(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記推定部は、前記第3受光量が前記第2受光量よりも大きいとき、または、前記第1受光量が前記第4受光量よりも大きいときに、前記時間が前記期間長さよりも短いと推定し、前記第3受光量が前記第2受光量よりも小さいとき、または、前記第1受光量が前記第4受光量よりも小さいときに、前記時間が前記期間長さよりも長いと推定する、請求項3に記載の距離測定装置。
前記推定部は、前記第4受光量が前記第2受光量よりも小さいときに、前記時間が前記期間長さの2倍よりも短いと推定し、前記第4受光量が前記第2受光量よりも大きいときに、前記時間が前記期間長さの2倍よりも長いと推定する、請求項5に記載の距離測定装置。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかしながら、照射光L1’の強度を完全な矩形波と一致させることは難しい。実際には、例えば
図16に示すように、照射光L1’の強度は、時間の経過と共に徐々に立ち上がり、一定値を採った後で、時間の経過と共に徐々に立ち下がる。この照射光L1’の立ち上がりの傾斜の程度、および、立ち下がりの傾斜の程度は、照射装置の種類、または、製造バラツキなどに依存する。
図16の例示では、立ち上がりの傾斜の程度と、立ち下がりの傾斜の程度とは互いに異なっている。
【0009】
図17に示すように、反射光L2’の立ち上がり、および、立ち下がりも、照射光L1’に依存して傾斜する。よってこのとき、反射光量A1’,A2’の和は、期間長さΔT’に対応する矩形波の反射光L2’の反射光量とは一致しない。
【0010】
そこで、期間長さΔT’に対応する反射光L2’の反射光量を取得すべく、
図17に示すように、3つの期間T1’〜T3’を設定することを考える。なおこの考えは、従来技術ではなく、本願によって開示される新しい考えである。
【0011】
期間T1’〜T3’は互いに同じ期間長さΔT’を有する。期間T1’は、照射光L1’が立ち上がり始める時点から始まり、期間T2’は、照射光L1’が立ち下がり始める時点から始まる。期間T3’は、期間T1’,T2’の間の期間である。
【0012】
反射光L2’は期間T3’において常に高い値を採るので、期間T3’における反射光量A3’は、期間長さΔT’に対応する反射光L2’の反射光量に相当する。
【0013】
よって、遅れ時間tを以下の式を用いて算出できる。
【0014】
t=ΔT’・A2’/A3’ ・・・(2)
【0015】
しかしながら、反射光量A2’には、遅れ時間tに依存する第1部分a21と、遅れ時間tには依存せずに、反射光L2の立ち下がりに依存する第2部分a22とが含まれる。この第2部分a22は、式(2)を用いて算出した遅れ時間tの誤差を招く。この第2部分a22は、反射光L2の立ち下がりの傾斜が緩やかであるほど大きいので、傾斜が緩やかであるほど、誤差は大きい。
【0016】
また反射光量A3’から反射光量A1’を減算した部分A31’(=A3’−A1’)は、反射光量A2’と同様に、遅れ時間tにも依存する。よって、遅れ時間tを以下の式を用いて算出できる。
【0017】
t=ΔT’・(A3’−A1’)/A3’ ・・・(3)
【0018】
なお、部分A31’には、遅れ時間tに依存する第1部分a31と、遅れ時間tには依存せずに、反射光L2’の立ち上がりに依存する第2部分a32とが含まれる。よって式(3)を用いて算出した遅れ時間tには、反射光L2’の立ち上がりに起因する誤差が含まれる。この第2部分a32は、反射光L2’の立ち上がりの傾斜が緩やかであるほど大きいので、立ち上がりの傾斜が緩やかであるほど、誤差は大きい。
【0019】
さて、反射光L2’の立ち上がりの程度、および、立ち下がりの程度は、照射装置および受光装置の種類に依存する。また、照射装置および受光装置の製造バラツキによっても、これらは異なる。
【0020】
そして、例えば
図17に示すように、反射光L2’の立ち上がりの傾斜が反射光L2’の立ち下がりの傾斜よりも急峻である場合には、式(3)による誤差は、式(2)による誤差よりも小さい。しかしながら、その逆に、反射光L2’の立ち上がりの傾斜が反射光L2’の立ち下がりの傾斜よりも緩やかである場合には、式(3)による誤差は、式(2)による誤差よりも大きくなる。
【0021】
このように、式(2)または式(3)を用いた場合には、照射装置および受光装置によっては、大きな誤差を招くことになる。
【0022】
そこで、本発明は、誤差の最悪値を回避できる距離測定装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0023】
本発明にかかる距離測定装置の第1の態様は、照射光の強度を変調しながら、測定対象へと前記照射光(L1)を照射する照射装置(3)と、前記照射光のうち前記測定対象で反射した光を、反射光(L2)として受光する受光素子(1)と、いずれもが同じ期間長さΔTを有する期間であって、前記照射光
が立ち上がり
始める時点に対して所定の時間差で始まる第1期間(T1)、前記照射光が立ち下が
り始める時点に対して前記時間差で始まる第2期間(T2)、および、前記第1期間と前記第2期間との間の第3期間(T3)において、それぞれ、前記反射光を受光して得られる第1反射光量a1、第2反射光量a2、および、第3反射光量a3を用いて、ΔT・(a3−a1+a2)/(2・a3)で表される式に基づいて時間を算出し、前記時間に基づいて、前記測定対象までの距離を算出する算出部(24)とを備える。
【0024】
本発明にかかる距離測定装置の第2の態様は、第1の態様にかかる距離測定装置であって、前記受光素子(1)は、前記反射光と、前記照射光を光源としない周囲光とを受光し、前記算出部(24)は、前記受光素子がそれぞれ前記第1期間(T1)から前記第3期間(T3)において受光する第1受光量A1から第3受光量A3と、前記受光素子が、前記第1期間から前記第3期間と同じ期間長さΔTを有し、前記反射光の強度が零である第4期間(T4)において、受光する第4受光量A4とを用いて、ΔT・(A3−A1+A2−A4)/{2・(A3−A4)}で表される式に基づいて前記時間を算出する。
【0025】
本発明にかかる距離測定装置の第3の態様は、第2の態様にかかる距離測定装置であって、前記時間の算出前に、前記時間と前記期間長さと
の長短を推定する推定部(25)を更に備え、
