(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
レゾルシンの使用量が、p−tert−ブチルフェノールとo−フェニルフェノールの総量に対して2.0倍モル以下である、請求項4又は5に記載の共縮合物の製造方法。
【発明を実施するための形態】
【0024】
以下、本発明について詳細に説明する。
【0025】
<共縮合物>
本発明の共縮合物(フェノール樹脂)は、下記式(1):
【0027】
で表されるp−tert−ブチルフェノール由来の構成単位、下記式(2):
【0029】
で表されるo−フェニルフェノール由来の構成単位、及び下記式(3):
【0031】
で表されるレゾルシン由来の構成単位を含むことを特徴とする。なお、これら構成単位は通常、共縮合物の主鎖中に含まれるが、側鎖中に含まれる場合もある。
【0032】
これら構成単位の内、o−フェニルフェノール由来の構成単位(2)が含まれていない場合、軟化点が高くなり、混練時にゴムに配合した際に分散性不良の問題が発生する結果、混練時にゴムに配合して使用するゴムと補強材との接着剤として不適となる。また、レゾルシン由来の構成単位(3)が含まれていない場合、混練時にゴムに配合して使用するゴムと補強材との接着剤としての能力を十分に発揮しない。さらには、p−tert−ブチルフェノール由来の構成単位(1)を含まない場合、共縮合物としての価格が非常に高くなり、工業的有利に共縮合物を得ることができなくなる。
【0033】
これら構成単位の含有比率は特に限定されないが、通常、p−tert−ブチルフェノール由来の構成単位(1)の1モルに対し、o−フェニルフェノール由来の構成単位(2)を0.5〜6倍モルとすることが好ましく、1.5〜6倍モルとすることがより好ましい。0.5倍モルより少ない場合、軟化点が高くなりすぎて前述のような問題が発生する場合があり、6倍モルより多い場合、共縮合物の原料コストが高くなり工業上有利に本発明に係る共縮合物を製造することができなくなる場合がある。
【0034】
また、レゾルシン由来の構成単位(3)は、p−tert−ブチルフェノール由来の構成単位(1)及びo−フェニルフェノール由来の構成単位(2)の合計量1モルに対して、通常0.5〜2.0倍モル含まれる。0.5倍モルより少ない場合、混練時にゴムに配合して使用するゴムと補強材との接着剤としての能力を十分に発揮しない場合があり、2.0倍モルより多く含まれるものは工業上製造が困難である場合がある。
【0035】
これら構成単位は通常、反応で使用するアルデヒド由来のアルキル基及び/又はアルキルエーテル基のような結合基によって結合される。中でも結合基は、ホルムアルデヒド由来のメチレン基及び/又はジメチレンエーテル基であることが好ましい。結合基は、p−tert−ブチルフェノール由来の構成単位(1)及びo−フェニルフェノール由来の構成単位(2)の合計量1モルに対して、通常1〜2倍モル含まれる。
【0036】
これら構成単位や結合基の比率は、例えば共縮合物を1H−NMRを用い分析することにより決定可能である。具体的には、共縮合物を1H−NMRにて分析し、得られた分析結果の内、各構成単位や結合基に由来するプロトン積分値からその比率を決定する方法が例示される。
【0037】
本発明の共縮合物は、必要に応じて、p−tert−ブチルフェノール、o−フェニルフェノール及びレゾルシン由来の構成単位以外の構成単位を含むことができる。このような構成単位の例として、一般的にゴムの加工工程において使用される接着剤として用いられる共縮合物の原料として用いられる各種アルキルフェノール由来の構成単位が例示される。
【0038】
本発明の共縮合樹脂の軟化点は150℃以下である必要がある。軟化点は、80℃〜150℃の範囲であることが好ましく、80℃〜140℃の範囲であることがより好ましく、中でも90℃〜120℃であることが特に好ましい。150℃より高いと、ゴム成分と混練するときに分散不良となり、混練時にゴムに配合した際に分散性不良の問題が発生する結果、混練時にゴムに配合して使用する、ゴムと補強材との接着剤として不適となる場合がある。80℃より低いと保存中にブロッキングしてしまう場合がある。
【0039】
本発明の共縮合物中に含まれる、未反応モノマー(遊離p−tert−ブチルフェノール、o−フェニルフェノール及びレゾルシン)の総量は特に限定されないが、15重量%以下であることが好ましい。15重量%以下とすることで臭気が低減可能で環境上好ましい。特に、遊離レゾルシンの含量は5重量%以下であることが好ましい。遊離レゾルシンの含量を5重量%より少なくした場合、共縮合物をゴムへ添加する際、ゴムへの混練中に生じるレゾルシンの蒸散が改善されるため、作業環境が大きく改善され特に好ましい。
【0040】
本発明の共縮合物中に含まれる、遊離レゾルシン以外の未反応モノマーであるp−tert−ブチルフェノール及びo−フェニルフェノール、並びに反応で使用することがある残存溶媒量の総量は、5重量%以下であることが好ましい。5重量%以下とすることで臭気が低減可能であり、併せて揮発性有機化合物が低減され、環境上好ましい。
【0041】
<共縮合物の製造方法>
本発明に係る共縮合物の製造方法は、
〔a〕アルカリ存在下、p−tert−ブチルフェノールとo−フェニルフェノールの混合物をホルムアルデヒドと反応させて、レゾール型縮合物を得る工程、及び
〔b〕p−tert−ブチルフェノールとo−フェニルフェノールの総量に対して0.8倍モル以上のレゾルシンをさらに反応させる工程、
をこの順で含む。
【0042】
工程〔a〕で用いるp−tert−ブチルフェノールとo−フェニルフェノールの混合物(以下、これら2種のフェノール類を総称して「フェノール誘導体」と称することがある。)におけるo−フェニルフェノールの比率は特に限定されないが、フェノール誘導体の総量に対して35モル%〜85モル%であることが好ましく、40モル%〜85モル%であることがより好ましく、60モル%〜85モル%であることがさらに好ましい。35モル%より少ないと、得られる共縮合物の軟化点が高くなり、ゴム成分と混練するときに分散不良となる場合がある。85モル%より多いと、高価なo−フェニルフェノールが多量に必要となり、工業上有利に共縮合物を製造できなくなる場合がある。なお、本発明におけるp−tert−ブチルフェノールとo−フェニルフェノールの混合物とは、反応器に投入する前に事前に混合したものの他、それぞれ別個に反応器に投入し、結果として反応器内で混合物となったものも含まれる。
