(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6245861
(24)【登録日】2017年11月24日
(45)【発行日】2017年12月13日
(54)【発明の名称】水・脂肪の分離を実行する磁気共鳴画像化方法および装置
(51)【国際特許分類】
A61B 5/055 20060101AFI20171204BHJP
A61B 5/05 20060101ALI20171204BHJP
【FI】
A61B5/05 376
A61B5/05 311
A61B5/05ZDM
【請求項の数】10
【全頁数】14
(21)【出願番号】特願2013-135001(P2013-135001)
(22)【出願日】2013年6月27日
(65)【公開番号】特開2014-8409(P2014-8409A)
(43)【公開日】2014年1月20日
【審査請求日】2016年2月22日
(31)【優先権主張番号】201210218752.6
(32)【優先日】2012年6月28日
(33)【優先権主張国】CN
(73)【特許権者】
【識別番号】390039413
【氏名又は名称】シーメンス アクチエンゲゼルシヤフト
【氏名又は名称原語表記】Siemens Aktiengesellschaft
(74)【代理人】
【識別番号】100075166
【弁理士】
【氏名又は名称】山口 巖
(74)【代理人】
【識別番号】100133167
【弁理士】
【氏名又は名称】山本 浩
(72)【発明者】
【氏名】ドーァ ホーァ ウォーン
【審査官】
荒井 隆一
(56)【参考文献】
【文献】
米国特許出願公開第2011/0274331(US,A1)
【文献】
米国特許出願公開第2011/0267054(US,A1)
【文献】
米国特許出願公開第2005/0033153(US,A1)
【文献】
特開2002−052005(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61B 5/055
G01R 33/20−33/64
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
画像化すべき対象物に多層の走査を行い、ターボスピンエコーBLADEアーチファクト補正シーケンスを使用して、同相画像のための元データおよび逆相画像のための元データを取得するステップと、
同相画像のための元データに基づいて同相画像を再構成し、同相画像のための元データおよび逆相画像のための元データに基づいて逆相画像を再構成するステップと、
再構成された同相画像および再構成された逆相画像に基づいて、水画像および脂肪画像を計算するステップであって、複数の2次元同相画像および逆相画像に対応する空間情報に基づいて、複数の2次元同相画像および逆相画像を、1つの3次元同相画像および1つの3次元逆相画像を形成するように配置するステップと、得られた3次元同相画像および3次元逆相画像を位相補正するステップと、位相補正された同相画像および逆相画像に基づいて水画像および脂肪画像を計算するステップとを含むステップと、
を含む水・脂肪の分離を実行する磁気共鳴画像化方法。
【請求項2】
同相画像のための元データに基づいて同相画像を再構成するステップが、
同相画像のための元データのストリップに位相補正、回転補正、平行移動補正、および高速フーリエ変換を施して同相画像を得るステップを含む
ことを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項3】
同相画像のための元データのストリップに位相補正を施すステップが、
同相画像のための元データのストリップにウインドウ操作を施して第1の処理結果を得るステップと、
第1の処理結果に2次元高速フーリエ変換を施して同相画像のウインドウデータを得るステップと、
同相画像のための元データのストリップに2次元高速フーリエ変換を施して第2の処理結果を得るステップと、
第2の処理結果から同相画像のウインドウデータの位相を取り除いて第3の処理結果を得るステップと、
第3の処理結果に2次元逆高速フーリエ変換を施して補正結果を得るステップと
を含むことを特徴とする請求項2に記載の方法。
【請求項4】
同相画像のための元データおよび逆相画像のための元データに基づいて逆相画像を再構成するステップが、
逆相画像のための元データのストリップに位相補正、回転補正、平行移動補正、および高速フーリエ変換を施して逆相画像を得るステップを含む
ことを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項5】
逆相画像のための元データのストリップに位相補正を施すステップが、
