特許第6246005号(P6246005)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6246005
(24)【登録日】2017年11月24日
(45)【発行日】2017年12月13日
(54)【発明の名称】フォーカルプレンシャッタ及びカメラ
(51)【国際特許分類】
   G03B 9/36 20060101AFI20171204BHJP
【FI】
   G03B9/36 A
【請求項の数】5
【全頁数】12
(21)【出願番号】特願2014-16690(P2014-16690)
(22)【出願日】2014年1月31日
(65)【公開番号】特開2015-143745(P2015-143745A)
(43)【公開日】2015年8月6日
【審査請求日】2016年9月15日
(73)【特許権者】
【識別番号】000001225
【氏名又は名称】日本電産コパル株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100137947
【弁理士】
【氏名又は名称】石井 貴文
(72)【発明者】
【氏名】永野 俊一
(72)【発明者】
【氏名】河上 健太
【審査官】 登丸 久寿
(56)【参考文献】
【文献】 特開2004−093875(JP,A)
【文献】 特開平10−172814(JP,A)
【文献】 実開昭55−081901(JP,U)
【文献】 実開昭59−048006(JP,U)
【文献】 米国特許出願公開第2009/0041447(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G03B 9/36
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
露光用の開口部及び長孔を有する地板と、前記開口部を開閉するべく前記地板の裏面側に移動自在に配置された羽根部材と、前記羽根部材を駆動するべく前記地板の表面側に移動自在に配置されると共に前記長孔を通して前記羽根部材に連結される駆動ピンを有する駆動部材と、を備えたフォーカルプレンシャッタであって、
前記駆動ピンの移動を許容しつつ前記地板の長孔を遮蔽する遮蔽部材を設けており、
前記地板には、前記長孔の一端側において前記駆動ピンを当接させる緩衝部材が設けられ、
前記遮蔽部材は、前記地板に設けられると共に前記駆動ピンの移動を許容する切込みを有し、
前記切込みは、前記駆動ピンの移動方向において前記緩衝部材と重なる領域まで形成されている、
ことを特徴とするフォーカルプレンシャッタ。
【請求項2】
前記駆動ピンは、前記切込みが伸びる方向に長い楕円形状である、
ことを特徴とする請求項1に記載のフォーカルプレンシャッタ。
【請求項3】
前記駆動ピンは、円柱状の外周面において、前記切込みの縁部を挿入させる2つの凹溝を有している、
ことを特徴とする請求項1に記載のフォーカルプレンシャッタ。
【請求項4】
前記羽根部材は、シャッタ動作時に、前記開口部を開放する先羽根及び前記開口部を閉鎖する後羽根を含み、
前記駆動部材は、前記先羽根に連結される駆動ピンを有する先羽根駆動部材及び前記後羽根に連結される駆動ピンを有する後羽根駆動部材を含み、
前記地板は、前記先羽根駆動部材の駆動ピンを通す長孔及び前記後羽根駆動部材の駆動ピンを通す長孔を有し、
前記遮蔽部材は、前記先羽根駆動部材の駆動ピンを通す長孔及び前記後羽根駆動部材の駆動ピンを通す長孔をそれぞれ遮蔽するように配置されている、
ことを特徴とする請求項1ないしいずれか一つに記載のフォーカルプレンシャッタ。
【請求項5】
請求項1ないしいずれか一つに記載のフォーカルプレンシャッタと、前記フォーカルプレンシャッタの後方に配置された撮像素子を含む、
