特許第6245745号(P6245745)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6245745
(24)【登録日】2017年11月24日
(45)【発行日】2017年12月13日
(54)【発明の名称】ケーソン中詰材投入方法
(51)【国際特許分類】
   E02D 23/02 20060101AFI20171204BHJP
【FI】
   E02D23/02 E
【請求項の数】7
【全頁数】13
(21)【出願番号】特願2014-15262(P2014-15262)
(22)【出願日】2014年1月30日
(65)【公開番号】特開2015-140612(P2015-140612A)
(43)【公開日】2015年8月3日
【審査請求日】2016年10月28日
(73)【特許権者】
【識別番号】000166627
【氏名又は名称】五洋建設株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100107272
【弁理士】
【氏名又は名称】田村 敬二郎
(74)【代理人】
【識別番号】100109140
【弁理士】
【氏名又は名称】小林 研一
(72)【発明者】
【氏名】秋本 哲平
(72)【発明者】
【氏名】熊谷 隆宏
【審査官】 西田 光宏
(56)【参考文献】
【文献】 特公昭49−044483(JP,B1)
【文献】 実開平04−026232(JP,U)
【文献】 実公昭32−010045(JP,Y1)
【文献】 特開平11−350490(JP,A)
【文献】 特開平02−106486(JP,A)
【文献】 特開昭60−212520(JP,A)
【文献】 米国特許第01916684(US,A)
【文献】 米国特許第05775836(US,A)
【文献】 米国特許第04614460(US,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E02D 15/00
E02D 15/10
E02D 23/02
E02D 23/04
E02D 23/06
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ケーソンの内部にその底部近傍まで下端が延びるようにして投入管を設置し、
前記投入管の下端から水が進入せずかつ前記投入管の内部に設けられた開閉式蓋部が閉塞するように前記開閉式蓋部から下方の前記投入管内に空気を注入し、
前記投入管の上端から中詰材を投入し、
前記投入された中詰材の自重による圧力によって前記開閉式蓋部が開放し、前記中詰材が前記投入管内の気中で落下し、
前記投入管の下端から前記ケーソンの底部へと前記中詰材が排出され、
前記投入管を所定高さだけ引き上げてから前記空気の注入および前記中詰材の投入を繰り返すことを特徴とするケーソン中詰材投入方法
【請求項2】
ケーソンの内部にその底部近傍まで下端が延びるようにして投入管を設置し、
前記投入管の下端から水が進入せずかつ前記投入管の内部下側に設けられた下部開閉式蓋部が開塞するように前記下部開閉式蓋部から下方の前記投入管内に空気を注入し、
前記投入管の上端から中詰材を投入し、
前記投入された中詰材の自重による圧力によって前記投入管の上側に設けられた上部開閉式蓋部が開放し、前記中詰材が落下し前記下部開閉式蓋部の上に堆積し、
前記下部開閉式蓋部の上に堆積した中詰材の上端と前記上部開閉式蓋部との間の前記投入管内の空間に空気を注入することで、前記下部開閉式蓋部が開放し、前記中詰材が前記投入管内の気中で落下し、
前記投入管の下端から前記ケーソンの底部へと前記中詰材が排出され、
前記投入管を所定高だけ引き上げてから前記空気の注入および前記中詰材の投入を繰り返すことを特徴とするケーソン中詰材投入方法。
【請求項3】
前記開閉式蓋部は、前記投入管において所定圧力以上の圧力が上部から加わることで開放し、所定圧力以上の圧力が下部から加わることで閉塞する請求項1に記載のケーソン中詰材投入方法。
