(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記制御部は、前記第二のモードにおいて、前記処置部と前記処置支援部の前記支援部との距離が所定の距離以下にならないように前記駆動部を制御することを特徴とする請求項2に記載の処置具。
前記制御部は、前記第二のモードにおいて、前記処置部が移動した向きとは反対の向きに前記処置支援部の前記支援部が移動するように前記駆動部を制御することを特徴とする請求項3に記載の処置具。
前記処置支援部の前記支援部は、前記処置支援部の近位端部に対して互いに直交する第一の方向及び第二の方向に移動可能であることを特徴とする請求項1から5のいずれか一項に記載の処置具。
前記処置支援部は、前記支持部の遠位端部に対して前記支援部を、前記長手軸に平行な軸線周りに回転させる把持回転部を備えることを特徴とする請求項1から11のいずれか一項に記載の処置具。
前記処置支援部は、複数の前記リンクのうち最も近位端側に配置された近位端リンクに、前記近位端リンクの近位端側に対して前記近位端リンクの遠位端側を前記近位端リンクの長軸周りに回転させる回転部を備えることを特徴とする請求項7に記載の処置具。
【発明を実施するための形態】
【0018】
(第1実施形態)
以下、本発明に係る処置具システムの第1実施形態を、
図1から
図19を参照しながら説明する。
図1に示すように、本実施形態の処置具システム1は、本実施形態の処置具2と、処置具2の挿入部10が挿通されるトロッカ(導入具)3とを備えている。
トロッカ3は、筒状に形成され、患者の腹壁に形成した孔に取付けられる公知の構成のものである。
【0019】
処置具2は、
図1及び2に示すように、患者の腹腔内に挿入可能な長尺の挿入部10と、トロッカ3に取付けられた操作検出部55と、挿入部10の近位端部に設けられた操作部65と、操作部65を制御する制御部80とを有している。以下では、操作部65に対する挿入部10側を遠位端側、挿入部10に対する操作部65側を近位端側とそれぞれ称する。
挿入部10は、軸状に形成された外筒管(支持部)15と、外筒管15の遠位端部に設けられた処置部20及び処置支援部35とを備えている。
外筒管15は、ステンレス鋼等の生体適合性を有する金属で円柱状に形成された硬性のものである。外筒管15の外径は、トロッカ3の内径にほぼ等しい。
【0020】
処置部20では、
図1及び3に示すように筒状に形成された処置挿入部21の遠位端部に把持部22が設けられている。なお、
図3及び後述する
図4では、説明の便宜のため処置挿入部21を透過させて二点鎖線で示している。
把持部22は、処置挿入部21の遠位端部にピン23で回転可能に支持された一対の把持片24、25を有している。把持片24、25は、自身の長手方向の中間部をピン23で支持されている。把持片24、25の近位端部には、ピン26を介して中間リンク27の一端部がそれぞれ回転可能に連結されている。各中間リンク27の他端部には、ピン29を介して操作ロッド(動力伝達部)30の遠位端部が連結されている。
【0021】
このように構成された処置部20は、
図3に示すように処置挿入部21に対して操作ロッド30が近位端側に移動した(引き戻した)ときには、把持片24の遠位端部と把持片25の遠位端部とが互いに接触した閉状態となる。一方で、
図4に示すように処置挿入部21に対して操作ロッド30が遠位端側に移動した(押込んだ)ときには、把持片24の遠位端部と把持片25の遠位端部とが互いに離間した開状態となる。
操作ロッド30を押込むことで、把持片24、25が離間した開状態にする開操作をすることができ、操作ロッド30を引き戻すことで、把持片24、25が接触した閉状態にする閉操作をすることができる。
操作ロッド30を押込んだり引き戻したりして把持片24、25を開状態や閉状態にすることで、処置部20で処置を行うことができる。
【0022】
図1に示すように、処置部20の処置挿入部21は外筒管15の管路15aに挿通されている。処置部20の把持部22は、外筒管15の遠位端面15bよりも前方に突出している。処置部20は、外筒管15の管路15a内で処置挿入部21の軸線C2周りに回転することができる。
【0023】
処置支援部35は、処置部20と連動して動作し、処置部20で処置を行う時に処置部20の動作を支援するためのものである。処置支援部35は、外筒管15の遠位端面15bに近位端部が固定された第一のリンク(リンク)36と、第一のリンク36の遠位端部に第一の関節部(関節部)37を介して連結された第二のリンク(リンク)38と、第二のリンク38の遠位端部に第二の関節部(関節部)39を介して連結された第三のリンク(リンク)40と、第三のリンク40の遠位端部に取付けられた支援部41とを有している。
