(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0012】
<第1実施形態>
(構成)
図1は本発明の第1実施形態に係る蒸気タービン発電プラント100の概略構成図である。なお、本実施形態では、蒸気タービンの各起動モードについて、前回の運転終了後から今回の運転開始までの蒸気タービンの停止時間の長さにより、その時間が短い方からホットスタート、ウォームスタート、コールドスタートと適宜称する。例えば、停止時間T1未満の起動開始がホットスタート、停止時間T1以上T2(>T1)未満の起動開始がウォームスタート、T2以上の起動開始がコールドスタートである(T1、T2は設定値)。また、起動開始時の蒸気タービンのメタル温度で起動モードを区分しても良い。また、本実施形態では、蒸気タービンの部品に作用する熱応力に対して安全面や部品の寿命等を考慮して設定した制限値を熱応力制限値と適宜称する。
【0013】
図1に示すように、蒸気タービン発電プラント100は熱源装置1、蒸気発生装置2、蒸気タービン3、発電機4、熱源媒体量調整装置14、主蒸気加減弁15、及び蒸気タービン起動制御装置21を備えている。本実施形態では、熱源装置1がガスタービンである場合(つまり蒸気タービン発電プラントがコンバインドサイクル発電プラントである場合)を例に挙げて説明する。
【0014】
熱源装置1は熱源媒体5(本実施形態ではガス燃料、液体燃料、水素含有燃料等の燃料)に保有される熱量により低温流体6(本実施形態では燃料とともに燃焼される空気)を加熱し高温流体7(本実施形態ではガスタービンを駆動した燃焼ガス)を生成して蒸気発生装置2に供給する。蒸気発生装置2(本実施形態では排熱回収ボイラ)は熱源装置1で生成された高温流体7の保有熱との熱交換により給水を加熱して蒸気8を生成する。蒸気タービン3は蒸気発生装置2で発生した蒸気8によって駆動する。蒸気タービン3には温度計13が設けられており、蒸気タービン3の初段のケーシング等のメタル温度を計測する。発電機4は蒸気タービン3と同軸に連結され、蒸気タービン3の駆動力を電力に変換する。発電機4の電力は例えば電力系統(不図示)に供給される。
【0015】
熱源媒体量調整装置14(本実施形態では燃料調整弁)は熱源装置1に対する熱源媒体5の供給経路に設けられ、熱源装置1に供給される熱源媒体量を調整する。すなわち、熱源媒体量調整装置14は蒸気タービン発電プラント100のプラント負荷、ここでは蒸気タービン発電プラント100に入力されるエネルギー量を調整する調整装置として機能する。また、熱源媒体5の供給経路における熱源媒体量調整装置14の熱源媒体5の流れ方向の下流側には流量計11が設けられている。流量計11は熱源装置1に対する熱源媒体5の供給量を計測する。
【0016】
主蒸気加減弁15は蒸気発生装置2と蒸気タービン3とを接続する主蒸気配管に設けられ、蒸気タービン3に供給される蒸気8の流量を調整する。すなわち、主蒸気加減弁15は蒸気タービン発電プラント100のプラント負荷、ここでは蒸気タービン3の作動媒体量を調整する調整装置として機能し得る。また、主蒸気配管における主蒸気加減弁15の蒸気8の流れ方向の下流側(蒸気タービン3側)には圧力計12が設けられている。圧力計12は主蒸気配管を流れる蒸気(主流蒸気)8の圧力を計測する。
【0017】
