特許第6245884号(P6245884)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6245884ナノカーボン分散剤並びにそれを用いたナノカーボン分散体及びナノカーボン含有構造体
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  • 特許6245884-ナノカーボン分散剤並びにそれを用いたナノカーボン分散体及びナノカーボン含有構造体 図000005
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6245884
(24)【登録日】2017年11月24日
(45)【発行日】2017年12月13日
(54)【発明の名称】ナノカーボン分散剤並びにそれを用いたナノカーボン分散体及びナノカーボン含有構造体
(51)【国際特許分類】
   B01F 17/52 20060101AFI20171204BHJP
   C01B 32/15 20170101ALN20171204BHJP
【FI】
   B01F17/52
   !C01B32/15
【請求項の数】7
【全頁数】20
(21)【出願番号】特願2013-160668(P2013-160668)
(22)【出願日】2013年8月1日
(65)【公開番号】特開2015-29947(P2015-29947A)
(43)【公開日】2015年2月16日
【審査請求日】2016年6月2日
(73)【特許権者】
【識別番号】000000284
【氏名又は名称】大阪瓦斯株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000796
【氏名又は名称】特許業務法人三枝国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】山田 昌宏
(72)【発明者】
【氏名】阪本 浩規
(72)【発明者】
【氏名】川崎 真一
(72)【発明者】
【氏名】在間 弘朗
【審査官】 井上 恵理
(56)【参考文献】
【文献】 特開2002−177757(JP,A)
【文献】 特開2010−037537(JP,A)
【文献】 特開2012−240891(JP,A)
【文献】 特開2007−077243(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B01F 17/00− 17/56
C01B 32/00− 32/991
H01M 4/00− 4/62
CAplus/REGISTRY(STN)
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
シクロオレフィンポリマーに一般式(1)
【化1】
[式中、Z及びZは同じか又は異なり、それぞれ芳香族炭化水素環;
2a及びR2bは同じか又は異なり、それぞれ炭化水素基(アルキル基、シクロアルキル基等、アリール基、アラルキル基等)、アルコキシ基、シクロアルコキシ基、アリールオキシ基、アラルキルオキシ基、アシル基、アルコキシカルボニル基、ヒドロキシアリール基、ハロゲン原子、ニトロ基、シアノ基、無置換アミノ基若しくは置換アミノ基、グリシジル基、又は基:−O−(R1aO)−H;
1aは同じか又は異なり、それぞれアルキレン基;
3a及びR3bは同じか又は異なり、それぞれ炭化水素基、アルコキシ基、ハロゲン原子、ニトロ基、シアノ基又は置換アミノ基;
mはそれぞれ0以上の整数(好ましくは、0〜10の整数);
h1及びh2は同じか又は異なり、それぞれ0〜4の整数;
j1及びj2は同じか又は異なり、それぞれ0〜4の整数である。]
で表される9,9−ビス(置換アリール)フルオレン骨格含有置換基を有するビニル化合物をラジカル剤存在下で反応させて得られる、ナノカーボン分散剤。
【請求項2】
前記シクロオレフィンポリマーがノルボルネンとエチレン又はエチレン誘導体の付加共重合体、ノルボルネン誘導体とエチレン又はエチレン誘導体の付加共重合体、ノルボルネンの開環メタセシス重合体の水素化物、ノルボルネン誘導体の開環メタセシス重合体の水素化物、ノルボルネンの付加重合体、ノルボルネン誘導体の付加重合体、シクロペンタジエンの付加重合体の水素化物及びシクロペンタジエン誘導体の付加重合体の水素化物からなる群より選ばれる少なくとも一種である、請求項に記載のナノカーボン分散剤。
【請求項3】
請求項1又は2に記載のナノカーボン分散剤、ナノカーボン及び有機溶媒を含有するナノカーボン分散体。
【請求項4】
請求項に記載のナノカーボン分散体の乾燥物である、ナノカーボン含有構造体。
【請求項5】
前記ナノカーボン分散体から前記有機溶媒を除去して得られる、請求項に記載のナノカーボン含有構造体。
【請求項6】
前記ナノカーボン分散体から前記有機溶媒及び前記ナノカーボン分散剤を除去して得られる、請求項に記載のナノカーボン含有構造体。
【請求項7】
シクロオレフィンポリマーに一般式(1)
【化2】
[式中、Z及びZは同じか又は異なり、それぞれ芳香族炭化水素環;
2a及びR2bは同じか又は異なり、それぞれ炭化水素基(アルキル基、シクロアルキル基等、アリール基、アラルキル基等)、アルコキシ基、シクロアルコキシ基、アリールオキシ基、アラルキルオキシ基、アシル基、アルコキシカルボニル基、ヒドロキシアリール基、ハロゲン原子、ニトロ基、シアノ基、無置換アミノ基若しくは置換アミノ基、グリシジル基、又は基:−O−(R1aO)−H;
1aは同じか又は異なり、それぞれアルキレン基;
3a及びR3bは同じか又は異なり、それぞれ炭化水素基、アルコキシ基、ハロゲン原子、ニトロ基、シアノ基又は置換アミノ基;
mはそれぞれ0以上の整数(好ましくは、0〜10の整数);
h1及びh2は同じか又は異なり、それぞれ0〜4の整数;
j1及びj2は同じか又は異なり、それぞれ0〜4の整数である。]
で表される9,9−ビス(置換アリール)フルオレン骨格含有置換基を有するビニル化合物をラジカル剤存在下で反応させる、ナノカーボン分散剤の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ナノカーボン分散剤並びにそれを用いたナノカーボン分散体及びナノカーボン含有構造体に関する。
【背景技術】
【0002】
カーボンナノチューブに代表されるナノカーボンは電気伝導性、熱伝導性、機械的強度、熱安定性等が優れているため、その応用開発研究が盛んに行われている。
【0003】
しかしながら、ナノカーボンは分散媒中で強いファン・デル・ワールス力によって束状、絡み合ったロープ状又は塊状に凝集しやすいため、分離・精製及び取扱いが困難という問題がある。そして、特に機能性材料として期待されているカーボンナノチューブにおいては、凝集が著しく、凝集解消が強く求められている。
【0004】
分散媒中での凝集を解消して分離・精製及び取扱いを容易にするために、媒体中でナノカーボンを孤立分散させる試みがなされている。第一のアプローチは、カーボンナノチューブの端部を親水性基又は疎水性基で化学修飾することによって媒体中に分散しやすくする方法である。第二のアプローチは、カーボンナノチューブの媒体中での親和性を介助する物質(分散剤)を用いる方法である。
【0005】
カーボンナノチューブを媒体に安定分散するための分散剤として、水系では界面活性剤や水溶性高分子、有機溶剤系では主鎖に芳香族基を有するような高分子が用いられている。界面活性剤のような低分子化合物では、疎水性相互作用やπ−π相互作用により、高分子では、高分子主鎖がカーボンナノチューブに纏わりつくような形でカーボンナノチューブ表面に吸着してカーボンナノチューブを分散安定化していると考えられている(非特許文献1)。
【0006】
これらの分散剤を用いてカーボンナノチューブ導電層等のナノカーボン含有構造体を製造する場合、吸着している界面活性剤や高分子分散剤等が絶縁体であるためナノカーボン間の導通を妨げる要因になり、洗浄等により除去することが行われる。しかしながら、従来の高分子分散剤の吸着形態は、分散剤の除去を困難にするものである。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0007】
【非特許文献1】N.G.Sahoo et.al., Progress in Polymer Science, 35, (2010) 837-867.
