特許第6245898号(P6245898)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6245898
(24)【登録日】2017年11月24日
(45)【発行日】2017年12月13日
(54)【発明の名称】半導体装置
(51)【国際特許分類】
   G09F 9/30 20060101AFI20171204BHJP
   H01L 29/786 20060101ALI20171204BHJP
   H01L 21/336 20060101ALI20171204BHJP
   G02F 1/1368 20060101ALI20171204BHJP
【FI】
   G09F9/30 338
   H01L29/78 617U
   H01L29/78 612Z
   H01L29/78 619A
   G02F1/1368
【請求項の数】3
【全頁数】64
(21)【出願番号】特願2013-177598(P2013-177598)
(22)【出願日】2013年8月29日
(65)【公開番号】特開2014-199404(P2014-199404A)
(43)【公開日】2014年10月23日
【審査請求日】2016年8月18日
(31)【優先権主張番号】特願2012-192214(P2012-192214)
(32)【優先日】2012年8月31日
(33)【優先権主張国】JP
(31)【優先権主張番号】特願2013-54021(P2013-54021)
(32)【優先日】2013年3月15日
(33)【優先権主張国】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000153878
【氏名又は名称】株式会社半導体エネルギー研究所
(72)【発明者】
【氏名】山崎 舜平
(72)【発明者】
【氏名】片山 雅博
(72)【発明者】
【氏名】佐藤 亜美
(72)【発明者】
【氏名】島 行徳
【審査官】 西島 篤宏
(56)【参考文献】
【文献】 特開2011−049540(JP,A)
【文献】 特開2010−114213(JP,A)
【文献】 米国特許出願公開第2011/0031497(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G09F 9/30
G02F 1/1368
H01L 21/336
H01L 29/786
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
透光性を有する半導体膜と、ゲート電極と、ゲート絶縁膜と、ソース電極と、ドレイン電極と、を有するトランジスタと、
一対の電極の間に誘電体膜を有する容量素子と、
前記ソース電極及び前記ドレイン電極の一方と電気的に接続された画素電極と、
容量線と、を有し、
前記トランジスタは、前記半導体膜上に第1の酸化絶縁膜と、前記第1の酸化絶縁膜上の第1の窒化絶縁膜と、前記第1の窒化絶縁膜上の第2の酸化絶縁膜と、を有し、
前記ゲート絶縁膜は、前記ゲート電極と接する第2の窒化絶縁膜と、前記半導体膜に接する第3の酸化絶縁膜と、を有し、
前記容量素子の前記一対の電極の一方は、前記半導体膜と同一層上に設けられ、且つ、同一材料を有し、
前記一対の電極の前記一方は、前記容量線と電気的に接続され、
前記一対の電極の前記一方は、前記第2の窒化絶縁膜と接し、
前記画素電極は、前記容量素子の前記一対の電極の他方として機能する領域を有し、
前記第1の酸化絶縁膜と、前記第1の窒化絶縁膜と、前記第2の酸化絶縁膜とは、前記誘電体膜として機能する領域を有することを特徴とする半導体装置。
【請求項2】
請求項1において、
前記トランジスタの前記半導体膜は、金属酸化物であることを特徴とする半導体装置。
【請求項3】
請求項において、
前記金属酸化物は、酸化物半導体であることを特徴とする半導体装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本明細書などで開示する発明は半導体装置に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、液晶ディスプレイ(LCD)などのフラットパネルディスプレイが広く普及してきている。フラットパネルディスプレイなどの表示装置において、行方向及び列方向に配設された画素内には、スイッチング素子であるトランジスタと、当該トランジスタと電気的に接続された液晶素子と、当該液晶素子と並列に接続された容量素子とが設けられている。
【0003】
当該トランジスタの半導体膜を構成する半導体材料としては、アモルファス(非晶質)シリコン又はポリ(多結晶)シリコンなどのシリコン半導体が汎用されている。
【0004】
また、半導体特性を示す金属酸化物(以下、酸化物半導体と記す。)は、トランジスタの半導体膜に適用できる半導体材料である。例えば、酸化亜鉛又はIn−Ga−Zn系酸化物半導体を用いて、トランジスタを作製する技術が開示されている(特許文献1及び特許文献2を参照。)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2007−123861号公報
【特許文献2】特開2007−96055号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
容量素子は一対の電極の間に誘電体膜が設けられており、一対の電極のうち、少なくとも一方の電極は、トランジスタを構成するゲート電極、ソース電極又はドレイン電極など遮光性を有する導電膜で形成されていること多い。
【0007】
また、容量素子の容量値を大きくするほど、電界を加えた状況において、液晶素子の液晶分子の配向を一定に保つことができる期間を長くすることができる。静止画を表示させる表示装置において、当該期間を長くできることは、画像データを書き換える回数を低減することができ、消費電力の低減が望める。
【0008】
容量素子の電荷容量を大きくするためには、容量素子の占有面積を大きくする、具体的には一対の電極が重畳している面積を大きくするという手段がある。しかしながら、上記表示装置において、一対の電極が重畳している面積を大きくするために遮光性を有する導電膜の面積を大きくすると、画素の開口率が低減し、画像の表示品位が低下する。
【0009】
そこで、上記課題に鑑みて、本発明の一態様は、開口率が高く、且つ電荷容量を増大させることが可能な容量素子を有する半導体装置を提供することを課題の一とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明の一態様は、トランジスタと、透光性を有する容量素子とが設けられた半導体装置である。具体的には、当該容量素子において、透光性を有する半導体膜が一方の電極として機能し、画素電極などの透光性を有する導電膜が当該容量素子の他方の電極として機能し、透光性を有する絶縁膜が誘電体膜として機能し、該透光性を有する絶縁膜が、第1の酸化絶縁膜、窒化絶縁膜、及び第2の酸化絶縁膜が順に積層された絶縁膜である半導体装置である。
【0011】
また、本発明の一態様は、透光性を有する半導体膜を含むトランジスタと、一対の電極の間に誘電体膜が設けられた容量素子と、トランジスタと電気的に接続された画素電極とを有し、容量素子において、トランジスタの透光性を有する半導体膜と同一表面上に形成される透光性を有する半導体膜が一方の電極として機能し、画素電極が他方の電極として機能し、透光性を有する半導体膜上に設けられた透光性を有する絶縁膜が誘電体膜として機能し、該透光性を有する絶縁膜が、第1の酸化絶縁膜、窒化絶縁膜、及び第2の酸化絶縁膜が順に積層された絶縁膜であることを特徴とする半導体装置である。
【0012】
第1の酸化絶縁膜は、シリコンを含む堆積性気体及び酸化性気体を用いた化学気相成長法により形成された酸化絶縁膜である。窒化絶縁膜は、化学気相成長法または物理気相成長法により形成された窒化絶縁膜である。第2の酸化絶縁膜は、有機シランガスを用いた化学気相成長法により形成された酸化絶縁膜である。
【0013】
窒化絶縁膜上に、有機シランガスを用いた化学気相成長法により酸化絶縁膜を形成することで、トランジスタ及び容量素子が設けられる素子部の表面の平坦性を高めることができる。また、トランジスタ及び有機シランガスを用いた化学気相成長法により形成された酸化絶縁膜の間に、窒化絶縁膜を設けることで、該酸化絶縁膜に含まれる炭素等の不純物がトランジスタに移動することを防ぐことが可能であり、トランジスタのばらつきを低減することができる。
【0014】
また、透光性を有する半導体膜は、酸化物半導体を用いて形成することができる。酸化物半導体は、エネルギーギャップが3.0eV以上と大きく、可視光に対する透過率が大きいためである。
【0015】
透光性を有する容量素子は、トランジスタの作製工程を利用することで作製できる。容量素子の一方の電極は、トランジスタの透光性を有する半導体膜を形成する工程を利用でき、容量素子の誘電体膜は、トランジスタの透光性を有する半導体膜上に設けられる絶縁膜を形成する工程を利用でき、容量素子の他方の電極は、トランジスタと電気的に接続される画素電極を形成する工程を利用することができる。このため、トランジスタに含まれる透光性を有する半導体膜と、容量素子の一方の電極とは、同じ金属元素で構成される。
【0016】
容量素子の一方の電極として、トランジスタの透光性を有する半導体膜を形成する工程で形成した半導体膜を用いる場合、当該半導体膜の導電率を増大させてもよい。例えば、ホウ素、窒素、フッ素、アルミニウム、リン、ヒ素、インジウム、スズ、アンチモン及び希ガス元素から選ばれた一種以上を半導体膜に添加することが好ましい。なお、上記元素を当該半導体膜に添加する方法としては、イオン注入法又はイオンドーピング法などがあり、当該半導体膜を上記元素含むプラズマに曝すことでも上記元素を添加することができる。この場合、容量素子の一方の電極はn型の半導体膜であり、その導電率は、10S/cm以上1000S/cm以下、好ましくは100S/cm以上1000S/cm以下とする。
【0017】
上記構成とすることで、容量素子は透光性を有するため、画素内のトランジスタが形成される箇所以外の領域に大きく(大面積に)形成することができる。従って、開口率を高めつつ、電荷容量を増大させた半導体装置を得ることができる。この結果、表示品位の優れた半導体装置を得ることができる。
【0018】
また、容量素子において、誘電体膜はトランジスタの透光性を有する半導体膜上に設けられた絶縁膜を用いることから、当該絶縁膜と同じ積層構造とすることができる。例えば、トランジスタの透光性を有する半導体膜上に設けられた絶縁膜を、第1の酸化絶縁膜、窒化絶縁膜、及び第2の酸化絶縁膜が順に積層された絶縁膜とする場合、容量素子の誘電体膜を第1の酸化絶縁膜、窒化絶縁膜、及び第2の酸化絶縁膜が順に積層された絶縁膜とすることができる。
【0019】
また、容量素子において、トランジスタの透光性を有する半導体膜上に設けられた絶縁膜を第1の酸化絶縁膜、窒化絶縁膜、及び第2の酸化絶縁膜が順に積層された絶縁膜とする場合、当該酸化絶縁膜を形成した後に容量素子が形成される領域のみ当該第1の酸化絶縁膜を除去することで、容量素子の誘電体膜を、窒化絶縁膜及び第2の酸化絶縁膜とすることができる。別言すると、当該窒化絶縁膜が容量素子の一対の電極として機能する半導体膜に接する。半導体膜は酸化物半導体で形成されているため、窒化絶縁膜と半導体膜が接することで、該窒化絶縁膜と当該半導体膜の界面に欠陥準位(界面準位)が形成される。または/及び、窒化絶縁膜をプラズマCVD法またはスパッタリング法で成膜すると、当該半導体膜がプラズマに曝され、酸素欠損が生成される。更には、当該窒化絶縁膜に含まれる窒素又は/及び水素が当該半導体膜に移動する。欠陥準位または酸素欠損に窒化絶縁膜に含まれる水素が入ることで、キャリアである電子が生成される。この結果、当該半導体膜は、導電率が増大し、n型となり、導電性を有する膜となる。即ち、導体としての特性を有する金属酸化物膜を形成することができる。また、誘電体膜の厚さを薄くすることが可能であるため、容量素子の電荷容量を増大させることができる。
【0020】
上記より、容量素子において、窒化絶縁膜が上記半導体膜に接する構造とすることで、イオン注入法又はイオンドーピング法など、導電率を増大させる元素を上記半導体膜に添加する工程を省略することができ、半導体装置の歩留まりを向上させ、作製コストを低減することができる。
【0021】
なお、トランジスタの透光性を有する半導体膜を酸化物半導体を用いて形成し、第1の酸化絶縁膜、窒化絶縁膜、及び第2の酸化絶縁膜が順に積層された絶縁膜を当該透光性を有する半導体膜上に設けられる絶縁膜とする場合、当該酸化絶縁膜は窒素及び水素を透過させにくい、すなわち窒素に対するバリア性を有していることが好ましい。
【0022】
このようにすることで、トランジスタの透光性を有する半導体膜に窒素及び水素の一方又は双方が拡散することを抑制でき、トランジスタの電気特性変動を抑制することができる。
【0023】
上記において、本発明の一態様である半導体装置は、トランジスタのゲート電極を含む走査線と、走査線と平行方向に延伸し、走査線と同一表面上に設けられた容量線とが設けられている。容量素子の一方の電極(半導体膜)は、トランジスタのソース電極又はドレイン電極を形成する際に形成することができる導電膜によって容量線と電気的に接続されている。または、容量素子に含まれる半導体膜を用いて容量線が形成される。
【0024】
また、容量線は、走査線と平行方向に延伸し、走査線と同一表面上に設けることに限らず、トランジスタのソース電極又はドレイン電極を含む信号線と平行方向に延伸し、信号線と同一表面上に設け、容量素子の一方の電極(半導体膜)と電気的に接続させてもよい。
【0025】
また、容量線は、隣接する画素に含まれる容量素子それぞれと接続してもよい。この場合、隣接する画素の間に容量線が設けられてもよい。
【0026】
また、容量素子の一方の電極として、トランジスタの透光性を有する半導体膜と同時に形成した半導体膜を用いる場合、当該半導体膜と容量線とに接する導電膜は、当該半導体膜の端部に接して設けられてもよく、例えば、当該半導体膜の外周に沿って接して設けられることができる。このようにすることで、当該半導体膜の導電性を増大させることができる。
【0027】
なお、本発明の一態様である半導体装置を作製する作製方法についても本発明の一態様に含まれる。
【発明の効果】
【0028】
本発明の一態様より、開口率を高めつつ、電荷容量を増大させた容量素子を有する半導体装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0029】
図1】本発明の一態様である半導体装置を説明する図、及び画素を説明する回路図。
図2】本発明の一態様である半導体装置を説明する上面図。
図3】本発明の一態様である半導体装置を説明する断面図。
図4】本発明の一態様である半導体装置の作製方法を説明する断面図。
図5】本発明の一態様である半導体装置の作製方法を説明する断面図。
図6】本発明の一態様である半導体装置を説明する上面図。
図7】本発明の一態様である半導体装置を説明する上面図。
図8】本発明の一態様である半導体装置を説明する上面図。
図9】本発明の一態様である半導体装置を説明する上面図。
図10】本発明の一態様である半導体装置を説明する断面図。
図11】本発明の一態様である半導体装置の作製方法を説明する断面図。
図12】本発明の一態様である半導体装置の作製方法を説明する断面図。
図13】本発明の一態様である半導体装置の作製方法を説明する断面図。
図14】本発明の一態様である半導体装置を説明する上面図。
図15】本発明の一態様である半導体装置を説明する断面図。
図16】本発明の一態様である半導体装置の作製方法を説明する断面図。
図17】本発明の一態様である半導体装置の作製方法を説明する断面図。
図18】本発明の一態様である半導体装置を説明する断面図。
図19】本発明の一態様である半導体装置を説明する上面図。
図20】本発明の一態様である半導体装置を説明する断面図。
図21】本発明の一態様である半導体装置を説明する断面図及び上面図。
図22】本発明の一態様である半導体装置を用いた電子機器を説明する図。
図23】本発明の一態様である半導体装置を用いた電子機器を説明する図。
図24】試料構造を説明する図である。
図25】シート抵抗を説明する図である。
図26】SIMSの測定結果を説明する図である。
図27】ESRの測定結果を説明する図である。
図28】ESRの測定結果を説明する図である。
図29】シート抵抗を説明する図である。
図30】シート抵抗を説明する図である。
図31】InGaZnOのバルクモデルを説明する図。
図32】VoHの形成エネルギー及び熱力学的遷移レベルを説明する図。
【発明を実施するための形態】
【0030】
以下では、本発明の実施の形態について図面を用いて詳細に説明する。ただし、本発明は以下の説明に限定されず、その形態および詳細を様々に変更し得ることは、当業者であれば容易に理解される。また、本発明は以下に示す実施の形態の記載内容に限定して解釈されるものではない。
【0031】
以下に説明する本発明の構成において、同一部分又は同様の機能を有する部分には同一の符号を異なる図面間で共通して用い、その繰り返しの説明は省略する。また、同様の機能を有する部分を指す場合には、ハッチパターンを同じくし、特に符号を付さない場合がある。
【0032】
本明細書で説明する各図において、各構成の大きさ、膜の厚さ、又は領域は、明瞭化のために誇張されている場合がある。よって、必ずしもそのスケールに限定されない。
【0033】
本明細書などにおいて、第1、第2等として付される序数詞は便宜上用いるものであり、工程順又は積層順を示すものではない。また、本明細書等において発明を特定するための事項として固有の名称を示すものではない。
【0034】
また、電圧とは2点間における電位差のことをいい、電位とはある一点における静電場の中にある単位電荷が持つ静電エネルギー(電気的な位置エネルギー)のことをいう。ただし、一般的に、ある一点における電位と基準となる電位(例えば接地電位)との電位差のことを、単に電位もしくは電圧と呼び、電位と電圧が同義語として用いられることが多い。このため、本明細書では特に指定する場合を除き、電位を電圧と読み替えてもよいし、電圧を電位と読み替えてもよいこととする。
【0035】
本明細書において、フォトリソグラフィ処理を行った後にエッチング処理を行う場合は、フォトリソグラフィ処理で形成したマスクは除去するものとする。
【0036】
(実施の形態1)
本実施の形態では、本発明の一態様である半導体装置について、図面を用いて説明する。なお、本実施の形態では、液晶表示装置を例にして本発明の一態様である半導体装置を説明する。
【0037】
<半導体装置の構成>
図1(A)に、半導体装置の一例を示す。図1(A)に示す半導体装置は、画素部100と、走査線駆動回路104と、信号線駆動回路106と、各々が平行又は略平行に配設され、且つ走査線駆動回路104によって電位が制御されるm本の走査線107と、各々が平行又は略平行に配設され、且つ信号線駆動回路106によって電位が制御されるn本の信号線109と、を有する。さらに、画素部100はマトリクス状に配設された複数の画素101を有する。また、走査線107に沿って、各々が平行又は略平行に配設された容量線115を有する。なお、容量線115は、信号線109に沿って、各々が平行又は略平行に配設されていてもよい。
【0038】
各走査線107は、画素部100においてm行n列に配設された画素101のうち、いずれかの行に配設されたn個の画素101と電気的に接続される。また、各信号線109は、m行n列に配設された画素101のうち、いずれかの列に配設されたm個の画素101に電気的と接続される。m、nは、ともに1以上の整数である。また、各容量線115は、m行n列に配設された画素101のうち、いずれかの行に配設されたn個の画素101と電気的に接続される。なお、容量線115が、信号線109に沿って、各々が平行又は略平行に配設されている場合は、m行n列に配設された画素101のうち、いずれかの列に配設されたm個の画素101に電気的と接続される。
【0039】
図1(B)は、図1(A)に示す半導体装置が有する画素101の回路図の一例である。図1(B)に示す画素101は、走査線107及び信号線109と電気的に接続されたトランジスタ103と、一方の電極がトランジスタ103のドレイン電極と電気的に接続され、他方の電極が一定の電位を供給する容量線115と電気的に接続された容量素子105と、画素電極がトランジスタ103のドレイン電極及び容量素子105の一方の電極に電気的に接続され、画素電極と対向して設けられる電極(対向電極)が対向電位を供給する配線に電気的に接続された液晶素子108と、を有する。
【0040】
液晶素子108は、トランジスタ103及び画素電極が形成される基板と、対向電極が形成される基板とで挟持される液晶の光学的変調作用によって、光の透過又は非透過を制御する素子である。なお、液晶の光学的変調作用は、液晶にかかる電界(縦方向の電界又は斜め方向の電界を含む。)によって制御される。なお、画素電極が形成される基板において対向電極(共通電極ともいう。)が形成される場合、液晶にかかる電界は横方向の電界となる。
【0041】
次いで、液晶表示装置の画素101の具体的な例について説明する。画素101の上面図を図2に示す。なお、図2においては、対向電極及び液晶素子を省略する。
【0042】
図2において、走査線107は、信号線109に略直交する方向(図中左右方向)に延伸して設けられている。信号線109は、走査線107に略直交する方向(図中上下方向)に延伸して設けられている。容量線115は、走査線107と平行方向に延伸して設けられている。なお、走査線107及び容量線115は、走査線駆動回路104(図1(A)を参照。)と電気的に接続されており、信号線109は、信号線駆動回路106(図1(A)を参照。)に電気的に接続されている。
【0043】
トランジスタ103は、走査線107及び信号線109が交差する領域に設けられている。トランジスタ103は、少なくとも、チャネル形成領域を有する半導体膜111と、ゲート電極と、ゲート絶縁膜(図2に図示せず。)と、ソース電極と、及びドレイン電極とを含む。なお、走査線107において、半導体膜111と重畳する領域はトランジスタ103のゲート電極として機能する。信号線109において、半導体膜111と重畳する領域はトランジスタ103のソース電極として機能する。導電膜113において、半導体膜111と重畳する領域はトランジスタ103のドレイン電極として機能する。このため、ゲート電極、ソース電極、及びドレイン電極をそれぞれ、走査線107、信号線109、及び導電膜113と示す場合がある。また、図2において、走査線107は、上面形状において端部が半導体膜の端部より外側に位置する。このため、走査線107はバックライトなどの光源からの光を遮る遮光膜として機能する。この結果、トランジスタに含まれる半導体膜111に光が照射されず、トランジスタの電気特性の変動を抑制することができる。
【0044】
