(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記(メタ)アクリル共重合体の官能基量に対する架橋剤の官能基量の当量比(架橋剤/(メタ)アクリル共重合体)が、0.1〜1.5である、請求項1又は請求項2に記載の粘着剤組成物。
【発明を実施するための形態】
【0015】
本明細書において「〜」を用いて示された数値範囲は、「〜」の前後に記載される数値をそれぞれ最小値及び最大値として含む範囲を示す。また本明細書において組成物中の各成分の量は、組成物中に各成分に該当する物質を複数種併用する場合には、特に断らない限り、その成分に該当する複数種の物質の合計量を意味する。
更に(メタ)アクリルレートとは、アクリレート及びメタクリレートの少なくとも一方を意味し、(メタ)アクリルレートに類する(メタ)アクリル共重合体等の語句も同様の意味である。
【0016】
<粘着剤組成物>
本発明における粘着剤組成物は、酸性基及び水酸基を有する(メタ)アクリル共重合体(以下、「特定(メタ)アクリル共重合体」と称する場合がある)と、反応性基
として水酸基を有するジメチルポリシロキサン化合物(以下、「特定ポリシロキサン化合物」と称する場合がある)と、
ポリイソシアネート化合物である架橋剤と、を含み、前記架橋剤に対する前記ジメチルポリシロキサン化合物の質量比(ジメチルポリシロキサン化合物/架橋剤)が1/100〜20/100であり、前記(メタ)アクリル共重合体の酸価は、0を超えて1.0以下である。かかる粘着剤組成物は、光学部材表面保護フィルム用に好ましく適用することができる。
【0017】
上記構成の粘着剤組成物とすることで、これにより作製した粘着フィルムは被着体から容易に剥離することができ、且つ被着体の汚染が少ない。また、上記構成の粘着剤組成物とすることで初期硬化性に優れる。これは、以下のように考えることができる。
【0018】
(メタ)アクリル共重合体の合成原料として、例えば、水酸基を有する単量体の他には官能基を有しない単量体のみを用いた場合は、共重合性の観点から水酸基を有する単量体の消費速度が速くなる。そのため、重合反応の終盤において、水酸基をほとんど有しない(メタ)アクリル共重合体が生成され、水酸基を有する(メタ)アクリル共重合体と、水酸基をほとんど有しない(メタ)アクリル共重合体とが混在することになる。水酸基をほとんど有しない(メタ)アクリル共重合体は架橋されにくいので、これを含んで作製された粘着フィルムを被着体から剥離したとき、水酸基をほとんど有しない(メタ)アクリル共重合体が被着体に残りやすく、被着体を汚染してしまう。
【0019】
これに対して、(メタ)アクリル共重合体の合成原料として、例えば、水酸基を有する単量体の他に、官能基を有しない単量体に加え、酸性基を有する単量体を用いた場合は、水酸基を有する単量体の消費速度が遅くなる。そのため、重合反応の終盤においても、ある程度の水酸基を有する(メタ)アクリル共重合体が生成される。そのため、架橋されない(メタ)アクリル共重合体がほとんど存在しないので、これを含んで作製された粘着フィルムは(メタ)アクリル共重合体が被着体に残りにくく、被着体の汚染を防止できる。
【0020】
また、本発明では、反応性基を有する特定ポリシロキサン化合物に対して、架橋されていないフリーの特定ポリシロキサン化合物が被着体を汚染しない程度に十分な量の架橋剤を使用する。これにより、特定ポリシロキサン化合物が架橋され、架橋されていないフリーの特定ポリシロキサン化合物が減少する。その結果、架橋されていないフリーの特定ポリシロキサン化合物に起因した被着体の汚染を防止できる。
【0021】
更に、本発明では、特定(メタ)アクリル共重合体の酸価は0を超えて1.0以下である。特定(メタ)アクリル共重合体の酸価が1.0を超えると初期硬化速度が低下するので作業性に劣り、更に、製造時に粘着フィルムをロール状に巻きとったときに巻き跡が残る場合がある。また、特定(メタ)アクリル共重合体の酸価が0であると、汚染性が悪くなる。
【0022】
[(メタ)アクリル共重合体]
本発明における粘着剤組成物は、酸性基及び水酸基を有する特定(メタ)アクリル共重合体の少なくとも1種を含有する。粘着剤組成物は必要に応じて、特定(メタ)アクリル共重合体とは異なる(メタ)アクリル共重合体を更に含んでいてもよい。
ここで(メタ)アクリル共重合体とは、共重合体を構成する全単量体成分(共重合体を構成する単量体を単に共重合成分と記載することがある)の50質量%以上、好ましくは90質量%以上が(メタ)アクリル単量体である共重合体をいう。
【0023】
特定(メタ)アクリル共重合体は、酸性基を有する第一の構造単位、及び水酸基を有する第二の構造単位を含む。第一の構造単位としては、酸性基と第二の構造単位を形成する単量体と共重合体を形成可能な重合性基とを有する単量体に由来する構造単位であれば特に制限されない。第一の構造単位としては、カルボキシ基を有する単量体に由来する構造単位が好ましい。カルボキシ基を有する単量体に由来する構造単位としては、(メタ)アクリル酸に由来する構造単位、カルボキシ基を有する(メタ)アクリル酸エステル(本明細書においては、(メタ)アクリル酸エステルを(メタ)アクリレートという場合がある)に由来する構造単位などが挙げられる。カルボキシ基を有する(メタ)アクリル酸エステルに由来する構造単位としては、下記一般式(1)で表される構造単位が挙げられる。酸性基を有する第一の構造単位として好ましくは、下記一般式(1)で表される構造単位である。
【0025】
一般式(1)で表される構造単位において、Lはアルキレン基、アリーレン基、カルボニル基及び酸素原子からなる群より選ばれる少なくとも1種から構成される2価の連結基を示し、R
1は水素原子又はメチル基を示す。但し、Lが酸素原子を含む場合には、酸素原子は、アルキレン基、アリーレン基及びカルボニル基からなる群より選ばれる少なくとも1種と共に含まれ、−CO−に結合する。
【0026】
Lにおけるアルキレン基は、直鎖状、分岐鎖状及び環状のいずれであってもよい。Lにおけるアルキレン基が直鎖状又は分岐鎖状の場合、アルキレン基の炭素数は、1〜12であることが好ましく、2〜10であることがより好ましく、2〜6であることが更に好ましい。
【0027】
また、Lにおけるアルキレン基が環状の場合、アルキレン基の炭素数は、3〜12であることが好ましく、4〜8であることがより好ましく、5〜6であることが更に好ましい。例えば環状のアルキレン基がシクロヘキシレン基の場合、結合位置は1,4位、1,2位及び1,3位のいずれであってもよく、1,2位であることが好ましい。
【0028】
Lにおけるアリーレン基は、炭素数が6〜10であることが好ましく、フェニレン基であることがより好ましい。アリーレン基における結合位置は特に制限されない。例えばアリーレン基がフェニレン基の場合、結合位置は1,4位、1,2位及び1,3位のいずれであってもよく、1,2位であることが好ましい。
【0029】
Lにおけるアルキレン基及びアリーレン基は、置換基を有していてもよい。置換基としては、炭素数1〜12のアルキル基、ハロゲン原子、水酸基、アミノ基、ニトロ基、フェニル基等を挙げることができる。
【0030】
一般式(1)におけるLで示される2価の連結基は、帯電防止性及び被着体に対する汚染性の観点から、下記一般式(2a)又は一般式(2b)で表される2価の連結基であることが好ましい。
【0032】
一般式(2a)及び(2b)中、R
21〜R