リンク36、38、40は、ステンレス鋼等の金属で筒状に形成されている。第一のリンク36は、外筒管15の遠位端面15bに外筒管15の長手軸C1に沿って延びるように固定されている。
【0024】
図5に示すように、第一の関節部37の従動プーリ37aは、第二のリンク38の近位端部に取付けられている。従動プーリ37aには、第一のワイヤ44の遠位端部が巻回されている。第一のワイヤ44の近位端部には、駆動プーリ45が巻回されている。
同様に、第二の関節部39の従動プーリ39aは、第三のリンク40の近位端部に取付けられている。従動プーリ39aには、第二のワイヤ46の遠位端部が巻回されている。第二のワイヤ46の近位端部には、駆動プーリ47が巻回されている。
第一の関節部37が第一のリンク36に対して第二のリンク38を回転させる回転軸C6と、第二の関節部39が第二のリンク38に対して第三のリンク40を回転させる回転軸C7とは、互いに平行である。
【0025】
支援部41は、
図1に示すように処置支援部35の遠位端部に設けられ、処置部20の把持部22と同様に構成されている。すなわち、支援部41は、第三のリンク40の遠位端部に図示しないピンで回転可能に支持された一対の支援部把持片49、50を有している。図示はしないが、支援部把持片49、50の近位端部にはピン、中間リンク及び操作ワイヤ51(
図2参照)が連結されている。操作ワイヤ51はリンク36、38、40内を通して近位端側に延びている。操作ワイヤ51を押込んだり引き戻したりして支援部把持片49、50を開状態や閉状態にすることで、支援部41で組織を把持することができる。
【0026】
駆動プーリ45を回転させることで、駆動プーリ45の回転力が第一のワイヤ44を介して従動プーリ37aに伝達される。第二のリンク38は、従動プーリ37aとともに回転軸C6に直交する平面上で回転し、第一のリンク36と第二のリンク38とが回転軸C6周りになす角度(以下、「第一の関節部37がなす角度」とも称する)が変化する。同様に、駆動プーリ47を回転させることで、駆動プーリ47の回転力が第二のワイヤ46を介して従動プーリ39aに伝達される。第三のリンク40は、従動プーリ39aとともに回転軸C7に直交する平面上で回転する。
このように、駆動プーリ45、47を回転させることで、リンク38、40は回転軸C6、C7にそれぞれ直交する仮想平面Q1上で回転する。
この例では、把持片24、25や支援部把持片49、50が仮想平面Q1上で移動することで把持部22や支援部41が開閉するとしている。しかし、把持片24、25や支援部把持片49、50が移動するのは、仮想平面Q1に交差する方向でもよい。
【0027】
駆動プーリ45、47を回転操作してリンク36、38、40が長手軸C1に沿う同一直線上に配置されるように調節すると、支援部41は、外筒管15の長手軸C1に直交する第二の方向Yにおいて処置部20に接近した第一の位置R1に移動する。なお、第二の方向Yは仮想平面Q1に平行な方向である。ここで、仮想平面Q1に平行であって第二の方向Yに直交する方向を第一の方向Xと規定する。
処置支援部35の支援部41が第一の位置に配置されているときに、処置部20の遠位端部よりも支援部41の方が遠位端側に配置されていることが好ましい。
一方で、駆動プーリ45、47を回転操作することで、
図6に示すように、支援部41を第二の方向Yにおいて処置部20から離間するように第一の位置R1から移動した第二の位置R2に移動させることができる。
【0028】
図2及び7に示すように、操作検出部55は、例えば、トロッカ3の内周面に露出するように設けられた第一のローラ56、第二のローラ57と、第一のローラ56、第二のローラ57に取付けられたロータリーエンコーダ58、59と、トロッカ3の外周面に取付けられた加速度センサ60とを有している。
【0029】
第一のローラ56は、トロッカ3の軸線C11に直交する軸線周りに回転可能となるようにトロッカ3に支持されている。第二のローラ57は、トロッカ3の軸線C11に平行な軸線周りに回転可能となるようにトロッカ3に支持されている。
ロータリーエンコーダ58は、第一のローラ56が回転する向き及び第一のローラ56の回転量を検出し、信号に変換して制御部80に送信する。ロータリーエンコーダ59は、第二のローラ57が回転する向き及び第二のローラ57の回転量を検出し、信号に変換して制御部80に送信する。
