【文献】
J. Med. Chem., 1974, Vol.17, No.10, pp.1100-1111
【文献】
Acta Pharm. Suec., 1988, Vol.25, pp.151-162
【文献】
J. Neurol. Neurosurg. Psychiatry, 2005, Vol.76, No.11, pp.1472-1478
【文献】
Eur. J. Pharmacol., 1975, Vol.31, No.1, p94-109
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
4-(2-クロロフェニル)-ブタン-2-アミン、またはその薬学的に許容される塩の治療的有効量を含む、パーキンソン病を患っている患者のレボドパ誘発性ジスキネジアを治療する、改善する、または予防するための薬学的組成物。
レボドパ、クロザピン、ブロモクリプチン、ペルゴリド、プラミペキソール、ロピニロール、ピリベジル、カベルゴリン、アポモルフィン、およびリスリド、その塩、ならびにその混合物からなる群より選択される薬物をさらに含む、請求項1記載の薬学的組成物。
4-(2-クロロフェニル)-ブタン-2-アミン、あるいはその薬学的に許容される塩の治療的有効量を含む、患者のパーキンソン病を治療する、改善する、または予防するための薬学的組成物。
前記組成物が、レボドパ、クロザピン、ブロモクリプチン、ペルゴリド、プラミペキソール、ロピニロール、ピリベジル、カベルゴリン、アポモルフィン、およびリスリド、その塩、ならびにその混合物からなる群より選択される少なくとも1つの薬物をさらに含む、請求項5記載の薬学的組成物。
前記組成物が、レボドパ、クロザピン、ブロモクリプチン、ペルゴリド、プラミペキソール、ロピニロール、ピリベジル、カベルゴリン、アポモルフィン、およびリスリド、その塩、ならびにその混合物からなる群より選択される少なくとも1つの薬物を含む第二の薬学的組成物と併用で用いられる、請求項5記載の薬学的組成物。
【発明を実施するための形態】
【0028】
発明の詳細な説明
本発明は、D
3ドーパミン受容体(SEQ ID NO:1のアミノ酸配列)のためのシグナル伝達経路が特定の耐性および遅い反応停止(SRT)特性を有するとの発見に関する。D
3ドーパミン受容体発現の変化を示す神経障害において、耐性および遅い反応停止(SRT)特性が異常に発現され、病理に寄与すると考えられる。
【0029】
非限定的局面において、D
3受容体におけるアゴニスト誘発性の耐性は受容体の独特のコンフォメーション状態に関連している。この関連性は、D
3受容体の耐性およびSRT特性はリガンド依存的であること、および耐性特異的コンフォメーションを変化させた機能的に選択的なアゴニストは耐性およびSRT特性を消失させることを示唆していた。公知のD
3受容体アゴニストをスクリーニングし、それらの耐性およびSRT特性を消失させる能力を判定することにより、2つのアゴニスト、シス-8-OH-PBZI(PBZI)およびFAUC 73の同定が可能となり、これらはD
3受容体では完全アゴニストであるが、受容体の耐性およびSRT特性を完全に消失させた。これらの新しいD
3受容体アゴニストを伝統的な耐性およびSRT誘導アゴニストと識別するために、これらを総称して非定型D3受容体アゴニストと命名した。PBZIのD
3受容体との相互作用に基づくファーマコフォアモデルを、ハイブリッド構造に基づく(HSB)コンピューターによるスクリーニング法への入力として設計し、D
3受容体耐性およびSRT特性を同様に消失させる、さらなる新規アゴニスト、ES609の同定を可能にした。
【0030】
したがって、本発明はさらに、D
3受容体の耐性および遅い反応停止特性を誘発しない、機能的に選択的な新規D
3ドーパミン受容体アゴニストの発見に関する。1つの局面において、これらのアゴニストは、シグナル伝達経路を優先的に活性化するよりもむしろ、受容体のシグナル伝達特性を改変する。もう1つの局面において、この新しいクラスの非定型D
3受容体アゴニストは、D
3受容体をD
2受容体の機能的等価物へと薬理学的に変換する。
【0031】
この新規クラスの非定型D
3受容体アゴニストの機能特性を、それらのD
3受容体-アデニリルシクラーゼおよびGタンパク質共役型内向き整流性カリウムチャネルシグナル伝達経路を活性化する能力を調べることによって特徴付けた。このD
3アゴニストの新規ファミリーを用いて、パーキンソン病、またはD
3受容体の異所性過剰発現が見られる神経障害を患っている患者のレボドパ誘発性ジスキネジア(LID)を治療、改善または予防しうる。
【0032】
定義
本明細書において用いられる、以下の用語はそれぞれ、この項においてそれに関連する意味を有する。
【0033】
特に記載がないかぎり、本明細書において用いられるすべての技術および科学用語は一般に、本発明が属する分野の当業者によって一般に理解されるものと同じ意味を有する。一般には、本明細書において用いられる命名法ならびに細胞培養、分子遺伝学、有機化学、およびペプチド化学の実験手順は、当技術分野において周知で、一般に用いられるものである。
【0034】
本明細書において用いられる「a」および「an」なる冠詞は、その冠詞の文法上の目的語の1つまたは複数(すなわち、少なくとも1つ)を意味する。例として、「要素(an element)」とは、1つの要素または複数の要素を意味する。
【0035】
本明細書において用いられる「約」なる用語は、当業者には理解され、それを用いる文脈上、いくらか変動すると考えられる。
【0036】
本明細書において用いられる「L-DOPA」なる用語は、L-3,4-ジヒドロキシフェニルアラニンとしても公知のレボドパ、またはその塩を意味する。
【0037】
本明細書において用いられる「キンピロール」または「QP」なる用語は、(4aR,8aR)-5-プロピル-4,4a,5,6,7,8,8a,9-オクタヒドロ-1H-ピラゾロ[3,4-g]キノロンまたはその塩を意味する。
【0038】
本明細書において用いられる「GR218231」なる用語は、(+)-(2R)-1,2,3,4-テトラヒドロ-6-[[(4-メトキシフェニル)スルホニル]メチル]-N,N-ジプロピル-2-ナフタレンアミンまたはその塩を意味する。
【0039】
本明細書において用いられる「PBZI」なる用語は、(3aS,9bR)-3-プロピル-1,2,3a,4,5,9b-ヘキサヒドロベンゾ[e]インドル-8-オールまたはその塩を意味する。
【0040】
本明細書において用いられる「クロザピン」なる用語は、8-クロロ-11-(4-メチルピペラジン-1-イル)-5H-ジベンゾ[b,e][1,4]ジアゼピンまたはその塩を意味する。
【0041】
本明細書において用いられる「WST-1」なる用語は、2-(4-ヨードフェニル)-3-(4-ニトロフェニル)-5-(2,4-ジスルホフェニル)-2H-テトラゾリウム、一ナトリウム塩またはその塩を意味する。
【0042】
本明細書において用いられる「PD128907」なる用語は、(4aR,10bR)-3,4a,4,10b-テトラヒドロ-4-プロピル-2H,5H-[1]ベンゾピラノ-[4,3-b]-1,4-オキサジン-9-オール塩酸塩またはその塩を意味する。
【0043】
本明細書において用いられる「7OH-DPAT」なる用語は、7-ヒドロキシ-N,N-ジプロピル-2-アミノテトラリンまたはその塩を意味する。
【0044】
本明細書において用いられる「6-OHDA」なる用語は、6-ヒドロキシドーパミンまたはその塩を意味する。
【0045】
本明細書において用いられる「プラミペキソール」なる用語は、(S)-N
6-プロピル-4,5,6,7-テトラヒドロ-1,3-ベンゾチアゾール-2,6-ジアミンまたはその塩を意味する。
【0046】
本明細書において用いられる「ロチゴチン」なる用語は、(S)-6-[プロピル(2-チオフェン-2-イルエチル)アミノ]-5,6,7,8-テトラヒドロナフタレン-1-オールまたはその塩を意味する。
【0047】
本明細書において用いられる「ES609」または「ES0609」なる用語は、4-(2-クロロフェニル)-ブタン-2-アミンまたはその塩を意味する。
【0048】
本明細書において用いられる「サリゾタン」なる用語は、1-[(2R)-3,4-ジヒドロ-2H-クロメン-2-イル]-N-([5-(4-フルオロフェニル)ピリジン-3-イル]メチル)メタンアミンまたはその塩を意味する。
【0049】
本明細書において用いられる「FAUC73」なる用語は、(4-エチニルシクロヘキサ-3-エニル)ジプロピルアミンまたはその塩を意味する。
【0050】
本明細書において用いられる「エチクロプリド」なる用語は、3-クロロ-5-エチル-N-{[(2S)-1-エチルピロリジン-2-イル]メチル}-6-ヒドロキシ-2-メトキシベンズアミドまたはその塩を意味する。
【0051】
本明細書において用いられる「LID」なる用語は、レボドパ誘発性ジスキネジアを意味する。
【0052】
本明細書において用いられる、D
3受容体に適用される場合の「耐性特性」なる用語は、ドーパミンを含む伝統的アゴニストによる反復刺激後の、受容体シグナル伝達機能における漸進性の低下を意味する。
【0053】
本明細書において用いられる、D
3受容体に適用される場合の「SRT特性」または「遅い反応停止」なる用語は、アゴニスト除去後の、D
3受容体のシグナル伝達機能を停止するのにかかる時間の増大を意味する。
【0054】
本明細書において用いられる「ポリペプチド」なる用語は、ペプチド結合を介して連結されたアミノ酸残基、関連する天然の構造変種、およびその合成非天然類縁体からなるポリマーを意味する。合成ポリペプチドは、例えば、自動ポリペプチド合成機を用いて合成してもよい。本明細書において用いられる「タンパク質」なる用語は、典型的には、大きいポリペプチドを意味する。本明細書において用いられる「ペプチド」なる用語は、典型的には、短いポリペプチドを意味する。ポリペプチド配列を表すために通常の表記法を本明細書において用いる:ポリペプチド配列の左端はアミノ末端であり、ポリペプチド配列の右端はカルボキシル末端である。
【0055】
本明細書において用いられるアミノ酸は、以下に示すその完全な名称、それに対応する三文字コード、またはそれに対応する一文字コードで表す。
【0056】
本明細書において用いられる「治療」または「治療すること」なる用語は、LID、LIDの症状またはLIDを発生する可能性を治癒する、治す、緩和する、軽減する、変える、矯正する、回復させる、改善する、または影響をおよぼすための、治療薬、すなわち、本発明の化合物(単独または別の薬学的物質との組み合わせで)の患者への適用もしくは投与、またはLID、LIDの症状もしくはLIDを発生する可能性を有する患者からの単離組織もしくは細胞株への治療薬の適用もしくは投与(例えば、診断またはエクスビボ適用のため)と定義される。「治療」または「治療すること」なる用語は、パーキンソン病、パーキンソン病の症状またはパーキンソン病を発生する可能性を治癒する、治す、緩和する、軽減する、変える、矯正する、回復させる、改善する、または影響をおよぼすための、治療薬、すなわち、本発明の化合物(単独または別の薬学的物質との組み合わせで)の患者への適用もしくは投与、またはパーキンソン病、パーキンソン病の症状もしくはパーキンソン病を発生する可能性を有する患者からの単離組織もしくは細胞株への治療薬の適用もしくは投与(例えば、診断またはエクスビボ適用のため)とも定義される。そのような治療は、薬理ゲノミクスの分野から得た知識に基づいて、特に調整または改変してもよい。
【0057】
本明細書において用いられる「予防する」または「予防」なる用語は、何も起こっていない場合には、障害もしくは疾患発生がないこと、または障害もしくは疾患の発生がすでにある場合には、さらなる障害もしくは疾患発生がないことを意味する。同様に考えられるのは、障害または疾患に関連する症状のいくつか、またはすべてを予防するための1つの能力である。
【0058】
本明細書において用いられる「患者」または「対象」なる用語は、ヒトまたは非ヒト哺乳動物を意味する。非ヒト哺乳動物には、例えば、ヒツジ、ウシ、ブタ、イヌ、ネコおよびマウス哺乳動物などの、家畜およびペットが含まれる。好ましくは、患者または対象はヒトである。
【0059】
本明細書において用いられる「有効量」、「薬学的有効量」および「治療的有効量」なる用語は、所望の生物学的結果を提供するための、物質の非毒性であるが、十分な量を意味する。その結果は疾患の徴候、症状、もしくは原因の低減および/もしくは緩和、または生物系の任意の他の所望の変化でありうる。任意の個々の症例における適切な治療量は、当業者であれば日常的実験を用いて決定しうる。
【0060】
本明細書において用いられる「薬学的に許容される」なる用語は、化合物の生物活性または特性を抑止せず、相対的に非毒性である、担体または希釈剤などの材料を意味し、すなわち、材料は、望ましくない生物効果を引き起こすことなく、またはそれが含まれる組成物の成分のいずれとも有害な様式で相互作用することなく、個人に投与しうる。
【0061】
本明細書において用いられる「薬学的に許容される塩」なる用語は、無機酸、有機酸、溶媒和物、水和物、またはその包接化合物を含む、薬学的に許容される非毒性の酸から調製した、投与化合物の塩を意味する。そのような無機酸の例は、塩酸、臭化水素酸、ヨウ化水素酸、硫酸、およびリン酸である。適切な有機酸は、例えば、有機酸の脂肪族、芳香族、カルボン酸およびスルホン酸クラスから選択してもよく、その例はギ酸、酢酸、プロピオン酸、コハク酸、カンファースルホン酸、クエン酸、フマル酸、グルコン酸、イセチオン酸、乳酸、リンゴ酸、粘液酸、酒石酸、パラトルエンスルホン酸、グリコール酸、グルクロン酸、マレイン酸、フロン酸、グルタミン酸、安息香酸、アントラニル酸、サリチル酸、フェニル酢酸、マンデル酸、エンボン酸(パモ酸)、メタンスルホン酸、エタンスルホン酸、パントテン酸、ベンゼンスルホン酸(ベシレート)、ステアリン酸、スルファニル酸、アルギン酸、ガラクツロン酸などである。
【0062】
本明細書において用いられる「組成物」または「薬学的組成物」なる用語は、本発明において有用な少なくとも1つの化合物の薬学的に許容される担体との混合物を意味する。薬学的組成物は化合物の患者への投与を容易にする。静脈内、経口、エアロゾル、非経口、眼、肺および局所投与を含むが、それらに限定されるわけではない、化合物を投与する複数の技術が当技術分野において存在する。
【0063】
本明細書において用いられる「薬学的に許容される担体」なる用語は、患者内で、または患者に対して本発明において有用な化合物を、それがその意図される機能を実施しうるように、運搬または輸送することに関与する、液体もしくは固体充填剤、安定化剤、分散剤、懸濁化剤、希釈剤、賦形剤、増粘剤、溶媒またはカプセル化材料などの、薬学的に許容される材料、組成物または担体を意味する。典型的には、そのような作成物を1つの器官、または体の部分から、別の器官、または体の部分に運搬または輸送する。各担体は、本発明において有用な化合物を含む、製剤の他の成分と適合性であり、患者に対して有害でないという意味で「許容され」なければならない。薬学的に許容される担体として役立ちうる材料のいくつかの例には:ラクトース、グルコースおよびスクロースなどの糖;トウモロコシデンプンおよびジャガイモデンプンなどのデンプン;カルボキシメチルセルロースナトリウム、エチルセルロースおよび酢酸セルロースなどのセルロースおよびその誘導体;粉末トラガカント;麦芽;ゼラチン;タルク;カカオ脂および坐剤ワックスなどの賦形剤;落花生油、綿実油、ベニバナ油、ゴマ油、オリーブ油、トウモロコシ油およびダイズ油などの油;プロピレングリコールなどのグリコール;グリセリン、ソルビトール、マンニトールおよびポリエチレングリコールなどのポリオール;オレイン酸エチルおよびラウリン酸エチルなどのエステル;寒天;水酸化マグネシウムおよび水酸化アルミニウムなどの緩衝化剤;界面活性剤;アルギン酸;発熱源を含まない水;等張食塩水;リンゲル液;エチルアルコール;リン酸緩衝溶液;ならびに薬学的製剤において用いられる他の非毒性適合性物質が含まれる。本明細書において用いられる「薬学的に許容される担体」には、本発明において有用な化合物の活性と適合性であり、患者に対して生理的に許容される、任意の、およびすべてのコーティング、抗菌および抗真菌剤、ならびに吸収遅延剤なども含まれる。補助的活性化合物も、組成物中に組み込んでもよい。「薬学的に許容される担体」は、本発明において有用な化合物の薬学的に許容される塩をさらに含みうる。本発明の実施において用いる薬学的組成物中に含まれていてもよい、他のさらなる成分は、当技術分野において公知であり、例えば、Remington's Pharmaceutical Sciences(Genaro, Ed., Mack Publishing Co., 1985, Easton, PA)に記載されており、これは参照により本明細書に組み入れられる。
【0064】
本明細書において用いられる「アルキル」なる用語は、それ自体で、または別の置換基の一部として、特に記載がないかぎり、指定の数の炭素原子(すなわち、C
1-6は1から6個の炭素原子を意味する)を有する直鎖または分枝鎖炭化水素を意味し、直鎖、分枝鎖、または環式置換基を含む。例には、メチル、エチル、プロピル、イソプロピル、ブチル、イソブチル、tert-ブチル、ペンチル、ネオペンチル、ヘキシル、およびシクロプロピルメチルが含まれる。最も好ましいのは(C
1〜C
6)アルキル、特にエチル、メチル、イソプロピル、イソブチル、n-ペンチル、n-ヘキシルおよびシクロプロピルメチルである。
【0065】
本明細書において用いられる「置換アルキル」なる用語は、ハロゲン、-OH、アルコキシ、-NH
2、-N(CH
3)
2、-C(=O)OH、トリフルオロメチル、-C≡N、-C(=O)O(C
1〜C
4)アルキル、-C(=O)NH
2、-SO
2NH
2、-C(=NH)NH
2、およびNO
2からなる群より選択される1、2または3つの置換基で置換されており、好ましくはハロゲン、-OH、アルコキシ、-NH
2、トリフルオロメチル、-N(CH
3)
2、および-C(=O)OHから選択され、より好ましくはハロゲン、アルコキシおよび-OHから選択される1または2つの置換基を含む、前述の定義のアルキルを意味する。置換アルキルの例には、2,2-ジフルオロプロピル、2-カルボキシシクロペンチルおよび3-クロロプロピルが含まれるが、それらに限定されるわけではない。
