特許第6245867号(P6245867)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6245867PPARγ活性向上剤及びそれを用いた経口組成物
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6245867
(24)【登録日】2017年11月24日
(45)【発行日】2017年12月13日
(54)【発明の名称】PPARγ活性向上剤及びそれを用いた経口組成物
(51)【国際特許分類】
   A61K 36/48 20060101AFI20171204BHJP
   A61K 36/53 20060101ALI20171204BHJP
   A61P 43/00 20060101ALI20171204BHJP
   A61P 3/10 20060101ALI20171204BHJP
   A61P 3/04 20060101ALI20171204BHJP
   A61P 9/10 20060101ALI20171204BHJP
   A61P 9/12 20060101ALI20171204BHJP
   A61P 3/06 20060101ALI20171204BHJP
【FI】
   A61K36/48
   A61K36/53
   A61P43/00 111
   A61P43/00 121
   A61P3/10
   A61P3/04
   A61P9/10 101
   A61P9/12
   A61P3/06
【請求項の数】5
【全頁数】9
(21)【出願番号】特願2013-142187(P2013-142187)
(22)【出願日】2013年7月5日
(65)【公開番号】特開2015-13837(P2015-13837A)
(43)【公開日】2015年1月22日
【審査請求日】2016年7月1日
(73)【特許権者】
【識別番号】000108454
【氏名又は名称】ソマール株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100092783
【弁理士】
【氏名又は名称】小林 浩
(74)【代理人】
【識別番号】100120134
【弁理士】
【氏名又は名称】大森 規雄
(74)【代理人】
【識別番号】100194423
【弁理士】
【氏名又は名称】植竹 友紀子
(74)【代理人】
【識別番号】100104282
【弁理士】
【氏名又は名称】鈴木 康仁
(72)【発明者】
【氏名】上田 佳宏
(72)【発明者】
【氏名】秋山 亜希子
(72)【発明者】
【氏名】松本 拓矩
【審査官】 鈴木 理文
(56)【参考文献】
【文献】 特開2004−250445(JP,A)
【文献】 特開2007−106718(JP,A)
【文献】 特開2010−100545(JP,A)
【文献】 再公表特許第2003/037316(JP,A1)
【文献】 特開2006−273788(JP,A)
【文献】 特開2008−088087(JP,A)
【文献】 Mintel GNPD ID#1948463,2012年
【文献】 Food Chem.,2009年,Vol.117,pp.660-667
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61K 36/48
A61K 36/53
A61P 3/04
A61P 3/06
A61P 3/10
A61P 9/10
A61P 9/12
A61P 43/00
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
CAplus/REGISTRY/MEDLINE/EMBASE/BIOSIS(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
葉を含むマメ科植物の水、炭素数1〜4の低級アルコール、または含水多価アルコールによるマメ科植物抽出物、及び、葉を含むシソ科植物の水、炭素数1〜4の低級アルコール、または含水多価アルコールによるシソ科植物抽出物を含有し、