【0043】
工程〔a〕で用いるホルムアルデヒドとしては、ホルムアルデヒド自体のほか、水溶液であるホルマリン、又はパラホルムアルデヒドやトリオキサンのような、容易にホルムアルデヒドを発生する化合物を使用することができる。ホルムアルデヒドの仕込みモル比は特に限定されないが、フェノール誘導体の総量に対して1〜3倍モルであることが好ましく、その中でも1.5〜2.5倍モルの範囲が特に好ましい。1倍モルより少ない場合、未反応モノマーが多くなり臭気や揮発性有機化合物が増加する場合がある。また、3倍モルよりも多い場合、ホルムアルデヒドが未反応のまま多く残存するため、樹脂が三次元構造化して軟化点が高くなる場合がある。
【0044】
アルカリとしては、アルカリ金属やアルカリ土類金属の水酸化物又は炭酸塩の他、アンモニア、アミンのような、通常のレゾール型縮合物を製造する際に用いられるものを使用することができる。アルカリ金属やアルカリ土類金属の水酸化物又は炭酸塩の具体例としては、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、水酸化カルシウム、炭酸ナトリウム、炭酸カリウムなどが挙げられる。この中でも、水酸化ナトリウム、水酸化カリウムが好ましい。これらのアルカリは固体状のものでも、水溶液状のものでも利用可能であるが、反応性、取扱いの面から水溶液のものを使用することが好ましい。水溶液状のものを使用する場合、その濃度は通常、10重量%〜50重量%のものを使用する。アルカリの仕込みモル比とは特に限定されないが、フェノール誘導体の総量に対して0.03〜0.6倍モルの範囲が好ましく、0.03〜0.3倍モルの範囲がより好ましい。
【0045】
工程〔a〕の反応、すなわちアルカリ存在下、p−tert−ブチルフェノールとo−フェニルフェノールの混合物と、ホルムアルデヒドとの反応は、溶媒中で行うことも可能である。使用する溶媒は特に限定されることはなく、水、アルコール、芳香族炭化水素等を用いることができる。より具体的には、水、メタノール、エタノール、プロパノール、ブタノール、トルエン、キシレン、エチルベンゼン、クメン、モノクロロベンゼンなどが例示される。中でも水、トルエン、キシレンが好ましい。これらの溶媒は単独あるいは2種類以上を併用して用いることも可能である。溶媒を使用する場合、通常フェノール誘導体の総量に対して0.4〜4重量倍(例えば0.4〜2重量倍)使用する。また、工程〔a〕の反応は通常、反応温度40〜100℃、反応時間1〜48時間(例えば1〜8時間)で実施される。
【0046】
かかる反応により得られたレゾール型縮合物は、使用したアルカリを中和せずにそのまま工程〔b〕の反応、すなわちレゾルシンとの反応に使用してもよいし、酸を加えることでアルカリを中和した後に使用してもよい。中和を行う際に使用する酸の種類は特に限定されないが、例えば、塩酸、硫酸、硝酸、リン酸、ギ酸、酢酸、シュウ酸、p−トルエンスルホン酸などが例として挙げられる。これらの酸は1種類のみを単独で使用してもよいし、2種類以上を混合して使用してもよい。この際、使用される酸の総量は特に限定されないが、通常使用したアルカリに対し等量(物質量基準)の酸を使用することが好ましい。また、未反応のホルムアルデヒドや中和で生成した無機塩類等を除去するために、必要に応じて水と混和しない有機溶媒を用いてレゾール型縮合物を抽出し、洗浄する処理を追加してもよい。
【0047】
工程〔b〕において、得られたレゾール型縮合物とレゾルシンを反応させる際のレゾルシンの仕込みモル比は、フェノール誘導体の総量に対して0.5倍モル以上である必要があり、好ましくは0.8〜4.0倍モル、より好ましくは0.8〜2.0倍モル、さらに好ましくは1.0〜2.0倍モルである。4.0倍モルよりも多い場合、未反応のレゾルシンが多く残存するため揮発性が問題となる場合がある。0.5倍モルより低い場合、反応が完結しないため本来の性能が出ない場合やレゾール型縮合物同士の反応が優先的に進行し、得られる共縮合物が高分子化する結果、軟化点が150℃以下とならない場合がある。
【0048】
レゾール型縮合物とレゾルシンとの反応は、溶媒を使用せず反応を行うことも可能であるが、p−tert−ブチルフェノールとo−フェニルフェノールの総量に対して0.2重量倍以上の溶媒存在下で実施した場合、遊離レゾルシンを5重量%以下とすることが可能となり好ましい。さらに好ましくはp−tert−ブチルフェノールとo−フェニルフェノールの総量に対して0.4〜4.0重量倍、特に好ましくは0.4〜2.0重量倍の溶媒存在下で実施する。0.2重量倍より少ない場合、レゾルシンとレゾール型縮合物との反応より、レゾール型縮合物同士の反応が優先的に進行する場合があり、得られる共縮合物が高分子化するためか、遊離レゾルシンを5重量%以下とすることができない。また、4.0重量倍以上使用しても反応は進行するが、容積効率が低下し経済的有利に共縮合物を製造することができない。
【0049】
使用可能な溶媒は特に限定されないが、例えばアルコール類、ケトン類、芳香族炭化水素類等である。より具体的には、メタノール、エタノール、プロパノール、ブタノール、メチルイソブチルケトン、ジイソブチルケトン、シクロヘキサノン、トルエン、キシレン、エチルベンゼン、クメン、モノクロロベンゼンなどが例示される。この中でも、ケトン類、芳香族炭化水素類が好ましく、さらにはメチルイソブチルケトン、トルエン、キシレンが好ましい。これらの溶媒は必要に応じ単独あるいは2種類以上を併用して用いることも可能である。また、本溶媒はレゾール型縮合物を製造する際に使用した溶媒をそのまま使用してもよいし、適宜新たな溶媒を加えてもよい。
【0050】
レゾール型縮合物とレゾルシンとの反応は、特に限定されないが、通常、反応温度40〜150℃、反応時間1〜48時間(例えば1〜8時間)で実施される。