加速度センサ60としては、静電容量型やピエゾ抵抗型等の2軸以上の傾きを検出可能な公知の方式のものを用いることができる。加速度センサ60は、トロッカ3の向きを検出し、信号に変換して制御部80に送信する。
【0030】
本実施形態では、トロッカ3に処置具2の挿入部10が挿通されたときに、トロッカ3の軸線C11と外筒管15の長手軸C1とが平行な状態を保ったまま、トロッカ3に対して外筒管15が進退可能であるとともに、トロッカ3に対して外筒管15がトロッカ3の軸線C11周りに回転可能である。すなわち、加速度センサ60が検出するトロッカ3の向きは、外筒管15の向きに等しい。
トロッカ3に挿入部10を挿入すると、挿入部10の挿入量に対応して第一のローラ56が回転する。ロータリーエンコーダ58により、トロッカ3に対する外筒管15の長手軸C1に沿う方向の移動量が検出される。
【0031】
操作部65は、
図1に示すように、外筒管15の近位端部に取付けられた操作部本体66と、操作部本体66に内蔵された駆動部67と、操作部本体66の外面に設けられた処置操作部68、動作指示部69、及びモード切替スイッチ(モード切替部)70を備えている。
操作部本体66には、貫通孔66aが形成されている。この貫通孔66aは、外筒管15の管路15aに連通している。
【0032】
駆動部67は、
図2に示すように、駆動プーリ45に接続された第一の関節駆動モータ73と、駆動プーリ47に接続された第二の関節駆動モータ74と、処置支援部35の操作ワイヤ51の近位端部に接続された把持部駆動モータ75とを有している。
各モータ73、74、75には、モータ73、74、75の回転軸の回転数を検出するエンコーダ73a、74a、75aがそれぞれ設けられている。
関節駆動モータ73、74を駆動することで、駆動プーリ45、47を所望の方向に回転させることができる。これにより、リンク38、40が仮想平面Q1上で回転し、処置支援部35の支援部41が移動する。関節駆動モータ73、74を駆動することで、支援部41を前述の第一の位置と第二の位置との間で移動させることができる。
把持部駆動モータ75を駆動することで、リンク36、38、40に対して操作ワイヤ51を進退させ、支援部41を開閉操作することができる。
【0033】
処置操作部68は、
図1及び8に示すように、外筒管15の管路15a及び操作部本体66の貫通孔66aに挿通された処置挿入部21の近位端部に取付けられている。処置操作部68は、処置挿入部21の近位端部に取付けられたグリップ77と、一端部がグリップ77に回転可能に支持されたレバー78と、グリップ77とレバー78のなす角度を検出するロータリーエンコーダ79とを有している。
レバー78の遠位端部には、操作ロッド30の近位端部が取付けられている。
【0034】
図8に示すように、グリップ77の近位端部にレバー78の近位端部を近づけて処置操作部68を閉じたときには、操作ロッド30が引き戻されて把持部22が
図3に示す閉状態になる。一方で、
図9に示すように、グリップ77の近位端部からレバー78の近位端部を遠ざけて処置操作部68を開いたときには、操作ロッド30が押込まれて把持部22が
図4に示す開状態になる。このように、処置操作部68は、処置部20の把持部22の把持片24、25を開閉操作する。
ロータリーエンコーダ79は、検出した角度を信号に変換して制御部80に送信する(
図2参照)。
グリップ77は、操作部本体66に連結されている。処置部20は、処置操作部68と一体になった状態で、外筒管15の管路15a及び操作部本体66の貫通孔66a内で、軸線C2周りに回転することができる。
【0035】
動作指示部69は、例えばジョイスティック型の入力部である。動作指示部69は、
図1に示すように操作部本体66側面に規定された操作面66bに対して、動作指示部69の基準位置を中心にして互いに直交する第一の指示方向D及び第二の指示方向Eに移動可能である。動作指示部69を第一の指示方向D、第二の指示方向Eに移動させるのに対応して、処置支援部35が仮想平面Q1上で第一の方向X、第二の方向Yに移動することについては後述する。
動作指示部69は、操作者による入力を検出し、この検出結果を制御部80に送信する。
【0036】
モード切替スイッチ70は、押しボタン型のスイッチである。モード切替スイッチ70には図示しないバネ部材が設けられている。モード切替スイッチ70が押し込まれていない状態では、モード切替スイッチ70はバネ部材の弾性力により操作部本体66から突出している。モード切替スイッチ70は、バネ部材の弾性力に抗して操作部本体66側に押し込むことができる。