蒸気タービン起動制御装置21には蒸気タービン発電プラント100のプラント状態量、例えば蒸気タービン発電プラント100の構成要素や作動媒体の温度や圧力、流量等の状態量を示す各種計測値が計測値データ16として入力される。本実施形態では、流量計11で計測された熱源媒体5の供給量、圧力計12で計測された蒸気8の圧力、温度計13で計測された蒸気タービン3の初段のメタル温度が計測値データ16として蒸気タービン起動制御装置21に入力される。なお、タービンロータに生じる熱応力の計算に必要な値は計算方法によって異なり得るので、これら以外の計測値をプラント状態量としてさらに蒸気タービン起動制御装置21に入力する場合もある。例えば、主蒸気加減弁15の蒸気8の流れ方向の下流側(蒸気タービン3側)の位置に温度計を設け、主蒸気配管を流れる蒸気8の温度を計測して蒸気タービン起動制御装置21に入力する場合もある。蒸気タービン起動制御装置21は、計測値データ16に基づき蒸気タービン発電プラント100を制御するための指令値をプラント指令値17として出力する。本実施形態では、熱源媒体量調整装置14に対する熱源媒体調整指令値、及び主蒸気加減弁15に対する主蒸気加減指令値がプラント指令値17として蒸気タービン起動制御装置21から出力される。
【0018】
蒸気タービン起動制御装置21は、寿命消費量計算装置22、寿命消費量記憶装置23、熱応力制限値更新タイミング決定装置24、寿命消費量積算値計算装置25、寿命消費量計画値設定装置26、熱応力制限値計算装置27、及びプラント指令値計算装置28等の構成要素を備えている。各構成要素について次に順次説明していく。
【0019】
寿命消費量計算装置22は、入力された計測値データ16に基づき、一回の起動によるタービンロータの寿命消費量(タービンロータ寿命消費量)LCを計算する。ここでは、まず、圧力計12で計測された主蒸気配管を流れる蒸気8の圧力、温度系13で計測された蒸気タービン3の第1段メタル温度に基づき、タービンロータへの伝熱計算によりタービンロータの半径方向の温度分布が計算される。次に、タービンロータの線膨張率、ヤング率、ポアソン比等を用いた材料力学計算によってタービンロータの熱応力が計算される。このようにして計算された毎時刻の熱応力に基づき、一回の起動過程におけるタービンロータの熱応力ピーク値σmaxが計算される。ここでいう毎時刻の熱応力とは、蒸気タービン起動制御装置21による演算サイクル毎の熱応力の計算値をいう。ここで、寿命消費量LCは熱応力ピーク値σmaxの関数で表すことができる(
図11を参照)。
図11はタービンロータに発生する熱応力とタービンロータの寿命消費量との関係を表した図である。
図11に示すように、タービンロータの寿命消費量は蒸気タービンの起動開始から運転停止までの一サイクルの間に発生する熱応力ピーク値σmaxの関数である。蒸気タービン30に流入する蒸気の温度及び圧力(計測値データ16)からタービンロータの熱応力を所定の計算周期で計算し、蒸気タービン30の起動開始から運転停止までの最大値σmaxを算出することにより、
図11の関数から一回の起動によるタービンロータの寿命消費量LCを求めることができる。従って、σmaxの関数を寿命消費量計算装置22の記憶領域(不図示)に格納しておけば、当該記憶領域から読み出した関数を基に、熱応力ピーク値σmaxより寿命消費量LCを計算することができる。
【0020】
寿命消費量記憶装置23は、寿命消費量計算装置22で計算された一回の起動によるタービンロータの寿命消費量LCをハードディスク等の記憶装置に記憶する。
【0021】
熱応力制限値更新タイミング決定装置24は、熱応力制限値を更新するタイミングを決定する。更新するタイミングは、例えば、一定時間運転後の定期点検時である。以降、前
々回の熱応力制限値更新タイミングから
前回の熱応力制限値更新タイミングまでの期間を前回期間、
前回の熱応力制限値更新タイミングから次回の熱応力制限値更新タイミングまでの期間を次回期間と呼ぶ。熱応力制限値更新タイミング決定装置24には計時するタイマ(不図示)が備えられており、例えば前回の熱応力制限値を更新するタイミングからの経過時間が設定時間に達したら前回期間から次回期間に期間を切り換える。本実施形態では、次回期間の時間間隔は前回期間と同一の時間間隔とする。これら期間は蒸気タービン発電プラント100の起動開始から運転停止までのサイクルを少なくとも1サイクル含むこととする。