ことを特徴とするカメラ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、露光用の開口部を開閉する羽根部材を有するフォーカルプレンシャッタに関し、特に、一眼カメラ、一眼レフカメラ、ミラーレスカメラ、レンジファインダカメラ等のデジタルカメラにおいて、露光用の開口部を開閉する羽根部材を、地板の長孔を通して連結された駆動部材により開閉駆動するフォーカルプレンシャッタ及びカメラに関する。
【背景技術】
【0002】
従来のフォーカルプレンシャッタとしては、露光用の開口部を有する略矩形の地板、地板と所定間隔をおいて配置されそれぞれ羽根室を画定する中間板及び裏板、地板の開口部を開閉するべく地板と中間板の間の羽根室に移動自在に配置された先羽根(羽根部材)及び中間板と裏板の間の羽根室に移動自在に配置された後羽根(羽根部材)、先羽根を駆動するべく地板の表側に配置されると共に地板の長孔を通して先羽根に連結される駆動ピンを有する先羽根用駆動部材、後羽根を駆動するべく地板の表側に配置されると共に地板の長孔を通して後羽根に連結される駆動ピンを有する後羽根用駆動部材、先羽根用駆動部材及び後羽根駆動部材の駆動ピンをシャッタ動作完了時にそれぞれ当接させて衝撃を緩和するべく地板の長孔の端部に固定されたゴム製の緩衝部材等を備え、地板の長孔の周りに突出した壁を設け、シャッタ機構(各種の可動部材)の作動によって発生した摩耗粉等が長孔から羽根室内に進入し難くしたものが知られている(例えば、特許文献1を参照)。
【0003】
しかしながら、このフォーカルプレンシャッタにおいては、地板の長孔の周りに突出した壁を設けるものであり、長孔の領域において、駆動ピンが通る領域以外の領域は依然として開放状態にあり、それ故に、地板の面に沿って移動して壁に衝突した摩耗粉や油滴(潤滑剤)等を捕らえることはできても、地板に垂直な方向から飛散してきた磨耗分や油敵等は、長孔の開放領域を通過して羽根室内に進入するため、異物混入対策(コンタミ対策)としては確実なものではなかった。
特に、近年の撮像素子の高画素化に伴い、撮像素子の撮像面に付着する異物(磨耗粉、油滴等)については、従来は影響の無かった数量や大きさ(サイズ)までも影響を及ぼすようになっており、より確実な異物混入対策が望まれている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2003−270700号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は、上記の事情に鑑みて成されたものであり、その目的とするところは、構造の簡素化、装置の薄型化及び小型化等を図りつつ、撮像素子等に影響を及ぼす摩耗粉、油滴(潤滑剤)等の異物が地板の長孔から撮像素子側に入り込むのを防止して、より高精細な画像を撮影することのできるフォーカルプレンシャッタ及びそれを用いたカメラを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明のフォーカルプレンシャッタは、露光用の開口部及び長孔を有する地板と、開口部を開閉するべく地板の裏面側に移動自在に配置された羽根部材と、羽根部材を駆動するべく地板の表面側に移動自在に配置されると共に長孔を通して羽根部材に連結される駆動ピンを有する駆動部材とを備えたフォーカルプレンシャッタであって、上記駆動ピンの移動を許容しつつ地板の長孔を遮蔽する遮蔽部材を設けた、ことを特徴としている。
この構成によれば、駆動部材が地板の表面側に配置され、羽根部材が地板の裏面側に配置され、駆動部材の駆動ピンが地板の長孔を通して羽根部材に連結された構成において、駆動ピンが長孔の範囲内で往復動することにより、羽根部材が開口部を開閉する。
