特許第6245748号(P6245748)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 株式会社小森コーポレーションの特許一覧

(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6245748
(24)【登録日】2017年11月24日
(45)【発行日】2017年12月13日
(54)【発明の名称】フレキシブル電子デバイス製造装置
(51)【国際特許分類】
   B41F 17/14 20060101AFI20171204BHJP
   B41F 21/10 20060101ALI20171204BHJP
【FI】
   B41F17/14 N
   B41F17/14 E
   B41F21/10
【請求項の数】3
【全頁数】26
(21)【出願番号】特願2014-24024(P2014-24024)
(22)【出願日】2014年2月12日
(65)【公開番号】特開2015-150711(P2015-150711A)
(43)【公開日】2015年8月24日
【審査請求日】2016年10月12日
【国等の委託研究の成果に係る記載事項】(出願人による申告)平成23年度独立行政法人新エネルギー・産業技術総合開発機構「次世代プリンテッドエレクトロニクス材料・プロセス基盤技術開発」委託研究、産業技術力強化法第19条の適用を受ける特許出願
(73)【特許権者】
【識別番号】000184735
【氏名又は名称】株式会社小森コーポレーション
(74)【代理人】
【識別番号】100078499
【弁理士】
【氏名又は名称】光石 俊郎
(74)【代理人】
【識別番号】230112449
【弁護士】
【氏名又は名称】光石 春平
(74)【代理人】
【識別番号】100102945
【弁理士】
【氏名又は名称】田中 康幸
(74)【代理人】
【識別番号】100120673
【弁理士】
【氏名又は名称】松元 洋
(74)【代理人】
【識別番号】100182224
【弁理士】
【氏名又は名称】山田 哲三
(72)【発明者】
【氏名】杉本 郁男
【審査官】 村田 顕一郎
(56)【参考文献】
【文献】 特開2011−152521(JP,A)
【文献】 特開2010−231979(JP,A)
【文献】 特開2012−245462(JP,A)
【文献】 特開2009−196205(JP,A)
【文献】 特開2012−212747(JP,A)
【文献】 特開2008−068951(JP,A)
【文献】 特開2004−216621(JP,A)
【文献】 特開2010−274429(JP,A)
【文献】 特開2013−241266(JP,A)
【文献】 特開平04−086263(JP,A)
【文献】 特開2009−274442(JP,A)
【文献】 米国特許第06546862(US,B1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B41F 1/00−35/06
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
フレキシブルな基材に対して機能層を印刷または塗布する基材処理部と、基材を前記基材処理部へ供給する基材供給部とを備えたフレキシブル電子デバイス製造装置であって、
前記基材供給部に、
基材を載置する載置手段と、
基材を前記載置手段に吸着する吸着手段と、
前記載置手段の位置を調整する位置調整手段と、
前記載置手段に載置された基材の位置を検出する基材位置検出手段と、
基材を所定の位置で前記基材処理部へ供給するように、前記基材位置検出手段の検出結果に基づいて前記位置調整手段を制御する制御手段と
を備え
前記基材処理部に、基材を保持して回転駆動する圧胴と、前記圧胴の位相を検出する圧胴位相検出手段とを備え、
前記基材供給部に、前記載置手段に載置された基材を前記基材処理部の前記圧胴へ搬送する搬送手段を備え、
前記制御手段は、前記圧胴位相検出手段の検出結果に基づいて、前記搬送手段を制御する
ことを特徴とするフレキシブル電子デバイス製造装置。
【請求項2】
前記位置調整手段は、前記載置手段を水平面内における異なる二方向への移動および回転によって位置調整する
ことを特徴とする請求項1に記載のフレキシブル電子デバイス製造装置。
【請求項3】
前記搬送手段は、基材の端部をくわえて保持するくわえ爪装置を備えた渡胴であり、
前記載置手段は、前記くわえ爪装置における爪の軌道に対応する位置に切り欠き部を有する板状物である
ことを特徴とする請求項1または請求項2に記載のフレキシブル電子デバイス製造装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、フレキシブルな基材に対して複数の機能層を印刷または塗布により積層して電子デバイスを製造するフレキシブル電子デバイス製造装置に関する。
【背景技術】
【0002】
近年では、フィルムなどのフレキシブルな基材に高精細なパターンの配線等の機能層が形成されたフレキシブル電子デバイスが注目されている。フレキシブル電子デバイスとしては、例えば、薄膜トランジスタ(以下、本明細書においては、TFTと呼ぶ)などがある。これらフレキシブル電子デバイスの製造においては、従来、高精細なパターンの配線を形成することができるフォトリソ法が採用されていた。しかし、フォトリソ法による電子デバイスの製造方法は、高温・真空の環境を作るなどの手間の掛かるプロセスを要し、製造工数が多く、製造コストが掛かるものであった。よって、フォトリソ法に代わるフレキシブル電子デバイスの製造方法が求められている。
【0003】
フォトリソ法に代わる電子デバイスの製造方法としては、例えば、プリンテッド・エレクトロニクス(以下、本明細書においては、PEと呼ぶ)がある。PEを採用したフレキシブル電子デバイスの製造は、印刷法や塗布法によってフレキシブル基材に高精細なパターンの配線を形成してフレキシブル電子デバイスを製作するものであり、フォトリソ法を採用したフレキシブル電子デバイスの製造と比較して、手間の掛かるプロセスを要せず、製造工数の削減や製造コストの大幅な引き下げが可能となる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2007−268715号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
このPEを採用した薄膜トランジスタの形成方法としては、例えば、特許文献1に記載の技術がある。特許文献1に記載の薄膜トランジスタの形成方法は、基材に導電材の電極パターンを形成する際に、解像度の高い反転印刷法を用いて導電材を基材の特定の箇所へ精度良く形成するものである。
【0006】
しかし、TFTは、基材上にゲート層、絶縁層、ソース・ドレイン層、半導体を積層したものであり、TFTの製造においては、各層の相対位置を合わせると共に高精細に積層しなければならないが、特許文献1に開示された技術を採用して基材に多層の積層を行う場合には、各層を形成するための各装置へ基材を移動させる度に、各装置に対する基材の精密な位置合わせを行わなければならない。この精密な位置合わせに係る準備作業は、作業者の負担増加を招き、製造工数および製造コストを増大させてしまう虞がある。
【0007】
本発明は、上記問題に鑑みてなされたもので、多層の積層を行う際に必要となる各工程における都度の位置合わせ等の準備作業を簡略化し、少ない製造工数かつ高精度でフレキシブル電子デバイスを製造することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題を解決する第一の発明に係るフレキシブル電子デバイス製造装置は、フレキシブルな基材に対して機能層を印刷または塗布する基材処理部と、基材を前記基材処理部へ供給する基材供給部とを備えたフレキシブル電子デバイス製造装置であって、前記基材供給部に、基材を載置する載置手段と、基材を前記載置手段に吸着する吸着手段と、前記載置手段の位置を調整する位置調整手段と、前記載置手段に載置された基材の位置を検出する基材位置検出手段と、基材を所定の位置で前記基材処理部へ供給するように、前記基材位置検出手段の検出結果に基づいて前記位置調整手段を制御する制御手段とを備え、前記基材処理部に、基材を保持して回転駆動する圧胴と、前記圧胴の位相を検出する圧胴位相検出手段とを備え、前記基材供給部に、前記載置手段に載置された基材を前記基材処理部の前記圧胴へ搬送する搬送手段を備え、前記制御手段は、前記圧胴位相検出手段の検出結果に基づいて、前記搬送手段を制御することを特徴とする。
【0009】
上記課題を解決する第二の発明に係るフレキシブル電子デバイス製造装置は、第一の発明に係るフレキシブル電子デバイス製造装置において、前記位置調整手段は、前記載置手段を水平面内における異なる二方向への移動および回転によって位置調整することを特徴とする。