前記マメ科植物がルイボスであり、
前記シソ科植物がバジルである、PPARγ活性向上剤。
【請求項2】
前記マメ科植物抽出物は水抽出物であり、前記シソ科植物抽出物も水抽出物である、請求項1に記載のPPARγ活性向上剤。
【請求項3】
請求項1または2に記載のPPARγ活性向上剤を含有することを特徴とするPPARγ活性化用経口組成物。
【請求項4】
マメ科植物の抽出物およびシソ科植物の抽出物を含有するPPARγ活性向上剤の製造方法であって、
葉を含むマメ科植物を、水、炭素数1〜4の低級アルコール、または含水多価アルコールで抽出して、マメ科植物抽出物を得ること;
葉を含むシソ科植物を、水、炭素数1〜4の低級アルコール、または含水多価アルコールで抽出して、シソ科植物抽出物を得ること;および
前記マメ科植物抽出物および前記シソ科植物抽出物を混合すること;
を含み、
前記マメ科植物がルイボスであり、前記シソ科植物がバジルである、製造方法
【請求項5】
マメ科植物の抽出物およびシソ科植物の抽出物を含有するPPARγ活性向上剤の製造方法であって、
葉を含むマメ科植物および葉を含むシソ科植物の混合物を、水、炭素数1〜4の低級アルコール、または含水多価アルコールで抽出して、マメ科植物およびシソ科植物の混合抽出物を得ることを含み、
前記マメ科植物がルイボスであり、前記シソ科植物がバジルである、製造方法
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、PPARγ活性向上剤及びPPARγ活性向上剤を用いた経口組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
内臓に脂肪が蓄積した肥満(内臓脂肪型肥満)に高血糖、高血圧、脂質異常のいずれか2つ以上を併発した状態であるメタボリックシンドローム(内臓脂肪症候群)は、生活習慣病と大きく関わりがあることがわかっている。肥満とは脂肪が蓄積して細胞が肥大した状態であり、これまで脂肪細胞は余剰エネルギーを蓄積する組織であると考えられていた。しかしながら、脂肪細胞は生理活性物質を分泌し、糖や脂質代謝などに重要な役割を果たしていることがわかってきた。
【0003】
脂肪細胞に脂肪が蓄積すると、脂肪細胞からアディポサイトカインという生理活性物質が分泌される。アディポサイトカインとは、具体例として、アディポネクチン、レプチン、TNF−α、PAI−1、HB−EGF、レジスチンなどを挙げることができる。特にアディポネクチンは脂肪細胞から特異的に分泌されるタンパク質であり、小型脂肪細胞において多く分泌され、肥大した脂肪細胞ではその分泌量が減少することが知られている。そして、血中にも高濃度に存在し、血中アディポネクチン濃度の低下はインスリン抵抗性をもたらし、循環器系疾患、糖尿病、肥満などの生活習慣病の原因になると考えられている。インスリン抵抗性とはインスリン感受性が低下した状態である。つまり、インスリンが効きにくい状態にあることで、血糖コントロールが正常でなくなり、高血糖を引き起こす大きな要因となる。
【0004】
このアディポサイトカインの分泌に影響を与えるタンパク質が、ペルオキシソーム増殖剤応答性受容体(Peroxisome Proliferator−Activated Receptor:PPAR)である。このPPARは、特定の受容体に結合する物質(リガンド)に依存して転写を制御する核内受容体の1つである。哺乳動物においてはPPARα、PPARδ、PPARγの3種類が知られており、PPARαは肝臓、腎臓、心臓、小腸などに発現しており、PPARδは組織特異的な発現がみられず普遍的な発現が認められる。PPARγは少なくとも3種のアイソフォームが存在しており、インスリン感受性に深く関与し、脂肪細胞の分化や脂質の取り込みを制御する役割をもつ(非特許文献1)。
【0005】
