(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記アルキレンオキシ基を含有する変性ポリビニルアルコール系重合体のけん化度(a/a+b)が40%以上である、請求項1又は2に記載のシリコンウェーハ用研磨液組成物。
【発明を実施するための形態】
【0014】
本発明において、アルキレンオキシ基の平均総付加モル数とは、アルキレンオキシ基を含有する変性ポリビニルアルコール系重合体1分子中に含まれる、アルキレンオキシ基の総モル数の平均である。
【0015】
本発明では、水溶性高分子として、前記アルキレンオキシ基を含有する変性ポリビニルアルコール系重合体(成分c1、以下「AO変性PVA系重合体」と略称する場合もある。)又は前記スルホン酸基を含有する変性ポリビニルアルコール(成分c2、以下「スルホン酸変性PVA」と略称する場合もある。)がシリコンウェーハ用研磨液組成物(以下、「研磨液組成物」と略称する場合もある。)に含まれることにより、研磨液組成物で研磨されたシリコンウェーハの表面粗さ(ヘイズ)の低減と表面欠陥(LPD)の低減とを両立できる、という知見に基づく。
【0016】
本発明の研磨液組成物で研磨されたシリコンウェーハの表面(研磨面)における表面粗さ(ヘイズ)の低減と表面欠陥(LPD)の低減とを両立できるという、本発明の効果の発現機構の詳細は明らかではないが、出願人は、以下のように推定している。
【0017】
研磨液組成物に含まれるAO変性PVA系重合体(成分c1)の構成単位Iはシリコンウェーハと相互作用する部位である水酸基を含み、構成単位IIIはシリコンウェーハと相互作用するアルキレンオキシ基を含む。そのため、AO変性PVA系重合体(成分c1)がシリコンウェーハ表面に吸着して、含窒素塩基性化合物によるシリコンウェーハ表面の腐食、即ち、表面粗さ(ヘイズ)の上昇を抑制するとともに、良好なぬれ性を発現してシリコンウェーハ表面の乾燥により生じると考えられるシリコンウェーハ表面へのパーティクルの付着を抑制する。また、AO変性PVA系重合体(成分c1)がシリコンウェーハ表面に吸着することによってシリコンウェーハ表面の濡れ性が向上するので、シリコンウェーハ表面の研磨の均一性が向上し、故に表面粗さ(ヘイズ)が低減される。
【0018】
また、研磨液組成物にスルホン酸変性PVA(成分c2)が含まれる場合、ポリビニルアルコールの水酸基がシリコンウェーハと相互作用することにより、スルホン酸変性PVA(成分c2)がシリコンウェーハ表面に適度に吸着して、含窒素塩基性化合物によるシリコンウェーハ表面の腐食、即ち、表面粗さ(ヘイズ)の上昇を抑制するとともに、良好なぬれ性を発現してシリコンウェーハ表面の乾燥により生じると考えられるシリコンウェーハ表面へのパーティクルの付着を抑制する。また、スルホン酸変性PVA(成分c2)がシリコンウェーハ表面に吸着することによってシリコンウェーハ表面の濡れ性が向上するので、シリコンウェーハ表面の研磨の均一性が向上し、故に、表面粗さ(ヘイズ)が低減される。
【0019】
また、AO変性PVA系重合体(成分c1)及びスルホン酸変性PVA(成分c2)は、HECに含まれるような原料由来の水不溶物を含まないので、AO変性PVA系重合体(成分c1)及びスルホン酸変性PVA(成分c2)をHECに代えて用いれば、当該水不溶物自体の存在に起因する表面欠陥(LPD)の増大は生じない。
【0020】
このように、本発明では、特定のAO変性PVA系重合体(成分c1)及びスルホン酸変性PVA(成分c2)のうちのいずれか一方の水溶性高分子を含むことにより、シリコンウェーハの表面粗さ(ヘイズ)の低減と表面欠陥(LPD)の低減の両立が実現されているものと推定している。但し、本発明はこれらの推定に限定されるものではない。
【0021】
[シリカ粒子(成分A)]
本発明の研磨液組成物には、研磨材としてシリカ粒子が含まれる。シリカ粒子の具体例としては、コロイダルシリカ、フュームドシリカ等が挙げられるが、シリコンウェーハの表面平滑性を向上させる観点から、コロイダルシリカがより好ましい。
【0022】
シリカ粒子の使用形態としては、操作性の観点からスラリー状が好ましい。本発明の研磨液組成物に含まれる研磨材がコロイダルシリカである場合、アルカリ金属やアルカリ土類金属等によるシリコンウェーハの汚染を防止する観点から、コロイダルシリカは、アルコキシシランの加水分解物から得たものであることが好ましい。アルコキシシランの加水分解物から得られるシリカ粒子は、従来から公知の方法によって作製できる。
【0023】
本発明の研磨液組成物に含まれるシリカ粒子の平均一次粒子径は、研磨速度の確保の観点から、5nm以上が好ましく、10nm以上がより好ましく、15nm以上が更に好ましく、30nm以上が更により好ましい。また、シリカ粒子の平均一次粒子径は、研磨速度の確保と、シリコンウェーハの表面粗さ(ヘイズ)の低減と表面欠陥(LPD)の低減の両立の観点から、50nm以下が好ましく、45nm以下がより好ましく、40nm以下が更に好ましい。
【0024】
特に、シリカ粒子としてコロイダルシリカを用いた場合には、平均一次粒子径は、研磨速度の確保の観点から、5nm以上が好ましく、10nm以上がより好ましく、15nm以上が更に好ましく、30nm以上が更により好ましい。また、コロイダルシリカの平均一次粒子径は、研磨速度の確保と、シリコンウェーハの表面粗さ(ヘイズ)の低減と表面欠陥(LPD)の低減の両立の観点から、50nm以下が好ましく、45nm以下がより好ましく、40nm以下が更に好ましい。
【0025】
シリカ粒子の平均一次粒子径は、BET(窒素吸着)法によって算出される比表面積S(m
2/g)を用いて算出される。比表面積は、例えば、実施例に記載の方法により測定できる。
【0026】
シリカ粒子の会合度は、研磨速度の確保、及びシリコンウェーハの表面粗さ(ヘイズ)の低減と表面欠陥(LPD)の低減の両立の観点から、3.0以下が好ましく、1.1〜3.0がより好ましく、1.8〜2.5が更に好ましく、2.0〜2.3が更により好ましい。シリカ粒子の形状はいわゆる球型といわゆるマユ型であることが好ましい。シリカ粒子がコロイダルシリカである場合、その会合度は、研磨速度の確保、及びシリコンウェーハの表面粗さ(ヘイズ)の低減と表面欠陥(LPD)の低減の両立の観点から、3.0以下が好ましく、1.1〜3.0がより好ましく、1.8〜2.5が更に好ましく、2.0〜2.3が更により好ましい。
【0027】
シリカ粒子の会合度とは、シリカ粒子の形状を表す係数であり、下記式により算出される。平均二次粒子径は、動的光散乱法によって測定される値であり、例えば、実施例に記載の装置を用いて測定できる。
