(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記吸着反応により放熱し、加熱による脱水反応により蓄熱する粒状の蓄熱材54がゼオライト、シリカゲル、又はゼオライトのイオン交換品から選ばれるいずれか1つの吸着材であり、
前記蒸発凝縮槽10に所定量水を充填し、
真空ポンプ20を運転した後に第四真空バルブ27及び反応槽側真空バルブ35を開け反応槽内圧を2〜50Paまで低圧とした後、反応槽側真空バルブ35を閉じて第二真空バルブ25及び蒸発凝縮槽真空バルブ34を開けて真空ポンプ20の吸引により前記蒸発凝縮槽10の内圧をその水温の飽和水蒸気圧の1〜3kPaまで低圧とした後に、第四真空バルブ27、第二真空バルブ25及び蒸発凝縮槽真空バルブ34を閉じると共に前記真空ポンプ20を停止する脱気運転の後、
前記蒸発凝縮槽10の前記蒸発・凝縮管11に前記冷水循環系76を切替え接続して前記蒸発凝縮槽10出口温度10℃以下の冷熱を、前記熱媒体流入管45と前記熱媒体排出管45’ とに施設側熱交換器90を介して空調用温水加熱循環系94を切替え接続して前記反応槽40出口温度60℃以下の温熱を、吸着反応により熱源としてそれぞれ同時に取り出し、
その後、前記蒸発凝縮槽10の前記蒸発・凝縮管11に前記冷却水循環系66を接続して蒸発凝縮槽10中の水の凝縮熱放熱を、前記熱媒体流入管45と前記熱媒体排出管45’とに施設側熱交換器80を介して排熱回収熱媒循環系84を接続し200℃以下の排熱を用いて、脱水反応により蓄熱し、
これを繰り返して行えることを特徴とする請求項1記載の化学蓄熱を利用した排熱蓄熱空調熱源システム。
前記蓄熱材54である吸着材が、再生温度200℃以下、望ましくは160℃以下の合成ゼオライトであることを特徴とする請求項3に記載の化学蓄熱を利用した排熱蓄熱空調熱源システム。
【背景技術】
【0002】
近年、世界規模で地球温暖化対策が重要な課題となっている。また、有限なエネルギー資源の枯渇に備えた化石エネルギーの無駄のない利用により、持続可能な社会の実現も急務となっている。
このような中、未利用エネルギーを活用する「エネルギーの有効利用」として、例えば、発電プラントや化学プラントなどの工場、下水汚泥焼却プラント、ごみ焼却プラントなどの熱源から発生する低温排熱(200℃以下)を、潜熱蓄熱材(PCM)に蓄え、時間的、場所的にミスマッチな利用施設、例えば熱源施設の付属棟での時間差のある利用、病院やオフィス、公共施設などへのオフライン輸送での利用を可能とする潜熱蓄熱装置が提案されている。
この潜熱蓄熱装置によれば、その殆どが環境中に捨てられていた低温排熱を、効果的に利用することにより、化石燃料の使用量を抑制することができ、温室効果ガスの代表格である二酸化炭素ガスの削減にも、大きく貢献できることが知られている。
しかし、蓄熱した熱エネルギーを利用するに当たり、より高蓄熱密度で利用したい、夏が高温多湿の日本において、熱の利用として温熱の蓄熱利用だけでなく、蓄熱から直接冷熱が取り出せるようにしたい、との要請がある。この要請には、潜熱蓄熱材では全て応えきれるものではない。
ところで、反応器内に、化学蓄熱材を設け、大気圧よりも低い圧力場での水蒸気との反応により放熱を行い、加熱により化学蓄熱材が再生(つまり蓄熱)される化学蓄熱を使用した化学蓄熱システムが知られている。
このような化学蓄熱システムの典型システムの特徴としては、真空ポンプによって真空に近い場とされた水和材や吸着材の化学蓄熱材を入れた反応槽内で、水と化学蓄熱材との水和反応及び脱水反応を行うので、大気圧よりも低い場に封じられた水を扱い、その沸点が大気圧下(絶対圧約100kPa)の100℃ではない、遙か低温(例えば1kPa程度なら10℃以下)になることが上げられる。この大気圧よりも低い圧力場の水温で、吸着反応の場合水の外部加熱を要求する、つまり冷熱が取り出せるのである。
例えば、前記化学蓄熱を車両に使用した車両用化学蓄熱システムとして、車両に搭載された内燃機関の排気熱により脱水反応を行って蓄熱し、水和反応により放熱する化学蓄熱材が内蔵された反応器と、前記反応器から前記脱水反応に伴って放出された水蒸気の吸着及び吸着した水蒸気の脱着が可能な吸着材が内蔵された吸着器と、前記吸着器の吸着材から水蒸気を脱着させるための脱着促進手段と、前記反応器内の前記化学蓄熱材が水和反応により放熱した熱を加熱対象に伝える伝熱構造と、を備えた車両用化学蓄熱システムがある。(特許文献1参照)
水和反応の圧力場(1kPa程度)、脱水反応の加熱温度(望ましくは150℃以下)からみて、適当な化学蓄熱材は、石膏や塩化カルシウム、臭化カルシウムなどが該当する。
また、200℃以下の排熱を利用して、別なエネルギーとして利用しやすく、社会として利用量が多いエネルギーとして、空調エネルギーが上げられる。
空調熱源としては、冷房用途として空調機の冷却コイルに送られる熱媒である冷水(7℃〜10℃程度の送り温度で、12℃〜18℃程度の還り温度の範囲)、暖房用途として空調機の温水コイルに送られる熱媒である温水(50℃〜60℃程度の送り温度で、45℃〜50℃程度の還り温度)として取り出せれば、汎用の空調に利用ができて都合がよい。
例えば、前記化学蓄熱を、ヒートポンプや燃料電池コージェネレーションなどを利用した給湯機器の高密度蓄熱装置に利用する化学蓄熱システムとして、蓄熱材には主に水和反応が主体の、塩化カルシウム水和物、臭化カルシウム水和物、硫酸マグネシウム水和物などの水との反応熱により脱水反応を行って蓄熱し、水和反応により放熱する化学蓄熱材が内蔵された反応器と、前記反応器から前記脱水反応に伴って放出された水蒸気の凝縮を行う真空水槽である回収タンクと、回収タンクから給水ポンプで別経路にて、吸着に用いるための水蒸気を反応器に供給のための供給路と、反応器と回収タンクとを一方通行で結ぶ還り流路と、を備えた、回収タンクでは水の蒸発をせずに強制的に給水ポンプで反応器に供給する化学蓄熱システムがある。(特許文献2参照)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記特許文献1に記載の発明は、車両用化学蓄熱システムであり、自動車の運転に合わせて化学蓄熱材の温度が略450℃になるよう構成し、また水和材も酸化カルシウムを使用しているため300℃以上の排熱を必要とするものである。
したがって、前述のように、200℃以下の排熱を利用して、別なエネルギーとして利用しやすく、社会として利用量が多いエネルギーとして、空調エネルギーを取り出す化学蓄熱を利用した排熱蓄熱空調熱源システムには適用できない。
また、排熱として利用が経済的な温度である100数十度で再生が可能な塩化カルシウムを水和材として使用し、熱源として温熱と冷熱を同時に使用する化学蓄熱を利用した排熱蓄熱空調熱源システムには、その基本構成や水和反応の圧力場(1kPa程度)、脱水反応の加熱温度(望ましくは150℃以下)等が異なっていて採用することができない。
上記特許文献2に記載の発明は、他のヒートポンプや燃料電池コージェネレーションなどで発生した低温80〜90℃程度の熱を高密度に蓄熱し、欲しいときに給湯として放熱できるようにした化学蓄熱システムであり、この化学蓄熱システムは、凝縮槽しか持たず、水は蒸発して反応槽へ行くわけではなくよって冷熱は取り出されないので、化学蓄熱システムの運転で特徴的な、温熱を取り出す際に生じる冷熱はない。また、このシステムの蓄熱材も水和反応を主とする塩化カルシウム水和物、臭化カルシウム水和物、硫酸マグネシウム水和物などを必要とするものである。
本発明は、上記事実を考慮して、熱源として温熱と冷熱を同時に使用する化学蓄熱を利用した排熱蓄熱空調熱源システムを得ることを目的とする。
また、吸着脱水を行う反応槽と、放熱時に冷熱を取り出したり蓄熱時に脱離した水を受け入れたりする蒸発凝縮槽との間の水蒸気搬送路に両方向それぞれにブロワを設け2つのブロワの発生する圧力を調整することで、水蒸気の輸送条件を緩和し、蓄熱・放熱時の温度条件や圧力条件に自由度をもたせることができる化学蓄熱を利用した排熱蓄熱空調熱源システムを得ることを目的とする。
さらに、また、吸着脱水を行う反応槽と、放熱時に冷熱を取り出したり蓄熱時に脱離した水を受け入れたりする蒸発凝縮槽との間の水蒸気搬送路に両方向それぞれにブロワを設け2つのブロワの発生する圧力を調整することで、蓄熱材の吸着量を最大化し蓄熱量を増加することができる化学蓄熱を利用した排熱蓄熱空調熱源システムを得ることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明者らは上記課題を下記の手段により解決した。