ここで、地板の長孔は、駆動ピンの移動を許容する遮蔽部材(例えば、駆動ピンと一体的に移動するように設けられて長孔を常時遮蔽するように地板の面に沿って移動する遮蔽部材、又は、地板に固定されて駆動ピンの相対的な移動を許容するように形成された遮蔽部材等)により遮蔽されているため、駆動部材を含む可動部材等から発生する摩耗粉や油滴(潤滑剤)等の異物が、長孔を通して羽根部材が配置された領域内に進入するのを防止することができ、それ故に、その背後に配置される撮像素子等に異物が付着するのを防止できる。
【0007】
上記構成において、遮蔽部材は、樹脂材料により形成された薄型のフィルム部材である、構成を採用することができる。
この構成によれば、遮蔽部材として、樹脂材料で薄型に形成されたフィルム部材を用いることにより、構造の簡素化、装置の薄型化及び小型化、耐久性(耐摩耗性)等を達成しつつ、(遮蔽部材が地板に設けられる場合はその弾性変形等により)駆動ピンに対して負荷(抵抗力)を及ぼすことなく、駆動ピンを円滑に移動させることができる。
【0008】
上記構成において、遮蔽部材は、地板に設けられると共に駆動ピンの移動を許容する切込みを有する、構成を採用することができる。
この構成によれば、遮蔽部材を地板に設けた場合に、駆動ピンの相対的な移動を許容するべく切り込みを設けたことにより、駆動ピンは切り込みを押し広げつつ移動することができ、又、遮蔽部材は駆動ピンが移動した後にその弾性力により遮蔽するように弾性復帰するため、摩耗粉や油滴(潤滑剤)等の異物の進入を防止しつつ、駆動ピンを円滑に移動させ得ると共に遮蔽部材の構造及び製造の簡略化等を達成することができる。
【0009】
上記構成において、地板には、長孔の一端側において駆動ピンを当接させる緩衝部材が設けられ、遮断部材の切り込みは、駆動ピンの移動方向において緩衝部材と重なる領域まで形成されている、構成を採用することができる。
この構成によれば、遮蔽部材の切り込みが緩衝部材と重なる領域(駆動ピンの移動方向において、駆動ピンが緩衝部材に当接した位置を超える領域)まで形成されているため、駆動ピンが緩衝部材に当接する際に、遮蔽部材の抵抗が無く、駆動ピンを緩衝部材に確実に当接させて所望の緩衝作用を得ることができる。
【0010】
上記構成において、羽根部材は、シャッタ動作時に、開口部を開放する先羽根及び開口部を閉鎖する後羽根を含み、駆動部材は、先羽根に連結される駆動ピンを有する先羽根駆動部材及び後羽根に連結される駆動ピンを有する後羽根駆動部材を含み、地板は、先羽根駆動部材の駆動ピンを通す長孔及び後羽根駆動部材の駆動ピンを通す長孔を有し、遮断部材は、先羽根駆動部材の駆動ピンを通す長孔及び後羽根駆動部材の駆動ピンを通す長孔をそれぞれ遮蔽するように配置されている、構成を採用することができる。
この構成によれば、先羽根駆動部材(の駆動ピン)により先羽根が開閉駆動され、後羽根駆動部材(の駆動ピン)により後羽根が開閉駆動されて、シャッタ動作(露光動作)が行われ、先羽根駆動部材の駆動ピンが通る長孔と後羽根駆動部材の駆動ピンが通る長孔が、遮蔽部材によりそれぞれ遮蔽されているため、先羽根駆動部材及び後羽根駆動部材等から発生する摩耗粉や油滴(潤滑剤)等の異物が、二つの長孔を通して先羽根及び後羽根が配置された領域内に進入するのを防止することができ、それ故に、その背後に配置される撮像素子等に異物が付着するのを防止できる。
【0011】
本発明のカメラは、上記の構成をなすいずれか一つのフォーカルプレンシャッタと、フォーカルプレンシャッタの後方に配置された撮像素子を含む、ことを特徴としている。
この構成によれば、構造の簡素化、装置の薄型化及び小型化等を達成しつつ、撮像素子に影響を及ぼす摩耗粉、油滴(潤滑剤)等の異物が地板の長孔から撮像素子側に入り込むのを防止でき、高精細な画像を撮影することができる。
【発明の効果】
【0012】
