(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記内部抵抗測定装置は、前記蓄電装置の内部抵抗の測定中に前記メインコントローラが前記昇降圧コンバータを制御する動作を開始すると、内部抵抗の測定を中止する請求項1乃至3のいずれか1項に記載の作業機械。
前記メインコントローラは、前記内部抵抗測定装置から送られた前記蓄電装置の内部抵抗の算出値が基準値を超えると、内部抵抗の算出値が前記基準値を超えていないときと比べて前記蓄電装置の出力の上限値を小さくする請求項1乃至4のいずれか1項に記載の作業機械。
エンジン、電動発電機、蓄電装置、前記蓄電装置の昇降圧動作を行う昇降圧コンバータ、及び前記エンジン、前記電動発電機、前記昇降圧コンバータの動作の制御を行うメインコントローラを搭載した作業機械の制御方法であって、
前記メインコントローラは、スタートキーがオンにされると前記昇降圧コンバータの充放電動作を制御する動作を開始し、前記スタートキーがオフにされると、前記蓄電装置と前記昇降圧コンバータとを接続する電流路を遮断し、前記昇降圧コンバータの充放電動作を制御する動作を停止し、
前記スタートキーがオンにされているとき、前記スタートキーがオフにされるまで前記蓄電装置の内部抵抗を測定する処理を開始せず、前記スタートキーがオフにされた後、前記メインコントローラとは独立して動作する内部抵抗測定装置で前記昇降圧コンバータの動作が停止している期間に前記蓄電装置の内部抵抗を測定する工程と、
前記スタートキーがオンにされた後、前記内部抵抗測定装置から前記メインコントローラに、前記蓄電装置の内部抵抗の測定値を送信する工程と
を有する作業機械の制御方法。
【発明を実施するための形態】
【0013】
図1に、実施例による作業機械の例として、ショベルの側面図を示す。下部走行体1に上部旋回体2が旋回可能に搭載されている。上部旋回体2は、旋回電動機21により下部走行体1に対して旋回する。
【0014】
上部旋回体2に、フロントアタッチメントが取り付けられている。フロントアタッチメントは、ブーム4、ブーム4の先端に連結されたアーム5、及びアーム5の先端に取り付けられたバケット6を含む。ブームシリンダ7がブーム4を駆動し、アームシリンダ8がアーム5を駆動し、バケットシリンダ9がバケット6を駆動する。
【0015】
図2に、実施例によるショベルのブロック図を示す。
図2において、機械的動力系を二
重線で表し、高圧油圧ラインを太い実線で表し、パイロットラインを破線で表し、電気系統を細い実線で表す。
【0016】
エンジン11の駆動軸が減速機13の入力軸に連結されている。エンジン11には、電気以外の燃料によって駆動力を発生するエンジン、例えばディーゼルエンジン等の内燃機関が用いられる。エンジン11は、作業機械の運転中は、常時駆動されている。
【0017】
電動発電機12の駆動軸が、減速機13の他の入力軸に連結されている。電動発電機12は、電動(アシスト)運転と、発電運転との双方の運転動作を行うことができる。電動発電機12には、例えば磁石がロータ内部に埋め込まれた内部磁石埋込型(IPM)モータが用いられる。
【0018】
減速機13は、2つの入力軸と1つの出力軸とを有する。この出力軸に、メインポンプ14の駆動軸が連結されている。
【0019】
メインポンプ14に加わる負荷が大きい場合には、電動発電機12がアシスト運転を行い、電動発電機12の駆動力が減速機13を介してメインポンプ14に伝達される。これにより、エンジン11に加わる負荷が軽減される。一方、メインポンプ14に加わる負荷が小さい場合には、エンジン11の駆動力が減速機13を介して電動発電機12に伝達されることにより、電動発電機12が発電運転される。電動発電機12のアシスト運転と発電運転との切り替えは、電動発電機12に接続されたインバータ18により行われる。インバータ18は、メインコントローラ30により制御される。
【0020】
メインコントローラ30は、中央処理装置(CPU)30A及び内部メモリ30Bを含む。CPU30Aは、内部メモリ30Bに格納されている制御用プログラムを実行する。メインコントローラ30は、表示装置39に、各種装置の劣化状態等を表示することにより、操作者の注意を喚起する。
【0021】
メインポンプ14は、高圧油圧ラインを介して、コントロールバルブ17に油圧を供給する。コントロールバルブ17は、操作者からの指令により、油圧モータ1A、1B、ブームシリンダ7、アームシリンダ8、及びバケットシリンダ9に油圧を分配する。油圧モータ1A及び1Bは、それぞれ
