(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記乾式サンドブラストによる粗面化処理は、サクション式サンドブラスト装置または直圧式サンドブラスト装置を用いて行われる、請求項4に記載のチップ部品の製造方法。
前記溝の形成後、各前記チップ部品用の領域を一括して覆うように、前記基板の前記表面側に支持テープを貼着する工程をさらに含む、請求項1〜9のいずれか一項に記載のチップ部品の製造方法。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1のようなチップ部品では、一般的に基板の裏面が鏡面化されている。この鏡面化は、製造プロセスにおいて裏面研削が施された基板の加工ひずみ(結晶欠陥)を低減して、基板面内における抗折強度の場所依存性を低減する。
しかしながら、裏面が鏡面状態のチップ部品は、たとえばテーピング機や実装機等に搭載された画像認識システムにおいて、その鏡面がハレーションを起こし、誤認識が発生し易いという不具合がある。
【0005】
本発明の目的は、抗折強度の場所依存性を低減でき、かつ画像認識システムにおける認識精度を向上できるチップ部品を提供することである。
本発明の他の目的は、抗折強度の場所依存性を低減でき、かつ画像認識システムにおける認識精度を向上できるチップ部品を簡単に製造できるチップ部品の製造方法を提供することである。
【0006】
本発明の他の目的は、実装基板との接着強度を向上でき、さらに実装形状を安定化できるチップ部品を提供することである。
本発明の他の目的は、実装基板との接着強度を向上でき、さらに実装形状を安定化できるチップ部品を簡単に製造できるチップ部品の製造方法を提供することである。
本発明の他の目的は、本発明のチップ部品を備えた回路アセンブリ、およびこのような回路アセンブリを備えた電子機器を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記の目的を達成するための
チップ部品の製造方法は、
表面および裏面を有し、かつ、複数のチップ部品用の領域が設定された基板を準備する工程と、前記基板の前記表面側から溝を形成することによって、前記複数のチップ部品用の領域をチップ部品1つ1つに対応する領域に区画する工程と、前記基板を前記裏面側から前記溝の底部まで研削および/または研磨することによって、各前記チップ部品に分割する分割工程と、前記分割工程後、各前記チップ部品の裏面を形成する前記基板の前記裏面を研磨することによって鏡面加工する工程と、前記鏡面加工後、
各前記チップ部品の裏面を形成する前記基板の前記裏面をエッチングすることによって粗面化する工程とを含
む。
この方法によれば、基板の裏面が一旦鏡面加工されるので、たとえ基板が裏面研削されていても、基板面内における抗折強度の場所依存性を低減できる。さらに鏡面加工後、基板の裏面を粗面化することによって、基板の裏面の光反射率を変えることができる。これにより、基板の裏面でのハレーションの発生を防止できるので、画像認識システムでの認識精度を向上できる。しかも、このような粗面(非鏡面)を、裏面エッチングという簡単な手法によって形成できる。
【0008】
前記チップ部品の製造方法において、前記分割工程は、前記基板を前記裏面側から研磨する工程を含み、かつ、前記鏡面加工を兼ねている。
前記チップ部品の製造方法は、前記粗面化工程は、前記基板の前記裏面をサンドブラストによって処理する工程を含
む。
この方法によれば、基板の裏面に押し付けた砥石を高速回転することによって当該裏面を削り取っていく裏面研削とは異なり、基板の裏面から離れた位置から当該裏面に対して砥粒を吹き付けるサンドブラストを採用することによって、基板面内を均等に粗面化できる。これにより、粗面化の際に、基板に加工ひずみ(結晶欠陥)が発生することを防止できる。
【0009】
前記チップ部品の製造方法において、前記サンドブラストは、乾式サンドブラストであ
る。
この方法によれば、砥粒が混ざった空気(混合気)を基板の裏面に吹き付ける手法なので、たとえば砥粒が混ざった液体(スラリー)を吹き付ける場合と異なり、粗面化される裏面とは反対側の表面への影響が少なくて済む。
【0010】
前記乾式サンドブラストによる粗面化処理は
、サクション式サンドブラスト装置または直圧式サンドブラスト装置を用いて行われてもよい。また、前記乾式サンドブラストの砥粒として
、アルミナ系砥粒または炭化シリコン系砥粒を用いることが好ましい。
また、前記乾式サンドブラストの砥粒として
、番手が#100〜#10000の砥粒を用いることが好ましい。また、乾式サンドブラストにおいて
、0.01MPa〜0.1MPaの吐出圧力で砥粒を吐出することが好ましい。
【0011】
前記粗面化工程では、
各前記チップ部品の裏面を形成する前記基板の前記裏面全体を一様に粗面化す
る。
この方法によれば、基板の裏面全体を一様に粗面化するので、当該裏面を選択的にマスクする必要がなく、より効率的である。
【0012】
前記チップ部品の製造方法は、前記溝の形成後、各前記チップ部品用の領域を一括して覆うように、前記基板の前記表面側に支持テープを貼着する工程をさらに含むことが好ましい。
この方法によれば、基板の研削および/または研磨によって複数のチップ部品が分割されても、それらがばらばらにならないように、支持テープ上に留めておくことができる。これにより、複数のチップ部品に対して一括して粗面化処理できる。また、最終的に各チップ部品に分割する処理を研磨によって行えば、この研磨によって裏面の鏡面化加工工程を同時に行うことができる。
【0013】
前記チップ部品の製造方法は、前記溝の側面に絶縁膜を形成することによって、各前記チップ部品用の領域に対応する各前記基板の側面に当該絶縁膜を形成する工程と、前記各基板の前記表面からその縁部を介して前記溝の前記側面に沿って前記絶縁膜上に電極材料をめっき成長させることによって、前記各基板の前記表面の前記縁部を覆うように、当該表面および前記側面に電極を一体的に形成する工程とを含
む。
【0014】
この方法によって得られたチップ部品によれば、基板の表面に加えて側面にも電極が形成されているので、チップ部品を実装基板に半田付けする際の接着面積を拡大できる。その結果、電極に対する半田の吸着量を増やすことができるので、接着強度を向上できる。また、半田が基板の表面から側面に回り込むように吸着するので、実装状態において、基板の表面および側面の二方向からチップ部品を保持できる。そのため、チップ部品の実装形状を安定化できる。
【0015】
しかも、電極を単に基板の側面にも形成しただけではなく、電極と基板との間に絶縁膜を介在させている。これにより、たとえば基板と電極とを短絡させたくない場合に、その要求に応えることができる。
前記チップ部品の製造方法において、前記電極を形成する工程は、前記電極材料を無電解めっきによって成長させる工程を含
む。
【0016】
この方法によって、絶縁膜上にも良好に電極材料を成長させることができる。また、電解めっきに比べて工程数を削減して生産性を向上できる。
前記チップ部品の製造方法は、
前記溝の形成前に各前記チップ部品用の領域に前記基板の前記表面に配線膜を形成する工程をさらに含み、前記溝を形成する工程は、前記各基板の前記縁部と前記配線膜との間に間隔が空くように溝を形成する工程を含み、前記電極を形成する工程は、前記配線膜から前記電極材料をめっき成長させる工程を含んでいてもよい。
【0017】
この場合、前記チップ部品の製造方法は
、前記溝の形成前に前記配線膜を覆う樹脂膜を形成する工程と、前記溝を形成すべき領域に対向する前記配線膜の周縁部が露出するように、前記樹脂膜を選択的に除去する工程とをさらに含むことが好ましい。
この方法によれば、配線膜から基板の縁部までめっき成長の妨げになるものが無いので、配線膜から当該縁部まで直線的にめっき成長させることができる。その結果、電極の形成にかかる時間の短縮を図ることができる。
【0018】
また、前記チップ部品の製造方法では
、前記溝の形成が、エッチングによって行われることが好ましい。
この方法によれば、基板における全てのチップ部品用の領域の境界領域に一度に溝を形成できるので、チップ部品の製造にかかる時間の短縮を図ることができる。
上記の目的を達成するためのチップ部品は、表面および粗面化された裏面を有する基板と、前記基板の表面
に形成された電極と
を含む。
【0019】
この構成によれば、基板の裏面が粗面(非鏡面)化されているので、基板の裏面の光反射率を鏡面とは異なるものに変えることができる。これにより、基板の裏面でのハレーションの発生を防止できるので、画像認識システムでの認識精度を向上できる。
前記チップ部品において、前記基板の前記裏面全体が一様に粗面化されている。この構成によれば、基板の裏面でのハレーションの発生を、より効果的に防止できる。
前記チップ部品において、前記基板は、前記表面および前記裏面を接続する側面を有し、前記電極は、前記基板の縁部を覆うように、前記基板の前記表面および前記側面に一体的に形成されており、前記電極および前記基板の間に介在された絶縁膜をさらに含む。
この構成によれば、基板の表面に加えて側面にも電極が形成されているので、チップ部品を実装基板に半田付けする際の接着面積を拡大できる。その結果、電極に対する半田の吸着量を増やすことができるので、接着強度を向上できる。また、半田が基板の表面から側面に回り込むように吸着するので、実装状態において、基板の表面および側面の二方向からチップ部品を保持できる。そのため、チップ部品の実装形状を安定化できる。
【0020】
しかも、電極を単に基板の側面にも形成しただけではなく、電極と基板との間に絶縁膜を介在させている。これにより、たとえば基板と電極とを短絡させたくない場合に、その要求に応えることができる
。
【0021】
前記チップ部品において、前記基板は平面視において矩形状であり、前記電極は、前記基板の三方の前記縁部を覆うように形成されてい
る。
この構成によれば、実装状態において、チップ部品を基板の側面の三方向から保持できるので、チップ部品の実装形状を一層安定化できる。
【0022】
前記チップ部品において、前記基板の前記表面において前記縁部から間隔を空けて形成され、前記電極が電気的に接続された配線膜をさらに含
む。
この構成によれば、外部接続するための電極から配線膜が独立しているので、基板の表面に形成される素子パターンに合わせた配線設計を行うことができる。
【0023】
前記チップ部品において、前記配線膜は、前記電極に覆われた前記基板の前記縁部に対向する周縁部が選択的に露出しており、当該露出部分を除く周縁部が樹脂膜で選択的に覆われてい
る。
この構成によれば、電極と配線膜との接合面積を増やすことができるので、接触抵抗を減らすことができる。
【0024】
前記チップ部品において、前記電極は、前記樹脂膜の表面から突出するように形成されていてもよい。
前記チップ部品において、前記電極は、前記樹脂膜の前記表面に沿って横方向に引き出され、当該表面を選択的に覆う引き出し部を含んでいてもよい。
前記チップ部品において、前記電極が、Ni層と、Au層とを含み、前記Au層が最表面に露出してい
る。
【0025】
この構成によれば、電極においてNi層の表面がAu層によって覆われているので、Ni層が酸化することを防止できる。
前記チップ部品において、前記電極が、前記Ni層と前記Au層との間に介装されたPd層をさらに含
む。
この構成によれば、Au層を薄くすることによってAu層に貫通孔(ピンホール)ができてしまっても、Ni層とAu層との間に介装されたPd層が当該貫通孔を塞いでいるので、当該貫通孔からNi層が外部に露出されて酸化することを防止できる。
【0026】
前記チップ部品は
、前記電極が互いに間隔を空けて2つ設けられている場合、前記基板上に形成され前記2つの電極間に接続された抵抗体を含むチップ抵抗器であってもよい。
この場合、前記チップ部品は
、複数の前記抵抗体と、前記基板上に設けられ、前記複数の抵抗体をそれぞれ切り離し可能に前記電極に接続する複数のヒューズとをさらに含むことが好ましい。
【0027】
このチップ部品(チップ抵抗器)によれば、一つまたは複数のヒューズを選択して切断することによって、複数種類の抵抗値に、容易にかつ速やかに対応できる。換言すれば、抵抗値の異なる複数の抵抗体を組み合わせることによって、様々な抵抗値のチップ抵抗器を共通の設計で実現できる。
前記チップ部品は
、前記電極が互いに間隔を空けて2つ設けられている場合、前記基板上に形成され前記2つの電極の間に接続されたキャパシタ素子を含むチップコンデンサであってもよい。
【0028】
この場合、前記チップ部品は
、前記キャパシタ素子を構成する複数のキャパシタ要素と、前記基板上に設けられ、前記複数のキャパシタ要素をそれぞれ切り離し可能に前記電極に接続する複数のヒューズとをさらに含むことが好ましい。
このチップ部品(チップコンデンサ)によれば、一つまたは複数のヒューズを選択して切断することによって、複数種類の容量値に、容易にかつ速やかに対応できる。換言すれば、容量値の異なる複数のキャパシタ要素を組み合わせることによって、様々な容量値のチップコンデンサを共通の設計で実現できる。
【0029】
上記目的を達成するための回路アセンブリは、前記チップ部品と、前記基板の前記表面に対向する実装面に、前記電極に半田接合されたランドを有する実装基板とを含む。
この構成によれば、実装基板との接着強度を向上させることができ、さらに実装形状を安定化できるチップ部品を備える回路アセンブリを提供できる。
【0030】
前記回路アセンブリは、前記実装面の法線方向から見たときに、前記半田が前記電極の表面部分および側面部分を覆うように形成されている。