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明は、容易に除去可能なナノカーボン分散剤、並びにそれを用いたナノカーボン分散体を提供することを目的とする。また、当該ナノカーボン分散体から媒体を除去して得られる、電気伝導性の高いナノカーボン含有構造体を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明者は、上記目的を達成すべく鋭意研究を重ねた結果、側鎖に単環又は多環芳香族基を有するシクロオレフィンポリマーをナノカーボンの分散剤として採用する場合には上記目的を達成できることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0010】
即ち、本発明は下記のナノカーボン分散剤、並びにそれを用いたナノカーボン分散体及びナノカーボン含有構造体に関する。
【0011】
項1.側鎖に単環又は多環の芳香族基を有するシクロオレフィンポリマーからなるナノカーボン分散剤。
【0012】
項2.前記側鎖に単環又は多環の芳香族基を有するシクロオレフィンポリマーが、シクロオレフィンポリマーに一般式(2)
CH=C(R)−W−R (2)
[式中、Wは単結合、−C(=O)−O−(CHO)n+1−、−C(=O)−X−(CHn+1−O−、−C(=O)−X−(CH−、−C(=O)−(C=O)−(CH−、−C(=O)−O−(C=O)−(CH−、−C(=O)−(OCHCH−Y−(CH−、−C(=O)−O−CHCH(OH)CH−O−(CHO)n+1−、−C(=O)−O−CHCH(OH)CH−X−(CHn+1−O−、−C(=O)−O−CHCH(OH)CH−Y−(CH−、−C(=O)−O−CHCH−NH−C(=O)−O−(CHO)n+1−、−C(=O)−O−CHCH−NH−C(=O)−X−(CHn+1−O−、又は−C(=O)−O−CHCH−NH−C(=O)−Y−(CH−を示す。
Xは2価の基である−O−又は−NH−、Yは2価の基である−O−、−NH−、−C(=O)−又は−O−C(=O)−を示し、nは0以上の整数を示し、sは1以上の整数を示す。
は水素原子又はメチル基を示し、Rは単環又は多環の芳香族基を示す。]
で表される単環又は多環の芳香族基を有するビニル化合物をラジカル剤存在下で反応させて得られたものである、前記項1に記載のナノカーボン分散剤。
【0013】
項3.前記シクロオレフィンポリマーがノルボルネンとエチレン又はエチレン誘導体の付加共重合体、ノルボルネン誘導体とエチレン又はエチレン誘導体の付加共重合体、ノルボルネンの開環メタセシス重合体の水素化物、ノルボルネン誘導体の開環メタセシス重合体の水素化物、ノルボルネンの付加重合体、ノルボルネン誘導体の付加重合体、シクロペンタジエンの付加重合体の水素化物及びシクロペンタジエン誘導体の付加重合体の水素化物からなる群より選ばれる少なくとも一種である、前記項1又は2に記載のナノカーボン分散剤。
【0014】
項4.前記項1〜3のいずれかに記載のナノカーボン分散剤、ナノカーボン及び有機溶媒を含有するナノカーボン分散体。
【0015】
項5.前記項4に記載のナノカーボン分散体の乾燥物である、ナノカーボン含有構造体。
【0016】
項6.前記ナノカーボン分散体から前記有機溶媒を除去して得られる、前記項5に記載のナノカーボン含有構造体。
【0017】
項7.前記ナノカーボン分散体から前記有機溶媒及び前記ナノカーボン分散剤を除去して得られる、前記項5に記載のナノカーボン含有構造体。
【0018】
項8.シクロオレフィンポリマーに一般式(2)
CH=C(R)−W−R (2)
[式中、Wは単結合、−C(=O)−O−(CHO)n+1−、−C(=O)−X−(CHn+1−O−、−C(=O)−X−(CH−、−C(=O)−(C=O)−(CH−、−C(=O)−O−(C=O)−(CH−、−C(=O)−(OCHCH−Y−(CH−、−C(=O)−O−CHCH(OH)CH−O−(CHO)n+1−、−C(=O)−O−CHCH(OH)CH−X−(CHn+1−O−、−C(=O)−O−CHCH(OH)CH−Y−(CH−、−C(=O)−O−CHCH−NH−C(=O)−O−(CHO)n+1−、−C(=O)−O−CHCH−NH−C(=O)−X−(CHn+1−O−、又は−C(=O)−O−CHCH−NH−C(=O)−Y−(CH−を示す。
Xは2価の基である−O−又は−NH−、
Yは2価の基である−O−、−NH−、−C(=O)−又は−O−C(=O)−を示し、
nは0以上の整数を示し、sは1以上の整数を示す。
は水素原子又はメチル基を示し、Rは単環又は多環の芳香族基を示す。]
で表される単環又は多環の芳香族基を有するビニル化合物をラジカル剤存在下で反応させる、側鎖に単環又は多環の芳香族基を有するシクロオレフィンポリマーからなるナノカーボン分散剤の製造方法。
【0019】
以下、本発明について詳細に説明する。
【0020】
ナノカーボン分散剤及びその製造方法
本発明のナノカーボン分散剤は、側鎖に単環又は多環の芳香族基を有するシクロオレフィンポリマー(以下、修飾シクロオレフィンポリマーともいう)からなる。
【0021】
本発明において、側鎖に単環又は多環の芳香族基を有するシクロオレフィンポリマーとは、側鎖として単環又は多環の芳香族基が直接又は間接的に(特に間接的に)置換されたシクロオレフィンポリマーをいう。
【0022】
本発明の修飾シクロオレフィンポリマーにおける単環又は多環芳香族基の結合量(含有量)は、修飾シクロオレフィンポリマー 1g当たり1×10−8〜1×10−2モルが好ましく、1×10−7〜7×10−3モルがより好ましく、1×10−6〜1×10−3モルが特に好ましい。分散効果の点で単環又は多環芳香族基の結合量が1×10−8モル以上(特に1×10−7モル以上、さらに1×10−6モル以上)であることが好ましく、有機溶媒に溶解しやすい点で単環又は多環芳香族基の結合量が1×10−2モル以下(特に7×10−3モル以下、さらに1×10−3モル以下)であることが好ましい。単環又は多環芳香族基の結合量は、トリオキサン等の適切な内部標準物質を用いて、H−NMRにより決定する。より具体的には、例えば、内部標準を使用し、原料であるシクロオレフィンポリマーの単位重量当たりのプロトン積分値を測定しておき、得られた修飾シクロオレフィンポリマーにおける単環又は多環芳香族基のプロトン積分値と原料であるシクロオレフィンポリマー由来のプロトン積分値とを比較することにより、1gに含まれる単環又は多環芳香族基の数(mol換算)を求めることで、単環又は多環芳香族基の結合量を算出することができる。
【0023】
本発明の修飾シクロオレフィンポリマーは単環又は多環の芳香族基を有しており、グラフェンを基本とする表面構造を有するナノカーボン表面に、π−π相互作用やファンデルワールス力等の物理的相互作用によって吸着することにより、ナノカーボン表面に吸着しやすくなると考えられる。本発明の修飾シクロオレフィンポリマーにおけるポリマー構造の主鎖であるシクロオレフィンポリマー自体はナノカーボン表面に吸着しないと考えられ、高分子主鎖に芳香族環構造を有する従来の高分子分散剤とは異なるため特性が異なると推測される。
【0024】
