(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6245978
(24)【登録日】2017年11月24日
(45)【発行日】2017年12月13日
(54)【発明の名称】打ち抜き金型装置及びそれを用いた積層鉄心の製造方法
(51)【国際特許分類】
B21D 43/00 20060101AFI20171204BHJP
B30B 13/00 20060101ALI20171204BHJP
B21D 28/02 20060101ALI20171204BHJP
H02K 15/02 20060101ALI20171204BHJP
【FI】
B21D43/00 E
B30B13/00 J
B21D28/02 C
H02K15/02 E
【請求項の数】9
【全頁数】11
(21)【出願番号】特願2013-269181(P2013-269181)
(22)【出願日】2013年12月26日
(65)【公開番号】特開2015-123469(P2015-123469A)
(43)【公開日】2015年7月6日
【審査請求日】2016年10月20日
(73)【特許権者】
【識別番号】000144038
【氏名又は名称】株式会社三井ハイテック
(74)【代理人】
【識別番号】100090697
【弁理士】
【氏名又は名称】中前 富士男
(74)【代理人】
【識別番号】100176142
【弁理士】
【氏名又は名称】清井 洋平
(74)【代理人】
【識別番号】100127155
【弁理士】
【氏名又は名称】来田 義弘
(74)【代理人】
【識別番号】100159581
【弁理士】
【氏名又は名称】藤本 勝誠
(72)【発明者】
【氏名】大和 茂敏
【審査官】
塩治 雅也
(56)【参考文献】
【文献】
特開2003−200296(JP,A)
【文献】
実開昭60−121429(JP,U)
【文献】
特開2011−125884(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B21D 43/00
B21D 28/02
B30B 13/00
H02K 15/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
加工ステーションが複数並べて設けられた下型と、該下型に対向して該下型の上方に配置され、上下動する上型とを有し、順送りされる板材を前記各加工ステーションで順次打ち抜いて所望形状の鉄心片を形成した後、該鉄心片を積層して積層鉄心を形成する打ち抜き金型装置において、
前記下型には、前記板材を順送りする際に該板材を前記下型の上面位置から上昇させるリフタ部が設けられ、前記リフタ部は、前記各加工ステーションの外周領域に複数設置される第1のリフタを有する第1のリフタ群と、前記鉄心片の外形抜き用打ち抜き孔が形成された回転するブランクダイの上面又は該ブランクダイを保持しつつ回転するブランクダイホルダの上面に設置される第2のリフタを有する第2のリフタ群とを備えていることを特徴とする打ち抜き金型装置。
【請求項2】
加工ステーションが複数並べて設けられた下型と、該下型に対向して該下型の上方に配置され、上下動する上型とを有し、順送りされる板材を前記各加工ステーションで順次打ち抜いて所望形状の鉄心片を形成した後、該鉄心片を積層して積層鉄心を形成する打ち抜き金型装置において、
前記下型には、前記板材を順送りする際に該板材を前記下型の上面位置から上昇させるリフタ部が設けられ、前記リフタ部は、前記各加工ステーションの外周領域に複数設置される第1のリフタを有する第1のリフタ群と、前記鉄心片の外形抜き用打ち抜き孔が形成されたブランクダイの上面又は該ブランクダイを保持するブランクダイホルダの上面に設置される第2のリフタを有する第2のリフタ群とを備え、
前記第2のリフタの上昇高さは、前記第1のリフタの上昇高さより低いことを特徴とする打ち抜き金型装置。
【請求項3】
