(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記シェードは、前記第1カットオフラインおよび前記第2カットオフラインの中央からその左右近傍領域まで水平なカットオフラインとなるように構成されていることを特徴とする請求項1に記載の車両用灯具。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、本発明を好適な実施の形態をもとに図面を参照しながら説明する。各図面に示される同一または同等の構成要素、部材、処理には、同一の符号を付するものとし、適宜重複した説明は省略する。また、実施の形態は、発明を限定するものではなく例示であって、実施の形態に記述されるすべての特徴やその組合せは、必ずしも発明の本質的なものであるとは限らない。
【0019】
(第1の実施の形態)
図1は、第1の実施の形態に係る車両用灯具の縦断面図である。
図2は、第1の実施の形態に係る車両用灯具を上方から見た場合のシェード形状を説明するための模式図である。
図3は、第1の実施の形態に係る車両用灯具が形成する配光パターンの一例を説明するための模式図である。
【0020】
本実施の形態に係る車両用灯具10は、配光パターンの切替えが可能な車両用前照灯として用いられる。車両用灯具10は、車両前後方向に延びる光軸Ax上に配置された投影レンズ12と、投影レンズ12の後方に配置された第1光源及び第2光源としてのLED(発光ダイオード)14,16と、投影レンズ12の後方側焦点Fよりも後方に配置されたLED14から上方へ出射した光を前方に向けて光軸Ax寄りに反射させる第1リフレクタ18と、投影レンズ12の後方側焦点Fよりも後方に配置されたLED16から下方へ出射した光を前方に向けて光軸Ax寄りに反射させる第2リフレクタ20と、投影レンズ12と、LED14,16との間の領域に先端縁22aが位置するシェード22と、を備える。
【0021】
投影レンズ12としては、前方側表面が凸曲面で後方側表面が平面の平凸レンズが一般に用いられる。投影レンズ12は、第1リフレクタ18と対向する平面である後端面の上端と下端とを結ぶ線が鉛直に対して平行に配置される。
【0022】
LED14,16は、例えば1mm四方程度の大きさの単一発光チップ、またはチップを複数並べた長方形の発光部を有する白色発光ダイオードである。そして、各LED14,16は、基板に実装された状態で共用の基台部24の上面または下面に固定されている。そして、LED14は、投影レンズ12の後方側焦点Fに向かう光を出射し、LED16は、投影レンズ12の後方焦点Fに向かう光を出射する。
【0023】
また、LED14は、第1の配光パターンとしてロービーム用配光パターンの形成時に点灯されるだけでなく、第2の配光パターンとしてハイビーム用配光パターンの形成時にも点灯される。一方、LED16は、ハイビーム用配光パターンの形成時に点灯される。
【0024】
第1リフレクタ18は、光軸Axを中心軸とする略回転楕円面状の反射面18aを有している。この反射面18aは、光軸Axを含む断面形状が略楕円で形成されている。LED14は、この反射面18aの光軸Axを含む鉛直断面で形成される楕円の第1焦点F1近傍に配置されている。これにより、反射面18aは、LED14からの光を前方へ光軸Ax寄りに反射させるようになっている。その際、光軸Axを含む鉛直断面内においては上記楕円の第2焦点F2に略収束させるようになっている。本実施の形態において、この第2焦点F2は、投影レンズ12の後方側焦点Fと略一致する。
【0025】
第2リフレクタ20は、光軸Axを中心軸とする略回転楕円面状の反射面20aを有している。この反射面20aは、光軸Axを含む断面形状が略楕円で形成されている。LED16は、この反射面20aの光軸Axを含む鉛直断面で形成される楕円の第1焦点F1’近傍に配置されている。これにより、反射面20aは、LED16からの光を前方へ光軸Ax寄りに反射させるようになっている。その際、光軸Axを含む鉛直断面内においては上記楕円の第2焦点F2に略収束させるようになっている。なお、第1リフレクタ18および第2リフレクタ20の反射面の形状は、必要とする配光パターンの形状に応じて適宜選択、微修正されるものであり、互いの形状が異なっていてもよい。