また、酸化物半導体は適切な条件にて処理することでトランジスタのオフ電流を極めて低減することができるため、本発明の一態様では半導体膜111は酸化物半導体を用いる。これにより、半導体装置の消費電力を低減することができる。
【0045】
また、導電膜113は、開口117を通じて透光性を有する導電膜で形成される画素電極121と電気的に接続されている。なお、図2において、画素電極121はハッチングを省略して図示している。
【0046】
容量素子105は、画素101内の容量線115及び信号線109で囲まれる領域に設けられている。容量素子105は、開口123に設けられた導電膜125を通じて容量線115と電気的に接続されている。容量素子105は、酸化物半導体で形成される半導体膜119と、画素電極121と、誘電体膜として、トランジスタ103上に形成される絶縁膜(図2に図示せず。)とで構成されている。半導体膜119、画素電極121、及び誘電体膜はそれぞれ透光性を有するため、容量素子105は透光性を有する。
【0047】
このように半導体膜119は透光性を有するため、画素101内に容量素子105を大きく(大面積に)形成することができる。従って、開口率を高めつつ、代表的には55%以上、好ましくは60%以上とすることが可能であると共に、電荷容量を増大させた半導体装置を得ることができる。例えば、解像度の高い半導体装置、例えば液晶表示装置においては、画素の面積が小さくなり、容量素子の面積も小さくなる。このため、解像度の高い半導体装置において、容量素子に蓄積される電荷容量が小さくなる。しかしながら、本実施の形態に示す容量素子105は透光性を有するため、当該容量素子を画素に設けることで、各画素において十分な電荷容量を得つつ、開口率を高めることができる。代表的には、画素密度が200ppi以上、さらには300ppi以上である高解像度の半導体装置に好適に用いることができる。また、本発明の一態様は、高解像度の表示装置においても、開口率を高めることができるため、バックライトなどの光源の光を効率よく利用することができ、表示装置の消費電力を低減することができる。
【0048】
ここで、酸化物半導体を用いたトランジスタの特徴について記載する。酸化物半導体を用いたトランジスタはnチャネル型トランジスタである。また、酸化物半導体に含まれる酸素欠損に起因してキャリアが生成されることがあり、トランジスタの電気特性及び信頼性を低下させる恐れがある。例えば、トランジスタのしきい値電圧をマイナス方向に変動し、ゲート電圧が0Vの場合にドレイン電流が流れてしまうことがある。このように、ゲート電圧が0Vの場合にドレイン電流が流れてしまうトランジスタをノーマリーオン特性という。なお、ゲート電圧が0Vの場合にドレイン電流が流れていないとみなすことができるトランジスタをノーマリーオフ特性という。
【0049】
そこで、半導体膜111に酸化物半導体を用いる際、半導体膜111に含まれる欠陥、代表的には酸素欠損はできる限り低減されていることが好ましい。例えば、磁場の向きを膜面に対して平行に印加した電子スピン共鳴法によるg値=1.93のスピン密度(半導体膜111に含まれる欠陥密度に相当する。)は、測定器の検出下限以下まで低減されていることが好ましい。半導体膜111に含まれる欠陥、代表的には酸素欠損をできる限り低減することで、トランジスタ103がノーマリーオン特性となることを抑制することができ、半導体装置の電気特性及び信頼性を向上させることができる。
【0050】
トランジスタのしきい値電圧のマイナス方向への変動は酸素欠損だけではなく、酸化物半導体に含まれる水素(水などの水素化合物を含む。)によっても引き起こされることがある。酸化物半導体に含まれる水素は金属原子と結合する酸素と反応して水になると共に、酸素が脱離した格子(又は酸素が脱離した部分)に欠損(酸素欠損ともいえる。)を形成する。また、水素の一部が酸素と反応することで、キャリアである電子を生成してしまう。従って、水素が含まれている酸化物半導体を用いたトランジスタはノーマリーオン特性となりやすい。
【0051】
そこで、半導体膜111に酸化物半導体を用いる際、半導体膜111は水素ができる限り低減されていることが好ましい。具体的には、半導体膜111において、二次イオン質量分析法(SIMS:Secondary Ion Mass Spectrometry)により得られる水素濃度を、5×1018atoms/cm未満、好ましくは1×1018atoms/cm以下、より好ましくは5×1017atoms/cm以下、さらに好ましくは1×1016atoms/cm以下とする。
【0052】
また、半導体膜111は、二次イオン質量分析法により得られるアルカリ金属又はアルカリ土類金属の濃度を、1×1018atoms/cm以下、好ましくは2×1016atoms/cm以下にする。アルカリ金属及びアルカリ土類金属は、酸化物半導体と結合するとキャリアを生成する場合があり、トランジスタ103のオフ電流を増大させることがある。
【0053】
また、半導体膜111に窒素が含まれていると、キャリアである電子が生じ、キャリア密度が増加し、n型化しやすい。この結果、窒素が含まれている酸化物半導体を用いたトランジスタはノーマリーオン特性となりやすい。従って、当該半導体膜111において、窒素はできる限り低減されていることが好ましい、例えば、窒素濃度は、5×1018atoms/cm以下にすることが好ましい。
【0054】
このように、不純物(水素、窒素、アルカリ金属又はアルカリ土類金属など)をできる限り低減させ、高純度化させた酸化物半導体膜を用いて半導体膜111を形成することで、トランジスタ103がノーマリーオン特性となることを抑制でき、トランジスタ103のオフ電流を極めて低減することができる。従って、良好な電気特性に有する半導体装置を作製できる。また、信頼性を向上させた半導体装置を作製することができる。
【0055】
なお、高純度化された酸化物半導体膜を用いたトランジスタのオフ電流が低いことは、いろいろな実験により証明できる。例えば、チャネル幅Wが1×10μmでチャネル長Lが10μmの素子であっても、ソース電極とドレイン電極間の電圧(ドレイン電圧)が1Vから10Vの範囲において、オフ電流が、半導体パラメータアナライザの測定限界以下、すなわち1×10−13A以下という特性を得ることができる。この場合、トランジスタのチャネル幅で除した数値に相当するオフ電流は、100zA/μm以下であることが分かる。また、容量素子とトランジスタとを接続して、容量素子に流入又は容量素子から流出する電荷を当該トランジスタで制御する回路を用いて、オフ電流の測定を行った。当該測定では、上記トランジスタに高純度化された酸化物半導体膜をチャネル形成領域に用い、容量素子の単位時間あたりの電荷量の推移から当該トランジスタのオフ電流を測定した。その結果、トランジスタのソース電極とドレイン電極間の電圧が3Vの場合に、数十yA/μmという、さらに低いオフ電流が得られることが分かった。従って、高純度化された酸化物半導体膜を用いたトランジスタは、オフ電流が著しく小さい。
【0056】
次いで、図2の一点鎖線A1−A2間、一点鎖線B1−B2間、一点鎖線C1−C2間、の断面図を図3に示す。また、走査線駆動回路104の上面図を省略すると共に、走査線駆動回路104の断面図をD1−D2に示す。なお、ここでは、走査線駆動回路104に設けられるトランジスタの断面図を示すが、当該トランジスタは信号線駆動回路106に設けることができる。
【0057】
はじめに、画素101のA1−A2間、一点鎖線B1−B2間、及び一点鎖線C1−C2間の構造について説明する。基板102上に、トランジスタ103のゲート電極を含む走査線107と、走査線107と同一表面上に設けられている容量線115とが設けられている。走査線107及び容量線115上にゲート絶縁膜127が設けられている。ゲート絶縁膜127の走査線107と重畳する領域上に半導体膜111が設けられており、ゲート絶縁膜127上に半導体膜119が設けられている。半導体膜111上、及びゲート絶縁膜127上にトランジスタ103のソース電極を含む信号線109と、トランジスタ103のドレイン電極を含む導電膜113とが設けられている。ゲート絶縁膜127には容量線115に達する開口123が設けられており、開口123、ゲート絶縁膜127上、及び半導体膜119上に導電膜125が設けられている。ゲート絶縁膜127上、信号線109上、半導体膜111上、導電膜113上、導電膜125上、半導体膜119上にトランジスタ103の保護絶縁膜として機能する絶縁膜129、絶縁膜131、絶縁膜132、及び絶縁膜137が設けられている。絶縁膜129、絶縁膜131、絶縁膜132、及び絶縁膜137には導電膜113に達する開口117(図2参照。)が設けられており、開口117(図2参照。)及び絶縁膜137上に画素電極121が設けられている。
【0058】
本実施の形態に示す容量素子105は、一対の電極のうち一方の電極が半導体膜111と同じ工程で形成された半導体膜119であり、一対の電極のうち他方の電極が画素電極121であり、一対の電極の間に設けられた誘電体膜が絶縁膜129、絶縁膜131、絶縁膜132、及び絶縁膜137である。
【0059】
次に、走査線駆動回路104に設けられるトランジスタの構造について説明する。基板102上に、トランジスタ623のゲート電極627が設けられている。ゲート電極627上にゲート絶縁膜127が設けられている。ゲート絶縁膜127のゲート電極627と重畳する領域上に半導体膜631が設けられている。半導体膜631上、及びゲート絶縁膜127上にトランジスタ623のソース電極629及びドレイン電極633が設けられている。ゲート絶縁膜127上、ソース電極629上、半導体膜631上、ドレイン電極633上に、トランジスタ623の保護絶縁膜として機能する絶縁膜129、絶縁膜131、絶縁膜132、及び絶縁膜137が設けられている。絶縁膜137上には、導電膜641が設けられている。
【0060】
なお、基板102と、走査線107、容量線115及びゲート電極627、並びにゲート絶縁膜127との間には下地絶縁膜が設けられていてもよい。
【0061】
トランジスタ623において、半導体膜631を介して、ゲート電極627と重なる導電膜641を設けることで、異なるドレイン電圧において、オン電流の立ち上がりゲート電圧のばらつきを低減することができる。また、導電膜641と対向する半導体膜631の面において、ソース電極629及びドレイン電極633の間に流れる電流を制御することが可能であり、異なるトランジスタにおける電気特性のばらつきを低減することができる。また、導電膜641を設けることで、周囲の電界の変化が半導体膜631へ与える影響を軽減し、トランジスタの信頼性を向上させることができる。さらには、導電膜641の電位を、駆動回路の最低電位(Vss、例えばソース電極629の電位を基準とする場合、ソース電極629の電位)と同電位またはそれと同等電位とすることで、トランジスタのしきい値電圧の変動を低減することが可能であり、トランジスタの信頼性を高めることができる。
【0062】
絶縁膜129及び絶縁膜131は、例えば酸化シリコン、酸化窒化シリコン、酸化アルミニウム、酸化ハフニウム、酸化ガリウム又はGa−Zn系金属酸化物などの酸化絶縁材料を用いた、単層構造又は積層構造で設けることができる。
【0063】
絶縁膜129の厚さは、5nm以上150nm以下、好ましくは5nm以上50nm以下、好ましくは10nm以上30nm以下とすることができる。絶縁膜131の厚さは、30nm以上500nm以下、好ましくは150nm以上400nm以下とすることができる。
【0064】
また、絶縁膜132は、例えば窒化酸化シリコン、窒化シリコン、窒化アルミニウム、窒化酸化アルミニウムなどの窒化絶縁材料を用いた、単層構造又は積層構造で設けることができる。
【0065】
絶縁膜132として、水素含有量が少ない窒化絶縁膜を設けてもよい。当該窒化絶縁膜としては、例えば、TDS分析によって測定される水素分子の放出量が、5.0×1021atoms/cm未満であり、好ましくは3.0×1021atoms/cm未満であり、さらに好ましくは1.0×1021atoms/cm未満である窒化絶縁膜である。
【0066】
絶縁膜132は、外部から水素や水などの不純物の侵入を抑制する機能を発揮できる厚さとする。例えば、50nm以上200nm以下、好ましくは50nm以上150nm以下、さらに好ましくは50nm以上100nm以下とすることができる。
【0067】
また、絶縁膜137としては、有機シランガスを用いたCVD法(化学気相成長法)により形成した酸化絶縁膜、代表的には酸化シリコン膜を用いることができる。
【0068】
絶縁膜137として、有機シランガスを用いたCVD法により形成した酸化シリコン膜を設ける。当該酸化シリコン膜は300nm以上600nm以下で設けることができる。有機シランガスとしては、珪酸エチル(TEOS:化学式Si(OC)、テトラメチルシラン(TMS:化学式Si(CH)、テトラメチルシクロテトラシロキサン(TMCTS)、オクタメチルシクロテトラシロキサン(OMCTS)、ヘキサメチルジシラザン(HMDS)、トリエトキシシラン(SiH(OC)、トリスジメチルアミノシラン(SiH(N(CH)などのシリコン含有化合物を用いることができる。
【0069】
絶縁膜137を有機シランガスを用いたCVD法により形成した酸化シリコン膜で形成することで、基板102上に形成される素子部表面の平坦性を高めることが可能である。この結果、有機樹脂で形成される平坦化膜を設けなくとも、液晶の配向乱れを低減し、光漏れの低減が可能であると共に、コントラストを高めることができる。ここで、素子部とは、基板102上に形成されるトランジスタ、トランジスタ上に設けられる保護絶縁膜(絶縁膜129、絶縁膜131、絶縁膜132、及び絶縁膜137)、容量素子、保護絶縁膜上に形成される導電膜を含む。なお、絶縁膜129は設けない構造であってもよい。
【0070】
また、トランジスタ103及びトランジスタ623と、絶縁膜137との間に窒化絶縁膜である絶縁膜132を設けることで、該酸化シリコン膜に含まれる炭素等の不純物が絶縁膜132でブロッキングされ、トランジスタ103及びトランジスタ623の半導体膜111及び半導体膜631への不純物の移動が低減されるため、トランジスタの電気特性のばらつきを低減することが可能である。
【0071】
さらに、絶縁膜129及び絶縁膜131の一方又は双方は、化学量論的組成を満たす酸素よりも多くの酸素を含む酸化絶縁膜であることが好ましい。このようにすることで、当該半導体膜111、631からの酸素の脱離を防止するとともに、酸素過剰領域に含まれる当該酸素を半導体膜111、631に移動させることができる。半導体膜111、631に移動した酸素は、半導体膜111、631を形成する酸化物半導体に含まれる酸素欠損を低減することが可能となる。例えば、昇温脱離ガス分析(以下、TDS分析とする。)によって測定される酸素分子の放出量が、1.0×1018分子/cm以上ある酸化絶縁膜を用いることで、当該半導体膜111、631に含まれる酸素欠損を低減することができる。なお、絶縁膜129及び絶縁膜131の一方又は双方において、化学量論的組成よりも過剰に酸素を含む領域(酸素過剰領域)が部分的に存在している酸化絶縁膜であってもよく、少なくとも半導体膜111、631と重畳する領域に酸素過剰領域が存在することで、当該半導体膜111、631からの酸素の脱離を防止するとともに、酸素過剰領域に含まれる当該酸素を半導体膜111、631に移動させ、酸素欠損を低減することが可能となる。
【0072】
絶縁膜131が化学量論的組成を満たす酸素よりも多くの酸素を含む酸化絶縁膜である場合、絶縁膜129は、酸素を透過する酸化絶縁膜とすることが好ましい。なお、絶縁膜129において、外部から絶縁膜129に入った酸素は、全て絶縁膜129を通過して移動せず、絶縁膜129にとどまる酸素もある。また、あらかじめ絶縁膜129に含まれており、絶縁膜129から外部に移動する酸素もある。そこで、絶縁膜129は酸素の拡散係数が大きい酸化絶縁膜であることが好ましい。
【0073】
また、絶縁膜129は、酸化物半導体を用いて形成される半導体膜111及び半導体膜631と接することから、酸素を透過させるだけではなく、半導体膜111及び半導体膜631との界面準位が少なくなる酸化絶縁膜であることが好ましい。例えば、絶縁膜129は絶縁膜131よりも膜中の欠陥密度が低い酸化絶縁膜であることが好ましい。具体的には、電子スピン共鳴測定によるg値=2.001(E´−center)のスピン密度が3.0×1017spins/cm以下、好ましくは5.0×1016spins/cm以下の酸化絶縁膜である。なお、電子スピン共鳴測定によるg値=2.001のスピン密度は、絶縁膜129に含まれるダングリングボンドの存在量に対応する。
【0074】
また、絶縁膜129及び絶縁膜131の一方又は双方が窒素に対するバリア性を有する絶縁膜であることが好ましい。例えば、緻密な酸化絶縁膜とすることで窒素に対するバリア性を有することができ、具体的には、25℃において0.5重量%のフッ酸を用いた場合のエッチング速度が10nm/分以下である酸化絶縁膜とすることが好ましい。
【0075】
なお、絶縁膜129及び絶縁膜131の一方又は双方を、酸化窒化シリコン又は窒化酸化シリコンなど、窒素を含む酸化絶縁膜とする場合、SIMSより得られる窒素濃度は、SIMS検出下限以上3×1020atoms/cm未満、好ましくは1×1018atoms/cm以上1×1020atoms/cm以下とすることが好ましい。このようにすることで、トランジスタ103に含まれる半導体膜111及び半導体膜631への窒素の移動量を少なくすることができる。また、このようにすることで、窒素を含む酸化絶縁膜自体の欠陥量を少なくすることができる。
【0076】
また、画素における信号線109及び画素電極121の間に、絶縁膜129、絶縁膜131、絶縁膜132、及び絶縁膜137を設けることで、信号線109及び画素電極121の間隔が広くなるため、寄生容量を低減することが可能であり、信号線109に印加される信号電圧の遅れに伴う、表示ムラや消費電力の増加を低減することができる。また、走査線駆動回路におけるトランジスタ623において、半導体膜631と導電膜641の間隔が広くなるため、導電膜641が半導体膜631に影響する電界を緩和しつつ、トランジスタ623の電気特性のばらつきを低減することができる。この結果、表示品位の優れた半導体装置を得ることができる。
【0077】
以下に、上記構造の構成要素について詳細を記載する。
【0078】
基板102の材質などに大きな制限はないが、少なくとも、半導体装置の作製工程において行う熱処理に耐えうる程度の耐熱性を有している必要がある。例えば、ガラス基板、セラミック基板、プラスチック基板などがあり、ガラス基板としては、バリウムホウケイ酸ガラス、アルミノホウケイ酸ガラス若しくはアルミノケイ酸ガラス等の無アルカリガラス基板を用いるとよい。また、ステンレス合金などの透光性を有していない基板を用いることもできる。その場合は、基板表面に絶縁膜を設けることが好ましい。なお、基板102として石英基板、サファイア基板、単結晶半導体基板、多結晶半導体基板、化合物半導体基板、SOI(Silicon On Insulator)基板などを用いることもできる。
【0079】
走査線107、容量線115、及びゲート電極627は大電流を流すため、金属膜で形成することが好ましく、代表的には、モリブデン(Mo)、チタン(Ti)、タングステン(W)タンタル(Ta)、アルミニウム(Al)、銅(Cu)、クロム(Cr)、ネオジム(Nd)、スカンジウム(Sc)などの金属材料又はこれらを主成分とする合金材料を用いた、単層構造又は積層構造で設ける。
【0080】
走査線107、容量線115、及びゲート電極627の一例としては、シリコンを含むアルミニウムを用いた単層構造、アルミニウム上にチタンを積層する二層構造、窒化チタン上にチタンを積層する二層構造、窒化チタン上にタングステンを積層する二層構造、窒化タンタル上にタングステンを積層する二層構造、銅−マグネシウム−アルミニウム合金上に銅を積層する二層構造、窒化チタン上に銅を積層し、さらにその上にタングステンを形成する三層構造などがある。
【0081】
また、走査線107、容量線115、及びゲート電極627の材料として、画素電極121に適用可能な透光性を有する導電性材料を用いることができる。
【0082】
さらに、走査線107、容量線115、及びゲート電極627の材料として、窒素を含む金属酸化物、具体的には、窒素を含むIn−Ga−Zn系酸化物や、窒素を含むIn−Sn系酸化物や、窒素を含むIn−Ga系酸化物や、窒素を含むIn−Zn系酸化物や、窒素を含むSn系酸化物や、窒素を含むIn系酸化物や、金属窒化膜(InN、SnNなど)を用いることができる。これらの材料は5eV(電子ボルト)以上の仕事関数を有する。トランジスタ103の半導体膜111を酸化物半導体を用いて形成する場合、走査線107(トランジスタ103のゲート電極)として窒素を含む金属酸化物を用いることで、トランジスタ103のしきい値電圧をプラス方向に変動させることができ、所謂ノーマリーオフ特性を有するトランジスタを実現できる。例えば、窒素を含むIn−Ga−Zn系酸化物を用いる場合、少なくとも半導体膜111より高い窒素濃度、具体的には窒素濃度が7原子%以上のIn−Ga−Zn系酸化物を用いることができる。
【0083】
走査線107、容量線115、及びゲート電極627において、低抵抗材料であるアルミニウムや銅を用いることが好ましい。アルミニウムや銅を用いることで、信号遅延を低減し、表示品位を高めることができる。なお、アルミニウムは耐熱性が低く、ヒロック、ウィスカー、あるいはマイグレーションによる不良が発生しやすい。アルミニウムのマイグレーションを防ぐため、アルミニウムに、モリブデン、チタン、タングステンなどの、アルミニウムよりも融点の高い金属材料を積層することが好ましい。また、銅を用いる場合も、マイグレーションによる不良や銅元素の拡散を防ぐため、銅に、モリブデン、チタン、タングステンなどの、銅よりも融点の高い金属材料を積層することが好ましい。
【0084】
ゲート絶縁膜127は、例えば酸化シリコン、酸化窒化シリコン、窒化酸化シリコン、窒化シリコン、酸化アルミニウム、酸化ハフニウム、酸化ガリウム又はGa−Zn系金属酸化物などの絶縁材料を用いた、単層構造又は積層構造で設ける。なお、半導体膜111との界面特性を向上させるため、ゲート絶縁膜127において少なくとも半導体膜111と接する領域は酸化絶縁膜で形成することが好ましい。
【0085】
また、ゲート絶縁膜127に、酸素、水素、水などに対するバリア性を有する絶縁膜を設けることで、半導体膜111からの酸素の外部への拡散と、外部から当該半導体膜111への水素、水等の侵入を防ぐことができる。酸素、水素、水等などに対するバリア性を有する絶縁膜としては、酸化アルミニウム膜、酸化窒化アルミニウム膜、酸化ガリウム膜、酸化窒化ガリウム膜、酸化イットリウム膜、酸化窒化イットリウム膜、酸化ハフニウム膜、酸化窒化ハフニウム膜、窒化シリコン膜などがある。
【0086】
また、ゲート絶縁膜127として、ハフニウムシリケート(HfSiO)、窒素を有するハフニウムシリケート(HfSi)、窒素を有するハフニウムアルミネート(HfAl)、酸化ハフニウム、酸化イットリウムなどのhigh−k材料を用いることでトランジスタ103のゲートリークを低減できる。