請求項1又は2記載の打ち抜き金型装置において、前記第2のリフタは、前記外形抜き用打ち抜き孔の内周に沿って環状に配置されていることを特徴とする打ち抜き金型装置。
【請求項4】
請求項1〜3のいずれか1項に記載の打ち抜き金型装置において、前記第2のリフタが前記板材と接触する面積は、前記第1のリフタが前記板材と接触する面積より小さいことを特徴とする打ち抜き金型装置。
【請求項5】
請求項1〜4のいずれか1項に記載の打ち抜き金型装置において、前記板材と接触する前記第2のリフタは、側面視して、前記板材と当接する先部に向けて幅が減少する台形形状又は前記板材と1点で接する円弧形状であることを特徴とする打ち抜き金型装置。
【請求項6】
請求項1〜5のいずれか1項に記載の打ち抜き金型装置において、前記鉄心片は1枚毎又は複数枚毎に転積されることを特徴とする打ち抜き金型装置。
【請求項7】
加工ステーションを複数並べて設けた下型と、該下型に対向して該下型の上方に配置され、上下動する上型とを有する打ち抜き金型装置に板材を順送りし、前記各加工ステーションで順次打ち抜いて所望形状の鉄心片を形成した後、該鉄心片を積層して積層鉄心を形成する積層鉄心の製造方法において、
前記下型に、前記板材を順送りする際に該板材を前記下型の上面位置から上昇させるリフタ部と、順送りされる前記板材の幅方向ずれを防止するガイド部とを設け、しかも、前記リフタ部を、前記加工ステーションの外周領域に設置する第1のリフタを有する第1のリフタ群と、前記鉄心片の外形抜き用打ち抜き孔が形成された回転するブランクダイの上面又は該ブランクダイを保持しつつ回転するブランクダイホルダの上面に設置される第2のリフタを有する第2のリフタ群で構成して、前記板材の一部を前記第2のリフタで支持した状態で、前記板材の順送りを行うことを特徴とする積層鉄心の製造方法。
【請求項8】
請求項7記載の積層鉄心の製造方法において、前記第2のリフタを、前記外形抜き用打ち抜き孔の内周に沿って環状に配置することを特徴とする積層鉄心の製造方法。
【請求項9】
加工ステーションを複数並べて設けた下型と、該下型に対向して該下型の上方に配置され、上下動する上型とを有する打ち抜き金型装置に板材を順送りし、前記各加工ステーションで順次打ち抜いて所望形状の鉄心片を形成した後、該鉄心片を積層して積層鉄心を形成する積層鉄心の製造方法において、
前記下型に、前記板材を順送りする際に該板材を前記下型の上面位置から上昇させるリフタ部と、順送りされる前記板材の幅方向ずれを防止するガイド部とを設け、しかも、前記リフタ部を、前記加工ステーションの外周領域に設置する第1のリフタを有する第1のリフタ群と前記鉄心片の外形抜き用打ち抜き孔の周囲に設置する第2のリフタを有する第2のリフタ群で構成すると共に、前記第2のリフタの上昇距離を、前記第1のリフタの上昇距離より短くして、前記板材の一部を前記第2のリフタで支持した状態で、前記板材の順送りを行うことを特徴とする積層鉄心の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、順送りされる板材から鉄心片を打ち抜いて積層鉄心を形成する打ち抜き金型装置及びそれを用いた積層鉄心の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
例えば、モータのステータやロータを構成する積層鉄心は、電磁鋼板等の帯状の板材を打ち抜き金型装置に順送りし、板材の送り方向に沿って並べて設けた各加工ステーションで順次打ち抜き加工を行って所望形状の鉄心片を形成し、得られた鉄心片を転積することにより製造されている。ここで、
図5に示すように、板材75は、打ち抜き金型装置の下型76内に配置されたリフタ77を用いて持ち上げられた状態で打ち抜き金型装置内(下型76の上方)を移動している。なお、符号78は、順送りされる板材75の幅方向両側にそれぞれ設けられて、板材75の幅方向ずれを防止するガイド部78である。