本発明において、シクロオレフィンポリマーとは、シクロペンタジエン、シクロペンタジエン誘導体、ノルボルネン、ノルボルネン誘導体、シクロヘキサジエン、シクロヘキサジエン誘導体等を原料とする分子内に脂環式炭化水素基を有する高分子化合物をいう。具体的には、ノルボルネンとエチレン又はエチレン誘導体の付加共重合体、ノルボルネン誘導体とエチレン又はエチレン誘導体の付加共重合体、ノルボルネンの開環メタセシス重合体の水素化物、ノルボルネン誘導体の開環メタセシス重合体の水素化物、ノルボルネンの付加重合体、ノルボルネン誘導体の付加重合体、シクロペンタジエンの付加重合体の水素化物、シクロペンタジエン誘導体の付加重合体の水素化物等を挙げることができる。市販のシクロオレフィンポリマーとしては、日本ゼオン株式会社のZEONEX(登録商標)、ポリプラスチックス株式会社のTOPAS(登録商標)、JSR株式会社のアートン(登録商標)等を挙げることができる。なお、本発明において、誘導体とは、元になる化合物が炭素数1〜12の直鎖状、分岐状または環状アルキル基または炭素数1〜12の環状アルキレン基を有する場合を示すものとする。
【0025】
本発明において用いるシクロオレフィンポリマーの分子量は特に限定されないが、例えば、ポリスチレン換算分子量として1000〜150000、好ましくは10000〜100000、より好ましくは20000〜50000である。得られる修飾シクロオレフィンポリマーの分散効果が得られやすい点でポリスチレン換算分子量1000以上(特に10000以上、さらに20000以上)が好ましく、修飾シクロオレフィンポリマーの分散体粘度を抑え、扱いやすい点でポリスチレン換算分子量150000以下(特に100000以下、さらに50000以下)が好ましい。ポリスチレン換算分子量はGPCによってポリスチレンの分子量を基準に求める。
【0026】
本発明の修飾シクロオレフィンポリマーがノルボルネンとエチレン若しくはエチレン誘導体の付加共重合体、又はノルボルネン誘導体とエチレン若しくはエチレン誘導体の付加共重合体である場合、修飾シクロオレフィンポリマー中のエチレン又はエチレン誘導体の含有量は本発明の効果を阻害しない範囲であればよい。
【0027】
本発明の修飾シクロオレフィンポリマーのポリスチレン換算分子量は、特に限定的ではないが1000〜100000が好ましく、5000〜50000がより好ましい。1000以上であればより分散効果が得られやすく、10000以下であれば液粘度を低く抑えることができ、ナノカーボンの分散性が低下しにくい。ポリスチレン換算分子量は、GPCを用いて測定する。
【0028】
単環の芳香族基としては、フェニル基等を挙げることができる。該単環の芳香族基はベンゼン環上に、ハロゲン原子、ハロゲン原子で置換されていてもよいアルキル基、アルコキシ基、ヒドロキシアルキル基、ヒドロキシアルコキシ基、アルキルカルボニルオキシ基、及びアルキルカルボニルアミノ基からなる群より選ばれる少なくとも1つの置換基を有していてもよい。
【0029】
多環の芳香族基としては、ハロゲン原子、ハロゲン原子で置換されていてもよいアルキル基、アルコキシ基、ヒドロキシアルキル基、ヒドロキシアルコキシ基、アルキルカルボニルオキシ基、及びアルキルカルボニルアミノ基からなる群より選ばれる少なくとも1つの置換基を有していてもよい縮環式芳香族基(より具体的には、該置換基を有していてもよいナフチル基、ピレニル基、アントリル基、カルバゾリル基、フルオレニル基、フェナントリル基等)又は一般式(1)
【0030】
【化1】
【0031】
[式中、Z及びZは同じか又は異なり、それぞれ芳香族炭化水素環;
2a及びR2bは同じか又は異なり、それぞれ炭化水素基(アルキル基、シクロアルキル基等、アリール基、アラルキル基等)、アルコキシ基、シクロアルコキシ基、アリールオキシ基、アラルキルオキシ基、アシル基、アルコキシカルボニル基、ヒドロキシアリール基、ハロゲン原子、ニトロ基、シアノ基、無置換アミノ基若しくは置換アミノ基、グリシジル基、又は基:−O−(R1aO)−H;
1aは同じか又は異なり、それぞれアルキレン基;
3a及びR3bは同じか又は異なり、それぞれ炭化水素基、アルコキシ基、ハロゲン原子、ニトロ基、シアノ基又は置換アミノ基;
mはそれぞれ0以上の整数(好ましくは、0〜10の整数);
h1及びh2は同じか又は異なり、それぞれ0〜4の整数;
j1及びj2は同じか又は異なり、それぞれ0〜4の整数である。]
で表される9,9−ビス(置換アリール)フルオレン骨格含有置換基等を挙げることができる。
【0032】
アルキル基としては、直鎖状又は分岐鎖状の炭素数1〜8(特に1〜6)のアルキル基が好ましく、具体的には、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、ブチル基、イソブチル基、t−ブチル基等が好ましい。
【0033】
シクロアルキル基としては、炭素数5〜10(好ましくは5〜8、特に5〜6)のシクロアルキル基が好ましく、具体的には、シクロペンチル基、シクロへキシル基等が好ましい。
【0034】
アリール基としては、炭素数6〜10のアリール基が好ましく、具体的には、フェニル基、アルキルフェニル基(アルキル:前述したもの;トリル基、2−メチルフェニル基、3−メチルフェニル基等のメチルフェニル基等、キシリル基等のジメチルフェニル基等)、ナフチル基等が好ましい。
【0035】
アラルキル基としては、前述したアリール基と前述したアルキル基を有する炭素数7〜14のアラルキル基が好ましく、具体的には、ベンジル基、フェネチル基等が好ましい。
【0036】
アルコキシ基としては、炭素数1〜8(特に1〜6)のアルコキシ基が好ましく、具体的には、メトキシ基、エトキシ基、プロポキシ基、n−ブトキシ基、イソブトキシ基、t−ブトキシ基等が好ましい。
【0037】
シクロアルコキシ基としては、炭素数5〜10のシクロアルコキシ基が好ましく、具体的には、シクロへキシルオキシ基等が好ましい。
【0038】
アリールオキシ基としては、前述したアリール基を有する炭素数6〜10のアリールオキシ基が好ましく、具体的には、フェノキシ基等が好ましい。
【0039】
アラルキルオキシ基としては、前述したアリール基と前述したアルキルオキシ基を有する炭素数7〜14のアラルキルオキシ基が好ましく、具体的には、ベンジルオキシ基等が好ましい。
【0040】
アシル基としては、炭素数1〜6のアシル基が好ましく、具体的には、アセチル基等が好ましい。
【0041】
アルコキシカルボニル基としては、炭素数1〜4のアルコキシカルボニル基が好ましく、具体的には、メトキシカルボニル基等が好ましい。
【0042】
ヒドロキシアリール基としては、前述したアリール基を有する炭素数6〜10のヒドロキシアリール基が好ましく、具体的には、ヒドロキシフェニル基(特に4−ヒドロキシフェニル基)、ヒドロキシC1−4アルキルフェニル基(特に4−ヒドロキシ−3−メチル基)、ヒドロキシナフチル基(特に4−ヒドロキシナフチル基)等が好ましい。
【0043】
ハロゲン原子としては、フッ素原子、塩素原子等が好ましい。
【0044】
置換アミノ基としては、上述した官能基を置換基に有するものが好ましく、具体的には、ジアルキルアミノ基等が好ましい。
【0045】
ハロゲン原子で置換されていてもよいアルキル基とは、上述したアルキル基にハロゲン原子(フッ素原子、塩素原子等)が置換したものが好ましく、具体的にはトリフルオロメチル基等が好ましい。
【0046】
