(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】6245781
(24)【登録日】2017年11月24日
(45)【発行日】2017年12月13日
(54)【発明の名称】不眠症治療支援装置および不眠症治療支援用プログラム
(51)【国際特許分類】
A61B 5/16 20060101AFI20171204BHJP
【FI】
A61B5/16 300A
【請求項の数】8
【全頁数】11
(21)【出願番号】特願2017-552510(P2017-552510)
(86)(22)【出願日】2016年10月11日
(86)【国際出願番号】JP2016080128
【審査請求日】2017年10月5日
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】515318326
【氏名又は名称】サスメド株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100105784
【弁理士】
【氏名又は名称】橘 和之
(72)【発明者】
【氏名】上野 太郎
【審査官】
福田 裕司
(56)【参考文献】
【文献】
特開2011−036649(JP,A)
【文献】
特開2003−210587(JP,A)
【文献】
特開2006−034966(JP,A)
【文献】
特開平10−033513(JP,A)
【文献】
米国特許出願公開第2010/0099954(US,A1)
【文献】
米国特許出願公開第2005/0143617(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61B 5/16
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ユーザの就寝時刻、入眠時刻、覚醒時刻、起床時刻に関する情報に基づいて、上記ユーザの睡眠効率を算出する睡眠効率算出部と、
上記睡眠効率算出部により算出される上記睡眠効率に基づいて、上記ユーザの就寝時刻および当該就寝時刻より第1所定時間前における眠気テストの実施時刻を設定する時刻設定部と、
上記時刻設定部により設定された実施時刻またはそれより第2所定時間前もしくは後の時刻になったときに、上記眠気テストの実施を促すメッセージを上記ユーザに提示する催告メッセージ提示部とを備えたことを特徴とする不眠症治療支援装置。
【請求項2】
上記時刻設定部は、
上記睡眠効率算出部により算出される上記睡眠効率に基づいて、上記ユーザの就寝時刻を設定して上記ユーザに通知する就寝時刻設定部と、
上記就寝時刻設定部により設定された就寝時刻より上記第1所定時間前の時刻を、上記眠気テストの実施時刻に設定する実施時刻設定部とを備えたことを特徴とする請求項1に記載の不眠症治療支援装置。
【請求項3】
上記就寝時刻設定部は、上記睡眠効率算出部により算出された上記睡眠効率が所定値未満の場合、前回設定された就寝時刻よりも遅い時刻を次回の就寝時刻に設定し、上記睡眠効率算出部により算出された上記睡眠効率が所定値以上の場合、前回設定された就寝時刻よりも早い時刻を次回の就寝時刻に設定することを特徴とする請求項2に記載の不眠症治療支援装置。
【請求項4】
上記時刻設定部は、
上記睡眠効率算出部により算出される上記睡眠効率に基づいて、上記眠気テストの実施時刻を設定する実施時刻設定部と、
上記実施時刻設定部により設定された上記眠気テストの実施時刻より第1所定時間後の時刻を、上記ユーザの就寝時刻に設定して上記ユーザに通知する就寝時刻設定部とを備えたことを特徴とする請求項1に記載の不眠症治療支援装置。
【請求項5】
上記実施時刻設定部は、上記睡眠効率算出部により算出された上記睡眠効率が所定値未満の場合、前回設定された上記眠気テストの実施時刻よりも遅い時刻を次回の実施時刻に設定し、上記睡眠効率算出部により算出された上記睡眠効率が所定値以上の場合、前回設定された上記眠気テストの実施時刻よりも早い時刻を次回の実施時刻に設定することを特徴とする請求項4に記載の不眠症治療支援装置。
【請求項6】
上記時刻設定部により設定された上記就寝時刻に応じて、上記ユーザの行動に影響を与えるためのフォローメッセージを上記ユーザに提示するフォローメッセージ提示部を更に備えたことを特徴とする請求項1に記載の不眠症治療支援装置。
【請求項7】