この構成によれば、電極に対する半田の吸着量を増やすことができるので、接着強度を向上できる。また、半田が電極の表面部分から側面部分に回り込むように吸着しているので、基板の表面および側面の二方向からチップ部品を保持できる。そのため、チップ部品の実装形状を安定化できる。
【0031】
上記目的を達成するための電子機器は、前記回路アセンブリと、前記回路アセンブリを収容した筐体とを含
む。
この構成によれば、実装基板との接着強度を向上させることができ、さらに実装形状を安定化できるチップ部品を備える電子部品を提供できる。
【発明を実施するための形態】
【0033】
以下では、本発明の実施形態を、添付図面を参照して詳細に説明する。
図1Aは、本発明の一実施形態に係るチップ抵抗器の構成を説明するための模式的な斜視図である。
図1Bは、チップ抵抗器の模式的な底面図である。
このチップ抵抗器1は、微小なチップ部品であり、
図1Aに示すように、直方体形状をなしている。チップ抵抗器1の平面形状は、直交する二辺(長辺81、短辺82)がそれぞれ0.4mm以下、0.2mm以下の矩形である。好ましくは、チップ抵抗器1の寸法に関し、長さL(長辺81の長さ)が約0.3mmであり、幅W(短辺82の長さ)が約0.15mmであり、厚さTが約0.1mmである。
【0034】
このチップ抵抗器1は、基板上に多数個のチップ抵抗器1を格子状に形成してから当該基板に溝を形成した後、裏面研磨(または当該基板を溝で分断)して各チップ抵抗器1に分離することによって得られる。
チップ抵抗器1は、チップ抵抗器1の本体を構成する基板2と、外部接続電極となる第1接続電極3および第2接続電極4と、第1接続電極3および第2接続電極4によって外部接続される素子5とを主に備えている。
【0035】
基板2は、略直方体のチップ形状である。基板2において
図1Aにおける上面をなす一つの表面は、素子形成面2Aである。素子形成面2Aは、基板2において素子5が形成される表面であり、略長方形状である。基板2の厚さ方向において素子形成面2Aとは反対側の面は、裏面2Bである。素子形成面2Aと裏面2Bとは、ほぼ同寸法かつ同形状であり、互いに平行である。素子形成面2Aにおける一対の長辺81および短辺82によって区画された矩形状の縁を、周縁部85ということにし、裏面2Bにおける一対の長辺81および短辺82によって区画された矩形状の縁を、周縁部90ということにする。素子形成面2A(裏面2B)に直交する法線方向から見ると、周縁部85と周縁部90とは、
図1Bに示すように重なっている。
【0036】
基板2は、素子形成面2Aおよび裏面2B以外の表面として、複数の側面(側面2C、側面2D、側面2Eおよび側面2F)を有している。当該複数の側面は、素子形成面2Aおよび裏面2Bのそれぞれに交差(詳しくは、直交)して延びて、素子形成面2Aおよび裏面2Bの間を繋いでいる。
側面2Cは、素子形成面2Aおよび裏面2Bにおける長手方向一方側(
図1Aにおける左手前側)の短辺82間に架設されていて、側面2Dは、素子形成面2Aおよび裏面2Bにおける長手方向他方側(
図1Aにおける右奥側)の短辺82間に架設されている。側面2Cおよび側面2Dは、当該長手方向における基板2の両端面である。側面2Eは、素子形成面2Aおよび裏面2Bにおける短手方向一方側(
図1Aにおける左奥側)の長辺81間に架設されていて、側面2Fは、素子形成面2Aおよび裏面2Bにおける短手方向他方側(
図1Aにおける右手前側)の長辺81間に架設されている。側面2Eおよび側面2Fは、当該短手方向における基板2の両端面である。側面2Cおよび側面2Dのそれぞれは、側面2Eおよび側面2Fのそれぞれと交差(詳しくは、直交)している。そのため、素子形成面2A〜側面2Fにおいて隣り合うもの同士が直角を成している。
【0037】
基板2では、素子形成面2Aおよび側面2C〜2Fのそれぞれの全域がパッシベーション膜23で覆われている。そのため、厳密には、
図1Aでは、素子形成面2Aおよび側面2C〜2Fのそれぞれの全域は、パッシベーション膜23の内側(裏側)に位置していて、外部に露出されていない。さらに、チップ抵抗器1は、樹脂膜24を有している。樹脂膜24は、素子形成面2A上のパッシベーション膜23の全域(周縁部85およびその内側領域)を覆っている。パッシベーション膜23および樹脂膜24については、以降で詳説する。
【0038】
第1接続電極3および第2接続電極4は、基板2の素子形成面2A上において周縁部85を覆うように、素子形成面2Aおよび側面2C〜2Fに跨るように一体的に形成されている。第1接続電極3および第2接続電極4のそれぞれは、たとえば、Ni(ニッケル)、Pd(パラジウム)およびAu(金)をこの順番で素子形成面2A上に積層することによって構成されている。第1接続電極3および第2接続電極4は、素子形成面2Aの長手方向に互いに間隔を開けて配置されている。当該配置位置において、第1接続電極3は、チップ抵抗器1の一方の短辺82(側面2C寄りの短辺82)およびその両側の一対の長辺81に沿う三方の側面2C,2E,2Fを一体的に覆うように形成されている。一方、第2接続電極4は、チップ抵抗器1の他方の短辺82(側面2D寄りの短辺82)およびその両側の一対の長辺81に沿う三方の側面2D,2E,2Fを一体的に覆うように形成されている。これにより、基板2の長手方向両端部において側面同士が交わる各コーナー部11はそれぞれ、第1接続電極3もしくは第2接続電極4によって覆われている。
【0039】
第1接続電極3および第2接続電極4は、前述した法線方向から見た平面視において、ほぼ同寸法かつ同形状である。第1接続電極3は、平面視における4辺をなす1対の長辺3Aおよび短辺3Bを有している。長辺3Aと短辺3Bとは平面視において直交している。第2接続電極4は、平面視における4辺をなす1対の長辺4Aおよび短辺4Bを有している。長辺4Aと短辺4Bとは平面視において直交している。長辺3Aおよび長辺4Aは、基板2の短辺82と平行に延びていて、短辺3Bおよび短辺4Bは、基板2の長辺81と平行に延びている。また、チップ抵抗器1は、裏面2Bに電極を有していない。
【0040】
素子5は、回路素子であって、基板2の素子形成面2Aにおける第1接続電極3と第2接続電極4との間の領域に形成されていて、パッシベーション膜23および樹脂膜24によって上から被覆されている。この実施形態の素子5は、抵抗56である。抵抗56は、等しい抵抗値を有する複数個の(単位)抵抗体Rを素子形成面2A上でマトリックス状に配列した回路網によって構成されている。抵抗体Rは、TiN(窒化チタン)、TiON(酸化窒化チタン)またはTiSiONからなる。素子5は、後述する配線膜22に電気的に接続されていて、配線膜22を介して第1接続電極3と第2接続電極4とに電気的に接続されている。つまり、素子5は、基板2上に形成され、第1接続電極3および第2接続電極4の間に接続されている。
【0041】
一方、基板2では、素子形成面2Aの反対側の裏面2Bが、粗面化されている。粗面化された裏面2Bは、この実施形態では、研磨処理等によって鏡面化された面や電極等が配置されてなる凹凸面ではなく、その表層部が荒らされた平坦面であり、たとえば、梨地面を含む。そして、この実施形態では、粗面化処理が裏面2Bの全体に亘って一様に施されている。
【0042】
図1Cは、チップ抵抗器が実装基板に実装された状態の回路アセンブリをチップ抵抗器の長手方向に沿って切断したときの模式的な断面図である。なお、
図1Cでは、要部のみ、断面で示している。
図1Cに示すように、チップ抵抗器1は、実装基板9に実装される。この状態におけるチップ抵抗器1および実装基板9は、回路アセンブリ100を構成している。
図1Cにおける実装基板9の上面は、実装面9Aである。実装面9Aには、実装基板9の内部回路(図示せず)に接続された一対(2つ)のランド88が形成されている。各ランド88は、たとえば、Cuからなる。各ランド88の表面には、半田13が当該表面から突出するように設けられている。
【0043】
チップ抵抗器1を実装基板9に実装する場合、自動実装機(図示せず)の吸着ノズル91をチップ抵抗器1の裏面2Bに吸着してから吸着ノズル91を動かすことによって、チップ抵抗器1を搬送する。このとき、吸着ノズル91は、裏面2Bの長手方向における略中央部分に吸着する。前述したように、基板2の裏面2Bが粗面化処理されていて、裏面2Bでのハレーションの発生を防止できるので、自動実装機に搭載された画像認識システムでの認識精度を向上できる。また、第1接続電極3および第2接続電極4は、チップ抵抗器1の片面(素子形成面2A)および側面2C〜2Fにおける素子形成面2A側の端部だけに設けられていることから、チップ抵抗器1において裏面2Bは、電極(凹凸)がない平坦面となる。よって、吸着ノズル91をチップ抵抗器1に吸着して移動させる場合に、平坦な裏面2Bに吸着ノズル91を吸着させることができる。換言すれば、平坦な裏面2Bであれば、吸着ノズル91が吸着できる部分のマージンを増やすことができる。これによって、吸着ノズル91をチップ抵抗器1に確実に吸着させ、チップ抵抗器1を途中で吸着ノズル91から脱落させることなく確実に搬送できる。
【0044】
そして、チップ抵抗器1を吸着した吸着ノズル91を実装基板9まで移動させる。このとき、チップ抵抗器1の素子形成面2Aと実装基板9の実装面9Aとが互いに対向する。この状態で、吸着ノズル91を移動させて実装基板9に押し付け、チップ抵抗器1において、第1接続電極3を一方のランド88の半田13に接触させ、第2接続電極4を他方のランド88の半田13に接触させる。次に、半田13を加熱すると、半田13が溶融する。その後、半田13が冷却されて固まると、第1接続電極3と当該一方のランド88とが半田13を介して接合し、第2接続電極4と当該他方のランド88とが半田13を介して接合する。つまり、2つのランド88のそれぞれが、第1接続電極3および第2接続電極4において対応する電極に半田接合される。これにより、実装基板9へのチップ抵抗器1の実装(フリップチップ接続)が完了して、回路アセンブリ100が完成する。なお、外部接続電極として機能する第1接続電極3および第2接続電極4は、半田濡れ性の向上および信頼性の向上のために、金(Au)で形成するか、または、後述するように表面に金メッキを施すことが望ましい。
【0045】
完成状態の回路アセンブリ100では、チップ抵抗器1の素子形成面2Aと実装基板9の実装面9Aとが、隙間を隔てて対向しつつ、平行に延びている(
図1Dも参照)。当該隙間の寸法は、第1接続電極3または第2接続電極4において素子形成面2Aから突き出た部分の厚みと半田13の厚さとの合計に相当する。
図1Dは、実装基板に実装された状態のチップ抵抗器を素子形成面側から見た模式的な平面図である。次に、
図1Cおよび
図1Dを参照して、チップ抵抗器1の実装形状を説明する。
【0046】
まず、
図1Cに示すように、断面視においては、たとえば、第1接続電極3および第2接続電極4は、素子形成面2A上の表面部分と側面2C,2D上の側面部分とが一体的になってL字状に形成されている。そのため、
図1Dに示すように、実装面9A(素子形成面2A)の法線方向(これらの面に直交する方向)から回路アセンブリ100(厳密には、チップ抵抗器1と実装基板9との接合部分)を見てみると、第1接続電極3と一方のランド88とを接合する半田13は、第1接続電極3の表面部分だけでなく、側面部分にも吸着している。同様に、第2接続電極4と他方のランド88とを接合する半田13も、第2接続電極4の表面部分だけでなく、側面部分にも吸着している。
【0047】
このように、チップ抵抗器1では、第1接続電極3が基板2の三方の側面2C,2E,2Fを一体的に覆うように形成され、第2接続電極4が基板2の三方の側面2D,2E,2Fを一体的に覆うように形成されている。すなわち、基板2の素子形成面2Aに加えて側面2C〜2Fにも電極が形成されているので、チップ抵抗器1を実装基板9に半田付けする際の接着面積を拡大できる。その結果、第1接続電極3および第2接続電極4に対する半田13の吸着量を増やすことができるので、接着強度を向上できる。
【0048】
また、
図1Dに示すように、半田13が基板2の素子形成面2Aから側面2C〜2Fに回り込むように吸着する。したがって実装状態において、第1接続電極3を三方の側面2C,2E,2Fで半田13によって保持し、第2接続電極4を三方の側面2D,2E,2Fで半田13によって保持することによって、矩形状のチップ抵抗器1の全ての側面2C〜2Fを半田13で固定できる。これにより、チップ抵抗器1の実装形状を安定化できる。
【0049】
次に、チップ抵抗器1における他の構成を主に説明する。
図2は、チップ抵抗器の平面図であり、第1接続電極、第2接続電極および素子の配置関係ならびに素子の平面視の構成(レイアウトパターン)を示す図である。
図2を参照して、素子5は、抵抗回路網となっている。具体的に、素子5は、行方向(基板2の長手方向)に沿って配列された8個の抵抗体Rと、列方向(基板2の幅方向)に沿って配列された44個の抵抗体Rとで構成された合計352個の抵抗体Rを有している。これらの抵抗体Rは、素子5の抵抗回路網を構成する複数の素子要素である。
【0050】
これら多数個の抵抗体Rが1個〜64個の所定個数毎にまとめられて電気的に接続されることによって、複数種類の抵抗回路が形成されている。形成された複数種類の抵抗回路は、導体膜D(導体で形成された配線膜)で所定の態様に接続されている。さらに、基板2の素子形成面2Aには、抵抗回路を素子5に対して電気的に組み込んだり、または、素子5から電気的に分離したりするために切断(溶断)可能な複数のヒューズFが設けられている。複数のヒューズFおよび導体膜Dは、第1接続電極3の内側辺沿いに、配置領域が直線状になるように配列されている。より具体的には、複数のヒューズFおよび導体膜Dが隣接するように配置され、その配列方向が直線状になっている。複数のヒューズFは、複数種類の抵抗回路(抵抗回路毎の複数の抵抗体R)を第1接続電極3に対してそれぞれ切断可能(切り離し可能)に接続している。