前記受光素子は、前記反射光と、前記照射光を光源としない周囲光とを受光し、前記算出部は、前記受光素子がそれぞれ前記第1期間から前記第3期間において受光する第1受光量A1から第3受光量A3と、前記受光素子が、前記第1期間から前記第3期間と同じ期間長さΔTを有し、前記第2期間の後の第4期間において、受光する第4受光量A4とを用いて、前記時間が前記期間長さよりも短いと推定されるときに、ΔT・(A3−A1+A2−A4)/{2・(A3−A4)}で表される式に基づいて前記時間を算出し、前記時間が前記期間長さよりも長
く、前記期間長さの2倍よりも短いと推定されるときに、ΔT+ΔT・(A2−A3+A4−A1)/{2・(A2−A1)}で表される式に基づいて前記時間を算出する。
【0026】
本発明にかかる距離測定装置の第4の態様は、第3の態様にかかる距離測定装置であって、前記推定部(24)は、前記第3受光量(A3)が前記第2受光量(A2)よりも大きいとき、または、前記第1受光量(A1)が前記第4受光量(A4)よりも大きいときに、前記時間が前記期間長さよりも短いと推定し、前記第3受光量(A3)が前記第2受光量(A2)よりも小さいとき、または、前記第1受光量(A1)が前記第4受光量(A4)よりも小さいときに、前記時間が前記期間長さよりも長いと推定する。
【0027】
本発明にかかる距離測定装置の第5の態様は、第3または第4の態様にかかる距離測定装置であって、前記算出部は、前記時間が前記期間長さよりも長く、前記期間長さの2倍よりも短いと推定されるときに、ΔT+ΔT・(A2−A3+A4−A1)/{2・(A2−A1)}で表される式に基づいて前記時間を算出し、前記時間が前記期間長さの2倍よりも長いと推定されるときに、2・ΔT+ΔT・(A4−A2)/(A4−A1)もしくは、2・ΔT+ΔT・(A4−A2)/(A4−A3)で表される式に基づいて前記時間を算出する。
【0028】
本発明にかかる距離測定装置の第6の態様は、第5の態様にかかる距離測定装置であって、前記推定部は、前記第4受光量(A4)が前記第2受光量(A2)よりも小さいときに、前記時間が前記期間長さの2倍よりも短いと推定し、前記第4受光量(A4)が前記第2受光量(A2)よりも大きいときに、前記時間が前記期間長さの2倍よりも長いと推定する。
【0029】
本発明にかかる距離測定装置の第7の態様は、第2から第6のいずれか一つの態様にかかる距離測定装置であって、第1から第4のコンデンサ(C1〜C4)と、前記受光素子(Pk)と、前記第1から前記第4のコンデンサとの間の導通/非導通をそれぞれ選択する第1から第4のスイッチ(S1〜S4)と、前記第1期間から前記第4期間において、それぞれ前記第1から前記第4のスイッチをオンすることで、前記第1から前記第4のコンデンサにそれぞれ前記第1受光量から前記第4受光量に応じた電圧を充電させる制御部(13)とを更に備える。
【0030】
本発明にかかる距離測定装置の第8の態様は、第2から第6のいずれか一つの態様にかかる距離測定装置であって、前記照射装置(3)は、略矩形波の前記照射光を少なくとも4回繰り返し照射し、前記距離測定装置は、コンデンサ(C1)と、前記受光素子(Pk)と、前記コンデンサとの導通/非導通を選択するスイッチ(S1)と、前記照射光についての第1照射周期内の前記第1期間において前記スイッチをオンして前記第1受光量に応じた電圧を前記コンデンサに充電させ、前記放電部を用いて前記コンデンサを放電した後で、第2照射周期内の前記第2期間において前記スイッチをオンして、前記第2受光量に応じた電圧を前記コンデンサに充電させ、前記放電部を用いて前記コンデンサを放電した後で、第3照射周期内の前記第3期間において前記スイッチをオンして、前記第3受光量に応じた電圧を前記コンデンサに充電させ、前記放電部を用いて前記コンデンサを放電した後で、第4照射周期内の前記第4期間において前記スイッチをオンして、前記第4受光量に応じた電圧を前記コンデンサに充電させる制御部(13)とを更に備える。
【0031】
本発明にかかる距離測定装置の第9の態様は、第
1の態様にかかる距離測定装置であって、前記照射装置は、略矩形波の前記照射光を繰り返して出力し、前記照射光についての複数回の照射周期のそれぞれに対する前記第3期間において、前記反射光を積算して受光することで得られる第4反射光量が、所定の基準値を超えたときに、前記第4反射光量を前記第3反射光量と把握し、前記第4反射光量が前記基準値を超えたときの回数の前記照射周期のそれぞれに対する前記第1期間において、前記反射光を積算して受光することで前記第1反射光量を取得し、前記回数の前記照射周期のそれぞれに対する前記第
2期間において、前記反射光を積算して受光することで前記第2反射光量を取得する。
【発明の効果】
【0032】
本発明にかかる距離測定装置の第1の態様によれば、第3反射光量a3と第1反射光量a1との差(a3−a1)と第2反射光量との平均値と、第3反射光量a3との比が、算出する時間と期間長さΔTとの比と等しいという関係式を用いて、当該時間を算出している。したがって、当該時間についての誤差も、差(a3−a1)に起因する誤差と、第2反射光に起因する誤差との平均にすることができる。これにより、誤差の最悪値を回避することができる。
【0033】
本発明にかかる距離測定装置の第2の態様によれば、受光素子が周囲光も受光する場合であっても、この周囲光の影響を抑制して時間を算出できる。
【0034】
本発明にかかる距離測定装置の第3の態様によれば、測定距離を伸ばすことができる。
【0035】
本発明にかかる距離測定装置の第4の態様によれば、受光量の比較により推定しているので、推定が容易である。
【0036】
本発明にかかる距離測定装置の第5の態様によれば、測定距離を更に伸ばすことができる。
【0037】
本発明にかかる距離測定装置の第6の態様によれば、受光量の比較により推定しているので、推定が容易である。
【0038】
本発明にかかる距離測定装置の第7の態様によれば、第1の態様にかかる距離測定装置の実現に資する。
【0039】
本発明にかかる距離測定装置の第8の態様によれば、コンデンサとスイッチの個数を低減して、第1期間から第4期間における第1受光量から第4受光量に応じた電圧を、コンデンサに充電させることができる。
【0040】
本発明にかかる距離測定装置の第9の態様によれば、照射回数を適切に設定することができる。
【発明を実施するための形態】
【0042】
第1の実施の形態.
