(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6246095
(24)【登録日】2017年11月24日
(45)【発行日】2017年12月13日
(54)【発明の名称】加熱調理器
(51)【国際特許分類】
H05B 6/12 20060101AFI20171204BHJP
【FI】
H05B6/12 313
【請求項の数】8
【全頁数】9
(21)【出願番号】特願2014-158364(P2014-158364)
(22)【出願日】2014年8月4日
(65)【公開番号】特開2016-35853(P2016-35853A)
(43)【公開日】2016年3月17日
【審査請求日】2017年1月23日
(73)【特許権者】
【識別番号】000006013
【氏名又は名称】三菱電機株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】000176866
【氏名又は名称】三菱電機ホーム機器株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001461
【氏名又は名称】特許業務法人きさ特許商標事務所
(72)【発明者】
【氏名】茂呂 政行
(72)【発明者】
【氏名】榎園 聰
【審査官】
礒部 賢
(56)【参考文献】
【文献】
特開2003−257289(JP,A)
【文献】
特開2006−004881(JP,A)
【文献】
実開平06−048019(JP,U)
【文献】
中国特許出願公開第103400713(CN,A)
【文献】
欧州特許出願公開第2458287(EP,A1)
【文献】
特開平08−329785(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H05B 6/12
F24C 3/12
F24C 7/02
F24C 15/00
H01H 9/00 − 9/28
H01H 19/00 − 19/64
H01H 25/00 − 25/06
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
調理容器が載置される天板を上部に有する本体ケースと、
前記本体ケース内に前記天板に対向して配置された複数の加熱コイルと、
前記本体ケースの前部の内側に収容され、前面に開口を有する基板ケース、前記基板ケースの開口を覆うように設けられ、前記複数の加熱コイルに対応して複数の貫通穴を有するベース、前記ベースを覆うように設けられ、前記複数の貫通穴に対向する位置に当該貫通穴よりも小さい貫通穴を有する化粧パネル、及び前記化粧パネルと前記ベースの各貫通穴に、回転自在でかつ押圧操作で手前側への突出と引き込みとの切り替えが自在なつまみを有し、当該つまみの回転量に応じて火力を調節する火力調節部を備えた操作部と、
前記ベースに設けられた複数の貫通穴の内周縁に、周方向に回動自在に、かつそれぞれ互いに繋がった状態で嵌合され、前記化粧パネルに設けられた複数の貫通穴よりも小さい穴を有し、当該穴に前記つまみが回転自在に挿入されたスペーサーと
を備えたことを特徴とする加熱調理器。
【請求項2】
前記スペーサーは、
前記ベースの複数の貫通穴に対応して設けられたOリング部と、
各Oリング部を互いに繋ぐ連結部と
で構成されていることを特徴とする請求項1に記載の加熱調理器。
【請求項3】
前記Oリング部の内周縁に前記火力調節部のつまみとの間に間隙を有して設けられた突起部を備えたことを特徴とする請求項2に記載の加熱調理器。
【請求項4】
前記連結部は、前記Oリング部の幅よりも細く形成されていることを特徴とする請求項2又は3に記載の加熱調理器。
【請求項5】
前記連結部は、前記Oリング部の厚さよりも薄く形成されていることを特徴とする請求項2〜4の何れか1項に記載の加熱調理器。
【請求項6】
前記連結部の中央部分は、互いに反対方向に向けて折り曲げられてU字の形状に形成されていることを特徴とする請求項2〜5の何れか1項に記載の加熱調理器。
【請求項7】
前記スペーサーは、前記ベースよりも柔らかい合成樹脂材で形成されていることを特徴とする請求項1〜6の何れか1項に記載の加熱調理器。
【請求項8】
前記スペーサーの前記Oリング部と前記連結部の繋ぎ目に樹脂流入口が設けられていることを特徴とする請求項7に記載の加熱調理器。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、天板に載置された調理容器を加熱する加熱調理器に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来の加熱調理器の前面には、複数の加熱コイルに対応して火力調節を行うつまみが設けられている。このつまみは、押圧操作で突出位置と引き込み位置とが自在に切り替えられる構成となっている(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2003−109734号公報(第3頁、
図1)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
従来の加熱調理器においては、引き込み位置ではつまみの軸ブレは少ないが、突出位置ではつまみの軸ブレが大きくなる。このため、つまみが化粧パネルに設けられた貫通穴に擦れてしまい、つまみ回転時の操作感が悪く、また、つまみの表面が擦れによって傷が付くという課題があった。
この課題を解決するために、つまみと化粧パネルとの隙間を大きくして、つまみが化粧パネルの貫通穴に擦れないようにすることができるが、つまみと化粧パネルとの隙間が大きいために、見た目が悪くなるという課題がある。
【0005】
