特許第6245792号(P6245792)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6245792導電性粒子、回路接続材料、実装体、及び実装体の製造方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6245792
(24)【登録日】2017年11月24日
(45)【発行日】2017年12月13日
(54)【発明の名称】導電性粒子、回路接続材料、実装体、及び実装体の製造方法
(51)【国際特許分類】
   H01B 5/00 20060101AFI20171204BHJP
   B22F 1/02 20060101ALI20171204BHJP
   C22C 5/06 20060101ALI20171204BHJP
   C22C 9/00 20060101ALI20171204BHJP
   C22C 9/06 20060101ALI20171204BHJP
   C22C 19/03 20060101ALI20171204BHJP
   H01B 1/00 20060101ALI20171204BHJP
   H01B 1/22 20060101ALI20171204BHJP
   H01L 21/60 20060101ALI20171204BHJP
   H01R 11/01 20060101ALI20171204BHJP
   H05K 3/32 20060101ALI20171204BHJP
【FI】
   H01B5/00 C
   H01B5/00 G
   B22F1/02 A
   C22C5/06 Z
   C22C9/00
   C22C9/06
   C22C19/03 M
   H01B1/00 C
   H01B1/00 G
   H01B1/22 D
   H01L21/60 311S
   H01R11/01 501C
   H05K3/32 B
【請求項の数】4
【全頁数】15
(21)【出願番号】特願2012-76919(P2012-76919)
(22)【出願日】2012年3月29日
(65)【公開番号】特開2013-206823(P2013-206823A)
(43)【公開日】2013年10月7日
【審査請求日】2015年3月27日
【審判番号】不服2016-12591(P2016-12591/J1)
【審判請求日】2016年8月22日
(73)【特許権者】
【識別番号】000108410
【氏名又は名称】デクセリアルズ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100067736
【弁理士】
【氏名又は名称】小池 晃
(74)【代理人】
【識別番号】100192212
【弁理士】
【氏名又は名称】河野 貴明
(74)【代理人】
【識別番号】100196922
【弁理士】
【氏名又は名称】柑子山 浩一
(74)【代理人】
【識別番号】100204032
【弁理士】
【氏名又は名称】村上 浩之
(72)【発明者】
【氏名】田巻 剛志
(72)【発明者】
【氏名】田中 芳人
【合議体】
【審判長】 鈴木 正紀
【審判官】 河本 充雄
【審判官】 金 公彦
(56)【参考文献】
【文献】 国際公開第2009/057612(WO,A1)
【文献】 特開11−1733(JP,A)
【文献】 特開2007−184115(JP,A)
【文献】 特開昭62−188184(JP,A)
【文献】 特開2009−224059(JP,A)
【文献】 特開2001−247714(JP,A)
【文献】 特開2001−155540(JP,A)
【文献】 特開2001−155539(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01B 5/00
H01B 1/00, 1/22
B22F 1/02
C22C 9/00, 9/06,19/03
H01L21/60
H01R11/01
H05K 3/32
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
電極間の接続に用いられる導電性粒子であって、
樹脂粒子と、
前記樹脂粒子上に形成された銀若しくは銀合金からなる導電層と、
前記導電層上に形成された外部に露出するニッケル又はニッケル合金からなる突起を有さない表面層とを有する導電性粒子。
