特許第6245761号(P6245761)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6245761高分子化合物、有機半導体及び光電変換素子
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6245761
(24)【登録日】2017年11月24日
(45)【発行日】2017年12月13日
(54)【発明の名称】高分子化合物、有機半導体及び光電変換素子
(51)【国際特許分類】
   C08G 61/12 20060101AFI20171204BHJP
   H01L 51/46 20060101ALI20171204BHJP
   H01L 51/44 20060101ALI20171204BHJP
【FI】
   C08G61/12
   H01L31/04 152B
   H01L31/04 152G
   H01L31/04 112A
【請求項の数】4
【全頁数】34
(21)【出願番号】特願2014-189832(P2014-189832)
(22)【出願日】2014年9月18日
(65)【公開番号】特開2016-60823(P2016-60823A)
(43)【公開日】2016年4月25日
【審査請求日】2016年12月21日
(73)【特許権者】
【識別番号】000004444
【氏名又は名称】JXTGエネルギー株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】503359821
【氏名又は名称】国立研究開発法人理化学研究所
(74)【代理人】
【識別番号】100105924
【弁理士】
【氏名又は名称】森下 賢樹
(72)【発明者】
【氏名】岡部 隆志
(72)【発明者】
【氏名】池田 哲
(72)【発明者】
【氏名】林 慎也
(72)【発明者】
【氏名】尾坂 格
(72)【発明者】
【氏名】瀧宮 和男
【審査官】 中西 聡
(56)【参考文献】
【文献】 特表2009−541501(JP,A)
【文献】 国際公開第2012/117730(WO,A1)
【文献】 特表2013−509474(JP,A)
【文献】 OSAKA,I. et al,Highly Stable Semiconducting Polymers Based on Thiazolothiazole,Chemistry of Materials,2010年,Vol.22, No.14,p.4191-4196
【文献】 MISHRA,S.P. et al,Highly Air-Stable Thieno[3,2-b]thiophene-Thiophene-Thiazolo[5,4-d]thiazole- Based Polymers for Light,Macromolecular Chemistry and Physics,2010年,Vol.211, No.17,p.1890-1899
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08G 61/00−61/12
H01L 51/44−51/46
CAplus/REGISTRY(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記式(1)で表される、チアゾロチアゾール骨格と5員ヘテロ環とを含むサブユニットが2つ結合した構造を、繰り返し単位として有することを特徴とする高分子化合物。
【化1】
[式(1)中、R、R、R、Rは、独立に、分岐鎖状アルキル基、直鎖状アルキル基、アルキルエステル基、アルキルカルボニル基、アルコキシ基のいずれかである。一方の前記サブユニットにおける置換基RおよびRの位置と、他方の前記サブユニットにおける置換基RおよびRの位置とは互いに非対称である。また、Xは、独立に、S、O、Nのいずれかである。nは1より大きい整数であり、複数のR、R、R、R及びXは、それぞれ同一でも異なってもよい。]
【請求項2】
前記分岐鎖状アルキル基の炭素数は3以上30以下であり、本高分子化合物の数平均分子量はポリスチレン換算で15000以上500000以下である請求項1に記載の高分子化合物。
【請求項3】
請求項1又は2に記載の高分子化合物を含むことを特徴とする有機半導体。
【請求項4】
光電変換層と、
前記光電変換層の一方の主表面側に設けられる電子取出電極と、
前記光電変換層の他方の主表面側に設けられる正孔取出電極と、
を備え、
前記光電変換層は、請求項に記載の有機半導体を含むことを特徴とする光電変換素子。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、高分子化合物と、この高分子化合物を含む有機半導体と、この有機半導体を含み光電変換により光エネルギーを電気エネルギーに変換する光電変換素子に関する。
【背景技術】
【0002】
有機太陽電池(光電変換素子)は、柔軟性に富むとともに、大面積化、軽量化および簡易で安価な製造法が期待できるため有望な次世代太陽電池と考えられている。現在、有機太陽電池の実用化に向けて、変換効率の大幅な向上が重要課題となっている。
【0003】
有機薄膜太陽電池の構造として、電子ドナーであるp型有機半導体と電子アクセプターであるn型有機半導体との混合により形成されるバルクヘテロ接合構造が知られている。バルクヘテロ接合の利点としては、p型半導体/n型半導体界面が広くなるために光誘起電荷分離が効率的に起こり、2層型の太陽電池に比べて光電流が増加することが挙げられる。
【0004】
有機薄膜太陽電池では、p型有機半導体における電荷移動度(正孔移動度)がn型有機半導体における電荷移動度(電子移動度)に比べて低いことが、有機薄膜太陽電池の低性能の要因となっていた。正孔移動度向上のためには、p型有機半導体として用いられる高分子化合物の結晶性を高めることが好ましい。しかしながら、結晶性が高い高分子化合物は有機溶媒への溶解性が低いためn型有機半導体との接触面積を広げることが難しかった。これに対し、特許文献1には、正孔移動度の向上と有機溶媒への溶解性の保持との両立を図る技術が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】国際公開第2012/117730号パンフレット
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明者らは、光電変換素子に用いられる従来の有機半導体について鋭意研究を重ねた結果、従来の有機半導体には、光電変換素子の性能を保ちながら有機溶媒への溶解性をさらに向上させる余地があることを見出した。
【0007】
本発明はこうした状況に鑑みてなされたものであり、その目的は、光電変換素子の性能を保持しながら有機半導体材料の有機溶媒への溶解性を高める技術を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明のある態様は、高分子化合物である。当該高分子化合物は、下記式(1)で表される、チアゾロチアゾール骨格と5員ヘテロ環とを含む繰り返し単位を有する。
【化1】
[式(1)中、R、R、R、Rは、独立に、分岐鎖状アルキル基、直鎖状アルキル基、アルキルエステル基、アルキルカルボニル基、アルコキシ基のいずれかである。また、Xは、独立に、S、O、Nのいずれかである。nは1より大きい整数であり、複数のR、R、R、R及びXは、それぞれ同一でも異なってもよい。]
【0009】
本発明の他の態様は、有機半導体である。当該有機半導体は、上記態様の高分子化合物を含む。
【0010】
本発明のさらに他の態様は、光電変換素子である。当該光電変換素子は、光電変換層と、光電変換層の一方の主表面側に設けられる電子取出電極と、光電変換層の他方の主表面側に設けられる正孔取出電極と、を備える。光電変換層は、上述した態様の有機半導体を含む。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、光電変換素子の性能を保持しながら有機半導体材料の有機溶媒への溶解性を高める技術を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1】実施の形態に係る光電変換素子の概略構成を示す断面図である。
図2図2(A)〜図2(C)は、実施の形態に係る光電変換素子の製造方法を示す工程断面図である。
図3図3(A)及び図3(B)は、実施の形態に係る光電変換素子の製造方法を示す工程断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明の実施の形態を図面を参照して説明する。実施の形態は、発明を限定するものではなく例示であって、実施の形態に記述されるすべての特徴やその組み合わせは、必ずしも発明の本質的なものであるとは限らない。
【0014】
図1は、実施の形態に係る光電変換素子の概略構成を示す断面図である。本実施の形態の光電変換素子10は、有機半導体を含む光電変換層を有する有機薄膜太陽電池である。
【0015】
光電変換素子10は、基材20、第1の電極30、正孔輸送層40、光電変換層50、電子輸送層60及び第2の電極70を備える。第1の電極30は、光電変換層50の一方の主表面側に設けられる。第2の電極70は、光電変換層50の他方の主表面側、すなわち第1の電極30が設けられる側とは反対の主表面側に設けられる。よって、光電変換素子10は、第1の電極30及び第2の電極70のいずれか一方の電極の上に光電変換層50が積層され、光電変換層50の上に他方の電極が積層された構造を有する。前記「の上に積層」は、光電変換層50と電極との間に正孔輸送層40あるいは電子輸送層60等が介在した状態で積層される場合だけでなく、光電変換層50及び電極が互いの表面上に直に積層される場合を含む。
