(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
一方の乗降口と他方の乗降口との間を移動する無端状に連結された複数の踏板と、前記踏板の両側に設けられた欄干と、前記欄干の上を前記踏板と同期して移動する移動手摺と、前記踏板や前記移動手摺を駆動する駆動装置と、前記踏板が走行する部位に設けられた前記踏板の欠落を検出する踏板異常検出装置と、前記踏板異常検出装置からの信号が入力され、通常モードでの運転及び保守モードでの運転を実行するように前記駆動装置に駆動制御信号を供給する運転制御装置とを備えた乗客コンベアにおいて、
前記運転制御装置は、通常モードにおいて前記踏板異常検出装置によって前記踏板の欠落が検出されると、前記踏板の走行を停止する指令に切り換え、これに基づいた駆動制御信号を前記駆動装置に供給し、保守モードにおいて前記踏板異常検出装置によって前記踏板の欠落が検出されると、前記踏板の走行速度を前記踏板の欠落が検出されない場合より低速側の第1の速度指令に切り換え、更に前記第1の速度指令に基づいた駆動制御信号を第1の所定時間だけ前記駆動装置に供給すると共に、
前記運転制御装置は、前記第1の所定時間が経過した後に前記踏板異常検出装置によって前記踏板の欠落が検出されない場合は、前記第1の速度指令より増速された速度指令に基づいた駆動制御信号を前記駆動装置に供給することを特徴とする乗客コンベア。
【発明を実施するための形態】
【0014】
次に、本発明の実施形態について図面を用いて詳細に説明するが、本発明は以下の実施形態に限定されることなく、本発明の技術的な概念の中で種々の変形例や応用例をもその範囲に含むものである。
【0015】
まず、
図1を参照して乗客コンベアの構成について説明する。
図1は乗客コンベアとしてのエスカレーターの構成を示す概略側面図である。
【0016】
図1に示すように、乗客コンベアの一種であるエスカレーター1には上階と下階に架け渡された枠体2が設けられており、この枠体2は上部水平枠2a、中間枠2b及び、下部水平枠2cより構成されている。枠体2の内部には無端状に連結された複数の踏板6が移動可能に設けられている。また、踏板6の左右両側に移動手摺8を支持する欄干7が枠体2から立設されている。欄干7の下部にはスカート部が設けられている。そして、踏板6と移動手摺8とが同期して移動することにより、下降運転時は上側乗降口20から下側乗降口21へ乗客を搬送する。また、上昇運転時には下側乗降口21から上側乗降口20へ乗客を搬送する。
【0017】
踏板6を無端状に連結する踏板チェーン5は、駆動スプロケット3及び従動スプロケット4に巻き掛けられている。更に、上側乗降口20の下部の機械室には駆動装置9が備え付けられている。駆動装置9はモータ11、図示しない減速機及びブレーキ装置12を備えており、モータ11の駆動力は動力伝達チェーン10を介して駆動スプロケット3に与えられ、踏板チェーン5及び踏板6を駆動する。
【0018】
駆動装置9にはモータ11を制御する運転制御装置14を備えており、この運転制御装置14は商用電源13から電力の供給を受けるインバータ15の出力を制御し、インバータ15から電力の供給を受けてモータ11の回転が制御されるようになっている。また、駆動制御部14は運転切替スイッチ16を備えており、この運転切替スイッチ16によって通常の営業運転を行う通常モードと保守作業を行う保守モードを切り替えるようになっている。尚、運転切替スイッチ16は、例えば欄干7などのような他の場所に設けるようにしてもよい。
【0019】
このような乗客コンベアの構成とその動作は良く知られているのでこれ以上の説明は省略する。次に、
図2、
図3を参照して踏板6が取り外されていない場合と取り外された場合の踏板6の欠落を検出する方法を説明する。
【0020】
図2、
図3は下部水平枠2c内に設けられた踏板6の走行反転装置18付近の構成を示しており、踏板6が一方の方向から進入して走行反転装置18によって走行方向を反転されて他方の方向に退出する様を示している。
【0021】
下部水平枠2cの底部には踏板異常検出装置17が設けられており、これによって踏板6が取り外されているかどうかを判定している。この踏板異常検出装置17は、例えば磁気センサやレーザセンサによって構成され、
