特許第6245864号(P6245864)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6245864
(24)【登録日】2017年11月24日
(45)【発行日】2017年12月13日
(54)【発明の名称】気腹装置
(51)【国際特許分類】
   A61B 1/015 20060101AFI20171204BHJP
   A61B 1/313 20060101ALI20171204BHJP
   A61B 1/00 20060101ALI20171204BHJP
【FI】
   A61B1/015 514
   A61B1/313
   A61B1/00 R
【請求項の数】5
【全頁数】14
(21)【出願番号】特願2013-139130(P2013-139130)
(22)【出願日】2013年7月2日
(65)【公開番号】特開2015-9113(P2015-9113A)
(43)【公開日】2015年1月19日
【審査請求日】2015年10月14日
(73)【特許権者】
【識別番号】000000376
【氏名又は名称】オリンパス株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100076233
【弁理士】
【氏名又は名称】伊藤 進
(74)【代理人】
【識別番号】100101661
【弁理士】
【氏名又は名称】長谷川 靖
(74)【代理人】
【識別番号】100135932
【弁理士】
【氏名又は名称】篠浦 治
(72)【発明者】
【氏名】山岡 弘治
【審査官】 佐藤 高之
(56)【参考文献】
【文献】 特開2009−131467(JP,A)
【文献】 特開2005−287839(JP,A)
【文献】 特開2006−181108(JP,A)
【文献】 特開2006−129948(JP,A)
【文献】 特開平05−269079(JP,A)
【文献】 特開2012−231897(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61B 1/00−1/32
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
送気ガス源が接続される第1の接続部に連通する第1の管路と、
前記第1の管路と、腹腔内に前記送気ガス源から供給される送気ガスを供給するためのトラカールが第1の送気チューブを介して接続される第2の接続部とを連通する第2の管路と、
前記第1の管路と、内視鏡の挿入部の先端面に前記送気ガスを噴射するための洗浄シースが第2の送気チューブを介して接続される第3の接続部とを連通する第3の管路と、
前記第2の管路上に設けられた電磁弁と、
前記第2の管路上に設けられたリリーフ弁と、
前記第3の管路上に設けられ、前記送気ガス源から供給される送気ガスの流量を検知する流量検知部と、
前記流量検知部で検知された前記送気ガスの流量が所定の閾値を超えた場合、前記電磁弁を閉状態または前記リリーフ弁を開状態とするように制御する制御部と、
を有することを特徴とする気腹装置。
【請求項2】
前記制御部は、前記流量検知部で検知された前記送気ガスの流量が所定の閾値を超えた場合、前記電磁弁を閉状態、かつ、前記リリーフ弁を開状態とするように制御することを特徴とする請求項1に記載の気腹装置。
【請求項3】
前記第2の管路上に設けられ、前記第2の管路の圧力を検知する圧力検知部を有し、
前記制御部は、前記圧力検知部で検知された圧力が所定の圧力となるように、前記電磁弁の開閉を制御または前記リリーフ弁の開閉を制御することを特徴とする請求項1に記載の気腹装置。
【請求項4】
送気ガス源が接続される第1の接続部に連通する第1の管路と、
前記第1の管路と、腹腔内に前記送気ガス源から供給される送気ガスを供給するためのトラカールが第1の送気チューブを介して接続される第2の接続部とを連通する第2の管路と、
前記第1の管路と、内視鏡の挿入部の先端面に前記送気ガスを噴射するための洗浄シースが第2の送気チューブを介して接続される第3の接続部とを連通する第3の管路と、
前記第2の管路上に設けられた電磁弁と、