図1に示した下部走行体1に備えられた左右の2本のクローラを駆動する。
【0022】
電動発電機12の電気系統の入出力端子が、インバータ18を介して蓄電回路50に接続されている。蓄電回路50には、さらに、他のインバータ20を介して旋回電動機21が接続されている。蓄電回路50及びインバータ20は、メインコントローラ30により制御される。蓄電回路50は、後に
図3を参照して説明するように、蓄電装置、昇降圧コンバータ、DCバスライン等を含む。内部抵抗測定装置60が、蓄電回路50の蓄電装置の内部抵抗を測定する。
【0023】
電動発電機12がアシスト運転されている期間は、必要な電力が蓄電回路50から電動発電機12に供給され、電動発電機12が動力(機械的パワー)を発生する。電動発電機12が発電運転されている期間は、エンジン11から必要な動力が供給され、電動発電機12が電力(電気的パワー)を発生する。電動発電機12によって発電された電力が、蓄電回路50に供給される。インバータ18が、メインコントローラ30からの指令を受けて、指令された動力または電力を出力するように電動発電機12の運転制御を行う。
【0024】
旋回電動機21は、インバータ20からのパルス幅変調(PWM)制御信号により交流駆動され、動力を発生する力行動作、及び電力を出力する回生動作の双方の運転を行うこ
とができる。インバータ20は、メインコントローラ30からの指令を受け、指令された動力を発生するように旋回電動機21の運転制御を行う。旋回電動機21には、例えばIPMモータが用いられる。IPMモータは、回生動作時に大きな誘導起電力を発生する。
【0025】
旋回電動機21の力行動作中は、旋回電動機21の回転力が減速機24を介して上部旋回体2(
図1)に伝達される。この際、減速機24は、回転速度を遅くする。これにより、旋回電動機21で発生した回転力が増大して、上部旋回体2に伝達される。回生動作時には、上部旋回体2の回転運動が、減速機24を介して旋回電動機21に伝達されることにより、旋回電動機21が回生電力を発生する。この際、減速機24は、力行運転の時とは逆に、回転速度を速める。これにより、旋回電動機21の回転数を上昇させることができる。
【0026】
レゾルバ22が、旋回電動機21の回転軸の回転方向の位置を検出する。検出結果は、メインコントローラ30に入力される。旋回電動機21の運転前と運転後における回転軸の回転方向の位置を検出することにより、旋回角度及び旋回方向が導出される。
【0027】
メカニカルブレーキ23が、旋回電動機21の回転軸に連結されており、機械的な制動力を発生する。メカニカルブレーキ23の制動状態と解除状態とは、メインコントローラ30からの制御を受け、電磁的スイッチにより切り替えられる。
【0028】
パイロットポンプ15が、油圧操作系に必要なパイロット圧を発生する。発生したパイロット圧は、パイロットラインを介して操作装置26に供給される。操作装置26は、レバーやペダルを含み、操作者によって操作される。操作装置26は、パイロットポンプ15から供給される1次側の油圧を、操作者の操作に応じて、2次側の油圧に変換する。2次側の油圧は、油圧ラインを介してコントロールバルブ17に伝達されると共に、他の油圧ラインを介して圧力センサ29に伝達される。
【0029】
圧力センサ29で検出された圧力の検出結果が、メインコントローラ30に入力される。これにより、メインコントローラ30は、下部走行体1、上部旋回体2、ブーム4、アーム5、及びバケット6の操作の状況を検知することができる。特に、実施例によるハイブリッド型ショベルでは、旋回電動機21が上部旋回体2を旋回させるため、上部旋回体2を旋回させるためのレバーの操作量を高精度に検出することが望まれる。メインコントローラ30は、圧力センサ29を介して、このレバーの操作量を高精度に検出することができる。
【0030】
操作者がスタートキー27をオンにすると、メインコントローラ30が作動を開始し、スタートキー27をオフにすると、メインコントローラ30が作動を停止する。メインコントローラ30は、下部走行体1、上部旋回体2、ブーム4、アーム5、及びバケット6のいずれも運転されておらず、蓄電回路50への電力の供給及び蓄電回路50からの電力の強制的な取り出しのいずれも行われていない状態(非運転状態)を検出することができる。
【0031】
