【実施例1】
【0010】
まず、構成を説明する。
実施例1の電気自動車のバッテリパック温調構造における構成を、「バッテリパックBPの車載構成」、「バッテリパックBPのパック構成要素」、「バッテリパックBPのケース内部空間の領域区分構成」、「バッテリパックBPの温調構造」、「バッテリパックBPの温調ユニットとSDスイッチの関連構成」に分けて説明する。
【0011】
[バッテリパックBPの車載構成]
図1及び
図2は、実施例1の構造を採用したバッテリパックBPが搭載されたワンボックスタイプの電気自動車を示す概略側面図及び概略底面図である。以下、
図1及び
図2に基づき、バッテリパックBPの車載構成を説明する。
【0012】
前記バッテリパックBPは、
図1に示すように、車体フロア100の下部のホイールベース中央部位置に配置される。車体フロア100は、モータ室101と車室102を画成するダッシュパネル104との接続位置から、車室102に連通する荷室103を確保する車両後端位置まで設けられ、車両前方から車両後方までのフロア面凹凸を抑えたフラット形状としている。車室102には、インストルメントパネル105と、センターコンソールボックス106と、エアコンユニット107と、乗員シート108と、を有する。
【0013】
前記バッテリパックBPは、
図2に示すように、車体強度部材である車体メンバに対して8点支持される。車体メンバは、車両前後方向に延びる一対のサイドメンバ109,109と、一対のサイドメンバ109,109を車幅方向に連結する複数のクロスメンバ110,110,…と、を有して構成される。バッテリパックBPの両側は、一対の第1サイドメンバ支持点S1,S1と一対の第1クロスメンバ支持点C1,C1と一対の第2サイドメンバ支持点S2,S2により6点支持される。バッテリパックBPの後側は、一対の第2クロスメンバ支持点C2,C2により2点支持されている。
【0014】
前記バッテリパックBPは、
図1に示すように、ダッシュパネル104に沿って車両前後方向に直線状に配索した充放電ハーネス111を介し、モータ室101に配置されている強電モジュール112(DC/DCコンバータ+充電器)と接続される。このモータ室101には、強電モジュール112以外に、インバータ113と、モータ駆動ユニット114(走行用モータ+減速ギヤ+デファレンシャルギヤ)と、を有する。また、車両前面位置には、充電ポートリッドを有する急速充電ポート115と普通充電ポート116が設けられる。急速充電ポート115と強電モジュール112は、急速充電ハーネス117により接続される。普通充電ポート116と強電モジュール112は、普通充電ハーネス118により接続される。
【0015】
前記バッテリパックBPは、インストルメントパネル105内に配置されているエアコンユニット107を備えた車載空調システムと接続される。即ち、後述するバッテリモジュールが搭載されているバッテリパックBPの内部温度(バッテリ温度)を温調風(冷風、温風)により管理する。なお、冷風は、車載空調システムから分岐冷媒管を介して冷媒をエバポレータに導入することで作り出す。温風は、車載空調システムからのPTCハーネスを介してPTCヒータを作動することで作り出す。
【0016】
前記バッテリパックBPは、図外のCANケーブル等の双方向通信線を介し、外部の電子制御システムと接続される。即ち、バッテリパックBPは、外部の電子制御システムと情報交換に基づく統合制御により、バッテリモジュールの放電制御(力行制御)や充電制御(急速充電制御・普通充電制御・回生制御)等が行われる。
【0017】
[バッテリパックBPのパック構成要素]
図3及び
図4は、実施例1のバッテリパックBPの詳細を示す図である。以下、
図3及び
図4に基づき、バッテリパックBPのパック構成要素を説明する。
【0018】
実施例1のバッテリパックBPは、
図3及び
図4に示すように、バッテリパックケース1と、バッテリモジュール2と、温調風ユニット3と、サービス・ディスコネクト・スイッチ4(強電遮断スイッチ:以下、「SDスイッチ」という。)と、ジャンクションボックス5と、リチウムイオン・バッテリ・コントローラ6(以下、「LBコントローラ」という。)と、を備えていている。
【0019】
前記バッテリパックケース1は、
図3及び
図4に示すように、バッテリパックロアフレーム11とバッテリパックアッパーカバー12の2部品によって構成される。
【0020】
前記バッテリパックロアフレーム11は、
図4に示すように、車体メンバに対し支持固定されるフレーム部材である。このバッテリパックロアフレーム11には、バッテリモジュール2や他のパック構成要素3,4,5,6を搭載する方形凹部による搭載空間を有する。このバッテリパックロアフレーム11のフレーム前端縁には、冷媒管コネクタ端子13と充放電コネクタ端子14と強電コネクタ端子15(車室内空調用)と弱電コネクタ端子16とが取り付けられている。
【0021】
前記バッテリパックアッパーカバー12は、
図3に示すように、バッテリパックロアフレーム11の外周部位置にボルト固定されるカバー部材である。このバッテリパックアッパーカバー12には、バッテリパックロアフレーム11に搭載される各パック構成要素2,3,4,5,6のうち、特にバッテリモジュール2の凹凸高さ形状に対応した凹凸段差面形状によるカバー面を有する。
【0022】
