【実施例】
【0050】
以下に、実施例に基づいて本発明を詳細に説明するが、本発明はこれらの実施例により何ら限定されるものではない。
【0051】
[高分子化合物の合成]
(実施例1)
実施例1に係る高分子化合物P1(PTzBT−EHHDi)の合成方法について、以下に説明する。
【0052】
<3−(2−エチルヘキシル)チオフェン(化合物A1)の合成>
下記反応式(2)に示す反応により、3−(2−エチルヘキシル)チオフェン(化合物A1)を合成した。具体的には、フラスコにマグネシウム(2.92g,0.12mol)を加え、よく脱気して系内を窒素雰囲気下とした。続いて、テトラヒドロフラン(THF)(10ml)をフラスコに加えた。1−ブロモ−2−エチルヘキサン(21.3g,0.11mol)を、THFを還流させながらフラスコ内に滴下し、滴下した後も3時間還流を継続した。その後、THF(190ml)をフラスコに加え、室温まで冷却した。以上の工程によりグリニャール試薬(R−MgBr)を合成した。
【0053】
別のフラスコにジクロロ[1,3−ビス(ジフェニルホスフィノ)プロパン]ニッケル(Ni(dppp)Cl
2)(542mg,1mmol)を加え、よく脱気して系内を窒素雰囲気下とした。続いて、THF(100ml)をフラスコに加えて0℃に冷却した。次いで、3−ブロモチオフェン(9.5ml,16.3g,0.1mol)をフラスコに加え、合成したグリニャール試薬を滴下し、室温に戻して5時間攪拌した。その後、反応溶液に1N塩酸(20ml)を加え、反応混合物をヘキサンで抽出し、反応混合物を含む有機層を飽和食塩水、及び水で洗浄した。有機層を無水硫酸マグネシウムで乾燥し、これを濾過した後、溶媒を減圧下で留去した。得られた反応混合物を減圧蒸留することで、化合物A1を透明なオイルで得た(12.8g,収率65%)。得られた化合物A1を
1H−NMR法を用いて同定した。化合物A1の物性データは次の通りである。
1H-NMR(400MHZ,CDCl
3,TMS) δ 7.23 (dd, J=4.9Hz, 1.0Hz, 1H), 6.93 (d, J=4.9Hz, 1H), 6.92 (d, J=1.0Hz, 1H), 2.55 (d, J=6.8Hz, 2H), 1.25 (m, 9H), 0.88 (m, 6H)
【0054】
【化4】
【0055】
<2−ブロモ−3−(2−エチルヘキシル)チオフェン(化合物A2)の合成>
下記反応式(3)に示す反応により、2−ブロモ−3−(2−エチルヘキシル)チオフェン(化合物A2)を合成した。具体的には、窒素雰囲気下で、化合物A1(10g,51mmol)及びN,N−ジメチルホルムアミド(DMF)(150mL)をフラスコに加え、0℃まで冷却した。その後、N−ブロモスクシンイミド(NBS)(9.05g,51mmol)をフラスコに加え、室温まで昇温して12時間攪拌した。
【0056】
その後、反応溶液に飽和炭酸水素ナトリウム水溶液(50ml)を加え、反応混合物をヘキサンで抽出し、反応混合物を含む有機層を飽和食塩水、及び水で洗浄した。有機層を無水硫酸マグネシウムで乾燥し、これを濾過した後、溶媒を減圧下で留去した。得られた反応混合物を、ヘキサンを移動相とするシリカゲルカラムクロマトグラフィーで分離精製することで、化合物A2を透明なオイルで得た(13.9g,収率99%)。得られた化合物A2を
1H−NMR法を用いて同定した。化合物A2の物性データは次の通りである。
1H-NMR(400MHZ,CDCl
3,TMS) δ 7.17 (d, J=5.4Hz, 1H), 6.75 (d, J=5.4Hz, 1H), 2.49 (d, J=7.0Hz, 2H), 1.25 (m, 9H), 0.88 (m, 6H)
【0057】
【化5】
【0058】
<3−(2−エチルヘキシル)−2チオフェンアルデヒド(化合物A3)の合成>
下記反応式(4)に示す反応により、3−(2−エチルヘキシル)−2チオフェンアルデヒド(化合物A3)を合成した。具体的には、フラスコにマグネシウム(345mg,14.2mmol)を加え、よく脱気して系内を窒素雰囲気下とした。続いて、THF(10ml)をフラスコに加えた。そして、化合物A2(3.6g,12.9mmol)を、THFを還流させながらフラスコ内に滴下し、滴下した後も3時間還流を継続した。その後、THF(100ml)をフラスコに加え、0℃まで冷却した。続いて、DMF(5ml)を滴下し、室温まで昇温して1時間攪拌した。
【0059】
反応溶液に1N塩酸(30ml)を加え、反応混合物をクロロホルムで抽出し、反応混合物を含む有機層を飽和食塩水、及び水で洗浄した。有機層を無水硫酸マグネシウムで乾燥し、これを濾過した後、溶媒を減圧下で留去した。得られた反応混合物を、ヘキサンとクロロホルムの混合溶媒を移動相とするシリカゲルカラムクロマトグラフィーで分離精製することで、化合物A3を透明なオイルで得た(1.9g,収率65%)。得られた化合物A3を
1H−NMR法を用いて同定した。化合物A3の物性データは次の通りである。
1H-NMR(400MHZ,CDCl
3,TMS) δ 10.03 (s, 1H) 7.64 (d, J=4.9Hz, 1H), 6.97 (d, J=4.9Hz, 1H), 2.88 (d, J=7.3Hz, 2H), 1.25 (m, 9H), 0.88 (m, 6H)
【0060】
【化6】
【0061】
<2,5−ビス(3(2−エチルヘキシル)チオフェン−2−イル)チアゾロ[5,4−d]チアゾール(化合物A4)の合成>
