(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6245936
(24)【登録日】2017年11月24日
(45)【発行日】2017年12月13日
(54)【発明の名称】反転機および反転方法
(51)【国際特許分類】
B66C 13/08 20060101AFI20171204BHJP
【FI】
B66C13/08 R
【請求項の数】4
【全頁数】8
(21)【出願番号】特願2013-219852(P2013-219852)
(22)【出願日】2013年10月23日
(65)【公開番号】特開2015-81175(P2015-81175A)
(43)【公開日】2015年4月27日
【審査請求日】2016年9月8日
(73)【特許権者】
【識別番号】000001133
【氏名又は名称】株式会社小糸製作所
(74)【代理人】
【識別番号】100105924
【弁理士】
【氏名又は名称】森下 賢樹
(74)【代理人】
【識別番号】100109047
【弁理士】
【氏名又は名称】村田 雄祐
(74)【代理人】
【識別番号】100109081
【弁理士】
【氏名又は名称】三木 友由
(72)【発明者】
【氏名】関口 元
【審査官】
今野 聖一
(56)【参考文献】
【文献】
特開平01−317906(JP,A)
【文献】
特開2000−289976(JP,A)
【文献】
特開2007−038495(JP,A)
【文献】
米国特許第06547509(US,B1)
【文献】
独国特許出願公告第02727952(DE,B1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B66C 13/00 − 15/06
B65G 7/08
B66F 7/22
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
被反転物を反転させる反転機であって、
ベースと、
前記被反転物を固定するための固定部を備える面板と、
一方の端部が前記ベースに第1軸を介して回転可能に支持され、他方の端部が前記面板に第2軸を介して回転可能に支持された支柱と、
前記面板における前記被反転物が搭載される面上に立設された支持脚と、
前記面板における前記第2軸と対向する位置に設けられた、前記面板を吊り上げるための吊り上げ支点と、
を備えることを特徴とする反転機。
【請求項2】
前記ベースと前記支柱とが所定の角度となったときに、該角度を維持するよう前記ベースと前記支柱とをロックする固定手段をさらに備えることを特徴とする請求項1に記載の反転機。
【請求項3】
前記ベースは、前記支柱および前記面板を収容可能に構成されることを特徴とする請求項1または2に記載の反転機。
【請求項4】
請求項2に記載の反転機を用いて被反転物を反転させる反転方法であって、
前記吊り上げ支点を介して前記面板を吊り上げて、前記面板を前記支柱に対して前記第2軸周りに回転させるステップと、
前記面板をさらに吊り上げて、前記支柱を前記ベースに対して前記第1軸周りに回転させるステップと、
前記支柱が前記ベースに対して所定の角度となったとき、前記ベースと前記支柱とをロックするステップと、
前記支持脚の先端が前記ベースに当接するように、前記支柱に対して前記面板を前記第2軸周りに回転させるステップと、
を備えることを特徴とする反転方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、グラファイト電極等の重量物を反転する反転機および反転方法に関する。
【背景技術】
【0002】
一般的に、車両用灯具のランプボディは、樹脂材料を所定の形状に形成された金型を用いて射出成形することにより形成される。ここで用いられる金型の製作工程には、放電加工という工程がある。放電加工では、鋼材の金型材料に対しグラファイト電極に高電圧をかけ、放電により金型材料を溶解することで、所定形状の金型が形成される。放電加工で用いられるグラファイト電極は、電極材料であるグラファイトを加工したい形状に削り出して使用するが、グラファイトを削り出す工程から金型材料に放電加工を行う工程に移行する際に、その上下を反転させる必要がある(放電加工については特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2006−205351号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、近年、車両用灯具はその内部に複数の光源を収容するケースが増えており、大型化が進んでおり、それに伴ってランプボディの金型製作に用いられるグラファイト電極も大型化・重量化が進んでいる。このような大型且つ大重量のグラファイト電極を手作業で反転させるのは容易ではなく、また安全面においても課題がある。
【0005】
本発明はこうした状況に鑑みてなされたものであり、その目的は、グラファイト電極等の重量物を安全且つ確実に反転することのできる反転機および反転方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するために、本発明のある態様の反転機は、被反転物を反転させる反転機であって、ベースと、ベースに第1軸周りに回転可能に支持された支柱と、支柱に第2軸周りに回転可能に支持され、被反転物を固定するための固定部を備える面板と、面板に立設された支持脚と、面板に設けられた、面板を吊り上げるための吊り上げ支点とを備える。