会合度=平均二次粒子径/平均一次粒子径
【0028】
シリカ粒子の会合度の調整方法としては、特に限定されないが、例えば、特開平6−254383号公報、特開平11−214338号公報、特開平11−60232号公報、特開2005−060217号公報、特開2005−060219号公報等に記載の方法を採用することができる。
【0029】
本発明の研磨液組成物に含まれるシリカ粒子の含有量は、シリコンウェーハの研磨速度の確保の観点から、SiO
2換算で、0.01質量%以上であり、0.07質量%以上が好ましく、0.10質量%以上がより好ましい。また、本発明の研磨液組成物に含まれるシリカ粒子の含有量は、シリコンウェーハの表面粗さ(ヘイズ)の低減と表面欠陥(LPD)の低減の両立の観点から、SiO
2換算で、0.5質量%以下であり、0.3質量%以下が好ましく、0.2質量%以下がより好ましい。
【0030】
[含窒素塩基性化合物(成分B)]
本発明の研磨液組成物は、研磨液組成物の保存安定性の向上、研磨速度の確保、及びシリコンウェーハの表面粗さ(ヘイズ)の低減と表面欠陥(LPD)の低減の両立の観点から、水溶性の塩基性化合物を含有する。水溶性の塩基性化合物としては、アミン化合物及びアンモニウム化合物から選ばれる少なくとも1種類以上の含窒素塩基性化合物である。ここで、「水溶性」とは、水に対して2g/100ml以上の溶解度を有することをいい、「水溶性の塩基性化合物」とは、水に溶解したとき、塩基性を示す化合物をいう。
【0031】
アミン化合物及びアンモニウム化合物から選ばれる少なくとも1種類以上の含窒素塩基性化合物としては、例えば、アンモニア、水酸化アンモニウム、炭酸アンモニウム、炭酸水素アンモニウム、メチルアミン、ジメチルアミン、トリメチルアミン、エチルアミン、ジエチルアミン、トリエチルアミン、モノエタノールアミン、ジエタノールアミン、トリエタノールアミン、N一メチルエタノールアミン、N−メチル−N,N一ジエタノ−ルアミン、N,N−ジメチルエタノールアミン、N,N−ジエチルエタノールアミン、N,N−ジブチルエタノールアミン、N−(β−アミノエチル)エタノ−ルアミン、モノイソプロパノールアミン、ジイソプロパノールアミン、トリイソプロパノールアミン、エチレンジアミン、ヘキサメチレンジアミン、ピペラジン・六水和物、無水ピペラジン、1−(2−アミノエチル)ピペラジン、N−メチルピペラジン、ジエチレントリアミン、及び水酸化テトラメチルアンモニウムが挙げられる。これらの含窒素塩基性化合物は2種以上を混合して用いてもよい。本発明の研磨液組成物に含まれ得る含窒素塩基性化合物としては、シリコンウェーハの表面粗さ(ヘイズ)の低減と表面欠陥(LPD)の低減の両立の観点、研磨液組成物の保存安定性の向上、及び、研磨速度の確保の観点からアンモニアがより好ましい。
【0032】
本発明の研磨液組成物に含まれる含窒素塩基性化合物の含有量は、シリコンウェーハの表面粗さ(ヘイズ)の低減と表面欠陥(LPD)の低減の両立の観点、研磨液組成物の保存安定性の向上、及び研磨速度の確保の観点から、0.001質量%以上が好ましく、0.005質量%以上がより好ましく、0.007質量%以上が更に好ましく、0.010質量%以上が更により好ましく、0.012質量%以上が更により好ましい。また、含窒素塩基性化合物の含有量は、シリコンウェーハの表面粗さ(ヘイズ)の低減と表面欠陥(LPD)の低減の両立の観点から、0.1質量%以下が好ましく、0.05質量%以下がより好ましく、0.025質量%以下が更に好ましく、0.018質量%以下が更により好ましく、0.014質量%以下が更により好ましい。
【0033】
[水溶性高分子(成分C)]
本発明の研磨液組成物はシリコンウェーハの表面粗さ(ヘイズ)の低減と表面欠陥(LPD)の低減の両立の観点から、AO変性PVA系重合体(成分c1)及びスルホン酸変性PVA(成分c2)のうちのいずれか一方を含む。ここで、「水溶性」とは、水に対して2g/100ml以上の溶解度を有することをいう。
【0034】
[AO変性PVA系重合体(成分c1)]
AO変性PVA系重合体(成分c1)は、下記一般式(1)で表される構成単位Iと下記一般式(2)で表され構成単位IIと下記一般式(3)で表される構成単位IIIとを含むか、又は前記構成単位Iと前記構成単位IIIとを含む。AO変性PVA系重合体1分子中に含まれる前記構成単位Iのモル数aと前記構成単位IIのモル数bの和と、AO変性PVA系重合体1分子中に含まれる前記構成単位III中のアルキレンオキシ基の平均総付加モル数dの比[(a+b)/d]は0.8以上10以下である。
【化2】
但し、上記一般式(3)中、Yはエチレンオキシ基及びプロピレンオキシ基のうちの少なくとも1種からなるポリアルキレンオキシ基であり、R
1は水素又は炭素数が1〜4のアルキル基であり、Xはメチレン基(−CH
2−)又は結合手である。
【0035】
AO変性PVA系重合体(成分c1)は、例えば、ポリ酢酸ビニルの酢酸エステルの残基を加水分解(けん化)することにより得られたポリビニルアルコールに対して、アルキレンオキシドを反応させることにより得られる。故に、a/a+bで表されるけん化度が100である場合、AO変性PVA系重合体は、前記構成単位IIを含まず、モル数bは0であり、比[(a+b)/d]は比[a/d]で表すこともできる。
【0036】
AO変性PVA系重合体(成分c1)の前記けん化度(a/a+b)は、シリコンウェーハの表面粗さ(ヘイズ)の低減と表面欠陥(LPD)の低減の両立、及び研磨速度の確保の観点から、40%以上が好ましく、60%以上がより好ましく、80%以上が更に好ましく、90%以上が更に好ましく、100%が更により好ましい。
【0037】
前記構成単位Iのモル数aと前記構成単位IIのモル数bの和と、前記構成単位III中のアルキレンオキシドの平均総付加モル数dの比[(a+b)/d](但し、b=Oの場合も含む。)は、シリコンウェーハの表面粗さ(ヘイズ)の低減と表面欠陥(LPD)の低減の両立の観点から、0.8以上であるが、1.2以上が好ましく、1.5以上がより好ましく、2.0以上が更に好ましく、同様の観点から、10以下であり、8.0以下が好ましく、6.0以下がより好ましく、5.0以下が更に好ましい。
【0038】
上記一般式(3)中、Yは、シリコンウェーハの表面粗さ(ヘイズ)の低減と表面欠陥(LPD)の低減の両立の観点から、エチレンオキシ基及びプロピレンオキシ基のうちの少なくとも1種からなるポリアルキレンオキシ基であるが、ポリエチレンオキシ基が好ましい。
【0039】
上記一般式(3)中、R