【請求項4】
前記下部開閉式蓋部および前記上部開閉式蓋部は、前記投入管において所定圧力以上の圧力が上部から加わることで開放し、所定圧力以上の圧力が下部から加わることで閉塞する請求項2に記載のケーソン中詰材投入方法。
【請求項5】
前記投入管を伸縮可能に構成し、前記投入管を引き上げても前記投入管の上端の高さ位置が一定である請求項1乃至のいずれか1項に記載のケーソン中詰材投入方法。
【請求項6】
前記中詰材を前記ケーソン内の所定高さまで投入してから、その中詰材の上の海水を排出し、中詰材を投入しても海水が溢れて排出されない状態にしてから前記中詰材を直接投入することで、前記中詰材の天端の仕上げをする請求項1乃至のいずれか1項に記載のケーソン中詰材投入方法。
【請求項7】
前記投入管の上端に上方に拡がる形状の漏斗形状部を設けた請求項1乃至のいずれか1項に記載のケーソン中詰材投入方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ケーソンに中詰材を投入するケーソン中詰材投入方法に関する。
【背景技術】
【0002】
防波堤や岸壁などの構築のため、ケーソンを所定水域の所定位置に据え付けた後、ケーソンには中詰材を投入している(たとえば、特許文献1参照)。かかる中詰材の投入は、海上で実施されるが、ケーソンの据付時には、ケーソン内に海水を投入して据え付けることが多く、その後、中詰材を投入してケーソンを安定させる。つまり、中詰材投入時には、ケーソン内は海水で満たされており、中詰材を投入することでその海水はケーソンの外に排出される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2013−040472号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、ケーソンの中詰材には一般的に砂が使用される。砂の代わりに密度が高い材料(非鉄スラグ、製鋼スラグ等)を使用することで、設計計算において有利になることが多い。実際に検討すると、中詰材単位体積重量の増加により滑動に対する安定性が増し、ケーソンの幅を縮減することができるため、経済的な設計が可能となる。
【0005】
ところが、中詰材として非鉄スラグ等を用いる場合、海水で満たされたケーソンに非鉄スラグ等が投入されると、ケーソンから濁った海水が排出されてしまい、環境上好ましくない。従来、中詰材に砂を用いる場合は、自然由来の材料であるため、濁り対策は実施されていないが、上述のようなスラグ等の投入時の濁りを防止する方法として以下の方法が考えられる。
・予め水洗いを行うこと等により投入する材料の細粒分をなくす。
・中詰材投入時にケーソンの外に排出される海水を濁水処理してから海に放水する。
【0006】
しかし、水洗いによる対策は、事前の水洗い作業が必要となり、作業工程が増え、また、細粒分をなくすことで均等係数が小さくなり、ケーソン中詰材の単位体積重量が小さくなる。単位体積重量が小さくなると設計重量を確保できない可能性がある。また、濁水処理による対策は、濁水処理設備が必要となり、設備にコストがかかり、その上、濁水処理に時間がかかってしまう。この濁水処理の必要性が非鉄スラグ等をケーソンの中詰材として用いることの障害の一因となっていた。
【0007】
本発明は、上述のような従来技術の問題に鑑み、ケーソンの中詰材としてスラグなどを用いた場合、その中詰材による海水の濁りの発生を防止できるとともに、中詰材の水中落下による単位体積重量の減少を防止できるケーソン中詰材投入方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記目的を達成するために、本実施形態によるケーソン中詰材投入方法は、ケーソンの内部にその底部近傍まで下端が延びるようにして投入管を設置し、前記投入管の下端から水が進入せずかつ前記投入管の内部に設けられた開閉式蓋部が閉塞するように前記開閉式蓋部から下方の前記投入管内に空気を注入し、前記投入管の上端から中詰材を投入し、前記投入された中詰材の自重による圧力によって前記開閉式蓋部が開放し、前記中詰材が前記投入管内の気中で落下し、前記投入管の下端から前記ケーソンの底部へと前記中詰材が排出され、前記投入管を所定高さだけ引き上げてから前記空気の注入および前記中詰材の投入を繰り返すことを特徴とする。
