特許第6246079号(P6246079)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2015.5.11 β版

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特許6246079リチウム二次電池用正極活物質板の製造方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6246079
(24)【登録日】2017年11月24日
(45)【発行日】2017年12月13日
(54)【発明の名称】リチウム二次電池用正極活物質板の製造方法
(51)【国際特許分類】
   H01M 4/1391 20100101AFI20171204BHJP
   H01M 4/505 20100101ALI20171204BHJP
   H01M 4/525 20100101ALI20171204BHJP
   C01G 53/00 20060101ALI20171204BHJP
【FI】
   H01M4/1391
   H01M4/505
   H01M4/525
   C01G53/00 A
【請求項の数】13
【全頁数】14
(21)【出願番号】特願2014-125113(P2014-125113)
(22)【出願日】2014年6月18日
(65)【公開番号】特開2016-4703(P2016-4703A)
(43)【公開日】2016年1月12日
【審査請求日】2017年1月18日
(73)【特許権者】
【識別番号】000004064
【氏名又は名称】日本碍子株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100113365
【弁理士】
【氏名又は名称】高村 雅晴
(74)【代理人】
【識別番号】100131842
【弁理士】
【氏名又は名称】加島 広基
(72)【発明者】
【氏名】大平 直人
(72)【発明者】
【氏名】由良 幸信
(72)【発明者】
【氏名】小林 伸行
(72)【発明者】
【氏名】岡田 茂樹
【審査官】 松嶋 秀忠
(56)【参考文献】
【文献】 国際公開第2010/074304(WO,A1)
【文献】 特開2012−003879(JP,A)
【文献】 特開2014−049301(JP,A)
【文献】 国際公開第2014/061580(WO,A1)
【文献】 国際公開第2014/050572(WO,A1)
【文献】 米国特許出願公開第2014/0158932(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01M 4/1391
C01G 53/00
H01M 4/505
H01M 4/525
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
リチウム二次電池用正極活物質板の製造方法であって、
(a)ニッケル・コバルト・マンガン複合水酸化物の板状一次粒子が凝集した二次粒子からなり、前記板状一次粒子が前記二次粒子の中心から外方向に向かって概ね放射状に並んでなる、水酸化物原料粉末を用意する工程と、
(b)前記水酸化物原料粉末に、所定量のリチウム化合物を混合して混合粉末とする工程であって、前記所定量が、前記水酸化物原料粉末に含まれるNi+Co+Nnの合計量に対する、前記リチウム化合物に含まれるLi含有量のモル比、すなわちLi/(Ni+Co+Mn)が1.00以上となる量である工程と、
(c)前記混合粉末を仮焼してリチウム遷移金属複合酸化物及び/又はその前駆体を合成する工程と、
(d)前記リチウム遷移金属複合酸化物及び/又はその前駆体をシート状に成形して成形体シートを作製する工程と、
(e)前記成形体シート上に、所定量の炭酸リチウムを載置する工程であって、前記所定量が、前記成形体シートに含まれるNi+Co+Mnの合計量に対する、前記載置される炭酸リチウムに含まれるLi含有量のモル比、すなわちLi/(Ni+Co+Mn)が0.7以上となる量である工程と、
(f)前記炭酸リチウムが載置された前記成形体シートを850℃以上の温度で焼成して、正極活物質板を形成させる工程と、
を含んでなる、方法。
【請求項2】
前記ニッケル・コバルト・マンガン複合水酸化物が、(Ni,Co,Mn)(OH)(式中、0<x<0.8、0<y<1、0≦z≦0.7、x+y+z=1)で表される組成を有する、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記正極活物質板が、Li(Ni,Co,Mn)O(式中、0.9≦p≦1.3、0<x<0.8、0<y<1、0≦z≦0.7、x+y+z=1)の組成を有する、請求項1又は2に記載の方法。
【請求項4】
前記(e)工程における前記モル比Li/(Ni+Co+Mn)が1.0〜1.8である、請求項1〜3のいずれか一項に記載の方法。