【0022】
寿命消費量積算値計算装置25は、熱応力制限値更新タイミング決定装置24で決定されるタイミングにて、寿命消費量記憶装置23に記憶されている一回の起動によるタービンロータの寿命消費量LCに基づき前回期間に属する寿命消費量LCを、起動モードごとに、すなわちホットスタート、ウォームスタート、コールドスタートごとに積算し、前回期間でのタービンロータの寿命消費量積算値(タービンロータ寿命消費量積算値)を計算する。
【0023】
寿命消費量計画値設定装置26は、前回期間でのタービンロータの寿命消費量積算値に基づき、プラント運用計画時において、各起動モードの一年間の起動回数と、プラント運用年数に対する各起動モードの寿命消費量計画値を想定することにより、各起動モードについて、次回期間での一回の運転あたりの寿命消費量計画値(タービンロータ寿命消費量計画値)LC0を設定する。寿命消費量計画値設定装置26の詳細については
図2乃至
図4を用いて後述する。
【0024】
熱応力制限値計算装置27は、次回期間でのタービンロータの寿命消費量計画値LC0に基づき、各起動モードについて、タービンロータの熱応力制限値を計算し、更新する。熱応力制限値は、各起動モードに対して、一回の起動によるタービンロータの寿命消費量が寿命消費量計画値を超えないように、すなわちLC≦LC0となるように決定される。具体的には、熱応力制限値は、熱応力−寿命消費量曲線300(
図11を参照)より、寿命消費量計画値LC0に対応するσmax0を求めることにより計算される。
【0025】
プラント指令値計算装置28は計測値データ16に基づきプラント指令値17を決定し熱源媒体量調整装置14及び主蒸気加減弁15に出力する。前述したように、本実施形態ではプラント指令値17は熱源媒体調整指令値及び主蒸気加減指令値であり、熱源媒体量調整装置14及び主蒸気加減弁15の操作量(本実施形態では弁開度)はこの熱源媒体調整指令値及び主蒸気加減指令値に応じて例えばPID制御によって調整される。このとき、プラント指令値計算装置28には低値選択器(不図示)が備えられており、計測値データ16を基にして計算した指令値と熱応力制限値計算装置27から入力された熱応力制限値のうち値の小さい方がプラント指令値17として選択される。従って、タービンロータの熱応力が熱応力制限値計算装置27で設定された熱応力制限値内に抑えられる。
【0026】
図2は寿命消費量計画値設定装置26の詳細を表すブロック図である。
【0027】
図2に示すように、寿命消費量計画値設定装置26は寿命消費量偏差計算装置29及び寿命消費量計画値計算装置30を備えている。各装置について次に順次説明していく。
【0028】
寿命消費量偏差計算装置29は、寿命消費量積算値計算装置25で計算された、起動モードごとの前回期間でのタービンロータの寿命消費量積算値に基づき起動モードごとの寿命消費量偏差を計算する。寿命消費量偏差は、前回期間の寿命消費量計画値より寿命消費量積算値を差し引くことにより計算される。
【0029】
寿命消費量計画値計算装置30は、寿命消費量偏差に基づき起動モードごとの次回期間での寿命消費量計画値を計算する。次回期間での寿命消費量計画値は、前回期間での寿命消費量計画値に寿命消費量偏差を加えることにより計算される。
【0030】
(動作)
次に、蒸気タービン起動制御装置21の熱応力制限値の更新手順について
図3を参照して説明する。
【0031】