逆相画像のための元データのストリップに2次元高速フーリエ変換を施して第1の処理結果を得るステップと、
逆相画像のための元データのストリップに対応する同相画像のための元データのストリップにウインドウ操作を施して第2の処理結果を得るステップと、
第2の処理結果に2次元高速フーリエ変換を施して同相画像のための元データのストリップのウインドウデータを得るステップと、
第1の処理結果から同相画像のための元データのストリップのウインドウデータの位相を取り除いて第3の処理結果を得るステップと、
第3の処理結果に2次元逆高速フーリエ変換を施して補正結果を得るステップと
を含むことを特徴とする請求項4に記載の方法。
【請求項6】
画像化すべき対象物に多層の走査を行い、ターボスピンエコーBLADEアーチファクト補正シーケンスを使用して同相画像のための元データおよび逆相画像のための元データを取得する取得ユニット(1)と、
同相画像のための元データに基づいて同相画像を再構成する第1の再構成ユニット(2)と、
同相画像のための元データおよび逆相画像のための元データに基づいて逆相画像を再構成する第2の再構成ユニット(3)と、
再構成された同相画像および再構成された逆相画像に基づいて水画像および脂肪画像を別々に計算する計算ユニット(4)であって、複数の2次元同相画像および逆相画像に対応する空間情報に基づいて、複数の2次元同相画像および逆相画像を、1つの3次元同相画像および1つの3次元逆相画像を形成するように配置し、得られた3次元同相画像および3次元逆相画像を位相補正し、位相補正された同相画像および逆相画像に基づいて水画像および脂肪画像を計算する計算ユニット(4)と
を備える水・脂肪の分離を実行する磁気共鳴画像化装置。
【請求項7】
第1の再構成ユニット(2)が、
同相画像のための元データのストリップに位相補正を施す第1の位相補正サブユニット(21)と、
同相画像のための元データの位相補正されたストリップに回転補正を施す第1の回転補正サブユニット(22)と、
同相画像のための元データの回転補正されたストリップに平行移動補正を施す第1の平行移動補正サブユニット(23)と、
同相画像のための元データの平行移動補正されたストリップに高速フーリエ変換を施す第1の変換サブユニット(24)と
を備えることを特徴とする請求項6に記載の装置。
【請求項8】
第1の位相補正サブユニット(21)が、
同相画像のための元データのストリップにウインドウ操作を施して第1の処理結果を得る第1のモジュール(211)と、
第1の処理結果に2次元高速フーリエ変換を施して同相画像のウインドウデータを得る第2のモジュール(212)と、
同相画像のための元データのストリップに2次元高速フーリエ変換を施して第2の処理結果を得る第3のモジュール(213)と、
第2の処理結果から同相画像のウインドウデータの位相を取り除いて第3の処理結果を得る第4のモジュール(214)と、
第3の処理結果に2次元逆高速フーリエ変換を施して補正結果を得る第5のモジュール(215)と
を備えることを特徴とする請求項7に記載の装置。
【請求項9】
第2の再構成ユニット(3)が、
同相画像のための元データのストリップに位相補正を施す第2の位相補正サブユニット(31)と、
同相画像のための元データの位相補正されたストリップに回転補正を施す第2の回転補正サブユニット(32)と、
同相画像のための元データの回転補正されたストリップに平行移動補正を施す第2の平行移動補正サブユニット(33)と、
同相画像のための元データの平行移動補正されたストリップに高速フーリエ変換を施す第2の変換サブユニット(34)と
を備えることを特徴とする請求項6に記載の装置。
【請求項10】
第2の位相補正サブユニット(31)が、
逆相画像のための元データのストリップに2次元高速フーリエ変換を施して第1の処理結果を得る第6のモジュール(311)と、
逆相画像のための元データのストリップに対応する同相画像のための元データのストリップにウインドウ操作を施して第2の処理結果を得る第7のモジュール(312)と、
第2の処理結果に2次元高速フーリエ変換を施して、同相画像のための元データの対応するストリップのウインドウデータを得る第8のモジュール(313)と、
第1の処理結果から同相画像のための元データのストリップのウインドウデータの位相を取り除いて第3の処理結果を得る第9のモジュール(314)と、
第3の処理結果に2次元逆高速フーリエ変換を施して補正結果を得る第10のモジュール(315)と
を備えることを特徴とする請求項9に記載の装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、磁気共鳴画像化の技術分野に関し、とくには水・脂肪の分離を実行する磁気共鳴画像化方法および装置に関する。