24はそれぞれ独立に、炭素数1〜12のアルキレン基又は炭素数6〜10のアリーレン基を示す。nは0〜10の数を示し、mは1〜10の数を示す。
R
21〜R
24におけるアルキレン基は、直鎖状、分岐鎖状及び環状のいずれであってもよく、直鎖状又は分岐鎖状であることが好ましく、直鎖状であることがより好ましい。
R
21〜R
24におけるアリーレン基における結合位置は特に制限されない。例えばアリーレン基がフェニレン基又はシクロヘキシレン基の場合、結合位置は1,4位、1,2位及び1,3位のいずれであってもよく、1,2位であることが好ましい。
【0033】
R
21及びR
22におけるアルキレン基は、各々独立に、炭素数が2〜10であることが好ましく、炭素数が2〜6であることがより好ましい。R
21及びR
22におけるアルキレン基は、同一であっても異なっていてもよい。
R
21及びR
22におけるアリーレン基は、各々独立に、フェニレン基又はナフチレン基であることが好ましく、フェニレン基であることがより好ましい。
【0034】
一般式(2a)におけるR
21及びR
22は、帯電防止性及び被着体に対する汚染性の観点から、各々独立に、炭素数1〜12のアルキレン基であることが好ましく、炭素数2〜6のアルキレン基がより好ましく、炭素数2〜6であって直鎖状又は分岐鎖状のアルキレン基であることが更に好ましい。
【0035】
一般式(2a)において、nは0〜10の数を表す。特定(メタ)アクリル共重合体が、一般式(1)で示される構造単位を1種類のみ含む場合には、nは整数であり、2種以上含む場合には、nは平均値である有理数となる。nは0〜4であることが好ましく、0〜2であることがより好ましい。
【0036】
R
23は、炭素数1〜12のアルキレン基であることが好ましく、炭素数2〜6のアルキレン基であることがより好ましく、炭素数2〜4のアルキレン基であることが更に好ましい。
【0037】
R
24は、炭素数2〜6の直鎖状又は分岐鎖状のアルキレン基、炭素数4〜8の環状アルキレン基、又は炭素数6〜10のアリーレン基であることが好ましく、炭素数2〜4の直鎖状又は分岐鎖状のアルキレン基、炭素数5〜6の環状アルキレン基、又はフェニレン基であることがより好ましく、炭素数2〜4の直鎖状又は分岐鎖状のアルキレン基、シクロヘキシレン基、又はフェニレン基であることが更に好ましい。
【0038】
一般式(2b)において、mは1〜10の数を表す。特定(メタ)アクリル共重合体が、一般式(1)で示される構造単位を1種類のみ含む場合には、mは整数であり、2種以上含む場合には、mは平均値である有理数となる。mは1〜4であることが好ましく、1〜2であることがより好ましい。
【0039】
一般式(1)で示される構造単位は、例えば、下記一般式(1a)で表される単量体を、特定(メタ)アクリル共重合体を構成する他の単量体とともに共重合することで、特定(メタ)アクリル共重合体に導入することができる。
【0041】
一般式(1a)中、R
1及びLは一般式(1)におけるR
1及びLとそれぞれ同義である。
【0042】
一般式(1a)で表される単量体は、常法により製造したものであっても、市販の単量体から適宜選択したものであってもよい。一般式(1a)で表される単量体のうちLが一般式(2a)で表される単量体としては、(メタ)アクリル酸ダイマー(好ましくは、一般式(2a)におけるnの平均値が約0.4のもの)、ω−カルボキシ−ポリカプロラクトンモノ(メタ)アクリレート(好ましくは、一般式(2a)におけるnの平均値が約1.0のもの)等が挙げられる。これらの単量体は、例えば、「アロニックスM−5600」、「アロニックスM−5300」(以上、東亞合成株式会社製、商品名)等として市販されているものを用いることができる。
【0043】
また、一般式(1a)で表される単量体のうちLが一般式(2b)で表される単量体としては、2−(メタ)アクリロイルオキシエチルコハク酸、2−(メタ)アクリロイルオキシエチルフマル酸、2−(メタ)アクリロイルオキシエチルヘキサヒドロフタル酸、2−(メタ)アクリロイルオキシエチルフタル酸等が挙げられる。これらの単量体は例えば「ライトエステルHO−MS」、「ライトアクリレートHOA−MS(N)」、「ライトアクリレートHOA−HH(N)」、「ライトアクリレートHOA−MPL(N)」(以上、共栄社株式会社製、商品名)等として市販されているものを用いることができる。
【0044】
特定(メタ)アクリル共重合体における酸性基を有する第一の構造単位の含有率は、0.005質量%〜0.5質量%であることが好ましく、0.025質量%〜0.25質量%であることがより好ましく、0.01質量%〜0.1質量%であることが更に好ましい。
酸性基を有する第一の構造単位の含有率が0.005質量%以上であると、汚染性がより低くなる。また、酸性基を有する第一の構造単位の含有率が0.5質量%以下であると、粘着剤組成物のポットライフが長く、また初期硬化性に優れる。
【0045】
特定(メタ)アクリル共重合体は、水酸基を有する第二の構造単位の少なくとも1種を含む。第二の構造単位を形成する水酸基を有する単量体は、少なくとも1つの水酸基と、第一の構造単位を形成する単量体と共重合体を形成可能な重合性基と、を有する単量体であれば特に制限されず、通常用いられる単量体から適宜選択して用いることができる。
【0046】
水酸基を有する単量体としては、例えば、水酸基及びエチレン性不飽和結合基を有する単量体を挙げることができる。水酸基を有する単量体として具体的には、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、3−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、4−ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、3−メチル−3−ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、1,3−ジメチル−3−ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、2,2,4−トリメチル−3−ヒドロキシペンチル(メタ)アクリレート、2−エチル−3−ヒドロキシヘキシル(メタ)アクリレート、グリセリンモノ(メタ)アクリレート、ポリプロピレングリコールモノ(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコールモノ(メタ)アクリレート、ポリ(エチレングリコール−プロピレングリコール)モノ(メタ)アクリレート等の(メタ)アクリレート化合物;N−メチロール(メタ)アクリルアミド、N−ヒドロキシエチル(メタ)アクリルアミド等の水酸基を有する(メタ)アクリルアミド化合物;アリルアルコール、メタリルアルコール等の不飽和アルコール;などを挙げることができる。
【0047】
中でも、その他の単量体との相溶性及び共重合性が良好である点、並びに架橋剤との架橋反応が良好である点から、炭素数2〜6のアルキル基に1つの水酸基を有する(メタ)アクリル酸エステルであることが好ましく、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート又は4−ヒドロキシブチル(メタ)アクリレートであることがより好ましい。
【0048】