図3に、蓄電回路50及び内部抵抗測定装置60の等価回路図を示す。蓄電回路50は、蓄電装置51、昇降圧コンバータ52、及びDCバスライン53を含む。蓄電装置51は、直列に接続された複数の蓄電セルを含む。複数の蓄電セルを直列接続することにより、目標とする電圧を発生することができる。
【0032】
昇降圧コンバータ52は、昇圧用絶縁ゲートバイポーラトランジスタ(IGBT)54A、降圧用IGBT54B、リアクトル55、及びスイッチング素子56を含む。昇圧用IGBT54Aと降圧用IGBT54Bとが直列に接続されている。昇圧用IGBT54
Aのエミッタが、蓄電装置51の負極に接続されるとともに、接地されている。昇圧用IGBT54Aと降圧用IGBT54Bとの相互接続点が、リアクトル55及びスイッチング素子56を介して蓄電装置51の正極に接続されている。スイッチング素子56は、蓄電装置51と昇降圧コンバータ52とを接続する電流路の開閉を行う。昇圧用IGBT54A及び降圧用IGBT54Bに、それぞれ還流ダイオードが接続されている。
【0033】
昇圧用IGBT54Aのエミッタ及び降圧用IGBT54Bのコレクタが、それぞれDCバスライン53の接地線及び電源線に接続されている。接地線と電源線との間に、平滑キャパシタ57が挿入されている。DCバスライン53は、インバータ18、20の直流端子に接続されている。インバータ18、20の三相交流端子に、それぞれ電動発電機12、旋回電動機21が接続されている。
【0034】
メインコントローラ30が、昇圧用IGBT54A及び降圧用IGBT54Bのゲート電極に、制御用のパルス幅変調(PWM)信号を印加することにより、昇降圧コンバータ52の充放電動作を制御する。また、メインコントローラ30は、スイッチング素子56の開閉動作を制御する。スタートキー27がオンにされると、メインコントローラ30が動作を開始し、スイッチング素子56をオンにする。スタートキー27がオフにされると、メインコントローラ30は、スイッチング素子56をオフにした後、動作を停止する。メインコントローラ30の内部メモリ30Bに、運転状態記憶部31が確保されている。運転状態記憶部31には、現在の運転状態が記憶される。運転状態は、後に説明するように、「通常運転状態」及び「出力制限状態」の2つの状態のいずれかである。
【0035】
以下、昇圧動作(放電動作)について説明する。昇圧用IGBT54Aのゲート電極にPWM信号を印加する。昇圧用IGBT54Aがオン状態からオフ状態に移行する時に、リアクトル55に発生する誘導起電力により、蓄電装置51から、降圧用IGBT54Bに接続された還流ダイオードを介してDCバスライン53に電流が流れる。これにより、DCバスライン53が昇圧される。
【0036】
次に、降圧動作(充電動作)について説明する。降圧用IGBT54Bのゲート電極に、PWM信号を印加する。降圧用IGBT54がオン状態からオフ状態に移行する時に、リアクトル55に発生する誘導起電力により、蓄電装置51を充電する向きの電流が流れる。
【0037】
電流センサ58が、リアクトル55を流れる電流を測定する。電圧センサ59がDCバスライン53に発生している電圧を測定する。電流センサ58及び電圧センサ59の測定結果が、メインコントローラ30に入力される。
【0038】
内部抵抗測定装置60は、スイッチング素子56を介することなく、蓄電装置51に接続されている。内部抵抗測定装置60は、抵抗素子61、スイッチング素子62、電流センサ63、電圧センサ64、及び処理装置65を含む。抵抗素子61が、スイッチング素子62を介して、蓄電装置51の正極と負極との間に接続されている。電流センサ63が、抵抗素子61を流れる電流を測定する。なお、電流センサ63を省略してもよい。電流センサ63を省略した場合には、抵抗素子61の抵抗値と、電圧センサ64による測定値とに基づいて、抵抗素子61を流れる電流の大きさを算出することができる。電圧センサ64が、蓄電装置51の端子間電圧を測定する。電圧センサ64の測定結果が、メインコントローラ30に入力される。
【0039】
処理装置65は、スタートキー27がオフにされると、スイッチング素子62を
オンにし、スタートキー27がオンにされると、スイッチング素子62をオフにする。さらに、処理装置は、電流センサ63及び電圧センサ64による測定結果に基づいて、蓄電装置51の内部抵抗を算出する。内部抵抗の算出値が、メインコントローラ30に送信される。
【0040】