前記第3の管路上に設けられ、前記送気ガス源から供給される送気ガスの流量を検知する流量検知部と、
前記流量検知部で検知された前記送気ガスの流量が所定の閾値を超えた場合、前記電磁弁を閉状態とするように制御する制御部と、
を有することを特徴とする気腹装置。
【請求項5】
送気ガス源が接続される第1の接続部に連通する第1の管路と、
前記第1の管路と、腹腔内に前記送気ガス源から供給される送気ガスを供給するためのトラカールが第1の送気チューブを介して接続される第2の接続部とを連通する第2の管路と、
前記第1の管路と、内視鏡の挿入部の先端面に前記送気ガスを噴射するための洗浄シースが第2の送気チューブを介して接続される第3の接続部とを連通する第3の管路と、
前記第2の管路上に設けられたリリーフ弁と、
前記第3の管路上に設けられ、前記送気ガス源から供給される送気ガスの流量を検知する流量検知部と、
前記流量検知部で検知された前記送気ガスの流量が所定の閾値を超えた場合、前記リリーフ弁を開状態とするように制御する制御部と、
を有することを特徴とする気腹装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、気腹装置に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、患者への侵襲を小さくする目的で、開腹することなく治療処置を行う腹腔鏡下外科手術が広く行われている。腹腔鏡下外科手術においては、患者の腹部に、例えば、観察用の硬性内視鏡を体腔内に導くためのトラカールが穿刺される。このトラカールには、内視鏡の視野を確保する目的及び処置具を操作するための領域を確保する目的で、腹腔内に炭酸ガス等の気腹用ガスを供給する気腹装置が接続される。
【0003】
また、腹腔鏡下外科手術において、手技の中断等を避けるために、洗浄シースを用いて内視鏡の照明レンズや対物レンズ等のレンズ面の汚れを落とすことがある。レンズ面の洗浄は、炭酸ガスや生理食塩水等を内視鏡のレンズ面に噴射することにより実施される。
【0004】
例えば、特許文献1には、第1の炭酸ガスボンベ及びガス供給制御手段により、レンズ面に炭酸ガスを送気し、第2の炭酸ガスボンベ及び気腹制御部により、腹腔内に炭酸ガスを送気する内視鏡システムが開示されている。このように、従来では、レンズ面の洗浄は、腹腔内に気腹用ガスを供給する気腹装置とは別の気腹装置で実施されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2007−296164号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、気腹装置が腹腔内に送気を実施している場合にレンズ面の洗浄を実施すると、2つの送気装置から送気することになるが、その2つの送気装置は同期していないため、腹腔内が過圧になるリスクが高くなってしまう。
【0007】
また、気腹装置は、腹腔内が過圧になると、例えばアラーム等により術者に腹腔内が過圧になっていることを報知するようになっており、その度に、術者は手技を中断する必要があった。
【0008】
そこで、本発明は、レンズ面の洗浄を実施しても腹腔内部の過圧を防ぐことができ、より最適な手術環境を提供することができる気腹装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明の一態様の気腹装置は、送気ガス源が接続される第1の接続部に連通する第1の管路と、前記第1の管路と、腹腔内に前記送気ガス源から供給される送気ガスを供給するためのトラカールが第1の送気チューブを介して接続される第2の接続部とを連通する第2の管路と、前記第1の管路と、内視鏡の挿入部の先端面に前記送気ガスを噴射するための洗浄シースが第2の送気チューブを介して接続される第3の接続部とを連通する第3の管路と、前記第2の管路上に設けられた電磁弁と、前記第2の管路上に設けられたリリーフ弁と、前記第3の管路上に設けられ、前記送気ガス源から供給される送気ガスの流量を検知する流量検知部と、前記流量検知部で検知された前記送気ガスの流量が所定の閾値を超えた場合、前記電磁弁を閉状態または前記リリーフ弁を開状態とするように制御する制御部と、を有する。