【0051】
共縮合物中に含まれる遊離レゾルシン含量を5重量%以下とするためには、後述する溶媒除去工程を実施する前に反応混合物中の遊離レゾルシン含量が5重量%以下になるまで120℃以上で反応を行うことが好ましい。本反応段階で遊離レゾルシンが5重量%より多く残存している場合、後述する溶媒除去工程で遊離レゾルシンを同時に5重量%未満になるまで除去しようとしても工業的に実施困難な高温、高減圧度条件が必要であり、かつ、この際に得られる共縮合物が熱により着色したり、高分子化が進行したりする結果、軟化点が150℃を超え、混練時にゴムに配合して使用するゴムと補強材との接着剤として不適となる。
【0052】
120℃以上で反応を行うとは、反応中いずれかの時点で120℃以上になっていればよく、例えば反応初期は120℃未満で反応を開始させ、その後徐々に昇温させて120℃以上とする方法などが例示される。反応温度が一度も120℃以上とならない場合、反応混合物中の遊離レゾルシンが5重量%以下にならない。また、前述の通り、0.2重量倍以上の溶媒非存在下で本反応を実施した場合、得られる共縮合物が高分子化するためか、遊離レゾルシン含量が5重量%以下とならない。反応混合物とは、本反応の原料であるレゾール型縮合物やレゾルシン、溶媒等、反応容器内に含まれる全てものを示し、反応混合物中のレゾルシン含量は例えばガスクロマトグラフを用いた分析により定量可能である。なお、遊離レゾルシン含量を減らすため、単に原料レゾルシンの使用量を減らす方法も考えられるが、この方法で製造した場合、反応中に原料レゾルシンが不足し、代わりに共縮合物中のレゾルシン部位がさらに反応して高分子化するため、軟化点が非常に高くなってしまう。
【0053】
工程〔b〕におけるレゾール型縮合物とレゾルシンとの反応では、系内に水が存在すると反応速度が遅くなる傾向があり、レゾール型縮合物とレゾルシンとの反応で生成した水により反応速度が低下する場合があるため、反応を促進する目的で脱水しながら反応を行うことが好ましい。また、この脱水反応においては、反応で生成する水を十分に脱水するため、反応当初は減圧下で脱水し、その後内温を120℃以上とするため、常圧で更に脱水する方法とすることが好ましい。
【0054】
レゾール型縮合物とレゾルシンとの反応に溶媒を使用する場合、通常、反応後、反応で使用した溶媒を除去する。溶媒の除去条件は特に限定されないが、例えば内圧45〜10kPaの減圧下、120〜160℃で実施される。なお、本除去操作により遊離レゾルシン含量をある程度減らすことも可能であるが、溶媒除去前の反応混合物中の遊離レゾルシン含量が5重量%より多い場合、溶媒除去後の共縮合物の遊離レゾルシン含量を5重量%以下としようとするためには工業的に実施困難な高温、高減圧度条件が必要であり、かつ、この際に得られる共縮合物が熱により着色し、製品価値を下げることがある。
【0055】
<ゴム組成物>
次に、本発明に係る共縮合物を含むゴム組成物について詳述する。
【0056】
本発明のゴム組成物は、上記の共縮合物とゴム成分を含むものであり、典型的には上記の共縮合物とゴム成分と充填剤とイオウとを混練して得ることができる。これらとともに加硫促進剤、酸化亜鉛、ホルムアルデヒド発生剤やメチレンドナー化合物、有機コバルト化合物を混練することもできる。
【0057】
上記の共縮合物の使用量は特に限定されるものではないが、通常はゴム成分100重量部あたり0.5〜10重量部の範囲で用いられる。中でも1〜5重量部の範囲が好ましい。0.5重量部より少ない場合、補強材とゴムとの接着剤として有用に作用せず、10重量部より多い場合、前記作用に問題はないが添加量に見合う作用が発現せず経済的に好ましくない。
【0058】
ゴム成分としては、天然ゴム、エポキシ化天然ゴム、脱蛋白天然ゴム及びその他の変性天然ゴムの他、ポリイソプレンゴム(IR)、スチレン・ブタジエン共重合ゴム(SBR)、ポリブタジエンゴム(BR)、アクリロニトリル・ブタジエン共重合ゴム(NBR)、イソプレン・イソブチレン共重合ゴム(IIR)、エチレン・プロピレン−ジエン共重合ゴム(EPDM)、ハロゲン化ブチルゴム(HR)等の各種の合成ゴムが例示されるが、天然ゴム、スチレン・ブタジエン共重合ゴム、ポリブタジエンゴム等の高不飽和性ゴムが好ましく用いられる。特に好ましくは天然ゴムである。また、天然ゴムとスチレン・ブタジエン共重合ゴムの併用、天然ゴムとポリブタジエンゴムの併用等、数種のゴム成分を組み合わせることも有効である。
【0059】
天然ゴムの例としては、RSS#1、RSS#3、TSR20、SIR20等のグレードの天然ゴムを挙げることができる。エポキシ化天然ゴムとしては、エポキシ化度10〜60モル%のものが好ましく、例えばクンプーランガスリー社製ENR25やENR50が例示できる。脱蛋白天然ゴムとしては、総窒素含有率が0.3重量%以下である脱蛋白天然ゴムが好ましい。変性天然ゴムとしては、天然ゴムにあらかじめ4−ビニルピリジン、N,N−ジアルキルアミノエチルアクリレート(例えばN,N−ジエチルアミノエチルアクリレート)、2−ヒドロキシアクリレート等を反応させた極性基を含有する変性天然ゴムが好ましく用いられる。
【0060】
SBRの例としては、日本ゴム協会編「ゴム工業便覧<第四版>」の210〜211頁に記載されている乳化重合SBR及び溶液重合SBRを挙げることができる。とりわけ溶液重合SBRが好ましく用いられ、さらには日本ゼオン社製「ニッポール(登録商標)NS116」等の4,4’−ビス−(ジアルキルアミノ)ベンゾフェノンを用いて分子末端を変性した溶液重合SBR、JSR社製「SL574」等のハロゲン化スズ化合物を用いて分子末端を変性した溶液重合SBR、旭化成社製「E10」、「E15」等シラン変性溶液重合SBRの市販品や、ラクタム化合物、アミド化合物、尿素系化合物、N,N−ジアルキルアクリルアミド化合物、イソシアネート化合物、イミド化合物、アルコキシ基を有するシラン化合物(トリアルコキシシラン化合物等)、アミノシラン化合物のいずれかを単独で用いて、または、スズ化合物とアルコキシ基を有するシラン化合物や、アルキルアクリルアミド化合物とアルコキシ基を有するシラン化合物等、前記記載の異なった複数の化合物を2種以上用いて、それぞれ分子末端を変性して得られる分子末端に窒素、スズ、ケイ素のいずれか、又はそれら複数の元素を有する溶液重合SBRが、特に好ましく用いられる。
