(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6246032
(24)【登録日】2017年11月24日
(45)【発行日】2017年12月13日
(54)【発明の名称】アンテナアレイの製造方法
(51)【国際特許分類】
H01P 11/00 20060101AFI20171204BHJP
H01Q 13/22 20060101ALI20171204BHJP
H04B 5/00 20060101ALI20171204BHJP
H01B 11/18 20060101ALI20171204BHJP
【FI】
H01P11/00 103
H01Q13/22
H04B5/00 A
H01B11/18 A
【請求項の数】8
【全頁数】10
(21)【出願番号】特願2014-50963(P2014-50963)
(22)【出願日】2014年3月14日
(65)【公開番号】特開2015-177272(P2015-177272A)
(43)【公開日】2015年10月5日
【審査請求日】2016年11月25日
【国等の委託研究の成果に係る記載事項】(出願人による申告)平成25年度、総務省、「漏洩同軸ケーブルによる高密度配置リニアセルMIMOシステムの研究開発」に係る委託研究、産業技術力強化法第19条の適用を受ける特許出願
(73)【特許権者】
【識別番号】000005186
【氏名又は名称】株式会社フジクラ
(74)【代理人】
【識別番号】100117514
【弁理士】
【氏名又は名称】佐々木 敦朗
(72)【発明者】
【氏名】鈴木 文生
(72)【発明者】
【氏名】丹羽 敦彦
【審査官】
佐藤 当秀
(56)【参考文献】
【文献】
特開2010−183361(JP,A)
【文献】
実開昭58−104074(JP,U)
【文献】
特開平02−060003(JP,A)
【文献】
特開2002−295421(JP,A)
【文献】
特開2005−209473(JP,A)
【文献】
特公昭30−005479(JP,B1)
【文献】
特開2003−229716(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01B 11/18
H01P 3/06
H01P 11/00
H01Q 13/22
H04B 5/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
それぞれが、信号が伝搬する線状の中心導体、前記中心導体を覆う絶縁体、前記絶縁体を覆い、前記中心導体の軸方向に沿って一定のピッチで複数のスロットが配列された外部導体、前記外部導体を覆う第1シースを有し、前記軸方向に垂直な断面において、前記中心導体から前記スロットに向かう方向の直交方向に前記第1シースを互いに接触させて連結された複数の漏洩同軸ケーブルを備え、
隣り合う前記漏洩同軸ケーブルが接触する前記第1シースの接触面の少なくとも一部が平坦であり、前記第1シースの接触面を熱融着または接着して連結し、連結された前記複数の漏洩同軸ケーブル全体の外周を第2シースで覆わないことを特徴とするアンテナアレイの製造方法。
【請求項2】
前記複数の漏洩同軸ケーブルのそれぞれは、前記複数のスロットの長手方向が前記軸方向に対して垂直な角度で配列されることを特徴とする請求項1に記載のアンテナアレイの製造方法。
【請求項3】
前記複数のスロットのそれぞれの周方向の長さが、前記外部導体の全周長の13%〜75%の範囲であることを特徴とする請求項2に記載のアンテナアレイの製造方法。
【請求項4】
前記第1シースの外形が、矩形であることを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載のアンテナアレイの製造方法。
【請求項5】
前記第1シースの矩形の角部に傾斜面を設け、前記第1シースの接触面を互いに接触させた際に生じる隙間から熱融着または接着することを特徴とする請求項4に記載のアンテナアレイの製造方法。
【請求項6】
前記隣り合う漏洩同軸ケーブルの一方の前記接触面に凸部が設けられ、他方の前記接触面に前記凸部に嵌合する凹部が設けられることを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載のアンテナアレイの製造方法。
【請求項7】
前記隣り合う漏洩同軸ケーブルの一方の前記接触面に第1段差部が設けられ、他方の前記接触面に前記第1段差部に重なり合う第2段差部が設けられることを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載のアンテナアレイの製造方法。
【請求項8】