図4に、内部抵抗測定装置60の処理装置65で実行される処理のフローチャートを示す。ステップS1において、スタートキー27(
図3)がオフにされるまで待機する。スタートキー27がオフにされると、ステップS2において、一定時間待機する。この待機中に、メインコントローラ30が、スイッチング素子56(
図3)をオフにした後、動作を停止する。
【0041】
ステップS3において、電圧センサ64により蓄電装置51(
図3)の開路電圧を測定する。ステップS4において、スイッチング素子62(
図3)をオンにする。スイッチング素子62をオンにすることにより、蓄電装置51(
図3)から抵抗素子61に放電電流が流れる。ステップS5において、電流センサ63により放電電流を測定するとともに、電圧センサ64により蓄電装置51の端子間電圧を測定する。
【0042】
ステップS6において、蓄電装置51の内部抵抗を算出する。内部抵抗は、ステップS3で測定された蓄電装置51の開路電圧、ステップS5で測定された放電電流及び端子間電圧に基づいて、いわゆるIRドロップ法により算出することができる。なお、交流インピーダンス法により、内部抵抗を測定することも可能である。
【0043】
内部抵抗を算出した後、ステップS7においてスイッチング素子62をオフにする。ステップS8において、スタートキー27(
図3)がオンにされるまで待機する。スタートキー27がオンにされると、ステップS6で算出された内部抵抗の算出値を、メインコントローラ30に送信する。その後、ステップS1に戻って、スタートキー27がオフにされるまで待機する。
【0044】
実施例においては、スイッチング素子56(
図3)がオフの期間に、内部抵抗測定装置60が、蓄電装置51の内部抵抗に依存する物理量、具体的には放電電流及び端子間電圧を取得する。このとき、内部抵抗測定装置60の処理装置65は、メインコントローラ30とは独立して動作する。スイッチング素子56がオフの期間に、内部抵抗に依存する物理量が取得されるため、昇降圧コンバータ52の動作に起因するノイズの影響を排除して、高精度に内部抵抗を測定することができる。
【0045】
内部抵抗の測定中、すなわち
図4に示したステップS2からS7までの期間に、スタートキー27(
図3)がオンにされたら、内部抵抗測定装置60は内部抵抗の測定処理を中止する。この場合、処理装置65(
図3)は、予め内部抵抗の最大値として入力されている値、または直近の測定処理で算出された内部抵抗の算出値を、メインコントローラ30(
図3)に送信する。
【0046】
蓄電装置51には、充放電電流を強制的に停止させるための安全スイッチが設けられている。安全スイッチをオフにすると、蓄電装置51の充放電電流、及び入出力端子に出力されている電圧が0になる。さらに、蓄電装置51に異常電流が流れた時に、充放電動作を停止させるためのヒューズが備えられている。安全スイッチ及びヒューズは、安全カバーで覆われている。内部抵抗測定装置60は、安全カバーが開けられたことを検出すると、内部抵抗の測定処理を中止する。これにより、メンテナンスを行う作業者の安全を確保することができる。
【0047】
図5に、実施例によるハイブリッド型作業機械の簡単なブロック図、及び動力(機械的パワー)、電力(電気的パワー)の流れを示す。エンジン11からのエンジン出力Pgoが、メインポンプ14及び電動発電機12に供給される。電動発電機12がアシスト運転されているときは、電動発電機12からメインポンプ14に、電動発電機出力Paoが供
給される。電動発電機12が発電運転されているときは、発電された電力−Paoが蓄電装置51に入力される。ここで、電動発電機12がアシスト運転しているときの出力を正、発電運転しているときの出力を負と定義した。
【0048】
蓄電装置51から出力される電気出力Pboが、電動発電機12及び旋回電動機21に供給される。旋回電動機21は、力行動作を行っているとき、動力Peoを出力する。回生動作を行っているとき、回生電力−Peoを出力し、蓄電装置51に供給する。ここで、力行動作のときの出力を正とし、回生動作のときの出力を負と定義した。動力Peoと回生電力−Peoとをまとめて「旋回電動機出力」という。エンジン11、電動発電機12、及び蓄電装置51に対して、メインポンプ14が機械負荷となり、旋回電動機21が電気負荷となる。
【0049】
メインコントローラ30に、油圧負荷要求出力Phr(機械負荷に要求される動力)及び旋回電動機要求出力Per(電気負荷に要求される電力)が入力される。油圧負荷要求出力Phrは、