【0016】
本実施の形態では、第1の電極30は正極、すなわち正孔取出電極であり、光電変換層50と電気的に接続される。第1の電極30は、光電変換層50の受光面側に位置する。第1の電極30は、ITO(Indium Tin Oxide)、SnO、FTO(Fluorine doped Tin Oxide)、ZnO、AZO(Aluminum doped Zinc Oxide)、IZO(Indium doped Zinc Oxide)等の導電性金属酸化物や、金、銀、銅、アルミニウムなどの金属で形成される、薄膜やメッシュ、ストライプなどの形状を有する透明導電膜で構成することができる。
【0017】
第1の電極30は、光電変換素子10の受光性能を阻害しないよう、光透過性を有する基材20の上に形成される。例えば、基材20には、無色あるいは有色ガラス、網入りガラス、ガラスブロック等が用いられる他、無色あるいは有色の透明性を有する樹脂が用いられてもよい。かかる樹脂としては、具体的には、ポリエチレンテレフタレートなどのポリエステル、ポリアミド、ポリスルホン、ポリエーテルサルホン、ポリエーテルエーテルケトン、ポリフェニレンサルファイド、ポリカーボネート、ポリイミド、ポリメチルメタクリレート、ポリスチレン、トリアセチルセルロース、ポリメチルペンテンなどが挙げられる。
【0018】
正孔輸送層40は、第1の電極30と光電変換層50との間の領域に設けられる。正孔輸送層40は、光電変換層50から第1の電極30に正孔を移動させやすくする機能を担う。また、正孔輸送層40には、光電変換層50から第1の電極30に電子を移動させにくくする機能を持たせることもできる。正孔輸送層40は、例えばPEDOT(ポリエチレンジオキシチオフェン、poly(ethylenedioxy)thiophene)/PSS(ポリスチレンスルフォネート、poly(styrenesulfonate))、ポリピロール、ポリアニリン、ポリフラン、ポリピリジン、ポリカルバゾール等の導電性高分子、MoO、WO等の無機化合物、フタロシアニン、ポルフィリン等の有機半導体分子、及びこれらの誘導体や遷移金属錯体、トリフェニルアミン化合物やヒドラジン化合物等の電荷移動剤、及び、TTF(テトラリアフルバレン)のような電荷移動錯体といった、正孔移動度が高い材料で形成される。正孔輸送層40の膜厚は特に限定されないが、1〜100nmが好ましく、5〜60nmがより好ましく、10〜40nmがさらに好ましい。
【0019】
光電変換層50はバルクヘテロ接合層であり、電子供与性を有するp型有機半導体52と、電子受容性を有しp型有機半導体52とバルクヘテロ接合を形成するn型有機半導体54とがナノレベルで混合されてなる。p型有機半導体52は、下記式(1)で表される繰り返し単位を有する高分子化合物を含む。
【0020】
【化2】
[式(1)中、R、R、R、Rは、独立に、分岐鎖状アルキル基、直鎖状アルキル基、アルキルエステル基、アルキルカルボニル基、アルコキシ基のいずれかである。また、Xは、独立に、S、O、Nのいずれかである。nは1より大きい整数であり、複数のR、R、R、R及びXは、それぞれ同一でも異なってもよい。]
【0021】
本実施の形態に係る高分子化合物は、上記式(1)で表される、チアゾロチアゾール骨格と5員ヘテロ環とを含む繰り返し単位を有する重合体である。具体的には、高分子化合物は、チアゾロチアゾールの両端に5員ヘテロ環が結合してなるサブユニットが2つ結合した構造を、繰り返し単位として有する。2つのサブユニットは、互いの一端側の5員ヘテロ環同士が結合される。各サブユニットにおいて、チアゾロチアゾールは5員ヘテロ環のヘテロ原子に対してオルト位に位置する。また、各サブユニットの5員ヘテロ環は、置換基R〜Rを有する。
【0022】
2つのサブユニットは、置換基の位置が互いに非対称となっている。すなわち、一方のサブユニットでは、置換基とチアゾロチアゾールとが、互いにオルト位の関係となるようにして5員ヘテロ環に結合する。一方、他方のサブユニットでは、置換基とチアゾロチアゾールとが、互いにメタ位の関係となるようにして5員ヘテロ環に結合する。上記式(1)では、左側のサブユニットにおける置換基R,Rとチアゾロチアゾールとが互いにオルト位の位置にある。また、右側のサブユニットにおける置換基R,Rとチアゾロチアゾールとが互いにメタ位の位置にある。
【0023】
置換基R〜Rは、それぞれ独立に、分岐鎖状アルキル基、直鎖状アルキル基、アルキルエステル基、アルキルカルボニル基及びアルコキシ基からなる群から選択される。特に、光電変換効率を向上させる観点から、高分子化合物中の全置換基における直鎖状アルキル基の比率は50%を超えないことが好ましい。
【0024】
分岐鎖状アルキル基の炭素数は、好ましくは3〜30であり、より好ましくは5〜25であり、さらに好ましくは8〜20である。分岐鎖状アルキル基の炭素数を30以下とすることで、高分子化合物における正孔移動度の低下をより確実に抑制して、光電変換素子10の光電変換効率を確保することができる。分岐鎖状アルキル基の具体例としては、2−エチルヘキシル(EH)、2−ブチルヘキシル、2−エチルオクチル、2−ブチルオクチル(BO)、2−ヘキシルオクチル、2−ヘキシルデシル(HD)、4−エチルヘキシル、4−エチルオクチル、4−オクチルペンチル、2−ヘプチルオクチルなどを挙げることができる。
【0025】
直鎖状アルキル基の炭素数は、好ましくは1〜30であり、より好ましくは5〜25であり、さらに好ましくは8〜20である。直鎖状アルキル基の炭素数を30以下とすることで、高分子化合物における正孔移動度の低下をより確実に抑制して、光電変換素子10の光電変換効率を確保することができる。直鎖状アルキル基の具体例としては、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基、ヘプチル基、オクチル基、ノニル基、デシル基、ウンデシル基、ドデシル基、トリデシル基、テトラデシル基、ペンタデシル基が挙げられ、中でもブチル基、ヘキシル基、オクチル基、デシル基、ドデシル基、テトラデシル基が好ましい。
【0026】
アルキルエステル基、アルキルカルボニル基、アルコキシ基の炭素数はそれぞれ、好ましくは1〜30であり、より好ましくは5〜25であり、さらに好ましくは8〜20である。アルキルエステル基、アルキルカルボニル基、アルコキシ基の炭素数を30以下とすることで、高分子化合物における正孔移動度の低下をより確実に抑制して、光電変換素子10の光電変換効率を確保することができる。置換基R〜Rの内2つ以上をアルキルエステル基、アルキルカルボニル基、又はアルコキシ基とすることでも、良好な光電変換効率を得ることができる。特に、高分子化合物にアルコキシ基を導入した場合は、高分子化合物の光吸収末端をアルキル基に比べて長波長化することができる。アルキルエステル基、アルキルカルボニル基、及びアルコキシ基の例としては、下記式で表されるものを挙げることができる。
【0027】
【化3】
【0028】
高分子化合物の数平均分子量は、ポリスチレン換算で15000以上500000以下であることが好ましい。高分子化合物の多分散度(PDI)は、1.5以上であることが好ましい。高分子化合物の数平均分子量を15000以上とすることで、光電変換層を形成する有機半導体材料の塗布性の低下を抑制して、均一な膜を形成しやすくすることができる。また、高分子化合物同士の配光性を高めて、高分子化合物が有する高移動度をより確実に発現させることができる。また、高分子化合物の数平均分子量を500000以下とすることで、溶媒に対する高分子化合物の溶解性をより確実に確保でき、均一な膜を形成しやすくすることができる。数平均分子量は、ポリスチレン標準試料を適用し、ゲルパーミエーションクロマトグラフィ(GPC)を用いて測定することができる。また、数平均分子量は、例えば株式会社島津製作所Prominence GPCシステムを用いて測定することができる。
【0029】
また、光電変換素子10においてSCLC(Space Charge Limited Current)法で評価した場合の高分子化合物の正孔移動度は、好ましくは7.5×10−5cm/Vs以上であり、より好ましくは1.0×10−4cm/Vs以上である。なお、SCLC法による正孔移動度は、例えば以下の方法により求めることができる。
【0030】
すなわち、ITO透明電極の上に、市販のPEDOT:PSS(商品名 Starck AI 4083)をスピン塗布により成膜する。その後、PEDOT:PSSを120〜150℃で加熱し乾燥させて、膜厚約40nmのPEDOT:PSS膜を形成する。所定量の高分子化合物を含有する有機半導体材料をクロロベンゼン溶媒に加えて塗布液を作成し、この塗布液をPEDOT:PSS膜の上にスピン塗布する。この後、所定の温度で乾燥させて膜厚約130nmの光電変換層を形成する。得られた光電変換層の上に、真空蒸着法により膜厚が100nmになるようにAuを成膜する。成膜速度は、例えば1秒当たりに0.1nmを超えない速度である。
【0031】