【背景技術】
【0002】
磁気共鳴画像化(MRI)は、画像化を実行するために磁気共鳴の現象を使用する技術である。磁気共鳴の現象の原理は、主として、人間の体の至る所に存在する水素原子核などのプロトンを1つだけ含んでいる原子核において、プロトンがスピン運動を有しており、したがって小さな磁石に似ていることを含む。さらに、これらの小さな磁石のスピン軸が、明確な規則的パターンを有さず、外部磁界が施してられた場合に、これらの小さな磁石の配置が、外部磁界の磁力線に従って変化し、具体的には外部磁界の磁力線に対して平行および反平行な2つの方向に変化する。外部磁界の磁力線に平行な方向が、正の縦軸として知られる一方で、外部磁界の磁力線に反平行な方向が、負の縦軸として知られる。原子核は、方向および大きさの両方を有する縦方向の磁化成分だけを有する。特定の周波数の高周波(RF)パルスが、外部磁界において原子核を励起させるために使用され、結果として、これらの原子核のスピン軸が正の縦軸または負の縦軸から外れ、共鳴を生じさせる。これが、磁気共鳴の現象である。ひとたび上述の原子核のスピン軸が、正の縦軸または負の縦軸から外れると、原子核は、横方向の磁化成分を有する。
【0003】
RFパルスの送信が停止された後で、励起した原子核は、吸収したエネルギを電磁波のかたちで徐々に放出するエコー信号を放射し、相およびエネルギレベルがすべて励起前の状態へと戻る。原子核によって放出されたエコー信号に空間エンコーディングなどのさらなる処理を施すことによって、画像を再構成することができる。
【0004】
人間の体内の脂肪の水素原子核および水の水素原子核は、異なる分子環境にあるため、励起が同じRFパルスを使用して実行された場合に異なる共鳴周波数を有する。信号が種々のエコー時間において集められる場合に、脂肪組織および水は、異なる位相および信号強度を示す。
【0005】
ディクソン(Dixon)法が、MRIにおいて純粋な水プロトンの画像を生成するために使用される。その基本原理は、水プロトンおよび脂肪プロトンの同相および逆相の2種類のエコー信号が別々に収集され、異なる位相を有するこれらの2種類の信号に、各々が純粋な水プロトン画像および純粋な脂肪プロトン画像を生成するように操作が施してられ、水プロトン画像における脂肪の抑制という目的が達成されるというものである。1点ディクソン法、2点ディクソン法、3点ディクソン法、および多点ディクソン法など、ディクソン法の多数の形態が存在する。
【0006】
例えばデカルト(Cartesian)軌道取得ならびに放射状またはらせん状軌道取得など、Dixon法と組み合わせられる多数のk空間データ取得法がこの技術分野に存在する。既存のデカルト軌道取得法は、単純であって時間を節約するが、剛体運動および脈動などの運動の影響をきわめて受けやすいことが、研究を通じて明らかになるかもしれない。他方で、放射状またはらせん状軌道取得法は、運動アーチファクトを再構成画像における不明瞭さに変換し、複雑な演算を必要とし、きわめて時間がかかる。このように、上述の2種類の方法のどちらも、剛体運動のアーチファクトを取り除くことができない。
【0007】
さらに、既存の3点ディクソン法は、水画像および脂肪画像を計算するために位相アンラッピング技術を使用し、位相アンラッピングの本質的な不安定性ゆえに、計算される水画像および脂肪画像が入れ替わる可能性がある。すなわち、画像が理論的に水画像と考えられる場合に、実際に計算された画像が脂肪画像である可能性があり、画像が理論的に脂肪画像と考えられる場合に、実際に計算された画像が水画像である可能性がある。したがって、画像化すべき対象物について多層の走査が行われる場合に、計算された水画像および脂肪画像の入れ替わりが、走査層の一部において生じる可能性があり、これが合成される3次元の水画像および脂肪画像における誤差につながる。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明の実施形態は、画像化の際の運動アーチファクトの影響を受けにくくし、信号対雑音比を改善するために、水・脂肪の分離を実行する磁気共鳴画像化方法を提案する。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明の実施形態は、
ターボスピンエコーBLADE(TSE BLADE)アーチファクト補正シーケンスを使用して、同相画像のための元データおよび逆相画像のための元データを取得するステップと、
同相画像のための元データに基づいて同相画像を再構成し、同相画像のための元データおよび逆相画像のための元データに基づいて逆相画像を再構成するステップと、