前記バッテリモジュール2は、
図4に示すように、バッテリパックロアフレーム11に搭載され、第1バッテリモジュール21と第2バッテリモジュール22と第3バッテリモジュール23との3分割モジュールにより構成される。各バッテリモジュール21,22,23は、二次電池(リチウムイオンバッテリ等)による複数のバッテリセルを積み重ねた集合体構造である。各バッテリモジュール21,22,23の詳しい構成は、下記の通りである。
【0023】
前記第1バッテリモジュール21は、
図4に示すように、バッテリパックロアフレーム11のうち車両後部領域に搭載される。この第1バッテリモジュール21は、厚みが薄い直方体形状のバッテリセルを構成単位とし、複数個のバッテリセルを厚み方向に積み重ねたものを用意しておく。そして、バッテリセルの積み重ね方向と車幅方向を一致させて搭載する縦積み(例えば、20枚縦積み)により構成している。
【0024】
前記第2バッテリモジュール22と前記第3バッテリモジュール23のそれぞれは、
図4に示すように、バッテリパックロアフレーム11のうち、第1バッテリモジュール21より前側の車両中央部領域に車幅方向に左右分かれて一対搭載される。この第2バッテリモジュール22と第3バッテリモジュール23は、全く同じパターンによる平積み構成としている。即ち、厚みが薄い直方体形状のバッテリセルを構成単位とし、複数枚(例えば、4枚と5枚)のバッテリセルを厚み方向に積み重ねたものを複数個(例えば、4枚積みを1組、5枚積みを2組)用意しておく。そして、バッテリセルの積み重ね方向と車両上下方向を一致させた平積み状態としたものを、例えば、車両後方から車両前方に向かって順に4枚平積み・5枚平積み・5枚平積みというように、車両前後方向に複数個整列させることで構成している。第2バッテリモジュール22は、
図4に示すように、前側バッテリモジュール部22a,22bと、前側バッテリモジュール部22a,22bより高さ寸法がさらに1枚分低い後側バッテリモジュール部22cと、を有する。第3バッテリモジュール23は、
図4に示すように、前側バッテリモジュール部23a,23bと、前側バッテリモジュール部23a,23bより高さ寸法がさらに1枚分低い後側バッテリモジュール部23cと、を有する。
【0025】
前記温調風ユニット3は、
図4に示すように、バッテリパックロアフレーム11のうち車両前側空間の右側領域に配置され、バッテリパックBPの後述する送風ダクト9に温調風(冷風、温風)を送風する。なお、エバポレータ33には、フレーム前端縁に取り付けられた冷媒管コネクタ端子13を介して冷媒が導入される。
【0026】
前記SDスイッチ4は、
図3及び
図4に示すように、バッテリパックロアフレーム11のうち車両前側空間の中央部領域に配置され、手動操作によりバッテリ強電回路を機械的に遮断するスイッチである。バッテリ強電回路は、内部バスバーを備えた各バッテリモジュール21,22,23と、ジャンクションボックス5と、SDスイッチ4と、を互いにバスバーを介して接続することで形成される。このSDスイッチ4は、強電モジュール112やインバータ113等の点検や修理や部品交換等を行う際、手動操作によりスイッチ入とスイッチ断が切り替えられる。
【0027】
前記ジャンクションボックス5は、
図3及び
図4に示すように、バッテリパックロアフレーム11のうち車両前側空間の左側領域に配置され、リレー回路により強電の供給/遮断/分配を集中的に行う。このジャンクションボックス5には、温調風ユニット3の制御を行う温調用リレー51と温調用コントローラ52が併設されている。ジャンクションボックス5と外部の強電モジュール112は、充放電コネクタ端子14と充放電ハーネス111を介して接続される。ジャンクションボックス5と外部の電子制御システムは、弱電ハーネスを介して接続される。
【0028】
前記LBコントローラ6は、
図4に示すように、第1バッテリモジュール21の左側端面位置に配置され、各バッテリモジュール21,22,23の容量管理・温度管理・電圧管理を行う。このLBコントローラ6は、温度検出信号線からの温度検出信号、バッテリ電圧検出線からのバッテリ電圧検出値、バッテリ電流検出信号線からのバッテリ電流検出信号に基づく演算処理により、バッテリ容量情報やバッテリ温度情報やバッテリ電圧情報を取得する。そして、LBコントローラ6と外部の電子制御システムは、リレー回路のオン/オフ情報やバッテリ容量情報やバッテリ温度情報等を伝達する弱電ハーネスを介して接続される。
【0029】
[バッテリパックBPのケース内部空間の領域区分構成]
図5は、実施例1のバッテリパックBPのケース内部空間の領域区分構成を示す平面図である。以下、
図5に基づき、バッテリパックBPのケース内部空間の領域区分構成を説明する。
【0030】
実施例1のバッテリパックBPは、
図5に示すように、バッテリパックケース1の内部空間を、車幅方向に引かれる境界線Lを隔てて、車両後方側のバッテリモジュール搭載領域7と車両前方側の電装品搭載領域8の2つの車両前後方向領域に分けている。バッテリモジュール搭載領域7は、車両後方端から車両前方寄りの境界線Lまでのケース内部空間の大半の領域を占有する。電装品搭載領域8は、車両前方端から車両前方寄りの境界線Lまでのバッテリモジュール搭載領域7より狭い領域を占有する。
【0031】
