特許第6245743号(P6245743)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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  • 特許6245743-石炭不活性化処理装置 図000002
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6245743
(24)【登録日】2017年11月24日
(45)【発行日】2017年12月20日
(54)【発明の名称】石炭不活性化処理装置
(51)【国際特許分類】
   C10L 9/06 20060101AFI20171211BHJP
   F27D 9/00 20060101ALI20171211BHJP
   F27B 7/16 20060101ALI20171211BHJP
   C10L 9/08 20060101ALI20171211BHJP
【FI】
   C10L9/06
   F27D9/00
   F27B7/16
   C10L9/08
【請求項の数】3
【全頁数】11
(21)【出願番号】特願2013-252743(P2013-252743)
(22)【出願日】2013年12月6日
(65)【公開番号】特開2015-110689(P2015-110689A)
(43)【公開日】2015年6月18日
【審査請求日】2016年9月1日
(73)【特許権者】
【識別番号】000006208
【氏名又は名称】三菱重工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100078499
【弁理士】
【氏名又は名称】光石 俊郎
(74)【代理人】
【識別番号】230112449
【弁護士】
【氏名又は名称】光石 春平
(74)【代理人】
【識別番号】100102945
【弁理士】
【氏名又は名称】田中 康幸
(74)【代理人】
【識別番号】100120673
【弁理士】
【氏名又は名称】松元 洋
(74)【代理人】
【識別番号】100182224
【弁理士】
【氏名又は名称】山田 哲三
(72)【発明者】
【氏名】中川 慶一
(72)【発明者】
【氏名】大本 節男
【審査官】 森 健一
(56)【参考文献】
【文献】 特開2002−130629(JP,A)
【文献】 特開2013−189554(JP,A)
【文献】 特開2007−031275(JP,A)
【文献】 特開平11−310785(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C10L 9/00− 9/12
F27B 5/00− 7/42
F27D 7/00−15/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
酸素を含有する処理ガスで石炭の不活性化を行う石炭不活性化処理装置において、
前記石炭および前記処理ガスが内部に供給され、回転可能に設けられたキルン本体と、
前記キルン本体と共に回転可能に設けられると共に、前記キルン本体の長手方向に延在して設けられ、内部を冷却水が流通する送給管とを備え、
前記送給管の外周部にその径方向へ突出する羽根を一対設け、
前記送給管および前記一対の羽根を、前記キルン本体が回転したときに前記キルン本体内にて前記石炭が堆積してなる石炭層を通過するように配置すると共に、
前記送給管の中心軸が通る軌跡の接線と前記一対の羽根の二等分線のなす角が0度〜40度となり且つ前記一対の羽根の一方と前記二等分線とのなす羽根角が石炭の安息角よりも大きくなるように、前記一対の羽根が配置される
ことを特徴とする石炭不活性化処理装置。
【請求項2】
請求項に記載された石炭不活性化処理装置であって、
前記羽根角が45度〜85度である
ことを特徴とする石炭不活性化処理装置。
【請求項3】
請求項1又は請求項に記載された石炭不活性化処理装置であって、
前記羽根の前記送給管の径方向の最小長さは、当該送給管の半径の5%〜45%である
ことを特徴とする石炭不活性化処理装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、酸素を含有する処理ガスで石炭の不活性化処理を行う石炭不活性化処理装置に関する。
【背景技術】
【0002】