また、本発明の他の態様の気腹装置は、送気ガス源が接続される第1の接続部に連通する第1の管路と、前記第1の管路と、腹腔内に前記送気ガス源から供給される送気ガスを供給するためのトラカールが第1の送気チューブを介して接続される第2の接続部とを連通する第2の管路と、前記第1の管路と、内視鏡の挿入部の先端面に前記送気ガスを噴射するための洗浄シースが第2の送気チューブを介して接続される第3の接続部とを連通する第3の管路と、前記第2の管路上に設けられた電磁弁と、前記第3の管路上に設けられ、前記送気ガス源から供給される送気ガスの流量を検知する流量検知部と、前記流量検知部で検知された前記送気ガスの流量が所定の閾値を超えた場合、前記電磁弁を閉状態とするように制御する制御部と、
を有する。
また、本発明の他の態様の気腹装置は、送気ガス源が接続される第1の接続部に連通する第1の管路と、前記第1の管路と、腹腔内に前記送気ガス源から供給される送気ガスを供給するためのトラカールが第1の送気チューブを介して接続される第2の接続部とを連通する第2の管路と、前記第1の管路と、内視鏡の挿入部の先端面に前記送気ガスを噴射するための洗浄シースが第2の送気チューブを介して接続される第3の接続部とを連通する第3の管路と、前記第2の管路上に設けられたリリーフ弁と、前記第3の管路上に設けられ、前記送気ガス源から供給される送気ガスの流量を検知する流量検知部と、前記流量検知部で検知された前記送気ガスの流量が所定の閾値を超えた場合、前記リリーフ弁を開状態とするように制御する制御部と、を有する。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、レンズ面の洗浄を実施しても腹腔内部の過圧を防ぐことができ、より最適な手術環境を提供することができる気腹装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1】第1の形態に係わる気腹装置を含む外科手術システムの構成を説明するための図である。
図2】腹腔内を観察しているときの構成について説明するための図である。
図3】内視鏡及び洗浄シースの先端部の構成について説明するための図である。
図4】洗浄シースの詳細な構成を説明するための図である。
図5】本実施の形態に係る気腹装置の内部構成を説明するための図である。
図6】気腹用管路上の電磁弁の制御について説明するためのタイミングチャートである。
図7】気腹用管路上の電磁弁の制御について説明するためのフローチャートである。
図8】気腹用管路上のリリーフ弁の制御について説明するためのタイミングチャートである。
図9】気腹用管路上のリリーフ弁の制御について説明するためのフローチャートである。
図10】気腹用管路上の電磁弁及びリリーフ弁の制御について説明するためのタイミングチャートである。
図11】気腹用管路上の電磁弁及びリリーフ弁の制御について説明するためのフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、図面を参照して本発明の実施の形態を説明する。
【0013】
(第1の実施の形態)
図1は、第1の形態に係わる気腹装置を含む外科手術システムの構成を説明するための図である。
【0014】
図1に示すように、外科手術システム1は、トラカール2と、気腹装置3と、洗浄シース4と、内視鏡5と、光源装置6と、炭酸ガスボンベ7と、バッグ8と、を有して構成されている。
【0015】
トラカール2は、患者の腹腔9に穿刺され、後述するように、洗浄シース4に挿通された内視鏡5を患者の腹腔9内に導く。また、トラカール2は、気腹用の送気チューブ10が接続される接続部2aを有する。そして、トラカール2は、後述する気腹装置3の気腹用送気口金3aと、送気チューブ10を介して接続され、気腹装置3から供給される気腹用の炭酸ガスを腹腔9内に導く。
【0016】
気腹装置3は、気腹用送気口金3aと、洗浄用送気口金3bと、口金3cとを有している。口金3cには、炭酸ガスボンベ7が高圧ホース11を介して接続され、炭酸ガスボンベ7からの炭酸ガスが気腹装置3に供給される。気腹装置3は、供給された炭酸ガスを気腹用の炭酸ガスとしてトラカール2に供給するとともに、後述するように、洗浄用の炭酸ガスとして洗浄シース4に供給する。