特定(メタ)アクリル共重合体における、水酸基を有する単量体に由来する第二の構造単位の含有率としては、特定(メタ)アクリル共重合体の総質量中に、0.1質量%以上10.0質量%以下であることが好ましく、2.0質量%以上8.0質量%以下であることがより好ましく、2.0質量%以上5.0質量%以下であることが更に好ましい。水酸基を有する単量体に由来する構造単位の含有率が前記下限値以上であることで被着体への汚染の発生をより効果的に抑制できる傾向がある。また前記上限値以下であることで、被着体に対するなじみ性(濡れ性)がより良好になる傾向がある。
【0049】
特定(メタ)アクリル共重合体における第一の構造単位と第二の構造単位の含有比率は特に制限されない。被着体に対する汚染性の観点から、第一の構造単位の第二の構造単位に対する含有比率(第一の構造単位/第二の構造単位)は質量基準で、1/2000〜5/1であることが好ましく、1/350〜1/8であることがより好ましく、1/200〜1/50であることが更に好ましい。
【0050】
特定(メタ)アクリル共重合体における第一の構造単位及び第二の構造単位の総含有率は特に制限されない。被着体に対する汚染性の観点から、第一の構造単位及び第二の構造単位の総含有率は、1質量%以上15質量%以下であることが好ましく、2質量%以上10質量%以下であることがより好ましく、3質量%以上8質量%以下であることが更に好ましい。
【0051】
特定(メタ)アクリル共重合体は、第一の構造単位及び第二の構造単位に加えて、アルキル(メタ)アクリレートに由来する第三の構造単位の少なくとも1種を更に含むことが好ましい。
アルキル(メタ)アクリレートにおけるアルキル基は直鎖状であっても、分岐鎖状であってもよい。また、アルキル(メタ)アクリレートにおけるアルキル基の炭素数は、粘着性の観点から、1〜18であることが好ましく、2〜10であることがより好ましい。
【0052】
アルキル(メタ)アクリレートとして具体的には、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、n−ブチル(メタ)アクリレート、イソブチル(メタ)アクリレート、n−オクチル(メタ)アクリレート、イソオクチル(メタ)アクリレート、2−エチルヘキシル(メタ)アクリレート、n−ノニル(メタ)アクリレート、イソノニル(メタ)アクリレート、n−デシル(メタ)アクリレート、n−ドデシル(メタ)アクリレート、ステアリル(メタ)アクリレート等の炭素数1〜18の直鎖状又は分枝鎖状のアルキルを有するアルキル(メタ)アクリレート及びこれらの誘導体を挙げることができる。
【0053】
特定(メタ)アクリル共重合体は、アルキル(メタ)アクリレートに由来する第三の構造単位を1種単独で含んでいても2種以上含んでいてもよく、2種以上含んでいることが好ましい。特定(メタ)アクリル共重合体が第三の構造単位を2種含む場合、一方が炭素数1〜5の直鎖状又は分岐鎖状のアルキル基を有するアルキル(メタ)アクリレートに由来する構造単位であって、他方は炭素数6〜18の直鎖状又は分岐鎖状のアルキル基を有するアルキル(メタ)アクリレートに由来する構造単位であることが好ましく、一方が炭素数2〜5の直鎖状のアルキル基を有するアルキル(メタ)アクリレートに由来する構造単位であって、他方は炭素数6〜10の分岐鎖状のアルキル基を有するアルキル(メタ)アクリレートに由来する構造単位であることがより好ましい。
【0054】
特定(メタ)アクリル共重合体が第三の構造単位を含む場合、第三の構造単位の総含有率は、特定(メタ)アクリル共重合体の総質量中に、60質量%以上99.9質量%以下であることが好ましく、72質量%以上99.5質量%以下であることがより好ましく、85質量%以上99質量%以下であることが更に好ましい。第三の構造単位の総含有率が前記下限値以上であると、なじみ性(濡れ性)がより良好になる傾向がある。また、第三の構造単位の総含有率が前記上限値以下であると、高速剥離時の粘着力が大きくなりすぎず、高速剥離時の作業性により優れる傾向がある。
【0055】
特定(メタ)アクリル共重合体は、必要に応じて、第一の構造単位、第二の構造単位及び第三の構造単位以外のその他の構造単位を更に含んでいてもよい。その他の構造単位を形成する単量体としては、シクロヘキシル(メタ)アクリレート、ベンジル(メタ)アクリレート等の環状基を有する(メタ)アクリレート;飽和脂肪酸ビニルエステル、例えば、蟻酸ビニル、酢酸ビニル、プロピオン酸ビニル、「バーサチック酸ビニル」(商品名、ネオデカン酸ビニル)等の脂肪族ビニル単量体;スチレン、α−メチルスチレン、ビニルトルエン等の芳香族ビニル単量体;アクリロニトリル、メタクリロニトリル等のシアノビニル単量体;ジメチルマレート、ジ−n−ブチルマレート、ジ−2−エチルヘキシルマレート、ジ−n−オクチルマレート、ジメチルフマレート、ジ−n−ブチルフマレート、ジ−2−エチルヘキシルフマレート、ジ−n−オクチルフマレート等のマレイン酸若しくはフマル酸のジエステル単量体;などを挙げることができる。
【0056】
更にその他の構造単位を形成する単量体としては、分子内に1個のラジカル重合性基の他に少なくとも1個の官能基を有する単量体であって、第一の構造単位を形成する単量体及び第二の構造単位を形成する単量体とは異なる単量体(以下、「官能性単量体」ともいう)を挙げることができる。官能性単量体としては、置換若しくは無置換のアミド基、置換若しくは無置換のアミノ基、アルコキシ基、エポキシ基、メルカプト基、珪素含有基等の官能基を有する単量体を挙げることができる。また、分子内にラジカル重合性基を2個以上有する単量体も使用できる。
【0057】
これら官能性単量体の具体例としては、例えば、(メタ)アクリルアミド、ジアセトンアクリルアミド、N−n−ブトキシメチル(メタ)アクリルアミド、N−イソブトキシメチル(メタ)アクリルアミド、N,N−ジメチル(メタ)アクリルアミド、N−メチル(メタ)アクリルアミド等の置換若しくは無置換のアミド基含有単量体;アミノエチル(メタ)アクリレート、N,N−ジメチルアミノエチル(メタ)アクリレート、N,N−ジエチルアミノエチル(メタ)アクリレート等の置換若しくは無置換のアミノ基含有単量体;2−メトキシエチル(メタ)アクリレート、2−エトキシエチル(メタ)アクリレート、2−n−ブトキシエチル(メタ)アクリレート、2−メトキシエトキシエチル(メタ)アクリレート、2−エトキシエトキシエチル(メタ)アクリレート、2−n−ブトキシエトキシエチル(メタ)アクリレート、メトキシポリエチレングリコールモノ(メタ)アクリレート、メトキシポリエチレングリコールモノメタクリレート等のアルコキシ基含有単量体;グリシジル(メタ)アクリレート、グリシジルアリルエーテル、グリシジルメタリルエーテル等のエポキシ基含有単量体;アリルメルカプタン等のメルカプト基含有単量体;ビニルトリクロロシラン、ビニルトリブロモシラン、ビニルトリメトキシシラン、ビニルトリエトキシシラン、ビニルトリ−n−プロポキシシラン、ビニルトリイソプロポキシシラン、ビニルトリ−n−ブトキシシラン、ビニルトリス(2−メトキシエトキシ)シラン、ビニルトリス(2−ヒドロキシメトキシエトキシ)シラン、ビニルトリアセトキシシラン、ビニルジエトキシシラノール、ビニルエトキシシラジオール、ビニルメチルジエトキシシラン、ビニルジメチルエトキシシラン、ビニルメチルジアセトキシシラン、アリルトリメトキシシラン、アリルトリエトキシシラン、3−(メタ)アクリロキシプロピルトリメトキシシラン、3−(メタ)アクリロキシプロピルトリエトキシシラン、3−(メタ)アクリロキシプロピルトリス(2−メトキシエトキシ)シラン、3−(メタ)アクリロキシプロピルメチルジエトキシシラン、3−(メタ)アクリロキシプロピルジメチルエトキシシラン、3−(メタ)アクリロキシプロピルジメチルメトキシシラン、2−(メタ)アクリルアミドエチルトリエトキシシラン等の珪素含有基を有する単量体;などの単量体群を挙げることができる。