【0009】
このケーソン中詰材投入方法によれば、投入管の下部に空気を注入して投入管の下端からの海水の進入を防止することで、ケーソンの底部から順に直接中詰材を充填することができるため、中詰材としてスラグなどを用いてもケーソン内の海水に濁りが発生しない。また、中詰材は、投入管内で気中落下となり、水中落下の場合の落下速度の低下や材料分離が生じないので、中詰材の単位体積重量が減少することがない。したがって、中詰材から細粒分を除去する必要がないため、細粒分が入っており、均等係数の高い、単位体積重量が大きくなりやすいスラグなどのような材料を中詰材として投入することができる。また、ケーソン内の海水に濁りが発生しないため、そのまま排出でき、濁水処理設備は不要である。
【0010】
本実施形態による別のケーソン中詰材投入方法は、ケーソンの内部にその底部近傍まで下端が延びるようにして投入管を設置し、前記投入管の下端から水が進入せずかつ前記投入管の内部下側に設けられた下部開閉式蓋部が閉塞するように前記下部開閉式蓋部から下方の前記投入管内に空気を注入し、前記投入管の上端から中詰材を投入し、前記投入された中詰材の自重による圧力によって前記投入管の上側に設けられた上部開閉式蓋部が開放し、前記中詰材が落下し前記下部開閉式蓋部の上に堆積し、前記下部開閉式蓋部の上に堆積した中詰材の上端と前記上部開閉式蓋部との間の前記投入管内の空間に空気を注入することで、前記下部開閉式蓋部が開放し、前記中詰材が前記投入管内の気中で落下し、前記投入管の下端から前記ケーソンの底部へと前記中詰材が排出され、前記投入管を所定高だけ引き上げてから前記空気の注入および前記中詰材の投入を繰り返すことを特徴とする。
【0011】
このケーソン中詰材投入方法によれば、投入管の下部に空気を注入して投入管の下端からの海水の進入を防止することで、ケーソンの底部から順に直接中詰材を充填することができるため、中詰材としてスラグなどを用いてもケーソン内の海水に濁りが発生しない。また、中詰材は、投入管内で気中落下となり、水中落下の場合の落下速度の低下や材料分離が生じないので、中詰材の単位体積重量が減少することがない。したがって、中詰材から細粒分を除去する必要がないため、細粒分が入っており、均等係数の高い、単位体積重量が大きくなりやすいスラグなどのような材料を中詰材として投入することができる。また、ケーソン内の海水に濁りが発生しないため、そのまま排水でき、濁水処理設備は不要である。さらに、投入管の上部と下部に開閉式蓋部を設け、下部開閉式蓋部は、上部に堆積した中詰材の自重のみでは開放せず、中詰材の上の空間に空気を注入して圧力を加えることで開放するようにしたので、投入管の上部の高さ不足や中詰材の投入量不足などの理由から、中詰材の自重のみでは下部開閉式蓋部が開放しない場合でも、開放させることができる。このため、投入管の設計の自由度が増し、また、中詰材投入量の管理の自由度が増す。また、下部開閉式蓋部が開放しているとき、上部開閉式蓋部が閉塞しているため、投入管の下方からの海水の浸入を防止できる。
【0012】
上記ケーソン中詰材投入方法において、前記開閉式蓋部、前記下部開閉式蓋部および前記上部開閉式蓋部は、前記投入管において所定圧力以上の圧力が上部から加わることで開放し、所定圧力以上の圧力が下部から加わることで閉塞するようにすることが好ましい。
【0013】
前記投入管を伸縮可能に構成し、前記投入管を引き上げても前記投入管の上端の高さ位置が一定であることが好ましい。
【0014】