図3に示すように、寿命消費量計算装置22に計測データ16が入力される(S101)。寿命消費量計算装置22は、入力された計測値データ16に基づき一回の起動によるタービンロータの寿命消費量LCを計算し(S102)、寿命消費量記憶装置23に出力する。寿命消費量記憶装置23は、入力された一回の起動によるタービンロータの寿命消費量LCをハードディスク等の記憶装置に記憶する(S103)。熱応力制限値更新タイミング決定装置24は、熱応力制限値を更新するタイミングに達したか否かを判断し、熱応力制限値を更新するタイミングに達している場合には寿命消費量積算値計算装置25に対し信号を出力する(S104)。なお、熱応力制限値を更新するタイミングに達していない場合にはS101まで戻り、再びS101−103の処理が行われる。寿命消費量積算値計算装置25は、入力されたタイミングにて、寿命消費量記憶装置23に記憶されている一回の起動によるタービンロータの寿命消費量LCに基づき前回期間に属する寿命消費量LCを、起動モードごとに積算し、前回期間でのタービンロータの寿命消費量積算値を計算する(S105)。そして、寿命消費量積算値計算装置25はこれを寿命消費量計画値設定装置26の寿命消費量偏差計算装置29に出力する。
【0032】
寿命消費量偏差計算装置29は、寿命消費量積算値計算装置25で計算された、起動モードごとの前回期間でのタービンロータの寿命消費量積算値に基づき起動モードごとの寿命消費量偏差を計算し(S106)、寿命消費量計画値計算装置30に出力する。寿命消費量計画値計算装置30は、寿命消費量偏差に基づき起動モードごとの次回期間での寿命消費量計画値を計算し(S107)、熱応力制限値計算装置27に出力する。
【0033】
熱応力制限値計算装置27は、入力された次回期間でのタービンロータの寿命消費量計画値LC0に基づき、各起動モードに対する、タービンロータの熱応力制限値を計算し、更新する(S108)。そして、熱応力制限値計算装置27はこれをプラント指令値計算装置28に出力し、
図3に示す手順は終了する(S109)。そして、蒸気タービン発電プラント100の稼働中、蒸気タービン起動制御装置21は以上の手順を繰り返し実行する。
【0034】
プラント指令値計算装置28は、計測値データ16を基に指令値を計算しつつ、熱応力制限値計算装置27から入力された熱応力制限値と比較して小さい方の値をプラント指令値17として熱源媒体量調整装置14及び主蒸気加減弁15に出力する。
【0035】
(効果)
図12はプラント運用計画時における、各起動モード一回の運転あたりの寿命消費量計画値の一般的な設定例を示した図である。
【0036】
図12の例では、ホットスタート、ウォームスタート、コールドスタートの一年間の起動回数をそれぞれ100回、15回、2回とし、プラント運用年数30年に対する各起動モードの寿命消費量計画値をそれぞれ35%、35%、5%と想定して、これより各起動モードの寿命消費量計画値LC0をそれぞれ0.012%、0.078%、0.083%と設定している。そして、各起動モードに対して、一回の起動によるタービンロータの寿命消費量がそれぞれ0.012%、0.078%、0.083%を超えないように、起動制御における熱応力に対する制限値が決定される。このように、プラントの運用実績を考慮することなく計画時に設定した制限値がプラント運用年数(ここでは30年)を通して採用されるのが通常であった。
【0037】
図4は寿命消費量計画値設定装置26で設定される、起動モードごとの次回期間での寿命消費量計画値を設定した例を示した図である。
【0038】
図4において、2行目は一年間あたりの起動回数50、3行目は前回期間での積算寿命消費量51、4行目は前回期間での寿命消費量計画値52、5行目は前回期間での起動一回あたりの寿命消費量計画値53、6行目は前回期間での寿命消費量偏差54、7行目は次回期間での寿命消費量計画値55、8行目は次回期間での起動一回あたりの寿命消費量計画値56を示している。また、
図4に示す例では、前回期間と次回期間の時間間隔は2年間としている。前回期間での寿命消費量計画値52より前回期間での積算寿命消費量51を差し引くことにより、前回期間での寿命消費量偏差54が得られる。さらに、前回期間での寿命消費量計画値52に前回期間での寿命消費量偏差54を加えることにより、次回期間での寿命消費量計画値55が得られる。また、前回期間での起動一回あたりの寿命消費量計画値53、次回期間での起動一回あたりの寿命消費量計画値56は、前回期間での寿命消費量計画値52、次回期間での寿命消費量計画値55を、各起動モードに対する2年間の起動回数でそれぞれ割ることにより計算される。