上記就寝時刻設定部により設定された上記就寝時刻に応じて、上記ユーザの行動に影響を与えるためのフォローメッセージを上記ユーザに提示するフォローメッセージ提示部を更に備え、
上記フォローメッセージ提示部は、上記就寝時刻設定部によって前回よりも遅い時刻が次回の就寝時刻として設定された場合、上記ユーザの行動について介入指導を行うためのフォローメッセージを提示し、上記就寝時刻設定部によって前回よりも早い時刻が次回の就寝時刻として設定された場合、上記ユーザの行動を支持するためのフォローメッセージを提示することを特徴とする請求項3に記載の不眠症治療支援装置。
【請求項8】
ユーザの就寝時刻、入眠時刻、覚醒時刻、起床時刻に関する情報に基づいて、上記ユーザの睡眠効率を算出する睡眠効率算出手段、
上記睡眠効率算出手段により算出される上記睡眠効率に基づいて、上記ユーザの就寝時刻および当該就寝時刻より第1所定時間前における眠気テストの実施時刻を設定する時刻設定手段、および
上記時刻設定手段により設定された実施時刻またはそれより第2所定時間前もしくは後の時刻になったときに、上記眠気テストの実施を促すメッセージを上記ユーザに提示する催告メッセージ提示手段
としてコンピュータを機能させるためのコンピュータ読み取り可能な不眠症治療支援用プログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、不眠症の治療を支援するための不眠症治療支援装置および不眠症治療支援用プログラムに関するものである。
【背景技術】
【0002】
現在、不眠症に悩まされている人が少なくない。不眠症は、夜寝つきが悪いといった「入眠困難の不眠症」、眠りを維持できないといった「中途覚醒の不眠症」、朝早く目が覚めてしまうといった「早朝覚醒の不眠症」などの症状をいう。これらの症状が続くと、よく眠れないため日中の眠気、注意力の散漫、疲れや種々の体調不良を引き起こす原因となる。
【0003】
従来、ユーザの睡眠の質を改善する観点から、ユーザの睡眠を管理するためのシステムが考案されている(例えば、特許文献1参照)。特許文献1に記載のシステムでは、ベッドに就いているユーザの睡眠の質に関連する1つ以上の客観的パラメータを監視するとともに、ユーザが起きている間に認知能力または精神運動能力について測定される客観的テストデータのフィードバックを、携帯電話などの携帯型装置を介してユーザに提示する。
【0004】
この特許文献1には、認知テストまたは精神運動テストの例として、反応時間を測定する方法(一晩4〜5時間に限定された睡眠を1週間続けた際の、蓄積された眠気、気分障害、および不眠症による精神運動能力の低下を測定する方法)が示されている。特許文献1に記載のシステムでは、認知テストなどの結果に基づいて、後の睡眠の質を改善するために、ユーザの行動に影響を与えるための情報(警告、ガイド、アドバイス、ユーザを励ますメッセージなど)をユーザに提示する。
【0005】
また、特許文献1以外にも、反応時間に基づいて眠気テストを行う方法が知られている(例えば、特許文献2,3参照)。特許文献2には、発生させた振動に対するユーザからの応答を検出し、ユーザからの応答がない実時間長に基づいてユーザの覚醒度を判断することが記載されている。特許文献3には、スピーカの音声出力により、ユーザに対してランダムに設定された操作スイッチのいずれかを操作するように指定通知し、指定された操作スイッチが操作されるまでの反応時間情報から、ユーザの眠気の度合いを判定することが記載されている。
【0006】
上記特許文献1に記載のシステムによれば、ユーザの反応時間の測定によるテストなどの結果に基づいて、警告、ガイド、アドバイス、ユーザを励ますメッセージなどの情報が提示されるので、ユーザがその内容に従って行動をすることにより、睡眠の質が改善されるとしている。
【0007】
なお、1回のテストの結果に応じて、提示された情報に従ってユーザが1回行動をとれば、直ちに不眠症が解消されるわけではない。そのため、継続的にテストを実施し、不眠症改善のための行動を継続的にとっていく必要がある。
【0008】
特許文献1には、認知能力または精神運動能力が1日全体を通して変化するので、ユーザが起きている間に定期的にテストを実行することが記載されている。また、ユーザが起きている間ランダムに、または散発的にテストを行うことも記載されている。具体的には、認知テストまたは精神運動テストを、1日数回、広範囲の時間にわたって数日間行う。ユーザは、数日間、毎日同じ時間にテストを実行するように、携帯型装置によって促される。
