【実施例】
【0052】
実施例に基づいて、本発明を具体的に説明するが、本発明は、これらのみに限定されるものではない。
【0053】
[実施例1]
チタンテトライソプロポキシド142.1g(0.5mol)に酢酸120g(2mol)を加え15分撹拌し、水を550g加えた。この分散液のpHは2.5であった。半透明の沈殿が大量に発生したが、60分間撹拌した後に加熱を行ったところ60℃で沈殿がすべて溶解した。
【0054】
その後、常圧(0.1MPa)で80℃で5時間撹拌した後、反応液に水を加え、合計800gに調製した後、超音波をかけたところ、無機強酸を使用せずとも、半透明の均一なチタニア分散液が得られた。この分散液をスピンコートによりガラスに塗布し、乾燥したところ、透明な塗膜が得られた。
【0055】
この分散液にアンモニア水を加え、pH6にすることにより沈殿させ、遠心分離によりチタニアナノ粒子を回収し、平均粒子径をBET比表面積(300m
2/g)から計算により算出したところ、5nmであった。
【0056】
またX線回折で結晶性を解析したところ、アナターゼ100%であった。
【0057】
[実施例2]
実施例1で得たチタニア分散液200gをチタン製オートクレーブに入れ、さらに9MPaで300℃の熱風炉内で12時間反応を行った。
【0058】
得られた反応液は白い沈殿が生じていたが、超音波分散を行うことにより、無機強酸を使用せずとも均一に分散され、240時間後も沈殿が生じなかった。この分散液をガラスに塗布し、乾燥したところ、半透明の塗膜が得られた。
【0059】
この分散液を遠心分離することによりチタニアナノ粒子を回収し、平均粒子径をBET比表面積(60m
2/g)から計算により算出したところ、25nmであった。
【0060】
またX線回折で結晶性を解析したところ、アナターゼ100%であった。
【0061】
[実施例3]
酢酸60g(1mol)と水600gの混合物に、チタンテトライソプロポキシド142.1g(0.5mol)をゆっくり滴下しながら加えた。この分散液のpHは2.6であった。その後、60分撹拌したところ、白色の沈殿が大量に発生した。その後、撹拌しながら常圧(0.1MPa)で60℃で3時間、80℃で5時間加熱を行ったところ、白濁した液が得られた。
【0062】
この液に水を加え、800gに調製した後、超音波分散を行うことにより、無機強酸を使用せずとも均一なチタニア分散液が得られ、240時間後も沈殿が生じなかった。この分散液をガラスに塗布し、乾燥したところ、半透明の塗膜が得られた。
【0063】
この分散液200gをチタン製オートクレーブに入れ、さらに9MPaで300℃の熱風炉内で12時間反応を行った。
【0064】
得られた反応液は白い沈殿が生じていたが、超音波分散を行うことにより、無機強酸を使用せずとも均一なチタニア分散液が得られ、240時間後も沈殿が生じなかった。この分散液をガラスに塗布し、乾燥したところ、半透明の塗膜が得られた。
【0065】
この分散液を遠心分離することによりチタニアナノ粒子を回収し、平均粒子径をBET比表面積(70m
2/g)から計算により算出したところ、22nmであった。
【0066】
[実施例4]
熱風炉内での300℃の反応時間を12時間ではなく60時間に変える以外は実施例2と同様に実験を行った。
【0067】
得られたチタニア分散液は白い沈殿が生じていたが、超音波分散を行うことにより均一に分散され、240時間後も沈殿が生じなかった。このチタニア分散液をガラスに塗布し、乾燥したところ、半透明の塗膜が得られた。
【0068】
この分散液を遠心分離することによりチタニアナノ粒子を回収し、平均粒子径をBET比表面積(38m
2/g)から計算により算出したところ、40nmであった。
【0069】
[実施例5]
熱風炉内での反応温度を300℃ではなく250℃に変える以外は実施例2と同様に実験を行った。
【0070】
得られたチタニア分散液は白い沈殿が生じていたが、超音波分散を行うことにより均一に分散され、240時間後も沈殿が生じなかった。このチタニア分散液をガラスに塗布し、乾燥したところ、透明な塗膜が得られた。
【0071】
この分散液を遠心分離することによりチタニアナノ粒子を回収し、平均粒子径をBET比表面積(90m
2/g)から計算により算出したところ、17nmであった。
【0072】
[実施例6]