<1.距離測定装置の全体構成>
図1は、本実施の形態にかかる距離測定装置の一例たる距離画像センサの概念的な構成の一例を示す図である。本距離画像センサは、受光装置1と、制御演算装置2と、照射装置3とを備える。
【0043】
照射装置3は、照射光L1の強度を調整(変調)しながら、この照射光L1を測定対象へと照射する。照射装置3は、例えば近赤外光を出力する発光ダイオード(LED)である。照射光L1の強度は制御演算装置2によって制御される。
【0044】
受光装置1は受光素子群11と受光量取得部10とを備える。受光素子群11は
図2に例示するように複数の受光素子P1,P2,P3,・・・を備える。受光素子P1,P2,P3,・・・の各々は、測定対象で反射された光を反射光L2として受光する。かかる受光素子群11としては、例えばフォトダイオード(例えばCCD(Charge-Coupled-Device)もしくはCMOSセンサ)、または、SMPD(Single-Carrier-Modulation-Photo-Detector)(特許文献5のイメージセンサ)などを採用することができる。特にSMPDは、高感度、高速動作、広いダイナミックレンジ、広い分光特性、製造容易性、低消費電力といった特性を有しているので、好適である。
【0045】
受光素子P1,P2,P3,・・・は2次元に配列されており、
図2の例示ではマトリックス状に配列される。以下では、受光素子P1,P2,P3,・・・を総称して受光素子Pkとも呼ぶ。
【0046】
受光量取得部10は、各受光素子Pkの受光量を取得する。例えば受光量取得部10はタイミング制御部12と行デコーダ13と列デコーダ14と相関二重サンプリング部15と増幅部16とAD変換部17とを備える(
図1)。タイミング制御部12は制御演算装置2からクロック信号CLKを受け取る。タイミング制御部12はクロック信号CLKに基づいて、受光素子Pkを適宜に選択すべく、行デコーダ13および列デコーダ14へとそれぞれ選択タイミングを通知する。行デコーダ13は選択タイミングに基づいて受光素子Pkを行ごとに適宜に選択し、列デコーダ14は選択タイミングに基づいて受光素子Pkを列ごとに適宜に選択する。
【0047】
選択された受光素子Pkの受光量は相関二重サンプリング部15に出力される。相関二重サンプリング部15は公知のように受光量のノイズを抑えて当該受光量を増幅部16へと出力する。この相関二重サンプリング部15も、タイミング制御部12によってタイミング制御される。増幅部16は入力された受光量を増幅してAD変換部17へと出力する。AD変換部17は入力された受光量をアナログデータからデジタルデータに変換して、制御演算装置2へと出力する。
【0048】
制御演算装置2は記録部23を有しており、各受光素子Pkの受光量は例えば記録部23に記録される。
【0049】
制御演算装置2は、照射装置3の照射光L1の変調と、受光装置1における受光素子Pkの受光量の取得タイミングとを制御するとともに、取得した受光量に基づいて、受光素子Pkごとに測定対象までの距離を算出する。これにより、制御演算装置2は距離画像データを生成することができる。
【0050】
なお本実施の形態では、受光装置1は複数の受光素子Pkを有しているものの、必ずしもこれに限らない。一つの受光素子Pkのみを有していても良い。第1〜第3の実施の形態では、一つの受光素子Pkを用いて、測定対象までの距離を測定する技術について説明する。複数の受光素子Pkごとに、測定対象までの距離を測定する技術については、第4の実施の形態で述べる。
【0051】
<2.距離測定>
<2−1.照射光>
制御演算装置2は、照射制御部22を有している。照射制御部22は、照射装置3の照射光L1の強度を変調する。より詳細には、照射制御部22は例えば矩形波の電圧を生成し、この電圧を電流に変換した後に、その電流を制御信号として照射装置3へと出力する。照射装置3は、矩形波の制御信号に応じて、照射光L1の強度を略矩形波に変調して照射光L1を出力する。
【0052】
しかるに実際には、照射光L1の強度の形状を完全な矩形波と一致させることは困難であり、照射光L1の強度は、その立ち上がり、および、立ち下がりにおいて、傾斜する。この照射光L1の強度の立ち上がりの傾斜の程度、および、立ち下がりの傾斜の程度は、照射装置3の種類に依存し、或いは、同じ種類であっても製造上のばらつき等により、個々の照射装置3に依存する。
【0053】
図3の例示では、照射光L1の強度の立ち上がりの傾斜は、立ち下がりの傾斜よりも緩やかである。言い換えれば、立ち上がりにおける強度の時間に対する増大率(>0)は、立ち下がりにおける強度の時間に対する低減率(>0)よりも小さい。なお、傾斜を見やすくするように、
図3では傾斜の程度を誇張して示している。後に参照する他の図面においても同様である。
【0054】
<2−2.受光>
受光装置1は、照射光L1に同期した期間T1〜T4の各々において受光する。期間T1は、照射光L1が立ち上がる時点に対して所定の時間差で始まる期間であり、
図3の例示では、照射光L1が立ち上がり始める時点から始まっている。期間T2は、照射光L1が立ち下がる時点に対して当該時間差で始まる期間であり、
図3の例示では、照射光L1が立ち下がり始める時点から始まっている。期間T3は期間T1,T2の間の期間であり、期間T4は期間T2に続く期間である。
【0055】
期間T1〜T4は互いに同じ長さを有する期間であり、以下では、期間T1〜T4の長さを期間長さΔTとも呼ぶ。
図3の例示では、期間T1〜T4は、期間T1,T3,T2,T4の順で連続している。つまり期間T1に続いて期間T3が始まり、期間T3に続いて期間T2が始まり、期間T2に続いて期間T4が始まっている。
【0056】
制御演算装置2は、タイミング調整部21を有しており、例えば期間T1〜T4に同期するクロック信号CLKを生成する。このクロック信号CLKは受光装置1に出力され、受光量取得部10は、クロック信号CLKに基づいて、期間T1〜T4において受光素子Pkに受光させる。一方で、クロック信号CLKは照射制御部22にも入力される。照射制御部22は、クロック信号CLKに基づいて、矩形波の制御電圧を生成し、照射装置3へと出力する。これにより、クロック信号CLKに基づいて、照射光L1の強度に対して期間T1〜T4が相対的に規定されることになる。
【0057】
図3の例示では、受光素子Pkが受光する光L4も示されている。この光L4は、照射光L1が測定対象で反射して生じる反射光L2と、照射装置3を光源としない周囲光L3とを含んでいる。つまり、光L4は反射光L2と周囲光L3との和となる。この周囲光L3はほぼ一定であるとみなすことができるので、光L4のうち、オフセット部分が周囲光L3であり、照射光L1と相似な波形部分が反射光L2に相当する。
【0058】
図3では、照射光L1と反射光L2との間の遅れ時間tが、期間長さΔTよりも短い場合が例示されている。よって反射光L2は、期間T1の途中で立ち上がり、期間T2の途中で立ち下がる。したがって、期間T1,T2に挟まれる期間T3においては、反射光L2は比較的大きい略一定値を採り、期間T2に続く期間T4においては、反射光L2はほぼ零を採る。
【0059】
受光素子Pkは、期間T1〜T4において光L4をそれぞれ受光し続けて、これにより得られる受光量A1〜A4が、受光装置1から制御演算装置2へと出力される。
【0060】