【0017】
洗浄シース4は、後述する内視鏡5の挿入部5aを挿通するシース挿入部4aと、接続部4bと、洗浄ボタン4cとを有して構成されている。接続部4bは、送気チューブ12を介して気腹装置3の洗浄用送気口金3bと接続される。これにより、気腹装置3から洗浄用の炭酸ガスが洗浄シース4に供給される。洗浄ボタン4cは、洗浄用の炭酸ガス及び後述する生理食塩水を内視鏡5の挿入部5aの先端面に噴射するためのボタンである。
【0018】
また、接続部15は、送水チューブ13を介して、送水用の生理食塩水が入っているバッグ8と接続される。このバッグ8は、加圧バッグ14内に入れられている。加圧バッグ14は、空気圧を用いてバッグ8を加圧し、送水チューブ13を介して送水用の生理食塩水を洗浄シース4に供給する。
【0019】
内視鏡5は、例えば硬性な挿入部5aと、挿入部5aの基端側に設けられた把持部5bとを備える硬性内視鏡である。この内視鏡5は、ライト用ケーブル15を介して、光源装置6と接続されている。
【0020】
光源装置6は、ライト用ケーブル15を介して内視鏡5に照明光を供給する。この照明光は、後述する挿入部5aの先端面に設けられた照明レンズを介して、患者の腹腔9内を照明する。
【0021】
図2は、腹腔内を観察しているときの構成について説明するための図である。
【0022】
図2に示すように、トラカール2に洗浄シース4のシース挿入部4aが挿通される。送気チューブ10から供給される気腹用の炭酸ガスは、トラカール2と洗浄シース4との隙間から腹腔9内に送気される。
【0023】
また、シース挿入部4aには、内視鏡5の挿入部5aが挿通される。シース挿入部4aの先端部には、洗浄ノズル16が設けられている。洗浄ノズル16は、挿入部5aの先端面5cに対して炭酸ガス及び生理食塩水を噴射できるように、シース挿入部4aの軸方向に対して略直角に曲がっている。ユーザが洗浄ボタン4cを押下することで、洗浄シース4に供給された炭酸ガス及び生理食塩水が洗浄ノズル16から挿入部5aの先端面5cに噴射される。
【0024】
図3は、内視鏡及び洗浄シースの先端部の構成について説明するための図である。
【0025】
図3に示すように、挿入部5aの先端面5cには、光源装置6からの照明光を腹腔9内に照射する2つの照明レンズ17と、照明光により照明された被写体を結像する対物レンズ18が設けられている。対物レンズ18により結像された被写体からの戻り光は、図示しないカメラヘッドに内蔵されたCCD等の撮像素子で光電変換され、図示しないシステムコントローラで画像処理された後、モニタ等の表示装置に表示される。
【0026】
洗浄シース4に供給された炭酸ガス及び生理食塩水は、洗浄ボタン4cが押下されることで、洗浄ノズル16から先端面5cの照明レンズ17及び対物レンズ18に向かって噴射され、照明レンズ17及び対物レンズ18の表面に付着した汚れ等を洗浄する。
【0027】
図4は、洗浄シースの詳細な構成を説明するための図である。
【0028】
図4(a)に示すように、洗浄シース4のシース挿入部4aは、内視鏡5の挿入部5aが挿通される案内部31と、送気送水用の管路32とを有している。また、洗浄ボタン4cは、孔33及び34を有し、接続部4bに設けられたバネ35の付勢力によって所定の位置に配置されるように構成されている。
【0029】
そして、図4(b)に示すように、洗浄ボタン4cが押下されると、孔33を介して送気チューブ12が管路32と連通し、孔34を介して送水チューブ13が管路32と連通する。これにより、洗浄用の炭酸ガス及び生理食塩水が管路32を介して洗浄ノズル16に供給され、洗浄ノズル16から内視鏡5の挿入部5aの先端面5cに噴射される。この結果、先端面5cに設けられた照明レンズ17及び対物レンズ18の表面に付着した汚れ等を洗浄することができる。
【0030】
ここで、本実施の形態に係る気腹装置の内部構成について説明する。図5は、本実施の形態に係る気腹装置の内部構成を説明するための図である。
【0031】