前記バッテリモジュール搭載領域7は、T字通路(中央通路36と横断通路37)により第1分割矩形領域71と第2分割矩形領域72と第3分割矩形領域73の三つの分割矩形領域に区分される。第1分割矩形領域71には、一側面にLBコントローラ6を有する第1バッテリモジュール21が搭載される。第2分割矩形領域72には、第2バッテリモジュール22が搭載される。第3分割矩形領域73には、第3バッテリモジュール23が搭載される。
【0032】
前記電装品搭載領域8は、車幅方向に分けられた第1区分領域81と第2区分領域82と第3区分領域83の三つの区分領域に分けられる。第1区分領域81から第2区分領域82の下部にかけては、温調風ユニット3が搭載される。第2区分領域82の上部には、SDスイッチ4が搭載される。第3区分領域83には、ジャンクションボックス5が搭載される。
【0033】
前記バッテリパックBPの内部空間には、温調風ユニット3に接続される送風ダクト9(
図6、
図8〜
図11参照)の配置を確保すると共に温調風の内部循環を確保する温調風通路を、各バッテリモジュール21,22,23を分割矩形領域に搭載したときの隙間を利用して形成している。この温調風通路としては、車両前後方向の中央通路36と、該中央通路36に交差する車幅方向の横断通路37と、流れ込んできた温調風を温調風ユニット3に戻す環状通路38と、を有する。中央通路36は、第2バッテリモジュール22と第3バッテリモジュール23の対向面に隙間を持たせることで形成される。横断通路37は、第1バッテリモジュール21と第2,第3バッテリモジュール22,23の対向面に隙間を持たせることで形成される。環状通路38は、バッテリパックロアフレーム11と各パック構成要素2,3,4,5,6との間に隙間余裕を持たせることで形成される。なお、温調風通路としては、中央通路36と横断通路37と環状通路38以外に、ケース内部空間にパック構成要素2,3,4,5,6を搭載することにより形成される隙間や間隔や空間も含まれる。
【0034】
[バッテリパックBPの温調構造]
図6〜
図12は、実施例1のバッテリパックBPに搭載された温調構造の詳細を示す図である。以下、
図6〜
図12に基づき、バッテリパックBPの温調構造を説明する。
【0035】
前記バッテリパックBPの温調構造は、
図6に示すように、第1バッテリモジュール21と、第2,第3バッテリモジュール22,23と、温調ユニット3と、送風ダクト9と、を備える。
【0036】
前記第1バッテリモジュール21は、バッテリパックケース1の内部空間の車両後方領域に収納配置される。
【0037】
前記第2,第3バッテリモジュール22,23は、バッテリパックケース1の内部空間のうち、第1バッテリモジュール21よりも車両前方領域に収納配置されると共に、モジュールの高さ寸法が第1バッテリモジュール21よりも低く設定される。
【0038】
前記温調ユニット3は、
図7に示すように、ユニットケース31と、送風ファン32と、エバポレータ33と、PTCヒータ34と、ユニットダクト35と、を有して構成される。ユニットケース31の吐出口に接続されるユニットダクト35には、第1バッテリモジュール21及び第2,第3バッテリモジュール22,23に対し温調風を送風する送風口35aを有する。
【0039】
前記送風ダクト9は、
図6に示すように、一端がユニットダクト35の送風口35aに接続され、他端が第2,3バッテリモジュール22,23の上面よりも車両上方に突出した第1バッテリモジュール21のモジュール正面上部域21a(
図4参照)に対向配置される。そして、他端位置に、
図8及び
図11に示すように、モジュール正面上部域21aに沿って車幅方向に延在すると共に、車両後方に向けて温調風を吹き出す吹き出し開口91が形成される。
【0040】
前記送風ダクト9は、
図6に示すように、各バッテリモジュール21,22,23の区分搭載により形成され、互いに交差する中央通路36と横断通路37によるT字隙間スペース域に配置される。この送風ダクト9は、
図8〜
図10に示すように、ユニットダクト35の送風口35aに接続され、車幅方向の寸法が一定で車両前後方向に延設した等幅ダクト部92と、該等幅ダクト部92に接続され、吹き出し開口91に向かって車幅方向寸法を徐々に拡大した拡幅ダクト部93と、を有する。
【0041】
前記吹き出し開口91は、第1バッテリモジュール21のモジュール正面上部域21aに沿って車幅方向の広い範囲で温調風を吹き出すように3分割によるスリット状の開口とされる。そして、吹き出し開口91から吹き出される温調風を受ける第1バッテリモジュール21の各バッテリセル200は、
図12に示すように、カシメ固定される縦2分割のセルホルダー200a,200aにより外側を保持することで構成される。このセルホルダー200a,200aは、吹き出し開口91から車両後方への温調風をセルホルダー200a,200a内に導く流入開口200bと、流入した温調風を排出する流出開口200cを有する。なお、第2,3バッテリモジュール22,23の各バッテリセルについても、温調風の内部循環流れをスムーズにするように同様の構成としている。
【0042】
前記等幅ダクト部92は、中央通路36の通路断面形状(長方形形状)に相似する縦長のダクト断面形状を保つ形状設定とされ、第2,第3バッテリモジュール22,23のうち、高さが高い前側バッテリモジュール部22a,22b,23a,23bの中央通路36に沿って配置される。