【0087】
また、ゲート絶縁膜127は、以下の積層構造とすることが好ましい。第1の窒化シリコン膜として、欠陥量が少ない窒化シリコン膜を設け、第1の窒化シリコン膜上に第2の窒化シリコン膜として、水素脱離量及びアンモニア脱離量の少ない窒化シリコン膜を設け、第2の窒化シリコン膜上に、上記ゲート絶縁膜127で羅列した酸化絶縁膜のいずれかを設けることが好ましい。
【0088】
第2の窒化シリコン膜としては、昇温脱離ガス分析法において、水素分子の脱離量が5×1021分子/cm未満、好ましくは3×1021分子/cm以下、さらに好ましくは1×1021分子/cm以下であり、アンモニア分子の脱離量が1×1022分子/cm未満、好ましくは5×1021分子/cm以下、さらに好ましくは1×1021分子/cm以下である窒化絶縁膜を用いることが好ましい。上記第1の窒化シリコン膜及び第2の窒化シリコン膜をゲート絶縁膜127の一部として用いることで、ゲート絶縁膜127として、欠陥量が少なく、且つ水素及びアンモニアの脱離量の少ないゲート絶縁膜を形成することができる。この結果、ゲート絶縁膜127に含まれる水素及び窒素の、半導体膜111への移動量を低減することが可能である。
【0089】
酸化物半導体を用いたトランジスタにおいて、酸化物半導体を用いて形成される半導体膜111及びゲート絶縁膜の界面又はゲート絶縁膜に捕獲準位(界面準位ともいう。)が存在すると、トランジスタのしきい値電圧の変動、代表的にはしきい値電圧のマイナス方向への変動、及びトランジスタがオン状態となるときにドレイン電流が一桁変化するのに必要なゲート電圧を示すサブスレッショルド係数(S値)の増大の原因となる。この結果、トランジスタごとに電気特性がばらつくという問題がある。このため、ゲート絶縁膜として、欠陥量の少ない窒化シリコン膜を用いることで、また、半導体膜111と接する領域に酸化絶縁膜を設けることで、しきい値電圧のマイナスシフトを低減すると共に、S値の増大を抑制することができる。
【0090】
ゲート絶縁膜127の厚さは、5nm以上400nm以下、より好ましくは10nm以上300nm以下、より好ましくは50nm以上250nm以下とするとよい。
【0091】
半導体膜111、半導体膜119、及び半導体膜631は酸化物半導体を用いて形成される。当該酸化物半導体は、非晶質構造、単結晶構造、又は多結晶構造とすることができる。また、半導体膜111、半導体膜119、及び半導体膜631は、同じ金属元素で構成される。また、半導体膜111、半導体膜119、及び半導体膜631の厚さは、1nm以上100nm以下、好ましくは1nm以上50nm以下、更に好ましくは1nm以上30nm以下、更に好ましくは3nm以上20nm以下とすることである。
【0092】
半導体膜111、半導体膜119、及び半導体膜631に適用可能な酸化物半導体として、エネルギーギャップが2eV以上、好ましくは2.5eV以上、より好ましくは3eV以上である。このように、エネルギーギャップの広い酸化物半導体を用いることで、トランジスタ103のオフ電流を低減することができる。
【0093】
半導体膜111、半導体膜119、及び半導体膜631に適用可能な酸化物半導体は、少なくともインジウム(In)若しくは亜鉛(Zn)を含む金属酸化物であることが好ましい。又は、InとZnの双方を含む金属酸化物であることが好ましい。また、当該酸化物半導体を用いたトランジスタの電気特性のばらつきを減らすため、それらと共に、スタビライザーの一又は複数を有することが好ましい。
【0094】
スタビライザーとしては、ガリウム(Ga)、スズ(Sn)、ハフニウム(Hf)、アルミニウム(Al)、又はジルコニウム(Zr)等がある。また、他のスタビライザーとしては、ランタノイドである、ランタン(La)、セリウム(Ce)、プラセオジム(Pr)、ネオジム(Nd)、サマリウム(Sm)、ユウロピウム(Eu)、ガドリニウム(Gd)、テルビウム(Tb)、ジスプロシウム(Dy)、ホルミウム(Ho)、エルビウム(Er)、ツリウム(Tm)、イッテルビウム(Yb)、ルテチウム(Lu)などがある。
【0095】
半導体膜111、半導体膜119、及び半導体膜631に適用できる酸化物半導体としては、例えば、酸化インジウム、酸化スズ、酸化亜鉛、二種類の金属を含む酸化物であるIn−Zn系酸化物、Sn−Zn系酸化物、Al−Zn系酸化物、Zn−Mg系酸化物、Sn−Mg系酸化物、In−Mg系酸化物、In−Ga系酸化物、三種類の金属を含む酸化物であるIn−Ga−Zn系酸化物(IGZOとも表記する)、In−Al−Zn系酸化物、In−Sn−Zn系酸化物、Sn−Ga−Zn系酸化物、Al−Ga−Zn系酸化物、Sn−Al−Zn系酸化物、In−Hf−Zn系酸化物、In−Zr−Zn系酸化物、In−Ti−Zn系酸化物、In−Sc−Zn系酸化物、In−Y−Zn系酸化物、In−La−Zn系酸化物、In−Ce−Zn系酸化物、In−Pr−Zn系酸化物、In−Nd−Zn系酸化物、In−Sm−Zn系酸化物、In−Eu−Zn系酸化物、In−Gd−Zn系酸化物、In−Tb−Zn系酸化物、In−Dy−Zn系酸化物、In−Ho−Zn系酸化物、In−Er−Zn系酸化物、In−Tm−Zn系酸化物、In−Yb−Zn系酸化物、In−Lu−Zn系酸化物、四種類の金属を含む酸化物であるIn−Sn−Ga−Zn系酸化物、In−Hf−Ga−Zn系酸化物、In−Al−Ga−Zn系酸化物、In−Sn−Al−Zn系酸化物、In−Sn−Hf−Zn系酸化物、In−Hf−Al−Zn系酸化物を用いることができる。
【0096】
ここで、In−Ga−Zn系酸化物とは、InとGaとZnを主成分として有する酸化物という意味であり、InとGaとZnの比率は問わない。また、InとGaとZn以外の金属元素が入っていてもよい。
【0097】
また、酸化物半導体として、InMO(ZnO)(m>0)で表記される材料を用いてもよい。なお、Mは、Ga、Fe、Mn及びCoから選ばれた一の金属元素又は複数の金属元素、若しくは上記のスタビライザーとしての元素を示す。
【0098】
例えば、In:Ga:Zn=1:1:1(=1/3:1/3:1/3)、In:Ga:Zn=2:2:1(=2/5:2/5:1/5)、あるいはIn:Ga:Zn=3:1:2(=1/2:1/6:1/3)の原子数比のIn−Ga−Zn系金属酸化物を用いることができる。あるいは、In:Sn:Zn=1:1:1(=1/3:1/3:1/3)、In:Sn:Zn=2:1:3(=1/3:1/6:1/2)あるいはIn:Sn:Zn=2:1:5(=1/4:1/8:5/8)の原子数比のIn−Sn−Zn系金属酸化物を用いるとよい。なお、金属酸化物に含まれる金属元素の原子数比は、誤差として上記の原子数比のプラスマイナス20%の変動を含む。
【0099】
しかし、これらに限られず、必要とする半導体特性及び電気特性(電界効果移動度、しきい値電圧等)に応じて適切な原子数比のものを用いればよい。また、必要とする半導体特性を得るために、キャリア密度や不純物濃度、欠陥密度、金属元素と酸素の原子数比、原子間距離、密度等を適切なものとすることが好ましい。例えば、In−Sn−Zn系金属酸化物では比較的容易に高い電界効果移動度が得られる。しかしながら、In−Ga−Zn系金属酸化物でも、バルク内欠陥密度を低くすることにより、電界効果移動度を上げることができる。
【0100】
トランジスタ103のソース電極を含む信号線109、トランジスタ103のドレイン電極を含む導電膜113、及び容量素子105の半導体膜119と容量線115とを電気的に接続する導電膜125、並びにソース電極629及びドレイン電極633は、走査線107、容量線115、及びゲート電極627に適用できる材料を用いた、単層構造又は積層構造で設ける。
【0101】
画素電極121及び導電膜641は、インジウム錫酸化物、酸化タングステンを含むインジウム酸化物、酸化タングステンを含むインジウム亜鉛酸化物、酸化チタンを含むインジウム酸化物、酸化チタンを含むインジウム錫酸化物、インジウム亜鉛酸化物、酸化ケイ素を添加したインジウム錫酸化物などの透光性を有する導電性材料で形成される。
【0102】
ここで、本実施の形態に示す画素101に含まれる各構成要素の接続について、図1(C)に示す回路図及び図3に示す断面図を用いて説明する。
【0103】
図1(C)は、図1(A)に示す半導体装置が有する画素101の詳細な回路図の一例である。図1(C)及び図3に示すように、トランジスタ103は、ゲート電極を含む走査線107と、ソース電極を含む信号線109と、ドレイン電極を含む導電膜113とを有する。
【0104】
容量素子105において、導電膜125を介して容量線115と電気的に接続する半導体膜119が一方の電極として機能する。また、ドレイン電極を含む導電膜113に電気的に接続する画素電極121が他方の電極として機能する。また、半導体膜119及び画素電極121の間に設けられる、絶縁膜129、絶縁膜131、絶縁膜132、及び絶縁膜137が誘電体膜として機能する。
【0105】
液晶素子108は、画素電極121、対向電極154、並びに画素電極121及び対向電極154の間に設けられる液晶層で構成される。
【0106】
容量素子105において、半導体膜119は、半導体膜111と同一の構成であっても、容量素子105の電極として機能する。なぜなら、画素電極121をゲート電極と機能させ、絶縁膜129、絶縁膜131、絶縁膜132、及び絶縁膜137をゲート絶縁膜と機能させ、容量線115をソース電極又はドレイン電極と機能させることが可能であり、この結果、容量素子105をトランジスタと同様に動作させ、半導体膜119を導通状態にすることができるからである。即ち、容量素子105をMOS(Metal Oxide Semiconductor)キャパシタとすることが可能である。MOSキャパシタは、しきい値電圧(Vth)よりも高い電圧がMOSキャパシタを構成する電極の一方(容量素子105においては画素電極121)に加わると、充電される。また、容量線115に印加する電位を制御することで半導体膜119を導通状態とさせ、半導体膜119を容量素子の一方の電極として機能させることができる。この場合、容量線115に印加する電位を以下のようにする。画素電極121の電位は、液晶素子108(図1(C)を参照。)を動作させるために、ビデオ信号の中心電位を基準として、プラス方向及びマイナス方向に変動する。容量素子105(MOSキャパシタ)を常に導通状態にさせておくためには、容量線115の電位を、常に、画素電極121に印加する電位よりも容量素子105(MOSキャパシタ)のしきい値電圧分以上低くしておく必要がある。つまり、半導体膜119と半導体膜111は同一の構成であるため、容量線115の電位をトランジスタ103のしきい値電圧分以上低くしておけばよい。このようにすることで、半導体膜119を常に導通状態とすることが可能であり、容量素子105(MOSキャパシタ)を導通状態とすることができる。
【0107】
また、半導体膜111及び半導体膜631上に設けられる絶縁膜129を、酸素を透過させると共に、半導体膜111及び半導体膜631との界面準位が少なくなる酸化絶縁膜とし、絶縁膜131を、酸素過剰領域を含む酸化絶縁膜又は化学量論的組成を満たす酸素よりも多くの酸素を含む酸化絶縁膜とすることで、酸化物半導体を用いて形成される半導体膜111及び半導体膜631へ酸素を供給することが容易になり、当該半導体膜111及び半導体膜631からの酸素の脱離を防止すると共に、絶縁膜131に含まれる当該酸素を半導体膜111及び半導体膜631に移動させ、半導体膜111、631を形成する酸化物半導体に含まれる酸素欠損を低減することが可能となる。この結果、トランジスタ103がノーマリーオン特性となることを抑制することができると共に、容量素子105(MOSキャパシタ)が、常に導通状態とせしめるように、容量線115に印加する電位を制御することが可能であるため、半導体装置の電気特性及び信頼性を向上させることができる。
【0108】
また、絶縁膜131上に設けられる絶縁膜132として、窒化絶縁膜を用いることで、外部から水素や水などの不純物が、半導体膜111及び半導体膜119に侵入することを抑制できる。さらには、絶縁膜132として、水素含有量が少ない窒化絶縁膜を設けることで、トランジスタ及び容量素子105(MOSキャパシタ)の電気特性変動を抑制することができる。
【0109】
また、画素101内に容量素子105を大きく(大面積に)形成することができる。従って、開口率を高めつつ、電荷容量を増大させた半導体装置を得ることができる。この結果、表示品位の優れた半導体装置を得ることができる。
【0110】
<半導体装置の作製方法>
次に、上記の半導体装置に示す基板102上に設けられた素子部の作製方法について、図4及び図5を用いて説明する。
【0111】
まず、基板102に、走査線107、容量線115、及びゲート電極627を形成し、走査線107、容量線115、及びゲート電極627を覆うように後にゲート絶縁膜127に加工される絶縁膜126を形成し、絶縁膜126の走査線107と重畳する領域に半導体膜111を形成し、後に画素電極121が形成される領域と重畳するように半導体膜119を形成する。また、ゲート電極627と重畳する領域に半導体膜631を形成する(図4(A)を参照。)。
【0112】
走査線107、容量線115、及びゲート電極627は、上記列挙した材料を用いて導電膜を形成し、当該導電膜上にマスクを形成し、当該マスクを用いて加工することにより形成できる。当該導電膜は、蒸着法、CVD法、スパッタリング法、スピンコート法などの各種成膜方法を用いることができる。なお、当該導電膜の厚さは特に限定されず、形成する時間や所望の抵抗率などを考慮して決めることができる。当該マスクは、例えばフォトリソグラフィ工程によって形成したレジストマスクとすることができる。また、当該導電膜の加工はドライエッチング及びウェットエッチングの一方又は双方によって行うことができる。
【0113】
絶縁膜126は、ゲート絶縁膜127に適用可能な材料を用いて、CVD法又はスパッタリング法などの各種成膜方法を用いて形成することができる。
【0114】
また、ゲート絶縁膜127に酸化ガリウムを適用する場合は、MOCVD(Metal Organic Chemical Vapor Deposition)法を用いて絶縁膜126を形成することができる。
【0115】
半導体膜111、半導体膜119、及び半導体膜631は、上記列挙した酸化物半導体を用いて酸化物半導体膜を形成し、当該酸化物半導体膜上にマスクを形成し、当該マスクを用いて加工することにより形成できる。このため、半導体膜111、半導体膜119、及び半導体膜631は同じ金属元素で構成される。当該酸化物半導体膜は、スパッタリング法、塗布法、パルスレーザー蒸着法、レーザーアブレーション法などを用いて形成することができる。印刷法を用いることで、素子分離された半導体膜111及び半導体膜119を絶縁膜126上に直接形成することができる。スパッタリング法で当該酸化物半導体膜を形成する場合、プラズマを発生させるための電源装置は、RF電源装置、AC電源装置又はDC電源装置などを適宜用いることができる。スパッタリングガスは、希ガス(代表的にはアルゴン)、酸素、希ガス及び酸素の混合ガスを適宜用いる。なお、希ガス及び酸素の混合ガスの場合、希ガスに対して酸素のガス比を高めることが好ましい。また、ターゲットは、形成する酸化物半導体膜の組成にあわせて、適宜選択すればよい。なお、当該マスクは、例えばフォトリソグラフィ工程によって形成したレジストマスクとすることができる。また、当該酸化物半導体膜の加工はドライエッチング及びウェットエッチングの一方又は双方によって行うことができる。所望の形状にエッチングできるよう、材料に合わせてエッチング条件(エッチングガスやエッチング液、エッチング時間、温度など)を適宜設定する。
【0116】
半導体膜111、半導体膜119、及び半導体膜631を形成した後に加熱処理をし、酸化物半導体で形成される半導体膜111、半導体膜119、及び半導体膜631の脱水素化又は脱水化をすることが好ましい。当該加熱処理の温度は、代表的には、150℃以上基板歪み点未満、好ましくは200℃以上450℃以下、更に好ましくは300℃以上450℃以下とする。なお、当該加熱処理は半導体膜111及び半導体膜119に加工する前の酸化物半導体膜に行ってもよい。
【0117】
当該加熱処理において、加熱処理装置は電気炉に限られず、加熱されたガスなどの媒体からの熱伝導、又は熱輻射によって、被処理物を加熱する装置であっても良い。例えば、GRTA(Gas Rapid Thermal Anneal)装置、LRTA(Lamp Rapid Thermal Anneal)装置等のRTA(Rapid Thermal Anneal)装置を用いることができる。LRTA装置は、ハロゲンランプ、メタルハライドランプ、キセノンアークランプ、カーボンアークランプ、高圧ナトリウムランプ、高圧水銀ランプなどのランプから発する光(電磁波)の輻射により、被処理物を加熱する装置である。GRTA装置は、高温のガスを用いて加熱処理を行う装置である。
【0118】
当該加熱処理は、窒素、酸素、超乾燥空気(水の含有量が20ppm以下、好ましくは1ppm以下、好ましくは10ppb以下の空気)、又は希ガス(アルゴン、ヘリウム等)の雰囲気下で行えばよい。なお、上記窒素、酸素、超乾燥空気、又は希ガスに水素、水などが含まれないことが好ましい。不活性ガス雰囲気で加熱した後、酸素雰囲気で加熱してもよい。なお、処理時間は3分〜24時間とする。
【0119】
なお、基板102と、走査線107及び容量線115並びにゲート絶縁膜127との間には下地絶縁膜を設ける場合、当該下地絶縁膜は、酸化シリコン、酸化窒化シリコン、窒化シリコン、窒化酸化シリコン、酸化ガリウム、酸化ハフニウム、酸化イットリウム、酸化アルミニウム、酸化窒化アルミニウムなどで形成することができる。なお、下地絶縁膜として、窒化シリコン、酸化ガリウム、酸化ハフニウム、酸化イットリウム、酸化アルミニウムなどで形成することで、基板102から不純物、代表的にはアルカリ金属、水、水素などが、半導体膜111、半導体膜119、及び半導体膜631に拡散することを抑制できる。下地絶縁膜は、スパッタリング法又はCVD法を用いて形成することができる。
【0120】
次に、絶縁膜126に容量線115に達する開口123を形成してゲート絶縁膜127を形成した後、トランジスタ103のソース電極を含む信号線109、トランジスタ103のドレイン電極を含む導電膜113、半導体膜119と容量線115とを電気的に接続する導電膜125を形成する。また、ソース電極629及びドレイン電極633を形成する(図4(B)を参照。)。
【0121】
開口123は、絶縁膜126の容量線115と重畳する領域の一部が露出されるようにマスクを形成し、当該マスクを用いて加工することで形成できる。なお、当該マスク及び当該加工は、走査線107、容量線115、及びゲート電極627と同じようにして行うことができる。
【0122】
信号線109、導電膜113、導電膜125、ソース電極629、及びドレイン電極633は、信号線109、導電膜113、導電膜125、及びゲート電極627に適用できる材料を用いて導電膜を形成し、当該導電膜上にマスクを形成し、当該マスクを用いて加工することにより形成できる。当該マスク及び当該加工は、走査線107、容量線115、及びゲート電極627と同じようにして行うことができる。
【0123】
次に、半導体膜111、半導体膜119及び半導体膜631、信号線109、導電膜113、導電膜125、ソース電極629、及びドレイン電極633、並びにゲート絶縁膜127上に絶縁膜128を形成し、絶縁膜128上に絶縁膜130を形成し、絶縁膜130上に絶縁膜133を形成する。また、絶縁膜133上に絶縁膜136を形成する(図5(A)を参照。)。なお、絶縁膜128、絶縁膜130及び絶縁膜133は連続して形成することが好ましい。このようにすることで、絶縁膜128、絶縁膜130及び絶縁膜133のそれぞれの界面に不純物が混入することを抑制できる。
【0124】
絶縁膜128は、絶縁膜129に適用可能な材料を用いて、CVD法又はスパッタリング法などの各種成膜方法により形成することができる。絶縁膜130は、絶縁膜131に適用可能な材料を用いて、CVD法又はスパッタリング法などの各種成膜方法により形成できる。絶縁膜133は、絶縁膜132に適用可能な材料を用いて、CVD法又はスパッタリング法などの各種成膜方法により形成できる。絶縁膜136は、絶縁膜137に適用可能な材料を用いて、CVD法により形成できる。
【0125】
絶縁膜129に半導体膜111との界面準位が少なくなる酸化絶縁膜を適用する場合、絶縁膜128は以下の形成条件を用いて形成できる。なお、ここでは当該酸化絶縁膜として、酸化シリコン膜又は酸化窒化シリコン膜を形成する場合について記載する。当該形成条件は、プラズマCVD装置の真空排気された処理室内に載置された基板を180℃以上400℃以下、さらに好ましくは200℃以上370℃以下に保持し、処理室に原料ガスのシリコンを含む堆積性気体及び酸化性気体を導入して処理室内における圧力を20Pa以上250Pa以下、さらに好ましくは40Pa以上200Pa以下とし、処理室内に設けられた電極に高周波電力を供給する条件である。
【0126】
シリコンを含む堆積性気体の代表例としては、シラン、ジシラン、トリシラン、フッ化シランなどがある。酸化性気体としては、酸素、オゾン、一酸化二窒素、二酸化窒素などがある。
【0127】
なお、シリコンを含む堆積性気体に対する酸化性気体量を100倍以上とすることで、絶縁膜128(絶縁膜129)に含まれる水素含有量を低減することが可能であると共に、絶縁膜128(絶縁膜129)に含まれるダングリングボンドを低減することができる。絶縁膜130(絶縁膜131)から移動する酸素は、絶縁膜128(絶縁膜129)に含まれるダングリングボンドによって捕獲される場合があるため、絶縁膜128(絶縁膜129)に含まれるダングリングボンドが低減されていると、絶縁膜130(絶縁膜131)に含まれる酸素を効率よく半導体膜111及び半導体膜119へ移動させ、半導体膜111及び半導体膜119を形成する酸化物半導体に含まれる酸素欠損を低減することが可能である。この結果、当該半導体膜111及び半導体膜119に混入する水素量を低減できると共に、半導体膜111及び半導体膜119に含まれる酸素欠損を低減させることが可能である。
【0128】
絶縁膜131を上記の酸素過剰領域を含む酸化絶縁膜又は化学量論的組成を満たす酸素よりも多くの酸素を含む酸化絶縁膜とする場合、絶縁膜130は以下の形成条件を用いて形成できる。なお、ここでは当該酸化絶縁膜として、酸化シリコン膜又は酸化窒化シリコン膜を形成する場合について記載する。当該形成条件は、プラズマCVD装置の真空排気された処理室内に載置された基板を180℃以上260℃以下、さらに好ましくは180℃以上230℃以下に保持し、処理室に原料ガスを導入して処理室内における圧力を100Pa以上250Pa以下、さらに好ましくは100Pa以上200Pa以下とし、処理室内に設けられた電極に0.17W/cm以上0.5W/cm以下、さらに好ましくは0.25W/cm以上0.35W/cm以下の高周波電力を供給する、ことである。
【0129】
絶縁膜130の原料ガスは、絶縁膜128に適用できる原料ガスとすることができる。