【0039】
図4に示す例では、ホットスタート、ウォームスタートでは前回期間において寿命消費量計画値より寿命消費量積算値の方が小さいため、寿命消費量偏差は正値となり、次回期間の寿命消費量計画値は前回期間よりも大きくなる。一方、コールドスタートでは前回期間において寿命消費量計画値より寿命消費量積算値の方が大きいため、寿命消費量偏差は負値となり、次回期間の寿命消費量計画値は前回期間よりも小さくなる。前回期間での起動一回あたりの寿命消費量計画値53と、次回期間での起動一回あたりの寿命消費量計画値56とを比較すると、ホットスタート、ウォームスタートでは、次回期間の方が大きくなっている。起動一回あたりの寿命消費量計画値が大きくなると、
図11に示す熱応力−寿命消費量曲線300より、タービンロータの熱応力制限値も大きくなり、プラントをより高速に起動することができる。一方、コールドスタートでは、次回期間の方が小さくなっており、タービンロータの熱応力制限値も小さくなるので、プラントの起動により時間がかかることとなる。しかしながら、コールドスタートにおける寿命消費量を抑えることができる。
【0040】
上述した通り、本実施形態では運転実績に基づいて得られる寿命消費量積算値が寿命消費量計画値より小さい場合は、その偏差を余裕として今後の寿命消費量計画値に加えることにより、タービンロータの熱応力制限値を大きく設定することができ、プラントをより高速に起動することができる。一方、寿命消費量積算値が寿命消費量計画値より大きい場合は、その偏差を今後の寿命消費量計画値より差し引くことにより、タービンロータの熱応力制限値を小さく設定し、寿命消費量を抑えて起動することができる。その結果、プラントの運用実績を考慮した上で熱応力を制限値内に保ってプラントを安全かつ高速に起動することができる。
【0041】
<第2実施形態>
図5は本実施形態に係る蒸気タービン発電プラント101の概略構成図である。
図5において、上記第1実施形態と同等の部分については同一の符号を付し、適宜説明を省略する。
【0042】
(構成)
本実施形態は、起動モードに重み付けをして次回期間での寿命消費量計画値を設定する点で第1実施形態と異なる。具体的には、
図5に示すように、蒸気タービン起動制御装置21が寿命消費量偏差配分比入力装置100を更に備え、寿命消費量計画値設定装置126が、寿命消費量積算値計算装置25の出力に加えて寿命消費量偏差配分比入力装置100の出力値を入力としている。以下では、寿命消費量偏差配分比入力装置100及び寿命消費量計画値設定装置126について説明する。
【0043】
寿命消費量偏差配分比入力装置100は、各起動モードへの寿命消費量偏差の配分比を格納する。寿命消費量偏差の配分比とは、運用状況等を適宜考慮して操作者が入力設定した値であり、その設定によって各起動モードに割り振られる寿命消費量が変化する。つまり、配分比の設定によって起動モード毎の重み付けをすることができる。
【0044】
図6は寿命消費量計画値設定装置126のブロック図である。
図6に示すように、本実施形態に係る寿命消費量計画値設定装置126は、寿命消費量偏差計算装置29、寿命消費量偏差配分値計算装置100及び寿命消費量偏差配分値計算装置101を備えている。本実施形態においては寿命消費量計画値計算装置130は、寿命消費量偏差配分値計算装置101の出力値を基に起動モード毎の次回期間での寿命消費量計画値を計算する(後述)。
【0045】
その他の点は第1実施形態と同様である。
【0046】
(動作)
次に、寿命消費量計画値設定装置126の動作について説明する。寿命消費量計画値設定装置126以外の処理内容は第1実施形態と同様である。