再構成された同相画像および再構成された逆相画像に基づいて、水画像および脂肪画像を計算するステップと
を含む水・脂肪の分離を実行する磁気共鳴画像化方法を提供する。
【0010】
また、本発明の実施形態は、
ターボスピンエコーBLADE(TSE BLADE)アーチファクト補正シーケンスを使用して同相画像のための元データおよび逆相画像のための元データを取得する取得ユニットと、
同相画像のための元データに基づいて同相画像を再構成する第1の再構成ユニットと、
同相画像のための元データおよび逆相画像のための元データに基づいて逆相画像を再構成する第2の再構成ユニットと、
再構成された同相画像および逆相画像に基づいて、水画像および脂肪画像を別々に計算する計算ユニットと
を備える水・脂肪の分離を実行する磁気共鳴画像化装置も提供する。
【0011】
上述の技術的解決策から、k空間データを取得するためにTSE BLADEシーケンスを使用することによって、本発明の実施形態によっても提供される水・脂肪の分離を実行する磁気共鳴画像化方法が、剛体運動および脈動の影響を受けにくく、したがって画像の信号対雑音比を改善しつつ、運動アーチファクトに左右されにくくなるという点で、BLADEシーケンスの利点を受け継ぐことを見て取ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【
図1】本発明の一実施形態による水・脂肪の分離を実行する磁気共鳴画像化方法の概略フロー図である。
【
図3A】本発明の一実施形態による水・脂肪の分離を実行する磁気共鳴画像化方法における単極の読み出し勾配のシーケンス図を示している。
【
図3B】本発明の一実施形態による水・脂肪の分離を実行する磁気共鳴画像化方法における双極の読み出し勾配のシーケンス図である。
【
図4】本発明の一実施形態による水・脂肪の分離を実行する磁気共鳴画像化方法において、同相画像のための元データに位相補正を施す手順を示す概略図である。
【
図5】本発明の一実施形態による水・脂肪の分離を実行する磁気共鳴画像化方法において、逆相画像のための元データに位相補正を施す手順を示す概略図である。
【
図6】本発明の一実施形態による水・脂肪の分離を実行する磁気共鳴画像化装置の構造を示す概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
本発明の技術的解決策の明瞭かつ完全な説明を、本発明における添付の図面を参照して以下に示す。当然ながら、説明される実施形態は、本発明の実施形態のすべてではなく、一部にすぎない。ここで説明される特定の実施形態が、あくまでも本発明を説明しようとするものにすぎず、本発明を限定しようとするものではないことを理解すべきである。当業者であればいかなる進歩的な努力も行うことなく本発明の実施形態に基づいて得ることができるすべての他の実施形態が、本発明の保護の範囲に包含される。
【0014】
既存のデカルト軌道取得法は、単純であって時間を節約するが、剛体運動および脈動などの運動の影響をきわめて受けやすいことが、研究を通じて明らかになるかもしれない。他方で、放射状またはらせん状軌道取得法は、運動アーチファクトを、再構成された画像における不明瞭さに変換し、複雑な演算を必要とし、きわめて時間がかかる。このように、上述の2種類の方法のどちらも、剛体運動のアーチファクトを取り除くことができない。
【0015】
さらに、既存の3点ディクソン法は、水画像および脂肪画像を計算するために位相アンラッピング技術を使用し、位相アンラッピングの本質的な不安定性のために、計算される水画像および脂肪画像が入れ替わる可能性がある。すなわち、画像が理論的に水画像であると考えられる場合に、実際に計算された画像は脂肪画像であることがあり、画像が理論的に脂肪画像であると考えられる場合に、実際に計算された画像は水画像であることがある。したがって、画像化すべき対象物について多層の走査が行われる場合に、計算された水画像および脂肪画像の入れ替わりが、走査層の一部において生じることがあり、これは合成される3次元の水画像および脂肪画像における誤差につながる。例えば、患者の頭部が、頭頂部から下方の顎まで層1、層2、・・・、層10の合計10個の層にて走査されると仮定する。既存の3点ディクソン法を使用して患者の頭部の3次元の水画像および脂肪画像を計算する場合、これら10個の層の各2次元水画像(上方から下方に水画像1、水画像2、・・・、水画像10)および2次元脂肪画像(上方から下方に脂肪画像1、脂肪画像2、・・・、脂肪画像10)が最初に取得され、次いで3次元水画像および3次元脂肪画像が、これら10個の層の2次元水画像および2次元脂肪画像をそれぞれ合成することによって得られる。仮に8番目の層の2次元水画像8および2次元脂肪画像8の入れ替わりが生じると、1つの2次元脂肪画像8が10個の走査層の2次元水画像と混ざり合い、一方、1つの2次元水画像8が10個の走査層の2次元脂肪画像と混ざり合う。結果として、3次元の水画像および脂肪画像が10個の走査層の2次元の水画像および脂肪画像を使用して合成されるとき、合成された水画像および脂肪画像に誤差が生じる。