【請求項2】
バインダー樹脂と、前記バインダー樹脂に分散された導電性粒子とを備え、
前記導電性粒子は、樹脂粒子と、前記樹脂粒子上に形成された銀若しくは銀合金からなる導電層と、前記導電層上に形成された外部に露出するニッケル又はニッケル合金からなる突起を有さない表面層とを有する回路接続材料。
【請求項3】
第1の電子部品と第2の電子部品とが、樹脂粒子と、前記樹脂粒子上に形成された銀若しくは銀合金からなる導電層と、前記導電層上に形成された外部に露出するニッケル又はニッケル合金からなる突起を有さない表面層とを有する導電性粒子によって電気的に接続されてなる実装体。
【請求項4】
樹脂粒子と、前記樹脂粒子上に形成された銀若しくは銀合金からなる導電層と、前記導電層上に形成された外部に露出するニッケル又はニッケル合金からなる突起を有さない表面層とを有する導電性粒子がバインダー樹脂に分散された回路接続材料を第1の電子部品の端子上に貼付け、
前記回路接続材料上に第2の電子部品を仮配置させ、
前記第2の電子部品上から加熱押圧装置により押圧し、前記第1の電子部品の端子と、前記第2の電子部品の端子とを接続させる実装体の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電極間の接続に用いられる導電性粒子、導電性粒子を含有する回路接続材料、回路接続材料を用いた実装体、及び実装体の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
液晶ディスプレイとテープキャリアパッケージ(Tape Carrier Package:TCP)との接続、フレキシブル回路基板(Flexible Printed Circuit:FPC)とTCPとの接続、又はFPCとプリント配線板(Printed Wiring Board:PWB)との接続といった回路部材同士の接続には、バインダー樹脂中に導電性粒子を分散させた回路接続材料(例えば、異方性導電フィルム)が使用されている。
【0003】
また、最近では半導体シリコンチップを基板に実装する場合、回路部材同士の接続のためにワイヤボンドを使用することなく、半導体シリコンチップをフェイスダウンして基板に直接実装する、いわゆるフリップチップ実装が行われている。このフリップチップ実装においても、回路部材同士の接続には回路接続材料が使用されている。
【0004】
バインダー樹脂中に導電性粒子を分散させた回路接続材料では、低抵抗化、高接続信頼性のために、導電性粒子の開発が活発に行われている。
【0005】
例えば、特許文献1には、樹脂粒子の表面に銀めっきを施し、その上に金めっきを施した導電性粒子が開示されている。また、特許文献2には、樹脂粒子の表面にニッケル層を有し、その上に突起を有する銀又は銅からなる表面層が形成された導電性粒子が開示されている。また、特許文献3には、樹脂粒子の表面にニッケルめっきを施し、その上に突起をもったニッケル−パラジウム合金層からなる表面層を形成した導電性粒子が開示されている。
【0006】
表1に、電子部品に用いられる主な金属の固有抵抗及びモース硬度を示す。
【0007】
【表1】
【0008】
表1に示すように、金及び銀は、柔らかいため、特許文献1、2のように表面層に用いた場合、接続する端子の表面酸化被膜を突き破ることができず、接続抵抗値が高くなってしまう。また、ニッケルは、硬いため、特許文献3のように表面層に用いれば、接続する端子の表面酸化被膜を突き破ることができるが、固有抵抗が高いため、接続抵抗値が高くなってしまう。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】特開2002−270038号公報
【特許文献2】特開2009−32397号公報
【特許文献3】特開2010−27569号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
本発明は、このような従来の実情に鑑みて提案されたものであり、低抵抗、高信頼性を有する導電性粒子、導電性粒子を含有する回路接続材料、回路接続材料を用いた実装体、及び実装体の製造方法を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本件発明者らは、鋭意検討を行った結果、表面を硬いニッケルで被覆し、ニッケル層の内側を固有抵抗の低い銅又は銀とした導電性粒子を用いることにより、低抵抗、高信頼性が得られることを見出した。