【0043】
前記拡幅ダクト部93は、
図8に示すように、ダクト断面形状の高さを、吹き出し開口91に向かって次第に縮小(
図10)し、且つ、ダクト断面形状の幅を、吹き出し開口91に向かって次第に拡大(
図9)する形状設定とされる。そして、第2,第3バッテリモジュール22,23のうち、高さが低い後側バッテリモジュール部22c,23cの上方スペース及び横断通路37に沿って配置される。
【0044】
[バッテリパックBPの温調ユニットとSDスイッチの関連構成]
図8は、実施例1のバッテリパックBPに搭載されたSDスイッチ,温調風ユニット及び送風ダクトを示す斜視図である。以下、
図8に基づいて、バッテリパックBPの温調ユニット3とSDスイッチ4の関連構成を説明する。
【0045】
前記バッテリパックBPに内部には、
図8に示すように、温調ユニット3と、SDスイッチ4と、送風ダクト9と、スイッチ固定フレーム41と、を備えている。
【0046】
前記温調ユニット3とSDスイッチ4は、バッテリパックケース1の内部空間のうち、上部空間位置にSDスイッチ4を配置している。そして、SDスイッチ4の下方位置であって、SDスイッチ4と車両上下方向に重なり合う位置に温調ユニット3を配置するという関連構成としている。
【0047】
前記温調ユニット3は、送風ファン32を内蔵したユニットケース31を電装品搭載領域8の一端部位置に配置し、ユニットケース31に接続されるユニットダクト35を、電装品搭載領域8の中央下部位置に配置している。
【0048】
前記SDスイッチ4は、レバー操作によりバッテリ強電回路を断接するスイッチ接点を内部に有するスイッチ本体部42と、車両前後方向の軸を中心にスイッチオン位置から鉛直上方に回動し、その後、引き抜きによりスイッチオフ状態となるレバー43aを有する手動操作部43と、を備える。スイッチ本体部42は、電装品搭載領域7の中央上部位置に配置され、スイッチ本体部42に連設する手動操作部43は、バッテリパックケース1から外部に露出して配置される。
【0049】
前記スイッチ固定フレーム41は、バッテリパックケース1の内部に固定され、プレート部41aと、該プレート部41aから下方に延びてバッテリパックケース1(バッテリパックロアフレーム11)に固定した脚部41bと、を有する。そして、スイッチ固定フレーム41のうちプレート部41aの上面位置に、SDスイッチ4のスイッチ本体部42が設定される。一方、スイッチ固定フレーム41のうち脚部41bの周囲に形成されるスイッチ下方スペースSに、円弧形状で直角に屈曲するユニットダクト35が配置される。このユニットダクト35の送風口35aに、送風ダクト9が接続される。
【0050】
次に、作用を説明する。
実施例1の電気自動車のバッテリパック温調構造における作用を、「バッテリパックBPの充放電作用」、「バッテリパックBPのバッテリ温度調整作用」、「温調ユニットとSDスイッチの配置作用」に分けて説明する。
【0051】
[バッテリパックBPの充放電作用]
リチウムイオンバッテリ等の二次電池を搭載したバッテリパックBPは、エンジン車にとっての燃料タンクに相当し、バッテリ容量を増加させる充電とバッテリ容量を減少させる放電が繰り返される。以下、バッテリパックBPの充放電作用を説明する。
【0052】
急速充電スタンドに停車して急速充電を行う時には、車両前面位置の充電ポートリッドを開き、スタンド側の急速充電用コネクタを車両側の急速充電ポート115に差し込む。この急速充電操作を行うと、急速充電ハーネス117を介して強電モジュール112のDC/DCコンバータに直流急速充電電圧が送電され、DC/DCコンバータでの電圧変換により直流充電電圧とされる。この直流充電電圧は、充放電ハーネス111を介してバッテリパックBPに送電され、バッテリパックBP内のジャンクションボックス5及びバスバーを経過し、各バッテリモジュール21,22,23のバッテリセルに充電される。
【0053】
家庭等で駐車して普通充電を行う時には、車両前面位置の充電ポートリッドを開き、家庭電源側の普通充電用コネクタを車両側の普通充電ポート116に差し込む。この普通充電操作を行うと、普通充電ハーネス118を介して強電モジュール112の充電器に交流普通充電電圧が送電され、充電器での電圧変換及び交流/直流変換により直流充電電圧とされる。この直流充電電圧は、充放電ハーネス111を介してバッテリパックBPに送電され、バッテリパックBP内のジャンクションボックス5及びバスバーを経過し、各バッテリモジュール21,22,23のバッテリセルに充電される。
【0054】
モータ駆動力により走行するモータ力行時には、各バッテリモジュール21,22,23からの直流バッテリ電圧が、バスバー及びジャンクションボックス5を介してバッテリパックBPから放電される。この放電された直流バッテリ電圧は、充放電ハーネス111を介して強電モジュール112のDC/DCコンバータに送電され、DC/DCコンバータでの電圧変換により直流駆動電圧とされる。この直流駆動電圧は、インバータ113での直流/交流変換により交流駆動電圧とされる。この交流駆動電圧は、モータ駆動ユニット114の走行用モータに印加され、走行用モータを回転駆動する。
【0055】