【0047】
図6に示すように、寿命消費量計画値設定装置126の寿命消費量偏差配分値計算装置101は、寿命消費量偏差計算装置29より出力される前回期間の寿命消費量偏差と、寿命消費量偏差配分比入力装置100より入力される配分比(タービンロータ寿命消費量偏差配分比)に基づき、各起動モードへの寿命消費量偏差配分値を計算する。そして、寿命消費量偏差配分値計算装置101はこの寿命消費量偏差配分値を寿命消費量計画値計算装置130に出力する。各起動モードの寿命消費量偏差をLCMG_i、配分比をω_i、寿命消費量偏差配分値をDLC_iとすると(i=1がホットスタート、i=2がウォームスタート、i=3がコールドスタートを表す)、寿命消費量偏差配分値DLC_iは以下の式により計算される。
【0048】
ω_T =ω_1+ω_2+ω_3・・・(式160)
LCMG_T = MAX(LCMG_1,0)+MAX(LCMG_2,0)+MAX(LCMG_3,0)・・・(式161)
DLC_i= MIN(LCMG_i,0)+LCMG_T ×ω_i/ω_T・・・(式162)
【0049】
寿命消費量計画値計算装置130は、寿命消費量偏差配分値計算装置101から入力された寿命消費量偏差配分値などに基づき、起動モード毎の次回期間での寿命消費量計画値を計算する。そして、寿命消費量計画値計算装置130はこの寿命消費量計画値を熱応力制限値計算装置27に出力する。次回期間での寿命消費量計画値は、前回期間での寿命消費量計画値に寿命消費量偏差配分値を加えることにより計算される。
【0050】
図7は寿命消費量計画値設定装置126で設定される、起動モードごとの次回期間での寿命消費量計画値の例を示した図である。
【0051】
図7において、7行目は各起動モードへの寿命消費量偏差配分比150、8行目は寿命消費量偏差配分値151を示している。それ以外は、
図4と同様である。寿命消費量偏差配分値151は、寿命消費量偏差配分値計算装置101によって前回期間での寿命消費量偏差54と寿命消費量偏差配分比150に基づき、式160−162により計算される。さらに、前回期間での寿命消費量計画値52に寿命消費量偏差配分値151を加えることにより、次回期間での寿命消費量計画値55が得られる。
【0052】
図7に示す例では、次回期間のウォームスタートの起動時間を短くするために、ホットスタート、ウォームスタート、コールドスタートに対する偏差配分比を0:1:0とし、前回期間の寿命消費量偏差の全てを次回期間のウォームスタートに割り振っている。その結果、
図4に示す例と比較して、ウォームスタートでの次回期間での起動一回あたりの寿命消費量計画値56は大きくなっている。従って、ウォームスタートでのタービンロータの熱応力制限値も大きくなり、プラントをより高速に起動することができる。一方、ホットスタートでの次回期間での起動一回あたりの寿命消費量計画値56は
図4に示す例と比較して小さくなり、
図7に示す例における前回期間での起動一回あたりの寿命消費量計画値53と同じ値となっている。これにより、ホットスタートでのタービンロータの熱応力制限値は、前回期間と同じ値となり、プラントの起動時間も同じとなる。
【0053】
(効果)
上記構成により、本実施形態では第1実施形態で得られる各効果に加えて、次の効果が得られる。
【0054】
本実施形態では、各起動モードに対する偏差配分比を入力し、これを基に計算した偏差配分値に基づき次回期間の寿命消費量計画値を決定している。そのため、起動モードに優先順位をつけて、プラントの運用実績を考慮した上で、熱応力を制限値内に保ってプラントを安全かつ高速に起動することができる。
【0055】
<第3実施形態>
図8は本実施形態に係る蒸気タービン発電プラント102の概略構成図である。
図8において、上記第2実施形態と同等の部分については同一の符号を付し、適宜説明を省略する。