【0051】
図3Aは、
図2に示す素子の一部分を拡大して描いた平面図である。
図3Bは、素子における抵抗体の構成を説明するために描いた
図3AのB−Bに沿う長さ方向の縦断面図である。
図3Cは、素子における抵抗体の構成を説明するために描いた
図3AのC−Cに沿う幅方向の縦断面図である。
図3A、
図3Bおよび
図3Cを参照して、抵抗体Rの構成について説明をする。
【0052】
チップ抵抗器1は、前述した配線膜22、パッシベーション膜23および樹脂膜24の他に、絶縁膜20と抵抗体膜21とをさらに備えている(
図3Bおよび
図3C参照)。絶縁膜20、抵抗体膜21、配線膜22、パッシベーション膜23および樹脂膜24は、基板2(素子形成面2A)上に形成されている。
絶縁膜20は、SiO
2(酸化シリコン)からなる。絶縁膜20は、基板2の素子形成面2Aの全域を覆っている。絶縁膜20の厚さは、約10000Åである。
【0053】
抵抗体膜21は、絶縁膜20上に形成されている。抵抗体膜21は、TiN、TiONまたはTiSiONによって形成されている。抵抗体膜21の厚さは、約2000Åである。抵抗体膜21は、第1接続電極3と第2接続電極4との間を平行に直線状に延びる複数本の抵抗体膜(以下「抵抗体膜ライン21A」という)を構成していて、抵抗体膜ライン21Aは、ライン方向に所定の位置で切断されている場合がある(
図3A参照)。
【0054】
抵抗体膜ライン21A上には、配線膜22が積層されている。配線膜22は、Al(アルミニウム)またはアルミニウムとCu(銅)との合金(AlCu合金)からなる。配線膜22の厚さは、約8000Åである。配線膜22は、抵抗体膜ライン21A上に、ライン方向に一定間隔Rを開けて積層されていて、抵抗体膜ライン21Aに接している。
この構成の抵抗体膜ライン21Aおよび配線膜22の電気的特徴を回路記号で示すと、
図4の通りである。すなわち、
図4(a)に示すように、所定間隔Rの領域の抵抗体膜ライン21A部分が、それぞれ、一定の抵抗値rを有する1つの抵抗体Rを形成している。
【0055】
そして、配線膜22が積層された領域では、配線膜22が隣り合う抵抗体R同士を電気的に接続することによって、当該配線膜22で抵抗体膜ライン21Aが短絡されている。よって、
図4(b)に示す抵抗rの抵抗体Rの直列接続からなる抵抗回路が形成されている。
また、隣接する抵抗体膜ライン21A同士は抵抗体膜21および配線膜22で接続されているから、
図3Aに示す素子5の抵抗回路網は、
図4(c)に示す(前述した抵抗体Rの単位抵抗からなる)抵抗回路を構成している。このように、抵抗体膜21および配線膜22は、抵抗体Rや抵抗回路(つまり素子5)を構成している。そして、各抵抗体Rは、抵抗体膜ライン21A(抵抗体膜21)と、抵抗体膜ライン21A上にライン方向に一定間隔をあけて積層された複数の配線膜22とを含み、配線膜22が積層されていない一定間隔R部分の抵抗体膜ライン21Aが、1個の抵抗体Rを構成している。抵抗体Rを構成している部分における抵抗体膜ライン21Aは、その形状および大きさが全て等しい。よって、基板2上にマトリックス状に配列された多数個の抵抗体Rは、等しい抵抗値を有している。
【0056】
また、抵抗体膜ライン21A上に積層された配線膜22は、抵抗体Rを形成すると共に、複数個の抵抗体Rを接続して抵抗回路を構成するための導体膜Dの役目も果たしている(
図2参照)。
図5(a)は、
図2に示すチップ抵抗器の平面図の一部分を拡大して描いたヒューズを含む領域の部分拡大平面図であり、
図5(b)は、
図5(a)のB−Bに沿う断面構造を示す図である。
【0057】
図5(a)および(b)に示すように、前述したヒューズFおよび導体膜Dも、抵抗体Rを形成する抵抗体膜21上に積層された配線膜22によって形成されている。すなわち、抵抗体Rを形成する抵抗体膜ライン21A上に積層された配線膜22と同じレイヤーに、配線膜22と同じ金属材料であるAlまたはAlCu合金によってヒューズFおよび導体膜Dが形成されている。なお、配線膜22は、前述したように、抵抗回路を形成するために、複数個の抵抗体Rを電気的に接続する導体膜Dとしても用いられている。
【0058】
つまり、抵抗体膜21上に積層された同一レイヤーにおいて、抵抗体Rを形成するための配線膜や、ヒューズFや、導体膜Dや、さらには、素子5を第1接続電極3および第2接続電極4に接続するための配線膜が、配線膜22として、同一の金属材料(AlまたはAlCu合金)を用いて形成されている。なお、ヒューズFを配線膜22と異ならせている(区別している)のは、ヒューズFが切断しやすいように細く形成されていること、および、ヒューズFの周囲に他の回路要素が存在しないように配置されていることによるからである。
【0059】
ここで、配線膜22において、ヒューズFが配置された領域を、トリミング対象領域Xということにする(
図2および
図5(a)参照)。トリミング対象領域Xは、第1接続電極3の内側辺沿いの直線状領域であって、トリミング対象領域Xには、ヒューズFだけでなく、導体膜Dも配置されている。また、トリミング対象領域Xの配線膜22の下方にも抵抗体膜21が形成されている(
図5(b)参照)。そして、ヒューズFは、配線膜22において、トリミング対象領域X以外の部分よりも配線間距離が大きい(周囲から離された)配線である。
【0060】
なお、ヒューズFは、配線膜22の一部だけでなく、抵抗体R(抵抗体膜21)の一部と抵抗体膜21上の配線膜22の一部とのまとまり(ヒューズ素子)を指していてもよい。
また、ヒューズFは、導体膜Dと同一のレイヤーを用いる場合のみを説明したが、導体膜Dでは、その上に更に別の導体膜を積層するようにし、導体膜D全体の抵抗値を下げるようにしてもよい。なお、この場合であっても、ヒューズFの上に導体膜を積層しなければ、ヒューズFの溶断性が悪くなることはない。
【0061】
図6は、本発明の実施形態に係る素子の電気回路図である。
図6を参照して、素子5は、基準抵抗回路R8と、抵抗回路R64、2つの抵抗回路R32、抵抗回路R16、抵抗回路R8、抵抗回路R4、抵抗回路R2、抵抗回路R1、抵抗回路R/2、抵抗回路R/4、抵抗回路R/8、抵抗回路R/16、抵抗回路R/32とを第1接続電極3からこの順番で直列接続することによって構成されている。基準抵抗回路R8および抵抗回路R64〜R2のそれぞれは、自身の末尾の数(R64の場合には「64」)と同数の抵抗体Rを直列接続することで構成されている。抵抗回路R1は、1つの抵抗体Rで構成されている。抵抗回路R/2〜R/32のそれぞれは、自身の末尾の数(R/32の場合には「32」)と同数の抵抗体Rを並列接続することで構成されている。抵抗回路の末尾の数の意味については、後述する
図7および
図8においても同じである。
【0062】
そして、基準抵抗回路R8以外の抵抗回路R64〜抵抗回路R/32のそれぞれに対して、ヒューズFが1つずつ並列的に接続されている。ヒューズF同士は、直接または導体膜D(
図5(a)参照)を介して直列に接続されている。
図6に示すように全てのヒューズFが溶断されていない状態では、素子5は、第1接続電極3および第2接続電極4間に設けられた8個の抵抗体Rの直列接続からなる基準抵抗回路R8の抵抗回路を構成している。たとえば、1個の抵抗体Rの抵抗値rをr=8Ωとすれば、8r=64Ωの抵抗回路(基準抵抗回路R8)によって第1接続電極3および第2接続電極4が接続されたチップ抵抗器1が構成されている。
【0063】
また、全てのヒューズFが溶断されていない状態では、基準抵抗回路R8以外の複数種類の抵抗回路は、短絡された状態となっている。つまり、基準抵抗回路R8には、12種類13個の抵抗回路R64〜R/32が直列に接続されているが、各抵抗回路は、それぞれ並列に接続されたヒューズFによって短絡されているので、電気的に見ると、各抵抗回路は素子5に組み込まれてはいない。
【0064】
この実施形態に係るチップ抵抗器1では、要求される抵抗値に応じて、ヒューズFを選択的に、たとえばレーザ光で溶断する。これにより、並列的に接続されたヒューズFが溶断された抵抗回路は、素子5に組み込まれることになる。よって、素子5の全体の抵抗値を、溶断されたヒューズFに対応する抵抗回路が直列に接続されて組み込まれた抵抗値とすることができる。
【0065】
特に、複数種類の抵抗回路は、等しい抵抗値を有する抵抗体Rが、直列に1個、2個、4個、8個、16個、32個…と、公比が2となる等比数列的に抵抗体Rの個数が増加されて接続された複数種類の直列抵抗回路ならびに等しい抵抗値の抵抗体Rが並列に2個、4個、8個、16個…と、公比が2となる等比数列的に抵抗体Rの個数が増加されて接続された複数種類の並列抵抗回路を備えている。そのため、ヒューズF(前述したヒューズ素子も含む)を選択的に溶断することによって、素子5(抵抗56)全体の抵抗値を、細かく、かつデジタル的に、任意の抵抗値となるように調整して、チップ抵抗器1において所望の値の抵抗を発生させることができる。
【0066】
図7は、本発明の他の実施形態に係る素子の電気回路図である。
図6に示すように基準抵抗回路R8および抵抗回路R64〜抵抗回路R/32を直列接続して素子5を構成する代わりに、
図7に示すように素子5を構成してもかまわない。詳しくは、第1接続電極3および第2接続電極4の間で、基準抵抗回路R/16と、12種類の抵抗回路R/16、R/8、R/4、R/2、R1、R2、R4、R8、R16、R32、R64、R128の並列接続回路との直列接続回路によって素子5を構成してもよい。
【0067】
この場合、基準抵抗回路R/16以外の12種類の抵抗回路には、それぞれ、ヒューズFが直列に接続されている。全てのヒューズFが溶断されていない状態では、各抵抗回路は素子5に対して電気的に組み込まれている。要求される抵抗値に応じて、ヒューズFを選択的に、たとえばレーザ光で溶断すれば、溶断されたヒューズFに対応する抵抗回路(ヒューズFが直列に接続された抵抗回路)は、素子5から電気的に分離されるので、チップ抵抗器1全体の抵抗値を調整できる。
【0068】
図8は、本発明のさらに他の実施形態に係る素子の電気回路図である。
図8に示す素子5の特徴は、複数種類の抵抗回路の直列接続と、複数種類の抵抗回路の並列接続とが直列に接続された回路構成となっていることである。直列接続される複数種類の抵抗回路には、先の実施形態と同様、抵抗回路毎に、並列にヒューズFが接続されていて、直列接続された複数種類の抵抗回路は、全てヒューズFで短絡状態とされている。したがって、ヒューズFを溶断すると、その溶断されるヒューズFで短絡されていた抵抗回路が、素子5に電気的に組み込まれることになる。
【0069】
一方、並列接続された複数種類の抵抗回路には、それぞれ、直列にヒューズFが接続されている。したがって、ヒューズFを溶断することによって、溶断されたヒューズFが直列に接続されている抵抗回路を、抵抗回路の並列接続から電気的に切り離すことができる。
かかる構成とすれば、たとえば、1kΩ以下の小抵抗は並列接続側で作り、1kΩ以上の抵抗回路を直列接続側で作れば、数Ωの小抵抗から数MΩの大抵抗までの広範な範囲の抵抗回路を、等しい基本設計で構成した抵抗の回路網を用いて作ることができる。つまりチップ抵抗器1では、一つまたは複数のヒューズFを選択して切断することによって、複数種類の抵抗値に、容易にかつ速やかに対応できる。換言すれば、抵抗値の異なる複数の抵抗体Rを組み合わせることによって、様々な抵抗値のチップ抵抗器1を共通の設計で実現できる。
【0070】
以上のように、このチップ抵抗器1では、トリミング対象領域Xにおいて、複数の抵抗体R(抵抗回路)の接続状態が変更可能である。
図9は、チップ抵抗器の模式的な断面図である。
次に、
図9を参照して、チップ抵抗器1についてさらに詳しく説明する。なお、説明の便宜上、
図9では、前述した素子5については簡略化して示していると共に、基板2以外の各要素にはハッチングを付している。
【0071】
ここでは、前述したパッシベーション膜23および樹脂膜24について説明する。
パッシベーション膜23は、たとえばSiN(窒化シリコン)からなり、その厚さは、1000Å〜5000Å(ここでは、約3000Å)である。パッシベーション膜23は、素子形成面2Aおよび側面2C〜2Fのそれぞれにおけるほぼ全域に亘って設けられている。素子形成面2A上のパッシベーション膜23は、抵抗体膜21および抵抗体膜21上の各配線膜22(つまり、素子5)を表面(
図9の上側)から被覆していて、素子5における各抵抗体Rの上面を覆っている。そのため、パッシベーション膜23は、前述したトリミング対象領域Xにおける配線膜22も覆っている(
図5(b)参照)。また、パッシベーション膜23は、素子5(配線膜22および抵抗体膜21)に接しており、抵抗体膜21以外の領域では絶縁膜20にも接している。これにより、素子形成面2A上のパッシベーション膜23は、素子形成面2A全域を覆って素子5および絶縁膜20を保護する保護膜として機能している。また、素子形成面2Aでは、パッシベーション膜23によって、抵抗体R間における配線膜22以外での短絡(隣り合う抵抗体膜ライン21A間における短絡)が防止されている。
【0072】
一方、側面2C〜2Fのそれぞれに設けられたパッシベーション膜23は、第1接続電極3および第2接続電極4の側面部分と基板2の側面2C〜2Fとの間に介在されており、側面2C〜2Fのそれぞれを保護する保護層として機能している。これにより、第1接続電極3および第2接続電極4と基板2とを短絡させたくない場合に、その要求に応えることができる。なお、パッシベーション膜23は極めて薄い膜なので、本実施形態では、側面2C〜2Fのそれぞれを覆うパッシベーション膜23を、基板2の一部とみなすことにする。そのため、側面2C〜2Fのそれぞれを覆うパッシベーション膜23を、側面2C〜2Fそのものとみなすことにしている。