【0058】
特定(メタ)アクリル共重合体がその他の構造単位を含む場合、その他の構造単位の含有率は、特定(メタ)アクリル共重合体の総質量中に、30質量%以下であることが好ましく、20質量%以下であることがより好ましく、10質量%以下であることが更に好ましい。その他の構造単位の含有率が前記上限値以下であると、低速剥離と高速剥離の粘着力バランスを良好にできる傾向がある。
【0059】
特定(メタ)アクリル共重合体の酸価は、0を超えて1.0以下であり、0.01以上0.5以下であることがより好ましく、0.05以上0.5以下であることが更に好ましい。特定(メタ)アクリル共重合体の酸価が0を超えることで、特定(メタ)アクリル共重合体の合成において、水酸基を有しない(メタ)アクリル共重合体がほとんど生成されないため、これを含んで作製された粘着フィルムは(メタ)アクリル共重合体が被着体に残りにくく、被着体の汚染を防止できる。特定(メタ)アクリル共重合体の酸価が1.0以下であると、初期硬化性に優れるので、作業性が良く、粘着シートを芯にまいたときに巻き跡が残りにくい。
【0060】
(メタ)アクリル共重合体の酸価は、以下の方法によって測定する。
(1)(メタ)アクリル共重合体約5gを三角フラスコにとり、常温減圧にて溶媒を除去後、さらに105℃熱風乾燥機にて乾固したものをポリマーサンプルとする。
(2)ポリマーサンプルを混合溶媒(体積比:トルエン/エタノール=50/50)100mlに溶解してサンプル溶液とする。
(3)下記の条件でサンプル溶液の滴定を行い、滴定量を測定する。
滴定溶液: エタノール性水酸化カリウム溶液(0.1N、和光純薬工業(株)製、容量分析用)
指示薬: フェノールフタレイン
(4)下記式より、酸化を計算する。
A={(Y−X)×f×5.61}/M
A;酸価
Y;サンプル溶液の滴定量(ml)
X;混合溶媒100mlのみの溶液の滴定量(ml)
f;滴定溶液のファクター
M;ポリマーサンプルの質量(g)
【0061】
特定(メタ)アクリル共重合体の重量平均分子量は特に制限されない。特定(メタ)アクリル共重合体の重量平均分子量(Mw)は、20万以上100万以下であることが好ましく、30万以上80万以下であることがより好ましい。特定(メタ)アクリル共重合体の重量平均分子量(Mw)が前記下限値以上であれば、被着体への汚染の発生をより効果的に抑制できる傾向がある。また、前記上限値以下であれば、なじみ性(濡れ性)がより良好になる傾向がある。
【0062】
また、特定(メタ)アクリル共重合体の重量平均分子量(Mw)と数平均分子量(Mn)との比である分散度(Mw/Mn)は、20以下であることが好ましく、3〜15の範囲であることがより好ましい。分散度(Mw/Mn)の値が前記上限値以下であれば、被着体への汚染の発生をより効果的に抑制できる傾向がある。
【0063】
なお、(メタ)アクリル共重合体の重量平均分子量(Mw)及び数平均分子量(Mn)は、下記の(1)〜(3)に従って測定される値である。
【0064】
(1)(メタ)アクリル共重合体の溶液を剥離紙に塗布し、100℃で2分間乾燥し、フィルム状の(メタ)アクリル共重合体を得る。
(2)上記(1)で得られたフィルム状の(メタ)アクリル共重合体とテトラヒドロフランとを用いて、固形分濃度が0.2質量%である試料溶液を得る。
(3)下記条件にて、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)を用いて、標準ポリスチレン換算値として、(メタ)アクリル共重合体の重量平均分子量(Mw)及び数平均分子量(Mn)を測定する。
【0065】
(条件)
GPC :HLC−8220 GPC〔東ソー(株)製〕
カラム :TSK−GEL GMHXL 4本使用
移動相溶媒:テトラヒドロフラン
流速 :0.6mL/分
カラム温度:40℃
【0066】
粘着剤組成物における特定(メタ)アクリル共重合体の含有率は、目的等に応じて適宜選択することができる。特定(メタ)アクリル共重合体の含有率は、粘着剤組成物の固形分総質量中に、80質量%以上99質量%以下であることが好ましく、85質量%以上99質量%以下であることがより好ましく、90質量%以上98質量%以下であることが更に好ましい。なお、固形分総質量とは粘着剤組成物から、溶剤等の揮発性成分を除いた残渣の総質量を意味する。
【0067】
特定(メタ)アクリル共重合体は、特定(メタ)アクリル共重合体の構造単位を形成可能な単量体を重合することで製造することができる。上記共重合体の重合方法は、特に制限されるものではなく、溶液重合法、乳化重合法、懸濁重合法などの公知の方法から適宜選択することができる。重合により得られた共重合体を用いて本発明の粘着剤組成物を製造するに当り、処理工程が比較的簡単に行えることから、特定(メタ)アクリル共重合体は溶液重合法により重合することが好ましい。
【0068】
溶液重合法は、一般に、重合槽内に所定の有機溶剤、単量体、重合開始剤、及び必要に応じて用いられる連鎖移動剤を仕込み、窒素気流中、有機溶剤の還流温度で、撹拌しながら数時間加熱反応させることにより行なうなどの公知の方法を使用することができる。
【0069】
なお、特定(メタ)アクリル共重合体の重量平均分子量及び分散度は、反応温度、時間、溶剤量、触媒の種類及び量により容易に調節することができる。
【0070】
特定(メタ)アクリル共重合体の重合に用いられる重合用の有機溶剤としては、ベンゼン、トルエン、エチルベンゼン、n−プロピルベンゼン、t−ブチルベンゼン、o−キシレン、m−キシレン、p−キシレン、テトラリン、デカリン、芳香族ナフサ等の芳香族炭化水素化合物;n−ヘキサン、n−ヘプタン、n−オクタン、イソオクタン、n−デカン、ジペンテン、石油スピリット、石油ナフサ、テレピン油等の脂肪系もしくは脂環族系炭化水素化合物;酢酸エチル、酢酸n−ブチル、酢酸n−アミル、酢酸2−ヒドロキシエチル、酢酸2−ブトキシエチル、酢酸3−メトキシブチル、安息香酸メチル等のエステル化合物;アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、イソホロン、シクロヘキサノン、メチルシクロヘキサノン等のケトン化合物;エチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテル、エチレングリコールモノブチルエーテル、ジエチレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールモノエチルエーテル、ジエチレングリコールモノブチルエーテル等のグリコールエーテル化合物;メチルアルコール、エチルアルコール、n−プロピルアルコール、イソプロピルアルコール、n−ブチルアルコール、イソブチルアルコール、s−ブチルアルコール、t−ブチルアルコール等のアルコール化合物;などを挙げることができる。これらの有機溶剤はそれぞれ1種単独でも、2種以上混合して用いることができる。
【0071】