【請求項5】
前記(d)工程におけるシート状への成形が、前記リチウム遷移金属複合酸化物及び/又はその前駆体をスラリー化してテープ成形に付することにより行われる、請求項1〜4のいずれか一項に記載の方法。
【請求項6】
前記(d)工程における前記成形体シートが10〜60μmの厚さを有する、請求項1〜5のいずれか一項に記載の方法。
【請求項7】
前記(e)工程において炭酸リチウムが、該リチウム化合物を含んでなるリチウム含有シートの形態で前記成形体シート上に載置される、請求項1〜6のいずれか一項に記載の方法。
【請求項8】
前記(e)工程における前記リチウム含有シートが、炭酸リチウムをスラリー化してテープ成形に付することにより得られたものである、請求項7に記載の方法。
【請求項9】
前記(e)工程において前記成形体シートが、前記正極活物質板の組成に概ね対応したLi(Ni,Co,Mn)O(式中、0.9≦p≦1.3、0<x<0.8、0<y<1、0≦z≦0.7、x+y+z=1)の組成を有する粉末で敷き詰められた下地層の上に載置される、請求項1〜8のいずれか一項に記載の方法。
【請求項10】
前記(a)工程において前記水酸化物原料粉末が2〜10μmの体積基準メジアン径D50を有する、請求項1〜9のいずれか一項記載の方法。
【請求項11】
前記(b)工程で用いられる前記リチウム化合物が、炭酸リチウム、水酸化リチウム、及びそれらの水和物からなる群から選択される少なくとも1種である、請求項1〜10のいずれか一項に記載の方法。
【請求項12】
前記(c)工程における仮焼が、500〜900℃の温度で行われる、請求項1〜11のいずれか一項に記載の方法。
【請求項13】
前記(f)工程における焼成が、850〜960℃の温度で行われる、請求項1〜12のいずれか一項に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、リチウム二次電池用正極活物質板の製造方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
リチウム二次電池(リチウムイオン二次電池と称されることもある)における正極活物質として、層状岩塩構造を有するリチウム複合酸化物(リチウム遷移金属酸化物)を用いたものが広く知られている(例えば、特許文献1(特開平5−226004号公報)及び特許文献2(特開2003−132887号公報)を参照)。
【0003】
この種の正極活物質においては、その内部でのリチウムイオン(Li)の拡散が(003)面の面内方向(すなわち(003)面と平行な平面内の任意の方向)で行われる一方、(003)面以外の結晶面(例えば(101)面や(104)面)でリチウムイオンの出入りが生じることが知られている。
【0004】
そこで、この種の正極活物質において、リチウムイオンの出入りが良好に行われる結晶面((003)面以外の面、例えば(101)面や(104)面)をより多く電解質と接触する表面に露出させることで、リチウム二次電池の電池特性を向上させる試みがなされている。例えば、特許文献3(国際公開第2010/074313号参照)には、Li(Co,Ni,Mn)O(式中、0.97≦p≦1.07,0.1<x≦0.4,0.3<y≦0.5,0.1<z≦0.5,x+y+z=1)で表され、層状岩塩構造を有する、リチウム二次電池の正極活物質膜が開示されており、(003)面が膜面と交差するように配向していることが記載されている。
【0005】
また、特許文献4(国際公開第2014/061579号)及び特許文献5(国際公開第2014/061580号)には、一次粒子の少なくとも一部が二次粒子の中心から外方に向かって放射状に並んでなる水酸化物原料粉末を用いて、層状岩塩構造を有するリチウム二次電池用正極活物質を製造する方法が開示されている。これらの特許文献には、正極活物質を構成するリチウム複合酸化物として、LiNi1−z(式中、0.96≦x≦1.09、0<z≦0.5、MはCo、Al、Mg、Mn、Ti、Fe、Cr、Zn及びGaからなる群から選択される少なくとも1種以上の金属元素)で表されるものが好ましく、特に好ましい金属元素Mの組合せがCo及びAl、又はCo及びMnであることが記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開平5−226004号公報
【特許文献2】特開2003−132887号公報
【特許文献3】国際公開第2010/074313号
【特許文献4】国際公開第2014/061579号
【特許文献5】国際公開第2014/061580号
【発明の概要】
【0007】