【0061】
BRの例としては、シス1,4結合が90%以上の高シスBRや、シス結合が35%前後の低シスBR等の溶液重合BRが例示され、高ビニル含量の低シスBRが好ましく用いられる。さらには日本ゼオン製「Nipol(登録商標)BR 1250H」等スズ変性BRや、4,4’−ビス−(ジアルキルアミノ)ベンゾフェノン、ハロゲン化スズ化合物、ラクタム化合物、アミド化合物、尿素系化合物、N,N−ジアルキルアクリルアミド化合物、イソシアネート化合物、イミド化合物、アルコキシ基を有するシラン化合物(トリアルコキシシラン化合物等)、アミノシラン化合物のいずれかを単独で用いて、又は、スズ化合物とアルコキシ基を有するシラン化合物や、アルキルアクリルアミド化合物とアルコキシ基を有するシラン化合物等、前記記載の異なった複数の化合物を2種以上用いて、それぞれ分子末端を変性して得られる分子末端に窒素、スズ、ケイ素のいずれか、又はそれら複数の元素を有する溶液重合BRが、特に好ましく用いられる。これらBRは通常は天然ゴムとのブレンドで使用される。
【0062】
ゴム成分は天然ゴムを含むことが好ましく、ゴム成分に占める天然ゴムの割合は70重量%以上であることが好ましい。
【0063】
充填剤としては、ゴム分野で通常使用されているカーボンブラック、シリカ、タルク、クレイ、水酸化アルミニウム、酸化チタン等が例示されるが、カーボンブラック及びシリカが好ましく用いられ、さらにはカーボンブラックが特に好ましく使用される。カーボンブラックとしては、例えば、日本ゴム協会編「ゴム工業便覧<第四版>」の494頁に記載されるものが挙げられ、HAF(High Abrasion Furnace)、SAF(Super Abrasion Furnace)、ISAF(Intermediate SAF)、FEF(Fast Extrusion Furnace)、MAF、GPF(General Purpose Furnace)、SRF(Semi−Reinforcing Furnace)等のカーボンブラックが好ましい。タイヤトレッド用ゴム組成物にはCTAB表面積40〜250m2/g、窒素吸着比表面積20〜200m2/g、粒子径10〜50nmのカーボンブラックが好ましく用いられ、CTAB表面積70〜180m2/gであるカーボンブラックがさらに好ましく、その例としてはASTMの規格において、N110、N220、N234、N299、N326、N330、N330T、N339、N343、N351等である。またカーボンブラックの表面にシリカを0.1〜50重量%付着させた表面処理カーボンブラックも好ましい。さらには、カーボンブラックとシリカの併用等、数種の充填剤を組み合わせることも有効である。
【0064】
シリカとしては、CTAB比表面積50〜180m2/gや、窒素吸着比表面積50〜300m2/gのシリカが例示され、東ソー・シリカ(株)社製「AQ」、「AQ−N」、デグッサ社製「ウルトラジル(登録商標)VN3」、「ウルトラジル(登録商標)360」、「ウルトラジル(登録商標)7000」、ローディア社製「ゼオシル(登録商標)115GR」、「ゼオシル(登録商標)1115MP」、「ゼオシル(登録商標)1205MP」、「ゼオシル(登録商標)Z85MP」、日本シリカ社製「ニップシール(登録商標)AQ」等の市販品が好ましく用いられる。また通常、充填剤としてシリカを用いる場合には、ビス(3−トリエトキシシリルプロピル)テトラスルフィド(デグッサ社製「Si−69」)、ビス(3−トリエトキシシリルプロピル)ジスルフィド(デグッサ社製「Si−75」)、ビス(3−ジエトキシメチルシリルプロピル)テトラスルフィド、ビス(3−ジエトキシメチルシリルプロピル)ジスルフィド、オクタンチオ酸S−[3−(トリエトキシシリル)プロピル]エステル(ジェネラルエレクトロニックシリコンズ社製「NXTシラン」)からなる群から選択される1種以上のシランカップリング剤等、シリカと結合可能なケイ素等の元素またはアルコシキシラン等の官能基を有する化合物を添加することが好ましい。
【0065】
水酸化アルミニウムとしては、窒素吸着比表面積5〜250m2/g、DOP給油量50〜100ml/100gの水酸化アルミニウムが例示される。
【0066】
かかる充填剤の使用量は特に限定されるものではないが、ゴム成分100重量部あたり10〜120重量部の範囲が好ましい。特に好ましいのは30〜70重量部である。
【0067】
充填剤はカーボンブラックを含むことが好ましく、充填剤に占めるカーボンブラックの割合は70重量%以上であることが好ましい。
【0068】
硫黄成分としては、粉末硫黄、沈降硫黄、コロイド硫黄、不溶性硫黄、及び高分散性硫黄等が挙げられる。通常は粉末硫黄が好ましく、タイヤのベルト用部材等の硫黄量が多いタイヤ部材に用いる場合には不溶性硫黄が好ましい。硫黄成分の使用量は特に限定されるものではないが、ゴム成分100重量部あたり1〜10重量部の範囲が好ましい。タイヤのベルト用部材等では5〜10重量部の範囲が好ましい。
【0069】
加硫促進剤の例としては、ゴム工業便覧<第四版>(平成6年1月20日社団法人、日本ゴム協会発行)の412〜413頁に記載されているチアゾール系加硫促進剤、スルフェンアミド系加硫促進剤、グアニジン系加硫促進剤が挙げられる。
【0070】
具体的には、例えば、N−シクロヘキシル−2−ベンゾチアゾリルスルフェンアミド(CBS)、N−tert−ブチル−2−ベンゾチアゾリルスルフェンアミド(BBS)、N,N−ジシクロへキシル−2−ベンゾチアゾリルスルフェンアミド(DCBS)、2−メルカプトベンゾチアゾール(MBT)、ジベンゾチアジルジスルフィド(MBTS)、ジフェニルグアニジン(DPG)が挙げられる。中でも、N−シクロヘキシル−2−ベンゾチアゾリルスルフェンアミド(CBS)、N−tert−ブチル−2−ベンゾチアゾリルスルフェンアミド(BBS)、N,N−ジシクロへキシル−2−ベンゾチアゾリルスルフェンアミド(DCBS)、又はジベンゾチアジルジスルフィド(MBTS)とジフェニルグアニジン(DPG)とを併用することが好ましい。