【0016】
上述の技術的問題を解決するために、本発明の実施形態は、ターボスピンエコーBLADE(TSE BLADE)アーチファクト補正シーケンスにもとづく2点ディクソン(Dixon)法である水・脂肪の分離を実行する磁気共鳴画像化方法を提供する。この方法においては、TSE BLADEシーケンスが、同相画像のための元データおよび逆相画像のための元データを取得するために最初に使用され、次いで同相画像が、同相画像のための元データに基づいて再構成され、逆相画像が、同相画像のための元データおよび逆相画像のための元データに基づいて再構成され、最後に水画像および脂肪画像が再構成された同相画像および逆相画像に基づいて計算される。
【0017】
本発明の実施形態による水・脂肪の分離を実行する磁気共鳴画像化方法を、以下で添付の図面を参照して詳しく説明する。本発明の一実施形態においてもたらされる水・脂肪の分離を実行する磁気共鳴画像化方法の概略のフロー図である
図1を参照する。この方法は、とりわけ以下のステップを含む。
【0018】
ステップ101:MRI装置が、ターボスピンエコーBLADE(TSE BLADE)アーチファクト補正シーケンスを使用して、同相画像のための元データおよび逆相画像のための元データを取得する。
【0019】
すなわち、このステップにおいて、MRI装置が、TSE BLADEシーケンスを使用して、同相画像のための元データとしての1つの同相エコーおよび逆相画像のための元データとしての1つの逆相エコーを取得する。具体的には、この例においては、MRI装置が、最初に同相エコーを、次いで逆相エコーを取得することができ、あるいは最初に逆相エコーを、次いで同相エコーを取得することができる。
【0020】
上述のデータ取得に使用されるBLADE技術は、PROPELLER(Periodically Rotated Overlapping ParallEL Lines with Enhanced Reconstruction)技術としても知られ、詳しくはJames G. Pipeの論文「Motion Correction with PROPELLER MRI:Application to head motion and free−breathing cardiac imaging」(Magnetic Resonance in Medicine, 42:963−969, November 1999)を参照されたい。BLADEシーケンスは、剛体運動および脈動の影響を受けにくいため、k空間データを取得するためにTSE BLADEを使用することで、再構成される画像への運動アーチファクトの影響を少なくすることができ、再構成された画像の信号対雑音比を改善することもできる。
【0021】
各画像のための元データを取得するBLADE軌道が
図2に示されている。k空間データが、N本のストリップ(strip)にて取得される(ここで、Nは正の整数であり、
図2においてはN=10である)。これらのストリップは、周方向の等しい角度または等しくない角度での回転によって分布している。各ストリップは、L本の平行なラインを含んでいる(ここで、Lは正の整数であり、
図2においてはL=9である)。
【0022】
上述のステップ101においてエコー信号を取得するとき、MRI装置は、同相画像および逆相画像を連続的に得るために、単極の読み出し勾配または双極の読み出し勾配を使用することができる。
【0023】
図3Aおよび3Bは、BLADE軌道における各ストリップの取得の際に本発明の実施形態によって提供される方法におけるシーケンスを概略的に示している。
図3Aは単極の読み出し勾配を使用し、
図3Bは双極の読み出し勾配を使用している。
図3Aおよび3Bにおいて、RFは高周波パルスを表し、ROは読み出し勾配を表し、スライス選択勾配および位相エンコーディング勾配は図から省略されている。
【0024】