【0009】
【特許文献1】特開2011−36649号公報
【特許文献2】特開2012−40134号公報
【特許文献3】特開2015−115045号公報
【発明の開示】
【0010】
特許文献1に記載のシステムでは、ユーザの負担とならないように、最小のテスト回数で認知能力または精神運動能力についての情報を最大限得るために、テストを行う時間が処理ユニットによってあらかじめ規定されている。しかしながら、それでもユーザは複数回のテストを実行しなければならないため(1〜8時間毎にテストを実施するのが好ましいと記載されている)、負担が大きく、治療が継続できずに断念してしまう可能性が高くなるという問題があった。
【0011】
この問題を解消するための一方法として、テストの実施回数を極力減らすことが考えられる。しかしながら、特許文献1に記載のように、毎日決まった同じ時間にテストを実行する方法では、ユーザの認知能力または精神運動能力を正しく評価することができないという問題が生じる。これらの能力は、1日全体を通して変化するものであるし、不眠症の改善の程度によっても変化するものであるが、それらを考慮したテストを実施することができないからである。
【0012】
本発明は、このような問題を解決するために成されたものであり、ユーザが眠気テストを実施する負担を極力小さくしつつ、不眠症の改善の程度に応じてユーザの眠気を正しく測定できるようにすることを目的とする。
【0013】
上記した課題を解決するために、本発明では、ユーザの睡眠効率に基づいて、ユーザの就寝時刻を設定するとともに、当該就寝時刻より第1所定時間前の時刻を、眠気テストの実施時刻に設定する。そして、当該設定された実施時刻またはそれより第2所定時間前もしくは後の時刻になったときに、眠気テストの実施を促すメッセージをユーザに提示するようにしている。
【0014】
上記のように構成した本発明によれば、ユーザの不眠症の改善度を示唆する睡眠効率に基づいて、不眠症の改善を図るために適切な就寝時刻が設定され、さらに、その就寝時刻を基準として、それよりも第1所定時間前の時刻が眠気テストの実施時刻に設定される。そして、その実施時刻またはそれより第2所定時間前もしくは後の時刻になると、眠気テストの実施を促すメッセージがユーザに提示され、このメッセージに促されてユーザが眠気テストを実施するようになる。このため、眠気テストを1日に1回しか行わなくても、不眠症の改善度に応じた適切な時刻に眠気テストが実施されるようになる。これにより、ユーザが眠気テストを実施する負担を極力小さくしつつ、不眠症の改善の程度に応じてユーザの眠気を正しく測定することができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【
図1】本実施形態による不眠症治療支援装置の機能構成例を示すブロック図である。
【
図2】本実施形態による不眠症治療支援装置の動作例を示すフローチャートである。
【
図3】本実施形態による不眠症治療支援装置の動作例を示すフローチャートである。
【
図4】本実施形態による不眠症治療支援装置の他の機能構成例を示すブロック図である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0016】
以下、本発明の一実施形態を図面に基づいて説明する。
図1は、本実施形態による不眠症治療支援装置の機能構成例を示すブロック図である。本実施形態の不眠症治療支援装置10は、例えばスマートフォンやタブレット等の携帯端末に実装されるものであり、その機能構成として、眠気テスト実行部11、情報入力部12、睡眠効率算出部13、就寝時刻設定部14、実施時刻設定部15、催告メッセージ提示部16およびフォローメッセージ提示部17を備えている。なお、ここでは携帯端末に不眠症治療支援装置を実装するものとしているが、パーソナルコンピュータのような非携帯型のコンピュータに実装してもよい。
【0017】
上記各機能ブロック11〜17は、ハードウェア、DSP(Digital Signal Processor)、ソフトウェアの何れによっても構成することが可能である。例えばソフトウェアによって構成する場合、上記各機能ブロック11〜17は、実際には携帯端末のCPU、RAM、ROMなどを備えて構成され、RAMやROM、ハードディスクまたは半導体メモリ等の記憶媒体に記憶された不眠症治療支援用プログラムが動作することによって実現される。なお、不眠症治療支援用プログラム(以下、不眠症治療アプリという)は、インターネット等のネットワークを介して携帯端末にダウンロードしてインストールすることも可能である。