特許文献3〜5に開示されるようなリチウム・ニッケル・コバルト・マンガン複合酸化物(しばしばNCMと略称される)からなる正極活物質は、良好な電池特性(例えば容量、レート特性及び耐久性)をもたらすとともに、充放電時のリチウムの出入りに伴う膨張及び収縮が小さいとの利点がある。そこで、リチウム・ニッケル・コバルト・マンガン複合酸化物からなる正極活物質板を上手く作製することができれば、リチウム二次電池において極めて有用なものとなり、膨張及び収縮が小さい点で全固体電池にも適したものとなる。この点、特許文献3に記載の手法によれば、表面に(104)面が露出した配向板状粒子を作製することで、電池特性(例えば容量、レート特性及び耐久性)に優れた正極活物質自立膜を得ることは可能である。しかしながら、特許文献3に開示される手法により作製した正極板は、粒成長を促進させて得られたものであるため、正極板の表面の粒界部分で平坦度が劣化しやすく、また反りが発生しやすいという傾向がある。このため、特に反りが強調されやすい大面積(例えば10mm×10mm平方以上)の正極活物質板への適用を試みる場合、更なる改善が望まれる。
【0008】
また、体積エネルギー密度を高くする観点からすれば、正極活物質板は緻密板であることが望まれる。一般に、正極活物質材料の粉末を高温で焼き固めることで緻密板は作製できるものの、分解やリチウム揮発に起因して正極活物質板における組成ズレが大きくなることがあり、その場合、電池としての所期の特性を十分に発揮できなくなる。したがって、電池特性を劣化させることなく正極活物質板を緻密化できる手法が望まれる。
【0009】
本発明者らは、今般、放射状配向を有する水酸化物原料粉末を用いてリチウム遷移金属複合酸化物(NCM)を合成し、このリチウム遷移金属複合酸化物で形成されたNCMシートに過剰量の炭酸リチウムを載置して焼成を行うことにより、緻密性及び平坦性に優れ、かつ、リチウム二次電池において優れた電池特性を発揮することが可能な正極活物質板を製造できるとの知見を得た。
【0010】
したがって、本発明の目的は、緻密性及び平坦性に優れ、かつ、リチウム二次電池において優れた電池特性を発揮することが可能な正極活物質板を提供することにある。
【0011】
本発明の一態様によれば、リチウム二次電池用正極活物質板の製造方法であって、
(a)ニッケル・コバルト・マンガン複合水酸化物の板状一次粒子が凝集した二次粒子からなり、前記板状一次粒子が前記二次粒子の中心から外方向に向かって概ね放射状に並んでなる、水酸化物原料粉末を用意する工程と、
(b)前記水酸化物原料粉末に、所定量のリチウム化合物を混合して混合粉末とする工程であって、前記所定量が、前記水酸化物原料粉末に含まれるNi+Co+Nnの合計量に対する、前記リチウム化合物に含まれるLi含有量のモル比、すなわちLi/(Ni+Co+Mn)が1.00以上となる量である工程と、
(c)前記混合粉末を仮焼してリチウム遷移金属複合酸化物及び/又はその前駆体を合成する工程と、
(d)前記リチウム遷移金属複合酸化物及び/又はその前駆体をシート状に成形して成形体シートを作製する工程と、
(e)前記成形体シート上に、所定量の炭酸リチウムを載置する工程であって、前記所定量が、前記成形体シートに含まれるNi+Co+Mnの合計量に対する、前記載置される炭酸リチウムに含まれるLi含有量のモル比、すなわちLi/(Ni+Co+Mn)が0.7以上となる量である工程と、
(f)前記炭酸リチウムが載置された前記成形体シートを850℃以上の温度で焼成して、正極活物質板を形成させる工程と、
を含んでなる、方法が提供される。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1】本発明の方法に用いる放射状配向水酸化物原料粉末を示す模式断面図である。
図2】本発明の方法において、放射状配向水酸化物原料粉末が正極活物質板に加工されるまでの一連の工程を模式的に示す図である。
図3A】例5で作製された正極活物質板を上から撮影した写真である。
図3B】例5で作製された正極活物質板を横から撮影した写真である。
図3C】例5で作製された正極活物質板の断面のSEM画像である。
図4A】例10(比較)で作製された正極活物質板を上から撮影した写真である。
図4B】例10(比較)で作製された正極活物質板を横から撮影した写真である。
図4C】例10(比較)で作製された正極活物質板の断面のSEM写真である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
リチウム二次電池用正極活物質板の製造方法