図3Aの部分aに示されているように、MRI装置は、最初に1つの90度RFパルスRF_0を放射し、次いで1つの180度位相リフォーカスRFパルスRF_1を放射する。90度RFパルスRF_0からエコー時間(エコーの時間TE)の2分の1とエコー時間の2分の3との間で、MRI装置は、1つのラインout_1を読み出すための読み出し勾配方向に読み出し勾配を適用する。次いで、装置は、第2のエコーを得るべく別の180度位相リフォーカスRFパルスRF_2を放射し、別のラインout_2を読み出すための読み出し勾配方向に読み出し勾配を施す。上述の操作は、BLADE軌道のすべてのラインが読み取られるまで繰り返され、逆相画像のための元データが得られる。ラインout_1、out_2、out_3、・・・などが逆相画像のための元データを構成する。
【0025】
図3Aの部分bに示されているように、MRI装置は、最初に1つの90度RFパルスRF_0を放射し、次いで1つの180度位相リフォーカスRFパルスRF_1を放射する。90度RFパルスRF_0から1エコー時間において、MRI装置は、1つのラインin_1を読み出すための読み出し勾配方向に読み出し勾配を適用する。次いで、装置は、第2のエコーを得るべく別の180度位相リフォーカスRFパルスRF_2を放射し、別のラインin_2を読み出すための読み出し勾配方向に読み出し勾配を施す。上述の操作は、BLADE軌道のすべてのラインが読み取られるまで繰り返され、同相画像のための元データが得られる。ラインin_1、in_2、in_3、・・・などが同相画像のための元データを構成する。
【0026】
図3Bに示されているように、MRI装置は、最初に1つの90度RFパルスRF_0を放射し、次いで1つの180度位相リフォーカスRFパルスRF_1を放射する。90度RFパルスRF_0から1エコー時間において、MRI装置は、2つのラインout_1およびin_1をそれぞれ読み出すために読み出し勾配方向に異なる極性の2つの読み出し勾配を適用する。次いで、装置は、第2のエコーを得るべく別の180度位相リフォーカスRFパルスRF_2を放射し、2つのラインout_2およびin_2をそれぞれ読み出すための読み出し勾配方向に異なる極性の2つの読み出し勾配を施す。上述の操作は、BLADE軌道のすべてのラインが読み取られるまで繰り返され、逆相画像のための元データおよび同相画像のための元データが得られる。ラインout_1、out_2、out_3、・・・などが逆相画像のための元データを構成する一方で、ラインin_1、in_2、in_3、・・・などが同相画像のための元データを構成する。
【0027】
図3Aおよび3Bは、あくまでも1種類の取得シーケンスを概略的な形態で示しているにすぎず、決して本発明がこれに限られるわけではないことを説明しておかなければならない。例えば、本発明において、最初に1つの同相エコーを取得し、その後に1つの逆相エコーを取得することによって、対応する元データを得ることができ、あるいは最初に1つの逆相エコーを取得し、その後に1つの同相エコーを取得することによって、対応する元データを得ることができる。
【0028】
ステップ102:MRI装置が、同相画像のための元データに基づいて同相画像を再構成し、同相画像のための元データおよび逆相画像のための元データに基づいて逆相画像を再構成する。
【0029】
このステップにおいて、同相画像を再構成するとき、MRI装置は、最初に同相画像の各ストリップに位相補正を施し、次いで位相補正された同相画像のストリップに回転補正および平行移動補正を順に施し、最終的にすべての補正されたストリップをデカルト座標に割り当て、高速フーリエ変換によって同相画像を得る。
【0030】
同相画像の各ストリップに位相補正を施す手順が、
図4に示されており、とくには以下のステップを含む。
ステップ401:同相画像のための元データのストリップに、ウインドウ関数(三角形ウインドウ関数や、ピラミッド形ウインドウ関数など)を用いたウインドウ操作を施して、第1の処理結果を得る。
ステップ402:第1の処理結果に2次元高速フーリエ変換(2D FFT)を施して、同相画像のウインドウデータと呼ぶことができる処理結果を得る。
ステップ403:同相画像のための元データのストリップに2次元高速フーリエ変換を施して、第2の処理結果を得る。
ステップ404:上述のステップ403において得られた第2の処理結果から上述のステップ402において得られた同相画像のウインドウデータの位相を取り除いて、第3の処理結果を得る。
ステップ405:第3の処理結果に2次元逆高速フーリエ変換(2D iFFT)を施して、位相補正された同相画像のストリップを得る。
【0031】
このステップにおいて、逆相画像を再構成するとき、MRI装置は、最初に逆相画像の各ストリップに位相補正を施し、次いで位相補正された逆相画像のストリップに回転補正および平行移動補正を施し、高速フーリエ変換によって逆相画像を得る。本発明の発明者は、逆相画像のための元データに位相補正を施す方法について、改善を提案した。