【0012】
すなわち、本発明に係る導電性粒子は、電極間の接続に用いられる導電性粒子であって、樹脂粒子と、前記樹脂粒子上に形成された銀若しくは銀合金からなる導電層と、前記導電層上に形成された外部に露出するニッケル又はニッケル合金からなる突起を有さない表面層とを有することを特徴とする。
【0013】
また、本発明に係る回路接続材料は、バインダー樹脂と、前記バインダー樹脂に分散された導電性粒子とを備え、前記導電性粒子は、樹脂粒子と、前記樹脂粒子上に形成された銀若しくは銀合金からなる導電層と、前記導電層上に形成された外部に露出するニッケル又はニッケル合金からなる突起を有さない表面層とを有することを特徴とする。
【0014】
また、本発明に係る実装体は、第1の電子部品と第2の電子部品とが、樹脂粒子と、前記樹脂粒子上に形成された銀若しくは銀合金からなる導電層と、前記導電層上に形成された外部に露出するニッケル又はニッケル合金からなる突起を有さない表面層とを有する導電性粒子によって電気的に接続されてなることを特徴とする。
【0015】
また、本発明に係る実装体の製造方法は、樹脂粒子と、前記樹脂粒子上に形成された銀若しくは銀合金からなる導電層と、前記導電層上に形成された外部に露出するニッケル又はニッケル合金からなる突起を有さない表面層とを有する導電性粒子がバインダー樹脂に分散された回路接続材料を第1の電子部品の端子上に貼付け、前記回路接続材料上に第2の電子部品を仮配置させ、前記第2の電子部品上から加熱押圧装置により押圧し、前記第1の電子部品の端子と、前記第2の電子部品の端子とを接続させることを特徴とする。
【発明の効果】
【0016】
本発明によれば、表面を硬いニッケルで被覆し、ニッケル層の内側を固有抵抗の低い銅又は銀とした導電性粒子を用いることにより、低抵抗、高信頼性を得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
図1】本発明を適用させた導電性粒子を示す断面図である。
図2】本実施の形態における回路接続材料を示す断面図である。
図3】本実施の形態における実装体を示す断面図である。
図4】比較例における導電性粒子を示す断面図である。
図5】実装体の耐電流性の評価、測定を説明するための斜視図である。
図6】実装体の耐腐食性の評価、測定を説明するための斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、本発明の実施の形態について、図面を参照しながら下記順序にて詳細に説明する。
1.導電性粒子
2.回路接続材料
3.実装体及び実装体の製造方法
4.実施例
【0019】
<1.導電性粒子>
本発明に係る導電性粒子は、銅若しくは銅合金、又は銀若しくは銀合金からなる導電層と、導電層上に形成されたニッケル又はニッケル合金からなる表面層とを有する。導電層は、銅若しくは銅合金、又は銀若しくは銀合金からなる金属コア粒子であってもよく、他の金属コア粒子又は樹脂コア粒子の表面を被覆した被覆層であってもよい。
【0020】
図1は、本発明を適用させた導電性粒子の一例を示す断面図である。この導電性粒子10は、樹脂粒子11と、銅若しくは銅合金、又は銀若しくは銀合金からなる導電層12と、導電層12を被覆するニッケル又はニッケル合金からなる表面層13とを有する。
【0021】
樹脂粒子11は、導電性粒子の母材(コア)粒子であり、実装時に破壊、融解、流動、分解、炭化などの変化を起こさないものが用いられる。このような樹脂粒子11としては、例えば、エチレン、プロピレン、スチレンなどの(メタ)アクリル酸エステル類に代表される単官能のビニル化合物と、ジアリルフタレート、トリアリルトリメリテート、トリアリルシアヌレート、ジビニルベンゼン、ジ(メタ)アクリレート、トリ(メタ)アクリレート類などの多官能ビニル化合物との共重合体、硬化性ポリウレタン樹脂、硬化エポキシ樹脂、フェノール樹脂、ベンゾグアナミン樹脂、メラミン樹脂、ポリアミド、ポリイミド、シリコーン樹脂、フッ素樹脂、ポリエステル、ポリフェニレンスルフィド樹脂、ポリフェニレンエーテルなどが挙げられる。特に望ましい樹脂粒子11は、熱圧着時の弾性率、破壊強度といった物性から選定され、ポリスチレン樹脂、アクリル酸エステル樹脂、ベンゾグアナミン樹脂、単官能ビニル化合物と多官能ビニル化合物との共重合体である。
