(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
液晶セルの対向する一組の辺に対応する幅を有し、該液晶セルの対向するもう一組の辺に対応する長さに切断し、連続的に液晶セルの表面に貼り合わせるのに用いられる光学フィルムロールであって、
剥離フィルムと、粘着剤層と、幅方向に吸収軸を有する偏光膜と、幅方向に反射軸を有する反射偏光フィルムとがこの順で積層された長尺状の光学フィルム原反を、その長尺方向に搬送しながら搬送方向にスリット加工することで得られた長尺状の光学フィルムがロール状に巻回されており、
当該長尺状の光学フィルムの長手方向端辺がスリット面である、
光学フィルムロール。
液晶セルの対向する一組の辺に対応する幅を有し、該液晶セルの対向するもう一組の辺に対応する長さに切断し、連続的に液晶セルの表面に貼り合わせるのに用いられる光学フィルムロールの製造方法であって、
剥離フィルムと、粘着剤層と、幅方向に吸収軸を有する偏光膜と、幅方向に反射軸を有する反射偏光フィルムとをこの順に積層して長尺状の光学フィルム原反を作製する工程と、
該光学フィルム原反を、その長尺方向と平行に、該液晶セルの対向する一組の辺に対応する幅でスリット加工する工程と、
該スリット工程で得られた長尺状の光学フィルムをロール状に巻回する工程と
を含む、光学フィルムロールの製造方法。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、本発明の好ましい実施形態について説明するが、本発明はこれらの実施形態には限定されない。
【0010】
(用語および記号の定義)
本明細書における用語および記号の定義は下記の通りである。
(1)屈折率(nx、ny、nz)
「nx」は面内の屈折率が最大になる方向(すなわち、遅相軸方向)の屈折率であり、「ny」は面内で遅相軸と直交する方向の屈折率であり、「nz」は厚み方向の屈折率である。
(2)正面位相差(Re)
正面位相差(Re)は、膜(層)の厚みをd(nm)としたとき、Re=(nx−ny)×dによって求められる。
(3)厚み方向の位相差(Rth)
厚み方向の位相差(Rth)は、膜(層)の厚みをd(nm)としたとき、Rth={(nx+ny)/2−nz}×dによって求められる。
(4)Nz係数
Nz係数は、Nz=(nx−nz)/(nx−ny)によって求められる。
【0011】
図1Aは、本発明の好ましい実施形態による光学フィルムロールの概略斜視図であり、
図1Bは
図1Aのフィルムの部分拡大断面図であり、
図1Cは別の実施形態のフィルムの部分拡大断面図であり、
図1Dはさらに別の実施形態のフィルムの部分拡大断面図である。
【0012】
光学フィルムロール100は、長尺状の光学フィルムがロール状に巻回されて形成されている。光学フィルム100は、貼り合わせる液晶セルの対向する一組の辺に対応する幅を有する。より具体的には、RTPにおいて、連続的に液晶セルの表面に貼り合わせるときの方向(貼合方向)に直交する方向(幅方向)の液晶セルの辺に対応する幅を有する。光学フィルム100は、偏光板10を含む。1つの実施形態においては、
図1Bに示すように、偏光板10は、偏光膜11と、偏光膜11の片側に配置された第1の保護フィルム21と、偏光膜10のもう片側に配置された第2の保護フィルム22とを含む。この実施形態によれば、特性変化しやすい偏光膜の両面を保護することにより、環境変化に対する特性変化が小さい偏光板が得られるという利点がある。別の実施形態においては、
図1Cに示すように、偏光板10は、偏光膜11と、偏光膜11の片側に配置された第1の保護フィルム21とを含む。すなわち、第2の保護フィルム22は省略されてもよい。この実施形態によれば、環境変化に対する適度な耐性を付与しつつ、薄型化が図れるという利点がある。さらに別の実施形態においては、
図1Dに示すように、偏光板10は、偏光膜11で構成され得る。すなわち、第1の保護フィルム21および第2の保護フィルム22がともに省略されてもよい。この実施形態によれば、大幅な薄型化が図れるという利点がある。光学フィルム100は、偏光板10の片側に配置された粘着剤層30と、偏光板10のもう片側に配置された反射偏光フィルム40とを含む。図示するように、実用的には、粘着剤層30の表面には剥離フィルム50が貼り合わされており、これと反対側の最外層として、(図示例では反射偏光フィルム40の表面に)表面保護フィルム60が配置されている。図示しないが、光学フィルム100は、その他のフィルム(層)を含んでいてもよい。
【0013】
長尺状の光学フィルム100において、偏光膜11は、幅方向Xに吸収軸を有する。ここで、偏光膜11の吸収軸の方向は、光学フィルムの幅方向Xに対して反時計回りに−5°〜+5°の方向を包含し得る。また、反射偏光フィルム40は、その幅方向Xに反射軸を有する。ここで、反射偏光フィルム40の反射軸の方向は、光学フィルムの幅方向Xに対して反時計回りに−5°〜+5°の方向を包含し得る。以下、各部材について説明する。
【0014】
A.偏光板
偏光板は、少なくとも偏光膜を含む。好ましくは、偏光板は、偏光膜の少なくとも片側に保護フィルムが配置されて構成されている。
【0015】
A−1.偏光膜
上記偏光膜は、代表的には、二色性物質を含むポリビニルアルコール系樹脂(以下、「PVA系樹脂」と称する)膜から構成される。
【0016】
上記二色性物質としては、例えば、ヨウ素、有機染料等が挙げられる。これらは、単独で、または、二種以上組み合わせて用いられ得る。好ましくは、ヨウ素が用いられる。
【0017】
上記PVA系樹脂膜を形成するPVA系樹脂としては、任意の適切な樹脂が用いられ得る。例えば、ポリビニルアルコール、エチレン−ビニルアルコール共重合体が挙げられる。ポリビニルアルコールは、ポリ酢酸ビニルをケン化することにより得られる。エチレン−ビニルアルコール共重合体は、エチレン−酢酸ビニル共重合体をケン化することにより得られる。PVA系樹脂のケン化度は、通常85モル%〜100モル%であり、好ましくは95.0モル%〜99.95モル%、さらに好ましくは99.0モル%〜99.93モル%である。ケン化度は、JIS K 6726−1994に準じて求めることができる。このようなケン化度のPVA系樹脂を用いることによって、耐久性に優れた偏光膜を得ることができる。ケン化度が高すぎる場合には、ゲル化してしまうおそれがある。
【0018】
PVA系樹脂の平均重合度は、目的に応じて適切に選択され得る。平均重合度は、通常1000〜10000であり、好ましくは1200〜4500、さらに好ましくは1500〜4300である。なお、平均重合度は、JIS K 6726−1994に準じて求めることができる。