【0026】
カットオフラインを形成するシェード22は、LED14から出射され、第1リフレクタ18の反射面18aにて反射された光を一部遮蔽する遮蔽部材である。シェード22は、その先端縁22aが後方側焦点Fより後方(
図1に示す右側)に位置している。そのため、
図2に示すように、シェード22の円弧状の先端縁22aと、投影レンズ12の後方側焦点Fを連続的につないだレンズ焦点カーブF
Lとの間には間隔Gがある。
【0027】
そのため、車両用灯具10は、投影レンズ12の後方側焦点Fより前方を通過する光だけでなく、投影レンズ12の後方側焦点Fより後方を通過する一部の光、つまり、先端縁22aと後方側焦点F(レンズ焦点カーブF
L)との間を通過する光も第1の配光パターンや第2の配光パターンの形成に寄与する。また、シェード22は、前方に投影される配光パターンに応じた形状の先端縁22aを有している。
【0028】
本実施の形態に係るシェード22は、
図3に示すように、LED14から出射した光の一部を遮って第1カットオフラインCL1を有するロービーム用配光パターンPLを形成できるとともに、LED16から出射した光の一部を遮って第2カットオフラインCL2を有するハイビーム用配光パターンPHを形成できるように構成されている。そして、
図3に示すように、ロービーム用配光パターンPLおよびハイビーム用配光パターンPHの一部が互いにオーバーラップしているため、2つの配光パターンの間の非照射領域の発生が抑制される。また、ハイビーム用配光パターンPHの下端に第2カットオフラインCL2が形成されるため、車両前方の近傍領域が必要以上に明るく照射されなくなり、視認性の低下が抑制できる。
【0029】
次に、シェード22の先端縁22aを後方側焦点Fからずらした場合の作用効果について詳述する。
図4(a)〜
図4(h)は、投影レンズの後方側焦点Fに対するシェード先端の位置と配光パターンとの関係を説明するための図である。なお、
図4(a)、
図4(c)、
図4(e)、
図4(g)における配光パターンは、
図3に示すH−H線とV−V線との交点を含む中央領域Rを拡大したものである。
【0030】
図4(b)に示すように、シェード22がない場合、中央領域Rの全部が照射される。そして、配光パターンPL1のうち、H−H線を含む真ん中の領域R2が明るく、その上下にある領域R1,R3は領域R2より暗くなる(
図4(a)参照)。なお、実際の配光パターンは、H−H線付近が最も明るく、H−H線から上方または下方に向かって徐々に暗くなる。しかし、本件では、便宜的に中央領域RをR1,R2,R3に分け、以下説明を行う。
【0031】
次に、
図4(d)に示すように、シェード22の先端縁22aが後方側焦点Fとほぼ一致している場合、中央領域Rのうちほぼ下半分が照射されるが、シェード22に厚みがあるため、ロービーム用配光パターンPL2の上端のカットオフラインCL3はH−H線よりわずかに下方に形成される。また、ロービーム用配光パターンPL2のうちH−H線より下の領域R2が明るく、その下にある領域R3は領域R2より暗くなる(
図4(c)参照)。そのため、カットオフラインCL3は比較的鮮明になる。なお、
図4(d)に示すシェード22の配置の場合、ロービーム用配光パターンPL2に加えて、下端にカットオフラインCL4を有するハイビーム用配光パターンPH2を形成したとき、H−H線近傍に非照射領域R’が発生することがある。
【0032】
そこで、
図4(f)に示すように、シェード22の先端縁22aが後方側焦点Fよりも後方に位置している場合(
図1に示す配置と同様)、投影レンズ12の後方側焦点Fより前方を通過する光だけでなく、後方側焦点Fと先端縁22aとの間を通過する一部の光も配光パターンの形成に寄与する。そのため、ロービーム用配光パターンPL3は、
図4(c)に示すロービーム用配光パターンPL2と比較して、カットオフラインCL5が上方に移動する。同様に、ハイビーム用配光パターンPH3は、
図4(c)に示すハイビーム用配光パターンPH2と比較して、カットオフラインCL6が下方に移動する(