【0066】
本明細書において用いられる「アルコキシ」なる用語は、単独または他の用語との組み合わせで用いられ、特に記載がないかぎり、例えば、メトキシ、エトキシ、1-プロポキシ、2-プロポキシ(イソプロポキシ)ならびに高級ホモログおよび異性体などの、酸素原子を介して分子の残部に連結されている、前述の定義の、指定の数の炭素原子を有するアルキル基を意味する。好ましいのは、(C
1〜C
3)アルコキシ、特にエトキシおよびメトキシである。
【0067】
本明細書において用いられる「ハロ」または「ハロゲン」なる用語は、単独または別の置換基の一部として、特に記載がないかぎり、フッ素、塩素、臭素、またはヨウ素原子、好ましくはフッ素、塩素、または臭素、より好ましくはフッ素または塩素を意味する。
【0068】
本明細書において用いられる「ヘテロアルキル」なる用語は、それ自体で、または別の用語との組み合わせで、特に記載がないかぎり、明記された数の炭素原子ならびにO、N、およびSからなる群より選択される1または2つのヘテロ原子からなる安定な直鎖または分枝鎖アルキル基を意味し、ここで窒素および硫黄原子は任意に酸化されていてもよく、窒素ヘテロ原子は任意に4級化されていてもよい。ヘテロ原子は、ヘテロアルキル基の残部とそれが連結している断片との間を含む、ヘテロアルキル基の任意の位置にあってもよく、同様にヘテロアルキル基の最も遠位の炭素原子に連結していてもよい。例には:-O-CH
2-CH
2-CH
3、-CH
2-CH
2-CH
2-OH、-CH
2-CH
2-NH-CH
3、-CH
2-S-CH
2-CH
3、および-CH
2CH
2-S(=O)-CH
3が含まれる。例えば、-CH
2-NH-OCH
3または-CH
2-CH
2-S-S-CH
3のように、最大2つのヘテロ原子が連続していてもよい。
【0069】
本明細書において用いられる「芳香族」なる用語は、1つまたは複数の多価不飽和環を有し、かつ芳香族特性、すなわち(4n+2)非局在化π(パイ)電子を有し、ここでnは整数である、炭素環または複素環を意味する。
【0070】
本明細書において用いられる「アリール」なる用語は、単独または他の用語との組み合わせで用いられ、特に記載がないかぎり、1つまたは複数の環(典型的には、1、2または3つの環)を含む炭素環式芳香族系を意味し、ここでそのような環は、ビフェニルのように、ぶらさがる様式で一緒に連結してもよく、またはナフタレンのように、縮合してもよい。例には、フェニル、アントラシル、およびナフチルが含まれる。好ましいのはフェニルおよびナフチルであり、最も好ましいのはフェニルである。
【0071】
本明細書において用いられる「アリール-(C
1〜C
3)アルキル」なる用語は、炭素1から3個のアルキレン鎖がアリール基に連結している官能基、例えば、-CH
2CH
2-フェニルを意味する。好ましいのはアリール-CH
2-およびアリール-CH(CH
3)-である。「置換アリール-(C
1〜C
3)アルキル」なる用語は、アリール基が置換されている、アリール-(C
1〜C
3)アルキル官能基を意味する。好ましいのは、置換アリール(CH
2)-である。同様に、「ヘテロアリール-(C
1〜C
3)アルキル」なる用語は、炭素1から3個のアルキレン鎖がヘテロアリール基に連結している官能基、例えば、-CH
2CH
2-ピリジルを意味する。好ましいのはヘテロアリール-(CH
2)-である。「置換ヘテロアリール-(C
1〜C
3)アルキル」なる用語は、ヘテロアリール基が置換されている、ヘテロアリール-(C
1〜C
3)アルキル官能基を意味する。好ましいのは、置換ヘテロアリール(CH
2)-である。
【0072】
本明細書において用いられる「複素環」または「ヘテロシクリル」または「複素環式」なる用語は、それ自体で、または別の置換基の一部として、特に記載がないかぎり、炭素原子ならびにN、O、およびSからなる群より選択される少なくとも1つのヘテロ原子からなる、無置換または置換された、安定な、単環式または多環式複素環系を意味し、ここで窒素および硫黄ヘテロ原子は任意に酸化されていてもよく、窒素原子は任意に4級化されていてもよい。複素環系は、特に記載がないかぎり、安定な構造を提供する任意のヘテロ原子または炭素原子で連結してもよい。複素環は性質上、芳香族または非芳香族でありうる。1つの態様において複素環はヘテロアリールである。
【0073】
本明細書において用いられる「ヘテロアリール」または「ヘテロ芳香族」なる用語は、芳香族特性を有する複素環を意味する。多環式ヘテロアリールは、部分飽和である1つまたは複数の環を含んでいてもよい。例には、テトラヒドロキノリンおよび2,3-ジヒドロベンゾフリルが含まれる。
【0074】
非芳香族複素環の例には、アジリジン、オキシラン、チイラン、アゼチジン、オキセタン、チエタン、ピロリジン、ピロリン、イミダゾリン、ピラゾリジン、ジオキソラン、スルホラン、2,3-ジヒドロフラン、2,5-ジヒドロフラン、テトラヒドロフラン、チオファン、ピペリジン、1,2,3,6-テトラヒドロピリジン、1,4-ジヒドロピリジン、ピペラジン、モルホリン、チオモルホリン、ピラン、2,3-ジヒドロピラン、テトラヒドロピラン、1,4-ジオキサン、1,3-ジオキサン、ホモピペラジン、ホモピペリジン、1,3-ジオキセパン、4,7-ジヒドロ-1,3-ジオキセピンおよびヘキサメチレンオキシドなどの単環式基が含まれる。
【0075】
ヘテロアリール基の例には、ピリジル、ピラジニル、ピリミジニル(特に2-および4-ピリミジニル)、ピリダジニル、チエニル、フリル、ピロリル(特に2-ピロリル)、イミダゾリル、チアゾリル、オキサゾリル、ピラゾリル(特に3-および5-ピラゾリル)、イソチアゾリル、1,2,3-トリアゾリル、1,2,4-トリアゾリル、1,3,4-トリアゾリル、テトラゾリル、1,2,3-チアジアゾリル、1,2,3-オキサジアゾリル、1,3,4-チアジアゾリルおよび1,3,4-オキサジアゾリルが含まれる。
【0076】
多環式複素環の例には、インドリル(特に3-、4-、5-、6-よび7-インドリル)、インドリニル、キノリル、テトラヒドロキノリル、イソキノリル(特に1-および5-イソキノリル)、1,2,3,4-テトラヒドロイソキノリル、シンノリニル、キノキサリニル(特に2-および5-キノキサリニル)、キナゾリニル、フタラジニル、1,8-ナフチリジニル、1,4-ベンゾジオキサニル、クマリン、ジヒドロクマリン、1,5-ナフチリジニル、ベンゾフリル(特に3-、4-、5-、6-および7-ベンゾフリル)、2,3-ジヒドロベンゾフリル、1,2-ベンズイソキサゾリル、ベンゾチエニル(特に3-、4-、5-、6-、および7-ベンゾチエニル)、ベンゾキサゾリル、ベンゾチアゾリル(特に2-ベンゾチアゾリルおよび5-ベンゾチアゾリル)、プリニル、ベンズイミダゾリル(特に2-ベンズイミダゾリル)、ベンズトリアゾリル、チオキサンチニル、カルバゾリル、カルボリニル、アクリジニル、ピロリジジニル、およびキノリジジニルが含まれる。
【0077】
ヘテロシクリルおよびヘテロアリール部分の前述の一覧は、代表的なものを指しており、限定的なものではない。
【0078】
本明細書において用いられる「置換(されている)」なる用語は、原子または原子群が別の基に連結している置換基として水素に置き換わっていることを意味する。
【0079】
アリール、アリール-(C
1〜C
3)アルキルおよびヘテロシクリル基について、これらの基の環に適用される「置換(されている)」なる用語は、そのような置換が可能な、任意のレベルの置換、すなわち、一、二、三、四、または五置換を意味する。置換基は独立に選択され、置換は任意の化学的に利用可能な位置でありうる。1つの態様において、置換基の数は1から4の間で変動する。もう1つの態様において、置換基の数は1から3の間で変動する。さらにもう1つの態様において、置換基の数は1から2の間で変動する。さらにもう1つの態様において、置換基はC
1-6アルキル、-OH、C
1-6アルコキシ、ハロ、アミノ、アセトアミドおよびニトロからなる群より独立に選択される。さらにもう1つの態様において、置換基はC
1-6アルキル、C
1-6アルコキシ、ハロ、アセトアミド、およびニトロからなる群より独立に選択される。本明細書において用いられる、置換基がアルキルまたはアルコキシ基である場合、炭素鎖は分枝、直鎖または環式であってもよく、直鎖が好ましい。
【0080】
本明細書において用いられる「説明材料」には、本発明の化合物の有用性を伝達するために用いうる、出版物、記録、図、または任意の他の表現媒体が含まれる。いくつかの場合において、説明材料は、本明細書において列挙する様々な疾患または障害の緩和または治療を行うために有用なキットの一部であってもよい。任意に、または代わりに、説明材料は哺乳動物の細胞または組織における疾患または障害を緩和する、1つまたは複数の方法を記載してもよい。キットの説明材料は、例えば、本発明の化合物を含む容器に添付されていてもよく、または化合物を含む容器と一緒に輸送されてもよい。または、説明材料は、受容者が説明材料および化合物を連携して用いることを意図して、容器とは別に輸送してもよい。例えば、説明材料はキットの使用について;化合物の使用についての説明;または化合物の製剤の使用についての説明である。
【0081】
本発明の化合物
本発明において有用な化合物は、有機合成の分野において周知の技術を用いて合成してもよい。
【0082】
1つの局面において、本発明において有用な化合物は式(I)を有するかまたはその薬学的に許容される塩である:
式(I)中:
R
1、R
2およびR
3はH、シアノ、ヒドロキシル、アミノ、アセトアミド、ハロ、アルコキシ、ニトロ、C
1-6アルキル、置換C
1-6アルキル、ヘテロアルキル、ヘテロシクリル、置換ヘテロシクリル、アリール、置換アリール、アリール-(C
1-3)アルキル、置換アリール-(C
1-3)アルキル、カルボキシ、アルキルカルボキシ、ホルミル、アルキル-カルボニル、アリール-カルボニル、およびヘテロアリール-カルボニルからなる群より独立に選択され;
R
4およびR
5はH、C
1-6アルキル、置換C
1-6アルキル、ヘテロアルキル、ヘテロシクリル、置換ヘテロシクリル、アリール、置換アリール、アリール-(C
1-3)アルキル、および置換アリール-(C
1-3)アルキルからなる群より独立に選択され;かつ、
nは2、3、4または5である。
【0083】
1つの態様において、R
1、R
2およびR
3はH、シアノ、ヒドロキシル、アミノ、アセトアミド、ハロ、アルコキシ、ニトロ、C
1-6アルキル、置換C
1-6アルキル、ヘテロアルキル、ヘテロシクリル、置換ヘテロシクリル、カルボキシ、アルキルカルボキシ、ホルミル、アルキル-カルボニル、アリール-カルボニル、およびヘテロアリール-カルボニルからなる群より独立に選択される。もう1つの態様において、R
1、R
2およびR
3はH、シアノ、ヒドロキシル、アミノ、アセトアミド、ハロ、アルコキシ、ニトロ、C
1-6アルキル、置換C
1-6アルキル、ヘテロアルキル、カルボキシ、アルキルカルボキシ、ホルミル、およびアルキル-カルボニルからなる群より独立に選択される。さらにもう1つの態様において、R
1、R
2およびR
3はH、シアノ、ヒドロキシル、アミノ、アセトアミド、ハロ、アルコキシ、ニトロ、C
1-6アルキル、置換C
1-6アルキル、ヘテロアルキル、およびカルボキシからなる群より独立に選択される。さらにもう1つの態様において、R
1、R
2およびR
3はH、シアノ、ヒドロキシル、アミノ、アセトアミド、ハロ、アルコキシ、ニトロ、C
1-6アルキル、およびカルボキシからなる群より独立に選択される。さらにもう1つの態様において、R
1、R
2およびR
3はH、シアノ、ハロ、アルコキシ、ニトロ、C
1-6アルキル、およびカルボキシからなる群より独立に選択される。さらにもう1つの態様において、R
1およびR
2はHであり、かつR
3はクロロである。さらにもう1つの態様において、R
1、R
2およびR
3はH、フルオロ、クロロ、ブロモ、ヨード、メトキシ、エトキシ、ヒドロキシル、メチル、エチルまたは他のC
1-6アルキルからなる群より独立に選択される。
【0084】
1つの態様において、nは2、3または4である。もう1つの態様において、nは2または3である。さらにもう1つの態様において、nは2である。
【0085】
1つの態様において、R
4およびR
5はH、C
1-6アルキル、置換C
1-6アルキル、ヘテロアルキル、ヘテロシクリル、置換ヘテロシクリル、アリール、および置換アリールからなる群より独立に選択される。もう1つの態様において、R
4およびR
5はH、C
1-6アルキル、置換C
1-6アルキル、ヘテロアルキル、ヘテロシクリル、および置換ヘテロシクリルからなる群より独立に選択される。さらにもう1つの態様において、R
4およびR
5はH、C
1-6アルキル、置換C
1-6アルキル、およびヘテロアルキルからなる群より独立に選択される。さらにもう1つの態様において、R
4およびR
5はH、C
1-6アルキル、および置換C
1-6アルキルからなる群より独立に選択される。さらにもう1つの態様において、R
4およびR
5はメチルである。さらにもう1つの態様において、R
5はH、メチル、エチル、プロパ-1-イル、プロパ-2-イル、ヒドロキシメチル、1-ヒドロキシ-エチル、2-ヒドロキシ-エチル、1-ヒドロキシ-プロパ-1-イル、2-ヒドロキシ-プロパ-1-イル、3-ヒドロキシ-プロパ-1-イル、1-ヒドロキシ-プロパ-2-イルまたは2-ヒドロキシ-プロパ-2-イルである。
【0086】
1つの態様において、本発明において有用な化合物は下記からなる群より選択される:
2-アミノ-4-(2-クロロフェニル)ブタン-1-オール
;
2-(3-アミノヘキシル)フェノール
;
4-(2-クロロフェニル)-ブタン-2-アミン
;
4-(2-クロロフェニル)-2-メチルアミノ-ブタン(4-(2-クロロフェニル)-N-メチルブタン-2-アミンとしても公知)
;
4-(2-フルオロフェニル)ブタン-2-アミン
;
4-(2-ブロモフェニル)ブタン-2-アミン
;
4-(2-ヨードフェニル)ブタン-2-アミン
;
4-(2-メトキシフェニル)ブタン-2-アミン
;
2-(3-アミノブチル)フェノール
;
3-(3,4-ジエトキシフェニル)プロパン-1-アミン
;
4-(4-クロロフェニル)ブタン-2-アミン
;
4-(4-メトキシフェニル)ブタン-2-アミン
;
その混合物、またはその薬学的に許容される塩。
【0087】
もう1つの局面において、本発明において有用な化合物は式(IIa)もしくは(IIb)を有するかまたはその薬学的に許容される塩である:
式(IIa)または(IIb)中:
R
1およびR
2はH、シアノ、ヒドロキシル、アミノ、アセトアミド、ハロ、アルコキシ、ニトロ、C
1-6アルキル、置換C
1-6アルキル、ヘテロアルキル、ヘテロシクリル、置換ヘテロシクリル、アリール、置換アリール、アリール-(C
1-3)アルキル、置換アリール-(C
1-3)アルキル、カルボキシ、アルキルカルボキシ、ホルミル、アルキル-カルボニル、アリール-カルボニル、およびヘテロアリール-カルボニルからなる群より独立に選択され;
R
3およびR
4はH、C
1-6アルキル、アリール、ヘテロアリール、および置換C
1-6アルキルからなる群より独立に選択され;
R
5はH、C
1-6アルキル、置換C
1-6アルキル、ヘテロアルキル、ヘテロシクリル、置換ヘテロシクリル、アリール、置換アリール、アリール-(C
1-3)アルキル、および置換アリール-(C
1-3)アルキルからなる群より選択され;かつ、
mは1、2、3もしくは4である。
【0088】
1つの態様において、R
1およびR
2はH、シアノ、ヒドロキシル、アミノ、アセトアミド、ハロ、アルコキシ、ニトロ、C
1-6アルキル、置換C
1-6アルキル、カルボキシ、アルキルカルボキシ、ホルミル、アルキル-カルボニル、アリール-カルボニル、およびヘテロアリール-カルボニルからなる群より独立に選択される。もう1つの態様において、R
1およびR
2はH、シアノ、ヒドロキシル、ハロ、およびアルコキシ、C
1-6アルキル、および置換C
1-6アルキルからなる群より独立に選択される。
【0089】
1つの態様において、R
3およびR
4はH、およびC
1-6アルキルからなる群より独立に選択される。
【0090】
1つの態様において、R
5はH、C
1-6アルキル、および置換C
1-6アルキルからなる群より選択される。
【0091】
1つの態様において、mは1、2または3である。
【0092】
1つの態様において、本発明において有用な化合物は下記からなる群より選択される
2-(5-クロロ-1-メチル-1H-インドル-3-イル)エタンアミン
;
1-(5-フルオロ-1-メチル-1H-インドル-3-イル)プロパン-2-アミン
;
1-(5-メトキシ-1-メチル-1H-インドル-3-イル)プロパン-2-アミン
;
その混合物、またはその薬学的に許容される塩。
【0093】
さらにもう1つの局面において、本発明において有用な化合物は下記からなる群より選択される:
2,7-ジアミノ-5-(4-フルオロフェニル)-4-オキソ-3,4,5,6-テトラヒドロピリド[2,3-d]ピリミジン-6-カルボニトリル
(Z)-2-(1H-ベンゾ[d]イミダゾル-2-イル)-N'-ヒドロキシ-3-(4-メトキシフェニル)プロパンイミドアミド
その混合物、またはその薬学的に許容される塩。
【0094】
発明の方法
1つの局面において、本発明は、パーキンソン病を患っている患者のレボドパ誘発性ジスキネジアを治療する、改善する、または予防する方法を含む。方法は、患者に下記からなる群より選択される少なくとも1つの化合物の治療的有効量を含む薬学的組成物を投与する段階を含む:
式(I)の化合物:
式(I)中:
R
1、R
2およびR
3はH、シアノ、ヒドロキシル、アミノ、アセトアミド、ハロ、アルコキシ、ニトロ、C
1-6アルキル、置換C
1-6アルキル、ヘテロアルキル、ヘテロシクリル、置換ヘテロシクリル、アリール、置換アリール、アリール-(C
1-3)アルキル、置換アリール-(C
1-3)アルキル、カルボキシ、アルキルカルボキシ、ホルミル、アルキル-カルボニル、アリール-カルボニル、およびヘテロアリール-カルボニルからなる群より独立に選択され;
R
4およびR
5はH、C
1-6アルキル、置換C