【0018】
図1に示すように、携帯端末は、不眠症治療支援装置10の他に、記憶部20および計時部30を備えている。記憶部20は、RAM、ハードディスクまたは半導体メモリなどの記憶媒体である。この記憶媒体は、不眠症治療支援用プログラムが記憶される記憶媒体と同じものであってもよいし、異なるものであってもよい。計時部30は、時計機能によって日時を計測するものである。
【0019】
以下に、不眠症治療支援装置10が備える各機能構成について説明する。眠気テスト実行部11は、ユーザの日中の眠気の程度を計測するためのテストを実行する。不眠症を患っている人は、夜間の睡眠が不十分であるために、日中に眠気を起こすことが多い。その日中の眠気の程度により、不眠症の重症度を推定することが可能である。また、眠気テストを繰り返し実施することにより、不眠症が改善の方向に進んでいるのか、悪化の方向に進んでいるのか、またその進み具合はどの程度なのかについても推定することが可能である。
【0020】
例えば、眠気テスト実行部11は、携帯端末のディスプレイに所定の表示を行ったり、スピーカから所定の音声を出力したりした後、ユーザが所定の応答操作を行うまでの経過時間を測定し、その経過時間(応答の速さ)に基づいて、眠気の程度(または覚醒度)を判定する。この場合、応答時間が長いほど、眠気の程度が大きいと判定する。具体的には、応答時間をパラメータとする所定の関数によって眠気の程度を算出することが可能である。あるいは、眠気の程度を複数段階に分け、応答時間と眠気の程度とを関連付けたテーブル情報に従って、応答時間から眠気の程度を判定するようにしてもよい。
【0021】
本実施形態では、以上のような眠気テストを毎日1回行い、その結果を記憶部20に記憶させる。なお、眠気テストの内容は上記の例に限定されるものではなく、これ以外の公知の手法を適用することも可能である。
【0022】
情報入力部12は、携帯端末の入力インタフェース(タッチパネル、キーボードなど)に対するユーザ操作を通じて、ユーザの就寝時刻、入眠時刻、覚醒時刻、起床時刻に関する情報を入力する。この情報入力は、毎日行うものとする。なお、入眠時刻に関しては、ユーザ自身が正確な時刻を把握することはできないので、主観的に把握している大凡の時刻を入力すればよい。
【0023】
睡眠効率算出部13は、情報入力部12により入力された就寝時刻、入眠時刻、覚醒時刻、起床時刻に関する情報に基づいて、ユーザの睡眠効率を算出し、その結果を記憶部20に記憶させる。睡眠効率とは、ベッド等の寝床にいる全体の時間のうち、実際に眠れている時間の割合をいう。すなわち、睡眠効率は、以下の式により算出される。
睡眠効率=(入眠時刻から覚醒時刻までの時間)/(就寝時刻から起床時刻までの時間)×100[%]
【0024】
就寝時刻設定部14は、睡眠効率算出部13により算出される睡眠効率に基づいて、ユーザの就寝時刻を設定してユーザに通知する。この就寝時刻設定部14による就寝時刻の設定は、毎日行うようにしてもよいし、所定の期間(例えば、1週間)毎に行うようにしてもよい。例えば、1週間毎に就寝時刻の設定を行う場合、就寝時刻設定部14は、睡眠効率算出部13により算出される1週間の睡眠効率(記憶部20に記憶されている)の平均値に基づいて、就寝時刻を設定してユーザに通知する。
【0025】
本実施形態では、就寝時刻設定部14は、睡眠効率算出部13により算出された睡眠効率が所定値(例えば、80%)未満の場合、前回設定された就寝時刻よりも所定時間(例えば、15分)遅い時刻を次回の就寝時刻に設定する。一方、就寝時刻設定部14は、睡眠効率算出部13により算出された睡眠効率が所定値(例えば、85%)以上の場合、前回設定された就寝時刻よりも所定時間(例えば、15分)早い時刻を次回の就寝時刻に設定する。就寝時刻設定部14は、前回設定された就寝時刻と、今回設定した就寝時刻とを記憶部20に記憶して管理する。
【0026】