特にPPARγは脂肪細胞の分化に必要不可欠な分子である。PPARγリガンドとしては、具体例として、15−ジオキシ−Δ12,14−プロスタグランジンJ2及びΔ12−プロスタグランジンJ2などのアラキドン酸代謝物、α−リノレン酸、エイコサペンタエン酸(EPA)及びドコサヘキサエン酸(DHA)などの不飽和脂肪酸並びに9−ヒドロキシオクタデカジエン酸及び13−ヒドロキシオクタデカジエン酸などのエイコサノイド類が知られている(非特許文献2)。さらに、共役トリエン構造や共役テトラエン構造を有する炭素数10〜26の共役不飽和脂肪酸が(特許文献1)、合成化合物では、具体例として、トログリタゾン、ピオグリタゾン、ロシグリタゾンなどのチアゾリジン誘導体が知られている。
【0006】
PPARγリガンドであるチアゾリジン誘導体は、PPARγを活性化することにより、前駆脂肪細胞から分化した正常機能を有する小型脂肪細胞を増加させる。そして、インスリン抵抗性をもたらすアディポサイトカインである、TNF−αなどの産生及び分泌が亢進した肥大化脂肪細胞を細胞死(アポトーシス)により減少させることで、インスリン抵抗性を改善する(非特許文献3)。インスリン抵抗性を改善することにより、高脂血症、高血圧、2型糖尿病、内臓脂肪型肥満、脂肪肝などの症状の予防及び改善にも有効である。よって、PPARγリガンドは、インスリン抵抗性によってもたらされる病態群、すなわちメタボリックシンドロームの予防及び改善に有効である。
【0007】
このようにPPARはアディポサイトカインに関与している。特にPPARγリガンドは前駆脂肪細胞からアディポネクチン産生能を有する小型脂肪細胞への分化誘導及び肥大した脂肪細胞のアポトーシスにより脂肪細胞の小型化をもたらす。小型脂肪細胞ではアディポネクチン産生量の亢進に加えて、炎症性サイトカインであるTNF−αの産生量が低下し、インスリン感受性の増強をもたらす。一方、肥大した大型脂肪細胞ではTNF−αの産生量が増加し、インスリン感受性を低下させ、血糖値を上昇させる。このようにPPARγ活性の向上はアディポサイトカイン、特にインスリン感受性の向上に影響を与えるアディポネクチンの分泌を促進させ、さらにTNF−αの生産量を低下させる。したがって、PPARγリガンドであるチアゾリジン誘導体は耐糖能異常患者の血中アディポネクチン濃度を上昇させる(非特許文献4)。
【0008】
また、アディポネクチンの分泌を促進する方法としては、米糠、羅漢果、シメジ、キク、ライ麦、シラカバ、月桃から抽出されたトリテルペン類(特許文献2)、特定のアミノアルコキシビベンジル類(特許文献3)、ショウガ科ウコン属植物の根茎より抽出したクルクミン(特許文献4)、発酵茶抽出物(特許文献5)を投与する方法が提案されている。また、シソ科植物の抽出物がアディポネクチンの分泌を促進させる技術も提案されている(特許文献6)。
【0009】
さらには、デヒドロジオイゲノールA、デヒドロジオイゲノールB、マグノロール、オレアノール酸、ベツリン酸及びこれらの化合物の塩からなる群より選ばれる少なくとも1種以上の化合物からなるPPARγリガンド剤(特許文献7)が提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0010】
【特許文献1】特開2000−355538号公報
【特許文献2】特開2005−068132号公報
【特許文献3】特開2005−053890号公報
【特許文献4】特開2005−060308号公報
【特許文献5】特開2004−315379号公報
【特許文献6】特開2007−106718号公報
【特許文献7】特開2005−097216号公報
【非特許文献】
【0011】
【非特許文献1】「医学のあゆみ」、医歯薬出版株式会社、1998年、第184巻、p.519−523
【非特許文献2】「ダイアベトロジア(Diabetologia)」、(英国)、欧州糖尿病学会、1999年、第42巻、p.1033−1049
【非特許文献3】「ジャーナル・オブ・クリニカルインベスティゲーション(The Journal of Clinical Investigation)」、(米国)、American Society for Clinical Investigation、1998年、第101巻、p.1353−1361
【非特許文献4】「ダイアベティス(Diabetes)」、(米国)、米国糖尿病学会、2001年、第50巻、p.2094−2099