【0003】
近年、モータの大型化に伴う積層鉄心の大型化に対応して鉄心片の製造に使用する板材の幅は拡大し、しかも、板材の厚みは薄肉化している。このため、板材は従来と比較して、板材としての剛性が大きく低下している。その結果、板材を打ち抜き金型装置内でリフタで持ち上げた状態で順送りする際に板材が下方に撓んで、板材が送り途中で下型の、例えば、ブランクダイに引っ掛かるという問題(送りミス)が発生している。この問題は、板材の剛性が特に低下する外形抜きを行う加工ステーションで頻繁に発生しており、その対策が求められている。
【0004】
そこで、
図6に示すように、打ち抜き金型装置の下型80において、板材(図示せず)の送り方向に沿って並べて配置した加工ステーションに設けられた抜き孔81〜85の周囲にそれぞれ複数のリフタ86〜92を設ける場合、抜き孔85の周囲に配置されるリフタ92の上昇高さを、最も入り側寄りのリフタ86の上昇高さより高く設定して(板材の抜き孔85の上方に位置する領域をより高く持ち上げることにより)、板材の剛性が大きく低下して撓み易くなっても、抜き孔85の周囲に板材が接触することを防止している(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2003−200296号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、ブランクダイの抜き孔85を介してブランクダイホルダ内に打ち抜かれた鉄心片を、ブランクダイホルダ内で転積する場合、転積時にブランクダイホルダがブランクダイと共に回転するため、リフタ92はブランクダイホルダより外側の領域に設ける必要がある。このため、抜き孔85の上方の板材を支持するリフタ92間の間隔が広くなって板材の撓み量が増大し、リフタ92で高く持ち上げても抜き孔85の周囲(即ち、ブランクダイ)に板材が接触する虞や、ブランクダイ回転中に回転体(ブランクダイとブランクダイホルダ)上面の穴等に板材が接触する虞が生じる。また、リフタ92で板材を高く持ち上げるため、リフタ92と板材との接触部において摺り疵や磨耗等の機械的損傷が発生し易く、機械的損傷に伴って発生した板材カスにより、積層鉄心(製品)に打痕が発生するという問題も生じる。
【0007】
本発明はかかる事情に鑑みてなされたもので、板材の送り時に板材と下型との引っ掛かりや板材カスの発生を防止して、積層鉄心の生産性向上及び高品質化が可能な打ち抜き金型装置及びそれを用いた積層鉄心の製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
前記目的に沿う第1の発明に係る打ち抜き金型装置は、加工ステーションが複数並べて設けられた下型と、該下型に対向して該下型の上方に配置され、上下動する上型とを有し、順送りされる板材を前記各加工ステーションで順次打ち抜いて所望形状の鉄心片を形成した後、該鉄心片を積層して積層鉄心を形成する打ち抜き金型装置において、
前記下型には、前記板材を順送りする際に該板材を前記下型の上面位置から上昇させるリフタ部が設けられ、前記リフタ部は、前記各加工ステーションの外周領域に複数設置される第1のリフタを有する第1のリフタ群と、前記鉄心片の外形抜き用打ち抜き孔が形成された
回転するブランクダイの上面又は該ブランクダイを保持
しつつ回転するブランクダイホルダの上面に設置される第2のリフタを有する第2のリフタ群とを備えている。
前記目的に沿う第2の発明に係る打ち抜き金型装置は、加工ステーションが複数並べて設けられた下型と、該下型に対向して該下型の上方に配置され、上下動する上型とを有し、順送りされる板材を前記各加工ステーションで順次打ち抜いて所望形状の鉄心片を形成した後、該鉄心片を積層して積層鉄心を形成する打ち抜き金型装置において、