上記構成をなすフォーカルプレンシャッタによれば、構造の簡素化、装置の薄型化及び小型化等を達成しつつ、撮像素子等に影響を及ぼす摩耗粉、油滴(潤滑剤)等の異物が地板の長孔から撮像素子側に入り込むのを防止して、より高精細な画像を撮影することのできるフォーカルプレンシャッタ及びカメラを得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1】本発明に係るフォーカルプレンシャッタの一実施形態を示すものであり、羽根部材(先羽根及び後羽根)がシャッタ動作前(露光動作前)のセット位置にセットされた状態を示す平面図である。
図2図1に示すフォーカルプレンシャッタにおいて、羽根部材(先羽根及び後羽根)がシャッタ動作を完了した状態を示す平面図である。
図3図1に示すフォーカルプレンシャッタに含まれる駆動部材(先羽根駆動部材)、地板の長孔、長孔を遮蔽するように配置された遮蔽部材、長孔に通された駆動ピンの関係を示す部分斜視図である。
図4図1に示すフォーカルプレンシャッタに含まれる駆動部材(先羽根駆動部材)、地板の長孔、長孔を遮蔽するように配置された遮蔽部材、長孔に通された駆動ピンの関係を示す部分平面図である。
図5図1に示すフォーカルプレンシャッタに含まれる駆動部材(先羽根駆動部材)、地板の長孔、長孔を遮蔽するように配置された遮蔽部材、長孔に通された駆動ピンの関係を示す部分断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本発明の実施形態について、添付図面を参照しつつ説明する。
この実施形態に係るフォーカルプレンシャッタは、図1及び図2に示すように、露光用の開口部10a及び二つの長孔10b,10を有する地板10、地板10と所定間隔をおいて配置された裏板20、地板10と裏板20の間に配置された中間板30、地板10の裏面側(地板10と中間板30の間)に移動自在に配置された羽根部材としての先羽根40、地板10の裏面側(中間板30と裏板20の間)に移動自在に配置された羽根部材としての後羽根50、先羽根40を駆動するべく地板10の表面側に移動自在に配置された駆動部材としての先羽根駆動部材60、後羽根50を駆動するべく地板10の表面側に移動自在に配置された駆動部材としての後羽根駆動部材70、先羽根駆動部材60の駆動ピン60aを及び後羽根駆動部材70の駆動ピン70aをそれぞれ当接させるべく長孔10b,10cの一端側に設けられた二つの緩衝部材80,80、地板10の二つの長孔10b,10cをそれぞれ遮蔽するように設けられた二つの遮蔽部材90,90、先羽根40及び後羽根50(すなわち、先羽根駆動部材60及び後羽根駆動部材70)をシャッタ動作前(露光動作前)のセット位置にセットするセット部材(不図示)、セット部材を駆動する駆動機構(不図示)、先羽根駆動部材60及び後羽根駆動部材70をセット位置に吸着保持する二つの電磁石(不図示)等を備えている。
【0015】
地板10は、図1ないし図5に示すように、略矩形の平板状に形成されており、略矩形をなす露光用の開口部10a、円弧部分及び半円部分が連続する長孔10b及び長孔10c、先羽根40を回動自在に支持するべく羽根室側(裏面側)に立設された支軸10d,10e、後羽根50を回動自在に支持するべく羽根室側(裏面側)に立設された支軸10f,10g、先羽根駆動部材60を回動自在に支持するべく羽根室の外側(表面側)に立設された支軸10h、後羽根駆動部材70を回動自在に支持するべく羽根室の外側(表面側)に立設された支軸10i等を備えている。
裏板20は、図1図2図5に示すように、地板10と平行に所定間隔をおいて配置されて地板10に着脱自在に固定され、開口部10aに対応する開口部20a等を備えている。
中間板30は、図1図2図5に示すように、地板10と裏板20の間に配置され、地板10と協働して先羽根40を収容する羽根室を画定しかつ裏板20と協働して後羽根50を収容する羽根室を画定するものであり、開口部10aに対応する開口部30a等を備えている。
【0016】
先羽根40は、図1及び図2に示すように、4枚の羽根本体41,42,43,44、羽根本体41,42,43,44を連結する2つのアーム45,46により構成されている。