1-6アルキル、ヘテロアルキル、ヘテロシクリル、置換ヘテロシクリル、アリール、置換アリール、アリール-(C
1-3)アルキル、および置換アリール-(C
1-3)アルキルからなる群より独立に選択され;かつ、
nは2、3、4もしくは5である;
式(IIa)または(IIb)の化合物:
式(IIa)または(IIb)中:
R
1およびR
2はH、シアノ、ヒドロキシル、アミノ、アセトアミド、ハロ、アルコキシ、ニトロ、C
1-6アルキル、置換C
1-6アルキル、ヘテロアルキル、ヘテロシクリル、置換ヘテロシクリル、アリール、置換アリール、アリール-(C
1-3)アルキル、置換アリール-(C
1-3)アルキル、カルボキシ、アルキルカルボキシ、ホルミル、アルキル-カルボニル、アリール-カルボニル、およびヘテロアリール-カルボニルからなる群より独立に選択され;
R
3およびR
4はH、C
1-6アルキル、アリール、ヘテロアリール、および置換C
1-6アルキルからなる群より独立に選択され;
R
5はH、C
1-6アルキル、置換C
1-6アルキル、ヘテロアルキル、ヘテロシクリル、置換ヘテロシクリル、アリール、置換アリール、アリール-(C
1-3)アルキル、および置換アリール-(C
1-3)アルキルからなる群より選択され;かつ、
mは1、2、3もしくは4である;
2,7-ジアミノ-5-(4-フルオロフェニル)-4-オキソ-3,4,5,6-テトラヒドロピリド[2,3-d]ピリミジン-6-カルボニトリル;
(Z)-2-(1H-ベンゾ[d]イミダゾル-2-イル)-N'-ヒドロキシ-3-(4-メトキシフェニル)プロパンイミドアミド;
その混合物、あるいはその薬学的に許容される塩。
【0095】
1つの態様において、R
1、R
2およびR
3はH、シアノ、ヒドロキシル、アミノ、アセトアミド、ハロ、アルコキシ、ニトロ、C
1-6アルキル、置換C
1-6アルキル、ヘテロアルキル、ヘテロシクリル、置換ヘテロシクリル、カルボキシ、アルキルカルボキシ、ホルミル、アルキル-カルボニル、アリール-カルボニル、およびヘテロアリール-カルボニルからなる群より独立に選択される。もう1つの態様において、R
1、R
2およびR
3はH、シアノ、ヒドロキシル、アミノ、アセトアミド、ハロ、アルコキシ、ニトロ、C
1-6アルキル、置換C
1-6アルキル、ヘテロアルキル、カルボキシ、アルキルカルボキシ、ホルミル、およびアルキル-カルボニルからなる群より独立に選択される。さらにもう1つの態様において、R
1、R
2およびR
3はH、シアノ、ヒドロキシル、アミノ、アセトアミド、ハロ、アルコキシ、ニトロ、C
1-6アルキル、置換C
1-6アルキル、ヘテロアルキル、およびカルボキシからなる群より独立に選択される。さらにもう1つの態様において、R
1、R
2およびR
3はH、シアノ、ヒドロキシル、アミノ、アセトアミド、ハロ、アルコキシ、ニトロ、C
1-6アルキル、およびカルボキシからなる群より独立に選択される。さらにもう1つの態様において、R
1、R
2およびR
3はH、シアノ、ハロ、アルコキシ、ニトロ、C
1-6アルキル、およびカルボキシからなる群より独立に選択される。さらにもう1つの態様において、R
1およびR
2はHであり、かつR
3はクロロである。さらにもう1つの態様において、R
1、R
2およびR
3はH、フルオロ、クロロ、ブロモ、ヨード、メトキシ、およびエトキシからなる群より独立に選択される。
【0096】
1つの態様において、R
1およびR
2はH、シアノ、ヒドロキシル、アミノ、アセトアミド、ハロ、アルコキシ、ニトロ、C
1-6アルキル、置換C
1-6アルキル、カルボキシ、アルキルカルボキシ、ホルミル、アルキル-カルボニル、アリール-カルボニル、およびヘテロアリール-カルボニルからなる群より独立に選択される。もう1つの態様において、R
1およびR
2はH、シアノ、ヒドロキシル、ハロ、およびアルコキシ、C
1-6アルキル、および置換C
1-6アルキルからなる群より独立に選択される。
【0097】
1つの態様において、nは2、3または4である。もう1つの態様において、nは2または3である。さらにもう1つの態様において、nは2である。
【0098】
1つの態様において、R
4およびR
5はH、C
1-6アルキル、置換C
1-6アルキル、ヘテロアルキル、ヘテロシクリル、置換ヘテロシクリル、アリール、および置換アリールからなる群より独立に選択される。もう1つの態様において、R
4およびR
5はH、C
1-6アルキル、置換C
1-6アルキル、ヘテロアルキル、ヘテロシクリル、および置換ヘテロシクリルからなる群より独立に選択される。さらにもう1つの態様において、R
4およびR
5はH、C
1-6アルキル、置換C
1-6アルキル、およびヘテロアルキルからなる群より独立に選択される。さらにもう1つの態様において、R
4およびR
5はH、C
1-6アルキル、および置換C
1-6アルキルからなる群より独立に選択される。さらにもう1つの態様において、R
4およびR
5はメチルである。さらにもう1つの態様において、R
5はH、メチル、エチル、プロパ-1-イル、プロパ-2-イル、ヒドロキシメチル、1-ヒドロキシ-エチル、2-ヒドロキシ-エチル、1-ヒドロキシ-プロパ-1-イル、2-ヒドロキシ-プロパ-1-イル、3-ヒドロキシ-プロパ-1-イル、1-ヒドロキシ-プロパ-2-イルまたは2-ヒドロキシ-プロパ-2-イルである。
【0099】
1つの態様において、R
3およびR
4はH、およびC
1-6アルキルからなる群より独立に選択される。
【0100】
1つの態様において、R
5はH、C
1-6アルキル、および置換C
1-6アルキルからなる群より選択される。
【0101】
1つの態様において、mは1、2または3である。
【0102】
1つの態様において、本発明において有用な化合物は下記からなる群より選択される:2-アミノ-4-(2-クロロフェニル)ブタン-1-オール;2-(3-アミノヘキシル)フェノール;4-(2-クロロフェニル)-ブタン-2-アミン;4-(2-クロロフェニル)-2-メチルアミノ-ブタン;4-(2-フルオロフェニル)ブタン-2-アミン;4-(2-ブロモフェニル)ブタン-2-アミン;4-(2-ヨードフェニル)ブタン-2-アミン;4-(2-メトキシフェニル)ブタン-2-アミン;2-(3-アミノブチル)フェノール;3-(3,4-ジエトキシフェニル)プロパン-1-アミン;4-(4-クロロフェニル)ブタン-2-アミン;4-(4-メトキシフェニル)ブタン-2-アミン;2-(5-クロロ-1-メチル-1H-インドル-3-イル)エタンアミン;1-(5-フルオロ-1-メチル-1H-インドル-3-イル)プロパン-2-アミン;1-(5-メトキシ-1-メチル-1H-インドル-3-イル)プロパン-2-アミン;2,7-ジアミノ-5-(4-フルオロフェニル)-4-オキソ-3,4,5,6-テトラヒドロピリド[2,3-d]ピリミジン-6-カルボニトリル;(Z)-2-(1H-ベンゾ[d]イミダゾル-2-イル)-N'-ヒドロキシ-3-(4-メトキシフェニル)プロパンイミドアミド;
その混合物、またはその薬学的に許容される塩。
【0103】
1つの態様において、組成物は、レボドパ、クロザピン、ブロモクリプチン、ペルゴリド、プラミペキソール、ロピニロール、ピリベジル、カベルゴリン、アポモルフィン、およびリスリド、その塩、ならびにその混合物からなる群より選択される薬物をさらに含む。もう1つの態様において、薬学的組成物を患者にレボドパを含む第二の薬学的組成物と同時投与する。さらにもう1つの態様において、薬学的組成物を患者に、レボドパを含む第二の薬学的組成物を患者に投与する前の所与の期間投与する。さらにもう1つの態様において、所与の期間は約2分から約24時間まで変動する。さらにもう1つの態様において、患者はヒトである。
【0104】
もう1つの局面において、本発明は、患者のパーキンソン病を治療する、改善する、または予防する方法を含む。方法は、患者に下記からなる群より選択される少なくとも1つの化合物の治療的有効量を含む薬学的組成物を投与する段階を含む:
式(I)の化合物:
式(I)中:
R
1、R
2およびR
3はH、シアノ、ヒドロキシル、アミノ、アセトアミド、ハロ、アルコキシ、ニトロ、C
1-6アルキル、置換C
1-6アルキル、ヘテロアルキル、ヘテロシクリル、置換ヘテロシクリル、アリール、置換アリール、アリール-(C
1-3)アルキル、置換アリール-(C
1-3)アルキル、カルボキシ、アルキルカルボキシ、ホルミル、アルキル-カルボニル、アリール-カルボニル、およびヘテロアリール-カルボニルからなる群より独立に選択され;
R
4およびR
5はH、C
1-6アルキル、置換C
1-6アルキル、ヘテロアルキル、ヘテロシクリル、置換ヘテロシクリル、アリール、置換アリール、アリール-(C
1-3)アルキル、および置換アリール-(C
1-3)アルキルからなる群より独立に選択され;かつ、
nは2、3、4もしくは5である;
式(IIa)または(IIb)の化合物:
式(IIa)または(IIb)中:
R
1およびR
2はH、シアノ、ヒドロキシル、アミノ、アセトアミド、ハロ、アルコキシ、ニトロ、C
1-6アルキル、置換C
1-6アルキル、ヘテロアルキル、ヘテロシクリル、置換ヘテロシクリル、アリール、置換アリール、アリール-(C
1-3)アルキル、置換アリール-(C
1-3)アルキル、カルボキシ、アルキルカルボキシ、ホルミル、アルキル-カルボニル、アリール-カルボニル、およびヘテロアリール-カルボニルからなる群より独立に選択され;
R
3およびR
4はH、C
1-6アルキル、アリール、ヘテロアリール、および置換C
1-6アルキルからなる群より独立に選択され;
R
5はH、C
1-6アルキル、置換C
1-6アルキル、ヘテロアルキル、ヘテロシクリル、置換ヘテロシクリル、アリール、置換アリール、アリール-(C
1-3)アルキル、および置換アリール-(C
1-3)アルキルからなる群より選択され;かつ、
mは1、2、3もしくは4である;
2,7-ジアミノ-5-(4-フルオロフェニル)-4-オキソ-3,4,5,6-テトラヒドロピリド[2,3-d]ピリミジン-6-カルボニトリル;
(Z)-2-(1H-ベンゾ[d]イミダゾル-2-イル)-N'-ヒドロキシ-3-(4-メトキシフェニル)プロパンイミドアミド;
その混合物、あるいはその薬学的に許容される塩。
【0105】
1つの態様において、R
1、R
2およびR
3はH、シアノ、ヒドロキシル、アミノ、アセトアミド、ハロ、アルコキシ、ニトロ、C
1-6アルキル、置換C
1-6アルキル、ヘテロアルキル、ヘテロシクリル、置換ヘテロシクリル、カルボキシ、アルキルカルボキシ、ホルミル、アルキル-カルボニル、アリール-カルボニル、およびヘテロアリール-カルボニルからなる群より独立に選択される。もう1つの態様において、R
1、R
2およびR
3はH、シアノ、ヒドロキシル、アミノ、アセトアミド、ハロ、アルコキシ、ニトロ、C
1-6アルキル、置換C
1-6アルキル、ヘテロアルキル、カルボキシ、アルキルカルボキシ、ホルミル、およびアルキル-カルボニルからなる群より独立に選択される。さらにもう1つの態様において、R
1、R
2およびR
3はH、シアノ、ヒドロキシル、アミノ、アセトアミド、ハロ、アルコキシ、ニトロ、C
1-6アルキル、置換C
1-6アルキル、ヘテロアルキル、およびカルボキシからなる群より独立に選択される。さらにもう1つの態様において、R
1、R
2およびR
3はH、シアノ、ヒドロキシル、アミノ、アセトアミド、ハロ、アルコキシ、ニトロ、C
1-6アルキル、およびカルボキシからなる群より独立に選択される。さらにもう1つの態様において、R
1、R
2およびR
3はH、シアノ、ハロ、アルコキシ、ニトロ、C
1-6アルキル、およびカルボキシからなる群より独立に選択される。さらにもう1つの態様において、R
1およびR
2はHであり、かつR
3はクロロである。さらにもう1つの態様において、R
1、R
2およびR
3はH、フルオロ、クロロ、ブロモ、ヨード、メトキシ、およびエトキシからなる群より独立に選択される。
【0106】
1つの態様において、R
1およびR
2はH、シアノ、ヒドロキシル、アミノ、アセトアミド、ハロ、アルコキシ、ニトロ、C
1-6アルキル、置換C
1-6アルキル、カルボキシ、アルキルカルボキシ、ホルミル、アルキル-カルボニル、アリール-カルボニル、およびヘテロアリール-カルボニルからなる群より独立に選択される。もう1つの態様において、R
1およびR
2はH、シアノ、ヒドロキシル、ハロ、およびアルコキシ、C
1-6アルキル、および置換C
1-6アルキルからなる群より独立に選択される。
【0107】
1つの態様において、nは2、3または4である。もう1つの態様において、nは2または3である。さらにもう1つの態様において、nは2である。
【0108】
1つの態様において、R
4およびR
5はH、C
1-6アルキル、置換C
1-6アルキル、ヘテロアルキル、ヘテロシクリル、置換ヘテロシクリル、アリール、および置換アリールからなる群より独立に選択される。もう1つの態様において、R
4およびR
5はH、C
1-6アルキル、置換C
1-6アルキル、ヘテロアルキル、ヘテロシクリル、および置換ヘテロシクリルからなる群より独立に選択される。さらにもう1つの態様において、R
4およびR
5はH、C
1-6アルキル、置換C
1-6アルキル、およびヘテロアルキルからなる群より独立に選択される。さらにもう1つの態様において、R
4およびR
5はH、C
1-6アルキル、および置換C
1-6アルキルからなる群より独立に選択される。さらにもう1つの態様において、R
4およびR
5はメチルである。さらにもう1つの態様において、R
5はH、メチル、エチル、プロパ-1-イル、プロパ-2-イル、ヒドロキシメチル、1-ヒドロキシ-エチル、2-ヒドロキシ-エチル、1-ヒドロキシ-プロパ-1-イル、2-ヒドロキシ-プロパ-1-イル、3-ヒドロキシ-プロパ-1-イル、1-ヒドロキシ-プロパ-2-イルまたは2-ヒドロキシ-プロパ-2-イルである。
【0109】
1つの態様において、R
3およびR
4はH、およびC
1-6アルキルからなる群より独立に選択される。
【0110】
1つの態様において、R
5はH、C
1-6アルキル、および置換C
1-6アルキルからなる群より選択される。
【0111】
1つの態様において、mは1、2または3である。
【0112】
1つの態様において、本発明において有用な化合物は下記からなる群より選択される:2-アミノ-4-(2-クロロフェニル)ブタン-1-オール;2-(3-アミノヘキシル)フェノール;4-(2-クロロフェニル)-ブタン-2-アミン;4-(2-クロロフェニル)-2-メチルアミノ-ブタン;4-(2-フルオロフェニル)ブタン-2-アミン;4-(2-ブロモフェニル)ブタン-2-アミン;4-(2-ヨードフェニル)ブタン-2-アミン;4-(2-メトキシフェニル)ブタン-2-アミン;2-(3-アミノブチル)フェノール;3-(3,4-ジエトキシフェニル)プロパン-1-アミン;4-(4-クロロフェニル)ブタン-2-アミン;4-(4-メトキシフェニル)ブタン-2-アミン;2-(5-クロロ-1-メチル-1H-インドル-3-イル)エタンアミン;1-(5-フルオロ-1-メチル-1H-インドル-3-イル)プロパン-2-アミン;1-(5-メトキシ-1-メチル-1H-インドル-3-イル)プロパン-2-アミン;2,7-ジアミノ-5-(4-フルオロフェニル)-4-オキソ-3,4,5,6-テトラヒドロピリド[2,3-d]ピリミジン-6-カルボニトリル;(Z)-2-(1H-ベンゾ[d]イミダゾル-2-イル)-N'-ヒドロキシ-3-(4-メトキシフェニル)プロパンイミドアミド;その混合物、またはその薬学的に許容される塩。
【0113】
1つの態様において、組成物は、レボドパ、クロザピン、ブロモクリプチン、ペルゴリド、プラミペキソール、ロピニロール、ピリベジル、カベルゴリン、アポモルフィン、およびリスリド、その塩、ならびにその混合物からなる群より選択される薬物をさらに含む。もう1つの態様において、患者に、レボドパ、クロザピン、ブロモクリプチン、ペルゴリド、プラミペキソール、ロピニロール、ピリベジル、カベルゴリン、アポモルフィン、およびリスリド、その塩、ならびにその混合物からなる群より選択される薬物を含む組成物をさらに投与する。
【0114】
パーキンソン病を患っている患者におけるLIDの分子的基礎
パーキンソン病を患っている患者におけるLIDの発生の根底にある分子メカニズムは、まだ十分に理解されていない。試験によって、いくつかの遺伝子の発現が運動障害動物において変化していることが明らかにされている。特に、齧歯類および霊長類の両方において、試験により運動障害動物の基底核におけるD
3ドーパミン受容体発現の特異的増大が報告されている。通常D
2ドーパミン受容体を発現する領域における、D
3受容体発現増大の機能上の結果は不明である。
【0115】
機能選択性の概念に従い、リガンドは単一のGPCRに結合したシグナル伝達経路を差別的に活性化しうる(Kenakin, 2003, Trends Pharmacol. Sci. 24(7):346-354;Urban et al., 2007, J. Pharmacol. Exp. Ther. 320(1):1-13)。機能選択性は以前にD
2受容体について報告されている(Gay et al., 2004, Mol. Pharmacol. 66(1):97-105)。D
2様ドーパミン受容体において親和性を有するリガンド、サリゾタンは、D
2LおよびD
4.2ドーパミン受容体で機能選択性を示す(Kuzhikandathil & Bartoszyk, 2006, Neuropharmacology 51:873-884)。サリゾタンはD
2L-およびD
4.2-GIRKチャネルシグナル伝達経路の部分アゴニストであるが、D
2L-およびD
4.2-アデニリルシクラーゼ経路の完全アゴニストである(Kuzhikandathil & Bartoszyk, 2006, Neuropharmacology 51:873-884)。その後の試験により、サリゾタンはD
2Sドーパミン受容体において耐性および遅い反応停止(SRT)特性を誘導することが判明した。これは、差別的にシグナル伝達経路を活性化するのに加えて、特定のアゴニストは耐性および遅い反応停止特性などの固有の受容体特性を調節しうることを示唆している。
【0116】
D
3ドーパミン受容体は、それをD
2ドーパミン受容体と区別する耐性および遅い反応停止(SRT)特性を示す(