ヒドロキシアルキル基とは、上述したアルキル基にヒドロキシ基が置換したものが好ましく、ヒドロキシメチル基、ヒドロキシエチル基、ヒドロキシプロピル基、ヒドロキシブチル基等が好ましい。
【0047】
ヒドロキシアルコキシ基とは、上述したアルコキシ基にヒドロキシ基が置換したものが好ましく、ヒドロキシメトキシ基、ヒドロキシエトキシ基、ヒドロキシプロポキシ基等が挙げられる。
【0048】
アルキルカルボニルオキシ基とは、上述したアルキル基を有するアルキルカルボニルオキシ基が好ましい。
【0049】
アルキルカルボニルアミノ基とは、上述したアルキル基を有するアルキルカルボニルアミノ基が好ましい。
【0050】
及びZは、炭素数が6〜14の芳香族炭化水素環が好ましく、炭素数が6〜14の単環又は縮合環の芳香族炭化水素環がより好ましい。具体的には、ベンゼン環、ナフタレン環、アントラセン環、ビフェニル環、インデン環等が挙げられる。Z及びZは、それぞれ同一であっても異なっていてもよい。
【0051】
1aは、炭素数2〜4のアルキレン基が好ましく、具体的には、エチレン基、プロピレン基、トリメチレン基、テトラメチレン基等が挙げられる。複数個のR1a同士は同一であっても異なっていてもよい。オキシアルキレン単位の繰り返し単位であるmは0以上の整数であり、通常0〜10、好ましくは0〜7、更に好ましくは0〜5、特に0〜3、さらには0又は1程度の整数である。
【0052】
置換基R2a及びR2bの置換数であるh1及びh2は、通常0〜4(特に0〜2)程度の整数が好ましい。置換基R2a及びR2bの置換位置も特に制限されない。
【0053】
3a及びR3bとしては、前記例示の炭化水素基、アルコキシ基、ハロゲン原子、ニトロ基、シアノ基、置換アミノ基等が挙げられる。
【0054】
置換基R3a及びR3bの置換数であるj1及びj2は、通常0〜4(特に0〜2(さらには0又は1))程度の整数が好ましい。置換基R3a及びR3bの置換位置も特に制限されない。好ましい置換基R3a及びR3bは、炭素数1〜6のアルキル基(特に、メチル基等の炭素数が1〜4のアルキル基)であり、好ましい置換数j1及びj2は、0又は1(特に0)である。
【0055】
本発明の単環又は多環の芳香族基としては、多環の芳香族基が好ましく、多環の芳香族基の中でも、前記一般式(1)で表される9,9−ビス(置換アリール)フルオレン骨格含有置換基が好ましい。これらの芳香族基が好ましい理由は、ナノカーボンとのπ−π相互作用がより強いためであると推測される。
【0056】
本発明の修飾シクロオレフィンポリマーは、シクロオレフィンポリマーに単環又は多環の芳香族基を導入する方法により製造することができる。他にもシクロオレフィンポリマーの製造に用いるモノマーと、該モノマーに予め単環又は多環の芳香族基を置換したモノマーとを共重合し、必要な場合は水素添加することによっても製造することができる。容易に製造できる点から、シクロオレフィンポリマーに単環又は多環の芳香族基を導入する方法により製造することが好ましい。
【0057】
本発明において、シクロオレフィンポリマーに単環又は多環の芳香族基を導入する好ましい方法としては、シクロオレフィンポリマーと一般式(2)
CH=C(R)−W−R (2)
[式中、Wは単結合、−C(=O)−O−(CHO)n+1−、−C(=O)−X−(CHn+1−O−、−C(=O)−X−(CH−、−C(=O)−(C=O)−(CH−、−C(=O)−O−(C=O)−(CH−、−C(=O)−(OCHCH−Y−(CH−、−C(=O)−O−CHCH(OH)CH−O−(CHO)n+1−、−C(=O)−O−CHCH(OH)CH−X−(CHn+1−O−、−C(=O)−O−CHCH(OH)CH−Y−(CH−、−C(=O)−O−CHCH−NH−C(=O)−O−(CHO)n+1−、−C(=O)−O−CHCH−NH−C(=O)−X−(CHn+1−O−、又は−C(=O)−O−CHCH−NH−C(=O)−Y−(CH−を示す。
Xは2価の基である−O−又は−NH−、Yは2価の基である−O−、−NH−、−C(=O)−又は−O−C(=O)−を示し、nは0以上の整数(好ましくは、0〜6の整数)を示し、sは1以上の整数(好ましくは、1〜6の整数)を示す。
は水素原子又はメチル基を示し、Rは単環又は多環の芳香族基を示す。]
で表される芳香族基を有するアルケン化合物とを、有機溶媒中、過酸化物等のラジカル剤存在下で反応させる方法が挙げられる。この反応では、ラジカル剤の分解によって発生したラジカルがシクロオレフィンポリマーから水素を引き抜くことでシクロオレフィンポリマー上に生成したラジカルとアルケン化合物のアルケニル基とが反応すると考えられる。当該製造方法により、シクロオレフィンポリマーに単環又は多環の芳香族基を導入することができ、より簡便に修飾シクロオレフィンポリマーを製造することができる。
【0058】
前記一般式(2)中のRで示される単環又は多環の芳香族基の具体例は、前記した単環の芳香族基又は多環の芳香族基と同様である。
【0059】
前記一般式(2)で表される芳香族基を有するアルケン化合物は、市販のものを用いることができる。また、一般式(2)で表される芳香族基を有するアルケン化合物は、前記した単環の芳香族基又は多環の芳香族基を有する化合物と、所定のビニル基又はメタリル基を有する化合物とを公知の反応を参考に反応させることで、容易に製造することができる。例えば、前記した単環若しくは多環の芳香族基を有するヒドロキシ化合物(アルコール類又はフェノール類)と、(メタ)アクリル酸、(メタ)アクリル酸グリシジルエステル、(メタ)アクリロイルオキシエチルイソシアネートとを反応させる方法や、前記した単環若しくは多環の芳香族基を有するグリシジル化合物と(メタ)アクリル酸とを反応させる方法等により製造することができる。より具体的には、例えば、前記した単環若しくは多環の芳香族基を有するヒドロキシ化合物(アルコール類又はフェノール類)と(メタ)アクリル酸との反応では適当な溶媒中、公知の縮合剤を用いて反応させることで一般式(2)のアルケン化合物を得ることができ、前記した単環若しくは多環の芳香族基を有するヒドロキシ化合物(アルコール類又はフェノール類)と(メタ)アクリロイルオキシエチルイソシアネートとの反応では適当な溶媒中、ジブチルスズジラウリレート等のスズ触媒存在下反応させることで一般式(2)のアルケン化合物を得ることができる。なお、(メタ)アクリル酸とは、アクリル酸又はメタクリル酸を示し、(メタ)アクリロイルとは、アクリロイル又はメタクリロイルを示す。
【0060】
前記ラジカル付加反応において、前記一般式(2)で表される芳香族基を有するアルケン化合物は、前記一般式(2)のアルケン化合物がシクロオレフィンポリマーのみを相手に反応する場合と、前記一般式(2)のアルケン化合物がシクロオレフィンポリマー及び1個以上の前記一般式(2)のアルケン化合物を相手として連鎖して反応する場合とがあるが、本発明ではいずれの場合も含む。
【0061】
前記シクロオレフィンポリマーに対するアルケン化合物の使用量としては、シクロオレフィンポリマー 100重量部に対して、0.5〜150重量部が好ましく、1〜100重量部がより好ましく、5〜70重量部が特に好ましい。0.5重量部以上であればシクロオレフィンポリマー上に生じたラジカルとアルケン化合物との接触頻度が低下することを防ぐことができ、単環又は多環の芳香族基を導入量が低下することを防ぐことができる。150重量部以下であればアルケン化合物のホモポリマーと単環又は多環の芳香族基が導入されたシクロオレフィンポリマーとの分離が容易である。