重合開始剤としては、通常の溶液重合法で使用できる有機過酸化物、アゾ化合物などを使用することが可能である。有機過酸化物としては、例えば、t−ブチルハイドロパーオキサイド、クメンハイドロオキサイド、ジクミルパーオキサイド、ベンゾイルパーオキシド、ラウロイルパーオキシド、カプロイルパーオキシド、ジイソプロピルパーオキシジカーボネート、ジ−2−エチルヘキシルパーオキシジカーボネート、t−ブチルパーオキシビバレート、2,2−ビス(4,4−ジ−t−ブチルパーオキシシクロヘキシル)プロパン、2,2−ビス(4,4−ジ−t−アミルパーオキシシクロヘキシル)プロパン、2,2−ビス(4,4−ジ−t−オクチルパーオキシシクロヘキシル)プロパン、2,2−ビス(4,4−ジ−α−クミルパーオキシシクロヘキシル)プロパン、2,2−ビス(4,4−ジ−t−ブチルパーオキシシクロヘキシル)ブタン、2,2−ビス(4,4−ジ−t−オクチルパーオキシシクロヘキシル)ブタンなどが挙げられる。アゾ化合物としては、例えば、2,2’−アゾビスイソブチロニトリル、2,2’−アゾビス−2,4−ジメチルバレロニトリル、2,2’−アゾビス−4−メトキシ−2,4−ジメチルバレロニトリルなどが挙げられる。
【0072】
また、特定(メタ)アクリル共重合体の製造に際しては、本発明の目的及び効果を損なわない範囲で、連鎖移動剤を必要に応じて使用してもよい。連鎖移動剤としては、例えば、シアノ酢酸;シアノ酢酸の炭素数1〜8のアルキルエステル化合物;ブロモ酢酸;ブロモ酢酸の炭素数1〜8のアルキルエステル化合物;アントラセン、フェナントレン、フルオレン、9−フェニルフルオレン等の芳香族化合物;p−ニトロアニリン、ニトロベンゼン、ジニトロベンゼン、p−ニトロ安息香酸、p−ニトロフェノール、p−ニトロトルエン等の芳香族ニトロ化合物;ベンゾキノン、2,3,5,6−テトラメチル−p−ベンゾキノン等のベンゾキノン誘導体;トリブチルボラン等のボラン誘導体;四臭化炭素、四塩化炭素、1,1,2,2−テトラブロモエタン、トリブロモエチレン、トリクロロエチレン、ブロモトリクロロメタン、トリブロモメタン、3−クロロ−1−プロペン等のハロゲン化炭化水素化合物;クロラール、フラルデヒド等のアルデヒド化合物:炭素数1〜18のアルキルメルカプタン化合物;チオフェノール、トルエンメルカプタン等の芳香族メルカプタン化合物;メルカプト酢酸、メルカプト酢酸の炭素数1〜10のアルキルエステル化合物;炭素数1〜12のヒドロキシアルキルメルカプタン化合物;ピネン、テルピノレン等のテルペン化合物;などが挙げられる。
【0073】
重合温度としては、一般に約30℃〜180℃の範囲である。
特定(メタ)アクリル共重合体の製造に際しては、重合反応で得られた重合物を精製する精製工程を設けてもよい。これにより、溶液重合法などで得られた重合物中に未反応の単量体が含まれる場合は、この単量体を除くことができる。精製工程としては通常用いられる精製方法から適宜選択することができる。例えば、メタノールなどによる再沈澱法で精製することが可能である。
【0074】
(その他の(メタ)アクリル共重合体)
本発明における粘着剤組成物は、上記の酸性基及び水酸基を有する特定(メタ)アクリル共重合体以外のその他の(メタ)アクリル共重合体を含んでいてもよい。粘着剤組成物がその他の(メタ)アクリル共重合体を含む場合、その含有率は、目的等に応じて適宜選択することができ、特定(メタ)アクリル共重合体100質量部に対して、2.0質量部以下であることが好ましく、1.5質量部以下であることがより好ましく、1.0質量部以下であることが更に好ましい。
【0075】
[反応性基
として水酸基を有するジメチルポリシロキサン化合物]
本発明における粘着剤組成物は、反応性基
として水酸基を有するジメチルポリシロキサン化合物(以下、「特定ポリシロキサン化合物」ともいう)の少なくとも1種を含有する。ジメチルポリシロキサン化合物が反応性基
として水酸基を有することで、これにより作製された粘着フィルムは被着体から容易に剥離することができ、且つ被着体の汚染が少なくなる。
【0076】
これは、特定ポリシロキサン化合物は粘着力を下げる効果があるので、特定ポリシロキサン化合物を含んで作製された粘着フィルムは、粘着力が低下し、被着体から容易に剥離することができると考えられる。
【0077】
特定ポリシロキサン化合物における反応性基
は、水酸基であ
る。特定ポリシロキサン化合物において、反応性基
としての水酸基を有する構造単位の含有数は100以下であることが好ましく、1〜80であることがより好ましい。
【0078】
特定ポリシロキサン化合物は、粘着力の調整しやすさと、被着体に対する汚染性の観点から、反応性基
として水酸基を有するポリエーテル変性ジメチルポリシロキサン化合物であることが好ましく、下記一般式(3)で表されるポリシロキサン化合物であることがより好ましい。
【0080】
一般式(3)中、pはジメチルシロキサン構造単位の繰り返し数であって0〜100の数を表す。qはポリオキシエチレン基を有するメチルプロピレンシロキサン構造単位の繰り返し数であって2〜100の数を表す。またaはエチレンオキシ構造単位の繰り返し数であって1〜100の数をそれぞれ表わす。ここで、一般式(3)で表される化合物が複数の化合物の集合体である場合、p、q及びaは化合物の集合体としての平均値であり、有理数である。
【0081】
ポリエチレンオキシ構造単位の繰り返し数aは1〜100の数であり、10〜100の数であることが好ましい。aが100以下であると粘着剤組成物を構成する他の成分との相溶性が向上し、粘着剤層の透明性が向上する傾向がある。
【0082】
またジメチルシロキサン構造単位の繰り返し数pは、0〜100の数であり、1〜80の数であることが好ましい。pが100以下であると粘着剤組成物を構成する他の成分との相溶性が向上し、粘着剤層の透明性が向上する傾向がある。
さらにメチルプロピレンシロキサン構造単位の繰り返し数qは、2〜100の数であり、2〜80の数であることが好ましい。qが100以下であると粘着剤組成物を構成する他の成分との相溶性が向上し、粘着剤層の透明性が向上する傾向がある。
【0083】
一般式(3)で表されるポリシロキサン化合物は分子内に、ジメチルシロキサン構造単位と、ポリオキシエチレン基を有するメチルプロピレンシロキサン構造単位とを有する。これらの構造単位は、それぞれブロック共重合体を構成していても、ランダム共重合体を構成していてもよい。
【0084】
前記一般式(3)で表される特定ポリシロキサン化合物の具体例としては、例えば、;「SF8428」、「FZ−2162」、「SH3773M」〔以上、東レ・ダウコーニング(株)製〕などを挙げることができる。
【0085】
一般式(3)で表されるポリシロキサン化合物は、上記のような市販品から選択されたものであっても、また、水素化ケイ素を有するジメチルポリシロキサン主鎖に対し、不飽和結合及びポリオキシエチレン基を有する有機化合物をヒドロシリル化反応によりグラフトさせることによって得ることもできる。
【0086】
粘着剤組成物は、特定ポリシロキサン化合物に加えて、反応性基
として水酸基を有しないポリシロキサン化合物を含んでいてもよい。ただし反応性基
として水酸基を有しないポリシロキサン化合物を添加する場合は、汚染性に影響がない程度の添加量に留めることが、汚染性を良好に保つ観点から好ましい。
反応性基
として水酸基を有しないポリシロキサン化合物としては、例えば、ポリエチレンオキシ基の末端がアルコキシ基、アシルオキシ基等であるポリシロキサン化合物等を挙げることができる。
【0087】
具体的には例えば、「FZ−77」、「FZ−2104」、「FZ−2110」、「FZ−2203」、「FZ−2207」、「FZ−2208」、「L−7001」、「L−7002」、「SH3749」、「SH8400」〔以上、東レ・ダウコーニング(株)製〕等を挙げることができる。
【0088】
粘着剤組成物が、反応性基