【0073】
樹脂膜24は、パッシベーション膜23と共にチップ抵抗器1の素子形成面2Aを保護するものであり、ポリイミド等の樹脂からなる。樹脂膜24の厚みは、約5μmである。
樹脂膜24は、素子形成面2A上のパッシベーション膜23の表面(パッシベーション膜23に被覆された抵抗体膜21および配線膜22も含む)の全域を被覆している。
樹脂膜24には、配線膜22における第1接続電極3および第2接続電極4の側面部分に対向する周縁部を露出させる切欠部25が1つずつ形成されている。各切欠部25は、樹脂膜24およびパッシベーション膜23を、それぞれの厚さ方向において連続して貫通している。そのため、切欠部25は、樹脂膜24だけでなくパッシベーション膜23にも形成されている。これにより、各配線膜22は、素子5に近い内側の周縁部のみが樹脂膜24によって選択的に覆われており、その他の、基板2の周縁部85に沿う周縁部が切欠部25を介して選択的に露出している。配線膜22において各切欠部25から露出された表面は、外部接続用のパッド領域22Aとなっている。また、切欠部25から露出する配線膜22は、素子形成面2Aにおいて基板2の周縁部85から内方へ所定の間隔(たとえば、3μm〜6μm)離れて配置されている。また、切欠部25の側面には、チップ抵抗器1の一方の短辺82から他方の短辺82へ向かって、絶縁膜26が全体的に形成されている。
【0074】
2つの切欠部25のうち、一方の切欠部25は、第1接続電極3によって埋め尽くされ、他方の切欠部25は、第2接続電極4によって埋め尽くされている。この第1接続電極3および第2接続電極4は、前述したように、素子形成面2Aに加えて側面2C〜2Fも覆うように形成されている。また、第1接続電極3および第2接続電極4は、樹脂膜24から突出するように形成されていると共に、樹脂膜24の表面に沿って基板2の内方(素子5側)へ引き出された引き出し部27を有している。
【0075】
ここで、第1接続電極3および第2接続電極4のそれぞれは、Ni層33、Pd層34およびAu層35を素子形成面2A側および側面2C〜2F側からこの順で有している。すなわち、第1接続電極3および第2接続電極4のそれぞれは、素子形成面2A上の領域だけでなく、側面2C〜2F上の領域においても、Ni層33、Pd層34およびAu層35からなる積層構造を有している。そのため、第1接続電極3および第2接続電極4のそれぞれにおいて、Ni層33とAu層35との間にPd層34が介装されている。第1接続電極3および第2接続電極4のそれぞれにおいて、Ni層33は各接続電極の大部分を占めており、Pd層34およびAu層35は、Ni層33に比べて格段に薄く形成されている。Ni層33は、チップ抵抗器1が実装基板9に実装された際に(
図1Cおよび
図1D参照)、各切欠部25のパッド領域22Aにおける配線膜22のAlと、前述した半田13とを中継する役割を有している。
【0076】
このように、第1接続電極3および第2接続電極4では、Ni層33の表面がAu層35によって覆われているので、Ni層33が酸化することを防止できる。また、第1接続電極3および第2接続電極4では、Au層35を薄くすることによってAu層35に貫通孔(ピンホール)ができてしまっても、Ni層33とAu層35との間に介装されたPd層34が当該貫通孔を塞いでいるので、当該貫通孔からNi層33が外部に露出されて酸化することを防止できる。
【0077】
そして、第1接続電極3および第2接続電極4のそれぞれでは、Au層35が、最表面に露出している。第1接続電極3は、一方の切欠部25を介して、この切欠部25におけるパッド領域22Aにおいて配線膜22に対して電気的に接続されている。第2接続電極4は、他方の切欠部25を介して、この切欠部25におけるパッド領域22Aにおいて配線膜22に対して電気的に接続されている。第1接続電極3および第2接続電極4のそれぞれでは、Ni層33がパッド領域22Aに対して接続されている。これにより、第1接続電極3および第2接続電極4のそれぞれは、素子5に対して電気的に接続されている。ここで、配線膜22は、抵抗体Rのまとまり(抵抗56)、第1接続電極3および第2接続電極4のそれぞれに接続された配線を形成している。
【0078】
このように、切欠部25が形成された樹脂膜24およびパッシベーション膜23は、切欠部25から第1接続電極3および第2接続電極4を露出させた状態で素子形成面2Aを覆っている。そのため、樹脂膜24の表面において切欠部25からはみ出した(突出した)第1接続電極3および第2接続電極4を介して、チップ抵抗器1と実装基板9との間における電気的接続を達成できる(
図1Cおよび
図1D参照)。
【0079】
図10A〜
図10Iは、
図9に示すチップ抵抗器の製造方法を示す図解的な断面図である。
まず、
図10Aに示すように、基板2の元となる基板30を用意する。この場合、基板30の表面30Aは、基板2の素子形成面2Aであり、基板30の裏面30Bは、基板2の裏面2Bである。
【0080】
そして、基板30の表面30Aを熱酸化して、表面30AにSiO
2等からなる絶縁膜20を形成し、絶縁膜20上に素子5(抵抗体Rおよび抵抗体Rに接続された配線膜22)を形成する。具体的には、スパッタリングによって、まず、絶縁膜20の上にTiN、TiONまたはTiSiONの抵抗体膜21を全面に形成し、さらに、抵抗体膜21に接するように抵抗体膜21の上にアルミニウム(Al)の配線膜22を積層する。その後、フォトリソグラフィプロセスを用い、たとえばRIE(Reactive Ion Etching:反応性イオンエッチング)等のドライエッチングによって抵抗体膜21および配線膜22を選択的に除去してパターニングし、
図3Aに示すように、平面視で、抵抗体膜21が積層された一定幅の抵抗体膜ライン21Aが一定間隔をあけて列方向に配列される構成を得る。このとき、部分的に抵抗体膜ライン21Aおよび配線膜22が切断された領域も形成されると共に、前述したトリミング対象領域XにおいてヒューズFおよび導体膜Dが形成される(
図2参照)。続いて、たとえばウェットエッチングによって抵抗体膜ライン21Aの上に積層された配線膜22を選択的に除去する。この結果、抵抗体膜ライン21A上に一定間隔Rをあけて配線膜22が積層された構成の素子5が得られる。この際、抵抗体膜21および配線膜22が目標寸法で形成されたか否かを確かめるために、素子5全体の抵抗値を測定してもよい。
【0081】
図10Aを参照して、素子5は、1枚の基板30に形成するチップ抵抗器1の数に応じて、基板30の表面30A上における多数の箇所に形成される。基板30において素子5(前述した抵抗56)が形成された1つの領域をチップ部品領域Yというと、基板30の表面30Aには、抵抗56をそれぞれ有する複数のチップ部品領域Y(つまり、素子5)が形成(設定)される。1つのチップ部品領域Yは、完成した1つのチップ抵抗器1(
図9参照)を平面視したものと一致する。そして、基板30の表面30Aにおいて、隣り合うチップ部品領域Yの間の領域を、境界領域Zということにする。境界領域Zは、帯状をなしていて、平面視で格子状に延びている。境界領域Zによって区画された1つの格子の中にチップ部品領域Yが1つ配置されている。境界領域Zの幅は、1μm〜60μm(たとえば20μm)と極めて狭いので、基板30では多くのチップ部品領域Yを確保でき、結果としてチップ抵抗器1の大量生産が可能になる。
【0082】
次に、
図10Aに示すように、CVD(Chemical Vapor Deposition:化学的気相成長)法によって、SiNからなる絶縁膜45を、基板30の表面30Aの全域に亘って形成する。絶縁膜45は、絶縁膜20および絶縁膜20上の素子5(抵抗体膜21や配線膜22)を全て覆っていて、これらに接している。そのため、絶縁膜45は、前述したトリミング対象領域X(
図2参照)における配線膜22も覆っている。また、絶縁膜45は、基板30の表面30Aにおいて全域に亘って形成されることから、表面30Aにおいて、トリミング対象領域X以外の領域にまで延びて形成される。これにより、絶縁膜45は、表面30A(表面30A上の素子5も含む)全域を保護する保護膜となる。
【0083】
次に、
図10Bに示すようにマスク65を用いたエッチングによって、絶縁膜45を選択的に除去する。これにより、絶縁膜45の一部に開口28が形成され、その開口28において各パッド領域22Aが露出する。1つの半製品50につき、開口28は2つ形成される。
各半製品50において、絶縁膜45に2つの開口28を形成した後に、抵抗測定装置(図示せず)のプローブ70を各開口28のパッド領域22Aに接触させて、素子5の全体の抵抗値を検出する。そして、絶縁膜45越しにレーザ光(図示せず)を任意のヒューズF(
図2参照)に照射することによって、前述したトリミング対象領域Xの配線膜22をレーザ光でトリミングして、当該ヒューズFを溶断する。このようにして、必要な抵抗値となるようにヒューズFを溶断(トリミング)することによって、前述したように、半製品50(換言すれば、チップ抵抗器1)全体の抵抗値を調整できる。このとき、絶縁膜45が素子5を覆うカバー膜となっているので、溶断の際に生じた破片などが素子5に付着して短絡が生じることを防止できる。また、絶縁膜45がヒューズF(抵抗体膜21)を覆っていることから、レーザ光のエネルギーをヒューズFに蓄えてヒューズFを確実に溶断できる。その後、必要に応じて、CVD法によって絶縁膜45上にSiNを形成し、絶縁膜45を厚くする。最終的な絶縁膜45(
図10Cに示された状態)は、1000Å〜5000Å(ここでは、約3000Å)の厚さを有している。このとき、絶縁膜45の一部は、各開口28に入り込んで開口28を塞いでいる。
【0084】
次に、
図10Cに示すように、ポリイミドからなる感光性樹脂の液体を、基板30に対して、絶縁膜45の上からスプレー塗布して、感光性樹脂の樹脂膜46を形成する。表面30A上の樹脂膜46の表面は、表面30Aに沿って平坦になっている。次に、樹脂膜46に熱処理(キュア処理)を施す。これにより、樹脂膜46の厚みが熱収縮すると共に、樹脂膜46が硬化して膜質が安定する。
【0085】
次に、
図10Dに示すように、樹脂膜46、絶縁膜45および絶縁膜20をパターニングすることによって、これらの膜の切欠部25と一致する部分を選択的に除去する。これにより切欠部25が形成されると共に、境界領域Zにおいては表面30A(絶縁膜20)が露出することになる。
次に、
図10Eに示すように、基板30の表面30Aの全域に亘ってレジストパターン41を形成する。レジストパターン41には、開口42が形成されている。
【0086】
図11は、
図10Eの工程において溝を形成するために用いられるレジストパターンの一部の模式的な平面図である。
図11を参照して、レジストパターン41の開口42は、多数のチップ抵抗器1(換言すれば、前述したチップ部品領域Y)を行列状(格子状でもある)に配置した場合において平面視で隣り合うチップ抵抗器1の輪郭の間の領域(
図11においてハッチングを付した部分であり、換言すれば、境界領域Z)に一致(対応)している。そのため、開口42の全体形状は、互いに直交する直線部分42Aおよび42Bを複数有する格子状になっている。
【0087】
レジストパターン41では、開口42において互いに直交する直線部分42Aおよび42Bは、互いに直交した状態を保ちながら(湾曲することなく)つながっている。そのため、直線部分42Aおよび42Bの交差部分43は、平面視で略90°をなすように尖っている。
図10Eを参照して、レジストパターン41をマスクとするプラズマエッチングによって、基板30を選択的に除去する。これにより、隣り合う素子5(チップ部品領域Y)の間の境界領域Zにおける配線膜22から間隔を空けた位置で基板30の材料が除去される。その結果、平面視においてレジストパターン41の開口42と一致する位置(境界領域Z)には、基板30の表面30Aから基板30の厚さ途中まで到達する所定深さの溝44が形成される。溝44は、互いに対向する1対の側壁44Aと、当該1対の側壁44Aの下端(基板30の裏面30B側の端)の間を結ぶ底壁44Bとによって区画されている。基板30の表面30Aを基準とした溝44の深さは約100μmであり、溝44の幅(対向する側壁44Aの間隔)は約20μmであって、深さ方向全域に渡って一定である。
【0088】
基板30における溝44の全体形状は、平面視でレジストパターン41の開口42(
図11参照)と一致する格子状になっている。そして、基板30の表面30Aでは、各素子5が形成されたチップ部品領域Yのまわりを溝44における矩形枠体部分(境界領域Z)が取り囲んでいる。基板30において素子5が形成された部分は、チップ抵抗器1の半製品50である。基板30の表面30Aでは、溝44に取り囲まれたチップ部品領域Yに半製品50が1つずつ位置していて、これらの半製品50は、行列状に整列配置されている。このように溝44を形成することによって、基板30を複数のチップ部品領域Y毎の基板2に分離する。溝44が形成された後、レジストパターン41を除去する。
【0089】
次に、
図10Fに示すように、CVD法によって、SiNからなる絶縁膜47を、基板30の表面30Aの全域に亘って形成する。このとき、溝44の内周面(前述した側壁44Aの区画面44Cや底壁44Bの上面)の全域にも絶縁膜47が形成される。
次に、
図10Gに示すように、絶縁膜47を選択的にエッチングする。具体的には、絶縁膜47における表面30Aに平行な部分を選択的にエッチングする。これにより、配線膜22のパッド領域22Aが露出すると共に、溝44においては、底壁44B上の絶縁膜47が除去される。