前記中詰材を前記ケーソン内の所定高さまで投入してから、その中詰材の上の海水を排出し、中詰材を投入しても海水が溢れて排出されない状態にしてから前記中詰材を直接投入することで、前記中詰材の天端の仕上げをすることが好ましい。
【0015】
前記投入管の上端に上方に拡がる形状の漏斗形状部を設けることが好ましい。
【発明の効果】
【0016】
本発明のケーソン中詰材投入方法によれば、ケーソンの中詰材としてスラグなどを用いた場合、その中詰材による海水の濁りの発生を防止できるとともに、中詰材の水中落下による単位体積重量の減少を防止できる。したがって、ケーソンの中詰材として従来の砂よりも単位体積重量が大きくなりやすいスラグなどの材料を用いることができ、ケーソンは、中詰材の単位体積重量の増加により、滑動に対する安定性が増し、また、ケーソンの幅を縮減することができるため経済的な設計が可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
図1】第1実施形態によるケーソン中詰材投入方法を説明するためにケーソン内部を概略的に示す図である。
図2】第2実施形態によるケーソン中詰材投入方法の各工程を説明するためのフローチャートである。
図3】第2実施形態によるケーソン中詰材投入方法の各工程を説明するためにケーソン内部を示す概略図(a)〜(i)である。
図4図3の投入管の構成を概略的に示す縦断面図である。
図5】第3実施形態によるケーソン中詰材投入方法の各工程を説明するためのフローチャートである。
図6】第3実施形態によるケーソン中詰材投入方法の主要工程を説明するためにケーソン内部を示す概略図(a)〜(e)である。
図7】本実施形態におけるケーソン設計の検討例の断面を示す図である。
図8図7の検討例の各ケースの検討結果を示す表である。
図9】銅スラグの単位体積重量の計測例を示す図であり、計測に用いた容器を示す概略図(a)および計測結果を示す表(b)である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、本発明を実施するための形態について図面を用いて説明する。
【0019】
〈第1実施形態〉
図1は第1実施形態によるケーソン中詰材投入方法を説明するためにケーソン内部を概略的に示す図である。
【0020】
図1のように、所定水域の水底に設置されたケーソンCAの内部は、海水Wで満たされている。ケーソンCAの内部に中詰材投入のための投入管10を設置する。投入管10の下端10aは、ケーソンCAの底部BTの近傍まで延びている。投入管10の上端には上方に拡がる形状の漏斗形状部10bを設けることで、中詰材の投入が容易になっている。
【0021】
投入管10の内部の中間領域には開閉式蓋部20が設けられている。開閉式蓋部20は、一端において回転軸20aを中心にして回動可能に構成され、投入管10の内部の下部10cにおける圧力で上側の受け部20bに当接して閉塞し、また、図1の破線のように中詰材FMが投入され堆積すると、その中詰材FMの自重による圧力で下側方向rに回動し開放するようになっている。
【0022】
開閉式蓋部20は下側方向rに回動し開放し中詰材が落下した後、開閉式蓋部20の自重に抗して上側方向に回動するように(密閉状態でなくともよい)、回転軸20aの近傍にコイルばね等からなる付勢部材(図示省略)を有する。これにより、次の中詰材の投入のため投入管10の下部10cに空気を注入したとき、開閉式蓋部20を円滑に閉塞させることができる。
【0023】
投入管10の内部の下部10cには、ホースHSを通してコンプレッサPが接続されている。コンプレッサPを作動させ、下部10cに空気を注入して所定圧力にすることで、投入管10の下端10aから空気が下部10cに進入しないとともに、開閉式蓋部20が受け部20bに当接して投入管10を閉塞する。
【0024】
開閉式蓋部20が投入管10の下部10c内の空気による下からの圧力で閉塞している状態で、中詰材FMが投入されて開閉式蓋部20の上に貯まると、その中詰材FMの自重による上からの圧力で開閉式蓋部20が下側方向rに回動し開放する。この場合の開閉式蓋部20の上下の圧力関係について図1を参照して説明する。