【0011】
上記課題を解決する第三の発明に係るフレキシブル電子デバイス製造装置は、第一または第二の発明に係るフレキシブル電子デバイス製造装置において、前記搬送手段は、基材の端部をくわえて保持するくわえ爪装置を備えた渡胴であり、前記載置手段は、前記くわえ爪装置における爪の軌道に対応する位置に切り欠き部を有する板状物であることを特徴とする。
【発明の効果】
【0012】
第一の発明に係るフレキシブル電子デバイス製造装置によれば、基材供給部に、基材を載置する載置手段と、載置手段の位置を調整する位置調整手段と、載置手段に載置された基材の位置を検出する基材位置検出手段と、基材位置検出手段の検出結果に基づいて位置調整手段を制御する制御手段とを備えたことにより、基材を所定の位置で基材処理部へ供給することができる。また、基材位置検出手段の検出結果に基づいて位置調整手段を制御することにより、作業者の負担増加の原因となり得る位置合わせに係る準備作業を無くすことができる。
また、前工程で所定の処理が施された基材に対しても、基材供給部においてアライメント調整を行うことにより、基材処理部において高精度で処理を施すことができる。さらに、フレキシブル電子デバイス製造装置の処理後においても、基材に対して施した処理の基準が求められているので、他の処理装置において当該基準に基づいてアライメント調整を行うことにより、他の処理装置による他の処理も高精度に施すことができる。
また、基材処理部に基材を保持して回転駆動する圧胴と圧胴の位相を検出する圧胴位相検出手段とを備え、基材供給部に載置手段に載置された基材を基材処理部の圧胴へ搬送する搬送手段を備え、制御手段が圧胴位相検出手段の検出結果に基づいて搬送手段を制御することにより、基材供給部から基材処理部へ基材の供給を精密に行うことができると共に、基材処理部において基材に対して高精度な各種処理を行うことができる。
【0013】
第二の発明に係るフレキシブル電子デバイス製造装置によれば、位置調整手段を、載置手段を水平面内における異なる二方向への移動および回転によって位置調整するものとしたことにより、精密なアライメント調整を行うことができる。よって、基材供給部に基材をセットする際、すなわち、載置手段に基材を載置する際には、基材を所定の位置に正確に載置する必要はなく、載置手段上に設置した突き当てピン等によってラフな位置出しを行うだけで良い。つまり、位置合わせに係る準備作業を簡易化することができるので、作業者の負担を低減することができる。
【0015】
第三の発明に係るフレキシブル電子デバイス製造装置によれば、搬送手段を基材の端部をくわえて保持するくわえ爪装置を備えた渡胴としたことにより、簡易な構成とすることができる。また、載置手段をくわえ爪装置における爪の軌道に対応する位置に切り欠き部を有する板状物としたことにより、載置手段と渡胴のくわえ爪装置との干渉を簡易な構造で回避することができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
図1】実施例1に係るフレキシブル電子デバイス製造装置を示す概略図である。
図2】実施例1に係るフレキシブル電子デバイス製造装置において行う工程を示すフローチャートである。
図3】実施例1に係るフレキシブル電子デバイス製造装置において複数の処理が施されたフィルム基板の部分拡大断面図である。
図4】実施例1に係るフレキシブル電子デバイス製造装置における基材供給部の供給装置を示す概略斜視図である。
図5A】実施例1に係るフレキシブル電子デバイス製造装置における基材供給部の動作を示す説明図である。
図5B】実施例1に係るフレキシブル電子デバイス製造装置における基材供給部の動作を示す説明図である。
図5C】実施例1に係るフレキシブル電子デバイス製造装置における基材供給部の動作を示す説明図である。
図6】実施例1に係るフレキシブル電子デバイス製造装置の制御系統を示すブロック図である。
図7A】実施例1に係るフレキシブル電子デバイス製造装置の動作を示す説明図である。
図7B】実施例1に係るフレキシブル電子デバイス製造装置の動作を示す説明図である。
図7C】実施例1に係るフレキシブル電子デバイス製造装置の動作を示す説明図である。
図7D】実施例1に係るフレキシブル電子デバイス製造装置の動作を示す説明図である。
図7E】実施例1に係るフレキシブル電子デバイス製造装置の動作を示す説明図である。
図7F】実施例1に係るフレキシブル電子デバイス製造装置の動作を示す説明図である。
図7G】実施例1に係るフレキシブル電子デバイス製造装置の動作を示す説明図である。
図7H】実施例1に係るフレキシブル電子デバイス製造装置の動作を示す説明図である。
図7I】実施例1に係るフレキシブル電子デバイス製造装置の動作を示す説明図である。
図7J】実施例1に係るフレキシブル電子デバイス製造装置の動作を示す説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下に、本発明に係るフレキシブル電子デバイス製造装置の実施例について、添付図面を参照して詳細に説明する。もちろん、本発明は以下の実施例に限定されず、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で、各種変更が可能であることは言うまでもない。
【実施例1】
【0018】
本実施例に係るフレキシブル電子デバイス製造装置および該装置を用いて製造されるフレキシブル電子デバイスについて、図1から図3を参照して説明する。
【0019】
本実施例に係るフレキシブル電子デバイス製造装置は、基材に対して、高精度にアライメント調整を行い、電子デバイスの製造における複数の処理を行うものである。
【0020】
図1に示すように、フレキシブル電子デバイス製造装置1は、基材としてのフィルム基板100を供給する供給手段としての基材供給部2と、基材供給部2によって供給されたフィルム基板100に対して後述する複数の処理を施す基材処理部3と、基材処理部3によって処理が施されたフィルム基板100を排出する排出手段としての基材排出部4とによって構成される。
【0021】
基材供給部2によって供給されたフィルム基板100は、基材処理部3において、複数の工程(図2に示すS1〜S4)における種々の処理が施されることによって、図3に示すように、フィルム基板100上にそれぞれ機能層であるゲート層110,絶縁層120,ソース・ドレイン層130,半導体140が高精度に積層され、基材排出部4によって排出される(図1参照)。
【0022】
なお、図示はしないが、排出されたフィルム基板100は、フレキシブル電子デバイス製造装置1とは別体の図示しないオーブンにセットされ、当該オーブンにおいて、フィルム基板100に積層された各層110,120,130,140が焼成または架橋されることにより、フレキシブル電子デバイスが得られる。
【0023】
本実施例で用いられるフィルム基板100としては、例えば、20〜300μm程度の厚みのポリエチレンテレフタレート(PET),ポリエチレンナフタレート(PEN),ポリカーボネート(PC),ポリイミド(PI),フレキシブルなガラス,セルロース(一種の紙)などのフィルム状物が挙げられる。
【0024】
フレキシブル電子デバイス製造装置1における基材供給部2、基材処理部3、基材排出部4について、詳細に説明する。
【0025】
まず、基材供給部2の構成について、図1図4から図6を参照して説明する。
【0026】
図1に示すように、基材供給部2は、フィルム基板100の供給を行う供給装置10と、供給装置10によって供給されたフィルム基板100を基材処理部3へ受け渡す搬送手段としての二倍胴の渡胴20とによって構成される。
【0027】
フィルム基板100は、供給装置10によって供給位置(図1図5Bに示す位置)に搬送され、渡胴20に備えられたくわえ爪装置21によって当該フィルム基板100の搬送方向上流側先端部100aをくわえられて保持されると共に、渡胴20の回転動作によって搬送され(図5C参照)、基材処理部3へ供給される。ここで、供給位置は、供給装置10から渡胴20へのフィルム基板100の供給が行われる位置、すなわち、くわえ爪装置21がフィルム基板100をくわえる規定の位置である。
【0028】
渡胴20は、後述する基材処理部3における圧胴30と対接すると共に、圧胴30と図示しないギヤ機構を介して連結されている。渡胴20は、圧胴30と共に回転駆動され、渡胴20のくわえ爪装置21は、渡胴爪開閉カム駆動装置221(図6参照)によって爪の開閉、すなわち、フィルム基板100をくわえて圧胴30へ渡す動作とフィルム基板100をくわえずに圧胴30へ受け渡さない動作との切り換えが行われる。
【0029】