(1)吸着反応により放熱し、加熱による脱水反応により蓄熱する粒状の蓄熱材54と、
該蓄熱材54を加熱し該蓄熱材54から発熱した熱を受取る熱媒体を循環させるよう入口ヘッダ55と出口ヘッダ55’とで複数本に分岐し、または合流する熱媒体管56と、
前記蓄熱材54の吸着反応に必要な水蒸気を与え、前記蓄熱材54の脱水反応により取り出された水蒸気を受け取る側面に開口を多数有する複数の水蒸気管57と、
前記熱媒体管56と前記水蒸気管57とのそれぞれの外側面に管の軸芯に直交する方向に接するように固定されるフィン58と、
前記フィン58と直交する方向の下面を塞ぐ熱交換器底板52及び上面を塞ぐ熱交換器蓋板53とを有し、側面に前記水蒸気管57を内部と外部とを連通するよう固定した、気体−液体熱交換コイル形状の熱交換器50と、
前記熱交換器50の側面と相対する一方の真空フランジ蓋42(43)に水蒸気流入流出管44の端部を位置させ、前記真空フランジ蓋42(43)を通じて内部に前記熱交換器50を入れ込む反応槽40を備え、
さらに、内部に貯蔵した水を加熱し、また前記熱交換器50で生じた水蒸気を冷却凝縮する熱媒水を流通させる蒸発・凝縮管11を備えた蒸発凝縮槽10と、
前記蓄熱材54を大気圧より低い圧力の環境下で吸着させるため、反応槽40と蒸発凝縮槽10内の空気を排除して大気圧より低い内圧にする真空ポンプ20と、
前記反応槽40側壁を貫通して前記熱交換器50の前記熱媒体管56に入口ヘッダ55を介して接続され前記熱媒体を流入させる熱媒体流入管45、及び前記熱媒体管56に出口ヘッダ55’を介して接続された熱媒体排出管45’と、
前記反応槽40と蒸発凝縮槽10とを連接する上部配管21a、中部配管21b及び下部配管21cを有する外部水蒸気管21と、
前記上部配管21aの途中に設けられた第一真空バルブ24と、
前記中部配管21bの途中に設けられた第二真空バルブ25と、
前記下部配管21cの途中に設けられた第三真空バルブ26と、
前記真空引き配管23の途中に設けられた第四真空バルブ27と、
前記上部配管21aの途中に設けられ前記反応槽40に向けて吐出口を位置させる第一真空ブロア31と、
前記下部配管21cの途中に設けられ前記蒸発凝縮槽10に向けて吐出口を位置させる第二真空ブロア32と、
前記外部水蒸気管21の途中に設けられた蒸発凝縮槽側真空バルブ34及び反応槽 側真空バルブ35と
を備え、
前記蒸発凝縮槽10の前記蒸発・凝縮管11には、大気と熱交換する冷却塔60に冷却水ポンプ62で冷却水を循環する冷却水循環系66と、空調機の冷却コイルに冷水ポンプ73で冷水を循環する冷水循環系76を切り換えて接続し、
前記熱媒体流入管45と前記熱媒体排出管45’とには、施設側熱交換器90を介して空調用温水加熱循環系94と、排熱回収熱媒循環系84とを切り換えて接続することを特徴とする化学蓄熱を利用した排熱蓄熱空調熱源システム。
【0006】
(2)前記熱媒体管56に入口ヘッダ55を介して接続され前記熱媒体を流入させる熱媒体流入管45を、流入側カップリングを介して分割し、
前記熱媒体管56に出口ヘッダ55’を介して接続された熱媒体排出管45‘を、流出側カップリングを介して分割し、
前記蒸発凝縮槽10の前記蒸発・凝縮管11の入口出口タッピングにそれぞれ、流入側水カップリング、流出側水カップリングを付属させて、それぞれ相カップリング付きの外部可撓管と接続可能としたうえで、
前記反応槽40、前記蒸発凝縮槽10と、前記真空ポンプ20と、
前記反応槽40と蒸発凝縮槽10とを連接する上部配管21a、中部配管21b及び下部配管21cを有する外部水蒸気管21と、
前記上部配管21aの途中に設けられた第一真空バルブ24と、
前記中部配管21bの途中に設けられた第二真空バルブ25と、
前記下部配管21cの途中に設けられた第三真空バルブ26と、
前記真空引き配管23の途中に設けられた第四真空バルブ27と、
前記上部配管21aの途中に設けられ前記反応槽40に向けて吐出口を位置させる第一真空ブロア31と、
前記下部配管21cの途中に設けられ前記蒸発凝縮槽10に向けて吐出口を位置させる第二真空ブロア32と
前記外部水蒸気管21の途中に設けられた蒸発凝縮槽側真空バルブ34及び反応槽 側真空バルブ35と、
前記熱媒体管56の入口ヘッダ55から流入カップリングまでの熱媒体流入管45と、
前記熱媒体管56の出口ヘッダ55’から流出カップリングまでの熱媒体排出管45’と、
を移動可能な架台上に備え、
排熱施設に移動した場合は、
前記水槽の前記蒸発・凝縮管11に、流入側水カップリング及び流出側水カップリングを介して前記冷却水循環系66を接続し、
かつ、前記熱媒体流入管45と前記熱媒体排出管45’とに、流入側カップリング及び流出側カップリングを介して施設側の熱媒体流入排熱回収配管81及び施設側の熱媒体流出排熱回収配管82に接続して施設側熱交換器80に熱媒体を循環させ、該施設側熱交換器80を介して前記排熱回収熱媒循環系84に接続し、
熱利用施設に移動した場合は、
前記蒸発凝縮槽10の前記蒸発・凝縮管11に、流入側水カップリング及び流出側水カップリングを介して前記冷水循環系76を接続し、かつ、前記熱媒体流入管45と前記熱媒体排出管45‘とに、流入側カップリング及び流出側カップリングを介して施設側の熱媒体流入温水利用配管92及び施設側の熱媒体流出温水利用配管91に接続して施設側熱交換器90に熱媒体を循環させ、該施設側熱交換器90を介して前記空調用温水加熱循環系94に接続することを特徴とする前記(1)に記載の化学蓄熱を利用した排熱蓄熱空調熱源システム。
【0007】
(3)前記吸着反応により放熱し、加熱による脱水反応により蓄熱する粒状の蓄熱材54がゼオライト、シリカゲル、又はゼオライトのイオン交換品から選ばれるいずれか1つの吸着材であり、
前記蒸発凝縮槽10に所定量水を充填し、
真空ポンプ20を運転した後に第四真空バルブ27及び反応槽側真空バルブ35を開け反応槽内圧を2〜50Paまで低圧とした後、反応槽側真空バルブ35を閉じて第二真空バルブ25及び蒸発凝縮槽真空バルブ34を開けて真空ポンプ20の吸引により前記蒸発凝縮槽10の内圧をその水温の飽和水蒸気圧の1〜3kPaまで低圧とした後に、第四真空バルブ27、第二真空バルブ25及び蒸発凝縮槽真空バルブ34を閉じると共に前記真空ポンプ20を停止する脱気運転の後、
前記蒸発凝縮槽10の前記蒸発・凝縮管11に前記冷水循環系76を切替え接続して前記蒸発凝縮槽10出口温度10℃以下の冷熱を、前記熱媒体流入管45と前記熱媒体排出管45’ とに施設側熱交換器90を介して空調用温水加熱循環系94を切替え接続して前記反応槽40出口温度60℃以下の温熱を、吸着反応により熱源としてそれぞれ同時に取り出し、
その後、前記蒸発凝縮槽10の前記蒸発・凝縮管11に前記冷却水循環系66を接続して蒸発凝縮槽10中の水の凝縮熱放熱を、前記熱媒体流入管45と前記熱媒体排出管45’とに施設側熱交換器80を介して排熱回収熱媒循環系84を接続し200℃以下の排熱を用いて、脱水反応により蓄熱し、
これを繰り返して行えることを特徴とする前記(1)記載の化学蓄熱を利用した排熱蓄熱空調熱源システム。
(4)前記蓄熱材54である吸着材が、再生温度200℃以下、望ましくは160℃以下の合成ゼオライトであることを特徴とする前記(3)記載の化学蓄熱を利用した排熱蓄熱空調熱源システム。
【0008】
(5)前記反応槽40に内部の圧力を計測する反応槽圧力計48と、
前記蒸発・凝縮管11に、流入される熱媒水の温度を計測する流入熱媒水温度計14と排出される熱媒水の温度を計測する排出熱媒水温度計15と、
前記蒸発凝縮槽10に、内部に貯蔵される水の水位を計測する水位計12と、内部の圧力を計測する蒸発凝縮槽圧力計13と、内部の温度を計測する蒸発凝縮槽温度計95と、前記熱媒体流入管45に、流入される熱媒体の温度を計測する流入熱媒体温度計46を、前記熱媒体排出管45’に、排出される熱媒体の温度を計測する排出熱媒体温度計47を備えるとともに、
放熱運転の際に、蒸発凝縮槽の圧力計13の圧力値が反応槽圧力計48の圧力値より所定量大きくなった時点で第二真空バルブ25、蒸発凝縮槽側真空バルブ34及び反応槽側真空バルブ35を閉から開へ動作させ、蒸発凝縮槽10から反応槽40へ水蒸気を移送させ、その後、蒸発凝縮槽10の圧力計13と反応槽40の圧力計48との圧力差が同一又は一定値になった時点で第二真空バルブ25を閉止し、第三真空バルブ26を開放し、第二真空ブロア32を運転し、ブロア動力を付加して水蒸気を蒸発凝縮槽10から反応槽40へ移送し、吸着反応を行い、