【0090】
次に、無電解めっきによって、各切欠部25から露出した配線膜22からNi、PdおよびAuを順にめっき成長させる。めっきは、各めっき膜が表面30Aに沿う横方向に成長し、溝44の側壁44A上の絶縁膜47を覆うまで続けられる。これにより、
図10Hに示すように、Ni/Pd/Au積層膜からなる第1接続電極3および第2接続電極4を形成する。
【0091】
図12は、第1接続電極および第2接続電極の製造工程を説明するための図である。
詳しくは、
図12を参照して、まず、パッド領域22Aの表面が浄化されることで、当該表面の有機物(炭素のしみ等のスマットや油脂性の汚れも含む)が除去(脱脂)される(ステップS1)。次に、当該表面の酸化膜が除去される(ステップS2)。次に、当該表面においてジンケート処理が実施されて、当該表面における(配線膜22の)AlがZnに置換される(ステップS3)。次に、当該表面上のZnが硝酸等で剥離されて、パッド領域22Aでは、新しいAlが露出される(ステップS4)。
【0092】
次に、パッド領域22Aをめっき液に浸けることによって、パッド領域22Aにおける新しいAlの表面にNiめっきが施される。これにより、めっき液中のNiが化学的に還元析出されて、当該表面にNi層33が形成される(ステップS5)。
次に、Ni層33を別のめっき液に浸けることによって、当該Ni層33の表面にPdめっきが施される。これにより、めっき液中のPdが化学的に還元析出されて、当該Ni層33の表面にPd層34が形成される(ステップS6)。
【0093】
次に、Pd層34をさらに別のめっき液に浸けることによって、当該Pd層34の表面にAuめっきが施される。これにより、めっき液中のAuが化学的に還元析出されて、当該Pd層34の表面にAu層35が形成される(ステップS7)。これによって、第1接続電極3および第2接続電極4が形成され、形成後の第1接続電極3および第2接続電極4を乾燥させると(ステップS8)、第1接続電極3および第2接続電極4の製造工程が完了する。なお、前後するステップの間には、半製品50を水で洗浄する工程が適宜実施される。また、ジンケート処理は複数回実施されてもよい。
【0094】
図10Hでは、各半製品50において第1接続電極3および第2接続電極4が形成された後の状態を示している。
以上のように、第1接続電極3および第2接続電極4を無電解めっきによって形成するので、電極材料であるNi,PdおよびAlを絶縁膜47上にも良好にめっき成長させることができる。また、第1接続電極3および第2接続電極4を電解めっきによって形成する場合に比べて、第1接続電極3および第2接続電極4についての形成工程の工程数(たとえば、電解めっきで必要となるリソグラフィ工程やレジストマスクの剥離工程等)を削減してチップ抵抗器1の生産性を向上できる。さらに、無電解めっきの場合には、電解めっきで必要とされるレジストマスクが不要であることから、レジストマスクの位置ずれによる第1接続電極3および第2接続電極4についての形成位置にずれが生じないので、第1接続電極3および第2接続電極4の形成位置精度を向上して歩留まりを向上できる。
【0095】
また、この方法では、配線膜22が切欠部25から露出していて、配線膜22から溝44までめっき成長の妨げになるものが無い。そのため、配線膜22から溝44まで直線的にめっき成長させることができる。その結果、電極の形成にかかる時間の短縮を図ることができる。
このように第1接続電極3および第2接続電極4が形成されてから、第1接続電極3および第2接続電極4間での通電検査が行われた後に、基板30が裏面30Bから研削される。
【0096】
具体的には、溝44を形成した後に、
図10Iに示すように、PET(ポリエチレンテレフタレート)からなる薄板状であって粘着面72を有する支持テープ71が、粘着面72において、各半製品50における第1接続電極3および第2接続電極4側(つまり、表面30A)に貼着される。これにより、各半製品50が支持テープ71に支持される。ここで、支持テープ71として、たとえば、ラミネートテープを用いることができる。
【0097】
各半製品50が支持テープ71に支持された状態で、基板30を裏面30B側から研削および研磨をこの順に行う。研削によって、溝44の底壁44B(
図10H参照)の上面付近に達するまで基板30が薄型化した後、研磨によって研磨面が底壁44Bの上面に達すると、隣り合う半製品50を連結するものがなくなるので、溝44を境界として基板30が分割され、半製品50が個別に分離してチップ抵抗器1の完成品となる。つまり、溝44(換言すれば、境界領域Z)において基板30が切断(分断)され、これによって、各チップ抵抗器1が切り出される。この際、最終的な半製品50の分離を研磨によって行うので、複数のチップ抵抗器1の裏面2Bは、分離と同時に鏡面化された綺麗な面となる。なお、基板30を裏面30B側から溝44の底壁44Bまでエッチングすることによってチップ抵抗器1を切り出しても構わない。また、半製品50の分離を研削だけで行い、完成したチップ抵抗器1における基板2の裏面2Bを研磨やエッチングすることによって鏡面化して裏面2Bを綺麗にしてもよい。
【0098】
完成した各チップ抵抗器1では、溝44の側壁44Aの区画面44Cをなしていた部分が、基板2の側面2C〜2Fのいずれかとなり、裏面30Bが裏面2Bとなる。つまり、前述したようにエッチングによって溝44を形成する工程(
図10E参照)は、側面2C〜2Fを形成する工程に含まれる。また、絶縁膜45および絶縁膜47の一部がパッシベーション膜23となり、樹脂膜46が樹脂膜24となり、絶縁膜47の一部が絶縁膜26となる。
【0099】
以上のように、溝44を形成してから基板30を裏面30B側から研削すれば、基板30に形成された複数のチップ部品領域Yを一斉に各チップ抵抗器1(チップ部品)に分割できる(複数のチップ抵抗器1の個片を一度に得ることができる)。よって、複数のチップ抵抗器1の製造時間の短縮によってチップ抵抗器1の生産性の向上を図ることができる。
【0100】
図13A〜
図13Eは、
図10Iの工程後におけるチップ抵抗器の回収工程を示す図解的な断面図である。
図13Aでは、個片化された複数のチップ抵抗器1が引き続き支持テープ71にくっついている状態を示している。
この状態で、
図13Bに示すように、サンドブラスト装置300から複数のチップ抵抗器1(基板2)の裏面2Bに向けて、砥粒301を吹き付ける。この砥粒301の衝突により、複数のチップ抵抗器1の裏面2Bが一括して粗面化される。この際、複数のチップ抵抗器1が支持テープにくっついているので、チップ抵抗器1がばらばらにならず、複数のチップ抵抗器1に対して一括して簡単に粗面化処理できる。
【0101】
ここで、粗面化という意味では、裏面研削もその範疇に含まれるかもしれない。しかし、裏面研削は、一般的にはチップ抵抗器1の裏面2Bに押し付けた砥石を高速回転することによって当該裏面2Bを削り取っていく手法である。そのため、裏面2Bに不規則に分布する研削痕が残り、基板2面内における抗折強度に関して場所依存性(場所ごとのばらつき)が生じる。その結果、得られたチップ抵抗器1の抗折強度にばらつきが生じる。
【0102】
これに対して、上記のように、裏面2Bから離れた位置から当該裏面2Bに対して砥粒301を吹き付けるサンドブラストであれば、基板2の面内を均等に粗面化できる。これにより、粗面化の際に、基板2に加工ひずみ(結晶欠陥)が発生することを防止できる。その結果、複数のチップ抵抗器1間での抗折強度のばらつきが少ない。
サンドブラスト装置300としては、たとえば、サクション式サンドブラスト装置または直圧式サンドブラスト装置を適用できる。また、サンドブラストの方式としては、砥粒301が混ざった空気(混合気)をチップ抵抗器1の裏面2Bに噴射する乾式サンドブラストを採用することが好ましい。すなわち、たとえば砥粒が混ざった液体(スラリー)を噴射する湿式サンドブラストでは、
図13Bに破線で示すように、当該スラリーが裏面2Bへの衝突後に、チップ抵抗器1の側方を介して表面2A側に回り込んで第1接続電極3および第2接続電極4に接触し、これらの電極3,4を溶解させるおそれがある。しかし、乾式サンドブラストであれば、粗面化される裏面2Bとは反対側の表面2Aへの影響が少なくて済む。
【0103】
また、乾式サンドブラストの砥粒としては、アルミナ(Al
2O
3)系砥粒または炭化シリコン(SiC)系砥粒を用いることが好ましい。また、その番手は、#100〜#10000であることが好ましい。さらに、乾式サンドブラストの吐出圧力(混合気の噴射圧力)は、0.01MPa〜0.1MPaであることが好ましい。
次に、
図13Cに示すように、各チップ抵抗器1の基板2の裏面2Bに対して、熱発泡シート73を貼着する。熱発泡シート73は、シート状のシート本体74と、シート本体74内に練り込まれた多数の発泡粒子75とを含んでいる。
【0104】
シート本体74の粘着力は、支持テープ71の粘着面72における粘着力よりも強い。そこで、各チップ抵抗器1の基板2の裏面2Bに熱発泡シート73を貼着した後に、
図13Dに示すように、支持テープ71を各チップ抵抗器1から引き剥がして、チップ抵抗器1を熱発泡シート73に転写する。このとき、支持テープ71に紫外線を照射すると(
図13Cの点線矢印参照)、粘着面72の粘着性が低下するので、支持テープ71が各チップ抵抗器1から剥がれやすくなる。
【0105】
次に、熱発泡シート73を加熱する。これにより、
図13Eに示すように、熱発泡シート73では、シート本体74内の各発泡粒子75が発泡してシート本体74の表面から膨出する。その結果、熱発泡シート73と各チップ抵抗器1の基板2の裏面2Bとの接触面積が小さくなり、全てのチップ抵抗器1が熱発泡シート73から自然に剥がれる(脱落する)。このように回収されたチップ抵抗器1は、実装基板9(
図1C参照)に実装されたり、エンボスキャリアテープ(図示せず)に形成された収容空間に収容されたりする。この場合、支持テープ71または熱発泡シート73からチップ抵抗器1を1つずつ引き剥がす場合に比べて、処理時間の短縮を図ることができる。もちろん、複数のチップ抵抗器1が支持テープ71にくっついた状態で(
図13A参照)、熱発泡シート73を用いずに、支持テープ71からチップ抵抗器1を所定個数ずつ直接引き剥がしてもよい。
【0106】
図14A〜
図14Cは、
図10Iの工程後におけるチップ抵抗器の回収工程(変形例)を示す図解的な断面図である。
図14A〜
図14Cに示す別の方法によって、各チップ抵抗器1を回収することもできる。
図14Aでは、
図13Aと同様に、個片化された複数のチップ抵抗器1が引き続き支持テープ71にくっついている状態を示している。この状態で、
図14Bに示すように、各チップ抵抗器1の基板2の裏面2Bに転写テープ77を貼着する。転写テープ77は、支持テープ71の粘着面72よりも強い粘着力を有する。そこで、
図14Cに示すように、各チップ抵抗器1に転写テープ77を貼着した後に、支持テープ71を各チップ抵抗器1から引き剥がす。この際、前述したように、粘着面72の粘着性を低下させるために支持テープ71に紫外線(
図14Bの点線矢印参照)を照射してもよい。
【0107】
転写テープ77の両端には、回収装置(図示せず)のフレーム78が貼り付けられている。両側のフレーム78は、互いが接近する方向または離間する方向に移動できる。支持テープ71を各チップ抵抗器1から引き剥がした後に、両側のフレーム78を互いが離間する方向に移動させると、転写テープ77が伸張して薄くなる。これによって、転写テープ77の粘着力が低下するので、各チップ抵抗器1が転写テープ77から剥がれやすくなる。この状態で、搬送装置(図示せず)の吸着ノズル76をチップ抵抗器1の素子形成面2A側に向けると、搬送装置(図示せず)が発生する吸着力によって、このチップ抵抗器1が転写テープ77から引き剥がされて吸着ノズル76に吸着される。この際、
図14Cに示す突起79によって、吸着ノズル76とは反対側から転写テープ77越しにチップ抵抗器1を吸着ノズル76側へ突き上げると、チップ抵抗器1を転写テープ77から円滑に引き剥がすことができる。このように回収されたチップ抵抗器1は、吸着ノズル76に吸着された状態で搬送装置(図示せず)によって搬送される。
【0108】
以上、本発明の実施形態について説明してきたが、本発明はさらに他の形態で実施することもできる。たとえば、本発明のチップ部品の一例として、前述した実施形態では、チップ抵抗器1を開示したが、本発明は、チップコンデンサやチップダイオードやチップインダクタといったチップ部品にも適用できる。以下では、チップコンデンサについて説明する。
【0109】
また、サンドブラストの一例として乾式サンドブラストを取り上げたが、湿式サンドブラストによっても本発明の効果を達成することができる。
図15は、本発明の他の実施形態に係るチップコンデンサの平面図である。
図16は、
図15の切断面線XVI−XVIから見た断面図である。
図17は、前記チップコンデンサの一部の構成を分離して示す分解斜視図である。
【0110】
これから述べるチップコンデンサ101において、前述したチップ抵抗器1で説明した部分と対応する部分には、同一の参照符号を付し、当該部分についての詳しい説明を省略する。チップコンデンサ101において、チップ抵抗器1で説明した部分と同一の参照符号が付された部分は、特に言及しない限り、チップ抵抗器1で説明した部分と同じ構成を有していて、チップ抵抗器1で説明した部分(特に、第1接続電極3および第2接続電極4に関する部分について)と同じ作用効果を奏することができる。
【0111】