【0071】
加硫促進剤の使用量は特に限定されるものではないが、ゴム成分100重量部あたり0.5〜3重量部の範囲が好ましい。中でも0.5〜1.2重量部の範囲が特に好ましい。 酸化亜鉛の使用量は特に限定されるものではないが、ゴム成分100重量部あたり3〜15重量部の範囲が好ましい。中でも5〜10重量部の範囲が特に好ましい。
【0072】
ホルムアルデヒド発生剤としては、ヘキサメチレンテトラミン、ヘキサキス(メトキシメチル)メラミン、ペンタキス(メトキシメチル)メチロールメラミン、テトラキス(メトキシメチル)ジメチロールメラミン等のゴム工業において通常使用されているものを挙げることができる。中でもヘキサキス(メトキシメチル)メラミン単独又はそれを主成分とする混合物が好ましい。これらのホルムアルデヒド発生剤は、それぞれ単独で、又は2種以上を組み合わせて用いることができ、その配合量は前記ゴム成分100重量部に対し、0.5〜4重量部程度の範囲が好ましく、1〜3重量部程度の範囲がより好ましい。
【0073】
有機コバルト化合物としては、例えば、ナフテン酸コバルト、ステアリン酸コバルト等の酸コバルト塩や、脂肪酸コバルト・ホウ素錯体化合物(例えば、商品名「マノボンドC(登録商標)」:ローディア社製)等が挙げられる。有機コバルト化合物の使用量は、前記ゴム成分100重量部に対し、コバルト含量にして0.05〜0.4重量部の範囲が好ましい。
【0074】
本発明のゴム組成物は従来よりゴム分野で用いられている各種の配合剤を配合し、混練することも可能である。かかる配合剤としては、例えば、老化防止剤、オイル、リターダー、しゃく解剤、ステアリン酸等が挙げられる。
【0075】
老化防止剤としては、例えば日本ゴム協会編「ゴム工業便覧<第四版>」の436〜443頁に記載されるものが挙げられる。中でもN−フェニル−N’−1,3−ジメチルブチル−p−フェニレンジアミン(6PPD)、アニリンとアセトンの反応生成物(TMDQ)、ポリ(2,2,4−トリメチル−1,2−)ジヒドロキノリン)(松原産業社製「アンチオキシダントFR」)、合成ワックス(パラフィンワックス等)、植物性ワックスが好ましく用いられる。
【0076】
オイルとしては、プロセスオイル、植物油脂等が挙げられる。プロセスオイルとしては、パラフィン系プロセスオイル、ナフテン系プロセスオイル、芳香族系プロセスオイル等が挙げられる。
【0077】
リターダーとしては、無水フタル酸、安息香酸、サリチル酸、N−ニトロソジフェニルアミン、N−(シクロヘキシルチオ)−フタルイミド(CTP)、スルホンアミド誘導体、ジフェニルウレア、ビス(トリデシル)ペンタエリスリトール−ジホスファイト等が例示され、N−(シクロヘキシルチオ)−フタルイミド(CTP)が好ましく用いられる。
【0078】
本発明の共縮合物を含むゴム組成物は、例えば以下の工程:
(A)充填剤とゴム成分を混練する工程、及び
(B)(A)の工程で得た混練物と硫黄成分と加硫促進剤を混練する工程
を含む方法により得ることができる。
【0079】
工程(A)における充填剤とゴム成分の混練は、バンバリーミキサー等の密閉式混練装置を用いて行うことができる。かかる混練は通常、発熱を伴う。混練終了時の温度は140℃〜180℃の範囲であることが好ましく、150℃〜170℃の範囲であることがより好ましい。混練時間は5分〜10分程度である。
【0080】
工程(B)における工程(A)で得た混練物と硫黄成分と加硫促進剤の混練は、例えばバンバリーミキサー等の密閉式混練装置やオープンロールを用いて行うことができる。混練終了時の混練物の温度は30℃〜100℃であることが好ましく、60℃〜90℃であることがより好ましい。混練時間は通常5〜10分程度である。
【0081】
本発明の共縮合物や、必要に応じて添加される酸化亜鉛、老化防止剤、オイル、脂肪酸類、しゃく解剤等は、工程(A)で加えることが好ましい。リターダーを添加する場合は工程(B)で加えることが好ましい。
【0082】
本発明の共縮合物を含むゴム組成物は、特に補強材との加硫接着において有効である。かかる補強材としては、ナイロン、レーヨン、ポリエステル、アラミド等の有機繊維類、真鍮メッキしたスチールコード、亜鉛メッキしたスチールコード等のスチールコード類が例示される。中でも真鍮メッキしたスチールコードとの加硫接着において特に有効である。
【0083】
本発明の共縮合物を含むゴム組成物を補強材と共に成形し、加硫工程を経ることでゴムと補強材が強固に接着したゴム製品を得ることができる。加硫工程は120℃〜180℃で行うことが好ましい。加硫工程は常圧又は加圧下で行われる。
【実施例】
【0084】
以下、実施例及び比較例を挙げて本発明をより詳細に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
【0085】
(1)共縮合物の製造例及び物性評価
共縮合物の分析及び物性評価は以下のようにして行った。
【0086】
a)共縮合物の平均分子量の測定
共縮合物の平均分子量は、以下装置及び条件で分析したゲル透過クロマトグラフィー(GPC)により、ポリスチレン換算重量平均分子量として算出した。
・使用機器:HLC−8220GPC(東ソー製)、
・カラム:TSK ガードカラム SUPER HZ−L(東ソー製)
+TSK−GEL SUPER HZ1000(4.6mmφ×150mm)
+TSK−GEL SUPER HZ2500(4.6mmφ×150mm)
+TSK−GEL SUPER HZ4000(4.6mmφ×150mm)、
・カラム温度:40℃、
・注入量:10μL、
・キャリアー及び流速:テトラヒドロフラン 0.35mL/min、
・サンプル調製:共縮合物約0.02gをテトラヒドロフラン20mLに溶解。
【0087】
b)残留モノマー、残留溶媒の測定
残留モノマー及び残留溶媒については、以下の条件に基づくガスクロマトグラフィーにより定量を行った。
・使用機器 :島津製作所社製 ガスクロマトグラフ GC−14B、
・カラム :ガラスカラム外径5mm×内径3.2mm×長さ3.1m、