【0019】
PVA系樹脂膜のNz係数は、好ましくは1.10以上、より好ましくは1.20以上である。PVA系樹脂膜の配向性(ポリビニルアルコール系樹脂分子の配向状態)がこのように制御されていることにより、例えば、液晶セルの幅で連続的かつ高速にスリット加工したときに偏光膜の端辺(スリット面)にクラック(微細な欠け、ささくれ)が発生する等の不具合を抑制して、RTPにおいて、端辺(スリット面)を基準にして行なう光学フィルム幅方向の切断(ハーフカットを含む)の精度(フィルムの寸法精度)や貼合精度がより得られやすくなる。一方で、PVA系樹脂膜のNz係数は、好ましくは1.50以下、さらに好ましくは1.40以下である。Nz係数が1.50を超えると、PVA系樹脂膜の配向性(一軸性)が低く、例えば、液晶テレビに求められる表示品質が得られないおそれがある。
【0020】
上記PVA系樹脂膜のNz係数は、PVA系樹脂膜の分子鎖の配向性の指標であり、PVA系樹脂膜の位相差から算出される。PVA系樹脂膜の位相差(a値)は、測定波長(λ)を変えて偏光膜の位相差を測定し、
図2に示すように、横軸を測定波長として偏光膜の位相差をプロットし、下記式に基づき近似曲線を作成し、この近似曲線から漸近線(a値)を算出することにより求められる。ここで、偏光膜の位相差は、正面および斜めから測定される。
R=a+b/(λ
2−600
2)
ここで、R:偏光膜の位相差、a:PVA系樹脂膜の位相差、b:定数である。
【0021】
偏光膜は、好ましくは、波長380nm〜780nmのいずれかの波長で吸収二色性を示す。偏光膜の単体透過率40%もしくは41%における偏光度は、好ましくは99.9%以上、より好ましくは99.93%以上、さらに好ましくは99.95%以上である。
【0022】
偏光膜の厚みは、任意の適切な値に設定され得る。厚みは、好ましくは30μm以下、より好ましくは25μm以下、さらに好ましくは20μm以下、特に好ましくは10μm未満である。通常、偏光膜は保護フィルムよりも収縮力が大きく、偏光膜と保護フィルムとの界面で応力が生じてクラックが発生し得る。偏光膜の収縮力は厚みに依存し、厚みが薄いほど収縮力は小さくなり、耐久性に優れた偏光板を得ることができる。一方で、厚みは、好ましくは0.5μm以上、さらに好ましくは1μm以上である。厚みが0.5μm未満であると、十分な光学特性が得られないおそれがある。
【0023】
A−2.偏光膜の製造方法
上記偏光膜は、その幅方向に吸収軸を有する限り、任意の適切な方法により製造される。偏光膜は、代表的には、PVA系樹脂膜に、適宜、延伸、染色等の処理を施すことにより製造される。
【0024】
A−2−1.PVA系樹脂膜
上記PVA系樹脂膜は、代表的には、長尺状に形成される。PVA系樹脂膜の厚みは、好ましくは100μm未満である。PVA系樹脂膜は、例えば、PVA系樹脂フィルムであってもよいし、熱可塑性樹脂基材上に形成されたPVA系樹脂層であってもよい。PVA系樹脂フィルムは、厚み10μm以上の偏光膜を製造する場合に好ましく用いられる。PVA系樹脂フィルムの厚みは、好ましくは30μm〜80μmである。熱可塑性樹脂基材とPVA系樹脂層との積層体は、厚み10μm未満の偏光膜を製造する場合に好ましく用いられる。PVA系樹脂層の厚みは、好ましくは3μm〜20μmである。このような薄い厚みでも、熱可塑性樹脂基材を用いることで良好に延伸することができる。
【0025】
上記積層体を構成する熱可塑性樹脂基材の厚み(延伸前)は、好ましくは50μm〜250μmである。50μm未満であると、延伸時に破断するおそれがある。また、延伸後に厚みが薄くなり過ぎて、搬送が困難になるおそれがある。250μmを超えると、延伸機に過大な負荷が加わるおそれがある。また、搬送が困難になるおそれがある。
【0026】
熱可塑性樹脂基材の形成材料としては、例えば、ポリエチレンテレフタレート系樹脂等のエステル系樹脂、シクロオレフィン系樹脂、ポリプロピレン等のオレフィン系樹脂、ポリアミド系樹脂、ポリカーボネート系樹脂、これらの共重体樹脂等が挙げられる。これらの中でも、好ましくは、シクロオレフィン系樹脂(例えば、ノルボルネン系樹脂)、非晶質のポリエチレンテレフタレート系樹脂である。非晶質のポリエチレンテレフタレート系樹脂の具体例としては、ジカルボン酸としてイソフタル酸をさらに含む共重合体や、グリコールとしてシクロヘキサンジメタノールをさらに含む共重合体が挙げられる。
【0027】
熱可塑性樹脂基材のガラス転移温度(Tg)は、好ましくは170℃以下である。このような熱可塑性樹脂基材を用いることにより、PVA系樹脂の結晶化が急速に進まない温度での積層体の延伸を可能とし、当該結晶化による不具合(例えば、延伸によるPVA系樹脂層の配向を妨げる)を抑制することができる。なお、ガラス転移温度(Tg)は、JIS K 7121に準じて求められる値である。
【0028】
好ましくは、PVA系樹脂層を形成する前に、熱可塑性樹脂基材を延伸する。延伸方向は、任意の適切な方向に設定することができる。1つの実施形態においては、延伸方向は、熱可塑性樹脂基材の搬送方向(MD)である。搬送方向は、好ましくは、長尺状の熱可塑性樹脂基材の長尺方向であり、熱可塑性樹脂基材の長尺方向に対して反時計回りに−5°〜+5°の方向を包含し得る。別の実施形態においては、延伸方向は、搬送方向に直交する方向(TD)である。搬送方向に直交する方向は、好ましくは、長尺状の熱可塑性樹脂基材の幅方向であり、熱可塑性樹脂基材の長尺方向に対して反時計回りに85°〜95°の方向を包含し得る。なお、本明細書において、「直交」とは、実質的に直交する場合も包含する。ここで、「実質的に直交」とは、90°±5.0°である場合を包含し、好ましくは90°±3.0°、さらに好ましくは90°±1.0°である。
【0029】
熱可塑性樹脂基材の延伸方法は、任意の適切な方法を採用することができる。具体的には、固定端延伸でもよいし、自由端延伸(例えば、周速の異なるロール間に熱可塑性樹脂基材を通して一軸延伸する方法)でもよい。熱可塑性樹脂基材の延伸は、一段階で行ってもよいし、多段階で行ってもよい。多段階で行う場合、後述の熱可塑性樹脂基材の延伸倍率は、各段階の延伸倍率の積である。また、本工程における延伸方式は、特に限定されず、空中延伸方式でもよいし、水中延伸方式でもよい。
【0030】