吸着反応時の所定の流入熱媒体温度に、所定の差分を加算した設定排出熱媒体温度を、前記排出熱媒体温度計47で計測した排出熱媒体温度が下回った時点で、
前記反応槽内40の前記蓄熱材54が所定の割合で吸着反応を終えたと判断し、
第二真空バルブ25、第三真空バルブ26、蒸発凝縮槽側真空バルブ34及び反応槽側真空バルブ35を開から閉に動作させると共に第二真空ブロア32の運転を停止して、冷熱及び温熱の取り出しを終了させるよう制御する制御部2とで構成されてなることを特徴とする前記(1)記載の化学蓄熱を利用した排熱蓄熱空調熱源システム。
【0009】
(6)前記反応槽40に内部の圧力を計測する反応槽圧力計48と、
前記蒸発・凝縮管11に、流入される熱媒水の温度を計測する流入熱媒水温度計14と排出される熱媒水の温度を計測する排出熱媒水温度計15と、
前記蒸発凝縮槽10に、内部に貯蔵される水の水位を計測する水位計12と、内部の圧力を計測する蒸発凝縮槽圧力計13を備えるとともに、
蓄熱運転の際に、
反応槽圧力計48の圧力値が、蒸発凝縮槽圧力計13の圧力値より所定量大きくなった時点で第二真空バルブ25、蒸発凝縮槽側真空バルブ34及び反応槽側真空バルブ35を閉から開へ動作させ反応槽40から蒸発凝縮槽10へ水蒸気を移送させ、その後反応槽40の反応槽圧力計48と蒸発凝縮槽10の圧力計13との圧力差が同一又は一定値になった時点で第二真空バルブ25を閉止し、第一真空バルブ24を解放し、第一真空ブロア31を運転しブロア動力を付加して、水蒸気を反応槽40からから蒸発凝縮槽10に移送し、脱水反応を行い、
前記水位計12の水位計測値が所定量に達した時点で第一真空バルブ24、蒸発凝縮槽側真空バルブ34及び反応槽側真空バルブ35を開から閉へ動作させると共に第一真空ブロア31の運転を停止し、蓄熱運転を終了させるよう制御する制御部2で構成されてなることを特徴とする前記(1)記載の化学蓄熱を利用した排熱蓄熱空調熱源システム。
【0010】
(7)前記脱気運転の後、
吸着反応により冷熱と温熱とをそれぞれ同時に取り出し、200℃以下の排熱を用いて、脱水反応により蓄熱するそれぞれの運転に切り替える際に、反応槽圧力計がリーク設定圧力よりも高い計測値を測定した場合には、再度脱気運転を行った後、それぞれの運転になるように制御する制御部で構成されてなることを特徴とする前記(3)記載の化学蓄熱を利用した排熱蓄熱空調熱源システム。
【発明の効果】
【0011】
本発明の化学蓄熱を利用した排熱蓄熱空調熱源システムにより下記の効果が発揮される。
〈1〉本発明の化学蓄熱を利用した排熱蓄熱空調熱源システムは、
吸着反応により放熱し、加熱による脱水反応により蓄熱する粒状の蓄熱材54と、
該蓄熱材54を加熱し該蓄熱材54から発熱した熱を受取る熱媒体を循環させるよう入口ヘッダ55と出口ヘッダ55’とで複数本に分岐し、または合流する熱媒体管56と、
前記蓄熱材54の吸着反応に必要な水蒸気を与え、前記蓄熱材54の脱水反応により取り出された水蒸気を受け取る側面に開口を多数有する複数の水蒸気管57と、
前記熱媒体管56と前記水蒸気管57とのそれぞれの外側面に管の軸芯に直交する方向に接するように固定されるフィン58と、
前記フィン58と直交する方向の下面を塞ぐ熱交換器底板52及び上面を塞ぐ熱交換器蓋板53とを有し、側面に前記複数の水蒸気管57を内部と外部とを連通するよう固定した、気体−液体熱交換コイル形状の熱交換器50と、
前記熱交換器50の側面と相対する一方の真空フランジ蓋42(43)に水蒸気流入流出管44の端部を位置させ、前記真空フランジ蓋42(43)を通じて内部に前記熱交換器50を入れ込む反応槽40を備え、
さらに、内部に貯蔵した水を加熱し、また前記熱交換器50で生じた水蒸気を冷却凝縮する熱媒水を流通させる蒸発・凝縮管11を備えた蒸発凝縮槽10と、
前記蓄熱材54を大気圧より低い圧力の環境下で吸着させるため、反応槽40と蒸発凝縮槽10内の空気を排除して大気圧より低い内圧にする真空ポンプ20と、
前記反応槽40側壁を貫通して前記熱交換器50の前記熱媒体管56に入口ヘッダ55を介して接続され前記熱媒体を流入させる熱媒体流入管45、及び前記熱媒体管56に出口ヘッダ55’を介して接続された熱媒体排出管45’と、
前記反応槽40と蒸発凝縮槽10とを連接する上部配管21a、中部配管21b及び下部配管21cを有する外部水蒸気管21と、
前記上部配管21aの途中に設けられた第一真空バルブ24と、
前記中部配管21bの途中に設けられた第二真空バルブ25と、
前記下部配管21cの途中に設けられた第三真空バルブ26と、
前記真空引き配管23の途中に設けられた第四真空バルブ27と、
前記上部配管21aの途中に設けられ前記反応槽40に向けて吐出口を位置させる第一真空ブロア31と、
前記下部配管21cの途中に設けられ前記蒸発凝縮槽10に向けて吐出口を位置させる第二真空ブロア32と、
前記外部水蒸気管21の途中に設けられた蒸発凝縮槽側真空バルブ34及び反応槽 側真空バルブ35と
を備え、
前記蒸発凝縮槽10の前記蒸発・凝縮管11には、大気と熱交換する冷却塔60に冷却水ポンプ62で冷却水を循環する冷却水循環系66と、空調機の冷却コイルに冷水ポンプ73で冷水を循環する冷水循環系76を切り換えて接続し、
前記熱媒体流入管45と前記熱媒体排出管45’とには、施設側熱交換器90を介して空調用温水加熱循環系94と、排熱回収熱媒循環系84とを切り換えて接続するよう構成されているので、社会として利用量が多い空調エネルギーに利用しやすい、冷房用途として空調機の冷却コイルに送られる熱媒である冷水(7℃〜10℃程度の送り温度で、12℃〜18℃程度の還り温度の範囲)、暖房用途として空調機の温水コイルに送られる熱媒である温水(50℃〜60℃程度の送り温度で、45℃〜50℃程度の還り温度)として取り出すことができる。
【0012】
〈2〉前記熱媒体管56に入口ヘッダ55を介して接続され前記熱媒体を流入させる熱媒体流入管45を、流入側カップリングを介して分割し、
前記熱媒体管56に出口ヘッダ55’を介して接続された熱媒体排出管45‘を、流出側カップリングを介して分割し、
前記蒸発凝縮槽10の前記蒸発・凝縮管11の入口出口タッピングにそれぞれ、流入側水カップリング、流出側水カップリングを付属させて、それぞれ相カップリング付きの外部可撓管と接続可能としたうえで、
前記反応槽40、前記蒸発凝縮槽10と、前記真空ポンプ20と、
前記反応槽40と蒸発凝縮槽10とを連接する上部配管21a、中部配管21b及び下部配管21cを有する外部水蒸気管21と、
前記上部配管21aの途中に設けられた第一真空バルブ24と、
前記中部配管21bの途中に設けられた第二真空バルブ25と、
前記下部配管21cの途中に設けられた第三真空バルブ26と、
前記真空引き配管23の途中に設けられた第四真空バルブ27と、
前記上部配管21aの途中に設けられ前記反応槽40に向けて吐出口を位置させる第一真空ブロア31と、
前記下部配管21cの途中に設けられ前記蒸発凝縮槽10に向けて吐出口を位置させる第二真空ブロア32と
前記外部水蒸気管21の途中に設けられた蒸発凝縮槽側真空バルブ34及び反応槽 側真空バルブ35と、
前記熱媒体管56の入口ヘッダ55から流入側カップリングまでの熱媒体流入管45と、
前記熱媒体管56の出口ヘッダ55’から流出側カップリングまでの熱媒体排出管45’と、
を移動可能な架台上に備え、
排熱施設に移動した場合は、
前記水槽の前記蒸発・凝縮管11に、流入側水カップリング及び流出側水カップリングを介して前記冷却水循環系66を接続し、かつ、前記熱媒体流入管45と前記熱媒体排出管45’とに、流入側カップリング及び流出側カップリングを介して施設側の熱媒体流入排熱回収配管81及び施設側の熱媒体流出排熱回収配管82に接続して施設側熱交換器80に熱媒体を循環させ、該施設側熱交換器80を介して前記排熱回収熱媒循環系84に接続し、
熱利用施設に移動した場合は、
前記蒸発凝縮槽10の前記蒸発・凝縮管11に、流入側水カップリング及び流出側水カップリングを介して前記冷水循環系76を接続し、かつ、前記熱媒体流入管45と前記熱媒体排出管45‘とに、流入側カップリング及び流出側カップリングを介して施設側の熱媒体流入温水利用配管92及び施設側の熱媒体流出温水利用配管91に接続して施設側熱交換器90に熱媒体を循環させ、該施設側熱交換器90を介して前記空調用温水加熱循環系94に接続するように構成されているので、排熱施設と熱利用施設との場所的ミスマッチを解消し、従来は捨てられていた200℃以下の排熱を利用して、社会として利用量が多い空調エネルギーを、貯蔵して輸送して利用した排熱を貯蔵するという循環利用ができる。