図1)。D
3受容体の耐性特性は、ドーパミンを含む伝統的アゴニストによる反復刺激後の、受容体シグナル伝達機能における漸進性の低下を記載する。SRT特性は、アゴニスト除去後の、D
3受容体のシグナル伝達機能を停止するのにかかる時間の増大を記載する。
【0117】
D
3受容体耐性およびSRTは、培養した黒質ニューロン、ならびにアフリカツメガエル卵母細胞、CHO-K1細胞およびAtT-20細胞において異種性に発現されるヒトおよびマウスD
3受容体で観察されている。耐性およびSRT特性は天然アゴニストのドーパミンおよび今日までに試験された様々な合成アゴニストによって誘発される。D
3受容体の耐性およびSRT特性は、広い範囲のアゴニスト濃度で誘発され、10、30、100および1000nMで観察されている。特性はD
3-GIRK、D
3-ACVおよびD
3-MAPキナーゼシグナル伝達経路において明白である。
【0118】
D
2およびD
3受容体の特性の差はニューロン発火の差別的調節を起こす(
図1)。これらの結果は、D
3受容体耐性およびSRT特性の異常発現が運動障害動物の基底核におけるニューロン発火の異常調節を引き起こし、パーキンソン病におけるLIDの発生に寄与しうるモデルを示唆している。このモデルに従い、D
3受容体耐性およびSRT特性を消失させうる場合、運動障害動物の基底核において過剰発現されたD
3受容体によるニューロン発火の調節は、天然に発現されたD
2受容体と類似で、ジスキネジアの発現を防止する可能性があると考えられる。
【0119】
ドーパミンD3アゴニストにおける初期試験
D
3ドーパミン受容体耐性およびSRTを消失させうるアゴニストを同定するために、合成D
3受容体優先アゴニストを機能によりスクリーニングした。化合物の機能活性を、AtT-20細胞株において個別に発現されたヒトD
2、D
3およびD
4ドーパミン受容体を刺激することによって試験した。これらのドーパミン受容体はGタンパク質共役型内向き整流性カリウム(GIRK)チャネルに結合して活性化し、またAtT-20細胞における内因性アデニリルシクラーゼを阻害する(Kuzhikandathil et al., 2004, Mol. Cell. Neurosci. 26:144-155;Westrich & Kuzhikandathil, 2007, Biochim. Biophys. Acta- Mol. Cell Res. 1773:1747-1758)。
【0120】
GIRKチャネルの活性化を、ホールセル電圧固定記録を用いて電気生理学的に測定した(Kuzhikandathil et al., 2004, Mol. Cell. Neurosci. 26:144-155)。新しいリガンドによって誘発されたGIRKチャネル反応を、D
2、D
3およびD
4ドーパミン受容体の伝統的な完全アゴニストであるキンピロールと比較した。アデニリルシクラーゼ阻害を、市販のELISA検定を用いて判定した(Westrich & Kuzhikandathil, 2007, Biochim. Biophys. Acta-Mol. Cell Res. 1773:1747-1758)。
【0121】
初期の機能によるスクリーニングで、シス-8-ヒドロキシ-3-(n-プロピル)-1,2,3a,4,5,9b-ヘキサヒドロ-1H-ベンズ[e]インドール臭化水素酸塩(PBZI)が同定された。この化合物はD
3ドーパミン受容体アゴニストとして報告されているが、それにもかかわらず、本試験は、伝統的なD
3受容体アゴニストとは異なり、PBZIが耐性およびSRT特性を誘発しないことを示している(
図2)。
【0122】
ハイブリッド構造に基づく(HSB)プロトコル
ハイブリッド構造に基づく(HSB)プロトコル(Koratgere & Welsh, 2006, J. Comp. Aided Mol. Des. 20:789-802;
図3)を用いて、耐性およびSRT特性を誘発しないD
3受容体アゴニストの新しいクラスに属するさらなる化合物を同定した。HSBプロトコルは5つの下位相からなる(
図3)。第I相は、供給業者から入手可能な小分子の包括的電子データベースの構築に対応する。第II相は、MDシミュレーションからの3D構造スナップショットから出発するハイブリッドファーマコフォアを用いての化合物の開発およびスクリーニングに対応する。第III相は、ハイブリッドファーマコフォアスクリーニングを通過する化合物を、小分子の拡充されたデータベースを開発するために、クラスター化、フィルタリング、化学的空間解析および分類モデルにかけることに対応する。第IV相は、拡充されたデータベースからの分子のDRD3受容体へのドッキングに対応し、スコアはコンセンサススコアリング法から誘導した。第V相は、最高順位の化合物のすべてのドーパミン受容体に対する活性についての試験に対応する。
【0123】
小分子の包括的電子データベースを開発する:
商業的供給業者からの化合物からなるZincデータベースのサブセット(Irwin & Soichet, 2005, J. Chem. Inf. Models 45:177-82)は、天然物、PDBからのリガンドおよびFDA認可薬物を含む他の化合物とともに、300万近い化合物の完全なデータベースを形成している。すべての化合物はsdf形式のファイルとして得、Mol2形式に変換し、Tripos力場を用いてエネルギーを最小とした。さらに、データベースのすべての分子を、冗長性についてフィルタリングし、それらの対応する供給業者リストに従って改名した。
【0124】
組み合わせたリガンド-タンパク質ファーマコフォアを開発する:
組み合わせたファーマコフォア(ハイブリッドファーマコフォアとも呼ぶ)の生成は方法の重要な段階である。したがって、PBZIとD
3受容体との間の相互作用の基本的特徴を取り込むためにファーマコフォアをカスタマイズすることは重要である。
【0125】
そのような情報をPBZI-D
3受容体複合体の3D構造複合体から得た。D
3受容体の相同性モデルを、ベータ2アドレナリン作動性受容体(B2AR)およびそれに結合した部分インバースアゴニスト(2RH1)の結晶構造を用いて構築した(Cherezov et al., 2007, Science 318(5854):1258-65)。膜貫通(TM)領域およびループ領域は、ベータアドレナリン作動性結晶構造からの対応する残基と著しい相同性を有していた。B2ARの第三の細胞内ループは、D
3受容体の対応するループよりも長く、したがってアラインメントに示した大きい欠失(
図4)はモデル化しなかった。しかし、SRTおよび受容体耐性にとって非常に重要であることが示された、第三の細胞内ループの残りを、B2AR構造から整列させた座標を用いてモデル化した。さらに、全構造を、エネルギー最小化および2nsの長期の作成実行(production run)による分子動力学シミュレーションを用いて精密化した。すべてのシミュレーションをNAMD(Kale et al., 1999, J. Comput. Physics 151(1):283-312)およびCHARMM力場(Brooks et al., 1983, J. Comput. Chem. 4:187-217)を用いて実施した。
【0126】
精密化した構造をさらなるドッキング実験のために用いた。ドーパミン、PD128907およびPBZIをGOLDプログラム(ver4.0)(Jones et al., 1997, J. Mol. Biol. 267:727-48)を用いてドッキングさせた。ドッキングした複合体を、NAMDプログラムを用いてエネルギー最小化した。PBZIとD
3受容体との間の鍵となる相互作用を用いて、ハイブリッドファーマコフォアを構築した(
図5)。TM3のアスパラギン酸との塩橋ならびにTM5およびTM6からの芳香族アミノ酸クラスターとの疎水性相互作用などの、D
3受容体アゴニストを設計するための鍵となる4つのファーマコフォア要素の組み合わせを含む、様々なファーマコフォアモデルを生成した。さらに、TM2とTM3との間の残基の小さい交換は、高選択性D
4アゴニストおよびアンタゴニストを設計する上で助けになることが示された(Kortagere et al., 2004, Mol. Pharmacol. 66:1491-99)。これらの生化学的および機能上の証拠をハイブリッドファーマコフォアの設計に統合し、次いでこれを用いて小分子データベース(前述した)をスクリーニングした。
【0127】
疎水性中核および2つの水素結合受容体-供与体対を用いての予備的スクリーニングにより、ファーマコフォアの条件を満たし、D
3受容体に高スコアでドッキングする、85の化合物を得た。1つの代表的化合物4-(2-クロロフェニル)-ブタン-2-アミン(
図6)をインビトロおよびインビボでの機能の特徴付けに用いた。4-(2-クロロフェニル)-ブタン-2-アミンはD
3受容体において親PBZI化合物と非常に類似してドッキングし、必要とされるAsp110との塩橋相互作用ならびにPhe345およびHis349などの芳香族残基との疎水性芳香族相互作用を生じた(
図6)。
【0128】
化学的空間解析およびクラスター化モジュールをフィルタリングする:
フィルタリングスキーム:
ファーマコフォアに基づくスクリーニングから得た化合物を、CHEMAXONプログラムから誘導した、形状、logP、体積、TPSAおよび分子量などの、それらの物理化学的性質に基づいてクラスター化した。Lipinskiの経験則(rule of five)を第一のフィルターとして適用し、血液脳関門(BBB)透過について化合物をふるい落としうる、BBB透過に基づく回帰モデルが第二レベルのフィルターである(Kortagere et al., 2008, Pharm. Res. 8:1836-45)。BBB回帰モデルは下記のように記載される一般化されたモデルである:
logBB(pred) = 0.3408
*logP - 0.0192
*TPSA + 0.2503
*a_nN + 0.1467
*a_nO + 0.1069
*logs - 0.0011
*mass - 0.0001
*volume 0.0602
*# rot. bonds.
式中:a_nNは窒素原子の数であり、a_nOは酸素原子の数であり、TPSAは位相幾何学的極性表面積であり、logSは溶解度であり、かつlogPは水/オクタノール分配係数および疎水性の尺度であり、かつ# rot. bondsは回転可能な結合の数である。
【0129】
化学的空間解析およびクラスター化技術:
化合物の化学的空間解析を実施して、化合物が1つまたは複数の化学的クラスに属しているかどうかを解析する。クエリー構造に対して化学的に異なるアウトライアーを除去する;しかし、広いカットオフを用いて、母核変換(scaffold hoping)を可能にする。化合物のクラスター化およびQSARに基づく分類を、サポートベクターマシン(SVM)技術を用いて実施する。BBBを透過しうる化合物を分類するため、およびPXR活性化物質を分類するための、SVMに基づくモデルの方法および適用が良好な精度で行われている。
【0130】
したがって、標的に基づいて化合物を分類するため、およびデータベースの拡充を行うために、この方法を採用することは、望ましくない分子のスクリーニングを避けるために有用である。本明細書において開発したデータベース内の分子は立体異性体を含まない。拡充プロセス中、分子の1つのコピーだけを保持することにより、化学的に同一の化合物を冗長により除去する。
【0131】
カスタマイズしたスコアリングスキームを開発する:
予備的ドッキングのためにGOLDプログラムを用いる。確立したリガンドのための活性部位を、半径8Åの球内にリガンドを含みうるすべての残基と規定する。高速ドッキングのために、GOLDドッキングプログラムにおける「ライブラリスクリーニングモード」オプションを用いる。さらに、遺伝的アルゴリズムの非決定論的性質を考慮して、各リガンドについて50の独立したドッキングを実行する。ドッキングした構造の全セットを、分子モデリングパッケージSYBYL(Tripos Inc., St Louis, Missouri, USA)を用いてエネルギー最小化する。ドッキングした受容体-リガンド複合体を、各リガンド原子とタンパク質原子との相互作用の性質に基づき、カスタマイズ可能な知識に基づくスコアリング関数を用いて採点する。方法および規準化スキームの詳細はKortagere et al. (Pharm. Res. 2009, 4:1001-11)に論じられている。さらに、Goldscore、Chemscore、コンタクトスコアおよび形状加重スコアリングスキームを含むコンセンサススコアリングスキームを用いて、化合物を順位付ける。コンセンサススキームを用いてのPXR化合物の分類における最近の適用がKortagere et al.に詳細に記載されている。同様のスキームを実行して、D
3受容体に結合する最高順位の化合物を誘導する。用いるドッキングプログラムは、結合部位でいくらかのレベルの受容体柔軟性を提供する。しかし、このレベルのスクリーニングは計算的に高価で、あまり必要とされないと考えられるため、これを用いて完全な誘導適合モデルを得ることはできない。代替法として、スクリーニングレベルの代わりに最終の25の最もうまくドッキングした分子に対して誘導適合概念を用いるために十分に記載されている、Glideと呼ばれる別のドッキングプログラムを用いてもよい。これにより、(a)最もうまくドッキングした複合体を確実に再ドッキングおよび再スコアリングし;かつ(b)1つのドッキングまたはスコアリングプログラムでドッキングプロセスの複雑さを効率的に捕捉しうるものはないため、複数のドッキングプログラムを用いて、実験による妥当性確認の候補リストに入っている最高順位の分子を確実に効率的にスクリーニングする。
【0132】
さらに、これらの最高順位の化合物のドーパミンD
3受容体に対する選択性を評価するために、これらを他の4つのドーパミン受容体に対してドッキングし、スコアリングする。ドーパミンD
3受容体に対して最高のスコアがついた化合物だけを、反復HSB法におけるリード分子として用いる。新規化合物、4-(2-クロロフェニル)-ブタン-2-アミン(
図7)は耐性およびSRT特性を誘発しないD
3受容体アゴニストとして同定されたため、予備的結果はHSBプロトコルの妥当性を確認した。
【0133】
細胞ベースの検定における新規D3受容体アゴニストの機能、選択性および細胞毒性特性の評価
上で同定したリード化合物を、耐性およびSRT特性を誘導することなくD
3受容体を活性化する、それらの能力を調べるために、細胞ベースの検定において評価する。様々なドーパミン受容体サブタイプにおける選択性を、様々なドーパミン受容体サブタイプを安定に発現しているAtT-20神経内分泌細胞株から機能用量反応曲線を作成することによって評価する。細胞毒性は、内分泌、神経細胞および肝細胞型を代表する3つの異なる細胞株の増殖および細胞死に対するリード化合物の効果を測定することによって評価する。リード化合物が前臨床開発プロトコルを通過して進むかどうかを判定する各基準を
図8に示す。
【0134】
D
3ドーパミン受容体の活性化作用:
化合物がD
3ドーパミン受容体のアゴニストであるかどうかを調べるために、ヒトD
3受容体を安定に発現するAtT-20神経内分泌細胞株を用いる。最初のスクリーニングにおいて、300nMリード化合物のGタンパク質共役型内向き整流性カリウム(GIRK)チャネルを活性化する能力(
図1)をホールセル電圧固定記録を用いて測定する。プロトコルは、ホールセル電圧固定を実施し、アゴニスト誘発性のGIRK反応を測定するために、以前に用いられている。急性のリガンド誘発性のGIRK電流を、等しい濃度の天然アゴニストのドーパミンまたは完全アゴニストのキンピロールによって誘発されるものと比較する。反応の特異性を、非形質移入AtT-20細胞において、またD
2様ドーパミン受容体アンタゴニストのエチクロプリドおよびD
3受容体選択的アンタゴニストのGR218231((+)-(2R)-1,2,3,4-テトラヒドロ-6-[[(4-メトキシフェニル)スルホニル]メチル]-N,N-ジプロピル-2-ナフタレンアミン)存在下で、リード化合物によって誘発されるGIRK反応を測定することによって判定する。さらなる開発が考慮されるためには、リード化合物は等しい濃度(300nM)のドーパミンまたはキンピロールによって誘発されるものと等しい、またはそれよりも大きいGIRK反応を生成すべきである。
【0135】
D
3受容体耐性およびSRTの消失:
化合物がD
3受容体耐性およびSRTを消失させるかどうかを調べるために、リード化合物の2回連続の処理に対するD
3受容体によって活性化されたGIRK反応を測定する。
図9に示すとおり、一回目の反応に対する二回目の反応の比は、耐性を消失させるアゴニストでは1に近いが、耐性を誘発するアゴニスト(例えば、ドーパミンおよびキンピロール)では約0.4である。1つの態様において、さらなる考察のために、リード化合物の一回目のGIRK反応に対する二回目の反応の比は0.7から1.0の間であるべきである。
【0136】
第二の実験群において、検定としてGIRKチャネルへの結合を用い、100nM、300nMおよび1000nMドーパミンと競合してD
3受容体における耐性およびSRTの発生を阻止するリード化合物の能力を調べる。
図10に示すとおり、PBZI(LIDモデルのAIMスコアを低下させる)はこの検定でドーパミンと有効に競合することができた。
【0137】
様々なD
2様ドーパミン受容体におけるリード化合物のEC
50の判定:
D
2S、D
2L、D
3、D
4.2およびD
4.4ドーパミン受容体のヒトイソ型を安定に発現しているAtT-20神経内分泌細胞株が利用可能である。加えて、D
1ドーパミン受容体および5HT-1Aセロトニン受容体を安定に発現しているAtT-20細胞も利用可能である。さらに、非形質移入AtT-20細胞は内因性ソマトスタチンおよびムスカリン受容体を発現する。
【0138】
最初の段階として、様々なドーパミン受容体を安定に発現している細胞株から単離した膜を用いて、競合的放射性リガンド結合検定を実施する。この手順により、様々なドーパミン受容体サブタイプに対するリード化合物のK
iが得られる。次の段階として、2つの機能検定において、様々な細胞株を用いて用量反応曲線を得る。
【0139】
