特許第6245814号(P6245814)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6245814
(24)【登録日】2017年11月24日
(45)【発行日】2017年12月13日
(54)【発明の名称】杭頭構造
(51)【国際特許分類】
   E02D 27/12 20060101AFI20171204BHJP
   E02D 27/00 20060101ALI20171204BHJP
【FI】
   E02D27/12 A
   E02D27/00 C
【請求項の数】2
【全頁数】6
(21)【出願番号】特願2013-40972(P2013-40972)
(22)【出願日】2013年3月1日
(65)【公開番号】特開2014-169547(P2014-169547A)
(43)【公開日】2014年9月18日
【審査請求日】2016年2月26日
(73)【特許権者】
【識別番号】390018717
【氏名又は名称】旭化成建材株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】390007607
【氏名又は名称】大鉄工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100088155
【弁理士】
【氏名又は名称】長谷川 芳樹
(74)【代理人】
【識別番号】100128381
【弁理士】
【氏名又は名称】清水 義憲
(74)【代理人】
【識別番号】100133307
【弁理士】
【氏名又は名称】西本 博之
(73)【特許権者】
【識別番号】000196587
【氏名又は名称】西日本旅客鉄道株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100088155
【弁理士】
【氏名又は名称】長谷川 芳樹
(72)【発明者】
【氏名】菅野 哲也
(72)【発明者】
【氏名】五十嵐 俊夫
(72)【発明者】
【氏名】穂高 明日香
(72)【発明者】
【氏名】福田 春根
(72)【発明者】
【氏名】藤井 美孝
【審査官】 大熊 靖夫
(56)【参考文献】
【文献】 特開2003−055984(JP,A)
【文献】 特開2009−155804(JP,A)
【文献】 特開2009−002076(JP,A)
【文献】 特開2002−146800(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E02D 27/00−27/52
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
地盤に立設された中空の杭の杭頭に蓋体が固定された杭頭構造において、
前記杭頭の上端に載置された前記蓋体の下面から下方に向けて突出するボルト取付け部と、
前記ボルト取付け部の雌ネジ部に螺着されると共に、軸部が略水平方向に延在して、前記軸部の先端が前記杭頭の内壁面に押し当てられるボルトと、を備え、
前記ボルトの前記軸部が前記杭頭の前記内壁面に対して直交して延在している状態で前記軸部の中心を通る軸線を基準軸線とした場合に、
前記ボルト取付け部に螺着された前記ボルトの中心軸線は、前記雌ネジ部の中心点を中心にして、前記基準軸線に対して水平面内で0度<α≦60度の角度αだけ、前記ボルトが右ネジの場合は時計回りに、前記ボルトが左ネジの場合は反時計回りに傾けることを特徴とする杭頭構造。
【請求項2】
前記蓋体は、
前記杭頭の前記上端に載置されると共に、前記ボルトの頭部に接近可能な開口部が形成された蓋本体と、
前記蓋本体に対して着脱自在であり、前記開口部の開閉が可能な閉鎖板と、を備えていることを特徴とする請求項1記載の杭頭構造。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、杭頭の上端開口を蓋で塞ぐ技術に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、このような分野の技術として、特許第3647841号公報がある。この公報に記載された杭と上部構造物との接合構造では、杭頭の上端開口内で溶接により固定された円板状の調整プレート(蓋体)が利用されている。この調整プレートには、中心から径方向に延在する長孔が形成され、この長孔には中心ボルトが貫通されている。調整プレートの裏面には、中心ボルトを保持するカバーキャップが配置され、このカバーキャップは、長孔から中心ボルトが杭頭内に抜け落ちないようにしている。また、中心ボルトは、杭頭プレートに形成されたセンター孔内に下から挿入され、中心ボルトの軸部には、調整プレートと杭頭プレートとを中心ボルトの頭部との協働で挟み込むための調整用ナットが螺着されている。そして、杭頭に固定された杭頭プレートと、上部構造物の一部をなす柱脚のベースプレートとは、周囲を連結ボルトにより締結されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特許第3647841号公報