熱風炉内での反応温度を300℃ではなく反応温度を250℃に変え、反応時間を12時間ではなく60時間に変える以外は実施例2と同様に実験を行った。
【0073】
得られたチタニア分散液は白い沈殿が生じていたが、超音波分散を行うことにより均一に分散され、240時間後も沈殿が生じなかった。このチタニア分散液をガラスに塗布し、乾燥したところ、半透明な塗膜が得られた。
【0074】
この分散液を遠心分離することによりチタニアナノ粒子を回収し、平均粒子径をBET比表面積(65m
2/g)から計算により算出したところ、24nmであった。
【0075】
[実施例7]
実施例5で得たチタニア分散液を遠心分離することによりチタニアナノ粒子を回収し、乾燥させないように気をつけながら、エタノール洗浄、超音波分散及び遠心分離を3回繰り返した。
【0076】
得られたチタニアナノ粒子10g分(ただし、エタノール25gで湿潤している)にエタノール100g、テルピネオール40g及びエチルセルロース(10cp)5gを加え、3時間撹拌し、超音波分散を行ったところ、エタノール及びテルピネオールに分散した均一なチタニア分散液が得られ、240時間後も沈殿が生じなかった。このチタニア分散液をガラスに塗布し、乾燥したところ、透明な塗膜が得られた。
【0077】
[実施例8]
四塩化チタン水溶液にアンモニア水を加え、pH10に調整することにより、含水水酸化チタンを得た(チタニア換算で16wt%)。
【0078】
この含水水酸化チタン100g(チタニア0.2mol相当)に酢酸60g(1mol)と水160gを加えた。この分散液のpHは2.4であった。60分間撹拌した後に常圧(0.1MPa)で80℃で5時間加熱した後、水を加え320gに調製した。
【0079】
この液200gをチタン製オートクレーブに入れ、9MPaで300℃で12時間反応を行った。
【0080】
得られた反応液は白い沈殿が生じていたが、超音波分散を行うことにより、無機強酸を使用せずとも均一に分散され、48時間後も沈殿が生じなかった。この分散液をガラスに塗布し、乾燥したところ、半透明の塗膜が得られた。
【0081】
この分散液を遠心分離することによりチタニアナノ粒子を回収し、平均粒子径をBET比表面積(42m
2/g)から計算により算出したところ、37nmであった。
【0082】
このチタニアナノ粒子10g分(ただし、エタノール20gで湿潤している)にエタノール100g、テルピネオール40g、エチルセルロース(10cp)2.5g、エチルセルロース(50cp)2.5gを加え、3時間撹拌し、超音波分散を行ったところ、上記実施例1〜8ほどではないものの、エタノール及びテルピネオールに分散した均一な分散液が得られ、48時間後も沈殿が生じなかった。このチタニア分散液をガラスに塗布し、乾燥したところ、半透明な塗膜が得られた。
【0083】
この塗膜を500℃で焼成を行うことによって、半透明のチタニアナノ粒子のみからなる塗膜が得られた。
【0084】
[実施例9]
実施例1で得たチタニア分散液200gを水800gで希釈し、1000gとした。半透明で均一な分散液が得られた。
【0085】
流通式超臨界反応装置を用いて、この分散液に対して、体積で3倍量の450℃超臨界水を金属チューブ内で混合し、400℃で約60秒保持した。
【0086】
反応装置から排出された反応液は既に半透明の分散液(チタニア分散液)となっていた。この分散液をガラスに塗布し、乾燥したところ、半透明な塗膜が得られた。
【0087】
[比較例1]
pH0.7の硝酸水溶液650gを撹拌しながら、チタンテトライソプロポキシド142.1g(0.5mol)を加えた。この分散液のpHは1.0であった。1時間撹拌したのち、常圧(0.1MPa)で80℃に昇温して8時間保持し、半透明のチタニア分散液を合成した。最終重量は800gに調整した。
【0088】
この分散液をガラス基板上にスピンコートにより塗布したが、乾燥したところチタニアが基板から剥離・脱落した。
【0089】
得られた分散液を乾燥し、ナノ粒子の平均粒子径をBET比表面積(220m
2/g)から計算により算出したところ、7nmであった。
【0090】
また、原料のチタニア分散液を48時間後に観察したところ、沈殿が発生し、ゲル化が進行して高粘度化していた。
【0091】
[比較例2]