本発明はリチウム二次電池用正極活物質板の製造方法に関する。本発明により製造される正極活物質板は、正極活物質であるリチウム・ニッケル・コバルト・マンガン複合酸化物(以下、NCM)からなる。典型的なNCMは、Li(Ni,Co,Mn)O(式中、0.9≦p≦1.3、0<x<0.8、0<y<1、0≦z≦0.7、x+y+z=1であり、好ましくは0.95≦p≦1.1、0.1≦x<0.7、0.1≦y<0.9、0≦z≦0.6、x+y+z=1である)で表される組成を有する。もっとも、正極活物質板は、本発明の趣旨を逸脱しない範囲内において、Mg,Al,Si,Ca,Ti,V,Cr,Fe,Cu,Zn,Ga,Ge,Sr,Y,Zr,Nb,Mo,Ag,Sn,Sb,Te,Ba,Bi等の元素が1種以上更にドーピング又はそれに準ずる形態(例えば結晶粒子の表層への部分的な固溶、又は偏析)で微量添加されていてもよい。いずれにせよ、NCM組成の正極活物質は層状岩塩構造を有する。「層状岩塩構造」とは、リチウム層とリチウム以外の遷移金属層とが酸素の層を挟んで交互に積層された結晶構造(典型的にはα−NaFeO型構造:立方晶岩塩型構造の[111]軸方向に遷移金属とリチウムとが規則配列した構造)をいう。この点、本発明による正極活物質板は、図1に示されるような板状一次粒子1aが二次粒子1の中心から外方向に向かって概ね放射状に並んでなる水酸化物原料粉末を用いて作製されるものであり、正極活物質板はその原料粉末の放射状配向に由来する配向性を有意に又はある程度引き継ぐことができる。特に、放射状に並んだ個々の板状一次粒子はその板面が(003)面(その面内方向にリチウムが移動する)となるため、それらの板状一次粒子が概ね放射状に並んで構成される二次粒子の表面、さらにはそのような二次粒子が焼結してなる正極活物質板の表面にはリチウム出入り面(すなわち(003)面以外の結晶面(例えば(101)面や(104)面))が露出して該表面でのリチウムイオンの出入りが容易となる。すなわち、正極活物質板の表面及びその内部(多数の二次粒子が焼結されてなる)にわたってリチウムイオンのスムーズな移動が可能になる結果、電池特性(例えば容量及びレート特性)を向上することができる。
【0014】
本発明の方法によるリチウム二次電池用正極活物質板の製造は、図2に模式的に示されるように、(a)このような放射状配向を有するニッケル・コバルト・マンガン複合水酸化物原料粉末を用意し、(b)この原料粉末に所定量のリチウム化合物を混合し、(c)得られた混合粉末を仮焼してリチウム遷移金属複合酸化物及び/又はその前駆体を合成し、(d)これをシート状に成形し、(e)得られた成形体シート上に過剰量の炭酸リチウム(融点:730℃)を載置し、(f)850℃以上の温度で焼成して正極活物質板を形成させることにより行われる。そして、こうして製造される正極活物質板は、緻密性及び平坦性に優れ、かつ、リチウム二次電池において優れた電池特性を発揮することが可能なものである。この点、優れた電池特性については、前述したように、放射状配向を有する水酸化物原料粉末(NCM系水酸化物)を使用することで、正極活物質板内の板状一次粒子(結晶粒子)を放射状に配向させる(すなわち二次粒子及び正極活物質板の表面に(003)面が出ていない配向状態にする)ことで実現されるのではないかと考えられる。一方、緻密性及び平坦性にも優れる点は実に予想外なことであったが、優れた平坦性は、原料粉末を予めリチウム合成(仮焼)することで焼成時における不必要な反応を低減した結果、反りが抑制されたのではないかと推察される。また、優れた緻密性は、焼成時にシート外部からリチウムが過剰に供給されることで緻密化が促進されたためではないかと推察される。
【0015】
このような本発明によれば以下の利点をもたらすことができる。第一に、緻密かつ平坦な板形状の正極活物質板が得られるため、薄型電池等に好ましく適用することができる。また、粉末形態の正極活物質とは異なり、バインダーや導電助剤と混ぜる必要が無い上、気孔による空間も殆ど無い又は乏しいため、電池の正極活物質板として使用した場合に活物質密度を最大限に高めて電池容量を高くすることができる。その意味で、本発明による正極活物質板はバインダー及び導電助剤を含まないものであるのが好ましいといえる。第二に、放射状に配向している結晶粒子を焼結させることで、正極活物質板の表面にはリチウム出入り面(すなわち(003)面以外の結晶面(例えば(101)面や(104)面))が露出させた構造を作ることができる。その結果、表面でのリチウムイオンの移動を効率よく行うことができる正極活物質板(すなわち、電池とした時の充放電レートが高い正極活物質板)を製造することができる。第三に、充放電時の正極活物質板の膨張収縮に異方性が無いため、繰り返し使用による劣化(例えば内部割れ)が少ない(すなわち、充放電を繰り返しても劣化が小さい)正極活物質板を製造することができる。
【0016】
以下、本発明の製造方法の各工程の詳細について説明する。
【0017】
(a)水酸化物原料粉末の用意
この工程(a)では、図1に模式的に示されるように、ニッケル・コバルト・マンガン複合水酸化物の板状一次粒子1aが凝集した二次粒子1からなり、板状一次粒子1aが二次粒子1の中心から外方向に向かって概ね放射状に並んでなる、水酸化物原料粉末を用意する。このような放射状配向を有する水酸化物粉末はその製造方法とともに公知である。ニッケル・コバルト・マンガン複合水酸化物は、典型的には(Ni,Co,Mn)(OH)(式中、0<x<0.8、0<y<1、0≦z≦0.7、x+y+z=1)で表される組成を有し、好ましくは0.95≦p≦1.1、0.1≦x<0.7、0.1≦y<0.9、0≦z≦0.6、x+y+z=1である。この水酸化物原料粉末は本発明の趣旨を逸脱しない範囲内で他の微量添加元素(例えばAl、Mg、Ti、Fe、Cr、Zn、Ga等)を含んでいてもよく、また、そのような微量添加元素を後続の工程で適宜添加してもよい。