【0056】
(構成)
本実施形態は、次回期間での1年間の起動回数を指定して、次回期間での寿命消費量計画値を設定する点で第2実施形態と異なる。具体的には、
図8に示すように、蒸気タービン起動制御装置21は、起動回数入力装置200を新たに要素として含み、寿命消費量計画値設定装置226が、寿命消費量積算値計算装置25及び寿命消費量偏差配分比入力装置100の出力値に加えて起動回数入力装置200の出力値を入力としている。以下では、起動回数入力装置200及び寿命消費量計画値設定装置226について説明する。
【0057】
起動回数入力装置200は、次回期間中の1年間当たりの各起動モードの予定起動回数を格納している。これら回数は操作者により入力設定された値である。
【0058】
図9は寿命消費量計画値設定装置226のブロック図である。
図9に示すように、寿命消費量計画値設定装置226は、寿命消費量偏差計算装置229、寿命消費量偏差配分値計算装置201、及び寿命消費量計画値計算装置130を備えている。寿命消費量偏差計算装置229は起動モードごとの寿命消費量偏差を計算する。寿命消費量偏差配分値計算装置201は各起動モードへの寿命消費量偏差配分値を計算する。
【0059】
その他の点は第2実施形態と同様である。
【0060】
(動作)
次に、寿命消費量計画値設定装置226の動作について説明する。寿命消費量計画値設定装置226以外の処理内容は第2実施形態と同様である。
【0061】
寿命消費量偏差計算装置229は、寿命消費量積算値計算装置25で計算された起動モードごとの前回期間でのタービンロータの寿命消費量積算値と、起動回数入力装置200から入力された各起動モードに対する次回期間での1年間の起動回数とに基づいて、起動モードごとの寿命消費量偏差を計算する。寿命消費量偏差計算装置229は、この寿命消費量偏差を寿命消費量偏差配分値計算装置201に出力する。前回期間での寿命消費量偏差は、前回期間の寿命消費量計画値より寿命消費量積算値を差し引くことにより計算される。また、次回期間での1年間の起動回数NSC_iが、前回期間での1年間の起動回数NSP_iより減少することにより生じる寿命消費量偏差LCMGS_iは、前回期間での寿命消費量計画値をLC0_iとして、以下の式により計算される。
【0062】
LCMGS_i = LC0_i x MAX (NSP_i−NSC_i,0) / NSP_i・・・(式260)
【0063】
寿命消費量偏差配分値計算装置201は、寿命消費量偏差計算装置229から出力される前回期間の寿命消費量偏差と、寿命消費量偏差配分比入力装置100より入力される配分比に基づき、各起動モードへの寿命消費量偏差配分値を計算する。配分値DLC_iは以下の式により計算される。
【0064】
LCMGS_T = LCMGS_1+LCMGS_2+LCMGS_3・・・(式261)
DLC_i= MIN(LCMG_i,0)+(LCMG_T+LCMG_T) ×ω_i/ω_T・・・(式262)
【0065】
式262において、ω_TとLCMG_Tは、それぞれ式160、161において計算される要素である。
【0066】
図10は寿命消費量計画値設定装置226で設定される、起動モードごとの次回期間での寿命消費量計画値の例を示した図である。
【0067】
図10において、7行目は次回期間での1年間の起動回数250、8行目は起動回数減少により生じる寿命消費量偏差252、10行目は寿命消費量偏差配分値251を示している。それ以外は、
図7と同様である。
【0068】
起動回数減少により生じる寿命消費量偏差252は、前回期間での1年間の起動回数50、次回期間での1年間の起動回数250、前回期間での寿命消費量計画値52に基づき、式260により計算される。また、寿命消費量偏差配分値251は、前回期間での寿命消費量偏差54、起動回数減少による寿命消費量偏差252、寿命消費量偏差配分比150に基づき、式160、161、261、262より計算される。さらに、前回期間での寿命消費量計画値52に寿命消費量偏差配分値251を加えることにより、次回期間での寿命消費量計画値55が得られる。