【0130】
絶縁膜130の形成条件として、上記圧力の処理室において上記パワー密度の高周波電力を供給することで、プラズマ中で原料ガスの分解効率が高まり、酸素ラジカルが増加し、原料ガスの酸化が進むため、絶縁膜130中における酸素含有量が化学量論的組成よりも多くなる。また、基板温度が、上記温度で形成された膜では、シリコンと酸素の結合力が弱い。したがって、後の工程の加熱処理によって膜中の酸素の一部を脱離させることができる。この結果、化学量論的組成を満たす酸素よりも多くの酸素を含み、加熱により酸素の一部が脱離する酸化絶縁膜を形成することができる。また、半導体膜111上に絶縁膜128が設けられている。このため、絶縁膜130の形成工程において、絶縁膜128が半導体膜111の保護膜となる。この結果、パワー密度の高い高周波電力を用いて絶縁膜130を形成しても、半導体膜111及び半導体膜631へのダメージを抑制できる。
【0131】
また、絶縁膜130は膜厚を厚くすることで加熱によって脱離する酸素の量を多くすることができることから、絶縁膜130は絶縁膜128より厚く設けることが好ましい。絶縁膜128を設けることで絶縁膜130を厚く設ける場合でも被覆性を良好にすることができる。
【0132】
絶縁膜132はスパッタリング法、CVD法等を用いて形成することができる。絶縁膜132を水素含有量が少ない窒化絶縁膜で設ける場合、絶縁膜133は以下の形成条件を用いて形成できる。なお、ここでは当該窒化絶縁膜として、窒化シリコン膜を形成する場合について記載する。当該形成条件は、プラズマCVD装置の真空排気された処理室内に載置された基板を80℃以上400℃以下、さらに好ましくは200℃以上370℃以下に保持し、処理室に原料ガスを導入して処理室内における圧力を100Pa以上250Pa以下とし、好ましくは100Pa以上200Pa以下とし、処理室内に設けられた電極に高周波電力を供給する、ことである。
【0133】
絶縁膜132の原料ガスとしては、シリコンを含む堆積性気体、窒素、及びアンモニアを用いることが好ましい。シリコンを含む堆積性気体の代表例としては、シラン、ジシラン、トリシラン、フッ化シランなどがある。また、窒素の流量は、アンモニアの流量に対して5倍以上50倍以下、好ましくは10倍以上50倍以下とすることが好ましい。なお、原料ガスとしてアンモニアを用いることで、シリコンを含む堆積性気体及び窒素の分解を促すことができる。これは、アンモニアがプラズマエネルギーや熱エネルギーによって解離し、解離することで生じるエネルギーが、シリコンを含む堆積性気体分子の結合及び窒素分子の結合の分解に寄与するためである。このようにすることで、水素含有量が少なく、外部から水素や水などの不純物の侵入を抑制することが可能な窒化シリコン膜を形成することができる。
【0134】
絶縁膜136は、有機シランガス及び酸素を用い、基板温度を200℃以上550℃以下、好ましくは300℃以上450℃以下としたCVD法により形成する。
【0135】
少なくとも絶縁膜130を形成した後に加熱処理を行い、絶縁膜128又は絶縁膜130に含まれる過剰酸素を半導体膜111及び半導体膜631に移動させ、半導体膜111及び半導体膜631を形成する酸化物半導体に含まれる酸素欠損を低減することが好ましい。なお、当該加熱処理は、半導体膜111及び半導体膜119の脱水素化又は脱水化を行う加熱処理の詳細を参照して適宜行うことができる。
【0136】
次に、絶縁膜128、絶縁膜130、絶縁膜133、及び絶縁膜136の導電膜113と重畳する領域に、導電膜113に達する開口117(図2を参照。)を形成すると共に、絶縁膜129、絶縁膜131、絶縁膜132、及び絶縁膜137を形成する。開口117(図2を参照。)は、開口123と同様にして形成することができる。
【0137】
最後に、画素電極121及び導電膜641を形成することで、基板102に設けられる素子部を作製することができる(図5(B)を参照。)。画素電極121は、上記列挙した材料を用い、開口117を通じて導電膜113に接する導電膜を形成し、当該導電膜上にマスクを形成し、当該マスクを用いて加工することにより形成できる。なお、当該マスク及び当該加工は、走査線107及び容量線115と同じようにして行うことができる。
【0138】
<変形例1>
本発明の一態様である半導体装置において、容量素子を構成する一方の電極である半導体膜119と容量線115との接続を適宜変更することができる。例えば、さらに開口率を高めるために、導電膜125を介せず、容量線に直接半導体膜が接する構造とすることができる。遮光膜となる導電膜125が形成されないため、画素の開口率をさらに高めることができる。
【0139】
<変形例2>
本発明の一態様である半導体装置において、容量素子105を構成する一方の電極である半導体膜119と容量線115とを電気的に接続する導電膜125の上面形状を、適宜変更することができる。例えば、当該半導体膜119と導電膜125の接触抵抗を低減させるために、当該導電膜125を当該半導体膜119の外周に沿って接して設けることができる。なお、導電膜は、トランジスタ103のソース電極を含む信号線109及びトランジスタ103のドレイン電極を含む導電膜113と同じ形成工程で形成されることから遮光性を有する場合があるため、ループ状に形成することが好ましい。
【0140】
<変形例3>
また、本発明の一態様である半導体装置において、容量素子に含まれる半導体膜及び容量線の構成を適宜変更することができる。本構造の具体例について、図6を用いて説明する。図6は、画素172の上面図であり、画素172のように、信号線109と平行な辺と比較して走査線107と平行な辺の方が長い形状とし、且つ容量線176が、信号線109と平行方向に延伸して設けられていてもよい。なお、信号線109及び容量線176は、信号線駆動回路106(図1(A)を参照。)に電気的に接続されている。
【0141】
容量素子174は、信号線109と平行方向に延伸して設けられた容量線176と接続されている。容量素子174は、半導体膜111と同じ工程で形成された、酸化物半導体で構成される半導体膜178と、画素電極121と、誘電体膜として、トランジスタ103上に形成される絶縁膜(図6に図示せず。)とで構成されている。半導体膜111、画素電極121、及び誘電体膜はそれぞれ透光性を有するため、容量素子174は透光性を有する。
【0142】
なお、容量素子174において、一対の電極の間に設けられた誘電体膜は、図3に示す容量素子105と同様に、絶縁膜129、絶縁膜131、絶縁膜132、及び絶縁膜137である。
【0143】
容量線176は、信号線109及び導電膜113と同じ工程で形成することができる。容量線176を半導体膜178に接して設けることで、半導体膜178及び容量線176の接触面積を増大させることが可能である。また、画素172において、走査線107と平行な辺と比較して信号線109と平行な辺の方が短い形状であるため、画素電極121及び容量線176が重なる面積を縮小することが可能であり、開口率を高めることができる。
【0144】
<変形例4>
本発明の一態様である半導体装置において、容量素子を構成する一方の電極、及び容量線を半導体膜とすることができる。具体例を図7を用いて説明する。なお、ここでは、図2で説明した半導体膜119及び容量線115と異なる、半導体膜198についてのみ説明する。図7は、画素196の上面図であり、画素196において、容量素子197の一方の電極及び容量線を兼ねる半導体膜198が設けられている。半導体膜198において、信号線109と平行方向に延伸した領域を有し、当該領域は容量線として機能する。半導体膜198において、画素電極121と重畳する領域は容量素子197の一方の電極として機能する。なお、半導体膜198は画素196に設けられるトランジスタ103の半導体膜111と同時に形成することができる。
【0145】
また、半導体膜198を、1行分全ての画素196において離間せず一続きの半導体膜として設ける場合、半導体膜198は走査線107と重畳するため、走査線107の電位変化の影響により、容量線及び容量素子197の一方の電極として機能しない場合がある。従って、図7に示すように、各画素196において半導体膜198を離間して設け、離間して設けられた半導体膜198を信号線109及び導電膜113と同時に形成できる導電膜199を用いて電気的に接続させることが好ましい。このとき、半導体膜198において導電膜199と接続していない領域が、画素電極121と重なることで、当該領域における半導体膜198の抵抗を低減できるため、半導体膜198が容量線及び容量素子197の一方の電極として機能する。
【0146】
なお、図示しないが、半導体膜198が、走査線107と重畳する領域で走査線107の電位変化の影響を受けない場合、半導体膜198は、画素196それぞれにおいて走査線107と重畳するように1つの半導体膜として設けることができる。つまり、半導体膜198を、1行分全ての画素196において離間せず一続きの半導体膜として設けることができる。
【0147】
図7では、半導体膜198の容量線と機能する領域が信号線109と平行方向に延伸した構成であるが、容量線と機能する領域は、走査線107と平行方向に延伸させる構成であってもよい。なお、半導体膜198の容量線として機能する領域を走査線107と平行方向に延伸させる構成とする場合、トランジスタ103及び容量素子197において、半導体膜111と及び半導体膜198と、信号線109及び導電膜113との間に絶縁膜を設けて電気的に分離させることが必要である。
【0148】
上記より、画素196のように、画素に設けられる容量素子の一方の電極及び容量線として、酸化物半導体膜を設けることで、酸化物半導体膜は透光性を有するため、画素の開口率を高めることができる。
【0149】
<変形例5>
また、本発明の一態様である半導体装置において、容量線の構成を適宜変更することができる。本構造について、図8を用いて説明する。なお、ここでは、図2で説明した容量線115と比較して、隣接する2つの画素の間において、容量線が位置する点が異なる。
【0150】
図8は、信号線409の伸張方向において隣接する画素の間に容量線が設けられている構成を示す。なお、図8の代わりに、走査線437の伸張方向において隣接する画素の間に容量線が設けられている構成を適宜適用することができる。
【0151】
図8は、信号線409の伸張方向に隣接する画素401_1及び画素401_2の上面図である。
【0152】
走査線407_1及び走査線407_2は、互いに平行であって、且つ信号線409に略直交する方向に延伸して設けられている。走査線407_1及び走査線407_2の間に、走査線407_1及び走査線407_2と互いに平行に容量線415が設けられている。なお、容量線415は、画素401_1に設けられる容量素子405_1、及び画素401_2に設けられる容量素子405_2と電気的に接続する。画素401_1及び画素401_2の上面形状、及び構成要素の配置位置は、容量線415に対して対称である。
【0153】
画素401_1には、トランジスタ403_1及び該トランジスタ403_1と電気的に接続する画素電極421_1、及び容量素子405_1が設けられる。
【0154】
トランジスタ403_1は、走査線407_1及び信号線409が交差する領域に設けられている。トランジスタ403_1は、少なくとも、チャネル形成領域を有する半導体膜411_1と、ゲート電極と、ゲート絶縁膜(図8に図示せず。)と、ソース電極と、及びドレイン電極とを含む。なお、走査線407_1において、半導体膜411_1と重畳する領域はトランジスタ403_1のゲート電極として機能する。信号線409において、半導体膜411_1と重畳する領域はトランジスタ403_1のソース電極として機能する。導電膜413_1において、半導体膜411_1と重畳する領域はトランジスタ403_1のドレイン電極として機能する。導電膜413_1及び画素電極421_1が開口417_1において接続する。
【0155】
容量素子405_1は、開口423に設けられた導電膜425を通じて容量線415と電気的に接続されている。容量素子405_1は、酸化物半導体で形成される半導体膜419_1と、画素電極421_1と、誘電体膜として、トランジスタ403_1上に形成される絶縁膜(図8に図示せず。)とで構成されている。半導体膜419_1、画素電極421_1、及び誘電体膜はそれぞれ透光性を有するため、容量素子405_1は透光性を有する。
【0156】
画素401_2には、トランジスタ403_2、該トランジスタ403_2と電気的に接続する画素電極421_2、及び容量素子405_2が設けられる。
【0157】
トランジスタ403_2は、走査線407_2及び信号線409が交差する領域に設けられている。トランジスタ403_2は、少なくとも、チャネル形成領域を有する半導体膜411_2と、ゲート電極と、ゲート絶縁膜(図8に図示せず。)と、ソース電極と、及びドレイン電極とを含む。なお、走査線407_2において、半導体膜411_2と重畳する領域はトランジスタ403_2のゲート電極として機能する。信号線409において、半導体膜411_2と重畳する領域はトランジスタ403_2のソース電極として機能する。導電膜413_2において、半導体膜411_2と重畳する領域はトランジスタ403_2のドレイン電極として機能する。導電膜413_2及び画素電極421_2が開口417_2において接続する。
【0158】
容量素子405_2は、容量素子405_1と同様に、開口423に設けられた導電膜425を通じて容量線415と電気的に接続されている。容量素子405_2は、酸化物半導体で形成される半導体膜419_2と、画素電極421_2と、誘電体膜として、トランジスタ403_2上に形成される絶縁膜(図8に図示せず。)とで構成されている。半導体膜419_2、画素電極421_2、及び誘電体膜はそれぞれ透光性を有するため、容量素子405_2は透光性を有する。
【0159】
なお、トランジスタ403_1及びトランジスタ403_2、並びに容量素子405_1及び容量素子405_2の断面構造はそれぞれ、図3に示すトランジスタ103及び容量素子105同様であるため、ここでは省略する。
【0160】
上面形状において、隣接する2つ画素の間に容量線を設け、それぞれの画素に含まれる容量素子及び該容量線を接続することで、容量線の数を削減することが可能である。この結果、各画素に容量線を設ける構造と比較して、画素の開口率をさらに高めることが可能である。
【0161】
<変形例6>
本発明の一態様である半導体装置において、画素内に設けられるトランジスタの形状は図2及び図3に示したトランジスタの形状に限定されず、適宜変更することができる。例えば、トランジスタにおいて、信号線109に含まれるソース電極がU字型(C字型、コの字型、又は馬蹄型)とし、ドレイン電極を含む導電膜を囲む形状のトランジスタであってもよい。このような形状とすることで、トランジスタの面積が小さくても、十分なチャネル幅を確保することが可能となり、トランジスタの導通時に流れるドレイン電流(オン電流ともいう。)の量を増やすことが可能となる。
【0162】
<変形例7>
また、上記に示す画素101、172、196において、半導体膜が、ゲート絶縁膜とソース電極を含む信号線109及びドレイン電極を含む導電膜113との間に位置するトランジスタを用いたが、その代わりに、半導体膜が、ソース電極を含む信号線及びドレイン電極を含む導電膜と、絶縁膜129の間に位置するトランジスタを用いることができる。
【0163】
<変形例8>
また、上記に示す画素101、172、196において、トランジスタとして、チャネルエッチ型のトランジスタを示したが、その代わりに、チャネル保護型のトランジスタを用いることができる。チャネル保護膜を設けることで、半導体膜111の表面は、信号線及び導電膜の形成工程で用いるエッチャントやエッチングガスに曝されず、半導体膜111及びチャネル保護膜の間の不純物を低減できる。この結果、トランジスタのソース電極及びドレイン電極の間に流れるリーク電流を低減することが可能である。
【0164】
<変形例9>
また、上記に示す画素101、172、196、401_1、401_2において、トランジスタとして、1つのゲート電極を有するトランジスタを示したが、その代わりに、半導体膜111を介して対向する2つのゲート電極を有するトランジスタを用いることができる。
【0165】
トランジスタは、本実施の形態で説明したトランジスタ103の絶縁膜137上に、導電膜を有する。導電膜は、少なくとも半導体膜111のチャネル形成領域と重なる。導電膜を半導体膜111のチャネル形成領域と重なる位置に設けることによって、導電膜の電位は、信号線109に入力されるビデオ信号の最低電位とすることが好ましい。この結果、導電膜と対向する半導体膜111の面において、ソース電極及びドレイン電極の間に流れる電流を制御することが可能であり、トランジスタの電気特性のばらつきを低減することができる。また、導電膜を設けることで、周囲の電界の変化が半導体膜111へ与える影響を軽減し、トランジスタの信頼性を向上させることができる。
【0166】
導電膜は、走査線107、信号線109、画素電極121などと同様の材料及び方法により形成することができる。
【0167】
以上より、容量素子の一方の電極として、トランジスタに含まれる半導体膜と同じ形成工程で形成される半導体膜を用いることで、開口率を高めつつ、電荷容量を増大させた容量素子を有する半導体装置を作製することができる。この結果、表示品位の優れた半導体装置を得ることができる。
【0168】
また、トランジスタに含まれる、酸化物半導体を用いて形成される半導体膜は、酸素欠損が低減され、水素などの不純物が低減されていることから、本発明の一態様である半導体装置は、良好な電気特性を有する半導体装置となる。
【0169】
なお、本実施の形態に示す構成などは、他の実施の形態に示す構成と適宜組み合わせて用いることができる。
【0170】
(実施の形態2)
本実施の形態では、本発明の一態様の半導体装置であり、上記実施の形態と異なる構造の半導体装置について、図面を用いて説明する。本実施の形態では、液晶表示装置を例にして本発明の一態様である半導体装置を説明する。また、本実施の形態で説明する半導体装置は、上記実施の形態と比較して、容量素子の構造が異なる。なお、本実施の形態で説明する半導体装置において、上記実施の形態で説明した半導体装置と同様の構成は、上記実施の形態を参照することができる。
【0171】
<半導体装置の構成>
本実施の形態で説明する画素101の上面図を図9に示す。図9に示した画素201は、一点鎖線内の領域において、絶縁膜229(図示せず。)及び絶縁膜231(図示せず。)が設けられていない。また、半導体膜119上に、絶縁膜229(図示せず。)及び絶縁膜231(図示せず。)の端部が位置する。従って、図9に示した画素201の容量素子205は、一方の電極である半導体膜119と、他方の電極である画素電極221と、誘電体膜である絶縁膜232及び絶縁膜237(図示せず。)とで構成されている。
【0172】
次いで、図9の一点鎖線A1−A2間、一点鎖線B1−B2間、一点鎖線C1−C2間、及び走査線駆動回路104(図1(A)を参照。)に設けられるトランジスタの断面図を図10に示す。ここでは、走査線駆動回路104の上面図を省略すると共に、走査線駆動回路104の断面図をD1−D2に示す。なお、ここでは、走査線駆動回路104に設けられるトランジスタの断面図を示すが、当該トランジスタは信号線駆動回路106に設けることができる。
【0173】
本実施の形態における画素201の断面構造は以下の通りである。基板102上に、トランジスタ103のゲート電極を含む走査線107と、走査線107と同一表面上に設けられている容量線115とが設けられている。走査線107及び容量線115上にゲート絶縁膜127が設けられている。ゲート絶縁膜127の走査線107と重畳する領域上に半導体膜111が設けられており、ゲート絶縁膜127上に半導体膜219が設けられている。半導体膜111上、及びゲート絶縁膜127上にトランジスタ103のソース電極を含む信号線109と、トランジスタ103のドレイン電極を含む導電膜113とが設けられている。ゲート絶縁膜127には容量線115に達する開口123が設けられており、開口123、ゲート絶縁膜127上、及び半導体膜219上に導電膜125が設けられている。ゲート絶縁膜127上、信号線109上、半導体膜111上、導電膜113上、導電膜125上、半導体膜219上にトランジスタ103の保護絶縁膜として機能する絶縁膜229、絶縁膜231、絶縁膜232、及び絶縁膜237が設けられている。また、少なくとも容量素子205となる領域において、半導体膜219上に絶縁膜232が設けられている。絶縁膜229、絶縁膜231、絶縁膜232、及び絶縁膜237には導電膜113に達する開口117(図9参照。)が設けられており、開口117(図9参照。)及び絶縁膜232上に画素電極221が設けられている。なお、基板102と、走査線107及び容量線115並びにゲート絶縁膜127との間には下地絶縁膜が設けられていてもよい。
【0174】
絶縁膜229は、実施の形態1で説明した絶縁膜129と同様の絶縁膜である。絶縁膜231は、実施の形態1で説明した絶縁膜131と同様の絶縁膜である。絶縁膜232は、実施の形態1で説明した絶縁膜132と同様の絶縁膜である。絶縁膜237は、実施の形態1で説明した絶縁膜137と同様の絶縁膜である。画素電極221は、実施の形態1で説明した画素電極121と同様の画素電極である。
【0175】
本実施の形態における容量素子205のように、一方の電極である半導体膜219と他方の電極である画素電極221との間に設けられる誘電体膜を絶縁膜232及び絶縁膜237とすることで、誘電体膜の厚さを、実施の形態1における容量素子105の誘電体膜に比べて薄くすることができる。従って、本実施の形態における容量素子205は、実施の形態1における容量素子105よりも電荷容量を増大させることができる。
【0176】
また、絶縁膜232及び絶縁膜237は、容量素子205の誘電体膜として機能する。絶縁膜232は、窒化絶縁膜で形成されるが、窒化絶縁膜は、酸化シリコンなどの酸化絶縁膜に比べて、比誘電率が高く、内部応力が大きい傾向を有する。そのため、容量素子205の誘電体膜として絶縁膜237を用いずに絶縁膜232だけを用いる場合、絶縁膜232の膜厚が小さいと容量素子205の容量値が大きくなりすぎてしまい、画像信号の画素への書き込みの速度を低消費電力にて高めることが難しくなる。逆に、絶縁膜232の膜厚が大きいと、内部応力が大きくなりすぎてしまい、トランジスタの閾値電圧が変動するなど、電気特性の悪化を招く。また、絶縁膜232の内部応力が大きくなりすぎると、絶縁膜232が基板102から剥離しやすくなり、歩留りが低下する。しかし、絶縁膜232よりも比誘電率の低い酸化シリコンなどの酸化絶縁物を用いた絶縁膜237を、絶縁膜232と共に、画素の容量素子の誘電体膜として用いることで、絶縁膜232の膜厚を大きくすることなく、誘電体膜の誘電率を所望の値に調整することができる。
【0177】