前記下型には、前記板材を順送りする際に該板材を前記下型の上面位置から上昇させるリフタ部が設けられ、前記リフタ部は、前記各加工ステーションの外周領域に複数設置される第1のリフタを有する第1のリフタ群と、前記鉄心片の外形抜き用打ち抜き孔が形成されたブランクダイの上面又は該ブランクダイを保持するブランクダイホルダの上面に設置される第2のリフタを有する第2のリフタ群とを備え、
前記第2のリフタの上昇高さは、前記第1のリフタの上昇高さより低い。
【0009】
第1
、第2の発明に係る打ち抜き金型装置において、前記第2のリフタは、前記外形抜き用打ち抜き孔の内周に沿って環状に配置されていることが好ましい。
【0010】
第1
、第2の発明に係る打ち抜き金型装置において、前記第2のリフタが前記板材と接触する面積は、前記第1のリフタが前記板材と接触する面積より小さいことが好ましい。
【0011】
第1
、第2の発明に係る打ち抜き金型装置において、前記板材と接触する前記第2のリフタは、側面視して、前記板材と当接する先部に向けて幅が減少する台形形状又は前記板材と1点で接する円弧形状であることが好ましい。
【0012】
第1
、第2の発明に係る打ち抜き金型装置において、前記鉄心片は1枚毎又は複数枚毎に転積されることが好ましい。
【0013】
【0014】
前記目的に沿う第
3の発明に係る積層鉄心の製造方法は、加工ステーションを複数並べて設けた下型と、該下型に対向して該下型の上方に配置され、上下動する上型とを有する打ち抜き金型装置に板材を順送りし、前記各加工ステーションで順次打ち抜いて所望形状の鉄心片を形成した後、該鉄心片を積層して積層鉄心を形成する積層鉄心の製造方法において、
前記下型に、前記板材を順送りする際に該板材を前記下型の上面位置から上昇させるリフタ部と、順送りされる前記板材の幅方向ずれを防止するガイド部とを設け、しかも、前記リフタ部を、前記加工ステーションの外周領域に設置する第1のリフタを有する第1のリフタ群と
、前記鉄心片の外形抜き用打ち抜き孔が形成された回転するブランクダイの上面又は該ブランクダイを保持しつつ回転するブランクダイホルダの上面に設置される第2のリフタを有する第2のリフタ群で構
成して、前記板材の一部を前記第2のリフタで支持した状態で、前記板材の順送りを行う。
第3の発明に係る積層鉄心の製造方法において、前記第2のリフタを、前記外形抜き用打ち抜き孔の内周に沿って環状に配置することが好ましい。
【0015】
前記目的に沿う第
4の発明に係る積層鉄心の製造方法
は、
加工ステーションを複数並べて設けた下型と、該下型に対向して該下型の上方に配置され、上下動する上型とを有する打ち抜き金型装置に板材を順送りし、前記各加工ステーションで順次打ち抜いて所望形状の鉄心片を形成した後、該鉄心片を積層して積層鉄心を形成する積層鉄心の製造方法において、
前記下型に、前記板材を順送りする際に該板材を前記下型の上面位置から上昇させるリフタ部と、順送りされる前記板材の幅方向ずれを防止するガイド部とを設け、しかも、前記リフタ部を、前記加工ステーションの外周領域に設置する第1のリフタを有する第1のリフタ群と前記鉄心片の外形抜き用打ち抜き孔の周囲に設置する第2のリフタを有する第2のリフタ群で構成すると共に、前記第2のリフタの上昇距離を、前記第1のリフタの上昇距離より短くして、前記板材の一部を前記第2のリフタで支持した状態で、前記板材の順送りを行う。
【発明の効果】
【0016】
第1
、第2の発明に係る打ち抜き金型装置及び第
3の発明に係る積層鉄心の製造方法においては、第2のリフタが、外形抜き用打ち抜き孔が形成されたブランクダイの上面又はブランクダイを保持するブランクダイホルダの上面に設置されているので、板材において、鉄心片の外形抜きで形成された孔の周囲を常に支持することができ、板材から鉄心片が打ち抜かれて板材の剛性が低下した領域の撓み量を小さくして、板材と外形抜き用打ち抜き孔との引っ掛かりを防止することができる。
【0017】
第1
