【実施例】
【0047】
<4.実施例>
以下、本発明の実施例について説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。
【0048】
図1に示すように、樹脂粒子11に導電層12と表面層13とをこの順に形成した実施例1〜9の導電性粒子10を作製した。また、従来技術として、
図4に示すように、樹脂粒子51に表面層52を形成した比較例1〜3の導電性粒子を作製した。また、各導電性粒子について、導電層の厚さ及び表面層の厚さを測定した。
【0049】
次に、実施例1〜9及び比較例1〜3の導電性粒子を用い、回路接続材料として異方性導電フィルムを作製した。そして、各異方性導電フィルムを用いて接続抵抗評価用、信頼性評価用、及び耐電流性評価用の実装体、及び耐腐食性評価用の実装体を作製した。
【0050】
導電層及び表面層の厚さ測定、異方性導電フィルムの作製、実装体の作製、及び各評価は、次のように行った。
【0051】
[導電層及び表面層の厚さ測定]
エポキシ接着剤に導電性粒子を分散させて硬化させ、研磨機(丸本ストルアス社製)にて粒子断面を削り出した。この粒子断面をSEM(Scanning Electron Microscope)(キーエンス社製、VE−8800)にて観察し、導電層の厚さ及び表面層の厚さを測定した。
【0052】
[異方性導電フィルムの作製]
マイクロカプセル型アミン系硬化剤(旭化成ケミカルズ社製、商品名ノバキュアHX3941HP)50部、液状エポキシ樹脂(ジャパンエポキシレジン社製、商品名EP828)14部、フェノキシ樹脂(東都化成社製、商品名YP50)35部、及びシランカップリング剤(信越化学社製、商品名KBE403)1部を含む熱硬化性バインダー樹脂に、実施例及び比較例の導電性粒子を体積比率10%になるように分散させた。この接着剤組成物を、シリコーン処理された剥離PETフィルム上に厚み35μmになるように塗布し、シート状の異方性導電フィルムを作製した。
【0053】
[接続抵抗評価用、信頼性評価用、及び耐電流性評価用の実装体の作製]
各異方性導電フィルムを用いてCOF(評価用基材、200μmP、Cu8μmt-Snめっき、38μmt-S’perflex基材)とPWB(評価用基材、200μmP、Cu35μmt-Auめっき、FR-4基材)の接続を行なった。先ず、2.0mm幅にスリットされた異方性導電フィルムをPWBに貼り付け(条件:80℃-1MPa-1sec)、その上にCOFを位置あわせした後、圧着条件190℃−3MPa−10sec、緩衝材250μmtシリコンラバー、2.0mm幅加熱ツールにて圧着を行い、実装体を完成させた。
【0054】
[耐腐食性評価用の実装体の作製]
各異方性導電フィルムを用いてCOF(評価用基材、50μmP、Cu8μmt-Snめっき、38μmt-S’perflex基材)とノンアルカリガラス(評価用基材、0.7mmt)の接続を行なった。先ず、2.0mm幅にスリットされた異方性導電フィルムをノンアルカリガラスに貼り付け(条件:80℃-1MPa-1sec)、その上にCOFを位置あわせした後、圧着条件190℃−3MPa−10sec、緩衝材250μmtシリコンラバー、2.0mm幅加熱ツールにて圧着を行い、実装体を完成させた。
【0055】
[接続抵抗及び信頼性の評価]
各実装体についてデジタルマルチメータ(品番:デジタルマルチメータ7555、横河電機社製)を用いて4端子法にて電流1mAを流したときの導通抵抗値の測定をおこなった。
【0056】
初期(Initial)の導通抵抗値を用いて接続抵抗を評価した。導通抵抗値が0.2Ω以下を○、0.2Ω超0.5Ω未満を△、及び0.5Ω以上を×と評価した。
【0057】
また、温度85℃、湿度85%RH、500時間のTHテスト(Thermal Humidity Test)後の導通抵抗値を用いて信頼性を評価した。導通抵抗値が0.2Ω以下を○、0.2Ω超0.5Ω未満を△、及び0.5Ω以上を×と評価した。
【0058】
[耐電流性の評価]
図5に示すように、各実装体について、V−I測定を行い電流特性の評価を実施した。実装体は、PWB61に形成されたPWB導体パターン62と、COFに形成されたCOF導体パターン64とが異方性導電フィルム63を介して接続されている。PWB導体パターン62とCOF導体パターン64との間に、10mA/secで電流をかけていき、V−I特性評価を行った。V−I測定で直線(比例関係)から外れる電流値を読み取り耐電流性を評価した。電流値が500mA以上を○、及び200mA以上500mA未満を△と評価した。
【0059】
[保存安定性の評価]
各導電性粒子を小瓶にとりわけ、開放状態で常温環境中に1ヶ月放置し、目視により、導電性粒子の変色状態の確認を行った。変色が無かったものを○、変色が有ったものを×と評価した。
【0060】
[耐腐食性の評価]