1は、シリコンウェーハの表面粗さ(ヘイズ)の低減と表面欠陥(LPD)の低減の両立の観点から、水素又は炭素数が1〜4のアルキル基であるが、水素又は炭素数が1〜2のアルキル基が好ましく、水素がより好ましい。
【0040】
上記一般式(3)中、Xは、シリコンウェーハの表面粗さ(ヘイズ)の低減と表面欠陥(LPD)の低減の両立の観点から、メチレン基(−CH
2−)又は結合手であるが、結合手が好ましい。
【0041】
AO変性PVA系重合体(成分c1)の全構成単位中における、前記構成単位Iと構成単位IIと構成単位IIIの合計の質量割合は、シリコンウェーハの表面粗さ(ヘイズ)の低減と表面欠陥(LPD)の低減の両立の観点から、50質量%以上が好ましく、80質量%以上がより好ましく、90質量%以上が更に好ましく、実質的に100質量%が更により好ましく、100質量%が更により好ましい。
【0042】
AO変性PVA系重合体(成分c1)の全構成単位中における、前記構成単位I及び前記構成単位IIの合計の質量割合は、シリコンウェーハの研磨速度向上の観点から、40質量%以上が好ましく、50質量%以上がより好ましく、60質量%以上が更に好ましく、70質量%以上が更により好ましい。また、AO変性PVA系重合体(成分c1)の全構成単位中における、前記構成単位I及び前記構成単位IIの合計の質量割合は、シリコンウェーハの表面粗さ(ヘイズ)の低減と表面欠陥(LPD)の低減の両立の観点から、98質量%以下が好ましく、95質量%以下がより好ましく、93質量%以下が更に好ましく、90質量%以下が更により好ましい。
【0043】
AO変性PVA系重合体(成分c1)の全構成単位中における、前記構成単位IIIの質量割合は、シリコンウェーハの表面粗さ(ヘイズ)の低減と表面欠陥(LPD)の低減の両立の観点から、2質量%以上が好ましく、5質量%以上がより好ましく、7質量%以上が更に好ましく、10質量%以上が更により好ましい。また、AO変性PVA系重合体(成分c1)の全構成単位中における、前記構成単位IIIの合計の質量割合は、シリコンウェーハの研磨速度向上の観点から、60質量%以下が好ましく、50質量%以下がより好ましく、40質量%以下が更に好ましく、30質量%以下が更により好ましい。
【0044】
AO変性PVA系重合体は、構成単位I〜III以外の構成単位を含んでいてもよいが、シリコンウェーハの表面粗さ(ヘイズ)の低減と表面欠陥(LPD)の低減の両立の観点から、AO変性PVA系重合体は、構成単位が、構成単位I〜IIIのみからなるAO付加PVAが好ましい。構成単位I〜III以外の構成単位を形成する単量体成分としては、アクリル酸、メタクリル酸、スチレン、ビニルピロリドン、オキサゾリン、ポリエチレングリコールメタクリレート、アクリルアミド、ジメチルアクリルアミド、ジエチルアクリルアミド、イソプロピルアクリルアミド、ヒドロキシエチルアクリルアミドなどが挙げられる。
【0045】
AO変性PVA系重合体(成分c1)の全構成単位中における、前記構成単位I〜III以外の構成単位の質量割合は、シリコンウェーハの表面粗さ(ヘイズ)の低減と表面欠陥(LPD)の低減の両立の観点から、50質量%以下が好ましく、40質量%以下がより好ましく、20質量%以下が更に好ましく、10質量%以下が更により好ましい。
【0046】
AO変性PVA系重合体(成分c1)における各構成単位の配列は、ブロックでもランダムでもよい。
【0047】
AO変性PVA系重合体(成分c1)としては、エチレンオキサイド変性ポリビニルアルコール(EO変性PVA)、プロピレンオキサイド変性ポリビニルアルコール(PO変性PVA)、ブチレンオキサイド変性PVA(BO変性PVA)、エチレンオキサイドプロピレンオキサイド変性ポリビニルアルコール(EOPO変性PVA)、エチレンオキサイドブチレンオキサイド変性ポリビニルアルコール(EOBO変性PVA)、プロピレンオキサイドブチレンオキサイド変性ポリビニルアルコール(POBO変性PVA)が挙げられるが、シリコンウェーハの表面粗さ(ヘイズ)の低減と表面欠陥(LPD)の低減の両立の観点から、EO変性PVAが好ましい。
【0048】
AO変性PVA系重合体(成分c1)の重量平均分子量は、シリコンウェーハの表面粗さ(ヘイズ)の低減と表面欠陥(LPD)の低減の両立の観点から、0.5万以上が好ましく、1万以上がより好ましく、3万以上が更に好ましく、5万以上が更により好ましく、シリコンウェーハの表面粗さ(ヘイズ)の低減と表面欠陥(LPD)の低減の両立の観点から、25万以下が好ましく、20万以下がより好ましく、15万以下が更に好ましく、11万以下が更により好ましい。尚、AO付加PVAの重量平均分子量は後の実施例に記載の方法により測定される。
【0049】
本発明の研磨液組成物に含まれるAO変性PVA系重合体(成分c1)の含有量は、シリコンウェーハの表面粗さ(ヘイズ)の低減と表面欠陥(LPD)の低減の両立の観点から、0.001質量%以上が好ましく、0.002質量%以上がより好ましく、0.004質量%以上が更に好ましく、0.007質量%以上が更により好ましい。また、本発明の研磨液組成物に含まれるAO変性PVA系重合体(成分c1)の含有量は、シリコンウェーハの表面粗さ(ヘイズ)の低減と表面欠陥(LPD)の低減の両立の観点から、0.1質量%以下が好ましく、0.05質量%以下がより好ましく、0.035質量%以下が更に好ましく、0.030質量%以下が更により好ましい。
【0050】
本発明の研磨液組成物に含まれるシリカ粒子の含有量とAO変性PVA系重合体(成分c1)の含有量の比(成分A/成分c1)は、シリコンウェーハの研磨速度向上の観点から、1以上が好ましく、5以上がより好ましく、8以上が更に好ましく、10以上が更により好ましい。また、前記比(成分A/成分c1)は、シリコンウェーハの表面粗さ(ヘイズ)の低減と表面欠陥(LPD)の低減の両立の観点から、38以下が好ましく、30以下がより好ましく、25以下が更に好ましく、20以下が更により好ましい。
【0051】
[スルホン酸変性PVA(成分c2)]
スルホン酸変性PVA(成分c2)のけん化度は、シリコンウェーハの表面粗さ(ヘイズ)の低減と表面欠陥(LPD)の低減の両立、及び研磨速度の確保の観点、40%以上が好ましく、60%以上がより好ましく、80%以上が更に好ましく、100%が更により好ましい。
【0052】
スルホン酸変性PVA(成分c2)の重量平均分子量は、シリコンウェーハの表面粗さ(ヘイズ)の低減と表面欠陥(LPD)の低減の両立の観点から、0.5万以上が好ましく、1万以上がより好ましく、2万以上が更に好ましく、シリコンウェーハの表面粗さ(ヘイズ)の低減と表面欠陥(LPD)の低減の両立の観点から、25万以下が好ましく、20万以下がより好ましく、15万以下が更に好ましく、10万以下が更により好ましい。尚、AO付加PVAの重量平均分子量は後の実施例に記載の方法により測定される。