図3の例示では、期間T4において反射光L2はほぼ零であるので、受光量A4は、周囲光L3を受光して得られる受光量に相当する。よって、受光量A1〜A3の各々から受光量A4を減算すれば、受光量A1〜A3から周囲光L3による受光量を除去することができる。つまり、期間T1〜T3において反射光L2を受光して得られる受光量(以下、反射光量と呼ぶ)a1〜a3を、算出することができる。
【0061】
反射光量a2は、遅れ時間tが長いほど大きくなり、遅れ時間tを反映している。しかるに反射光量a2は、反射光L2の立ち下がりの傾斜の程度によっても増減する。より具体的には、遅れ時間tが変わらなくても、反射光L2の立ち下がりの傾斜が緩やかになるほど、反射光量a2は増大する。
【0062】
反射光量a3と反射光量a1との差(a3−a1)も、遅れ時間tが長いほど大きくなり、遅れ時間tを反映している。しかるに差(a3−a1)は、反射光L2の立ち上がりの傾斜の程度によっても、増減する。より具体的には、遅れ時間tが変わらなくても、反射光L2の立ち上がりの傾斜が緩やかになるほど、差(a3−a1)は増大する。
【0063】
本実施の形態では、いずれも遅れ時間tを反映する反射光量a2および差(a3−a1)の平均値を算出する。そして、この平均値と反射光量a3との比が、遅れ時間tと期間長さΔTとの比と等しいと仮定して、遅れ時間tを算出する。ここでは算出する遅れ時間tを遅れ時間t’と呼ぶ。遅れ時間t’は以下の式で表すことができる。
【0064】
t’=ΔT・(a3−a1+a2)/(2・a3) ・・・(4)
【0065】
受光量A1〜A4を用いて式(4)を表すと、次式が導かれる。
【0066】
t’=ΔT・(A3−A1+A2−A4)/{2・(A3−A4)} ・・・(5)
【0067】
制御演算装置2は算出部24を有しており、算出部24は式(4)または式(5)を用いて遅れ時間t’を算出する。ただし、式(4)または式(5)で算出される遅れ時間t’は、厳密にいえば遅れ時間tとは相違する。なぜなら、上述したように、反射光量a2は反射光L2の立ち下がりの傾斜の程度によっても増減し、差(a3−a1)は反射光L2の立ち上がりの傾斜の程度によっても増減するのに対して、遅れ時間tはこれらの傾斜に依存しないからである。
【0068】
そこで遅れ時間t’について更に考察する。式(4)を変形すると、次式が導かれる。
【0069】
t’=1/2・{ΔT・(a3−a1)/a3+ΔT・a2/a3}・・・(6)
【0070】
右辺の中括弧内の第1項は、
図3の時間t1に相当する。時間t1は、期間T1の始期から、反射光L2の立ち上がりの中央時点までの時間である。同様に、右辺の括弧内の第2項は
図2の時間t2に相当する。時間t2は、期間T2の始期から、反射光L2の立ち下がりの中央時点までの時間である。よって式(6)は次式に変形できる。
【0071】
t’=(t1+t2)/2 ・・・(7)
【0072】
つまり、第1の実施の形態では、反射光L2の立ち上がり側の反射光量a1を用いて求まる時間t1と、反射光L2の立ち下がり側の反射光量a2を用いて求まる時間t2との平均値を算出しているのである。
【0073】
<2−3.比較例>
比較のために、反射光L2の立ち下がり側の反射光量a2を用いずに、反射光L2の立ち上がり側の反射光量a1のみを用いて、遅れ時間tを算出すべく、以下の式を用いることを想定する。
【0074】
t1=ΔT・(a3−a1)/a3 ・・・(8)
【0075】
式(8)は式(3)と同じ式である。このように算出される時間t1は、上述したように、反射光L2の立ち上がりの傾斜の程度に依存して増減するのに対して、遅れ時間tは依存しない。そして、
図3から理解できるように、反射光L2の立ち上がりの傾斜がゆるやかになるほど、時間t1はより大きな値を採る。つまり、誤差が大きくなる。
【0076】
また、逆に、反射光L2の立ち上がり側の反射光量a1を用いずに、反射光L2の立ち下がり側の反射光量a2のみを用いて、遅れ時間tを算出すべく、以下の式を用いることを想定する。
【0077】
t2=ΔT・a2/a3 ・・・(9)
【0078】
式(9)は式(2)と同じ式である。このように算出される時間t2は、反射光L2の立ち下がりの傾斜の程度に依存して増減するのに対して、遅れ時間tは依存しない。そして、
図3から理解できるように、反射光L2の立ち下がりの傾斜がゆるやかになるほど、時間t2はより大きな値を採る。つまり、誤差が大きくなる。
【0079】
図3の例示では、反射光L2の立ち上がりの傾斜は反射光L2の立ち下がりの傾斜よりも緩やかであるので、式(9)を用いて算出した時間t2は遅れ時間tに近い値を採り、式(8)を用いて算出した時間t1は遅れ時間tから遠い値を採る。つまり式(9)を用いて算出するほうが、誤差は小さい。
【0080】
しかしながら、反射光L2の立ち上がりの傾斜と立ち下がりの傾斜との関係(どちらが緩やかであるかの関係)は、
図3に限らない。上述したように、照射光L1の立ち上がりの傾斜の程度および立ち下がりの傾斜の程度は、照射装置3の種類に依存し、また同じ種類であっても製造バラツキにより個々の照射装置3に依存するからである。
【0081】
しかも、光L4の立ち上がりの傾斜の程度および立ち下がりの傾斜の程度は、照射光L1のみならず、受光装置1の種類にも依存し、また同じ種類であっても製造バラツキにより個々の照射装置3にも依存する。よって、反射光L2の立ち上がりの程度および立ち下がりの程度は、照射装置3および受光装置1に依存することになる。
【0082】
したがって、例えば式(9)のみを用いれば、採用する照射装置3と受光装置1によっては、算出した時間t1が遅れ時間tに近い値を採り、誤差が小さい場合があるものの、その逆に誤差が大きい場合もある。式(8)のみを用いた場合も同様である。
【0083】
しかるに、本第1の実施の形態では、時間t1,t2の平均値を時間t’として算出している。したがって、どのような照射装置3と受光装置1とを採用したとしても、誤差の最悪値を回避することができるのである。
【0084】
<2−4.距離>
算出部24は、算出した遅れ時間t’に基づいて測定対象までの距離Rを算出する。遅れ時間t’は、照射光L1が、照射装置3から測定対象まで到達し、当該測定対象から受光装置1まで到達するのに要する時間である。よって、例えば測定対象から受光装置1までの距離と、測定対象から照射装置3までの距離とが互いに等しいと仮定すると、この距離Rは、光速cを用いて次式で算出される。
【0086】
<3.変形例>
上述の例では、期間T1は照射光L1が立ち上がり始める時点から始まっている。しかしながら、
図4に示すように、期間T1は、当該時点から予め定められた時間差Δtの分、遅れて始まっても構わない。この場合、式(4)又は式(5)の右辺で算出した時間に、時間差Δtを加算して、遅れ時間t’を算出すればよい。これを定式化すると、次式が導かれる。
【0087】
t’=Δt+ΔT・(a3−a1+a2)/(2・a3) ・・・(11)
t’=Δt+ΔT・(A3-A1+A2-A4)/{2・(A3-A4)} ・・・(12)
【0088】
なお、第1実施の形態では、期間T4の受光量A4を用いて周囲光L3の影響を除去しているものの、必ずしもこれに限らない。例えば周囲光L3を除去しつつ受光することができる受光装置1を採用する場合には、受光装置1は期間T1〜T3において反射光量a1〜a3を取得できるので、受光装置1は期間T4において受光する必要はない。
【0089】
第2の実施の形態.