【0062】
前記ラジカル付加反応において、用いるラジカル剤としては、任意の過酸化物を採用することができる。過酸化物としては、例えば、ベンゾイルペルオキシド、ジクロルベンゾイルペルオキシド、ジクミルペルオキシド、ジ−tert−ブチルペルオキシド、2,5−ジメチル−2,5−ジ(ペルオキシドベンゾエート)ヘキシン−3,1,4−ビス(tert−ブチルペルオキシイソプロピル)ベンゼン、ラウロイルペルオキシド、tert−ブチルペルアセテート、2,5−ジメチル−2,5−ジ(tert−ブチルペルオキシ)ヘキシン−3,2,5−ジメチル−2,5−ジ(tert−ブチルペルオキシ)ヘキサン、tert−ブチルペルベンゾエート、tert−ブチルベルフェニルアセテート、tert−ブチルペルイソブチレ−ト、tert−ブチルペル−sec−オクトエート、tert−ブチルペルピパレート、クミルペルピパレート、tert−ブチルペルジエチルアセテート、メチルエチルケトンペルオキシド、シクロヘキサノンペルオキシド、1,1−ビス(t−ブチルペルオキシ)3,3,5−トリメチルシクロヘキサン、2,2−ビス(t−ブチルペルオキシ)ブタン、t−ブチルハイドロペルオキシド、2,5−ジメチルヘキサン−2,5−ジハイドロペルオキシド、ジクミルペルオキシド、2,5−ジメチル−2,5−ジ(t−ブチルペルオキシ)ヘキシン−3,α,α’−ビス(t−ブチルペルオキシ−m−イソプロピル)ベンゼン、オクタノイルペルオキシド、イソブチリルペルオキシド、ペルオキシジカーボネートなどが挙げられる。上記過酸化物は、1種のみ用いてもよいし、2種以上を併用してもよい。ラジカル剤の使用量としては、反応条件等により適宜選択できるが、前記一般式(1)のアルケン化合物 100重量部に対して、通常、ラジカル剤が1.0〜150重量部、好ましくは1.5〜40重量部、より好ましくは2.0〜30重量部であればよい。前記一般式(1)のアルケン化合物を十分に導入する点で、1.0重量部以上(特に1.5重量部以上、さらに2.0重量部以上)が好ましく、ゲル化の進行を防ぐ点で50重量部以下(特に40重量部以下、さらに30重量部以下)であることが好ましい。また、ラジカル剤は任意の添加方法を採用することができるが、十分に単環又は多環の芳香族基を導入する観点から、ラジカル剤を分割し、逐次的に添加することが好ましい。
【0063】
前記シクロオレフィンポリマーに対するラジカル剤の使用量としては、シクロオレフィンポリマー 100重量部に対して、0.001〜30重量部が好ましく、0.005〜20重量部がより好ましく、0.01〜10重量部が特に好ましい。ラジカル付加反応の進行しやすさの点で、0.001重量部以上(特に0.005重量部以上、さらに0.01重量部以上)が好ましく、ポリマーの性質を維持する点で30重量部以下(特に20重量部以下、さらに10重量部以下)が好ましい。
【0064】
前記ラジカル付加反応に使用する有機溶媒は、任意の適切な有機溶媒を採用することができるが、上記シクロオレフィンポリマーを溶解できるものが好ましい。例えば、トルエン、キシレン、エチルベンゼン、t−ブチルベンゼン等の芳香族炭化水素類;n−ペンタン、ヘキサン、ヘプタン等の脂肪族炭化水素類;シクロペンタン、シクロヘキサン等の脂環式炭化水素類;クロロベンゼン、ジクロロベンゼン、トリクロロベンゼン等のハロゲン化炭化水素類;テトラヒドロフラン、アニソール等のエーテル類;N−メチルピロリドン、N−エチルピロリドン、N−フェニルピロリドン、N−ベンジルピロリドン等のアミド化合物;フタル酸ジメチル、フタル酸ジエチル等のエステル類等が挙げられる。上記有機溶媒は、1種のみ単独で用いても良いし、2種以上を併用した混合溶媒として用いても良い。有機溶媒の使用量としては、シクロオレフィンポリマーが有機溶媒中に十分溶解する量であればよい。
【0065】
前記ラジカル付加反応の反応温度及び時間は、投入したラジカル剤が十分に分解する条件であれば、その反応温度及び時間の組み合わせは任意に設定できる。ラジカル剤の分解量としては、前記一般式(1)のアルケン化合物のみからなるホモポリマーの生成を抑え、シクロオレフィンポリマーへの導入量を増加させる点で、50重量%以上が好ましく、60重量%以上がより好ましく、70重量%以上が特に好ましい。
【0066】
前記ラジカル付加反応の反応温度としては、30〜200℃が好ましく、40〜160℃がより好ましく、50〜130℃が特に好ましい。
【0067】
前記ラジカル付加反応の反応終了後は、常法に従って、生成したポリマーを単離してもよい。
【0068】
ナノカーボン分散体及びその製造方法
本発明で用いるナノカーボンは限定的ではなく、公知の単層又は多層のカーボンナノチューブなどが使用できる。具体的には、例えば、次のものが例示できる。
(i)単層カーボンナノチューブ、
(ii)アモルファスナノスケールカーボンチューブ、
(iii)ナノフレークカーボンチューブ及び入れ子構造の多層カーボンナノチューブからなる群から選ばれるカーボンチューブ、又は
(iv)上記(iii)のカーボンチューブと炭化鉄又は鉄とからなり、該カーボンチューブのチューブ内空間部の10〜90%の範囲に炭化鉄又は鉄が充填されている鉄−炭素複合体。
【0069】
<カーボンナノチューブ>
カーボンナノチューブは、黒鉛シート(即ち、黒鉛構造の炭素原子面ないしグラフェンシート)がチューブ状に閉じた中空炭素物質であり、その直径はナノメートルスケールであり、壁構造は黒鉛構造を有している。カーボンナノチューブのうち、壁構造が一枚の黒鉛シートでチューブ状に閉じたものは単層カーボンナノチューブと呼ばれ、複数枚の黒鉛シートがそれぞれチューブ状に閉じて、入れ子状になっているものは入れ子構造の多層カーボンナノチューブと呼ばれている。本発明では、これら単層又は多層カーボンナノチューブがいずれも使用できる。
【0070】
単層カーボンナノチューブとしては、直径が0.4〜10nm程度、長さが1〜500μm程度のものが好ましく、直径が0.7〜5nm程度、長さが1〜100μm程度のものがさらに好ましく、特に、直径が0.7〜2nm程度、長さが1〜20μm程度のものが好ましい。
【0071】
多層カーボンナノチューブとしては、直径が1〜100nm程度、長さが1〜500μm程度のものが好ましく、直径が1〜50nm程度、長さが1〜100μm程度のものがさらに好ましく、特に、直径が1〜40nm程度、長さが1〜20μm程度のものが好ましい。
【0072】
<アモルファスナノスケールカーボンチューブ>
アモルファスナノスケールカーボンチューブは、WO00/40509(特許第3355442号)に記載されており、カーボンからなる主骨格を有し、直径が0.1〜1000nmであり、アモルファス構造を有するナノスケールカーボンチューブであって、直線状の形態を有し、X線回折法(入射X線:CuKα)において、ディフラクトメーター法により測定される炭素網平面(002)の平面間隔(d002)が3.54Å以上、特に3.7Å以上であり、回折角度(2θ)が25.1度以下、特に24.1度以下であり、2θバンドの半値幅が3.2度以上、特に7.0度以上であることを特徴とするものである。
【0073】