図6に示すように、ノンアルカリガラス71とCOFとが異方性導電フィルム74で接着された実装体において、隣接するCOF端子72、73間に電圧DC50Vを印加し、温度60℃、湿度95%のオーブンで環境試験を行った。500h後に顕微鏡にて腐食(マイグレーション)の確認を行った。マイグレーションの発生が無かったものを○、マイグレーションの発生が有ったものを×と評価した。
【0061】
[実施例1]
樹脂コアの表面に導電層としてAgめっきを施し、その上に表面層としてNiめっきを施し、導電性粒子を作製した。導電層の厚みは0.10μmであり、表面層の厚みは0.10μmであった。この導電性粒子を含有する異方性導電フィルムを作製し、さらに異方性導電フィルム用いて実装体を作製し、上述のように接続抵抗、信頼性、耐電流性、保存安定性、及び耐腐食性を評価した。
【0062】
表2に、実施例1の評価結果を示す。接続抵抗は○、信頼性は○、耐電流性は○、保存安定性は○、耐腐食性は○であった。
【0063】
[実施例2]
導電層の厚みが0.15μmであった以外は、実施例1と同様に導電性粒子を作製し、評価を行った。
【0064】
表2に、実施例2の評価結果を示す。接続抵抗は○、信頼性は○、耐電流性は○、保存安定性は○、耐腐食性は○であった。
【0065】
[実施例3]
導電層の厚みが0.20μmであった以外は、実施例1と同様に導電性粒子を作製し、評価を行った。
【0066】
表2に、実施例3の評価結果を示す。接続抵抗は○、信頼性は○、耐電流性は○、保存安定性は○、耐腐食性は○であった。
【0067】
[実施例4]
導電層としてCuめっきを施し、導電層の厚みが0.07μmであった以外は、実施例1と同様に導電性粒子を作製し、評価を行った。
【0068】
表2に、実施例4の評価結果を示す。接続抵抗は○、信頼性は△、耐電流性は○、保存安定性は○、耐腐食性は○であった。
【0069】
[実施例5]
導電層としてCuめっきを施し、導電層の厚みが0.10μmであった以外は、実施例1と同様に導電性粒子を作製し、評価を行った。
【0070】
表2に、実施例5の評価結果を示す。接続抵抗は○、信頼性は○、耐電流性は○、保存安定性は○、耐腐食性は○であった。
【0071】
[実施例6]
導電層としてCuめっきを施し、導電層の厚みが0.15μmであった以外は、実施例1と同様に導電性粒子を作製し、評価を行った。
【0072】
表2に、実施例6の評価結果を示す。接続抵抗は○、信頼性は○、耐電流性は○、保存安定性は○、耐腐食性は○であった。
【0073】
[実施例7]
導電層としてCuめっきを施し、導電層の厚みが0.20μmであった以外は、実施例1と同様に導電性粒子を作製し、評価を行った。
【0074】
表2に、実施例7の評価結果を示す。接続抵抗は○、信頼性は○、耐電流性は○、保存安定性は○、耐腐食性は○であった。
【0075】
[実施例8]
導電層としてCuめっきを施し、導電層の厚みが0.10μmであり、表面層の厚みが0.20μmであった以外は、実施例1と同様に導電性粒子を作製し、評価を行った。
【0076】
表2に、実施例8の評価結果を示す。接続抵抗は○、信頼性は△、耐電流性は○、保存安定性は○、耐腐食性は○であった。
【0077】
[実施例9]
導電層としてCuめっきを施し、表面層に突起を形成した以外は、実施例1と同様に導電性粒子を作製し、評価を行った。
【0078】
表2に、実施例9の評価結果を示す。接続抵抗は○、信頼性は○、耐電流性は○、保存安定性は○、耐腐食性は○であった。
【0079】
[比較例1]
樹脂コアの表面に表面層として厚み0.10μmのAgめっきを施し、導電性粒子を作製した以外は、実施例1と同様に評価を行った。
【0080】
表2に、比較例1の評価結果を示す。接続抵抗は○、信頼性は○、耐電流性は○、保存安定性は×、耐腐食性は×であった。
【0081】
[比較例2]
樹脂コアの表面に表面層として厚み0.10μmのCuめっきを施し、導電性粒子を作製した以外は、実施例1と同様に評価を行った。
【0082】
表2に、比較例2の評価結果を示す。接続抵抗は○、信頼性は○、耐電流性は○、保存安定性は×、耐腐食性は×であった。
【0083】
[比較例3]
樹脂コアの表面に表面層として厚み0.10μmのNiめっきを施し、導電性粒子を作製した以外は、実施例1と同様に評価を行った。
【0084】
表2に、比較例3の評価結果を示す。接続抵抗は×〜△、信頼性は×、耐電流性は△、保存安定性は○、耐腐食性は○であった。
【0085】
【表2】
【0086】
比較例1、2のように、導電層を形成せずに、Ag又はCuの表面層のみである導電性粒子を用いた場合、保存安定性、耐腐食性が劣る結果となった。比較例3は、導電層を形成せずに、Niの表面層のみの導電性粒子であるため、保存安定性、耐腐食性は良好であるが、接続抵抗、信頼性、耐電流特性においてやや劣る結果となった。
【0087】
実施例1〜9のように、Ag又はCuからなる導電層と、Niからなる表面層とを有する導電性粒子を用いた場合、保存安定性、耐腐食性を改善することができ、低抵抗、高信頼性の接続が得られ、優れた耐電流性、保存安定性、及び耐腐食性を得ることができた。