図2に示すように踏板6が通過する軌跡に近接して配置されている。
図2にあるように、踏板異常検出装置17は踏板6の走行方向が反転する付近より少し前側の位置に配置されている。踏板6の走行方向が反転する領域だと、踏板6の走行角度が変わり正確な判定ができない恐れがあるので、水平方向に走行している状態で踏板6の欠落や異常を検出するようにしている。尚、本実施例では、エスカレーター1が通常運転されている通常モードでも踏板6の異常を検出する制御を実行するので、この踏板異常検出装置17の信号は保守モード以外でも使用されるものである。したがって、踏板6の全体的な欠落だけでなく、踏板6の踏面の欠落等の異常状態も検出することができる。
【0022】
そして、
図2にあるように踏板6が取り外されていない状態と、
図3にあるように踏板6が取り外されて欠落空間19がある状態とでは、踏板異常検出装置17の出力信号が異なる状態となる。例えば、レーザセンサによるレーザ光の反射を検出する方式であれば、踏板6の移動中に踏板6がない欠落空間19が到達すると所定時間に亘ってレーザ光の反射が途絶えるので、これを検出することで踏板6の欠落を検出することができる。この信号を利用することで以下に述べる各実施形態の制御が実行できるものである。尚、踏板異常検出装置17はレーザセンサ以外に磁気センサや容量性センサ等を使用することができる。
【実施例1】
【0023】
本発明の第1の実施形態について
図4に基づき説明する。この
図4に示すフローチャートは、保守モードにおいて踏板6が取り外されていることを検出すると踏板6の走行速度を低速側に切り替えることを特徴としている。
【0024】
ステップS10において運転スイッチを“オン”するとエスカレーター1の運転が開始され、踏板6が所定の方向に向けて走行移動を開始する。
【0025】
ステップS10でエスカレーター1の運転が開始されると、ステップS11において運転状態が通常モードか、或いは保守モードかを判断する。この判断は運転切替スイッチ16によって保守モードに切り替えられたかどうかをスイッチ入力の状態を判断することで可能であり、通常モードと判断されるステップS12に進み、保守モードと判断されるステップS19に進むことになる。
【0026】
ステップS11で通常モードと判断されると、ステップS12では運転スイッチが依然として“オン”のままかどうかを判断する。この判断で“オン”のままだとステップS16に進み、“オン”でないと判断される、言い換えると運転スイッチが“オフ”されてエスカレーターの停止指令があるとステップS13に進むことになる。
【0027】
エスカレーターの停止指令があると、ステップS13では運転制御装置14からインバータ15に停止指令を出力し、ステップS14でモータ11の駆動を停止し、更にはブレーキ装置12によって踏板6の走行移動を停止する。この後ステップS15に進みエスカレーター1の運転を終了するものである。
【0028】
一方、ステップS12で運転スイッチが“オン”のままと判断されるとステップS16に進み、踏板異常検出装置17によって踏板6の脱落や破損等の異常があるかどうかを判断する。この判断は通常モードでの判断なので保守モードとは異なった制御を実行するための判断となる。ステップS17で異常があると判断されるとステップS13に進み、異常がないと判断されるとステップS17に進むことになる
ステップS16で異常がないと判断されると、ステップS17に進み運転制御装置14からインバータ15に通常運転での通常速度指令P0を出力する。この通常速度指令P0に基づいてステップS17でモータ11の駆動を行い、ステップ18で踏板6を通常速度V0で走行させ、再びステップS12に戻って通常運転を継続するものである。
【0029】
一方、ステップS16で踏板6に異常があると判断されるとステップS13に進んで、運転制御装置14からインバータ15に停止指令を出力し、更にステップS14でモータ11の駆動を停止して踏板6の走行移動を停止する。この後、ステップS15に進みエスカレーター1の運転を終了するものである。これによって、踏板6に異常を生じたまま走行移動させて不慮の事故を誘発する恐れを解消し、通常運転時での安全性を確保することができる。尚、踏板異常検出装置17によって踏板6の脱落や破損等の異常があると判断されると、報知手段であるブザーやスピーカによって警報や音声案内で報知することによって注意喚起を行うようになっている。