アモルファスナノスケールカーボンチューブは、アモルファス構造(非晶質構造)を有するナノスケールのカーボンナノチューブで、中空直線状であり、細孔が高度に制御されている。その形状は、主に円柱、四角柱などであり、先端の少なくとも一方が、キャップを有していない(開口している)場合が多い。先端が閉口している場合には、形状がフラット状である場合が多い。
【0074】
該アモルファスナノスケールカーボンチューブの外径は、通常1〜1000nm程度の範囲にあり、好ましくは1〜200nm程度の範囲にあり、より好ましくは、1〜100nm程度の範囲にある。そのアスペクト比(チューブの長さ/直径)は2倍以上であり、好ましくは5倍以上である。
【0075】
ここで、「アモルファス構造」とは、規則的に配列した炭素原子の連続的な炭素層からなる黒鉛質構造ではなく、不規則な炭素網平面からなる炭素質構造を意味し、多数の微細なグラフェンシートが不規則に配列し、原子の配列が不規則になっている。代表的な分析手法である透過型電子顕微鏡による像からは、本発明による非晶質構造のナノスケールカーボンチューブは、炭素網平面の平面方向の広がりがアモルファスナノスケールカーボンチューブの直径の1倍より小さい。このように、アモルファスナノスケールカーボンチューブは、その壁部が黒鉛構造ではなく多数の微細なグラフェンシート(炭素網面)が不規則に分布したアモルファス構造を有しているため、最外層を構成する炭素網面は、チューブ長手方向の全長にわたって連続しておらず、不連続となっている。特に、最外層を構成する炭素網面の長さは、20nm未満、特に5nm未満である。
【0076】
非晶質炭素は一般的にはX線回折を示さないが、ブロードな反射を示す。黒鉛質構造では、炭素網平面が規則的に積み重なっているので、炭素網平面間隔(d002)が狭くなり、ブロードな反射は高角側(2θ)に移行して、次第に鋭くなり(2θバンドの半値幅が狭くなり)、d002回折線として観測できるようになる(黒鉛的位置関係で規則正しく積み重なっている場合はd002=3.354Åである)。
【0077】
これに対し、非晶質構造は、上記のように一般的にはX線による回折を示さないが、部分的に非常に弱い干渉性散乱を示す。X線回折法(入射X線=CuKα)において、ディフラクトメーター法により測定される本発明によるアモルファスナノスケールカーボンチューブの理論的な結晶学的特性は、以下の様に規定される:炭素網平面間隔(d002)は、3.54Å以上であり、より好ましくは3.7Å以上である;回折角度(2θ)は、25.1度以下であり、より好ましくは24.1度以下である;前記2θバンドの半値幅は、3.2度以上であり、より好ましくは7.0度以上である。
【0078】
典型的には、アモルファスナノスケールカーボンチューブは、X線回折による回折角度(2θ)が18.9〜22.6度の範囲内にあり、炭素網平面間隔(d002)は3.9〜4.7Åの範囲内にあり、2θバンドの半値幅は7.6〜8.2度の範囲内にある。
【0079】
アモルファスナノスケールカーボンチューブの形状を表す一つの用語である「直線状」なる語句は、次のように定義される。すなわち、透過型電子顕微鏡によるアモルファスナノスケールカーボンチューブ像の長さをLとし、そのアモルファスナノスケールカーボンチューブを伸ばした時の長さをL0とした場合に、L/L0が0.9以上となる形状特性を意味するものとする。
【0080】
<鉄−炭素複合体>
鉄−炭素複合体は、特開2002−338220号公報に記載されており、(a)ナノフレークカーボンチューブ及び入れ子構造の多層カーボンナノチューブからなる群から選ばれるカーボンチューブと(b)炭化鉄又は鉄とからなり、該カーボンチューブ(a)のチューブ内空間部の10〜90%の範囲に(b)の炭化鉄又は鉄が充填されている。即ち、チューブ内空間部の100%の範囲に完全に充填されているものではなく、上記金属又は合金がそのチューブ内空間部の10〜90%の範囲に充填されている(即ち、部分的に充填されている)ことを特徴とするものである。壁部は、パッチワーク状ないし張り子状(いわゆるpaper mache状)のナノフレークカーボンチューブである。
【0081】
なお、「ナノフレークカーボンチューブ」とは、フレーク状の黒鉛シートが複数枚(通常は多数)パッチワーク状ないし張り子状(paper mache状)に集合して構成されている、黒鉛シートの集合体からなる炭素製チューブを指す。
【0082】
ナノカーボン分散体における上記分散剤の含有量は限定的ではないが、分散性の観点から0.01〜50重量%が好ましく、0.1〜20重量%がより好ましい。また、ナノカーボンを良好に分散するためには、ナノカーボン100重量部に対して50〜2000重量部が好ましく、100〜1000重量部がより好ましい。
【0083】
また、ナノカーボン分散体における上記ナノカーボンの含有量は限定的ではないが、本発明では20重量%程度まで高濃度分散させることができ、好ましくは0.01〜10重量%である。
【0084】
本発明では、ナノカーボン分散体のナノカーボンの分散媒として常温(15〜40℃)での比誘電率(以下、単に「比誘電率」とする)が2.5以下、好ましくは2.2以下、より好ましくは2.1以下の有機溶媒を用いることが好ましい。比誘電率が2.5以下であればより良好な分散性を示す。特に、比誘電率が前記範囲である脂肪族炭化水素溶媒が好ましい。このような有機溶媒としては、例えば、ヘキサン、ペンタン、シクロヘキサン、メチルシクロヘキサン等が使用できる。ナノカーボン分散体における上記溶媒の含有量は限定的ではないが、上記ナノカーボン及び分散剤の含有量となるように調整すればよい。これらの中でもシクロヘキサンが特に好適に使用できる。
【0085】
上記本発明のナノカーボン分散体の製造方法は限定的ではなく、上記各成分を混合することにより製造できるが、下記の本発明の製造方法を用いることにより好適に製造することができる。
【0086】
すなわち、本発明の分散剤を含む有機溶媒にナノカーボンを混合することにより組成物を調製する工程1及び前記組成物に物理的分散処理を施す工程2を有することを特徴とするナノカーボン分散体の製造方法により好適に製造することができる。この製造方法における各成分の種類及び含有量については前記の通りである。
【0087】
上記工程2における物理的分散処理は、例えば、超音波ホモジナイザー、ホモジナイザー、ボールミル等の公知の撹拌機により行うことができる。
【0088】
ナノカーボン含有構造体
本発明のナノカーボン含有構造体は、上記ナノカーボン分散体の乾燥物である。
【0089】
乾燥物を得るためには、まず通常の固液分離によりナノカーボン含有構造体を回収する。この固液分離を行う方法としては、例えば、通常の固液分離に使用されている方法、例えば、濾紙、ガラスフィルターなどを用いて濾過する方法;遠心分離後に濾過する方法;減圧濾過器を使用する方法;または分散体に分散剤の貧溶媒となる液体を加えるなどにより分散体中からナノカーボンを凝集させた後に濾過又は遠心分離する方法等を例示できる。次に、乾燥方法としては、特に限定されず、例えば、温風乾燥機等を用いて50〜200℃程度で1〜24時間程度乾燥させる方法を例示できる。
【0090】
または、基板上に本発明のナノカーボン分散体を塗布し、乾燥することにより本発明のナノカーボン含有構造体を得ることもできる。用いる基板としては、特に限定されるものではないが、ガラス板、PET等のプラスチックフィルム等が挙げられる。乾燥方法は、前記同様の方法により行えばよい。