図4(e)参照)。これにより、2つの配光パターンの一部をオーバーラップ(領域R”参照)させることができる。これにより、
図4(c)に示すような非照射領域R’の発生が確実に防止される。
【0033】
しかしながら、ロービーム用配光パターンPL3の上端のカットオフラインCL5は、中心(H−H線)から離れているため、
図4(c)に示す中心近傍のカットオフラインCL3と比較して暗くなる。また、カットオフラインCL5を中心(H−H線)に近付けるために灯具を下方に向けると、車両前方の近傍領域が明るくなりすぎるおそれがある。そこで、この点を改良するため、
図4(h)に示すように、シェード22の先端縁22aを、投影レンズ12の後方側焦点Fよりも後方かつ上方に配置する。
【0034】
このようにシェード22を配置することで、ロービーム用光源から出射した光のうち配光パターンの上半分を形成する光の多くが遮蔽されるため、
図4(g)に示すロービーム用配光パターンPL4は、
図4(e)に示すロービーム用配光パターンPL2と比較して、カットオフラインCL7が中心(H−H線)近傍まで下がる。ロービーム用配光パターンPL4は、
図4(a)に示す領域R2と同様、H−H線近傍が明るいため、この領域にカットオフラインが形成されることで、カットオフラインを鮮明にすることができる。
【0035】
一方、シェード22を上方に移動することで、ハイビーム用光源から出射した光のうち、先端縁22aと後方側焦点Fとの間を通過する光が多くなり、ハイビーム用配光パターンPH4のカットオフラインCL8も下に移動する(
図4(g)参照)。そのため、ハイビーム用配光パターンPH4の最も明るくなる領域が、H−H線とロービーム用配光パターンPL4のカットオフラインCL7との間に位置するようにできる。
【0036】
上述に加え本実施の形態に係る車両用灯具10は以下の作用効果を奏する。
【0037】
本実施の形態に係るシェード22は、
図3に示すように、第1カットオフラインCL1および第2カットオフラインCL2の中央からその左右近傍領域まで水平なカットオフラインとなるように構成されている。これにより、例えば、二輪車両に好適な配光パターンが得られる。二輪車両は、走行中に車体を傾けることが多く、四輪車両と異なり段違いのカットオフラインの必要性が乏しい。そのため、配光パターンの簡素化、ひいてはシェード22の形状を簡便にできる。
【0038】
シェード22は、
図2に示すように、その先端縁22aが投影レンズ12の焦点カーブと対向するように配置されており、光軸Ax近傍領域での先端縁22aと焦点カーブF
Lとの距離G1よりも、光軸から離れた外側領域での先端縁22aと焦点カーブF
Lとの距離G2が大きい形状である。これにより、光軸から離れた配光パターンの両端部のカットオフラインの形状に変化をつけることができる。具体的には、
図3に示すように、ロービーム用配光パターンPLの第1カットオフラインCL1のうち両端部のカットオフラインCL1’がH−H線の上部まで突出するようにできる。これにより、例えば、車両用灯具10を搭載した二輪車両において、車体を左右に傾けることで、ロービーム用配光パターンPLの一方の端部のカットオフラインCL1’が矢印A方向に下がっても、H−H線近傍を照射し続けることができ、前方の視認性が低下しにくい。
【0039】
また、車両用灯具10は、LED14から出射した光を投影レンズに向けて光軸寄りに反射する第1リフレクタ18と、光軸Axを挟んで第1リフレクタ18の反対側に設けられ、LED16から出射した光を投影レンズ12に向けて光軸Ax寄りに反射する第2リフレクタ20と、を備えている。そして、シェード22は、上縁部に第1カットオフラインCL1を有するロービーム用配光パターンPLを形成できるとともに、下縁部に第2カットオフラインCL2を有するハイビーム用配光パターンPHを形成できるように構成されている。これにより、各配光パターンにそれぞれ異なるカットオフラインを形成できる。
【0040】
また、シェード22は、ロービーム用配光パターンPLおよびハイビーム用配光パターンPHのそれぞれの領域の一部が重畳するように構成されている。このような構成のシェード22により、ロービーム用配光パターンPLおよびハイビーム用配光パターンPHが重畳した照射領域の明るさを向上できる。