【0030】
以上は通常モードでの制御方法であり、次に保守モードでの制御方法を説明するが、上述したように今回の保守モードは踏板6を取り外して保守作業を行う保守モードを対象としている。
【0031】
ステップS11で保守モードと判定されるとステップS19に進み、ステップS19では運転スイッチが“オン”のままかどうかを判断する。“オン”でなければエスカレーターの停止指令があると判断してステップS13に進むことになる。エスカレーターの停止指令があると、ステップS13では運転制御装置14からインバータ15に停止指令を出力し、ステップS14でモータ11の駆動を停止して踏板6の走行移動を停止する。この後ステップS15に進みエスカレーター1の運転を終了するものである。
【0032】
一方、ステップS19で運転スイッチが“オン”のままであれば、保守モードを継続するものとしてステップS20に進む。ステップS20は保守モードで踏板6を取り外して保守作業を行う場合を想定してこのステップを設けている。したがって、このステップS20では保守作業のために踏板6が取り外されているかどうかを判断する。ステップS20で踏板異常検出装置17によって踏板6が取り外されているかどうかを判断し、踏板6が取り外されていないと判断されるとステップS21に進み、踏板6が取り外されていると判断されるとステップS23に進むことになる。
【0033】
そして、ステップS20で踏板6が取り外されていないと判断されると、踏板6を取り外さない保守作業と見做し、ステップS21において運転制御装置14からインバータ15に通常運転での通常速度指令P0を出力する。この通常速度指令P0に基づいてモータ11の駆動を行い、ステップS22で踏板6を通常速度V0で走行させ、再びステップS19に戻って保守モードを継続するものである。尚、通常モードにおける通常速度指令P0、通常速度V0と、保守モードにおける通常速度指令P0、通常速度V0とは、同じでもよいし異なっていてもよい。
【0034】
一方、ステップS20で踏板6が取り外されていると判断されると、ステップS23に進んで運転制御装置14からインバータ15に通常運転での通常速度指令P0より速度が減速された低速度指令P1を出力する。低速度指令P1は通常速度指令P0の50%程度の出力に設定されており、この低速度指令P1はT1時間だけ出力されるように設定されている。尚、このステップS20でも踏板異常検出装置17によって踏板6の取り外しがあると判断されるとブザーやスピーカによって警報や音声による注意喚起を行うことができる。これによって、更に保守要員の安全性を高めることができる。
【0035】
ステップS23で低速度指令P1がT1時間だけ出力されるように設定されると、ステップS24では低速度指令P1によって、インバータ15がモータ11に駆動信号を供給し、踏板6を低速度V1でT1時間だけ走行させる。ここで、低速度指令P1の発生時間であるT1時間は、踏板6を取り外した欠落空間19が踏板異常検出装置17によって検出された時から走行反転装置18を通過して乗降口21の表側に出現するまでの時間と、この時間に任意の時間を加えた時間に設定されている。この任意の時間は適切に選ぶことができる。
【0036】
したがって、ステップS24の後にT1時間の経過判断処理を追加して、T1時間が経過するまではステップS23に戻り、T1時間が経過すると再びステップS19に戻って保守モードを継続するものとしてもよい。そして、再びステップS20で踏板異常検出装置17が踏板6の欠落を検出したかどうかを判断し、踏板6の欠落を検出しないとステップS21に進んで通常速度指令P0を出力して踏板6の走行速度を増速するものである。
【0037】
このように、保守モ―ドにおいて踏板6が取り外されたことを検出すると、踏板6の走行速度を低速側に切り替えることによって、踏板6が取り外されていることを保守要員に気付かせることができ、注意喚起情報としての機能を与えることができるものである。また、従来のように踏板6の取り外しによって踏板6の走行を停止させないので保守作業の効率を向上することができるものである。
【0038】