【0053】
スルホン酸変性PVA(成分c2)における各構成単位の配列は、ブロックでもランダムでもよい。
【0054】
本発明の研磨液組成物に含まれるスルホン酸変性PVA(成分c2)の含有量は、シリコンウェーハの表面粗さ(ヘイズ)の低減と表面欠陥(LPD)の低減の両立の観点から、0.001質量%以上が好ましく、0.002質量%以上がより好ましく、0.004質量%以上が更に好ましく、0.007質量%以上が更により好ましい。また、本発明の研磨液組成物に含まれるスルホン酸変性PVA(成分c2)の含有量は、シリコンウェーハの表面粗さ(ヘイズ)の低減と表面欠陥(LPD)の低減の両立の観点から、0.1質量%以下が好ましく、0.05質量%以下がより好ましく、0.035質量%以下が更に好ましく、0.030質量%以下が更により好ましい。
【0055】
本発明の研磨液組成物に含まれるシリカ粒子の含有量とスルホン酸変性PVA(成分c2)の含有量の比(成分A/成分c2)は、シリコンウェーハの研磨速度向上の観点から、1以上が好ましく、5以上がより好ましく、8以上が更に好ましく、10以上が更により好ましい。また、前記比(成分A/成分c2)は、シリコンウェーハの表面粗さ(ヘイズ)の低減と表面欠陥(LPD)の低減の両立の観点から、38以下が好ましく、30以下がより好ましく、25以下が更に好ましく、20以下が更により好ましい。
【0056】
[水系媒体(成分D)]
本発明の研磨液組成物に含まれる水系媒体(成分D)としては、イオン交換水や超純水等の水、又は水と溶媒との混合媒体等が挙げられ、上記溶媒としては、水と混合可能な溶媒(例えば、エタノール等のアルコール)が好ましい。水系媒体としては、なかでも、イオン交換水又は超純水がより好ましく、超純水が更に好ましい。水系媒体(成分D)が、水と溶媒との混合媒体である場合、成分Dである混合媒体全体に対する水の割合は、特に限定されるわけではないが、経済性の観点から、95質量%以上が好ましく、98質量%以上がより好ましく、実質的に100質量%が更に好ましい。
【0057】
本発明の研磨液組成物における水系媒体の含有量は、特に限定されるわけではなく、成分A〜C及び後述する任意成分の残余であってよい。
【0058】
本発明の研磨液組成物の25℃におけるpHは、研磨速度の確保の観点から、8.0以上が好ましく、9.0以上がより好ましく、9.5以上が更に好しく、また、12.0以下が好ましく、11.5以下がより好ましく、11.0以下が更に好ましい。pHの調整は、必要に応じて、含窒素塩基性化合物(成分B)及び/又はpH調整剤を適宜添加して行うことができる。ここで、25℃におけるpHは、pHメータ(東亜電波工業株式会社、HM−30G)を用いて測定でき、電極の研磨液組成物への浸漬後1分後の数値である。
【0059】
[任意成分(助剤)]
本発明の研磨液組成物には、本発明の効果が妨げられない範囲で、更に、水溶性高分子化合物(成分C)以外の水溶性高分子化合物(成分E)、pH調整剤、防腐剤、アルコール類、キレート剤、アニオン性界面活性剤、及びノニオン性界面活性剤から選ばれる少なくとも1種の任意成分が含まれてもよい。
【0060】
[水溶性高分子化合物(成分E)]
本発明の研磨液組成物には、シリコンウェーハの表面欠陥の低減の観点から、更に水溶性高分子化合物(成分C)以外の水溶性高分子化合物(成分E)を含有してもよい。この水溶性高分子化合物(成分E)は、親水基を有する高分子化合物であり、水溶性高分子化合物(成分E)の重量平均分子量は、研磨速度の確保、シリコンウェーハの表面欠陥の低減の観点から、10,000以上が好ましく、100,000以上がより好ましい。上記成分Eを構成する供給源である単量体としては、例えば、アミド基、水酸基、カルボキシル基、カルボン酸エステル基、スルホン酸基等の水溶性基を有する単量体が挙げられる。このような水溶性高分子化合物(成分E)としては、ポリアミド、ポリ(N−アシルアルキレンイミン)、セルロース誘導体、ポリビニルアルコール、ポリエチレンオキサイド等が例示できる。ポリアミドとしては、ポリビニルピロリドン、ポリアクリルアミド、ポリオキサゾリン、ポリジメチルアクリルアミド、ポリジエチルアクリルアミド、ポリイソプロピルアクリルアミド、ポリヒドロキシエチルアクリルアミド等が挙げられる。ポリ(N−アシルアルキレンイミン)としては、ポリ(N−アセチルエチレンイミン)、ポリ(N−プロピオニルエチレンイミン)、ポリ(N−カプロイルエチレンイミン)、ポリ(N−ベンゾイルエチレンイミン)、ポリ(N−ノナデゾイルエチレンイミン)、ポリ(N−アセチルプロピレンイミン)、ポリ(N−ブチオニルエチレンイミン)等があげられる。セルロース誘導体としては、カルボキシメチルセルロ−ス、ヒドロキシエチルセルロース、ヒドロキシエチルメチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、メチルセルロース、エチルセルロース、ヒドロキシエチルエチルセルロース、及びカルボキシメチルエチルセルロース等が挙げられる。これらの水溶性高分子化合物は任意の割合で2種以上を混合して用いてもよい。
【0061】
[pH調整剤]
pH調整剤としては、酸性化合物等が挙げられる。酸性化合物としては、硫酸、塩酸、硝酸又はリン酸等の無機酸、酢酸、シュウ酸、コハク酸、グリコール酸、リンゴ酸、クエン酸又は安息香酸等の有機酸等が挙げられる。
【0062】
[防腐剤]
防腐剤としては、ベンザルコニウムクロライド、ベンゼトニウムクロライド、1,2−ベンズイソチアゾリン−3−オン、(5−クロロ−)2−メチル−4−イソチアゾリン−3−オン、過酸化水素、又は次亜塩素酸塩等が挙げられる。
【0063】
[アルコール類]
アルコール類としては、メタノール、エタノール、プロパノール、ブタノール、イソプロピルアルコール、2−メチル−2−プロパノオール、エチレングリコール、プロピレングリコール、ポリエチレングリコール、グリセリン等が挙げられる。本発明の研磨液組成物におけるアルコール類の含有量は、0.1質量%〜5質量%が好ましい。
【0064】
[キレート剤]
キレート剤としては、エチレンジアミン四酢酸、エチレンジアミン四酢酸ナトリウム、ニトリロ三酢酸、ニトリロ三酢酸ナトリウム、ニトリロ三酢酸アンモニウム、ヒドロキシエチルエチレンジアミン三酢酸、ヒドロキシエチルエチレンジアミン三酢酸ナトリウム、トリエチレンテトラミン六酢酸、トリエチレンテトラミン六酢酸ナトリウム等が挙げられる。本発明の研磨液組成物におけるキレート剤の含有量は、0.01〜1質量%が好ましい。