【0069】
図10に示す例では、1年間の起動回数が、ホットスタートでは100回から80回に変更され、ウォームスタートでは15回から30回に変更されている。ウォームスタートでは、起動回数が増えることにより起動一回あたりの寿命消費量は減少するが、前回期間の寿命消費量偏差と、ホットスタートの起動回数が減少することにより生じる寿命消費量偏差とが次回期間のウォームスタートに割り振られる。その結果、
図7に示す例と比較して、ウォームスタートでの次回期間での起動一回あたりの寿命消費量計画値56は更に大きくなる。従って、ウォームスタートでのタービンロータの熱応力制限値も大きくなり、プラントをより高速に起動することができる。
【0070】
(効果)
上記構成により、本実施形態では前述した各実施形態で得られる各効果に加えて、次の効果が得られる。
【0071】
本実施形態では1年間の起動回数を変更したことにより生じる寿命消費量偏差を次回期間での寿命消費量計画値に反映している。従って、次回期間での1年間の起動回数を指定し、かつ、起動モードに優先順位をつけて、プラントの運用実績を考慮した上で、熱応力を制限値内に保ってプラントを安全かつ高速に起動することができる。
【0072】
<その他>
本発明は上記した各実施形態に限定されるものではなく、様々な変形例が含まれる。例えば、上記した実施形態は本発明を分かりやすく説明するために詳細に説明したものであり、必ずしも説明した全ての構成を備えるものに限定されるものではない。例えば、ある実施形態の構成の一部を他の実施形態の構成に置き換えることが可能であり、また、ある実施形態の構成に他の実施形態の構成を追加することも可能である。また、各実施形態の構成の一部について、他の構成の追加、削除及び置換をすることも可能である。
【0073】
各実施形態において、熱応力制限値更新タイミング決定装置24が熱応力制限値を更新するタイミングを一定時間運転後の定期点検時として説明した。しかしながら、本発明の本質的効果はプラントの運用実績を考慮した上で熱応力を制限値内に保ってプラントを安全かつ高速に起動することであり、この本質的効果を得る限りにおいては熱応力制限値を更新するタイミングは必ずしも限定されない。例えば、熱応力制限値を更新するタイミングを前回の熱応力制限値更新タイミングからのタービンロータの寿命消費量の積算値が予め設定した値を超えた場合としてもよい。また、熱応力制限値を更新するタイミングを一定時間運転後の定期点検時、及び前回の熱応力制限値更新タイミングからのタービンロータの寿命消費量の積算値が予め設定した値を超えた場合としても良い。
【0074】
また、各実施形態において、本発明をコンバインドサイクル発電プラントに適用した場合を例に挙げて説明した。しかしながら、本発明はコンバインドサイクル発電プラントに限らず、例えば汽力発電プラントや太陽熱発電プラントに代表される蒸気タービンを包含する発電プラントの全てに本発明は適用可能であり、プラントの起動手順はコンバインドサイクル発電プラントに適用した場合と同様である。
【0075】
本発明を汽力発電プラントに適用した場合、例えば熱源媒体5には石炭や天然ガス、低温流体には空気や酸素、熱源媒体調整装置14には燃料調整弁、熱源装置1にはボイラ中の火炉、高温流体には燃焼ガス、蒸気発生装置2にはボイラ中の伝熱部(蒸気発生部)を採用することができる。
【0076】
本発明を太陽熱発電プラントに適用した場合、例えば熱源媒体5には太陽光、熱源媒体調整装置14には集熱パネルの駆動装置、熱源装置1には集熱パネル、低温流体及び高温流体には油や高温溶媒塩等の太陽熱エネルギーを変換して保有する媒体を採用することができる。