(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、電解質保持体に微細な小室を形成することや、微細な小室に固体の電解質を充填することは容易ではない。
【0006】
本発明は、上述の状況に鑑みてなされたものであり、電解質の漏出を簡便に抑制可能な熱電池及び回転飛翔体を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の第1の態様に係る熱電池は、第1発熱体と、第2発熱体と、発電セルと、電気絶縁性の熱吸収部材と、漏液防止部材とを備える。第2発熱体は、第1発熱体と対向する。発電セルは、第1発熱体と第2発熱体の間に配置され、順次積層された正極、電解質及び負極を有する。熱吸収部材は、第1発熱体と第2発熱体の間に配置され、発電セルの外側に配置される。漏液防止部材は、第1発熱体と第2発熱体の間に配置され、熱吸収部材の外側に配置される。熱吸収部材の熱伝導率は、漏液防止部材の熱伝導率よりも高い。
【0008】
本発明の第1の態様に係る熱電池によれば、発電セルの外側に漏液防止部材が配置されているため、溶融した電解質が遠心力によって外部に滲出することを抑制することができる。また、漏液防止部材の内側に熱伝導率の高い熱吸収部材が配置されているため、第1発熱体及び第2発熱体から漏液防止部材に伝達されなかった余剰熱を熱吸収部材によって速やかに吸収できる。従って、余剰熱が発電セルに伝達されることによって電解質の外周部分が局所的に過熱されることを抑制できるため、溶融した電解質の粘度低下を抑えて外部に漏出しにくくすることができる。以上より、電解質の漏出を簡便に抑制することができる。
【0009】
本発明の第2の態様に係る熱電池は、第1の態様に係り、熱吸収部材の密度は、漏液防止部材の密度よりも大きい。
【0010】
本発明の第2の態様に係る熱電池によれば、第1発熱体及び第2発熱体の余剰熱を熱吸収部材によってより速やかに吸収できる。
【0011】
本発明の第3の態様に係る熱電池は、第1又は第2の態様に係り、熱吸収部材は、セラミックス焼結体である。
【0012】
本発明の第3の態様に係る熱電池によれば、熱吸収部材が高熱伝導率、高耐熱性及び電気絶縁性だけでなく高強度を備えることができる。
【0013】
本発明の第4の態様に係る熱電池は、第1乃至第3のいずれかの態様に係り、漏液防止部材は、セラミックス繊維である。
【0014】
本発明の第4の態様に係る熱電池によれば、漏液防止部材が高耐熱性及び電気絶縁性だけでなく柔軟性を備えることができる。
【0015】
本発明の第5の態様に係る回転飛翔体は、回転軸を中心として回転しながら飛翔可能な回転飛翔体である。回転飛翔体は、本体と、本体の内部に配置される請求項1乃至4のいずれかに記載の熱電池とを備える。
【0016】
本発明の第5の態様に係る回転飛翔体によれば、溶融した電解質が遠心力によって外部に滲出することを抑制することができるとともに、溶融した電解質の粘度低下を抑えて外部に漏出しにくくすることができる。
【0017】
本発明の第6の態様に係る回転飛翔体は、第5の態様に係り、第1発熱体及び第2発熱体は、回転軸と垂直に交差している。熱吸収部材は、発電セルの外側全体を取り囲む。漏液防止部材は、熱吸収部材の外側全体を取り囲む。
【0018】
本発明の第6の態様に係る回転飛翔体によれば、回転軸周りの全方向に遠心力がかかる場合であっても、電解質の漏出を抑制することができる。
【0019】
本発明の第7の態様に係る回転飛翔体は、第5の態様に係り、第1発熱体及び第2発熱体は、回転軸と平行に配置されている。熱吸収部材は、発電セルの両外側において回転軸と平行にそれぞれ延びる第1及び第2熱吸収部を有する。漏液防止部材は、第1及び第2熱吸収部それぞれの両外側において回転軸と平行にそれぞれ延びる第1及び第2漏液防止部を有する。
【0020】
本発明の第7の態様に係る回転飛翔体によれば、電解質の漏出を抑えつつ材料の使用量を少なくすることによって製造コストの低減を図ることができる。
【発明の効果】
【0021】
本発明によれば、電解質の漏出を簡便に抑制可能な熱電池及び回転飛翔体を提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0023】