下記反応式(5)に示す反応により、2,5−ビス(3(2−エチルヘキシル)チオフェン−2−イル)チアゾロ[5,4−d]チアゾール(化合物A4)を合成した。具体的には、窒素雰囲気下で、化合物A3(2g,8.9mmol)及びルベアン酸(487mg,4.05mmol)を、ディーンスタークを取り付けたフラスコに加え、200℃に加熱して5時間攪拌した。その後、反応混合物をクロロホルムで抽出し、反応混合物を含む有機層を飽和食塩水、及び水で洗浄した。有機層を無水硫酸マグネシウムで乾燥し、これを濾過した後、溶媒を減圧下で留去した。得られた反応混合物を、ヘキサンとクロロホルムの混合溶媒を移動相とするシリカゲルカラムクロマトグラフィーで分離精製することで、化合物A4を黄色固体で得た(624mg,収率29%)。得られた化合物A4を
1H−NMR法を用いて同定した。化合物A4の物性データは次の通りである。
1H-NMR(400MHZ,CDCl
3,TMS) δ 7.34 (d, J=5.4Hz, 2H), 6.95 (d, J=5.4Hz, 2H), 2.93 (d, J=7.4Hz, 4H), 1.25 (m, 18H), 0.88 (m, 12H)
【0062】
【化7】
【0063】
<2,5−ビス(5−ブロモ−3(2−エチルヘキシル)チオフェン−2−イル)チアゾロ[5,4−d]チアゾール(化合物A5)の合成>
下記反応式(6)に示す反応により、2,5−ビス(5−ブロモ−3(2−エチルヘキシル)チオフェン−2−イル)チアゾロ[5,4−d]チアゾール(化合物A5)を合成した。具体的には、窒素雰囲気下で、化合物A4(440mg,0.83mmol)、NBS(445mg,2.5mmol)及びクロロホルム(50ml)をフラスコに加え、3時間還流した。その後、反応溶液を室温まで冷却した。続いて、反応溶液に飽和炭酸水素ナトリウム水溶液(50ml)を加え、反応混合物をクロロホルムで抽出し、反応混合物を含む有機層を飽和食塩水、及び水で洗浄した。有機層を無水硫酸マグネシウムで乾燥し、これを濾過した後、溶媒を減圧下で留去した。得られた反応混合物を、ヘキサンとクロロホルムの混合溶媒を移動相とするシリカゲルカラムクロマトグラフィーで分離精製することで、化合物A5を黄色固体で得た(468mg,収率82%)。得られた化合物A5を
1H−NMR法を用いて同定した。化合物A5の物性データは次の通りである。
1H-NMR(400MHZ,CDCl
3,TMS) δ 6.90 (d, J=5.4Hz, 2H), 2.84 (d, J=7.5Hz, 4H), 1.25 (m, 18H), 0.88 (m, 12H)
【0064】
【化8】
【0065】
<2,5−ビス((3(2−エチルヘキシル)−5−トリメチルスタニル)チオフェン−2−イル)チアゾロ[5,4−d]チアゾール(化合物A6)の合成>
下記反応式(7)に示す反応により、2,5−ビス((3(2−エチルヘキシル)−5−トリメチルスタニル)チオフェン−2−イル)チアゾロ[5,4−d]チアゾール(化合物A6)を合成した。具体的には、窒素雰囲気下で、化合物A5(344mg,0.5mmol)及びTHF(20ml)をフラスコに加え、反応溶液を−78℃まで冷却した。その後、n−ブチルリチウム(n−BuLi)(1.25mmol,0.78ml,1.6M)をフラスコ内に滴下し、2時間、同温で攪拌した。続いて、塩化トリメチルスズ(Me
3SnCl)(274mg,1.4mmol)をフラスコに加え、室温まで昇温し、さらに1時間攪拌した。
【0066】
その後、反応溶液に水を加え、反応混合物をクロロホルムで抽出し、反応混合物を含む有機層を飽和食塩水、及び水で洗浄した。有機層を無水硫酸マグネシウムで乾燥し、これを濾過した後、溶媒を減圧下で留去した。得られた反応混合物を、ヘキサンを移動相とするアルミナカラムクロマトグラフィーで分離精製することで、化合物A6を黄色固体で得た(320mg,収率72%)。得られた化合物A6を
1H−NMR法を用いて同定した。化合物A6の物性データは次の通りである。
1H-NMR(400MH
Z,CDCl
3,TMS) δ 7.03 (d, J=5.4Hz, 2H), 2.96 (d, J=7.5Hz, 4H), 1.25 (m, 18H), 0.88 (m, 12H), 0.40 (s, 18H)
【0067】
【化9】
【0068】
<3−(2−ヘキシルデシル)チオフェン(化合物A7)の合成>
化合物A1と同様の手順で合成を行い、下記反応式(8)に示す反応により、3−(2−ヘキシルデシル)チオフェン(化合物A7)を無色の液体で得た(16g,収率52%)。得られた化合物A7を
1H−NMR法を用いて同定した。化合物A7の物性データは次の通りである。
1H-NMR(400MHZ,CDCl
3,TMS) δ 7.23 (dd, J=4.9Hz, 1.0Hz, 1H), 6.93 (d, J=4.9Hz, 1H), 6.92 (d, J=1.0Hz, 1H), 2.55 (d, J=6.8Hz, 2H), 1.25 (m, 25H), 0.88 (m, 6H)
【0069】
【化10】
【0070】
<3−(2−ヘキシルデシル)−5−チオフェンアルデヒド(化合物A8)の合成>