作製した素子(ITO透明電極/PEDOT:PSS膜/光電変換層/Au)を暗箱内入れて、電流(J)−電圧(V)特性を測定する。得られた電流−電圧特性をJ^1/2を縦軸、Vを横軸にlog−logプロットした後、SCLC領域にてフィッティングして傾き(a)を算出する。また、(J)^1/2={9ε0εrμ/8(L^3)}^1/2 V式から、{9ε0εrμ/8(L^3) }^1/2の部分がグラフから求めた傾きに等しいため、a={9ε0εrμ/8(L^3) }^1/2が得られる。これをμについて解き直し、μ={8(L^3)( a^2)}/{9ε0εr}とする。そして、この式にε0,εrを代入して、正孔移動度を算出する。μは高分子化合物の正孔移動度、Lは高分子化合物の膜厚、ε0は真空の誘電率、εrは高分子化合物の誘電率である。なお、「Phys.Rev.B.1997、55、R656.」を参考にすることができる。
【0032】
上記式(1)で表される高分子化合物は、有機溶媒に対する溶解性が高いという特性を有する。高分子化合物の溶解性は、有機溶媒に対して溶解する高分子化合物の質量で示すことができる。上記式(1)で表される高分子化合物の溶解性は、クロロベンゼン1mLに対して好ましくは10mg以上であり、より好ましくは12mg以上である。有機溶媒に対して溶解する高分子化合物の質量は、以下のようにして求めることができる。すなわち、窒素雰囲気下で所定量の高分子化合物とクロロベンゼン1mLを蓋付サンプル瓶に加え、85℃で2時間撹拌する。その後、25〜30℃で10分間放置する。そして、目視で沈殿が発生しない質量が、有機溶媒に対して溶解する高分子化合物の質量とされる。
【0033】
また、高分子化合物の光吸収末端波長は、650nm以上であることが好ましい。光吸収末端波長を650nm以上とすることで、光電変換素子10における太陽光の利用率を向上させることができ、光電変換効率を向上させることができる。また、高い正孔移動度と光吸収末端波長の長波長化によって、高い短絡電流密度(Jsc)を得ることができる。なお、光吸収末端波長は、以下のようにして求めることができる。すなわち、窒素雰囲気下で所定量の高分子化合物をクロロベンゼン1mlに加えて塗布液を作成し、この塗布液を基板上にスピン塗布する。その後、塗布液を所定温度で乾燥させて膜厚約120nmの層を形成する。そして、得られた積層体、すなわち基板込み膜の吸収スペクトルを得る。また、基板のみの吸収スペックトルを得る。基板こみ膜のスペクトルから基板のみのスペクトルを差し引いて、高分子化合物膜のみの吸収スペクトルを得る。得られた吸収スペクトルから、高分子化合物の光吸収末端波長を得る。基板としては、ガラス基板等を用いることができる。吸収スペクトルは、例えば分光光度計(UV−Vis)U−4100(株式会社日立ハイテクノロジーズ製)を用いて測定することができる。
【0034】
また、高分子化合物の真空準位を0eVにした時の最高占有分子軌道(HOMO)レベルは、5.1eVより深いことが好ましい。これにより、より高い開放電圧(Voc)を得ることができる。HOMOレベルは、高分子化合物の置換基R〜Rに用いられるアルキル鎖の長さを選択することで調整することができる。アルキル鎖を短くすることで、より深いHOMOレベルを達成することができる。これにより、光電変換層50の大気安定性の向上を図ることができ、ひいては光電変換素子10の長寿命化を図ることができる。なお、HOMOレベルは、大気中光電子分光装置AC−3(理研計器株式会社製)を用いて測定することができる。なお、HOMOレベル評価用のサンプルは、光吸収末端波長測定用のサンプルと同様の方法で作製することができる。
【0035】
上記式(1)で表される高分子化合物は、正孔移動度が高いという特性を有するとともに、有機溶媒への溶解性に優れるという特性を有する。上述したように、高分子化合物が有する繰り返し単位に含まれる2つのサブユニットにおいて、置換基は5員ヘテロ環上の互いに異なる位置に結合する。これにより、同じ構造のサブユニットが2つ結合してなる繰り返し単位を有する高分子化合物に比べて、優れた溶解性を付与することができる。また、側鎖置換基の位置を異ならせることのみによって高分子化合物の溶解性を高めているため、高分子化合物の溶解性を高めながらその正孔移動度を維持することができる。
【0036】
n型有機半導体54としては、フラーレン、フラーレン誘導体、カーボンナノチューブ、化学修飾を施したカーボンナノチューブなどの炭素材料や、縮合環芳香族化合物、5〜7員のヘテロ環化合物、ポリアリーレン化合物、フルオレン化合物、シクロペンタジエン化合物、シリル化合物、あるいは含窒素ヘテロ環化合物を配位子として有する金属錯体等が挙げられる。n型有機半導体54は、好ましくはフラーレン、あるいはフラーレン誘導体である。
【0037】
フラーレンとしては、C60、C70、C74、C76、C78、C80、C82、C84、C90、C96、C240、C540、ミックスドフラーレン、フラーレンナノチューブ等を挙げることができる。フラーレン誘導体としては、上述したフラーレンに置換基が付加された化合物を挙げることができ、例えば、[60]PCBM(フェニルC61酪酸メチルエステル:PC61BM)、ビス[60]PCBM、ICMA(モノインデンニルC60)、ICBA(ビスインデンニルC60)、[70]PCBM(フェニルC71酪酸メチルエステル:PC71BM)等を挙げることができる。
【0038】
縮合環芳香族化合物としては、ナフタレン誘導体、アントラセン誘導体、フェナントレン誘導体、テトラセン誘導体、ピレン誘導体、ペリレン誘導体、フルオランテン誘導体等を挙げることができる。5〜7員のヘテロ環化合物は、窒素原子、酸素原子、硫黄原子を含有するヘテロ環化合物であって、例えばピリジン、ピラジン、ピリミジン、ピリダジン、トリアジン、キノリン、キノキサリン、キナゾリン、フタラジン、シンノリン、イソキノリン、プテリジン、アクリジン、フェナジン、フェナントロリン、テトラゾール、ピラゾール、イミダゾール、チアゾール、オキサゾール、インダゾール、ベンズイミダゾール、ベンゾトリアゾール、ベンゾオキサゾール、ベンゾチアゾール、カルバゾール、プリン、トリアゾロピリダジン、トリアゾロピリミジン、テトラザインデン、オキサジアゾール、イミダゾピリジン、ピラリジン、ピロロピリジン、チアジアゾロピリジン、ジベンズアゼピン、トリベンズアゼピン等が例示される。
【0039】
光電変換層50の膜厚は、特に限定されないが、5〜1000nm、好ましくは30〜500nm、より好ましくは50〜400nm、さらに好ましくは80〜300nmである。
【0040】
電子輸送層60は、第2の電極70と光電変換層50との間の領域に設けられる。電子輸送層60は、光電変換層50から第2の電極70に電子を移動させやすくする機能を担う。また、電子輸送層60には、光電変換層50から第2の電極70に正孔を移動させにくくする機能を持たせることもできる。電子輸送層60は、電子移動度が高い材料で形成される。電子輸送層60に用いられる材料としては、本実施の形態の目的に合致していれば特に制限されないが、例えば、フェナントロリン、バソキュプロイン、ペリレン等の有機半導体分子及びこれらの誘導体や、遷移金属錯体などの有機物、LiF、CsF,CsO、CsCO、TiOx(xは0〜2の任意の数字)、ZnOなどの無機化合物、Ca、Baなどの金属を挙げることができる。電子輸送層60の膜厚は、特に限定されないが、例えば、0.01〜100nmが好ましく、0.1〜80nmがより好ましく、0.5〜50nmがさらに好ましい。
【0041】
第2の電極70は負極、すなわち電子取出電極であり、光電変換層50の受光面とは反対側において光電変換層50と電気的に接続される。第2の電極70の材料は導電性を有していれば特に限定されないが、Au、Pt、Ag、Cu、Al、Mg、Li、Kなどの金属、あるいはカーボン電極などを用いることができる。第2の電極70は、真空蒸着法、電子ビーム真空蒸着法、スパッタリング法、溶媒に分散した金属微粒子を塗布し、溶媒を揮発除去する等の公知の方法で成膜することができる。
【0042】
なお、以下に説明する実施例で作製した光電変換素子のように、正孔輸送層40及び電子輸送層60の位置は入れ替えられてもよい。すなわち、光電変換素子10は、光電変換層50と第1の電極30との間に電子輸送層60が設けられ、光電変換層50と第2の電極70との間に正孔輸送層40が設けられた、いわゆる逆層構造であってもよい。この場合、第1の電極30は負極、第2の電極70は正極となる。また、正孔輸送層40、電子輸送層60のいずれか一方又は両方が省略されてもよい。
【0043】
光電変換素子10には紫外線をブロックする手段を組み込むことができる。紫外線をブロックする手段としては、素子を紫外線からブロックできれば特に限定されないが、紫外線吸収層や、紫外線反射層、紫外線を別の波長に変換する波長変換層などが挙げられる。紫外線をブロックする手段を設ける位置は、素子を紫外線からブロックできれば特に限定されない。紫外線をブロックする手段は、例えば、光照射側の基板表面に上述したような紫外線ブロック機能を有する層を設けることや、紫外線ブロック機能を有するフィルムを貼り付けること、光照射側基板として紫外線ブロック機能付のものを使用すること、光照射側基板と透明導電膜との間に紫外線ブロック機能を有する層を設けること、サブストレート構造(金属電極側から積層した構造)の素子の場合には封止材に紫外線ブロック機能を付与したものを使用すること等により実現することができる。ブロックする紫外線の波長領域としては、特に限定されないが、好ましくは330nm以下、より好ましくは350nm以下、さらに好ましくは370nm以下、さらに好ましくは390nm以下、さらに好ましくは400nm以下の波長領域である。紫外線ブロック手段における紫外線の透過率は、好ましくは10%以下、より好ましくは1%以下、さらに好ましくは0.1%以下である。