【0025】
海水の単位体積重量を10.3kN/m3、水深(図1の海水Wの水面から投入管10の下端10aまでの高さ)をh(m)とすると、投入管10の下端10aには、h×10.3kN/m2の水圧がかかるので、投入管10の下部10c内の空気により開閉式蓋部20は、下からh×10.3kN/m2の圧力を受けている。自然状態のスラグを中詰材として投入し、投入管10の上部10dにおいて上端から開閉式蓋部20まで気中落下させた場合、スラグは、その乾燥単位体積重量19.5kN/m3(土粒子密度3.5程度のスラグを想定)で堆積し、その高さをH(m)とすると、このスラグの自重による圧力は、H×19.5kN/m2である。中詰材の自重による圧力H×19.5kN/m2が、h×10.3kN/m2以上となった場合、開閉式蓋部20は下側方向rに回動して開放する。すなわち、10.3×h≦19.5×Hの場合に開放されるので、H≧0.53×hとなり、これから、投入管10の開閉式蓋部20から上端までの高さ(投入管10の上部10dの高さ)Hは、水深hの0.53倍以上必要となる。
【0026】
上述のようにして、中詰材が投入管10内を気中落下し、下端10aからケーソンCAの底部BTへと排出されることで、ケーソンCAの内部の上端から海水Wが溢れて排出される。次に、投入管10を所定高さだけ引き上げてから、投入管10の下部10cへのコンプレッサPによる空気の注入および中詰材の投入を繰り返す。かかる投入により中詰材がケーソンCAの底部BTから順に堆積し、所定高さになると、ケーソンCAの上部数mは中詰材を投入せずに海水を排出し、中詰材を投入しても海水が溢れて排出されない状態にしてから、中詰材を直接投入し、天端を仕上げる。
【0027】
以上のように、本実施形態のケーソン中詰材投入方法によれば、ケーソンCAの内部に中詰材の投入管10を底部BT近傍まで延びるようにして設置し、投入管10の下部10cに空気を注入して投入管10内にその下端10aから海水が進入するのを防止することで、ケーソンCAの底部BTから順に直接中詰材を充填することができるため、中詰材としてスラグを用いてもケーソンCA内の海水に濁りが発生しない。したがって、スラグ等の中詰材が投入されてケーソンCA内から溢れる海水で周辺水域が汚れることはない。
【0028】
また、中詰材は、投入管10内で気中落下となるため、水中落下の場合の落下速度の低下や材料分離が生じない。このため、中詰材の単位体積重量が減少することもない。したがって、中詰材から細粒分を除去する必要がないため、細粒分が入っており、均等係数の高い、単位体積重量が大きくなりやすいスラグなどのような材料を中詰材として投入することができる。また、ケーソンCA内の海水に濁りが発生しないため、そのまま排水でき、濁水処理設備は不要である。
【0029】
なお、投入管10の下端10aから海水が進入しないように下部10c内の圧力を管理することが必要である。また、中詰材として使用可能なスラグは、たとえば、精錬所から発生する銅スラグなどがあるが、これに限定されるものではない。
【0030】
また、中詰材の自重により開閉式蓋部20が開放して中詰材が投入管10内を落下するとき、投入管10の下部10c内の圧力が開放されるため、投入管10の下端10aから海水が進入し、この海水の下からの圧力により開閉式蓋部20が閉塞し、中詰材の落下が中断する可能性があるが、開閉式蓋部20の上に残った中詰材は、次の投入時に落下するので問題はない。
【0031】
〈第2実施形態〉
図2は第2実施形態によるケーソン中詰材投入方法の各工程を説明するためのフローチャートである。図3(a)〜(i)は第2実施形態によるケーソン中詰材投入方法の各工程を説明するためにケーソン内部を示す概略図である。図4図3の投入管の構成を概略的に示す縦断面図である。なお、本実施形態の図1と同様の構成部分は、同じ符号を付し、その説明は省略する。