アーム45は、支軸10dにより回動自在に支持されると共に、その一部が先羽根駆動部材60の駆動ピン60aに連結されている。
アーム46は、支軸10eにより回動自在に支持されている。
そして、アーム45が、図1に示すように先羽根駆動部材60により図中の上方に向けて(反時計回りに)駆動されることにより、4枚の羽根本体41,42,43,44が展開して開口部10aを閉鎖し、一方、図2に示すように先羽根駆動部材60により図中の下方に向けて(時計回りに)駆動されることにより、4枚の羽根本体41,42,43,44が重なり合って開口部10aを開放するようになっている。
【0017】
後羽根50は、図1及び図2に示すように、4枚の羽根本体51,52,53,54、羽根本体51,52,53,54を連結する2つのアーム55,56により構成されている。
アーム55は、支軸10fにより回動自在に支持されると共に、その一部が後羽根駆動部材70の駆動ピン70aに連結されている。
アーム56は、支軸10gにより回動自在に支持されている。
そして、アーム55が、図1に示すように後羽根駆動部材70により図中の上方に向けて(反時計回りに)駆動されることにより、4枚の羽根本体51,52,53,54が重なり合って開口部10aを開放し、一方、図2に示すように後羽根駆動部材70により図中の下方に向けて(時計回りに)駆動されることにより、4枚の羽根本体51,52,53,54が展開して開口部10aを閉鎖するようになっている。
【0018】
先羽根駆動部材60は、図1及び図2に示すように、先羽根40のアーム45が連結される駆動ピン60a、シャッタ動作前(露光動作前)のセット位置にセットする際にセット部材が係合して反時計回りに回転力が及ぼされる係合部60b、電磁石により吸着される被吸着部(不図示)等を備えている。
ここで、駆動ピン60aは、地板10の長孔10bを通過する領域が円柱状に形成さており、遮蔽部材90の切り込み91を押し広げるように挿入されている。
尚、駆動ピン60aは、遮蔽部材90の切り込み91を押し広げる量を少なくするため、切り込み91の方向に長い楕円形状等であってもよい。
そして、先羽根駆動部材60は、支軸10hにより回動自在に支持されると共に付勢バネ(不図示)により時計回りに回転付勢され、駆動ピン60aが長孔10bに移動自在に挿入されると共に先羽根40のアーム45に連結されており、休止状態で付勢バネにより時計回りに回転させられて先羽根40を開放位置に移動させると共に駆動ピン60aが緩衝部材80に当接し、一方、セット部材により反時計回りに回転させられて先羽根40を閉鎖位置に移動させ、レリーズ等の信号による露光動作時に電磁石の通電により被吸着部が吸着されてシャッタ動作前のセット位置に保持され、電磁石を非通電とすることにより磁力による吸着が解除されて、付勢バネの付勢力により時計回りに回転させられて先羽根40を開放位置に移動させるようになっている。
【0019】
後羽根駆動部材70は、図1及び図2に示すように、後羽根50のアーム55が連結される駆動ピン70a、シャッタ動作前(露光動作前)のセット位置にセットする際にセット部材が係合して反時計回りに回転力が及ぼされる係合部70b、電磁石により吸着される被吸着部(不図示)等を備えている。
ここで、駆動ピン70aは、地板10の長孔10cを通過する領域が円柱状に形成さており、遮蔽部材90の切り込み91を押し広げるように挿入されている。
尚、駆動ピン70aは、遮蔽部材90の切り込み91を押し広げる量を少なくするため、切り込み91の方向に長い楕円形状等であってもよい。