下記反応式(9)に示す反応により、3−(2−ヘキシルデシル)−5−チオフェンアルデヒド(化合物A8)を合成した。具体的には、窒素雰囲気下で、化合物A7(3.08g,10mmol)及びTHF(150mL)をフラスコに加え、?78℃まで冷却した。その後、リチウムジイソプロピルアミド(LDA)(11mmol,14.7mL,0.75M)をフラスコ内に滴下し、1時間攪拌した。続いて、DMF(4.2g,56mmol)をフラスコに加え、室温まで昇温した後、さらに1時間攪拌した。
【0071】
反応溶液に水を加え、反応混合物を酢酸エチルで抽出し、反応混合物を含む有機層を飽和食塩水、及び水で洗浄した。有機層を無水硫酸マグネシウムで乾燥し、これを濾過した後、溶媒を減圧下で留去した。得られた粗生成物を、塩化メチレンを移動相とするアルミナカラムクロマトグラフィーで分離精製することで、化合物A8を無色の液体で得た(2.8g,収率84%)。得られた化合物A8を
1H−NMR法を用いて同定した。化合物A8の物性データは次の通りである。
1H-NMR(400MH
Z,CDCl
3,TMS) δ 9.87 (s, 1H), 7.55 (s, 1H), 7.33 (s, 1H), 2.56 (d, J=6.8Hz, 2H), 1.25 (m, 17H), 0.88 (m, 6H)
【0072】
【化11】
【0073】
<2,5−ビス(4(2−ヘキシルデシル)チオフェン−2−イル)チアゾロ[5,4−d]チアゾール(化合物A9)の合成>
下記反応式(10)に示す反応により、2,5−ビス(4(2−ヘキシルデシル)チオフェン−2−イル)チアゾロ[5,4−d]チアゾール(化合物A9)を合成した。具体的には、窒素雰囲気下で、化合物A9(2g,5.9mmol)及びルベアン酸(538mg,2.7mmol)を、ディーンスタークを取り付けたフラスコに加え、200℃に加熱して5時間攪拌した。その後、反応混合物をクロロホルムで抽出し、反応混合物を含む有機層を飽和食塩水、及び水で洗浄した。有機層を無水硫酸マグネシウムで乾燥し、これを濾過した後、溶媒を減圧下で留去した。得られた反応混合物を、ヘキサンとクロロホルムの混合溶媒を移動相とするシリカゲルカラムクロマトグラフィーで分離精製することで、化合物A9を黄色固体で得た(612mg,収率30%)。得られた化合物A9を
1H−NMR法を用いて同定した。化合物A9の物性データは次の通りである。
1H-NMR (400MH
Z, CDCl
3, TMS) δ 7.36 (s, 2H), 7.01 (s, 2H), 2.54 (d, J=6.8Hz, 4H), 1.25 (m, 50H), 0.88 (m, 12H)
【0074】
【化12】
【0075】
<2,5−ビス(5−ブロモ−4(2−ヘキシルデシル)チオフェン−2−イル)チアゾロ[5,4−d]チアゾール(化合物A10)の合成>
下記反応式(11)に示す反応により、2,5−ビス(5−ブロモ−4(2−ヘキシルデシル)チオフェン−2−イル)チアゾロ[5,4−d]チアゾール(化合物A10)を合成した。具体的には、窒素雰囲気下で、化合物A9(600mg,0.80mmol)、NBS(427mg,2.4mmol)及びクロロホルム(50mL)をフラスコに加え、3時間還流した。その後、室温まで冷却した。
【0076】
続いて、反応溶液に飽和炭酸水素ナトリウム水溶液(50mL)を加え、反応混合物をクロロホルムで抽出し、反応混合物を含む有機層を飽和食塩水、及び水で洗浄した。有機層を無水硫酸マグネシウムで乾燥し、これを濾過した後、溶媒を減圧下で留去した。得られた反応混合物を、ヘキサンとクロロホルムの混合溶媒を移動相とするシリカゲルカラムクロマトグラフィーで分離精製することで、化合物A10を黄色固体で得た(614mg,収率84%)。得られた化合物A10を
1H−NMR法を用いて同定した。化合物A10の物性データは次の通りである。
1H-NMR(400MH
Z,CDCl
3,TMS) δ 7.21 (s, 2H), 2.51 (d, J=6.8Hz, 4H), 1.25 (m, 50H), 0.88 (m, 12H)
【0077】
【化13】
【0078】
<PTzBT−EHHDi(高分子化合物P1)の合成>
下記反応式(12)に示す反応により、PTzBT−EHHDi(高分子化合物P1)を合成した。具体的には、窒素雰囲気下で、反応バイアルにトルエン(5mL)を加え、30分間脱気した。続いて、反応バイアルにテトラキス(トリフェニルホスフィン)パラジウム(Pd(PPh
3)
4)(1.8mg,0.002mmol)、化合物A10(臭素化合物)(85.6mg,0.1mmol)及び化合物A6(スズ化合物)(91.0mg,0.1mmol)を加え、μ−ウェーブリアクター(initiator2.5、Biotage社製)を用いて、180℃にて1時間反応させた。続いて、反応溶液をメタノール(100mL)と塩酸(5mL)の混合溶液に注ぎ、再沈殿させた。そして、得られた反応混合物をメタノール、ヘキサンにて加熱洗浄することで精製した。その後、反応混合物をクロロホルムに溶解し、メタノールに再沈殿させることで、高分子化合物P1を青紫色の固体として得た(101mg,収率79%)。高分子化合物P1の数平均分子量は27000であった。
【0079】
【化14】
【0080】
(実施例2)
実施例2に係る高分子化合物P2(PTzBT−BOBOi)の合成方法について、以下に説明する。
【0081】
<3−(2−ブチルオクチル)チオフェン(化合物B1)の合成>