減速要求時に走行用モータをジェネレータとして用いるモータ回生時には、走行用モータがジェネレータ機能を発揮し、駆動タイヤから入力された回転エネルギーを発電エネルギーに変換する。この発電エネルギーにより発電された交流発電電圧は、インバータ113での交流/直流変換により直流発電電圧とされ、強電モジュール112のDC/DCコンバータでの電圧変換により直流充電電圧とされる。この直流充電電圧は、充放電ハーネス111を介してバッテリパックBPに送電され、バッテリパックBP内のジャンクションボックス5及びバスバーを経過し、各バッテリモジュール21,22,23のバッテリセルに充電される。
【0056】
[バッテリパックBPのバッテリ温度調整作用]
バッテリは温度依存度が高く、バッテリ温度が高過ぎても、また、バッテリ温度が低過ぎてもバッテリ性能が低下する。したがって、できる限り高いバッテリ性能を維持するためには、バッテリパックBPに内蔵したバッテリ温度を最適温度域に調整することが必要である。以下、
図5,
図6及び
図11,
図12に基づき、これを反映するバッテリパックBPのバッテリ温度調整作用を説明する。
【0057】
まず、温調用コントローラ52により行われるバッテリパックBPの温調制御作用を述べる。例えば、バッテリ充放電負荷の継続や高い外気温度の影響を受けて、バッテリパックBPの内部温度が第1設定温度より高くなると、冷媒を温調風ユニット3のエバポレータ33に導入し、送風ファン32を回す。これにより、エバポレータ33を通過する風から熱が奪われて冷風が作り出される。この冷風を、送風ダクト9を介して第1バッテリモジュール21と第2バッテリモジュール22と第3バッテリモジュール23が搭載されているケース内部空間を循環させることにより、バッテリパックBPの内部温度(=バッテリ温度)を低下させる。
【0058】
これに対し、例えば、冷風循環や低い外気温度の影響を受けて、バッテリパックBPの内部温度が第2設定温度より低くなると、温調風ユニット3のPTCヒータ34に通電し、送風ファン32を回す。これにより、PTCヒータ34を通過する風に熱が与えられて温風が作り出される。この温風を、送風ダクト9を介して第1バッテリモジュール21と第2バッテリモジュール22と第3バッテリモジュール23が搭載されているケース内部空間を循環させることにより、バッテリパックBPの内部温度(=バッテリ温度)を上昇させる。
【0059】
このように、バッテリパックBPの温調制御を行うことで、バッテリパックBPの内部温度を、高いバッテリ性能が得られる第1設定温度〜第2設定温度の範囲に維持することができる。このとき、第1バッテリモジュール21と第2バッテリモジュール22と第3バッテリモジュール23の温度分布が均等になるように、温調風を吹き出しながら循環させることが重要である。以下、温調風によるバッテリ温度調整作用を述べる。
【0060】
温調風ユニット3の吹き出し口35aから吹き出される温調風(冷風、温風)は、送風ダクト9を通過して車両前方から車両後方に向かって流れる。そして、送風ダクト9の吹き出し口91から、
図6の矢印Bに示すように、第1バッテリモジュール21のモジュール正面上部域21aに沿って車幅方向の広い範囲で温調風を吹き出される。したがって、送風ダクト9の吹き出し口91から吹き出される温調風と、第1バッテリモジュール21との間で熱交換が行われる。
【0061】
そして、第1バッテリモジュール21との間で熱交換した温調風は、
図6の矢印C,Cに示すように、車幅方向の両側に分かれて環状通路38に流れ込む。この環状通路38に流れ込んできた温調風は、
図6の矢印D,Dに示すように、環状通路38のうち、車両両側通路部をそれぞれ車両後方から車両前方に向かって流れる。この車両後方から車両前方に向かう温調風のうち、一部の温調風は、
図6の矢印E,F,Gに示すように、横断通路37や第2バッテリモジュール22と第3バッテリモジュール23の隙間を経由し、中央通路36に向かって流れ、中央通路36にて合流する。したがって、中央通路36に向かって流れる車幅方向の温調風と、第2バッテリモジュール22及び第3バッテリモジュール23との間で熱交換が行われる。
【0062】
そして、第1バッテリモジュール21との間で熱交換した後、環状通路38の車両両側通路部をそのまま車両後方から車両前方に向かって流れた温調風は、環状通路38の車両前方側通路部を経由し温調風ユニット3の吸入側に戻される。加えて、第2バッテリモジュール22及び第3バッテリモジュール23との間で熱交換した後、合流したて中央通路36を車両後方から車両前方に向かって流れた温調風は、車両前方側通路部にて合流し、温調風ユニット3の吸入側に戻される。このように、熱交換後の温調風が温調風ユニット3の吸入側に戻されると、戻された温調風を吸込み、温調風ユニット3にて再び冷風または温風が作り出され、上記温調作用が繰り返される。
【0063】
上記のように、実施例1では、温調ユニット3の送風口35aに一端が接続された送風ダクト9の他端を、第2,3バッテリモジュール22,23の上面よりも車両上方に突出した第1バッテリモジュール21のモジュール正面上部域21aに対向配置した。そして、送風ダクト9の他端位置に、モジュール正面上部域21aに沿って車幅方向に延在すると共に、車両後方に向けて温調風を吹き出す吹き出し開口91を形成する構成を採用した。
【0064】
上記構成によって、温調ユニット3からの温調風は、送風口35aから送風ダクト9を経由し、送風ダクト9の吹き出し開口91から、第1バッテリモジュール21のモジュール正面上部域21aに対し車両後方に向けて吹き出される。