【0022】
樹脂粒子11の平均粒径は、特に限定されないが、1〜20μmであることが好ましい。平均粒径が1μm未満であると、例えば、無電解めっきをする際に凝集しやすく、単粒子となり難い。一方、平均粒径が20μmを超えると、異方性導電材料としてファインピッチの回路基板などに用いられる範囲を超えることがある。なお、樹脂粒子の平均粒子径は、無作為に選んだ50個の基材微粒子について粒子径を測定し、これらを算術平均したものである。
【0023】
導電層12は、例えば、無電解めっきにより被覆された、銅若しくは銅合金、又は銀若しくは銀合金からなる金属層である。銅若しくは銅合金、又は銀若しくは銀合金は、銅又は銀の純度が90%以上であることが好ましく、95%以上であることがより好ましい。銅合金としては、例えば、Cu−Ni合金、Cu−Ag合金などを用いることができ、また、銀合金としては、例えば、Ag−Bi合金などを用いることができる。
【0024】
また、導電層12の厚みは、0.05μm以上であることが好ましく、0.10μm以上であることがさらに好ましい。厚みが0.05μm未満であると、導電性粒子10の抵抗値が高くなってしまう。
【0025】
表面層13は、例えば、無電解めっき又はスパッタ法により被覆された、ニッケル又はニッケル合金からなる金属層である。ニッケル又はニッケル合金は、ニッケルの純度が90%以上であることが好ましく、95%以上であることがより好ましい。ニッケル合金としては、例えば、Ni−P合金、Ni−B合金、Ni−Pd合金、Ni−Co合金などを用いることができる。
【0026】
また、表面層13の厚みは、0.10μm以上0.20μm以下であることが好ましい。厚みが0.10μm未満であると、硬さが得られず、良好な信頼性が得られない。また、耐腐食性も低下してしまう。一方、厚みが0.2μmを超えると、導電性粒子10の抵抗値が高くなってしまう。
【0027】
また、表面層13は、表面に突起を有することが好ましい。これにより、電極表面に形成された酸化被膜を突き破ることが可能となり、抵抗値を低下させ、信頼性を向上させることができる。突起の形成方法としては、例えば、無電解めっきによりニッケル被膜を形成させる際に、ニッケル被膜と突起の核となる微小粒子を同時に析出させ、微小粒子を取り込みながらニッケル被膜を形成させることが挙げられる。また、微小粒子としては、例えば、ニッケル、パラジウム、コバルト、クロムなどが挙げられる。
【0028】
このような導電性粒子10は、母材粒子として樹脂粒子11を用いるため、金属粒子に比べ粒度分布が狭く、ファインピッチ化された配線にも対応することができる。また、樹脂粒子11表面を銅若しくは銅合金、又は銀若しくは銀合金からなる導電層12で被覆するため、導電性粒子10の導電性を向上させることができる。また、導電層12上にニッケル又はニッケル合金からなる表面層13が形成されているため、配線へ導電性粒子10を食い込ませることができ、酸化膜を形成し易い金属配線に対しても、高い信頼性を得ることができる。また、例えばIZO(Indium Zinc Oxide)、非結晶ITO(Indium Tin Oxide)など、表面が平滑なファインピッチの配線材に対しても、高い信頼性を得ることができる。また、銅若しくは銅合金、又は銀若しくは銀合金からなる導電層12上にニッケル又はニッケル合金からなる表面層13が形成されているため、保管環境中での酸化・硫化による導電性能の低下を防止するとともに、使用環境中(電圧印加環境)における腐食・マイグレーションを防止することができる。
【0029】
<2.回路接続材料>
本実施の形態における回路接続材料は、バインダー樹脂と、バインダー樹脂に分散された導電性粒子とを備え、導電性粒子は、銅若しくは銅合金、又は銀若しくは銀合金からなる導電層と、導電層上に形成されたニッケル又はニッケル合金からなる表面層とを有する。バインダー樹脂は、特に制限されないが、より好ましくは、膜形成樹脂と、重合性樹脂と、硬化剤と、シランカップリング剤とを含有する。
【0030】
膜形成樹脂は、平均分子量が10000以上の高分子量樹脂に相当し、フィルム形成性の観点から、10000〜80000程度の平均分子量であることが好ましい。膜形成樹脂としては、エポキシ樹脂、変性エポキシ樹脂、ウレタン樹脂、フェノキシ樹脂等の種々の樹脂を使用することができ、その中でも膜形成状態、接続信頼性等の観点からフェノキシ樹脂が好適に用いられる。