また、絶縁膜232は、実施の形態1の絶縁膜132と同様に窒化絶縁膜であることで、半導体膜219は導電率が高く、n型となる。また、半導体膜219は、導体としての特性を有する金属酸化物で構成される透光性を有する導電膜となる。また、半導体膜219は導電率が半導体膜111と比較して高い。
【0178】
また、半導体膜219は半導体膜111よりも導電率が高い領域を有する。本構成において、少なくとも半導体膜219の絶縁膜232と接する領域はn型であり、半導体膜111の絶縁膜229と接する領域よりも導電率が高い。
【0179】
なお、半導体膜219は、半導体膜111より水素濃度が高いことが好ましい。半導体膜219において、二次イオン質量分析法(SIMS:Secondary Ion Mass Spectrometry)により得られる水素濃度は、8×1019atoms/cm以上、好ましくは1×1020atoms/cm以上、より好ましくは5×1020atoms/cm以上である。半導体膜111において、二次イオン質量分析法により得られる水素濃度は、5×1019atoms/cm未満、好ましくは5×1018atoms/cm未満、好ましくは1×1018atoms/cm以下、より好ましくは5×1017atoms/cm以下、さらに好ましくは1×1016atoms/cm以下である。
【0180】
また、半導体膜219は、半導体膜111より抵抗率が低い。半導体膜219の抵抗率が、半導体膜111の抵抗率の1×10−8倍以上1×10−1倍以下であることが好ましく、代表的には1×10−3Ωcm以上1×10Ωcm未満、さらに好ましくは、抵抗率が1×10−3Ωcm以上1×10−1Ωcm未満であるとよい。
【0181】
本実施の形態における半導体装置において、容量素子205を動作させる方法は、実施の形態1で記載した容量素子105を動作させる方法と同じように、容量素子205を動作させる期間において、半導体膜219の電位(換言すると、容量線115の電位)を、常に、画素電極121の電位よりも容量素子205(MOSキャパシタ)のしきい値電圧(Vth)分以上低くする。ただし、容量素子205において、一方の電極として機能する半導体膜219は、n型であり、導電率が高いために、しきい値電圧がマイナス方向にシフトする。半導体膜219の電位(換言すると、容量線115の電位)は、容量素子205のしきい値電圧のマイナス方向へのシフト量に応じて、画素電極121がとりうる最も低い電位から高くしていくことができる。従って、容量素子205のしきい値電圧が大きな負の値を示す場合、容量線115の電位は画素電極121の電位よりも高くすることができる。
【0182】
本実施の形態のように、容量素子205の一方の電極である半導体膜219をn型とし、導電率を増大させることで、しきい値電圧をマイナス方向にシフトさせることが可能であるため、実施の形態1の容量素子105と比較して、容量素子205を動作させるために必要な電位の選択幅を広げることができる。従って、本実施の形態は、容量素子205を動作させる期間において常に安定して容量素子205を動作させることができるため好ましい。
【0183】
また、容量素子205に含まれる半導体膜219がn型であり、導電率が高いため、容量素子205の平面面積を縮小しても十分な電荷容量を得ることができる。半導体膜219を構成する酸化物半導体は、可視光の透過率が80〜90%であるため、半導体膜219の面積を縮小し、画素において半導体膜219が形成されない領域を設けることで、バックライトなどの光源から照射される光の透過率を高めることができる。
【0184】
<半導体装置の作製方法>
次いで、本実施の形態に示す基板102上に設けられた素子部の作製方法について、図11及び図12を用いて説明する。
【0185】
まず、基板102上に、走査線107、容量線115、及びゲート電極627を形成し、基板102、走査線107、容量線115、及びゲート電極627上にゲート絶縁膜127に加工される絶縁膜を形成し、当該絶縁膜上に、半導体膜111、半導体膜119、及び半導体膜631を形成し、容量線115に達する開口123を当該絶縁膜に形成してゲート絶縁膜127を形成した後、信号線109、導電膜113、導電膜125、ソース電極629及びドレイン電極633を形成する。次に、ゲート絶縁膜127、半導体膜111、半導体膜119及び半導体膜631、並びに信号線109、導電膜113、導電膜125、ソース電極629及びドレイン電極633上に絶縁膜128を形成し、絶縁膜128上に絶縁膜130を形成する(図11(A)を参照。)。なお、ここまでの工程は、実施の形態1を参照して行うことができる。
【0186】
次に、少なくとも半導体膜119と重畳する絶縁膜130の領域上にマスクを形成し、当該マスクを用いて加工して絶縁膜228及び絶縁膜230を形成すると共に半導体膜119を露出させる(図11(B)を参照。)。当該マスクは、フォトリソグラフィ工程により形成したレジストマスクを用いることができ、当該加工は、ドライエッチング及びウェットエッチングの一方又は双方によって行うことができる。
【0187】
次に、半導体膜119を露出させた領域上及び絶縁膜230上に絶縁膜233を形成し、絶縁膜233上に絶縁膜236を形成する(図12(A)を参照。)。絶縁膜233は、実施の形態1で説明した絶縁膜133と同様の絶縁膜である。絶縁膜236は、実施の形態1で説明した絶縁膜136と同様の絶縁膜である。また、絶縁膜233及び絶縁膜236を形成した後など、絶縁膜233が半導体膜119に接した状態で加熱処理を行ってもよい。なお、ここまでの工程についても実施の形態1を参照して行うことができる。
【0188】
窒化絶縁膜で形成される絶縁膜233をプラズマCVD法またはスパッタリング法で成膜すると、半導体膜119がプラズマに曝され、半導体膜119に酸素欠損が生成される。また、半導体膜119と窒化絶縁膜で形成される絶縁膜233が接することで、絶縁膜233から、窒素または/及び水素が半導体膜119に移動する。酸素欠損に絶縁膜233に含まれる水素が入ることで、キャリアである電子が生成される。または、絶縁膜232を窒化絶縁膜とし、絶縁膜232が半導体膜119に接した状態で加熱処理を行うことで、当該窒化絶縁膜に含まれる窒素又は/及び水素を半導体膜119に移動させることができる。酸素欠損に絶縁膜233に含まれる水素が入ることで、キャリアである電子が生成される。これらの結果、半導体膜119の導電率が増大し、n型の半導体膜219となる。また、半導体膜219は、導体としての特性を有する金属酸化物で構成される透光性を有する導電膜となる。半導体膜219は導電率が半導体膜111と比較して高い。
【0189】
次に、絶縁膜228、絶縁膜230、絶縁膜233、及び絶縁膜236に、導電膜113に達する開口117(図9を参照。)を形成して、絶縁膜229、絶縁膜231、絶縁膜232、及び絶縁膜237を形成し、開口117を通じて導電膜113に接する画素電極221を形成する(図12(B)を参照。)。なお、ここまでの工程についても実施の形態1を参照して行うことができる。
【0190】
以上の工程により、本実施の形態における半導体装置を作製することができる。
【0191】
<変形例>
本発明の一態様である半導体装置において、容量素子の構造を適宜変更することができる。本構造の具体例について、図13を用いて説明する。なお、ここでは、図9及び図10で説明した容量素子105と異なる容量素子245についてのみ説明する。
【0192】
半導体膜219をn型とし、導電率を増大させるために、ゲート絶縁膜227を、窒化絶縁膜である絶縁膜225と、酸化絶縁膜である絶縁膜226との積層構造とし、少なくとも半導体膜219が設けられる領域において窒化絶縁膜である絶縁膜225のみを設ける。このような構造とすることで絶縁膜225である窒化絶縁膜が半導体膜219の下面と接することになり、半導体膜219をn型とし、導電率を増大させることができる。この場合、容量素子245の誘電体膜は、絶縁膜129、絶縁膜131、絶縁膜132、及び絶縁膜137である。なお、絶縁膜225及び絶縁膜226は、ゲート絶縁膜127に適用できる絶縁膜を適宜用いることができ、絶縁膜225は絶縁膜132と同様の絶縁膜としてもよい。また、本構成とするためには、実施の形態1を参照して適宜、絶縁膜226を加工すればよい。図13に示す構造とすることで、絶縁膜129及び絶縁膜131のエッチングを行わないため、半導体膜219の膜厚の減少を防ぐことが可能であるため、図9及び図10に示す半導体装置と比較して、歩留まりが向上する。
【0193】
なお、図13に示す構成において、半導体膜219の上面が絶縁膜132と接する構成であってもよい。つまり、図13に示す絶縁膜129及び絶縁膜131において、半導体膜219と接する領域が除去されてもよい。この場合、容量素子245の誘電体膜は絶縁膜132及び絶縁膜137である。半導体膜219の上面及び下面を窒化絶縁膜と接する構成とすることで、片面のみ窒化絶縁膜と接する場合よりも効率よく十分に半導体膜219をn型とし、導電率を増大させることができる。
【0194】
以上より、容量素子の一方の電極として、トランジスタに含まれる半導体膜と同じ形成工程で形成される半導体膜を用いることで、開口率を高めつつ、代表的には55%以上、好ましくは60%以上とすることが可能であると共に、電荷容量を増大させた容量素子を有する半導体装置を作製することができる。この結果、表示品位の優れた半導体装置を得ることができる。
【0195】
また、トランジスタに含まれる、酸化物半導体を用いて形成される半導体膜は、酸素欠損が低減され、水素などの不純物が低減されていることから、本発明の一態様である半導体装置は、良好な電気特性を有する半導体装置となる。
【0196】
なお、本実施の形態に示す構成などは、他の実施の形態に示す構成及びその変形例と適宜組み合わせて用いることができる。
【0197】
(実施の形態3)
本実施の形態では、本発明の一態様の半導体装置であり、上記実施の形態と異なる構造の半導体装置について、図面を用いて説明する。本実施の形態では、液晶表示装置を例にして本発明の一態様である半導体装置を説明する。また、本実施の形態で説明する半導体装置は、上記実施の形態と比較して、容量素子に含まれる半導体膜が異なる。なお、本実施の形態で説明する半導体装置において、上記実施の形態で説明した半導体装置と同様の構成は、上記実施の形態を参照することができる。
【0198】
<半導体装置の構成>
本実施の形態で説明する液晶表示装置の画素部に設けられる画素301の具体的な構成例について説明する。画素301の上面図を図14に示す。図14に示す画素301は、容量素子305を有し、容量素子305は、画素301内の容量線115及び信号線109で囲まれる領域に設けられている。容量素子305は、開口123に設けられた導電膜125を通じて容量線115と電気的に接続されている。容量素子305は、酸化物半導体を用いて形成され、且つ半導体膜111よりも導電率が高い半導体膜319と、画素電極121と、誘電体膜として、トランジスタ103上に形成される絶縁膜(図14に図示せず。)とで構成されている。半導体膜319、画素電極121、及び誘電体膜はそれぞれ透光性を有するため、容量素子305は透光性を有する。
【0199】
半導体膜319の導電率を、10S/cm以上1000S/cm以下、好ましくは100S/cm以上1000S/cm以下とする。
【0200】
このように半導体膜319は透光性を有する。つまり、画素101内に容量素子305を大きく(大面積に)形成することができる。従って開口率を高めつつ、代表的には55%以上、好ましくは60%以上とすることが可能であると共に、電荷容量を増大させた半導体装置を得ることができる。この結果、表示品位の優れた半導体装置を得ることができる。また、容量素子305に含まれる半導体膜319がn型であり、導電率が高いため、半導体膜319は導電性を有する膜ということもできる。容量素子305に含まれる半導体膜319は導電率が高いため、容量素子305の平面面積を縮小しても十分な電荷容量を得ることができる。半導体膜319を構成する酸化物半導体は、光の透過率が80〜90%であるため、半導体膜319の面積を縮小し、画素において半導体膜319が形成されない領域を設けることで、バックライトなどの光源から照射される光の透過率を高めることができる。
【0201】
次いで、図14の一点鎖線A1−A2間、一点鎖線B1−B2間、一点鎖線C1−C2間、及び走査線駆動回路104(図1(A)を参照。)に設けられるトランジスタの断面図を図15に示す。ここでは、走査線駆動回路104の上面図を省略すると共に、走査線駆動回路104の断面図をD1−D2に示す。なお、ここでは、走査線駆動回路104に設けられるトランジスタの断面図を示すが、当該トランジスタは信号線駆動回路106に設けることができる。
【0202】
画素301の断面構造は以下の通りである。基板102上に、トランジスタ103のゲート電極を含む走査線107が設けられている。走査線107上にゲート絶縁膜127が設けられている。ゲート絶縁膜127の走査線107と重畳する領域上に半導体膜111が設けられており、ゲート絶縁膜127上に半導体膜319が設けられている。半導体膜111上、及びゲート絶縁膜127上にトランジスタ103のソース電極を含む信号線109と、トランジスタ103のドレイン電極を含む導電膜113とが設けられている。また、ゲート絶縁膜127及び半導体膜319上に容量線115が設けられている。ゲート絶縁膜127上、信号線109上、半導体膜111上、導電膜113上、半導体膜319及び容量線115上にトランジスタ103の保護絶縁膜として機能する絶縁膜129、絶縁膜131、絶縁膜132、及び絶縁膜137が設けられている。絶縁膜129、絶縁膜131、絶縁膜132、及び絶縁膜137には導電膜113に達する開口117が設けられており、開口117及び絶縁膜137上に画素電極121が設けられている。
【0203】
本構成での容量素子305は、一対の電極のうち一方の電極が、n型であり、半導体膜111よりも導電率が高い半導体膜319であり、一対の電極のうち他方の電極が画素電極121であり、一対の電極の間に設けられた誘電体膜が絶縁膜129、絶縁膜131、絶縁膜132、及び絶縁膜137である。
【0204】
半導体膜319は、半導体膜111に適用可能な酸化物半導体を用いることができる。半導体膜111を形成すると共に半導体膜319を形成することができることから、半導体膜319は半導体膜111を構成する酸化物半導体の金属元素を含む。そして、半導体膜319は、半導体膜111よりも導電率が高いことが好ましいことから、導電率を増大させる元素(ドーパント)が含まれていることが好ましい。具体的には半導体膜319にはドーパントとして、ホウ素、窒素、フッ素、アルミニウム、リン、ヒ素、インジウム、スズ、アンチモン及び希ガス元素から選ばれた一種以上が含まれている。半導体膜319に含まれるドーパント濃度は1×1019atoms/cm以上1×1022atoms/cm以下であることが好ましい。このようにすることで、半導体膜319の導電率を10S/cm以上1000S/cm以下、好ましくは100S/cm以上1000S/cm以下とすることができ、半導体膜319を容量素子305の一方の電極として十分に機能させることができる。なお、半導体膜319は半導体膜111よりも導電率が高い領域を有する。本構成において、少なくとも、半導体膜319の絶縁膜132と接する領域は、半導体膜111の絶縁膜129と接する領域よりも導電率が高い。また、半導体膜319は、上記元素(ドーパント)を含むためn型であり、導電率が高いため、導電性を有する膜ということもできる。
【0205】
<半導体装置の作製方法>
次いで、本実施の形態に示す基板102上に設けられた素子部の作製方法について、図16及び図17を用いて説明する。
【0206】
まず、基板102上に走査線107、容量線115、及びゲート電極627を形成し、基板102、走査線107、容量線115、及びゲート電極627上にゲート絶縁膜127に加工される絶縁膜126を形成し、当該絶縁膜126上に半導体膜111及び半導体膜119を形成する。また、ゲート電極627と重畳する領域に半導体膜631を形成する(図16(A)を参照。)。なお、ここまでの工程は、実施の形態1を参照して行うことができる。
【0207】
次に、半導体膜119にドーパントを添加して半導体膜319を形成し後、絶縁膜126に容量線115に達する開口123を形成してゲート絶縁膜127を形成した後、トランジスタ103のソース電極を含む信号線109、トランジスタ103のドレイン電極を含む導電膜113、半導体膜319と容量線115とを電気的に接続する導電膜125を形成する。また、ソース電極629及びドレイン電極633を形成する(図16(B)を参照。)。
【0208】
半導体膜119にドーパントを添加する方法は、半導体膜119以外の領域にマスクを設けて、当該マスクを用いて、ホウ素、窒素、フッ素、アルミニウム、リン、ヒ素、インジウム、スズ、アンチモン及び希ガス元素から選ばれた一種以上のドーパントをイオン注入法又はイオンドーピング法などで添加する。また、イオン注入法又はイオンドーピング法の代わりに当該ドーパントの含むプラズマに半導体膜119を曝すことで、当該ドーパントを添加してもよい。なお、ドーパントを添加した後、加熱処理をおこなってもよい。当該加熱処理は、半導体膜111及び半導体膜119の脱水素化又は脱水化を行う加熱処理の詳細を参照して適宜行うことができる。
【0209】
なお、ドーパントを添加する工程は、信号線109、導電膜113、導電膜125、ソース電極629、及びドレイン電極633を形成した後に行ってもよい。その場合、半導体膜319の信号線109、導電膜113及び導電膜125に接する領域にはドーパントは添加されない。
【0210】
次に、半導体膜111、半導体膜319及び半導体膜631、信号線109、導電膜113、導電膜125、ソース電極629、及びドレイン電極633、並びにゲート絶縁膜127上に絶縁膜128を形成し、絶縁膜128上に絶縁膜130を形成し、絶縁膜130上に絶縁膜133を形成する。また、絶縁膜133上に絶縁膜136を形成する(図17(A)を参照。)。なお、当該工程は、実施の形態1を参照して行うことができる。
【0211】
次に、絶縁膜128、絶縁膜130、絶縁膜133、及び絶縁膜136の導電膜113と重畳する領域に、導電膜113に達する開口117(図14を参照。)を形成すると共に、絶縁膜129、絶縁膜131、絶縁膜132、及び絶縁膜137を形成する。次に、開口117を通じて導電膜113に接する画素電極121を形成する(図17(B)を参照。)。なお、当該工程についても実施の形態1を参照して行うことができる。
【0212】
以上の工程により、本実施の形態における半導体装置を作製することができる。
【0213】
以上より、容量素子の一方の電極として、トランジスタに含まれる半導体膜と同じ形成工程で形成される半導体膜を用いることで、開口率を高めつつ、電荷容量を増大させた容量素子を有する半導体装置を作製することができる。この結果、表示品位の優れた半導体装置を得ることができる。
【0214】
また、トランジスタに含まれる、酸化物半導体を用いて形成される半導体膜は、酸素欠損が低減され、水素などの不純物が低減されていることから、本発明の一態様である半導体装置は、良好な電気特性を有する半導体装置となる。
【0215】
なお、本実施の形態に示す構成などは、他の実施の形態に示す構成及びその変形例と適宜組み合わせて用いることができる。
【0216】
(実施の形態4)
本実施の形態では、上記実施の形態で説明した半導体装置に含まれているトランジスタ及び容量素子において、半導体膜を形成する酸化物半導体に適用可能な一態様について説明する。
【0217】
上記酸化物半導体は、非晶質酸化物半導体、単結晶酸化物半導体、及び多結晶酸化物半導体の他に、結晶部分を有する酸化物半導体(C Axis Aligned Crystalline Oxide Semiconductor:CAAC−OS)で構成されていることが好ましい。 CAAC−OS膜は、複数の結晶部を有する酸化物半導体膜の一つであり、ほとんどの結晶部は、一辺が100nm未満の立方体内に収まる大きさである。従って、CAAC−OS膜に含まれる結晶部は、一辺が10nm未満、5nm未満または3nm未満の立方体内に収まる大きさの場合も含まれる。CAAC−OS膜は、微結晶酸化物半導体膜よりも欠陥準位密度が低いという特徴がある。以下、CAAC−OS膜について詳細な説明を行う。
【0218】
CAAC−OS膜を透過型電子顕微鏡(TEM:Transmission Electron Microscope)によって観察すると、結晶部同士の明確な境界、即ち結晶粒界(グレインバウンダリーともいう。)を確認することができない。そのため、CAAC−OS膜は、結晶粒界に起因する電子移動度の低下が起こりにくいといえる。
【0219】
CAAC−OS膜を、試料面と概略平行な方向からTEMによって観察(断面TEM観察)すると、結晶部において、金属原子が層状に配列していることを確認できる。金属原子の各層は、CAAC−OS膜の膜を形成する面(被形成面ともいう。)または上面の凹凸を反映した形状であり、CAAC−OS膜の被形成面または上面と平行に配列する。
【0220】
一方、CAAC−OS膜を、試料面と概略垂直な方向からTEMによって観察(平面TEM観察)すると、結晶部において、金属原子が三角形状または六角形状に配列していることを確認できる。しかしながら、異なる結晶部間で、金属原子の配列に規則性は見られない。
【0221】
断面TEM観察および平面TEM観察より、CAAC−OS膜の結晶部は配向性を有していることがわかる。
【0222】
CAAC−OS膜に対し、X線回折(XRD:X−Ray Diffraction)装置を用いて構造解析を行うと、例えばInGaZnOの結晶を有するCAAC−OS膜のout−of−plane法による解析では、回折角(2θ)が31°近傍にピークが現れる場合がある。このピークは、InGaZnOの結晶の(009)面に帰属されることから、CAAC−OS膜の結晶がc軸配向性を有し、c軸が被形成面または上面に概略垂直な方向を向いていることが確認できる。
【0223】
一方、CAAC−OS膜に対し、c軸に概略垂直な方向からX線を入射させるin−plane法による解析では、2θが56°近傍にピークが現れる場合がある。このピークは、InGaZnOの結晶の(110)面に帰属される。InGaZnOの単結晶酸化物半導体膜であれば、2θを56°近傍に固定し、試料面の法線ベクトルを軸(φ軸)として試料を回転させながら分析(φスキャン)を行うと、(110)面と等価な結晶面に帰属されるピークが6本観察される。これに対し、CAAC−OS膜の場合は、2θを56°近傍に固定してφスキャンした場合でも、明瞭なピークが現れない。
【0224】
以上のことから、CAAC−OS膜では、異なる結晶部間ではa軸およびb軸の配向は不規則であるが、c軸配向性を有し、かつc軸が被形成面または上面の法線ベクトルに平行な方向を向いていることがわかる。従って、前述の断面TEM観察で確認された層状に配列した金属原子の各層は、結晶のab面に平行な面である。
【0225】