【0044】
(光電変換素子の製造方法)
図2(A)〜図2(C)、図3(A)及び図3(B)は、実施の形態に係る光電変換素子の製造方法を示す工程断面図である。以下、実施の形態に係る光電変換素子の製造方法を図2(A)〜図3(B)を参照して説明する。
【0045】
まず、図2(A)に示すように、ガラス基板などの基材20の一方の面に、ITOの成膜等により第1の電極30を形成する。次に、図2(B)に示すように、第1の電極30の表面を被覆するように正孔輸送層40を積層する。正孔輸送層40の形成方法は特に限定されないが、例えばスピンコート法が挙げられる。
【0046】
次に、図2(C)に示すように、正孔輸送層40の表面に光電変換層50を形成する。具体的には、まず、上記式(1)で表される高分子化合物を含むp型有機半導体52と、n型有機半導体54とを、クロロベンゼンなどの溶媒に溶解させた混合溶液を用意する。そして、正孔輸送層40の表面に、混合溶液をスピンコート法などによって成膜する。その後、成膜された混合溶液を乾燥させる。この結果、溶液中の溶媒が除去される。これにより、正孔輸送層40の上に光電変換層50が形成される。上記式(1)で表される高分子化合物の合成方法は、以下の実施例で説明する。
【0047】
次に、図3(A)に示すように、光電変換層50の表面に、LiFの蒸着等により電子輸送層60を成膜する。さらに、図3(B)に示すように、電子輸送層60の表面に、Alの蒸着等により第2の電極70を形成する。これにより、電子輸送層60の上に第2の電極70が積層される。以上の工程により、光電変換素子10を形成することができる。
【0048】
以上説明したように、本実施の形態に係る高分子化合物は、上記式(1)で表される、チアゾロチアゾール骨格と5員ヘテロ環とを含む繰り返し単位を有する。この繰り返し単位は、チアゾロチアゾールと2つの5員ヘテロ環とからなる2つのサブユニットを有する。2つのサブユニットは、5員ヘテロ環への置換基の結合位置が異なる。このため、正孔移動度と有機溶媒への溶解性とを、より高い次元で両立することができる。
【0049】
2つのサブユニットにおける5員ヘテロ環への置換基の結合位置が同じである従来の高分子化合物は、本実施の形態の高分子化合物に比べて有機溶媒への溶解性が低かった。したがって、従来の高分子化合物を用いて光電変換層を形成する際は、例えば100℃以上の高温条件下で行う必要があった。このため、安定した光電変換層の形成が困難であり、また特殊な加温装置が必要であった。これに対し、本実施の形態に係る高分子化合物は、有機溶媒に対して優れた溶解性を備えるため、光電変換層の形成時に高温条件が必要とされない。よって、より安定した光電変換層の形成が容易であり、また製造設備の簡便化さらには製造コストの抑制が可能である。さらに、本実施の形態の高分子化合物は高い正孔移動度を有するため、光電変換効率の高い光電変換素子を得ることができる。
【実施例】
【0050】
以下に、実施例に基づいて本発明を詳細に説明するが、本発明はこれらの実施例により何ら限定されるものではない。
【0051】
[高分子化合物の合成]
(実施例1)
実施例1に係る高分子化合物P1(PTzBT−EHHDi)の合成方法について、以下に説明する。
【0052】
<3−(2−エチルヘキシル)チオフェン(化合物A1)の合成>
下記反応式(2)に示す反応により、3−(2−エチルヘキシル)チオフェン(化合物A1)を合成した。具体的には、フラスコにマグネシウム(2.92g,0.12mol)を加え、よく脱気して系内を窒素雰囲気下とした。続いて、テトラヒドロフラン(THF)(10ml)をフラスコに加えた。1−ブロモ−2−エチルヘキサン(21.3g,0.11mol)を、THFを還流させながらフラスコ内に滴下し、滴下した後も3時間還流を継続した。その後、THF(190ml)をフラスコに加え、室温まで冷却した。以上の工程によりグリニャール試薬(R−MgBr)を合成した。
【0053】
別のフラスコにジクロロ[1,3−ビス(ジフェニルホスフィノ)プロパン]ニッケル(Ni(dppp)Cl)(542mg,1mmol)を加え、よく脱気して系内を窒素雰囲気下とした。続いて、THF(100ml)をフラスコに加えて0℃に冷却した。次いで、3−ブロモチオフェン(9.5ml,16.3g,0.1mol)をフラスコに加え、合成したグリニャール試薬を滴下し、室温に戻して5時間攪拌した。その後、反応溶液に1N塩酸(20ml)を加え、反応混合物をヘキサンで抽出し、反応混合物を含む有機層を飽和食塩水、及び水で洗浄した。有機層を無水硫酸マグネシウムで乾燥し、これを濾過した後、溶媒を減圧下で留去した。得られた反応混合物を減圧蒸留することで、化合物A1を透明なオイルで得た(12.8g,収率65%)。得られた化合物A1をH−NMR法を用いて同定した。化合物A1の物性データは次の通りである。
1H-NMR(400MHZ,CDCl3,TMS) δ 7.23 (dd, J=4.9Hz, 1.0Hz, 1H), 6.93 (d, J=4.9Hz, 1H), 6.92 (d, J=1.0Hz, 1H), 2.55 (d, J=6.8Hz, 2H), 1.25 (m, 9H), 0.88 (m, 6H)
【0054】
【化4】
【0055】
<2−ブロモ−3−(2−エチルヘキシル)チオフェン(化合物A2)の合成>
下記反応式(3)に示す反応により、2−ブロモ−3−(2−エチルヘキシル)チオフェン(化合物A2)を合成した。具体的には、窒素雰囲気下で、化合物A1(10g,51mmol)及びN,N−ジメチルホルムアミド(DMF)(150mL)をフラスコに加え、0℃まで冷却した。その後、N−ブロモスクシンイミド(NBS)(9.05g,51mmol)をフラスコに加え、室温まで昇温して12時間攪拌した。
【0056】
その後、反応溶液に飽和炭酸水素ナトリウム水溶液(50ml)を加え、反応混合物をヘキサンで抽出し、反応混合物を含む有機層を飽和食塩水、及び水で洗浄した。有機層を無水硫酸マグネシウムで乾燥し、これを濾過した後、溶媒を減圧下で留去した。得られた反応混合物を、ヘキサンを移動相とするシリカゲルカラムクロマトグラフィーで分離精製することで、化合物A2を透明なオイルで得た(13.9g,収率99%)。得られた化合物A2をH−NMR法を用いて同定した。化合物A2の物性データは次の通りである。
1H-NMR(400MHZ,CDCl3,TMS) δ 7.17 (d, J=5.4Hz, 1H), 6.75 (d, J=5.4Hz, 1H), 2.49 (d, J=7.0Hz, 2H), 1.25 (m, 9H), 0.88 (m, 6H)
【0057】
【化5】
【0058】
<3−(2−エチルヘキシル)−2チオフェンアルデヒド(化合物A3)の合成>
下記反応式(4)に示す反応により、3−(2−エチルヘキシル)−2チオフェンアルデヒド(化合物A3)を合成した。具体的には、フラスコにマグネシウム(345mg,14.2mmol)を加え、よく脱気して系内を窒素雰囲気下とした。続いて、THF(10ml)をフラスコに加えた。そして、化合物A2(3.6g,12.9mmol)を、THFを還流させながらフラスコ内に滴下し、滴下した後も3時間還流を継続した。その後、THF(100ml)をフラスコに加え、0℃まで冷却した。続いて、DMF(5ml)を滴下し、室温まで昇温して1時間攪拌した。
【0059】
反応溶液に1N塩酸(30ml)を加え、反応混合物をクロロホルムで抽出し、反応混合物を含む有機層を飽和食塩水、及び水で洗浄した。有機層を無水硫酸マグネシウムで乾燥し、これを濾過した後、溶媒を減圧下で留去した。得られた反応混合物を、ヘキサンとクロロホルムの混合溶媒を移動相とするシリカゲルカラムクロマトグラフィーで分離精製することで、化合物A3を透明なオイルで得た(1.9g,収率65%)。得られた化合物A3をH−NMR法を用いて同定した。化合物A3の物性データは次の通りである。
1H-NMR(400MHZ,CDCl3,TMS) δ 10.03 (s, 1H) 7.64 (d, J=4.9Hz, 1H), 6.97 (d, J=4.9Hz, 1H), 2.88 (d, J=7.3Hz, 2H), 1.25 (m, 9H), 0.88 (m, 6H)
【0060】
【化6】
【0061】
<2,5−ビス(3(2−エチルヘキシル)チオフェン−2−イル)チアゾロ[5,4−d]チアゾール(化合物A4)の合成>
下記反応式(5)に示す反応により、2,5−ビス(3(2−エチルヘキシル)チオフェン−2−イル)チアゾロ[5,4−d]チアゾール(化合物A4)を合成した。具体的には、窒素雰囲気下で、化合物A3(2g,8.9mmol)及びルベアン酸(487mg,4.05mmol)を、ディーンスタークを取り付けたフラスコに加え、200℃に加熱して5時間攪拌した。その後、反応混合物をクロロホルムで抽出し、反応混合物を含む有機層を飽和食塩水、及び水で洗浄した。有機層を無水硫酸マグネシウムで乾燥し、これを濾過した後、溶媒を減圧下で留去した。得られた反応混合物を、ヘキサンとクロロホルムの混合溶媒を移動相とするシリカゲルカラムクロマトグラフィーで分離精製することで、化合物A4を黄色固体で得た(624mg,収率29%)。得られた化合物A4をH−NMR法を用いて同定した。化合物A4の物性データは次の通りである。