【0018】
水酸化物原料粉末は、二次粒子径として、2〜10μmの体積基準メジアン径D50を有するのが好ましく、より好ましくは2〜7μm、さらに好ましくは3〜5μmである。通常はこのような範囲内の粒径の水酸化物原料粉末であると孔が残りやすく正極活物質板の緻密化が難しかったが、本発明の方法によれば緻密化を促進させることができる。
【0019】
このような放射状配向を有する水酸化物原料粉末は公知の技術に従って作製することができる(例えば特許文献4及び5を参照)。例えば、pH及び温度を適宜調整した槽内に、ニッケル塩水溶液(例えば硫酸ニッケル水溶液)、コバルト塩水溶液(例えば硫酸コバルト水溶液)、マンガン塩水溶液(例えば硫酸マンガン水溶液)、苛性アルカリ水溶液(例えば水酸化ナトリウム水溶液)、及びアンモニウムイオン供給体(例えば硫酸アンモニウム水溶液)を、その濃度及び流量を制御しながら連続的に供給して採取する方法が挙げられる。このとき、槽内のpHを10.0〜13.0とし、温度を40〜80℃とするのが好ましい。こうして作製されたニッケル・コバルト・マンガン複合水酸化物には、水洗、脱水、及び乾燥処理を施すのが好ましい。なお、反応槽への上記各化合物の投入から水酸化物の取り出しに至るまでの一連の工程(すなわち水洗、脱水及び乾燥処理を除く一連の工程)はいずれも不活性雰囲気中で行うのが好ましい。
【0020】
(b)リチウム化合物との混合
この工程(b)では、水酸化物原料粉末に所定量のリチウム化合物を混合して混合粉末とする。このとき、リチウム化合物の量は、水酸化物原料粉末に含まれるNi+Co+Nnの合計量に対する、リチウム化合物に含まれるLi含有量のモル比、すなわちLi/(Ni+Co+Mn)が1.00以上、好ましくは1.00〜1.20、より好ましくは1.02〜1.10となる量とする。このようにNCMの組成(すなわちLi(Ni,Co,Mn)O)に対して同等ないしそれ以上のリチウム化合物量とすることで、後続の仮焼工程(c)の際の揮発によるリチウム損失を補填しながらリチウムとの合成反応を促進することができる。リチウム化合物は正極活物質板の組成(すなわちLi(Ni,Co,Mn)O)を最終的に与えることが可能なあらゆるリチウム含有化合物が使用可能であり、好ましい例としては炭酸リチウム、水酸化リチウム、及びそれらの水和物、並びにそれらの任意の組合せが挙げられる。反応に先立ち、水酸化物原料粉末はリチウム化合物と、乾式混合、湿式混合等の手法により混合されるのが好ましい。リチウム化合物の平均粒子径は特に限定されないが、0.1〜5μmであることが吸湿性の観点からの取扱い容易性及び反応性の観点から好ましい。また、前述したとおり、本発明の趣旨を逸脱しない範囲内で微量添加元素(例えばAl、Mg、Ti、Fe、Cr、Zn、Ga等)がこの工程(b)で添加されてもよい。
【0021】
(c)仮焼(リチウム合成)
この工程(c)では、混合粉末を仮焼してリチウム遷移金属複合酸化物及び/又はその前駆体(以下、リチウム遷移金属複合酸化物等と総称する)を合成する。このときリチウム遷移金属複合酸化物が合成されるのが望ましいが、最終的な焼成工程(f)においてリチウム遷移金属複合酸化物を合成できれば足りるため、リチウム遷移金属複合酸化物の前駆体(例えば、完全にはリチウムと合成されていないものや、完全には酸化物となっていないもの)を含む形態で合成されてもよい。本工程における仮焼は500〜900℃の温度で行われるのが好ましく、より好ましくは600〜800℃であり、さらに好ましくは700〜800℃である。この範囲内であると、粒成長が十分となり、リチウム遷移金属複合酸化物等の分解やリチウムの揮発を抑制して所望の組成が実現しやすくなる。仮焼時間は特に限定されないが、好ましくは1〜50時間であり、より好ましくは5〜30時間である。この仮焼は混合粉末をサヤ(好ましくはアルミナ製)に入れて、大気雰囲気等の酸化性雰囲気で行うのが好ましい。
【0022】
仮焼雰囲気は、仮焼中に分解が進まないように適宜設定することが望ましい。リチウムの揮発が進むような場合は、炭酸リチウム等を同じサヤ内に配置してリチウム雰囲気とすることが好ましい。仮焼中に酸素の放出や、さらには還元が進むような場合、酸素分圧の高い雰囲気で焼成することが好ましい。なお、仮焼後に、正極活物質粒子同士の癒着や凝集を解したり、リチウム遷移金属複合酸化物等の平均粒子径を調整したりする目的で、適宜、解砕や分級が行われてもよい。
【0023】
(d)成形体シートの作製