本発明における搬送手段は、本実施例の渡胴20に限定されない。例えば、搬送手段を、圧胴30と独立した単独駆動の渡胴としても良く、一倍胴または三倍胴以上の渡胴としても良く、渡胴を介さないスイング装置等としても良い。
【0030】
図4に示すように、供給装置10は、搬送台11(図5Aから図5C参照)の上を図示しない駆動源によって移動可能な搬送テーブル12と、搬送テーブル12上に設置されてフィルム基板100を載置する載置手段としての載置ボード13とから構成される。
【0031】
基材供給部2には、搬送テーブル12が搬送台11上を移動しても載置ボード13上のフィルム基板100の載置位置がずれないように、フィルム基板100を載置ボード13へ吸着させる吸着手段を設けている。本実施例では、吸着手段として、載置ボード13のフィルム基板100と対接する面に開口する複数の図示しない吸着穴を設けると共に、当該吸着穴と連通して負圧を作用させるポンプ16(図6参照)を設けている。つまり、本実施例における吸着手段は、負圧を利用してフィルム基板100を載置ボード13へ真空吸着するものである。
【0032】
このように吸着穴(図示せず)およびポンプ16を設けることにより、ポンプ16で発生させた負圧を利用してフィルム基板100を載置ボード13へ吸着させることができる。すなわち、ポンプ16で発生させた負圧は、ポンプ16と連通する吸着穴(図示せず)を介して載置ボード13上のフィルム基板100に作用し、当該フィルム基板100は、載置ボード13に吸着されるので、搬送テーブル12が搬送台11上を移動しても載置ボード13上のフィルム基板100の載置位置がずれない。また、フィルム基板100が載置ボード13に吸着されることにより、後述するアライメント調整においても、フィルム基板100の載置位置を正確かつ微細に調整することができる。
【0033】
載置ボード13は、フィルム基板100を載置可能な板状物であり、その搬送方向上流側先端部13aには、渡胴20のくわえ爪装置21(図1参照)の爪の軌道に対応する位置に、複数(本実施例では四つ)の切り欠き部13bが設けられている。
【0034】
このように載置ボード13に切り欠き部13bを設けることにより、供給装置10から渡胴20へのフィルム基板100の受け渡しの際に、渡胴20のくわえ爪装置21と供給装置10の載置ボード13との干渉を回避することができる。
【0035】
また、搬送テーブル12上の載置ボード13には、位置調整手段としてのアクチュエータ14が備えられている。アクチュエータ14を作動させることにより、搬送テーブル12上において、載置ボード13を水平面内における左右方向Xおよび天地方向Yへ移動させると共に、回転方向θへ回転させることができる。つまり、アクチュエータ14による載置ボード13の左右方向X,天地方向Y,回転方向θにおける位置調整により、搬送テーブル12に対するフィルム基板100の載置位置を調整することができる。
【0036】
更に、搬送テーブル12の移動経路には、搬送テーブル12に対するフィルム基板100の載置位置を検出するための位置検出手段としてのアライメントカメラ15が設置されている。このように、アクチュエータ14およびアライメントカメラ15を設けることにより、搬送テーブル12に対するフィルム基板100の載置位置について精密なアライメント調整を行うことができる。
【0037】
具体的には、フィルム基板100がセットされた搬送テーブル12をアライメントカメラ15が設置されたアライメント調整位置に停止させ(図5A参照)、フィルム基板100に予め設けたアライメントマーク101(本実施例においては十字形)をアライメントカメラ15によって読み取ることにより、搬送テーブル12に対するフィルム基板100の載置位置を検出し、当該検出結果に基づいてアクチュエータ14を作動させることにより、アライメントマーク101すなわちフィルム基板100を所定の位置(搬送テーブル12に対する基準位置)に位置させることができる(図4参照)。
【0038】
このとき、ポンプ16を作動させてフィルム基板100を載置ボード13へ吸着させているので、フィルム基板100の載置位置を正確かつ微細に調整すること、すなわち、フィルム基板100の精密なアライメント調整を行うことができる。
【0039】
このように、フィルム基板100の精密なアライメント調整を行うことにより、フィルム基板100を所定の供給位置で渡胴20へ供給すると共に、所定の搬送位置で基材処理部3へ搬送することができる。よって、基材処理部3においては、毎回所定の搬送位置で搬送されるフィルム基板100に対して各種処理を行うことができるので、フィルム基板100に対して高精度な各種処理を行うことができる。
【0040】
また、例えば、前工程で所定の処理が施された基材に対しても、本実施例に係るフレキシブル電子デバイス製造装置1において上述のアライメント調整を行い、各種処理を高精度に施すことができると共に、フレキシブル電子デバイス製造装置1における各種処理後においても、他の処理装置において既設のアライメントマーク101を基準とした本実施例と同様のアライメント調整を行うことにより、他の処理装置による他の処理も高精度に施すことができる。
【0041】
また、上述のように、供給装置10においてフィルム基板100の精密なアライメント調整を可能としたので、供給装置10にフィルム基板100をセットする際、すなわち、供給装置10における載置ボード13上にフィルム基板100を載置する際には、フィルム基板100を所定の位置に正確に載置する必要はなく、載置ボード13上に設置した図示しない突き当てピン等によってラフな位置出しを行うだけで良い。
【0042】
つまり、手置き等で載置ボード13上におけるフィルム基板100のラフな位置出しを行い、フィルム基板100を載置ボード13へ吸着させ、上述のアライメント調整によって載置ボード13上におけるフィルム基板100の正確な位置出しを行う(搬送テーブル12に対する基準位置に位置させる)ことができるので、供給装置10へのフィルム基板100のセットに際して、作業者の負荷が増加することはなく、製造工数の増加を招くこともない。
【0043】
供給装置10における載置ボード13を駆動させるアクチュエータ14、すなわち、フィルム基板100の位置調整手段としては、載置ボード13を搬送テーブル12に対して水平面内で異なる二方向への移動および回転が可能な構成であれば良く、例えば、モータ等の駆動源によってボールネジやベアリング等を介する機構、油圧や空気圧等による機構など種々の機構を採用することができる。
【0044】
なお、本実施例における搬送テーブル12は、フィルム基板100を載置ボード13上に載置するための基材セット位置(図示せず)と、フィルム基板100の載置位置の検出および調整を行うためのアライメント調整位置(図5A参照)と、渡胴20のくわえ爪装置21がフィルム基板100をくわえるための供給位置(図5B参照)とを移動可能な構成であり、その移動機構および駆動源等は特に制限されない。アライメント調整位置から供給位置まで、搬送テーブル12すなわちフィルム基板100を正確に移動させるためには、図示しないリニアモータなどによって搬送テーブル12を直動駆動とすることが好ましい。
【0045】
もちろん、上述の基材セット位置とアライメント調整位置と供給位置とをそれぞれ同位置とし、搬送テーブル12を移動させずに、フィルム基板100のセット、フィルム基板100の載置位置の検出および調整、渡胴20のくわえ爪装置21への供給を行うようにしても良い。
【0046】
次に、基材処理部3の構成について、図1から図3を参照して説明する。
【0047】
図1に示すように、基材処理部3は、基材供給部2における渡胴20からフィルム基板100を受け取る四倍胴の圧胴30と、圧胴30の周囲に隣接して設置される処理手段としての処理装置40,50,60,70とによって構成されている。フィルム基板100は、渡胴20のくわえ爪装置21から圧胴30に備えられたくわえ爪装置31にくわえ替えられることにより、基材供給部2から基材処理部3へ供給される。
【0048】
圧胴30は、圧胴駆動手段としての圧胴駆動装置230(図6参照)によって正逆回転可能に回転駆動され、圧胴30のくわえ爪装置31は、渡胴側圧胴爪開閉カム駆動装置231aおよび排出部側圧胴爪開閉カム駆動装置231b(図6参照)によって爪の開閉が行われる。フィルム基板100は、圧胴30のくわえ爪装置31に搬送方向上流側先端部100a(圧胴30の正回転駆動時における搬送方向上流側の端部)をくわえられて保持される。よって、圧胴30の逆回転駆動時に、くわえ爪装置31によってくわえられていないフィルム基板100の尻側が圧胴30の表面から離れないように、圧胴30に密着手段を備えている。
【0049】