後述するように制御部80は制御モードとして第一のモード及び第二のモードを有している。モード切替スイッチ70が押し込まれていない状態では、制御部80の制御モードは第一のモードである。モード切替スイッチ70が押し込まれている間は、制御部80の制御モードが第二のモードになる。モード切替スイッチ70は、制御部80の制御モードを第一のモードと第二のモードとの間で切り替える。
【0037】
図2に示すように、制御部80は、バス81に接続された演算装置82、及びメモリ83を有している。
バス81には、操作検出部55のロータリーエンコーダ58、59及び加速度センサ60、駆動部67のモータ73、74、75、エンコーダ73a、74a、75a、処置操作部68のロータリーエンコーダ79、動作指示部69、及びモード切替スイッチ70が接続されている。
メモリ83には、演算装置82を制御するための制御プログラムや、処置具2のリンク36、38、40の長さや支援部41の長さ等が記憶されている。
制御部80は、制御モードとして、動作指示部69から送信された検出結果に基づいて駆動部67を制御する第一のモードと、操作検出部55から送信された検出結果に基づいて駆動部67を制御する第二のモードとを有している。すなわち、制御部80は、第一のモードでは操作者による動作指示部69の操作に基づいて処置支援部35の支援部41を移動させるが、第二のモードでは操作検出部55の検出結果に基づいて自動的に支援部41を移動させる。
【0038】
以下では、まず制御モードが第一のモードのときの支援部41の移動制御、及び開閉操作の制御について説明する。
図10に示すように、仮想平面Q1上において、第一の方向Xに平行にx軸を規定し、第一の方向Xのうち遠位端側をx軸の正の向きとする。第二の方向Yに平行にy軸を規定し、第二の方向Yのうち処置部20に対する処置支援部35側をy軸の正の向きとする。第一の関節部37の回転軸C6の位置をx軸及びy軸の原点とし、支援部41の遠位端の座標を(x
2,y
2)とする。
第一の関節部37の回転軸C6と第二の関節部39の回転軸C7との距離をL
1、第二の関節部39の回転軸C7と支援部41の遠位端との距離をL
2、第一の関節部37の回転軸C6と支援部41の遠位端との距離をLとする。第一の関節部37の回転軸C6と支援部41の遠位端とを結ぶ線と第二のリンク38とがなす角度をαとする。なお、以下の角度の単位は全てラジアンである。
第二のリンク38と第三のリンク40とがなす角度をβとする。第二のリンク38と処置挿入部21とがなす角度をθ
1とする。角度βの補角をθ
2とする。
【0039】
操作者が動作指示部69の基準位置から動作指示部69を第一の指示方向D、第二の指示方向Eに移動させることで、支援部41の遠位端のx軸、y軸における移動量を(x
2,y
2)と指定したとする。
このとき、余弦定理等から、(1)式から(3)式が成り立つ。(1)式から(3)式から導かれる(4)式及び(5)式のように関節部37、39がなす角度を調節することで、支援部41の遠位端を座標(x
2,y
2)に配置することができる。
【0041】
なお、処置支援部35の構成により到達できない支援部41の遠位端の座標(x
2,y
2)である場合には、例えば、支援部41の遠位端が到達可能であって座標(x
2,y
2)に最も近い位置に支援部41の遠位端を移動させる等の処理を行う。
【0042】
以下では、具体的な例を用いて説明する。
初期状態として、
図1に示すように処置支援部35の形状が、リンク36、38、40が長手軸C1に沿う同一直線上に配置された形状B1であるとする。
この状態から、
図11に示すように、操作面66bに対して動作指示部69が第一の指示方向Dのうちの近位端側に移動すると、制御部80は、動作指示部69から送信された検出結果に基づいて処置支援部35の近位端部に対して処置支援部35の支援部41を第一の方向Xのうちの近位端側に移動させる。この状態の処置支援部35の形状を形状B2とする。なお、
図11中に処置支援部35の形状B1を二点鎖線で示す。
【0043】
さらに、処置支援部35が形状B2である状態から、
図12に示すように操作面66bに対して動作指示部69が第二の指示方向Eの一方側に移動すると、制御部80は処置支援部35の近位端部に対して処置支援部35の支援部41を第二の方向Yの一方側に移動させる。なお、