下記反応式(13)に示す反応により、3−(2−ブチルオクチル)チオフェン(化合物B1)を合成した。具体的には、フラスコにマグネシウム(2.92g,0.12mol)を加え、よく脱気して系内を窒素雰囲気下とした。続いて、THF(10ml)をフラスコに加えた。1−ブロモ−2−ブチルオクタン(27.4g,0.12mol)を、THFを還流させながらフラスコ内に滴下し、滴下した後も3時間還流を継続した。その後、THF(190ml)をフラスコに加え、室温まで冷却した。以上の工程によりグリニャール試薬(R−MgBr)を合成した。
【0082】
別のフラスコにNi(dppp)Cl
2(542mg,1mmol)を加え、よく脱気して系内を窒素雰囲気下とした。続いて、THF(100ml)をフラスコに加えて0℃に冷却した。次いで、3−ブロモチオフェン(9.5ml,16.3g,0.1mol)をフラスコに加え、合成したグリニャール試薬を滴下し、室温に戻して5時間攪拌した。その後、反応溶液に1N塩酸(20ml)を加え、反応混合物をヘキサンで抽出し、反応混合物を含む有機層を飽和食塩水、及び水で洗浄した。有機層を無水硫酸マグネシウムで乾燥し、これを濾過した後、溶媒を減圧下で留去した。得られた反応混合物を減圧蒸留することで、化合物B1を透明なオイルで得た(15.7g,収率62%)。得られた化合物B1を
1H−NMR法を用いて同定した。化合物B1の物性データは次の通りである。
1H-NMR(400MHZ,CDCl3,TMS) δ 7.23 (dd, J=4.9Hz, 1.0Hz, 1H), 6.93 (d, J=4.9Hz, 1H), 6.92 (d, J=1.0Hz, 1H), 2.55 (d, J=6.8Hz, 2H), 1.25 (m, 17H), 0.88 (m, 6H)
【0083】
【化15】
【0084】
<3−(2−ブチルオクチル)−5−チオフェンアルデヒド(化合物B2)の合成>
下記反応式(14)に示す反応により、3−(2−ブチルオクチル)−5−チオフェンアルデヒド(化合物B2)を合成した。具体的には、窒素雰囲気下で、化合物B1(2g,7.9mmol)及びTHF(100mL)をフラスコに加え、−78℃まで冷却した。その後、LDA(8.7mmol,11.6mL,0.75M)を滴下し、1時間攪拌した。続いて、DMF(3.2g,43.5mmol)を加え、室温まで昇温した後、さらに1時間攪拌した。
【0085】
その後、反応溶液に水を加え、反応混合物を酢酸エチルで抽出し、反応混合物を含む有機層を飽和食塩水、及び水で洗浄した。有機層を無水硫酸マグネシウムで乾燥し、これを濾過した後、溶媒を減圧下で留去した。得られた粗生成物を、塩化メチレンを移動相とするアルミナカラムクロマトグラフィーで分離精製することで、化合物B2を無色の液体で得た(2.1g,収率85%)。得られた化合物B2を
1H−NMR法を用いて同定した。化合物B2の物性データは次の通りである。
1H-NMR(400MH
Z,CDCl
3,TMS) δ 9.87 (s, 1H), 7.55 (s, 1H), 7.33 (s, 1H), 2.56 (d, J=6.8Hz, 2H), 1.25 (m, 17H), 0.88 (m, 6H)
【0086】
【化16】
【0087】
<2,5−ビス(4(2−ブチルオクチル)チオフェン−2−イル)チアゾロ[5,4−d]チアゾール(化合物B3)の合成>
下記反応式(15)に示す反応により、2,5−ビス(4(2−ブチルオクチル)チオフェン−2−イル)チアゾロ[5,4−d]チアゾール(化合物B3)を合成した。具体的には、窒素雰囲気下で、化合物B2(3.0g,8.9mmol)及びルベアン酸(487mg,4.05mmol)を、ディーンスタークを取り付けたフラスコに加え、200℃に加熱して5時間攪拌した。その後、反応混合物をクロロホルムで抽出し、反応混合物を含む有機層を飽和食塩水、及び水で洗浄した。有機層を無水硫酸マグネシウムで乾燥し、これを濾過した後、溶媒を減圧下で留去した。得られた反応混合物を、ヘキサンとクロロホルムの混合溶媒を移動相とするシリカゲルカラムクロマトグラフィーで分離精製することで、化合物B3を黄色固体で得た(720mg,収率32%)。得られた化合物B3を
1H−NMR法を用いて同定した。化合物B3の物性データは次の通りである。
1H-NMR (400MH
Z, CDCl
3, TMS) δ 7.36 (s, 1H), 7.01 (s, 1H), 2.54 (d, J=6.8Hz, 2H), 1.25 (m, 17H), 0.88 (m, 6H)
【0088】
【化17】
【0089】
<2,5−ビス(5−ブロモ−4(2−ブチルオクチル)チオフェン−2−イル)チアゾロ[5,4−d]チアゾール(化合物B4)の合成>
下記反応式(16)に示す反応により、2,5−ビス(5−ブロモ−4(2−ブチルオクチル)チオフェン−2−イル)チアゾロ[5,4−d]チアゾール(化合物B4)を合成した。具体的には、窒素雰囲気下で、化合物B3(630mg,0.83mmol)、NBS(445mg,2.5mmol)及びクロロホルム(50mL)をフラスコに加え、3時間還流した。その後、室温まで冷却した。
【0090】
続いて、反応溶液に飽和炭酸水素ナトリウム水溶液(50mL)を加え、反応混合物をクロロホルムで抽出し、反応混合物を含む有機層を飽和食塩水、及び水で洗浄した。有機層を無水硫酸マグネシウムで乾燥し、これを濾過した後、溶媒を減圧下で留去した。得られた反応混合物を、ヘキサンとクロロホルムの混合溶媒を移動相とするシリカゲルカラムクロマトグラフィーで分離精製することで、化合物B4を黄色固体で得た(635mg,収率84%)。得られた化合物B4を