なお、結晶部は、CAAC−OS膜を成膜した際、または加熱処理などの結晶化処理を行った際に形成される。上述したように、結晶のc軸は、CAAC−OS膜の被形成面または上面の法線ベクトルに平行な方向に配向する。従って、例えば、CAAC−OS膜の形状をエッチングなどによって変化させた場合、結晶のc軸がCAAC−OS膜の被形成面または上面の法線ベクトルと平行にならないこともある。
【0226】
また、CAAC−OS膜中の結晶化度が均一でなくてもよい。例えば、CAAC−OS膜の結晶部が、CAAC−OS膜の上面近傍からの結晶成長によって形成される場合、上面近傍の領域は、被形成面近傍の領域よりも結晶化度が高くなることがある。また、CAAC−OS膜に不純物を添加する場合、不純物が添加された領域の結晶化度が変化し、部分的に結晶化度の異なる領域が形成されることもある。
【0227】
なお、InGaZnOの結晶を有するCAAC−OS膜のout−of−plane法による解析では、2θが31°近傍のピークの他に、2θが36°近傍にもピークが現れる場合がある。2θが36°近傍のピークは、CAAC−OS膜中の一部に、c軸配向性を有さない結晶が含まれることを示している。CAAC−OS膜は、2θが31°近傍にピークを示し、2θが36°近傍にピークを示さないことが好ましい。
【0228】
CAAC−OSの形成方法としては、三つ挙げられる。
【0229】
第1の方法は、成膜温度を100℃以上450℃以下として酸化物半導体膜を成膜することで、酸化物半導体膜に含まれる結晶部のc軸が、被形成面の法線ベクトル又は表面の法線ベクトルに平行な方向に揃った結晶部を形成する方法である。
【0230】
第2の方法は、酸化物半導体膜を薄い厚さで成膜した後、200℃以上700℃以下の熱処理を行うことで、酸化物半導体膜に含まれる結晶部のc軸が、被形成面の法線ベクトル又は表面の法線ベクトルに平行な方向に揃った結晶部を形成する方法である。
【0231】
第3の方法は、一層目の酸化物半導体膜を薄い厚さで成膜した後、200℃以上700℃以下の熱処理を行い、さらに二層目の酸化物半導体膜の成膜を行うことで、酸化物半導体膜に含まれる結晶部のc軸が、被形成面の法線ベクトル又は表面の法線ベクトルに平行な方向に揃った結晶部を形成する方法である。
【0232】
酸化物半導体膜にCAAC−OSを適用したトランジスタは、可視光や紫外光の照射による電気特性の変動が小さい。よって、酸化物半導体膜にCAAC−OSを適用したトランジスタは、良好な信頼性を有する。
【0233】
また、CAAC−OSは、多結晶である酸化物半導体スパッタリング用ターゲットを用い、スパッタリング法によって成膜することが好ましい。当該スパッタリング用ターゲットにイオンが衝突すると、スパッタリング用ターゲットに含まれる結晶領域がa−b面から劈開し、a−b面に平行な面を有する平板状又はペレット状のスパッタリング粒子として剥離することがある。この場合、当該平板状又はペレット状のスパッタリング粒子が、結晶状態を維持したまま被成膜面に到達することで、CAAC−OSを成膜することができる。
【0234】
また、CAAC−OSを成膜するために、以下の条件を適用することが好ましい。
【0235】
成膜時の不純物混入を低減することで、不純物によって結晶状態が崩れることを抑制できる。例えば、成膜室内に存在する不純物濃度(水素、水、二酸化炭素および窒素など)を低減すればよい。また、成膜ガス中の不純物濃度を低減すればよい。具体的には、露点が−80℃以下、好ましくは−100℃以下である成膜ガスを用いる。
【0236】
また、成膜時の被成膜面の加熱温度(例えば基板加熱温度)を高めることで、被成膜面に到達後にスパッタリング粒子のマイグレーションが起こる。具体的には、被成膜面の温度を100℃以上740℃以下、好ましくは150℃以上500℃以下として成膜する。成膜時の被成膜面の温度を高めることで、平板状又はペレット状のスパッタリング粒子が被成膜面に到達した場合、当該被成膜面上でマイグレーションが起こり、スパッタリング粒子の平らな面が被成膜面に付着する。
【0237】
また、成膜ガス中の酸素割合を高め、電力を最適化することで成膜時のプラズマダメージを軽減すると好ましい。成膜ガス中の酸素割合は、30体積%以上、好ましくは100体積%とする。
【0238】
スパッタリング用ターゲットの一例として、In−Ga−Zn−O化合物ターゲットについて以下に示す。
【0239】
InO粉末、GaO粉末及びZnO粉末を所定のmol数で混合し、加圧処理後、1000℃以上1500℃以下の温度で加熱処理をすることで多結晶であるIn−Ga−Zn−O化合物ターゲットとする。なお、当該加圧処理は、冷却(又は放冷)しながら行ってもよいし、加熱しながら行ってもよい。なお、X、Y及びZは任意の正数である。ここで、所定のmol数比は、例えば、InO粉末、GaO粉末及びZnO粉末が、2:2:1、8:4:3、3:1:1、1:1:1、4:2:3又は3:1:2である。なお、粉末の種類、及びその混合するmol数比は、作製するスパッタリング用ターゲットによって適宜変更すればよい。
【0240】
また、酸化物半導体膜は、複数の酸化物半導体膜が積層された構造でもよい。例えば、酸化物半導体膜を、第1の酸化物半導体膜と第2の酸化物半導体膜の積層として、第1の酸化物半導体膜と第2の酸化物半導体膜に、異なる原子数比の金属酸化物を用いてもよい。例えば、第1の酸化物半導体膜に二種類の金属を含む酸化物、三種類の金属を含む酸化物、四種類の金属を含む酸化物のうち一つを用い、第2の酸化物半導体膜に第1の酸化物半導体膜と異なる二種類の金属を含む酸化物、三種類の金属を含む酸化物、四種類の金属を含む酸化物を用いてもよい。
【0241】
酸化物半導体膜を2層構造とし、第1の酸化物半導体膜と第2の酸化物半導体膜の構成元素を同一とし、両者の原子数比を異ならせてもよい。例えば、第1の酸化物半導体膜の原子数比をIn:Ga:Zn=3:1:2とし、第2の酸化物半導体膜の原子数比をIn:Ga:Zn=1:1:1としてもよい。また、第1の酸化物半導体膜の原子数比をIn:Ga:Zn=2:1:3とし、第2の酸化物半導体膜の原子数比をIn:Ga:Zn=1:3:2としてもよい。なお、各酸化物半導体膜の原子数比は、誤差として上記の原子数比のプラスマイナス20%の変動を含む。
【0242】
この時、第1の酸化物半導体膜と第2の酸化物半導体膜のうち、ゲート電極に近い側(チャネル側)の酸化物半導体膜のInとGaの原子数比をIn≧Gaとするとよい。またゲート電極から遠い側(バックチャネル側)の酸化物半導体膜のInとGaの原子数比をIn<Gaとするとよい。これらの積層構造により、電界効果移動度の高いトランジスタを作製することができる。一方、ゲート電極に近い側(チャネル側)の酸化物半導体膜のInとGaの原子数比をIn<Gaとし、バックチャネル側の酸化物半導体膜のInとGaの原子数比をIn≧Gaとすることで、トランジスタの経時変化や信頼性試験によるしきい値電圧の変動量を低減することができる。
【0243】
原子数比がIn:Ga:Zn=1:3:2である第1の酸化物半導体膜は、原子数比がIn:Ga:Zn=1:3:2である酸化物ターゲットを用いたスパッタリング法によって形成できる。基板温度を室温とし、スパッタリングガスにアルゴン、又はアルゴンと酸素の混合ガスを用いて形成することができる。原子数比がIn:Ga:Zn=3:1:2である第2の酸化物半導体膜は、原子数比がIn:Ga:Zn=3:1:2である酸化物ターゲットを用い、第1の酸化物半導体膜と同様の方法を用いて形成できる。
【0244】
また、酸化物半導体膜を3層構造とし、第1の酸化物半導体膜乃至第3の酸化物半導体膜の構成元素を同一とし、且つそれぞれの原子数比を異ならせてもよい。酸化物半導体膜を3層構造とする構成について、図18を用いて説明する。
【0245】
図18に示すトランジスタは、第1の酸化物半導体膜199a、第2の酸化物半導体膜199b、及び第3の酸化物半導体膜199cがゲート絶縁膜127側から順に積層されている。第1の酸化物半導体膜199a及び第3の酸化物半導体膜199cを構成する材料は、InM1Zn(x≧1、y>1、z>0、M1=Ga、Hf等)で表記できる材料を用いる。ただし、第1の酸化物半導体膜199a及び第3の酸化物半導体膜199cを構成する材料にGaを含ませる場合、含ませるGaの割合が多い、具体的にはInM1XZnで表記できる材料でX=10を超えると成膜時に粉が発生する恐れがあり、不適である。
【0246】
また、第2の酸化物半導体膜199bを構成する材料は、InM2Zn(x≧1、y≧x、z>0、M2=Ga、Sn等)で表記できる材料を用いる。
【0247】
第1の酸化物半導体膜199aの伝導帯及び第3の酸化物半導体膜199cの伝導帯に比べて第2の酸化物半導体膜199bの伝導帯が真空準位から最も深くなるような井戸型構造を構成するように、第1、第2、及び第3の酸化物半導体膜の材料を適宜選択する。
【0248】
なお、酸化物半導体膜において第14族元素の一つであるシリコンや炭素はドナーの供給源となる。このため、シリコンや炭素が酸化物半導体膜に含まれると、酸化物半導体膜はn型化してしまう。このため、各酸化物半導体膜に含まれるシリコン及び炭素それぞれの濃度は3×1018/cm以下、好ましくは3×1017/cm以下とする。特に、第2の酸化物半導体膜199bに第14族元素が多く混入しないように、第1の酸化物半導体膜199a及び第3の酸化物半導体膜199cで、キャリアパスとなる第2の酸化物半導体膜199bを挟む、または囲む構成とすることが好ましい。即ち、第1の酸化物半導体膜199a及び第3の酸化物半導体膜199cは、シリコン、炭素等の第14族元素が第2の酸化物半導体膜199bに混入することを防ぐバリア膜とも呼べる。
【0249】
例えば、第1の酸化物半導体膜199aの原子数比をIn:Ga:Zn=1:3:2とし、第2の酸化物半導体膜199bの原子数比をIn:Ga:Zn=3:1:2とし、第3の酸化物半導体膜199cの原子数比をIn:Ga:Zn=1:1:1としてもよい。なお、第3の酸化物半導体膜199cは、原子数比がIn:Ga:Zn=1:1:1である酸化物ターゲットを用いたスパッタリング法によって形成できる。
【0250】
または、第1の酸化物半導体膜199aを、原子数比がIn:Ga:Zn=1:3:2である酸化物半導体膜とし、第2の酸化物半導体膜199bを、原子数比がIn:Ga:Zn=1:1:1又はIn:Ga:Zn=1:3:2である酸化物半導体膜とし、第3の酸化物半導体膜199cを、原子数比がIn:Ga:Zn=1:3:2である酸化物半導体膜とした、3層構造としてもよい。
【0251】
第1の酸化物半導体膜199a乃至第3の酸化物半導体膜199cの構成元素は同一であるため、第2の酸化物半導体膜199bは、第1の酸化物半導体膜199aとの界面における欠陥準位(トラップ準位)が少ない。詳細には、当該欠陥準位(トラップ準位)は、ゲート絶縁膜127と第1の酸化物半導体膜199aとの界面における欠陥準位よりも少ない。このため、上記のように酸化物半導体膜が積層されていることで、トランジスタの経時変化や信頼性試験によるしきい値電圧の変動量を低減することができる。
【0252】
また、第1の酸化物半導体膜199aの伝導帯及び第3の酸化物半導体膜199cの伝導帯に比べて第2の酸化物半導体膜199bの伝導帯が真空準位から最も深くなるような井戸型構造を構成するように、第1、第2、及び第3の酸化物半導体膜の材料を適宜選択することで、トランジスタの電界効果移動度を高めることが可能であると共に、トランジスタの経時変化や信頼性試験によるしきい値電圧の変動量を低減することができる。
【0253】
また、第1の酸化物半導体膜199a乃至第3の酸化物半導体膜199cに、結晶性の異なる酸化物半導体を適用してもよい。すなわち、単結晶酸化物半導体、多結晶酸化物半導体、非晶質酸化物半導体、及びCAAC−OSを適宜組み合わせた構成としてもよい。また、第1の酸化物半導体膜199a乃至第3の酸化物半導体膜199cのいずれか一に非晶質酸化物半導体を適用すると、酸化物半導体膜の内部応力や外部からの応力を緩和し、トランジスタの特性ばらつきが低減され、またトランジスタの経時変化や信頼性試験によるしきい値電圧の変動量を低減することができる。
【0254】
また、少なくともチャネル形成領域となりうる第2の酸化物半導体膜199bはCAAC−OSであることが好ましい。また、バックチャネル側の酸化物半導体膜、本実施の形態では、第3の酸化物半導体膜199cは、アモルファス又はCAAC−OSであることが好ましい。このような構造とすることで、トランジスタの経時変化や信頼性試験によるしきい値電圧の変動量を低減することができる。
【0255】
なお、本実施の形態に示す構成などは、他の実施の形態に示す構成と適宜組み合わせて用いることができる。
【0256】
(実施の形態5)
上記実施の形態で一例を示したトランジスタ及び容量素子を用いて表示機能を有する半導体装置(表示装置ともいう。)を作製することができる。また、トランジスタを含む駆動回路の一部又は全体を、画素部と同じ基板上に一体形成し、システムオンパネルを形成することができる。本実施の形態では、上記実施の形態で一例を示したトランジスタを用いた表示装置の例について、図19乃至図21を用いて説明する。なお、図20は、図19(B)中でM−Nの一点鎖線で示した部位の断面構成を示す断面図である。なお、図20において、画素部の構造は一部のみ記載している。
【0257】
図19(A)において、第1の基板901上に設けられた画素部902を囲むようにして、シール材905が設けられ、第2の基板906によって封止されている。図19(A)においては、第1の基板901上のシール材905によって囲まれている領域とは異なる領域に、別途用意された基板上に単結晶半導体又は多結晶半導体で形成された信号線駆動回路903、及び走査線駆動回路904が実装されている。また、信号線駆動回路903、走査線駆動回路904、又は画素部902に与えられる各種信号及び電位は、FPC(Flexible printed circuit)918a、FPC918bから供給されている。
【0258】
図19(B)及び図19(C)において、第1の基板901上に設けられた画素部902と、走査線駆動回路904とを囲むようにして、シール材905が設けられている。また画素部902と、走査線駆動回路904の上に第2の基板906が設けられている。よって画素部902と、走査線駆動回路904とは、第1の基板901とシール材905と第2の基板906とによって、表示素子と共に封止されている。図19(B)及び図19(C)においては、第1の基板901上のシール材905によって囲まれている領域とは異なる領域に、別途用意された基板上に単結晶半導体又は多結晶半導体で形成された信号線駆動回路903が実装されている。図19(B)及び図19(C)においては、信号線駆動回路903、走査線駆動回路904、又は画素部902に与えられる各種信号及び電位は、FPC918から供給されている。
【0259】
また、図19(B)及び図19(C)においては、信号線駆動回路903を別途形成し、第1の基板901に実装している例を示しているが、この構成に限定されない。走査線駆動回路を別途形成して実装しても良いし、信号線駆動回路の一部又は走査線駆動回路の一部のみを別途形成して実装しても良い。
【0260】
なお、別途形成した駆動回路の接続方法は、特に限定されるものではなく、COG(Chip On Glass)方法、ワイヤボンディング方法、或いはTAB(Tape Automated Bonding)方法などを用いることができる。図19(A)は、COG方法により信号線駆動回路903、走査線駆動回路904を実装する例であり、図19(B)は、COG方法により信号線駆動回路903を実装する例であり、図19(C)は、TAB方法により信号線駆動回路903を実装する例である。
【0261】
また、表示装置は、表示素子が封止された状態にあるパネルと、該パネルにコントローラを含むIC等を実装した状態にあるモジュールとを含む。
【0262】
なお、本明細書における表示装置とは、画像表示デバイスまたは表示デバイスを指す。また、表示装置の代わりに光源(照明装置含む。)として機能させることができる。また、コネクター、例えばFPCもしくはTCPが取り付けられたモジュール、TCPの先にプリント配線板が設けられたモジュール、又は表示素子にCOG方式によりIC(集積回路)が直接実装されたモジュールも全て表示装置に含むものとする。
【0263】
また、第1の基板上に設けられた画素部及び走査線駆動回路は、トランジスタを複数有しており、上記実施の形態で示したトランジスタを適用することができる。
【0264】
表示装置に設けられる表示素子としては液晶素子(液晶表示素子ともいう。)、発光素子(発光表示素子ともいう。)を用いることができる。発光素子は、電流又は電圧によって輝度が制御される素子をその範疇に含んでおり、具体的には無機EL(Electro Luminescence)素子、有機EL素子等が含まれる。また、電子インクなど、電気的作用によりコントラストが変化する表示媒体も適用することができる。図20に、表示素子として液晶素子を用いた液晶表示装置の例を示す。
【0265】
図20に示す液晶表示装置は、縦電界方式の液晶表示装置である。液晶表示装置は、接続端子電極915及び端子電極916を有しており、接続端子電極915及び端子電極916はFPC918が有する端子と異方性導電剤919を介して、電気的に接続されている。
【0266】
接続端子電極915は、第1の電極930と同じ導電膜から形成され、端子電極916は、トランジスタ910、911のソース電極及びドレイン電極と同じ導電膜で形成されている。
【0267】
また、第1の基板901上に設けられた画素部902と、走査線駆動回路904は、トランジスタを複数有しており、図20では、画素部902に含まれるトランジスタ910と、走査線駆動回路904に含まれるトランジスタ911とを例示している。トランジスタ910及びトランジスタ911上には実施の形態1に示す絶縁膜129、絶縁膜131、及び絶縁膜132に相当する絶縁膜924が設けられている。また、絶縁膜924上には実施の形態1に示す絶縁膜137に相当する絶縁膜934が設けられている。なお、絶縁膜923は下地膜として機能する絶縁膜である。
【0268】
本実施の形態では、トランジスタ910として、上記実施の形態1乃至実施の形態3で示した画素に設けられるトランジスタを適用することができる。また、トランジスタ911として、上記実施の形態1乃至実施の形態3で示した走査線駆動回路に設けられるトランジスタを適用することができる。また、酸化物半導体膜927、絶縁膜924、絶縁膜934、及び第1の電極930を用いて、容量素子936を構成する。なお、酸化物半導体膜927は、電極928を介して、容量配線929と電気的に接続する。電極928は、トランジスタ910、トランジスタ911のソース電極及びドレイン電極と同じ材料及び同じ工程で形成される。容量配線929は、トランジスタ910、トランジスタ911のゲート電極と同じ材料及び同じ工程で形成される。なお、ここでは、容量素子936として実施の形態1に示した容量素子を図示したが、適宜他の実施の形態に示した容量素子を用いることができる。
【0269】
画素部902に設けられたトランジスタ910は表示素子と電気的に接続し、表示パネルを構成する。表示素子は表示を行うことができれば特に限定されず、様々な表示素子を用いることができる。
【0270】
表示素子である液晶素子913は、第1の電極930、第2の電極931、及び液晶層908を含む。なお、液晶層908を挟持するように配向膜として機能する絶縁膜932、絶縁膜933が設けられている。また、第2の電極931は第2の基板906側に設けられ、第1の電極930と第2の電極931とは液晶層908を介して重なる構成となっている。
【0271】
表示素子に電圧を印加する第1の電極及び第2の電極(画素電極、共通電極、対向電極などともいう。)においては、取り出す光の方向、電極が設けられる場所、及び電極のパターン構造によって透光性、反射性を選択すればよい。
【0272】
第1の電極930及び第2の電極931は、実施の形態1に示す画素電極121と同様の材料を適宜用いることができる。
【0273】
また、スペーサ935は絶縁膜を選択的にエッチングすることで得られる柱状のスペーサであり、第1の電極930と第2の電極931との間隔(セルギャップ)を制御するために設けられている。なお、球状のスペーサを用いていてもよい。
【0274】
表示素子として、液晶素子を用いる場合、サーモトロピック液晶、低分子液晶、高分子液晶、高分子分散型液晶、強誘電性液晶、反強誘電性液晶等を用いることができる。これらの液晶材料は、条件により、コレステリック相、スメクチック相、キュービック相、カイラルネマチック相、等方相等を示す。
【0275】
また、配向膜を用いないブルー相を示す液晶を用いてもよい。ブルー相は液晶相の一つであり、コレステリック液晶を昇温していくと、コレステリック相から等方相へ転移する直前に発現する相である。ブルー相は狭い温度範囲でしか発現しないため、温度範囲を改善するためにカイラル剤を混合させた液晶組成物を用いて液晶層に用いる。なお、配向膜は有機樹脂で構成されており、有機樹脂は水素又は水などを含むことから、本発明の一態様である半導体装置のトランジスタの電気特性を低下させるおそれがある。そこで、液晶層として、ブルー相を用いることで、有機樹脂を用いずに本発明の一態様である半導体装置を作製することができ、信頼性の高い半導体装置を得ることができる。
【0276】
第1の基板901及び第2の基板906はシール材925によって固定されている。シール材925は、熱硬化樹脂、光硬化樹脂などの有機樹脂を用いることができる。また、シール材925は、絶縁膜924と接している。なお、シール材925は図19に示すシール材905に相当する。
【0277】
シール材925は、絶縁膜924上に設けられている。また、絶縁膜934は、シール材925の内側に設けられている。絶縁膜924の最上層は窒化絶縁膜であり、外部から水素や水などの不純物の侵入を抑制することが可能である。一方、絶縁膜934は、透湿性が高い。このため、絶縁膜934をシール材925の内側に設け、絶縁膜924上にシール材925を設けることで、外部から水素や水などの不純物の侵入を抑制し、トランジスタ910及びトランジスタ911の電気特性の変動を抑制することができる。
【0278】
また、液晶表示装置において、ブラックマトリクス(遮光膜)、偏光部材、位相差部材、反射防止部材などの光学部材(光学基板)などは適宜設ける。例えば、偏光基板及び位相差基板による円偏光を用いてもよい。また、光源としてバックライト、サイドライトなどを用いてもよい。
【0279】
また、トランジスタは静電気などにより破壊されやすいため、駆動回路保護用の保護回路を設けることが好ましい。保護回路は、非線形素子を用いて構成することが好ましい。
【0280】
図21に、図20に示す液晶表示装置において、基板906に設けられた第2の電極931と電気的に接続するための共通接続部(パッド部)を、基板901上に形成する例を示す。
【0281】
共通接続部は、基板901と基板906とを接着するためのシール材と重なる位置に配置され、シール材に含まれる導電性粒子を介して第2の電極931と電気的に接続される。又は、シール材と重ならない箇所(但し、画素部を除く)に共通接続部を設け、共通接続部に重なるように導電性粒子を含むペーストをシール材とは別途設けて第2の電極931と電気的に接続してもよい。