次に、図面を用いて、本発明の実施形態について説明する。以下の図面の記載において、同一又は類似の部分には、同一又は類似の符号を付している。ただし、図面は模式的なものであり、各寸法の比率等は現実のものとは異なっている場合がある。従って、具体的な寸法等は以下の説明を参酌して判断すべきである。また、図面相互間においても互いの寸法の関係や比率が異なる部分が含まれていることは勿論である。
【0024】
なお、以下の実施形態では、回転飛翔体の一例として砲弾の構成について説明する。以下の説明において、「前」及び「後」とは、飛翔中の砲弾1の進行方向を基準とする用語である。
【0025】
〈第1実施形態〉
(砲弾1の全体構成)
砲弾1の全体構成について、図面を参照しながら説明する。
図1は、飛翔中の砲弾1の外観を示す斜視図である。砲弾1は、回転軸Pを中心として回転しながら飛翔する。砲弾1は、本体10と、熱電池20とを備える。
【0026】
本体10は、砲弾1の外形を形成する。本体10は、後部弾体11と、前部弾体12とを有する。後部弾体11は、回転軸Pを中心とする柱状に形成される。後部弾体11は、前部弾体12の後端に連結される。後部弾体11には、図示しない炸薬が収容されていてもよい。前部弾体12は、後部弾体11の前端に連結される。前部弾体12は、熱電池20のほか図示しない電装部品(例えば、信管、制御CPUやGPS受信機など)を収容する。
【0027】
熱電池20は、着火されると瞬時に発電を開始して各電装部品に電力を供給する。熱電池20は、本体10のうち前部弾体12の内部に配置される。本実施形態に係る熱電池20は、円柱状の外形を有する。砲弾1の回転軸Pは、熱電池20の略中央を通る。すなわち、熱電池20は、進行方向を基準として縦置きされている。
【0028】
(熱電池20の構成)
次に、図面を参照しながら、熱電池20の構成について説明する。
図2は、熱電池20の断面図である。
図3は、
図2の部分拡大図である。
【0029】
熱電池20は、筐体21と、断熱部材22と、一対の出力端子23と、点火具24と、導火材25と、発電部26とを有する。
【0030】
筐体21は、断熱部材22や発電部26を収容する容器である。断熱部材22は、発電部26を取り囲む。断熱部材22は、発電部26を保温する。断熱部材22の材料としては、低熱伝導率(1W/m・K以下)、高耐熱性(500℃以上)、液体吸収性及び電気絶縁性(1×10
9Ωcm以上)を有する材料を用いることができ、例えばセラミックファイバー(アルミナとシリカを主成分とする無機繊維)が好適である。
【0031】
一対の出力端子23は、一対の接続部材23aを介して発電部26から電流を外部に取り出すための端子である。点火具24は、電流が供給されると火花を飛ばして導火材25に着火する。導火材25は、回転軸Pに沿って配置される。導火材25は、点火具24によって着火されると燃え広がって、後述する第1乃至第4発熱体101〜104に略同時に着火する。
【0032】
発電部26は、第1乃至第4発熱体101〜104と、第1乃至第3発電セル111〜113と、第1乃至第3熱吸収部材121〜123と、第1乃至第3漏液防止部材131〜133とを含む。
【0033】
第1乃至第4発熱体101〜104は、円板状に形成される。第1乃至第4発熱体101〜104は、回転軸Pと垂直に交差するように配置される。第1乃至第4発熱体101〜104は、互いに対向するように配置される。第1乃至第4発熱体101〜104は、進行方向において所定間隔ずつ離れている。第1乃至第4発熱体101〜104それぞれの間には、第1乃至第3発電セル111〜113それぞれが配置される。第1乃至第4発熱体101〜104は、導火材25によって着火されると燃え広がって第1乃至第3発電セル111〜113を加熱する。第1乃至第4発熱体101〜104は、例えば金属粉末と酸化剤との混合物によって構成される。
【0034】
第1乃至第3発電セル111〜113それぞれは、第1乃至第4発熱体101〜104それぞれの間に配置される。第1乃至第3発電セル111〜113それぞれは、進行方向において順次積層された正極100aと電解質100bと負極100cを含む。第1発電セル111の正極100aは第1発熱体101と接触し、第1発電セル111の負極100cは第2発熱体102と接触する。電解質100bは、正極100aと負極100cによって挟まれている。
【0035】
正極100aは、例えば二硫化鉄によって構成することができる。電解質100bは、例えば塩化リチウムと塩化カリウムの共融混合物によって構成することができる。負極100cは、例えばリチウムシリコンによって構成することができる。
【0036】