図5に示されるように、本発明の実施形態において逆相画像の各ストリップに位相補正を施す方法は、とくには以下のステップを含む。
ステップ501:逆相画像のための元データのストリップに2次元高速フーリエ変換を施して、第1の処理結果を得る。
ステップ502:逆相画像のための元データのストリップに対応する同相画像のための元データのストリップ(すなわち、k空間における角度が逆相画像のための元データのストリップと同じである同相画像のための元データのストリップ)に、ウインドウ関数を用いたウインドウ操作を施して、第2の処理結果を得る。
ステップ503:上述のステップ502において得られた第2の処理結果に2次元高速フーリエ変換を施して、対応ウインドウデータと呼ばれる同相画像のための元データのストリップのウインドウデータを得る。
ステップ504:上述のステップ501において得られた第1の処理結果から、同相画像のための元データのストリップについて上述のステップ503において得られたウインドウデータの位相を取り除いて、第3の処理結果を得る。
ステップ505:上述のステップ504において得られた第3の処理結果に2次元逆高速フーリエ変換を施して、位相補正された逆相画像のストリップを得る。
【0032】
上述の手順においては、逆相画像のストリップに、同相画像のストリップを基準として用いて位相補正が施されることによって、逆相の情報が失われず、したがって水・脂肪の分離を伴う画像化を、後の処理手順において2点ディクソン法によって実行することが可能になる。
【0033】
ステップ103:MRI装置が、再構成された同相画像および逆相画像に基づいて、水画像および脂肪画像を別々に計算する。
【0034】
このステップにおいて、再構成された同相画像および逆相画像が2次元画像である場合において、再構成された同相画像および逆相画像に基づいて水画像および脂肪画像を計算するとき、再構成された同相画像および逆相画像に位相補正を施すために2次元領域成長アルゴリズムが使用され、位相補正された同相画像および逆相画像に基づいて水画像および脂肪画像が計算される。
【0035】
さらに、計算の信頼性を向上させるために、画像化すべき対象物に多層の走査を行うことができ、すなわち複数の走査層を反映する複数の2次元同相画像および逆相画像が同時に取得され、次いで複数の2次元同相画像および逆相画像に対応する空間情報に基づいて、複数の2次元同相画像および逆相画像が、1つの3次元同相画像および1つの3次元逆相画像を形成するように配置される。例えば、患者の頭部が走査されるときに、頭頂部から下方の顎まで、層1、層2、・・・、層nの合計n個の層が走査される。結果として、これらn個の層の各2次元同相画像(上方から下方に、同相画像1、同相画像2、・・・、同相画像n)および2次元逆相画像(上方から下方に、逆相画像1、逆相画像2、・・・、逆相画像n)が得られる。これらの画像についての空間情報、すなわち頭頂部から下方の顎までの並び順にもとづき、n個の2次元同相画像が1つの3次元同相画像を形成するように配置され、一方、n個の2次元逆相画像が1つの3次元逆相画像を形成するように配置される。次いで、このようにして得られた3次元同相画像および3次元逆相画像に、ここで詳しく説明するまでもない3次元領域成長アルゴリズムなどの既存のさまざまな方法のいずれかを使用して、位相補正が施される。このように、本発明の実施形態においては、再構成された同相画像および逆相画像が3次元画像であるとき、再構成された同相画像および逆相画像に、3次元領域成長アルゴリズムを使用して位相補正が施され、位相補正された同相画像および逆相画像に基づいて水画像および脂肪画像が計算される。位相アンラッピング技術の使用によって、伝統的な3点ディクソン法において異なる走査層における水画像と脂肪画像との入れ替わりという問題が引き起こされる。しかし、この問題は3次元領域成長アルゴリズムの使用によって効果的に解決される。
【0036】
上述の位相補正の目的は、磁界の非一様性に起因して生じる位相誤差を取り除くことにある。最後に、位相補正された3次元逆相画像および3次元同相画像が、3次元水画像および3次元脂肪画像を計算するために使用される。
【0037】
図6が、本発明の一実施形態による水・脂肪の分離を実行する磁気共鳴画像化装置の構造を示す概略図である。装置は、
ターボスピンエコーBLADE(TSE BLADE)アーチファクト補正シーケンスを使用して同相画像のための元データおよび逆相画像のための元データを取得する取得ユニット1と、
同相画像のための元データに基づいて同相画像を再構成する第1の再構成ユニット2と、