図3を参照して説明したように、期間T1〜T4が設定されている場合について考慮する。遅れ時間t’が期間長さΔTよりも長いときには、式(4)又は式(5)を用いても、適切に遅れ時間t’を算出することができない。よって、遅れ時間t’が期間長さΔTよりも短いときには、距離を算出できない。言い換えれば、測定可能な距離が、例えばc・ΔT/2とほぼ等しい値に制限される。そこで、第2の実施の形態では、期間T4における受光量A4の受光を前提として、測定可能な距離を伸ばすことを企図する。
【0090】
図5は、第2の実施の形態にかかる距離測定装置たる距離画像センサの概念的な構成の一例を示す図である。本距離画像センサは、制御演算装置2の構成という点で、
図1の距離画像センサと相違する。制御演算装置2は第1の実施の形態と比較して推定部25を更に有している。
【0091】
推定部25は、遅れ時間t’の算出前に、遅れ時間t’が期間長さΔTよりも長いか否かを推定する。この推定は、受光量の大小関係を判断することで行なうことができる。以下に詳細に説明する。
【0092】
遅れ時間t’が期間長さΔTよりも短い場合には、
図3に示すように、例えば受光量A3は受光量A2よりも大きい。またこのとき、受光量A1は受光量A4よりも大きい。一方で、遅れ時間t’が期間長さΔTよりも長い場合には、
図6に示すように、例えば受光量A3は受光量A2よりも小さく、受光量A1は受光量A4よりも小さい。
【0093】
したがって、受光量A2,A3の大小関係、もしくは、受光量A1,A4の大小関係に基づいて、遅れ時間t’が期間長さΔTよりも長いかどうかを容易に推定することができる。そこで、推定部25は、受光量A2,A3との大小関係もしくは受光量A1,A4の大小関係を判断する。この大小関係の判断は、例えば周知の比較器を用いて行なうことができる。そして推定部25は、受光量A3が受光量A2よりも大きい、もしくは、受光量A1が受光量A4よりも大きいと判断したときに、遅れ時間t’が期間長さΔtよりも短いと推定する。このとき、算出部24は、第1の実施の形態と同様にして、式(5)を用いて遅れ時間t’を算出する。
【0094】
他方、遅れ時間t’が期間長さΔTよりも長いと推定部25が推定したときには、算出部24は、以下で説明するように遅れ時間t’を算出する。
【0095】
遅れ時間t’が期間長さΔTよりも長いときには、
図6に例示するように、期間T1において光L4は常に小さな値を採っている。つまり、期間T1における受光量A1には、反射光L2による受光量が含まれず、受光量A1は周囲光L3による受光量である。よって、各期間T2〜T4における受光量A2〜A4の各々から受光量A1を減算することで、各期間T2〜T4において、周囲光L3の影響を除去した受光量を得ることができる。
【0096】
また
図6に示すように、反射光L2は、期間T3の途中で立ち上がり、期間T4の途中で立ち下がり、期間T2において常に大きな値を採っている。
【0097】
したがって、
図6の受光量A2,A3,A4は
図3の受光量A3,A1,A2に相当し、また、
図6の受光量A1は
図3の受光量A4に相当する。
【0098】
このような対応関係を考慮すると、遅れ時間t’が期間長さΔTよりも大きいときには、式(5)は以下のように表現できる。
【0099】
t’=ΔT・(A2−A3+A4−A1)/{2・(A2−A1)} ・・・(13)
【0100】
ただし、式(13)を用いて算出される時間t’は、
図6の時間t1,t2の平均値である。つまり、期間T3の始期から、反射光L2の立ち上がりの中央時点までの時間t1と、期間T4の始期から、反射光L2の立ち下がりの中央時点までの時間t2との平均値である。よって、
図6から理解できるように、式(13)を用いて算出した時間に、期間長さΔTを加算することで、遅れ時間t’を算出することができる。これを定式化すると、次式が導かれる。
【0101】
t’=ΔT+ΔT・(A2-A3+A4-A1)/{2・(A2-A1)} ・・・(14)
【0102】
以上のように、遅れ時間t’が期間長さΔTよりも短いと推定部25が推定したときには、算出部24は式(5)を用いて遅れ時間t’を算出し、遅れ時間t’が期間長さΔTよりも長いと推定部25が推定したときには、算出部24は、式(14)を用いて、遅れ時間t’を算出する。
【0103】
これにより、遅れ時間t’が期間長さΔTよりも長いときにも、遅れ時間t’を適切に算出でき、測定可能な距離を、例えばc・ΔTまで伸ばすことができる。
【0104】
第3の実施の形態.