【0282】
図21(A)は、共通接続部の断面図であり、図21(B)に示す上面図のI−Jに相当する。
【0283】
共通電位線975は、ゲート絶縁膜922上に設けられ、図21に示すトランジスタ910のソース電極971又はドレイン電極973と同じ材料及び同じ工程で作製される。
【0284】
また、共通電位線975は、絶縁膜924及び絶縁膜934で覆われ、絶縁膜924及び絶縁膜934は、共通電位線975と重なる位置に複数の開口を有している。この開口は、トランジスタ910のソース電極971又はドレイン電極973の一方と、第1の電極930とを接続するコンタクトホールと同じ工程で作製される。
【0285】
また、共通電位線975及び共通電極977が開口において接続する。共通電極977は、絶縁膜934上に設けられ、接続端子電極915や、画素部の第1の電極930と同じ材料及び同じ工程で作製される。
【0286】
このように、画素部902のスイッチング素子の作製工程と共通させて共通接続部を作製することができる。
【0287】
共通電極977は、シール材に含まれる導電性粒子と接触する電極であり、基板906の第2の電極931と電気的に接続が行われる。
【0288】
また、図21(C)に示すように、共通電位線985を、トランジスタ910のゲート電極と同じ材料、同じ工程で作製してもよい。
【0289】
図21(C)に示す共通接続部において、共通電位線985は、ゲート絶縁膜922、絶縁膜924及び絶縁膜934の下層に設けられ、ゲート絶縁膜922、絶縁膜924及び絶縁膜934は、共通電位線985と重なる位置に複数の開口を有する。該開口は、トランジスタ910のソース電極971又はドレイン電極973の一方と第1の電極930とを接続するコンタクトホールと同じ工程で絶縁膜924及び絶縁膜934をエッチングした後、さらにゲート絶縁膜922を選択的にエッチングすることで形成される。
【0290】
また、共通電位線985及び共通電極987が開口において接続する。共通電極987は、絶縁膜924上に設けられ、接続端子電極915や、画素部の第1の電極930と同じ材料及び同じ工程で作製される。
【0291】
以上より、上記実施の形態で示したトランジスタ及び容量素子を適用することで、開口率を高めつつ、電荷容量を増大させた容量素子を有する半導体装置を提供することができる。この結果、表示品位の優れた半導体装置を得ることができる。
【0292】
また、トランジスタに含まれる、酸化物半導体を用いて形成される半導体膜は、酸素欠損が低減され、水素などの不純物が低減されていることから、本発明の一態様である半導体装置は、良好な電気特性を有する半導体装置となる。
【0293】
なお、本実施の形態に示す構成などは、他の実施の形態に示す構成と適宜組み合わせて用いることができる。
【0294】
(実施の形態6)
本発明の一態様である半導体装置は、さまざまな電子機器(遊技機も含む。)に適用することができる。電子機器としては、テレビジョン装置(テレビ、又はテレビジョン受信機ともいう。)、コンピュータ用などのモニタ、デジタルカメラ、デジタルビデオカメラ、デジタルフォトフレーム、携帯電話機、携帯型ゲーム機、携帯情報端末、音響再生装置、遊技機(パチンコ機、スロットマシン等)、ゲーム筐体が挙げられる。これらの電子機器の一例を図22に示す。
【0295】
図22(A)は、表示部を有するテーブル9000を示している。テーブル9000は、筐体9001に表示部9003が組み込まれており、表示部9003により映像を表示することが可能である。なお、4本の脚部9002により筐体9001を支持した構成を示している。また、電力供給のための電源コード9005を筐体9001に有している。
【0296】
上記実施の形態のいずれかに示す半導体装置は、表示部9003に用いることが可能である。それゆえ、表示部9003の表示品位を高くすることができる。
【0297】
表示部9003は、タッチ入力機能を有しており、テーブル9000の表示部9003に表示された表示ボタン9004を指などで触れることで、画面操作や、情報を入力することができ、また他の家電製品との通信を可能とする、又は制御を可能とすることで、画面操作により他の家電製品をコントロールする制御装置としてもよい。例えば、イメージセンサ機能を有する半導体装置を用いれば、表示部9003にタッチ入力機能を持たせることができる。
【0298】
また、筐体9001に設けられたヒンジによって、表示部9003の画面を床に対して垂直に立てることもでき、テレビジョン装置としても利用できる。狭い部屋においては、大きな画面のテレビジョン装置は設置すると自由な空間が狭くなってしまうが、テーブルに表示部が内蔵されていれば、部屋の空間を有効に利用することができる。
【0299】
図22(B)は、テレビジョン装置9100を示している。テレビジョン装置9100は、筐体9101に表示部9103が組み込まれており、表示部9103により映像を表示することが可能である。なお、ここではスタンド9105により筐体9101を支持した構成を示している。
【0300】
テレビジョン装置9100の操作は、筐体9101が備える操作スイッチや、別体のリモコン操作機9110により行うことができる。リモコン操作機9110が備える操作キー9109により、チャンネルや音量の操作を行うことができ、表示部9103に表示される映像を操作することができる。また、リモコン操作機9110に、当該リモコン操作機9110から出力する情報を表示する表示部9107を設ける構成としてもよい。
【0301】
図22(B)に示すテレビジョン装置9100は、受信機やモデムなどを備えている。テレビジョン装置9100は、受信機により一般のテレビ放送の受信を行うことができ、さらにモデムを介して有線又は無線による通信ネットワークに接続することにより、一方向(送信者から受信者)又は双方向(送信者と受信者間、あるいは受信者間同士など)の情報通信を行うことも可能である。
【0302】
上記実施の形態のいずれかに示す半導体装置は、表示部9103、9107に用いることが可能である。それゆえ、テレビジョン装置の表示品位を向上させることができる。
【0303】
図22(C)はコンピュータ9200であり、本体9201、筐体9202、表示部9203、キーボード9204、外部接続ポート9205、ポインティングデバイス9206などを含む。
【0304】
上記実施の形態のいずれかに示す半導体装置は、表示部9203に用いることが可能である。それゆえ、コンピュータ9200の表示品位を向上させることができる。
【0305】
図23(A)及び図23(B)は2つ折り可能なタブレット型端末である。図23(A)は、開いた状態であり、タブレット型端末は、筐体9630、表示部9631a、表示部9631b、表示モード切り替えスイッチ9034、電源スイッチ9035、省電力モード切り替えスイッチ9036、留め具9033、操作スイッチ9038、を有する。
【0306】
上記実施の形態のいずれかに示す半導体装置は、表示部9631a、表示部9631bに用いることが可能である。それゆえ、タブレット端末の表示品位を向上させることができる。
【0307】
表示部9631aは、一部をタッチパネルの領域9632aとすることができ、表示された操作キー9638にふれることでデータ入力をすることができる。なお、表示部9631aにおいては、一例として半分の領域が表示のみの機能を有する構成、もう半分の領域がタッチパネルの機能を有する構成を示しているが該構成に限定されない。表示部9631aの全ての領域がタッチパネルの機能を有する構成としても良い。例えば、表示部9631aの全面をキーボードボタン表示させてタッチパネルとし、表示部9631bを表示画面として用いることができる。
【0308】
また、表示部9631bにおいても表示部9631aと同様に、表示部9631bの一部をタッチパネルの領域9632bとすることができる。また、タッチパネルのキーボード表示切り替えボタン9639が表示されている位置に指やスタイラスなどでふれることで表示部9631bにキーボードボタン表示することができる。
【0309】
また、タッチパネルの領域9632aとタッチパネルの領域9632bに対して同時にタッチ入力することもできる。
【0310】
また、表示モード切り替えスイッチ9034は、縦表示又は横表示などの表示の向きを切り替え、白黒表示やカラー表示の切り替えなどを選択できる。省電力モード切り替えスイッチ9036は、タブレット型端末に内蔵している光センサで検出される使用時の外光の光量に応じて表示の輝度を最適なものとすることができる。タブレット型端末は光センサだけでなく、ジャイロ、加速度センサ等の傾きを検出するセンサなどの他の検出装置を内蔵させてもよい。
【0311】
また、図23(A)では表示部9631bと表示部9631aの表示面積が同じ例を示しているが特に限定されず、一方のサイズともう一方のサイズが異なっていてもよく、表示の品質も異なっていてもよい。例えば一方が他方よりも高精細な表示を行える表示パネルとしてもよい。
【0312】
図23(B)は、閉じた状態であり、タブレット型端末は、筐体9630、太陽電池9633、充放電制御回路9634を有する。なお、図23(B)では充放電制御回路9634の一例としてバッテリー9635、DCDCコンバータ9636を有する構成について示している。
【0313】
なお、タブレット型端末は2つ折り可能なため、未使用時に筐体9630を閉じた状態にすることができる。従って、表示部9631a、表示部9631bを保護できるため、耐久性に優れ、長期使用の観点からも信頼性の優れたタブレット型端末を提供できる。
【0314】
また、この他にも図23(A)及び図23(B)に示したタブレット型端末は、様々な情報(静止画、動画、テキスト画像など)を表示する機能、カレンダー、日付又は時刻などを表示部に表示する機能、表示部に表示した情報をタッチ入力操作又は編集するタッチ入力機能、様々なソフトウェア(プログラム)によって処理を制御する機能、等を有することができる。
【0315】
タブレット型端末の表面に装着された太陽電池9633によって、電力をタッチパネル、表示部、又は映像信号処理部等に供給することができる。なお、太陽電池9633は、筐体9630の片面又は両面に設けることができ、バッテリー9635の充電を効率的に行う構成とすることができる。なおバッテリー9635としては、リチウムイオン電池を用いると、小型化を図れる等の利点がある。
【0316】
また、図23(B)に示す充放電制御回路9634の構成、及び動作について図23(C)にブロック図を示し説明する。図23(C)には、太陽電池9633、バッテリー9635、DCDCコンバータ9636、コンバータ9637、スイッチSW1乃至SW3、表示部9631について示しており、バッテリー9635、DCDCコンバータ9636、コンバータ9637、スイッチSW1乃至SW3が、図23(B)に示す充放電制御回路9634に対応する箇所となる。
【0317】
まず、外光により太陽電池9633により発電がされる場合の動作の例について説明する。太陽電池で発電した電力は、バッテリー9635を充電するための電圧となるようDCDCコンバータ9636で昇圧又は降圧がなされる。そして、表示部9631の動作に太陽電池9633からの電力が用いられる際にはスイッチSW1をオンにし、コンバータ9637で表示部9631に必要な電圧に昇圧又は降圧をすることとなる。また、表示部9631での表示を行わない際には、SW1をオフにし、SW2をオンにしてバッテリー9635の充電を行う構成とすればよい。
【0318】
なお、太陽電池9633については、発電手段の一例として示したが、特に限定されず、圧電素子(ピエゾ素子)や熱電変換素子(ペルティエ素子)などの他の発電手段によるバッテリー9635の充電を行う構成であってもよい。例えば、無線(非接触)で電力を送受信して充電する無接点電力伝送モジュールや、また他の充電手段を組み合わせて行う構成としてもよい。
【0319】
なお、本実施の形態に示す構成などは、他の実施の形態に示す構成と適宜組み合わせて用いることができる。
【実施例1】
【0320】
本実施例では、酸化物半導体膜、及び多層膜の抵抗について、図24及び図25を用いて説明する。
【0321】
はじめに、試料の構造について図24を用いて説明する。
【0322】
図24(A)は、試料1乃至試料4の上面図であり、一点破線A1−A2の断面図を図24(B)、(C)、(D)に示す。なお、試料1至試料4は、上面図が同一であり、断面の積層構造が異なるため、断面図が異なる。試料1の断面図を図24(B)に、試料2の断面図を図24(C)に、試料3及び試料4の断面図を図24(D)に、それぞれ示す。
【0323】
試料1は、ガラス基板1901上に絶縁膜1903が形成され、絶縁膜1903上に絶縁膜1904が形成され、絶縁膜1904上に酸化物半導体膜1905が形成される。また、酸化物半導体膜1905の両端を、電極として機能する導電膜1907、1909が覆い、酸化物半導体膜1905及び導電膜1907、1909を絶縁膜1910、1911が覆う。なお、絶縁膜1910、1911には、開口部1913、1915が設けられており、それぞれ当該開口部において、導電膜1907、1909が露出している。
【0324】
試料2は、ガラス基板1901上に絶縁膜1903が形成され、絶縁膜1903上に絶縁膜1904が形成され、絶縁膜1904上に酸化物半導体膜1905が形成される。また、酸化物半導体膜1905の両端を、電極として機能する導電膜1907、1909が覆い、酸化物半導体膜1905及び導電膜1907、1909を絶縁膜1911が覆う。なお、絶縁膜1911には、開口部1917、1919が設けられており、それぞれ当該開口部において、導電膜1907、1909が露出している。
【0325】
試料3及び試料4は、ガラス基板1901上に絶縁膜1903が形成され、絶縁膜1903上に絶縁膜1904が形成され、絶縁膜1904上に多層膜1906が形成される。また、多層膜1906の両端を、電極として機能する導電膜1907、1909が覆い、多層膜1906及び導電膜1907、1909を絶縁膜1911が覆う。なお、絶縁膜1911には、開口部1917、1919が設けられており、それぞれ当該開口部において、導電膜1907、1909が露出している。
【0326】
このように、試料1乃至試料4は、酸化物半導体膜1905、または多層膜1906上に接する絶縁膜の構造が異なる。試料1は、酸化物半導体膜1905と絶縁膜1910が接しており、試料2は、酸化物半導体膜1905と絶縁膜1911が接しており、試料3及び試料4は、多層膜1906と絶縁膜1911が接している。
【0327】
次に、各試料の作製方法について説明する。
【0328】
はじめに、試料1の作製方法について説明する。
【0329】
ガラス基板1901上に、絶縁膜1903として、プラズマCVD法により厚さ400nmの窒化シリコン膜を成膜した。
【0330】
次に、絶縁膜1903上に、絶縁膜1904として、プラズマCVD法により厚さ50nmの酸化窒化シリコン膜を成膜した。
【0331】
次に、絶縁膜1904上に、酸化物半導体膜1905として、金属酸化物ターゲット(In:Ga:Zn=1:1:1)を用い、スパッタリング法により厚さ35nmのIGZO膜を成膜した。その後、フォトリソグラフィ工程により形成したマスクを用いてエッチング処理を行い、酸化物半導体膜1905を形成した。
【0332】
次に、絶縁膜1903及び酸化物半導体膜1905上に、スパッタリング法により厚さ50nmのタングステン膜、厚さ400nmのアルミニウム膜、及び厚さ100nmのチタン膜を順に積層した後、フォトリソグラフィ工程により形成したマスクを用いてエッチング処理を行い、導電膜1907及び導電膜1909を形成した。
【0333】
次に、絶縁膜1904、酸化物半導体膜1905、導電膜1907、及び導電膜1909上に、絶縁膜1910として、プラズマCVD法により厚さ450nmの酸化窒化シリコン膜を成膜した後、350℃の窒素及び酸素の混合雰囲気で1時間の加熱処理を行った。
【0334】
次に、絶縁膜1910上に、絶縁膜1911として、プラズマCVD法により厚さ50nmの窒化シリコン膜を成膜した。
【0335】
次に、絶縁膜1911上に、フォトリソグラフィ工程により形成したマスクを設けた後、エッチング処理を行い、絶縁膜1910、及び絶縁膜1911に開口部1913、1915を形成した。
【0336】
以上の工程により試料1を作製した。
【0337】
次に、試料2の作製方法について説明する。
【0338】
試料1の絶縁膜1903、酸化物半導体膜1905、導電膜1907、及び導電膜1909上に、絶縁膜1910として、プラズマCVD法により厚さ450nmの酸化窒化シリコン膜を成膜した後、350℃の窒素及び酸素の混合雰囲気で1時間の加熱処理を行った。その後、絶縁膜1910の除去を行った。
【0339】
次に、絶縁膜1904、酸化物半導体膜1905、導電膜1907、及び導電膜1909上に、絶縁膜1911として、プラズマCVD法により厚さ50nmの窒化シリコン膜を成膜した。
【0340】
次に、絶縁膜1911上に、フォトリソグラフィ工程により形成したマスクを設けた後、エッチング処理を行い、絶縁膜1911に開口部1917、1919を形成した。
【0341】
以上の工程により試料2を作製した。
【0342】
次に、試料3の作製方法について、説明する。
【0343】
試料3は、試料2の酸化物半導体膜1905の代わりに、多層膜1906を用いた。多層膜1906としては、絶縁膜1904上に、金属酸化物ターゲット(In:Ga:Zn=1:3:2)を用い、スパッタリング法により厚さ10nmのIGZO膜を成膜し、続けて金属酸化物ターゲット(In:Ga:Zn=1:1:1)を用い、スパッタリング法により厚さ10nmのIGZO膜を成膜し、続けて金属酸化物ターゲット(In:Ga:Zn=1:3:2)を用い、スパッタリング法により厚さ10nmのIGZO膜を成膜した。その後、フォトリソグラフィ工程により形成したマスクを用いてエッチング処理を行い、多層膜1906を形成した。
【0344】
以上の工程により試料3を作製した。
【0345】
次に、試料4の作製方法について、説明する。
【0346】
試料4は、試料2の酸化物半導体膜1905の代わりに、多層膜1906を用いた。また、試料4は試料3と比較して、多層膜1906を構成するIGZO膜の膜厚が異なる。多層膜1906としては、絶縁膜1904上に、金属酸化物ターゲット(In:Ga:Zn=1:3:2)を用い、スパッタリング法により厚さ20nmのIGZO膜を成膜し、続けて金属酸化物ターゲット(In:Ga:Zn=1:1:1)を用い、スパッタリング法により厚さ15nmのIGZO膜を成膜し、続けて金属酸化物ターゲット(In:Ga:Zn=1:3:2)を用い、スパッタリング法により厚さ10nmのIGZO膜を成膜した。その後、フォトリソグラフィ工程により形成したマスクを用いてエッチング処理を行い、多層膜1906を形成した。
【0347】
以上の工程により試料4を作製した。
【0348】
次に、試料1乃至試料4に設けられた酸化物半導体膜1905、及び多層膜1906のシート抵抗を測定した。試料1においては、開口部1913及び開口部1915にプローブを接触させ、酸化物半導体膜1905のシート抵抗を測定した。また、試料2乃至試料4においては、開口部1917及び開口部1919にプローブを接触させ、酸化物半導体膜1905、及び多層膜1906のシート抵抗を測定した。なお、試料1乃至試料4の酸化物半導体膜1905、及び多層膜1906において、導電膜1907及び導電膜1909が対向する幅を1mm、導電膜1907と導電膜1909との間の距離を10μmとした。また、試料1乃至試料4において、導電膜1907を接地電位とし、導電膜1909に1Vを印加した。
【0349】
試料1乃至試料4のシート抵抗を図25に示す。
【0350】
試料1のシート抵抗は、約1×1011Ω/s.q.であった。また、試料2のシート抵抗は、2620Ω/s.q.であった。また、試料の3のシート抵抗は、4410Ω/s.q.であった。また、試料4のシート抵抗は、2930Ω/s.q.であった。
【0351】
このように、酸化物半導体膜1905、及び多層膜1906に接する絶縁膜の違いにより、酸化物半導体膜1905、及び多層膜1906のシート抵抗は、異なる値を示す。
【0352】
なお、上述した試料1乃至試料4のシート抵抗を抵抗率に換算した場合、試料1は、3.9×10Ωcm、試料2は、9.3×10−3Ωcm、試料3は、1.3×10−2Ωcm、試料4は、1.3×10−2Ωcmであった。
【0353】
試料1は、酸化物半導体膜1905上に接して絶縁膜1910として用いる酸化窒化シリコン膜が形成されており、絶縁膜1911として用いる窒化シリコン膜と離れて形成されている。一方、試料2乃至試料4は、酸化物半導体膜1905、及び多層膜1906上に接して絶縁膜1911として用いる窒化シリコン膜が形成されている。このように、酸化物半導体膜1905、及び多層膜1906は、絶縁膜1911として用いる窒化シリコン膜に接して設けると、酸化物半導体膜1905、及び多層膜1906に欠陥、代表的には酸素欠損が形成されると共に、該窒化シリコン膜に含まれる水素が、酸化物半導体膜1905、及び多層膜1906へ移動または拡散する。これらの結果、酸化物半導体膜1905、及び多層膜1906の導電性が向上する。
【0354】
例えば、トランジスタのチャネル形成領域に酸化物半導体膜を用いる場合、試料1に示すように酸化物半導体膜に接して酸化窒化シリコン膜を設ける構成が好ましい。また、容量素子の電極に用いる透光性を有する導電膜としては、試料2乃至試料4に示すように酸化物半導体膜または多層膜に接して窒化シリコン膜を設ける構成が好ましい。このような構成を用いることによって、トランジスタのチャネル形成領域に用いる酸化物半導体膜または多層膜と、容量素子の電極に用いる酸化物半導体膜または多層膜と、を同一工程で作製しても酸化物半導体膜、及び多層膜の抵抗率を変えることができる。
【0355】
次に、試料2及び試料3において、高温高湿環境で保存した試料のシート抵抗値について測定した。ここで用いた各試料の条件について、以下に説明する。なお、ここでは、一部の条件において、試料2及び試料3と異なる条件を用いている。このため、試料2及び試料3と構造が同じであり、作製条件が異なる試料をそれぞれ試料2a及び試料3aとする。
【0356】
はじめに、試料2aの作製方法について説明する。
【0357】
ガラス基板1901上に、絶縁膜1903及び絶縁膜1904を成膜した。
【0358】
絶縁膜1904上に、酸化物半導体膜1905として、金属酸化物ターゲット(In:Ga:Zn=1:1:1)を用い、スパッタリング法により厚さ35nmのIGZO膜を成膜した。その後、フォトリソグラフィ工程により形成したマスクを用いてエッチング処理を行った後、350℃または450℃で加熱処理を行い、酸化物半導体膜1905を形成した。
【0359】
絶縁膜1903及び酸化物半導体膜1905上に、スパッタリング法により厚さ50nmのチタン膜、及び厚さ400nmの銅膜を順に積層した後、フォトリソグラフィ工程により形成したマスクを用いてエッチング処理を行い、導電膜1907及び導電膜1909を形成した。