なお、ここでは、前回より就寝時刻を遅く設定する場合の閾値として用いる所定値(80%)と、前回より就寝時刻を早く設定する場合の閾値として用いる所定値(85%)とを異なる値としているが、同じ値としてもよい。また、前回より就寝時刻を早く設定する場合の条件として、睡眠効率の値に加えて、眠気テスト実行部11による眠気テストの結果を用いるようにしてもよい。例えば、睡眠効率算出部13により算出された睡眠効率が所定値(例えば、85%)以上で、かつ、眠気テストにより測定された眠気の程度が前回よりも改善されている場合に、前回設定された就寝時刻よりも早い時刻を次回の就寝時刻に設定する。
【0027】
就寝時刻設定部14は、以上のようにして設定した就寝時刻を、携帯端末のディスプレイに対する表示等を通じてユーザに通知する。ユーザは、通知された就寝時刻にベッドに入るように努力する。これを毎日繰り返すことにより、不眠症の改善が期待できる。
【0028】
入眠困難の不眠症に悩まされている人の多くは、ベッドに入ってもすぐに眠れないことに不安を感じていて、その不安感自体が睡眠の妨げとなっている。このような人は、すぐに眠れないという不安感から、それほど眠くないのに早い時刻にベッドに入ろうとする傾向にある。それがまた逆効果となって、就寝時刻から入眠時刻までの時間(眠れない状態のままベッドにいる時間)が長くなり、睡眠効率が低下する。これに対し、就寝時刻を強制的に遅くすることにより、無理して早くからベッドに入らなくてもよいのだという安心感をユーザに与えることができる。また、ある程度眠くなってからベッドに入ることになるため、就寝時刻から入眠時刻までの時間が短くなることが期待できる。
【0029】
実施時刻設定部15は、就寝時刻設定部14により設定された就寝時刻より第1所定時間前(例えば、3時間前)の時刻を、眠気テストの実施時刻に設定し、記憶部20に記憶させる。催告メッセージ提示部16は、計時部30により計測される日時が、記憶部20に記憶された眠気テストの実施時刻になったときに、眠気テストの実施を促すメッセージをユーザに提示する。例えば、催告メッセージ提示部16は、眠気テストの実施時刻になったときに、催告メッセージを携帯端末のディスプレイにプッシュ通知する。このとき、携帯端末のスピーカから報知音を出力してもよい。
【0030】
なお、ここでは、実施時刻設定部15により設定された眠気テストの実施時刻になったときに催告メッセージを通知することとしたが、実施時刻そのものでなくてもよい。例えば、実施時刻設定部15により設定された眠気テストの実施時刻より第2所定時間前もしくは後の時刻になったときに、催告メッセージを通知するようにしてもよい。ユーザは、この催告メッセージを受けて、眠気テスト実行部11による眠気テストを実行する。
【0031】
上述のように、催告メッセージがユーザに通知されるタイミングは、就寝時刻設定部14により設定された就寝時刻よりも第1所定時間前の時刻である。ここで、就寝時刻設定部14による設定される就寝時刻は、眠気テストの結果に基づいて、そのときの不眠症の状態に合わせて適切に設定された時刻である。したがって、ユーザが催告メッセージを受けて眠気テストを実行すれば、不眠症の改善度に応じた適切な時刻に眠気テストを実施することができる。そして、その適切な時刻に行った眠気テストの実行結果に基づいて、就寝時刻設定部14により就寝時刻が必要に応じて再設定される。このような循環により、不眠症の治療を進めていくことができる。
【0032】
フォローメッセージ提示部17は、就寝時刻設定部14により設定された就寝時刻に応じて、ユーザの行動に影響を与えるためのフォローメッセージをユーザに提示する。例えば、フォローメッセージ提示部17は、就寝時刻設定部14により就寝時刻の設定が行われたときに、フォローメッセージを携帯端末のディスプレイに表示する。なお、フォローメッセージを提示するタイミングは、就寝時刻の設定時に限定されるものではない。例えば、催告メッセージを提示するときに、これと同時にフォローメッセージを提示するようにしてもよい。
【0033】
具体的には、フォローメッセージ提示部17は、就寝時刻設定部14によって前回よりも遅い時刻が次回の就寝時刻として設定された場合、ユーザの行動について介入指導を行うためのフォローメッセージを提示する。就寝時刻が前回よりも遅い時刻に設定されるのは、多くの場合、治療の前半に相当する時期である。そのため、このような場合には、例えば「まだ睡眠効率が低いので、予定就寝時刻になるまでは布団に入らないようにしましょう。」といったフォローメッセージをユーザに提示することが有意義である。