熱可塑性樹脂基材の延伸温度は、熱可塑性樹脂基材の形成材料、延伸方式等に応じて、任意の適切な値に設定することができる。延伸温度は、代表的には、熱可塑性樹脂基材のガラス転移温度(Tg)以上であり、好ましくはTg+10℃以上、さらに好ましくはTg+15℃〜Tg+30℃である。延伸方式として水中延伸方式を採用し、熱可塑性樹脂基材の形成材料として非晶質のポリエチレンテレフタレート系樹脂を用いる場合、延伸温度を熱可塑性樹脂基材のガラス転移温度(例えば、60℃〜100℃)より低くすることができる。
【0031】
熱可塑性樹脂基材の延伸倍率は、熱可塑性樹脂基材の元長に対して、好ましくは1.5倍以上であり、さらに好ましくは1.75倍以上である。延伸倍率を1.5倍以上とすることにより、後述の積層体をより均一に収縮させることができる。一方、延伸倍率は、好ましくは2.5倍以下である。
【0032】
熱可塑性樹脂基材に、予め、表面改質処理(例えば、コロナ処理等)を施してもよいし、熱可塑性樹脂基材上に易接着層を形成してもよい。このような処理を行うことにより、熱可塑性樹脂基材とPVA系樹脂層との密着性を向上させることができる。なお、表面改質処理および/または易接着層の形成は、上記延伸前に行ってもよいし、上記延伸後に行ってもよい。
【0033】
上記PVA系樹脂層の形成方法は、任意の適切な方法を採用することができる。好ましくは、熱可塑性樹脂基材上に、PVA系樹脂を含む塗布液を塗布し、乾燥することにより、PVA系樹脂層を形成する。なお、このようにして得られるPVA系樹脂層は、積層体として(熱可塑性樹脂基材上に形成されたまま)だけではなく、熱可塑性樹脂基材から剥離してPVA系樹脂フィルムとして用いてもよい。
【0034】
上記塗布液は、代表的には、上記PVA系樹脂を溶媒に溶解させた溶液である。溶媒としては、例えば、水、ジメチルスルホキシド、ジメチルホルムアミド、ジメチルアセトアミド、N−メチルピロリドン、各種グリコール類、トリメチロールプロパン等の多価アルコール類、エチレンジアミン、ジエチレントリアミン等のアミン類が挙げられる。これらは単独で、または、二種以上組み合わせて用いることができる。これらの中でも、好ましくは、水である。溶液のPVA系樹脂濃度は、溶媒100重量部に対して、好ましくは3重量部〜20重量部である。このような樹脂濃度であれば、熱可塑性樹脂基材に密着した均一な塗布膜を形成することができる。
【0035】
塗布液に、添加剤を配合してもよい。添加剤としては、例えば、可塑剤、界面活性剤等が挙げられる。可塑剤としては、例えば、エチレングリコールやグリセリン等の多価アルコールが挙げられる。界面活性剤としては、例えば、非イオン界面活性剤が挙げられる。これらは、得られるPVA系樹脂層の均一性や染色性、延伸性をより一層向上させる目的で使用し得る。
【0036】
塗布液の塗布方法としては、任意の適切な方法を採用することができる。例えば、ロールコート法、スピンコート法、ワイヤーバーコート法、ディップコート法、ダイコート法、カーテンコート法、スプレーコート法、ナイフコート法(コンマコート法等)等が挙げられる。
【0037】
上記乾燥温度は、熱可塑性樹脂基材のガラス転移温度(Tg)以下であることが好ましく、さらに好ましくはTg−20℃以下である。このような温度で乾燥することにより、PVA系樹脂層を形成する前に熱可塑性樹脂基材が変形するのを防止して、得られるPVA系樹脂層の配向性が悪化するのを防止することができる。こうして、熱可塑性樹脂基材がPVA系樹脂層とともに良好に変形し得、後述の積層体の収縮および延伸を良好に行うことができる。その結果、PVA系樹脂層に良好な配向性を付与することができ、優れた光学特性を有する偏光膜を得ることができる。ここで、「配向性」とは、PVA系樹脂層の分子鎖の配向を意味する。
【0038】
PVA系樹脂層の含有水分率は、好ましくは20%以下、さらに好ましくは15%以下である。
【0039】
A−2−2.延伸
延伸方法としては、例えば、テンター延伸機を用いた固定端延伸、周速の異なるロールを用いた自由端延伸、同時二軸延伸機を用いた二軸延伸、逐次二軸延伸が挙げられる。これらは、単独で、または、二種以上組み合わせて採用し得る。具体的には、
図4に示すように、PVA系樹脂膜11’を周速の異なるロール32,32,33,33間に通して搬送方向(MD)に延伸(自由端延伸)する場合、例えば、搬送方向に直交する方向(TD)への延伸と組み合わせる形態が挙げられる。なお、上記Nz係数は、例えば、延伸方法、延伸倍率、延伸温度等の延伸条件を適宜選択することにより制御することができる。以下、好ましい実施形態について具体的に説明する。
【0040】
好ましい実施形態においては、偏光膜は、PVA系樹脂膜を搬送方向(MD)に収縮させて、搬送方向に直交する方向(TD)に延伸することにより製造される。このような実施形態によれば、例えば、上記Nz係数を良好に満足させることができる。ここで、搬送方向は、好ましくは、長尺状のPVA系樹脂膜の長尺方向であり、PVA樹脂膜の長尺方向に対して反時計回りに−5°〜+5°の方向を包含し得る。搬送方向に直交する方向は、好ましくは、長尺状のPVA系樹脂膜の幅方向であり、PVA系樹脂膜の長尺方向に対して反時計回りに85°〜95°の方向を包含し得る。
【0041】
予め、MDに延伸処理を施した熱可塑性樹脂基材で積層体を構成した場合、熱可塑性樹脂基材は、TDへの延伸、熱等により、延伸前の状態に戻ろうとし得、積層体をMDに均一に収縮させることができる。こうして、高い収縮率であっても、配向ムラが生じたり厚みの均一性が低下したりする等の不具合を抑制して、優れた面内均一性を有する偏光膜を得ることができる。また、積層体を収縮させて、TDに延伸することで、TDの一軸性を高め得、優れた光学特性を得ることができる。
【0042】
予め、TDに固定端延伸を施した熱可塑性樹脂基材で積層体を構成した場合、熱可塑性樹脂基材は、TDへの延伸時の熱等により、MDにも収縮する力が発生し、積層体を固定端TD延伸(MD収縮をさせない)する際に問題となるクリップ間のネッキングによる均一性の悪化を抑制することができる。特に、厚みが薄いPVA系樹脂膜を高倍率延伸した場合においても、配向ムラや厚みの均一性が低下等の不具合を抑制して、優れた面内均一性を有する偏光膜を得ることができる。また、積層体を収縮させて、TDに延伸することで、TDの一軸性を高め得、優れた光学特性を得ることができる。
【0043】