前記第1シースが、透明樹脂であることを特徴とする請求項1〜5のいずれか1項に記載のアンテナアレイの製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、漏洩同軸ケーブルを用いたアンテナアレイに関する。
【背景技術】
【0002】
漏洩同軸ケーブル(LCX)は、通常の同軸ケーブルの外部導体に複数のスロットが設けられたものである。詳述すると、LCXは、高周波信号が伝播する線状の中心導体と、中心導体を覆う絶縁体と、絶縁体を覆い、複数のスロット(開口)が設けられた外部導体と、外部導体を覆うシースとから構成される。LCXは、中心導体の周囲に生じる電磁波信号を、外部導体のスロットを通じて放射したり、取り込んだりすることができる。即ち、LCXはケーブル型アンテナであり、特殊な細長い送受信アンテナと言える。
【0003】
LCXは、通信領域が細長い環境におけるアンテナとして有効である。特に、曲がりくねったトンネル内や金属体が多数存在する場所では、電磁波の不感地帯が生じやすい。このような場所では、一般のアンテナを用いると、多数のアンテナを設置しなければならない。しかし、LCXではそれぞれのスロットがアンテナとして働くので、LCXに沿って多数のアンテナが配置されることになる。したがって、1本のLCXを布設するだけで、細長い通信領域でも電磁波不感地帯が発生し難くなる。布設工事も、一般のアンテナを個別に取り付けて電気配線する必要がなく、LCXを延線するだけでよく非常に簡単に実施できる。
【0004】
近年、複数のアンテナを使用するMIMO(Multiple−Input and Multiple−Output)通信システムにおいて、複数のLCXを平行に配置してアンテナとして使用する結束漏洩伝送路が提案されている(特許文献1参照)。また、LCXは指向性を有することが知られている(非特許文献1参照)。LCXの指向性については、LCXの延伸方向に垂直に切った平面内において、LCXの軸からスロットに向かう方向に放射波が強く放射されることがわかっている。したがって、特許文献1に記載の結束漏洩伝送路では、各LCXのスロットが、LCXの延伸方向に沿って直線状に配置されており、しかも全てのスロットの開口する方向が一定であることが要求される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2011−199760号公報
【非特許文献】
【0006】
【非特許文献1】岸本俊彦、佐々木伸著「LCX通信システム」初版、電子通信学会、コロナ社出版、昭和57年8月20日出版(
図2‐13)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
MIMO通信システムのアンテナとして利用される結束漏洩伝送路は、良好なアンテナ特性を実現するために、各LCXのスロット向きが予め決められた方向に揃って形成されていなければならない。結束漏洩伝送路は、一般的には、巻取ドラムから供給される個々のLCXを集合させ、一括して結束することで製造される。しかし、LCXのような線条体は、ケーブルの軸を中心として回転する方向に捻じれやすいため、結束する際には、LCXのスロットが所定の向きとなるようにLCXの捻じれを補正する必要があった。そのため、スロットの向きを補正するための工程やケーブル回転装置が必要となり、効率よく結束漏洩伝送路を製造することが困難であった。
【0008】
上述の問題点を鑑み、本発明は、各々のLCXのスロットの向きを簡単に精度よく揃えることが可能である複数のLCXを用いたアンテナアレイを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明の一態様によれば、それぞれが、信号が伝搬する線状の中心導体、中心導体を覆う絶縁体、絶縁体を覆い、中心導体の軸方向に沿って一定のピッチで複数のスロットが配列された外部導体、外部導体を覆う第1シースを有し、軸方向に垂直な断面において、中心導体からスロットに向かう方向の直交方向に第1シースを互いに接触させて連結された複数の漏洩同軸ケーブルと、連結された複数の漏洩同軸ケーブル全体の外周を覆う第2シースとを備え、隣り合う漏洩同軸ケーブルが接触する第1シースの接触面の少なくとも一部が平坦であるアンテナアレイが提供される。
【0010】
本発明の一態様において、漏洩同軸ケーブルの複数のスロットの長手方向が軸方向に対して垂直な角度で配列されていることが望ましい。また、複数のスロットのそれぞれの周方向の長さが、外部導体の全周長の13%〜75%の範囲であることが望ましい。第1シースの外形は、矩形でもよい。また、隣り合う漏洩同軸ケーブルの一方の接触面に凸部が設けられ、他方の接触面に凸部に嵌合する凹部が設けられてもよく、あるいは、隣り合う漏洩同軸ケーブルの一方の接触面に第1段差部が設けられ、他方の接触面に第1段差部に重なり合う第2段差部が設けられてもよい。更に、第1シースが、透明樹脂であってもよい。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、各々のLCXのスロットの向きを簡単に精度よく揃えることが可能である複数のLCXを用いたアンテナアレイを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【