第2の実施の形態では、遅れ時間t’が期間長さΔTの2倍よりも長いときには、適切に遅れ時間t’を算出することができない。そこで、第3の実施の形態では、測定可能な距離をさらに伸ばすことを企図する。
【0105】
第3の実施の形態にかかる距離測定装置たる距離画像センサの概念的な構成の一例は、第2の実施の形態と同様である。ただし、推定部25は、遅れ時間t’の算出前に、遅れ時間tが期間長さΔTの2倍よりも長いかどうかも、推定する。
【0106】
図3,6に示すように、遅れ時間t’が期間長さΔTの2倍よりも短いときには、受光量A4は受光量A2よりも小さいのに対して、
図7に例示すように、遅れ時間t’が期間長さΔtの2倍よりも長いときには、受光量A4は受光量A2よりも大きい。よって、受光量A2,A4の大小関係の比較に基づいて、遅れ時間t’が期間長さΔTの2倍よりも長いかどうかを容易に推定することができる。そこで、推定部25は、例えば受光量A2,A4の大小関係も判断する。この大小関係の判断も、周知の比較器を用いて実現することができる。
【0107】
そして、受光量A4が受光量A2よりも小さいときに、推定部25は遅れ時間t’が期間長さΔTの2倍よりも小さいと推定する。このとき算出部24は、第2の実施の形態で説明したように、適宜に式(5)または式(14)を用いて遅れ時間t’を算出する。
【0108】
一方で、受光量A4が受光量A2よりも大きいときには、推定部25は遅れ時間t’が期間長さΔT2の2倍よりも大きいと推定する。このとき算出部24は以下の式のいずれかを用いて遅れ時間t’を算出する。
【0109】
t’=2・ΔT+ΔT・(A2−A1)/(A4−A1) ・・・(15)
t’=2・ΔT+ΔT・(A2−A3)/(A4−A3) ・・・(16)
【0110】
式(15)および式(16)の右辺の第2項は、
図7の時間t1に相当する。時間t1は、期間T2の始期から、反射光L2の立ち上がりの中央時点までの時間である。
【0111】
つまり、遅れ時間t’が期間長さΔTの2倍よりも長いときには、時間t1,t2の平均値を用いずに、時間t1をそのまま用いている。よって、このとき第1の実施の形態で説明した効果は招来しない。要するに、第3の実施の形態では、遅れ時間t’が期間長さΔTの2倍よりも長いときには、精度を犠牲にして、測定可能な距離を伸ばしているのである。このとき、測定可能な距離は、例えばc・ΔT・3/2まで伸ばすことができる。
【0112】
なお、遅れ時間t’が期間長さΔTの3倍よりも長いときには、受光量A1〜A3は全て同じ値を採るので、式(15)および式(16)を用いれば遅れ時間t’は零となる。よって算出した遅れ時間t’がほぼ零とみなせる場合には、制御演算装置2は、距離を測定できないと判断してもよい。
【0113】
第4の実施の形態.
第1から第3の実施の形態では、一つの受光素子Pkで得られる受光量A1〜A4を用いて、距離を算出する場合について説明した。第4の実施の形態では、第1から第3の実施の形態で説明した距離Rの算出方法を、複数の受光素子Pkに対して適用する方法について説明する。
【0114】
ここでは、複数の受光素子Pkは、
図2に示すように、マトリックス状に配置されている。
図1および
図5も参照して、複数の受光素子Pkは、行デコーダ13によって、行毎に選択され、列デコーダ14によって、選択された受光素子Pkの受光量が列毎に相関二重サンプリング部15へと送られる。
【0115】
さてここでは、受光素子Pkごとに受光量A1〜A4を取得する必要がある。そして、1回の略矩形波状の照射光L1を用いて、全ての受光素子Pkの受光量A1〜A4を取得することは困難であるので、照射装置3は繰り返し略矩形波状の照射光L1を照射する。以下では、照射光L1の周期を照射周期とも呼ぶ。
【0116】
そして、例えば受光素子Pkの各々に対して、4つのゲート電極と、これら4つのゲート電極に対応する感度部とを設ける。この感度部は、対応するゲート電極に電圧が印加されることで、受光する光に応じた量の電荷を蓄積する。このような受光素子PkはいわゆるCCDを採用して製造することができる。
【0117】
図8は、照射光L1と、ゲート電極に印加されるゲート電圧V1〜V4の一例を模式的に示している。行デコーダ13は、照射周期T11において、例えば受光素子Pkの第1行を選択し、期間T1〜T4において、選択された受光素子Pkのゲート電極にそれぞれゲート電圧V1〜V4を印加する。これにより、第1行の受光素子Pkの各感度部には、受光量A1〜A4に応じた電荷が蓄積されることとなる。
【0118】
蓄えられた電荷は、列デコーダ14によって、相関二重サンプリング部15へと出力され、選択された受光素子Pkの受光量A1〜A4(電荷)が、増幅部16およびAD変換部17を介して制御演算装置2へと出力される。
【0119】
そして、次の照射周期T12において、行デコーダ13は、第2列の受光素子Pkを選択し、照射周期T12内の期間T1〜T4において、それぞれ第2列の受光素子Pkのゲート電極にそれぞれゲート電圧V1〜V4を印加する。これにより、第2列の受光素子Pkの各感度部には、受光量A1〜A4に応じた電荷が蓄積されることになる。
【0120】
蓄えられた電荷は、列デコーダ14によって、相関二重サンプリング部15へと出力され、選択された受光素子Pkの受光量A1〜A4(電荷)が、増幅部16およびAD変換部17を介して制御演算装置2へと出力される。
【0121】
次の照射周期T13,T14,・・・においても、順次に選択すべき行を異ならせながら、上述のように受光量A1〜A4を制御演算装置2へと出力する。これにより、全ての受光素子Pkの受光量A1〜A4が制御演算装置2へと出力される。
【0122】
そして、算出部24は、受光素子Pk毎に得られた受光量A1〜A4を用いて、第1〜第3の実施の形態で説明したように、受光素子Pk毎に距離を算出する。
【0123】
なお上述の例では、受光素子Pkごとに4つの感度部を設けているものの、これに限らない。例えば受光素子Pkが例えばSMPDである場合、受光素子群11とは異なる領域に4つのコンデンサを設けても良い。これらのコンデンサは、例えば相関二重サンプリング部15に設けることができる。
図9は、一つの受光素子Pkが示されている。この一つの受光素子Pkが行デコーダ13によって選択されると、受光する光に応じて、IV変換部18へと電流を流す。IV変換部18は、入力された電流を電圧に変換して、相関二重サンプリング部15へと出力する。
【0124】
相関二重サンプリング部15には、受光量用の、4つのスイッチS1〜S4と、4つのコンデンサC1〜C4とが設けられている。スイッチS1〜S4は例えばタイミング制御部12によって制御される。よってタイミング制御部12を、スイッチS1〜S4を制御する制御部と把握することができる。
【0125】
スイッチS1およびコンデンサC1は互いに直列に接続されており、スイッチS1がオンすると、IV変換部18からの電圧がコンデンサC1に充電される。スイッチS2およびコンデンサC2、スイッチS3およびコンデンサC3、並びに、スイッチS4およびコンデンサC4も同様である。
【0126】
この4つのスイッチS1〜S4のうち一つのみが、期間T1〜T4の各々において、オンする。また期間T1〜T4においてオンするスイッチは互いに異なる。これにより、各コンデンサC1〜C4には、それぞれ受光量A1〜A4に応じた電圧が充電される。
【0127】