、第2の発明に係る打ち抜き金型装置において、第2のリフタが、外形抜き用打ち抜き孔の内周に沿って環状に配置されている場合、板材において、鉄心片の外形抜きで形成された孔の近傍を直接支持することができ、外形抜き用打ち抜き孔の上方に存在する板材の撓み量を確実に減少させることができる。
【0018】
第1
、第2の発明に係る打ち抜き金型装置において、第2のリフタが板材と接触する面積が、第1のリフタが板材と接触する面積より小さい場合、第1のリフタで安定して板材を保持すると共に、転積時における第2のリフタと板材との摩擦を小さくすることができ、下型の上方に配置された板材に、うねりや撓み等の変形が発生することを防止できる。
【0019】
第1
、第2の発明に係る打ち抜き金型装置において、板材と接触する第2のリフタが、側面視して、板材と当接する先部に向けて幅が減少する台形形状又は板材と1点で接する円弧形状である場合、第2のリフタを板材に対してスムーズに移動させることができ、第2のリフタの移動に伴う板材の変形を確実に防止することができる。
【0020】
第
2の発明に係る打ち抜き金型装置
及び第4の発明に係る積層鉄心の製造方法は、第2のリフタの上昇高さが、第1のリフタの上昇高さより低い
ので、第2のリフタに掛かる板材の自重を減少させることができ、第2のリフタと板材との接触部において摺り疵や磨耗等の機械的損傷の発生を防止できる。その結果、板材の送り時に板材と下型との引っ掛かりや板材カスの発生を防止して、積層鉄心の生産性向上及び高品質化が可能となる。
【0021】
第
3の発明に係る積層鉄心の製造方法において、第2のリフタを、外形抜き用打ち抜き孔が形成されたブランクダイの上面又はブランクダイを保持するブランクダイホルダの上面に、外形抜き用打ち抜き孔の内周に沿って環状に配置する場合、鉄心片の転積を行う際に、板材に対して常に同じ位置を第2のリフタで支持できるため、転積後の板材の送りに影響を及ぼす(板材にうねりや撓み等の変形を生じさせる)ことがない。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【
図1】本発明の一実施の形態に係る打ち抜き金型装置の側面図である。
【
図2】同打ち抜き金型装置で鉄心片の外形抜きを行う加工ステーションの平面図である。
【
図3】同打ち抜き金型装置で鉄心片の外形抜きを行う加工ステーションの側断面図である。
【
図4】(A)は第2のリフタの側断面、(B)は(A)のQ−Q矢視断面図である。
【
図5】従来例に係る打ち抜き金型装置において、板材をリフタで持ち上げた状態を示す正面図である。
【
図6】従来例に係る打ち抜き金型装置に設けられたリフタの配置状態を示す平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0023】
続いて、添付した図面を参照しつつ、本発明を具体化した実施の形態につき説明し、本発明の理解に供する。
図1に示すように、本発明の一実施の形態に係る打ち抜き金型装置10は、積層鉄心を形成する鉄心片11(
図2参照)のパターンを、帯状の板材12に順次打ち抜き加工を行って形成する打ち抜き孔を備えたパターン形成用の複数の加工ステーション(図示せず)と、パターンが完成した領域を板材12から外形抜きして鉄心片11を形成する外形抜き用打ち抜き孔13を備えた最終段の加工ステーション14が並べて設けられた下型15を有している。更に、打ち抜き金型装置10は、下型15に対向して下型15の上方に配置され、パターン形成用の複数の加工ステーションの打ち抜き孔とそれぞれ対となる打ち抜きパンチ(図示せず)及び加工ステーション14の外形抜き用打ち抜き孔13と対となる打ち抜きパンチ16を備えて上下動する上型17を有している。なお、符号39は、板材12に打ち抜き加工(パターン形成及び外形抜き)を行う際に板材12を下型15に押圧するストリッパープレート(図示せず)を保持するストリッパーホルダ、符号40は、上型17の上下動をガイドするガイドポストである。以下、詳細に説明する。
【0024】