・充填剤 :充填剤 Silicone OV−17 10% Chromosorb WHP 80/100mesh, max.temp.340℃、
・カラム温度:80℃→280℃、
・気化室温度:250℃、
・検出器温度:280℃、
・検出器 :FID、
・キャリアー:N2(40ml/min)、
・燃焼ガス :水素(60kPa),空気(60kPa)、
・注入量 :2μL。
共縮合物を約0.5g、内標としてアニソール0.05gをアセトン10mLに溶解させ上記条件にて分析した。内部標準法(GC−IS法)により、共縮合物中の残留溶媒、残留モノマーの含有量(%)を測定した。なお、実施例および比較例の本文中に記載した含有量(%)は、特に断りのない限り重量パーセントとして表すものとする。
【0088】
c)軟化点の測定
JIS−K2207に準拠した方法により測定した。
【0089】
d)共縮合樹脂中の各構成単位の含有比
以下条件に基づく方法により1H―NMR分析を行った。
・装置:日本電子社製「JMN−ECS」(400MHz)、
・溶媒:重水素置換ジメチルスルホキシド。
・各成分の化学シフト:テトラメチルシランを基準(0ppm)とし、以下の値に示されるピークをそれぞれの成分のピークとした。
・p−tert−ブチルフェノール由来のp−tert−ブチル基のプロトン:1.0〜1.2ppm、ホルムアルデヒド由来のメチレン基のプロトン:3.4〜3.9ppm、o−フェニルフェノール由来のo−フェニル基のプロトン:7.1〜7.5ppm。
なお、以下の実施例・比較例中の構成比率については以下の基準に基づく比率である。
o−フェニルフェノール:p−tert−ブチルフェノールを1としたときの割合(モル倍)、ホルムアルデヒド由来のメチレン基:o−フェニルフェノールとp−tert−ブチルフェノールの合計量に対する割合(モル倍)。
【0090】
<実施例1>
還流冷却器及び温度計を備えた四つ口セパラブルフラスコに、純度37%のホルマリン97.3g(1.2mol)、p−tert−ブチルフェノール30.0g(0.20mol)、o−フェニルフェノール68.0g(0.40mol)、トルエン75.4gを順に加えた。その後、内温45℃まで昇温し、24%水酸化ナトリウム水溶液20g(0.12mol)を添加し、発熱が収まるまで攪拌した。発熱が収まったのを確認した後、内温65℃まで昇温し、同温度にて2時間保温した。その後、内温80℃になるまで再度昇温し、さらに4時間保温した。
反応終了後、内温65℃以下になるまで冷却し、水49g及びシュウ酸二水和物7.55g(1.13mol)を加えて中和し、トルエン22.6gを加えた後、静置し、水層を除去した。
レゾルシン62.7g(0.57mol)を加え、内温70℃まで昇温し、減圧下で4時間かけて共沸脱水を行った。この間内温は90℃まで上昇した。続いて、常圧で内温115℃まで昇温し、1時間共沸脱水を行った。その後、内温145〜150℃まで昇温し、2時間保温することで溶媒トルエンを留去した。その後、内温140〜150℃に保ったまま16kPaまで減圧し、2時間保温することで溶媒トルエンをさらに留去した。以上の操作により、橙色の共縮合物173gを得た。
共縮合物の平均分子量:2399、共縮合物の軟化点:138℃、共縮合物中の残留トルエン分:0.4%、残留p−tert−ブチルフェノール分:0.3%、残留o−フェニルフェノール分:0.5%、残留レゾルシン分:11.2%。共縮合物の各構成単位の比率;o−フェニルフェノール:3.01、メチレン基:1.28。
【0091】
<実施例2>
実施例1において、p−tert−ブチルフェノールの仕込み量を15.0g(0.10mol)、o−フェニルフェノールの仕込み量を85.0g(0.50mol)に変更したこと以外は、実施例1と同様にして橙色の共縮合物177gを得た。
共縮合物の平均分子量:2160、共縮合物の軟化点:123℃、共縮合物中の残留トルエン分:1.1%、残留p−tert−ブチルフェノール分:0.0%、残留o−フェニルフェノール分:0.4%、残留レゾルシン分:9.5%。共縮合物の各構成単位の比率;o−フェニルフェノール:5.40、メチレン基:1.33。
【0092】
<比較例1>
還流冷却器及び温度計を備えた四つ口セパラブルフラスコに、純度92%のパラホルムアルデヒド43.5g(1.33mol)、p−tert−ブチルフェノール150g(1.00mol)、トルエン75.0gを順に加えた。その後、内温45℃まで昇温し、48%水酸化ナトリウム水溶液4.16g(0.05mol)を添加し、発熱が収まるまで攪拌した。発熱が収まったのを確認した後、内温65℃まで昇温し、同温度にて2時間保温した。その後、内温80℃になるまで再度昇温し、さらに1.5時間保温した。
反応終了後、内温75℃以下になるまで冷却し、シュウ酸二水和物3.15g(0.025mol)を加えて中和した後、レゾルシン110g(1.00mol)を加え、内温108〜111℃まで昇温し4時間かけて共沸脱水を行った。続いて、常圧のまま内温145〜150℃まで昇温し、2時間保温することで溶媒トルエンを留去した。その後、内温140〜150℃に保ったまま16kPaまで減圧し、2時間保温することで溶媒トルエンをさらに留去した。以上の操作により、橙色の共縮合物286gを得た。
共縮合物の平均分子量:1212、共縮合物の軟化点:195℃以上、共縮合物中の残留トルエン分:2.0%、残留p−tert−ブチルフェノール分:2.6%、残留レゾルシン分:10.0%。共縮合物の各構成単位の比率;o−フェニルフェノール:なし、メチレン基:1.26。
【0093】
<実施例3>
還流冷却器及び温度計を備えた四つ口セパラブルフラスコに、純度37%のホルマリン90.0g(1.11mol)、p−tert−ブチルフェノール15.0g(0.10mol)、o−フェニルフェノール85.0g(0.50mol)を順に加えた。その後、内温45℃まで昇温し、24%水酸化ナトリウム水溶液20.0g(0.12mol)を添加し、発熱が収まるまで攪拌した。発熱が収まったのを確認した後、内温65℃まで昇温し、同温度にて1.5時間保温した。その後、内温75℃になるまで再度昇温し、さらに3時間保温した。