【0013】
〈3〉前記吸着反応により放熱し、加熱による脱水反応により蓄熱する粒状の蓄熱材54がゼオライト、シリカゲル、又はゼオライトのイオン交換品から選ばれるいずれか1つの吸着材であり、
前記蒸発凝縮槽10に所定量水を充填し、
真空ポンプ20を運転した後に第四真空バルブ27及び反応槽側真空バルブ35を開け反応槽内圧を2〜50Paまで低圧とした後、反応槽側真空バルブ35を閉じて第二真空バルブ25及び蒸発凝縮槽真空バルブ34を開けて真空ポンプ20の吸引により前記蒸発凝縮槽10の内圧をその水温の飽和水蒸気圧の1〜3kPaまで低圧とした後に、第四真空バルブ27、第二真空バルブ25及び蒸発凝縮槽真空バルブ34を閉じると共に前記真空ポンプ20を停止する脱気運転の後、
前記蒸発凝縮槽10の前記蒸発・凝縮管11に前記冷水循環系76を切替え接続して前記蒸発凝縮槽10出口温度10℃以下の冷熱を、前記熱媒体流入管45と前記熱媒体排出管45’ とに施設側熱交換器90を介して空調用温水加熱循環系94を切替え接続して前記反応槽40出口温度60℃以下の温熱を、吸着反応により熱源としてそれぞれ同時に取り出し、
その後、前記蒸発凝縮槽10の前記蒸発・凝縮管11に前記冷却水循環系66を接続して蒸発凝縮槽10中の水の凝縮熱放熱を、前記熱媒体流入管45と前記熱媒体排出管45’とに施設側熱交換器80を介して排熱回収熱媒循環系84を接続し200℃以下の排熱を用いて、脱水反応により蓄熱し、
これを繰り返して行えるよう構成されているので、
排熱として多量にあるにもかかわらず、温度ポテンシャルの低い200℃以下の排熱を利用して、社会として利用量が多い空調エネルギーに利用しやすい、冷房用途として空調機の冷却コイルに送られる熱媒である冷水(7℃〜10℃程度の送り温度で、12℃〜18℃程度の還り温度の範囲)、暖房用途として空調機の温水コイルに送られる熱媒である温水(50℃〜60℃程度の送り温度で、45℃〜50℃程度の還り温度)として取り出すことができる。
〈4〉前記蓄熱材54である吸着材が、再生温度200℃以下、望ましくは160℃以下の合成ゼオライトであるように構成されているので、排熱として多量にあるにもかかわらず、温度ポテンシャルの低い200℃以下の排熱を利用して、社会として利用量が多い空調エネルギーに利用できる。
【0014】
〈5〉前記反応槽40に内部の圧力を計測する反応槽圧力計48と、前記蒸発・凝縮管11に、流入される熱媒水の温度を計測する流入熱媒水温度計14と排出される熱媒水の温度を計測する排出熱媒水温度計15と、前記蒸発凝縮槽10に、内部に貯蔵される水の水位を計測する水位計12と、内部の圧力を計測する蒸発凝縮槽圧力計13と、内部の温度を計測する蒸発凝縮槽温度計95と、前記熱媒体流入管45に、流入される熱媒体の温度を計測する流入熱媒体温度計46を、前記熱媒体排出管45’に、排出される熱媒体の温度を計測する排出熱媒体温度計47を備えるとともに、
放熱運転の際に、蒸発凝縮槽の圧力計13の圧力値が反応槽圧力計48の圧力値より所定量大きくなった時点で第二真空バルブ25、蒸発凝縮槽側真空バルブ34及び反応槽側真空バルブ35を閉から開へ動作させ、蒸発凝縮槽10から反応槽40へ水蒸気を移送させ、その後、蒸発凝縮槽10の圧力計13と反応槽40の圧力計48との圧力差が同一又は一定値になった時点で第二真空バルブ25を閉止し、第三真空バルブ26を開放し、第二真空ブロア32を運転し、ブロア動力を付加して水蒸気を蒸発凝縮槽10から反応槽40へ移送し、吸着反応を行い、
吸着反応時の所定の流入熱媒体温度に、所定の差分を加算した設定排出熱媒体温度を、前記排出熱媒体温度計47で計測した排出熱媒体温度が下回った時点で、
前記反応槽内40の前記蓄熱材54が所定の割合で吸着反応を終えたと判断し、
第二真空バルブ25、第三真空バルブ26、蒸発凝縮槽側真空バルブ34及び反応槽側真空バルブ35を開から閉に動作させると共に第二真空ブロア32の運転を停止して、冷熱及び温熱の取り出しを終了させるよう制御する制御部2とで構成されているので、
真空引きをして反応が分かりづらい吸着反応を確実に、しかも安価な測定器で把握可能となり、効率よく冷熱温熱の取り出しを制御することができる。
【0015】
〈6〉前記反応槽40に内部の圧力を計測する反応槽圧力計48と、
前記蒸発・凝縮管11に、流入される熱媒水の温度を計測する流入熱媒水温度計14と排出される熱媒水の温度を計測する排出熱媒水温度計15と、
前記蒸発凝縮槽10に、内部に貯蔵される水の水位を計測する水位計12と、内部の圧力を計測する蒸発凝縮槽圧力計13を備えるとともに、
蓄熱運転の際に、
反応槽圧力計48の圧力値が、蒸発凝縮槽圧力計13の圧力値より所定量大きくなった時点で第二真空バルブ25、蒸発凝縮槽側真空バルブ34及び反応槽側真空バルブ35を閉から開へ動作させ反応槽40から蒸発凝縮槽10へ水蒸気を移送させ、その後反応槽40の反応槽圧力計48と蒸発凝縮槽10の圧力計13との圧力差が同一又は一定値になった時点で第二真空バルブ25を閉止し、第一真空バルブ24を解放し、第一真空ブロア31を運転しブロア動力を付加して、水蒸気を反応槽40からから蒸発凝縮槽10に移送し、脱水反応を行い、
前記水位計12の水位計測値が所定量に達した時点で第一真空バルブ24、蒸発凝縮槽側真空バルブ34及び反応槽側真空バルブ35を開から閉へ動作させると共に第一真空ブロア31の運転を停止し、蓄熱運転を終了させるよう制御する制御部2で構成されているので、
真空引きをして反応が分かりづらい脱水反応を確実に、しかも安価な測定器で把握可能に、効率よく蓄熱を制御することができる。
【0016】
〈7〉脱気運転の後に、吸着反応により冷熱と温熱とをそれぞれ同時に取り出し、200℃以下の排熱を用いて、脱水反応により蓄熱するそれぞれの運転に切り替える際に、反応槽圧力計がリーク設定圧力よりも高い計測値を測定した場合には、再度脱気運転を行った後、それぞれの運転になるように制御する制御部で構成されているので、
反応槽や蒸発凝縮槽の吸着反応や脱水反応を所定の圧力温度で制御することができ、効率よく蓄熱や冷熱温熱の取り出しを制御することができる。
【発明を実施するための形態】
【0018】
本発明の化学蓄熱を利用した排熱蓄熱空調熱源システムを実施するための形態を実施例の図に基づいて説明する。
図1は、本願発明の化学蓄熱を利用した排熱蓄熱空調熱源システムの概略全体構成を示すシステム構成図であり、
図2は、本願発明の化学蓄熱を利用した排熱蓄熱空調熱源システムの概略中心部構成を示すシステム構成図である。
図中、1は化学蓄熱を利用した排熱蓄熱空調熱源システム、2は制御部、10は蒸発凝縮槽、11は蒸発・凝縮管、12は水位計、13は圧力計、14は流入熱媒水温度計、15は排出熱媒水温度計、20は真空ポンプ、21は外部水蒸気管、21aは上部配管、21bは中部配管、21cは下部配管、22は外部水蒸気管、23は真空引き配管、24は第一真空バルブ、25は第二真空バルブ、26は第三真空バルブ、27は第四真空バルブ、31は第一真空ブロア、32は第二真空ブロア、34は蒸発凝縮槽側真空バルブ、35は反応槽側真空バルブである。
また、40は反応槽、41は反応槽本体、42、43は真空フランジ蓋、44は水蒸気流入流出管、45は熱媒体流入管、45’は熱媒体排出管、46は流入熱媒体温度計、47は排出熱媒体温度計、48は反応槽圧力計、50は熱交換器、51は熱交換器本体、52は熱交換器底板、53は熱交換器蓋板、54は蓄熱材、55は入口ヘッダ、55’は出口ヘッダ、56は熱媒体管、57は水蒸気管、58はファン、59は真空継手、60は冷却塔、61は冷却水還り管、62は冷却水ポンプ、63、65は切り換えバルブ、64は冷却水往き管、66は冷却水循環系、70は水―水熱交換器、71は水循環管路、72は切り換えバルブ、73は冷水ポンプ、74は水循環管路、75は切り換えバルブ、76は冷水循環系である。
そして、80は施設側熱交換器、81は熱媒体流出排熱回収配管、82は熱媒体流入排熱回収配管、83は熱媒体ポンプ、84は排熱回収熱媒循環系、85、86、87は切り換えバルブ、90は施設側熱交換器、91は熱媒体流出温水利用配管、92は熱媒体流入温水利用配管、93は熱媒体ポンプ、94は空調用温水加熱循環系である。