【0065】
[アニオン性界面活性剤]
アニオン性界面活性剤としては、例えば、脂肪酸石鹸、アルキルエーテルカルボン酸塩等のカルボン酸塩、アルキルベンゼンスルホン酸塩、アルキルナフタレンスルホン酸塩等のスルホン酸塩、高級アルコール硫酸エステル塩、アルキルエーテル硫酸塩等の硫酸エステル塩、アルキルリン酸エステル等のリン酸エステル塩などが挙げられる。
【0066】
[非イオン性界面活性剤]
非イオン性界面活性剤としては、ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンソルビット脂肪酸エステル、ポリオキシエチレングリセリン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンアルキルエーテル、ポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテル、ポリオキシアルキレン(硬化)ヒマシ油等のポリエチレングリコール型と、ショ糖脂肪酸エステル、ポリグリセリンアルキルエーテル、ポリグリセリン脂肪酸エステル、アルキルグリコシド等の多価アルコール型及び脂肪酸アルカノールアミド等が挙げられる。
【0067】
尚、上記において説明した各成分の含有量は、使用時における含有量であるが、本発明の研磨液組成物は、その保存安定性が損なわれない範囲で濃縮された状態で保存及び供給されてもよい。この場合、製造及び輸送コストを更に低くできる点で好ましい。濃縮液は、必要に応じて前述の水系媒体で適宜希釈して使用すればよい。濃縮倍率としては、希釈した後の研磨時の濃度を確保できれば、特に限定するものではないが、製造及び輸送コストを更に低くできる観点から、2倍以上が好ましく、10倍以上がより好ましく、20倍以上が更に好ましく、30倍以上が更により好ましく、また、100倍以下が好ましく、80倍以下がより好ましく、60倍以下が更に好ましく、50倍以下が更により好ましい。
【0068】
本発明の研磨液組成物が上記濃縮液である場合、濃縮液におけるシリカ粒子(成分A)の含有量は、製造及び輸送コストを低くする観点から、SiO
2換算で、2質量%以上が好ましく、4質量%以上がより好ましく、6質量%以上が更に好ましい。また、濃縮液中におけるシリカ粒子の含有量は、保存安定性を向上させる観点から、SiO
2換算で、40質量%以下が好ましく、35質量%以下がより好ましく、20質量%以下が更に好ましく、15質量%以下が更により好ましく、9質量%以下が更により好ましい。
【0069】
本発明の研磨液組成物が上記濃縮液である場合、濃縮液における含窒素塩基性化合物(成分B)の含有量は、製造及び輸送コストを低くする観点から、0.02質量%以上が好ましく、0.05質量%以上がより好ましく、0.1質量%以上が更に好ましい。また、濃縮液中における含窒素塩基性化合物(成分B)の含有量は、保存安定性の向上の観点から5質量%以下が好ましく、2質量%以下がより好ましく、1質量%以下が更に好ましい。
【0070】
本発明の研磨液組成物が上記濃縮液である場合、濃縮液における水溶性高分子化合物(成分C)の含有量は、製造及び輸送コストを低くする観点から、0.005質量%以上が好ましく、0.01質量%以上がより好ましく、0.02質量%以上が更に好ましく、0.05質量%以上が更により好ましく、0.1質量%以上が更により好ましい。また、濃縮液中における水溶性高分子化合物(成分C)の含有量は、保存安定性の向上の観点から、5質量%以下が好ましく、3質量%以下がより好ましく、2質量%以下が更に好ましく、1.5質量%以下が更により好ましい。
【0071】
本発明の研磨液組成物が上記濃縮液である場合、上記濃縮液の25℃におけるpHは、8.0以上が好ましく、9.0以上がより好ましく、9.5以上が更に好しく、また、12.0以下が好ましく、11.5以下がより好ましく、11.0以下が更に好ましい。
【0072】
次に、本発明の研磨液組成物の製造方法の一例について説明する。
【0073】
本発明の研磨液組成物の製造方法の一例は、何ら制限されず、例えば、シリカ粒子(成分A)と、含窒素塩基性化合物(成分B)と、水溶性高分子化合物(成分C)と、水系媒体(成分D)と、必要に応じて任意成分とを混合することによって調製できる。
【0074】
シリカ粒子の水系媒体への分散は、例えば、ホモミキサー、ホモジナイザー、超音波分散機、湿式ボールミル、又はビーズミル等の撹拌機等を用いて行うことができる。シリカ粒子の凝集等により生じた粗大粒子が水系媒体中に含まれる場合、遠心分離やフィルターを用いたろ過等により、当該粗大粒子を除去すると好ましい。シリカ粒子の水系媒体への分散は、水溶性高分子化合物(成分C)の存在下で行うと好ましい。具体的には、水溶性高分子化合物(成分C)と水系媒体(成分D)とを含むシリコンウェーハ研磨用添加剤組成物を調製した後、当該シリコンウェーハ研磨用添加剤組成物とシリカ粒子とを混合し、次いで、必要に応じて、シリコンウェーハ研磨用添加剤組成物とシリカ粒子の混合物を水系媒体(成分D)で希釈すると好ましい。
【0075】
本発明の研磨液組成物は、例えば、半導体基板の製造過程における、シリコンウェーハを研磨する研磨工程や、シリコンウェーハを研磨する研磨工程を含むシリコンウェーハの研磨方法に用いられる。
【0076】
前記シリコンウェーハを研磨する研磨工程には、シリコン単結晶インゴットを薄円板状にスライスすることにより得られたシリコンウェーハを平面化するラッピング(粗研磨)工程と、ラッピングされたシリコンウェーハをエッチングした後、シリコンウェーハ表面を鏡面化する仕上げ研磨工程とがある。本発明の研磨液組成物は、上記仕上げ研磨工程で用いられるとより好ましい。
【0077】
前記半導体基板の製造方法や前記シリコンウェーハの研磨方法では、シリコンウェーハを研磨する研磨工程の前に、本発明の研磨液組成物(濃縮液)を希釈する希釈工程を含んでいてもよい。希釈媒には、水系媒体(成分D)を用いればよい。
【0078】
前記希釈工程で希釈される濃縮液は、製造及び輸送コスト低減、保存安定性の向上の観点から、例えば、成分Aを2〜40質量%、成分Bを0.005〜5質量%含んでいると好ましい。
【0079】
本発明は、さらに以下<1>〜<14>を開示する。
【0080】