【0034】
一方、フォローメッセージ提示部17は、就寝時刻設定部14によって前回よりも早い時刻が次回の就寝時刻として設定された場合、ユーザの行動を支持するためのフォローメッセージを提示する。就寝時刻が前回よりも早い時刻に設定されるのは、多くの場合、治療の後半に相当する時期である。そのため、このような場合には、例えば「治療が順調に進み、睡眠効率が上がってきましたね。この調子で続けると徐々に日中の眠気も治まってきます。」といったフォローメッセージをユーザに提示することが有意義である。
【0035】
図2および
図3は、上記のように構成した本実施形態による不眠症治療支援装置10の動作例を示すフローチャートである。
図2に示すフローチャートは、不眠症治療アプリによって毎日実行する動作例を示す。また、
図3に示すフローチャートは、所定の期間(例えば、1週間)毎に実行する動作例を示す。
【0036】
まず、
図2のフローチャートについて説明する。情報入力部12は、携帯端末の入力インタフェースに対するユーザ操作を通じて、ユーザの就寝時刻、入眠時刻、覚醒時刻、起床時刻に関する情報を入力する(ステップS1)。この情報入力は、例えば、ユーザが毎朝起床したときに行う。すなわち、情報入力部12は、昨晩の就寝時刻および入眠時刻と、今朝の覚醒時刻および起床時刻とを入力する。
【0037】
次いで、睡眠効率算出部13は、情報入力部12により入力された就寝時刻、入眠時刻、覚醒時刻、起床時刻に関する情報に基づいて、ユーザの睡眠効率を算出する(ステップS2)。そして、睡眠効率算出部13は、算出した睡眠効率の情報を記憶部20に記憶させる(ステップS3)。
【0038】
その後、催告メッセージ提示部16は、眠気テストの実施時刻になったか否かを判定する(ステップS4)。なお、この眠気テストの実施時刻は、
図3のフローチャートにおいて実施時刻設定部15により設定される。ここで、まだ眠気テストの実施時刻になっていない場合は、ステップS4の判定を繰り返し実行する。
【0039】
一方、眠気テストの実施時刻になったと判定された場合、催告メッセージ提示部16は、催告メッセージを携帯端末のディスプレイに表示することにより、眠気テストの実施をユーザに促す(ステップS5)。また、フォローメッセージ提示部17は、ユーザの行動に影響を与えるためのフォローメッセージを携帯端末のディスプレイに表示する(ステップS6)。このとき表示するフォローメッセージの内容は、
図3のフローチャートにおいて就寝時刻設定部14により設定される就寝時刻に応じて決まる。
【0040】
次いで、眠気テスト実行部11は、携帯端末の入力インタフェースに対するユーザ操作を通じて、眠気テストを実行する(ステップS7)。そして、眠気テスト実行部11は、眠気テストにより計測されたユーザの日中の眠気の程度を示す情報を、記憶部20に記憶させる(ステップS8)。これにより、
図2に示す1日分のフローチャートの処理が終了する。この
図2に示す動作が毎日繰り返し実行される。
【0041】
次に、
図3のフローチャートについて説明する。就寝時刻設定部14は、就寝時刻の前回の設定時から1週間が経過したか否かを判定する(ステップS11)。ここで、まだ1週間が経過していない場合は、ステップS11の判定を繰り返し実行する。
【0042】
一方、就寝時刻の前回の設定時から1週間が経過した場合、就寝時刻設定部14は、睡眠効率算出部13により算出された睡眠効率(記憶部20に記憶されている1週間分の睡眠効率の平均値)に基づいて、ユーザの就寝時刻を設定してユーザに通知する(ステップS12)。なお、不眠症治療アプリの使用を開始した直後は、情報入力部12により最初に入力された就寝時刻をそのまま設定する。
【0043】
次いで、実施時刻設定部15は、就寝時刻設定部14により設定された就寝時刻より第1所定時間前(例えば、3時間前)の時刻を、眠気テストの実施時刻に設定する(ステップS13)。そして、就寝時刻設定部14および実施時刻設定部15は、上記のように設定した就寝時刻および眠気テストの実施時刻を記憶部20に記憶させる(ステップS14)。これにより、
図3に示すフローチャートの処理は終了する。
【0044】