【0019】
図1及び
図2に示される如く、本願発明の化学蓄熱を利用した排熱蓄熱空調熱源システム1は、基本的には、蒸発凝縮槽10、真空ポンプ20、反応槽40、上部水平配管21a、中部水平配管21b及び下部水平配管21cを有する外部水蒸気管21、真空引き配管23、第一真空バルブ24、第二真空バルブ25、第三真空バルブ26、第四真空バルブ27、第一真空ブロア31及び第二真空ブロア32、熱媒体流入管45,熱媒体排出管45’、並びに前記水槽10、反応槽40、第一真空バルブ24、第二真空バルブ25、第三真空バルブ26、第四真空バルブ27、第一真空ブロア31、第二真空ブロア32、及び真空ポンプ20を制御する制御部2を有するシステム中心部と、
冷却塔60、冷却塔60の冷却水を循環する冷却水還り管61、冷却水ポンプ62、冷却水還り管に設けられたバルブ63、冷却水往き管64、冷却水還り管に設けられたバルブ65、及び蒸発・凝縮管との接続共用配管部を有する冷却水循環系66と、
図示しない空調機に組み込まれる冷水コイルなどを冷熱負荷とし熱媒とする冷水コイルへ送る微小高温冷水と蒸発・凝縮管に流す冷水とを熱交換する水−水熱交換器70、蒸発・凝縮管に流す水循環管路71、水循環管路71に設けられたバルブ72、冷水ポンプ73、蒸発・凝縮管から水−水熱交換器に流す水循環管路74、水循環管路74に設けられたバルブ75、及び蒸発・凝縮管との接続共用配管部を有する冷水循環系76と、
排熱を運ぶ排熱熱媒(排ガスまたは排熱を帯びた液体)と反応槽40へ導入する熱媒体とを熱交換する施設側熱交換器80、施設側熱交換器80の1次側に設ける熱媒体流出排熱回収利用配管81、熱媒体流入排熱回収利用配管82、及び排熱回収用熱媒体ポンプ83を有する排熱回収熱媒循環系84と、
図示しない空調機に組み込まれる温水コイルなどを温熱負荷とし熱媒とする温水と反応槽40へ導入する熱媒体とを熱交換する施設側熱交換器90、施設側熱交換器90の1次側に設ける熱媒体流出温水利配管91、熱媒体流入温水利用配管92、及び温水利用系の熱媒体ポンプ93を有する空調用温水加熱循環系94とを含んだ全体構成で構成されている。
【0020】
蒸発凝縮槽10は真空容器であり、蒸発凝縮槽内に貯蔵した水を加熱し、前記反応槽から送られてきた水蒸気を冷却凝縮する熱媒水を流通させる蒸発・凝縮管11、前記水槽内に貯蔵される水の水位を計測する水位計12、水槽内の圧力を測定する蒸発凝縮槽圧力計13が設けられている。また、前記蒸発・凝縮管11には、蒸発凝縮槽10に流入される熱媒水の温度を計測する流入熱媒水温度計14と排出される熱媒水の温度を計測する排出熱媒水温度計15が設けられている。なお、前記流入熱媒水温度計14と排出熱媒水温度計15は、化学蓄熱を利用した排熱蓄熱空調熱源システムの運転が正常に行われているかの監視計器であり、制御部2へ表示信号として出力する。
前記蒸発凝縮槽10と反応槽40は、上部配管21a、中部配管21b及び下部配管21cを有する外部水蒸気管21で連接されていて、放熱(発熱)運転が行われる時は外部水蒸気管21の中部配管21b及び下部配管21cを通じて蒸発凝縮10から反応槽40に水蒸気が送られ、蓄熱(吸熱)運転が行われる時は外部水蒸気管21の上部配管21a及び中部配管21bを通じて反応槽40から蒸発凝縮槽10に水蒸気が送られる。
本実施例においては、反応槽40内の蓄熱材がまんべんなく発熱・蓄熱反応が行えるよう反応槽40の前側と後側から水蒸気の供給・取出しが行えるように前記外部水蒸気管21の途中から外部水蒸気管22を連接し該外部水蒸気管22を反応槽40に連接している。なお、外部水蒸気管21と該外部水蒸気管21の途中に連接された外部水蒸気管22との2本の外部水蒸気管が反応槽40に連接されているが、外部水蒸気管21で前記外部水蒸気管22を兼ねても良い。
【0021】
真空ポンプ20は、反応槽40と蒸発凝縮槽10から不用な空気を吸引し真空状態を確保するもので、外部水蒸気配管21と外部水蒸気配管22の接続点から延長される真空引き配管23を接続し、真空引き配管23と外部水蒸気配管21により蒸発凝縮槽10に、真空引き配管23と外部水蒸気配管21及び外部水蒸気配管22により反応槽40に連接されている。
前記外部水蒸気配管21の上部配管21a、中部配管21b、下部配管21c及び真空引き配管23には、配管の途中にそれぞれ第一真空バルブ24、第二真空バルブ25、第三真空バルブ26及び第四真空バルブ27が設けられていて反応槽40と蒸発凝縮槽10から不用な空気を吸引したり、蒸発凝縮槽10と反応槽40間で水蒸気の授受を行ったりする際に、それぞれの用途に応じて制御部2からの出力信号により開閉される。
また、前記外部水蒸気配管21の上部配管21a及び下部配管21cには、配管の途中にそれぞれ反応槽40に向けて吐出口を位置させる第一真空ブロア31、及び蒸発凝縮槽10に向けて吐出口を位置させる第二真空ブロア32が設けられていて反応槽40と蒸発凝縮槽10間で水蒸気の授受を行う際に、それぞれの用途に応じて制御部2からの出力信号により運転・停止が行われる。
なお、第一真空ブロア31は、高揚程の真空ブロアを用いれば蓄熱運転の際反応槽に供給する熱媒体の温度を下げることができる。本実施の態様においては、第一真空ブロア31は揚程が1kPa位、第二真空ブロア32は揚程が2.5kPa位の真空ブロアを用いている。
34は、前記蒸発凝縮槽10側の外部水蒸気配管21に設けられた蒸発凝縮槽側真空バルブであり、35は、前記反応槽40側の外部水蒸気配管24に設けられた反応槽側真空バルブであり、後述するように本発明の化学蓄熱を利用した排熱蓄熱空調熱源システムを移動式に使用する場合に使用する。
【0022】
冷却塔60と蒸発凝縮槽10とは、蒸発・凝縮管11と冷却水還り管61、冷却水往き管64により連接されている。前記冷却水還り管61には冷却水ポンプ62と切り換えバルブ63、前記冷却水往き管64には切り換えバルブ65が設けられていて、これらにより冷却水循環系66を構成している。
吸着反応時に取り出せる冷熱は、図示しない空調機に組み込まれる冷水コイルなどを冷熱負荷に対し、冷水コイルへ送る冷水と蒸発・凝縮管に流す冷水とを熱交換する水−水熱交換器70と蒸発凝縮槽10とを、蒸発・凝縮管11に流す水循環管路74と該水循環管路74の途中に設けられる冷水ポンプ73により連接されていて、これらにより冷水循環系76を構成している。
前記蒸発凝縮槽10には前記冷却水循環系66と冷水循環系76が、切り換えバルブ63及び切り換えバルブ65の組と、切り換えバルブ72及び切り換えバルブ75の組で切り換えられるように接続されている。
前記熱媒体流入管45と前記熱媒体排出管45’とには、施設側熱交換器80に連接された施設側熱交換器80の1次側に設ける熱媒体流出排熱回収配管81、施設側熱交換器80の2次側に設ける熱媒体流入排熱回収配管82を介して及び排熱回収用熱媒体ポンプ83で熱媒体を循環するよう連接されていて、これらにより排熱回収熱媒循環系84を構成している。
また、吸着反応時に取り出せる温熱は、図示しない空調機に組み込まれる温水コイルなどを温熱負荷とし、温水と反応槽40へ導入する熱媒体とを熱交換する施設側熱交換器90及び施設側熱交換器90の1次側に設ける熱媒体流出温水利用配管91を介して、施設側熱交換器90と反応槽40とが連接されていて、これらにより空調用温水加熱循環系94を構成している。
熱媒体排出管45’の先は分岐し切り換えバルブ85、切り換えバルブ86が設けられ、熱媒体流入管45の先は分岐し切り換えバルブ87、切り換えバルブ88が設けられ、前記熱媒体流入温水利用配管92には熱媒体ポンプ93がそれぞれ設けられ、これらを切り換えることで、排熱回収熱媒循環系84、または、空調用温水加熱循環系94を切り換える。
【0023】
また、本願発明の化学蓄熱を利用した排熱蓄熱空調熱源システム1の概略中心部構成は、
図2に示すように、蒸発凝縮槽10内に貯蔵される水の水位を計測する水槽水位計12、水槽内の圧力を測定する圧力計13を、前記蒸発・凝縮管11には、蒸発凝縮槽10に流入される熱媒水の温度を計測する流入熱媒水温度計14、排出される熱媒水の温度を計測する排出熱媒水温度計15を、前記熱媒体流入管45には、反応槽40内の熱交換器50に送り込まれる熱媒体の温度を計測する流入熱媒体温度計46を、熱媒体排出管45’には反応槽40から排出される熱媒体の温度を計測する排出熱媒体温度計47を、反応槽40には、反応槽40内の圧力を測定する圧力計48を、それぞれ計測器として備え、それらの計測器からの計測信号に基づいて、第一真空バルブ24、第二真空バルブ25、第三真空バルブ26、第四真空バルブ27、第一真空ブロア31、第二真空ブロア32及び真空ポンプ20を制御する制御部2とで構成されている。