乾留された石炭は、表面が活性化して酸素と結合しやすくなるため、そのまま保管すると、空気中の酸素との反応熱で自然発火してしまうおそれがある。このため、酸素を含有する処理ガス雰囲気中に、乾留された石炭を曝すことにより、当該石炭の表面に酸素を先に結合させて当該石炭の不活性化を図り、保管時の自然発火を防止するようにしている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2007−237011号公報
【特許文献2】国際公開第95/13868号パンフレット
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、乾留された石炭を不活性化処理する装置として、乾留された石炭および処理ガスが供給されるロータリキルンを設け、当該ロータリキルン内にてその周方向で隣接して配置され、冷却水が流通する送給管を複数設けた石炭不活性化処理装置が検討されている。
【0005】
上述した石炭不活性化処理装置は、ロータリキルンおよび複数の送給管が回転されることで、送給管内を流通する冷却水により石炭を冷却しつつ、ロータリキルン本体の回転により石炭を撹拌すると共に、複数の送給管がロータリキルン内にて石炭が堆積してなる石炭層内を通過し当該石炭を石炭層表面よりも上方へ持ち上げ上方から石炭層表面に落下することでも石炭を撹拌することで、処理ガスにより石炭を不活性化処理している。
【0006】
しかしながら、前記石炭不活性化処理装置は、前記石炭の不活性化処理をさらに効率良く行うことが求められている。
【0007】
このようなことから、本発明は、前述した課題を解決するために為されたものであって、石炭の自然発火の防止を図りつつ、石炭の表面への酸素の吸着を効率良く行うことができる石炭不活性化処理装置を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上述した課題を解決する第1の発明に係る石炭不活性化処理装置は、酸素を含有する処理ガスで石炭の不活性化を行う石炭不活性化処理装置において、前記石炭および前記処理ガスが内部に供給され、回転可能に設けられたキルン本体と、前記キルン本体と共に回転可能に設けられると共に、前記キルン本体の長手方向に延在して設けられ、内部を冷却水が流通する送給管とを備え、前記送給管の外周部にその径方向へ突出する羽根を一対設け、前記送給管および前記一対の羽根を、前記キルン本体が回転したときに前記キルン本体内にて前記石炭が堆積してなる石炭層を通過するように配置すると共に、前記送給管の中心軸が通る軌跡の接線と前記一対の羽根の二等分線のなす角が0度〜40度となり且つ前記一対の羽根の一方と前記二等分線とのなす羽根角が石炭の安息角よりも大きくなるように、前記一対の羽根が配置されることを特徴とする。
【0010】
上述した課題を解決する第の発明に係る石炭不活性化処理装置は、前述した第の発明に係る石炭不活性化処理装置であって、前記羽根角が45度〜85度であることを特徴とする。
【0011】
上述した課題を解決する第の発明に係る石炭不活性化処理装置は、前述した第1又はの発明係る石炭不活性化処理装置であって、前記羽根の前記送給管の径方向の最小長さは、当該送給管の半径の5%〜45%であることを特徴とする。
【発明の効果】
【0012】
本発明に係る石炭不活性化処理装置によれば、送給管および一対の羽根を、キルン本体が回転したときにキルン本体内にて石炭が堆積してなる石炭層を通過するように配置すると共に、前記送給管の中心軸が通る軌跡の接線と前記一対の羽根の二等分線のなす角が0度〜40度となり且つ前記一対の羽根の一方と前記二等分線とのなす羽根角が石炭の安息角よりも大きくなるように、前記一対の羽根が配置されることで、送給管内を流通する冷却水により石炭を冷却しつつ、キルン本体の回転により石炭を撹拌すると共に、送給管および一対の羽根により所定の量の石炭をキルン本体内の石炭層表面よりも上方に持ち上げ上方より落下させて石炭を撹拌して、当該石炭と処理ガスを効率良く接触させることができる。これにより、石炭の自然発火の防止を図りつつ、石炭の表面への酸素の吸着を効率良く行うことができる。よって、送給管に羽根を設けていない場合と比べて、キルン本体の全長を短くすることができ、装置の小型化を図ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1】本発明に係る石炭不活性化処理装置の一実施形態の概略構成図である。
図2図1におけるII−II矢視断面を拡大した図である。
図3】前記石炭不活性化処理装置が具備する送給管の拡大図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