として水酸基を有しないポリシロキサン化合物を含む場合、その含有率はポリシロキサン化合物の総質量中に、0.05質量%以下であることが好ましく、0.03質量%以下であることがより好ましい。
【0089】
特定ポリシロキサン化合物の重量平均分子量については特に制限はなく、例えば、5,000以上20,000以下とすることができ、6,000以上15,000以下であることが好ましい。
【0090】
また特定ポリシロキサン化合物のHLB値については特に制限されないが、樹脂との相溶性、表面偏在性、及び粘着性の観点から、5以上16未満であることが好ましく、7以上15以下であることがより好ましい。
HLB値は、特定ポリシロキサン化合物(界面活性剤)の親水性と疎水性のバランスを示す尺度である。本発明において、HLB値は下記式1で算出されるグリフィン法の定義に従って求められるが、特定ポリシロキサン化合物が市販品の場合、そのカタログデータを優先して採用する。
式1 {(親水性基部分の式量の総和)/(界面活性剤の分子量)}×20
【0091】
特定ポリシロキサン化合物の含有量は、後述する架橋剤に対して質量比(特定ポリシロキサン化合物/架橋剤)で、1/100〜20/100であり、3/100〜15/100であることが好ましく、5/100〜15/100であることがより好ましく、5/100〜10/100であることが更に好ましい。特定ポリシロキサン化合物の含有量が架橋剤100質量部に対して1質量部未満であると、粘着力と被着体へのなじみ性(濡れ性)を両立できない。20質量部を超えると、架橋されずに残存するフリーの特定ポリシロキサン化合物が多くなり、被着体が汚染されやすくなる。
【0092】
本発明の粘着剤組成物中における、特定ポリシロキサン化合物の含有量は、特定(メタ)アクリル共重合体100質量部に対して、0.01質量部以上1質量部以下であることが好ましく、0.05質量部以上0.5質量部以下であることがより好ましく、0.05質量部以上0.4質量部以下であることが更に好ましく、0.05質量部以上0.3質量部以下であることが特に好ましい。
【0093】
特定ポリシロキサン化合物の含有量が、特定(メタ)アクリル共重合体100質量部に対して0.01質量部以上であることで、この粘着剤組成物から形成された粘着フィルムは被着体から剥離しやすくなる。また特定ポリシロキサン化合物の含有量が、特定(メタ)アクリル共重合体100質量部に対して1質量部以下であることで、粘着フィルムとしたときに被着体への汚染の発生が抑制され、また、アクリル共重合体との相溶性が低下して白濁が発生することを抑制することができる。
【0094】
[架橋剤]
本発明における粘着剤組成物は、架橋剤を含
む。架橋剤は、それぞれ1種単独で又は2種以上組み合わせて使用することができる。
【0095】
架橋剤
として、ポリイソシアネート化合物
を用いる。ポリイソシアネート化合物と、特定(メタ)アクリル共重合体と、特定ポリシロキサン化合物とが、それぞれ架橋反応することで、粘着性と、被着体に対する汚染性とがバランスよく向上する。
【0096】
ポリイソシアネート化合物としては、例えば、キシリレンジイソシアネート、ジフェニルメタンジイソシアネート、トリフェニルメタントリイソシアネート、トリレンジイソシアネート等の芳香族ポリイソシアネート化合物;例えば、ヘキサメチレンジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート、芳香族ポリイソシアネート化合物の水素添加物等の脂肪族又は脂環族ポリイソシアネート化合物;それらポリイソシアネート化合物の2量体もしくは3量体;これらポリイソシアネート化合物と、トリメチロールプロパンなどのポリオール化合物とのアダクト体などを挙げることができる。特定ポリシロキサン化合物との反応性の観点から、これらのポリイソシアネート化合物の中では、ヘキサメチレンジイソシアネート及びヘキサメチレンジイソシアネートの2量体、3量体並びにアダクト体からなる群より選ばれる少なくとも1種であることが好ましく、ヘキサメチレンジイソシアネートの3量体が特に好ましい。これらのポリイソシアネート化合物は、1種単独で又は2種類以上混合して使用することができる。
【0097】
ポリイソシアネート化合物は、例えば、「コロネートHX」、「コロネートHL−S」、「コロネート2234」「アクアネート200」、「アクアネート210」〔以上、日本ポリウレタン株式会社製〕、「デスモジュールN3300」、「デスモジュールN3400」〔以上、住友バイエルウレタン株式会社製〕、「デュラネートE−405−80T」、「デュラネート24A−100」、「デュラネートTSE−100」〔以上、旭化成工業株式会社製〕、「タケネートD−110N」、「タケネートD−120N」、「タケネートM−631N」「MT−オレスターNP1200」〔以上、三井武田ケミカル株式会社製〕などの商品名により市販されているものを好適に使用することができる。
【0098】
架橋剤は、特定(メタ)アクリル共重合体の官能基量に対する架橋剤の官能基量の当量比(架橋剤/(メタ)アクリル共重合体)が、0.1〜1.5となる量で用いることが好ましく、0.3〜1.0となる量で用いることがより好ましく、0.5〜0.8となる量で用いることが更に好ましい。前記上限値を超えると、粘着剤組成物が形成する粘着剤層のなじみ性(濡れ性)に劣る。
【0099】
本発明における粘着剤組成物は、架橋剤の他に、初期硬化速度を早くする観点から架橋触媒をさらに含むことが好ましい。架橋触媒としては、例えばジブチル錫ラウリレート、ジオクチル錫ラウリレート等の有機錫化合物、ジルコニウムジブトキシビス(エチルアセトアセテート)等の有機ジルコニウム化合物等を挙げることができる。これらの架橋触媒の中でも、特定ポリシロキサンとの反応性の観点から、有機錫化合物が好ましい。
【0100】
本発明における粘着剤組成物が架橋触媒を含む場合は、さらにキレート剤を含むことが好ましい。キレート剤として例えば、β−ジケトン類やβ−ケトエステル類等を挙げることができる。β−ジケトン類やβ−ケトエステル類としては例えば、アセチルアセトン、アセト酢酸メチル、アセト酢酸エチル、アセト酢酸−n−プロピル、アセト酢酸イソプロピル等を挙げることができる。これらのキレート剤のうち、粘着剤組成物のポットライフと反応速度のバランスが良好なことから、アセチルアセトンが好ましい。
【0101】
[その他の成分]
本発明における粘着剤組成物は、特定(メタ)アクリル共重合体、特定ポリシロキサン化合物及び架橋剤の他に、必要に応じて、耐候性安定剤、タッキファイヤー、可塑剤、軟化剤、剥離助剤、染料、顔料、無機充填剤、界面活性剤等を適宜含有することができる。
【0102】
<光学部材表面保護フィルム>
本発明の光学部材表面保護フィルムは、基材と、前記基材の上に設けられる本発明の粘着剤組成物に由来する粘着剤層と、を備える。
前記粘着剤層が、本発明の粘着剤組成物に由来するものであることにより、粘着性に優れ、及び被着体に対する汚染性が低下した粘着剤層を構成することができる。
【0103】
本発明の光学部材表面保護フィルムに用いられる基材は、前記基材上に粘着剤層が形成可能であれば特に制限されない。
基材は、透視による光学部材の検査及び管理の観点から、ポリエステル系樹脂、アセテート系樹脂、ポリエーテルサルホン系樹脂、ポリカーボネート系樹脂、ポリアミド系樹脂、ポリイミド系樹脂、ポリオレフィン系樹脂、アクリル系樹脂等からなるフィルムを挙げることができる。中でも、表面保護性能の観点から、ポリエステル系樹脂が好ましく、実用性を考慮すればポリエチレンテレフタレート樹脂が特に好ましい。