【0032】
本実施形態におけるケーソンへの中詰材投入のための投入管10は、図3図4のように、大径の管11〜小径の管14により伸縮可能に構成され、管11,12,13,14が下側から順に上側へと配置されている。投入管10は上端・下端を除いて気密性が確保されている。
【0033】
図4のように、投入管10の管11〜13が伸びた状態で、管11は上端の内側突出部11aが管12の下端の外側突出部12bに係合し支持され、管12は上端の内側突出部12aが管13の下端の外側突出部13bに係合し支持され、管13は上端の内側突出部13aが管14の下端の外側突出部14bに係合し支持されている。投入管10は、下側の大径の管11から順に引き上げ機構によって上方に引き上げられるように構成されている。
【0034】
すなわち、図4のように、投入管10の最下段の管11の外周に複数のワイヤ21の下端21aが固定され、ワイヤ21は、投入管10の上端の近傍に配置されたプーリ22を介してウインチ(図示省略)により所定長さだけ巻き取られて上方に引き上げられることで、管11が所定高さだけ引き上げられる。管12は、管11が引き上げられて管11の内周の当接部11bが管12の下端の外側突出部12bに当接することで、所定高さだけ引き上げられる。管13は、同様にして、管12が引き上げられて管12の内周の当接部12cが管13の下端の外側突出部13bに当接することで、所定高さだけ引き上げられる。
【0035】
上述のようにして、管11〜13は、ワイヤ21の巻き取りにより順に引き上げられ、投入管10の下端10aの位置は、ワイヤ21の巻き取り長さによって所定高さに調整することができる。このようにして、投入管10を引き上げて投入管10の下端10aの位置を順次高くしても、それに応じて投入管10の全体長さが減少するので、投入管10の上端の高さ位置は、変わらずに一定である。なお、管11〜13を引き上げた状態から、ワイヤ21を緩めることで、管11〜13は自重で降下し、図4の状態に戻る。
【0036】
図2図4を参照して本実施形態によるケーソンへの中詰材投入の各工程を説明する。まず、図3(a)のように、ケーソンCAの内部に図4の投入管10を設置し(S01)、コンプレッサPを作動させて投入管10の下部10c内に空気を注入する(S02)。かかる空気の注入により投入管10の下端10aから上方は空気で満たされ、開閉式蓋部20は上方に回動して閉塞する(S03)。
【0037】
次に、図3(b)のように、投入管10に上端の漏斗形状部10bからスラグからなる中詰材FMを投入し(S04)、中詰材FMは開閉式蓋部20の上に堆積する。
【0038】
図1で説明したように、投入管10の上部10dに堆積した中詰材FMの自重による圧力が下部10c内の空気の圧力を超えると、図3(c)のように、開閉式蓋部20が開放し(S05)、中詰材FMが下部10c内の気中を自然落下する(S06)。
【0039】
落下した中詰材FMは、図3(d)のように、投入管10の下端10aから流れ出し、ケーソンCAの底部BTへと排出される。次に、図4の引き上げ機構によりワイヤ21を上方に引き上げ、図3(e)のように、最下段の管11を引き上げる(S08)。
【0040】
次に、空気注入工程S02に戻り、同様の工程を経て中詰材FMを投入し、投入管10の下端10aから排出する。このようにして、各工程を繰り返し、図3(f)のように、中詰材FMがケーソンCA内で堆積し、ケーソンCAの上部数mに達する高さになると、投入管10からの中詰材の投入が終了する(S07)。
【0041】
次に、中詰材FMの天端仕上げ処理を行う(S09)。すなわち、図3(g)のように、ケーソンCAの上部に残った海水をポンプ25により排出する。排水後、図3(h)のような状態から中詰材を投入しても海水が溢れて排出されない状態にし、その後、さらに中詰材FMを直接投入し、図3(i)のように、天端を仕上げる。
【0042】