第1乃至第4発熱体101〜104が燃え広がって高温となり、電解質100bが溶融すると、熱電池20の発電が瞬時に始まる。この際、電解質100bの外周部分が局所的に過熱されると、溶融した電解質100bの粘度が低下する。電解質100bには回転軸P周りの全方向に遠心力がかかっているため、溶融した電解質100bは外部に漏出しやすくなる。そのため、電解質100bは全体的に均一な温度に加熱されることが好ましい。
【0037】
第1乃至第3熱吸収部材121〜123それぞれは、第1乃至第4発熱体101〜104それぞれの間に配置される。第1乃至第3熱吸収部材121〜123それぞれは、第1乃至第3発電セル111〜113それぞれの外側に配置される。
【0038】
本実施形態において、第1乃至第3熱吸収部材121〜123それぞれは、回転軸Pを中心とする環状に形成されている。第1乃至第3熱吸収部材121〜123それぞれは、第1乃至第3発電セル111〜113それぞれの外側全体を取り囲んでいる。すなわち、第1熱吸収部材121は第1発電セル111の外周面を覆い、第2熱吸収部材122は第2発電セル112の外周面を覆い、第3熱吸収部材123は第3発電セル113の外周面を覆っている。第1乃至第3熱吸収部材121〜123それぞれは、第1乃至第3発電セル111〜113それぞれの外周面と接触していてもよいが僅かに離れていてもよい。
【0039】
第1乃至第3熱吸収部材121〜123それぞれの熱伝導率は、第1乃至第3漏液防止部材131〜133それぞれの熱伝導率よりも高い。第1乃至第3熱吸収部材121〜123それぞれの熱伝導率は、第1乃至第3発電セル111〜113それぞれの熱伝導率と同等又はそれ以上とすることができる。第1乃至第3熱吸収部材121〜123それぞれの密度(単位体積当たりの質量)は、第1乃至第3漏液防止部材131〜133それぞれの密度よりも大きい。第1乃至第3熱吸収部材121〜123それぞれの密度は、第1乃至第3発電セル111〜113それぞれの密度と同等又はそれ以上とすることができる。
【0040】
このような第1乃至第3熱吸収部材121〜123の材料としては、高熱伝導率(1W/m・K以上)、高耐熱性(500℃以上)及び電気絶縁性(1×10
9ΩcmMΩ以上)を有する材料を用いることができ、例えばアルミナなどのセラミックス焼結体が好適である。第1乃至第3熱吸収部材121〜123の熱伝導率は、20W/m・K以上が好ましく、30W/m・K以上が特に好ましい。第1乃至第3熱吸収部材121〜123の密度は、2g/cm
3以上が好ましく、2.5g/cm
3以上が特に好ましい。
【0041】
第1乃至第3漏液防止部材131〜133それぞれは、第1乃至第4発熱体101〜104それぞれの間に配置される。第1乃至第3漏液防止部材131〜133それぞれは、第1乃至第3熱吸収部材121〜123それぞれの外側に配置される。
【0042】
本実施形態において、第1乃至第3漏液防止部材131〜133それぞれは、回転軸Pを中心とする環状に形成されている。第1乃至第3漏液防止部材131〜133それぞれは、第1乃至第3熱吸収部材121〜123それぞれの外側全体を取り囲んでいる。すなわち、第1漏液防止部材131は第1熱吸収部材121の外周面を覆い、第2漏液防止部材132は第2熱吸収部材122の外周面を覆い、第3漏液防止部材133は第3熱吸収部材123の外周面を覆っている。第1乃至第3漏液防止部材131〜133それぞれは、第1乃至第3熱吸収部材121〜123それぞれの外周面と接触していてもよい。
【0043】
第1乃至第3漏液防止部材131〜133それぞれの熱伝導率は、第1乃至第3熱吸収部材121〜123それぞれの熱伝導率よりも低い。第1乃至第3漏液防止部材131〜133それぞれの熱伝導率は、断熱部材22の熱伝導率と同等とすることができる。第1乃至第3漏液防止部材131〜133それぞれの密度は、第1乃至第3熱吸収部材121〜123それぞれの密度よりも小さい。第1乃至第3漏液防止部材131〜133それぞれの密度は、断熱部材22の密度と同等とすることができる。
【0044】
このような第1乃至第3漏液防止部材131〜133の材料としては、高耐熱性(500℃以上)、柔軟性(発電部26の組み立て時に縮む程度)及び電気絶縁性(1×10
9Ωcm以上)を有する材料を用いることができ、例えば綿状のセラミックファイバー(アルミナとシリカを主成分とする無機繊維)が好適である。第1乃至第3漏液防止部材131〜133の密度は、2g/cm