【0104】
基材の厚さは、一般には500μm以下とすることができ、好ましくは5μm〜300μm、さらに好ましくは10μm〜200μm程度の厚さを例示することができる。
【0105】
基材の片面又は両面には、剥離時の帯電防止を目的に、帯電防止層を設けてもよい。また基材の、粘着剤層を設ける側の表面には、基材と粘着剤との密着性を向上させるためにコロナ放電処理等を施してもよい。
【0106】
基材上には、本発明の粘着剤組成物に由来する粘着剤層が設けられている。
粘着剤層の形成方法としては、例えば、粘着剤組成物を、そのままで又は必要に応じて適宜の溶媒で希釈し、これを基材に塗布した後、乾燥して溶媒を除去する方法を採用することができる。
また、先ずシリコーン樹脂等により離型処理が施された紙やポリエステルフィルム等の適宜のフィルムからなる剥離シート上に粘着剤組成物を塗布し、加熱乾燥して粘着剤層を形成し、次に前記剥離シートの粘着剤層側を基材に圧接して前記粘着剤層を前記保護フィルムに転写する方法を採用することもできる。
【0107】
本発明における粘着剤層は、架橋剤によって、特定(メタ)アクリル共重合体及び特定ポリシロキサン化合物が架橋されてなる粘着剤層であることが好ましい。これにより粘着剤層の粘着性と被着体に対する汚染性とがより向上する。
特定(メタ)アクリル共重合体及び特定ポリシロキサン化合物を架橋剤で架橋する条件は特に制限されない。
【0108】
基材上に形成される粘着剤層の厚さは、光学部材表面保護フィルムに求められる粘着力、光学部材の表面粗さ等に応じて適宜設定することができ、一般に1μm〜100μm、好ましくは5μm〜50μm、さらに好ましくは15μm〜30μm程度の厚さを例示することができる。
【0109】
粘着剤層の粘着力が高くなると大面積における高速剥離時の作業性が低下するので、剥離速度30m/分(高速剥離)における粘着力(剥離力)が1.0N/25mm未満であることが好ましく、0.6N/25mm未満であることがより好ましい。
【0110】
光学部材表面保護フィルムは、光学部材の表面に積層されて、その光学部材の表面が汚染されたり損傷したりしないよう保護し、光学部材が液晶表示板などに加工される際には、保護フィルムが光学部材に積層された状態のまま、打抜加工、検査、輸送、液晶表示板の組立などの各工程に供され、必要に応じて、オートクレーブ処理、高温エージング処理などの加熱加圧処理が施され、表面保護が不要となった段階で光学部材から剥離除去される。
【実施例】
【0111】
以下、本発明を実施例により具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。なお、特に断りのない限り、「部」及び「%」は質量基準である。
【0112】
(製造例1)
−(メタ)アクリル共重合体Aの製造−
温度計、攪拌機、窒素導入管及び還流冷却器を備えた反応器内に、酢酸エチル20部、トルエン10部を入れ、また別の容器に、単量体としてブチルアクリレート(BA)15部、2−エチルヘキシルアクリレート(2EHA)81.995部、水酸基を有する単量体として4−ヒドロキシブチルアクリレート(4HBA)3部、酸性基を有する単量体としてM−5300(アロニックスM−5300、一般式(1a)で表される単量体、東亞合成株式会社製)0.005部を入れ、混合して単量体混合物とし、その中の25質量%を反応容器中に加え、次いで前記反応容器の空気を窒素ガスで置換した後、重合開始剤としてアゾビスブチロニトリル(以下AIBNと言う)0.02部を添加して、攪拌下に窒素雰囲気中で前記反応容器内の混合物温度を70℃に昇温させて初期反応を開始させた。初期反応がほぼ終了した後、残りの単量体混合物75質量%、並びに酢酸エチル20部、トルエン10部及びAIBN0.2部の混合物をそれぞれ逐次添加しながら約2時間反応させ、引き続いてさらに2時間反応させた。その後、トルエン25部にAIBN0.25部を溶解させた溶液を1時間かけて滴下し、さらに1.5時間反応させた。反応終了後、反応混合物をトルエン100部で希釈して、固形分35質量%の(メタ)アクリル共重合体A溶液を得た。
(メタ)アクリル共重合体A(表中では「樹脂A」と表記)の酸価は0.01であり、重量平均分子量(Mw)は62万であり、分散度(Mw/Mn)は11であった。
【0113】
(製造例2)
−(メタ)アクリル共重合体Bの製造−
製造例1において、M−5300を用いずに、使用した単量体の配合量を表1のように変更したこと以外は製造例1と同様にして、(メタ)アクリル共重合体B溶液を製造した。尚、表1で示した単量体の配合量は、質量%を表す。(メタ)アクリル共重合体B(表中では「樹脂B」と表記)の酸価は0であり、重量平均分子量(Mw)は61万であり、分散度(Mw/Mn)は11であった。
【0114】
(製造例3)
−(メタ)アクリル共重合体C〜G、J、K、N〜Pの製造−
製造例1において、配合量を下記表1のように変更したこと以外は製造例1と同様にして、(メタ)アクリル共重合体C〜G、J、K、N〜P溶液を製造した。(メタ)アクリル共重合体C〜G、J、K、N〜P(表中では「樹脂C」〜「樹脂G」、「樹脂J」「樹脂K」「樹脂N」〜「樹脂P」と表記)の酸価、重量平均分子量(Mw)、分散度(Mw/Mn)を表1に示す。
【0115】
(製造例4)
−(メタ)アクリル共重合体Hの製造−
製造例1において、M−5300に変えて、アクリル酸(AA)を用い、その配合量を下記表1のように変更したこと以外は製造例1と同様にして(メタ)アクリル共重合体H溶液を製造した。(メタ)アクリル共重合体H(表中では「樹脂H」と表記)の酸価は0.1であり、重量平均分子量(Mw)は61万であり、分散度(Mw/Mn)は11であった。
【0116】
(製造例5)
−(メタ)アクリル共重合体Iの製造−
製造例1において、4−ヒドロキシブチルアクリレート(4HBA)を用いずに、使用した単量体の配合量を表1のように変更したこと以外は製造例1と同様にして、(メタ)アクリル共重合体I溶液を製造した。(メタ)アクリル共重合体I(表中では「樹脂I」と表記)の酸価は0.1であり、重量平均分子量(Mw)は58万であり、分散度(Mw/Mn)は10であった。
【0117】
(製造例6)
−(メタ)アクリル共重合体Lの製造−
製造例1において、4−ヒドロキシブチルアクリレート(4HBA)に変えて、2−ヒドロキシエチルアクリレート(2HEA)を用い、使用した単量体の配合量を表1のように変更したこと以外は製造例1と同様にして、(メタ)アクリル共重合体L溶液を製造した。(メタ)アクリル共重合体L(表中では「樹脂L」と表記)の酸価は0.1であり、重量平均分子量(Mw)は60万であり、分散度(Mw/Mn)は11であった。
【0118】
(製造例7)
−(メタ)アクリル共重合体Mの製造−
製造例1において、ブチルアクリレート(BA)を用いずに、使用した単量体の配合量を表1のように変更したこと以外は製造例1と同様にして、(メタ)アクリル共重合体M溶液を製造した。(メタ)アクリル共重合体M(表中では「樹脂M」と表記)の酸価は0.1であり、重量平均分子量(Mw)は50万であり、分散度(Mw/Mn)は9であった。
【0119】
【表1】
【0120】
表1における略号は以下の通りである。
(樹脂)
・BA:n−ブチルアクリレート
・2EHA:2−エチルヘキシルアクリレート
・4HBA:4−ヒドロキシブチルアクリレート
・2HEA:2−ヒドロキシエチルアクリレート