同相画像のための元データおよび逆相画像のための元データに基づいて逆相画像を再構成する第2の再構成ユニット3と、
再構成された同相画像および再構成された逆相画像に基づいて水画像および脂肪画像を別々に計算する計算ユニット4と
を備えている。
【0038】
第1の再構成ユニット2は、
同相画像のための元データのストリップに位相補正を施す第1の位相補正サブユニット21と、
同相画像のための元データの位相補正されたストリップに回転補正を施す第1の回転補正サブユニット22と、
同相画像のための元データの回転補正されたストリップに平行移動補正(translation correction)を施す第1の平行移動補正サブユニット23と、
同相画像のための元データの平行移動補正されたストリップに高速フーリエ変換を施す第1の変換サブユニット24と
を備えている。
【0039】
第1の位相補正サブユニット21は、とくには、
同相画像のための元データのストリップにウインドウ操作を施して第1の処理結果を得る第1のモジュール211と、
第1の処理結果に2次元高速フーリエ変換を施して同相画像のウインドウデータを得る第2のモジュール212と、
同相画像のための元データのストリップに2次元高速フーリエ変換を施して第2の処理結果を得る第3のモジュール213と、
第2の処理結果から同相画像のウインドウデータの位相を取り除いて第3の処理結果を得る第4のモジュール214と、
第3の処理結果に2次元逆高速フーリエ変換を施して補正結果を得る第5のモジュール215と
を備えている。
【0040】
第2の再構成ユニット3は、
同相画像のための元データのストリップに位相補正を施す第2の位相補正サブユニット31と、
同相画像のための元データの位相補正されたストリップに回転補正を施す第2の回転補正サブユニット32と、
同相画像のための元データの回転補正されたストリップに平行移動補正を施す第2の平行移動補正サブユニット33と、
同相画像のための元データの平行移動補正されたストリップに高速フーリエ変換を施す第2の変換サブユニット34と
を備えている。
【0041】
第2の位相補正サブユニット31は、とくには、
逆相画像のための元データのストリップに2次元高速フーリエ変換を施して第1の処理結果を得る第6のモジュール311と、
逆相画像のための元データのストリップに対応する同相画像のための元データのストリップにウインドウ操作を施して第2の処理結果を得る第7のモジュール312と、
第2の処理結果に2次元高速フーリエ変換を施して同相画像のための元データの対応するストリップのウインドウデータを得る第8のモジュール313と、
第1の処理結果から同相画像のための元データのストリップのウインドウデータの位相を取り除いて第3の処理結果を得る第9のモジュール314と、
第3の処理結果に2次元逆高速フーリエ変換を施して補正結果を得る第10のモジュール315と
を備えている。
【0042】
本発明の実施形態の上述の技術的解決策から、k空間データを取得するためにTSE BLADEシーケンスを使用することによって、本発明の実施形態によって提供される水・脂肪の分離を実行する磁気共鳴画像化方法が、剛体運動および脈動の影響を受けにくく、したがって画像の信号対雑音比を改善しつつ、運動アーチファクトに左右されにくくなるという点で、BLADEシーケンスの利点を受け継ぐことを見て取ることができる。
【0043】
さらに、既存の3点ディクソン法と比べ、本発明は、画像を再構成するために2次元領域成長アルゴリズムまたは3次元領域成長アルゴリズムを使用することによって、多層の走査において水画像および脂肪画像の不規則な入れ替わりが頻繁に生じるという問題を解消する。
【0044】
以上は、あくまでも本発明の好ましい実施形態にすぎず、本発明を限定しようとするものではない。本発明の技術的思想および原理から離れることなく行われるあらゆる変更、均等な置き換え、または改善は、本発明の保護の範囲に含まれるべきである。
【符号の説明】
【0045】
1 取得ユニット
2 第1の再構成ユニット
3 第2の再構成ユニット
4 計算ユニット
21 第1の位相補正サブユニット
22 第1の回転補正サブユニット
23 第1の平行移動補正サブユニット
24 第1の変換サブユニット
31 第2の位相補正サブユニット
32 第2の回転補正サブユニット
33 第2の平行移動補正サブユニット
34 第2の変換サブユニット
211 第1のモジュール
212 第2のモジュール
213 第3のモジュール
214 第4のモジュール
215 第5のモジュール
311 第6のモジュール
312 第7のモジュール
313 第8のモジュール
314 第9のモジュール
315 第10モジュール