図13を参照して、チップコンデンサ101は、チップ抵抗器1と同様に、基板2と、基板2上(基板2の素子形成面2A側)に配置された第1接続電極3と、同じく基板2上に配置された第2接続電極4とを備えている。基板2は、この実施形態では、平面視において矩形形状を有している。基板2の長手方向両端部に第1接続電極3および第2接続電極4がそれぞれ配置されている。第1接続電極3および第2接続電極4は、この実施形態では、基板2の短手方向に延びたほぼ矩形の平面形状を有している。チップコンデンサ101では、チップ抵抗器1と同様に、第1接続電極3および第2接続電極4が、周縁部85を覆うように、素子形成面2Aおよび側面2C〜2Fに一体的に形成されている。そのため、チップコンデンサ101が実装基板9に実装された回路アセンブリ100(
図1Cおよび
図1D参照)では、チップ抵抗器1の場合と同様に、第1接続電極3および第2接続電極4に対する半田13の吸着量を増やすことができるので、接着強度を向上できる。また、第1接続電極3を三方の側面2C,2E,2Fで半田13によって保持し、第2接続電極4を三方の側面2D,2E,2Fで半田13によって保持することによって、矩形状のチップコンデンサ101の全ての側面2C〜2Fを半田13で固定できる。これにより、チップコンデンサ101の実装形状を安定化できる。
【0112】
基板2の素子形成面2Aには、第1接続電極3および第2接続電極4の間のキャパシタ配置領域105内に、複数のキャパシタ要素C1〜C9が形成されている。複数のキャパシタ要素C1〜C9は、前述した素子5(ここでは、キャパシタ素子)を構成する複数の素子要素であり、第1接続電極3および第2接続電極4の間に接続されている。詳しくは、複数のキャパシタ要素C1〜C9は、複数のヒューズユニット107(前述したヒューズFに相当する)を介してそれぞれ第2接続電極4に対して切り離し可能となるように電気的に接続されている。
【0113】
図16および
図17に示されているように、基板2の素子形成面2Aには絶縁膜20が形成されていて、絶縁膜20の表面に下部電極膜111が形成されている。下部電極膜111は、キャパシタ配置領域105のほぼ全域にわたっている。さらに、下部電極膜111は、第1接続電極3の直下の領域にまで延びて形成されている。より具体的には、下部電極膜111は、キャパシタ配置領域105においてキャパシタ要素C1〜C9の共通の下部電極として機能するキャパシタ電極領域111Aと、第1接続電極3の直下に配置される外部電極引き出しのためのパッド領域111Bとを有している。キャパシタ電極領域111Aがキャパシタ配置領域105に位置していて、パッド領域111Bが第1接続電極3の直下に位置して第1接続電極3に接触している。
【0114】
キャパシタ配置領域105において下部電極膜111(キャパシタ電極領域111A)を覆って接するように容量膜(誘電体膜)112が形成されている。容量膜112は、キャパシタ電極領域111A(キャパシタ配置領域105)の全域にわたって形成されている。容量膜112は、この実施形態では、さらにキャパシタ配置領域105外の絶縁膜20を覆っている。
【0115】
容量膜112の上には、上部電極膜113が形成されている。
図15では、明瞭化のために、上部電極膜113を着色して示してある。上部電極膜113は、キャパシタ配置領域105に位置するキャパシタ電極領域113Aと、第2接続電極4の直下に位置して第2接続電極4に接触するパッド領域113Cと、キャパシタ電極領域113Aとパッド領域113Cとの間に配置されたヒューズ領域113Dとを有している。
【0116】
キャパシタ電極領域113Aにおいて、上部電極膜113は、複数の電極膜部分(上部電極膜部分)131〜139に分割(分離)されている。この実施形態では、各電極膜部分131〜139は、いずれも矩形形状に形成されていて、ヒューズ領域113Dから第1接続電極3に向かって帯状に延びている。複数の電極膜部分131〜139は、複数種類の対向面積で、容量膜112を挟んで(容量膜112に接しつつ)下部電極膜111に対向している。より具体的には、電極膜部分131〜139の下部電極膜111に対する対向面積は、1:2:4:8:16:32:64:128:128となるように定められていてもよい。すなわち、複数の電極膜部分131〜139は、対向面積の異なる複数の電極膜部分を含み、より詳細には、公比が2の等比数列をなすように設定された対向面積を有する複数の電極膜部分131〜138(または131〜137,139)を含む。これによって、各電極膜部分131〜139と容量膜112を挟んで対向する下部電極膜111とによってそれぞれ構成される複数のキャパシタ要素C1〜C9は、互いに異なる容量値を有する複数のキャパシタ要素を含む。電極膜部分131〜139の対向面積の比が前述の通りである場合、キャパシタ要素C1〜C9の容量値の比は、当該対向面積の比と等しく、1:2:4:8:16:32:64:128:128となる。すなわち、複数のキャパシタ要素C1〜C9は、公比が2の等比数列をなすように容量値が設定された複数のキャパシタ要素C1〜C8(またはC1〜C7,C9)を含むことになる。
【0117】
この実施形態では、電極膜部分131〜135は、幅が等しく、長さの比を1:2:4:8:16に設定した帯状に形成されている。また、電極膜部分135,136,137,138,139は、長さが等しく、幅の比を1:2:4:8:8に設定した帯状に形成されている。電極膜部分135〜139は、キャパシタ配置領域105の第2接続電極4側の端縁から第1接続電極3側の端縁までの範囲に渡って延びて形成されており、電極膜部分131〜134は、それよりも短く形成されている。
【0118】
パッド領域113Cは、第2接続電極4とほぼ相似形に形成されており、ほぼ矩形の平面形状を有している。
図16に示すように、パッド領域113Cにおける上部電極膜113は、第2接続電極4に接している。
ヒューズ領域113Dは、基板2上において、パッド領域113Cの一つの長辺(基板2の周縁に対して内方側の長辺)に沿って配置されている。ヒューズ領域113Dは、パッド領域113Cの前記一つの長辺に沿って配列された複数のヒューズユニット107を含む。
【0119】
ヒューズユニット107は、上部電極膜113のパッド領域113Cと同じ材料で一体的に形成されている。複数の電極膜部分131〜139は、1つまたは複数個のヒューズユニット107と一体的に形成されていて、それらのヒューズユニット107を介してパッド領域113Cに接続され、このパッド領域113Cを介して第2接続電極4に電気的に接続されている。
図15に示すように、面積の比較的小さな電極膜部分131〜136は、一つのヒューズユニット107によってパッド領域113Cに接続されており、面積の比較的大きな電極膜部分137〜139は複数個のヒューズユニット107を介してパッド領域113Cに接続されている。全てのヒューズユニット107が用いられる必要はなく、この実施形態では、一部のヒューズユニット107は未使用である。
【0120】
ヒューズユニット107は、パッド領域113Cとの接続のための第1幅広部107Aと、電極膜部分131〜139との接続のための第2幅広部107Bと、第1および第2幅広部107A,7Bの間を接続する幅狭部107Cとを含む。幅狭部107Cは、レーザ光によって切断(溶断)できるように構成されている。それによって、電極膜部分131〜139のうち不要な電極膜部分を、ヒューズユニット107の切断によって第1および第2接続電極3,4から電気的に切り離すことができる。
【0121】
図15および
図17では図示を省略したが、
図16に表れている通り、上部電極膜113の表面を含むチップコンデンサ101の表面は、前述したパッシベーション膜23によって覆われている。パッシベーション膜23は、たとえば窒化膜からなっていて、チップコンデンサ101の上面のみならず、基板2の側面2C〜2Fまで延びて、側面2C〜2Fの全域をも覆うように形成されている。側面2C〜2Fにおいては、基板2と第1接続電極3および第2接続電極4との間に介在されている。さらに、パッシベーション膜23の上には、前述した樹脂膜24が形成されている。樹脂膜24は、素子形成面2Aを覆っている。
【0122】
パッシベーション膜23および樹脂膜24は、チップコンデンサ101の表面を保護する保護膜である。これらには、第1接続電極3および第2接続電極4に対応する領域に、前述した切欠部25がそれぞれ形成されている。切欠部25は、パッシベーション膜23および樹脂膜24を貫通している。さらに、この実施形態では、第1接続電極3に対応した切欠部25は、容量膜112をも貫通している。
【0123】
切欠部25には、第1接続電極3および第2接続電極4がそれぞれ埋め込まれている。これにより、第1接続電極3は下部電極膜111のパッド領域111Bに接合しており、第2接続電極4は上部電極膜113のパッド領域113Cに接合している。第1および第2接続電極3,4は、樹脂膜24の表面から突出すると共に、樹脂膜24の表面に沿って基板2の内方(素子5側)へ引き出された引き出し部27を有している。これにより、実装基板に対してチップコンデンサ101をフリップチップ接合できる。
【0124】
図18は、前記チップコンデンサの内部の電気的構成を示す回路図である。第1接続電極3と第2接続電極4との間に複数のキャパシタ要素C1〜C9が並列に接続されている。各キャパシタ要素C1〜C9と第2接続電極4との間には、一つまたは複数のヒューズユニット107でそれぞれ構成されたヒューズF1〜F9が直列に介装されている。
ヒューズF1〜F9が全て接続されているときは、チップコンデンサ101の容量値は、キャパシタ要素C1〜C9の容量値の総和に等しい。複数のヒューズF1〜F9から選択した1つまたは2つ以上のヒューズを切断すると、当該切断されたヒューズに対応するキャパシタ要素が切り離され、当該切り離されたキャパシタ要素の容量値だけチップコンデンサ101の容量値が減少する。
【0125】
そこで、パッド領域111B,113Cの間の容量値(キャパシタ要素C1〜C9の総容量値)を測定し、その後に所望の容量値に応じてヒューズF1〜F9から適切に選択した一つまたは複数のヒューズをレーザ光で溶断すれば、所望の容量値への合わせ込み(レーザトリミング)を行うことができる。とくに、キャパシタ要素C1〜C8の容量値が、公比2の等比数列をなすように設定されていれば、最小の容量値(当該等比数列の初項の値)であるキャパシタ要素C1の容量値に対応する精度で目標の容量値へと合わせ込む微調整が可能である。
【0126】
たとえば、キャパシタ要素C1〜C9の容量値は次のように定められていてもよい。
C1=0.03125pF
C2=0.0625pF
C3=0.125pF
C4=0.25pF
C5=0.5pF
C6=1pF
C7=2pF
C8=4pF
C9=4pF
この場合、0.03125pFの最小合わせ込み精度でチップコンデンサ101の容量を微調整できる。また、ヒューズF1〜F9から切断すべきヒューズを適切に選択することで、10pF〜18pFの間の任意の容量値のチップコンデンサ101を提供できる。
【0127】
以上のように、この実施形態によれば、第1接続電極3および第2接続電極4の間に、ヒューズF1〜F9によって切り離し可能な複数のキャパシタ要素C1〜C9が設けられている。キャパシタ要素C1〜C9は、異なる容量値の複数のキャパシタ要素、より具体的には等比数列をなすように容量値が設定された複数のキャパシタ要素を含んでいる。それによって、ヒューズF1〜F9から1つまたは複数のヒューズを選択してレーザ光で溶断することによって、設計を変更することなく複数種類の容量値に対応でき、かつ所望の容量値に正確に合わせ込むことができるチップコンデンサ101を共通の設計で実現できる。
【0128】
チップコンデンサ101の各部の詳細について以下に説明を加える。
図15を参照して、基板2は、たとえば平面視において0.3mm×0.15mm、0.4mm×0.2mmなどの矩形形状(好ましくは、0.4mm×0.2mm以下の大きさ)を有していてもよい。キャパシタ配置領域105は、概ね、基板2の短辺の長さに相当する一辺を有する正方形領域となる。基板2の厚さは、150μm程度であってもよい。
図16を参照して、基板2は、たとえば、裏面側(キャパシタ要素C1〜C9が形成されていない表面)からの研削または研磨によって薄型化された基板であってもよい。基板2の材料としては、シリコン基板に代表される半導体基板を用いてもよいし、ガラス基板を用いてもよいし、樹脂フィルムを用いてもよい。
【0129】
絶縁膜20は、酸化シリコン膜等の酸化膜であってもよい。その膜厚は、500Å〜2000Å程度であってもよい。
下部電極膜111は、導電性膜、とくに金属膜であることが好ましく、たとえばアルミニウム膜であってもよい。アルミニウム膜からなる下部電極膜111は、スパッタ法によって形成できる。上部電極膜113も同様に、導電性膜、とくに金属膜で構成することが好ましく、アルミニウム膜であってもよい。アルミニウム膜からなる上部電極膜113は、スパッタ法によって形成できる。上部電極膜113のキャパシタ電極領域113Aを電極膜部分131〜139に分割し、さらに、ヒューズ領域113Dを複数のヒューズユニット107に整形するためのパターニングは、フォトリソグラフィおよびエッチングプロセスによって行うことができる。
【0130】
容量膜112は、たとえば窒化シリコン膜で構成することができ、その膜厚は500Å〜2000Å(たとえば1000Å)とすることができる。容量膜112は、プラズマCVD(化学的気相成長)によって形成された窒化シリコン膜であってもよい。
パッシベーション膜23は、たとえば窒化シリコン膜で構成することができ、たとえばプラズマCVD法によって形成できる。その膜厚は、8000Å程度とされてもよい。樹脂膜24は、前述の通り、ポリイミド膜その他の樹脂膜で構成できる。
【0131】