【0031】
重合性樹脂は、エポキシ樹脂、アクリル樹脂など重合性を有する化合物を適宜使用することができる。
【0032】
エポキシ樹脂としては、特に制限はなく、市販のエポキシ樹脂を使用可能である。このようなエポキシ樹脂としては、具体的には、ナフタレン型エポキシ樹脂、ビフェニル型エポキシ樹脂、フェノールノボラック型エポキシ樹脂、ビスフェノール型エポキシ樹脂、スチルベン型エポキシ樹脂、トリフェノールメタン型エポキシ樹脂、フェノールアラルキル型エポキシ樹脂、ナフトール型エポキシ樹脂、ジシクロペンタジエン型エポキシ樹脂、トリフェニルメタン型エポキシ樹脂などを用いることができる。これらは単独でも、2種以上を組み合わせて用いてもよい。また、アクリル樹脂など他の有機樹脂と適宜組み合わせて使用してもよい。
【0033】
アクリル樹脂としては、特に制限はなく、単官能(メタ)アクリレート、2官能以上の(メタ)アクリレートを使用可能である。単官能(メタ)アクリレートとしては、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、n−プロピル(メタ)アクリレート、i−プロピル(メタ)アクリレート、n−ブチル(メタ)アクリレート等が挙げられる。2官能以上の(メタ)アクリレートとしては、ビスフェノールF―EO変性ジ(メタ)アクリレート、ビスフェノールA―EO変性ジ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパンPO変性(メタ)アクリレート、多官能ウレタン(メタ)アクリレート等を挙げることができる。これらの(メタ)アクリレートは、単独で用いてもよいし、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0034】
硬化剤としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、加熱により活性化する潜在性硬化剤、加熱により遊離ラジカルを発生させる潜在性硬化剤などを用いることができる。重合性樹脂としてエポキシ樹脂を使用する場合は、イミダゾール類、アミン類、スルホニウム塩、オニウム塩などからなる潜在性硬化剤を使用することができる。また、重合性樹脂としてアクリル樹脂を使用した場合における硬化剤としては、有機過酸化物などの熱ラジカル発生剤を好ましく使用することができる。有機過酸化物としては、例えば、ベンゾイルパーオキサイド、ラウロイルパーオキサイド、ブチルパーオキサイド、ベンジルパーオキサイド、ジラウロイルパーオキサイド、ジブチルパーオキサイド、ベンジルパーオキサイド、パーオキシジカーボネート等を挙げることができる。
【0035】
シランカップリング剤としては、エポキシ系、アミノ系、メルカプト・スルフィド系、ウレイド系などを用いることができる。これらの中でも、本実施の形態では、エポキシ系シランカップリング剤が好ましく用いられる。これにより、有機材料と無機材料の界面における接着性を向上させることができる。
【0036】
また、その他の添加組成物として、無機フィラーを含有することが好ましい。無機フィラーを含有することにより、圧着時における樹脂層の流動性を調整し、粒子捕捉率を向上させることができる。無機フィラーとしては、シリカ、タルク、酸化チタン、炭酸カルシウム、酸化マグネシウム等を用いることができる。
【0037】
次に、図2を参照して、上述した導電性粒子を有する回路接続材料の製造方法について説明する。本実施の形態における回路接続材料の製造方法は、剥離基材22上に導電性粒子10が分散されたバインダー樹脂21組成物を塗布する塗布工程と、剥離基材22上の組成物を乾燥させる乾燥工程とを有する。
【0038】
塗布工程では、配合し、有機溶剤を用いて調整した後、この組成物を剥離基材上にバーコーター、塗布装置等を用いて塗布する。
【0039】
有機溶剤としては、トルエン、酢酸エチル、又はこれらの混合溶剤、その他各種有機溶剤を用いることができる。また、剥離基材22は、例えば、シリコーンなどの剥離剤をPET(Poly Ethylene Terephthalate)、OPP(Oriented Polypropylene)、PMP(Poly-4-methylpentene−1)、PTFE(Polytetrafluoroethylene)などに塗布した積層構造からなり、組成物のフィルム形状を維持する。