更に、踏板6の走行速度を低速に切り替えることによって、欠落空間19が乗降口21の表側に出現するまでの時間を長くとれるので、保守要員の欠落空間19の出現に対する心理上の準備がとり易くなるものである。
【実施例2】
【0039】
次に本発明の第2の実施形態を
図5に基づき説明する。この
図5に示すフローチャートは、踏板6の取り外し枚数に対して検出された踏板の欠落枚数が一致しない場合に踏板6の走行速度を更に低速側に切り替えることを特徴としている。ここで、以下に説明する各実施形態(実施形態2〜実施形態5)で
図4に示すフローチャートと同じ参照番号を付しているものは同じ処理を表しているので、その説明は省略する。尚、当然のことであるが、各実施形態は実施例1を基礎にしているので、これによって得られる作用、効果は基本的には実施例1と同様のものである。
【0040】
さて、ステップS20で踏板異常検出装置17によって踏板6が取り外されたことを検出すると、ステップS25に進み踏板6の取り外し枚数NOが保守要員によって入力されているかどうかが判断される。この踏板6の取り外し枚数NOは保守要員によって運転制御装置14に携帯ツールを利用して入力されるか、或いは運転制御装置14に設けられているテンキー等の入力装置によって入力される。この踏板6の取り外し枚数NOは運転制御装置14に内蔵されているフラッシュメモリ等の記憶手段に記憶される。
【0041】
ステップS25で踏板6の取り外し枚数NOが保守要員によって入力されていると判断されるとステップS26に進み、取り外し枚数NOと踏板異常検出装置17によって検出された検出枚数Nが一致しているかどうかを判断する。検出枚数は欠落空間19の進行方向の長さを測り、この欠落空間19の長さを踏板の進行方向長さで除して求めることができる。そして、取り外し枚数NOと検出枚数Nが一致していると正規の取り外し枚数であるので実施例1と同様にステップS23、S24の処理を行いステップS19に戻るものである。
【0042】
一方、ステップS25で取り外し枚数NOが入力されていないと判断されると、取り外し枚数NOと検出枚数Nとの比較ができないので安全性を高く見積もってステップS27に進むことになる。更に、ステップS26で取り外し枚数NOと検出枚数Nが一致しないと判断されると、作業中に踏板6が新たに脱落した可能性があるのでこれもステップS27に進むことになる。
【0043】
ステップS27の処理は、正規の取り外し枚数NOを確認した場合の処理であるステップS23とは異なり、踏板6の取り外し枚数NOが不明、或いは踏板6が途中で脱落した可能性があることから、踏板6の走行速度を更に低速にしてこの状態を保守要員に認識させるようにしている。
【0044】
ステップS27では、運転制御装置14からインバータ15にステップS23で設定した低速度指令P1より速度が更に低速の低速度指令P2を出力する。低速度指令P2は通常速度指令P0の10%程度の出力に設定されており、この低速度指令P2はT2時間だけ出力されるように設定されている。
【0045】
ステップS27で低速度指令P2がT2時間だけ出力されるように設定されると、ステップS28では低速度指令P2によってインバータ15がモータ11に駆動信号を供給し、踏板6を低速度V2でT2時間だけ走行させる。この場合、実施例1と同様にステップS28の後にT2時間の経過判断処理を追加して、T2時間が経過するまではステップS27に戻り、T2時間が経過すると再びステップS19に戻って保守モードを継続するものとしてもよい。
【0046】
ここで、低速度指令P2の発生時間であるT2時間は、実施例1と同様の考え方で設定されも良い。ただ、この場合は取り外した踏板6の枚数が不明であることや、途中で脱落している可能性があるので、保守要員の安全を考慮してステップS23で設定されるT1時間よりもT2時間の方が長く設定されている。
【0047】
このように、正規の取り外し枚数が確認された場合に比べて、取り外した枚数が不明、或いは取り外した枚数NOと検出枚数Nが異なる場合は、踏板6の走行速度が更に低速に切り替えられるので、保守要員は想定した保守作業環境にないことを認識することができるようになる。これによって更に保守要員の安全性を向上することができる。
【0048】