<1> シリカ粒子を0.01〜0.5質量%と、含窒素塩基性化合物と、水溶性高分子とを含み、前記水溶性高分子が、下記一般式(1)で表される構成単位Iと下記一般式(2)で表され構成単位IIと下記一般式(3)で表される構成単位IIIとを含むか、又は前記構成単位Iと前記構成単位IIIとを含み、前記構成単位Iのモル数aと前記構成単位IIのモル数bの和と、前記構成単位III中のアルキレンオキシ基の平均総付加モル数dの比[(a+b)/d]が0.8以上10以下のアルキレンオキシ基を含有する変性ポリビニルアルコール系重合体、又はスルホン酸を含有する変性ポリビニルアルコールである、シリコンウェーハ用研磨液組成物。
【化3】
但し、上記一般式(3)中、Yはエチレンオキシ基及びプロピレンオキシ基のうちの少なくとも1種からなるポリアルキレンオキシ基であり、R
1は水素又は炭素数が1〜4のアルキル基であり、Xはメチレン基(−CH
2−)又は結合手である。
<2> 前記水溶性高分子のけん化度(a/a+b)は、40%以上が好ましく、60%以上がより好ましく、80%以上が更に好ましく、90%以上が更により好ましく、100%が更により好ましい、前記<1>に記載のシリコンウェーハ用研磨液組成物。
<3> 前記シリコンウェーハ用研磨液組成物に含まれるシリカ粒子の含有量は、SiO
2換算で、0.01質量%以上であり、0.07質量%以上が好ましく、0.10質量%以上がより好ましく、0.5質量%以下であり、0.3質量%以下が好ましく、0.2質量%以下がより好ましい、前記<1>又は<2>に記載のシリコンウェーハ用研磨液組成物。
<4> 前記シリコンウェーハ用研磨液組成物に含まれる前記水溶性高分子の含有量は、0.001質量%以上が好ましく、0.002質量%以上がより好ましく、0.004質量%以上が更に好ましく、0.007質量%以上が更により好ましく、0.1質量%以下が好ましく、0.05質量%以下がより好ましく、0.035質量%以下が更に好ましく、0.030質量%以下が更により好ましい、前記<1>〜<3>のいずれかに記載のシリコンウェーハ用研磨液組成物。
<5> 前記シリカ粒子と前記水溶性高分子の質量比(シリカ粒子の質量/水溶性高分子の質量)は、1以上が好ましく、5以上がより好ましく、8以上が更に好ましく、10以上が更により好ましく、38以下が好ましく、30以下がより好ましく、25以下が更に好ましく、20以下が更により好まし、前記<1>〜<4>のいずれかに記載のシリコンウェーハ用研磨液組成物。
<6> 前記比[(a+b)/d]は、1.2以上が好ましく、1.5以上がより好ましく、2.0以上が更に好ましく、8.0以下が好ましく、6.0以下がより好ましく、5.0以下が更に好ましい、前記<1>〜<5>のいずれかに記載のシリコンウェーハ用研磨液組成物。
<7> 前記アルキレンオキシ基を含有する変性ポリビニルアルコール系重合体の全構成単位中における、前記構成単位Iと構成単位IIと構成単位IIIの合計の質量割合は、50質量%以上が好ましく、80質量%以上がより好ましく、90質量%以上が更に好ましく、実質的に100質量%が更により好ましく、100質量%が更により好ましい、前記<1>〜<6>のいずれかに記載のシリコンウェーハ用研磨液組成物。
<8> 前記アルキレンオキシ基を含有する変性ポリビニルアルコール系重合体の全構成単位中における、前記構成単位I及び前記構成単位IIの合計の質量割合は、40質量%以上が好ましく、50質量%以上がより好ましく、60質量%以上が更に好ましく、70質量%が更により好ましく、98質量%以下が好ましく、95質量%以下がより好ましく、93質量%以下が更に好ましく、90質量%以下が更により好ましい、前記<1>〜<7>のいずれかに記載のシリコンウェーハ用研磨液組成物。
<9> 前記アルキレンオキシ基を含有する変性ポリビニルアルコール系重合体は、エチレンオキサイド変性ポリビニルアルコール(EO変性PVA)、プロピレンオキサイド変性ポリビニルアルコール(PO変性PVA)、エチレンオキサイドプロピレンオキサイド変性ポリビニルアルコール(EOPO変性PVA)、エチレンオキサイドブチレンオキサイド変性ポリビニルアルコール(EOBO変性PVA)、及びプロピレンオキサイドブチレンオキサイド変性ポリビニルアルコール(POBO変性PVA)からなる群から選ばれる少なくとも1種である、前記<1>〜<8>のいずれかに記載のシリコンウェーハ用研磨液組成物。
<10> 前記アルキレンオキシ基を含有する変性ポリビニルアルコール系重合体の重量平均分子量は、0.5万以上が好ましく、1万以上がより好ましく、3万以上が更に好ましく、5万以上が更により好ましく、25万以下が好ましく、20万以下がより好ましく、15万以下が更に好ましく、11万以下が更により好ましい、前記<1>〜<9>のいずれかに記載のシリコンウェーハ用研磨液組成物。
<11> 前記スルホン酸を含有する変性ポリビニルアルコールの重量平均分子量は、0.5万以上が好ましく、1万以上がより好ましく、2万以上が更に好ましく、25万以下が好ましく、20万以下がより好ましく、15万以下が更に好ましく、10万以下が更により好ましい、前記<1>〜<6>のいずれかに記載のシリコンウェーハ用研磨液組成物。
<12>
前記シリコンウェーハ用研磨液組成物の25℃におけるpHは、8.0以上が好ましく、9.0以上がより好ましく、9.5以上が更に好しく、12.0以下が好ましく、11.5以下がより好ましく、11.0以下が更に好ましい、前記<1>〜<11>のいずれかに記載のシリコンウェーハ用研磨液組成物。
<13>
前記<1>〜<12>のいずれかの項に記載のシリコンウェーハ用研磨液組成物を用いてシリコンウェーハを研磨する研磨工程を含む研磨方法。
<14>
前記<1>〜<12>のいずれかの項に記載のシリコンウェーハ用研磨液組成物を用いてシリコンウェーハを研磨する研磨工程を含む、半導体基板の製造方法。
【実施例】
【0081】
下記の実施例1〜
17、参考例1〜4、及び比較例1〜27で用いた表1及び表2中のポリマーA及びポリマーB詳細は下記のとおりである。
(ポリマーANo.1)
エチレンオキサイド変性ポリビニルアルコール(一般式(3)中、Xは結合手、Yはポリエチレンオキシ基、R
1は水素、商品名:エコマティ320N、日本合成化学工業社製)
(ポリマーANo.2)
エチレンオキサイド付加ポリビニルアルコール(一般式(3)中、Xは結合手、Yはポリエチレンオキシ基、R
1は水素、商品名:エコマティ320R、日本合成化学工業社製)
(ポリマーANo.3)
エチレンオキサイド付加ポリビニルアルコール(一般式(3)中、Xは結合手、Yはポリエチレンオキシ基、R
1は水素、商品名:EF−05、日本酢ビ・ポバール社製)
(ポリマーANo.4)
スルホン酸変性ポリビニルアルコール(ゴーセランL-3266、日本合成化学工業社製)