蒸発凝縮槽10は真空容器であり、蒸発凝縮槽内に貯蔵した水を加熱し、前記反応槽40から送られてきた水蒸気を冷却凝縮する熱媒水を流通させる蒸発・凝縮管11、前記蒸発凝縮槽10内に貯蔵される水の水位を計測する水位計12、蒸発凝縮槽10内の圧力を測定する圧力計13が設けられている。また、前記蒸発・凝縮管11には、蒸発凝縮槽に流入される熱媒水の温度を計測する流入熱媒水温度計14と排出される熱媒水の温度を計測する排出熱媒水温度計15が設けられている。なお、前記流入熱媒水温度計14と排出熱媒水温度計15は、化学蓄熱を利用した排熱蓄熱空調熱源システムの運転が正常に行われているかの監視計器であり、制御部2へ表示信号として出力する。
【0024】
真空ポンプ20は、反応槽40と蒸発凝縮槽10から不用な空気を吸引し真空状態を確保するもので、外部水蒸気配管21と外部水蒸気配管22の接続点から延長される真空引き配管23を接続し、真空引き配管23と外部水蒸気配管21により蒸発凝縮槽10に、真空引き配管23と外部水蒸気配管21及び22により反応槽40に連接されている。
前記外部水蒸気配管21には、上部配管21a、中部配管21b及び下部配管21cが設けられていて、前記上部配管21a、中部配管21b、下部配管21c及び前記真空引き配管23には、配管の途中にそれぞれ第一真空バルブ24、第二真空バルブ25、第三真空バルブ26と第四真空バルブ27が設けられていて反応槽40と蒸発凝縮槽10から不用な空気を吸引したり、蒸発凝縮槽10と反応槽40間で水蒸気の授受を行ったりする際に、それぞれの用途に応じて制御部2からの出力信号により開閉される。
また、前記上部配管21a及び前記下部配管21cの途中にそれぞれ反応槽40に向けて吐出口を位置させる第一真空ブロア31と、蒸発凝縮槽10に向けて吐出口を位置させる第二真空ブロア32が設けられていて反応槽40と蒸発凝縮槽10間で水蒸気の授受を行ったりする際に、それぞれの用途に応じて制御部2からの出力信号により運転・停止が行われる。
【0025】
図3に反応槽40の外観を示す。
前記反応槽40は、真空容器であり長方形の本体41と真空フランジ蓋42、43で構成されている。
前記真空フランジ蓋42、43には水蒸気を流入流出するための水蒸気流入流出管44、熱媒体を流入するための熱媒体流入管45及び熱媒体を流出するための熱媒体排出管45’が設けられている。
なお、本実施の態様においては、熱媒体として油を使用しているが、これに限定されるものではなく水等の液体を使用することもできる。
前記水蒸気流入流出管44は、蒸発凝縮槽10から水蒸気の供給を受ける場合は、流入管となり、蒸発凝縮槽10へ水蒸気を送る場合は、流出管となる。
なお、前記外部水蒸気配管21で水蒸気流入流出管44を兼ねても良い。
【0026】
前記反応槽40には、熱交換器50が配設されている。
図4はその熱交換器50の構成を示す斜視図である。また
図5は、熱交換器50及び反応槽40の平面断面図である。
両図に見られるように、熱交換器50は、外観上長方形の本体51と熱交換器蓋である熱交換器底板52及び熱交換器蓋である熱交換器蓋板53から構成されている。前記熱交換器50は、気体−液体熱交換器形状、いわゆるコイル形状をしており、その内部に水分を吸着することで発熱し、水分を脱離することで蓄熱する吸着材からなる粒状の蓄熱材54を充填している。吸着材としてはゼオライト、シリカゲル、ゼオライトのイオン交換品等が使用できる。本実施の形態においては、ゼオライト系の材料、例えば200℃以下で再生可能な合成ゼオライト系の吸着材が採用されている。
【0027】
前記熱交換器50の構造は、該蓄熱材54を加熱し該蓄熱材54から発熱した熱を受取る熱媒体を循環させるよう入口ヘッダ55と出口ヘッダ55’とで複数本に分岐しまた合流する熱媒体管56と、前記蓄熱材54の吸着反応に必要な水蒸気を与え、前記蓄熱材54の脱水反応により取り出された水蒸気を受け取る側面に開口を多数有する複数の水蒸気管57と、並行して固定される前記熱媒体管56と前記水蒸気管57とのそれぞれの外側面に各管の軸芯に直交する方向に接するように固定される多数のフィン58と、該フィン58と直交する方向の上面及び下面には開放された面を有し、前記フィン58と直交する方向の前記上面及び前記下面について、底に前記熱交換蓋である前記熱交換器底板52を配設して閉鎖した後に、粒状の前記蓄熱材54を前記フィン58間隙間に充填し、さらに上部の熱交換蓋である熱交換器蓋板53で閉鎖して全体をなしている。
前記熱媒体は熱媒体流入管45から入口ヘッダ55へ入り複数本の熱媒体管56へ分流され他方の出口ヘッダ55’で合流された後、熱媒体排出管45’を介して反応槽40外に搬出される。
また、前記熱媒体流入管45には、反応槽40内の熱交換器50に送り込まれる熱媒体の温度を計測する流入熱媒体温度計46が、熱媒体排出管45’には反応槽40から排出される熱媒体の温度を計測する排出熱媒体温度計47が設けられている(
図2参照)。
前記流入熱媒体温度計46及び排出熱媒体温度計47はそれぞれの計測信号を制御部2へ出力し、蓄熱材の水分吸着と水分の脱離反応時の所定の流入熱媒体温度に所定の差分を加算した設定排出熱媒体温度を、前記排出熱媒体温度計47で計測した排出熱媒体温度が下回った時点で、前記反応槽40内の前記蓄熱材54が所定の割合で発熱反応を終えたと判断し、第二真空バルブ25及び第三真空バルブ26を開から閉に動作させて、冷熱及び温熱の取り出しを終了させるよう制御する。
59は、真空継手であり、熱媒体流入管45と入口ヘッダ55、熱媒体体出管45’と出口ヘッダ55’とを反応槽40内の気密・真空を保ち、また反応槽40から水蒸気が漏出、空気が流入しないように接続する。
【0028】
前記制御部2は、前記反応槽40に設けられた反応槽圧力計48、前記熱媒体流入管45に設けられた流入熱媒体温度計46、前記熱媒体排出管45’に設けられた排出熱媒体温度計47、前記蒸発凝縮槽10に設けられた水位計12と圧力計13、前記蒸発・凝縮管11に設けられた流入熱媒水温度計14と排出熱媒水温度計15の各測定器からの計測値に基づいて、真空ポンプ20、第一真空バルブ26、第二真空バルブ27、第三真空バルブ28、第四真空バルブ29、第一真空ブロア31及び第二真空ブロア32の動作を制御し、化学蓄熱を利用した排熱蓄熱空調熱源システムの運転状況を制御する。
【0029】
図6は、吸着材の吸着平衡を説明する図で、吸着平衡について、アレニウスプロット上で示すもので、反応槽内の水蒸気圧力と蓄熱材に加えられる加熱温度とによる吸着材の吸着量の変化を示す。
同図において縦軸は圧力(水蒸気圧)を示し、絶対圧で表示している。
横軸は水蒸気の温度で、絶対温度分の1000が下に、その上が通常のセルシウス温度を示している。
同図において、右上の線は水の飽和水蒸気圧を示し、その下の複数の線は、蓄熱材(吸着材)の吸着量(m)0.05、0.10、0.15、0.20ごとの吸着平衡を表す線である。ここで、吸着量(m)は、吸着材の乾燥質量当たりの吸着量(ここでは水の質量)とする。
同図で明らかなように吸着材は吸着量と水蒸気圧で平衡状態(吸着平衡)が変化する。
例えば、60℃で乾燥状態(m=0)吸着材に水分を吸着するためには、吸着量0.1
kg/kg程度までは水蒸気圧が200Pa程度で吸着が可能である。
さらに、吸着量0.15kg/kgまで吸着するためには、水蒸気圧が700Pa程度必要となる。
このように温度を一定とした場合に吸着量を増加するためには、反応槽内の水蒸気圧力を上げることが必要であり、逆に反応槽内の圧力を一定とした場合に吸着量を増加するためには、温度を下げることが必要である。
【0030】
図7は、第一真空ブロワ31及び第二真空ブロワ32を備えていない排熱蓄熱空調熱源システムにおける運転時の温度圧力操作を示す。
この従来システムを発展させた一例は、本実施の形態におけるシステムにおける反応槽と蒸発凝縮槽と真空ポンプとの構成を、蒸発凝縮槽と反応槽を外部水蒸気管で接続し、該外部水蒸管と接続された真空引管に接続された真空ポンプと、それぞれの配管の途中に設けられた第一真空バルブ、第二真空バルブ及び第三真空バルブからなるもので、各バルブを開閉し両槽管内の圧力を利用して水蒸気の授受を行っている。