図12中に処置支援部35の形状B2を二点鎖線で示す。
このように、処置支援部35の支援部41は、処置支援部35の近位端部に対して第一の方向X及び第二の方向Yに移動することができる。
【0044】
制御モードが第一のモードであるときには、制御部80は、処置操作部68が閉じたことをロータリーエンコーダ79で検出した場合には、把持部22が閉状態になるのと同時に、把持部駆動モータ75を駆動して支援部41を閉状態にする。同様に、処置操作部68が開いたことをロータリーエンコーダ79で検出した場合には、把持部22が開状態になるのと同時に、把持部駆動モータ75を駆動して支援部41を開状態にする。
【0045】
次に制御モードが第二のモードのときの支援部41の移動制御、及び開閉操作の制御について説明する。
図13に示すように、二点鎖線で示した処置具システム1の形状B4から、トロッカ3及び処置具2がトロッカ3の中心である点T
0周りに仮想平面Q1に沿って角度γ回転したとする。なお、以下の例では、トロッカ3に対して外筒管15が押込まれた長さL
5を0としている。
このとき、制御部80は、処置部20と処置支援部35の支援部41との距離が所定の距離以下にならないように駆動部67を制御する。より具体的には、制御部80は、処置支援部35の支援部41の位置が移動しないように駆動部67を制御する。なお、ここで言う支援部41の位置が移動しないようにとは、操作者が処置具システム1を仮想平面Q1上のみで回転させる場合(ピッチ方向Z1の回転)に移動しないことを意味し、ヨー方向Z2やロール方向Z3の回転は考慮しない。
【0046】
トロッカ3に対して外筒管15が押込まれた長さL
5がトロッカ3に対する外筒管15の移動量に相当し、トロッカ3及び処置具2が回転した角度γが外筒管15の向きに相当する。
既に定義した距離をL
1等や角度αに加えて、トロッカ3の点T
0と第一の関節部37の回転軸C6との距離をL
0とし、角度θ
1から角度αを引いた角度をφとする。
トロッカ3の点T
0の位置をx軸及びy軸の原点とすると、第一の関節部37の回転軸C6である点T
1の座標は(6)式のように表せる。
(L
0cosγ,−L
0sinγ) ‥(6)
支援部41の遠位端である点T
2の座標を(x
2,y
2)とすると、(7)式から(9)式が成り立つ。(7)式から(9)式から導かれる(10)式から(12)式のように関節部37、39がなす角度を調節することで、支援部41の位置が移動しないように制御することができる。
【0048】
制御モードが第二のモードであるときには、処置操作部68を閉じたり開いたりしても支援部41を開閉操作することはできない。
制御部80は、エンコーダ73a、74a、75aから送信される信号に基づいて、駆動モータ73、74、75の回転軸が所定の回転角度になるように制御する。
【0049】
次に、以上のように構成された処置具システム1の作用について説明する。以下では、患者の腹壁に形成した孔を通して処置を行う場合について説明する。
図14は本実施形態の処置具システム1で処置を行う手順を示すフローチャートである。なお、予め、処置具2は、支援部41が第二の方向Yにおいて処置部20に接近した第一の位置に配置され、把持部22及び支援部41は閉状態になっているとする。
図15から19では、制御部80は示していない。
術者等の操作者は、
図15に示すように、患者Pの腹壁P1を切開して孔P2を形成する。この孔P2にトロッカ3を取付ける。
処置具2を起動させると、
図14のステップS10において、モード切替スイッチ70が押し込まれているか否かが判断される。ここでは、モード切替スイッチ70は押し込まれていないため、ステップS10においてNOと判断され、ステップS20に移行する。このとき、制御部80の制御モードは第一のモードになる。
【0050】
操作者は一方の手で操作部65の処置操作部68を把持し、トロッカ3に処置具2の挿入部10を挿通する。このとき、ローラ56、57が回転し、操作検出部55のロータリーエンコーダ58、59でトロッカ3に対する外筒管15の移動量が検出され、加速度センサ60で外筒管15の向きが検出される。操作検出部55は、検出結果を所定の時間間隔ごとに制御部80に送信する。
制御部80の演算装置82は、操作検出部55から送信される外筒管15の移動量の積分値、及び、メモリ83に記憶されたリンク36、38、40の長さ等から、所定の時間間隔ごとに支援部41の座標(Px,Py)を演算する。