1H−NMR法を用いて同定した。化合物B4の物性データは次の通りである。
1H-NMR(400MH
Z,CDCl
3,TMS) δ 7.21 (s, 1H), 2.51 (d, J=6.8Hz, 2H), 1.25 (m, 17H), 0.88 (m, 6H)
【0091】
【化18】
【0092】
<2−ブロモ−3−(2−ブチルオクチル)チオフェン(化合物B5)の合成>
下記反応式(17)に示す反応により、2−ブロモ−3−(2−ブチルオクチル)チオフェン(化合物B5)を合成した。具体的には、窒素雰囲気下で、化合物B1(10g,40mmol)及びDMF(120ml)をフラスコに加え、0℃に冷却した。NBS(7.1g,40mmol)をフラスコにゆっくり加え、その後、室温まで昇温し、12時間攪拌した。
【0093】
その後、反応溶液に飽和炭酸水素ナトリウム水溶液(50ml)を加え、反応混合物をヘキサンで抽出し、反応混合物を含む有機層を飽和食塩水、及び水で洗浄した。有機層を無水硫酸マグネシウムで乾燥し、これを濾過した後、溶媒を減圧下で留去した。得られた反応混合物を、ヘキサンを移動相とするシリカゲルカラムクロマトグラフィーで分離精製することで、化合物B5を透明なオイルで得た(13.1g,収率99%)。得られた化合物B5を
1H−NMR法を用いて同定した。化合物B5の物性データは次の通りである。
1H-NMR(400MHZ,CDCl3,TMS) δ 7.17 (d, J=5.4Hz, 1H), 6.75 (d, J=5.4Hz, 1H), 2.49 (d, J=7.0Hz, 2H), 1.25 (m, 17H), 0.88 (m, 6H)
【0094】
【化19】
【0095】
<3−(2−ブチルオクチル)−2チオフェンアルデヒド(化合物B6)の合成>
下記反応式(18)に示す反応により、3−(2−ブチルオクチル)−2チオフェンアルデヒド(化合物B6)を合成した。具体的には、フラスコにマグネシウム(345mg,14.2mmol)を加え、よく脱気して系内を窒素雰囲気下とした。続いて、THF(10ml)をフラスコに加えた。そして、化合物B5(4.27g,12.9mmol)を、THFを還流させながらフラスコ内に滴下し、滴下した後も3時間還流を継続した。その後、THF(100ml)をフラスコに加え、0℃まで冷却した。続いて、DMF(5ml)を滴下し、室温まで昇温して1時間攪拌した。
【0096】
反応溶液に1N塩酸(30ml)を加え、反応混合物をクロロホルムで抽出し、反応混合物を含む有機層を飽和食塩水、及び水で洗浄した。有機層を無水硫酸マグネシウムで乾燥し、これを濾過した後、溶媒を減圧下で留去した。得られた反応混合物を、ヘキサンとクロロホルムの混合溶媒を移動相とするシリカゲルカラムクロマトグラフィーで分離精製することで、化合物B6を透明なオイルで得た(2.42g,収率67%)。得られた化合物B6を
1H−NMR法を用いて同定した。化合物B6の物性データは次の通りである。
1H-NMR(400MHZ,CDCl3,TMS) δ 10.03 (s, 1H) 7.64 (d, J=4.9Hz, 1H), 6.97 (d, J=4.9Hz, 1H), 2.88 (d, J=7.3Hz, 2H), 1.25 (m, 17H), 0.88 (m, 6H)
【0097】
【化20】
【0098】
<2,5−ビス(3(2−ブチルオクチル)チオフェン−2−イル)チアゾロ[5,4−d]チアゾール(化合物B7)の合成>
下記反応式(19)に示す反応により、2,5−ビス(3(2−ブチルオクチル)チオフェン−2−イル)チアゾロ[5,4−d]チアゾール(化合物B7)を合成した。具体的には、窒素雰囲気下で、化合物B6(2.5g,8.9mmol)及びルベアン酸(487mg,4.05mmol)を、ディーンスタークを取り付けたフラスコに加え、200℃に加熱して5時間攪拌した。
【0099】
その後、反応混合物をクロロホルムで抽出し、反応混合物を含む有機層を飽和食塩水、及び水で洗浄した。有機層を無水硫酸マグネシウムで乾燥し、これを濾過した後、溶媒を減圧下で留去した。得られた反応混合物を、ヘキサンとクロロホルムの混合溶媒を移動相とするシリカゲルカラムクロマトグラフィーで分離精製することで、化合物B7を黄色固体で得た(781mg,収率30%)。得られた化合物B7を
1H−NMR法を用いて同定した。化合物B7の物性データは次の通りである。
1H-NMR(400MHZ,CDCl3,TMS) δ 7.34 (d, J=5.4Hz, 2H), 6.95 (d, J=5.4Hz, 2H), 2.93 (d, J=7.4Hz, 4H), 1.25 (m, 34H), 0.88 (m, 12H)
【0100】
【化21】
【0101】
<2,5−ビス(5−ブロモ−3(2−ブチルオクチル)チオフェン−2−イル)チアゾロ[5,4−d]チアゾール(化合物B8)の合成>
下記反応式(20)に示す反応により、2,5−ビス(5−ブロモ−3(2−ブチルオクチル)チオフェン−2−イル)チアゾロ[5,4−d]チアゾール(化合物B8)を合成した。具体的には、窒素雰囲気下で、化合物B7(643mg,1.0mmol)、NBS(534mg,3.0mmol)及びクロロホルム(60ml)をフラスコに加え、3時間還流した。その後、反応溶液を室温まで冷却した。
【0102】