本実施形態のケーソン中詰材投入方法によれば、上述のように構成したので、図1と同様の効果を得ることができるとともに、投入管10を伸縮可能に構成することで、中詰材の繰り返し投入のために下端10aを引き上げても、投入管10の上端の高さ位置は、変わらずに一定であるので、中詰材の投入高さ位置の変更が不要であり、投入設備の大型化および複雑化が防止できる。
【0043】
〈第3実施形態〉
図5は第3実施形態によるケーソン中詰材投入方法の各工程を説明するためのフローチャートである。図6(a)〜(e)は第3実施形態によるケーソン中詰材投入方法の主要工程を説明するためにケーソン内部を示す概略図である。本実施形態は、図3図4の構成に対し、開閉式蓋部を投入管の上部にも配置した構成で、図3図4と同様の構成部分は、同じ符号を付し、その説明は省略する。
【0044】
図6(a)〜(e)のように、本実施形態は、投入管10の中間の下部開閉式蓋部20に加えて、投入管10の上端に下部開閉式蓋部20と同様の構成の上部開閉式蓋部27を設け、また、コンプレッサPが切替バルブ28を介して投入管の下部10cおよび上部10dに接続するように構成したものである。
【0045】
図5図6を参照して本実施形態によるケーソンへの中詰材投入の各工程を説明する。まず、ケーソンCAの内部に図4の投入管10を設置し(S11)、コンプレッサPから切替バルブ28を介して投入管10の下部10c内に空気を注入する(S12)。かかる空気の注入により投入管10の下端10aから上方は空気で満たされ、下部開閉式蓋部20は閉塞する(S13)。
【0046】
次に、投入管10の漏斗形状部10bからスラグからなる中詰材FMを投入する(S14)。図6(a)のように、上部開閉式蓋部27の上に貯まった中詰材FMの自重による圧力で、上部開閉式蓋部27が開放し(S15)、中詰材FMが投入管10の上部10d内の気中を自然落下し、下部開閉式蓋部20の上に堆積する(S16)。
【0047】
この堆積した中詰材FMの自重のみによる圧力では下部開閉式蓋部20は未だ開放しないので、図6(b)のように、投入管10の上部10d内の中詰材FMの上端と上部開閉式蓋部27との間の空間10eにコンプレッサPから切替バルブ28を介して空気を注入する(S17)。
【0048】
次に、投入管10の上部10dに堆積した中詰材FMの自重による圧力と空間10eにおける空気の圧力との和が下部10c内の空気の圧力を超えると、図6(c)のように、下部開閉式蓋部20が開放し(S18)、中詰材FMが下部10c内の気中を自然落下する(S19)。
【0049】
落下した中詰材FMは、図6(d)のように、投入管10の下端10aから流れ出し、ケーソンCAの底部BTへと排出される。次に、図4の引き上げ機構によりワイヤ21を上方に引き上げ、図6(e)のように、最下段の管11を引き上げる(S21)。
【0050】
次に、空気注入工程S12に戻り、同様の工程を経て中詰材FMを投入し、投入管10の下端10aから排出する。このようにして、各工程を繰り返し、上述の図3(f)のように、中詰材FMがケーソンCA内で堆積し、ケーソンCAの上部数mに達する高さになると、投入管10からの中詰材の投入が終了する(S20)。
【0051】
次に、図3(g)〜(i)と同様にして、中詰材FMの天端仕上げ処理を行う(S22)。
【0052】
本実施形態のケーソン中詰材投入方法によれば、上述のように構成したので、図2図4と同様の効果を得ることができるとともに、投入管10の上部と下部に開閉式蓋部27,20を設け、下部開閉式蓋部20は、上部10dに堆積した中詰材FMの自重のみでは開放せず、中詰材FMの上の空間10eに空気を注入して圧力を加えることで開放するようにしたので、投入管10の上部10dの高さ不足や中詰材FMの投入量不足などの理由から、中詰材FMの自重のみでは下部開閉式蓋部20が開放しない場合でも、開放させることができる。このように、空間10eへの空気注入による投入管10の上部10d内の圧力を調整することで、中詰材の投入を制御することができる。このため、投入管10の設計の自由度が増し、また、中詰材投入量の管理の自由度が増す。また、下部開閉蓋部20を開放した際、上部開閉蓋部27は閉塞しているため、投入管10の下方から海水が浸入しない。