【0041】
また、
図1に示すように、ハイビーム用配光パターンとロービーム用配光パターンPL2とを一つのプロジェクタ型灯具ユニットで実現できるため、車両用灯具全体を小型化できる。
【0042】
(第2の実施の形態)
図5は、第2の実施の形態に係る車両用灯具30の概略構成を示す縦断面図である。車両用灯具30は、ロービーム用配光パターンとハイビーム用配光パターンとの切替え、およびロービーム用配光パターンやハイビーム用配光パターン形成時にオーバーヘッドサインの形成が可能な車両用前照灯である。オーバーヘッドサインとは、主として頭上標識を照射するための配光パターンであり、上下方向4°、水平方向20°程度以上の広がりをもつ薄い光である。
【0043】
車両用灯具30は、車両前後方向に延びる光軸Ax上に配置された投影レンズ32と、投影レンズ32の後方に配置された第1光源及び第2光源としてのLED(発光ダイオード)34,36と、投影レンズ32の後方側焦点Fよりも後方に配置されたLED34から上方へ出射した光を前方に向けて光軸Ax寄りに反射させる第1リフレクタ38と、投影レンズ32の後方側焦点Fよりも後方に配置されたLED36から下方へ出射した光を前方に向けて光軸Ax寄りに反射させる第2リフレクタ40と、投影レンズ32と、LED34,36との間の領域に先端縁42aが位置するシェード42と、を備える。なお、投影レンズ32、LED34,36は、第1の実施の形態とほぼ同じ構成である。
【0044】
各LED34,36は、基板に実装された状態で共用の基台部44の上面または下面に固定されている。基台部44は、ヒートシンクを兼ねており、放熱性の観点からLED34の載置部44aとLED36の載置部44bとが離れて設けられている。また、ハイビーム用配光パターンの光源であるLED36の載置部44bは、載置部44aよりも後方に設けられている。このように、2つの光源の載置部を離すことで、効率のよい放熱が可能となり、基台部44の小型化にも寄与する。
【0045】
そして、LED34は、投影レンズ32の後方側焦点Fに向かう光を出射し、LED36は、投影レンズ32の後方側焦点Fの上方に位置する第2リフレクタ40の第2焦点F2’に向かう光を出射する。
【0046】
また、LED34は、第1の配光パターンとしてロービーム用配光パターン(PL)およびオーバーヘッドサイン(OHS)の形成時に点灯されるだけでなく、第2の配光パターンとしてハイビーム用配光パターン(PH)の形成時にも点灯される。一方、LED36は、ハイビーム用配光パターン(PH)の形成時に点灯される。
【0047】
第1リフレクタ38は、光軸Axを中心軸とする略楕円状の反射面38aと、反射面38aより第1リフレクタ38の前端側に形成され、オーバーヘッドサインを形成するための二回反射面の一方を構成する反射面38bと、を有している。
【0048】
反射面38aは、縦断面形状が略楕円で形成されている。LED34は、この反射面38aの光軸Axを含む鉛直断面で形成される楕円の第1焦点F1近傍に配置されている。これにより、反射面38aは、LED34からの光を前方へ光軸Ax寄りに反射させるようになっている。その際、光軸Axを含む鉛直断面内においては上記楕円の第2焦点F2に略収束させるようになっている。本実施の形態において、この第2焦点F2は、投影レンズ32の後方側焦点Fと略一致する。反射面38bは、LED34から出射した光の一部を第2リフレクタ40に向けて反射するように構成されている。
【0049】
第2リフレクタ40は、光軸Axを中心軸とする略回転楕円面状の反射面40aと、反射面40aより第2リフレクタ40の前端側に形成され、オーバーヘッドサインを形成するための二回反射面の他方を構成する反射面40bと、を有している。
【0050】
反射面40aは、光軸Axを含む断面形状が略楕円で形成されている。LED36は、この反射面40aの光軸Axを含む鉛直断面で形成される楕円の第1焦点F1’近傍に配置されている。これにより、反射面40aは、LED36からの光を前方へ光軸Ax寄りに反射させるようになっている。その際、光軸Axを含む鉛直断面内においては上記楕円の第2焦点F2’に略収束させるようになっている。