3以下が好ましく、1g/cm
3以下が特に好ましい。第1乃至第3漏液防止部材131〜133の熱伝導率は、第1乃至第3熱吸収部材121〜123の熱伝導率よりも低ければよく、その数値は特に限定されない。
【0045】
(作用及び効果)
(1)熱電池20は、第1発熱体101と、第2発熱体102と、第1発電セル111と、電気絶縁性の第1熱吸収部材121と、第1漏液防止部材131とを備える。第1熱吸収部材121は、第1発電セル111の外側に配置される。第1漏液防止部材131は、第1熱吸収部材121の外側に配置される。第1熱吸収部材121の熱伝導率は、第1漏液防止部材131の熱伝導率よりも高い。
【0046】
このように、第1発電セル111の外側に第1漏液防止部材131が配置されているため、溶融した電解質が遠心力によって発電部26の外部に滲出することを抑制できる。また、第1漏液防止部材131の内側に熱伝導率の高い第1熱吸収部材121が配置されているため、第1発熱体101及び第2発熱体102から第1漏液防止部材131に伝達されなかった余剰熱を第1熱吸収部材121によって速やかに吸収できる。従って、余剰熱が第1発電セル111に伝達されることによって電解質100bの外周部分が局所的に過熱されることを抑制できるため、溶融した電解質100bの粘度低下を抑えて外部に漏出しにくくすることができる。以上により、電解質100bの漏出による発電セル間での短絡や電解質100bの減少による各発電セルの内部抵抗の増加に伴って発生する熱電池の性能低下を簡便に抑制することができる。
【0047】
(2)第1熱吸収部材121の密度は、第1漏液防止部材131の密度よりも大きい。従って、第1発熱体101及び第2発熱体102の余剰熱を第1熱吸収部材121によってより速やかに吸収できる。
【0048】
(3)第1熱吸収部材121は、セラミックス焼結体である。従って、第1熱吸収部材121は、高熱伝導率、高耐熱性及び電気絶縁性だけでなく高強度を備えることができる。
【0049】
(4)第1漏液防止部材131は、セラミックス繊維である。従って、第1漏液防止部材131は、高耐熱性及び電気絶縁性だけでなく柔軟性を備えることができる。
【0050】
(5)第1発熱体101と第2発熱体102は、砲弾1の回転軸Pと垂直に交差している。第1熱吸収部材121は、第1発電セル111の外側全体を取り囲んでいる。第1漏液防止部材131は、第1熱吸収部材121の外側全体を取り囲んでいる。従って、回転軸P周りの全方向に遠心力がかかる場合であっても、電解質100bの漏出を確実に抑制することができる。
【0051】
〈第2実施形態〉
以下において、第2実施形態に係る砲弾1Aの全体構成について、図面を参照しながら説明する。第1実施形態に係る砲弾1と第2実施形態に係る砲弾1Aの相違点は、熱電池20の配置と、第1乃至第3熱吸収部材121〜123及び第1乃至第3漏液防止部材131〜133の構成であるため、以下、当該相違点について主に説明する。
【0052】
図4は、砲弾1Aの外観を示す斜視図である。
図4に示すように、熱電池20Aは、進行方向を基準として横置きされている。本実施形態に係る熱電池20Aは、角柱状の外形を有する。熱電池20Aは、砲弾1の回転軸Pから径方向に離間している。
【0053】
図5は、熱電池20Aの斜視図である。ただし、
図5では、筐体21、断熱部材22、一対の出力端子23、点火具24及び導火材25が省略されている。
【0054】
図5に示すように、発電部26Aは、第1乃至第4発熱体101〜104と、第1乃至第3発電セル111〜113と、第1乃至第3熱吸収部材121A〜123Aと、第1乃至第3漏液防止部材131A〜133Aとを含む。
【0055】
第1乃至第4発熱体101〜104と第1乃至第3発電セル111〜113の構成は、上記第1実施形態において説明した通りである。ただし、本実施形態において、第1乃至第4発熱体101〜104は、回転軸Pと平行に配置されている。
【0056】
第1熱吸収部材121Aは、第1熱吸収部200aと第2熱吸収部200bを含む。第1熱吸収部200aと第2熱吸収部200bのそれぞれは、短冊状に形成されている。第1熱吸収部200aと第2熱吸収部200bは、第1発電セル111の両外側において回転軸Pと平行に配置される。すなわち、第1熱吸収部200aと第2熱吸収部200bは、回転軸Pに垂直な方向における第1発電セル111の両端部を挟むように配置される。第2及び第3熱吸収部材122A,123Aそれぞれは、第1熱吸収部材121Aと同じ構成を有する。