・M−5300:東亞合成(株)製、アロニックスM−5300、ω−カルボキシ−ポリカプロラクトン(n≒2)モノアクリレート
・AA:アクリル酸
【0121】
<実施例1>
攪拌羽根、温度計、冷却器、滴下ロートを備えた四つ口フラスコに、上記で得られた(メタ)アクリル共重合体A溶液を固形分換算で100部、特定ポリシロキサン化合物としてSH−3773M(東レ・ダウコーニング株式会社製、側鎖ポリエーテル変性シリコーン、ポリエーテル末端が水酸基)を0.3部、架橋触媒としてジオクチル錫ラウリレート〔商品名;アデカスタブOT−1;ADEKA(株)製〕をアセチルアセトンで300倍に希釈した架橋触媒溶液を固形分換算で0.02部をそれぞれ仕込み、フラスコ内の液温を25℃に保って4.0時間混合撹拌を行い、(メタ)アクリル共重合体混合溶液を得た。
これに、架橋剤であるポリイソシアネート化合物として商品名:デスモジュールN3300〔HMDI3量体型、固形分100質量%;住化バイエルウレタン株式会社製〕3部を添加し、十分に攪拌して、粘着剤組成物を得た。
得られた粘着剤組成物を用いて、以下の試験用フィルムの作製方法に従って試験用フィルムを作製した。粘着剤組成物または試験用フィルムを用いて各種物性試験を行った。得られた結果を表2に示した。
【0122】
(1)試験用フィルムの作製
ポリエチレンテレフタレート(PET)フィルム〔商品名;テトロンG2;テイジンテトロンフィルム(株)製〕上に、乾燥後の塗工量が20g/m
2となるように、粘着剤組成物を塗布し、100℃で60秒間熱風循環式乾燥機にて乾燥して粘着剤層を形成した後、シリコーン系離型剤で表面処理されたポリエチレンテレフタレート(PET)フィルム〔商品名;フィルムバイナ 100E−0010NO23;藤森工業(株)製〕に粘着剤層面が接するように載置し、加圧ニップロールを通して圧着して貼り合わせた後、23℃、50%RHの環境下で5日間養生を行って試験用フィルムを得た。
【0123】
(2)汚染性の評価(気泡跡)
ガラス基板(松浪硝子工業(株)製、青板ガラス)の表裏に、偏光板を偏光軸がクロスニコル状態になるようにアクリル系粘着剤で貼りあわせ、偏光板付き基板とした。なお、使用するアクリル系粘着剤は、試験中に剥がれ等を生じず、且つ、ある程度の透明性が得られていればどのような粘着剤でも構わない。
偏光板付き基板の偏光板に、評価対象となる粘着剤組成物によって保護フィルムを貼合した。5〜10秒後に保護フィルムを被着体から剥離し、直後に気泡が入るように再度貼合した。その後、60℃の乾燥機中に3時間放置した。さらに25℃、50%RHの環境下に30分放置した後、保護フィルムを剥離し、キセノンランプ(ポラリオン製、NP1型)下で目視にて偏光板表面の気泡跡を確認し、下記評価基準に従って汚染性を評価した。
なお、汚染性の評価は、アンチグレア処理された偏光板(AG板)〔商品名;SQ−1852AP−AG6;住友化学工業(株)製〕と、アンチグレア処理されていない偏光板(グレア板)〔商品名;SRDB31E;住友化学工業(株)製〕の2種類の偏光板を用いて行った。
【0124】
〜評価基準〜
AA:気泡跡が確認できない。
A:極薄く気泡跡が残るが実用上問題はないレベル。
B:気泡跡が確認でき、実用化できないレベル。
C:気泡跡がはっきり確認できる。または、粘着剤が転着したので、実用化できないレベル。
【0125】
(3)剥離性の評価
−高速剥離時の粘着力−
前記(1)により作製した試験用フィルムを25mm×150mmにカットした後、このフィルム片から離型紙を剥がし、卓上ラミネート機を用いて、アンチグレア処理された偏光板〔商品名;SQ−1852AP−AG6;住友化学工業(株)製〕に圧着して試験サンプルとした。
この試験サンプルを23℃、50%RHの環境下で24時間放置(コンディショニング処理)した。その後、偏光板から表面保護フィルムを粘着層ごと長辺(150mm)方向に、剥離角度180゜、剥離速度30m/分の条件で高速剥離した時の粘着力を測定した。下記の評価基準に従って、高速剥離時の粘着力をもとに剥離性を評価した。
【0126】
〜評価基準〜
A:粘着力が0.6N/25mm以下であった。
B:粘着力が0.6N/25mmを超えて、1.0N/25mm以下であり、大画面モニターに適応できないレベル
C:粘着力が1.0N/25mmを越えており、中画面以上のモニターに適応できないレベル。
【0127】
(4)初期硬化性の評価
−硬化初期の応力値の測定−
剥離処理されたポリエチレンテレフタレート(PET)フィルム〔商品名;フィルムバイナ 100E−0010NO23;藤森工業(株)製〕の上に、乾燥後の塗工量が20g/m
2となるように、粘着剤組成物を塗布し、塗布から5分後の粘着剤組成物の「応力/ひずみ曲線」(SS)を測定し、ひずみ100%時の応力値を測定した。
【0128】
下記の評価基準に従って、応力値の測定値をもとに初期硬化性を評価した。
【0129】
〜評価基準〜
A:0.01N/mm
2以上であった。
B:0.01N/mm
2未満であった。
【0130】
<実施例2〜実施例22、比較例1〜7>
実施例1において、粘着剤組成物の調製に用いた各成分を表2に示したようにそれぞれ変更したこと以外は、実施例1と同様にして粘着剤組成物を作製し、同様にして各種物性試験を行った。得られた結果を表2に示した。
【0131】
【表2】
【0132】
表2における略号は以下の通りである。
(ポリシロキサン)
・シロキサンA:SH3773M〔東レ・ダウコーニング(株)製、側鎖ポリエーテル変性シリコーン、一般式(3)で表されるポリシロキサン化合物、末端に水酸基を有する〕
・シロキサンB:SF8427〔東レ・ダウコーニング(株)製、両末端ポリエーテル変性シリコーン、末端に水酸基を有する〕
・シロキサンC:SH8400〔東レ・ダウコーニング(株)製、側鎖ポリエーテル変性シリコーン、末端にアセトキシ基を有する〕
【0133】
(架橋剤)
・架橋剤A:N3300:デスモジュールN3300〔ヘキサメチレンジイソシアネート3量体、住化バイエルウレタン(株)製〕
・架橋剤B:MHG−80B(旭化成ケミカルズ社製、HMDI系架橋剤)
【0134】
表2に示される通り、比較例1では、酸価が0の(メタ)アクリル共重合体を用いているため、汚染性に劣っていることが分かる。比較例2では、酸価が1.0を超える(メタ)アクリル共重合体を用いているため、初期硬化性に劣ることが分かる。比較例3では、水酸基を有しない(メタ)アクリル共重合体を用いているため、汚染性に劣り、高速剥離時の粘着力も高くなってしまい剥離性に劣ることが分かる。さらに比較例3では、初期硬化速度も遅い。比較例4では、シロキサン化合物を含有しないため、ジメチルポリシロキサン化合物に由来する汚染物が低減することから汚染性に優れているものの、高速剥離時の粘着力が高くなってしまい剥離性に劣ることが分かる。比較例5では、反応性基
として水酸基を有しないシロキサン化合物を用いているため、汚染性に劣ることが分かる。比較例6では、架橋剤に対する特定ポリシロキサン化合物の質量比が1/100よりも低いことから、架橋剤の量が多すぎて、高速剥離時の粘着力が高くなってしまうことが分かる。比較例7では、架橋剤に対する特定ポリシロキサン化合物の質量比が20/100を超えていることから、架橋剤の量が少なすぎて、汚染性が低下していることが分かる。
【0135】
これに対して、本発明の粘着剤組成物から形成されたフィルムは、高速剥離時の粘着力が低いことから容易に剥離することができ、且つ被着体への汚染が少ないことが分かる。また、本発明の粘着剤組成物は、初期硬化性に優れることが分かる。