収縮は、延伸と同時に行ってもよいし、別のタイミングで行ってもよい。また、その順序も限定されないし、一段階で収縮させてもよいし、多段階で収縮させてもよい。1つの実施形態においては、好ましくは、PVA系樹脂膜をTDに延伸しながら、MDに収縮させる。別の実施形態においては、好ましくは、PVA系樹脂膜をMDに収縮させた後に、TDに延伸する。延伸とは別に積層体を収縮させる方法としては、好ましくは、積層体を加熱する(熱収縮させる)方法が挙げられる。当該加熱温度は、好ましくは、熱可塑性樹脂基材のガラス転移温度(Tg)以上である。
【0044】
例えば、PVA系樹脂膜の収縮率を調整することにより、上記Nz係数を良好に満足させることができる。1つの実施形態においては、PVA系樹脂膜のMDの収縮率は、好ましくは40%以下、さらに好ましくは35%以下、特に好ましくは20%以下である。優れた耐久性を達成することができる。なお、上記Nz係数を良好に満足させることができるのであれば、MDの収縮は省略してもよい。例えば、MDの収縮率の下限は、1つの実施形態においては0%であり、別の実施形態においては5%であり得る。
【0045】
別の実施形態においては、MDの収縮率は、好ましくは25%を超え、さらに好ましくは30%を超え50%未満である。
【0046】
PVA系樹脂膜の延伸は、一段階で行ってもよいし、多段階で行ってもよい。多段階で行う場合、後述のPVA系樹脂膜の延伸倍率は、各段階の延伸倍率の積である。また、本工程における延伸方式は、特に限定されず、空中延伸(乾式延伸)方式でもよいし、水中延伸(湿式延伸)方式でもよい。
【0047】
延伸温度は、延伸方式、延伸対象等に応じて、任意の適切な値に設定することができる。例えば、熱可塑性樹脂基材とPVA系樹脂層との積層体を空中延伸方式により延伸する場合の延伸温度は、熱可塑性樹脂基材の形成材料等に応じて、任意の適切な値に設定することができる。延伸温度は、代表的には熱可塑性樹脂基材のガラス転移温度(Tg)以上であり、好ましくは熱可塑性樹脂基材のガラス転移温度(Tg)+10℃以上、さらに好ましくはTg+15℃以上である。一方、延伸温度は、好ましくは170℃以下である。このような温度で延伸することで、PVA系樹脂の結晶化が急速に進むのを抑制して、当該結晶化による不具合(例えば、PVA系樹脂膜延伸時の破断)を抑制することができる。
【0048】
PVA系樹脂フィルムを空中延伸方式により延伸する場合の延伸温度は、代表的には70℃〜130℃であり、好ましくは80℃〜120℃である。
【0049】
水中延伸方式を採用する場合、延伸温度は、好ましくは85℃以下、さらに好ましくは30℃〜65℃である。85℃を超えると、PVA系樹脂に吸着させたヨウ素が溶出する、PVA系樹脂が溶出する等の不具合が発生するおそれがあり、得られる偏光膜の光学特性が低下するおそれがある。この場合、上記温度でも延伸可能な熱可塑性樹脂基材を選択する。好ましくは、その形成材料として、非晶質のポリエチレンテレフタレート系樹脂、オレフィン系樹脂(例えば、ポリメチルペンテン)等を用いる。
【0050】
水中延伸方式を採用する場合、PVA系樹脂膜をホウ酸水溶液中で延伸することが好ましい。ホウ酸水溶液を用いることで、PVA系樹脂膜に、延伸時にかかる張力に耐える剛性と、水に溶解しない耐水性とを付与することができる。具体的には、ホウ酸は水溶液中でテトラヒドロキシホウ酸アニオンを生成してPVA系樹脂と水素結合により架橋し得、剛性と耐水性を付与し得る。その結果、例えば、より高い偏光膜コントラスト比の実現を図ることができる。ホウ酸水溶液は、溶媒である水にホウ酸および/またはホウ酸塩を溶解させることにより得られる。ホウ酸濃度は、水100重量部に対して、通常、1重量部〜10重量部である。PVA系樹脂膜の延伸浴への浸漬時間は、好ましくは15秒〜5分程度である。
【0051】
TD延伸倍率は、PVA系樹脂膜の元長に対して、好ましくは4.0倍以上である。MDに収縮させることにより、このような高い倍率での延伸が可能となり、優れた光学特性を有する偏光膜を得ることができる。一方、TD延伸倍率は、好ましくは6.0倍以下、さらに好ましくは5.5倍以下である。
【0052】
収縮・延伸工程の具体例を
図3に示す。図示例では、PVA系樹脂膜11’をその長尺方向に搬送しながら、同時二軸延伸機を用いて、PVA系樹脂膜11’を搬送方向(MD)に収縮させて、搬送方向に直交する方向(TD)に延伸する。具体的には、テンター入口の左右のクリップ31,31で把持されたPVA系樹脂膜11’を、所定の速度で搬送しながらTD延伸する。図示例では、PVA系樹脂膜の収縮は、例えば、クリップの搬送方向の移動速度を徐々に減速させ、クリップ間距離を縮めることにより制御する。テンター入口の搬送方向のクリップ間距離L1とテンター出口の搬送方向のクリップ間距離L2(クリップの搬送方向の移動速度)とを調整することにより、収縮率を制御することができる。具体的には、クリップのテンター出口の速度を、テンター入口の速度×(1−収縮率)とすることで、所望の収縮率を達成し得る。なお、
図3において、破線はクリップ31のレールを示す。
【0053】
図3に示すように、同時二軸延伸機を用いてPVA系樹脂膜の収縮・延伸を行う場合、好ましくは、PVA系樹脂膜を収縮させた後に延伸する。具体的には、搬送方向のクリップ間距離を縮めた後にTD延伸する。このような実施形態によれば、延伸の際にPVA系樹脂膜により均一に力がかかり、クリップ把持部が選択的に延伸されるのを防止することができる。具体的には、PVA系樹脂膜端辺において、クリップで把持されない部分が内方に湾曲するのを防止することができる。その結果、均一性を高めることができる。
【0054】
A−2−3.その他の処理
偏光膜を製造するための処理としては、延伸処理以外に、例えば、染色処理、不溶化処理、架橋処理、洗浄処理、乾燥処理等が挙げられる。これらの処理は、任意の適切なタイミングで施し得る。
【0055】
上記染色処理は、代表的には、PVA系樹脂膜を上記二色性物質で染色する処理である。好ましくは、PVA系樹脂膜に二色性物質を吸着させることにより行う。当該吸着方法としては、例えば、二色性物質を含む染色液にPVA系樹脂膜を浸漬させる方法、PVA系樹脂膜に染色液を塗布する方法、PVA系樹脂膜に染色液を噴霧する方法等が挙げられる。好ましくは、二色性物質を含む染色液にPVA系樹脂膜を浸漬させる方法である。二色性物質が良好に吸着し得るからである。
【0056】