本発明に係る石炭不活性化処理装置の一実施形態を図面に基づいて説明するが、本発明は、図面に基づいて説明する以下の実施形態のみに限定されるものではない。
【0015】
本発明に係る石炭不活性化処理装置の一実施形態を図1図3に基づいて説明する。
【0016】
図1に示すように、乾留された石炭1を不活性化処理する石炭不活性化処理装置100は、乾留された石炭1を受け入れるホッパ101と、ホッパ101の送出口に基端側が連絡して設けられ、前記ホッパ101内の前記石炭1を回転して一端側(基端側)から他端側(先端側)へ搬送する回転式搬送手段であるスクリューフィーダ102とを備える。
【0017】
スクリューフィーダ102の先端側は、円筒状をなすロータリキルン本体(キルン本体)103の基端側に連絡している。ロータリキルン本体103の基端側は、シール装置108を介して基端側ケーシング111と連絡している。基端側ケーシング111の上部には処理ガス13を導入するガス受入口111aが設けられる。ガス受入口111aは、処理ガス13を供給する処理ガス供給管121の先端側が接続している。処理ガス供給管121の途中には、ブロア127および加熱装置128が設けられている。
【0018】
処理ガス供給管121の基端側には、空気11を供給する空気供給管122の先端側と、窒素ガス12を供給する窒素供給管123の先端側とが接続している。空気供給管122の基端側は大気開放されている。窒素供給管123の基端側は、窒素ガスタンクなどのような窒素供給源124と接続している。空気供給管122および窒素供給管123の途中には、流量調整弁125,126がそれぞれ設けられている。
【0019】
ロータリキルン本体103の先端側は、シール装置109a,109bを介して先端側ケーシング112と連絡している。先端側ケーシング112の上部には使用済みの処理ガス14を排出するガス排出口112aが設けられる。ガス排出口112aは、使用済みの処理ガス14を排出する処理ガス排出管131の基端側が接続している。処理ガス排出管131の途中に温度センサ131aが設けられている。先端側ケーシング112の下部に不活性化処理済みの石炭(改質炭)3を落下排出するシュータ112bが設けられる。
【0020】
ロータリキルン本体103の外周部における先端側および基端側に環状の突条部104が設けられ、突条部104がローラ105により支持されている。ロータリキルン本体103の外周部には、駆動用電動機107のギア107aに噛み合うギア106が設けられる。よって、駆動用電動機107のギア107aが回転することにより、ロータリキルン本体103が回転することになる。
【0021】
上述した石炭不活性化処理装置100は、冷却装置140をさらに備える。冷却装置140は、ロータリキルン本体103の先端側の側壁部103aに固定されるベアリング145を備える。冷却装置140は、ベアリング145に設けられ、系外から冷却水21が送給される冷却水送給ヘッダ141を備える。冷却水送給ヘッダ141には、冷却水21を送給する送給管142(例えば、二重管)が複数、例えば8本(図2参照)接続している。冷却装置140は、送給管142を流通した使用済みの冷却水22を系外へ排出する冷却水排出ヘッダ146を備える。
【0022】
複数の送給管142は、図1および図2に示すように、ロータリキルン本体103内にて、ロータリキルン本体103の周方向で等間隔に隣接して配置される。複数の送給管142は、ロータリキルン本体103が回転したときに、石炭2のロータリキルン本体103内への充填率が例えば10%〜15%であっても石炭2が堆積してなる石炭層内を通過する位置に配置されると共に、その中心軸C2とロータリキルン本体103の中心軸C1との距離D1が同一となるように配置される。複数の送給管142は、ロータリキルン本体103内にて、ロータリキルン本体103の中心軸C1と平行に延在し、ロータリキルン本体103の先端側から基端側に亘って延在している。これにより、ロータリキルン本体103内部に供給される処理ガス13により石炭2が不活性化処理される領域においては、送給管142内を流通する冷却水21によって石炭2が自然発火しない温度に調整される。
【0023】
複数の送給管142は、ロータリキルン本体103の側壁部103aを貫通して配置される。複数の送給管142は、その長手方向の複数箇所に配置された支持具(図示せず)により支持されている。これにより、複数の送給管142は、ロータリキルン本体103の回転に伴い、当該ロータリキルン本体103と共に回転することになる。
【0024】
ここで、上述した送給管142の諸元について、図2および図3を参照して説明する。