反応終了後、内温65℃以下になるまで冷却し、メチルイソブチルケトン77.0gを加えて希釈した。その後、反応液を中和し、10分間攪拌した後に静置し水層を除去した。
レゾルシン69.3g(0.63mol)を加え、内温100℃まで昇温し、減圧下65kPaで4時間かけて共沸脱水を行った。この間内温は120℃まで上昇した。続いて、常圧で内温140℃まで昇温し、2時間共沸脱水を行った。脱水反応を終了した時点での遊離レゾルシンは4.8%であった。その後、内温140〜150℃に保ったまま10kPaまで減圧し、2時間保温することで揮発成分を留去した。以上の操作により、橙色の共縮合物185gを得た。
共縮合物の平均分子量:4003、共縮合物の軟化点:138℃、共縮合物中の残存メチルイソブチルケトン:0.8%、遊離p−tert−ブチルフェノール:0.0%、遊離o−フェニルフェノール:0.2%、遊離レゾルシン:5.2%。共縮合物の各構成単位の比率;o−フェニルフェノール:5.29、メチレン基:1.32。
【0094】
<実施例4>
還流冷却器及び温度計を備えた四つ口セパラブルフラスコに、純度37%のホルマリン90.0g(1.11mol)、p−tert−ブチルフェノール15.0g(0.10mol)、o−フェニルフェノール85.0g(0.50mol)を順に加えた。その後、内温45℃まで昇温し、24%水酸化ナトリウム水溶液20.0g(0.12mol)を添加し、発熱が収まるまで攪拌した。発熱が収まったのを確認した後、内温65℃まで昇温し、同温度にて1.5時間保温した。その後、内温75℃になるまで再度昇温し、さらに3時間保温した。
反応終了後、内温65℃以下になるまで冷却し、メチルイソブチルケトン77.0gを加えて希釈した。その後、反応液を中和し、10分間攪拌した後に静置し水層を除去した。
レゾルシン69.3g(0.63mol)を加え、内温100℃まで昇温し、減圧下65kPaで4時間かけて共沸脱水を行った。この間内温は120℃まで上昇した。続いて、常圧で内温125℃まで昇温し、4時間共沸脱水を行った時点で遊離レゾルシンを分析したところ7.1%であった。更に4時間、同温度にて共沸脱水を行った。遊離レゾルシンは4.7%であった。その後、内温145℃まで昇温し、内温140〜150℃に保ったまま10kPaまで減圧し、2時間保温することで揮発成分を留去した。以上の操作により、橙色の共縮合物184gを得た。
共縮合物の平均分子量:3487、縮合物の軟化点:149℃、共縮合物中の残存メチルイソブチルケトン:0.8%、遊離p−tert−ブチルフェノール:0.1%、遊離o−フェニルフェノール:0.1%、遊離レゾルシン:4.7%。共縮合物の各構成単位の比率;o−フェニルフェノール:5.15、メチレン基:1.33。
【0095】
<実施例5>
還流冷却器及び温度計を備えた四つ口セパラブルフラスコに、純度37%のホルマリン90.0g(1.11mol)、p−tert−ブチルフェノール15.0g(0.10mol)、o−フェニルフェノール85.0g(0.50mol)を順に加えた。その後、内温45℃まで昇温し、24%水酸化ナトリウム水溶液20.0g(0.12mol)を添加し、発熱が収まるまで攪拌した。発熱が収まったのを確認した後、内温65℃まで昇温し、同温度にて1.5時間保温した。その後、内温75℃になるまで再度昇温し、さらに3時間保温した。
反応終了後、内温65℃以下になるまで冷却し、メチルイソブチルケトン77.0gを加えて希釈した。その後、反応液を中和し、10分間攪拌した後に静置し水層を除去した。
レゾルシン69.3g(0.63mol)を加え、内温90℃まで昇温し、減圧下65kPaで4時間かけて共沸脱水を行った。この間内温は115℃まで上昇した。続いて、減圧下55kPaで内温115℃に保温したまま、4時間共沸脱水を行った時点で遊離レゾルシンを分析したところ10.1%であった。次いで115℃に保温したまま4時間共沸脱水反応を行い、同様に遊離レゾルシンを分析したところ8.7%であった。更に115℃に保温したまま同様に4時間共沸脱水反応を実施した段階で同様に遊離レゾルシンを分析したところ8.0%であり、8時間目の時点と殆ど残量に差が見られなかったため、内温145℃まで昇温し、内温140〜150℃に保ったまま10kPaまで減圧し、2時間、同温度・同減圧度にて揮発成分を留去した。以上の操作により、橙色の共縮合物183gを得た。
共縮合物の平均分子量:2989、共縮合物の軟化点:139℃、共縮合物中の残存メチルイソブチルケトン:1.4%、遊離p−tert−ブチルフェノール:0.0%、遊離o−フェニルフェノール:0.2%、遊離レゾルシン:6.1%。共縮合物の各構成単位の比率;o−フェニルフェノール:5.17、メチレン基:1.32。
【0096】
<実施例6>
還流冷却器及び温度計を備えた四つ口セパラブルフラスコに、純度37%のホルマリン97.3g(1.2mol)、p−tert−ブチルフェノール15.0g(0.10mol)、o−フェニルフェノール85.0g(0.50mol)、トルエン77.0gを順に加えた。その後、内温45℃まで昇温し、24%水酸化ナトリウム水溶液20g(0.12mol)を添加し、発熱が収まるまで攪拌した。発熱が収まったのを確認した後、内温65℃まで昇温し、同温度にて2時間保温した。その後、内温80℃になるまで再度昇温し、さらに4時間保温した。
反応終了後、内温65℃以下になるまで冷却し、トルエン23.0gを加えて希釈した。その後、反応液を中和し、10分間攪拌した後に静置し水層を除去した。
レゾルシン62.7g(0.57mol)を加え、内温70℃まで昇温し、減圧下65kPaで4時間かけて共沸脱水を行った。この間内温は90℃まで上昇した。続いて、常圧で内温115℃まで昇温し、2時間共沸脱水を行った。脱水反応を終了した時点での遊離レゾルシンは12.7%であった。その後、内温145〜150℃まで昇温し、2時間保温することで揮発成分を留去した。その後、内温140〜150℃に保ったまま16kPaまで減圧し、2時間保温することで揮発成分をさらに留去した。以上の操作により、橙色の共縮合物177gを得た。