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
本発明は、アディポサイトカインの分泌を促進し、糖や脂質代謝を改善するPPARγ活性向上剤及びPPARγ活性向上剤を用いた経口組成物を提供するためになされたものである。
【課題を解決するための手段】
【0013】
本発明者らは、前記課題を解決するために鋭意研究を重ねた結果、マメ科植物の抽出物及びシソ科植物の抽出物にPPARγ活性作用があることを見出し、本発明を完成させるに至った。
すなわち、本発明は以下のとおりである。
【0014】
(1)マメ科植物の抽出物及びシソ科植物の抽出物を含有することを特徴とするPPARγ活性向上剤。
【0015】
(2)前記マメ科植物がルイボスであることを特徴とする請求項1記載のPPARγ活性向上剤。
【0016】
(3)前記シソ科植物がバジルであることを特徴とする請求項1記載のPPARγ活性向上剤。
【0017】
(4)前記(1)〜(3)いずれかに記載のPPARγ活性向上剤を含有することを特徴とする経口組成物。
【発明の効果】
【0018】
本発明はPPARγ活性向上剤及びこれを用いた経口組成物であり、これを摂取することによりPPARγを活性化させ、脂肪細胞からのアディポサイトカインの分泌を促進し、インスリン感受性を改善することが可能となる。したがって、糖尿病、動脈硬化、高血圧、高脂血症、メタボリックシンドロームなどの予防又は改善に有効である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
本発明のPPARγ活性向上剤はマメ科植物により抽出された抽出物及びシソ科植物から抽出された抽出物を含有するものである。
【0020】
前記マメ科植物の抽出物は、具体例として、大豆、えんどう豆、落花生、ルイボス、エンジュ、甘草などが挙げられる。マメ科植物の状態も、前記シソ科植物の場合と同じようになまの状態又は乾燥状態でもよいが、取り扱い及び入手の点から乾燥したものを用いるとよい。本発明においては、前駆体細胞から肥満細胞への分化される前までの細胞に作用し、PPARγ活性を向上させ、特にアディポネクチンの分泌を促すことが可能であることから、ルイボスの抽出物を用いることが好ましい。
【0021】
前記シソ科植物は、具体例として、青シソ、赤シソなどのシソ、エゴマ、バジル、ミント、セージ、マジョラム、オレガノ、タイム、レモンバームなどから選ばれた1種又は2種以上の植物から選択されたものを用いる。シソ科植物の状態は、なまの状態又は乾燥状態でもよいが、原材料としての保存安定性、抽出成分の取り扱い及び入手の点から乾燥したものを用いるとよい。本発明においては、前駆体細胞から肥満細胞への分化される前までの細胞に作用し、PPARγ活性を向上させ、特にアディポネクチンの分泌を促すことが可能であることから、バジルの抽出物を用いることが好ましい。
【0022】
前記マメ科植物の抽出物とシソ科植物の抽出物との配合割合は、質量比でマメ科植物の抽出物を10とした場合に、シソ科植物の抽出物は0.1以上、さらに好ましくは1以上であり、特には2.5以上が好ましい。また、質量比でマメ科植物の抽出物を10とした場合に、シソ科植物の抽出物は10以下、さらに好ましくは9.0以下であり、特には8.0以下が好ましい。この範囲においてマメ科植物の抽出物とシソ科植物の抽出物を配合することにより、前駆体細胞から肥満細胞への分化に至る各細胞に対するPPAR活性、特にPPARγ活性を向上させる効果を十分に得ることができる。
【0023】
前記マメ科植物の抽出物及びシソ科植物の抽出物を抽出する方法は特に制限はなく、通常、植物などからエキスを含む各成分を抽出する場合に用いられる方法でよい。具体例として、植物の全草、花、がく、種子、果実、葉、枝、樹皮、根皮、根茎、根などから選ばれる1種又は2種以上の部位を加工せずにそのまま用いるか、もしくは裁断、粉砕又は細粉などの加工を行い、続いて搾取又は溶媒で抽出する。なお、使用する植物の部位は特に制限はないが、取り扱い及び入手の点から葉を用いるとよい。種子又は果実を用いる場合には、あらかじめ脱脂を行い、油分を減らすことが望ましい。加熱抽出した場合には、得られたろ液を減圧乾固又は凍結乾燥することもできる。