【0091】
本発明のナノカーボン含有構造体は、ナノカーボン表面に分散剤が残存していても電気伝導性に影響を与え難いが、必要に応じて、ナノカーボン含有構造体を比誘電率が2.5より大きくかつ分散剤を溶解する液体で洗浄することにより分散剤を除去することができる。
【0092】
分散剤を除去するための洗浄は、ナノカーボン含有構造体と比誘電率が2.5より大きくかつ分散剤を溶解する液体とを接触させて静置し、次いで同液体で洗浄することにより行う。洗浄操作は、比誘電率が2.5より大きくかつ分散剤を溶解する液体とナノカーボン含有構造体とを接触させればよい。例えば、ナノカーボン分散体から回収されたナノカーボン含有 構造体の乾燥物を、比誘電率が2.5より大きくかつ分散剤を溶解する液体中に室温で静かに浸漬させるのが好ましい。浸漬時間は10分、好ましくは5分以内である。10分より長く浸漬させると構造体が崩壊するおそれがある。これらの中でも、洗浄後にナノカーボン含有構造体から短時間で蒸発する低沸点溶媒が好ましい。かかる低沸点溶媒としては、常圧における沸点が30〜100℃程度、特に30〜80℃程度のものが例示できる。例えば、テトラヒドロフラン、塩化メチレン等が挙げられる。
【0093】
比誘電率が2.5より大きくかつ分散剤を溶解する液体の使用量は、洗浄を行うに有効な量であれば特に限定されず、広い範囲から適宜選択できるが、一般には、ナノカーボン含有構造体100重量部に対して、洗浄液体を100〜100000重量部程度、特に1000〜5000重量部程度使用すると良好な結果が得られる。
【0094】
従来の分散剤は、主鎖に芳香環を含む高分子化合物が多いため、ナノカーボンとのπ−π相互作用が非常に大きく、また分子量が比較的大きいため、その吸着力も大きいと考えられる。他方、本発明で用いる分散剤は比誘電率が2.5以下の有機溶媒中ではナノカーボンを分散することが可能であり、媒体を除去した後で比誘電率が2.5より大きくかつ分散剤を溶解する液体で洗浄することにより除去することが可能である。本発明の分散剤がこのように除去できる理由については、未だ十分に解明されてはいないが、本発明で用いる分散剤は比誘電率が2.5以下の有機溶媒中ではナノカーボンとπ-π相互作用を利用して吸着し、ナノカーボンを分散することができるのに対して、π−π相互作用が弱まるような比誘電率が2.5より大きくかつ分散剤を溶解する液体中では、ナノカーボンと本発明の分散剤との親和性が弱まり、本発明の分散剤のみが当該液体中に溶解するためであると推測される。よって、本発明で用いる分散剤は従来品よりもナノカーボン含有構造体から除去し易いという利点がある。
【0095】
本発明のナノカーボン含有構造体は、前記の通り本発明のナノカーボン分散剤が簡便な洗浄操作で除去することが可能なため、高い電気伝導性等のナノカーボン自体の優れた特性を損なわないものと推測される。
【発明の効果】
【0096】
本発明のナノカーボン分散剤は、ナノカーボンを孤立分散でき、且つ除去分離が可能である上、簡便な方法により製造することができる。また、本発明のナノカーボン分散剤は、極性有機溶媒等を用いた洗浄により容易に除去することが可能であり、電気伝導性等のナノカーボンの特性を損なうことなく、ナノカーボン含有構造体を得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0097】
図1】THFにより洗浄後の多層カーボンナノチューブ膜のSEM画像を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0098】
以下、実施例に基づいて、本発明の詳細を説明するが、本発明はこれらのみに限定されるものではない。
【0099】
実施例1
スチレン結合シクロオレフィンポリマーの製造
シクロオレフィンポリマー(ZEONEX(登録商標)330R;日本ゼオン株式会社製) 5gをトルエン 50mLに溶解させ、これに乾燥過酸化ベンゾイル(乾燥BPO) 0.2g及びスチレンモノマー 5mLを加えて、容器内を窒素置換した後、100℃で8時間攪拌し、反応させた。その後、得られた反応液をメタノール 300mLに加え、ポリマーを析出させた。反応液から溶液を除去し、残ったポリマーをテトラヒドロフラン(THF) 50mLに溶解した。これに、メタノールを加えてポリマーを再度析出させ、再度析出したポリマーを濾別した後、濾別したポリマーを大気中60℃で24時間乾燥させた。乾燥させたポリマー(以降、「330R−St」とする)を一部CDClに溶解し、H−NMRによりポリマーへのスチレンの導入量を見積もったところ(内部標準としてトリオキサンを使用し、原料であるZEONEX330Rの単位重量当たりのプロトン積分値を測定しておき、スチレン基由来のプロトン積分値とシクロオレフィンポリマー由来のプロトン積分値の比からスチレン結合シクロオレフィンポリマー 1gに含まれるベンゼン環の数(mol換算)で算出)、スチレンに由来するベンゼン環の導入量は3×10−5mol/gであった。
【0100】
製造例1
アクリル酸ピレンメタノールエステル(ピレンモノマー)の製造
1−ピレンメタノール(東京化成株式会社製) 1.01g及びアクリル酸 0.466gをTHF 10mLに溶解し、これにジシクロヘキシルカルボジイミド 1.3g及びジメチルアミノピリジン 0.788gを加えて室温で3日間撹拌した。その後、反応液にメタノールを加えて、更に1時間室温で撹拌した。得られた反応液から溶液を除去し、残った固体を酢酸エチル 100mLに溶解させ、1%希塩酸 50mLで2回、5%炭酸水素ナトリウム水溶液 50mLで2回、蒸留水 50mLで2回、順に洗浄し溶媒を除去した。さらに残留物をエーテルに溶解させて析出物を除き、得られたエーテル溶液から溶媒を除去し、残留物として固体を得る操作を繰り返し2回行った。得られた残留物の固体を再度少量のエーテルに溶解させ、冷蔵庫中に放置することで、結晶を析出させた。結晶の周りの残留液を注射器で除いた後、結晶を減圧乾燥させることでアクリル酸ピレンメタノールエステル 0.4gを得た。
H−NMR(CDCl、270MHz):δppm 8.00-8.35(m, 9H), 6.37-6.44(m, 2H), 5.72(dd, 1H), 5.40(s, 2H)。
【0101】
実施例2
ピレンモノマー結合シクロオレフィンポリマーの製造
過酸化ベンゾイル(BPO) 0.5gをトルエン 50mLに溶かした溶液を無水硫酸マグネシウムで乾燥させた。その後、乾燥に用いた硫酸マグネシウムを濾別することにより乾燥BPOのトルエン溶液を得た。得られた乾燥BPOのトルエン溶液に、シクロオレフィンポリマー(ZEONEX(登録商標) 330R;日本ゼオン株式会社製) 5.0gを溶解させ、さらに製造例1の方法で得られたアクリル酸ピレンメタノールエステル 0.5gを溶解してNを15分間バブリングした後、封管して100℃で6時間反応させた。その後、得られた反応液をアセトン 400mLに投入してポリマーを析出させた。析出したポリマーをテトラヒドロフラン(THF)に溶解し、アセトンを加えてポリマーを再度析出させた。析出したポリマーを濾別した後、濾別したポリマーを大気中60℃で24時間乾燥させた。乾燥させたポリマー(以降、「330R−Pyr」とする)を一部CDClに溶解し、H−NMRによりポリマーへのピレンモノマーの導入量を見積もったところ(内部標準としてトリオキサンを使用し、原料であるZEONEX330Rの単位重量当たりのプロトン積分値を測定しておき、ピレン基由来のプロトン積分値とシクロオレフィンポリマー由来のプロトン積分値の比からピレンモノマー結合シクロオレフィンポリマー 1gに含まれるピレン環の数(mol換算)で算出)、ピレンモノマーに由来するピレン環の導入量は3.3×10−5mol/gであった。