図1に示すように、打ち抜き金型装置10の下型15には、板材12を順送りする際に、板材12を下型15の上面位置から上昇させるリフタ部18が設けられている。そして、リフタ部18は、パターン形成用の複数の加工ステーション及び加工ステーション14のそれぞれの外周領域及び各加工ステーション間に複数設置される第1のリフタ19を有する第1のリフタ群20と、鉄心片11の外形抜き用打ち抜き孔13の周囲に複数設置される第2のリフタ21を有する第2のリフタ群22とを備えている。なお、
図1では、第1、第2のリフタ19、21は、下型15内における配置関係を明確にするため、模式的に示している。
そして、第2のリフタ21は、
図2、
図3に示すように、外形抜き用打ち抜き孔13が中央部に形成されたブランクダイ23の上面に、外形抜き用打ち抜き孔13の内周に沿って環状に配置されており、しかも、第2のリフタ21の上昇高さは、第1のリフタ19の上昇高さより低くなっている。
【0025】
図4(A)に示すように、第2のリフタ21は、側面視して、板材12と接触する先部24に向けて幅が徐々に減少する、台形形状の一例である等脚台形形状となった載置部25と、載置部25の基側と連接する一定幅を有する支持部26と、支持部26に連接する幅広の取付け部27を有している。また、
図4(B)に示すように、載置部25、支持部26、及び取付け部27の厚みは同一である。なお、載置部25だけ、載置部25の先部24に向けて厚みを徐々に小さくすることも、載置部25、支持部26、及び取付け部27の厚みを、載置部25の先部24に向けて徐々に小さくすることも可能である。
そして、第2のリフタ21は、平面視して、例えば、ブランクダイ23の上面に長手方向を円周方向に向けて、隙間を有して均等配置された矩形状のリフタ収納穴28に弾性部材の一例であるバネ29を介して挿入されている。ここで、リフタ収納穴28は、ブランクダイ23の上面に開口し、取付け部27の幅より幅広となった第1の収納部30と、第1の収納部30の下側と連通し、取付け部27が嵌入可能な幅を備えた第2の収納部31から構成されている。
【0026】
このため、
図4(A)に示すように、リフタ収納穴28に第2のリフタ21を挿入し、第1の収納部30の底面32に、例えば、座金33を介してボルト33aをねじ込んで、座金33を底面32に当接させることにより、座金33を介して取付け部27の長手方向両側を、第2の収納部31の底に向けて押圧することができ、バネ29を圧縮状態にして第2のリフタ21をリフタ収納穴28に取付けることができる。その結果、第2のリフタ21を上方(上型17)に向けて付勢することができ、第2のリフタ21の形状に合わせて第1、第2の収納部30、31の深さを設定すると、第2のリフタ21の載置部25をブランクダイ23の上面から上方に突出させた状態とすることができる。これにより、第2のリフタ21を介して、板材12をブランクダイ23の上面より上方に常時持ち上げることができると共に、鉄心片11の外形抜きを行う際には、上型17と共に下降するストリッパープレートに押圧された板材12を介して第2のリフタ21がブランクダイ23(下型15)内に押し込まれて板材12をブランクダイ23に当接させることができ、ストリッパープレートが上型17と共に上昇するのに伴って第2のリフタ21の先側をブランクダイ23から突出させて、鉄心片11が抜き落とされた板材12を下型15から上昇させることができる。
【0027】