【0024】
本発明においては、前記溶媒を用いた抽出方法を用いる場合に、溶媒としては特に限定をせず、任意のものを適宜選択することができる。具体例として、水、炭素数1〜4の低級アルコール、含水多価アルコール、その他有機溶媒、酸やアルカリなどが挙げられる。揮発性の高い溶媒を用いて抽出を行う場合には、溶媒を除去した後、水に溶解させることもできる。本発明においては、これらは単独で用いてもよく、また2種以上を併用してもよい。特に、食品や化粧品素材など有機溶媒を用いることが困難である場合には、水やエタノールを選択することが好ましい。前記マメ科植物及びシソ科植物の乾燥物を水で抽出した場合には、作業が容易であり、加工せずに食品として飲料などに用いることができる。
【0025】
溶媒抽出方法はなまの状態又は乾燥状態の前記マメ科植物及びシソ科植物を加工せずにそのまま用いるか、もしくは裁断、粉砕又は細粉などの加工を行い、抽出溶媒を5〜100倍量加える。続いて、常圧常温にて1〜72時間静置する又は振とうする。温度条件は使用する溶媒の沸点により適宜設定するが、−4〜100℃の範囲にて設定することが望ましい。また、温度条件を抽出溶媒の沸点前後に設定し、10〜30分間抽出した後にろ過することもできる。さらに、加圧条件は任意に設定することができる。抽出時間は10分〜72時間の範囲にて適宜設定する。抽出時には超音波や低周波などの振動を加える又は容器を振るなどして抽出を促進してもよい。
【0026】
本発明では、搾取するよりも、溶媒抽出や得られた抽出物の濃縮を行うことによりPPARγ活性向上作用をさらに高めることができる。
【0027】
また、圧搾処理などの方法にて搾取することにより得られる圧搾液及び/又は残渣に溶媒を加えて抽出した抽出物も、本発明における抽出物として用いることができる。さらに、二酸化炭素,炭酸ガスなどを用いた超臨界流体を用いた超臨界抽出法を使用することもできる。
【0028】
本発明においては、抽出物を得るための各植物は単独でも混合でもいずれにおいても抽出することができる。
【0029】
前記溶媒抽出法により得られた抽出物は、加工せずに用いることもできるが、必要に応じ、その効果に影響のない範囲内で脱臭や脱色などの精製処理を加えることができる。このような精製処理としては、通常の手段を任意に選択することができる。具体例としては、ろ過、イオン交換樹脂、活性炭カラムなどが挙げられる。さらに凍結乾燥又は濃縮処理などにより溶液状、固形状、ペースト状、ゲル状、粉末状の精製物を得ることができる。
【0030】
さらに本発明は、前記PPARγ活性向上剤を用いた経口組成物に関するものである。経口組成物としては、具体例として、食品、飲料、医薬品、医薬部外品、特定保健用食品、栄養機能食品、健康食品などが挙げられる。特には、通常の食事として摂取ができる形態である健康食品が好ましい。さらに、家畜や愛玩動物など、ヒト以外の動物用飼料、動物用ダイエット食品や飲料などが挙げられる。本発明の経口組成物は、PPARγ活性向上剤単独でもその効果を得られるが、経口摂取を容易にするための食品や医薬品で用いられる公知の成分を含有することができ、適当な方法で加工することができる。本発明の飲食品組成物の形状としては特に限定をせず、具体例として、飲料、散剤、顆粒剤、錠剤、カプセル、アンプル、丸剤、粉末、顆粒、固形、液体、ゲル、気泡、エマルジョン、シート、ミスト、スプレー剤、その他一般的に食品や薬剤として摂取可能な形状が挙げられる。使用条件に応じて最適な形状を適宜選択することができる。
【0031】
前記経口組成物に含有するPPARγ活性向上剤の含有量は種類、目的、形態、摂取方法などに応じて適宜調製するものであるが、1日当たりに換算したPPARγ活性向上剤の摂取量は、0.1〜500mg/kg体重であることが望ましい。
【0032】