【0040】
次の乾燥工程では、剥離基材22上の組成物を熱オーブン、加熱乾燥装置などにより乾燥させる。これにより、回路接続材料が膜状に形成された導電性接着フィルムを得ることができる。
【0041】
<3.実装体及び実装体の製造方法>
図3は、本実施の形態における実装体を示す断面図である。本実施の形態における実装体は、第1の電子部品30と第2の電子部品40とが、銅若しくは銅合金、又は銀若しくは銀合金からなる導電層と、前記導電層上に形成されたニッケル又はニッケル合金からなる表面層とを有する導電性粒子10によって電気的に接続されてなるものである。
【0042】
第1の電子部品30としては、例えばIZO(Indium Zinc Oxide)、非結晶ITO(Indium Tin Oxide)など、表面が平滑なファインピッチの端子31を有する配線材が挙げられる。また、第2の電子部品40としては、ファインピッチのバンプなどの端子41が形成されたIC(Integrated Circuit)が挙げられる。
【0043】
本実施の形態における実装体は、上述した導電性粒子で接続されているため、低抵抗、高信頼性の接続が得られ、優れた耐電流性、保存安定性、及び耐腐食性を得ることができる。
【0044】
次に、上述した回路接続材料を用いた実装体の製造方法について説明する。本実施の形態における実装体の製造方法は、銅若しくは銅合金、又は銀若しくは銀合金からなる導電層と、導電層上に形成されたニッケル又はニッケル合金からなる表面層とを有する導電性粒子10がバインダー樹脂21に分散された回路接続材料を第1の電子部品30の端子31上に貼付け、回路接続材料上に第2の電子部品40を仮配置させ、第2の電子部品40上から加熱押圧装置により押圧し、第1の電子部品の端子31と、第2の電子部品の端子41とを接続させるものである。
【0045】
これにより、導電性粒子10を介して第1の電子部品30の端子31と第2の電子部品40の端子41とが接続された実装体が得られる。
【0046】
本実施の形態における実装体の製造方法は、回路接続材料にニッケル又はニッケル合金からなる表面層を有する導電性粒子を含有させているため、酸化膜を形成し易い金属配線に導電性粒子を食い込ませることができ、高い信頼性を得ることができる。また、例えばIZO(Indium Zinc Oxide)、非結晶ITO(Indium Tin Oxide)など、表面が平滑なファインピッチの端子を有する配線材を使用した場合でも、高い信頼性を得ることができる。
【実施例】
【0047】
<4.実施例>
以下、本発明の実施例について説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。
【0048】
図1に示すように、樹脂粒子11に導電層12と表面層13とをこの順に形成した実施例1〜9の導電性粒子10を作製した。また、従来技術として、図4に示すように、樹脂粒子51に表面層52を形成した比較例1〜3の導電性粒子を作製した。また、各導電性粒子について、導電層の厚さ及び表面層の厚さを測定した。
【0049】
次に、実施例1〜9及び比較例1〜3の導電性粒子を用い、回路接続材料として異方性導電フィルムを作製した。そして、各異方性導電フィルムを用いて接続抵抗評価用、信頼性評価用、及び耐電流性評価用の実装体、及び耐腐食性評価用の実装体を作製した。
【0050】
導電層及び表面層の厚さ測定、異方性導電フィルムの作製、実装体の作製、及び各評価は、次のように行った。
【0051】
[導電層及び表面層の厚さ測定]
エポキシ接着剤に導電性粒子を分散させて硬化させ、研磨機(丸本ストルアス社製)にて粒子断面を削り出した。この粒子断面をSEM(Scanning Electron Microscope)(キーエンス社製、VE−8800)にて観察し、導電層の厚さ及び表面層の厚さを測定した。
【0052】
[異方性導電フィルムの作製]
マイクロカプセル型アミン系硬化剤(旭化成ケミカルズ社製、商品名ノバキュアHX3941HP)50部、液状エポキシ樹脂(ジャパンエポキシレジン社製、商品名EP828)14部、フェノキシ樹脂(東都化成社製、商品名YP50)35部、及びシランカップリング剤(信越化学社製、商品名KBE403)1部を含む熱硬化性バインダー樹脂に、実施例及び比較例の導電性粒子を体積比率10%になるように分散させた。この接着剤組成物を、シリコーン処理された剥離PETフィルム上に厚み35μmになるように塗布し、シート状の異方性導電フィルムを作製した。