これら4つのコンデンサC1〜C4の電圧は、それぞれスイッチS10を介して、増幅部16に入力される。スイッチS10は、例えばタイミング制御部12によって制御され、コンデンサC1〜C4の電圧のうちいずれか一つを、選択的に増幅部16へと入力させる。
【0128】
また相関二重サンプリング部15には、リセット用の、スイッチS0およびコンデンサC0が設けられている。このスイッチS0は例えばタイミング制御部12によって制御され、例えばIV変換部18がリセット状態のときにオンする。よってリセット用のコンデンサC0には、受光素子Pkが光を受光していないときに流れる電流によって、電圧が充電される。このリセット用のコンデンサC0の電圧は、スイッチS10を介して、増幅部16に入力される。
【0129】
増幅部16は差動アンプであり、コンデンサC1〜C4の電圧のうちいずれか一つの電圧が選択的に入力され、またコンデンサC0の電圧が入力される。増幅部16は、各コンデンサC1〜C4のいずれか一つの電圧から、コンデンサC0の電圧を減算して、その結果を増幅して出力する。これにより、IV変換部18のオフセットバラツキによる影響を除去することができる。
【0130】
増幅部16からの出力はAD変換部17に入力される。AD変換部17は、入力されるアナログ値(コンデンサの電圧)をデジタル値に変換して、これを制御演算装置2へと出力する。
【0131】
かかる構造によれば、上述したゲート電極と感度部に相当する部分を、スイッチS1〜S4およびコンデンサC1〜C4として機能させていているのである。この構造による動作の一例は
図8と同様であり、ゲート電圧V1〜V4をスイッチS1〜S4のスイッチ信号とみなせばよい。
【0132】
これによっても、制御演算装置2は、受光素子Pk毎に、受光量A1〜A4を受け取ることができる。しかも、受光素子Pkごとに4つのゲート電極を設ける必要がないので、製造コストを低減することができる。
【0133】
図9の例示では、4つのスイッチS1〜S4と4つのコンデンサC1〜C4が設けられているものの、一つのスイッチと一つのコンデンサとが設けられても良い。この一つのコンデンサは、例えば相関二重サンプリング部15に設けることができる。
図10は、一つの受光素子Pkが示されている。相関二重サンプリング部15には、受光量用の、一つのスイッチS1と、一つのコンデンサC1とが設けられている。また相関二重サンプリング部15には、
図9と同様に、リセット用の、スイッチS0およびコンデンサC0が設けられている。
【0134】
図11は、タイミングチャートの一例を示す図である。かかる構造において、照射制御部22は、照射装置3を制御して、略矩形波状の照射光L1を繰り返し照射させる。そして、略矩形波状の照射光L1を照射するごとに、それぞれ、受光量A1〜A4のいずれかに応じた電圧を、コンデンサC1に充電させる。例えば最初の照射周期T11内の期間T1において、スイッチS1をオンする。これにより、受光量用のコンデンサC1には受光量A1に応じた電圧が充電される。
【0135】
なおここでは、受光素子Pkの列ごとに、スイッチS1とコンデンサC1とが設けられている。そして、行デコーダ13によって選択された受光素子Pkの受光量A1に応じた電圧が、それぞれに対応するコンデンサC1に充電される。
【0136】
これらの電圧は、増幅部16およびAD変換部17を介して、受光量A1として制御演算装置2に出力される。これにより、行デコーダ13によって選択された受光素子Pkの受光量A1をそれぞれ取得することができる。そして、この電圧が制御演算装置2に出力された後に、コンデンサC1に充電された電圧を、放電部151を用いて放電する。放電部151は例えば互いに直列に接続された放電用スイッチと抵抗とを有し、この直列接続体がコンデンサC1に並列に接続される。この放電用スイッチをオンすることで、コンデンサを放電させることができる。
【0137】
次の照射周期T12では、例えば、期間T3においてスイッチS1をオンする。これにより、コンデンサC1には受光量A3に応じた電圧が充電される。この電圧も、増幅部16およびAD変換部17を介して、受光量A3として制御演算装置2に出力される。これにより、行デコーダ13によって選択された受光素子Pkの受光量A2をそれぞれ取得することができる。そして、コンデンサC1を放電する。
【0138】
同様にして、3番目の照射周期T13および4番目の照射周期T14において、それぞれ受光量A2,A4を制御演算装置2へと出力する。これにより、選択された行の受光素子Pkごとに、受光量A2,A4を得ることができる。
【0139】
そして、受光素子Pkを行毎に順次に選択し、上述のようにして各受光素子Pkの受光量A1〜A4を制御演算装置2へと出力する。
【0140】
このような動作により、全ての受光素子Pkの受光量A1,A3,A2,A4を取得することができる。したがって、受光素子Pkごとに距離を算出することができる。しかもこの方法では、受光量用のスイッチおよびコンデンサがそれぞれ1つずつで足りるので、受光量用のスイッチおよびコンデンサの個数を低減することができる。
【0141】
ただし、異なる照射周期T11〜T14毎に受光量A1〜A4を得ているので、測定対象が動いていれば、算出した距離に誤差が生じやすい。一方で、
図9のように4つのスイッチS1〜S4および4つのコンデンサC1〜C4を設ける態様によれば、一つの照射周期において受光量A1〜A4を取得できるので、当該誤差を低減できる。
【0142】
なお
図11の例示では、行毎に受光量A1〜A4を取得している。しかるにこれに限らず、フレーム毎に受光量A1〜A4を得ても良い。即ち、照射周期T11において、第1行の受光素子Pkの受光量A1を取得し、照射周期T12において第2行の受光素子Pkの受光量A1を取得し、・・・、第Nの照射周期において第N行の受光素子Pkの受光量A1を取得する。これにより、受光量A1についてのフレームデータを得ることができる。そして、第(N+1)の照射周期から第2Nの照射周期において、各行の受光素子Pkの受光量A3を取得し、受光量A3についてのフレームデータを取得する。以下、同様にして、受光量A2,A4についてのフレームデータを取得する。
【0143】
これによっても、受光素子Pkごとに受光量A1〜A4を取得することができる。しかも、フレームデータを取得する従来の撮像装置の技術を流用できるので、簡単である。
【0144】
一方で、一つの行の受光素子Pkについての受光量A1〜A4を取得した後に、次の行の受光素子Pkについての受光量A1〜A4を取得する場合には、受光量A1〜A4を取得するのに要する時間が比較的短くなる。よって、上記誤差を比較的小さくすることができる。
【0145】
また、4つの受光量A1〜A4が取得された受光素子Pkに対して、速やかに距離を算出すれば、距離を算出した受光素子Pkの受光量A1〜A4を記録部23から削除してもよく、あるいは他の受光素子Pkの受光量A1〜A4を上書きしてもよい。この場合、
図11のように、行毎に受光量A1〜A4を取得することが望ましい。なぜなら、例えば第1行の受光素子Pkについて距離を算出すれば、続けて取得される他の行の受光素子Pkの受光量A1〜A4を上書きできるからである。これにより、必要な記憶容量を低減できる。なお、フレームデータ毎に受光量A1〜A4を取得する場合、全ての受光素子Pkについて、受光量A1〜A4を記憶する必要がある。
【0146】
第5の実施の形態.