図1】本発明の実施の形態に係るアンテナアレイの一例を示す概略図である。
【
図2】
図1に示したアンテナアレイのA‐A断面を示す概略図である。
【
図3】本発明の実施の形態に係るアンテナアレイに用いるLCXの一例を示す概略図である。
【
図4】
図3に示したLCXのB‐B断面を示す概略図である。
【
図5】アンテナアレイの指向性を測定する測定系の一例を示す側面概略図である。
【
図6】
図5に示したアンテナアレイの結合損失の測定結果の一例を示す図である。
【
図7】LCXのスロット長に対するFB比の測定結果の一例を示す図である。
【
図8】本発明の実施の形態に係るアンテナアレイの他の例を示す概略図である。
【
図9】本発明の実施の形態に係るアンテナアレイに用いるLCXの他の例を示す断面概略図(その1)である。
【
図10】本発明の実施の形態に係るアンテナアレイに用いるLCXの他の例を示す断面概略図(その2)である。
【
図11】本発明の実施の形態に係るアンテナアレイに用いるLCXの他の例を示す断面概略図(その3)である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下図面を参照して、本発明の実施の形態について説明する。以下の図面の記載において、同一または類似の部分には同一または類似の符号が付してある。但し、図面は模式的なものであり、厚みと平面寸法との関係、各層の厚みの比率等は現実のものとは異なることに留意すべきである。したがって、具体的な厚みや寸法は以下の説明を参酌して判断すべきものである。また図面相互間においても互いの寸法の関係や比率が異なる部分が含まれていることは勿論である。
【0014】
又、以下に示す本発明の実施の形態は、本発明の技術的思想を具体化するための装置や方法を例示するものであって、本発明の技術的思想は、構成部品の材質、形状、構造、配置等を下記のものに特定するものでない。本発明の技術的思想は、特許請求の範囲に記載された技術的範囲内において、種々の変更を加えることができる。
【0015】
本発明の実施の形態に係るアンテナアレイ1は、MIMO通信システムのアンテナに用いることが可能で、
図1及び
図2に示すように、中心導体3、絶縁体5、外部導体7、及び第1シース8を有する複数のLCX2と、複数のLCX2全体の外周を覆う第2シース9とを備える。LCX2の外部導体7は、中心導体3の軸方向に沿って配列された複数のスロット10を有する。複数のLCX2は、軸方向に垂直な断面において、中心導体3からスロット10に向かう方向の直交方向に第1シース8を互いに接触させて連結される。LCX2からの放射波Rは、中心導体3からスロット10に向かう方向(以下において、スロット方向と称す。)に強く放射される。
【0016】
LCX2の中心導体3は、
図3及び
図4に示すように、一端から他端の方向(z軸方向)に延伸する線条導体であり、給電装置から高周波信号が供給される。絶縁体5は、中心導体3を覆うように設けられる。外部導体7は、絶縁体5を覆うように設けられる。外部導体7には、LCX2の軸方向に沿って複数のスロット10が一定のピッチPで設けられる。スロット10は、外部導体7をエッチング等で除去した角丸長方形状の開口である。角丸長方形状スロットの長手方向とz軸方向とのなす角度γは、90度であり、このようなスロットは垂直スロットと呼ばれる。第1シース8は、外部導体7の外周を覆うように設けられており、LCX2の軸方向に垂直な断面形状は、矩形状である。
図4に示すように、LCX2の第1シース8は、スロット方向の直交方向に垂直で互いに対向する平坦な接触面12a、12bを有する。
【0017】
例えば、LCX2には、直径2mmの銅線製の中心導体3、比誘電率εrが1.5で外径5mmの発泡ポリエチレン製の絶縁体5、及び厚さ0.01mmの銅箔製の外部導体7が用いられる。LCX2の特性インピーダンスは、例えば50Ωである。スロット10は、周方向の長さ(スロット長)5mm、幅2mm、ピッチPは37mmで、z軸方向に対する角度γは90度である。また、シース9は、中心導体3からスロット10に向かう方向の幅、及びその直交方向の長さが10mm×20mmである。
【0018】
実施の形態に係るLCX2においては、接触面12a、12bは、共にスロット方向の直交方向に垂直な平坦面である。例えば、予め、
図3及び