孔P2とは別の経路で腹腔P3内に挿入した図示しない腹腔鏡で処置具2の挿入部10を観察しながら、処置対象となる臓器(組織)P5に隣り合う臓器P6に支援部41を近づける。
【0051】
図16に示すように、処置操作部68を開いて把持部22及び支援部41を開状態にする。操作部65を押込んで、臓器P6に支援部41の支援部把持片49、50を押し付ける。把持部22よりも支援部41の方が遠位端側に配置されているため、支援部41で臓器P6を把持するときに把持部22が支障とならない。
処置操作部68を閉じて把持部22及び支援部41を閉状態にし、支援部41で臓器P6を把持する。
【0052】
ここで、操作者は、
図17に示すように動作指示部69を操作して支援部41を移動させる。より詳しくは、操作者は、他方の手で動作指示部69を第一の指示方向Dや第二の指示方向Eに移動させる。動作指示部69は、動作指示部69の第一の指示方向Dへの移動量に対応したx軸における指示値△x、第二の指示方向Eへの移動量に対応したy軸における指示値△yを検出し、信号に変換して制御部80に送信する。制御部80は、ステップS20において動作指示部69から送信された指示値(△x,△y)を検出し、ステップS22に移行する。
【0053】
ステップS22において、制御部80の演算装置82は、支援部41の現在の座標(Px,Py)に指示値(△x,△y)を加えた指示座標(Px+△x,Py+△y)を演算し、ステップS24に移行する。
ステップS24において、演算装置82は、支援部41の座標が指示座標となるように、前述の(4)式及び(5)式から角度をθ
1、θ
2を演算し、ステップS26に移行する。
ステップS26において、演算装置82は、駆動部67の関節駆動モータ73、74を駆動し、関節部37、39がなす角度を調節する。以上で、全ての工程を終了する。
【0054】
モード切替スイッチ70が押し込まれていない状態では、例えば前述のステップS10及びステップS20から26を複数回繰り返すことで、支援部41が第二の位置R2に移動する。
このとき、臓器P6が臓器P5から引き離されることで、臓器P5と臓器P6との間にトラクションが作用し、臓器P6が支援部41で牽引される。
【0055】
ここで、操作者は一方の手でモード切替スイッチ70が押し込み続ける。
ステップS10において、モード切替スイッチ70が押し込まれているか否かが判断される。モード切替スイッチ70は押し込まれているため、ステップS10においてYESと判断され、ステップS30に移行する。このとき、制御部80の制御モードは第二のモードになる。
【0056】
ここで、操作者は、
図18に示すように処置具2を押込んで臓器P5に把持部22を押し付ける。
具体的な工程としては、ステップS30において、制御部80の演算装置82は、
図17に示す支援部41の遠位端である点T
2の座標をメモリ83に記憶させ、ステップS32に移行する。
ステップS32において、演算装置82は、操作検出部55から送信された外筒管15が押込まれた長さL
5、処置具2が回転した角度γを受信し、ステップS34に移行する。
【0057】
ステップS34において、演算装置82は、支援部41の座標がメモリ83に記憶された点T
2の座標となるように、前述の(10)式から(12)式から角度をθ
1、θ
2を演算し、ステップS36に移行する。
ステップS36において、演算装置82は、駆動部67の関節駆動モータ73、74を駆動し、関節部37、39がなす角度を調節する。以上で、全ての工程を終了する。
【0058】
モード切替スイッチ70が押し込まれている状態では、例えば前述のステップS10及びステップS30から36を複数回繰り返すことで、支援部41の位置が移動せずに、把持部22が支援部41よりも遠位端側まで挿入される。
このとき、臓器P6が臓器P5からさらに引き離され、剥離される。
ここで、
図19に示すように処置操作部68を開いて把持部22を開状態にし、臓器P5の処置を行う。
なお、
図17において、前述の所定の距離とは、長さL
6のことを意味する。
図17の状態から長手軸C1に沿って処置具2が押込まれても、処置部20と支援部41との距離は長さL
6以下にはならない。
【0059】
制御部80の制御モードが第二のモードのときに、操作者の他方の手は処置具システム1の操作には使われていない。このため、操作者は他方の手で、処置具2とは別の処置具を持ち、臓器P6を大きく圧排する操作を行うことができる。
また、臓器P6を大きく圧排する必要がないときには、操作者自身が腹腔鏡を持つことで、操作者一人で手技を行うことができる。
【0060】