この工程(d)では、リチウム遷移金属複合酸化物等をシート状に成形して成形体シートを作製する。シート状への成形手法は公知の手法に従って行えばよく特に限定されないが、リチウム遷移金属複合酸化物等をスラリー化してテープ成形に付することにより行われるのが好ましい。テープ成形法の典型的な例としてはドクターブレード法が挙げられる。ドクターブレード法等のテープ成形法を用いる場合、可撓性を有する板(例えばPETフィルムなどの有機ポリマー板など)にスラリーを塗布し、塗布したスラリーを乾燥固化して成形体シートとし、この成形体シートを板から剥離して、自立した成形体シートとすればよい。成形前にスラリーや坏土を調製するときには、リチウム遷移金属複合酸化物等を分散媒に分散させ、バインダーや可塑剤などを適宜加えてもよい。また、スラリーは、粘度が500〜4000cPとなるように調製するのが好ましく、減圧により脱泡するのが好ましい。成形体シートの好ましい厚さは5〜80μmであり、より好ましくは10〜60μmであり、さらに好ましくは20〜50μm、特に好ましくは20〜40μmである。この範囲内の厚さであると、比較的厚い板であるにもかかわらず、緻密性及び平坦性に優れた正極活物質板を得ることができる。
【0024】
また、シート状に成形する他の手法としては、ドラムドライヤーを用いた手法(例えば熱したドラム上へリチウム遷移金属複合酸化物等を含むスラリーを塗布し、乾燥させたものをスクレイパーで掻きとる)、ディスクドライヤーを用いた手法(例えば熱した円板面へリチウム遷移金属複合酸化物等を含むスラリーを塗布し、これを乾燥させてスクレイパーで掻きとる)、及び押出成形法(例えばリチウム遷移金属複合酸化物等を含む坏土をシート状に押出す)が挙げられる。
【0025】
本工程(d)で得られる成形体シートは、典型的には、それ単体でシート状の成形体の形状を保つことができる「自立した成形体」である。なお、それ単体ではシート状の成形体の形状を保つことができないものであっても、何らかの基板上に貼り付け又は成膜して焼成前又は焼成後に基板から剥離したものも、「自立した成形体」に含まれる。後続の工程に先立ち、成形体シートは所望のサイズに適宜切断されてもよい。もっとも、成形されたままのシート形態で後続の工程に付されてよいことはいうまでもない。
【0026】
(e)炭酸リチウムの載置
この工程(e)では、成形体シート上に所定量の炭酸リチウムを載置する。このとき、炭酸リチウムの量を、成形体シートに含まれるNi+Co+Mnの合計量に対する、載置される炭酸リチウムに含まれるLi含有量のモル比、すなわちLi/(Ni+Co+Mn)が0.7以上、好ましくは0.7〜2.0、より好ましくは1.0〜1.8、さらに好ましくは1.1〜1.5となる量とする。すなわち、成形体シートはリチウム遷移金属複合酸化物等を含んでなるためリチウムを含むものであるところ、本工程(e)ではさらにその上に過剰量のリチウム化合物として炭酸リチウムを載置する。この過剰量のリチウム化合物の殆どないし全てが後続の焼成工程(f)で消失することになるが、その焼成時に成形体シート上に過剰量の炭酸リチウムが存在させることで、予想外なことに、緻密性及び平坦性に優れる正極活物質板が得られる。
【0027】
炭酸リチウムの載置は、炭酸リチウムを含んでなるリチウム含有シートの形態で成形体シート上に載置することにより行われるのが特に好ましい。リチウム含有シートは、炭酸リチウムをスラリー化してテープ成形に付することにより得られたものであるのが好ましく、テープ成形の手法については前述した工程(d)で述べた手法と同様にして行えばよい。リチウム含有シートの厚さは上記Li/(Ni+Co+Mn)比が所望の値となるような量の炭酸リチウムを与えるように適宜決定すればよく、例えば20〜60μmである。
【0028】
また、成形体シートが、正極活物質板の組成に概ね対応した組成、典型的にはLi(Ni,Co,Mn)O(式中、0.9≦p≦1.3、0<x<0.8、0<y<1、0≦z≦0.7、x+y+z=1)の組成を有する粉末で敷き詰められた下地層の上に載置されるのが好ましい。この粉末は上記組成さえ有していれば公知のいかなる方法により製造されたものであってもよい。いずれにしても、この下地層(敷き粉)を介在させることで、組成がより均一な高品位の正極活物質板を製造することができる。この下地層(敷き粉)はセッター(好ましくはアルミナ製)上に形成されるのが好ましい。
【0029】
(f)焼成
この工程(f)では、炭酸リチウムが載置された成形体シートを焼成して正極活物質板を形成させる。焼成温度は850℃以上であり、好ましくは850〜960℃、より好ましくは880〜940℃、さらに好ましくは880〜920℃である。焼成時間は特に限定されないが、好ましくは1〜50時間であり、より好ましくは10〜30時間である。この焼成は炭酸リチウムが載置された成形体シートを載置したセッター(好ましくはアルミナ製)をサヤ(好ましくはアルミナ製)に入れて、大気雰囲気等の酸化性雰囲気で行うのが好ましい。成形体シート上に載置された炭酸リチウムは、正極活物質板に吸収される他、揮発したり、セッターに吸収される等により、焼成後にほとんど残留しないが、残留していた場合は、再熱処理や水洗処理等により除去してもよい。