図4に示したLCX2を複数本準備し、その後、各LCX2のそれぞれの接触面12aと、隣り合うLCX2の接触面12bとを接触させ固定することにより、複数のLCX2の各スロット方向を、容易に平行に揃えることができる。そして、シース押出装置により一括して第2シース9を成形すると、複数のLCX2のそれぞれのスロット10の向きが精度よく揃ったアンテナアレイ1を実現することができる。
【0019】
実施の形態に係るアンテナアレイ1について、
図5に示した測定系を用いて指向性の測定を行った。この測定には、
図2に示した4本のLCX2(左から順に、LCX2−1〜LCX2−4とする)を集合させたアンテナアレイ1を用いた。
図5に示すように、回転装置30の上に、長さが、例えば1.5mのアンテナアレイ1を垂直に設置した。発信機16からアンテナアレイ1のLCX2−1の給電端にアプローチケーブル18を介して、入力電力Pin、周波数が5.2GHzの信号を供給した。供給した信号は、LCX2−1から放射される。LCX2−1から放射された放射波は、アンテナアレイ1からスロット方向に距離d、例えば1mで離間して配置された半波長標準ダイポールアンテナなどの受信アンテナ20で受信した。受信アンテナ20は、汎用同軸ケーブルなどのアプローチケーブル24を介して、放射波の受信電力Poutを検出する受信機22に接続されている。LCX2−1からの放射波は、LCX2−1の軸方向に平行なEz偏波である。したがって、LCX2−1からの放射波を受信するために、受信アンテナ20のアンテナ素子をLCX2−1のz軸方向に向けた。受信アンテナ20は、回転装置30の上面(アンテナアレイ1の設置面)からの高さhが約1.0mの位置に配置した。そのほか、LCX2−2、LCX2−3、LCX2−4、についても、同様な手法で指向性の測定を行った。
【0020】
各LCX2について、例えば、スロット方向を0°として、アンテナアレイ1を回転装置30によりアンテナアレイ1を軸として360°回転させ、アンテナアレイ1を中心とした周辺空間の結合損失Lcを測定した。放射波の強度を表す結合損失Lcは、次式で計算される。結合損失Lcが小さいほど放射波の強度は強くなる。
Lc = −10log(Pout/Pin) (dB) ・・・(1)
図6に、各LCX2ごとの、アンテナアレイ1を中心とした周辺空間の結合損失Lcの測定結果を示す。なお、LCX2−1〜LCX2−4のそれぞれの測定結果が、
図6に示したグラフ(2−1)〜(2−4)に対応している。
図6の測定結果(2−1)〜(2−2)に示すように、各LCX2の結合損失Lcはスロット方向(0°または0°付近)における値が最小である。つまり、放射波の強度はスロット方向(0°または0°付近)に強いことがわかる。スロット方向の放射波強度と、スロット方向とは逆の方向(スロット方向に対して180°±60°の範囲)での最大放射波強度との比であるFB比は、約6dBである。FB比が大きいほど指向性は強い。
【0021】
上述の説明において、実施の形態に係るLCX2として、垂直スロットLCXを用いているが、スロットの長手方向をz軸に対してジグザグに傾斜させたジグザグスロットLCXを用いてもよい。ジグザグスロットLCXでは、電界がスロットの一端から他端に向かって発生する。そのため、電界がLCXを囲むように形成されるので、スロットの逆側にも放射が比較的強く存在する。他方、垂直スロットLCXでは、磁界が絶縁体部分からスロットを通過して発生する。そのため、スロットの逆側では、磁界が逆向きに形成され打ち消しあい、スロットの逆側への放射は弱まる。
【0022】
例えば、スロット長を5mmとした場合、ジグザグスロットLCXのFB比は、約1dBである。垂直スロットを用いたLCX2では、上記のように約6dBである。このように、実施の形態に係るアンテナアレイ1に用いる複数のLCX2として垂直スロットLCXを用いることにより、スロット方向とは逆の方向への放射を抑制することができ、スロット10からの放射の指向性を強くすることが可能となる。他方、アンテナアレイ1として強い指向性を要求しないのであれば、複数のLCX2としてジグザグスロットLCXを用いてもよい。
【0023】
なお、実施の形態に係るLCXは、上述したジグザグスロットや垂直スロットの他に、スロット長手方向がz軸に対して一方向に傾斜させた斜めスロットであってもよい。
LCX2のスロット10のスロット長を変化させて、
図5に示した測定系を用いて指向性の測定を行った。スロット長は、2.5mm、5mm、7.5mm、10mm、及び12.5mmとし、測定周波数は、2.4GHz及び5.2GHzとした。各スロット長のLCX2毎のFB比の測定結果を、
図7に示す。
図7においては、測定周波数が2.4GHzの場合を実線で、5.2GHzの場合を破線で示す。