図2に示した油圧モータ1A、1B、ブームシリンダ7、アームシリンダ8、及びバケットシリンダ9等の油圧により駆動される油圧機構に必要とされる動力の合計である。例えば、油圧負荷要求出力Phrは、操作者が操作する操作レバーの操作量から算出される。旋回電動機要求出力Perは、
図2に示した旋回電動機が必要とする電力に相当する。例えば、旋回電動機要求出力Perは、操作者が操作する操作レバーの操作量から算出される。
【0050】
メインコントローラ30は、油圧負荷要求出力Phr及び旋回電動機要求出力Perに基づいて、要求されている全パワーを、エンジン出力Pgo、電動発電機出力Pao、及び電気出力Pboに割り当てる。パワーを割り当てる処理を、「エネルギ管理」という。エネルギ管理に、蓄電装置51の充電率SOC、及び蓄電装置51の劣化状態が反映される。蓄電装置51の劣化が進むと内部抵抗が大きくなるため、蓄電装置51の劣化状態は、蓄電装置51の内部抵抗の算出値Riによって推定することができる。
【0051】
典型的には、蓄電装置51の充電率SOCが低い場合、蓄電装置51からの電気出力Pboを小さくするか、または電気出力Pboを負にする(すなわち蓄電装置51を充電する)。また、蓄電装置51の劣化が進んでいる場合、すなわち内部抵抗の算出値Riが大きい場合、蓄電装置51からの電気出力Pboを、劣化が進んでいないときよりも小さい値に制限する。これにより、蓄電装置51の劣化の進行を抑制することができる。
【0052】
蓄電装置51の内部抵抗は、相互に直列接続された複数の蓄電セルの各々の内部抵抗の和に等しくなる。上記実施例においては、複数の蓄電セルの内部抵抗の和が蓄電装置51の内部抵抗として測定される。このため、蓄電セル個々の内部抵抗を測定する場合に比べて、少ない電流で、内部抵抗に起因する大きな電圧降下が観測される。これにより、測定精度に起因して生じる内部抵抗の算出値のばらつきを低減することができる。また、実施例による方法では、蓄電セル間の接触抵抗が加味されて、蓄電装置51の内部抵抗として測定される。このため、実施例による方法で求められた内部抵抗の算出値は、蓄電装置51の実際の充放電動作に合致した値となる。
【0053】
図6〜
図10Bを参照して、エネルギ管理の1つの具体例について説明する。
【0054】
図6に、メインコントローラ30の機能ブロック図を示す。油圧負荷要求出力Phr、旋回電動機要求出力Per、エンジン回転数Nact、及び蓄電装置の電圧Vmが、メインコントローラ30に入力される。
【0055】
エンジン回転数Nactは、
図2に示したエンジン11の実際の回転数に相当する。エ
ンジン11は、作業機械の運転時には常時駆動されており、エンジン回転数Nactが検出されている。
【0056】
蓄電装置の電圧Vmは、
図3に示した蓄電装置51の端子間電圧に相当し、電圧センサ64で測定される。
【0057】
エンジン回転数Nactが、エンジン出力範囲決定ブロック32に入力される。エンジン出力範囲決定ブロック32には、エンジン回転数から、エンジン出力上限値及びエンジン出力下限値を求めるためのマップまたは変換テーブルが記憶されている。エンジン出力範囲決定ブロック32は、入力されたエンジン回転数Nactから、エンジン出力上限値Pgou及びエンジン出力下限値Pgolを算出し、動力分配ブロック35に与える。
【0058】
蓄電装置の電圧Vmが、電気出力決定ブロック33に入力される。電気出力決定ブロック33は、電気出力範囲決定ブロック33A、電気出力目標値決定ブロック33B、及び充電率算出ブロック33Cを含む。充電率算出ブロック33Cは、入力された蓄電装置の電圧Vmから充電率SOCを算出する。算出された充電率SOCは、電気出力範囲決定ブロック33A及び電気出力目標値決定ブロック33Bに与えられる。
【0059】
蓄電装置51に電気二重層キャパシタが用いられる場合には、充電率SOCは、例えばVm
2/V
02と定義することができる。V
0は、蓄電装置51の定格電圧(急速充電及び緩和充電によって充電される最大電圧)を示す。
【0060】
電気出力範囲決定ブロック33Aには、充電率SOCから、電気出力上限値、及び電気出力下限値を算出するためのマップまたは変換テーブルが記憶されている。電気出力目標値決定ブロック33Bには、充電率SOCから電気出力目標値を算出するためのマップまたは変換テーブルが記憶されている。電気出力範囲決定ブロック33Aは、充電率SOCから、第1の電気出力上限値Pbou0、及び第1の電気出力下限値Pbol0を求め、補正ブロック34に与える。電気出力目標値決定ブロック33Bは、入力された充電率SOCから、第1の電気出力目標値Pbot0を求め、補正ブロック34に与える。