本実施例においては、密着手段として、圧胴30の表面に高分子素材から成る密着シート(図示せず)を取付けている。くわえ爪装置31によって圧胴30に保持されるフィルム基板100は、その略全面が圧胴30の表面に密着するようになっている。このようにフィルム基板100を圧胴30の表面に密着させる密着手段を圧胴30に設けることにより、圧胴30が圧胴駆動装置230の動作によって逆回転駆動される際においても、くわえ爪装置31によって保持されていないフィルム基板100の尻側が圧胴30の表面から離れることはなく、圧胴30のくわえ爪装置31によって保持されるフィルム基板100の安定した搬送および排出等が可能となる。
【0050】
本発明における圧胴30に備える密着手段としては、本実施例のように多孔質ポーラスやシリコンなどの密着性を備えた高分子素材を取り付けることにより、フィルム基板100を圧胴30の表面に密着させるものに限定されず、例えば、圧胴30に保持されるフィルム基板100の尻側をくわえ爪装置(図示せず)によってくわえるようにしても良い。
【0051】
処理装置40,50,60,70は、圧胴30に保持されたフィルム基板100に対して、印刷法または塗布法によって複数の機能層を設ける(積層する)ための複数の処理を施す処理手段であり、本実施例においては、反転印刷法によって機能層を形成するための機能性溶液を印刷する印刷装置としての反転印刷装置40と、コーティング法によって機能層を形成するための機能性溶液を塗布する塗布装置としてのコーティング装置50と、インクジェット印刷法によって機能層を形成するための機能性溶液を印刷する印刷装置としてのインクジェット印刷装置60と、フィルム基板100に印刷または塗布された機能性溶液を乾燥(固化)させる乾燥装置(固化装置)70である。
【0052】
もちろん、本発明における処理手段は、本実施例の反転印刷装置40、コーティング装置50、インクジェット印刷装置60、乾燥装置70に限定されない。処理手段は、フレキシブル電子デバイスを構成する複数の機能層のうち一つの機能層を印刷または塗布した後、圧胴30に保持されたままのフィルム基板100に対して、前記一つの機能層の上に別の機能層を印刷または塗布により設けるなど、電子デバイスの製造段階における複数の処理を施すものであれば良い。
【0053】
処理手段として、例えば、グラビア印刷法による処理を施すグラビア印刷装置、凹版印刷法による処理を施す凹版印刷装置、凸版印刷法による処理を施す凸版印刷装置などを圧胴30の周囲に隣接させて設置しても良く、印刷法による処理以外にも、種々の塗布法による処理を施す塗布装置などを圧胴30の周囲に隣接させて設置しても良い。もちろん、処理手段によって施す処理の内容および数についても、本実施例のものに限定されるものではない。
【0054】
反転印刷装置40は、フィルム基板100に対する複数の処理のうちの一つの処理を施す手段であり、フィルム基板100に対して、反転印刷法を用いてゲート層110およびソース・ドレイン層130を形成するための導電溶液(機能性溶液)を所定のパターンで印刷するものである。図1に示すように、反転印刷装置40は、圧胴30と対接する二倍胴のゴム胴41と、ゴム胴41と対接する二倍胴の反転版胴42と、ゴム胴41の上方に近接するスリットダイ43と、図示しない導電溶液供給装置とから成る。
【0055】
ゴム胴41は、ゴム胴駆動手段およびゴム胴着脱手段としての反転印刷部ゴム胴駆動・着脱装置241(図6参照)によって、圧胴30と独立して正逆回転可能に回転駆動されると共に、圧胴30に対して着脱可能である。また、反転版胴42は、版胴駆動手段および版胴着脱手段としての反転印刷部版胴駆動・着脱装置242(図6参照)によって、圧胴30およびゴム胴41と独立して回転駆動されると共に、ゴム胴41に対して着脱可能である。
【0056】
また、反転印刷装置40におけるスリットダイ43は、反転印刷部スリットコータ作動装置243(図6参照)によって作動され、反転印刷法による処理を施すときには、スリットダイ43を下方へ移動してゴム胴41に近接した溶液供給位置に位置させると共に、図示しない導電溶液供給装置からスリットダイ43およびゴム胴41へ導電溶液を供給し(図7A参照)、反転印刷法による処理を施さないときには、スリットダイ43を上方へ移動してゴム胴41から離反した待機位置に位置させると共に、図示しない導電溶液供給装置からスリットダイ43およびゴム胴41への導電溶液の供給を停止させる(図7B参照)。
【0057】
反転印刷装置40において使用される導電溶液は、ゲート層110およびソース・ドレイン層130の両方の層形成に使用できるものであり、反転印刷装置40は、反転印刷法によって、ゲート層110を形成するための印刷およびソース・ドレイン層130を形成するための印刷の両方を行う。導電溶液としては、特に限定されないが、金属ナノ粒子を溶解した機能性溶液が挙げられる。金属ナノ粒子としては、例えば、金,銀,銅,ニッケル、白金、パラジウム、ロジウム等があり、溶媒としては、例えば、水、アルコール等がある。
【0058】
もちろん、本発明における処理手段としては、ゲート層110およびソース・ドレイン層130の形成に異なる導電溶液を用い、ゲート層110を形成するための印刷およびソース・ドレイン層130を形成するための印刷をそれぞれ別の装置を用いて行うようにしても良い。
【0059】
導電溶液は、図示しない導電溶液供給装置からスリットダイ43へ供給され、スリットダイ43の下方から回転駆動するゴム胴41へ供給される。ゴム胴41の周面に供給された導電溶液は、対接する反転版胴42の周面に設けられた刷版42aまたは42bによってネガパターン(非画線部)の導電溶液が除去され、ゴム胴41の周面にはポジパターン(画線部)の導電溶液のみが残される。ゴム胴41の周面に残されたポジパターンの導電溶液は、圧胴30の周面に保持されたフィルム基板100に転写される。
【0060】
本実施例における反転印刷装置40の反転版胴42には、異なるパターンで形成された二種類の刷版42a,42bを取り付け、一つの反転印刷装置40によって二種類のパターンの反転印刷が可能な構成としている。二種類の刷版42a,42bは、ゲート層形成用の刷版42aとソース・ドレイン層形成用の刷版42bであり、各刷版42a,42bは、それぞれ各層に対応したパターンで形成されている。
【0061】
よって、ゲート層形成工程においては、一方の刷版42aを用いた反転印刷によって、フィルム基板100にゲート層パターンの導電溶液が印刷され、ソース・ドレイン層形成工程においては、他方の刷版42bを用いた反転印刷によって、フィルム基板100にソース・ドレイン層パターンの導電溶液が印刷される。
【0062】
つまり、本実施例における反転印刷装置40は、圧胴30に保持されたフィルム基板100に対して、機能層を異なるパターンで複数層(本実施例では二層)印刷することができるものであり、フィルム基板100に導電溶液を異なるパターンで印刷することにより、ゲート層110を形成するゲート層形成装置、かつ、ソース・ドレイン層130を形成するソース・ドレイン層形成装置の両方の機能を有している。ゲート層形成工程およびソース・ドレイン層形成工程における反転印刷装置40の印刷動作については後述する。
【0063】
本実施例においては、反転印刷装置40によって異なる層を形成するための印刷を施しているため、二種類の刷版42a,42bを取付けられるように、反転版胴42を二倍胴としているが、本発明における版胴はこれに限定されない。本発明における版胴を、例えば、二種類の刷版を取付けた三倍胴以上の版胴としても良く、三種類以上の刷版を取付けた三倍胴以上の版胴としても良い。
【0064】
コーティング装置50は、フィルム基板100に対する複数の処理のうちの一つの処理を施す手段であり、フィルム基板100に対して、コーティング法を用いて絶縁層120を形成するための絶縁溶液(機能性溶液)を塗布するものである。図1に示すように、コーティング装置50は、圧胴30と対接するゴム胴51と、ゴム胴51の上方に隣接するスリットダイ52と、図示しない絶縁溶液供給装置とから成る。
【0065】
ゴム胴51は、ゴム胴駆動手段およびゴム胴着脱手段としてのコーティング部ゴム胴駆動・着脱装置251(図6参照)によって、圧胴30に対して独立して正逆回転可能に回転駆動されると共に、圧胴30に対して着脱可能である。
【0066】
また、コーティング装置50におけるスリットダイ52は、コーティング部スリットコータ作動装置252(図6参照)によって作動され、コーティング法による処理を施すときには、スリットダイ52を下方へ移動してゴム胴51に近接した溶液供給位置に位置させると共に、図示しない絶縁溶液供給装置からスリットダイ52およびゴム胴51へ絶縁溶液を供給し(図7E参照)、コーティング法による処理を施さないときには、スリットダイ52を上方へ移動してゴム胴51から離反した待機位置に位置させると共に、図示しない絶縁溶液供給装置からスリットダイ52およびゴム胴51への絶縁溶液の供給を停止させる(図7F参照)。