比較例1で得られたチタニア分散液200gをチタン製圧力容器に封入し、4MPaで250℃の熱風炉内で12時間反応を行い、チタニアナノ粒子を合成した。
【0092】
得られた反応液は白い沈殿が生じており、超音波分散を行ったが、1時間後沈殿が生じ不均一な状態になっていた。
【0093】
また、得られたナノ粒子の平均粒子径をBET比表面積(126m
2/g)から計算により算出したところ、12nmであった。
【0094】
[比較例3]
チタンテトライソプロポキシド142.1g(0.5mol)に酢酸を30g(0.5mol)加え15分撹拌し、水を630g加えた。この分散液のpHは3.0であった。半透明の沈殿が大量に発生したが、65%硝酸を4ml加え、60分間撹拌しながら加熱を行ったところ50℃で沈殿がすべて溶解した。
【0095】
その後、常圧(0.1MPa)で80℃で5時間撹拌した液に水を加え、合計800gに調製した後、超音波をかけたところ、半透明の均一なチタニア分散液が得られたが、ガラスに塗布し、乾燥したところ、塗膜にクラックが生じ、ガラスから脱落した。
【0096】
このチタニア分散液にアンモニア水を加え、pH6にすることにより沈殿させ、遠心分離によりチタニアナノ粒子を回収し、平均粒子径をBET比表面積(280m
2/g)から計算により算出したところ、5.5nmであった。
【0097】
その後、このチタニア分散液200gをチタン製圧力容器に封入し、4MPaで250℃の熱風炉内で12時間反応を行い、チタニアナノ粒子を合成した。
【0098】
得られた反応液は白い沈殿が生じており、超音波分散を行ったが、1時間後沈殿が生じ不均一な状態になっていた。
【0099】
この分散液を遠心分離することによりチタニアナノ粒子を回収し、得られたチタニアナノ粒子の平均粒子径をBET比表面積(128m
2/g)から計算により算出したところ、12nmであった。
【0100】
[比較例4]
熱風炉内での反応時間を12時間ではなく24時間に変える以外は比較例3と同様に実験を行った。
【0101】
得られた反応液は白い沈殿が生じており、超音波分散を行ったが、1時間後沈殿が生じ不均一な状態になっていた。
【0102】
この分散液を遠心分離することによりチタニアナノ粒子を回収し、得られたナノ粒子の平均粒子径をBET比表面積(120m
2/g)から計算により算出したところ、13nmであり、反応時間を長くすることにより粒径を大きくすることができなかった。
【0103】
[比較例5]
熱風炉内での反応温度を250℃ではなく300℃に変える以外は比較例3と同様に実験を行った。
【0104】
得られた反応液は白い沈殿が生じており、超音波分散を行ったが、1時間後沈殿が生じ不均一な状態になっていた。
【0105】
この分散液を遠心分離することによりチタニアナノ粒子を回収し、得られたナノ粒子の平均粒子径をBET比表面積(96m
2/g)から計算により算出したところ、16nmであり、反応温度を高くすることにより粒径を飛躍的に大きくすることができなかった。
【0106】
[比較例6]
比較例3で得たチタニアナノ粒子10g分(ただし、エタノール45gで湿潤している)にエタノール100g、テルピネオール40g、エチルセルロース(10cp)5gを加え、3時間撹拌し、超音波分散を行った。
【0107】
この分散液をガラス基板上に塗布し、500℃で焼成を行ったところ、クラックが生じ、チタニア膜がガラスから脱落した。
【0108】
[比較例7]
チタニアナノ粒子ST−21:10g(石原産業(株)製、比表面積50m
2/g、31nm相当)にエタノール100g、テルピネオール40g、エチルセルロース(10cp)2.5g、エチルセルロース(50cp)2.5gを加え、3時間撹拌し、超音波分散を行った。
【0109】
この分散液をガラス基板上に塗布し、500℃で焼成を行ったところ、細かいクラックが生じており、また、チタニア膜が完全に不透明であった。
【0110】
[比較例8]
チタニアナノ粒子ST−21:5gに対して、水を95g加え、超音波分散を加えた。しかしながら、すぐに沈殿が生じ、分散液を得ることができなかった。
【0111】
さらに、65%硝酸を1ml加えても同様に沈殿が生じ、均一な分散液を得ることができなかった。
【0112】
参考までに、実施例2の反応液(超音波分散240時間経過後)及び比較例3の反応液(超音波分散1時間経過後)の状態を
図1に示す。