以上詳しく説明したように、本実施形態では、睡眠効率算出部13により算出されるユーザの睡眠効率に基づいて、ユーザの就寝時刻を就寝時刻設定部14が設定するとともに、当該就寝時刻より第1所定時間前の時刻を眠気テストの実施時刻に実施時刻設定部15が設定する。そして、当該設定された実施時刻またはそれより第2所定時間前もしくは後の時刻になったときに、眠気テストの実施を促すメッセージを催告メッセージ提示部16がユーザに提示するようにしている。
【0045】
このように構成した本実施形態によれば、ユーザの不眠症の改善度を示唆する睡眠効率に基づいて、不眠症の改善を図るために適切な就寝時刻が設定され、さらに、その就寝時刻を基準として、それよりも第1所定時間前の時刻が眠気テストの実施時刻に設定される。そして、その実施時刻またはそれより第2所定時間前もしくは後の時刻になると、眠気テストの実施を促すメッセージがユーザに提示され、このメッセージに促されてユーザが眠気テストを実施するようになる。このため、眠気テストを1日に1回しか行わなくても、不眠症の改善度に応じた適切な時刻に眠気テストが実施されるようになる。これにより、ユーザが眠気テストを実施する負担を極力小さくしつつ、不眠症の改善の程度に応じてユーザの眠気を正しく測定することができる。
【0046】
また、本実施形態では、就寝時刻設定部14により設定された就寝時刻に応じて、ユーザの行動に影響を与えるためのフォローメッセージをフォローメッセージ提示部17がユーザに提示するようにしている。これにより、不眠症の改善度に応じた適切なフォローメッセージがユーザに提示されるようになり、ユーザが治療を続けるためのモチベーションの維持を図ることができる。
【0047】
なお、上記実施形態では、睡眠効率算出部13により算出される睡眠効率に基づいて、ユーザの就寝時刻を設定し、その就寝時刻より第1所定時間前の時刻を眠気テストの実施時刻に設定する例について説明したが、本発明はこれに限定されない。例えば、
図4に示すように、睡眠効率算出部13により算出される睡眠効率に基づいて、眠気テストの実施時刻を設定し、その実施時刻より第1所定時間後の時刻をユーザの就寝時刻に設定するようにしてもよい。すなわち、
図4の構成において、実施時刻設定部15’は、睡眠効率算出部13により算出される睡眠効率に基づいて、眠気テストの実施時刻を設定する。また、就寝時刻設定部14’は、実施時刻設定部15’により設定された眠気テストの実施時刻より第1所定時間後の時刻をユーザの就寝時刻に設定する。
【0048】
また、上記実施形態では、情報入力部12が携帯端末に対するユーザ操作を通じて就寝時刻、入眠時刻、覚醒時刻、起床時刻に関する情報を入力する例について説明したが、本発明はこれに限定されない。例えば、ユーザの入眠状態への移行を検出するセンサ、覚醒状態への移行を検出するセンサを設け、これらのセンサにより移行が検出された時刻を情報入力部12が入力するようにしてもよい。なお、この場合のセンサとしては、ユーザの呼吸を検出するもの、ユーザの胸部や腹部における角速度を検出するもの、脳波を検出するものなど、公知のものを適用することが可能である。
【0049】
また、上記実施形態において、不眠症に関する不安を抱いているユーザが問診等を通じて医師の処方を受け、その処方に従って不眠症治療支援用アプリをインストールし、初期設定としての就寝時刻を入力するようにするのが好ましい。
【0050】
その他、上記実施形態は、何れも本発明を実施するにあたっての具体化の一例を示したものに過ぎず、これによって本発明の技術的範囲が限定的に解釈されてはならないものである。すなわち、本発明はその要旨、またはその主要な特徴から逸脱することなく、様々な形で実施することができる。
【符号の説明】
【0051】
10 不眠症治療支援装置
11 眠気テスト実行部
12 情報入力部
13 睡眠効率算出部
14,14’ 就寝時刻設定部
15,15’ 実施時刻設定部
16 催告メッセージ提示部
17 フォローメッセージ提示部
【要約】
ユーザの睡眠効率に基づいて、ユーザの就寝時刻を設定してユーザに通知する就寝時刻設定部14と、就寝時刻より第1所定時間前の時刻を眠気テストの実施時刻に設定する実施時刻設定部15と、眠気テストの実施時刻になったときに、眠気テストの実施を促す催告メッセージをユーザに提示する催告メッセージ提示部16とを備え、眠気テストを1日に1回しか行わなくても、不眠症の改善度を示唆する睡眠効率に応じた適切な時刻に眠気テストが実施されるようにして、ユーザが眠気テストを実施する負担を極力小さくしつつ、不眠症の改善の程度に応じてユーザの眠気を正しく測定できるようにする。