図5に示すように、気腹装置3は、管路40と、管路40上に設けられた減圧器41と有する。この管路40は、減圧器41の先で気腹用管路42と、洗浄用管路43に分岐する。また、気腹装置3は、気腹用管路42上に設けられた減圧器44と、気腹用管路42上に設けられた電磁弁/リリーフ弁45と、圧力センサ46と、流量センサ47とを有する。さらに、気腹装置3は、洗浄用管路43上に設けられた減圧器48と、洗浄用管路43上に設けられた電磁弁49と、流量センサ50と、電磁弁/リリーフ弁45及び電磁弁49の開閉を制御する制御部51とを有する。
【0032】
第1の管路としての管路40は、送気ガス源としての炭酸ガスボンベ7が接続される第1の接続部としての口金3cに連通している。炭酸ガスボンベ7から管路40に供給された炭酸ガスは、減圧器41により、例えば、5MHgから0.39MHgに減圧される。
【0033】
第2の管路としての気腹用管路42は、第2の接続部としての気腹用送気口金3aに連通している。減圧器41で減圧された炭酸ガスは、気腹用管路42上の減圧器44により、例えば80mHgに減圧される。
【0034】
圧力センサ46は、気腹用管路42の圧力を測定し、その測定結果を制御部51に出力する。また、流量センサ47は、気腹用管路42に供給される炭酸ガスの流量を測定し、その測定結果を制御部51に出力する。
【0035】
制御部51は、圧力センサ46及び流量センサ47の測定結果に基づいて、腹腔9内が所定の圧力となるように、電磁弁/リリーフ弁45に制御信号を出力し、開閉を制御する。電磁弁/リリーフ弁45の電磁弁は、制御部51からの制御信号に応じて、所定の時間間隔で開閉動作し、減圧器44で減圧された気腹用の炭酸ガスを腹腔9に供給する。また、電磁弁/リリーフ弁45のリリーフ弁は、制御部51からの制御信号に応じて開閉動作し、腹腔9内の炭酸ガスを大気中に放出する。
【0036】
また、第3の管路としての洗浄用管路43は、第3の接続部としての洗浄用送気口金3bと連通している。減圧器41で減圧された炭酸ガスは、洗浄用管路43の減圧器48により、例えば300mHgに減圧される。
【0037】
流量センサ50は、洗浄用管路43に供給される炭酸ガスの流量を測定し、その測定結果を制御部51に出力する。この流量センサ50は、炭酸ガスボンベ7から供給される送気ガスとしての炭酸ガスの流量を検知する流量検知部を構成する。
【0038】
制御部51は、手技が開始されると、洗浄用管路43の電磁弁49に制御信号を出力し、電磁弁49を常に開けておくように制御する。これにより、洗浄シース4により洗浄動作を行っていない場合、すなわち、洗浄ボタン4cが押下されていない場合、洗浄用管路43は、一定の圧力(例えば上述した300mHg)で炭酸ガスが充満し、充満した後の洗浄用管路43内の流量は、0L/minとなる。一方、洗浄シース4により洗浄動作を行っている場合、すなわち、洗浄ボタン4cが押下されている場合、洗浄用管路43内の炭酸ガスが洗浄ノズル16を介して腹腔9内に送気されるため、洗浄用管路43内の流量は、0L/minを超える。
【0039】
流量センサ50は、洗浄用管路43に供給される炭酸ガスの流量を測定し、その測定結果を制御部51に出力する。制御部51は、流量センサ50からの測定結果に基づき、洗浄シース4による洗浄動作が行われているか否かを判定する。すなわち、制御部51は、洗浄用管路43内の流量が0L/minの場合、洗浄動作が行われていないと判定し、洗浄用管路43内の流量が0L/minを超える場合、洗浄動作が行われていると判定する。なお、制御部51は、洗浄用管路43内の流量が0L/minを超えているか否かによって、洗浄動作が行われているか否かを判定しているが、この流量の値に限定されるものではない。例えば、制御部51は、流量センサ50の測定結果を監視し、洗浄用管路43内の流量が0.1L/minを超えるか否かによって、洗浄動作が行われているか否かを判定するようにしてもよい。
【0040】