【0067】
コーティング装置50において使用される絶縁溶液は、絶縁層120の層形成に使用できるものであり、コーティング装置50を用いたコーティング法によって、絶縁層120を形成するための印刷を行う。絶縁溶液としては、特に限定されないが、絶縁材料を溶解した機能性溶液が挙げられ、例えば、ポリビニルフェノールをイソプロピルアルコールに溶解させた機能性溶液等がある。
【0068】
絶縁溶液は、図示しない絶縁溶液供給装置からスリットダイ52に供給され、スリットダイ52の下方から回転駆動するゴム胴51へ供給される。ゴム胴51の周面に供給された絶縁溶液は、圧胴30に保持されたフィルム基板100の全面に塗布される。
【0069】
インクジェット印刷装置60は、フィルム基板100に対する複数の処理のうちの一つの処理を施す手段であり、フィルム基板100に対して、インクジェット印刷法を用いて半導体140を形成するための半導体溶液(機能性溶液)を印刷するものである。図1に示すように、インクジェット印刷装置60は、圧胴30の上方において圧胴30に対して近接離反可能に設置されるノズルヘッド61と、図示しない半導体溶液供給装置とから構成される。
【0070】
インクジェット印刷装置60は、インクジェット作動装置260(図6参照)によって、インクジェット印刷法による処理を施すときには、ノズルヘッド61を下方へ移動して圧胴30に近接した印刷位置に位置させると共に、図示しない半導体溶液供給装置からノズルヘッド61およびフィルム基板100へ半導体溶液を供給し(図7J参照)、インクジェット印刷法による処理を施さないときには、ノズルヘッド61を上方へ移動して圧胴30から離反した待機位置に位置させると共に、図示しない半導体溶液供給装置からノズルヘッド61およびフィルム基板100への半導体溶液の供給を停止させる(図7A参照)。
【0071】
インクジェット印刷装置60において使用される半導体溶液は、半導体140の層形成に使用できるものであり、インクジェット印刷装置60を用いたインクジェット印刷法によって、半導体140を形成するための印刷を行う。半導体溶液としては、特に限定されないが、誘導体を溶解した機能性溶液が挙げられる。誘導体としては、例えば、ポリチオフェン誘導体,ポリアセチレン誘導体,ポリチエニレンビニレン誘導体,ポリアリルアミン誘導体,ポリアセチレン誘導体,アセン誘導体,オリゴチオフェン誘導体等があり、溶媒としては、例えば、水、アルコール等がある。
【0072】
インクジェット印刷法による処理を施す場合には、半導体溶液は、図示しない半導体溶液供給装置からノズルヘッド61へ供給されると共に、印刷位置のノズルヘッド61からフィルム基板100に対して噴出される。一方、インクジェット印刷法による処理を施さない場合には、図示しない半導体溶液供給装置からノズルヘッド61への半導体溶液の供給が停止されると共に、ノズルヘッド61は待機位置へ退避する。
【0073】
乾燥装置70は、フィルム基板100に対する複数の処理のうちの一つの処理を施す手段であり、所定の印刷または塗布が施されたフィルム基板100に対してIRライトを照射することにより、機能性溶液における溶媒や分散剤などの不純物を飛ばすものである。ここで、機能性溶液は、導電性や絶縁性などの機能を備えたものを溶剤に溶いたものであり、本実施例においては、反転印刷装置40によって印刷された導電溶液、インクジェット印刷装置60によって印刷された半導体溶液、コーティング装置50によって印刷された絶縁溶液である。
【0074】
もちろん、本発明における固化装置は、本実施例のIRライトを照射する乾燥装置70に限定されない。固化装置としては、例えば、機能性溶液を乾燥させる乾燥装置、機能性溶液である絶縁溶液を架橋させるエネルギー照射装置、機能性溶液である導電溶液を導通させる焼成装置などが挙げられる。すなわち、固化装置による機能性溶液の固化としては、ヒータ等で塗布または印刷した機能性溶液に熱風等を吹き付けることにより乾燥させること、電子放射線(EB)やキセノン(Xe)フラッシュなどを照射してフィルム基板100が圧胴30に保持された状態で導電溶液の焼成を行うこと、絶縁溶液および半導体溶液としてそれぞれUV硬化型絶縁材料およびUV硬化型有機半導体材料を採用した場合には、UVランプを照射してフィルム基板100が圧胴30に保持された状態で絶縁溶液および半導体溶液を架橋することなどが挙げられる。
【0075】
乾燥装置70の近傍には、乾燥装置前基材有無検知センサ205(図6参照)が備えられており、乾燥装置70による乾燥工程(固化工程)の前にフィルム基板100の有無を検知することとしている。
【0076】
次に、基材排出部4の構成について、図1および図6を参照して説明する。
【0077】
基材排出部4は、基材処理部3における圧胴30からフィルム基板100を受け取る排出装置80と、排出装置80によって排出されるフィルム基板100が載置される排出台90とから構成される。
【0078】
排出装置80は、基材処理部3における圧胴30の近傍に設置される一方のスプロケット81と、圧胴30と離間した後方(図1における左方側)に設置される他方のスプロケット82と、両スプロケット81,82に吊架されるチェーン83とから構成される。チェーン83には、図示しない爪竿が設けられ、当該爪竿には、くわえ爪装置84が設けられている。
【0079】
排出装置80におけるスプロケット81は、基材処理部3における圧胴30の近傍に設けられると共に、圧胴30と図示しないギヤ機構を介して連結されている。スプロケット81,82およびチェーン83は、圧胴30と共に回転駆動され、チェーン83の図示しない爪竿に設けられたくわえ爪装置84は、排出部爪開閉カム駆動装置284(図6参照)によって爪の開閉、すなわち、爪がフィルム基板100をくわえて圧胴30から受け取る動作とフィルム基板100をくわえずに圧胴30から受け取らない動作との切り換えが行われる。
【0080】
本発明における排出手段は、本実施例の排出装置80を備えたものに限定されない。例えば、排出手段を、圧胴30と独立した単独駆動のスプロケットを採用した排出装置を備えたものとしても良く、単独駆動または圧胴30とのギヤ連結によって駆動する渡胴を介した機構を備えたものとしても良い。
【0081】
基材処理部3において複数の処理が施されたフィルム基板100は、圧胴30のくわえ爪装置31から排出装置80のくわえ爪装置84にくわえ替えられ、排出装置80のチェーン83の走行に伴って搬送される。くわえ爪装置84にくわえられることにより保持されたフィルム基板100がチェーン83走行によって排出台90の上方に至ると、くわえ爪装置84の爪が開き、フィルム基板100が解放されて排出台90に載置される。
【0082】
フレキシブル電子デバイス製造装置1において複数の処理を行う際の動作制御について、以下に説明する。
【0083】
フレキシブル電子デバイス製造装置1は、図6に示すように、上述した複数の処理を行う際の動作を制御する制御手段としての制御装置200を備えている。
【0084】
また、圧胴30と、反転印刷装置40のゴム胴41および反転版胴42と、コーティング装置50のゴム胴51とはそれぞれ独立駆動するため、それぞれの位相を検出することができるように、基材処理装置3には、圧胴30の位相を検出する圧胴位相検出手段としての圧胴位相検出器201と、反転印刷装置40のゴム胴41の位相を検出するゴム胴位相検出手段としての反転印刷部ゴム胴位相検出器202と、反転印刷装置40の反転版胴42の位相を検出する版胴位相検出手段としての反転印刷部版胴位相検出器203と、コーティング装置50のゴム胴51の位相を検出するゴム胴位相検出手段としてのコーティング部ゴム胴位相検出器204とを備えている(図1および図6参照)。
【0085】
図6に示すように、制御装置200には、各胴30,41,42,51の位相が、圧胴位相検出器201、反転印刷部ゴム胴位相検出器202、反転印刷部版胴位相検出器203、コーティング部ゴム胴位相検出器204からの信号としてそれぞれ入力され、更に、乾燥工程前におけるフィルム基板100の有無が、乾燥装置前基材有無検知センサ205からの信号として入力される。また、制御装置200には、作業者による吸着スイッチ206の操作情報および基材供給部2におけるアライメントカメラ15によって検出される搬送テーブル12に対するフィルム基板100の載置位置の情報が入力される。
【0086】
一方、制御装置200からは、渡胴爪開閉カム駆動装置221、圧胴駆動装置230、渡胴側圧胴爪開閉カム駆動装置231a、排出部側圧胴爪開閉カム駆動装置231b、反転印刷部ゴム胴駆動・着脱装置241、反転印刷部版胴駆動・着脱装置242、反転印刷部スリットコータ作動装置243、コーティング部ゴム胴駆動・着脱装置251、コーティング部スリットコータ作動装置252、インクジェット作動装置260、乾燥装置作動装置270、排出部爪開閉カム駆動装置284に対する駆動指示が信号としてそれぞれ出力される。また、制御装置200からは、フィルム基板100の載置ボード13への吸着を開始また終了するための情報がポンプ16へ出力され、搬送テーブル12に対するフィルム基板100の載置位置を調整するための情報がアクチュエータ14へ出力される。