(ポリマーANo.5)
スルホン酸変性ポリビニルアルコール(ゴーセランCKS-50、日本合成化学工業社製)
(ポリマーANo.6)
ポリマーANo.6のエチレンオキサイド変性ポリビニルアルコール(一般式(3)中、Xは結合手、Yはポリエチレンオキシ基、R
1は水素)は下記合成方法により得た。ポリエチレングリコール(平均分子量80000、明成化学工業) 20gを重合容器に導入し、そして穏やかな窒素流の下で攪拌しながら80℃ まで加熱した。ポリエチレングリコールを攪拌して80℃ に保持しながら、酢酸ビニル20gを3時間かけて重合容器内に滴下し、それと同時に、tert-ブチルペルピバレート0.08gをメタノール1gに加えた溶液を、同様に、3時間かけて重合容器内に滴下した。これらの添加が終了した後、80℃ で混合物を2時間攪拌した。冷却後、得られたポリマーをメタノール40mlに溶解させた。加水分解するために、30℃において濃度10質量%のメタノール性水酸化ナトリウム溶液を、重合容器内に8ml添加した。約40分後、濃度10質量%の酢酸を重合容器内に12ml添加することによって反応を停止させた。得られた溶液を減圧蒸留して溶液からメタノールを除去した。次に、得られた溶液に対して3日間透析(ヴィスキングチューブ、分画分子量12,000~14,000、日本メディカルサイエンス)を行った。その後凍結乾燥を行い、無色の粉末(ポリマーANo.6のエチレンオキサイド変性ポリビニルアルコール)を得た。
(ポリマーANo.7)
ヒドロキシエチルセルロース(商品名CF-V、住友精化社製)
(ポリマーANo.8)
ヒドロキシエチルセルロース(商品名SE400、ダイセル社製)
(ポリマーANo.9)
ポリビニルピロリドン(商品名K-90、重量平均分子量:36万:和光純薬社製)
(ポリマーANo.10)
ポリ(2−エチル−2−オキサゾリン)(重量平均分子量:50万:和光純薬社製)
(ポリマーANo.11)
ポリアクリルアミド(重量平均分子量:80万:和光純薬社製)
(ポリマーANo.12)
ポリエチレングリコール(重量平均分子量:2万:和光純薬社製)
(ポリマーANo.13)
ポリビニルアルコール(商品名:PVA103、クラレ社製)
(ポリマーANo.14)
ポリビニルアルコール(商品名:PVA105、クラレ社製)
(ポリマーANo.15)
ポリビニルアルコール(商品名:PVA110、クラレ社製)
(ポリマーANo.16)
ポリビニルアルコール(商品名:PVA124、クラレ社製)
(ポリマーANo.17)
ポリビニルアルコール(商品名:JP−05、日本酢ビ・ポバール社製)
(ポリマーANo.18)
ポリビニルアルコール(商品名:JP−24、日本酢ビ・ポバール社製)
(ポリマーANo.19)
ポリビニルアルコール(商品名:JP−45、日本酢ビ・ポバール社製)
(ポリマーANo.20)
ポリビニルアルコール(商品名:JL−25E、日本酢ビ・ポバール社製)
(ポリマーANo.21)
ポリビニルアルコール(商品名:JR−05、日本酢ビ・ポバール社製)
(ポリマーANo.22)
ポリビニルアルコール(商品名:LM−10HD、クラレ社製)
(ポリマーANo.23)
ポリビニルアルコール(商品名:LM−20、クラレ社製)
(ポリマーANo.24)
ポリビニルアルコール(商品名:LM−25、クラレ社製)
(ポリマーANo.25)
カルボン酸変性ポリビニルアルコール(商品名:AP−17、日本酢ビ・ポバール社製)
(ポリマーANo.26)
カルボン酸変性ポリビニルアルコール(商品名:KL−318、クラレ社製)
(ポリマーB:PEG6000)
ポリエチレングリコール(重量平均分子量6000:和光純薬社製)
【0082】
〈ポリマーAの溶解度〉
上記ポリマーANo.1〜26のうち、ポリマーANo.1〜21、25、26については、20℃の水に対する溶解度は、いずれも2g/100ml以上であった。ポリマーANo.22〜24については、けん化が十分に行われていないため、親水基である水酸基の含有量が少く、水に溶解しなかった。
【0083】
〈重合平均分子量の測定〉
ポリマーANo.1〜8、13〜26の重量平均分子量は、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)法を下記の条件で適用して得たクロマトグラム中のピークに基づき算出した。尚、ポリマーANo.9〜12の重量平均分子量についてはカタログ値である。
〈測定条件〉
装置:HLC-8320 GPC(東ソー株式会社、検出器一体型)
カラム:GMPWXL+GMPWXL(アニオン)
溶離液:0.2Mリン酸バッファー/CH
3CN=9/1
流量:0.5ml/min
カラム温度:40℃
検出器:RI 検出器
標準物質:ポリエチレングリコール
【0084】
<ポリマーAのけん化度(a/a+b)>
ポリマーAのけん化度は1HNMRによって算出した。ポリマー主鎖のエチレン部位の積分比より(a+b)を算出した。また、前記構成単位IIのメチレン基の積分比よりbを算出しa+bの値から引くことでaの値を得、ポリマーAのけん化度(a/a+b)の値を得た。尚、ポリマーANo.1〜5、13〜26のけん化度についてはカタログ値である。
【0085】
<構成単位Iのモル数aと構成単位IIのモル数bの和と構成単位III中のアルキレンオキシドの平均総付加モル数dの比[(a+b)/d]>
構成単位Iのモル数aと構成単位IIのモル数bの和と構成単位III中のアルキレンオキシドの平均総付加モル数dの比[(a+b)/d]は1HNMRによって算出した。上記と同様に(a+b)を算出し、エチレンオキシドユニットのエチレン部位の積分比よりdの値を得、[(a+b)/d]を算出した。
【0086】
<研磨材(シリカ粒子)の平均一次粒子径>
研磨材の平均一次粒子径(nm)は、BET(窒素吸着)法によって算出される比表面積S(m
2/g)を用いて下記式で算出した。
平均一次粒子径(nm)=2727/S
【0087】
研磨材の比表面積は、下記の[前処理]をした後、測定サンプル約0.1gを測定セルに小数点以下4桁まで精量し、比表面積の測定直前に110℃の雰囲気下で30分間乾燥した後、比表面積測定装置(マイクロメリティック自動比表面積測定装置 フローソーブ
III2305、島津製作所製)を用いて窒素吸着法(BET法)により測定した。
【0088】
[前処理]
(a)スラリー状の研磨材を硝酸水溶液でpH2.5±0.1に調整する。
(b)pH2.5±0.1に調整されたスラリー状の研磨材をシャーレにとり150℃の熱風乾燥機内で1時間乾燥させる。
(c)乾燥後、得られた試料をメノウ乳鉢で細かく粉砕する。