【0065】
例えば、走行中、温度が上昇したバッテリモジュールを監視すると、走行風による冷却作用は、車両前方側バッテリモジュールに対する冷却作用が大きく、車両後方側バッテリモジュールに対する冷却作用が小さい。このため、ケース内のバッテリモジュールの温度分布をみると、車両前方側バッテリモジュールより車両後方側バッテリモジュールの温度が高い温度分布を示す。この温度分布状態で車両前方側バッテリモジュールに対し先に冷却風を吹き出すと、車両後方側バッテリモジュールに冷却風が届くのが遅れ、車両後方側バッテリモジュールが、高温のままの時間が続き、温度落差が大きな温度分布状態が長く維持されることになる。
【0066】
これに対し、第1バッテリモジュール21に対し先に冷却風を吹き出すと、温度が高い第1バッテリモジュール21の温度が応答良く低下し、その後、バッテリパックケース1の内部空間の雰囲気温度が低下し、第2、第3バッテリモジュール22,23を冷却するという作用を示す。このため、第1バッテリモジュール21と第2,3バッテリモジュール22,23の温度落差が短時間にて小さく抑えられ、効率的に各バッテリモジュール21,22,23の温度均一化が図られる。
【0067】
さらに、車両前後方向に並べて配置される第1バッテリモジュール21と第2,3バッテリモジュール22,23は、高さの違いから段差が生じることに着目し、送風ダクト9の吹き出し開口91を、第1バッテリモジュール21のモジュール正面上部域21aに対向配置した。このため、送風ダクト9の高さを、第1バッテリモジュール21の最大高さ位置よりも高い位置に設定する必要が無く、バッテリパックケース1の最大高さ寸法が、送風ダクト9の高さによって規定されることがない。すなわち、送風ダクト9を第1バッテリモジュール21まで延ばしているにもかかわらず、バッテリパックケース1の最大高さ寸法は、送風ダクト9の高さを考慮することなく、第1バッテリモジュール21の高さ寸法を基準として決めることができる。
【0068】
この結果、バッテリパックケース1に収容される各バッテリモジュール21,22,23の温度均一化を図りながら、バッテリパックケース1の最大高さが低く抑えられる。すなわち、フロア下部の限られたスペースに配置されるバッテリパックBPへ要求される高温調性能要求とコンパクト化要求に応えることができる。
【0069】
実施例1では、温調ユニット3の送風口35aを、中央通路36に向けて電装品搭載領域8に配置する。そして、送風ダクト9を、各バッテリモジュール21,22,23の区分搭載により形成され、互いに交差する中央通路36と横断通路37によるT字隙間スペース域に配置する構成を採用した。
このように、温調ユニット3は、予め設定された電装品搭載領域8に配置され、送風ダクト9は、各バッテリモジュール21,22,23の区分搭載により互いに交差する中央通路36と横断通路37により形成されるT字隙間スペース域を利用して配置される。
したがって、バッテリモジュール2と温調ユニット3と送風ダクト9をバッテリパックケース1に内蔵する配置としながらも、バッテリパックBPを大型化する必要が無く、バッテリパックBPのコンパクト化が図られる。
【0070】
実施例1では、送風ダクト9を、温調ユニット3の送風口35aに接続され、車幅方向の寸法が一定で車両前後方向に延設した等幅ダクト部92と、該等幅ダクト部92に接続され、吹き出し開口91に向かって車幅方向寸法を徐々に拡大した拡幅ダクト部93と、を有する構成とした。そして、等幅ダクト部92を、中央通路36に沿って配置し、拡幅ダクト部93を、後側バッテリモジュール部22c,23cの上方スペース及び横断通路37に沿って配置する構成を採用した。
このように、送風ダクト9のうち、等幅ダクト部92は、中央通路36を利用して配置され、拡幅ダクト部93は、後側バッテリモジュール部22c,23cの上方スペース及び横断通路37を利用して配置される。
したがって、バッテリパックBPの内部空間に形成した隙間スペースを活用することで、モジュール正面上部域21aに沿って車幅方向に延在する吹き出し開口91を形成した送風ダクト9が、スペース効率良く配置される。
【0071】
実施例1では、等幅ダクト部92を、中央通路36の通路断面形状に相似する縦長のダクト断面形状を保つ形状設定とした。そして、拡幅ダクト部93を、ダクト断面形状の高さを、吹き出し開口91に向かって次第に縮小し、且つ、ダクト断面形状の幅を、吹き出し開口91に向かって次第に拡大する形状設定とする構成を採用した。
例えば、温調風の縦長流れを横長流れに変換して送風ダクトの内部を流す際、流れの変換領域にて通路断面積が大きく変化すると乱流を生じる原因となり、送風ダクトの吹き出し開口から吹き出す温調風の速度分布が大きくばらつく。
これに対し、縦長流れを横長流れに変換する領域にて通路断面積の変化を抑えたことで、送風ダクト9の吹き出し開口91から均等化した速度分布により温調風が吹き出される。
【0072】
実施例1では、縦積み搭載とした各バッテリセル200により第1バッテリモジュール21を構成する。そして、各バッテリセル200の外側を保持するセルホルダー200a,200aに、温調風をホルダー内に導く流入開口200bと、流入した温調風を排出する流出開口200cを有する構成を採用した。