第一の検定において、ホールセル電圧固定記録を用いて、リード化合物の漸増濃度(0.01nMから3,000nMまでの用量範囲)に対するGIRK反応を測定する。各受容体サブタイプに対するEC
50値を、ヒルの式を用いてデータ点をあてはめることによりもとめる。
【0140】
第二の機能検定において、D
2様ドーパミン受容体のアデニリルシクラーゼ活性を阻害する能力を評価する。リード化合物の、フォルスコリン誘発性のcAMPレベルを用量依存的に低下させる能力を測定する。各受容体サブタイプに対するIC
50値を、ヒルの式を用いてデータ点をあてはめることによりもとめる。以前、両方の機能検定において、これらの細胞株におけるドーパミンおよびキンピロールのEC
50およびIC
50値がもとめられている。1つの態様において、前進させるために、リード化合物は、これらの検定のいずれか一方において、ドーパミンまたはキンピロールのものよりも低い,または等しいEC
50またはIC
50を有していなければならない。
図11は、D
3ドーパミン受容体におけるPBZIおよび4-(2-クロロフェニル)-ブタン-2-アミンの用量反応曲線の例を示す。
【0141】
リード化合物の細胞毒性の評価:
リード化合物の細胞毒性を調べるために、細胞増殖標識試薬のWST-1(2-(4-ヨードフェニル)-3-(4-ニトロフェニル)-5-(2,4-ジスルホフェニル)-2H-テトラゾリウム、一ナトリウム塩;Roche Applied Science)を用いる。3つの異なる細胞株(神経内分泌細胞のモデルとしてAtT-20細胞、カテコールアミン作動性神経細胞のモデルとしてCAD細胞および肝細胞のモデルとしてHepG2)の増殖に対するリード化合物の効果を調べる。一緒に、3つの細胞株は細胞毒性についての予備的スクリーニングを提供する。
【0142】
細胞を広い濃度範囲のリード化合物(0.01nMから100μMまで)で24時間処理し、次いでWST-1と共にさらに4時間インキュベートし、吸光度の値を分光光度計を用いてもとめる。細胞毒性スクリーニングにおいて選択される基準は、リード化合物が10μMよりも大きいEC
50を示すことである。リード化合物開発が進むにつれて、化合物をインビボADMET、毒性および薬物動態解析にもかける。
【0143】
移動行動検定における新規D3受容体アゴニストの効果の評価
本発明において有用な化合物を、LIDのラット線条体内6-OHDA損傷モデルにおいてAIMスコアを低減する能力について評価する。
【0144】
Balb/cマウスにおける移動運動活動に対するリード化合物の効果の評価:
ドーパミンD
3受容体を標的とする耐性誘導および非耐性誘導アゴニストは移動運動活動を差別的に変化させる。具体的には、耐性誘導化合物(例えば、PD128907、(4aR,10bR)-3,4a,4,10b-テトラヒドロ-4-プロピル-2H,5H-[1]ベンゾピラノ-[4,3-b]-1,4-オキサジン-9-オール塩酸塩としても公知;キンピロール;およびPBZI)は、移動運動の初期阻害およびその後の刺激によって特徴付けられる、二相性移動運動効果を誘導する。
【0145】
予備的結果(実施例5)は、キンピロール、PD128907または7-ヒドロキシ-N,N-ジプロピル-2-アミノテトラリン(7OH-DPAT)などの伝統的なD
2/D
3受容体アゴニストの投与が、移動運動の初期阻害およびその後の刺激によって特徴付けられる、二相性移動運動反応を誘発することを示した試験と一致している。本明細書において報告する試験は、耐性およびSRTを消失させるPBZIなどのD
3受容体アゴニストのBalb/cマウスへの投与が、活動低下を誘発するにすぎないことを示している。これに対して、PD128907はD
3ドーパミン受容体で耐性およびSRTを誘発し、活動低下および活動亢進の両方を誘導する(
図12)。PBZIはラットLIDモデルにおいてAIMスコアを有意に低下させた(
図13)ため、アゴニスト誘発性の移動運動活動検定を、LIDモデルにおけるジスキネジアをうまく低減する化合物の予測手段として用いうる。
【0146】
1つの態様において、この仮説は、LID治療のために有益なリード化合物をスクリーニングするための単純な行動検定の開発につながりうるため、試験のゴールはこの仮説を試験することである。したがって、3つの異なる用量のリード化合物を投与し、移動運動活動に対するそれらの効果を調べる。用量は前述の細胞ベースの検定からのリード化合物の機能的EC
50値および結合親和性に基づいて決定する。化合物をBalb/cマウスに投与し、移動運動活動をTruScan Automated Behavioral Monitoringシステム(Coulborn Instruments)を用いてモニターする。非限定的局面において、D
3受容体耐性およびSRTを消失させるリード化合物は、移動運動検定において活動低下だけを誘発し、PBZIの結果と一致する(
図12)。
【0147】
ラット線条体内6-OHDA損傷モデルにおけるリード化合物の効果の評価:
D
3受容体の耐性およびSRT特性が線条体内6-ヒドロキシドーパミン(6-OHDA)損傷ラットにおけるLIDの発現に寄与しているとすれば、レボドパ投与前のPBZIなどの非耐性誘導D
3受容体アゴニストの投与はジスキネジアに関与する症状を低減または消失させるはずである。
【0148】
パーキンソン病の一側性線条体内6-OHDA損傷ラットモデルは詳細に特徴付けられており、パーキンソン病を治療するための神経保護および移植戦略を試験するために広く用いられている。このラットパーキンソン病モデルにおける黒質ドーパミンニューロンの部分的かつゆっくり進行する変性、および同時の運動欠損発生は、パーキンソン病を患っている患者で観察される進行性の悪化を模倣しているようである。特に興味深いのは、この動物モデルにおけるLIDの発生で、これは臨床で見られる異常不随意運動(AIM)に類似している。
【0149】
Winkler et al., 2002によって記載された線条体内6-OHDAラットパーキンソン病モデルを本明細書において用いる。特に、腹外側線条体における3つの異なる部位での6-OHDA(7μg)の注射によって一側性線条体内損傷が誘導されているラットを用いる。3つの注射部位の座標はmmで以下のとおりである:注射部位1:AP:+1.0;ML:-3.0;DV:-5.0;注射部位2:AP:-0.1;ML:-3.7;DV:-5.0;注射部位3:AP:-1.2;ML:-4,5;DV:-5.0。前後(AP)および内外側(ML)方向の座標はブレグマからである。背腹(DV)方向の座標は硬膜からである。トゥースバーの位置は0である。
【0150】
線条体内6-OHDA損傷および擬似損傷ラットは、Charles River Laboratories, Wilmington, Massachusetts, USAのCustom Surgical Services部門から入手する。商業的供給業者は、損傷の1週間後に損傷動物をアンフェタミン誘発性の回転について試験した後に発送する。以前の試験により、3部位注射によって損傷した動物は1週間後にアンフェタミン誘発性の回転の有意の増大を示すことが明らかにされている。損傷動物は損傷の反対側の肢に運動緩徐/無動を示す。実験において、半対側の足の運動緩徐/無動を改善するレボドパの能力は、まず前肢足踏み検査を行うことによって判定する。足踏み検査は、続いて、リード化合物がレボドパの運動緩徐/無動を改善する能力を妨害するかどうかを試験する方法も提供する。前肢運動緩徐/無動に対する損傷の影響を、損傷の3週間後に、足踏み検査を用いて測定する。損傷の反対側の足で足踏み能力の有意な欠損が確立されれば、レボドパの漸増用量(2、4および6mg/kg)を15mg/kgのベンセラジド(末梢ドーパデカルボキシラーゼ阻害剤)と共に投与し、注射の60分後に足踏み能力を足踏み検査を用いて評価する。慢性投与相のために選択されるレボドパの用量は、足踏み検査のスコアを有意に改善する用量である(
図14)。
【0151】
損傷の7.5週間後、慢性レボドパ治療(6mg/kg、1日1回、15mg/kgのベンセラジドと共に投与)を開始する。足踏み検査およびAIMスコアを、慢性レボドパ治療開始後、1、8、10、17および24日目に判定する。慢性レボドパ投与後、損傷動物は、移動運動、軸、肢、および口舌成分を含む異常不随意運動(AIM)を示す。AIMを運動障害症状の頻度および重症度に基づく評点スケールを用いて採点する。ラットモデルにおける頻度および重症度に関する様々なAIM成分の順番は:肢>口舌=軸>>移動運動であることに留意すべきである。この損傷モデルはLIDにおけるPBZIの効果を試験するために用いられている(実施例3)。
【0152】
AIMスコアをもとめるために、ラットを透明ガラスシリンダーに入れ、デジタルビデオレコーダーを用いて記録する。実験的にブラインドとした採点者が、レボドパ注射の20分前から180分後まで、20分ごとに1分間観察する。レボドパ誘発性のAIMスコアを、ラットジスキネジアスケールに従って判定する。6-OHDA損傷動物は慢性レボドパ治療開始の約10日後にLIDを発生する。PBZIのレボドパ誘発性のAIMスコアを低下させる能力を、慢性レボドパ投与開始後、10、17および24日目のレボドパ投与10分前にPBZIを投与することによって判定した。これらの日に足踏み検査を行って、損傷動物における足踏み欠損を改善するレボドパの能力に対するPBZIの効果も評価した。リード化合物の2つの用量を試験する。化合物の受容体に対する親和性および前述の移動行動検定の結果によって用量を決定する。
【0153】
実験の時間経過を
図15に示す。3部位一側性線条体内6-OHDA注射の1週間後、ラットをアンフェタミン誘発性の回転試験にかけ、損傷動物を同定する。損傷の3週間後、動物を足踏み検査にかけ、レボドパ前の足踏み欠損を調べる。損傷の5週間後、レボドパの漸増用量(2から6mg/kg)を、示した日だけ1日1回投与し、足踏み検査を行う。損傷の7.5週間後、レボドパ(6mg/kg)を毎日1日1回3.5週間投与する。慢性投与開始後1および8日目に、足踏み検査およびAIMスコアをレボドパ注射後に判定する。10、17および24日目に、足踏み検査およびAIMスコアをレボドパおよび化合物の同時注射後に判定する。11週間の終わりに、動物を断頭し、脳組織を組織分析に用いる:動物の脳切片をチロシンヒドロキシラーゼについて染色し、損傷半球におけるドーパミン作動性ニューロンの消失を評価する。数匹の動物からの脳切片をD
2およびD
3受容体結合およびmRNA発現について評価する。
【0154】
併用療法
本発明の化合物は、パーキンソン病治療のために有用な1つまたは複数のさらなる化合物との併用で、本発明の方法において有用であることが意図される。これらのさらなる化合物は、本発明の化合物またはパーキンソン病の症状を治療、予防、もしくは低減することが公知の化合物、例えば、市販の化合物を含みうる。
【0155】
非限定例において、本発明の化合物を以下の薬物の1つまたは複数との併用で用いてもよい:レボドパ、クロザピン、ブロモクリプチン、ペルゴリド、プラミペキソール、ロピニロール、ピリベジル、カベルゴリン、アポモルフィン、およびリスリド、その塩ならびにその混合物。
【0156】
相乗効果は、例えば、シグモイド-E
max式(Holford & Schemer, 19981, Clin. Pharmacokinet. 6:429-453)、Loewe加法の式(Loewe & Muischnek, 1926, Arch. Exp. Pathol Pharmacol, 114:313-326)および半有効式(Chou & Talalay, 1984, Adv. Enzyme Regul. 22:27-55)などの適切な方法を用いて計算してもよい。前述の各式を実験データに適用して対応するグラフを作成し、薬物併用の効果の評価を助けてもよい。前述の式に関連する対応するグラフはそれぞれ、濃度-効果曲線、アイソボログラム曲線および併用指数曲線である。
【0157】
投与/用量/製剤
投与法は、有効量を構成するものに影響をおよぼしうる。治療製剤を患者に、LID開始の前または後のいずれかに投与してもよい。さらに、いくつかの分割用量、ならびにスタッガート用量(staggered dosage)を毎日もしくは連続で投与してもよく、または用量を持続的に注入してもよく、またはボーラス注射でもよい。さらに、治療製剤の用量を、治療または予防状況の緊急性によって指示されるのに比例して増量または減量してもよい。
【0158】
本発明の組成物の患者、好ましくは哺乳動物、より好ましくはヒトへの投与は、公知の手順を用い、患者のLIDを治療するのに有効な用量および期間で行いうる。治療効果を達成するのに必要な治療化合物の有効量は、患者の疾患または障害の状態;患者の年齢、性別、および体重;ならびに患者のLIDを治療するための治療化合物の能力などの因子によって変動しうる。投与法は、最適な治療反応を提供するよう調節してもよい。例えば、いくつかの分割用量を毎日投与してもよく、または用量を治療状況の緊急性によって指示されるのに比例して減量してもよい。本発明の治療化合物の有効用量範囲の非限定例は、約1および5,000mg/kg体重/日からである。当業者であれば、関連する因子を調べ、過度の実験を行うことなく、治療化合物の有効量に関する決定を行うことができよう。
【0159】
本発明の薬学的組成物における成分の実際の用量レベルは、患者に対して毒性ではなく、特定の患者、組成物、および投与様式に対する所望の治療反応を達成するのに有効な成分の量を得るために、変動しうる。
【0160】
特に、選択する用量レベルは、用いる特定の化合物の活性、投与の時間、化合物の排出速度、治療の期間、化合物と併用する他の薬物、化合物または材料、治療中の患者の年齢、性別、体重、状態、全般的健康および過去の病歴、ならびに医学の分野において周知の同様の因子を含む様々な因子に依存することになる。
【0161】
当技術分野において通常の技術を有する医師、例えば、内科医または獣医は、必要な薬学的組成物の有効量を容易に決定し、処方しうる。例えば、内科医または獣医は、薬学的組成物中で用いる本発明の化合物の用量を、所望の治療効果を達成するために必要とされるものよりも低いレベルで開始し、所望の効果が達成されるまで徐々に用量を増やすことができよう。
【0162】
特定の態様において、投与の容易さ、および用量の均一性のために、化合物を単位剤形で製剤することが特に有利である。本明細書において用いられる単位剤形とは、治療する患者のための単位用量として適切な、物理的に分離した単位であって;それぞれ、必要な薬学的媒体と共に、所望の治療効果を生じるよう計算した治療化合物のあらかじめ決められた量を含む単位を意味する。本発明の単位剤形は、(a)治療化合物の特有の特徴および達成しようとする特定の治療効果、ならびに(b)患者のLID治療のためにそのような治療化合物を調剤/製剤する分野に固有の制限によって指示され、それらに直接依存する。
【0163】
1つの態様において、本発明の組成物を、1つまたは複数の薬学的に許容される賦形剤または担体を用いて製剤する。1つの態様において、本発明の薬学的組成物は本発明の化合物の治療的有効量および薬学的に許容される担体を含みうる。
【0164】
担体は、例えば、水、エタノール、ポリオール(例えば、グリセロール、プロピレングリコール、および液体ポリエチレングリコールなど)、その適切な混合物、および植物油を含む、溶媒または分散媒でありうる。適切な流動性は、例えば、レシチンなどのコーティングの使用により、分散物の場合には必要とされる粒径の維持により、および界面活性剤の使用により、維持しうる。微生物の作用の防止は、様々な抗菌および抗真菌剤、例えば、パラベン、クロロブタノール、フェノール、アスコルビン酸、チメロサールなどによって達成しうる。多くの場合、組成物中に等張剤、例えば、糖類、塩化ナトリウム、またはマンニトールおよびソルビトールなどのポリアルコールを含むことが好ましいであろう。注射組成物の遷延性吸収は、組成物中に吸収を遅延させる物質、例えば、モノステアリン酸アルミニウムまたはゼラチンを含むことによってもたらしうる。1つの態様において、薬学的に許容される担体はDMSOだけではない。
【0165】
1つの態様において、本発明の組成物を患者に、1日に1から5回以上の範囲の用量で投与する。もう1つの態様において、本発明の組成物を患者に、毎日1回、2日に1回、3日に1回から1週間に1回、および2週間に1回を含むが、それらに限定されるわけではない、用量範囲で投与する。当業者であれば、本発明の様々な併用組成物の投与頻度は、年齢、治療する疾患または障害、性別、全般的健康、および他の因子を含むが、それらに限定されるわけではない、多くの因子に応じて、個人ごとに変動することが容易に明らかとなるであろう。したがって、本発明は、任意の特定の投与法に限定されると解釈されるべきではなく、任意の患者に投与される正確な用量および組成物は、患者についてのすべての他の因子を考慮に入れて、主治医が決定することになる。
【0166】
投与のための本発明の化合物は、約1μgから約10,000mg、約20μgから約9,500mg、約40μgから約9,000mg、約75μgから約8,500mg、約150μgから約7,500mg、約200μgから約7,000mg、約3050μgから約6,000mg、約500μgから約5,000mg、約750μgから約4,000mg、約1mgから約3,000mg、約10mgから約2,500mg、約20mgから約2,000mg、約25mgから約1,500mg、約50mgから約1,000mg、約75mgから約900mg、約100mgから約800mg、約250mgから約750mg、約300mgから約600mg、約400mgから約500mg、ならびにその間の任意およびすべての全または部分的増分の範囲でありうる。
【0167】
いくつかの態様において、本発明の化合物の用量は約1mgおよび約2,500mgからである。いくつかの態様において、本明細書に記載の組成物において用いる本発明の化合物の用量は、約10,000mg未満、または約8,000mg未満、または約6,000mg未満、または約5,000mg未満、または約3,000mg未満、または約2,000mg未満、または約1,000mg未満、または約500mg未満、または約200mg未満、または約50mg未満である。同様に、いくつかの態様において、本明細書に記載の第二の化合物(すなわち、パーキンソン病を治療するために用いる薬物)の用量は、約1,000mg未満、または約800mg未満、または約600mg未満、または約500mg未満、または約400mg未満、または約300mg未満、または約200mg未満、または約100mg未満、または約50mg未満、または約40mg未満、または約30mg未満、または約25mg未満、または約20mg未満、または約15mg未満、または約10mg未満、または約5mg未満、または約2mg未満、または約1mg未満、または約0.5mg未満、ならびにその間の任意およびすべての全または部分的増分の範囲である。