尚、本実施例ではステップS27で通常速度の10%に速度を落としているが、踏板6が新たに脱落した場合は、予測できない事象による保守要員の安全性確保や、エスカレーター1の新たな故障の誘発を避けるためエスカレーター1を停止させることもできる。
【実施例3】
【0049】
次に本発明の第3の実施形態を
図6に基づき説明する。この
図6に示すフローチャートは、踏板6の取り外し位置に対して検出された踏板の欠落位置が一致しない場合に踏板6の走行速度を更に低速側に切り替えることを特徴としている。
【0050】
さて、ステップS20で踏板異常検出装置17によって踏板6が取り外されたことを検出するとステップS29に進み、1つ以上の踏板6の取り外し位置X0〜Xnが保守要員によって入力されているかどうかが判断される。この踏板6の取り外し位置X0〜Xnは実施例2と同様に保守要員によって運転制御装置14に携帯ツールを利用して入力されるか、或いは運転制御装置14に設けられているテンキーの入力装置によって入力される。この踏板6の取り外し位置X0〜Xnは運転制御装置14に内蔵されているフラッシュメモリ等の記憶手段に記憶される。
【0051】
この取り外し位置X0〜Xnは、予め基準位置となる踏板6を決め、これを基準として各踏板6に順番に割り付け番号を付していけば求めることができる。基準となる踏板6には電気的、磁気的、或いは光学的なマーカーを取り付けることで各踏板6の取り外し位置X0〜Xnを割り出すことができるが、このような取り外し位置X0〜Xnの設定のやり方は種々有るので適宜行うことができる。
【0052】
さて、ステップS29で踏板6の取り外し位置X0〜Xnが保守要員によって入力されていると判断されるとステップS30に進み、踏板6の取り外し位置X0〜Xnと踏板異常検出装置17によって検出された踏板6の検出位置Xが一致しているかどうかを判断する。検出位置Xは欠落空間19の前後の踏板6の割り付け番号から欠落した踏板6の検出位置Xを求めることができる。
【0053】
そして、取り外し位置X0〜Xnと検出位置Xが一致していると正規の取り外し位置であるので実施例1と同様にステップS23、S24の処理を行いステップS19に戻るものである。
【0054】
一方、ステップS29で取り外し位置X0〜Xnが入力されていないと判断されると、取り外し位置X0〜Xnと検出位置Xとの比較ができないので安全性を高く見積もってステップS27に進むことになる。更に、ステップS30で取り外し位置X0〜Xnと検出位置Xが一致しないと判断されると、作業中に踏板6が新たに脱落した可能性があるのでこれもステップS27に進むことになる。
【0055】
ステップS27の処理は、正規の取り外し位置X0〜Xnを確認した場合の処理であるステップS23とは異なり、踏板6の取り外し位置X0〜Xnが不明、或いは踏板6が途中で脱落した可能性があることから、踏板6の走行速度を更に低速にしてこの状態を保守要員に認識させるようにしている。
【0056】
したがって、ステップS27では、運転制御装置14からインバータ15にステップS23で設定した低速度指令P1より速度が更に低速の低速度指令P2を出力する。低速度指令P2は通常速度指令P0の10%程度の出力に設定されており、この低速度指令P2はT2時間だけ出力されるように設定されている。
【0057】
ステップS27で低速度指令P2がT2時間だけ出力されるように設定されると、ステップS32では低速度指令P2によってインバータ15がモータ11に駆動信号を供給し、踏板6を低速度V2でT2時間だけ走行させ、再びステップS19に戻って保守モードを継続するものである。
【0058】
このように、正規の取り外し位置Xが確認された場合に比べて、取り外し位置が不明、或いは取り外した位置と検出位置が異なる場合は、踏板6の走行速度が更に低速側に切り替えられるので、保守要員は想定した保守作業環境にないことを認識することができるようになる。これによって更に保守要員の安全性を向上することができる。
【0059】
尚、本実施例においてもステップS27で通常速度の10%に速度を落としているが、踏板6が新たに脱落した場合は予測できない事象による保守守要員の安全性確保や、エスカレーター1の新たな故障の誘発を避けるためエスカレーター1を停止させることもできる。
【実施例4】
【0060】
次に本発明の第4の実施形態を
図7に基づき説明する。この