続いて、反応溶液に飽和炭酸水素ナトリウム水溶液(50ml)を加え、反応混合物をクロロホルムで抽出し、反応混合物を含む有機層を飽和食塩水、及び水で洗浄した。有機層を無水硫酸マグネシウムで乾燥し、これを濾過した後、溶媒を減圧下で留去した。得られた反応混合物を、ヘキサンとクロロホルムの混合溶媒を移動相とするシリカゲルカラムクロマトグラフィーで分離精製することで、化合物B8を黄色固体で得た(665mg,収率83%)。得られた化合物B8を
1H−NMR法を用いて同定した。化合物B8の物性データは次の通りである。
1H-NMR(400MHZ,CDCl3,TMS) δ 6.90 (d, J=5.4Hz, 2H), 2.84 (d, J=7.5Hz, 4H), 1.25 (m, 34H), 0.88 (m, 12H)
【0103】
【化22】
【0104】
<2,5−ビス((3(2−ブチルオクチル)−5−トリメチルスタニル)チオフェン−2−イル)チアゾロ[5,4−d]チアゾール(化合物B9)の合成>
下記反応式(21)に示す反応により、2,5−ビス((3(2−ブチルオクチル)−5−トリメチルスタニル)チオフェン−2−イル)チアゾロ[5,4−d]チアゾール(化合物B9)を合成した。具体的には、窒素雰囲気下で、化合物B8(400mg,0.5mmol)及びTHF(20ml)を加え、−78℃まで冷却した。その後、n−BuLi(1.25mmol,0.78ml,1.6M)をフラスコ内に滴下し、1時間、同温で攪拌した。続いて、Me
3SnCl(274mg,1.4mmol)をフラスコに加え、室温まで昇温し、さらに1時間攪拌した。
【0105】
その後、反応溶液に水を加え、反応混合物をクロロホルムで抽出し、反応混合物を含む有機層を飽和食塩水、及び水で洗浄した。有機層を無水硫酸マグネシウムで乾燥し、これを濾過した後、溶媒を減圧下で留去した。得られた反応混合物を、ヘキサンを移動相とするアルミナカラムクロマトグラフィーで分離精製することで、化合物B9を黄色固体で得た(358mg,収率74%)。得られた化合物B9を
1H−NMR法を用いて同定した。化合物B9の物性データは次の通りである。
1H-NMR(400MH
Z,CDCl
3,TMS) δ 7.03 (d, J=5.4Hz, 2H), 2.96 (d, J=7.5Hz, 4H), 1.25 (m, 34H), 0.88 (m, 12H), 0.40 (s, 18H)
【0106】
【化23】
【0107】
<PTzBT−BOBOi(高分子化合物P2)の合成>
下記反応式(22)に示す反応により、PTzBT−BOBOi(高分子化合物P2)を合成した。具体的には、窒素雰囲気下で、反応バイアルにトルエン(5mL)を加え、30分間脱気した。続いて、反応バイアルにPd(PPh
3)
4(1.8mg,0.002mmol)、化合物B9(スズ化合物)(96.9mg,0.1mmol)及び化合物B4(臭素化合物)(80.0mg,0.1mmol)を加え、μ−ウェーブリアクター(initiator2.5、Biotage社製)を用いて、180℃にて1時間反応させた。続いて、反応溶液をメタノール(100mL)と塩酸(5mL)の混合溶液に注ぎ、再沈殿させた。そして、得られた反応混合物をメタノール、ヘキサンにて加熱洗浄することで精製した。その後、反応混合物をクロロホルムに溶解し、メタノールに再沈殿させることで、高分子化合物P2を青紫色の固体として得た(105mg,収率82%)。高分子化合物P2の数平均分子量は34000であった。
【0108】
【化24】
【0109】
(比較例1)
比較例1に係る高分子化合物P3(PTzBT−EHHD)の合成方法について、以下に説明する。
【0110】
<2−ブロモ−3−(2−ヘキシルデシル)チオフェン(化合物C1)の合成>
下記反応式(23)に示す反応により、2−ブロモ−3−(2−ヘキシルデシル)チオフェン(化合物C1)を合成した。具体的には、窒素雰囲気下で、化合物A7(15.7g,51mmol)及びDMF(150ml)をフラスコに加え、0℃まで冷却した。NBS(9.05g,51mmol)をフラスコにゆっくり加え、その後、室温まで昇温し、12時間攪拌した。
【0111】
その後、反応溶液に飽和炭酸水素ナトリウム水溶液(50ml)を加え、反応混合物をヘキサンで抽出し、反応混合物を含む有機層を飽和食塩水、及び水で洗浄した。有機層を無水硫酸マグネシウムで乾燥し、これを濾過した後、溶媒を減圧下で留去した。得られた反応混合物を、ヘキサンを移動相とするシリカゲルカラムクロマトグラフィーで分離精製することで、化合物C1を透明なオイルで得た(19.6g,収率99%)。得られた化合物C1を
1H−NMR法を用いて同定した。化合物C1の物性データは次の通りである。
1H-NMR(400MHZ,CDCl
3,TMS) δ 7.17 (d, J=5.4Hz, 1H), 6.75 (d, J=5.4Hz, 1H), 2.49 (d, J=7.0Hz, 2H), 1.25 (m, 25H), 0.88 (m, 6H)
【0112】
【化25】
【0113】
<3−(2−ヘキシルデシル)−2チオフェンアルデヒド(化合物C2)の合成>
下記反応式(24)に示す反応により、3−(2−ヘキシルデシル)−2チオフェンアルデヒド(化合物C2)を合成した。具体的には、フラスコにマグネシウム(345mg,14.2mmol)を加え、よく脱気して系内を窒素雰囲気下とした。続いて、THF(10ml)をフラスコに加えた。そして、化合物C1(5.0g,12.9mmol)を、THFを還流させながらフラスコ内に滴下し、滴下した後も3時間還流を継続した。その後、THF(100ml)をフラスコに加え、0℃まで冷却した。続いて、DMF(5ml)を滴下し、室温まで昇温して1時間攪拌した。