【0061】
蓄電装置劣化情報判定ブロック36に、内部抵抗測定装置60(
図3)から、蓄電装置51の内部抵抗の算出値Riが入力される。蓄電装置劣化情報判定ブロック36は、内部抵抗の算出値Riに基づいて、蓄電装置51の劣化状態を判定する。蓄電装置51の劣化状態に応じて、出力制限の要否を決定する。具体的には、内部抵抗の算出値Riが基準値以下のとき、出力制限不要と決定され、内部抵抗の算出値Riが基準値を超えたとき、出力制限要と決定される。出力制限要のとき、「出力制限状態」が運転状態記憶部31に設定され、出力制限不要のとき、「通常運転状態」が運転状態記憶部31に設定される。
【0062】
補正ブロック34は、出力範囲補正ブロック34A及び出力目標値補正ブロック34Bを含む。第1の電気出力上限値Pbou0、及び第1の電気出力下限値Pbol0が、出力範囲補正ブロック34Aに与えられる。出力範囲補正ブロック34Aは、現時点の運転状態に基づいて、第1の電気出力上限値Pbou0、及び第1の電気出力下限値Pbol0を補正することにより、第2の電気出力上限値Pbou1、及び第2の電気出力下限値Pbol1を生成する。第2の電気出力上限値Pbou1、及び第2の電気出力下限値Pbol1は、出力目標値補正ブロック34Bに与えられる。
【0063】
第1の電気出力上限値Pbou0は、蓄電装置51からの放電電力の上限値に相当する。第1の電気出力下限値Pbol0は負であり、その絶対値は、蓄電装置51への充電電力の上限値に相当する。第2の電気出力上限値Pbou1と第2の電気出力下限値Pbol1とにより、蓄電装置51の入出力電力の適正範囲が定義される。
【0064】
例えば、現時点の運転状態が通常運転状態である場合には、Pbou1=Pbou0、Pbol1=Pbol0である。すなわち、出力は制限されない。現時点の運転状態が出力制限状態である場合には、Pbou1<Pbou0、Pbol1>Pbol0である。不等式Pbou1<Pbou0は、蓄電装置51からの放電電力の上限値を、通常運転状態のときの上限値よりも小さくすることを意味する。不等式Pbol1>Pbol0は、蓄電装置51への充電電力の上限値を、通常運転状態のときの上限値よりも小さくすることを意味する。
【0065】
出力目標値補正ブロック34Bは、第2の電気出力上限値Pbou1、及び第2の電気出力下限値Pbol1に基づいて、第1の電気出力目標値Pbot0を補正して、第2の電気出力目標値Pbot1を生成する。例えば、第1の電気出力目標値Pbot0が、第2の電気出力上限値Pbou1と第2の電気出力下限値Pbol1とで定義される範囲から外れている場合には、第2の電気出力目標値Pbot1が、第2の電気出力上限値Pbou1と第2の電気出力下限値Pbol1とで定義される範囲内に納まるように、第2の電気出力目標値Pbot1を生成する。第2の電気出力上限値Pbou1、第2の電気出力下限値Pbol1、及び第2の電気出力目標値Pbot1が、動力分配ブロック35に入力される。
【0066】
動力分配ブロック35は、油圧負荷要求出力Phr、旋回電動機要求出力Per、エンジン出力上限値Pgou、エンジン出力下限値Pgol、第2の電気出力上限値Pbou1、第2の電気出力下限値Pbol1、及び第2の電気出力目標値Pbot1に基づいて、実際の油圧負荷出力Pho、電動発電機出力Pao、及び旋回電動機出力Peoを決定する。このとき、エンジン出力Pgo(
図5)が、エンジン出力上限値Pgouとエンジン出力下限値Pgolとの範囲内になり、電気出力Pbo(
図5)が、第2の電気出力上限値Pbou1と第2の電気出力下限値Pbol1との範囲内になるように、各出力が決定される。
【0067】
例えば、通常運転状態のときには、蓄電装置51の入出力電力が、補正前の第1の電気出力上限値Pbou0と第1の電気出力下限値Pbol0とで定義される範囲内に納まるように昇降圧コンバータ52(
図3)が制御される。出力制限状態のときには、蓄電装置51の入出力電力が、補正後の第2の電気出力上限値Pbou1と第2の電気出力下限値Pbol1とで定義される範囲内に納まるように昇降圧コンバータ52(
図3)が制御される。
【0068】