図7に示すフローチャートは、踏板異常検出装置17によって踏板6が取り外されていることを検出するとこれを記憶しておき、保守作業の終了時に踏板6を低速で走行させることを特徴としている。
【0061】
さて、ステップS20で踏板異常検出装置17によって踏板6が取り外されたことを検出するとステップS31に進み、運転制御装置15の記憶手段に異常検出情報Rを記憶する。この異常検出情報Rは保守作業では使用されず、保守作業の終了時に保守要員に踏板6が取り外された保守作業であるということを認識させるために使用される。
【0062】
そして、ステップS21、S22、或いはステップS23、S24の処理を実行した後にステップS19で運転スイッチが“オフ”されると、保守作業が終了したものと判断してステップS32進む。
【0063】
ステップS32では、ステップS31で記憶した異常検出情報Rが存在するかどうかを判断している。この判断によって異常検出情報Rが記憶されていないと判断されると、ステップS21、S22を実行したものとしてステップS13に進む。
【0064】
ステップS13では運転制御装置14からインバータ15に停止指令を出力し、ステップS14でモータ11の駆動を停止して踏板6の走行移動を停止する。この後ステップS15に進みエスカレーター1の運転を終了するものである。この場合は、踏板6が取り外されていないので、踏板6の再取り付け作業は必要なく、このままエスカレーター1の運転を終了するものである。
【0065】
一方、ステップS32で異常検出情報Rが記憶されていると判断されると、ステップS23、S24を実行したものとしてステップS33に進む。ステップS33では、運転制御装置14からインバータ15に通常運転での通常速度指令P0より速度が低速の低速度指令P3を出力する。低速度指令P3は通常速度指令P0の5%程度の出力に設定されており、この低速度指令P3はT3時間だけ出力されるように設定されている。
【0066】
ステップS33で低速度指令P3がT3時間だけ出力されるように設定されると、ステップS34では低速度指令P3によってインバータ15がモータ11に駆動信号を供給し、踏板6を低速度V3でT3時間だけ走行させる。この場合、ステップS34の後にT3時間の経過判断処理を追加して、T3時間が経過するまではステップS33に戻り、T3時間が経過するとステップS13に進むようにしてもよい。これ以降は、ステップS13、S14、S15の処理を実行してエスカレーター1の運転を終了するものである。
【0067】
このように、踏板異常検出装置17の異常検出情報Rの有無によって、保守作業が踏板6を取り外した保守作業かどうかを判別し、異常検出情報Rがあると踏板6の走行速度を更に低速側に切り替えている。このため、保守作業の終了時に、踏板6を低速で走行させるので保守要員に踏板6を取り外した保守作業であることを認識させることが可能となる。つまり、踏板6の低速走行という動作が注意喚起情報として機能することになる。したがって、保守要員は取り外した踏板6を再取り付けして保守作業を終了することになる。
【0068】
尚、本実施例では保守モードが終了される時として運転スイッチが“オフ”に切り替わった時に上記した制御を実行しているが、保守モードが終了される時として保守モードから通常モードに切り替わった時に踏板6を低速で走行させることで注意喚起情報としても良いものである。また、保守作業を行うために保守モードに切り替わった時に踏板6を低速で走行させることで注意喚起情報としても良い。
【実施例5】
【0069】
次に本発明の第5の実施形態を
図8に基づき説明する。この
図8に示すフローチャートは、踏板6が取り外されている欠落空間19の位置を推定し、欠落空間19がエスカレーター1の表側に露出している時には踏板6の走行速度を通常速度、或いは欠落空間19がエスカレーターの表側に露出していない場合より速い速度で走行させることを特徴としている。
【0070】
図3において、踏板異常検出装置17から下側乗降口21の下部くし部21Aまでの移動距離を1m、下部くし部21Aから上側乗降口20の上部くし部までの移動距離を10mとする。そして、踏板6が0.5m/sで上昇方向に移動するものとした場合、欠落空間19の検出後2s以内であれば、欠落空間19は走行反転装置18に存在すると推定できる。