【0087】
本実施例に係るフレキシブル電子デバイス製造装置1の動作について、図1から図7を参照して説明する。
【0088】
まず、基材供給部2において、フィルム基板100の供給準備を行う。
手置き等によって、フィルム基板100を供給装置10にセット、すなわち、フィルム基板100を供給装置10における載置ボード13上に載置する。このとき、載置ボード13上に設置した図示しない突き当てピン等によって、フィルム基板100のラフな位置出しが行われる。
【0089】
作業者は、吸着スイッチ206を操作し、フィルム基板100の載置ボード13への吸着を開始する。吸着スイッチ206から吸着開始の情報が制御装置200へ入力されると、制御装置200は、図示しない吸着穴を介してフィルム基板100が載置ボード13へ吸着されるように、ポンプ16の動作を制御する。具体的には、ポンプ16の内部または外部に設けた図示しないバルブを開閉することにより、フィルム基板100の載置ボード13への吸着を制御している。
【0090】
つまり、吸着を開始する場合には、図示しないバルブを閉じることにより、ポンプ16による負圧が図示しない吸着穴を介してフィルム基板100に作用するようにし、吸着を終了する場合には、バルブを開けることにより、ポンプ16による負圧が図示しない吸着穴を介してフィルム基板100に作用しないようにしている。
【0091】
本発明における吸着手段は、本実施例のように作業者が吸着スイッチ206を操作することによってフィルム基板100の載置ボード13への吸着を開始するものに限定されない。例えば、載置ボード13上のフィルム基板100を検知する検知センサ(図示せず)を設けることにより、作業者が手置き等で載置ボード13上におけるフィルム基板100のラフな位置出しを行った際に自動的に吸着が開始されるようにしても良い。
【0092】
また、本発明における吸着手段は、本実施例のようにバルブ(図示せず)の開閉によってフィルム基板100の載置ボード13への吸着を開始および終了させるものに限定されない。例えば、ポンプ16を入り切りすることにより、フィルム基板100の載置ボード13への吸着を開始および終了させるようにしても良い。
【0093】
フィルム基板100が載置ボード13に吸着された供給装置10は、図示しない駆動装置によって移動され、アライメントカメラ15が設置された付近のアライメント調整位置に位置する(図5A参照)。そして、制御装置200が、フィルム基板100を所定の位置で基材処理部3へ供給するように、アライメントカメラ15の検出結果に基づいて、アクチュエータ14を制御する(図6参照)。
【0094】
アライメント調整位置において、アライメントカメラ15によって、フィルム基板100に予め設けたアライメントマーク101を読み取り、搬送テーブル12に対するフィルム基板100の載置位置を検出する(図4参照)。当該検出結果に基づいてアクチュエータ14を動作させて、水平面内における異なる二方向X,Yへの移動および回転方向θへの回転によって位置調整する。すなわち、載置ボード13を水平面内における左右方向Xへの移動、天地方向Yへの移動、回転方向θへの回転を組み合わせて動作させることにより、アライメントマーク101すなわちフィルム基板100を所定の位置(搬送テーブル12に対する基準位置)に位置させる。
【0095】
搬送テーブル12に対するフィルム基板100の正確な位置出しが行われると、供給装置10は図示しない駆動装置によって更に移動され、渡胴20近傍の供給位置に位置する(図5B参照)。
以上の動作により、フィルム基板100の供給準備が完了する。
【0096】
続いて、基材処理部3において、フィルム基板100への機能層の複数層印刷を行う。
印刷前において、反転印刷装置40のゴム胴41は、反転印刷部ゴム胴駆動・着脱装置241によって圧胴30から離れた脱位置にあり、版胴42は、反転印刷部版胴駆動・着脱装置242によってゴム胴41から離れた脱位置にあり、コーティング装置50のゴム胴51は、コーティング部ゴム胴駆動・着脱装置251によって圧胴30から離れた脱位置にある(図7A参照)。
【0097】
まず、ステップS1のゲート層形成工程において、ゲート層110を形成するための導電溶液を印刷し、当該導電溶液を乾燥させる。
【0098】
制御装置200が、反転印刷部スリットコータ作動装置243および反転印刷部ゴム胴駆動・着脱装置241を作動することにより(図6参照)、図示しない導電溶液供給装置によって、反転印刷装置40におけるスリットダイ43に導電溶液が供給されると共に、スリットダイ43がゴム胴41に近接するように下方へ移動し、回転駆動させたゴム胴41の周面に導電溶液が供給される(図7A参照)。ゴム胴41の周面に十分な導電溶液が供給されると、図示しない導電溶液供給装置による導電溶液の供給を停止し、スリットダイ43をゴム胴41から離反して待機位置に移動する。
【0099】
次に、制御装置200が、反転印刷部ゴム胴位相検出器202および反転印刷部版胴位相検出器203の検出結果に基づいて、反転印刷部ゴム胴駆動・着脱装置241および反転印刷部版胴駆動・着脱装置242を作動することにより(図6参照)、反転印刷装置40における版胴42およびゴム胴41が一方の刷版42aの転写開始位置の位相に合わせられ、版胴42がゴム胴41に対接させられると共に、印圧を掛けた状態で版胴42とゴム胴41とが回転駆動される(図7B参照)。ゴム胴41の周面に供給された導電溶液は、版胴42の周面に取り付けられた刷版42aにおける凸部によって、ネガパターンの導電溶液が除去され、ポジパターンの導電溶液だけが残される(ポジパターン化)。
【0100】
ゴム胴41の周面における導電溶液のポジパターン化が終了すると、制御装置200が、反転印刷部版胴駆動・着脱装置242を作動すると共に、圧胴位相検出器201の検出結果に基づいて、圧胴駆動装置230と渡胴爪開閉カム駆動装置221とを作動することにより(図6参照)、版胴42がゴム胴41から離反して待機位置に位置させられると共に、基材供給部2における渡胴20のくわえ爪装置21によって供給装置10における載置ボード13上のフィルム基板100がくわえられ(図5C参照)、圧胴30の回転駆動に伴って渡胴20が回転させられることによりフィルム基板100が搬送される(図7C参照)。
【0101】
なお、制御装置200は、圧胴位相検出器201の検出結果に基づいて、圧胴駆動装置230と渡胴爪開閉カム駆動装置221とを作動すると略同時、すなわち、基材供給部2における渡胴20のくわえ爪装置21によって供給装置10における載置ボード13上のフィルム基板100がくわえられると略同時に、フィルム基板100の載置ボード13への吸着を終了させる。
【0102】
つまり、ポンプ16の内部または外部に設けた図示しないバルブを開け、ポンプ16による負圧が図示しない吸着穴を介してフィルム基板100に作用しないようにする。よって、フィルム基板100は、ポンプ16の負圧による載置ボード13への吸着から解放されて、渡胴20による搬送が可能となる。
【0103】
制御装置200が、圧胴位相検出器201の検出結果に基づいて、圧胴駆動装置230と渡胴側圧胴爪開閉カム駆動装置231aと渡胴爪開閉カム駆動装置221とを作動することにより(図6参照)、渡胴20のくわえ爪装置21にくわえられて搬送されたフィルム基板100は、基材処理部3における圧胴30のくわえ爪装置31にくわえ替えされ、圧胴30の回転によって搬送される(図7C参照)。
【0104】
制御装置200が、圧胴位相検出器201および反転印刷部ゴム胴位相検出器202の検出結果に基づいて、圧胴駆動装置230と反転印刷部ゴム胴駆動・着脱装置241を作動することにより(図6参照)、圧胴30および反転印刷装置40におけるゴム胴41が転写開始位置の位相に合わせられ、ゴム胴41が圧胴30に対接させられると共に、印圧を掛けた状態で圧胴30およびゴム胴41が回転駆動される(図7D参照)。これにより、ゴム胴41の周面に残されたポジパターンの導電溶液が、圧胴30の周面に保持されたフィルム基板100に転写される。
以上の動作により、フィルム基板100へゲート層を形成するための導電溶液の印刷が完了する。
【0105】
次に、フィルム基板100上に印刷された導電溶液を乾燥させる。