このような従来システムを発展させたシステムにおける蓄熱運転(脱離操作)から示す。
蓄熱運転の開始時における吸着材の吸着量(m)は約0.17kg/kg、再生温度は160℃とし〈1〉の点である。また、蒸発凝縮槽の冷却温度は25℃とし、a点である。
反応槽内で吸着材を160℃で加熱し、反応槽と蒸発凝縮槽との圧力差により、脱離した水分を蒸発凝縮槽へ移動し、蒸発凝縮槽で冷却し水分を凝縮する。蓄熱運転開始時は吸着量(m)が大きく、a点との圧力差が大きい(27kPa)ため、水分の脱離速度を大きくとることができる。水分の離脱が進むと、吸着量(m)が低下し、〈2〉の点に移動する。圧力差が数百Pa(400Pa)程度となり、これ以上の水分の脱離はこの条件では不可能であり、この時の吸着量は、0.07kg/kgで、この条件で脱離可能な水分量(Δm)は0.1kg/kg程度である。
このように脱離可能な水分量は再生温度(〈1〉、〈2〉)と蒸発凝縮槽の冷却温度(a点)により限定されてしまう。例えば、冷却塔からの冷却水温度に相当するa点の温度が25℃より高い夏の条件では、a点の温度が32℃程度であるため、〈2〉の圧力が上記の例より高い必要があり、脱離可能な水分量(Δm)は0.1より減少することになる。
【0031】
次に放熱運転(吸着操作)について示す。放熱運転開始時の吸着量(m)は、その前の蓄熱運転終了時の0.07kg/kgである。放熱温度は60℃とし〈3〉の点である。また、蒸発凝縮槽の加熱温度(冷熱利用温度)は10℃としb点である。
放熱運転では、蒸発凝縮槽で水を加熱し水蒸気を発生させ反応槽と蒸発凝縮槽の圧力差により水蒸気を反応槽へ移動し、吸着材に水を吸着する。
放熱運転開始時は吸着量(m)が少ない(0.07kg/kg)ため、反応槽は100Pa程度の低圧であり、b点との圧力差が大きい(950Pa)ため、運転開始時の水蒸気の移動量は大きい。水分の吸着が進むと、吸着量(m)が増加し〈4〉の点に移動する。〈4〉ではb点との圧力差が小さく(200Pa)水蒸気の移動量が小さくなる。また、蓄熱運転時と同様に吸着量の限界は吸着材の温度と蒸発凝縮槽の温度により限定される。このように前記従来システムの操作条件は、反応槽と蒸発凝縮槽の温度条件が決定すると、圧力範囲が決定するため、吸着脱離量の限界が決定し、同時に移送速度も限定的となってしまう。
【0032】
本実施例の化学蓄熱を利用した排熱蓄熱空調熱源システム1の運転動作(放熱・蓄熱)について、
図8(a)〜(c)に基づいて、蓄熱材(吸着材)54にゼオライトを用いる場合を(
図7も参照しつつ)説明する。なお、
図8においては、制御部2を省略している。
また、運転動作における温度と圧力については運転条件の一例でありこれに限定されるものではない。
最初に次の手順により脱気運転(a)を行う。
この状態では、全ての真空バルブは閉じた状態にある。
前記熱交換器50の前記熱交換蓋である前記熱交換器底板52を閉鎖した後に、前記蓄熱材54を前記熱交換器50のフィン58間隙間に充填し、上部の熱交換蓋である熱交換器蓋板53で閉鎖した前記熱交換器50を前記反応槽40内に、前記熱交換器50の側面と相対する真空フランジ蓋42を通じて入れ込み、この状態の反応槽40をセッティングし、一方蒸発凝縮槽10に水を充填する。真空ポンプ20を運転した状態で第四真空バルブ27及び反応槽側真空バルブ35を開放して反応槽40内の空気を排出する。
これは、粒状の蓄熱材54の微細孔や熱交換器50の隙間部分などに空気が溜まっているので、ある程度の時間真空引きする。反応槽の圧力計48の計測値により、内圧が100Pa程度まで低圧となったと制御部2が判断した後、次の動作に移る。
前記内圧100Paという値は、反応を阻害する要因である空気を極力系外へ排出できる経済的に真空引きできる値である。この内圧にすれば、発熱反応を起こす水蒸気をまんべんなく蓄熱材54に接触させることができ、発熱反応での水蒸気の蒸発凝縮槽10から反応槽40への移動力を付与できる。
【0033】
次に、反応槽側真空バルブ35を閉止し、第二真空バルブ25及び蒸発凝縮槽側真空バルブ34を開放して蒸発凝縮槽内10の空気を排出する。
これは、蒸発凝縮槽10内部水面上に気体として存在したり、貯留水にとけ込んだりして含まれる空気を、系外に真空引きで引き抜くためある程度の時間真空引きする。蒸発凝縮槽に設けられた圧力計13の計測値により、内圧がその水温の飽和水蒸気圧である1〜5kPaまで低圧となったと制御部2が判断した後、次の動作に移る。この飽和水蒸気圧1〜5kPaは、水温7℃〜32℃という前述の冷水系の水温、及び大気での熱交換を行う冷却塔への冷却水循環系でのある程度冷却された水温が、前記蒸発・凝縮管により間接で熱だけ与えられる水槽内水温での、飽和水蒸気圧である。
蒸発凝縮槽10内圧がその水温の飽和水蒸気圧の1〜5kPaまで低圧となったと制御部2が判断したした後、第四真空バルブ27、第二真空バルブ25及び蒸発凝縮槽側真空バルブ34を閉止し、真空ポンプ20を停止する。
【0034】
次に放熱運転(b)について説明する。
上記のように反応槽40内及び蒸発凝縮槽内10が前述の内圧によりある程度の真空状態になった状態で、反応槽40の熱媒体流入管45から50℃の熱媒体を反応槽40内の熱交換器50に送り込み熱媒体管56内を循環させる。また、蒸発凝縮槽10内の蒸発・凝縮管11に12℃の熱媒水を送り込み蒸発・凝縮管11内を循環させる。この当初時の状態は例えば、水槽10内の圧力は水12℃の飽和水蒸気圧約1.4kPaであり、反応槽40は数Pa程度の低圧である。
蒸発・凝縮管の12℃の熱媒水は、冷水の還り温度であり、汎用の冷凍機の蒸発器の設計値である12℃の還り冷水温度となっている。
蒸発凝縮槽10では、蒸発・凝縮管内を流れてくる12℃の熱媒水から熱を取り出し、蒸発凝縮槽10内の水を蒸発させて、代わりに蒸発・凝縮管の12℃の熱媒水を5℃まで冷却して水循環管路71を流していくのである。
放熱運転開始初期は蒸発凝縮槽10と反応槽40の圧力差が大きいため、第二真空バルブ25、蒸発凝縮槽側真空バルブ34及び反応槽側真空バルブ35を開放し水蒸気を両槽内の圧力差により反応槽40に移送する。そして、蒸発凝縮槽10の圧力計13と反応槽40の反応槽圧力計48の圧力差が同一又は一定値になった時点で第二真空バルブ25を閉止し、第三真空バルブ26を開放し、第二真空ブロア32を運転し、ブロア動力を付加し水蒸気を反応槽40に移送する。
これにより、蓄熱材の吸着量が増加するため発熱が加速される。
そして、反応槽40の熱媒体排出管45’に設けられている排出熱媒体温度計47によって熱媒体排出管45’から排出される熱媒体の温度が一定の温度になったことを確認した時点で第三真空バルブ26を閉止すると共に第二真空ブロア32の運転を停止し、蒸発凝縮槽10から反応槽40への水蒸気の供給を停止し、放熱運転を終了する。
このように、真空ブロアを運転し蒸発凝縮槽10から反応槽40へ強制的に水蒸気を送ることで蓄熱材の吸着量を増加させ発熱を促進させることができ、温水還りの水温50℃の水を加熱して、60℃の温水往き温度で供給可能となる。
また反面、蒸発凝縮槽10では、蒸発・凝縮管内を流れてくる12℃の熱媒水から熱を取り出し、蒸発凝縮槽10内の水を蒸発させ、蒸発・凝縮管の12℃の熱媒水を5℃まで冷却することができ、空調にて最も一般的に用いられる7℃の冷熱も取り出すことができる。
【0035】
次に放熱運転後の蓄熱運転(c)について説明する。
蓄熱運転は、蓄熱材から水分を離脱する側である。
まず、真空ポンプ20を運転した状態で第四真空バルブ27及び反応槽側真空バルブ35を開放して放熱運転時にリークにより反応槽40内に進入した空気を排出する。次に、反応槽側真空バルブ35を閉止し、第二真空バルブ25及び蒸発凝縮槽側真空バルブ34を開放して放熱運転時にリークにより蒸発凝縮槽10内に進入した空気を排出する。
この状態で、反応槽40の熱媒体流入管45から、排熱施設の施設側熱交換器を介して排熱熱媒と熱交換した90℃〜160℃程度、例えば、160℃の熱媒体を反応槽40内の熱交換器50に送り込み熱媒体管56内を循環させる。また、蒸発凝縮槽10内の蒸発・凝縮管11に7℃〜32℃程度、例えば、32℃の熱媒水を送り込み蒸発・凝縮管11内を循環させる。
上記反応槽40内の熱交換器50に送り込まれた熱媒体は、熱媒体管56内を循環し出口ヘッド55’を通って熱媒体排出管45’から反応槽40の外に排出される。
このように熱媒体が熱交換器50内の熱媒体管56内を循環する間に蓄熱材54が加熱され脱水反応が生じ水蒸気が発生する。