以上説明したように、本実施形態の処置具2及び処置具システム1によれば、処置支援部35を第一の位置R1に配置した状態で、処置部20及び処置支援部35を1つのトロッカ3を通して腹腔P3内に挿入する。したがって、腹壁P1に形成する孔P2の数を最小限に抑えて、処置部20及び処置支援部35用としては1つに抑えて処置をすることができる。
また、処置具2の挿入部10に処置部20及び処置支援部35という、いわゆる2つの処置部が備えられているため、処置部間の連携(切替え)動作を円滑に行うことができる。
【0061】
制御モードが第一のモードであるときには操作者が動作指示部69を操作して支援部41を移動させ、制御モードが第二のモードであるときには操作検出部55の検出結果に基づいて自動的に支援部41が移動する。このため、制御モードを第二のモードにすることで、操作者が行わなければいけない操作を容易にするとともに、必要に応じて制御モードを第一のモードにして操作者自身が支援部41を移動させる操作を行うことができる。
処置部20と支援部41との距離が長さL
6以下にはならないことで、臓器P5と臓器P6との間に確実にトラクションを作用させることができる。
【0062】
制御部80は、制御モードが第二のモードであるときに支援部41の位置が移動しないように駆動部67を制御する。これにより、把持部22を支援部41よりも遠位端側まで挿入したときに、臓器P5と臓器P6との間により大きなトラクションを作用させることができる。
関節部37、39の回転軸C6、C7が互いに平行であることで、支援部41が仮想平面Q1上で移動し、支援部41の座標を求める演算が容易になる。
【0063】
なお、本実施形態では、処置具2が操作検出部55を有していてもよい。この場合、処置具2の操作検出部55を公知のトロッカに取付けて用いることになる。
【0064】
(第2実施形態)
次に、本発明の第2実施形態について
図2及び
図20を参照しながら説明するが、前記実施形態と同一の部位には同一の符号を付してその説明は省略し、異なる点についてのみ説明する。
図2及び20に示すように、本実施形態の処置具システム4は、第1実施形態の処置具システム1の制御部80に代えて制御部85を備えている。
制御部85は、制御部80とは制御モードが第二のモードであるときの制御内容が異なる。制御部85は、第二のモードにおいて、処置部20の把持部22が移動した向きとは反対の向きに処置支援部35の支援部41が移動するように駆動部67を制御する。なお、この制御は、把持部22が支援部41から離間するように移動したときのみ行うことが好ましい。
把持部22が移動した距離L
11に対する支援部41が移動した距離L
12は、0よりも大きく1以下であることが好ましい。
【0065】
このように構成された処置具システム4によれば、腹壁P1に形成する孔P2の数を最小限に抑えて処置をするとともに、複数の処置部の連携動作を円滑に行うことができる。
さらに、処置具2がトロッカ3の中心である点T
0周りに角度γ回転したときに、把持部22と支援部41との間をより大きく開く。したがって、同じ操作量でも、支援部41で把持した臓器P6により大きなトラクションを作用させることができる。
【0066】
(第3実施形態)
次に、本発明の第3実施形態について
図21及び
図22を参照しながら説明するが、前記実施形態と同一の部位には同一の符号を付してその説明は省略し、異なる点についてのみ説明する。
図21に示すように、本実施形態の処置具システム5は、第1実施形態の処置具システム1の各構成に加えて、外筒管15の遠位端部に設けられた第二の処置支援部35Aを備えている。第二の処置支援部35Aは処置支援部35と同一の構成であり、リンク36、38、40、関節部37、39、及び支援部41と同一の構成のリンク36A、38A、40A、関節部37A、39A、及び支援部41Aを有している。
【0067】
第二のリンク38A及び第三のリンク40Aは、
図22に示す仮想平面Q2上で回動する。この仮想平面Q2は、第二のリンク38及び第三のリンク40が回動する仮想平面Q1と交差している。より詳しくは、仮想平面Q1、Q2は、外筒管15の長手軸C1に平行であって、長手軸C1から離間するにしたがって互いに離れるように交差している。
本実施形態では、制御部は制御モードとして第一のモード、第二のモード及び第三のモードを有している。第一のモードでは動作指示部69で処置支援部35を操作することができ、第二のモードでは動作指示部69で処置支援部35Aを操作することができる。