そして、制御部51は、流量センサ50の測定結果を監視し、洗浄シース4による洗浄動作が行われていると判定した場合、気腹用管路42上の電磁弁/リリーフ弁45の電磁弁を閉じるように制御する。電磁弁/リリーフ弁45の電磁弁を閉じることで、洗浄用の炭酸ガスが腹腔9内に送気されている場合、気腹用の炭酸ガスが腹腔9内に送気されることを停止し、腹腔9内が過圧になることを防ぐようにしている。このように、制御部51は、流量センサ50で測定された炭酸ガスの流量が所定の閾値を超えた場合、電磁弁/リリーフ弁45の電磁弁を閉状態とするように制御する。
【0041】
次に、気腹用管路42上の電磁弁の制御について図6及び図7を用いて説明する。図6は、気腹用管路上の電磁弁の制御について説明するためのタイミングチャートである。
【0042】
図6に示すように、制御部51は、洗浄用管路43に供給される炭酸ガスの流量が所定の閾値Th以下の場合、照明レンズ17や対物レンズ18のレンズ面の洗浄をしていないと判定する。すなわち、時間0から時間t1、及び、時間t2以降は、レンズ面の洗浄をしていない区間となる。なお、所定の閾値Thは、上述したように、0L/minや0.1L/min等の数値である。
【0043】
このようなレンズ面の洗浄をしていない区間では、制御部51は、気腹用管路42上の電磁弁/リリーフ弁45の電磁弁を開ける(より具体的には、所定の間隔でON、OFFを繰り返す)。
【0044】
一方、制御部51は、洗浄用管路43に供給される炭酸ガスの流量が所定の閾値Thを超える場合、照明レンズ17や対物レンズ18のレンズ面の洗浄をしていると判定する。すなわち、時間t1から時間t2は、レンズ面の洗浄をしている区間となる。
【0045】
このようなレンズ面を洗浄している区間では、制御部51は、腹腔9内の過圧を防ぐために、気腹用管路42上の電磁弁/リリーフ弁45の電磁弁を閉じ、気腹用の送気を停止する。そして、制御部51は、洗浄用管路43に供給される炭酸ガスの流量が所定の閾値Th以下、すなわち、時間t2以降になると、レンズ面の洗浄をしていないと判定し、気腹用の送気を開始する。
【0046】
図7は、気腹用管路上の電磁弁の制御について説明するためのフローチャートである。
【0047】
まず、流量センサ50によって、洗浄用管路43の流量が測定される(ステップS1)。次に、制御部51によって、測定された流量が所定の閾値Thを超えているか否かが判定される(ステップS2)。測定された流量が所定の閾値Thを超えていないと判定された場合、NOとなり、ステップS1に戻り、同様の処理を繰り返す。一方、測定された流量が所定の閾値Thを超えていると判定された場合、制御部51は、気腹用管路42上の電磁弁を閉じ(ステップS3)、処理を終了する。
【0048】
以上のように、気腹装置3は、洗浄用管路43に供給される炭酸ガスの流量を測定し、その測定結果に基づき、挿入部5aの先端面5cの洗浄を行っていると判定した場合、気腹用管路42上に設けられた電磁弁/リリーフ弁45の電磁弁を閉じるようにした。この結果、洗浄用の炭酸ガスが洗浄ノズル16から照明レンズ17や対物レンズ18に噴射され、腹腔9内に送気されているときには、気腹用の炭酸ガスが腹腔9内に送気されることを防ぐことができ、腹腔9内が過圧になることを防ぐようにしている。
【0049】
よって、本実施の形態の気腹装置によれば、レンズ面の洗浄を実施しても腹腔内部の過圧を防ぐことができ、より最適な手術環境を提供することができる。
【0050】
(第2の実施の形態)
次に、第2の実施の形態について説明する。なお、第2の実施の形態の気腹装置3の構成は、第1の実施の形態の気腹装置3の構成と同様であり、以下の制御のみが異なっている。
【0051】
第1の実施の形態の気腹装置3は、照明レンズ17や対物レンズ18の洗浄を行っている場合に、制御部51が電磁弁/リリーフ弁45の電磁弁の制御を行っていたが、第2の実施の形態の気腹装置3は、制御部51が電磁弁/リリーフ弁45のリリーフ弁の制御を行う。
【0052】
具体的には、制御部51は、流量センサ50の測定結果を監視し、洗浄シース4による洗浄動作が行われていると判定した場合、気腹用管路42上の電磁弁/リリーフ弁45のリリーフ弁を開けるように制御する。電磁弁/リリーフ弁45のリリーフ弁を開けることで、洗浄用の炭酸ガスと、気腹用の炭酸ガスとが腹腔9内に送気されている場合でも、腹腔9内の炭酸ガスを大気中に放出することで、腹腔9内が過圧になることを防ぐようにしている。このように、制御部51は、流量センサ50で測定された炭酸ガスの流量が所定の閾値を超えた場合、電磁弁/リリーフ弁45のリリーフ弁を開状態とするように制御する。