二色性物質としてヨウ素を用いる場合、上記染色液は、好ましくは、ヨウ素水溶液である。ヨウ素の配合量は、水100重量部に対して、好ましくは0.04重量部〜5.0重量部である。ヨウ素の水に対する溶解性を高めるため、ヨウ素水溶液にヨウ化物塩を配合することが好ましい。ヨウ化物塩としては、例えば、ヨウ化カリウム、ヨウ化リチウム、ヨウ化ナトリウム、ヨウ化亜鉛、ヨウ化アルミニウム、ヨウ化鉛、ヨウ化銅、ヨウ化バリウム、ヨウ化カルシウム、ヨウ化錫、ヨウ化チタン等が挙げられる。これらの中でも、好ましくは、ヨウ化カリウム、ヨウ化ナトリウムである。ヨウ化物塩の配合量は、水100重量部に対して、好ましくは0.3重量部〜15重量部である。
【0057】
染色液の染色時の液温は、好ましくは20℃〜40℃である。染色液にPVA系樹脂膜を浸漬させる場合、浸漬時間は、好ましくは5秒〜300秒である。このような条件であれば、PVA系樹脂膜に十分に二色性物質を吸着させることができる。
【0058】
上記不溶化処理および架橋処理は、代表的には、ホウ酸水溶液にPVA系樹脂膜を浸漬させることにより行う。上記洗浄処理は、代表的には、ヨウ化カリウム水溶液にPVA系樹脂膜を浸漬させることにより行う。上記乾燥処理における乾燥温度は、好ましくは30℃〜100℃である。
【0059】
A−3.保護フィルム
上記保護フィルムの形成材料としては、例えば、(メタ)アクリル系樹脂、ジアセチルセルロース、トリアセチルセルロース等のセルロース系樹脂、シクロオレフィン系樹脂、ポリプロピレン等のオレフィン系樹脂、ポリエチレンテレフタレート系樹脂等のエステル系樹脂、ポリアミド系樹脂、ポリカーボネート系樹脂、これらの共重体樹脂等が挙げられる。なお、上記熱可塑性樹脂基材を、そのまま保護フィルムとして用いてもよい。
【0060】
保護フィルムの厚みは、好ましくは20μm〜100μmである。保護フィルムは、接着層(具体的には、接着剤層、粘着剤層)を介して偏光膜に積層されていてもよいし、偏光膜に密着(接着層を介さずに)積層されていてもよい。接着剤層は、任意の適切な接着剤で形成される。接着剤としては、例えば、ポリビニルアルコール系接着剤が挙げられる。
【0061】
B.その他
上記粘着剤層は、任意の適切な粘着剤により形成される。代表的には、アクリル系粘着剤が用いられる。粘着剤層の厚みは、好ましくは7μm〜25μmである。
【0062】
上記反射偏光フィルムとしては、代表的には、直線偏光分離型の反射偏光フィルムが挙げられる。
図5は、反射偏光フィルムの一例の概略斜視図である。反射偏光フィルムは、複屈折性を有する層Aと複屈折性を実質的に有さない層Bとが交互に積層された多層積層体である。例えば、図示例では、A層のx軸方向の屈折率nxがy軸方向の屈折率nyより大きく、B層のx軸方向の屈折率nxとy軸方向の屈折率nyとは実質的に同一である。したがって、A層とB層との屈折率差は、x軸方向において大きく、y軸方向においては実質的にゼロである。その結果、x軸方向が反射軸となり、y軸方向が透過軸となる。A層とB層とのx軸方向における屈折率差は、好ましくは0.2〜0.3である。なお、x軸方向は、後述する製造方法における反射偏光フィルムの延伸方向に対応する。
【0063】
上記A層は、好ましくは、延伸により複屈折性を発現する材料で構成される。このような材料の代表例としては、ナフタレンジカルボン酸ポリエステル(例えば、ポリエチレンナフタレート)、ポリカーボネートおよびアクリル系樹脂(例えば、ポリメチルメタクリレート)が挙げられる。ポリエチレンナフタレートが好ましい。上記B層は、好ましくは、延伸しても複屈折性を実質的に発現しない材料で構成される。このような材料の代表例としては、ナフタレンジカルボン酸とテレフタル酸とのコポリエステルが挙げられる。
【0064】
反射偏光フィルムは、A層とB層との界面において、第1の偏光方向を有する光(例えば、p波)を透過し、第1の偏光方向とは直交する第2の偏光方向を有する光(例えば、s波)を反射する。反射した光は、A層とB層との界面において、一部が第1の偏光方向を有する光として透過し、一部が第2の偏光方向を有する光として反射する。反射偏光フィルムの内部において、このような反射および透過が多数繰り返されることにより、光の利用効率を高めることができる。
【0065】
好ましくは、反射偏光フィルムは、
図5に示すように、偏光膜11と反対側の最外層として反射層Rを含む。反射層Rを設けることにより、最終的に利用されずに反射偏光フィルムの最外部に戻ってきた光をさらに利用することができるので、光の利用効率をさらに高めることができる。反射層Rは、代表的には、ポリエステル樹脂層の多層構造により反射機能を発現する。
【0066】
反射偏光フィルムの全体厚みは、目的、反射偏光フィルムに含まれる層の合計数等に応じて適切に設定され得る。反射偏光フィルムの全体厚みは、好ましくは20μm〜600μmである。
【0067】
反射偏光フィルムとしては、例えば、特表平9−507308号公報に記載のものが使用され得る。
【0068】
反射偏光フィルムは、市販品をそのまま用いてもよく、市販品を2次加工(例えば、延伸)して用いてもよい。市販品としては、例えば、3M社製の商品名DBEF、3M社製の商品名APFが挙げられる。
【0069】
反射偏光フィルムは、代表的には、共押出と横延伸とを組み合わせて作製され得る。共押出は、任意の適切な方式で行われ得る。例えば、フィードブロック方式であってもよく、マルチマニホールド方式であってもよい。例えば、フィードブロック中でA層を構成する材料とB層を構成する材料とを押出し、次いで、マルチプライヤーを用いて多層化する。なお、このような多層化装置は当業者に公知である。次いで、得られた長尺状の多層積層体を代表的には搬送方向に直交する方向(TD)に延伸する。A層を構成する材料(例えば、ポリエチレンナフタレート)は、当該横延伸により延伸方向においてのみ屈折率が増大し、結果として複屈折性を発現する。B層を構成する材料(例えば、ナフタレンジカルボン酸とテレフタル酸とのコポリエステル)は、当該横延伸によってもいずれの方向にも屈折率は増大しない。結果として、延伸方向(TD)に反射軸を有し、搬送方向(MD)に透過軸を有する反射偏光フィルムが得られ得る(TDが
図2のx軸方向に対応し、MDがy軸方向に対応する)。なお、延伸操作は、任意の適切な装置を用いて行われ得る。
【0070】
反射偏光フィルムと上記偏光膜とを任意の適切な方法で積層することにより、本発明の光学フィルムが得られる。上述のように、偏光膜がTDに吸収軸を有するので、偏光膜と反射偏光フィルムとをロールトゥロールで貼り合わせることができる。
【0071】