図2において、Aはロータリキルン本体103の回転方向を示している。L1は、複数の送給管142の中心軸C2が通る軌跡を示し、L2は、前記軌跡L1の接線を示している。γは、前記接線L2と後述する二等分線L3でなす鋭角を示している。図2および図3において、L3は、後述する一対の羽根143,144の二等分線を示している。図3において、L4は、石炭層表面2aの左右対称線を示している。L11は、送給管142と石炭層表面2aの接点P1と、送給管142と石炭層表面2aの左右対称線L4の接点P2を通る補助線を示している。L12,L13は、送給管142の中心軸C2と接点P1,P2を通る補助線をそれぞれ示している。L21,L22は、羽根144143と送給管142の中心軸C2を通る補助線をそれぞれ示している。αは、二等分線L3と補助線L21(羽根144の延長線)でなす鋭角であり、羽根角を示し、βは二等分線L3と補助線L12とでなす鋭角を示している。θは石炭2の安息角を示している。なお、補助線L11,L12,L13が中心軸C2を頂点とする二等辺三角形をなし、補助線L12と石炭層表面層2aとで直角をなすことから、角βは、前記安息角θと同じ大きさとなる。
【0025】
図2および図3に示すように、送給管142の径方向断面は真円をなしている。送給管142の外周部には、当該送給管142の径方向へ突出する一対の羽根143,144が設けられる。前記一対の羽根143,144は、送給管142と同様に、ロータリキルン本体103が回転したときに、石炭2のロータリキルン本体103内への充填率が例えば10%〜15%であっても石炭2が堆積してなる石炭層内を通過する位置に配置される。送給管142および当該送給管142に設けられた一対の羽根143,144は、前記角γの角度が0度〜40度となるように配置される。これは、前記角γの角度が0度より小さい、または40度よりも大きいと、石炭層表面2aよりも上方に前記一対の羽根143,144によって石炭2を持ち上げることができず、送給管142のみによってしか石炭2を持ち上げることができないからである。これにより、送給管142および一対の羽根143,144によって石炭層表面2aより上方に持ち上げられる石炭量を羽根が無い場合と比べて増やし上方から石炭層表面2aに落下する石炭を処理ガス13と効率良く接触させることができる。
【0026】
送給管142および当該送給管142に設けられた一対の羽根143,144は、好ましくは、角γの角度を前記安息角θと等しくなるように配置される。これは、前記角γの角度を前記安息角θ(図3参照)と等しくしたときには、送給管142および一対の羽根143,144によって石炭層表面2aより上方に持ち上げられる石炭量が最大となり、前記角γの角度に起因する、石炭2と処理ガス13との接触効率を最も良くすることができるからである。
【0027】
さらに、一対の羽根143,144は、前記角(羽根角)αの角度が前記安息角θよりも大きくなるように配置されることが好ましい。これは、前記角(羽根角)αの角度を前記安息角θよりも小さくすると、その分、送給管142および一対の羽根143,144で石炭層表面2aよりも上方に持ち上げられる石炭量が減り、石炭2と処理ガス13を効率良く接触させることができなくなるからである。
【0028】
前記角(羽根角)αの角度は45度〜85度であることが好ましく、55度〜75度であるとより好ましい。これは、前記角(羽根角)αの角度を前記範囲外とすると、その分、送給管142および一対の羽根143,144で石炭層表面2aよりも上方に持ち上げられる石炭量が減り、石炭2と処理ガス13を効率良く接触させることができなくなるからである。
【0029】
前記羽根143,144の送給管142の径方向の最小長さHminは、前記送給管142の半径の5%〜45%であることが好ましく、10%〜35%であるとより好ましい。これは、前記羽根143,144の最小長さHminが前記下限値を下回ると、前記送給管142および前記羽根143,144により持ち上げられる石炭量が当該羽根143,144を設けない場合と同じであり、前記羽根143,144により石炭層表面2aより上方に持ち上げる石炭量を増やすことができず石炭2と処理ガス13の接触効率を向上させることができなくなるからである。他方、前記羽根143,144の最小長さHminが前記上限値を上回ると、前記送給管142および前記羽根143,144により持ち上げられる石炭量が多くなり、送給管142自体、送給管142と羽根143,144の接続箇所に係る負荷が大きくなってしまうからである。
【0030】