図7に示すように、スロット長が短くなるほど、FB比は増加し指向性が強くなることがわかる。また、測定周波数5.2GHzにおけるFB比の方が、2.4GHzの時よりも大きく指向が強い。
【0024】
FB比が0の場合、指向性はない。したがって、指向性を持たせるためには、FB比を、例えば1dB(1.3倍)以上、好ましくは2dB(1.6倍)以上、より好ましくは3dB(2倍)以上とすることが望ましい。即ち、スロット長としては、12mm以下、好ましくは10.5mm以下、より好ましくは9mm以下とする必要がある。
【0025】
また、経験的にスロット長が2mm未満の場合は、指向性は強くできるが放射強度が弱くなる。そのため、スロット長が短いLCXをアンテナとして用いるためには、スロットの数を増加しなければならない。しかし、スロットの数が増えると、LCXを捻じったり屈曲したりした場合に、スロットを起点に外部導体が破損しやすくなる。したがって、LCXの機械的強度を満足させるためには、スロット長を2mm以上、好ましくは3mm以上、より好ましくは4mm以上とする必要がある。
【0026】
したがって、指向性及び機械的強度を満足させるためには、例えば、スロット長を2mm〜12mmの範囲、好ましくは3mm〜10.5mmの範囲、より好ましくは4mm〜9mmの範囲とすることが望ましい。また、外部導体の全周長は約16mmである。したがって、外部導体の全周長に対するスロット長の比率を、13%〜75%の範囲、好ましくは19%〜66%の範囲、より好ましくは25%〜56%の範囲とすることが望ましい。
【0027】
なお、上述の説明において、
図2に示したように、複数のLCX2は第2シース9で一括して覆われている。しかし、
図8に示すように、第2シース9を用いずに、複数のLCX2を配列した構造であってもよい。この場合、実際の使用にあたってLCX2それぞれの配列がずれることを防止するために、隣り合うLCX2との接触面を熱融着すること、あるいは、接着剤や粘着テープなどで接着することが望ましい。
【0028】
また、LCX2の第1シース8は、対向する接触面12a、12bの全体が平坦な形状として説明したが、接触面12a、12bの形状は限定されない。例えば、
図9に示すように、隣り合うLCX2の一方の接触面12aに凸部13aを設け、他方の接触面12bに凸部13aに嵌合する凹部13bを設けた形状であってもよい。接触面12a、12bは、凸部13a及び凹部13b以外は平坦な面である。したがって、凸部13aと凹部13bを嵌合して平坦な接触面12a、12bを接触させることにより、複数のLCX2のスロット方向を簡単に精度よく合わせることができる。
【0029】
あるいは、
図10に示すように、隣り合うLCX2の一方の接触面12aに第1段差部14aを設け、他方の接触面12bに第1段差部14aに重なり合う第2段差部14bを設けた形状であってもよい。第1段差部14aと第2段差部14bを重ね合わせて平坦な接触面12a、12bを接触させることにより、複数のLCX2のスロット方向を簡単に精度よく合わせることができる。
【0030】
更に、LCX2の第1シース8を矩形状としたが、第1シース8の形状は限定されない。例えば、
図11に示すように、矩形の角部に傾斜面15a、15bを設けた形状であってもよい。接触面12a、12bを互いに接触させた際に生じる傾斜面15aと傾斜面15bの間隙を熱風や高温体で加熱して第1シース8の接触部を融着することができる。あるいは、傾斜面15aと傾斜面15bの間隙に接着剤を注入して接着してもよい。
【0031】
また、通常のLCXにおいては、シースに用いられる材料は不透明である。実施の形態において、第1シースとして不透明な樹脂を用いると、スロット方向の確認を目視だけで行うことは困難となる。このような問題に対し、例えば、第1シースとして、スロット10が確認できる程度の透明度を有する樹脂を用いると、アンテナアレイ1の押し出し成形に際して、スロット方向を目視で確認できる。そのため、スロット10の向きをより簡単に精度よく合わせることができる。
【0032】
(その他の実施の形態)
上記のように、本発明の実施の形態を記載したが、この開示の一部をなす論述及び図面はこの発明を限定するものであると理解すべきではない。この開示から当業者にはさまざまな代替の実施の形態、実施例及び運用技術が明らかとなろう。したがって、本発明の技術的範囲は上記の説明から妥当な特許請求の範囲に係わる発明特定事項によってのみ定められるものである。
【符号の説明】
【0033】
1…アンテナアレイ
2…漏洩同軸ケーブル(LCX)
3…中心導体
5…絶縁体
7…外部導体
8…第1シース
9…第2シース
10…スロット
12a、12b…接触面
13a…凸部
13b…凹部
14a…第1段差部
14b…第2段差部