メインコントローラ30は、これらの決定された出力に基づいて、
図2に示したエンジン11、インバータ18、20、及び
図3に示した昇降圧コンバータ52を制御する。
【0069】
運転状態が「出力制限状態」であるとき、電気出力上限値が「通常運転状態」のときよりも小さくなり、電気出力下限値の絶対値が、「通常運転状態」のときよりも小さくなる。このため、「出力制限状態」のときには、蓄電装置51の充放電電流の最大値が、「通常運転状態」のときの充放電電流の最大値に比べて小さくなる。このように、蓄電装置51の内部抵抗の算出値Riを、昇降圧コンバータ52の充放電動作の制御に反映させることにより、蓄電装置51の劣化を抑制することができる。
【0070】
次に、
図7〜
図10Bを参照して、動力分配ブロック35(
図6)の処理の一例について説明する。
【0071】
図7は、旋回電動機要求出力Perと旋回電動機出力Peoとの関係を示す。旋回電動機要求出力Perが、エンジン出力上限値Pgouと第2の電気出力上限値Pbou1と
の合計値Peomaxよりも大きい場合、旋回電動機出力Peoを、この合計値Peomaxに等しくする。すなわち、
Peo=Pgou+Pbou
とする。これは、旋回電動機出力Peoが、エンジン11と蓄電装置51とから取り出せる最大パワーを超えないことを意味する。
【0072】
旋回電動機要求出力Perが、エンジン出力下限値Pgolから油圧負荷要求出力Phrと第2の電気出力下限値Pbol1の絶対値を減じた値Peominよりも小さい場合には、旋回電動機出力Peoを、この値Peominに等しくする。すなわち、
Peo=Pgol−Phr+Pbomin
とする。Pbominは負の値であるため、上述の式において、Pbominに付された演算子は「+」(プラス)である。この式は、エンジン11から取り出す動力が最も小さくなるようにエンジン11を動作させた状態で、旋回電動機21の発電電力が、油圧負荷要求出力Phrと蓄電装置51に供給し得る電力の上限値との合計値を超えないことを意味する。
【0073】
旋回電動機要求出力Perが、PeomaxとPeominとの間である場合、旋回電動機出力Peoを、旋回電動機要求出力Perに等しくする。すなわち、
Peo=Per
とする。この式は、旋回電動機21に対して、要求通りの出力が確保されることを意味する。
【0074】
図8は、油圧負荷要求出力Phrと油圧負荷出力Phoとの関係を示す。油圧負荷要求出力Phrが、エンジン出力上限値Pgouと第2の電気出力上限値Pbou1との合計値から、旋回電動機出力Peoを減じた値Phomaxを超えた場合、油圧負荷出力Phoを、この値Phomaxに等しくする。すなわち、
Pho=Pgou+Pbou1−Peo
とする。これは、油圧負荷出力Phoが、エンジン11と蓄電装置51とから取り出せる最大パワーから、既に決定された旋回電動機出力Peo分のパワーを引いた残りのパワーを超えないことを意味する。
【0075】
油圧負荷要求出力Phrが、Phomax以下である場合、油圧負荷出力Phoを、油圧負荷要求出力Phrと等しくする。すなわち、
Pho=Phr
とする。これは、油圧負荷に対して、要求どおりの出力が確保されることを意味する。
【0076】
図9A及び
図9Bは、第2の電気出力目標値Pbot1と電気出力Pboとの関係を示す。
図7に示したグラフに基づいて決定された旋回電動機出力Peoと、
図8に示したグラフに基づいて決定された油圧負荷出力Phoとの合計値から、エンジン出力下限値Pgolを減じた値をPbomax1とする。旋回電動機出力Peoと油圧負荷出力Phoとの合計値から、エンジン出力上限値Pgouを減じた値をPbomin1とする。
【0077】
図9Aは、Pbomax1が、第2の電気出力上限値Pbou1よりも小さく、かつPbomin1が、第2の電気出力下限値Pbol1よりも大きい場合を示す。第2の電気出力目標値Pbot1が、Pbomax1を超えた場合、電気出力Pboを、Pbomax1と等しくする。これは、蓄電装置51から取り出すことができる電力が十分大きいため、エンジン11をエンジン出力下限値Pgolで動作させ、蓄電装置51から余分な電力は取り出さないことを意味する。第2の電気出力目標値Pbot1が、Pbomin1を下回った場合、電気出力Pboを、Pbomax1と等しくする。これは、蓄電装置51の充電率が十分ではないため、エンジン11をエンジン出力上限値Pgouで動作させ
、蓄電装置51に電力を供給することを意味する。