1H-NMR(400MHZ,CDCl3,TMS) δ 7.34 (d, J=5.4Hz, 2H), 6.95 (d, J=5.4Hz, 2H), 2.93 (d, J=7.4Hz, 4H), 1.25 (m, 18H), 0.88 (m, 12H)
【0062】
【化7】
【0063】
<2,5−ビス(5−ブロモ−3(2−エチルヘキシル)チオフェン−2−イル)チアゾロ[5,4−d]チアゾール(化合物A5)の合成>
下記反応式(6)に示す反応により、2,5−ビス(5−ブロモ−3(2−エチルヘキシル)チオフェン−2−イル)チアゾロ[5,4−d]チアゾール(化合物A5)を合成した。具体的には、窒素雰囲気下で、化合物A4(440mg,0.83mmol)、NBS(445mg,2.5mmol)及びクロロホルム(50ml)をフラスコに加え、3時間還流した。その後、反応溶液を室温まで冷却した。続いて、反応溶液に飽和炭酸水素ナトリウム水溶液(50ml)を加え、反応混合物をクロロホルムで抽出し、反応混合物を含む有機層を飽和食塩水、及び水で洗浄した。有機層を無水硫酸マグネシウムで乾燥し、これを濾過した後、溶媒を減圧下で留去した。得られた反応混合物を、ヘキサンとクロロホルムの混合溶媒を移動相とするシリカゲルカラムクロマトグラフィーで分離精製することで、化合物A5を黄色固体で得た(468mg,収率82%)。得られた化合物A5をH−NMR法を用いて同定した。化合物A5の物性データは次の通りである。
1H-NMR(400MHZ,CDCl3,TMS) δ 6.90 (d, J=5.4Hz, 2H), 2.84 (d, J=7.5Hz, 4H), 1.25 (m, 18H), 0.88 (m, 12H)
【0064】
【化8】
【0065】
<2,5−ビス((3(2−エチルヘキシル)−5−トリメチルスタニル)チオフェン−2−イル)チアゾロ[5,4−d]チアゾール(化合物A6)の合成>
下記反応式(7)に示す反応により、2,5−ビス((3(2−エチルヘキシル)−5−トリメチルスタニル)チオフェン−2−イル)チアゾロ[5,4−d]チアゾール(化合物A6)を合成した。具体的には、窒素雰囲気下で、化合物A5(344mg,0.5mmol)及びTHF(20ml)をフラスコに加え、反応溶液を−78℃まで冷却した。その後、n−ブチルリチウム(n−BuLi)(1.25mmol,0.78ml,1.6M)をフラスコ内に滴下し、2時間、同温で攪拌した。続いて、塩化トリメチルスズ(MeSnCl)(274mg,1.4mmol)をフラスコに加え、室温まで昇温し、さらに1時間攪拌した。
【0066】
その後、反応溶液に水を加え、反応混合物をクロロホルムで抽出し、反応混合物を含む有機層を飽和食塩水、及び水で洗浄した。有機層を無水硫酸マグネシウムで乾燥し、これを濾過した後、溶媒を減圧下で留去した。得られた反応混合物を、ヘキサンを移動相とするアルミナカラムクロマトグラフィーで分離精製することで、化合物A6を黄色固体で得た(320mg,収率72%)。得られた化合物A6をH−NMR法を用いて同定した。化合物A6の物性データは次の通りである。
1H-NMR(400MHZ,CDCl3,TMS) δ 7.03 (d, J=5.4Hz, 2H), 2.96 (d, J=7.5Hz, 4H), 1.25 (m, 18H), 0.88 (m, 12H), 0.40 (s, 18H)
【0067】
【化9】
【0068】
<3−(2−ヘキシルデシル)チオフェン(化合物A7)の合成>
化合物A1と同様の手順で合成を行い、下記反応式(8)に示す反応により、3−(2−ヘキシルデシル)チオフェン(化合物A7)を無色の液体で得た(16g,収率52%)。得られた化合物A7をH−NMR法を用いて同定した。化合物A7の物性データは次の通りである。
1H-NMR(400MHZ,CDCl3,TMS) δ 7.23 (dd, J=4.9Hz, 1.0Hz, 1H), 6.93 (d, J=4.9Hz, 1H), 6.92 (d, J=1.0Hz, 1H), 2.55 (d, J=6.8Hz, 2H), 1.25 (m, 25H), 0.88 (m, 6H)
【0069】
【化10】
【0070】
<3−(2−ヘキシルデシル)−5−チオフェンアルデヒド(化合物A8)の合成>
下記反応式(9)に示す反応により、3−(2−ヘキシルデシル)−5−チオフェンアルデヒド(化合物A8)を合成した。具体的には、窒素雰囲気下で、化合物A7(3.08g,10mmol)及びTHF(150mL)をフラスコに加え、?78℃まで冷却した。その後、リチウムジイソプロピルアミド(LDA)(11mmol,14.7mL,0.75M)をフラスコ内に滴下し、1時間攪拌した。続いて、DMF(4.2g,56mmol)をフラスコに加え、室温まで昇温した後、さらに1時間攪拌した。
【0071】
反応溶液に水を加え、反応混合物を酢酸エチルで抽出し、反応混合物を含む有機層を飽和食塩水、及び水で洗浄した。有機層を無水硫酸マグネシウムで乾燥し、これを濾過した後、溶媒を減圧下で留去した。得られた粗生成物を、塩化メチレンを移動相とするアルミナカラムクロマトグラフィーで分離精製することで、化合物A8を無色の液体で得た(2.8g,収率84%)。得られた化合物A8をH−NMR法を用いて同定した。化合物A8の物性データは次の通りである。
1H-NMR(400MHZ,CDCl3,TMS) δ 9.87 (s, 1H), 7.55 (s, 1H), 7.33 (s, 1H), 2.56 (d, J=6.8Hz, 2H), 1.25 (m, 17H), 0.88 (m, 6H)
【0072】
【化11】
【0073】
<2,5−ビス(4(2−ヘキシルデシル)チオフェン−2−イル)チアゾロ[5,4−d]チアゾール(化合物A9)の合成>
下記反応式(10)に示す反応により、2,5−ビス(4(2−ヘキシルデシル)チオフェン−2−イル)チアゾロ[5,4−d]チアゾール(化合物A9)を合成した。具体的には、窒素雰囲気下で、化合物A9(2g,5.9mmol)及びルベアン酸(538mg,2.7mmol)を、ディーンスタークを取り付けたフラスコに加え、200℃に加熱して5時間攪拌した。その後、反応混合物をクロロホルムで抽出し、反応混合物を含む有機層を飽和食塩水、及び水で洗浄した。有機層を無水硫酸マグネシウムで乾燥し、これを濾過した後、溶媒を減圧下で留去した。得られた反応混合物を、ヘキサンとクロロホルムの混合溶媒を移動相とするシリカゲルカラムクロマトグラフィーで分離精製することで、化合物A9を黄色固体で得た(612mg,収率30%)。得られた化合物A9をH−NMR法を用いて同定した。化合物A9の物性データは次の通りである。
1H-NMR (400MHZ, CDCl3, TMS) δ 7.36 (s, 2H), 7.01 (s, 2H), 2.54 (d, J=6.8Hz, 4H), 1.25 (m, 50H), 0.88 (m, 12H)
【0074】
【化12】
【0075】
<2,5−ビス(5−ブロモ−4(2−ヘキシルデシル)チオフェン−2−イル)チアゾロ[5,4−d]チアゾール(化合物A10)の合成>
下記反応式(11)に示す反応により、2,5−ビス(5−ブロモ−4(2−ヘキシルデシル)チオフェン−2−イル)チアゾロ[5,4−d]チアゾール(化合物A10)を合成した。具体的には、窒素雰囲気下で、化合物A9(600mg,0.80mmol)、NBS(427mg,2.4mmol)及びクロロホルム(50mL)をフラスコに加え、3時間還流した。その後、室温まで冷却した。
【0076】
続いて、反応溶液に飽和炭酸水素ナトリウム水溶液(50mL)を加え、反応混合物をクロロホルムで抽出し、反応混合物を含む有機層を飽和食塩水、及び水で洗浄した。有機層を無水硫酸マグネシウムで乾燥し、これを濾過した後、溶媒を減圧下で留去した。得られた反応混合物を、ヘキサンとクロロホルムの混合溶媒を移動相とするシリカゲルカラムクロマトグラフィーで分離精製することで、化合物A10を黄色固体で得た(614mg,収率84%)。得られた化合物A10をH−NMR法を用いて同定した。化合物A10の物性データは次の通りである。
1H-NMR(400MHZ,CDCl3,TMS) δ 7.21 (s, 2H), 2.51 (d, J=6.8Hz, 4H), 1.25 (m, 50H), 0.88 (m, 12H)
【0077】
【化13】
【0078】
<PTzBT−EHHDi(高分子化合物P1)の合成>
下記反応式(12)に示す反応により、PTzBT−EHHDi(高分子化合物P1)を合成した。具体的には、窒素雰囲気下で、反応バイアルにトルエン(5mL)を加え、30分間脱気した。続いて、反応バイアルにテトラキス(トリフェニルホスフィン)パラジウム(Pd(PPh)(1.8mg,0.002mmol)、化合物A10(臭素化合物)(85.6mg,0.1mmol)及び化合物A6(スズ化合物)(91.0mg,0.1mmol)を加え、μ−ウェーブリアクター(initiator2.5、Biotage社製)を用いて、180℃にて1時間反応させた。続いて、反応溶液をメタノール(100mL)と塩酸(5mL)の混合溶液に注ぎ、再沈殿させた。そして、得られた反応混合物をメタノール、ヘキサンにて加熱洗浄することで精製した。その後、反応混合物をクロロホルムに溶解し、メタノールに再沈殿させることで、高分子化合物P1を青紫色の固体として得た(101mg,収率79%)。高分子化合物P1の数平均分子量は27000であった。