【0053】
次に、気腹用管路42上のリリーフ弁の制御について図8及び図9を用いて説明する。図8は、気腹用管路上のリリーフ弁の制御について説明するためのタイミングチャートである。
【0054】
図8に示すように、制御部51は、洗浄用管路43に供給される炭酸ガスの流量が所定の閾値Th以下の場合、照明レンズ17や対物レンズ18のレンズ面の洗浄をしていないと判定する。このようなレンズ面の洗浄をしていない区間では、制御部51は、気腹用管路42上の電磁弁/リリーフ弁45のリリーフ弁を閉じる。
【0055】
一方、制御部51は、洗浄用管路43に供給される炭酸ガスの流量が所定の閾値Thを超える場合、照明レンズ17や対物レンズ18のレンズ面の洗浄をしていると判定する。すなわち、時間t1から時間t2は、レンズ面の洗浄をしている区間となる。
【0056】
このようなレンズ面を洗浄している区間では、制御部51は、腹腔9内の過圧を防ぐために、気腹用管路42上の電磁弁/リリーフ弁45のリリーフ弁を開け、腹腔9内の炭酸ガスを大気中に放出する。そして、制御部51は、洗浄用管路43に供給される炭酸ガスの流量が所定の閾値Th以下、すなわち、時間t2以降になると、レンズ面の洗浄をしていないと判定し、電磁弁/リリーフ弁45のリリーフ弁を閉じる。
【0057】
図9は、気腹用管路上のリリーフ弁の制御について説明するためのフローチャートである。なお、図9において、図7と同様の処理については同一の符号を付して説明を省略する。
【0058】
ステップS2において、測定された流量が閾値を超えていると判定された場合、制御部51は、気腹用管路42上のリリーフ弁を開け(ステップS11)、処理を終了する。
【0059】
以上のように、気腹装置3は、洗浄用管路43に供給される炭酸ガスの流量を測定し、その測定結果に基づき、挿入部5aの先端面5cの洗浄を行っていると判定した場合、気腹用管路42上に設けられた電磁弁/リリーフ弁45のリリーフ弁を開けるようにした。この結果、気腹用の炭酸ガス及び洗浄用の炭酸ガスが腹腔9内に送気されている場合でも、腹腔9内の炭酸ガスを大気中に放出することができ、腹腔9内が過圧になることを防ぐようにしている。
【0060】
よって、本実施の形態の気腹装置によれば、第1の実施の形態の気腹装置と同様に、レンズ面の洗浄を実施しても腹腔内部の過圧を防ぐことができ、より最適な手術環境を提供することができる。
【0061】
(第3の実施の形態)
次に、第3の実施の形態について説明する。なお、第3の実施の形態の気腹装置3の構成は、第1の実施の形態の気腹装置3の構成と同様であり、以下の制御のみが異なっている。
【0062】
第1の実施の形態の気腹装置3は、照明レンズ17や対物レンズ18の洗浄を行っている場合に、制御部51が電磁弁/リリーフ弁45の電磁弁の制御を行い、第2の実施の形態の気腹装置3は、制御部51が電磁弁/リリーフ弁45のリリーフ弁の制御を行っていたが、第3の実施の形態の気腹装置3は、電磁弁/リリーフ弁45の電磁弁及びリリーフ弁の制御を行う。
【0063】
具体的には、制御部51は、流量センサ50の測定結果を監視し、洗浄シース4による洗浄動作が行われていると判定した場合、気腹用管路42上の電磁弁/リリーフ弁45の電磁弁の閉じ、かつ、リリーフ弁を開けるように制御する。電磁弁/リリーフ弁45の電磁弁を閉じることで、気腹用の炭酸ガスが腹腔9内に送気されることを停止する。さらに、電磁弁/リリーフ弁45のリリーフ弁を開けることで、腹腔9内に送気される洗浄用の炭酸ガスと同等の炭酸ガスを大気中に放出し、腹腔9内が過圧になることを防ぐようにしている。このように、制御部51は、流量センサ50で測定された炭酸ガスの流量が所定の閾値を超えた場合、電磁弁/リリーフ弁45の電磁弁を閉状態、かつ、リリーフ弁を開状態とするように制御する。
【0064】