そして、後羽根駆動部材70は、支軸10iにより回動自在に支持されると共に付勢バネ(不図示)により時計回りに回転付勢され、駆動ピン70aが長孔10cに移動自在に挿入されて後羽根50のアーム55に連結されており、休止状態で付勢バネにより時計回りに回転させられて後羽根50を閉鎖位置に移動させると共に駆動ピン70aが緩衝部材80に当接し、一方、セット部材により反時計回りに回転させられて後羽根50を開放位置に移動させ、レリーズ等の信号による露動作動時に電磁石の通電により被吸着部が吸着されてシャッタ動作前のセット位置に保持され、電磁石を非通電とすることにより磁力による吸着が解除されて、付勢バネの付勢力により時計回りに回転させられて後羽根50を閉鎖位置に移動させるようになっている。
【0020】
緩衝部材80,80は、弾性変形可能なゴム材料等により形成されており、図1及び図2に示すように、地板10の長孔10b,10cの一端側の半円部分に嵌め込まれて固定され、シャッタ動作完了時に、駆動ピン60a、70aを当接させて衝撃を緩和するようになっている。
【0021】
遮蔽部材90,90は、図1ないし図5に示すように、樹脂材料(例えば、ポリエチレンテレフタレート等)を用いて、地板10の長孔10b,10cを遮蔽するように長孔10b,10cの開口面積よりも十分広い面積をなす薄型(例えば、0.2mm〜0.3mmの厚さ)のフィル部材として形成され、地板10の裏面側に固定されている。
尚、固定手法としては、例えば、樹脂リベット締め、接着、その他の手法等を採用することができる。
そして、遮蔽部材90,90には、駆動ピン60a,70aの相対的な移動を許容するように切り込み91,91が形成されている。
切り込み91,91は、図4に示すように、長孔10b,10cの幅方向の中央を通る円弧線状に形成され、長孔10b,10cの両端を越える長さに、かつ、駆動ピン60a,70aの移動方向において緩衝部材80と重なる領域まで形成されている。
【0022】
このように、遮蔽部材90,90に対して、駆動ピン60a,70aの相対的な移動を許容する切り込み91,91を設けたことにより、駆動ピン60a,70aは、切り込み91,91を押し広げつつ移動することができ、又、遮蔽部材90,90は、駆動ピン60a,70aが移動した後に切り込み91,91の対向縁部が密接に対向するように弾性復帰するため、摩耗粉や油滴(潤滑剤)等の異物の進入を防止しつつ、駆動ピン60a,70aを円滑に移動させ得ることができ、又、遮蔽部材90,90の構造及び製造の簡略化等を達成することができる。
【0023】
また、遮蔽部材90,90として、樹脂材料で薄型に形成されたフィルム部材を用いることにより、構造の簡素化、装置の薄型化及び小型化、耐久性(耐摩耗性)等を達成しつつ、駆動ピン60a,70aに対して負荷(抵抗力)を及ぼすことなく、駆動ピン60a,70aを円滑に移動させることができる。
さらに、切り込み91,91が駆動ピン60a,70aの移動方向において緩衝部材80,80と重なる領域、すなわち、駆動ピン60a,70aの移動方向において駆動ピン60a,70aが緩衝部材80,80に当接した位置を超える領域まで延在するように形成されているため、駆動ピン60a,70aが緩衝部材80,80に当接する際に、遮蔽部材90,90の抵抗が無く、駆動ピン60a,70aを緩衝部材80,80に確実に当接させて所望の緩衝作用を得ることができる。
【0024】
次に、このフォーカルプレンシャッタの動作について、図1及び図2を参照しつつ説明する。
先ず、シャッタ動作完了後(露光動作完了後)の休止状態においては、図2に示すように、先羽根駆動部材60は時計回りに回転して、駆動ピン60aが緩衝部材80に当接して停止すると共に、先羽根40は開口部10aを開放した位置に停止し、又、後羽根駆動部材70は時計回りに回転して、駆動ピン70aが緩衝部材80に当接して停止すると共に、後羽根50は開口部10aを閉鎖した位置に停止している。
この状態において、図2に示すように、地板10の長孔10b,10cは、遮蔽部材90,90により遮蔽されているため、先羽根駆動部材60及び後羽根駆動部材70を含む可動部材等から発生する摩耗粉や油滴(潤滑剤)等の異物が長孔10b,10cを通して先羽根40及び後羽根50が配置された領域内に進入するのを防止できる。