この構成により、送風ダクト9の吹き出し開口91から車両後方への温調風は、流入開口200bからセルホルダー200a,200a内に導かれ、各バッテリセル200の周りに温調風が直接流れ込み、各バッテリセル200から効率よく熱を奪ったり、各バッテリセル200に効率よく熱を与えたりする。
したがって、送風ダクト9の吹き出し口91からの温調風と、第1バッテリモジュール21との間での熱交換効率の高まりにより、バッテリ温度調整効果がさらに向上する。
【0073】
[温調ユニットとSDスイッチの配置作用]
上記のように、バッテリパックBPに温調ユニットとSDスイッチを内蔵する場合、バッテリパックBPがフロア下部の限られたスペースに配置されるため、スペース効率を高めて温調ユニットとSDスイッチを配置することが要求される。以下、これを反映する温調ユニットとSDスイッチの配置作用を説明する。
【0074】
実施例1では、バッテリパックケース1の内部空間のうち、上部空間位置にSDスイッチ4を配置した。そして、SDスイッチ4の下方空間位置であって、SDスイッチ4と車両上下方向に重なり合う位置に温調ユニット3を配置する構成を採用した。
【0075】
例えば、バッテリパックケースの内部空間にSDスイッチと温調ユニットを配置するとき、SDスイッチの車両前方位置に温調ユニットを配置すると、バッテリパックケースの必要前後方向寸法が増大する。また、SDスイッチの車幅方向位置に温調ユニットを配置すると、バッテリパックケースの必要車幅方向寸法が増大する。
【0076】
これに対し、バッテリパックケース1の内部にバッテリモジュール21,22,23と共に電装品を配置するとき、電装品であるSDスイッチ4と温調ユニット3が車両上下方向に互いに重ね合わせた配置とすることで、ケース内でのスペース効率を高められる。
【0077】
この結果、SDスイッチ4と温調ユニット3をバッテリパックケース1の内部に設定しながらも、前後方向ケース寸法や車幅方向ケース寸法の増大が抑えられる。すなわち、フロア下部の限られたスペースに配置されるバッテリパックBPのコンパクト化要求に応えることができる。
【0078】
実施例1では、バッテリパックケース1の内部に、プレート部41aと、該プレート部41aから下方に延びてバッテリパックケース1に固定した脚部41bと、を有するスイッチ固定フレーム41を設けた。そして、SDスイッチ4を、プレート部41aの上面位置に設定し、温調ユニット3を、SDスイッチ4の下方位置であって、脚部41bの周囲に形成されたスイッチ下方スペースSに配置した構成を採用した。
すなわち、スイッチ固定フレーム41により、SDスイッチ4の設定場所と、温調ユニット3の設定空間が、それぞれ上下方向に分離される。
したがって、SDスイッチ4と温調ユニット3を、スイッチ固定フレーム41を隔てて上下分離配置とすることで、バッテリパックBPに振動等が入力しても、SDスイッチ4と温調ユニット3の干渉が防止される。
【0079】
実施例1では、温調ユニット3を、送風ファン32を内蔵したユニットケース31と、ユニットケース31に接続され、バッテリモジュール21,22,23に向けて送風口35aを開口したユニットダクト35と、を有する構成とした。そして、ユニットケース31を、SDスイッチ4の側方位置に配置し、ユニットダクト35を、SDスイッチ4の下部位置に配置する構成を採用した。
例えば、温調ユニット3の場合、バッテリモジュール2への送風方向を決めるため、ユニットケース31にユニットダクト35が接続される。しかし、ユニットダクト35としては、送風方向をバッテリモジュール2に合わせるために屈曲した形状等によるものが用いられることで大型化する。このユニットダクト35を配置するスペースを確保する必要がある。
これに対し、送風方向をバッテリモジュール2へ合わせるための温調ユニット3のユニットダクト35が、SDスイッチ4と車両上下方向に互いに重ね合わせた配置とされる。
【0080】
実施例1では、バッテリパックケース1の内部空間を、車幅方向に引かれる境界線Lを隔てて、車両後方側のバッテリモジュール搭載領域7と車両前方側の電装品搭載領域8に分けた。そして、バッテリモジュール2をバッテリモジュール搭載領域7に配置し、SDスイッチ4と温調ユニット3を、電装品搭載領域8に配置する構成を採用した。
この構成により、バッテリモジュール2がバッテリモジュール搭載領域7に配置され、SDスイッチ4と温調ユニット3が、予め分けられた電装品搭載領域8に配置される。
したがって、バッテリモジュール2とSDスイッチ4と温調ユニット3を内蔵するバッテリパックBPのコンパクト化が達成される。
【0081】
次に、効果を説明する。
実施例1の電気自動車のバッテリパック温調構造にあっては、下記に列挙する効果を得ることができる。
【0082】
(1) バッテリパックケース1の内部空間に搭載したバッテリモジュール2と、
前記バッテリモジュール2のバッテリ強電回路を手動操作により遮断する強電遮断スイッチ(SDスイッチ4)と、
前記バッテリパックケース1の内部空間に搭載され、前記バッテリモジュール2へ供給する温調風を作り出す温調ユニット3と、
を備えた電気自動車のバッテリパック温調構造において、
前記バッテリパックケース1の内部空間のうち、上部空間位置に前記強電遮断スイッチ(SDスイッチ4)を配置し、