【0053】
[接続抵抗評価用、信頼性評価用、及び耐電流性評価用の実装体の作製]
各異方性導電フィルムを用いてCOF(評価用基材、200μmP、Cu8μmt-Snめっき、38μmt-S’perflex基材)とPWB(評価用基材、200μmP、Cu35μmt-Auめっき、FR-4基材)の接続を行なった。先ず、2.0mm幅にスリットされた異方性導電フィルムをPWBに貼り付け(条件:80℃-1MPa-1sec)、その上にCOFを位置あわせした後、圧着条件190℃−3MPa−10sec、緩衝材250μmtシリコンラバー、2.0mm幅加熱ツールにて圧着を行い、実装体を完成させた。
【0054】
[耐腐食性評価用の実装体の作製]
各異方性導電フィルムを用いてCOF(評価用基材、50μmP、Cu8μmt-Snめっき、38μmt-S’perflex基材)とノンアルカリガラス(評価用基材、0.7mmt)の接続を行なった。先ず、2.0mm幅にスリットされた異方性導電フィルムをノンアルカリガラスに貼り付け(条件:80℃-1MPa-1sec)、その上にCOFを位置あわせした後、圧着条件190℃−3MPa−10sec、緩衝材250μmtシリコンラバー、2.0mm幅加熱ツールにて圧着を行い、実装体を完成させた。
【0055】
[接続抵抗及び信頼性の評価]
各実装体についてデジタルマルチメータ(品番:デジタルマルチメータ7555、横河電機社製)を用いて4端子法にて電流1mAを流したときの導通抵抗値の測定をおこなった。
【0056】
初期(Initial)の導通抵抗値を用いて接続抵抗を評価した。導通抵抗値が0.2Ω以下を○、0.2Ω超0.5Ω未満を△、及び0.5Ω以上を×と評価した。
【0057】
また、温度85℃、湿度85%RH、500時間のTHテスト(Thermal Humidity Test)後の導通抵抗値を用いて信頼性を評価した。導通抵抗値が0.2Ω以下を○、0.2Ω超0.5Ω未満を△、及び0.5Ω以上を×と評価した。
【0058】
[耐電流性の評価]
図5に示すように、各実装体について、V−I測定を行い電流特性の評価を実施した。実装体は、PWB61に形成されたPWB導体パターン62と、COFに形成されたCOF導体パターン64とが異方性導電フィルム63を介して接続されている。PWB導体パターン62とCOF導体パターン64との間に、10mA/secで電流をかけていき、V−I特性評価を行った。V−I測定で直線(比例関係)から外れる電流値を読み取り耐電流性を評価した。電流値が500mA以上を○、及び200mA以上500mA未満を△と評価した。
【0059】
[保存安定性の評価]
各導電性粒子を小瓶にとりわけ、開放状態で常温環境中に1ヶ月放置し、目視により、導電性粒子の変色状態の確認を行った。変色が無かったものを○、変色が有ったものを×と評価した。
【0060】
[耐腐食性の評価]
図6に示すように、ノンアルカリガラス71とCOFとが異方性導電フィルム74で接着された実装体において、隣接するCOF端子72、73間に電圧DC50Vを印加し、温度60℃、湿度95%のオーブンで環境試験を行った。500h後に顕微鏡にて腐食(マイグレーション)の確認を行った。マイグレーションの発生が無かったものを○、マイグレーションの発生が有ったものを×と評価した。
【0061】
[実施例1]
樹脂コアの表面に導電層としてAgめっきを施し、その上に表面層としてNiめっきを施し、導電性粒子を作製した。導電層の厚みは0.10μmであり、表面層の厚みは0.10μmであった。この導電性粒子を含有する異方性導電フィルムを作製し、さらに異方性導電フィルム用いて実装体を作製し、上述のように接続抵抗、信頼性、耐電流性、保存安定性、及び耐腐食性を評価した。
【0062】
表2に、実施例1の評価結果を示す。接続抵抗は○、信頼性は○、耐電流性は○、保存安定性は○、耐腐食性は○であった。
【0063】
[実施例2]
導電層の厚みが0.15μmであった以外は、実施例1と同様に導電性粒子を作製し、評価を行った。
【0064】
表2に、実施例2の評価結果を示す。接続抵抗は○、信頼性は○、耐電流性は○、保存安定性は○、耐腐食性は○であった。