【0360】
次に、絶縁膜1904、酸化物半導体膜1905、導電膜1907、及び導電膜1909上に、絶縁膜1910として、プラズマCVD法により厚さ450nmの酸化窒化シリコン膜を成膜した後、350℃の窒素及び酸素の混合雰囲気で1時間の加熱処理を行った。
【0361】
次に、絶縁膜1904、酸化物半導体膜1905、導電膜1907、及び導電膜1909上に、絶縁膜1911として、プラズマCVD法により厚さ50nmの窒化シリコン膜を成膜した。なお、窒化シリコン膜の成膜温度を220℃または350℃とした。
【0362】
次に、絶縁膜1911上に、フォトリソグラフィ工程により形成したマスクを設けた後、エッチング処理を行い、絶縁膜1910、及び絶縁膜1911に開口部1913、1915を形成した。
【0363】
以上の工程により試料2aを作製した。
【0364】
次に、試料3aの作製方法について、説明する。
【0365】
試料3aは、試料2aの酸化物半導体膜1905の代わりに、多層膜1906を用いた。多層膜1906としては、絶縁膜1904上に、金属酸化物ターゲット(In:Ga:Zn=1:1:1)を用い、スパッタリング法により厚さ10nmのIGZO膜を成膜し、続けて金属酸化物ターゲット(In:Ga:Zn=1:3:2)を用い、スパッタリング法により厚さ10nmのIGZO膜を成膜した。その後、フォトリソグラフィ工程により形成したマスクを用いてエッチング処理を行った後、350℃または450℃で加熱処理を行い、多層膜1906を形成した。
【0366】
以上の工程により試料3aを作製した。
【0367】
次に、試料2a及び試料3aに設けられた酸化物半導体膜1905、及び多層膜1906のシート抵抗を測定した。試料2a及び試料3aにおいては、開口部1917及び開口部1919にプローブを接触させ、酸化物半導体膜1905、及び多層膜1906のシート抵抗を測定した。なお、試料2a及び試料3aの酸化物半導体膜1905、及び多層膜1906において、導電膜1907及び導電膜1909が対向する幅を1.5mm、導電膜1907と導電膜1909との間の距離を10μmとした。また、試料2a及び試料3aにおいて、導電膜1907を接地電位とし、導電膜1909に1Vを印加した。また、温度60℃、湿度95%の雰囲気において、試料2a及び試料3aを、60時間及び130時間保管した後、各試料のシート抵抗値を測定した。
【0368】
試料2a及び試料3aのシート抵抗値を図29に示す。なお、図29において、実線は、各試料において絶縁膜1910として形成した窒化シリコン膜の成膜温度が220℃であり、破線は350℃であることを示す。また、黒塗りマーカは、各試料において、酸化物半導体膜1905または多層膜1906を形成した後、350℃で加熱処理を行ったことを示し、白塗りマーカは、酸化物半導体膜1905または多層膜1906を形成した後、450℃で加熱処理を行ったことを示す。丸角マーカは、各試料が酸化物半導体膜1905を有する、即ち、試料2aであることを示す。三角マーカは、各試料が多層膜1906を有する、即ち試料3aであることを示す。なお、図29において、多層膜1906を形成した後、350℃で加熱した試料3aの測定結果、すなわち黒塗り三角マーカはプロットしていない。
【0369】
図29より、試料2a及び試料3aは、シート抵抗値が低く、容量素子の電極として好ましいシート抵抗値、0.2Ω/s.q.以下を満たしていることが分かる。また、試料2a及び試料3aは、シート抵抗値の時間変動量が少ないことがわかる。以上のことから、窒化シリコン膜に接する酸化物半導体膜または多層膜は、高温高湿環境において、シート抵抗値の変動量が少ないため、容量素子の電極に用いる透光性を有する導電膜として用いることができる。
【0370】
次に、試料2a及び試料3aにおいて、基板温度を25℃、60℃、及び150℃として、それぞれのシート抵抗値を測定した結果を図30に示す。なお、ここでは、試料2a及び試料3aとして、絶縁膜1910として形成した窒化シリコン膜の成膜温度が220℃であり、酸化物半導体膜1905または多層膜1906を形成した後、350℃で加熱処理を行った試料を用いた。黒塗り丸マーカは試料2aの測定結果を示し、黒塗り三角マーカは、試料3aの測定結果を示す。
【0371】
図30より、基板温度を高くしても、酸化物半導体膜1905及び多層膜1906のシート抵抗値は変動しないことが分かる。即ち、窒化シリコン膜に接する酸化物半導体膜または多層膜は、縮退半導体ともいえる。窒化シリコン膜に接する酸化物半導体膜または多層膜は、基板温度が変化してもシート抵抗値の変動量が少ないため、容量素子の電極に用いる透光性を有する導電膜として用いることができる。
【0372】
本実施例に示す構成は、他の実施の形態、または実施例に示す構成と適宜組み合わせて用いることができる。
【実施例2】
【0373】
本実施例は、酸化物半導体膜と、酸化物半導体膜上に形成された絶縁膜との不純物分析について、図26を用いて説明する。
【0374】
本実施例においては、不純物分析用のサンプルとして、2種類のサンプル(以下、試料5、及び試料6)を作製した。
【0375】
まず、はじめに試料5の作製方法を以下に示す。
【0376】
試料5は、ガラス基板上にIGZO膜を成膜し、その後窒化シリコン膜を成膜した。その後、窒素雰囲気下で450℃、1時間の熱処理を行い、続けて窒素と酸素の混合ガス雰囲気(窒素=80%、酸素=20%)下で450℃×1時間の熱処理を行った。
【0377】
なお、IGZO膜の成膜条件としては、スパッタリング法にて、金属酸化物ターゲット(In:Ga:Zn=1:1:1)を用い、Ar/O=100/100sccm(O=50%)、圧力=0.6Pa、成膜電力=5000W、基板温度=170℃の条件で100nmの厚さIGZO膜を成膜した。
【0378】
また、窒化シリコン膜の成膜条件としては、プラズマCVD法にて、SiH/N/NH=50/5000/100sccm、圧力=100Pa、成膜電力=1000W、基板温度=220℃の条件で100nmの厚さの窒化シリコン膜を成膜した。
【0379】
次に、試料6の作製方法を以下に示す。
【0380】
ガラス基板上にIGZO膜を成膜し、その後酸化窒化シリコン膜及び窒化シリコン膜を積層して成膜した。その後、窒素雰囲気下で450℃、1時間の熱処理を行い、続けて窒素と酸素の混合ガス雰囲気(窒素=80%、酸素=20%)下で450℃×1時間の熱処理を行った。
【0381】
なお、IGZO膜の成膜条件、及び窒化シリコン膜の成膜条件としては、試料5と同様の条件を用いた。また、酸化窒化シリコン膜の成膜条件としては、プラズマCVD法にて、SiH/NO=30/4000sccm、圧力=40Pa、成膜電力=150W、基板温度=220℃の条件で50nmの厚さの酸化窒化シリコン膜を成膜し、その後、プラズマCVD法にて、SiH/NO=160/4000sccm、圧力=200Pa、成膜電力=1500W、基板温度=220℃の条件で400nmの厚さの酸化窒化シリコン膜を成膜した。
【0382】
試料5及び試料6の不純物分析結果を図26に示す。
【0383】
なお、不純物分析としては、二次イオン質量分析法(SIMS:Secondary Ion Mass Spectrometry)を用い、図26に示す矢印の方向から分析を行った。すなわち、ガラス基板側からの測定である。
【0384】
また、図26(A)は、試料5の測定により得られた水素(H)の濃度プロファイルである。図26(B)は、試料6の測定により得られた水素(H)の濃度プロファイルである。
【0385】
図26(A)よりIGZO膜中の水素(H)濃度は、1.0×1020atoms/cmであることがわかる。また、窒化シリコン膜中の水素(H)濃度は、1.0×1023atoms/cmであることがわかる。また、図26(B)よりIGZO膜中の水素(H)濃度は、5.0×1019atoms/cmであることがわかる。また、酸化窒化シリコン膜中の水素(H)濃度は、3.0×1021atoms/cmであることがわかる。
【0386】
なお、SIMS分析は、その測定原理上、試料表面近傍や、材質が異なる膜との積層界面近傍のデータを正確に得ることが困難であることが知られている。そこで、膜中における水素(H)の厚さ方向の分布を、SIMSで分析する場合、対象となる膜の存在する範囲において、極端な変動が無く、ほぼ一定の強度が得られる領域における平均値を採用する。
【0387】
このように、IGZO膜に接する絶縁膜の構成を変えることにより、IGZO膜中の水素(H)濃度に差が確認された。
【0388】
例えば、トランジスタのチャネル形成領域に上述したIGZO膜を用いる場合、試料6に示すようにIGZO膜に接して酸化窒化シリコン膜を設ける構成が好ましい。また、容量素子の電極に用いる透光性を有する導電膜としては、試料5に示すようにIGZO膜に接して窒化シリコン膜を設ける構成が好ましい。このような構成を用いることによって、トランジスタのチャネル形成領域に用いるIGZO膜と、容量素子の電極に用いるIGZO膜と、を同一工程で作製してもIGZO膜中の水素濃度を変えることができる。
【実施例3】
【0389】
本実施例では、酸化物半導体膜及び多層膜の欠陥量について、図27及び図28を用いて説明する。
【0390】
はじめに、試料の構造について説明する。
【0391】
試料7は、石英基板上に形成された厚さ35nmの酸化物半導体膜と、酸化物半導体膜上に形成された厚さ100nmの窒化絶縁膜とを有する。
【0392】
試料8及び試料9は、石英基板上に形成された厚さ30nmの多層膜と、多層膜上に形成された厚さ100nmの窒化絶縁膜とを有する。なお、試料8の多層膜は、厚さ10nmの第1のIGZO膜、厚さ10nmの第2のIGZO膜、及び厚さ10nmの第3のIGZOが順に積層されている。また、試料9は、厚さ20nmの第1のIGZO膜、厚さ15nmの第2のIGZO膜、及び厚さ10nmの第3のIGZO膜が順に積層されている。試料8及び試料9は、試料7と比較して、酸化物半導体膜の代わりに多層膜を有する点が異なる。
【0393】
試料10は、石英基板上に形成された厚さ100nmの酸化物半導体膜と、酸化物半導体膜上に形成された厚さ250nmの酸化絶縁膜と、酸化絶縁膜上に形成された厚さ100nmの窒化絶縁膜とを有する。試料10は、試料7乃至試料9と比較して酸化物半導体膜が窒化絶縁膜と接しておらず、酸化絶縁膜と接している点が異なる。
【0394】
次に、各試料の作製方法について説明する。
【0395】
はじめに、試料7の作製方法について説明する。
【0396】
石英基板上に、酸化物半導体膜として厚さ35nmのIGZO膜を成膜した。IGZO膜の成膜条件としては、スパッタリング法にて、金属酸化物ターゲット(In:Ga:Zn=1:1:1)を用い、Ar/O=100sccm/100sccm(O=50%)、圧力=0.6Pa、成膜電力=5000W、基板温度=170℃の条件を用いた。
【0397】
次に、第1の加熱処理として、450℃の窒素雰囲気で1時間の加熱処理を行った後、450℃の窒素と酸素の混合ガス雰囲気(窒素=80%、酸素=20%)で1時間の加熱処理を行った。
【0398】
次に、酸化物半導体膜上に、窒化絶縁膜として厚さ100nmの窒化シリコン膜を成膜した。窒化シリコン膜の成膜条件としては、プラズマCVD法にて、SiH/N/NH=50/5000/100sccm、圧力=100Pa、成膜電力=1000W、基板温度=350℃の条件を用いた。
【0399】
次に、第2の加熱処理として、250℃の窒素雰囲気で1時間の加熱処理を行った。
【0400】
以上の工程により試料7を作製した。
【0401】
次に、試料8の作製方法について説明する。
【0402】
試料8は、試料7の酸化物半導体膜の代わりに、多層膜を形成した。多層膜としては、石英基板上に、スパッタリング法にて、金属酸化物ターゲット(In:Ga:Zn=1:3:2)を用い、Ar/O=180/20sccm(O=10%)、圧力=0.6Pa、成膜電力=5000W、基板温度=25℃の条件で厚さ10nmの第1のIGZO膜を成膜した。次に、スパッタリング法にて、金属酸化物ターゲット(In:Ga:Zn=1:1:1)を用い、Ar/O=100/100sccm(O=50%)、圧力=0.6Pa、成膜電力=5000W、基板温度=170℃の条件で厚さ10nmの第2のIGZO膜を成膜した。次に、スパッタリング法にて、金属酸化物ターゲット(In:Ga:Zn=1:3:2)を用い、Ar/O=180/20sccm(O=10%)、圧力=0.6Pa、成膜電力=5000W、基板温度=25℃の条件で厚さ10nmの第3のIGZO膜を成膜した。
【0403】
その他の工程は、試料7と同様である。以上の工程により試料8を形成した。
【0404】
次に、試料9の作製方法について説明する。
【0405】
試料9は、試料7の酸化物半導体膜の代わりに、多層膜を形成した。多層膜としては、石英基板上に、試料8に示す第1のIGZO膜と同じ条件を用いて、厚さ20nmの第1のIGZO膜を成膜した。次に、スパッタリング法にて、試料8に示す第2のIGZO膜と同じ条件を用いて、厚さ15nmの第2のIGZO膜を成膜した。次に、試料8に示す第3のIGZO膜と同じ条件を用いて、厚さ10nmの第2のIGZO膜を成膜した。
【0406】
その他の工程は、試料7と同様である。以上の工程により試料9を形成した。
【0407】
次に、試料10の作製方法について説明する。
【0408】
試料10は、試料7と同じ条件を用いて石英基板上に厚さ100nmの酸化物半導体膜を形成した。
【0409】
次に、試料7と同様の条件を用いて、第1の加熱処理を行った。
【0410】
次に、酸化物半導体膜上に、酸化絶縁膜として、厚さ50nmの第1の酸化窒化シリコン膜及び厚さ200nmの第2の酸化窒化シリコン膜を形成した。ここでは、プラズマCVD法にて、SiH/NO=30/4000sccm、圧力=40Pa、成膜電力=150W、基板温度=220℃の条件で50nmの厚さの第1の酸化窒化シリコン膜を成膜し、その後、プラズマCVD法にて、SiH/NO=160/4000sccm、圧力=200Pa、成膜電力=1500W、基板温度=220℃の条件で200nmの厚さの第2の酸化窒化シリコン膜を成膜した。なお、第2の酸化窒化シリコン膜は、化学量論的組成を満たす酸素よりも多くの酸素を含む膜である。
【0411】
次に、試料7と同じ条件を用いて、酸化絶縁膜上に厚さ100nmの窒化シリコン膜を形成した。
【0412】
次に、試料7と同様の条件を用いて、第2の加熱処理を行った。
【0413】
以上の工程により試料10を形成した。
【0414】
次に、試料7乃至試料10についてESR測定を行った。ESR測定は、所定の温度で、マイクロ波の吸収の起こる磁場の値(H)から、式g=hν/βH、を用いてg値というパラメータが得られる。なお、νはマイクロ波の周波数である。hはプランク定数であり、βはボーア磁子であり、どちらも定数である。
【0415】
ここでは、下記の条件でESR測定を行った。測定温度を室温(25℃)とし、8.92GHzの高周波電力(マイクロ波パワー)を20mWとし、磁場の向きは作製した試料の膜表面と平行とした。
【0416】
試料7乃至試料9に含まれる酸化物半導体膜及び多層膜をESR測定して得られた一次微分曲線を図27に示す。図27(A)は、試料7の測定結果であり、図27(B)は、試料8の測定結果であり、図27(C)は、試料9の測定結果である。
【0417】
試料10に含まれる酸化物半導体膜をESR測定して得られた一次微分曲線を図28に示す。
【0418】
図27(A)乃至図27(C)において、試料7は、g値が1.93において、酸化物半導体膜中の欠陥に起因する対称性を有する信号が検出されている。試料8及び試料9は、g値が1.95において、多層膜中の欠陥に起因する対称性を有する信号が検出されている。試料7におけるg値が1.93のスピン密度は、2.5×1019spins/cmであり、試料8におけるg値が1.93及び1.95のスピン密度の総和は、1.6×1019spins/cmであり、試料9におけるg値が1.93及び1.95のスピン密度の総和は、2.3×1019spins/cmであった。即ち、酸化物半導体膜及び多層膜には、欠陥が含まれることが分かる。なお、酸化物半導体膜及び多層膜の欠陥の一例としては酸素欠損がある。
【0419】
図28において、試料10は、試料7の酸化物半導体膜、試料8及び試料9の多層膜と比較して、酸化物半導体膜の厚さが厚いにも関わらず、欠陥に起因する対称性を有する信号が検出されず、即ち、検出下限以下(ここでは、検出下限を3.7×1016spins/cmとする。)であった。このことから、酸化物半導体膜に含まれる欠陥量が検出できないことが分かる。
【0420】
酸化物半導体膜または多層膜に窒化絶縁膜、ここではプラズマCVDで形成された窒化シリコン膜が接すると、酸化物半導体膜または多層膜に欠陥、代表的には酸素欠損が形成されることが分かる。一方、酸化物半導体膜に酸化絶縁膜、ここでは、酸化窒化シリコン膜を設けると、酸化窒化シリコン膜に含まれる過剰酸素、即ち化学量論的組成を満たす酸素よりも多くの酸素が酸化物半導体膜に拡散し、酸化物半導体膜中の欠陥が増加しない。
【0421】
以上のことから、試料7乃至試料9に示すように、窒化絶縁膜に接する酸化物半導体膜または多層膜は欠陥、代表的には酸素欠損量が多く、導電性が高いため、容量素子の電極として用いることができる。一方、試料10に示すように、酸化絶縁膜に接する酸化物半導体膜または多層膜は、酸素欠損量が少なく、導電性が低いため、トランジスタのチャネル形成領域として用いることができる。
【0422】
ここで、窒化物絶縁膜と接する酸化物半導体膜及び多層膜の抵抗率が低減する原因について、以下に説明する。
【0423】
<Hの存在形態間のエネルギーと安定性>
はじめに、酸化物半導体膜に存在するHの形態のエネルギー差と安定性について、計算した結果を説明する。ここでは、酸化物半導体膜としてInGaZnOを用いた。
【0424】
計算に用いた構造は、InGaZnOの六方晶の単位格子をa軸及びb軸方向に2倍ずつにした84原子バルクモデルを基本とした。
【0425】
バルクモデルにおいて、3個のIn原子及び1個のZn原子と結合したO原子1個をH原子に置換したモデルを用意した(図31(A)参照)。また、図31(A)において、InO層におけるab面をc軸から見た図を図31(B)に示す。3個のIn原子及び1個のZn原子と結合したO原子1個を取り除いた領域を、酸素欠損Voと示し、図31(A)及び図31(B)において破線で示す。また、酸素欠損Vo中に位置するH原子をVoHと表記する。
【0426】
また、バルクモデルにおいて、3個のIn原子及び1個のZn原子と結合したO原子1個を取り除き、酸素欠損(Vo)を形成する。該Vo近傍で、ab面に対して1個のGa原子及び2個のZn原子と結合したO原子にH原子が結合したモデルを用意した(図31(C)参照)。また、図31(C)において、InO層におけるab面をc軸から見た図を図31(D)に示す。図31(C)及び図31(D)において、酸素欠損Voを破線で示す。また、酸素欠損Voを有し、且つ酸素欠損Vo近傍で、ab面に対して1個のGa原子及び2個のZn原子と結合したO原子に結合したH原子を有するモデルをVo+Hと表記する。
【0427】
上記2つのモデルに対して、格子定数を固定しての最適化計算を行い、全エネルギーを算出した。なお、全エネルギーの値が小さいほどその構造はより安定といえる。
【0428】
計算には、第一原理計算ソフトウェアVASP(The Vienna Ab initio simulation package)を用いた。計算条件を表1に示す。
【0429】
【表1】

電子状態擬ポテンシャルにはProjector Augmented Wave(PAW)法により生成されたポテンシャルを、汎関数にはGGA/PBE(Generalized−Gradient−Approximation/Perdew−Burke−Ernzerhof)を用いた。
【0430】
また、計算により算出された2つのモデルの全エネルギーを表2に示す。
【0431】
【表2】
【0432】
表2より、VoHの方がVo+Hよりも全エネルギーが0.78eV小さい。よって、VoHの方がVo+Hよりも安定であるといえる。したがって、酸素欠損(Vo)にH原子が近づくと、H原子はO原子と結合するよりも、酸素欠損(Vo)中に取り込まれやすいと考えられる。
【0433】
<VoHの熱力学的状態>
次に、酸素欠損(Vo)中にH原子が取り込まれたVoHの形成エネルギーと荷電状態について、計算した結果を説明する。VoHは荷電状態によって形成エネルギーが異なり、フェルミエネルギーにも依存する。よって、VoHはフェルミエネルギーに依存して安定な荷電状態が異なる。ここでは、VoHが電子を1つ放出した状態を(VoH)と示し、電子を1つ捕獲した状態を(VoH)と示し、電子の移動のない状態を、(VoH)と示す。(VoH)、(VoH)、(VoH)それぞれの形成エネルギーを計算した。
【0434】
計算には、第一原理計算ソフトウェアVASPを用いた。計算条件を表3に示す。
【0435】
【表3】

電子状態擬ポテンシャル計算にはProjector Augmented Wave(PAW)法により生成されたポテンシャルを、汎関数にはHeyd−Scuseria−Ernzerhof(HSE) DFTハイブリッド汎関数(HSE06)を用いた。
【0436】
なお、酸素欠損の形成エネルギーの算出では酸素欠損濃度の希薄極限を仮定し、電子および正孔の伝導帯、価電子帯への過剰な広がりを補正してエネルギーを算出した。また、完全結晶の価電子帯上端をエネルギー原点とし、欠陥構造に由来する価電子帯のズレは、平均静電ポテンシャルを用いて補正した。
【0437】
図32(A)に、(VoH)、(VoH)、(VoH)それぞれの形成エネルギーを示す。横軸はフェルミレベルであり、縦軸は形成エネルギーである。実線は(VoH)の形成エネルギーを示し、一点鎖線は(VoH)の形成エネルギーを示し、破線は(VoH)の形成エネルギーを示す。また、VoHの電荷が、(VoH)から(VoH)を経て(VoH)に変わる遷移レベルをε(+/−)と示す。
【0438】
図32(B)に、VoHの熱力学的遷移レベルを示す。計算結果から、InGaZnOのエネルギーギャップは2.739eVであった。また、価電子帯のエネルギーを0eVとすると、遷移レベル(ε(+/−))は2.62eVであり、伝導帯の直下に存在する。このことから、酸素欠損(Vo)中にH原子が取り込まれることにより、InGaZnOがn型になることが分かる。
【0439】
酸化物半導体膜がプラズマに曝されると、酸化物半導体膜はダメージを受け、酸化物半導体膜に、欠陥、代表的には酸素欠損が生成される。また、酸化物半導体膜に窒化絶縁膜が接すると、窒化絶縁膜に含まれる水素が酸化物半導体膜に移動する。これらの結果、酸化物半導体膜に含まれる酸素欠損に水素が入ることで、酸化物半導体膜中にVoHが形成され、酸化物半導体膜がn型となり、抵抗率が低下する。以上のことから、窒化絶縁膜に接する酸化物半導体膜を容量素子の電極として用いることができる。
図1
図2
図3
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