【0102】
製造例2
アクリロイル基結合BPEF(BPEFモノマー)の製造
9,9−ビス(4−ヒドロキシエトキシフェニル)フルオレン(BPEF) 4.38gをTHF 20mLに溶解させた溶液に、アクリロイルオキシエチルイソシアネート(カレンズ AOI(登録商標);昭和電工株式会社製) 1.41gとジブチルスズジラウリレート 0.03gを溶解させて室温で2日間撹拌した。その後、得られた反応液から、エバポレーターを用いて溶媒を留去し、残存した固体を酢酸エチルに溶解させた。得られた溶液にエーテルを加えて生成物を析出させ、析出した固体を濾過、乾燥させた。乾燥させた固体をメタノールに溶解させて、残存する固体を除き、得られた溶液の溶媒を留去することでBPEFモノマー 2.34gを固体で得た。得られた生成物はBPEFに対してアクリロイル基が一つ結合していることをH−NMRにて確認した。
H−NMR(DMSO−d6、270MHz):δppm 7.90(d, 2H), 7.26-7.47(m, 6H), 7.00(d, 4H), 6.80(d, 4H), 6.31(d, 1H), 6.11(m, 1H), 5.89(d, 1H), 4.84(t, 1H), 4.23(br, 2H), 4.10(m, 4H), 3.89(t, 2H), 3.65(m, 2H), 3.24(m, 2H)。
【0103】
実施例3
BPEFモノマー結合シクロオレフィンポリマーの合成
シクロオレフィンポリマー(ZEONEX(登録商標)330R;日本ゼオン株式会社製) 2.5g、脱水した過酸化ベンゾイル 0.25g及び製造例2で得られたBPEFモノマー 0.25gをトルエン30mLに溶解させ、反応容器内を窒素置換した後、封管して100℃で6時間反応させた。溶媒除去後の残留物を少量のTHFで溶解させ、アセトンで再沈し、濾過により沈殿を得た。これを3回繰り返し行い、残留物を精製することにより、ポリマー(以降、「330R−Bpef」とする)を得た。330R−Bpefの一部をCDClに溶解し、H−NMRによりポリマーへのBPEFモノマーの導入量を見積もったところ(内部標準としてトリオキサンを使用し、原料であるZEONEX330Rの単位重量当たりのプロトン積分値を測定しておき、フルオレン基由来のプロトン積分値とシクロオレフィンポリマー由来のプロトン積分値の比からBPEFモノマー結合シクロオレフィンポリマー 1gに含まれるフルオレン環の数(mol換算)で算出)、BPEFモノマーに由来するフルオレン環の導入量は1.1×10−4mol/gであった。
【0104】
<評価試験>
試験例1−1
実施例1で得られた330R−St 0.20gをシクロヘキサン 10mLに溶解させ、これに多層カーボンナノチューブ(MWNT)(NC7000;ナノシル社製) 0.01gを加え、超音波ホモジナイザー(200mA、10分間)で分散させた。
【0105】
すると一部塊が残ったもののMWNTが分散した。分散液の液部分を観測すると、透光性の褐色であった。また、分散液をTEMにより観察すると、MWNTは多数絡んだ状態ではあるものの、そのバンドル構造は完全に解消されていることが観察された。
【0106】
同様に、シクロヘキサンに代えて、ヘキサンを用い同様に多層カーボンナノチューブを分散させたところ、シクロヘキサンほどではないものの多層カーボンナノチューブを分散した。
【0107】
試験例1−2
試験例1−1で得られたシクロヘキサン分散液から粗大粒子を遠心分離により除き、スライドガラス上に塗布した。これを60℃で4時間乾燥させ、MWNTの塗膜を有するスライドガラス(MWNT塗膜スライドガラス)を作成した。MWNT塗膜スライドガラスにおけるMWNT塗膜の表面抵抗値を、三菱アナリテック製ロレスタを用いて測定した。
【0108】
その後、このMWNT塗膜スライドガラスをTHF中に静かに5分間浸漬した後、MWNT塗膜スライドガラスを静かに取り出して、60℃で4時間乾燥させ、THFにより洗浄したMWNT塗膜を有するスライドガラス(洗浄MWNT塗膜スライドガラス)を得た。洗浄MWNT塗膜スライドガラスにおける洗浄MWNT塗膜の表面抵抗値を、三菱アナリテック製ロレスタを用いて測定した。また、洗浄MWNT塗膜をSEMにより観察した。
【0109】
MWNT塗膜の表面抵抗は、洗浄前が1×10Ω/□であったのに対し、洗浄後は1×10Ω/□に低下した。また、洗浄MWNT塗膜のSEM観察では、MWNT間を埋めるような物質は観察されなかった。
【0110】
試験例2
実施例2で得られた330R−Pyr 0.20gをシクロヘキサン 10mLに溶解させ、これに多層カーボンナノチューブ(MWNT)(NC7000;ナノシル社製) 0.01gを加え、超音波ホモジナイザー(200mA、3分間)で分散させた。
【0111】
すると、塊が微量残存するものの、MWNTが分散した。分散液の液部分を観測すると透光性の褐色であり、残存する塊の量は試験例1−1よりも少ないものであった。また、分散液をTEMにより観察すると、MWNTは多数絡んだ状態ではあるものの、そのバンドル構造は完全に解消されていることが観察された。
【0112】
試験例3−A
実施例3で得られた330R−Bpef 0.20g、0.02g又は0.01gをシクロヘキサン 10mLに溶解させ、それぞれに多層カーボンナノチューブ(MWNT)(NC7000;ナノシル社製) 0.01gを加え、超音波ホモジナイザー(200mA、3分間)で分散させた。
【0113】
すると、330R−Bpefが0.01gの場合を除き、MWNTを分散し、透光性の褐色な均一分散液となった。330R−Bpefが0.01gの場合も、塊が一部残ったものの、MWNTを分散し、分散液の液部分を観測すると、透光性の褐色であった。また、330R−Bpef 0.02gの分散液をTEMにより観察すると、MWNTは孤立分散している様子が観察され、そのバンドル構造は完全に解消されていることが観察された。
【0114】
試験例3−B
330R−Bpef0.0413g、0.0221g又は0.0095gをシクロヘキサン10mLに溶解させ、それぞれに0.0096gの単層カーボンナノチューブ(SWNT)(SWNT SO;株式会社 名城ナノカーボン製)を加え、超音波ホモジナイザー(200mA、3分間)で分散させた。
【0115】
すると、いずれの場合も透光性の褐色な均一分散液となった。330R−Bpefが0.0413gの分散液をTEMにより観測すると、SWNTは孤立分散している様子が観察され、そのバンドル構造は完全に解消されていることが観察された。
【0116】
比較試験例1
シクロオレフィンポリマー(330R;日本ゼオン社製) 0.20gをシクロヘキサン 10mLに溶解させ、これに多層カーボンナノチューブ(NC7000;ナノシル社製) 0.01gを加え、超音波ホモジナイザー(200mA、3分間)で分散させたところ、多層カーボンナノチューブは凝集したまま全く分散しなかった。
図1