【0168】
1つの態様において、本発明は、本発明の化合物の治療的有効量を、単独または第二の薬学的物質との組み合わせで保持する容器;および患者のLIDの1つまたは複数の症状を治療、予防、または低減するために化合物を用いるための説明書を含む、包装した薬学的組成物を目的とする。
【0169】
製剤は、通常の賦形剤、すなわち、経口、非経口、鼻、静脈内、皮下、腸、または当技術分野において公知の任意の他の適切な投与様式に適した、薬学的に許容される有機または無機担体物質との混合物で用いうる。薬学的製剤は滅菌し、望まれる場合には、補助物質、例えば、滑沢剤、保存剤、安定化剤、湿潤剤、乳化剤、浸透圧緩衝剤に影響をおよぼすための塩、着色剤、着香剤および/または芳香物質などと混合しうる。これらは、望まれる場合には、他の活性物質、例えば、他の鎮痛剤と組み合わせてもよい。
【0170】
「容器」なる用語は、薬学的組成物を保持するための任意の入れ物を含む。例えば、1つの態様において、容器は薬学的組成物を含む包装である。他の態様において、容器は薬学的組成物を含む包装ではなく、すなわち、容器は包装した薬学的組成物または未包装の薬学的組成物および薬学的組成物の使用に関する説明書を含む、箱またはバイアルなどの入れ物である。さらに、包装技術は当技術分野において周知である。薬学的組成物の使用に関する説明書は、薬学的組成物を含む包装上に含まれてもよく、したがって説明書は包装製品に対する機能が増大した関係を形成することが理解されるべきである。しかし、説明書は、化合物の所期の機能、例えば、患者のLIDを治療、予防、または低減することを行うその能力に関する情報を含みうることが理解されるべきである。
【0171】
任意の本発明の組成物の投与経路には、経口、鼻、直腸、腟内、非経口、口腔、舌下または局所が含まれる。本発明において用いるための化合物を、経口または非経口などの任意の適切な経路による投与、例えば、経皮、経粘膜(例えば、舌下、舌、(経)口腔、(経)尿道、膣(例えば、経膣および膣周囲)、鼻(内)および(経)直腸)、膀胱内、肺内、十二指腸内、胃内、くも膜下腔内、皮下、筋肉内、皮内、動脈内、静脈内、気管支内、吸入、および局所投与のために製剤しうる。
【0172】
適切な組成物および剤形には、例えば、錠剤、カプセル剤、カプレット、丸剤、ゲルキャップ、トローチ、分散剤、懸濁剤、液剤、シロップ、顆粒剤、ビーズ、経皮パッチ、ゲル、散剤、ペレット、マグマ剤、ロゼンジ、クリーム、ペースト、硬膏、ローション、ディスク、坐剤、鼻または経口投与のための液体噴霧剤、吸入のためのドライパウダーまたはエアロゾル化製剤、膀胱内投与のための組成物および製剤などが含まれる。本発明において有用であろう製剤および組成物は、本明細書に記載の特定の製剤および組成物に限定されないことが理解されるべきである。
【0173】
経口投与
経口適用のために、特に適切であるのは錠剤、糖衣錠、液剤、滴剤、坐剤、またはカプセル剤、カプレットおよびゲルキャップである。経口使用が意図される組成物は、当技術分野において公知の任意の方法に従って調製してもよく、そのような組成物は、錠剤の製造に適した不活性、非毒性の薬学的賦形剤からなる群より選択される1つまたは複数の物質を含んでいてもよい。そのような賦形剤には、例えば、ラクトースなどの不活性希釈剤;トウモロコシデンプンなどの造粒および崩壊剤;デンプンなどの結合剤;ならびにステアリン酸マグネシウムなどの滑沢剤が含まれる。錠剤はコーティングされていなくてもよく、または優雅さのため、もしくは活性成分の放出を遅らせるために、公知の技術によってコーティングされていてもよい。経口使用のための製剤は、中で活性成分が不活性希釈剤と混合されている、ゼラチン硬カプセルとして提供してもよい。
【0174】
経口投与のために、本発明の化合物は、結合剤(例えば、ポリビニルピロリドン、ヒドロキシプロピルセルロースまたはヒドロキシプロピルメチルセルロース);充填剤(例えば、トウモロコシデンプン、微結晶セルロースまたはリン酸カルシウム);滑沢剤(例えば、ステアリン酸マグネシウム、タルク、またはシリカ);崩壊剤(例えば、デンプングリコール酸ナトリウム);または湿潤剤(例えば、ラウリル硫酸ナトリウム)などの薬学的に許容される賦形剤と共に、通常の手段によって調製した、錠剤またはカプセル剤の形であってもよい。望まれる場合には、錠剤を適切な方法およびColorcon, West Point, Pa.から入手可能なOPADRY(商標)フィルムコーティングシステム(例えば、OPADRY(商標) OY Type、OYC Type、Organic Enteric OY-P Type、Aqueous Enteric OY-A Type、OY-PM TypeおよびOPADRY(商標) White、32K18400)などのコーティング材料を用いてコーティングしてもよい。経口投与のための液体製剤は、液剤、シロップまたは懸濁剤の形であってもよい。液体製剤は、懸濁化剤(例えば、ソルビトールシロップ、メチルセルロースまたは硬化食用脂);乳化剤(例えば、レシチンまたはアカシア);非水性媒体(例えば、アーモンド油、油性エステルまたはエチルアルコール);および保存剤(例えば、p-ヒドロキシ安息香酸メチルもしくはプロピルまたはソルビン酸)などの薬学的に許容される添加物と共に、通常の手段によって調製してもよい。
【0175】
活性成分の出発粉末または他の粒状材料を改変するための造粒技術は、薬学の分野において周知である。粉末を典型的には結合材料と混合して、「造粒」と呼ばれるより大きい永久流動性凝塊または顆粒とする。例えば、溶媒を用いる「湿式」造粒工程は、一般には粉末を結合材料と混合し、湿った顆粒状塊の生成を引き起こす条件下、水または有機溶媒で加湿し、次いでこの顆粒状塊から溶媒を蒸発させなければならないことによって特徴付けられる。
【0176】
溶融造粒は一般には、基本的に添加水または他の液体溶媒非存在下、粉末または他の材料の造粒を促進するための、室温では固体または半固体である(すなわち、比較的低い軟化点または融点範囲を有する)材料の使用にある。低溶融固体は、融点範囲の温度まで加熱すると、液化して結合剤または造粒媒質として作用する。液化した固体は、それが接触している粉末材料の表面に広がり、冷却後、最初の材料が結合した固体顆粒状塊を形成する。次いで、得られた溶融造粒を、経口剤形を調製するために、錠剤プレスに提供するか、またはカプセル化してもよい。溶融造粒は、固体分散物または固溶体を形成することにより、活性物(すなわち薬物)の溶解速度およびバイオアベイラビリティを改善する。
【0177】
米国特許第5,169,645号は、流動性が改善された直接圧縮可能なワックス含有顆粒を開示している。ワックスを溶融物中で特定の流動改善添加物と混合し、続いて混合物を冷却および造粒すると、顆粒が得られる。特定の態様において、ワックスおよび添加物の溶融組み合わせ中、ワックス自体だけが溶融し、他の場合には、ワックスおよび添加物の両方が溶融することになる。
【0178】
本発明は、本発明の1つまたは複数の化合物の遅延放出を提供する層、およびパーキンソン病の治療用薬物の即時放出を提供するさらなる層を含む、多層錠も含む。ワックス/pH感受性ポリマー混合物を用いて、活性成分を捕捉した胃不溶性組成物を得て、その遅延放出を確実にしてもよい。
【0179】
非経口投与
非経口投与のために、本発明の化合物を、注射もしくは注入、例えば、静脈内、筋肉内もしくは皮下注射もしくは注入のため、またはボーラス投与および/もしくは持続注入のために製剤してもよい。任意に懸濁化剤、安定化剤および/または分散剤などの他の製剤物質を含む、油性または水性媒体中の懸濁剤、液剤または乳剤を用いてもよい。
【0180】
さらなる投与形態
本発明のさらなる剤形には、米国特許第6,340,475号、第6,488,962号、第6,451,808号、第5,972,389号、第5,582,837号、および第5,007,790号に記載の剤形が含まれる。本発明のさらなる剤形には、米国特許出願第20030147952号、第20030104062号、第20030104053号、第20030044466号、第20030039688号、および第20020051820号に記載の剤形も含まれる。本発明のさらなる剤形には、PCT出願国際公開公報第03/35041号、第03/35040号、第03/35029号、第03/35177号、第03/35039号、第02/96404号、第02/32416号、第01/97783号、第01/56544号、第01/32217号、第98/55107号、第98/11879号、第97/47285号、第93/18755号、および第90/11757に記載の剤形も含まれる。
【0181】
制御放出製剤および薬物送達系
特定の態様において、本発明の製剤は、短期、急速オフセット、ならびに制御、例えば、持続放出、遅延放出およびパルス状放出製剤であってもよいが、それらに限定されるわけではない。
【0182】
持続放出なる用語は、長期にわたる薬物の徐々の放出を提供し、必須ではないが、長期にわたり薬物の実質的に一定の血中レベルをもたらしうる、薬物製剤を意味するために、その通常の意味で用いられる。期間は1ヶ月以上の長期であってもよく、同じ量の薬剤をボーラス型で投与したものよりも長い放出であるべきである。
【0183】
持続放出のために、化合物を、化合物に持続放出特性を提供する適切なポリマーまたは疎水性材料と共に製剤してもよい。したがって、本発明の方法において用いるための化合物は、微粒子の形で、例えば、注射により、またはウエハもしくはディスクの形で埋め込みにより投与してもよい。
【0184】
本発明の好ましい態様において、本発明の化合物を患者に単独で、または別の薬学的物質との組み合わせで、持続放出製剤を用いて投与する。
【0185】
遅延放出なる用語は、薬物投与に続きいくらかの遅延後に薬物の初期放出を提供し、必須ではないが、約10分から約12時間までの遅延を含みうる、薬物製剤を意味するために、本明細書においてその通常の意味で用いられる。
【0186】
パルス状放出なる用語は、薬物投与後に薬物のパルス状の血漿プロファイルを生じるような様式で薬物の放出を提供する、薬物製剤を意味するために、本明細書においてその通常の意味で用いられる。
【0187】
即時放出なる用語は、薬物投与直後に薬物の放出を提供する、薬物製剤を意味するために、その通常の意味で用いられる。
【0188】
本明細書において用いられる短期とは、薬物投与後、薬物投与後、約8時間、約7時間、約6時間、約5時間、約4時間、約3時間、約2時間、約1時間、約40分、約20分、または約10分およびその任意またはすべての全または部分的増分まで、およびそれらを含む、任意の期間を意味する。
【0189】
本明細書において用いられる急速オフセットとは、薬物投与後、約8時間、約7時間、約6時間、約5時間、約4時間、約3時間、約2時間、約1時間、約40分、約20分、または約10分、ならびにその任意およびすべての全または部分的増分まで、およびそれらを含む任意の期間を意味する。
【0190】
投薬
本発明の化合物の治療的有効量または用量は、患者の年齢、性別および体重、患者の現在の医学的状態ならびに治療中の患者のパーキンソン病の進行に依存することになる。当業者であれば、これらおよび他の因子に応じて適切な用量を決定することができるであろう。
【0191】
本発明の化合物の適切な用量は、約0.1mgから約1,000mgなどの、1日に約0.01mgから約5,000mg、例えば、1日に約5mgから約250mgなどの、約1mgから約500mgの範囲でありうる。用量は1回投薬または複数回投薬で、例えば、1日に1から4回またはそれ以上投与してもよい。複数回投薬を用いる場合、各投薬の量は同じでも異なっていてもよい。例えば、1日に1mgの用量を2回の0.5mg用量で、用量間に約12時間の間隔をおいて投与してもよい。
【0192】
1日に投与する化合物の量を、非限定例において、毎日、1日おき、2日ごと、3日ごと、4日ごと、または5日ごとに投与しうることが理解される。例えば、1日おきの投与では、1日5mg用量を月曜日に開始し、その後の最初の1日5mg用量を水曜日に投与し、その後の2回目の1日5mg用量を金曜日に投与するなどしてもよい。
【0193】
本発明の方法において用いるための化合物を、単位剤形で製剤してもよい。「単位剤形」なる用語は、治療を受けている患者のための単位用量として適切な、物理的に分離した単位であって、それぞれ、任意に適切な薬学的担体と共に、所望の治療効果を生じるよう計算した治療材料のあらかじめ決められた量を含む単位を意味する。単位剤形は1回の1日用量または複数回の1日用量(例えば、1日に約1から4回またはそれ以上)の1つのためのものであってもよい。複数回の1日用量を用いる場合、単位剤形は各用量で同じでも異なっていてもよい。
【0194】
当業者であれば、日常的な実験だけを用いて、本明細書に記載する特定の手順、態様、特許請求の範囲、および実施例の多くの等価物を理解する、または確認することができるであろう。そのような等価物は本発明の範囲内であり、本明細書に添付の特許請求の範囲の対象であると考えられた。例えば、反応時間、反応サイズ/量、ならびに溶媒、触媒、圧、雰囲気の状態、例えば、窒素雰囲気、および還元/酸化剤などの実験試薬を含むが、それらに限定されるわけではない、反応条件における、当技術分野において認められた代替物による、日常的実験だけを用いての改変は、本出願の範囲内であることが理解されるべきである。
【0195】
本明細書において値および範囲が提供される場合はいつでも、これらの値および範囲によって包含されるすべての値および範囲は、本発明の範囲内に包含されることが理解されるべきである。さらに、これらの範囲内に入るすべての値、ならびに値の範囲の上限または下限も、本出願によって企図される。
【0196】
以下の実施例は、本発明の局面をさらに例示する。しかし、これらは本明細書において示す本発明の教示または開示を限定するものでは決してない。
【実施例】
【0197】
本発明をここで以下の実施例に関して記載する。これらの実施例は、例示のために提供するにすぎず、本発明はこれらの実施例に限定されることはないが、むしろ本明細書において提供する教示の結果明らかなすべての変動を包含する。
【0198】
材料:
特に記載がないかぎり、すべての出発原料および樹脂は商業的供給業者から入手し、精製せずに用いた。
【0199】
キンピロール(Sigma-Aidrich, St. Louis, MO)、PD128907(Tocris, Ellisville, MO)、7OH-DPAT(Tocris)、プラミペキソール(Tocris)、ロチゴチン(Tocris)、4-(2-クロロフェニル)-ブタン-2-アミン(ES609;Asinex, Moscow, Russia)およびシス-8-ヒドロキシ-3-(n-プロピル)-1,2,3a,4,5,9b-ヘキサヒドロ-1H-ベンズ[e]インドール臭化水素酸塩(PBZI;Sigma-Aldrich)は水に溶解し、示された濃度で用いた。サリゾタン(Merck KGaA, Gibbstown, NJ)、FAUC73(Sigma-Aldrich)および7OH-PIPAT(Tocris)はDMSOに溶解した。ドーパミン(Sigma-Aldrich)の10mM保存溶液を100mMアスコルビン酸に新しく溶解し、100nMの最終濃度で用いた。
【0200】
細胞培養:
AtT-20マウス下垂体細胞を5%FBS、10%熱不活化ウマ血清、2mMグルタミンおよび50μg/mlゲンタマイシンを含むHam's F10培地(Invitrogen, Carlsbad, CA)中で培養した。ヒトD
2S、D
2L、D
3、およびD
4.2および受容体を安定に発現しているAtT-20細胞を、500μg/ml G418を補足した前述のF10培地(Invitrgen)中で維持した。電気生理学的特徴付けのために、細胞を、40μg/mlポリL-リジン(Sigma-Aldrich)でコーティングしたカバーガラス上に播種した。様々なヒトドーパミン受容体を安定に発現しているAtT-20細胞の生成および特徴付けが以前に報告されている(Kuzhikandathil & Oxford, 2000, J. Gen. Physiol. 115:697-706;Kuzhikandathil et al., 1998, Mol. Cell Neurosci. 12:390-402;Kuzhikandathil & Bartoszyk, 2006, Neuropharm. 51:873-884;Westrich & Kuzhikandathil, 2007, Biochim. Biophys. Acta- MCR 1773:1747-1758;Kuzhikandathil et al., 2004, Mol. Cell Neurosci. 26:144-155;Westrich et al., 2010, Biochem. Pharmacol. 79:897-907)。
【0201】
cAMPの測定:
環状AMP(cAMP)レベルを、以前に記載のとおり(Kuzhikandathil & Bartoszyk, 2006, Neuropharm. 51:873-884)、cAMP Biotrak Enzymeimmunoassay(EIA)キット(GE Healthcare, Piscataway, NJ, USA)を用いて評価した。それぞれ処理した試料のcAMPレベルを三つ組で検定し、全実験を3回独立の時間に繰り返した。
【0202】
電気生理学:
アゴニストによって活性化した電流を、以前に記載のとおり(Kuzhikandathil & Oxford, 2000, J. Gen. Physiol. 115:697-706;Kuzhikandathil et al., 1998, Mol. Cell Neurosci. 12:390-402;Kuzhikandathil & Bartoszyk, 2006, Neuropharm. 51:873-884;Westrich & Kuzhikandathil, 2007, Biochim. Biophys. Acta- MCR 1773:1747-1758;Kuzhikandathil et al., 2004, Mol. Cell Neurosci. 26:144-155;Westrich et al., 2010, Biochem. Pharmacol. 79:897-907)、ホールセルパッチクランプ技術により、電圧固定および電流固定モードで測定した。薬物溶液を細胞に、マルチバレルマイクロピペットアレイを介して送達した。細胞サイズにおける変動を説明するために、電流反応を細胞キャパシタンスに対して規準化した。
【0203】
統計学:
分散分析(ANOVA)およびホルム-シダック多重対比較検定およびスチューデンツt検定を、SigmaPlot(登録商標)11ソフトウェア(SPSS Inc.)により行った。データは、確立値(P)が0.05未満の場合に統計学的有意と考えた。
【0204】
コンピューターモデリング(HSB法):
Gタンパク質共役受容体に対する小分子阻害剤を設計するためのHSBプロトコルが記載されている(Kortagere & Welsh, 2006, J. Compu.t Aided Mo.l Des. 20(12):789-8026)。簡単に言うと、この方法は、商業的供給業者からの小分子に焦点をあてたライブラリの作成に関与していた。データベースのすべての分子をUNITY形式に変換し、SYBYL(SYBYL 8.0, Tripos International)に統合されたUNITYモジュールを用いてスクリニングした。
【0205】
D
3受容体結合部位におけるPBZIの相互作用に基づいて3Dファーマコフォアを作成するために、D
3受容体の相同性モデルを、ベータアドレナリン作動性(β2-AR)受容体の、部分インバースアゴニスト(PDBコード:2RH1)との複合体での結晶構造(Cherezov et al., 2007, Science 318(5854):1258-1265)をテンプレートとして用い、相同性モデリングプログラムModeller(ver 9.4)により作成した(Sali et al., 1993, J. Mol. Biol. 234(3):779-815;Westrich et al., 2010, Biochem. Pharmacol. 79:897-907;Kortagere et al., 2011, Biochem. Pharmacol. 81(1):157-163)。PBZIはその三環式構造により、かなり硬直したコンフォメーションを有する。MOEにおいて採用されている確率論的検索法を用いたコンフォメーション解析を利用して、アミン基から伸びているアルキル末端領域の最良のコンフォメーションを得た。得られたすべてのコンフォメーションをエネルギーに基づいてクラスター化し、最も密集したクラスターからの代表的メンバーを、MOEにおいて採用されているAM1半経験的量子化学的方法を用いて、さらなる最適化のために選択した。同様の手順を本試験において他のリガンドに対して用いた。最適化したコンフォメーションをさらなるドッキング実験のために用いた。PBZIを精密化したD
3構造の3D構造に、ドッキングプログラムGOLD(ver 4.1)(Jones et al., 1995, J. Mol. Biol. 245(1):43-53)を用いてドッキングさせた。20の独立したドッキングを実行し、ドッキングした複合体をGoldscore(Jones et al., 1995, J. Mol. Biol. 245(1):43-53)、chemscore(Eldridge et al., 1997, J. Comput. Aided Mol. De.s 11(5):425-445)およびカスタマイズしたスキーム(Kortagere & Welsh, 2006, J. Comput. Aided Mol. Des. 20(12):789-802)を用いてスコアリングした。
【0206】
アゴニスト結合モデルのより現実的なコンフォメーションを得るために、モデルを、SchrodingerスイートプログラムのDesmondモジュール(Kevin et al., 2006, Proceedings of the ACM/IEEE Conference on Supercomputing (SC06), New York, NY, IEEE)を用いて、明確な水-POPC脂質二重層-水モデル膜系に浸漬した。モデル膜をβ2-AR結晶構造にあらかじめ整列させ、D
3受容体-PBZIモデルへのその配向を採用した。Na
+およびCl
-イオンのものを含む二重層組成物のためのデフォルト条件を選択し、全シミュレーションをデフォルトの全原子OPLS力場を用いて実施した。前弛緩(pre-relaxation)、最小化、加熱、平衡および3nsの作成実行のためのルーチンからなる4段階プロトコルに従い、モデルを完全に精密化した(Chien et al., 2010, Science 330(6007):1091-1115)。シミュレーションの全体を通して、PBZIのTM3およびTM5からの残基との相互作用を、低レベルの制約を用いて維持した。しかし、すべての制約を作成実行中に除去して、タンパク質環境においてリガンドを完全に弛緩させた。PBZIとD
3受容体との間の鍵となる相互作用、すなわちAsp110との塩橋、Ser192との水素結合相互作用、His349との芳香環相互作用、Val111およびTM6からの他の芳香族残基との疎水性相互作用を用いて、
図6Cに示す4点ハイブリッドファーマコフォアを構築した。供給業者から入手可能な小分子の電子ライブラリをスクリーニングして、ファーマコフォアに対応するヒットを同定した。
【0207】
最後に、ヒットをLipinskiのルールオブファイブ(Lipinski et al., 2001, Adv. Drug Deliv. Rev. 46(1-3):3-26)、血液脳関門(BBB)透過(Kortagere et al., 2008, Pharm. Res. 25(8):1836-1845)ならびにプレグナン生体異物受容体(Kortagere et al., 2009, Pharm. Res. 26(4):1001-1011)およびhERGチャネル(Chekmarev et al., 2008, Chem. Res. Toxicol. 21(6):1304-1314)に対するオフターゲットスクリーニングを用いてフィルタリングした。得られた290のヒットをD
3受容体の結合部位にGOLDプログラムを用いてドッキングさせ、PBZIのドッキングについて前述した様々なスコアリング関数を用いて採点した。15の最高順位のヒットを供給業者から入手し、機能的に評価した。
【0208】
実施例1:化合物のインビトロでの特徴付け
PBZIおよび4-(2-クロロフェニル)-ブタン-2-アミンを、それらのドーパミン受容体との相互作用について特徴付けた。いずれの化合物もD
3ドーパミン受容体を介してGタンパク質共役型内向き整流性カリウム(GIRK)チャネルを活性化し(
図2)、アデニリルシクラーゼ活性を阻害した(
図11)。両化合物のインビトロ機能データを表1に示す。最も興味深いのは、伝統的なD
2/D
3受容体アゴニストとは異なり、PBZIおよび4-(2-クロロフェニル)-ブタン-2-アミンはD3Rの耐性およびSRT特性を消失させたという知見であった(
図2)。これら2つの化合物は、D
3受容体の耐性およびSRT特性を消失させるが、完全アゴニストである、新しいクラスのD
3ドーパミン受容体アゴニストである。
【0209】
(表1)AtT-20安定細胞株のD
2様受容体シグナル伝達機能に対するPBZIおよび4-(2-クロロフェニル)ブタン-2-アミンの効果の特徴付け
ND:判定していない
【0210】
実施例2:リガンド依存性D3受容体耐性およびSRT特性
図9Aは、受容体を内因性アゴニストのドーパミンで刺激した場合の、天然GIRKチャネルのD
3ドーパミン受容体誘発性の活性化を示す。D
3受容体の耐性特性を、一回目のアゴニスト誘発性の反応に対する二回目の反応の比として定量する。D
3受容体耐性特性は、D
3受容体-アデニリルシクラーゼおよび-マイトジェン活性化タンパク質キナーゼ経路でも観察される(Kuzhikandathil & Bartoszyk, 2006, Neuropharm. 51:873-884;Westrich & Kuzhikandathil, 2007, Biochim. Biophys. Acta-MCR 1773:1747-1758)。加えて、
図9Aは、アゴニスト除去後のアゴニスト誘発性の反応の遅延停止である、D
3受容体SRT特性を示している。耐性D
3受容体は異なるコンフォメーションをとり(Westrich et al., 2010, Biochem. Pharmacol. 79:897-907)、耐性およびSRT特性はこの異なるコンフォメーション状態を変化させる機能的に選択的なアゴニストによって調節されうることを示唆している。D
3受容体耐性およびSRT特性を調節しうるアゴニストを同定するために、10の異なるアゴニストを、検定としてD
3受容体-GIRKチャネルシグナル伝達経路を用い、それらの耐性およびSRTを誘導する能力についてスクリーニングした。選択したアゴニストは内因性リガンドのドーパミン、D
3に対する選択性を示すリガンド、およびパーキンソン病を治療するために臨床で使用される化合物を含んでいた。
図9Cの結果は、ほとんどのアゴニストが耐性を誘導したが、2つのアゴニスト、シス-8OH-PBZIおよびFAUC73は耐性特性を消失させたことを示唆している。興味深いことに、PD128907は、他のアゴニストとは著しく異なる、増強された耐性を誘導した。
【0211】
図2Aおよび2Cは、ヒトD
3ドーパミン受容体を安定に発現しており、耐性を誘導する、または耐性を誘導しないアゴニストで処理した、AtT-20細胞の代表的電圧固定記録を示す。PBZI(
図2A)およびFAUC73(
図2C)は、耐性およびSRT特性の両方を消失させた;しかし、同じ細胞において、キンピロール(
図2A)またはPD128907(
図2C)は重度の耐性およびSRTを誘導した。親AtT-20細胞における対照実験ならびにD
2/D
3アンタゴニストのエチクロプリド(100nM)による前処理は、PBZIおよびFAUC73のアゴニスト効果はD
3受容体に特異的であることを示した。さらに、耐性およびSRTを消失させる能力は濃度依存的ではなく、100nMから10μMの用量で試験したPBZIは耐性を誘導しなかった。全体として、これらの結果は、D
3受容体耐性およびSRT特性はリガンド依存的であることを示唆している。2つの耐性およびSRTを消失させる化合物のうち、PBZIは水溶性で、インビトロおよびインビボでより詳細に特徴付けられている。
【0212】
実施例3:化合物のインビボでの特徴付け:インビボ行動反応
新規クラスのD
3ドーパミン受容体アゴニストのインビボでの行動効果を判定するために、PBZIならびに伝統的な耐性およびSRTを誘導するD
3ドーパミン受容体アゴニストのPD128907((4aR,10bR)-3,4a,4,10b-テトラヒドロ-4-プロピル-2H,5H-[1]ベンゾピラノ-[4,3-b]-1,4-オキサジン-9-オール塩酸塩)の効果を比較した。
図12は、PD128907が新規オープンフィールド活動試験において二相性移動運動反応を誘発したことを示している。これに対し、PBZI(耐性およびSRTを誘発しない)は、一相性移動運動反応だけを誘導した。したがって、この新しい結果は、本明細書に記載の新しいクラスのD
3ドーパミン受容体アゴニストに対して可能性のある行動スクリーンを同定した。
【0213】
実施例4:化合物のインビボでの特徴付け:線条体内6-OHDAラットパーキンソン病モデル
新規クラスのD
3受容体アゴニストの治療上の可能性をさらに評価するために、線条体におけるD
3受容体のアップレギュレーションがパーキンソン病におけるレボドパ誘発性ジスキネジア(LID)の発生に寄与しているとの仮説を試験した。パーキンソン病の一側性線条体内6-OHDA損傷ラットモデルは詳細に特徴付けられており、パーキンソン病を治療するための神経保護および移植戦略を試験するために広く用いられている(Winkler et al., 2002, Neurobiol. Dis. 10(2):165-86)。このラットパーキンソン病モデルにおける黒質ドーパミンニューロンの部分的かつゆっくり進行する変性、および同時の運動欠損発生は、パーキンソン病を患っている患者で観察される進行性の悪化を模倣しているようであった(Winkler et al., 2002, Neurobiol. Dis. 10(2):165-86)。特に興味深いのは、この動物モデルにおけるLIDの発生で、これは臨床で見られる異常不随意運動(AIM)に類似している。
【0214】
Winklerらによって記載された線条体内6-OHDAラットパーキンソン病モデルをPBZIおよびES609のLIDに対する効果を試験するために用いた(Winkler et al., 2002, Neurobiol. Dis. 10(2):165-86)。AIMスコアをもとめるために、ラットを透明ガラスシリンダーに入れ、デジタルビデオレコーダーを用いて記録した。6-OHDA損傷動物は慢性レボドパ治療開始の約10日後にLIDを発生する。PBZIまたは4-(2-クロロフェニル)-ブタン-2-アミンのレボドパ誘発性のAIMスコアを低下させる能力を、慢性レボドパ投与開始後、10、17および24日目のレボドパ投与10分前に新規D
3受容体アゴニストを投与することによって判定した。これらの日に足踏み検査を行って、損傷動物における足踏み欠損を改善するレボドパの能力に対するこれらの新しいアゴニストの効果も評価した。
【0215】
実施例5:化合物のインビボでの特徴付け:ジスキネジアの低減
耐性誘導性(PD128907)および非耐性誘導性D
3受容体アゴニスト(PBZIまたは4-(2-クロロフェニル)-ブタン-2-アミン)の慢性レボドパ治療に関連するジスキネジアを低減する能力をラットモデルで試験した。対照(食塩水)、PD128907(0.1mg/kg、sc)、PBZI(17mg/kg、sc)または4-(2-クロロフェニル)-ブタン-2-アミン(20mg/kg)をレボドパ治療の10分前に投与した。
図13Aは、17日目(慢性L-DOPA相)の損傷動物の全AIMスコア(移動運動、軸、肢および口舌を含む)に対する、対照、PD128907(耐性誘導性D
2/D
3アゴニスト)およびPBZI(非耐性誘導性D
3/D
3アゴニスト)の経時的効果を示す。興味深いことに、レボドパ投与の前でさえ、PD128907の損傷動物への投与はそれ自体でジスキネジアを誘導した。これは、LIDがパーキンソン病治療に用いるドーパミン受容体アゴニストによっても誘発されうるとの臨床報告と一致している。
【0216】
図13Aの結果は、PBZI自体はジスキネジアを誘導せず、レボドパ誘発性ジスキネジアの発症を遅らせたことを示唆している。
図13Bの曲線下面積を計算することによって得られた累積データは、PBZIが全積分AIMスコアを有意に低減(約300%)することを示している。PBZIおよびレボドパの同時投与中に得られた足踏み検査データは、PBZIが運動緩徐/無動に対するレボドパの有益な効果を減弱しなかったことを示唆している。これらの結果は、PBZIおよびその類縁体がパーキンソン病におけるLID治療のための新しい治療法として前臨床開発するための有望な候補であることを示唆している。
【0217】
実施例6:化合物のインビボでの特徴付け:マウスにおける移動行動
Balb/cマウスにおける移動行動に対するPBZIの効果を評価した。本実験の特定の目的は:(a)PBZIがBalb/cマウスにおいて移動運動の低減を誘導するかどうかを調べること;(b)より長い試験セッションを通してPBZIの効果を評価すること;および(c)PD128907がBalb/cマウスにおいて二相性移動運動効果を誘発するかどうかを調べることであった。
【0218】
合計12の若年成獣雄Balb/cマウスをCharles River, Inc. (Wilmington, MA)から入手し、4匹の群で標準のケージ内に収容した。動物を12時間ごとの明暗周期で維持し、食餌および水は自由に接近させた。実験を動物の明るい期間中に行った。マウスの系統を、ドーパミン作動性化合物とBalb/cマウスの運動活動との間の関係を評価する過去の研究に基づいて選択した。マウスにPBZI(0、1、または10mg/kg、sc)を1回注射し、その後ただちに試験アリーナ(TruScan arena, Coulbourn Instruments Inc.)に通常の照明下で2時間個別においた。PD128907について、別の群のBalb/cマウスに食塩水(n=4)または0.05もしくは0.4mg/kgのPD128907(それぞれn=4)を皮下注射した。薬物注射動物の移動運動(「移動した距離」)スコアは10分間隔の全域で崩壊し、比較のために食塩水を注射した動物に対して規準化した(
図12A)。実験を3つの別々の場合に行った。移動運動は用量×時間の相互作用の関数として有意に変動した(F(2,4)=5.40、p=0.002;)。この相互作用を含む主効果のニューマン-ケウルス多重比較(α=0.05)により、移動運動は、10mg/kgのPBZIを投与したマウスでは、他の群のマウスに比べて、20分以内に有意に低下する(約90%)ことが判明した。さらに重要なことに、他の時間間隔では、群間の差はなかった。この効果はBalb/cマウスにおいて注射後40分間持続した。
【0219】
これに対し、PD128907は、他のマウス系統で以前に報告されたとおり、Balb/cマウスにおいて二相性効果を誘発した。注射直後の40分間は活動低下が観察され、続いて注射後70から110分の期間は活動亢進が見られた(
図12B)。PD128907の二相性効果は0.05mg/kg以上の用量で観察された。より低い用量のPD128907(0.05mg/kg)は短時間(20分)の活動低下を誘発する一方で、同じ時間および大きさの活動亢進を誘発した。活動低下を誘発するのに必要とされる用量の差は、PBZI(K
i=22nM)およびPD128907(K
i=2.3nM)に対するD