【0114】
反応溶液に1N塩酸(30ml)を加え、反応混合物をクロロホルムで抽出し、反応混合物を含む有機層を飽和食塩水、及び水で洗浄した。有機層を無水硫酸マグネシウムで乾燥し、これを濾過した後、溶媒を減圧下で留去した。得られた反応混合物を、ヘキサンとクロロホルムの混合溶媒を移動相とするシリカゲルカラムクロマトグラフィーで分離精製することで、化合物C2を透明なオイルで得た(2.8g,収率65%)。得られた化合物C2を
1H−NMR法を用いて同定した。化合物C2の物性データは次の通りである。
1H-NMR(400MHZ,CDCl3,TMS) δ 10.03 (s, 1H) 7.64 (d, J=4.9Hz, 1H), 6.97 (d, J=4.9Hz, 1H), 2.88 (d, J=7.3Hz, 2H), 1.25 (m, 25H), 0.88 (m, 6H)
【0115】
【化26】
【0116】
<2,5−ビス(3(2−ヘキシルデシル)チオフェン−2−イル)チアゾロ[5,4−d]チアゾール(化合物C3)の合成>
下記反応式(25)に示す反応により、2,5−ビス(3(2−ヘキシルデシル)チオフェン−2−イル)チアゾロ[5,4−d]チアゾール(化合物C3)を合成した。具体的には、窒素雰囲気下で、化合物C2(3.0g,8.9mmol)及びルベアン酸(487mg,4.05mmol)を、ディーンスタークを取り付けたフラスコに加え、200℃に加熱して5時間攪拌した。その後、反応混合物をクロロホルムで抽出し、反応混合物を含む有機層を飽和食塩水、及び水で洗浄した。有機層を無水硫酸マグネシウムで乾燥し、これを濾過した後、溶媒を減圧下で留去した。得られた反応混合物を、ヘキサンとクロロホルムの混合溶媒を移動相とするシリカゲルカラムクロマトグラフィーで分離精製することで、化合物C3を黄色固体で得た(826mg,収率27%)。得られた化合物C3を
1H−NMR法を用いて同定した。化合物C3の物性データは次の通りである。
1H-NMR(400MHZ,CDCl3,TMS) δ 7.34 (d, J=5.4Hz, 1H), 6.95 (d, J=5.4Hz, 1H), 2.93 (d, J=7.4Hz, 2H), 1.25 (m, 25H), 0.88 (m, 6H)
【0117】
【化27】
【0118】
<2,5−ビス(5−ブロモ−3(2−ヘキシルデシル)チオフェン−2−イル)チアゾロ[5,4−d]チアゾール(化合物C4)の合成>
下記反応式(26)に示す反応により、2,5−ビス(5−ブロモ−3(2−ヘキシルデシル)チオフェン−2−イル)チアゾロ[5,4−d]チアゾール(化合物C4)を合成した。具体的には、窒素雰囲気下で、化合物C3(600mg,0.80mmol)、NBS(427mg,2.4mmol)及びクロロホルム(50ml)をフラスコに加え、3時間還流した。その後、反応溶液を室温まで冷却した。
【0119】
続いて、反応溶液に飽和炭酸水素ナトリウム水溶液(50ml)を加え、反応混合物をクロロホルムで抽出し、反応混合物を含む有機層を飽和食塩水、及び水で洗浄した。有機層を無水硫酸マグネシウムで乾燥し、これを濾過した後、溶媒を減圧下で留去した。得られた反応混合物を、ヘキサンとクロロホルムの混合溶媒を移動相とするシリカゲルカラムクロマトグラフィーで分離精製することで、化合物C4を黄色固体で得た(613mg,収率84%)。得られた化合物C4を
1H−NMR法を用いて同定した。化合物C4の物性データは次の通りである。
1H-NMR(400MHZ,CDCl3,TMS) δ 7.21 (s, J=5.4Hz, 2H), 2.51 (d, J=6.8Hz, 4H), 1.25 (m, 50H), 0.88 (m, 12H)
【0120】
【化28】
【0121】
<PTzBT−EHHD(高分子化合物P3)の合成>
下記反応式(27)に示す反応により、PTzBT−EHHD(高分子化合物P3)を合成した。具体的には、窒素雰囲気下で、反応バイアルにクロロベンゼン(5mL)を加え、30分間脱気した。続いて、反応バイアルにトリス(ジベンジリデンアセトン)ジパラジウム(Pd
2(dba)
3)(2.0mg,0.002mmol)、化合物C4(臭素化合物)(85.6mg,0.1mmol)及び化合物A6(スズ化合物)(91.3mg,0.1mmol)を加え、μ−ウェーブリアクター(initiator2.5、Biotage社製)を用いて、200℃にて10分間反応させた。続いて、反応溶液をメタノール(100mL)と塩酸(5mL)の混合溶液に注ぎ、再沈殿させた。そして、反応混合物をメタノール、ヘキサンにて加熱洗浄することで精製した。その後、反応混合物をクロロホルムに溶解し、メタノールに再沈殿させることで、高分子化合物P3を青紫色の固体として得た(109mg,収率85%)。高分子化合物P3の数平均分子量は22000であった。
【0122】
【化29】
【0123】
(比較例2)
比較例2に係る高分子化合物P4(PTzBT−BOBO)の合成方法について、以下に説明する。
【0124】
<PTzBT−BOBO(高分子化合物P4)の合成>
下記反応式(28)に示す反応により、PTzBT−BOBO(高分子化合物P4)を合成した。具体的には、窒素雰囲気下で、反応バイアルにクロロベンゼン(5mL)を加え、30分間脱気した。続いて、反応バイアルにPd