蓄熱運転開始初期は反応槽40と蒸発凝縮槽10との圧力差が大きいため、第二真空バルブ25、蒸発凝縮槽側真空バルブ34及び反応槽側真空バルブ35を開放し水蒸気を蒸発凝縮槽10に移動する。
そして、反応槽40の反応槽圧力計48と蒸発凝縮槽10の圧力計13との圧力差が同一又は一定値になった時点で第二真空バルブ25を閉止し、第一真空バルブ24を開放し、第一真空ブロア31を運転し、ブロア動力を付加し、水蒸気を反応槽40から蒸発凝縮槽10に移送する。
そして、蒸発凝縮槽10内に設けられた水位計12により蒸発凝縮槽10内の貯留水の水位を確認し、脱水が完了した時点で第一真空一バルブ24を閉止すると共に第一真空ブロア31の運転を停止し、反応槽40から蒸発凝縮槽10への水蒸気の供給を停止し、蓄熱運転を終了する。
このように、真空ブロアを運転し反応槽40から蒸発凝縮槽10へ強制的に水蒸気を送ることで蓄熱材の吸着量を増加させ蓄熱を160℃の排熱で十分促進させることができる。
なお、上記蒸発・凝縮管の32℃の熱媒水は、外気と熱交換する冷却塔により外気熱で冷却される冷却水の還り温度であり、夏期においても冷却器で冷やしたりしないでそのまま利用することができる温度である。
従来システムを発展させたシステムでは、25℃以下の還り温度の熱媒水が必要であり、夏期は、冷却塔にて外気で冷却した冷却水温度ではまだ高温なので、追加冷熱として冷凍機で冷やした熱媒により更に冷やして25℃にして供給していたが、本実施例においては、第一真空ブロア31を運転し、ブロア動力を付加し水蒸気を蒸発凝縮槽10に移送することで蒸発凝縮槽10内の圧力を上げることができ32℃の熱媒水を利用することができる。(
図11は、上記の本実施例の第一真空ブロワ31及び第二真空ブロワ32を備えている排熱蓄熱空調熱源システムにおける運転時の温度圧力操作を、吸着平衡についても、アレニウスプロット上で示したものである。)
【0036】
図9に、本件実施例の真空ブロウを用いて蓄熱材の吸着量を増大する運転方法を示す。
まず、蓄熱運転(脱離操作)から示す。蓄熱運転の開始時における蓄熱材の吸着量(m)は約0.2kg/kg、再生温度を160℃とし〈1〉の点である。蒸発凝縮槽の冷却温度を25℃とし、a点である。反応槽内で吸着材を160℃で過熱し、初期は反応槽と蒸発凝縮槽との圧力差により、脱離した水分を蒸発凝縮槽へ移動し、蒸発凝縮槽で水蒸気を冷却し水分を凝縮する。水分の脱離が進行し、吸着量が小さくなり(〈1〉から〈2〉の方向に移動)反応槽と蒸発凝縮槽との圧力差が小さくなった時点で、第一真空ブロア31を運転する。
真空ブロアを用いることで反応槽を蒸発凝縮槽より低圧化することが可能となり、〈2〉の点まで移動する。このときの吸着量は、0.05kg/kgであり、この条件で脱離可能な水分量(Δm)は0.15kg/kg程度である。
従来システムの運転と比較して、50%程度吸着脱離量を増大することができる。
【0037】
次に、放熱運転(吸着操作)について示す。放熱運転の開始時における蓄熱材の吸着量は、蓄熱運転終了時の吸着量で0.05kg/kgである。放熱温度を60℃とし〈3〉の点である。蒸発凝縮槽の加熱温度(冷熱利用温度)を10℃とし、b点である。放熱運転では、蒸発凝縮槽で水を加熱し水蒸気を発生させ、第二真空バルブ25を開くと、初期は両槽間の圧力差により第二真空バルブ25を通じて反応槽に水蒸気を移動し、蓄熱材に吸着する。
放熱運転開始時は吸着量(m)が少ないため、反応槽は100Pa程度の低圧であり、b点との圧力差が大きく運転開始時の水蒸気の移動量は大きい。水分の吸着が進み、反応槽と蒸発凝縮槽の間の圧力差が小さくなった時点で、第二真空バルブ25を閉じ、第三真空バルブ26を開き第二真空ブロア32を運転する。第二真空ブロア32を運転することで低圧な蒸発凝縮槽から相対的に高圧な反応槽に水蒸気を移動することが可能となり、〈4〉の点まで吸着量を持ち上げることができる。
このように従来のシステムでは、温度条件により決定する圧力により、吸着量に限界があったが、本実施例のように、真空ブロアを用いることにより圧力条件を操作することで、吸着・脱利離量を50%程度増加させ、蓄熱量を拡大することができる。
【0038】
図10に、本件実施例の蓄熱温度条件を低温化する場合の温度・圧力条件を示
す。具体的には、蓄熱温度条件を160℃から90℃程度に低温化する場合の温度・圧力条件を示す。
上記と同様に真空ブロアを用いることにより、蓄熱温度条件を低温化することができる。このように蓄熱運転の熱源の温度条件を緩和することができ、排熱源の温度条件を、従来システムでは160℃程度必要であったものが、90℃程度の排熱源の温度に対応が可能となり、システムの適応先の幅が拡大される。
【0039】
図11には、蒸発凝縮槽の蓄熱時と放熱時の温度を、従来システムを発展したシステムから変更する、本実施例の場合の温度・圧力条件を、前記にも説明したが示す。
具体的には、蒸発凝縮槽の温度条件を蓄熱時に32℃、放熱時に5℃に変更する場合の温度・圧力条件を示す。前記32℃の温度は、夏期の冷却塔により外気熱で冷却される冷却水の還り温度であり、夏期においても冷却器で冷やすことなくそのまま利用することができる、温度である。上記と同様に真空ブロアを用いることにより、蒸発凝縮槽の温度条件の自由度を増すことができ、a点とb点をそれぞれ高温側、低温側へ移動することができる。このように、蓄熱時の蒸発凝縮槽の源熱(例えば、冷却塔)の温度条件を緩和し、夏期の冷却塔からの冷却水の温度であっても蓄熱量が低下しなくなる。
また、従来システムでは10℃程度が現実的であった冷水温度をさらに低温化することができ、冷熱の適応条件を拡大することができる。
【0040】
図12〜
図14により、他の実施例として化学蓄熱を利用した排熱蓄熱空調熱源システムを移動式に使用した概略全体構成を説明する。
図12は化学蓄熱を利用した排熱蓄熱空調熱源システムを移動式に使用した第1実施例で、同図(a)では、排熱施設へ接続して蓄熱するために脱水反応を行わせ、同図(b)では、熱利用施設へ接続して放熱するために反応を行わせている様子を示している。
前記
図1の説明で説明している箇所と同じものは省略する。
本実施例は、蒸発凝縮槽10、真空ポンプ20、反応槽40、外部水蒸気管21、真空引き配管23、第一真空バルブ24、第二真空バルブ25、第三真空バルブ25、第四真空バルブ27、蒸発凝縮側真空バルブ34、反応槽側真空バルブ35、第一真空ブロア31、熱媒体流入管45、熱媒体排出管45’、第二真空ブロア32及びに前記蒸発凝縮槽10、真空ポンプ20、反応槽40、第一真空バルブ24、第二真空バルブ25、第三真空バルブ26、第四真空バルブ27、蒸発凝縮側真空バルブ34、反応槽側真空バルブ35、第一真空ブロア31、第二真空ブロア32を制御する制御部2からなる化学蓄熱を利用した排熱蓄熱空調熱源システムにおいて、自動車、鉄道または船舶で移動できる架台上に、蒸発凝縮槽10、反応槽40、外部水蒸気管21、蒸発凝縮側真空バルブ34、反応槽側真空バルブ35、熱媒体流入管45、熱媒体排出管45’までを設置し、排熱施設の排熱回収熱媒循環系84及び冷却水循環系66と着脱可能であり、熱利用施設の空調用温水加熱循環系94及び冷水循環系76と着脱可能なように、熱媒体流入管に流入側カップリングを、熱媒体排出管に流出側カップリングを、蒸発凝縮槽の前記蒸発・凝縮管の入口出口タッピングにそれぞれ、流入側水カップリング、流出側水カップリングを付属させて、排熱施設と熱利用施設との間を移動させ、カップリングで着脱することで、排熱、冷熱の有効利用を図るものである。
図13は化学蓄熱を利用した排熱蓄熱空調熱源システムを移動式に使用した第2実施例で、同図(a)では、排熱施設へ接続して蓄熱するために脱水反応を行わせ、同図同図(b)で、熱利用施設へ接続して放熱するために反応を行わせている様子を示している。
前記
図12の実施例の構成に加えて、第二真空バルブ25までを、自動車、鉄道または船舶で移動できる架台上に設置したものである。
図14は化学蓄熱を利用した排熱蓄熱空調熱源システムを移動式に使用した第3実施例で、同図(a)は、排熱施設へ接続して蓄熱するために脱水反応を行わせ、同図(b)で、熱利用施設へ接続して放熱するために和反応を行わせている様子を示している。
前記
図12の実施例の構成に加えて、真空引き配管23、第二真空バルブ25、第四真空バルブ27、真空ポンプ20までを、自動車、鉄道または船舶で移動できる架台上に設置したものである。