【0025】
ここで、レリーズ動作等により、シャッタ動作の準備指令が発せられると、セット部材によりセット動作が行われて、図1に示すように、先羽根駆動部材60が反時計回りに回転してシャッタ動作前のセット位置(先羽根40が開口部10aを閉鎖した状態)に位置付けられ、かつ、後羽根駆動部材70が反時計回りに回転してシャッタ動作前のセット位置(後羽根50が開口部10aを開放した状態)に位置付けられ、続いて、電磁石が通電されるとそれぞれの被吸着部が吸着されて、先羽根駆動部材60及び後羽根駆動部材70が時計回りに回転付勢する付勢バネの付勢力に抗してセット位置に保持される。そして、セット部材が休止位置に戻されて、先羽根駆動部材60及び後羽根駆動部70の時計回りの回転を規制する状態が解除される。
【0026】
続いて、所望のタイミングで、一方の電磁石の通電が断たれると、図1に示すように、先羽根駆動部材60が付勢バネの付勢力により時計回りに回転して、駆動ピン60aが長孔10b内において遮蔽部材90の切り込み91を押し広げつつ移動して緩衝部材80に当接すると共に、先羽根40が開口部10aを開放した位置に停止する。
続いて、所望のタイミングで、他方の電磁石の通電が断たれると、図1に示すように、後羽根駆動部材70が付勢バネの付勢力により時計回りに回転して、駆動ピン70aが長孔10c内において遮蔽部材90の切り込み91を押し広げつつ移動して緩衝部材80に当接すると共に、後羽根50が開口部10aを閉鎖した位置に停止する。
以上により、先羽根40及び後羽根50による開口部10aの開閉動作が行われて、1回のシャッタ動作が完了する。
【0027】
上記シャッタ動作に際して、先羽根駆動部材60の駆動ピン60aは、長孔10b内において遮蔽部材90の切り込み91を押し広げつつ移動すると共に、遮蔽部材90は、駆動ピン60aが移動した後に切り込み91の対向縁部が密接に対向するように弾性復帰して長孔10bを遮蔽するため、駆動ピン60aを円滑に移動させ得ると共に、長孔10bを通して摩耗粉や油滴(潤滑剤)等の異物が進入するのを防止できる。
また、同様に、後羽根駆動部材70の駆動ピン70aは、長孔10c内において遮蔽部材90の切り込み91を押し広げつつ移動すると共に、遮蔽部材90は、駆動ピン70aが移動した後に切り込み91の対向縁部が密接に対向するように弾性復帰して長孔10cを遮蔽するため、駆動ピン70aを円滑に移動させ得ると共に、長孔10cを通して摩耗粉や油滴(潤滑剤)等の異物が進入するのを防止できる。
【0028】
以上述べたように、地板10の長孔10b,10cは、駆動ピン60a,70aの移動を許容する遮蔽部材90,90(ここでは、地板10に固定されて駆動ピン60a,70aの相対的な移動を許容するように切り込み91,91が形成された遮蔽部材)により遮蔽されているため、駆動部材(先羽根駆動部材60、後羽根駆動部材70)を含む可動部材等から発生する摩耗粉や油滴(潤滑剤)等の異物が、長孔10b,10cを通して羽根部材(先羽根40及び後羽根50)が配置された領域内に進入するのを防止することができ、それ故に、その背後に配置される撮像素子等に異物が付着するのを防止できる。
【0029】
上記実施形態においては、遮蔽部材として、地板10に設けられた(固定された)遮蔽部材90,90を示したが、これに限定されるものではなく、駆動部材(先羽根駆動部材60、後羽根駆動部材70)の駆動ピン60a,70aと一体的に移動するように駆動ピン60a,70aに設けられて地板10の長孔10b,10cを常時遮蔽しつつ地板10の裏面(又は表面)に沿って移動する遮蔽部材を採用してもよい。