図2に示すように、第1のリフタ19は、平面視して、矩形状であって、長手方向を板材12の順送り方向と平行にして下型15に配置されている。また、第1のリフタ19は、側面視して、板材12と接触する先部に向けて幅が徐々に減少する台形形状としている。そして、第1のリフタ19は、板材12を均等に支持するように配置するため、設置場所に応じて長手方向の長さが調節されているが、第1のリフタ19が板材12と接触して板材12を載置する第1の支持部38の面積は略同一である。このため、板材12は、第1のリフタ19の先部に引っ掛かることなく移動できる。なお、第1のリフタ19を下型15に取付ける際の構造は、例えば、第2のリフタ21の場合と同様にすることができるので、説明は省略する。これにより、第1のリフタ19を上方に向けて付勢することができ、第1のリフタ19の高さ寸法を予め設定することにより、第1のリフタ19の先側を所定の高さだけ下型15の上面から上方に突出させることができる。その結果、第1のリフタ19を介して、板材12を下型15の上面より上方に所定の高さ常時持ち上げることができると共に、鉄心片11の外形抜きを行う際には、上型17と共に下降するストリッパープレートに押圧された板材12を介して第1のリフタ19が下型15内に押し込まれて板材12を下型15に当接させることができ、ストリッパープレートが上型17と共に上昇するのに伴って第1のリフタ19の先側を下型15から突出させて、鉄心片11が抜き落とされた板材12を下型15から上昇させることができる。
【0028】
板材12と接触する第2のリフタ21の載置部25の先部24の面積は、第1のリフタ19において板材12が接触する第1の支持部38の面積より小さくしている。これにより、板材12を第1、第2のリフタ19、21で持ち上げる場合、第1のリフタ19の上昇高さを、第2のリフタ21の上昇高さより高くしても、板材12を安定して支持する(第1のリフタ19で板材12の自重の大半を支持する)ことができる。その結果、第2のリフタ21に掛かる板材12の自重が減少し、第2のリフタ21と板材12との接触部において発生する摩擦力を低減することができる。
【0029】
図2、
図3において、符号34は下型15に取付けられ、ブランクダイ23を保持するブランクダイホルダ、符号35は順送りされる板材12の幅方向ずれを防止するガイド部である。ここで、ガイド部35は、板材12の幅方向両側をそれぞれ載置するガイド支持部36と、板材12の幅方向両端面にそれぞれ当接するガイドレール37とを有している。なお、ガイド支持部36を下型15に取付ける際の構造は、例えば、第2のリフタ21の場合と同様にすることができるので、説明は省略する。これにより、ガイド支持部36を上方に向けて付勢することができ、ガイド支持部36の高さ寸法を予め設定することにより、ガイド支持部36の先側を第1のリフタ19の先側と同じ高さだけ下型15の上面から上方に突出させることができる。その結果、ガイド支持部36を介して、板材12の幅方向両側を下型15より上方に、しかも第1のリフタ19と同じ高さだけ常時持ち上げることができ、板材12を下型15の上面に対して平行に(即ち水平に)保持することができると共に、鉄心片11の外形抜きを行う際には、上型17と共に下降するストリッパープレートに押圧された板材12を介してガイド支持部36が下型15内に押し込まれて板材12を下型15に当接させることができ、ストリッパープレートが上型17と共に上昇するのに伴ってガイド支持部36の先側を下型15から突出させて、鉄心片11が抜き落とされた板材12の幅方向両側を下型15から上昇させることができる。
【0030】
本発明の一実施の形態に係る打ち抜き金型装置10を用いた積層鉄心の製造方法は、
図1〜
図3に示すように、積層鉄心を形成する鉄心片11のパターンを形成する打ち抜き孔を備えたパターン形成用の加工ステーション及びパターンが完成した領域を外形抜きして鉄心片11を形成する外形抜き用打ち抜き孔13を備えた加工ステーション14が並べて設けられた下型15と、下型15に対向して下型15の上方に配置され、パターン形成用の加工ステーションの打ち抜き孔とそれぞれ対となる打ち抜きパンチ及び外形抜き用打ち抜き孔13と対となる打ち抜きパンチ16を備えて上下動する上型17とを有する打ち抜き金型装置10に、板材12を順送りし、順送りされる板材12をパターン形成用の各加工ステーションで順次打ち抜いて所望パターンを形成した後、加工ステーション14で外形抜き用打ち抜き孔13内に外形抜きして鉄心片11を形成し、得られた鉄心片11を下型15内で転積(積層の一例)して積層鉄心を形成している。ここで、転積は、鉄心片11を1枚毎又は複数枚毎に行う。