【0051】
なお、第2リフレクタ40は、第2焦点F2’が投影レンズ32の後方側焦点Fの上方に位置するように、配置されている。そして、回転楕円面を有する第2リフレクタ40の長軸は、光軸Axに対して傾いている。また、反射面40bは、反射面38bで反射されたLED34の光を投影レンズ32に向けて反射するように構成されている。
【0052】
カットオフライン形成するシェード42は、LED34から出射され、第1リフレクタ38の反射面38aにて反射された光を一部遮蔽する遮蔽部材である。シェード42は、その先端縁42aが後方側焦点Fより後方(
図5に示す右側)かつ上方に位置している。そのため、シェード42の先端縁42aと、投影レンズ32の後方側焦点Fを連続的につないだレンズ焦点カーブとの間には間隔がある。
【0053】
そのため、車両用灯具30は、投影レンズ32の後方側焦点Fより前方を通過する光だけでなく、投影レンズ32の後方側焦点Fより後方を通過する一部の光、つまり、先端縁42aと後方側焦点Fとの間を通過する光もロービーム用配光パターンやハイビーム用配光パターンの形成に寄与する。
【0054】
したがって、本実施の形態に係る車両用灯具30も、
図3と同様に、LED34から出射した光の一部を遮って第1カットオフラインCL1を有するロービーム用配光パターンPLを形成できるとともに、LED36から出射した光の一部を遮って第2カットオフラインCL2を有するハイビーム用配光パターンPHを形成できるように構成されている。そして、車両用灯具30においては、
図3と同様に、ロービーム用配光パターンPLおよびハイビーム用配光パターンPHの一部が互いにオーバーラップするため、2つの配光パターンの間の非照射領域の発生が抑制される。
【0055】
また、車両用灯具30においては、シェード42の先端縁42aが、投影レンズ32の後方側焦点Fよりも後方かつ上方に配置されている。これにより、第2リフレクタ40の第2焦点F2’が後方側焦点Fより上方となるように第2リフレクタ40を配置しても、反射面40aから第2焦点F2’に向かう光とシェード42との干渉が抑制される。また、第2リフレクタ40の第2焦点F2’を後方側焦点Fよりも上方に設定することで、ハイビーム用配光パターンPHにおける最大光度の位置をH−H線よりも下方に移動できる。また、前述の
図4(g)や
図4(h)を参照して説明したように、ロービーム用配光パターンのカットオフラインを鮮明にできる。
【0056】
また、車両用灯具30において、ハイビーム用配光パターンの形成に寄与する第2リフレクタ40は、ロービーム用配光パターンの形成に寄与する第1リフレクタ38よりも後方に位置している。このように、回転楕円面を有する第2リフレクタの第1焦点F1’と、後方側焦点F近傍の第2焦点F2’との距離が大きくなると、2つの焦点により定義される楕円自体が大きくなるため、距離が小さい場合と比較して、第2リフレクタ40の反射面40aが大きくなる。そのため、LED36から出射した光を多く反射できるため、ハイビーム用配光パターンにおける最大光度を上げることができる。
【0057】
また、車両用灯具30において、仮にシェード42の先端縁42aに、第1リフレクタ38の反射面38bで反射したオーバーヘッドサイン用の反射光を再度反射するための反射部材(反射面40bに相当)を設けたとすると、この反射部材と、第2リフレクタ40の反射面40aで反射されたハイビーム用配光パターンを形成する一部の光とが干渉し、所望のハイビーム用配光パターンを形成できない。
【0058】
しかしながら、本実施の形態に係る車両用灯具30は、第1リフレクタ38の反射面38bで反射したオーバーヘッドサイン用の反射光を再度反射するための反射面40bを、第2リフレクタ40の先端部に設けているため、前述のような干渉の問題は生じない。
【0059】
(第3の実施の形態)
図6は、第3の実施の形態に係る車両用灯具50の概略構成を示す縦断面図である。
図7は、車両用灯具50がロービーム用配光パターン(PL)およびオーバーヘッドサイン(OHS)を形成している状態の光線図である。