上記実施形態においては、遮蔽部材として、地板10の裏面に配置して固定した遮蔽部材90,90を示したが、これに限定されるものではなく、地板10の表面側に配置して固定した遮蔽部材を採用して、地板10の表面側から裏面側に異物が進入するのを防止してもよい。この場合、長孔10b,10cの凹部に異物が溜まるのを防止できる。
【0030】
上記実施形態においては、遮蔽部材として、地板10に設けられると共に駆動ピン60a,70aの移動を許容するべく切り込み91,91を設けた遮蔽部材90,90を示したが、これに限定されるものではなく、切り込み91,91に替えて、長孔10b,10cを遮蔽するように地板10に固定されつつも駆動ピン60a,70aと一緒に弾性変形し得るような柔軟性のある遮蔽部材を採用してもよい。
上記実施形態においては、駆動部材(先羽根駆動部材60、後羽根駆動部材70)の駆動ピンとして、断面が円柱状をなす駆動ピン60a,70aを示したが、これに限定されるものではなく、所望の機械的強度が確保される限り、円柱状の外周面において、遮蔽部材90の切り込み91の各々の縁部を挿入させるような二つの凹溝を設け、各々の凹溝内に切り込み91の縁部を挿入して駆動ピンを相対的に移動させるようにしてもよい。
この場合、切り込み91を押し広げて変形させる量が減るため、切り込み91の間に生じる隙間を極力無くすことができ、長孔10b,10cをより確実に遮蔽することができる。
【0031】
上記実施形態においては、羽根部材として先羽根40及び後羽根50を備え、駆動部材として先羽根駆動部材60及び後羽根駆動部材70を備えた構成において、先羽根駆動部材60の駆動ピン60aを通す長孔10bに遮蔽部材90を配置し、後羽根駆動部材70の駆動ピン70aを通す長孔10cに遮蔽部材90を配置した場合を示したが、これに限定されるものではなく、例えば、一つの羽根部材及び一つの駆動部材を備え、単に開口部を開放した状態から閉鎖した状態に移動することでシャッタ動作を行う構成において、一つの駆動部材の駆動ピンを通す一つの長孔に対して、本発明の遮蔽部材を配置する構成を採用してもよい。
【0032】
上記実施形態においては、レンズ光学系、フォーカルプレンシャッタ、撮像素子等を含むカメラにおいて、地板10に駆動部材(先羽根駆動部材60、後羽根駆動部材70)が配置された側(ここでは表面側)がレンズ光学系の光軸方向における被写体側に向けられ、地板10に羽根部材(先羽根40、後羽根50)が配置された側(裏面側)がレンズ光学系の光軸方向における撮像素子側に向けられる構成を前提として、遮蔽部材90が地板10の長孔10b,10cに配置される構成を示したが、これに限定されるものではなく、逆に、地板10に駆動部材(先羽根駆動部材60、後羽根駆動部材70)が配置された側(ここでは表面側)がレンズ光学系の光軸方向における撮像素子側に向けられ、地板10に羽根部材(先羽根40、後羽根50)が配置された側(裏面側)がレンズ光学系の光軸方向におけるに被写体側に向けられる構成において、本発明を採用してもよい。
【産業上の利用可能性】
【0033】
以上述べたように、本発明のフォーカルプレンシャッタは、構造の簡素化、装置の薄型化及び小型化等を達成しつつ、撮像素子等に影響を及ぼす摩耗粉、油滴(潤滑剤)等の異物が地板の長孔から撮像素子側に入り込むのを防止でき、より高精細な画像を撮影するできるため、一眼カメラ、一眼レフカメラ、ミラーレスカメラ、レンジファインダカメラ等のデジタルカメラに適用できるのは勿論のこと、その他の露光用の開口部を備えた光学機器に対しても有用である。
【符号の説明】
【0034】
10 地板
10a 開口部
10b,10c 長孔
20 裏板
30 中間板
40 先羽根(羽根部材)
50 後羽根(羽根部材)
60 先羽根駆動部材(駆動部材)
60a 駆動ピン
70 後羽根駆動部材(駆動部材)
70a 駆動ピン
80 緩衝部材
90 遮蔽部材(フィルム部材)
91 切り込み
図1
図2
図3
図4
図5