【0007】
ベースと支柱とが所定の角度となったときに、該角度を維持するようベースと支柱とをロックする固定手段をさらに備えてもよい。
【0008】
ベースは、支柱および面板を収容可能に構成されてもよい。
【0009】
本発明の別の態様は、上述の反転機を用いて被反転物を反転させる反転方法である。この方法は、吊り上げ支点を介して面板を吊り上げて、面板を支柱に対して第2軸周りに回転させるステップと、面板をさらに吊り上げて、支柱をベースに対して第1軸周りに回転させるステップと、支柱がベースに対して所定の角度となったとき、ベースと支柱とをロックするステップと、支持脚の先端がベースに当接するように、支柱に対して面板を第2軸周りに回転させるステップとを備える。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、重量物を安全且つ確実に反転することのできる反転機および反転方法を提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【
図1】本発明の実施形態に係る反転機の平面図である。
【
図2】本発明の実施形態に係る反転機の側面図である。
【
図3】本発明の実施形態に係る反転機の反転動作を説明するための図である。
【
図4】本発明の実施形態に係る反転機の反転動作を説明するための図である。
【
図5】本発明の実施形態に係る反転機の反転動作を説明するための図である。
【
図6】本発明の実施形態に係る反転機の反転動作を説明するための図である。
【
図7】本発明の実施形態に係る反転機の反転動作を説明するための図である。
【
図8】本発明の実施形態に係る反転機の反転動作を説明するための図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、図面を参照して本発明の実施形態に係る反転機について詳細に説明する。各図面に示される同一または同等の構成要素、部材、処理には、同一の符号を付するものとし、適宜重複した説明は省略する。また、実施の形態は、発明を限定するものではなく例示であって、実施の形態に記述されるすべての特徴やその組み合わせは、必ずしも発明の本質的なものであるとは限らない。
【0013】
図1は、本発明の実施形態に係る反転機10の平面図である。
図2は、本発明の実施形態に係る反転機10の側面図である。
図1および
図2に示す反転機10は、被反転物100を上下反転(すなわち180°回転)させるための装置である。被反転物100は、本明細書ではグラファイト電極等の重量物を想定しているが、その種類は特に限定されない。
【0014】
反転機10は、ベース11と、第1支柱12と、第2支柱13と、面板14と、第1支持脚15と、第2支持脚16とを備える。
【0015】
ベース11は、4つの角柱状部材(第1辺部11a、第2辺部11b、第3辺部11cおよび第4辺部11d)から構成される。これら4つの辺部は、平面視において長方形状の枠体を形成している。この枠体においては、第1辺部11aと第2辺部11bが対向しており、第3辺部11cと第4辺部11dが対向している。
【0016】
第1支柱12および第2支柱13は、角柱状部材から構成される。第1支柱12および第2支柱13は、被反転物100の高さよりも十分に長いことが好ましい。第1支柱12は、その一方の端部において、第1連結部材17を介して第1辺部11aに支持されている。第1支柱12は、第1辺部11aに対し第1連結部材17周りに回転可能である。第2支柱13は、その一方の端部において、第2連結部材18を介して第2辺部11bに支持されている。第2支柱13は、第2辺部11bに対し第2連結部材18周りに回転可能である。以下においては適宜、第1連結部材17および第2連結部材18をまとめて「第1軸部材20」と呼ぶ。
【0017】
面板14は、平面視において長方形状の板状体であり、被反転物100が搭載される。被反転物100はボルト等の固定部材(図示せず)を用いて面板14上に固定される。
図1に示すように、面板14には、ボルト等の固定部材を挿入するための孔19が形成されている。本実施形態では、様々な大きさの被反転物100に対応できるよう、複数の孔19がマトリクス状に形成されている。
【0018】
面板14は、第2軸部材21を介して第1支柱12および第2支柱13に支持されている。面板14は、その一辺(「第1辺14a」と呼ぶ)の周辺において、面板取付部材22により第2軸部材21に取り付けられている。面板取付部材22は、左右にスライド可能であることが好ましい。第2軸部材21は、第1支柱12および第2支柱13の他方の端部に取り付けられている。面板14は、第1支柱12および第2支柱13に対し、第2軸部材21周りに回転可能である。
【0019】
第1支持脚15および第2支持脚16は、角柱状部材から構成される。第1支持脚15および第2支持脚16は、被反転物100の高さよりも十分に長いことが好ましい。第1支持脚15および第2支持脚16は、面板14上に立設されている。すなわち、第1支持脚15および第2支持脚16は、面板14に対して垂直に設けられている。第1支持脚15および第2支持脚16の立設位置は、第1辺14aと対向する第2辺14bの周辺である。また、この第2辺14bの周辺には、第1吊具23および第2吊具24が設けられている。これらの第1吊具23および第2吊具24は、クレーンよって面板14を吊り上げる際の吊り上げ支点となる。
【0020】