第1から第4の実施の形態では、期間T1〜T4における受光により受光量A1〜A4の受光量を得ている。しかるに、各期間T1〜T4のみにおける受光では、受光量A1〜A4が十分に取得できない可能性がある。例えば、照射光L1の強度が小さい場合、受光素子Pkの感度が低い場合、或いは、測定対象の反射率が低い場合に、十分な受光量を取得できない可能性がある。
【0147】
そこで、略矩形波状の照射光L1を繰り返し照射し、複数の照射周期の各々における期間T1において、受光素子Pkが光L4(或いは反射光L2)を受光し続ける。これにより、照射周期において複数周期分の受光量A1を取得する。受光量A2〜A4についても同様である。
【0148】
図12は、タイミングチャートの一例を示している。ここでは、
図9の構造を例に挙げて説明する。照射周期T11のうち期間T1〜T4では、それぞれスイッチS1〜S4をオンする。これにより、各コンデンサC1〜C4には受光量A1〜A4に応じた電圧が充電される。続く照射周期T12のうち期間T1〜T4においても、それぞれスイッチS1〜S4をオンする。照射周期T11,T12においては、コンデンサC1〜C4を放電させないので、コンデンサC1〜C4には、照射周期において二周期分の受光量A1〜A4に応じた電圧が充電される。
【0149】
図12の例示では、続く照射周期T13,T14でも、期間T1〜T4においてそれぞれ、スイッチS1〜S4をオンする。これにより、コンデンサC1〜C4には、4周期分の受光量A1〜A4に応じた電圧が充電される。
【0150】
これにより、受光量A1〜A4に応じた電圧を向上することができ、測定精度を向上することができる。
【0151】
上述の例では、略矩形波の照射光L1を4回照射したときに得られる受光量を用いている。しかしながら、照射回数(以下、測定照射回数と呼ぶ)は、4回に限らない。要するに、十分な受光量(或いは反射光量)を得ることができる回数であればよい。ここでは照射回数の決定方法について述べる。
【0152】
さて、
図3を参照して、受光量A1,A2(或いは反射光量a1,a2)は遅れ時間tに依存するのに対して、受光量A3(或いは反射光量a3、以下同様)(
図3参照)は遅れ時間tに依存しない。そこで、この受光量A3を用いて、照射回数(照射周期)を決定する。
【0153】
より詳細には、略矩形波の照射光L1を複数回照射する。そして、その複数の照射周期についての期間T3の各々において、反射光L2を積算して受光する。このようにして得られた受光量を、照射周期毎に、所定の基準値と比較する。得られた受光量が基準値よりも小さいときには、次の照射周期についての期間T3において反射光L2を積算して受光し、得られた受光量と基準値とを再び比較する。そして、得られた受光量が基準値を超えたときには、その照射回数を測定照射回数に決定する。
【0154】
以下に、より具体的な構成について説明する。
図13は、一つの受光素子に相当する部分の概念的な構成の一例を示す図である。
図13の例示では、
図10に比較して、比較部19が更に設けられている。この比較部19には、基準値Vrefと、コンデンサC1の両端電圧V1とが入力される。比較部19は両端電圧V1と基準値Vrefとの大小関係を比較し、その結果を制御演算部2へと出力する。
【0155】
図14は、タイミングチャートの一例を示している。照射制御部22は照射装置3に略矩形波の照射光L1を繰り返し照射させる。そして、各照射周期T11〜T14についての期間T3の各々においてスイッチS1をオンする。このスイッチS1のオンのたびに、コンデンサC1の両端電圧V1は増大する。
図14の例示では、4回目の照射周期T14において両端電圧V1(即ち4回分の受光量A3に応じた両端電圧V1)が基準値Vrefを超える。よってこのとき、比較部19は両端電圧V1が基準値Vrefを超えた旨を出力する。
【0156】
そして、これをトリガとして、4回分の受光量A3に応じた両端電圧V1を、増幅器16およびAD変換部17を介して制御演算部2へと出力する。この出力(両端電圧V1の読出し)のタイミングは、例えばタイミング制御部12によって実行されればよい。タイミング制御部12は例えば上述の測定照射回数を、比較部19の結果と、クロック信号CLKとから得ることができる。
【0157】
続いて、放電部151を用いて両端電圧V1を放電する。その後の4回の照射周期についての期間T1において、反射光L2を積算して受光する(即ち、スイッチS1をオンして4回分の受光量A1に応じた電圧をコンデンサC1に充電させる)。得られた受光量A1(両端電圧V1)は、増幅器16およびAD変換部17を介して制御演算部2へと出力される。受光量A3,A4についても同様である。
【0158】
以上のように、遅れ時間tには依存しない受光量A3を用いて、測定照射回数を決定しているので、たとえ測定対象の反射率が小さいときであっても、適切に測定照射回数を設定することができ、ひいては十分な受光量を得ることができる。
【0159】
なお第1の実施の形態で述べたように、必ずしも期間T1〜T4における受光量A1〜A4を用いる必要はなく、受光素子Pkが期間T1〜T3における反射光量a1〜a3を受光できる場合には、反射光量a1〜a3を用いればよい。
【0160】
また、受光素子Pkが複数設けられている場合には、いずれかの受光素子Pkについての受光量A3が基準値を超えたときの照射回数を、測定照射回数に決定すればよい。全ての受光素子Pkの受光量A3が基準値を超えるときの照射回数を、照射測定回数に決定すると、いくつかの受光素子Pkの受光量A3が、受光可能な上限値を超える場合があるからである。