【0030】
こうして得られる正極活物質板はリチウム・ニッケル・コバルト・マンガン複合酸化物(NCM)で構成され、典型的にはLi(Ni,Co,Mn)O(式中、0.9≦p≦1.3、0<x<0.8、0<y<1、0≦z≦0.7、x+y+z=1であり、好ましくは0.95≦p≦1.1、0.1≦x<0.7、0.1≦y<0.9、0≦z≦0.6、x+y+z=1である)で表される組成を有する。また、正極活物質板は、前述したとおり原料粉末の放射状配向に由来する配向性を正極活物質板は有意に又はある程度引き継ぐことができるため、無配向の正極活物質板よりも厚くするのに適している。これは配向性があることでリチウムイオンが厚さ方向によりスムーズに移動可能となるためである。正極活物質板の厚さは、好ましくは5〜75μmであり、より好ましくは10〜60μmであり、さらに好ましくは20〜50μm、特に好ましくは20〜40μmである。また、正極活物質板のサイズは、好ましくは5mm×5mm平方以上、より好ましくは10mm×10mm〜100mm×100mm平方であり、さらに好ましくは10mm×10mm〜50mm×50mm平方であり、別の表現をすれば、好ましくは25mm以上、より好ましくは100〜10000mmであり、さらに好ましくは100〜2500mmである。
【実施例】
【0031】
本発明を以下の例によってさらに具体的に説明する。
【0032】
なお、以下の例における正極活物質板及びそれを備えた電池に関する各種特性の評価方法は以下のとおりとした。
【0033】
<緻密度>
正極活物質板をCP研磨機(IB−09010CP、日本電子株式会社製)にて断面研磨した。研磨した断面をSEM観察して空隙及び気孔の有無を確認した。得られたSEM画像を画像処理して気孔割合を算出した。気孔割合が5%以下であった試料を「A」(すなわち良品)と、5%未満であった試料を「B」と評価した。
【0034】
<平坦度>
正極活物質板について、レーザー3次元表面形状測定器(LEXT OLS4100、オリンパス社製)にて試料中央付近の輪郭曲線(具体的にはうねり曲線(waviness profile))を1ライン計測し、最大高さうねりWzを測定した。得られた最大高さうねりWzが10μm以下であった試料を「A」、Wzが10μmを超え20μm以下であった試料を「B」、Wzが20μmを超えた試料を「C」とし、「A」および「B」を良品として評価した。なお、最大高さうねりWzはJIS B0601−2001に定義される輪郭曲線の最大高さであり、基準長さにおける輪郭曲線(具体的にはうねり曲線)の山高さZpの最大値と谷深さのZvの最大値の和に相当する。したがって、この値が低いほど平坦であることを意味する。
【0035】
<電池特性>
正極活物質板を5mm角程度の試料片に分割した。この試料片の片面に厚さ1000ÅのAu膜を集電層としてスパッタリング成膜して正極板を得た。正極板、リチウム金属からなる負極、ステンレス集電板、及びセパレータを、集電板−正極板−セパレータ−負極−集電板の順に配置し、この集積体を電解液で満たすことで、コインセルを作製した。電解液としては、エチレンカーボネートおよびジエチルカーボネートを等体積比で混合した有機溶媒に、LiPFを1mol/Lの濃度となるように溶解したものを使用した。このコインセルに対して電池容量(放電容量)の評価を実施した。0.1Cレートの電流値で電池電圧が4.2Vとなるまで定電流充電し、その後電池電圧を4.2Vに維持する電流条件で、その電流値が1/20に低下するまで定電圧充電した。10分間休止し、続いて0.1Cレートの電流値で電池電圧が3.0Vとなるまで定電流放電し、その後10分間休止する、という操作を1サイクルとし、25℃での2サイクル目の放電容量を測定した。理論容量(NCM:160mAh/g)の95%以上の放電容量の試料を「A」(すなわち良品)と、95%未満の放電容量の試料を「B」と評価した。
【0036】
例1〜9
(a)水酸化物原料粉末の用意