【0053】
以上のように、上記各実施形態によれば、ケーソンの中詰材として従来の砂よりも単位体積重量が大きくなりやすいスラグなどの材料を用いることができる。このため、ケーソンは、中詰材の単位体積重量の増加により、滑動に対する安定性が増し、また、ケーソンの幅を縮減することができるため経済的な設計が可能となる。
【0054】
次に、ケーソンの具体的な検討例について図7図8を参照して説明する。図7は本実施形態におけるケーソン設計の検討例の断面を示す図である。図8図7の検討例の各ケースの検討結果を示す表である。ケース1は中詰材として砂を想定し、ケース2〜5は、中詰材として飽和単位体積重量が砂よりも大きい材料を想定し、ケース1に対しケーソンの幅(堤体幅)を縮減した場合のケーソンの安定性を検討したものである。その結果、図8のように、中詰材が砂であるケース1に対して、ケース2,3,5が中詰材として砂よりも飽和単位体積重量が大きくなりやすい材料を用いることで、堤体幅を縮減しつつケーソンの安定性を確保できることが判明した。
【0055】
また、本発明者等は、銅スラグを例にして単位体積重量を計測した。すなわち。図9(a)の容器を用いて、銅スラグを容器上端から投入し、水中落下、および、気中落下させ、投入後、容器下部30cmにおける単位体積重量を計測した。その計測結果を図9(b)の表に示す。この計測結果によれば、この銅スラグの飽和単位体積重量および乾燥単位体積重量は、水中落下の場合よりも気中落下の場合の方が大きく、本実施形態のように、中詰材として銅スラグを用い、投入管内を気中落下させることで、大きな単位体積重量にできることが判明した。このように、銅スラグを気中落下させることで、投入時の材料分離がなく、必要な単位体積重量を確保できることがわかる。
【0056】
以上のように本発明を実施するための形態について説明したが、本発明はこれらに限定されるものではなく、本発明の技術的思想の範囲内で各種の変形が可能である。たとえば、投入管10は、円筒管が好ましいが、これに限定されず、角筒管であってもよい。
【0057】
また、投入管10は、鋼管から構成されるが、これに限定されず、たとえば樹脂材料のような軽量材料から構成されてもよく、投入管を軽量化すれば、中詰材投入の施工が容易となる。他方、投入管10内には空気が満たされ、投入管10に浮力が発生するため、浮き上がりを防止できる重量および構造が必要となる場合がある。したがって、施工の容易性と投入管の浮き上がり防止性とが調和するように、またはいずれか一方を重視する場合はそのように、投入管の材料や重量・構造等を決めることが望ましい。
【0058】
また、必要に応じて、ケーソン内部へ中詰材を投入した後に中詰材を締固めることで中詰材の単位体積重量を大きくするようにしてもよい。
【産業上の利用可能性】
【0059】
本発明のケーソン中詰材投入方法によれば、ケーソンの中詰材としてスラグなどを投入しても、特別な濁水処理設備等を設置することなく、その中詰材による海水の濁りの発生を防止できるので、スラグを中詰材として用いることができ、このため、ケーソンの幅を縮減しつつケーソンの滑動に対する安定性を確保できる。したがって、安定性がよく経済的な設計が可能な防波堤や岸壁などの実現に寄与することができる。
【符号の説明】
【0060】
10 投入管
10a 投入管の下端
10b 漏斗形状部
10c 投入管の下部
10d 投入管の上部
11〜14 管
20 開閉式蓋部、下部開閉式蓋部
21 ワイヤ
27 上部開閉式蓋部
BT 底部
CA ケーソン
FM 中詰材
P コンプレッサ
W 海水
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9