【0079】
【化14】
【0080】
(実施例2)
実施例2に係る高分子化合物P2(PTzBT−BOBOi)の合成方法について、以下に説明する。
【0081】
<3−(2−ブチルオクチル)チオフェン(化合物B1)の合成>
下記反応式(13)に示す反応により、3−(2−ブチルオクチル)チオフェン(化合物B1)を合成した。具体的には、フラスコにマグネシウム(2.92g,0.12mol)を加え、よく脱気して系内を窒素雰囲気下とした。続いて、THF(10ml)をフラスコに加えた。1−ブロモ−2−ブチルオクタン(27.4g,0.12mol)を、THFを還流させながらフラスコ内に滴下し、滴下した後も3時間還流を継続した。その後、THF(190ml)をフラスコに加え、室温まで冷却した。以上の工程によりグリニャール試薬(R−MgBr)を合成した。
【0082】
別のフラスコにNi(dppp)Cl(542mg,1mmol)を加え、よく脱気して系内を窒素雰囲気下とした。続いて、THF(100ml)をフラスコに加えて0℃に冷却した。次いで、3−ブロモチオフェン(9.5ml,16.3g,0.1mol)をフラスコに加え、合成したグリニャール試薬を滴下し、室温に戻して5時間攪拌した。その後、反応溶液に1N塩酸(20ml)を加え、反応混合物をヘキサンで抽出し、反応混合物を含む有機層を飽和食塩水、及び水で洗浄した。有機層を無水硫酸マグネシウムで乾燥し、これを濾過した後、溶媒を減圧下で留去した。得られた反応混合物を減圧蒸留することで、化合物B1を透明なオイルで得た(15.7g,収率62%)。得られた化合物B1をH−NMR法を用いて同定した。化合物B1の物性データは次の通りである。
1H-NMR(400MHZ,CDCl3,TMS) δ 7.23 (dd, J=4.9Hz, 1.0Hz, 1H), 6.93 (d, J=4.9Hz, 1H), 6.92 (d, J=1.0Hz, 1H), 2.55 (d, J=6.8Hz, 2H), 1.25 (m, 17H), 0.88 (m, 6H)
【0083】
【化15】
【0084】
<3−(2−ブチルオクチル)−5−チオフェンアルデヒド(化合物B2)の合成>
下記反応式(14)に示す反応により、3−(2−ブチルオクチル)−5−チオフェンアルデヒド(化合物B2)を合成した。具体的には、窒素雰囲気下で、化合物B1(2g,7.9mmol)及びTHF(100mL)をフラスコに加え、−78℃まで冷却した。その後、LDA(8.7mmol,11.6mL,0.75M)を滴下し、1時間攪拌した。続いて、DMF(3.2g,43.5mmol)を加え、室温まで昇温した後、さらに1時間攪拌した。
【0085】
その後、反応溶液に水を加え、反応混合物を酢酸エチルで抽出し、反応混合物を含む有機層を飽和食塩水、及び水で洗浄した。有機層を無水硫酸マグネシウムで乾燥し、これを濾過した後、溶媒を減圧下で留去した。得られた粗生成物を、塩化メチレンを移動相とするアルミナカラムクロマトグラフィーで分離精製することで、化合物B2を無色の液体で得た(2.1g,収率85%)。得られた化合物B2をH−NMR法を用いて同定した。化合物B2の物性データは次の通りである。
1H-NMR(400MHZ,CDCl3,TMS) δ 9.87 (s, 1H), 7.55 (s, 1H), 7.33 (s, 1H), 2.56 (d, J=6.8Hz, 2H), 1.25 (m, 17H), 0.88 (m, 6H)
【0086】
【化16】
【0087】
<2,5−ビス(4(2−ブチルオクチル)チオフェン−2−イル)チアゾロ[5,4−d]チアゾール(化合物B3)の合成>
下記反応式(15)に示す反応により、2,5−ビス(4(2−ブチルオクチル)チオフェン−2−イル)チアゾロ[5,4−d]チアゾール(化合物B3)を合成した。具体的には、窒素雰囲気下で、化合物B2(3.0g,8.9mmol)及びルベアン酸(487mg,4.05mmol)を、ディーンスタークを取り付けたフラスコに加え、200℃に加熱して5時間攪拌した。その後、反応混合物をクロロホルムで抽出し、反応混合物を含む有機層を飽和食塩水、及び水で洗浄した。有機層を無水硫酸マグネシウムで乾燥し、これを濾過した後、溶媒を減圧下で留去した。得られた反応混合物を、ヘキサンとクロロホルムの混合溶媒を移動相とするシリカゲルカラムクロマトグラフィーで分離精製することで、化合物B3を黄色固体で得た(720mg,収率32%)。得られた化合物B3をH−NMR法を用いて同定した。化合物B3の物性データは次の通りである。
1H-NMR (400MHZ, CDCl3, TMS) δ 7.36 (s, 1H), 7.01 (s, 1H), 2.54 (d, J=6.8Hz, 2H), 1.25 (m, 17H), 0.88 (m, 6H)
【0088】
【化17】
【0089】
<2,5−ビス(5−ブロモ−4(2−ブチルオクチル)チオフェン−2−イル)チアゾロ[5,4−d]チアゾール(化合物B4)の合成>
下記反応式(16)に示す反応により、2,5−ビス(5−ブロモ−4(2−ブチルオクチル)チオフェン−2−イル)チアゾロ[5,4−d]チアゾール(化合物B4)を合成した。具体的には、窒素雰囲気下で、化合物B3(630mg,0.83mmol)、NBS(445mg,2.5mmol)及びクロロホルム(50mL)をフラスコに加え、3時間還流した。その後、室温まで冷却した。
【0090】
続いて、反応溶液に飽和炭酸水素ナトリウム水溶液(50mL)を加え、反応混合物をクロロホルムで抽出し、反応混合物を含む有機層を飽和食塩水、及び水で洗浄した。有機層を無水硫酸マグネシウムで乾燥し、これを濾過した後、溶媒を減圧下で留去した。得られた反応混合物を、ヘキサンとクロロホルムの混合溶媒を移動相とするシリカゲルカラムクロマトグラフィーで分離精製することで、化合物B4を黄色固体で得た(635mg,収率84%)。得られた化合物B4をH−NMR法を用いて同定した。化合物B4の物性データは次の通りである。
1H-NMR(400MHZ,CDCl3,TMS) δ 7.21 (s, 1H), 2.51 (d, J=6.8Hz, 2H), 1.25 (m, 17H), 0.88 (m, 6H)
【0091】
【化18】
【0092】
<2−ブロモ−3−(2−ブチルオクチル)チオフェン(化合物B5)の合成>
下記反応式(17)に示す反応により、2−ブロモ−3−(2−ブチルオクチル)チオフェン(化合物B5)を合成した。具体的には、窒素雰囲気下で、化合物B1(10g,40mmol)及びDMF(120ml)をフラスコに加え、0℃に冷却した。NBS(7.1g,40mmol)をフラスコにゆっくり加え、その後、室温まで昇温し、12時間攪拌した。
【0093】
その後、反応溶液に飽和炭酸水素ナトリウム水溶液(50ml)を加え、反応混合物をヘキサンで抽出し、反応混合物を含む有機層を飽和食塩水、及び水で洗浄した。有機層を無水硫酸マグネシウムで乾燥し、これを濾過した後、溶媒を減圧下で留去した。得られた反応混合物を、ヘキサンを移動相とするシリカゲルカラムクロマトグラフィーで分離精製することで、化合物B5を透明なオイルで得た(13.1g,収率99%)。得られた化合物B5をH−NMR法を用いて同定した。化合物B5の物性データは次の通りである。
1H-NMR(400MHZ,CDCl3,TMS) δ 7.17 (d, J=5.4Hz, 1H), 6.75 (d, J=5.4Hz, 1H), 2.49 (d, J=7.0Hz, 2H), 1.25 (m, 17H), 0.88 (m, 6H)
【0094】
【化19】
【0095】
<3−(2−ブチルオクチル)−2チオフェンアルデヒド(化合物B6)の合成>
下記反応式(18)に示す反応により、3−(2−ブチルオクチル)−2チオフェンアルデヒド(化合物B6)を合成した。具体的には、フラスコにマグネシウム(345mg,14.2mmol)を加え、よく脱気して系内を窒素雰囲気下とした。続いて、THF(10ml)をフラスコに加えた。そして、化合物B5(4.27g,12.9mmol)を、THFを還流させながらフラスコ内に滴下し、滴下した後も3時間還流を継続した。その後、THF(100ml)をフラスコに加え、0℃まで冷却した。続いて、DMF(5ml)を滴下し、室温まで昇温して1時間攪拌した。
【0096】
反応溶液に1N塩酸(30ml)を加え、反応混合物をクロロホルムで抽出し、反応混合物を含む有機層を飽和食塩水、及び水で洗浄した。有機層を無水硫酸マグネシウムで乾燥し、これを濾過した後、溶媒を減圧下で留去した。得られた反応混合物を、ヘキサンとクロロホルムの混合溶媒を移動相とするシリカゲルカラムクロマトグラフィーで分離精製することで、化合物B6を透明なオイルで得た(2.42g,収率67%)。得られた化合物B6をH−NMR法を用いて同定した。化合物B6の物性データは次の通りである。