反射偏光フィルムを用いることにより、光利用効率を向上させて、得られる液晶表示パネルの高コントラスト化を実現することができる。また、上記偏光膜の厚みが薄い(例えば、10μm未満)場合、反射偏光フィルムと組み合わせることで光学フィルムに十分な剛性が付与され、切断性(特に、スリット加工精度)を向上させることができ、他の光学部材(例えば、液晶セル)との積層の際、軸方向を良好に調整することができる。その結果、より表示特性に優れた液晶表示パネルを提供することができる。後述するが、偏光膜の厚みが薄い(例えば、10μm未満)場合、幅方向に吸収軸を有する偏光膜と、幅方向に反射軸を有する反射偏光フィルムとが予め積層された(好ましくは、ロールトゥロール方式で一体化させた)長尺状の光学フィルム原反をスリット加工して光学フィルムロールを製造することが好ましい。偏光膜の厚みが薄いと剛性が低く、偏光膜(偏光板)単独でのスリット加工精度が十分に担保できないおそれがある。スリット加工精度が担保できないと、反射偏光フィルムとの軸精度の低下やスリット幅の精度の低下につながるおそれがある。予め、偏光膜と反射偏光フィルムとを積層することで、偏光膜の吸収軸と反射偏光フィルムの反射軸とを高精度に重ねることができる(偏光膜の偏光度を反射偏光フィルムで十分に補える構造を実現できる)だけでなく、反射偏光フィルムによって光学フィルム原反に十分な剛性が付与され、スリット加工時のばたつきや蛇行を抑制してスリット加工精度を向上させることができる。その結果、RTPにおいて、光学フィルムと他の光学部材(例えば、液晶セル)とを連続的に積層する際、端辺(スリット面)を基準にして行なう光学フィルム幅方向の切断(ハーフカットを含む)の精度(フィルムの寸法精度)や貼合精度がより得られやすくなり、軸方向や貼り合わせ位置精度を良好に調整することができる。その結果、より表示特性に優れた液晶表示パネルを提供することができる。
【0072】
上記剥離フィルムは、代表的には、プラスチックフィルムと、このプラスチックフィルムの片側に設けられた剥離付与層とで構成される。プラスチックフィルムとしては、好ましくは、ポリエステルフィルムが用いられる。剥離フィルムの厚みは、好ましくは25μm〜50μmである。
【0073】
上記表面保護フィルムは、上記偏光板の保護フィルムとして機能し得る。表面保護フィルムは、代表的には、プラスチックフィルムまたはプラスチックフィルムの積層体である。プラスチックフィルムの材質としては、例えば、ポリエステル、ポリプロピレン等が挙げられる。表面保護フィルムの厚みとしては、好ましくは25μm〜75μmである。
【0074】
上記その他のフィルム(層)としては、例えば、位相差板等が挙げられる。光学フィルムを構成する各層の積層には、代表的には、任意の適切な粘着剤または接着剤が用いられる。
【0075】
C.光学フィルムロールの製造方法
光学フィルムロールとしてロール状に巻回された長尺状の光学フィルムの幅は、好ましくは、貼り合わせる液晶セルのサイズに対応して設定される。具体的には、長尺状の光学フィルムは、液晶セルの対向する一組の辺に対応する幅を有する。長尺状の光学フィルムは、好ましくは、広幅で長尺状の光学フィルム原反(スリット前ロール原反)を、スリット加工することにより製造される。より好ましくは、広幅で長尺状の光学フィルム原反(スリット前ロール原反)をスリット加工することにより、同じ幅または異なる幅の長尺状の光学フィルムが同時に複数製造される。
【0076】
上記スリット加工としては、光学フィルム原反を巻き戻しながら行う方法と、巻き戻さずに行う方法とがあり、いずれも採用できる。好ましくは、スリット加工は、光学フィルム原反を巻き戻しながら行われる。光学フィルム原反を巻き戻しながら行うことにより、スリット加工精度がより優れたものとなる。また、本発明では、光学フィルム原反の製造ラインにおいて、その巻回前にスリットしてもよい。
【0077】
したがって、好ましい実施形態においては、上記光学フィルムロールの製造方法は、剥離フィルムと、粘着剤層と、幅方向に吸収軸を有する偏光膜を含む偏光板と、幅方向に反射軸を有する反射偏光フィルムとをこの順に積層して長尺状の光学フィルム原反を作製する工程と、この光学フィルム原反を、その長尺方向と平行に(その長尺方向に搬送しながら搬送方向に)、上記液晶セルの対向する一組の辺に対応する幅でスリット加工する工程と、このスリット工程で得られた長尺状の光学フィルムをロール状に巻回する工程とを含む。なお、本明細書において、「平行」とは、実質的に平行である場合も包含する。ここで、「実質的に平行」とは、0°±5.0°である場合を包含し、好ましくは0°±3.0°、さらに好ましくは0°±1.0°である。
【0078】
図7Aは、長尺状の光学フィルム原反の作製工程の一例を説明するための概略斜視図である。
図7Aに示すように、長尺状の光学フィルム原反100’は、粘着剤層付偏光板91(偏光板10と粘着剤層30と剥離フィルム50との積層体)と表面保護フィルム付反射偏光フィルム92(反射偏光フィルム40と表面保護フィルム60との積層体)とを、ロールトゥロールにより積層することにより得られ得る。積層は、任意の適切な粘着剤または接着剤(図示せず)を介して、偏光板10と反射偏光フィルム40とが対向するようにして行われる。なお、偏光板10が偏光膜11の片側のみに保護フィルムを有する形態においては、粘着剤層付偏光板において、偏光膜の保護フィルムが設けられていない表面には表面保護フィルムが配置されており、当該表面保護フィルムを剥離しながら積層が行われる(図示せず)。
【0079】
図7Bは、本発明の光学フィルムロールの製造装置の一例を示す概略図である。この製造装置は、光学フィルム原反(スリット前ロール原反)100’のロールR0の巻き戻し機構80と、光学フィルム原反100’の切断機構70と、スリット加工されて得られた長尺状の光学フィルム100の巻回ロールR1,R2の巻回装置63とを備えている。長尺シート状製品の製造ラインにおいて、スリット加工する場合、巻き戻し機構80は不要になる。
【0080】
巻き戻し機構80は、ニップローラ57によって生じる張力等により、光学フィルム原反100’をロールR0から巻き戻すものであり、ニップローラ57とロールR0を回転・支持するロール支持部とを備える。このロール支持部には、制動機構、駆動機構、張力制御機構などを設けてもよい。
【0081】
切断機構70は、光学フィルム原反100’の搬送路に設けられた切断刃51を備える。切断刃としては、例えば、ギャング刃、ゲーベル刃が挙げられる。切断方式としては、例えば、ギャング方式、シェアカット方式が挙げられる。例えば、回転自在な円形の切断刃をスリットの方向に向けて所定間隔で配置し、当該切断刃と支持ロールとの間に光学フィルム原反100’を通過させながら、連続的にスリットを行うことが可能である。