【特許文献2】特許第4492146号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、前述した従来の杭頭構造にあっては、杭頭の上端開口が調整プレートで塞がれているが、この調整プレートは、溶接によって杭頭に固定されるので、作業性が悪い。しかも、この調整プレートに上から荷重がかかった場合には、その荷重を溶接で受けなくてはならないので、溶接不良によって、調整プレートと杭頭との密着度低下をもたらし、その構造体としての耐力を損ねる虞があった。
【0005】
本発明は、簡易な作業で、杭頭に対する蓋体の密着度を向上させるようにした杭頭構造を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、地盤に立設された中空の杭の杭頭に蓋体が固定された杭頭構造において、
杭頭の上端に載置された蓋体の下面から下方に向けて突出するボルト取付け部と、
ボルト取付け部の雌ネジ部に螺着されると共に、軸部が略水平方向に延在して、軸部の先端が杭頭の内壁面に押し当てられるボルトと、を備え、
ボルトの軸部が杭頭の内壁面に対して直交して延在している状態で軸部の中心を通る軸線を基準軸線とした場合に、
ボルト取付け部に螺着されたボルトの中心軸線は、雌ネジ部の中心点を中心にして、基準軸線に対して水平面内で0度<α≦60度の角度αだけ、ボルトが右ネジの場合は時計回りに、ボルトが左ネジの場合は反時計回りに、傾けることを特徴とする。
【0007】
この杭頭構造においては、ボルトの軸部の先端が杭頭の内壁面に当たった状態で、ボルトの締め込みのために、ボルトの頭部を回すと、ボルトは右ネジであれば、ボルトの軸部の先端の左側が杭頭の内壁面に当たっているので、ボルトの軸部の先端は、下または右下に向かって移動しようとする。このようなボルトの軸部の先端の移動により、杭頭の上端に対して蓋体を強く圧着させるような力を発生させることができる。この蓋体は杭頭の上端に載置される結果、蓋体に上から加わる荷重を杭頭に確実に伝達することができる。そして、この蓋体は、杭頭の上端に強く密着させることができるので、杭頭の上端で蓋体が水平面内で回ったり、蓋体が浮いたりする事態を回避させることができる。通常、杭頭の蓋体の上にはコンクリートなどで基礎がつくられ、その基礎の上に上部構造物の柱が設置される。また、特許文献2のように、杭頭の上の蓋体と鞘管、天板の間にコンクリートが充填され、その上に上部構造物が設置される場合もある。また、特許文献1のように、杭頭の蓋体の上に鋼材を介して上部構造物が設置される場合もある。蓋体が浮いた状態で、蓋体に上から荷重が加わると、蓋体から杭に荷重を伝達することができない。また、蓋体が浮いた状態で、蓋体に上から荷重が加わると、その時点で杭頭の上端に蓋体が密着することになり、蓋体の位置ズレが起こる。そこで、前述した発明を採用すると、蓋体を杭頭にボルトで固定するにあたって、簡易な作業で、蓋体の浮きを確実に防止することができる。
【0008】
また、蓋体は、杭頭の上端に載置されると共に、ボルトの頭部に接近可能な開口部が形成された蓋本体と、蓋本体に対して着脱自在であり、開口部の開閉が可能な閉鎖板と、を備えている。
このような構成を採用しないと、杭頭にボルトの頭部に作業者の手や工具などが接近できるような穴を設けなくてはならず、杭頭に穴を開けることは好ましいことではない。そこで、本発明では、蓋体に開口部を設けることで、杭頭にその強度を低下させるような穴を設ける必要がなくなる。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、簡易な作業で、杭頭に対する蓋体の密着度を向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】本発明に係る杭頭構造の一実施形態を示す平面図である。
図2図1のA−A線に沿う断面図である。