1H-NMR(400MHZ,CDCl3,TMS) δ 10.03 (s, 1H) 7.64 (d, J=4.9Hz, 1H), 6.97 (d, J=4.9Hz, 1H), 2.88 (d, J=7.3Hz, 2H), 1.25 (m, 17H), 0.88 (m, 6H)
【0097】
【化20】
【0098】
<2,5−ビス(3(2−ブチルオクチル)チオフェン−2−イル)チアゾロ[5,4−d]チアゾール(化合物B7)の合成>
下記反応式(19)に示す反応により、2,5−ビス(3(2−ブチルオクチル)チオフェン−2−イル)チアゾロ[5,4−d]チアゾール(化合物B7)を合成した。具体的には、窒素雰囲気下で、化合物B6(2.5g,8.9mmol)及びルベアン酸(487mg,4.05mmol)を、ディーンスタークを取り付けたフラスコに加え、200℃に加熱して5時間攪拌した。
【0099】
その後、反応混合物をクロロホルムで抽出し、反応混合物を含む有機層を飽和食塩水、及び水で洗浄した。有機層を無水硫酸マグネシウムで乾燥し、これを濾過した後、溶媒を減圧下で留去した。得られた反応混合物を、ヘキサンとクロロホルムの混合溶媒を移動相とするシリカゲルカラムクロマトグラフィーで分離精製することで、化合物B7を黄色固体で得た(781mg,収率30%)。得られた化合物B7をH−NMR法を用いて同定した。化合物B7の物性データは次の通りである。
1H-NMR(400MHZ,CDCl3,TMS) δ 7.34 (d, J=5.4Hz, 2H), 6.95 (d, J=5.4Hz, 2H), 2.93 (d, J=7.4Hz, 4H), 1.25 (m, 34H), 0.88 (m, 12H)
【0100】
【化21】
【0101】
<2,5−ビス(5−ブロモ−3(2−ブチルオクチル)チオフェン−2−イル)チアゾロ[5,4−d]チアゾール(化合物B8)の合成>
下記反応式(20)に示す反応により、2,5−ビス(5−ブロモ−3(2−ブチルオクチル)チオフェン−2−イル)チアゾロ[5,4−d]チアゾール(化合物B8)を合成した。具体的には、窒素雰囲気下で、化合物B7(643mg,1.0mmol)、NBS(534mg,3.0mmol)及びクロロホルム(60ml)をフラスコに加え、3時間還流した。その後、反応溶液を室温まで冷却した。
【0102】
続いて、反応溶液に飽和炭酸水素ナトリウム水溶液(50ml)を加え、反応混合物をクロロホルムで抽出し、反応混合物を含む有機層を飽和食塩水、及び水で洗浄した。有機層を無水硫酸マグネシウムで乾燥し、これを濾過した後、溶媒を減圧下で留去した。得られた反応混合物を、ヘキサンとクロロホルムの混合溶媒を移動相とするシリカゲルカラムクロマトグラフィーで分離精製することで、化合物B8を黄色固体で得た(665mg,収率83%)。得られた化合物B8をH−NMR法を用いて同定した。化合物B8の物性データは次の通りである。
1H-NMR(400MHZ,CDCl3,TMS) δ 6.90 (d, J=5.4Hz, 2H), 2.84 (d, J=7.5Hz, 4H), 1.25 (m, 34H), 0.88 (m, 12H)
【0103】
【化22】
【0104】
<2,5−ビス((3(2−ブチルオクチル)−5−トリメチルスタニル)チオフェン−2−イル)チアゾロ[5,4−d]チアゾール(化合物B9)の合成>
下記反応式(21)に示す反応により、2,5−ビス((3(2−ブチルオクチル)−5−トリメチルスタニル)チオフェン−2−イル)チアゾロ[5,4−d]チアゾール(化合物B9)を合成した。具体的には、窒素雰囲気下で、化合物B8(400mg,0.5mmol)及びTHF(20ml)を加え、−78℃まで冷却した。その後、n−BuLi(1.25mmol,0.78ml,1.6M)をフラスコ内に滴下し、1時間、同温で攪拌した。続いて、MeSnCl(274mg,1.4mmol)をフラスコに加え、室温まで昇温し、さらに1時間攪拌した。
【0105】
その後、反応溶液に水を加え、反応混合物をクロロホルムで抽出し、反応混合物を含む有機層を飽和食塩水、及び水で洗浄した。有機層を無水硫酸マグネシウムで乾燥し、これを濾過した後、溶媒を減圧下で留去した。得られた反応混合物を、ヘキサンを移動相とするアルミナカラムクロマトグラフィーで分離精製することで、化合物B9を黄色固体で得た(358mg,収率74%)。得られた化合物B9をH−NMR法を用いて同定した。化合物B9の物性データは次の通りである。
1H-NMR(400MHZ,CDCl3,TMS) δ 7.03 (d, J=5.4Hz, 2H), 2.96 (d, J=7.5Hz, 4H), 1.25 (m, 34H), 0.88 (m, 12H), 0.40 (s, 18H)
【0106】
【化23】
【0107】
<PTzBT−BOBOi(高分子化合物P2)の合成>
下記反応式(22)に示す反応により、PTzBT−BOBOi(高分子化合物P2)を合成した。具体的には、窒素雰囲気下で、反応バイアルにトルエン(5mL)を加え、30分間脱気した。続いて、反応バイアルにPd(PPh(1.8mg,0.002mmol)、化合物B9(スズ化合物)(96.9mg,0.1mmol)及び化合物B4(臭素化合物)(80.0mg,0.1mmol)を加え、μ−ウェーブリアクター(initiator2.5、Biotage社製)を用いて、180℃にて1時間反応させた。続いて、反応溶液をメタノール(100mL)と塩酸(5mL)の混合溶液に注ぎ、再沈殿させた。そして、得られた反応混合物をメタノール、ヘキサンにて加熱洗浄することで精製した。その後、反応混合物をクロロホルムに溶解し、メタノールに再沈殿させることで、高分子化合物P2を青紫色の固体として得た(105mg,収率82%)。高分子化合物P2の数平均分子量は34000であった。
【0108】
【化24】
【0109】
(比較例1)
比較例1に係る高分子化合物P3(PTzBT−EHHD)の合成方法について、以下に説明する。
【0110】
<2−ブロモ−3−(2−ヘキシルデシル)チオフェン(化合物C1)の合成>
下記反応式(23)に示す反応により、2−ブロモ−3−(2−ヘキシルデシル)チオフェン(化合物C1)を合成した。具体的には、窒素雰囲気下で、化合物A7(15.7g,51mmol)及びDMF(150ml)をフラスコに加え、0℃まで冷却した。NBS(9.05g,51mmol)をフラスコにゆっくり加え、その後、室温まで昇温し、12時間攪拌した。
【0111】
その後、反応溶液に飽和炭酸水素ナトリウム水溶液(50ml)を加え、反応混合物をヘキサンで抽出し、反応混合物を含む有機層を飽和食塩水、及び水で洗浄した。有機層を無水硫酸マグネシウムで乾燥し、これを濾過した後、溶媒を減圧下で留去した。得られた反応混合物を、ヘキサンを移動相とするシリカゲルカラムクロマトグラフィーで分離精製することで、化合物C1を透明なオイルで得た(19.6g,収率99%)。得られた化合物C1をH−NMR法を用いて同定した。化合物C1の物性データは次の通りである。
1H-NMR(400MHZ,CDCl3,TMS) δ 7.17 (d, J=5.4Hz, 1H), 6.75 (d, J=5.4Hz, 1H), 2.49 (d, J=7.0Hz, 2H), 1.25 (m, 25H), 0.88 (m, 6H)
【0112】
【化25】
【0113】
<3−(2−ヘキシルデシル)−2チオフェンアルデヒド(化合物C2)の合成>
下記反応式(24)に示す反応により、3−(2−ヘキシルデシル)−2チオフェンアルデヒド(化合物C2)を合成した。具体的には、フラスコにマグネシウム(345mg,14.2mmol)を加え、よく脱気して系内を窒素雰囲気下とした。続いて、THF(10ml)をフラスコに加えた。そして、化合物C1(5.0g,12.9mmol)を、THFを還流させながらフラスコ内に滴下し、滴下した後も3時間還流を継続した。その後、THF(100ml)をフラスコに加え、0℃まで冷却した。続いて、DMF(5ml)を滴下し、室温まで昇温して1時間攪拌した。
【0114】
反応溶液に1N塩酸(30ml)を加え、反応混合物をクロロホルムで抽出し、反応混合物を含む有機層を飽和食塩水、及び水で洗浄した。有機層を無水硫酸マグネシウムで乾燥し、これを濾過した後、溶媒を減圧下で留去した。得られた反応混合物を、ヘキサンとクロロホルムの混合溶媒を移動相とするシリカゲルカラムクロマトグラフィーで分離精製することで、化合物C2を透明なオイルで得た(2.8g,収率65%)。得られた化合物C2をH−NMR法を用いて同定した。化合物C2の物性データは次の通りである。
1H-NMR(400MHZ,CDCl3,TMS) δ 10.03 (s, 1H) 7.64 (d, J=4.9Hz, 1H), 6.97 (d, J=4.9Hz, 1H), 2.88 (d, J=7.3Hz, 2H), 1.25 (m, 25H), 0.88 (m, 6H)
【0115】
【化26】
【0116】
<2,5−ビス(3(2−ヘキシルデシル)チオフェン−2−イル)チアゾロ[5,4−d]チアゾール(化合物C3)の合成>