第1および第2接続電極3,4は、たとえば、下部電極膜111または上部電極膜113に接するニッケル層と、このニッケル層上に積層したパラジウム層と、そのパラジウム層上に積層した金層とを積層した積層構造膜からなっていてもよく、たとえば、めっき法(より具体的には無電解めっき法)で形成できる。ニッケル層は下部電極膜111または上部電極膜113に対する密着性の向上に寄与し、パラジウム層は上部電極膜または下部電極膜の材料と第1および第2接続電極3,4の最上層の金との相互拡散を抑制する拡散防止層として機能する。
【0132】
このようなチップコンデンサ101の製造工程は、素子5を形成した後のチップ抵抗器1の製造工程と同じである。
チップコンデンサ101において素子5(キャパシタ素子)を形成する場合には、まず、前述した基板30(基板2)の表面に、熱酸化法および/またはCVD法によって、酸化膜(たとえば酸化シリコン膜)からなる絶縁膜20が形成される。次に、たとえばスパッタ法によって、アルミニウム膜からなる下部電極膜111が絶縁膜20の表面全域に形成される。下部電極膜111の膜厚は8000Å程度とされてもよい。次に、その下部電極膜の表面に、下部電極膜111の最終形状に対応したレジストパターンが、フォトリソグラフィによって形成される。このレジストパターンをマスクとして、下部電極膜がエッチングされることによって、
図15等に示したパターンの下部電極膜111が得られる。下部電極膜111のエッチングは、たとえば、反応性イオンエッチングによって行うことができる。
【0133】
次に、たとえばプラズマCVD法によって、窒化シリコン膜等からなる容量膜112が、下部電極膜111上に形成される。下部電極膜111が形成されていない領域では、絶縁膜20の表面に容量膜112が形成されることになる。次に、その容量膜112の上に、上部電極膜113が形成される。上部電極膜113は、たとえばアルミニウム膜からなり、スパッタ法によって形成できる。その膜厚は、8000Å程度とされてもよい。次に、上部電極膜113の表面に上部電極膜113の最終形状に対応したレジストパターンがフォトリソグラフィによって形成される。このレジストパターンをマスクとしたエッチングによって、上部電極膜113が、最終形状(
図15等参照)にパターニングされる。それによって、上部電極膜113は、キャパシタ電極領域113Aに複数の電極膜部分131〜139に分割された部分を有し、ヒューズ領域113Dに複数のヒューズユニット107を有し、それらのヒューズユニット107に接続されたパッド領域113Cを有するパターンに整形される。上部電極膜113のパターニングのためのエッチングは、燐酸等のエッチング液を用いたウェットエッチングによって行ってもよいし、反応性イオンエッチングによって行ってもよい。
【0134】
以上によって、チップコンデンサ101における素子5(キャパシタ要素C1〜C9やヒューズユニット107)が形成される。
この状態から、ヒューズユニット107を溶断するためのレーザトリミングが行われる(
図10B参照)。すなわち、前記総容量値の測定結果に応じて選択されたヒューズを構成するヒューズユニット107にレーザ光を当てて、そのヒューズユニット107の幅狭部107C(
図15参照)が溶断される。これにより、対応するキャパシタ要素がパッド領域113Cから切り離される。ヒューズユニット107にレーザ光を当てるとき、カバー膜である絶縁膜45の働きによって、ヒューズユニット107の近傍にレーザ光のエネルギーが蓄積され、それによって、ヒューズユニット107が溶断する。これにより、チップコンデンサ101の容量値を確実に目的の容量値とすることができる。
【0135】
その後、
図10C〜
図10Iの工程に倣って、チップ抵抗器1の場合と同じ工程を実行すればよい。
以上、本発明のチップ部品(チップ抵抗器1やチップコンデンサ101)について説明してきたが、本発明はさらに他の形態で実施することもできる。
たとえば、前述の実施形態では、チップ抵抗器1の場合、複数の抵抗回路が公比r(0<r、r≠1)=2の等比数列をなす抵抗値を有する複数の抵抗回路を有している例を示したが、当該等比数列の公比は2以外の数であってもよい。また、チップコンデンサ101の場合にも、キャパシタ要素が公比r(0<r、r≠1)=2の等比数列をなす容量値を有する複数のキャパシタ要素を有している例を示したが、当該等比数列の公比は2以外の数であってもよい。
【0136】
また、チップ抵抗器1やチップコンデンサ101では、基板2の表面に絶縁膜20が形成されているが、基板2が絶縁性の基板であれば、絶縁膜20を省くこともできる。
また、チップコンデンサ101では、上部電極膜113だけが複数の電極膜部分に分割されている構成を示したが、下部電極膜111だけが複数の電極膜部分に分割されていたり、上部電極膜113および下部電極膜111が両方とも複数の電極膜部分に分割されていたりしてもよい。さらに、前述の実施形態では、上部電極膜または下部電極膜とヒューズユニットとが一体化されている例を示したが、上部電極膜または下部電極膜とは別の導体膜でヒューズユニットを形成してもよい。また、前述したチップコンデンサ101では、上部電極膜113および下部電極膜111を有する1層のキャパシタ構造が形成されているが、上部電極膜113上に、容量膜を介して別の電極膜を積層することで、複数のキャパシタ構造が積層されてもよい。
【0137】
チップコンデンサ101では、また、基板2として導電性基板を用い、その導電性基板を下部電極として用い、導電性基板の表面に接するように容量膜112を形成してもよい。この場合、導電性基板の裏面から一方の外部電極を引き出してもよい。
また、本発明を、チップインダクタに適用した場合、当該チップインダクタにおいて前述した基板2上に形成された素子5は、複数のインダクタ要素(素子要素)を含んだインダクタ素子を含み、第1接続電極3および第2接続電極4の間に接続されている。素子5は、前述した多層基板の多層配線中に設けられ、配線膜22によって形成されている。また、チップインダクタでは、基板2上に、前述した複数のヒューズFが設けられていて、各インダクタ要素が、第1接続電極3および第2接続電極4に対して、ヒューズFを介して切り離し可能に接続されている。
【0138】
この場合、チップインダクタでは、一つまたは複数のヒューズFを選択して切断することによって、複数のインダクタ要素の組み合わせパターンを任意のパターンとすることができるので、電気的特性が様々なチップインダクタを共通の設計で実現できる。
また、本発明を、チップダイオードに適用した場合、当該チップダイオードにおいて前述した基板2上に形成された素子5は、複数のダイオード要素(素子要素)を含んだダイオード回路網(ダイオード素子)を含む。ダイオード素子は基板2に形成されている。このチップダイオードでは、一つまたは複数のヒューズFを選択して切断することによって、ダイオード回路網における複数のダイオード要素の組み合わせパターンを任意のパターンとすることができるので、ダイオード回路網の電気的特性が様々なチップダイオードを共通の設計で実現できる。
【0139】
チップインダクタおよびチップダイオードのいずれにおいても、チップ抵抗器1およびチップコンデンサ101の場合と同じ作用効果を奏することができる。
また、前述した第1接続電極3および第2接続電極4において、Ni層33とAu層35との間に介装されていたPd層34を省略することもできる。Ni層33とAu層35との接着性が良好なので、Au層35に前述したピンホールができないのであれば、Pd層34を省略しても構わない。
【0140】
図19は、本発明のチップ部品が用いられる電子機器の一例であるスマートフォンの外観を示す斜視図である。スマートフォン201は、扁平な直方体形状の筐体202の内部に電子部品を収納して構成されている。筐体202は表側および裏側に長方形状の一対の主面を有しており、その一対の主面が4つの側面で結合されている。筐体202の一つの主面には、液晶パネルや有機ELパネル等で構成された表示パネル203の表示面が露出している。表示パネル203の表示面は、タッチパネルを構成しており、使用者に対する入力インターフェースを提供している。
【0141】
表示パネル203は、筐体202の一つの主面の大部分を占める長方形形状に形成されている。表示パネル203の一つの短辺に沿うように、操作ボタン204が配置されている。この実施形態では、複数(3つ)の操作ボタン204が表示パネル203の短辺に沿って配列されている。使用者は、操作ボタン204およびタッチパネルを操作することによって、スマートフォン201に対する操作を行い、必要な機能を呼び出して実行させることができる。
【0142】
表示パネル203の別の一つの短辺の近傍には、スピーカ205が配置されている。スピーカ205は、電話機能のための受話口を提供すると共に、音楽データ等を再生するための音響化ユニットとしても用いられる。一方、操作ボタン204の近くには、筐体202の一つの側面にマイクロフォン206が配置されている。マイクロフォン206は、電話機能のための送話口を提供するほか、録音用のマイクロフォンとして用いることもできる。
【0143】
図20は、筐体202の内部に収容された回路アセンブリ100の構成を示す図解的な平面図である。回路アセンブリ100は、前述した実装基板9と、実装基板9の実装面9Aに実装された回路部品とを含む。複数の回路部品は、複数の集積回路素子(IC)212−220と、複数のチップ部品とを含む。複数のICは、伝送処理IC212、ワンセグTV受信IC213、GPS受信IC214、FMチューナIC215、電源IC216、フラッシュメモリ217、マイクロコンピュータ218、電源IC219およびベースバンドIC220を含む。複数のチップ部品(本願発明のチップ部品に相当する)は、チップインダクタ221,225,235、チップ抵抗器222,224,233、チップキャパシタ227,230,234、およびチップダイオード228,231を含む。
【0144】
伝送処理IC212は、表示パネル203に対する表示制御信号を生成し、かつ表示パネル203の表面のタッチパネルからの入力信号を受信するための電子回路を内蔵している。表示パネル203との接続のために、伝送処理IC212には、フレキシブル配線209が接続されている。
ワンセグTV受信IC213は、ワンセグ放送(携帯機器を受信対象とする地上デジタルテレビ放送)の電波を受信するための受信機を構成する電子回路を内蔵している。ワンセグTV受信IC213の近傍には、複数のチップインダクタ221と、複数のチップ抵抗器222とが配置されている。ワンセグTV受信IC213、チップインダクタ221およびチップ抵抗器222は、ワンセグ放送受信回路223を構成している。チップインダクタ221およびチップ抵抗器222は、正確に合わせ込まれたインダクタンスおよび抵抗をそれぞれ有し、ワンセグ放送受信回路223に高精度な回路定数を与える。
【0145】
GPS受信IC214は、GPS衛星からの電波を受信してスマートフォン201の位置情報を出力する電子回路を内蔵している。
FMチューナIC215は、その近傍において実装基板9に実装された複数のチップ抵抗器224および複数のチップインダクタ225と共に、FM放送受信回路226を構成している。チップ抵抗器224およびチップインダクタ225は、正確に合わせ込まれた抵抗値およびインダクタンスをそれぞれ有し、FM放送受信回路226に高精度な回路定数を与える。
【0146】
電源IC216の近傍には、複数のチップキャパシタ227および複数のチップダイオード228が実装基板9の実装面に実装されている。電源IC216は、チップキャパシタ227およびチップダイオード228と共に、電源回路229を構成している。
フラッシュメモリ217は、オペレーティングシステムプログラム、スマートフォン201の内部で生成されたデータ、通信機能によって外部から取得したデータおよびプログラムなどを記録するための記憶装置である。
【0147】
マイクロコンピュータ218は、CPU、ROMおよびRAMを内蔵しており、各種の演算処理を実行することによって、スマートフォン201の複数の機能を実現する演算処理回路である。より具体的には、マイクロコンピュータ218の働きによって、画像処理や各種アプリケーションプログラムのための演算処理が実現されるようになっている。
電源IC219の近くには、複数のチップキャパシタ230および複数のチップダイオード231が実装基板9の実装面に実装されている。電源IC219は、チップキャパシタ230およびチップダイオード231と共に、電源回路232を構成している。
【0148】
ベースバンドIC220の近くには、複数のチップ抵抗器233、複数のチップキャパシタ234、および複数のチップインダクタ235が、実装基板9の実装面9Aに実装されている。ベースバンドIC220は、チップ抵抗器233、チップキャパシタ234およびチップインダクタ235と共に、ベースバンド通信回路236を構成している。ベースバンド通信回路236は、電話通信およびデータ通信のための通信機能を提供する。
【0149】
このような構成によって、電源回路229,232によって適切に調整された電力が、伝送処理IC212、GPS受信IC214、ワンセグ放送受信回路223、FM放送受信回路226、ベースバンド通信回路236、フラッシュメモリ217およびマイクロコンピュータ218に供給される。マイクロコンピュータ218は、伝送処理IC212を介して入力される入力信号に応答して演算処理を行い、伝送処理IC212から表示パネル203に表示制御信号を出力して表示パネル203に各種の表示を行わせる。
【0150】
タッチパネルまたは操作ボタン204の操作によってワンセグ放送の受信が指示されると、ワンセグ放送受信回路223の働きによってワンセグ放送が受信される。そして、受信された画像を表示パネル203に出力し、受信された音声をスピーカ205から音響化させるための演算処理が、マイクロコンピュータ218によって実行される。