【0071】
また、欠落空間19の検出後2sから22sの間であれば、欠落空間19はエスカレーター1の表側にあると推定できる。更に、欠落空間19の検出後22s以上であれば、欠落空間19は上側の乗降口20の上部くし部より先に潜り込んでいると推定できる。
【0072】
このような考えから、本実施例では踏板6の欠落空間19がエスカレーター1の表側に露出すると踏板6の走行速度を通常速度、或いは欠落空間19がエスカレーターの表側に露出していない場合より速い速度で走行させて作業効率を向上するようにしたものである。この場合、欠落空間19は表側に露出しているので保守要員は容易にこれを確認でき、踏板6の走行速度を早くしても危険性は左程生じないものである。
【0073】
さて、ステップS20で踏板異常検出装置17によって踏板6が取り外されていることを検出するとステップS31に進み、運転制御装置15の記憶手段に異常検出情報Rを記憶する。この異常検出情報Rは踏板6がエスカレーター1の表側に露出した時に踏板6の走行速度を増速する情報として使用される。
【0074】
そして、ステップS23、S24の処理を実行した後に再びステップS19、S20に進む。ステップS20では、欠落空間19が踏板異常検出装置17を通過した後なので、その判断は欠落空間19を検出していないという判断となる。その結果、ステップS35に進むことになる。
【0075】
ステップS35ではステップ31で記憶した異常検出情報Rがあるかどうかを判断している。異常検出情報RがなければステップS21に進むが、異常検出情報Rが存在すると判断されるとステップS36に進むことになる。
【0076】
ここで、ステップS31、S23、S24の処理によって踏板6がT1時間走行後は欠落空間19が下側乗降口21の下部くし部21Aを越えてきているので、欠落空間19がエスカレーター1の表側に露出した状態となっている。したがって、ステップS36では、運転制御装置14からインバータ15に通常運転での通常速度指令P0を出力する。この通常速度指令P0はT4時間だけ出力されるように設定されている。ステップS36で通常速度指令P0がT4時間だけ出力されるように設定されると、ステップS37では通常速度指令P0によってインバータ15がモータ11に駆動信号を供給し、踏板6を通常速度V0でT4時間だけ走行させる。
【0077】
通常速度指令P0の発生時間であるT4時間は、欠落空間19が下側乗降口21の下部くし部21Aから露出して上側乗降口20の上部くし部に潜り込むまでの時間である。したがって、T4時間は目安として下部くし部21Aから上部くし部までの距離を通常速度V0で除した時間として設定されている。尚、本実施例では欠落空間19がエスカレーター1の表側に露出した状態で通常速度V0に切り替えているが、要は欠落空間19がエスカレーターの表側に露出していない場合より速い速度で走行させれば作業効率が向上されるものである。
【0078】
更に、欠落空間19が上側乗降口20の上部くし部に潜り込んだ後は再びステップS23、S24の処理を行って踏板6の走行速度を低速に切り替えるものである。この場合は、例えば、ステップS37の後にT4時間の経過判断処理を追加して、T4時間が経過するとステップS23に進むようなロジックを組めば良いものである。
【0079】
このように、本実施例によれば欠落空間19が表側に露出していると保守要員は容易にこれを確認できるので踏板6の走行速度を増速して作業効率を向上し、また、欠落空間19が表側に露出していないと保守要員は容易にこれを確認できないので踏板6の走行速度を減速して安全性を向上することができるようになる。
【0080】
本発明の実施形態として5つの実施形態を個別に説明したが、これらの1つ以上を適宜組み合せて実施できることはいうまでもない。
【0081】
このように、本発明によれば踏板の走行反転部付近に踏板の欠落検出装置を設け、保守モードにおいて踏板の欠落を検出すると踏板の走行速度を低速側に切換える構成を採用した。これによって、踏板を取り外した保守作業において、踏板の移動を停止させないので保守作業性を向上することができ、また、踏板の移動速度を低速側に切り替えることで保守要員に踏板が取り外されていることを認識させることができ安全性を高めることができる。