共縮合物の平均分子量:2160、共縮合物の軟化点:123℃、共縮合物中の残存トルエン:1.1%、遊離p−tert−ブチルフェノール:0.0%、遊離o−フェニルフェノール:0.4%、遊離レゾルシン:9.5%。共縮合物の各構成単位の比率;o−フェニルフェノール:5.40、メチレン基:1.33。
【0097】
<比較例2>
レゾルシンの量を51.5g(0.47mol)に変更したこと以外は、実施例6と同様にして橙色の共縮合物164gを得た。脱水反応を終了した時点での遊離レゾルシンは6.8%であった。
共縮合物の平均分子量:5246、共縮合物の軟化点:160℃、共縮合物中の残存トルエン:0.4%、遊離p−tert−ブチルフェノール:0.1%、遊離o−フェニルフェノール:0.9%、遊離レゾルシン:4.1%。共縮合物の各構成単位の比率;o−フェニルフェノール:5.05、メチレン基:1.24。
【0098】
<比較例3>
p−tert−ブチルフェノールの使用量を90.0g(0.60mol)に変更し、o−フェニルフェノールを使用しなかったこと以外は、実施例5と同様にして褐色の共縮合物173gを得た。脱水反応を終了した時点での遊離レゾルシンは4.6%であった。
共縮合物の平均分子量:1968、共縮合物の軟化点:200℃以上、共縮合物中の残存メチルイソブチルケトン:0.8%、遊離p−tert−ブチルフェノール:0.1%、遊離o−フェニルフェノール:なし、遊離レゾルシン:4.6%。共縮合物の各構成単位の比率;o−フェニルフェノール:なし、メチレン基:1.08。
【0099】
(2)共縮合物を含むゴム組成物の製造例及び物性評価
(2−1)上記実施例で得られた共縮合物を含む未加硫ゴム組成物の製造
樹脂接着剤として、下記表1に示す物性を有する実施例2及び実施例3で製造した共縮合物、並びに従来品として市販品の樹脂接着剤であるSUMIKANOL620(田岡化学工業社製)を選択した。表1中の%は重量%を表す。
【0100】
【表1】
【0101】
*1:遊離フェノール類とは、SUMIKANOL620の場合p−tert−オクチルフェノール及びp−クレゾールの合計量を表し、本願実施例2及び3の場合p−tert−ブチルフェノール及びo−フェニルフェノールの合計量を表す。また、表1中の残存量は溶媒の残存量(重量%)を示している。
【0102】
以下表2に示す配合に従い、まず、トーシン製加圧式ニーダーで不溶性硫黄、加硫促進剤及びメチレンドナーを除く成分、並びに表1で示す樹脂接着剤を添加混合し160℃に達した時点で排出した。次いで、得られた混合物に、60℃に保温した関西ロール製6インチオープンロールで不溶性硫黄、加硫促進剤及びメチレンドナーを添加混合して、スチールコード被覆用ゴム組成物を調製した。表2中の各成分の詳細は以下の通りである。表2中の数値は重量部を表す。
【0103】
・天然ゴム:SMR−CV60、
・カーボンブラック:東海カーボン株式会社製「シースト300」(HAF−LSグレード)、
・亜鉛華:正同化学工業(株)亜鉛華2種、
・老化防止剤:松原社製「Antioxidant FR」、
・コバルト塩:ステアリン酸コバルト(試薬)、
・不溶性硫黄:フレキシス社製「クリステックスHS OT−20」、
・加硫促進剤:N,N−ジシクロヘキシル−2−べンゾチアゾリルスルフェンアミド(試薬)、
・メチレンドナー:バラケミカル社製「スミカノール507AP」。
【0104】
【表2】
【0105】
(2−2)上記実施例及び参考例で得られた共縮合物を含む未加硫ゴム組成物のゴム物性試験
上記の通り得られた未加硫ゴム組成物を用いて、ムーニー粘度試験(JIS K 6300−1:2001準拠、130℃で測定)、及びレオメーター試験(JIS K 6300−2:2001準拠、160℃で測定)を実施した。また、未加硫試料を作製後室温にて24時間放置した後、160℃、6MPaでの加圧下、t90+5分の条件で加硫し、2mm厚の加硫ゴムシートを調製した。ついで、その加硫ゴムシートから作成したゴム試験片を用い、引張試験(JIS K 6251:2010準拠、25℃で測定)、及び硬度の測定(JIS K 6253:2006準拠、25℃で測定)を実施した。
【0106】
上記ゴム物性試験結果につき、上記参考例の数値を100とし、それぞれ相対評価を実施した。結果を表3に示す。
【0107】
【表3】
【0108】
(2−3)上記実施例及び参考例で得られた共縮合物を含む未加硫ゴム組成物の初期接着性及び湿熱接着性の評価方法及びその評価結果
上記の通り得られた各未加硫ゴム組成物を用いて、ゴム−スチールコード複合体の試料を作製した。詳細には、真鍮メッキスチールコード(直径約0.8ミリ,3×0.20+6×0.35mm構造、銅/亜鉛=64/36(重量比)の真鍮めっき)を1本/10mmの間隔で5本を配列したものの両面を、上記各未加硫ゴム組成物からなる約2ミリ厚の未加硫ゴムシートを用いて被覆し、このコードを平行になるように積層した剥離接着試験用の未加硫試料を作製した。得られた未加硫試料を用いて、初期接着性と湿熱接着性を下記方法により評価した。
【0109】
a)初期接着性
上記未加硫試料を作製後、室温にて24時間放置した後、160℃、6MPaでの加圧下、t90+5分の条件で加硫し、5本のスチールコードを1cm挟んだ1cm×1cm×6cmの直方体のゴム片を得た。本ゴム片を島津製作所(株)製オートグラフ「AGC−X」を用いて1本毎にスチールコードの引抜試験を行い、100ミリ/分で垂直方向に引き抜く際の応力をゴム引抜応力(kgf)として測定した。また、引抜後のスチールコードのゴム被覆率を目視にて観察し、0〜100%で評価した。
【0110】
b)湿熱接着性(湿熱老化後の接着性)
上記未加硫試料を作製後、室温にて24時間放置した後、160℃×t90+5分の条件で加硫し、加硫した試験片を80℃×95%RHの環境下で168時間放置した後、上記初期接着性と同様の引抜試験を行い、引抜後のスチールコードのゴム被覆率を目視にて観察し、0〜100%で評価した。
【0111】
上記ゴム−スチールコード接着試験結果につき、上記参考例の数値を100とし、それぞれ相対評価を実施した。結果を表4に示す。
【0112】
【表4】