次に、気腹用管路42上の電磁弁及びリリーフ弁の制御について図10及び図11を用いて説明する。図10は、気腹用管路上の電磁弁及びリリーフ弁の制御について説明するためのタイミングチャートである。
【0065】
図10に示すように、制御部51は、洗浄用管路43に供給される炭酸ガスの流量が所定の閾値Th以下の場合、照明レンズ17や対物レンズ18のレンズ面の洗浄をしていないと判定する。このようなレンズ面の洗浄をしていない区間では、制御部51は、気腹用管路42上の電磁弁/リリーフ弁45の電磁弁を開け、かつ、リリーフ弁を閉じる。
【0066】
一方、制御部51は、洗浄用管路43に供給される炭酸ガスの流量が所定の閾値Thを超える場合、照明レンズ17や対物レンズ18のレンズ面の洗浄をしていると判定する。すなわち、時間t1から時間t2は、レンズ面の洗浄をしている区間となる。
【0067】
このようなレンズ面を洗浄している区間では、制御部51は、腹腔9内の過圧を防ぐために、気腹用管路42上の電磁弁/リリーフ弁45の電磁弁を閉めて、気腹用の送気を停止するとともに、リリーフ弁を開け、腹腔9内の炭酸ガスを大気中に放出する。
【0068】
なお、制御部51は、圧力センサ46からの測定結果を監視し、腹腔9内が所定の圧力以下となった場合、レンズ面の洗浄をしている区間であっても、腹腔9内が所定の圧力となるように、電磁弁/リリーフ弁45の電磁弁の開閉を制御する。
【0069】
そして、制御部51は、洗浄用管路43に供給される炭酸ガスの流量が所定の閾値Th以下、すなわち、時間t2以降になると、レンズ面の洗浄をしていないと判定し、電磁弁/リリーフ弁45の電磁弁を開け、かつ、リリーフ弁を閉じる。
【0070】
図11は、気腹用管路上の電磁弁及びリリーフ弁の制御について説明するためのフローチャートである。なお、図11において、図7と同様の処理については同一の符号を付して説明を省略する。
【0071】
ステップS2において、測定された流量が閾値を超えていると判定された場合、制御部51は、気腹用管路42上の電磁弁を閉じ、かつ、リリーフ弁を開け(ステップS21)、処理を終了する。
【0072】
以上のように、気腹装置3は、洗浄用管路43に供給される炭酸ガスの流量を測定し、その測定結果に基づき、挿入部5aの先端面5cの洗浄を行っていると判定した場合、気腹用管路42上に設けられた電磁弁/リリーフ弁45の電磁弁を閉じ、かつ、リリーフ弁を開けるようにした。この結果、気腹用の炭酸ガスが腹腔9内に送気されることを停止するとともに、腹腔9内に送気される洗浄用の炭酸ガスと同等の炭酸ガスを大気中に放出することができ、腹腔9内が過圧になることを防ぐようにしている。
【0073】
よって、本実施の形態の気腹装置によれば、第1の実施の形態の気腹装置と同様に、レンズ面の洗浄を実施しても腹腔内部の過圧を防ぐことができ、より最適な手術環境を提供することができる。
【0074】
なお、本実施の形態における各手順の各ステップは、その性質に反しない限り、実行順序を変更し、複数同時に実行し、あるいは実行毎に異なった順序で実行してもよい。
【0075】
本発明は、上述した実施の形態に限定されるものではなく、本発明の要旨を変えない範囲において、種々の変更、改変等が可能である。
【符号の説明】
【0076】
1…外科手術システム、2…トラカール、2a…接続部、3…気腹装置、3a…気腹用送気口金、3b…洗浄用送気口金、3c…口金、4…洗浄シース、4a…シース挿入部、4b…接続部、4c…洗浄ボタン、5…内視鏡、5a…挿入部、5b…把持部、5c…先端面、6…光源装置、7…炭酸ガスボンベ、8…バッグ、9…腹腔、10,12…送気チューブ、11…高圧ホース、13…送水チューブ、14…加圧バッグ、15…接続部、16…洗浄ノズル、17…照明レンズ、18…対物レンズ、31…案内部、32…管路、33,34…孔、35…バネ、40…管路、41,44,48…減圧器、42…気腹用管路、43…洗浄用管路、45…電磁弁/リリーフ弁、46…圧力センサ、47…流量センサ、49…電磁弁、50…流量センサ、51…制御部。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11