また、スマートフォン201の位置情報が必要とされるときには、マイクロコンピュータ218は、GPS受信IC214が出力する位置情報を取得し、その位置情報を用いた演算処理を実行する。
【0151】
さらに、タッチパネルまたは操作ボタン204の操作によってFM放送受信指令が入力されると、マイクロコンピュータ218は、FM放送受信回路226を起動し、受信された音声をスピーカ205から出力させるための演算処理を実行する。
フラッシュメモリ217は、通信によって取得したデータの記憶や、マイクロコンピュータ218の演算や、タッチパネルからの入力によって作成されたデータを記憶するために用いられる。マイクロコンピュータ218は、必要に応じて、フラッシュメモリ217に対してデータを書き込み、またフラッシュメモリ217からデータを読み出す。
【0152】
電話通信またはデータ通信の機能は、ベースバンド通信回路236によって実現される。マイクロコンピュータ218は、ベースバンド通信回路236を制御して、音声またはデータを送受信するための処理を行う。
その他、特許請求の範囲に記載された事項の範囲で種々の設計変更を施すことが可能である。
この明細書および図面から抽出される特徴の例を以下に示す。
[項1]複数のチップ部品用の領域が設定された基板の裏面を研磨することによって鏡面加工する工程と、前記鏡面加工後、前記基板の前記裏面をエッチングすることによって粗面化する工程とを含む、チップ部品の製造方法。
この方法によれば、基板の裏面が一旦鏡面加工されるので、たとえ基板が裏面研削されていても、基板面内における抗折強度の場所依存性を低減できる。さらに鏡面加工後、基板の裏面を粗面化することによって、基板の裏面の光反射率を変えることができる。これにより、基板の裏面でのハレーションの発生を防止できるので、画像認識システムでの認識精度を向上できる。しかも、このような粗面(非鏡面)を、裏面エッチングという簡単な手法によって形成できる。
[項2]前記粗面化工程は、前記基板の前記裏面をサンドブラストによって処理する工程を含む、項1に記載のチップ部品の製造方法。
この方法によれば、基板の裏面に押し付けた砥石を高速回転することによって当該裏面を削り取っていく裏面研削とは異なり、基板の裏面から離れた位置から当該裏面に対して砥粒を吹き付けるサンドブラストを採用することによって、基板面内を均等に粗面化できる。これにより、粗面化の際に、基板に加工ひずみ(結晶欠陥)が発生することを防止できる。
[項3]前記サンドブラストは、乾式サンドブラストである、項2に記載のチップ部品の製造方法。
この方法によれば、砥粒が混ざった空気(混合気)を基板の裏面に吹き付ける手法なので、たとえば砥粒が混ざった液体(スラリー)を吹き付ける場合と異なり、粗面化される裏面とは反対側の表面への影響が少なくて済む。
[項4]前記乾式サンドブラストによる粗面化処理は、サクション式サンドブラスト装置または直圧式サンドブラスト装置を用いて行われる、項3に記載のチップ部品の製造方法。
[項5]前記乾式サンドブラストの砥粒として、アルミナ系砥粒または炭化シリコン系砥粒を用いる、項3または4に記載のチップ部品の製造方法。
[項6]前記乾式サンドブラストの砥粒として、番手が#100〜#10000の砥粒を用いる、項3〜5のいずれか一項に記載のチップ部品の製造方法。
[項7]0.01MPa〜0.1MPaの吐出圧力で砥粒を吐出する、項3〜6のいずれか一項に記載のチップ部品の製造方法。
[項8]前記粗面化工程では、前記基板の前記裏面全体を一様に粗面化する、項1〜7のいずれか一項に記載のチップ部品の製造方法。
この方法によれば、基板の裏面全体を一様に粗面化するので、当該裏面を選択的にマスクする必要がなく、より効率的である。
[項9]前記鏡面加工工程に先立って行われ、前記基板の前記表面側から溝を形成することによって、前記複数のチップ部品用の領域をチップ部品1つ1つに対応する領域に区画する工程と、前記基板を前記裏面側から前記溝の底部まで研削および/または研磨することによって、各前記チップ部品に分割する工程とを含む、項1〜8のいずれか一項に記載のチップ部品の製造方法。
[項10]前記溝の形成後、各前記チップ部品用の領域を一括して覆うように、前記基板の前記表面側に支持テープを貼着する工程をさらに含む、項9に記載のチップ部品の製造方法。
この方法によれば、基板の研削および/または研磨によって複数のチップ部品が分割されても、それらがばらばらにならないように、支持テープ上に留めておくことができる。これにより、複数のチップ部品に対して一括して粗面化処理できる。また、最終的に各チップ部品に分割する処理を研磨によって行えば、この研磨によって裏面の鏡面化加工工程を同時に行うことができる。
[項11]前記溝の側面に絶縁膜を形成することによって、各前記チップ部品用の領域に対応する各前記基板の側面に当該絶縁膜を形成する工程と、前記各基板の前記表面からその縁部を介して前記溝の前記側面に沿って前記絶縁膜上に電極材料をめっき成長させることによって、前記各基板の前記表面の前記縁部を覆うように、当該表面および前記側面に電極を一体的に形成する工程とを含む、項9または10に記載のチップ部品の製造方法。
この方法によって得られたチップ部品によれば、基板の表面に加えて側面にも電極が形成されているので、チップ部品を実装基板に半田付けする際の接着面積を拡大できる。その結果、電極に対する半田の吸着量を増やすことができるので、接着強度を向上できる。また、半田が基板の表面から側面に回り込むように吸着するので、実装状態において、基板の表面および側面の二方向からチップ部品を保持できる。そのため、チップ部品の実装形状を安定化できる。
しかも、電極を単に基板の側面にも形成しただけではなく、電極と基板との間に絶縁膜を介在させている。これにより、たとえば基板と電極とを短絡させたくない場合に、その要求に応えることができる。
[項12]前記電極を形成する工程は、前記電極材料を無電解めっきによって成長させる工程を含む、項11に記載のチップ部品の製造方法。
この方法によって、絶縁膜上にも良好に電極材料を成長させることができる。また、電解めっきに比べて工程数を削減して生産性を向上できる。
[項13]各前記チップ部品用の領域に前記基板の前記表面に配線膜を形成する工程をさらに含み、前記溝を形成する工程は、前記各基板の前記縁部と前記配線膜との間に間隔が空くように溝を形成する工程を含み、前記電極を形成する工程は、前記配線膜から前記電極材料をめっき成長させる工程を含む、項11または12に記載のチップ部品の製造方法。
[項14]前記溝の形成前に前記配線膜を覆う樹脂膜を形成する工程と、前記溝を形成すべき領域に対向する前記配線膜の周縁部が露出するように、前記樹脂膜を選択的に除去する工程とをさらに含む、項13に記載のチップ部品の製造方法。
この方法によれば、配線膜から基板の縁部までめっき成長の妨げになるものがないので、配線膜から当該縁部まで直線的にめっき成長させることができる。その結果、電極の形成にかかる時間の短縮を図ることができる。
[項15]前記溝の形成が、エッチングによって行われる、項9〜14のいずれか一項に記載のチップ部品の製造方法。
この方法によれば、基板における全てのチップ部品用の領域の境界領域に一度に溝を形成できるので、チップ部品の製造にかかる時間の短縮を図ることができる。
[項16]基板と、前記基板の表面の縁部を覆うように、当該表面および前記基板の側面に一体的に形成された電極と、前記電極と前記基板との間に介在された絶縁膜とを含み、前記基板の裏面が粗面化されている、チップ部品。
この構成によれば、基板の裏面が粗面(非鏡面)化されているので、基板の裏面の光反射率を鏡面とは異なるものに変えることができる。これにより、基板の裏面でのハレーションの発生を防止できるので、画像認識システムでの認識精度を向上できる。
また、基板の表面に加えて側面にも電極が形成されているので、チップ部品を実装基板に半田付けする際の接着面積を拡大できる。その結果、電極に対する半田の吸着量を増やすことができるので、接着強度を向上できる。また、半田が基板の表面から側面に回り込むように吸着するので、実装状態において、基板の表面および側面の二方向からチップ部品を保持できる。そのため、チップ部品の実装形状を安定化できる。
しかも、電極を単に基板の側面にも形成しただけではなく、電極と基板との間に絶縁膜を介在させている。これにより、たとえば基板と電極とを短絡させたくない場合に、その要求に応えることができる。
[項17]前記基板の前記裏面全体が一様に粗面化されている、項16に記載のチップ部品。
この構成によれば、基板の裏面でのハレーションの発生を、より効果的に防止できる。
[項18]前記基板は平面視において矩形状であり、前記電極は、前記基板の三方の前記縁部を覆うように形成されている、項16または17に記載のチップ部品。
この構成によれば、実装状態において、チップ部品を基板の側面の三方向から保持できるので、チップ部品の実装形状を一層安定化できる。
[項19]前記基板の前記表面において前記縁部から間隔を空けて形成され、前記電極が電気的に接続された配線膜をさらに含む、項16〜18のいずれか一項に記載のチップ部品。
この構成によれば、外部接続するための電極から配線膜が独立しているので、基板の表面に形成される素子パターンに合わせた配線設計を行うことができる。
[項20]前記配線膜は、前記電極に覆われた前記基板の前記縁部に対向する周縁部が選択的に露出しており、当該露出部分を除く周縁部が樹脂膜で選択的に覆われている、項19に記載のチップ部品。
この構成によれば、電極と配線膜との接合面積を増やすことができるので、接触抵抗を減らすことができる。
[項21]前記電極は、前記樹脂膜の表面から突出するように形成されている、項20に記載のチップ部品。
[項22]前記電極は、前記樹脂膜の前記表面に沿って横方向に引き出され、当該表面を選択的に覆う引き出し部を含む、項21に記載のチップ部品。
[項23]前記電極が、Ni層と、Au層とを含み、前記Au層が最表面に露出している、項16〜22のいずれか一項に記載のチップ部品。
この構成によれば、電極においてNi層の表面がAu層によって覆われているので、Ni層が酸化することを防止できる。
[項24]前記電極が、前記Ni層と前記Au層との間に介装されたPd層をさらに含む、項23に記載のチップ部品。
この構成によれば、Au層を薄くすることによってAu層に貫通孔(ピンホール)ができてしまっても、Ni層とAu層との間に介装されたPd層が当該貫通孔を塞いでいるので、当該貫通孔からNi層が外部に露出されて酸化することを防止できる。
[項25]前記電極が互いに間隔を空けて2つ設けられており、前記チップ部品は、前記基板上に形成され前記2つの電極間に接続された抵抗体を含むチップ抵抗器である、項16〜24のいずれか一項に記載のチップ部品。
この場合、前記チップ部品は、項26に記載の発明のように、複数の前記抵抗体と、前記基板上に設けられ、前記複数の抵抗体をそれぞれ切り離し可能に前記電極に接続する複数のヒューズとをさらに含むことが好ましい。
[項26]複数の前記抵抗体と、前記基板上に設けられ、前記複数の抵抗体をそれぞれ切り離し可能に前記電極に接続する複数のヒューズとをさらに含む、項25に記載のチップ部品。
このチップ部品(チップ抵抗器)によれば、一つまたは複数のヒューズを選択して切断することによって、複数種類の抵抗値に、容易にかつ速やかに対応できる。換言すれば、抵抗値の異なる複数の抵抗体を組み合わせることによって、様々な抵抗値のチップ抵抗器を共通の設計で実現できる。
[項27]前記電極が互いに間隔を空けて2つ設けられており、前記チップ部品は、前記基板上に形成され前記2つの電極の間に接続されたキャパシタ素子を含むチップコンデンサである、項16〜24のいずれか一項に記載のチップ部品。
この場合、前記チップ部品は、項28に記載の発明のように、前記キャパシタ素子を構成する複数のキャパシタ要素と、前記基板上に設けられ、前記複数のキャパシタ要素をそれぞれ切り離し可能に前記電極に接続する複数のヒューズとをさらに含むことが好ましい。
[項28]前記キャパシタ素子を構成する複数のキャパシタ要素と、前記基板上に設けられ、前記複数のキャパシタ要素をそれぞれ切り離し可能に前記電極に接続する複数のヒューズとをさらに含む、項27に記載のチップ部品。
このチップ部品(チップコンデンサ)によれば、一つまたは複数のヒューズを選択して切断することによって、複数種類の容量値に、容易にかつ速やかに対応できる。換言すれば、容量値の異なる複数のキャパシタ要素を組み合わせることによって、様々な容量値のチップコンデンサを共通の設計で実現できる。
[項29]項16〜28のいずれか一項に記載のチップ部品と、前記基板の前記表面に対向する実装面に、前記電極に半田接合されたランドを有する実装基板とを含む、回路アセンブリ。
この構成によれば、実装基板との接着強度を向上させることができ、さらに実装形状を安定化できるチップ部品を備える回路アセンブリを提供できる。
[項30]前記実装面の法線方向から見たときに、前記半田が前記電極の表面部分および側面部分を覆うように形成されている、項29に記載の回路アセンブリ。
この構成によれば、電極に対する半田の吸着量を増やすことができるので、接着強度を向上できる。また、半田が電極の表面部分から側面部分に回り込むように吸着しているので、基板の表面および側面の二方向からチップ部品を保持できる。そのため、チップ部品の実装形状を安定化できる。
[項31]項29または30に記載の回路アセンブリと、前記回路アセンブリを収容した筐体とを含む、電子機器。
この構成によれば、実装基板との接着強度を向上させることができ、さらに実装形状を安定化できるチップ部品を備える電子部品を提供できる。