図7Cは、スリット加工の詳細を説明する概略斜視図である。
図7Cにおいては、ギャング刃を備えた切断装置70が示されている。
図7Cに示すように、光学フィルム原反100’から複数の光学フィルム(光学フィルムロール)100が得られ得る。光学フィルム原反から得られる光学フィルムの数は、目的に応じて適切に設定され得る。複数の光学フィルムを得る場合、それぞれの光学フィルムの幅は、貼り合わせる液晶セルのサイズに対応する限り、同一であってもよく、異なっていてもよい。なお、切断刃の代わりにレーザー装置を備えた切断装置を用いることも可能である。その場合、切断機構70は、例えば、光学フィルム原反の裏面側に設けられた切断テーブルと、光学フィルム原反の上方に設けられたレーザー装置とを備える。レーザーの照射位置は固定され、光学フィルム原反の連続搬送により切断が進行する。
【0082】
D.使用方法
本発明の光学フィルムロールは、液晶セルの対向するもう一組の辺に対応する長さに切断され、連続的に液晶セルの表面に貼り合わされる。本明細書において「液晶セルの対向する一組(もう一組)の辺に対応する長さ(幅)」とは、光学フィルムを液晶セルに対して位置合わせして貼り合わせた場合に、当該液晶セルの周縁部に適切な製造上のマージン(具体的には、光学フィルムが貼り合わされていない露出部分)を確保できる長さ(幅)をいう。具体的には、「液晶セルの対向する一組(もう一組)の辺に対応する長さ(幅)」は、液晶セルの対向する一組(もう一組)の辺方向両端部の露出部分を除いた長さ(幅)をいう。
【0083】
上記切断は、少なくとも偏光膜(偏光板)および反射偏光フィルムを切断して切り込み線を形成する形態(いわゆる、ハーフカット)も含み得る。図示例の光学フィルム100においては、例えば、剥離フィルム50を残して、表面保護フィルム60、反射偏光フィルム40、偏光板10および粘着剤層30の部分を切断する。なお、本発明の光学フィルムロールにおいて、長尺状の光学フィルムは、液晶セルの対向するもう一組の辺に対応する長さの間隔をあけて、上記切り込み線が複数形成された状態であってもよい。
【0084】
光学フィルムの切断方向は、代表的には、偏光膜の吸収軸の方向(光学フィルムの幅方向)、偏光膜の吸収軸に直交する方向(光学フィルムの長尺方向)である。偏光膜の吸収軸に直交する方向の切断は、代表的には、光学フィルムを長手方向に搬送しながら所定の幅となるよう連続的に切断し、当該切断後にロール状に巻き取ることにより行われる。本明細書では、偏光膜の吸収軸に直交する方向の切断を「スリット加工」と称する場合もある。
【0085】
好ましい実施形態においては、本発明の光学フィルム(以下、「第1の光学フィルム」という)を液晶セルの片側に貼り合わせ、第1の光学フィルムとは別の第2の光学フィルムを液晶セルのもう片側に貼り合わせて液晶表示パネルを製造する。第2の光学フィルムは、第1の光学フィルムと同様、長尺状であり、液晶セルの対向する一組の辺に対応する幅を有する。第2の光学フィルムは、液晶セルの対向するもう一組の辺に対応する長さに切断され、連続的に液晶セルの表面に貼り合わされる。第2の光学フィルムは、長尺方向に吸収軸を有する偏光膜を含む。この偏光膜の吸収軸の方向は、第2の光学フィルムの長尺方向に対して反時計回りに−5°〜+5°の方向を包含し得る。本実施形態により得られる液晶表示パネルの上下の偏光膜の吸収軸は互いに直交している。
【0086】
本発明の光学フィルムロールセットは、本発明の光学フィルムロール(第1の光学フィルムロール)と、上記第2の光学フィルムがロール状に巻回された第2の光学フィルムロールとを備える。
【0087】
上記液晶セルの駆動モードとしては、任意の適切なモードが採用される。好ましくは、VAモードまたはIPSモードである。
【実施例】
【0088】
以下、実施例によって本発明を具体的に説明するが、本発明はこれら実施例によって限定されるものではない。なお、実施例における測定および評価方法は以下の通りである。
(1)偏光膜の厚み
ダイヤルゲージ(PEACOCK社製、製品名「DG−205 type pds−2」)を用いて、後述の染色処理後に、PVA系樹脂層もしくはPVA系樹脂フィルムの厚みを測定した。
(2)液晶表示パネルのコントラスト比
実施例および比較例で得られた液晶表示パネルについて、当該実施例および比較例で用いた液晶テレビに搭載されていたバックライトを用いて、液晶表示パネルの中央部のコントラスト比を(株)トプコンテクノハウス SR−UL1Rにより測定した。
【0089】
[実施例1]
<粘着剤層付偏光板の作製>
(熱可塑性樹脂基材)
熱可塑性樹脂基材として、長尺状で厚み200μm、Tg123℃のシクロオレフィン系樹脂フィルム(JSR社製、商品名「ARTON」)を用いた。
(塗布液の調製)
重合度1800、ケン化度98〜99%のポリビニルアルコール(PVA)樹脂(日本合成化学工業社製、商品名「ゴーセノール(登録商標)NH−18」)を水に溶解させて、濃度7重量%のポリビニルアルコール水溶液を調製した。
(PVA系樹脂層の形成)
延伸処理を施した熱可塑性樹脂基材の片面に、上記塗布液をダイコーター(ダイコート法)により塗布した後、100℃で180秒間乾燥して、厚み9μmのPVA系樹脂層を形成した。このようにして、積層体を作製した。
【0090】
<収縮・延伸処理>
得られた積層体を、
図3に示すように、同時二軸延伸機を用いて、140℃で、MDに40%収縮させると同時に、TDに5.0倍に乾式延伸した。
【0091】
<染色処理>
次いで、積層体を、25℃のヨウ素水溶液(ヨウ素濃度:0.5重量%、ヨウ化カリウム濃度:10重量%)に30秒間浸漬させた。
【0092】
<架橋処理>
染色後の積層体を、60℃のホウ酸水溶液(ホウ酸濃度:5重量%、ヨウ化カリウム濃度:5重量%)に60秒間浸漬させた。
【0093】
<洗浄処理>
架橋処理後、積層体を、25℃のヨウ化カリウム水溶液(ヨウ化カリウム濃度:5重量%)に5秒間浸漬させた。
このようにして、熱可塑性樹脂基材上に、厚み3μmの偏光膜を作製した。
【0094】
積層体の偏光膜側にポリビニルアルコール系接着剤を介して保護フィルム(厚み:40μm、富士フイルム社製、商品名「TD40UL」)を貼り合わせた。次に、偏光膜から熱可塑性樹脂基材を剥離し、偏光板を得た。
【0095】
次に、偏光板の偏光膜側に厚み60μmの粘着剤層付表面保護フィルム(三菱ポリエステル(株)製、商品名「PPF−100T」)を貼り合せた後、偏光板の保護フィルム側に厚み23μmのアクリル系粘着剤層を形成し、その表面に厚み38μmの剥離フィルム(三菱ポリエステルフィルム(株)製、商品名「MRF−ELB4」)を貼り合わせた。このようにして、粘着剤層付偏光板を作製した。