下記反応式(25)に示す反応により、2,5−ビス(3(2−ヘキシルデシル)チオフェン−2−イル)チアゾロ[5,4−d]チアゾール(化合物C3)を合成した。具体的には、窒素雰囲気下で、化合物C2(3.0g,8.9mmol)及びルベアン酸(487mg,4.05mmol)を、ディーンスタークを取り付けたフラスコに加え、200℃に加熱して5時間攪拌した。その後、反応混合物をクロロホルムで抽出し、反応混合物を含む有機層を飽和食塩水、及び水で洗浄した。有機層を無水硫酸マグネシウムで乾燥し、これを濾過した後、溶媒を減圧下で留去した。得られた反応混合物を、ヘキサンとクロロホルムの混合溶媒を移動相とするシリカゲルカラムクロマトグラフィーで分離精製することで、化合物C3を黄色固体で得た(826mg,収率27%)。得られた化合物C3をH−NMR法を用いて同定した。化合物C3の物性データは次の通りである。
1H-NMR(400MHZ,CDCl3,TMS) δ 7.34 (d, J=5.4Hz, 1H), 6.95 (d, J=5.4Hz, 1H), 2.93 (d, J=7.4Hz, 2H), 1.25 (m, 25H), 0.88 (m, 6H)
【0117】
【化27】
【0118】
<2,5−ビス(5−ブロモ−3(2−ヘキシルデシル)チオフェン−2−イル)チアゾロ[5,4−d]チアゾール(化合物C4)の合成>
下記反応式(26)に示す反応により、2,5−ビス(5−ブロモ−3(2−ヘキシルデシル)チオフェン−2−イル)チアゾロ[5,4−d]チアゾール(化合物C4)を合成した。具体的には、窒素雰囲気下で、化合物C3(600mg,0.80mmol)、NBS(427mg,2.4mmol)及びクロロホルム(50ml)をフラスコに加え、3時間還流した。その後、反応溶液を室温まで冷却した。
【0119】
続いて、反応溶液に飽和炭酸水素ナトリウム水溶液(50ml)を加え、反応混合物をクロロホルムで抽出し、反応混合物を含む有機層を飽和食塩水、及び水で洗浄した。有機層を無水硫酸マグネシウムで乾燥し、これを濾過した後、溶媒を減圧下で留去した。得られた反応混合物を、ヘキサンとクロロホルムの混合溶媒を移動相とするシリカゲルカラムクロマトグラフィーで分離精製することで、化合物C4を黄色固体で得た(613mg,収率84%)。得られた化合物C4をH−NMR法を用いて同定した。化合物C4の物性データは次の通りである。
1H-NMR(400MHZ,CDCl3,TMS) δ 7.21 (s, J=5.4Hz, 2H), 2.51 (d, J=6.8Hz, 4H), 1.25 (m, 50H), 0.88 (m, 12H)
【0120】
【化28】
【0121】
<PTzBT−EHHD(高分子化合物P3)の合成>
下記反応式(27)に示す反応により、PTzBT−EHHD(高分子化合物P3)を合成した。具体的には、窒素雰囲気下で、反応バイアルにクロロベンゼン(5mL)を加え、30分間脱気した。続いて、反応バイアルにトリス(ジベンジリデンアセトン)ジパラジウム(Pd(dba))(2.0mg,0.002mmol)、化合物C4(臭素化合物)(85.6mg,0.1mmol)及び化合物A6(スズ化合物)(91.3mg,0.1mmol)を加え、μ−ウェーブリアクター(initiator2.5、Biotage社製)を用いて、200℃にて10分間反応させた。続いて、反応溶液をメタノール(100mL)と塩酸(5mL)の混合溶液に注ぎ、再沈殿させた。そして、反応混合物をメタノール、ヘキサンにて加熱洗浄することで精製した。その後、反応混合物をクロロホルムに溶解し、メタノールに再沈殿させることで、高分子化合物P3を青紫色の固体として得た(109mg,収率85%)。高分子化合物P3の数平均分子量は22000であった。
【0122】
【化29】
【0123】
(比較例2)
比較例2に係る高分子化合物P4(PTzBT−BOBO)の合成方法について、以下に説明する。
【0124】
<PTzBT−BOBO(高分子化合物P4)の合成>
下記反応式(28)に示す反応により、PTzBT−BOBO(高分子化合物P4)を合成した。具体的には、窒素雰囲気下で、反応バイアルにクロロベンゼン(5mL)を加え、30分間脱気した。続いて、反応バイアルにPd(dba)(2.0mg,0.002mmol)、化合物B9(スズ化合物)(96.9mg,0.1mmol)及び化合物B8(臭素化合物)(80.0mg,0.1mmol)を加え、μ−ウェーブリアクター(initiator2.5、Biotage社製)を用いて、200℃にて10分間反応させた。続いて、反応溶液をメタノール(100mL)と塩酸(5mL)の混合溶液に注ぎ、再沈殿させた。そして、反応混合物をメタノール、ヘキサンにて加熱洗浄することで精製した。その後、反応混合物をクロロホルムに溶解し、メタノールに再沈殿することで、高分子化合物P4を青紫色の固体として得た(108mg,収率84%)。高分子化合物P4の数平均分子量は30000であった。
【0125】
【化30】
【0126】
[高分子化合物の溶解性評価]
各実施例及び各比較例の高分子化合物について、有機溶媒への溶解性を評価した。具体的には、5mLのバイアルに、各実施例及び各比較例の高分子化合物1mgと、クロロベンゼン1mLとを加えたサンプルを用意した。そして、各サンプルをホットプレートスターラー上に載置し、20℃から10℃ずつ温度を上昇させ、上昇させるたびに15分間撹拌した。撹拌後、目視でポリマーが完全に溶解したか確認した。完全な溶解が確認されるまで、温度の上昇と撹拌を繰り返し、完全に溶解した時の温度を高分子化合物の溶解温度とした。溶解温度測定の結果を表1に示す。
【0127】
【表1】
【0128】
表1に示すように、側鎖置換基の構造が同一で位置が異なる実施例1と比較例1とを比較すると、実施例1は比較例1よりも溶解温度が50℃も低下したことが確認された。同様に、側鎖置換基の構造が同一で位置が異なる実施例2と比較例2とを比較すると、実施例2は比較例2よりも溶解温度が50℃以上も低下したことが確認された。以上より、実施例1,2に係る高分子化合物P1,P2は、比較例1,2に係る高分子化合物P3,P4に比べて、有機溶媒への溶解性が高いことが確認された。
【0129】
[光電変換素子の性能評価]
各実施例及び各比較例の高分子化合物を用いて、光電変換素子を作製した。以下では適宜、実施例1の高分子化合物P1を用いて作製した光電子化合物を「実施例1の光電変換素子」と称する。実施例2、比較例1及び比較例2についても同様である。各実施例及び各比較例の光電変換素子の構造には、一例として逆層構造を採用した。その概略は下記の通りである。また、各光電変換素子の構造は、光電変換層の形態を除き共通である。
素子構造:ITO透明電極/電子輸送層(ZnO)/光電変換層(高分子化合物/PC61BM)/正孔輸送層(WO)/対向電極(Ag)
【0130】
具体的には、ITO透明電極として市販のITOガラス(面抵抗20Ω/sq以下)を用いた。そして、このITO透明電極の上に、電子輸送層としてのZnO膜を製膜した。具体的には、まずモノエタノールアミン(Sigma Aldrich社製41100)0.142mlと、2−メトキシエタノール(Sigma Aldrich社製270482)5mlとを混合した溶媒に、ZnOAc・2HO(Sigma Aldrich社製379786)500mgを溶解させ、室温で3時間攪拌して溶液を調製した。そして、この溶液80μlをITO透明電極の表面にキャストして、3000rpm、30秒のスピン塗布により成膜した。その後、塗膜を150℃で30分間加熱して乾燥させ、膜厚約20nmのZnO膜を形成した。次に、光電変換層を形成すべく、クロロベンゼン溶媒に、PC61BMと各実施例及び各比較例の高分子化合物とをそれぞれ当該溶媒100質量%に対して3.0質量%となるように加え、塗布液を作製した。この塗布液をZnO膜の上に500rpm、30秒でスピン塗布した。この後、乾燥させて光電変換層を形成した。光電変換層の膜厚は、実施例1では230nm、実施例2では220nm、比較例1及び比較例2では250nmであった。
【0131】
得られた光電変換層の上に、真空蒸着法により膜厚が約20nmになるようにWOを成膜して正孔輸送層を形成した。その後、正孔輸送層の上に、真空蒸着法により膜厚が約100nmになるようにAgを成膜して対向電極を形成した。以上の工程により、各実施例及び各比較例の光電変換素子を作製した。
【0132】
各実施例及び各比較例の光電変換素子について、室温で1000W/m疑似太陽光を照射し、それぞれのJsc(短絡電流密度)、Voc(開放電圧)、FF(Fill factor)を測定した。また、下記式に従ってPCE(光電変換効率)を算出した。
PCE(%)=Jsc(mA/cm)×Voc(V)×FF
得られた結果を表2に示す。
【0133】
【表2】
【0134】
表2に示すように、高分子化合物の側鎖置換基の構造が同一で位置が異なる実施例1と比較例1とは、同程度の光電変換効率を有することが確認された。同様に、高分子化合物の側鎖置換基の構造が同一で位置が異なる実施例2と比較例2とは、同程度の光電変換効率を有することが確認された。
【0135】
以上説明した溶解性評価の結果と、素子性能評価の結果とから、上記式(1)で表される繰り返し単位を有する高分子化合物を用いることで、光電変換素子の性能を保持しながら有機半導体の有機溶媒への溶解性を高められることが確認された。
【0136】
本発明は、上述の実施の形態に限定されるものではなく、当業者の知識に基づいて各種の設計変更等の変形を加えることも可能であり、そのような変形が加えられた実施の形態も本発明の範囲に含まれうるものである。
【符号の説明】
【0137】
10 光電変換素子、 30 第1の電極、 50 光電変換層、 52 p型有機半導体、 54 n型有機半導体、 70 第2の電極。
図1
図2
図3