【0078】
第2の電気出力目標値Pbot1が、Pbomax1とPbomin1との間の場合には、電気出力Pboを、第2の電気出力目標値Pbot1と等しくする。これにより、蓄電装置51の充電率を、充電率の目標値に近づけることができる。
【0079】
図9Bは、Pbomax1が、第2の電気出力上限値Pbou1よりも大きく、かつPbomin1が、第2の電気出力下限値Pbol1よりも小さい場合を示す。この場合には、電気出力Pboが、第2の電気出力上限値Pbou1と第2の電気出力下限値Pbol1との間(適正範囲)に収まるように、電気出力Pboの上下限値が制限される。
【0080】
このように、電気出力Pboの上限は、Pbou1とPbomax1との小さい方の値で制限され、下限は、Pbol1とPbomin1との大きい方の値で制限される。
【0081】
図10A及び
図10Bは、電動発電機出力Paoの決定方法を示す線図である。
図5から、
Pbo=Pao+Peo
が成立することがわかる。電気出力Pbo及び旋回電動機出力Peoが決定されたら、上述の式から電動発電機出力Paoが算出される。
【0082】
図10Aに示すように、電気出力Pboが旋回電動機出力Peoよりも大きい場合、余剰電力で電動発電機12をアシスト動作させ、電動発電機出力Paoを出力する。
図10Bに示すように、電気出力Pboが旋回電動機出力Peoよりも小さい場合、不足電力を供給するために電動発電機12を発電動作させ、電力−Paoを出力する。
【0083】
図11に、他の構成例によるメインコントローラ30の電動発電機出力Paoの決定に関わる機能ブロック図を示す。電気出力決定ブロック33、補正ブロック34、及び蓄電装置劣化情報判定ブロック36の機能は、
図6に示した対応するブロックの機能と同一である。
【0084】
図11に示した例では、電動発電機出力Paoの決定のために、旋回電動機要求出力Per、蓄電装置の電圧Vm、及び内部抵抗Riが用いられ、油圧負荷要求出力Phr及びエンジン回転数Nactは用いられない。
【0085】
電動発電機出力決定ブロック38が、旋回電動機要求出力Per、第2の電気出力上限値Pbou1、第2の電気出力下限値Pbol1、及び第2の電気出力目標値Pbot1に基づいて、電動発電機出力Paoを決定する。
【0086】
次に、電動発電機出力決定ブロック38の処理の一例について説明する。例えば、旋回電動機要求出力Perが大きい場合(高速の旋回操作が行われた場合)、旋回電動機21に十分な電力を供給するために、電動発電機12の発電運転を行う。蓄電装置51の内部抵抗Riが基準値を超えている場合、運転状態記憶部31が「出力制限状態」に設定されているため、第2の電気出力上限値Pbou1が、通常運転状態のときの出力上限値よりも小さくなる。電動発電機出力決定ブロック38は、蓄電装置51から出力される電力の不足分を補うために、電動発電機出力Paoを負の大きな値にする(言い換えると、発電される電力を大きくする。)このとき、例えば、電動発電機12で発電された電力が、蓄電装置51(
図3)に蓄えられることなく、平滑キャパシタ57を含むDCバスライン53(
図3)を経由して旋回電動機21に供給される。このように、蓄電装置51の劣化によって蓄電装置51から十分な電力が取り出せない状況のときにも、電動発電機12から旋回電動機21に電力を供給することにより、旋回操作に応じた速度で旋回を行うことが
できる。
【0087】
出力制限状態のときに、第2の電気出力下限値Pbol1の絶対値が通常運転状態のときの値より小さくなる。すなわち、充電電流の上限値が小さくなる。蓄電装置51を充電する場合、電動発電機出力決定ブロック38は、第2の電気出力下限値Pbol1の絶対値が小さいことを反映して、電動発電機出力Paoを負の小さな値にする(言い換えると、発電される電力を小さくする。)。このため、通常運転状態のときに比べて小さな充電電流で蓄電装置51が充電される。これにより、蓄電装置51の劣化の進行を抑制することができる。
【0088】
上記実施例では、作業機械の例としてショベルを取り上げたが、上記実施例による蓄電装置の内部抵抗測定技術は、他の作業機械に適用することも可能である。例えば、リフティングマグネット型作業機械等に適用することも可能である。
【0089】
以上実施例に沿って本発明を説明したが、本発明はこれらに制限されるものではない。例えば、種々の変更、改良、組み合わせ等が可能なことは当業者に自明であろう。