図8は、車両用灯具50がハイビーム用配光パターン(PH)およびオーバーヘッドサイン(OHS)を形成している状態の光線図である。
【0060】
車両用灯具50は、第2の実施の形態に係る車両用灯具30と同様に、ロービーム用配光パターンとハイビーム用配光パターンとの切替え、およびロービーム用配光パターンやハイビーム用配光パターン形成時にオーバーヘッドサインの形成が可能な車両用前照灯である。以下では、第2の実施の形態に係る車両用灯具30と同様の構成や作用効果については、同様の符号を付して説明を適宜省略する。
【0061】
車両用灯具50は、車両前後方向に延びる光軸Ax上に配置された投影レンズ32と、投影レンズ32の後方に配置されたLED52,54と、投影レンズ32の後方側焦点Fよりも後方に配置されたLED52から上方へ出射した光を前方に向けて光軸Ax寄りに反射させる第1リフレクタ56と、投影レンズ32の後方側焦点Fよりも後方に配置されたLED54から下方へ出射した光を前方に向けて光軸Ax寄りに反射させる第2リフレクタ58と、投影レンズ32と、LED52,54との間の領域に先端縁60aが位置するシェード60と、を備える。なお、LED52,54は、第1の実施の形態および第2の実施の形態とほぼ同じ構成である。
【0062】
各LED52,54は、基板に実装された状態で共用の基台部62の上面または下面に固定されている。基台部62は、ヒートシンクを兼ねており、放熱性の観点からLED52の載置部62aとLED54の載置部62bとが離れて設けられている。
【0063】
そして、LED52は、投影レンズ32の後方側焦点Fに向かう光を出射し、LED54は、投影レンズ32の後方側焦点Fの上方に位置する第2リフレクタ58の第2焦点F2’に向かう光を出射する。
【0064】
また、LED52は、第1の配光パターンとしてロービーム用配光パターン(PL)およびオーバーヘッドサイン(OHS)の形成時(
図7参照)に点灯されるだけでなく、第2の配光パターンとしてハイビーム用配光パターン(PH)の形成時にも点灯される。一方、LED54は、ハイビーム用配光パターン(PH)の形成時に点灯される(
図8参照)。その際、オーバーヘッドサイン(OHS)も形成される。
【0065】
第1リフレクタ56は、光軸Axを中心軸とする略楕円形状を基本とする自由曲面で構成された反射面56aと、反射面56aより第1リフレクタ56の前端側に形成され、オーバーヘッドサインを形成するための二回反射面の一方を構成する反射面56bと、を有している。
【0066】
反射面56aのうち後方部56a1は、LED52から出射した光を灯具前方の下方に向けて反射するような形状で構成されている。また、反射面56aの前方部56a2は、後方部56a1から連続し、かつ灯具前方に向かうにつれて徐々に拡がる形状で構成されている。
【0067】
LED52は、この反射面56aの後方部56a1の光軸Axを含む鉛直断面で形成される楕円の第1焦点F1(
図6参照)近傍に配置されている。これにより、
図7に示すロービーム用配光パターン形成時においては、反射面56aの後方部56a1は、LED52からの光を前方へ光軸Ax寄りに反射させるようになっている。その際、光軸Axを含む鉛直断面内においては上記楕円の第2焦点F2(
図6参照)に略収束させるようになっている。本実施の形態において、この第2焦点F2は、投影レンズ32の後方側焦点F(
図6参照)と略一致する。また、反射面56aの前方部56a2で反射された光は、投影レンズ32の入射面32aの中心近傍にほぼ平行な光として入射する。なお、反射面56bは、LED52から出射した光の一部を第2リフレクタ58に向けて反射するように構成されている。
【0068】
第2リフレクタ58は、光軸Axを中心軸とする略回転楕円面状の反射面58a,58cと、反射面58aより第2リフレクタ58の前端側に形成され、オーバーヘッドサインを形成するための二回反射面の他方を構成する反射面58bと、を有している。
【0069】
反射面58aは、光軸Axを含む断面形状が略楕円で形成されている。LED54は、この反射面58aの光軸Axを含む鉛直断面で形成される楕円の第1焦点F1’(