制御装置200が、圧胴位相検出器201および乾燥装置前基材有無検知センサ205の検出結果に基づいて、圧胴駆動装置230および乾燥装置作動装置270を作動することにより(図6参照)、反転印刷装置40による印刷が施されたフィルム基板100は、圧胴30に保持されたまま乾燥装置70の近傍まで搬送され、乾燥装置70のIRライトによって導電溶液の不純物が飛ばされる。乾燥時には、正転および逆転を繰り返すように圧胴30を回転動作させることにより、フィルム基板100に万遍なくIRライトを照射することができるので、乾燥むら等を防ぐことができる。また、IRライトが照射される乾燥位置で圧胴30を一定時間停止させることにより、導電溶液を乾燥させるようにしても良い。
【0106】
また、乾燥装置前基材有無検知センサ205によって圧胴30上のフィルム基板100の有無を検知することにより、フィルム基板100の搬送不良を検知することができる。なお、乾燥装置前基材有無検知センサ205によってフィルム基板100が無いと判断された場合には、フレキシブル電子デバイス製造装置1を停止して対応する。
【0107】
本実施例においては、圧胴30に保持されたフィルム基板100に対してIRライトを照射することにより、フィルム基板100上に印刷された導電溶液を乾燥させることとしたが、本発明はこれに限定されず、圧胴30に保持された状態でフィルム基板100上に印刷された導電溶液を焼成させても良い。
以上の動作により、ステップS1のゲート層形成工程が完了する。
【0108】
次に、ステップS2の絶縁層形成工程において、絶縁層120を形成するための絶縁溶液を印刷し、当該絶縁溶液を乾燥させる。
【0109】
制御装置200が、コーティング部スリットコータ作動装置252およびコーティング部ゴム胴駆動・着脱装置251を作動することにより(図6参照)、図示しない絶縁溶液供給装置によって、コーティング装置50におけるスリットダイ52に絶縁溶液が供給されると共に、スリットダイ52がゴム胴51に近接するように下方へ移動し、ゴム胴51の周面に絶縁溶液が供給される(図7E参照)。ゴム胴51の周面に十分な絶縁溶液が供給されると、図示しない絶縁溶液供給装置による絶縁溶液の供給は停止され、スリットダイ52はゴム胴51から離反して待機位置に位置する。
【0110】
本実施例では、コーティング装置50におけるスリットダイ52およびゴム胴51への絶縁溶液供給を、導電溶液の乾燥と同時に行うことにより、複数層印刷における動作効率を向上させている。もちろん、本発明における動作順序は、これに限定されず、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で、各動作順序の変更が可能であることは言うまでもない。
【0111】
制御装置200が、圧胴位相検出器201およびコーティング部ゴム胴位相検出器204の検出結果に基づいて、圧胴駆動装置230およびコーティング部ゴム胴駆動・着脱装置251を作動することにより(図6参照)、圧胴30およびコーティング装置50におけるゴム胴51が転写開始位置の位相に合わせられ、ゴム胴51が圧胴30に対接させられると共に、印圧を掛けた状態で圧胴30およびゴム胴51が回転駆動される(図7F参照)。これにより、ゴム胴51の周面に供給された絶縁溶液が、圧胴30の周面に保持されたフィルム基板100に転写される。
以上の動作により、フィルム基板100へ絶縁層を形成するための絶縁溶液の印刷が完了する。
【0112】
次に、フィルム基板100上に印刷された絶縁溶液を乾燥させる。
制御装置200が、圧胴位相検出器201および乾燥装置前基材有無検知センサ205の検出結果に基づいて、圧胴駆動装置230および乾燥装置作動装置270を作動することにより(図6参照)、コーティング装置50による印刷が施されたフィルム基板100は、圧胴30に保持されたまま乾燥装置70の近傍まで搬送され、乾燥装置70のIRライトによって絶縁溶液の不純物が飛ばされる。乾燥時には、正転および逆転を繰り返すように圧胴30を回転動作させることにより、フィルム基板100に万遍なくIRライトを照射することができるので、乾燥むら等を防ぐことができる。また、IRライトが照射される乾燥位置で圧胴30を一定時間停止させることにより、絶縁溶液を乾燥させるようにしても良い。
【0113】
また、乾燥装置前基材有無検知センサ205によって圧胴30上のフィルム基板100の有無を検知することにより、フィルム基板100の搬送不良を検知することができる。なお、乾燥装置前基材有無検知センサ205によってフィルム基板100が無いと判断された場合には、フレキシブル電子デバイス製造装置1を停止して対応する。
【0114】
本実施例においては、圧胴30に保持されたフィルム基板100に対してIRライトを照射することにより、フィルム基板100上に印刷された絶縁溶液を乾燥させることとしたが、本発明はこれに限定されず、圧胴30に保持された状態でフィルム基板100上に印刷された絶縁溶液を架橋させても良い。
以上の動作により、ステップS2の絶縁層形成工程が完了する。
【0115】
次に、ステップS3のソース・ドレイン層形成工程において、ソース・ドレイン層130を形成するための導電溶液を印刷する。
【0116】
制御装置200が、圧胴位相検出器201の検出結果に基づいて、圧胴駆動装置230を作動することにより(図6参照)、圧胴30の正回転駆動または逆回転駆動によって、絶縁層120の形成が完了したフィルム基板100は、ソース・ドレイン層形成工程の準備位置に停止させられる。なお、圧胴30を正回転駆動させることによりフィルム基板100を移動させる場合には、排出部側圧胴爪開閉カム駆動装置231bを作動することによって、圧胴30から基材排出部4における排出装置80へのくわえ替えが行われないようにする。
【0117】
制御装置200が、反転印刷部スリットコータ作動装置243および反転印刷部ゴム胴駆動・着脱装置241を作動することにより(図6参照)、図示しない導電溶液供給装置によって、反転印刷装置40におけるスリットダイ43に導電溶液が供給されると共に、スリットダイ43がゴム胴41に近接するように下方へ移動し、回転駆動させたゴム胴41の周面に導電溶液が供給される(図7G参照)。ゴム胴41の周面に十分な導電溶液が供給されると、図示しない導電溶液供給装置による導電溶液の供給は停止され、スリットダイ43はゴム胴41から離反して待機位置に移動される。
【0118】
次に、制御装置200が、反転印刷部ゴム胴位相検出器202および反転印刷部版胴位相検出器203の検出結果に基づいて、反転印刷部ゴム胴駆動・着脱装置241および反転印刷部版胴駆動・着脱装置242を作動することにより(図6参照)、反転印刷装置40における版胴42およびゴム胴41が他方の刷版42bの転写開始位置の位相に合わせられ、版胴42がゴム胴41に対接させられると共に、印圧を掛けた状態で版胴42とゴム胴41とが回転駆動される(図7H参照)。ゴム胴41の周面に供給された導電溶液は、版胴42の周面に取り付けられた刷版42bにおける凸部によって、ネガパターンの導電溶液が除去され、ポジパターンの導電溶液だけが残される(ポジパターン化)。
【0119】
ゴム胴41の周面における導電溶液のポジパターン化が終了すると、制御装置200が、反転印刷部版胴駆動・着脱装置242を作動すると共に、圧胴位相検出器201および反転印刷部ゴム胴位相検出器202の検出結果に基づいて、圧胴駆動装置230と反転印刷部ゴム胴駆動・着脱装置241とを作動することにより(図6参照)、版胴42がゴム胴41から離反して待機位置に位置させられると共に、圧胴30と反転印刷装置40におけるゴム胴41が転写開始位置の位相に合わせられ、ゴム胴41が圧胴30に対接させられると共に、印圧を掛けた状態で圧胴30およびゴム胴41が回転駆動される(図7I参照)。これにより、ゴム胴41の周面に残されたポジパターンの導電溶液が、圧胴30の周面に保持されたフィルム基板100に転写される。
以上の動作により、フィルム基板100へソース・ドレイン層を形成するための導電溶液の印刷が完了する。
【0120】
次に、フィルム基板100上に印刷された導電溶液を乾燥させる。
制御装置200が、圧胴位相検出器201および乾燥装置前基材有無検知センサ205の検出結果に基づいて、圧胴駆動装置230および乾燥装置作動装置270を作動することにより(図6参照)、反転印刷装置40による印刷が施されたフィルム基板100は、圧胴30に保持されたまま乾燥装置70の近傍まで搬送され、乾燥装置70のIRライトによって導電溶液の不純物が飛ばされる。乾燥時には、正転および逆転を繰り返すように圧胴30を回転動作させることにより、フィルム基板100に万遍なくIRライトを照射することができるので、乾燥むら等を防ぐことができる。また、IRライトが照射される乾燥位置で圧胴30を一定時間停止させることにより、導電溶液を乾燥させるようにしても良い。
【0121】