さらに、上述した石炭不活性化処理装置100において、送給管142の半径r2と、ロータリキルン本体103の中心軸C1と送給管142の中心軸C2の距離D1とが以下の関係式(1)を満たすとより好ましい。
【0031】
1/50D1<r2<1/10D1 ・・・(1)
【0032】
送給管142の半径r2が1/10D1(D1の10分の1)以上である場合には、ロータリキルン本体103内の石炭層の厚みに対して、送給管142の管径が大きすぎ、石炭2の流動が大きくなるため、石炭2の粉化を促進してしまう。他方、送給管142の半径r2が1/50D1(D1の50分の1)以下である場合には、送給管142が細く、石炭2層に送給管142を多く設置しないと、熱交換できなくなり、設備コスト増となるだけではなく、送給管142への冷却水21の供給水圧が高くなり、より多くの動力を消費してしまう。よって、上述の(1)式を満たすことにより、石炭2の粉化を抑制し、設備コスト増および動力消費増を抑制することができる。
【0033】
2r2<D3<6r2 ・・・(2)
【0034】
隣接する送給管142,142間の距離D3が2r2(送給管142の半径r2の2倍)以下である場合には、隣接する送給管142,142が近すぎて、石炭2が隣接する送給管142,142の間でブリッジしてしまう。他方、隣接する送給管142,142間の距離D3が6r2(送給管142の半径r2の6倍)以上である場合には、送給管142内の冷却水21と石炭2との伝熱面積が減少することから、石炭2の冷却伝熱面積を確保できなくなってしまう。よって、上述の(2)式を満たすことにより、隣接する送給管142,142の間でのブリッジの発生を抑制することができ、送給管142内の冷却水21による石炭2の冷却伝熱面積を確保することができる。
【0035】
このような本実施形態においては、前記処理ガス供給管121、前記加熱装置128、前記ブロア127、前記空気供給管122、前記流量調整弁125、前記窒素供給管123、前記流量調整弁126、前記窒素供給源124、前記基端側ケーシング111、前記ガス受入口111aなどが処理ガス供給手段を構成している。前記冷却水送給ヘッダ141、前記送給管142、前記突起部143、前記ベアリング145、前記冷却水排出ヘッダ146などが冷却手段をなす前記冷却装置140を構成している。前記突条部104、前記ローラ105、前記ギア106、前記駆動用電動機107、前記ギア107aなどが回転手段を構成している。前記ホッパ101、前記スクリューフィーダ102などが石炭供給手段を構成している。前記先端側ケーシング112の前記シュータ112bなどが石炭排出手段を構成している。前記先端側ケーシング112、前記ガス排出口112a、前記処理ガス排出管131などが処理ガス排出手段を構成している。前記各手段、前記ロータリキルン本体103、前記シール装置108,109a,109bなどが前記石炭不活性化処理装置100を構成している。
【0036】
次に、上述した石炭不活性化処理装置100の中心となる作動を説明する。
【0037】
前記石炭1がホッパ101に供給されると、スクリューフィーダ102により、ロータリキルン本体103内に搬送される。他方、ブロア127の作動を制御する一方、流量調整弁125,126の開度を制御することにより空気供給管122および窒素供給管123を介して処理ガス供給管121に空気11および窒素ガス12が供給される。これにより、空気11および窒素ガス12が混合して処理ガス13(例えば、酸素濃度が約5〜10%程度)となる。処理ガス13は、温度センサ131aにより得られた使用済みの処理ガス14の温度データに基づき加熱装置128により加熱されてロータリキルン本体103内にて40℃〜200℃となるように調整され、処理ガス供給管121によりガス受入口111aを介してロータリキルン本体103内に供給される。
【0038】
ロータリキルン本体103は、駆動用電動機107のギア107aが回転し、ギア106を介して伝達することにより回転する。ロータリキルン本体103の回転に伴って、ロータリキルン本体103内に搬送された石炭2は、撹拌されながら当該ロータリキルン本体103の基端側から先端側へ移動することになる。このとき、ロータリキルン本体103内の石炭2は、ロータリキルン本体103内部に供給された処理ガス13の酸素を吸着することになる。このように酸素吸着することにより不活性化処理された石炭(改質炭)3となり、シュータ112bを介して系外へ搬出される。ロータリキルン本体103内の石炭2は、処理ガス13の酸素を吸着して発熱するものの、送給管142内を流通する冷却水21によって、石炭2が自然発火しない温度に調整される。