さらに、本実施形態に係る反転機10は、ベース11の第1辺部11a、第2辺部11bにそれぞれ、第1固定フック25、第2固定フック26を備える。第1固定フック25は、第1辺部11aと第1支柱12とが所定の角度となったときに、該角度を維持するよう第1辺部11aと第1支柱12とをロックするよう構成されている。同様に、第2固定フック26は、第2辺部11bと第2支柱13とが所定の角度となったときに、該角度を維持するように第1辺部11aと第1支柱12とをロックするよう構成されている。
【0021】
図1および
図2は、反転動作開始前の反転機10を図示している。
図1および
図2に示すように、枠体であるベース11は、反転動作開始前において、第1支柱12、第2支柱13および面板14等を内部に収容可能に構成されている。
【0022】
図3〜
図8は、本発明の実施形態に係る反転機10の反転動作を説明するための図である。本実施形態に係る反転機10の反転動作は、クレーン110を用いて行われる。
【0023】
図3は、反転動作開始前の反転機10を示す。ベース11が平らな床面上に設置され、面板14上には被反転物100が搭載されている。また、第1吊具23および第2吊具24には、面板14をクレーン110で吊り上げるためのワイヤ112が取り付けられている。上述したように、第1吊具23および第2吊具24は、面板を吊り上げるための吊り上げ支点となる。
【0024】
反転動作開始後、まず
図4に示すようにクレーン110を右斜め上方に移動させる。これにより、ワイヤ112を介して面板14の第2辺14bが吊り上げられ、面板14は第1支柱12および第2支柱13に対して第2軸部材21周りに時計回りに回転される。この段階では、第1支柱12および第2支柱13は移動せず、ベース11内に収容されたままである。クレーン110は、面板14がベース11に対して垂直になるまで右斜め上方に移動される。
【0025】
面板14がベース11に対して垂直になった後、今度は
図5に示すようにクレーン110を左斜め上方に移動させる。これにより、面板14がさらに吊り上げられ、それに伴って第2軸部材21を吊り上げ支点として第1支柱12および第2支柱13が吊り上げられる。第1支柱12および第2支柱13は、ベース11に対して第1軸部材20周りに反時計回りに回転される。
【0026】
第1支柱12および第2支柱13がベース11に対して垂直になった後、
図6に示すようにクレーン110を略水平左方向に移動させ、第1支柱12および第2支柱13がベース11に対して所定の角度θ1となるように、第1支柱12および第2支柱13を第1軸部材20周りに反時計回りに回転させる。所定の角度θ1は、例えば95°〜110°程度の鈍角であってよい。第1支柱12および第2支柱13がベース11に対して所定の角度θ1となったとき、第1支柱12および第2支柱13は、それぞれ第1固定フック25および第2固定フック26によりベース11にロックされる。すなわち、第1固定フック25および第2固定フック26により、第1支柱12および第2支柱13の第1軸部材20周りの回転(時計回りおよび反時計回りの両方)が阻止される。
【0027】
第1支柱12および第2支柱13がロックされた後、
図7に示すように、クレーン110を右斜め下方に移動させ、第1支柱12および第2支柱13に対して面板14を第2軸部材21周りに時計回りに回転させる。このとき、第1支柱12および第2支柱13はそれぞれ第1固定フック25および第2固定フック26によりロックされているので、回転が阻止され、ベース11に対して立設された状態が維持される。なお、第1固定フック25および第2固定フック26だけでは第1支柱12および第2支柱13のロックが不足する場合は、
図1、
図6〜
図8に示すようにベース11にストッパー27,28を設け、第1支柱12および第2支柱13を該ストッパー27,28に接触させることにより、さらに第1支柱12および第2支柱13の回転を阻止してもよい。
【0028】
その後、
図8に示すように第1支持脚15および第2支持脚16の先端部がベース11の第3辺部11cに当接するまで、第2軸部材21周りに時計回りに面板14を回転させる。以上で本実施形態に係る反転機10における反転動作は完了である。
【0029】
以上説明したように、本実施形態に係る反転機10によれば、手作業を介在させることなく、安全且つ確実に重量物を反転することができる。反転したときの被反転物100の姿勢は、第1支持脚15および第2支持脚16の長さを変えることで調整できる。
【0030】
また、本実施形態に係る反転機10は、使用しないときには第1支持脚15および第2支持脚16を外せば、第1支柱12、第2支柱13および面板14等をベース11の内部に収容可能である。従って、非常にコンパクトであり、保管、移動等が容易である。
【0031】
以上、実施の形態をもとに本発明を説明した。これらの実施形態は例示であり、各構成要素や各処理プロセスの組合せにいろいろな変形例が可能なこと、またそうした変形例も本発明の範囲にあることは当業者に理解されるところである。
【符号の説明】
【0032】
10 反転機、 11 ベース、 12 第1支柱、 13 第2支柱、 14 面板、 15 第1支持脚、 16 第2支持脚、 17 第1連結部材、 18 第2連結部材、 19 孔、 20 第1軸部材、 21 第2軸部材、 23 第1吊具、 24 第2吊具、 25 第1固定フック、 26 第2固定フック、 100 被反転物、 110 クレーン、 112 ワイヤ。