3ドーパミン受容体結合親和性の差によるものであろう。PBZIおよびPD128907の両方により、移動運動活動は注射後120分までに対照食塩水レベルまで戻った。これらの結果は、D
3受容体耐性を誘導するアゴニスト(PD128907)が二相性移動運動反応を誘発することを明らかに示している。しかし、D
3受容体耐性を誘導しないアゴニスト(PBZI)は一相性の低活動性移動運動反応を誘発する。
【0220】
実施例7:細胞機能およびシグナル伝達経路に対するD3受容体シグナル伝達特性の効果
安定に発現されたD
3受容体はAtT-20神経内分泌細胞における内因性GIRKチャネルに結合し、自発性活動電位および分泌を調節する(Kuzhikandathil & Oxford, 1999, J. Neurosci. 19(5):1698-1707;Kuzhikandathil & Oxford, 2000, J. Gen. Physiol. 115:697-706;Kuzhikandathil et al., 1998, Mol. Cell Neurosci. 12:390-402)。安定に発現されたヒトD
3ドーパミン受容体のドーパミンによる活性化は、最初の適用中に自発性活動電位を阻害したが、その後の適用後には阻害しなかった(
図16A)。これに対し、耐性およびSRT消失アゴニストのPBZIによるD
3受容体の活性化は、最初の適用およびその後の適用中に自発性活動電位を阻害した(
図16B)。この結果は、耐性を誘導するD
3受容体アゴニストによるニューロン発火の調節は、耐性を誘導しないものとは非常に異なることを示唆している。後者のクラスのアゴニストはD
3受容体をD
2受容体の機能的等価物に変換する。
【0221】
実施例8:D3受容体-PBZIファーマコフォアモデルを用いての耐性およびSRTを誘導しない新規アゴニストの同定
図9C、2Aおよび2Cにおける結果は、PD128907が重度の耐性およびSRTを誘導することを示し;興味深いことに、耐性およびSRTを誘導しないPBZIは、PD128907と少数の中核構造要素を共有している(
図6)。PD128907およびPBZIの耐性およびSRTを誘導する能力における明確な差は、D
3受容体相同性モデルにおいてドッキングしたこれらの化合物の比較モデリング試験が、耐性およびSRT特性を消失させるさらなる化合物をスクリーニングするためのファーマコフォアモデル開発のための情報をもたらしうることを示唆していた。
【0222】
PD128907およびPBZI誘発性のシグナル伝達特性の差をさらに理解するために、これらをD
3受容体の結合部位にドッキングさせた。ドッキングは、プロトン化可能なアミンとAsp110との塩橋相互作用、膜貫通(TM)5における保存されたセリン残基との水素結合相互作用、ならびにTM6およびTM7からの残基との芳香族相互作用によって規定された。リガンド結合複合体を最小化し、分子動力学(MD)シミュレーションを用いてさらに精密化した。精密化した複合体の構造重ね合わせにより、TMバンドルならびにループ領域にはっきりした差がある3.5Åの自乗平均偏差(rmsd)を得、これらのアゴニストはそれぞれ、以前にキンピロールについて観察されたとおり、受容体における特有のコンフォメーション変化を誘発するとの仮説を導いた。PD128907はAsp110との保存された塩橋、TM5におけるSer193との水素結合、ならびにHis349、Trp342およびTyr373との芳香族相互作用を形成する。PD128907のテトラヒドロピラン環はPBZIの等価のヘキサヒドロベンゾ基よりも電気的陰性であるため、後者はおそらくTM3における疎水性基ならびにTM6における他の芳香族残基との相互作用が少ないと思われる。PBZIはAsp110との保存された塩橋、TM5におけるSer192との水素結合を形成し、His349およびPhe345との好ましいパイ-パイ相互作用を有する。加えて、ヘキサヒドロベンゾ基の疎水性の性質により、これはTM3におけるVal111、TM5におけるPhe197、TM6におけるTrp342およびTM7におけるTyr373との好ましい相互作用を形成する。
【0223】
PBZIのD
3受容体とのこれらの相互作用が重要であったかどうかを確認するために、疎水性要素、塩橋相互作用および芳香族-パイ相互作用を組み込む三次元ファーマコフォアを設計した。この三次元ファーマコフォアを用い、PBZIのファーマコフォアの特徴を模倣しうる小分子について、300万の化合物ライブラリをHSB法を用いてスクリーニングした。次いで、スクリーンからのヒットを、Lipinskiの薬物様特性、プレグナン生体異物受容体活性化およびより重要な血液脳関門(BBB)透過を含むフィルタリングスキームにかけた。フィルタリングスキームから得られた290のヒットをD3受容体の結合部位にドッキングさせ、様々なスコアリングスキームを用いて採点した。スコアリングスキームを、Asp110との塩橋相互作用を形成し、TM5、TM6およびTM7によって形成される芳香族クラスターとの好ましい相互作用を有する分子だけを順位付けるようカスタマイズした。
【0224】
HSBコンピュータースクリーンによって特定された15の化合物を、D3受容体を活性化し、GIRK反応、耐性およびSRTを誘導する能力について評価した。機能試験によって、新規D
3受容体アゴニスト、ES609(4-(2-クロロフェニル)-ブタン-2-アミン)が同定され、これは耐性およびSRTを誘導しなかった。
図17は、ES609の代表的なトレースおよび累積データを示し、PBZIおよびFAUC73の場合と同様、ES609もD3受容体耐性およびSRT特性を消失させることを示唆している(
図17A)。対照実験は、ES609が親AtT-20細胞においてGIRK電流を誘発せず(
図17B)、D3受容体を安定に発現しているAtT-20細胞において誘導された電流はアンタゴニストのエチクロプリドでの前処理によって阻止されることを示した。ドッキング実験により、ES609が、His349との好ましいパイ-スタッキング相互作用およびAsp110との塩橋を伴う、PBZIの相互作用パターンに従うことが確認された(
図6A)。D3受容体-ES609複合体のMDシミュレーション試験を用いてのさらなる精密化は、ES609がPBZIのものと類似のコンフォメーションを誘発することを示した。ES609結合D3受容体構造は1.2ÅのrmsdでPBZI結合D3受容体構造に重ね合わされた(
図7A)。結果は、ES609はドーパミンのものと同じ中核構造を共有する(
図6D)が、その相互作用パターンならびにそれがD
3受容体において誘発するコンフォメーション変化はPBZIのものと類似であることを示している。
【0225】
実施例9:PBZIおよびES609の機能の特徴付け
新しいクラスのD
3受容体アゴニストの機能効果を比較するために、PBZI(表2)およびES609(表3)をヒトD
3、D
2S、D
2LまたはD
4.2を安定に発現しているAtT-20細胞で試験した。機能有効性を、これらの「D
2様」ドーパミン受容体に結合したアデニリルシクラーゼを阻害する、またはGIRKチャネルを活性化する、PBZIおよびES609の能力を評価することによって判定した。アデニリルシクラーゼ阻害およびGIRKチャネル活性化についてのPBZIおよびES609のEC
50値はD
3受容体では0.2nMから30nMの範囲であった。完全アゴニストであるキンピロールの飽和濃度(300nM)により誘発された反応と比較することにより、結果はアデニリルシクラーゼおよびGIRKチャネル検定の両方でPBZIおよびES609はD
3受容体における完全アゴニストであることを示した。これに対し、両方の化合物はD
2Sドーパミン受容体では部分アゴニストであった。D
2Lドーパミン受容体では、PBZIは両方の検定で完全アゴニストであり;これに対し、ES609はアデニリルシクラーゼ検定ではいかなる反応も誘発せず、GIRKチャネル検定では部分アゴニストであった。D
4.2ドーパミン受容体では、アデニリルシクラーゼ検定においてPBZIは反応を誘発せず、ES609は部分アゴニストであった。GIRKチャネル検定において、PBZIはD4.2受容体における部分アゴニストであったが、ES609は反応を誘発しなかった。全体としてこれらの結果は、PBZIおよびES609はいずれもD
3受容体における完全アゴニストであり、他のD
2様ドーパミン受容体では部分アゴニストであるか、または反応を誘発しないかのいずれかであった。
【0226】
(表2)シス-8OH-PBZIは個々のドーパミン受容体サブタイプを安定に発現しているAtT-20細胞においてアデニリルシクラーゼの阻害およびGIRKチャネルの活性化を誘導した
*、P<0.05、統計学的有意、スチューデンツt検定。
†、300nM PBZI存在下でアデニリルシクラーゼ阻害は見られないが;300nMキンピロールは約70%阻害を誘発する。ND-判定していない;EC
50を判定するための完全な用量反応実験を行わなかった;データはPBZIの1つの濃度(300nM)について得た。±平均の標準偏差。
【0227】
(表3)ES609は個々のドーパミン受容体サブタイプを安定に発現しているAtT-20細胞においてアデニリルシクラーゼの阻害およびGIRKチャネルの活性化を誘導した
*、P<0.05、統計学的有意、スチューデンツt検定。
†、300nM ES609存在下でアデニリルシクラーゼ阻害は見られないが;300nMキンピロールは約80%阻害を誘発する。
††、300nM ES609はGIRK反応を誘発しないが;300nMキンピロールは完全なGIRK反応を誘発する。ND-判定していない;EC
50を判定するための完全な用量反応実験を行わなかった;データはES609の1つの濃度(300nM)について得た。±平均の標準偏差。
【0228】
本明細書に記載の結果は、D
3受容体耐性およびSRT特性はリガンド依存的で、これらの特性を誘導しない新しいクラスの非定型D
3受容体アゴニストの同定を助けることを示している。PD128907と構造的に類似であるが、耐性およびSRTは誘導しない水溶性化合物である、PBZIが同定された。以前の結合試験は、D
2様受容体に対し、PBZIはD
3では27nM、D
2Sでは1800nMおよびD
4.2では280nMのKiを有することを示している(Scheideler et al., 1997, Eur. J. Pharmacol. 339(2-3):261-270)。D
1様受容体および一連の他の神経伝達物質受容体、イオンチャネルならびに輸送体における結合は無視できるものであった。したがって、PBZIは受容体結合検定においてD
3受容体選択性を示した。これは、PBZIがD
3受容体では完全アゴニストであり、D2Sドーパミン受容体では部分アゴニストであることを示す、機能試験の結果(表2)と一致している。D
2S受容体における部分アゴニスト効果は、以前のインビトロでの結果とも一致している。インビボで、PBZIを投与した動物は、D3受容体発現が高い領域である、内側前前頭皮質および側坐核の外皮領域におけるc-fos発現の特異的増大を示す。D
2L受容体におけるPBZIの効果は以前には判定されていない。本明細書に記載の結果は、PBZIがD
2Lドーパミン受容体における完全アゴニストであることを示している(表2)。D2SおよびD2L受容体のそれぞれシナプス前およびシナプス後の位置に基づき、PBZIは主にシナプス後効果を有すると予測される。これは以前のインビボ試験によっても支持されている(Fink-Jensen et al., 1998, Eur. J. Pharmacol. 342(2-3):153-161)。
【0229】
伝統的なD
2様受容体アゴニスト、PD128907は、D
3受容体選択的で、D
3では0.4nM、D
2Sでは202nMおよびD
4.2では114nMのKiを有する(Scheideler et al., 1997, Eur. J. Pharmacol. 339(2-3):261-270);しかし、本明細書に記載の試験は、PD128907が重度の耐性およびSRTを誘導することを示した。興味深いことに、PD128907の化学構造はPBZIと類似である。PD128907およびPBZIは類似の中核構造およびD
3受容体における完全アゴニストとしての機能を共有しているが、これらは耐性およびSRT特性に対しては劇的に異なる効果を有する。本明細書に記載の結果は、PBZIとPD128907との間の機能上の差はこれらのアゴニストがD
3受容体において誘導する異なるコンフォメーションによることを示唆している。これらのコンフォメーション変化の大部分は、結合部位および細胞外ループ(EC)2ループ領域に最も近い領域に制約されている。PBZIおよびPD128907と結合した構造の比較は、最大シフトがEC2の大きい動きと結合しているTM4で起こることを示唆している。加えて、コンフォメーション変化は、以前に耐性特性を仲介するのに重要であることが示された(Westrich et al., 2010, Biochem. Pharmacol. 79:897-907)細胞内ループ(IC)2においても観察される。他の著しいコンフォメーション変化には、PD128907結合型におけるTM6らせんの長さにそって下向きのシフトおよびTM3らせんの最初の反転の巻き戻しが含まれる。
【0230】
この試験において、コンピューターモデルにおいてPBZIおよびPD128907の結合により生じる相互作用およびコンフォメーション効果の性質を注意深くモニターすることにより、選択性を示し、耐性およびSRT特性を消失させる、新規非定型的D3受容体アゴニストのES609を設計した。さらなる非定型的D
3受容体アゴニストを同定するために、HSB法を用いてもよい。ES609は、PBZIとD
3受容体との相互作用の性質に基づいて設計した。仮説は、リガンド上に電子吸引基を導入することにより芳香族中核とのパイ-パイ相互作用の強度を高めるというものであった。したがって、ES609のオルト位のハロゲン基は、プロトン化可能なアミンの近位に追加した疎水性と共に、設計にとって非常に適していた(
図6D)。後者は、FAUC73のTM3における残基との相互作用に類似の、TM3上の疎水性基との相互作用を強化した。His349は、D2L受容体におけるリガンドによって偏ったシグナル伝達を促進する上で主要な役割を果たしうる。これらの結果は、His349および芳香族中核の他のメンバーとのパイ-パイ相互作用の強化はPBZI、FAUC73およびES609の非定型的特性に有利に寄与しうるとの知見と一致している。試験は、機能選択性を促進する上でのEC2およびTM4の特異的役割を理解すること、ならびにD
3受容体との複合体におけるこれらの非定型的アゴニストの完全な構造活性相関をさらに理解することを目的としている。機能的に、ES609およびPBZIはD
3受容体結合シグナル伝達経路を活性化するために類似の有効性を有する。しかし、PBZIとは対照的に、ES609は、2つの異なるシグナル伝達経路で試験すると、他のD
2様受容体(D
2S、D
2LおよびD
4.2)では部分アゴニストであるか、または反応を誘発しない。ES609が示す選択性は、その構造が未来の選択的D
3受容体アゴニストを設計するための鋳型として役立ちうることを示唆している。そのEC
50によって規定されるES609の機能的親和性は、発明者らが試験した2つのシグナル伝達経路において他のD
2様ドーパミン受容体アゴニストと類似である。さらに、その小さい分子量および水溶性によって、これはインビボ試験において理想的となっている。PBZIおよびES609はインビトロで類似のシグナル伝達特性を有することを考慮して、これらはインビボでも類似の効果を有することが予想される。
【0231】
本明細書に記載の新しいクラスの非定型的D
3受容体アゴニストは、機能選択性の概念に対する新しい変形を表す。伝統的に、機能選択性は、同じ受容体に結合した異なるシグナル伝達経路において様々な反応を誘発する異なるリガンドの能力によるとされている。同じ受容体に結合した異なる経路を異なる程度に活性化するリガンドの能力は、リガンドが受容体において生じる異なるコンフォメーションによるものである。D
3受容体耐性およびSRT特性は異なるコンフォメーション状態によって決定されることを考慮して、これらのコンフォメーション状態を変化させるリガンドの同定が2つの特性を調節すると予想される。この予想と一致して、本試験において、2つのD3受容体特性を変化させるリガンド群が同定された。本明細書に記載の結果は、機能選択性概念は同じ受容体に結合した異なる経路の選択的活性化に限定されず、単一の経路におけるシグナル伝達経路を調節するリガンドを含むよう拡大しうることを示している。本明細書の場合と同様、これらの特性が複数のシグナル伝達経路におよぶとすれば、これらの特定の特性の異所性発現または変化は様々な障害の病理の基礎をなしうる。この状況において、D3受容体の耐性およびSRT特性によって例示されるこれらの受容体特性は、新しい薬物標的でありうる。本明細書に記載の試験により、これら2つのD
3受容体シグナル伝達特性を特異的に標的とする新しいクラスのアゴニストの同定が可能になる。
【0232】
レボドパ誘発性ジスキネジアを有する動物の線条体におけるD
3受容体耐性およびSRT特性の異所性発現は、運動障害行動に寄与することが提唱されている。非定型的D
3受容体アゴニストは、耐性およびSRTを消失させることにより、レボドパ誘発性ジスキネジア症状を改善しうる。耐性およびSRT特性の状況におけるD
3受容体発現の変化は、精神分裂病、精神病、慢性コカイン使用、ストレス、およびうつなどの神経障害において観察される行動表現型のいくつかの説明を提供しうる。D
3受容体の異所性発現変化は、これらの障害の多くでD
3/D
2受容体発現の比に影響をおよぼし、観察される病態を引き起こすと考えられる。本明細書に記載の新しいクラスの非定型的D
3受容体アゴニストは、D
3受容体シグナル伝達をD
2受容体の機能的等価物に変換することにより、これらの障害を治療するための新規治療アプローチを提供しうる。
【0233】
本明細書において引用するそれぞれ、およびすべての特許、特許出願、および出版物の開示は、その全体が参照により本明細書に組み入れられる。
【0234】
本発明を具体的態様に関して開示してきたが、当業者であれば、本発明の真の精神および範囲から逸脱することなく、本発明の他の態様および変形を考案しうることは明らかである。添付の特許請求の範囲はすべてのそのような態様および等価の変形を含むと解釈されることが意図される。