【0065】
[実施例3]
導電層の厚みが0.20μmであった以外は、実施例1と同様に導電性粒子を作製し、評価を行った。
【0066】
表2に、実施例3の評価結果を示す。接続抵抗は○、信頼性は○、耐電流性は○、保存安定性は○、耐腐食性は○であった。
【0067】
[実施例4]
導電層としてCuめっきを施し、導電層の厚みが0.07μmであった以外は、実施例1と同様に導電性粒子を作製し、評価を行った。
【0068】
表2に、実施例4の評価結果を示す。接続抵抗は○、信頼性は△、耐電流性は○、保存安定性は○、耐腐食性は○であった。
【0069】
[実施例5]
導電層としてCuめっきを施し、導電層の厚みが0.10μmであった以外は、実施例1と同様に導電性粒子を作製し、評価を行った。
【0070】
表2に、実施例5の評価結果を示す。接続抵抗は○、信頼性は○、耐電流性は○、保存安定性は○、耐腐食性は○であった。
【0071】
[実施例6]
導電層としてCuめっきを施し、導電層の厚みが0.15μmであった以外は、実施例1と同様に導電性粒子を作製し、評価を行った。
【0072】
表2に、実施例6の評価結果を示す。接続抵抗は○、信頼性は○、耐電流性は○、保存安定性は○、耐腐食性は○であった。
【0073】
[実施例7]
導電層としてCuめっきを施し、導電層の厚みが0.20μmであった以外は、実施例1と同様に導電性粒子を作製し、評価を行った。
【0074】
表2に、実施例7の評価結果を示す。接続抵抗は○、信頼性は○、耐電流性は○、保存安定性は○、耐腐食性は○であった。
【0075】
[実施例8]
導電層としてCuめっきを施し、導電層の厚みが0.10μmであり、表面層の厚みが0.20μmであった以外は、実施例1と同様に導電性粒子を作製し、評価を行った。
【0076】
表2に、実施例8の評価結果を示す。接続抵抗は○、信頼性は△、耐電流性は○、保存安定性は○、耐腐食性は○であった。
【0077】
[実施例9]
導電層としてCuめっきを施し、表面層に突起を形成した以外は、実施例1と同様に導電性粒子を作製し、評価を行った。
【0078】
表2に、実施例9の評価結果を示す。接続抵抗は○、信頼性は○、耐電流性は○、保存安定性は○、耐腐食性は○であった。
【0079】
[比較例1]
樹脂コアの表面に表面層として厚み0.10μmのAgめっきを施し、導電性粒子を作製した以外は、実施例1と同様に評価を行った。
【0080】
表2に、比較例1の評価結果を示す。接続抵抗は○、信頼性は○、耐電流性は○、保存安定性は×、耐腐食性は×であった。
【0081】
[比較例2]
樹脂コアの表面に表面層として厚み0.10μmのCuめっきを施し、導電性粒子を作製した以外は、実施例1と同様に評価を行った。
【0082】
表2に、比較例2の評価結果を示す。接続抵抗は○、信頼性は○、耐電流性は○、保存安定性は×、耐腐食性は×であった。
【0083】
[比較例3]
樹脂コアの表面に表面層として厚み0.10μmのNiめっきを施し、導電性粒子を作製した以外は、実施例1と同様に評価を行った。
【0084】
表2に、比較例3の評価結果を示す。接続抵抗は×〜△、信頼性は×、耐電流性は△、保存安定性は○、耐腐食性は○であった。
【0085】
【表2】
【0086】
比較例1、2のように、導電層を形成せずに、Ag又はCuの表面層のみである導電性粒子を用いた場合、保存安定性、耐腐食性が劣る結果となった。比較例3は、導電層を形成せずに、Niの表面層のみの導電性粒子であるため、保存安定性、耐腐食性は良好であるが、接続抵抗、信頼性、耐電流特性においてやや劣る結果となった。
【0087】
実施例1〜9のように、Ag又はCuからなる導電層と、Niからなる表面層とを有する導電性粒子を用いた場合、保存安定性、耐腐食性を改善することができ、低抵抗、高信頼性の接続が得られ、優れた耐電流性、保存安定性、及び耐腐食性を得ることができた。
【符号の説明】
【0088】
10 導電性粒子、11 樹脂粒子、12 導電層、13 表面層、20 回路接続材料、21 バインダー樹脂、22 剥離基材、30 第1の電子部品、31 端子、40 第2の電子部品、41 端子、51 樹脂粒子、52 表面層、61 PWB、62 PWB導体パターン、63 異方性導電フィルム、64 COF導体パターン、71 ノンアルカリガラス、72、73 COF端子
図1
図2
図3
図4
図5
図6