【0031】
そして、下型15に、板材12を順送りする際に、板材12を下型15の上面位置から上昇させるリフタ部18と、順送りされる板材12の幅方向ずれを防止するガイド部35とを設け、しかも、リフタ部18を、各加工ステーションの外周領域に設置する第1のリフタ19を有する第1のリフタ群20と、鉄心片11の外形抜き用打ち抜き孔13の周囲に設置する第2のリフタ21を有する第2のリフタ群22で構成すると共に、第2のリフタ21の上昇距離(高さ)を、第1のリフタ19の上昇距離より短くして、板材12の一部を第2のリフタ21で支持した状態で、鉄心片11の転積を行って、板材12の順送りを行っている。第2のリフタ21の上昇高さを、第1のリフタ19の上昇高さより低くするので、第2のリフタ21に掛かる板材12の自重を減少させることができ、第2のリフタ21と板材12との接触部において摺り疵や磨耗等の機械的損傷に伴って板材カスが発生することを防止できる。これにより、板材カスにより製造する積層鉄心に打痕が発生することを防止して、高品質の積層鉄心の製造が可能になる。
【0032】
また、第2のリフタ21を、外形抜き用打ち抜き孔13が形成されたブランクダイ23の上面に、外形抜き用打ち抜き孔13の内周に沿って環状に配置するので、板材12において、鉄心片11の外形抜きで形成された孔の近傍を直接支持することができ、外形抜き用打ち抜き孔13の上方に存在する板材12の撓み量を確実に減少させることができる。これにより、第2のリフタ21の上昇高さを、第1のリフタ19の上昇高さより低くしても、板材12と外形抜き用打ち抜き孔13との引っ掛かりを防止することができる。その結果、積層鉄心の生産性を向上できる。
【0033】
更に、第2のリフタ21に掛かる板材12の自重を減少させると共に、第2のリフタ21を、側面視して、板材12と当接する先部24に向けて幅が減少する等脚台形形状とし、しかも、第2のリフタ21が板材12と接触する面積を、第1のリフタ19が板材12と接触する面積より小さくしているので、転積時に第2のリフタ21を板材12に対してスムーズに移動させることができる。これにより、転積時に第2のリフタ21と板材12との摩擦を小さくすることができ、第2のリフタ21の移動(第2のリフタ21と板材12と間の摩擦力)に伴う板材12の変形(うねりや撓み)を抑えることができる。
【0034】
以上、本発明を、実施の形態を参照して説明してきたが、本発明は何ら上記した実施の形態に記載した構成に限定されるものではなく、特許請求の範囲に記載されている事項の範囲内で考えられるその他の実施の形態や変形例も含むものである。更に、本実施の形態とその他の実施の形態や変形例にそれぞれ含まれる構成要素を組合わせたものも、本発明に含まれる。
例えば、第2のリフタを、ブランクダイを保持するブランクダイホルダの上面に、外形抜き用打ち抜き孔の内周に沿って環状に配置することもできる。また、第2のリフタの形状を、側面視して、板材と1点で接する円弧形状とすることもできる。
【符号の説明】
【0035】
10:打ち抜き金型装置、11:鉄心片、12:板材、13:外形抜き用打ち抜き孔、14:加工ステーション、15:下型、16:打ち抜きパンチ、17:上型、18:リフタ部、19:第1のリフタ、20:第1のリフタ群、21:第2のリフタ、22:第2のリフタ群、23:ブランクダイ、24:先部、25:載置部、26:支持部、27:取付け部、28:リフタ収納穴、29:バネ、30:第1の収納部、31:第2の収納部、32:底面、33:座金、33a:ボルト、34:ブランクダイホルダ、35:ガイド部、36:ガイド支持部、37:ガイドレール、38:第1の支持部、39:ストリッパーホルダ、40:ガイドポスト