【0039】
ロータリキルン本体103内で石炭2の不活性化処理に使用された使用済みの処理ガス(約50℃〜70℃)14は、石炭2の搬送方向と同じ方向に流通し、ロータリキルン本体103の先端側に設けられた先端側ケーシング112のガス排出口112aから処理ガス排出管131へ流通し、当該処理ガス排出管131を介して系外へ排出される。
【0040】
ここで、上述した石炭不活性化処理装置100においては、前記ロータリキルン本体103の回転に伴い、当該ロータリキルン本体103と共に、当該ロータリキルン本体103の中心軸C1を中心として回転し、当該ロータリキルン本体103内へ供給された石炭2が堆積してなる石炭層内を通過するように複数の送給管142が当該ロータリキルン本体103内に設けられ、各送給管142に一対の羽根143,144が上述した諸元で設けられたことから、さらに、以下のように作動する。
【0041】
つまり、本実施形態では、複数の送給管142が、ロータリキルン本体103の回転に伴い、ロータリキルン本体103の中心軸C1を中心として回転移動し、石炭層を通過したときに、送給管142および一対の羽根143,144により石炭2を石炭層表面2aより上方に持ち上げることになり、一対の羽根143,144が、前記安息角θで石炭を持ち上げる領域よりも広い範囲にて石炭2を持ち上げることになる。
【0042】
したがって、本実施形態に係る石炭不活性化処理装置100によれば、送給管142および一対の羽根143,144を、ロータリキルン本体103が回転したときにロータリキルン本体103内にて石炭2が堆積してなる石炭層を通過するように配置すると共に、送給管142の中心軸C2が通る軌跡の接線L2と一対の羽根143,144の二等分線Lのなす角γが0度〜40度とるように配置したことで、送給管142内を流通する冷却水21により石炭2を冷却しつつ、ロータリキルン本体103の回転により石炭2を撹拌すると共に、送給管142および羽根143,144により所定の量の石炭2をロータリキルン本体103内の石炭層表面2aよりも上方に持ち上げ上方より落下させて石炭2を撹拌することができ、当該石炭2と処理ガス13を効率良く接触させることができる。これにより、石炭2の自然発火の防止を図りつつ、石炭2の表面への酸素の吸着を効率良く行うことができる。よって、送給管に羽根を設けていない場合と比べて、ロータリキルン本体103の全長を短くすることができ、装置の小型化を図ることができる。
【0043】
[他の実施形態]
なお、複数の送給管142のそれぞれに設けられた一対の羽根143,144がなす羽根角αの角度は1種類に限らず、2種類以上とした石炭不活性化処理装置とすることも可能である。
【0044】
上記では、8本の送給管142を備える石炭不活性化処理装置100を用いて説明したが、送給管の数量は8本に限らず、7本以下や9本以上の送給管を備える石炭不活性化処理装置とすることも可能である。
【符号の説明】
【0045】
1,2,3 石炭
11 空気
12 窒素ガス
13,14 処理ガス
21,22 冷却水
100 石炭不活性化処理装置
101 ホッパ
102 スクリューフィーダ
103 ロータリキルン本体(キルン本体)
104 突条部
105 ローラ
106 ギア
107 駆動用電動機
107a ギア
108 シール装置
109a,109b シール装置
111 基端側ケーシング
111a ガス受入口
112 先端側ケーシング
112a ガス排出口
112b シュータ
121 処理ガス供給管
122 空気供給管
123 窒素供給管
124 窒素供給源
125,126 流量調整弁
127 ブロア
128 加熱装置
131 処理ガス排出管
131a 温度センサ
140 冷却装置
141 冷却水送給ヘッダ
142 送給管
143,144 羽根
145 ベアリング
146 冷却水排出ヘッダ
A ロータリキルン本体の回転方向
C1 ロータリキルン本体の中心軸
C2 送給管の中心軸
D1 ロータリキルン本体の中心軸と送給管の中心軸との間の距離
D3 隣接する送給管間の距離
min 最小の羽根の長さ
L1 送給管の中心軸の軌跡
L2 送給管の中心軸の軌跡の接線
L3 一対の羽の二等分線
L4 石炭層表面の左右対称線
L11 補助線
L12,L13 送給管の半径方向の線
L21,L22 羽根の補助線
P1,P2 接点
r1 ロータリキルン本体の半径
r2 送給管の半径
α 羽根角
θ 石炭の安息角
β 線L3と線L12のなす角
図1
図2
図3