(d)粉砕された試料を40℃のイオン交換水に懸濁させ、孔径1μmのメンブランフィ
ルターで濾過する。
(e)フィルター上の濾過物を20gのイオン交換水(40℃)で5回洗浄する。
(f)濾過物が付着したフィルターをシャーレにとり、110℃の雰囲気下で4時間乾燥させる。
(g)乾燥した濾過物(砥粒)をフィルター屑が混入しないようにとり、乳鉢で細かく粉砕して測定サンプルを得た。
【0089】
<研磨材(シリカ粒子)の平均二次粒子径>
研磨材の平均二次粒子径(nm)は、研磨材の濃度が0.25質量%となるように研磨材をイオン交換水に添加した後、得られた水溶液をDisposable Sizing Cuvette(ポリスチレン製 10mmセル)に下底からの高さ10mmまで入れ、動的光散乱法(装置名:ゼータサイザーNano ZS、シスメックス(株)製)を用いて測定した。
【0090】
(1)研磨液組成物の調製
シリカ粒子(コロイダルシリカ、平均一次粒子径35nm、平均二次粒子径70nm、会合度2)、ポリマーA、28質量%アンモニア水(キシダ化学(株)試薬特級)、イオン交換水、必要に応じてポリマーBを攪拌混合して、実施例1〜
17、参考例1〜4、比較例1〜27の研磨液組成物(いずれも濃縮液、pH10.6±0.1(25℃))を得た。尚、表1及び表2における各成分の含有量は、濃縮液を40倍に希釈して得た研磨液組成物についての値である。シリカ粒子の含有量は、SiO
2換算濃度である。
【0091】
(2)研磨方法
研磨液組成物(濃縮液)をイオン交換水で40倍に希釈して得た研磨液組成物(pH10.6±0.1(25℃))を研磨直前にフィルター(コンパクトカートリッジフィルター MCP−LX−C10S アドバンテック株式会社)にてろ過を行い、下記の研磨条件で下記のシリコンウェーハ(直径200mmのシリコン片面鏡面ウェーハ(伝導型:P、結晶方位:100、抵抗率0.1Ω・cm以上100Ω・cm未満)に対して仕上げ研磨を行った。当該仕上げ研磨に先立ってシリコンウェーハに対して市販の研磨剤組成物を用いてあらかじめ粗研磨を実施した。粗研磨を終了し仕上げ研磨に供したシリコンウェーハの表面粗さ(ヘイズ)は、2.680であった。表面粗さ(ヘイズ)は、KLA Tencor社製のSurfscan SP1(商品名)を用いて測定される暗視野ワイド斜入射チャンネル(DWO)での値である。
【0092】
<仕上げ研磨条件>
研磨機:片面8インチ研磨機GRIND-X SPP600s(岡本工作製)
研磨パッド:スエードパッド(東レ コーテックス社製 アスカー硬度64 厚さ 1.37mm ナップ長450um 開口径60um)
シリコンウェーハ研磨圧力:100g/cm
2
定盤回転速度:60rpm
研磨時間:5分
研磨剤組成物の供給速度:150ml/cm
2
研磨剤組成物の温度:23℃
キャリア回転速度:60rpm
【0093】
仕上げ研磨後、シリコンウェーハに対して、オゾン洗浄と希フッ酸洗浄を下記のとおり行った。オゾン洗浄では、20ppmのオゾンを含んだ水溶液をノズルから流速1L/minで600rpmで回転するシリコンウェーハの中央に向かって3分間噴射した。このときオゾン水の温度は常温とした。次に希フッ酸洗浄を行った。希フッ酸洗浄では、0.5%のフッ化水素アンモニウム(特級:ナカライテクス株式会社)を含んだ水溶液をノズルから流速1L/minで600rpmで回転するシリコンウェーハの中央に向かって6秒間噴射した。上記オゾン洗浄と希フッ酸洗浄を1セットとして計2セット行い、最後にスピン乾燥を行った。スピン乾燥では1500rpmでシリコンウェーハを回転させた。
【0094】
<シリコンウェーハの表面粗さ(ヘイズ)及び表面欠陥(LPD)の評価>
洗浄後のシリコンウェーハ表面の表面粗さ(ヘイズ)の評価には、表面粗さ測定装置「Surfscan SP1-DLS」(KLA Tencor社製)を用いて測定される、暗視野ワイド斜入射チャンネル(DWO)での値を用いた。また、表面欠陥(LPD)はHaze測定時に同時に測定され、シリコンウェーハ表面上の粒径が45nm以上のパーティクル数を測定することによって評価した。表面欠陥(LPD)の評価結果は、数値が小さいほど表面欠陥が少ないことを示す。また、Hazeの数値は小さいほど表面の平坦性が高いことを示す。表面粗さ(ヘイズ)及び表面欠陥(LPD)の結果を表1及び表2に示した。表面粗さ(ヘイズ)及び表面欠陥(LPD)の測定は、2枚のシリコンウェーハに対して行い、各々平均値を表1及び表2に示した。
【0095】
<濡れ性の評価>
仕上げ研磨直後のシリコンウェーハ(直径200mm)鏡面の親水化部(濡れている部分)の面積を目視により観察した。測定は2枚の異なるシリコンウェーハに対して行い、その平均値を下記の評価基準に従って評価して、その結果を表1及び表2に示した。
(評価基準)
A:濡れ部分面積の割合が95以上
B:濡れ部分面積の割合が90%以上95%未満
C:濡れ部分面積の割合が50%以上90%未満
D:濡れ部分面積の割合が50%未満
【0096】
<分散粒径の評価>
研磨液組成物(濃縮液)をイオン交換水で40倍に希釈して得た研磨液組成物(pH10.6±0.1(25℃))を用いて、研磨液組成物中のシリカ粒子の分散粒径の測定を行った。分散粒径測定に使用する粒径測定装置として、光子相関法(動的光散乱法)の原理に基づいているシスメックス社製の粒度分布測定機「ゼータサイザーナノZS」を使用した。前記研磨液組成物を測定液としてDisposable Sizing Cuvette(ポリスチレン製 10mmセル)に1.2mL採取し、測定部に入れて、分散粒径として体積中位粒径(D50)を測定した。この結果を下記表1及び表2に示した。D50の値が小さいほど、シリカ粒子の分散性は良好である。
【0097】
<腐食量の評価>
40×40mm角にカットしたシリコンウェーハを、1%希フッ酸水溶液に2分浸漬させ酸化膜を除去した後、イオン交換水に瞬時浸漬し、リンスし、エアブロー乾燥した。次いでシリコンウェーハをプラスチック容器に入れ、当該プラスチック容器に研磨液組成物20gを加えて蓋をした。シリコンウェーハを、研磨液組成物に40℃で24時間浸漬した後、イオン交換水に瞬時浸漬し、リンスし、エアブロー乾燥した。エアブロー乾燥されたシリコンウェーハの研磨液組成物への浸漬前後での重量減少量を腐食量とした。
【0098】
【表1】
【0099】
【表2】
【0100】
表1及び表2に示されるように、実施例1〜
17の研磨液組成物を用いることで、比較例1〜27の研磨液組成物を用いた場合に比べて、シリコンウェーハの表面粗さ(ヘイズ)の低減と表面欠陥(LPD)の低減の両立が可能になった。