図3】固定用ボルトを示す斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、図面を参照しつつ本発明に係る杭頭構造の好適な実施形態について詳細に説明する。
【0012】
図1及び図2に示されるように、地盤には、所定の深さまで鋼管又はコンクリートからなる杭1が打ち込まれており、中空の杭1は、上部構造物(例えばビルや家屋)の一部をなす柱を下から支えるために、地盤に深く埋設されている。この杭1の杭頭1Aは、杭1の埋設完了後に、地盤の土を掘削して露出させ、測量により予定された高さ位置で必要に応じて切断されている。
【0013】
このような杭頭1Aの上端には開口1aが形成され、この開口1aは、蓋体2によって塞がれる。この蓋体2は、杭頭1Aの上端1bに載置されるリング状の蓋本体3と、蓋本体3の中央に形成された開口部3aを塞ぐように蓋本体3上に載置された円形の閉鎖板4と、を有している。そして、この閉鎖板4は、蓋本体3に対して着脱自在で開閉可能であり、3本の着脱ボルト5によって蓋本体3に固定されている。なお、蓋本体3の開口部3aは、後述する固定用ボルト10の頭部10bに、工具や手が接近可能な大きさを有する。
【0014】
蓋本体3の裏面には、周方向で着脱ボルト5間に位置するボルト取付け部6の上端が溶接によって固定されている。このボルト取付け部6は、板状に形成されると共に、蓋本体3の下面3bから下方に向けて突出している。ボルト取付け部6には、雌ネジ部6aが形成されている。そして、雌ネジ部6aには、固定用ボルト10が螺着され、このボルト10の軸部10aは、略水平面内で延在し、軸部10aの先端は、杭頭1Aの内壁面1cに押し当てられる。
【0015】
図1及び図3に示されるように、ボルト10が右ネジの場合は、ボルト10の軸部10aが杭頭1Aの内壁面1cに対して直交して延在している状態で、軸部10aの中心を通る軸線を基準軸線Lとした場合に、ボルト取付け部6に螺着されたボルト10の中心軸線Pは、雌ネジ部6aの中心点Oを中心にして、基準軸線Lに対して水平面内で0度<α≦60度の角度αだけ時計回りに傾けられている。ここで、内壁面1cは湾曲しており、このような内壁面1cに対して直交するとは、内壁面1cを通る接線に対して直交することを言う。なお、角度αが前述した値を超えると、矢印Bで示されるような現象が起こり難くなる。
【0016】
このような杭頭構造においては、固定用ボルト10の軸部10aの先端が杭頭1Aの内壁面1cに当たった状態で、ボルト10の締め込みのために、ボルト10の頭部10bを矢印C方向に回すと、ボルト10は右ネジであるから、ボルト10の軸部10aの先端は、矢印Bで示すように、下または右下に向かって移動すなわちズレようとする。このようなボルト10の軸部10aの先端の移動により、杭頭1Aの上端1bに対して、蓋体2の蓋本体3を強く圧着させるような力を発生させることができる。
【0017】
この蓋体2は杭頭1Aの上端1bに載置される結果、蓋体2に柱から加わる荷重を杭頭1Aに確実に伝達することができる。そして、この蓋体2は、杭頭1Aの上端1bに強く密着させることができるので、杭頭1Aの上端1bで蓋体2が水平面内で回ったり、蓋体2が浮いたりする事態を回避させることができる。
【0018】
また、蓋体2が浮いた状態で、蓋体2に柱から荷重が加わると、その時点で杭頭1Aの上端1bに蓋体2が密着することになり、蓋体2が位置ズレを起こす。そこで、前述した構成を採用すると、蓋体2を杭頭1Aにボルト10で固定するにあたって、簡易な作業で、蓋体2の浮きを確実に防止することができる。
【0019】
また、ボルト10の頭部10bに作業者の手や工具が接近できるような穴を杭頭1Aに設けると、杭頭1Aの強度を低下させてしまう。そこで、蓋体2には、着脱ボルト5の着脱により開閉自在な閉鎖板4が設けられている。
【0020】
本発明は、前述した実施形態に限定されず、本発明の要旨を逸脱しない範囲で、下記のような種々の変形が可能である。
【0021】
杭頭1Aの内壁面1cは、湾曲面に限らず、平坦な面であってもよい。
また、ボルトが左ネジの場合は、ボルトの中心軸線を、雌ネジ部の中心点を中心にして、基準軸線に対して水平面内で0度<α≦60度の角度αだけ、反時計回りに傾ければよい。
【符号の説明】
【0022】
1A…杭頭 1a…開口 1b…杭頭の上端 1c…内壁面 2…蓋体 3…蓋本体 3a…開口部 3b…蓋体の下面 4…閉鎖板 5…着脱ボルト 6…ボルト取付け部 6a…雌ネジ部 10…ボルト 10a…軸部 10b…頭部 L…基準軸線 O…中心点 P…中心軸線 α…角度
図1
図2
図3