2(dba)
3(2.0mg,0.002mmol)、化合物B9(スズ化合物)(96.9mg,0.1mmol)及び化合物B8(臭素化合物)(80.0mg,0.1mmol)を加え、μ−ウェーブリアクター(initiator2.5、Biotage社製)を用いて、200℃にて10分間反応させた。続いて、反応溶液をメタノール(100mL)と塩酸(5mL)の混合溶液に注ぎ、再沈殿させた。そして、反応混合物をメタノール、ヘキサンにて加熱洗浄することで精製した。その後、反応混合物をクロロホルムに溶解し、メタノールに再沈殿することで、高分子化合物P4を青紫色の固体として得た(108mg,収率84%)。高分子化合物P4の数平均分子量は30000であった。
【0125】
【化30】
【0126】
[高分子化合物の溶解性評価]
各実施例及び各比較例の高分子化合物について、有機溶媒への溶解性を評価した。具体的には、5mLのバイアルに、各実施例及び各比較例の高分子化合物1mgと、クロロベンゼン1mLとを加えたサンプルを用意した。そして、各サンプルをホットプレートスターラー上に載置し、20℃から10℃ずつ温度を上昇させ、上昇させるたびに15分間撹拌した。撹拌後、目視でポリマーが完全に溶解したか確認した。完全な溶解が確認されるまで、温度の上昇と撹拌を繰り返し、完全に溶解した時の温度を高分子化合物の溶解温度とした。溶解温度測定の結果を表1に示す。
【0127】
【表1】
【0128】
表1に示すように、側鎖置換基の構造が同一で位置が異なる実施例1と比較例1とを比較すると、実施例1は比較例1よりも溶解温度が50℃も低下したことが確認された。同様に、側鎖置換基の構造が同一で位置が異なる実施例2と比較例2とを比較すると、実施例2は比較例2よりも溶解温度が50℃以上も低下したことが確認された。以上より、実施例1,2に係る高分子化合物P1,P2は、比較例1,2に係る高分子化合物P3,P4に比べて、有機溶媒への溶解性が高いことが確認された。
【0129】
[光電変換素子の性能評価]
各実施例及び各比較例の高分子化合物を用いて、光電変換素子を作製した。以下では適宜、実施例1の高分子化合物P1を用いて作製した光電子化合物を「実施例1の光電変換素子」と称する。実施例2、比較例1及び比較例2についても同様である。各実施例及び各比較例の光電変換素子の構造には、一例として逆層構造を採用した。その概略は下記の通りである。また、各光電変換素子の構造は、光電変換層の形態を除き共通である。
素子構造:ITO透明電極/電子輸送層(ZnO)/光電変換層(高分子化合物/PC
61BM)/正孔輸送層(WO
3)/対向電極(Ag)
【0130】
具体的には、ITO透明電極として市販のITOガラス(面抵抗20Ω/sq以下)を用いた。そして、このITO透明電極の上に、電子輸送層としてのZnO膜を製膜した。具体的には、まずモノエタノールアミン(Sigma Aldrich社製41100)0.142mlと、2−メトキシエタノール(Sigma Aldrich社製270482)5mlとを混合した溶媒に、ZnOAc・2H
2O(Sigma Aldrich社製379786)500mgを溶解させ、室温で3時間攪拌して溶液を調製した。そして、この溶液80μlをITO透明電極の表面にキャストして、3000rpm、30秒のスピン塗布により成膜した。その後、塗膜を150℃で30分間加熱して乾燥させ、膜厚約20nmのZnO膜を形成した。次に、光電変換層を形成すべく、クロロベンゼン溶媒に、PC
61BMと各実施例及び各比較例の高分子化合物とをそれぞれ当該溶媒100質量%に対して3.0質量%となるように加え、塗布液を作製した。この塗布液をZnO膜の上に500rpm、30秒でスピン塗布した。この後、乾燥させて光電変換層を形成した。光電変換層の膜厚は、実施例1では230nm、実施例2では220nm、比較例1及び比較例2では250nmであった。
【0131】
得られた光電変換層の上に、真空蒸着法により膜厚が約20nmになるようにWO
3を成膜して正孔輸送層を形成した。その後、正孔輸送層の上に、真空蒸着法により膜厚が約100nmになるようにAgを成膜して対向電極を形成した。以上の工程により、各実施例及び各比較例の光電変換素子を作製した。
【0132】
各実施例及び各比較例の光電変換素子について、室温で1000W/m
2疑似太陽光を照射し、それぞれのJsc(短絡電流密度)、Voc(開放電圧)、FF(Fill factor)を測定した。また、下記式に従ってPCE(光電変換効率)を算出した。
PCE(%)=Jsc(mA/cm
2)×Voc(V)×FF
得られた結果を表2に示す。
【0133】
【表2】
【0134】
表2に示すように、高分子化合物の側鎖置換基の構造が同一で位置が異なる実施例1と比較例1とは、同程度の光電変換効率を有することが確認された。同様に、高分子化合物の側鎖置換基の構造が同一で位置が異なる実施例2と比較例2とは、同程度の光電変換効率を有することが確認された。
【0135】
以上説明した溶解性評価の結果と、素子性能評価の結果とから、上記式(1)で表される繰り返し単位を有する高分子化合物を用いることで、光電変換素子の性能を保持しながら有機半導体の有機溶媒への溶解性を高められることが確認された。
【0136】
本発明は、上述の実施の形態に限定されるものではなく、当業者の知識に基づいて各種の設計変更等の変形を加えることも可能であり、そのような変形が加えられた実施の形態も本発明の範囲に含まれうるものである。