【0057】
第1漏液防止部材131Aは、第1漏液防止部300aと第2漏液防止部300bを含む。第1漏液防止部300aと第2漏液防止部300bのそれぞれは、短冊状に成形されている。第1漏液防止部300aと第2漏液防止部300bは、第1熱吸収部200aと第2熱吸収部200bの両外側において回転軸Pと平行に配置される。すなわち、第1漏液防止部300aは第1熱吸収部200aの外面に沿って配置され、第2漏液防止部300bは第2熱吸収部200bの外面に沿って配置されている。
【0058】
(作用及び効果)
(1)第1発電セル111の外側に第1漏液防止部材131が配置されているため、溶融した電解質が遠心力によって発電部26の外部に滲出することを抑制することができる。また、第1漏液防止部材131の内側に熱伝導率の高い第1熱吸収部材121が配置されているため、第1発熱体101及び第2発熱体102から第1漏液防止部材131に伝達されなかった余剰熱を第1熱吸収部材121によって速やかに吸収できる。以上により、電解質100bの漏出による発電セル間での短絡や電解質100bの減少による各発電セルの内部抵抗の増加に伴って発生する熱電池の性能低下を簡便に抑制することができる。
【0059】
(2)第1発熱体101と第2発熱体102は、回転軸Pと平行に配置されている。第1熱吸収部材121Aは、第1発電セル111の両外側において回転軸Pと平行にそれぞれ延びる第1及び第2熱吸収部200a,200bを有する。第1漏液防止部材131Aは、第1及び第2熱吸収部200a,200bそれぞれの両外側において回転軸Pと平行にそれぞれ延びる第1及び第2漏液防止部300a,300bを有する。従って、第1熱吸収部材121が第1発電セル111の全周を取り囲み、かつ、第1漏液防止部材131が第1熱吸収部材121の全周を取り囲んでいる場合に比べて、材料の使用量を少なくすることによって製造コストの低減を図ることができる。なお、本実施形態では、第1発電セル111の上下から電解質100bが漏出する量は少ないため、第1発電セル111の左右だけを第1熱吸収部材121Aと第1漏液防止部材131Aで覆うことで電解質100bの漏出を抑制することができる。
【0060】
〈その他の実施形態〉
本発明は上記の実施形態によって記載したが、この開示の一部をなす論述及び図面はこの発明を限定するものであると理解すべきではない。この開示から当業者には様々な代替実施形態、実施例及び運用技術が明らかとなろう。
【0061】
(A)上記第1及び第2実施形態では、回転飛翔体の一例として砲弾について説明したが、これに限られるものではない。回転飛翔体としては、誘導弾やロケット弾、或いはミサイルなどが挙げられる。なお、砲弾よりも時間当たり回転数が低いミサイルにおいても上記効果が得られることは勿論である。
【0062】
(B)上記第1実施形態では熱電池20が円柱状に形成され、上記第2実施形態では熱電池20Aが角柱状に形成されることとしたが、これに限られるものではない。熱電池20の外形は、砲弾1の内部に確保される空間の形状に応じて適宜変形してもよい。
【0063】
(C)上記第1実施形態では、回転軸Pが熱電池20の中央を通ることとしたが、これに限られるものではない。熱電池20の中央は回転軸Pから偏心していてもよい。
【0064】
(D)上記第1及び第2実施形態では、熱電池20が導火材25を備えることとしたが、点火具24から発生する火炎が空間を飛散することで発熱体に着火可能な場合には導火材25を備えていなくてもよい。
【0065】
(E)上記第1及び第2実施形態では、発電部26が4つの発熱体と3つの発電セルを備えることとしたが、これらの数は特に限定されない。
【0066】
(F)上記第1及び第2実施形態では、負極100cが発熱体と接触することとしたが、負極100cと発熱体の間には融点の低い負極100cの温度上昇を抑制するための金属板が挿入されていてもよい。
【0067】
(G)上記第1及び第2実施形態では、各発電セルに対して熱吸収部材と漏液防止部材を設けることとしたが、複数の発電セルのうち少なくとも一つの発電セルに対して熱吸収部材と漏液防止部材が設けられていれば所定の効果を得ることができる。
【0068】
このように、本発明はここでは記載していない様々な実施形態等を含むことは勿論である。従って、本発明の技術的範囲は上記の説明から妥当な特許請求の範囲に係る発明特定事項によってのみ定められるものである。