることができる。
【0025】
さらに、転位回復熱処理工程S01における加熱温度は、γ’相が固溶する温度よりも低温域で行うことができる。すなわち、γ’相の固溶を抑制した上で、構造部材中の転位を回復させることができるのである。したがって、上述の疲労寿命回復熱処理方法では、比較的低温で熱処理を行うことができるので、熱処理の際にかかるコストを低減することができる。また、構造部材が熱劣化することも抑制することができる。
また、上述の転位回復熱処理工程においてγ’相を残存させたまま、さらに時効処理を行う構成とされているので、2段時効の効果によってさらに構造部材の時効強度を向上させることが可能となる。
【0026】
転位回復熱処理工程S01において加熱温度が1100℃未満の場合は、構造部材中の転位を回復させることができないおそれがあり、1200℃超の場合は、温度が高いためコストが増加する問題がある。
また、転位回復熱処理工程S01において保持時間が1時間未満の場合は、構造部材中の転位を十分に回復できないおそれがあり、保持時間が10時間超の場合は、時間が長いためコストが増加する問題がある。
以上のような理由により、転位回復熱処理工程S01における加熱温度及び保持時間は、上記の範囲に設定されている。
【0027】
また、時効処理工程S02において加熱温度が840℃未満の場合は、温度が低いために時効強度が不足するおそれがあり、860℃を超える場合は、過時効となり時効強度が低下するおそれがある。
また、時効処理工程S02において保持時間が1時間未満の場合、時間が短いためにγ’相の析出が不十分となり強度が低下するおそれがあり、24時間超の場合、時間が長いためコストが増加する問題がある。
上述のような範囲で転位回復熱処理工程S01、時効処理工程S02を行う場合、特にインコネル738LCの組成で構成された構造部材の疲労寿命を向上させることが可能である。
【0028】
以上、本発明の実施形態に係る疲労寿命回復熱処理方法について説明したが、本発明はこれに限定されることはなく、その発明の技術的思想を逸脱しない範囲で適宜変更可能である。
【0029】
なお、上述の転位回復熱処理工程S01は、微細き裂が発生する前の構造部材に対して行われることが好ましい。この場合、微細き裂が発生していない構造部材の転位を回復させることで、より確実に構造部材の疲労寿命を回復させることができる。ここで、例えば0.1mm以上のき裂を微細き裂として設定すれば良く、材質や形状に応じて微細き裂の大きさを適宜設定すれば良い。
【実施例】
【0030】
以下に、本発明の実施例として行った実験結果について説明する。
(本発明例1)
まず、インコネル738LCの組成のNi基合金を真空溶解により鋳造し、1120℃で2.5時間保持後、急冷して固溶化処理を行った。その後温度850℃で保持時間24時間の条件で時効処理を行い、Ni基合金のサンプルを作製した。
このサンプルに対して、JIS Z 2279に準拠した疲労試験を行い破断寿命の平均の40%の予疲労を与えた。
【0031】
次いで、余疲労を与えたサンプルに対して、1120℃、2.5時間の条件で加熱処理を行い、窒素ガスを用いてガス冷却により急冷処理をした。
次いで、余疲労を与えたサンプルに対して、850℃、24時間の条件でさらに加熱処理(時効処理)を行い、窒素ガスを用いてガス冷却により急冷処理をした。この1120℃で2.5時間後、850℃で24時間の条件で加熱処理を行う前後のサンプルの金属組織についてTEM観察を行い、転位の回復の有無について調べた。
このようにして、本発明例1となる試験片を得た。
【0032】
(本発明例2)
上述のようにして余疲労を与えたサンプルに対して1200℃、2.5時間の条件で加熱処理を行うこと以外は、本発明例1と同様にして本発明例2となる試験片を得た。
(比較例1)
上述のようにして余疲労を与えたサンプルに対して1080℃、2.5時間の条件で加熱処理を行うこと以外は、本発明例1と同様にして比較例1となる試験片を得た。
以上のようにして得られた本発明例1、本発明例2、及び比較例1の試験片について、JIS Z 2279に準拠して疲労試験を行った。
【0033】
一例として、1120℃で2.5時間、850℃で24時間の熱処理を行う前のサンプルの金属組織のTEM像を図2に示す。また、1120℃で2.5時間、850℃で24時間の熱処理を行った後のサンプルの金属組織のTEM像を図3に示す。
また、本発明例1、本発明例2、及び比較例1の疲労試験の結果を図4に示す。なお、図4において、Ni基合金のサンプルに対して余疲労を付与せずに疲労試験を行った場合の疲労寿命を1.0とした場合の各試験片の疲労寿命(疲労寿命比)を示している。また、図4において「余疲労後」とは、余疲労を与えたサンプルを試験片として、加熱処理等を行わずに疲労試験を実施したものである。
【0034】
図2、3に示すように、本発明例1では、金属組織における転位の回復が確認された。なお、本発明例2においても同様に転位の回復が確認されたが、比較例1においては転位の回復は確認されなかった。
【0035】
また、図4に示すように、転位の回復が確認された本発明例1、本発明例2では、疲労寿命の回復が見られたが、比較例1では、疲労寿命の回復が見られなかった。
【符号の説明】
【0036】
S01 転位回復熱処理工程
S02 時効処理工程
図1
図2
図3
図4