【0096】
<粘着剤層付反射偏光フィルム>
厚み107μmの反射偏光フィルムと厚み60μmの粘着剤層付表面保護フィルムが積層された反射型偏光板(3M社製、商品名「DBEF」)を用意した。この反射型偏光板の反射偏光フィルム側に厚み12μmのアクリル系粘着剤を形成し、その表面に厚み38μmの剥離フィルム(三菱ポリエステルフィルム(株)製、商品名「MRF−ELB4」)を貼り合わせた。このようにして、粘着剤層付反射偏光フィルムを作製した。
【0097】
<光学フィルム原反の作製>
上記の粘着剤層付偏光板と上記の粘着剤層付反射偏光フィルムとを、粘着剤層付偏光板の表面保護フィルムおよび粘着剤層付反射偏光フィルムの剥離フィルムをそれぞれ剥離しながら、ロールトゥロールにより貼り合わせ、幅方向に吸収軸を有する偏光膜と幅方向に反射軸を有する反射偏光フィルムとが積層された長尺状の光学フィルム原反を得た。なお、得られた光学フィルム原反は、巻回して原反ロールとした。
【0098】
<光学フィルム(光学フィルムロール)の作製>
上記で得られた光学フィルム原反ロールを巻き戻し、長尺状の光学フィルム原反を30m/minで搬送しながら、
図7Cに示すようにして511mmの幅(後述する液晶セルの短辺に対応する幅)に切断刃でスリット加工し、長尺状の光学フィルムを得た。なお、スリット加工時の光学フィルム原反の総厚み(剥離フィルムも含む)は283μmであった。
【0099】
<液晶表示パネルの作製>
40インチ液晶テレビ(SHARP社製、商品名:LC40Z5)から取り出した液晶セルの視認側に偏光板(日東電工(株)製、VEGQ1724NTB)を、背面側に上記で得られた光学フィルムを、それぞれ剥離フィルムを剥離しながらロールトゥパネル(RTP)により貼り合わせて液晶表示パネルを作製し、そのコントラスト比を測定した。結果を表1に示す。
【0100】
[比較例1]
実施例1と同様にして、粘着剤層付偏光板および粘着剤層付反射偏光フィルムを得た。得られた粘着剤層付偏光板および粘着剤層付反射偏光フィルムを、それぞれ、実施例1と同様にして511mmの幅にスリット加工した。それぞれスリット加工された粘着剤層付偏光板と粘着剤層付反射偏光フィルムとを、粘着剤層付偏光板の表面保護フィルムおよび粘着剤層付反射偏光フィルムの剥離フィルムをそれぞれ剥離しながら、ロールトゥロールにより貼り合わせ、幅方向に吸収軸を有する偏光膜と幅方向に反射軸を有する反射偏光フィルムとが積層された長尺状の光学フィルムを得た。得られた光学フィルムを用いたこと以外は実施例1と同様にして液晶表示パネルを作製し、そのコントラスト比を測定した。結果を表1に示す。
【0101】
[比較例2]
比較例1と同様にして、スリット加工された粘着剤層付偏光板および粘着剤層付反射偏光フィルムを得た。液晶セルの背面側に、スリット加工された粘着剤層付偏光板を、剥離フィルムを剥離しながらRTPにより貼り合わせ、貼り合わされた粘着剤層付偏光板から表面保護フィルムを剥離した後、続けて、当該粘着剤層付偏光板に、スリット加工された粘着剤層付反射偏光フィルムを、剥離フィルムを剥離しながらRTPにより貼り合わせたこと以外は実施例1と同様にして液晶表示パネルを作製し、そのコントラスト比を測定した。結果を表1に示す。
【0102】
[実施例2]
実施例1と同様にして、熱可塑性樹脂基材上に厚み3μmの偏光膜を有する積層体を作製した。一方、実施例1と同様の反射型偏光板を用意した。偏光膜を有する積層体の偏光膜側に、ポリビニルアルコール系接着剤を介して反射型偏光板を、ロールトゥロールにより貼り合わせた。次いで、得られた積層体から熱可塑性樹脂基材を剥離し、当該熱可塑性樹脂基材を剥離した偏光膜表面に厚み23μmのアクリル系粘着剤を形成し、その表面に厚み38μmの剥離フィルム(三菱ポリエステルフィルム(株)製、商品名「MRF−ELB4」)を貼り合わせた。このようにして、幅方向に吸収軸を有する偏光膜と幅方向に反射軸を有する反射偏光フィルムとが積層された長尺状の光学フィルム原反を得た。以下の手順は実施例1と同様にして、光学フィルム(光学フィルムロール)および液晶表示パネルを作製した。得られた液晶表示パネルのコントラスト比を測定した。結果を表1に示す。なお、スリット加工時の光学フィルム原反の総厚み(剥離フィルムも含む)は231μmであった。
【0103】
[比較例3]
実施例2で得られた熱可塑性樹脂基材上に偏光膜を有する積層体の偏光膜側に、厚み23μmのアクリル系粘着剤層を形成し、その表面に厚み38μmの剥離フィルム(三菱ポリエステルフィルム(株)製、商品名「MRF−ELB4」)を貼り合わせた。この積層体を実施例1と同様にしてスリット加工した。一方、粘着剤層付反射偏光フィルムを実施例1と同様にしてスリット加工した。スリット加工した偏光膜を有する積層体とスリット加工した粘着剤層付反射偏光フィルムとを、偏光膜を有する積層体の熱可塑性樹脂基材および粘着剤層付反射偏光フィルムの剥離フィルムを剥離しながらロールトゥロールにより貼り合わせ、幅方向に吸収軸を有する偏光膜と幅方向に反射軸を有する反射偏光フィルムとが積層された長尺状の光学フィルムを得た。得られた光学フィルムを用いたこと以外は実施例1と同様にして液晶表示パネルを作製し、そのコントラスト比を測定した。結果を表1に示す。
【0104】
[比較例4]
比較例3と同様にして、スリット加工された偏光膜を有する積層体および粘着剤層付反射偏光フィルムを得た。液晶セルの背面側に、スリット加工された偏光膜を有する積層体を、剥離フィルムを剥離しながらRTPにより貼り合わせ、貼り合わされた粘着剤層付偏光板から熱可塑性樹脂基材を剥離した後、続けて、貼り合わされた粘着剤層付偏光板に、スリット加工された粘着剤層付反射偏光フィルムを、剥離フィルムを剥離しながらRTPにより貼り合わせたこと以外は実施例1と同様にして液晶表示パネルを作製し、そのコントラスト比を測定した。結果を表1に示す。
【0105】
【表1】
【0106】
[評価]
表1から明らかなように、本発明の実施例によれば、積層後に液晶セルのサイズに対応したスリット加工を行うことにより、軸ズレを抑制し、コントラストの高い液晶表示パネルを得ることができる。さらに、本発明の光学フィルムはロールトゥロールにより得ることができ、かつ、本発明の光学フィルムを用いれば、ローウトゥパネル(RTP)により液晶表示パネルを得ることができるので、非常に優れた製造効率を実現することができる。