前記経口組成物としての食品や飲料としては、具体例として、ガム、キャンデーなどの口腔用組成物、かまぼこなどの加工水産ねり製品、ソーセージやハムなどの畜産製品、洋菓子類、和菓子類、中華麺やソバなどの麺類、ソースや醤油などの調味料、からし粉やコショウ粉などの香辛料、ジャム、マーマレード、チョコレートスプレッド、漬物、惣菜、ふりかけ、缶詰などの加工野菜や果実類、チーズやヨーグルトなどの乳製品、みそ汁、スープ、果実ジュース、野菜ジュース、乳清飲料、清涼飲料や酒類などの嗜好飲料、栄養補助食品、健康補助食品などが挙げられる。
【0033】
次に、実施例により本発明をさらに詳細に説明する。
【0034】
(抽出物の作製)
(抽出物1)
23℃常圧下、バジル(南アフリカ産)の乾燥物5gを水95mlに浸し、回転数を800〜1200rpmに設定した撹拌機を使用して1時間撹拌した。続いて、得られた抽出液をろ紙No.2(アドバンテック東洋社製)を使用してろ過し、抽出物を得た。
【0035】
(抽出物2)
抽出物を得るための植物として、ガーリック(南アフリカ産)を用いた以外はすべて抽出物1と同じ方法にて、抽出物を得た。
【0036】
(抽出物3)
抽出物を得るための植物として、ルイボス(南アフリカ産)を用いた以外はすべて抽出物1と同じ方法にて、抽出物を得た。
【0037】
(実施例1)
抽出物1及び3を各15μl量り取り、混合抽出物30μlを調製し、PPARγ活性向上剤とした。
【0038】
(比較例1〜5)
抽出物1〜3を表1に示す配合割合にて混合し、その抽出物をPPARγ活性向上剤とした。
【0039】
【表1】
【0040】
(アディポネクチン及びPPARγ遺伝子発現量の測定)
10%ウシ胎仔血清を含むダルベッコ改変イーグル培地(DMEM)を用い、脂肪前駆体細胞3T3−L1を37℃、5%炭酸ガス雰囲気下にて、6ウエルプレートに2×10cell/mlにて分注し24時間培養した。続いて、リコンビナント低濃度インスリン分化誘導物質2μmol/lを添加し144時間培養した後、PPARγ活性向上剤として用いる前記抽出物を添加した。添加後に採取した細胞を、Fast pure RNA Kit(タカラバイオ株式会社製)を使用してtotal RNAを抽出し、PrimeScript RT reagent Kit(タカラバイオ株式会社製)を使用してcDNAを合成後、アディポネクチン及びPPARγ遺伝子発現量について、リアルタイムPCR装置(タカラバイオ株式会社製)を使用して測定した。得られた測定結果を表2及び表3に示す。なお、得られた数値はPPARγ活性向上剤を無添加とした場合におけるアディポネクチン及びPPARγ遺伝子発現量を1とし、それに対する相対値を示す。
【0041】
【表2】
【0042】
【表3】
【0043】
表2及び表3の結果から明らかなように、実施例1において、PPARγ活性向上剤を添加した場合には、アディポネクチン発現量及びPPARγ発現量はいずれも比較例1〜5より大きい数値になっている。これはバジル、すなわちシソ科植物の抽出物及びルイボス、すなわちマメ科植物の抽出物がPPARγ活性を著しく向上させていることを示している。特に、実施例1を比較例5と比較すると、単独成分より混合成分を用いることにより、数値が著しく上昇している。さらに、実施例1を比較例1及び比較例3と比較すると、混合成分はそれぞれ単独成分では得られない活性向上効果があることがわかる。したがって、本発明のPPARγ活性向上剤は、成分を組み合わせて用いることにより著しい効果が期待できる。
このことから、本発明のPPARγ活性向上剤を含む食品、飲料、医薬品、愛玩動物用飼料などの経口組成物は、それらを摂取することにより、PPARγ活性を向上させ、アディポネクチンの分泌を促進し、インスリン抵抗性を効果的に改善することができる。そして、糖尿病、動脈硬化症、高血圧、高脂血症、肥満、メタボリックシンドローム、さらには2型糖尿病、内臓脂肪型肥満、脂肪肝を予防又は改善することができる。
【産業上の利用可能性】
【0044】
経口組成物として食品や飲料に加工し、それらを摂取することにより糖尿病、動脈硬化、高血圧、高脂血症、メタボリックシンドロームなどの予防又は改善に有効である。