水酸化物原料粉末として、組成が(Ni0.5Co0.2Mn0.3)(OH)であり、二次粒子がほぼ球状且つ一次粒子が二次粒子の中心から外方向へ放射状に並んだ、体積基準メジアン径D50が4μmのニッケル・コバルト・マンガン複合水酸化物粉末を用意した。このニッケル・コバルト・マンガン複合水酸化物粉末は溶液法等の公知の手法に従って作製可能なものであり、具体的には以下のようにして作製した。すなわち、純水20Lを入れた反応槽へ、モル比でNi:Co:Mn=50:20:30である濃度1mol/Lの硫酸ニッケルと硫酸コバルト及び硫酸マンガンの混合水溶液を投入速度50mL/minで、また濃度3mol/Lの硫酸アンモニウムを投入速度2ml/minで同時に連続投入した。一方、濃度10mol/Lの水酸化ナトリウム水溶液を、反応槽内のpHが自動的に12.5に維持されるように投入した。反応槽内の温度は70℃に維持し、攪拌機により常に攪拌した。生成したニッケル・コバルト・マンガン複合水酸化物は、オーバーフロー管からオーバーフローさせて取り出し、水洗、脱水、乾燥処理した。なお、反応槽への上記各化合物の投入から水酸化物の取り出しに至るまでの一連の工程(すなわち水洗、脱水及び乾燥処理を除く一連の工程)はいずれも不活性雰囲気中で行った。
【0037】
(b)リチウム化合物との混合
得られた水酸化物原料粉末と、水酸化物原料粉末に対して45wt%の量のLiCO粉末とをハイブリッドミキサーにて混合して、混合粉末を得た。なお、水酸化物原料粉末に含まれるNi+Co+Nnの合計量に対する、上記混合量のLiCO粉末に含まれるLi含有量のモル比、すなわちLi/(Ni+Co+Mn)は1.06であった。
【0038】
(c)仮焼(リチウム合成)
上記混合粉末をアルミナ製サヤに詰め、大気雰囲気にて700℃で20時間熱処理(仮焼)を行った。得られた仮焼物を乳鉢にて解砕して、リチウム合成されたNCM粉末を得た。
【0039】
(d)成形体シートの作製
上記リチウム合成したNCM粉末100重量部に対して、分散媒(トルエン:イソプロパノール=1:1)100重量部、バインダー(ポリビニルブチラール:積水化学工業株式会社製BM−2)10重量部、可塑剤(DOP:黒金化成株式会社製)4重量部、及び分散剤(花王株式会社製レオドールSP−O30)2重量部を混合した。得られた混合物を減圧下で攪拌して脱泡するとともに、3000〜4000cPの粘度に調整した。得られたスラリーを、テープ成型機を用いてPETフィルム上に、乾燥後膜厚が28μmとなるようにシート状に成型してNCMシートを得た。
【0040】
(e)炭酸リチウムの載置
上記NCMシートをPETフィルムから剥がして10mm角に切り出した。アルミナ製セッター上に、別途予め合成したNCM粉末を敷き粉(下地層)として配置し、この敷き粉(下地層)上に10mm角に切り出した上記NCMシートを載置した。なお、別途予め合成したNCM粉末は、モル比でNi:Co:Mn=50:20:30の組成を有するNCM原料粉末(市販品)にLiCOを45wt%混合して850℃で20時間熱処理することにより作製した。例2〜9においては、上記NCMシートの上に上記同様にテープ成型し10mm角に切り出した所定の厚さのLiCOシートを載置した。このLiCOシートの厚さは、NCMシートに含まれるNi+Co+Mnの合計量に対する、LiCOシートに含まれるLi含有量のモル比、すなわちLi/(Ni+Co+Mn)が表1に示される値となる厚さ(すなわち、例2では14μm、例3では16μm、例4〜8では28μm、例9では42μm)とした。なお、例1においては比較のためLiCOシートを載置しなかった。
【0041】
(f)焼成
こうしNCM粉末、NCMシート及びLiCOシートがこの順に載置されたセッターをアルミナサヤ中に設置し、蓋を閉めた状態で大気雰囲気にて表1に示される温度で20時間熱処理(焼成)を行った。こうして正極活物質板(厚さ:23μm、大きさ:8mm×8mm)を得た。正極活物質板の表面を観察したところ、正極活物質板に載置したLiCOシートは焼成により完全に消失していた。
【0042】
(g)各種評価
得られた正極活物質板に対して前述した手順により緻密度、平坦度及び電池特性の評価を行った。その結果は表1に示されるとおりであった。また、例5で作製された正極活物質板の写真及び断面SEM画像を図3A〜3Cに示す。これらの図から明らかなように本発明により作製された正極活物質板は反りが殆ど発生しない非常に平坦なものであり、かつ、緻密性も高いことが分かる。
【0043】
例10及び11(比較)
水酸化物原料粉末の代わりに以下の製法により作製した微粒を用いて表1に記載の条件を採用したこと以外は、例1と同様の手順により正極活物質板の作製及び評価を行った。なお、微粒の作製は、モル比でNi:Co:Mn=50:20:30となるように、NiO(正同化学工業製)、Co(正同化学工業製)、MnCO(東ソー製)を混合し、ポットミルにてエタノールを溶媒として10時間湿式粉砕し、粉砕物をポットミルから取り出して乾燥処理することにより行った。結果は表1に示されるとおりであった。また、例10で作製された正極活物質板の写真及び断面SEM画像を図4A〜4Cに示す。これらの図から明らかなように本発明によらない手法により作製された正極活物質板は反りが発生してしまい、平坦性に劣るものであることが分かる。
【表1】
【符号の説明】
【0044】
1a 板状一次粒子
1 水酸化物原料粉末(二次粒子)
図1
図2
図3A
図3B
図3C
図4A
図4B
図4C