図6参照)近傍に配置されている。これにより、反射面58aは、LED54からの光を前方へ光軸Ax寄りに反射させるようになっている。その際、光軸Axを含む鉛直断面内においては上記楕円の第2焦点F2’(
図6参照)に略収束させるようになっている。
【0070】
なお、第2リフレクタ58は、第2焦点F2’が投影レンズ32の後方側焦点Fの上方に位置するように、配置されている(
図6参照)。そして、回転楕円面を有する第2リフレクタ58の長軸は、光軸Axに対して傾いている。また、反射面58bは、反射面56bで反射されたLED52の光を投影レンズ32に向けて反射するように構成されている。
【0071】
同様に、反射面58cは、LED54から出射された光を投影レンズ32に向けて反射するように構成されている。なお、反射面58bで反射された反射光は、オーバーヘッドサイン用の光として用いられる。このように、第2リフレクタ58は、LED54から出射した光を反射してハイビーム用配光パターンPHの形成に寄与する反射面58aと、LED52から出射し、第1リフレクタ56で反射された光を再反射してオーバーヘッドサインの形成に寄与する反射面58bと、が一体で構成されている。
【0072】
カットオフライン形成するシェード60は、LED52から出射され、第1リフレクタ56の反射面56aにて反射された光を一部遮蔽する遮蔽部材である。シェード60は、その先端縁60aが後方側焦点Fより後方(
図6に示す右側)かつ上方に位置している。
【0073】
そのため、車両用灯具50は、前述の各実施の形態に係る車両用灯具と同様の作用効果を奏することができる。
【0074】
また、第3の実施の形態に係る車両用灯具50は、主としてロービーム用配光パターンを形成するLED52が載置される基台部62の載置部62aが、投影レンズ32の光軸とほぼ平行となっている。これにより、
図7に示すように、ロービーム用配光パターンPLを形成する光は、投影レンズ32の中央付近を通過するため、投影レンズ32の周辺領域を通過する場合(例えば
図5のロービーム用配光パターンPL)と比較して色分離が少なくなり、カットラインが青っぽくなることを抑制できる。なお、LED54が載置される載置部62bと載置部62aとが成す角は、15〜16°程度である。
【0075】
また、車両用灯具50のシェード60は、後端を下方に折り曲げた折り曲げ部60bを有する。これにより、シェード60の強度を向上できる。加えて、第2リフレクタ58の反射面58aで反射された光が、シェード60の下面60cで反射されて迷光となることを防止できる。また、シェード60は、先端縁60aよりも後端(折り曲げ部60b)側が下がっている。これにより、LED52から出射し、第1リフレクタ56で反射された光がシェード60の上面60dで反射された場合であっても、その反射光が投影レンズ32に入射しないようにできる。このように、シェード60による再反射光が投影レンズ32に入射しないことで、一つの配光パターン内での明暗境界の発生を抑制し、車両前方の照射領域に対するドライバの視認性を向上できる。
【0076】
また、シェード60は、後端を上方に折り曲げた折り曲げ部60eを有していてもよい。この場合は、第1リフレクタ56の後方部56a1で反射して、シェード60の上面60dに水平に近い角度で入射する光を確実に遮光することで、シェード60の上面60dでの再反射光が投影レンズ32に入射することを防止できる。
【0077】
なお、2つの配光パターンの一部が互いにオーバーラップする車両用灯具を実現するという観点からは、シェード60の下面60cまたは上面60dでの再反射光を投影レンズ32に入射させて明るさを向上させてもかまわない。
【0078】
以上、本発明を上述の各実施の形態を参照して説明したが、本発明は上述の各実施の形態に限定されるものではなく、各実施の形態の構成を適宜組み合わせたものや置換したものについても本発明に含まれるものである。また、当業者の知識に基づいて各実施の形態における組合せや処理の順番を適宜組み替えることや各種の設計変更等の変形を各実施の形態に対して加えることも可能であり、そのような変形が加えられた実施の形態も本発明の範囲に含まれうる。