そして、第三のモードでは、支援部41、41Aの位置が移動しないように制御される。
本実施形態のモード切替スイッチとしては、例えばモード切替スイッチを押すたびに、制御モードが第一のモード、第二のモード、第三のモード、第一のモード、‥と切替わるスイッチが用いられる。
【0068】
このように構成された処置具システム4によれば、支援部41、41Aを第二の位置R2に配置した状態で支援部41、41Aで臓器P6を把持したときに、臓器P6を長手軸C1に交差する方向に幅広く把持することができる。
【0069】
(第4実施形態)
次に、本発明の第4実施形態について
図23及び
図24を参照しながら説明するが、前記実施形態と同一の部位には同一の符号を付してその説明は省略し、異なる点についてのみ説明する。
図23に示すように、本実施形態の処置具システム6は、第1実施形態の処置具システム1の処置支援部35に代えて処置支援部90を備えている。処置支援部90は、処置支援部35の第一のリンク36に代えて第一のリンク(リンク、近位端リンク)91を有している。
第一のリンク91は、第一のリンク91の近位端側をなすリンク片91aに対して、第一のリンク91の遠位端側をなすリンク片91bを第一のリンク91の長軸周りに回転させる回転部91cを備えている。回転部91cは、公知の回転ジョイントなどで構成することができる。
【0070】
このように構成された処置具システム6では、支援部41で臓器P6を把持した後で、
図24に示すように処置具2の操作部65を外筒管15の長手軸C1周りにロール方向Z6に回転させてもリンク片91bに対してリンク片91a長軸周りに回転することで、臓器P6を把持する処置支援部90の遠位端側が長手軸C1周りに回転しない状態でいることができる。
すなわち、制御モードが第二のモードであるときに、操作部65をロール方向Z6に回転させても、支援部41の位置が移動しないように保持することができる。
【0071】
以上、本発明の第1実施形態から第4実施形態について図面を参照して詳述したが、具体的な構成はこの実施形態に限られるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲の構成の変更、組み合わせ、削除等も含まれる。さらに、各実施形態で示した構成のそれぞれを適宜組み合わせて利用できることは、言うまでもない。
例えば、前記第1実施形態から第4実施形態では、
図25に示すように、処置支援部95は、外筒管15の遠位端部に対して支援部41を、長手軸C1に平行な軸線周りに回転させる把持回転部96を備えもよい。
処置支援部95をこのように構成することで、支援部41の向きを変えることができ、制御モードが第二のモードであるときに、支援部41の位置だけでなく向きも移動しないようにすることができる。
【0072】
処置具システムの外筒管15の遠位端面等に外部を観察可能な観察部を備えることで、処置具システムをスコープ(内視鏡)として用いてもよい。この場合、観察部で観察して遮蔽物をどけながら処置をすることができる。
処置部や処置支援部に、同一の種類で長さの異なる処置部や、高周波エネルギー等を用いたエネルギー処置部等、様々な処置部を外筒管に着脱可能に用意し、外筒管に付け替えて用いてもよい。
【0073】
本実施形態では、処置具の外筒管15のトロッカ3に対する移動量及び向きを、トロッカ3に取付けられた操作検出部55で検出するとした。しかし、外筒管15の移動量及び向きを検出する方法はこれに限られない。例えば、外筒管15や操作部65に取付けた公知のモーションセンサで検出してもよいし、外筒管15や操作部65にマーカーを取付けて、公知のモーショントラッカでマーカーの3次元的な動き(移動量及び向き)を検出してもよい。
【0074】
本実施形態では、動作指示部69はジョイスティック型の入力部であるとした。しかし、動作指示部の構成はこれに限定されず、トラックポインタ等、2種類の指示方向D、Eの移動量を指示できるものであればよい。
支援部41は支援部把持片49、50を備えなくてもよい。第三のリンク40だけでも臓器P6を圧排することができるからである。
【0075】
なお、本実施形態では、処置具の外筒管15のトロッカ3に対する移動量及び向きを、トロッカ3に取付けられた操作検出部55で検出するとした。しかし、操作検出部55にトロッカ3自体の3次元位置情報検出機能をさらに搭載し、この3次元位置情報を加味して制御することも可能である。このことにより、圧排や処置などに派生して生じるトロッカ3自体の僅かな移動も考慮できるので、より正確な制御が可能である。