前記強電遮断スイッチ(SDスイッチ4)の下方空間位置であって、前記強電遮断スイッチ(SDスイッチ4)と車両上下方向に重なり合う位置に前記温調ユニット3を配置した。
このため、強電遮断スイッチ(SDスイッチ4)と温調ユニット3をバッテリパックケース1の内部に設定しながらも、前後方向ケース寸法や車幅方向ケース寸法の増大を抑えることができる。
【0083】
(2) 前記バッテリパックケース1の内部に、プレート部41aと、該プレート部41aから下方に延びて前記バッテリパックケース1に固定した脚部41bと、を有するスイッチ固定フレーム41を設け、
前記強電遮断スイッチ(SDスイッチ4)を、前記プレート部41aの上面位置に設定し、
前記温調ユニット3を、前記強電遮断スイッチ(SDスイッチ4)の下方位置であって、前記脚部41bの周囲に形成されるスイッチ下方スペースSに配置した。
このため、(1)の効果に加え、強電遮断スイッチ(SDスイッチ4)と温調ユニット3を、スイッチ固定フレーム41を隔てて上下分離配置とすることで、バッテリパックBPに振動等が入力しても、強電遮断スイッチ(SDスイッチ4)と温調ユニット3の干渉を防止することができる。
【0084】
(3) 前記温調ユニット3は、送風ファン32を内蔵したユニットケース31と、該ユニットケース31に接続され、前記バッテリモジュール2に向けて送風口35aを開口したユニットダクト35と、を有し、
前記ユニットケース31を、前記強電遮断スイッチ(SDスイッチ4)の側方位置に配置し、
前記ユニットダクト35を、前記強電遮断スイッチ(SDスイッチ4)の下部位置に配置した。
このため、(1)又は(2)の効果に加え、送風方向をバッテリモジュール2へ合わせるための温調ユニット3のユニットダクト35を、強電遮断スイッチ(SDスイッチ4)と車両上下方向に互いに重ね合わせた配置とすることができる。
【0085】
(4) 前記バッテリパックケース1の内部空間を、車幅方向に引かれる境界線Lを隔てて、車両後方側のバッテリモジュール搭載領域7と車両前方側の電装品搭載領域8に分け、
前記バッテリモジュール2を、前記バッテリモジュール搭載領域7に配置し、
前記強電遮断スイッチ(SDスイッチ4)と前記温調ユニット3を、前記電装品搭載領域8に配置した。
このため、(1)〜(3)の効果に加え、バッテリモジュール2と強電遮断スイッチ(SDスイッチ4)と温調ユニット3を内蔵するバッテリパックBPのコンパクト化を達成することができる。
【0086】
以上、本発明の電気自動車のバッテリパック温調構造を実施例1に基づき説明してきたが、具体的な構成については、この実施例1に限られるものではなく、特許請求の範囲の各請求項に係る発明の要旨を逸脱しない限り、設計の変更や追加等は許容される。
【0087】
実施例1では、温調ユニット3として、冷風と温風を作り出すユニットの例を示した。しかし、温調ユニットとしては、冷風のみを作り出すユニットの例としても良い。また、温風のみを作り出すユニットの例としても良い。さらに、ファンからの強制送風によりバッテリ温度を低下させるユニットの例としても良い。
【0088】
実施例1では、SDスイッチ4を、バッテリパックBPの前側中央部位置に設定した例を示した。しかし、SDスイッチは、車室内等から操作可能な位置であれば、バッテリパックのどの位置に設けたものであっても良い。
【0089】
実施例1では、バッテリパックケース1の内部にスイッチ固定フレーム41を設け、このスイッチ固定フレーム41に対し、SDスイッチ4と温調ユニット3を配置する例を示した。しかし、スイッチ固定フレームを設けることなく、バッテリパックケースにSDスイッチを固定配置し、SDスイッチの下方に温調ユニットを配置するような例としても良い。また、温調ユニットケースの上面位置にSDスイッチを設定するような例としても良い。
【0090】
実施例1では、温調ユニット3のユニットケース31を、SDスイッチ4の側方位置に配置し、ユニットダクト35を、SDスイッチ4の下部位置に配置する例を示した。しかし、SDスイッチの下部位置に温調ユニットの全体を配置する例としても良い。また、SDスイッチの下部位置に温調ユニットのうちユニットケースを配置する例としても良い。すなわち、温調ユニットの少なくとも一部以上の部分が、SDスイッチと上下方向に縦列配置されるものであれば良い。
【0091】
実施例1では、バッテリパックケース1の内部空間を、バッテリモジュール搭載領域7と電装品搭載領域8に分け、バッテリモジュール2を、バッテリモジュール搭載領域7に配置し、SDスイッチ4と温調ユニット3を、前記電装品搭載領域8に配置する例を示した。しかし、バッテリパックケースの内部空間を、領域分けすることなく、SDスイッチと温調ユニットを配置するものにも適用できる。
【0092】
実施例1では、本発明のバッテリパック温調構造を走行用駆動源として走行用モータのみを搭載したワンボックスタイプの電気自動車に適用する例を示した。しかし、本発明の電気自動車のバッテリパック温調構造は、ワンボックスタイプ以外に、セダンタイプやワゴンタイプやSUVタイプ等の様々な電気自動車に適用できるのは勿論である。さらに、走行用駆動源として走行用モータとエンジンを搭載したハイブリッドタイプの電気自動車(ハイブリッド電気自動車)に対しても適用することができる。要するに、フロア下部やラゲージルーム等にバッテリパックを備えた電気自動車であれば適用できる。