また、乾燥装置前基材有無検知センサ205によって圧胴30上のフィルム基板100の有無を検知することにより、フィルム基板100の搬送不良を検知することができる。なお、乾燥装置前基材有無検知センサ205によってフィルム基板100が無いと判断された場合には、フレキシブル電子デバイス製造装置1を停止して対応する。
【0122】
本実施例においては、圧胴30に保持されたフィルム基板100に対してIRライトを照射することにより、フィルム基板100上に印刷された導電溶液を乾燥させることとしたが、本発明はこれに限定されず、圧胴30に保持された状態でフィルム基板100上に印刷された導電溶液を焼成させても良い。
以上の動作により、ステップS3のソース・ドレイン層形成工程が完了する。
【0123】
次に、ステップS4の半導体形成工程において、半導体140を形成するための半導体溶液を印刷する。
【0124】
制御装置200が、圧胴位相検出器201の検出結果に基づいて、圧胴駆動装置230を作動することにより(図6参照)、圧胴30の正回転駆動または逆回転駆動によって、ソース・ドレイン層130の形成が完了したフィルム基板100は、半導体形成工程の準備位置に停止させられる。なお、圧胴30を逆回転駆動させることによりフィルム基板100を移動させる場合には、排出部側圧胴爪開閉カム駆動装置231bを作動することによって、圧胴30から基材排出部4における排出装置80へのくわえ替えが行われないようにする。
【0125】
制御装置200が、圧胴位相検出器201の検出結果に基づいて、圧胴駆動装置230およびインクジェット作動装置260を作動することにより(図6参照)、インクジェット印刷装置60におけるノズルヘッド61が圧胴30に近接するように下方へ移動すると共に、図示しない半導体溶液供給装置によってノズルヘッド61に半導体溶液が供給され、圧胴30の周面に保持されたフィルム基板100に対してインクジェット印刷法による印刷がなされる(図7J参照)。フィルム基板100に対してインクジェット印刷法による印刷がなされると、図示しない半導体溶液供給装置によるノズルヘッド61への半導体溶液の供給は停止され、ノズルヘッド61は圧胴30から離反して待機位置に移動される。
以上の動作により、フィルム基板100へ半導体140を形成するための半導体溶液の印刷が完了する。
【0126】
次に、フィルム基板100上に印刷された半導体溶液を乾燥させる。
制御装置200が、圧胴位相検出器201および乾燥装置前基材有無検知センサ205の検出結果に基づいて、圧胴駆動装置230および乾燥装置作動装置270を作動することにより(図6参照)、インクジェット印刷装置60による印刷が施されたフィルム基板100は、圧胴30に保持されたまま乾燥装置70の近傍まで搬送され、乾燥装置70のIRライトによって半導体溶液の不純物が飛ばされる。乾燥時には、正転および逆転を繰り返すように圧胴30を回転動作させることにより、フィルム基板100に万遍なくIRライトを照射することができるので、乾燥むら等を防ぐことができる。また、IRライトが照射される乾燥位置で圧胴30を一定時間停止させることにより、半導体溶液を乾燥させるようにしても良い。
【0127】
また、乾燥装置前基材有無検知センサ205によって圧胴30上のフィルム基板100の有無を検知することにより、フィルム基板100の搬送不良を検知することができる。なお、乾燥装置前基材有無検知センサ205によってフィルム基板100が無いと判断された場合には、フレキシブル電子デバイス製造装置1を停止して対応する。
【0128】
本実施例においては、圧胴30に保持されたフィルム基板100に対してIRライトを照射することにより、フィルム基板100上に印刷された半導体溶液を乾燥させることとしたが、本発明はこれに限定されず、圧胴30に保持された状態でフィルム基板100上に印刷された半導体溶液を架橋させても良い。
以上の動作により、ステップS4の半導体形成工程が完了する。
【0129】
以上により、基材処理部3におけるフィルム基板100への機能層の複数層印刷が完了し、図2に示すように、ゲート層110、絶縁層120、ソース・ドレイン層130、半導体140が高精度に積層されたフィルム基板100を得ることができる。
【0130】
続いて、基材排出部4において、フィルム基板100の排出を行う。
【0131】
制御装置200が、圧胴位相検出器201の検出結果に基づいて、圧胴駆動装置230と排出部側圧胴爪開閉カム駆動装置231bと排出部爪開閉カム駆動装置284とを作動することにより(図6参照)、圧胴30のくわえ爪装置31にくわえられて搬送されたフィルム基板100は、基材排出部4における排出装置80のくわえ爪装置84にくわえ替えされ、圧胴30の回転駆動に伴ってスプロケット81が回転駆動させられることによりチェーン83が走行されると共にフィルム基板100が搬送される。
【0132】
フィルム基板100は、排出装置80によって排出台90の上方まで搬送されると、くわえ爪装置84から解放されて排出台90上に積載され、フィルム基板100の排出が完了する。
【0133】
本実施例では、フレキシブル電子デバイス製造装置1とは別体の図示しないオーブンにおいて、フィルム基板100に複数層印刷したゲート層110、絶縁層120、ソース・ドレイン層130、半導体140の焼成および架橋がなされ、フィルム基板100上にそれぞれ機能層であるゲート層110、絶縁層120、ソース・ドレイン層130、半導体140が高精度に積層された電子デバイスが得られる。
【0134】
もちろん、本発明に係るフレキシブル電子デバイス製造装置は、本実施例のように別体のオーブンにおいて焼成および架橋させるものに限定されず、フレキシブル電子デバイス製造装置1の基材処理部3にオーブンを設置し、フレキシブル電子デバイス製造装置1において機能層の焼成および架橋がなされる構成としても良い。
【0135】
また、ゲート層110、絶縁層120、ソース・ドレイン層130、半導体140の四層を一度に印刷するものに限定されず、例えば、ゲート層110を印刷した後にフィルム基板100を排出させ、別体の処理装置において他の処理を施した後、再びフレキシブル電子デバイス製造装置1に戻して残りの絶縁層120、ソース・ドレイン層130、半導体140を印刷しても良い。
【0136】
本発明に係るフレキシブル電子デバイス製造装置を含む複数の処理装置を用いて基材に処理を施す場合には、本実施例のように、フレキシブル電子デバイス製造装置1においてフィルム基板100のアライメント調整を行うことにより、事前に処理が施されたフィルム基板100に対して、作業者に負荷をかけることなく高精度で更なる処理を施すことができる。
【符号の説明】
【0137】
1 フレキシブル電子デバイス製造装置
2 基材供給部(供給手段)
3 基材処理部
4 基材排出部(排出手段)
10 供給装置
11 搬送台
12 搬送テーブル
13 載置ボード(載置手段)
13a 載置ボードの搬送方向上流側先端部
13b 載置ボードの切り欠き部
14 アクチュエータ(位置調整手段)
15 アライメントカメラ(位置検出手段)
16 ポンプ(吸着手段)
20 渡胴(搬送手段)
21 渡胴のくわえ爪装置
30 圧胴
31 圧胴のくわえ爪装置
40 反転印刷装置(処理手段、印刷装置)
41 ゴム胴
42 反転版胴
43 スリットダイ
50 コーティング装置(処理手段、塗布装置)
51 ゴム胴
52 スリットダイ
60 インクジェット印刷装置(処理手段、印刷装置)
61 ノズルヘッド
70 乾燥装置(処理手段、固化装置)
80 排出装置
81 スプロケット
82 スプロケット
83 チェーン
84 排出装置のくわえ爪装置
90 排出台
100 フィルム基板
101 アライメントマーク
110 ゲート層
120 絶縁層
130 ソース・ドレイン層
140 半導体
200 制御装置
201 圧胴位相検出器(圧胴位相検出手段)
202 反転印刷部ゴム胴位相検出器(ゴム胴位相検出手段)
203 反転印刷部版胴位相検出器(版胴位相検出手段)
204 コーティング部ゴム胴位相検出器(ゴム胴位相検出手段)
205 乾燥装置前基材有無検知センサ
206 吸着スイッチ
221 渡胴爪開閉カム駆動装置
230 圧胴駆動装置(圧胴駆動手段)
231a 渡胴側圧胴爪開閉カム駆動装置
231b 排出部側圧胴爪開閉カム駆動装置
241 反転印刷部ゴム胴駆動・着脱装置(ゴム胴駆動手段およびゴム胴着脱手段)
242 反転印刷部版胴駆動・着脱装置(版胴駆動手段および版胴着脱手段)
243 反転印刷部スリットコータ作動装置
251 コーティング部ゴム胴駆動・着脱装置(ゴム胴駆動手段およびゴム胴着脱手段)
252 コーティング部スリットコータ作動装置
260 インクジェット作動装置
270 乾燥装置作動装置
284 排出部爪開閉カム駆動装置
図1
図2
図3
図4
図5A
図5B
図5C
図6
図7A
図7B
図7C
図7D
図7E
図7F
図7G
図7H
図7I
図7J