本発明は、前述のような課題を解決するためになされたもので、つまみと化粧パネルとの隙間を大きくしなくても、つまみの軸ブレによって擦れる操作感の悪化を軽減でき、つまみの擦れ傷による意匠の悪化を抑えることができる加熱調理器を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明に係る加熱調理器は、調理容器が載置される天板を上部に有する本体ケースと、本体ケース内に天板に対向して配置された複数の加熱コイルと、本体ケースの前部の内側に収容され、前面に開口を有する基板ケース、基板ケースの開口を覆うように設けられ、複数の加熱コイルに対応して複数の貫通穴を有するベース、ベースを覆うように設けられ、複数の貫通穴に対向する位置に当該貫通穴よりも小さい貫通穴を有する化粧パネル、及び化粧パネルとベースの各貫通穴に、回転自在でかつ押圧操作で手前側への突出と引き込みとの切り替えが自在なつまみを有し、当該つまみの回転量に応じて火力を調節する火力調節部を備えた操作部と、ベースに設けられた複数の貫通穴の内周縁に、周方向に回動自在に、かつそれぞれ互いに繋がった状態で嵌合され、化粧パネルに設けられた複数の貫通穴よりも小さい穴を有し、当該穴につまみが回転自在に挿入されたスペーサーとを備えたものである。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、化粧パネルに設けられた複数の貫通穴よりも小さい穴を有するスペーサーは、ベースに設けられた複数の貫通穴の内周縁に、周方向に回動自在に、かつそれぞれ互いに繋がった状態で嵌合している。この構成により、つまみの回転時に、つまみが偏心したとしても、スペーサーの貫通穴の内周縁に接触してスペーサー自体が同一方向に回動する。このため、つまみが化粧パネルの貫通穴に擦れるようなことがなくなり、つまみに傷が付くようなことがない。また、つまみの擦れ傷による意匠の悪化を抑えることができる。さらに、つまみが偏心したとしても、スペーサーの穴の内周縁に接触するので、つまみの擦れる操作感の悪化を軽減できる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】本発明の実施の形態に係る加熱調理器の斜視図。
【
図2】
図1の主操作部の化粧パネルを透かして示すスペーサーの正面図。
【
図3】
図1の主操作部を矢視A−A方向から見て示す断面図。
【
図6】
図2のスペーサーの樹脂流入口の位置を模式的に示す平面図。
【発明を実施するための形態】
【0009】
図1は本発明の実施の形態に係る加熱調理器の斜視図である。
【0010】
実施の形態に係る加熱調理器は、上面が開口された箱形状の本体ケース1と、本体ケース1の上面の開口を覆うように設置された天板2と、天板2よりも手前側に配置された副操作部3と、天板2よりも奥に設けられた吸気口4及び排気口5と、本体ケース1内に配置された例えば3つの電磁誘導加熱コイル(以下、「加熱コイル」という)と、これらの加熱コイルの電力を制御する制御基板と、本体ケース1内に設置された送風機と、本体ケース1の前面に設置されたグリル扉6と、本体ケース1の前面であって、グリル扉6に隣接して設けられた主操作部9とを備えている。
【0011】
天板2は、平板形状に形成された非磁性材の耐熱ガラスよりなり、外周に支持枠7が装着された状態で本体ケース1に取り付けられている。天板2の上面には、調理容器の載置位置を示す載置位置表示部8a、8b、8cが印刷等により表示されている。これらの載置位置表示部8a、8b、8cの下方には、前述の加熱コイルが対向して配置されている。なお、加熱源として3つの加熱コイルを用いているが、全てを加熱コイルとする必要は無く、例えば、載置位置表示部8cの下方にラジエントヒーターを設置しても良い。また、加熱コイルを3つとしているが、加熱コイルを2つあるいは4つとしても良い。
【0012】
副操作部3は、支持枠7の前部側の上面に設けられている。吸気口4及び排気口5は、複数の通気穴が設けられたカバーによって覆われている。送風機は、吸気口4から外気を吸引し、本体ケース1内に外気を送風して3つの加熱コイル、制御基板等を冷却し、排気口5から排出する。グリル扉6は、本体ケース1内に設置された加熱庫の開口部を開閉し、このグリル扉6を手前に引いたときには、受け皿と受け皿に載置された焼き網とが加熱庫から引き出される構成となっている。
【0013】
主操作部9には、加熱調理器の電源スイッチ10、加熱コイルの数に対応して3つの火力調節部20等が設けられている。主操作部9を正面から見て、左端の火力調節部20は、載置位置表示部8aの下に配置された加熱コイルの火力調節用であり、中央の火力調節部20は、載置位置表示部8bの下に配置された加熱コイルの火力調節用である。また、右端の火力調節部20は、載置位置表示部8bの下に配置された加熱コイルの火力調節用である。これらの火力調節部20は、つまみ21の押圧操作で手前側への突出と引き込みとの切り替えが自在になっている。つまみ21が主操作部9内に引き込んでいるときにはオフ状態で、つまみ21が主操作部9から手前側へ突出しているときには、火力調節が可能な待機状態となっている。なお、操作部9の前面は、後述するように化粧パネル11で覆われている。
【0014】
次に、主操作部9の内部構成について、
図2〜
図5を用いて詳しく説明する。
図2は
図1の主操作部の化粧パネルを透かして示すスペーサーの正面図、
図3は
図1の主操作部を矢視A−A方向から見て示す断面図、
図4は
図3に示すA部の拡大断面図、
図5は
図3に示すB部の拡大断面図、
図6は
図2のスペーサーの樹脂流入口の位置を模式的に示す平面図である。
【0015】
スペーサー30は、
図2に示すように、3つの火力調節部20のつまみ21の外周を間隙を有して囲む3つのOリング部31と、Oリング部31の相互を繋ぐ連結部32とで構成されている。各Oリング部31は、後述するが、ベース12に設けられた3つの貫通穴の内周縁に、周方向に回動自在に嵌め込まれている。連結部32は、各Oリング部31がベース12に設けられた各貫通穴の内周縁に嵌め込まれた際に、片面がベース12に接触している。このスペーサー30は、ベース12を覆う化粧パネル11によって覆われている。
【0016】
連結部32は、厚みがOリング部31と同一で、幅がOリング部31の幅よりも細く形成されている。一方の連結部32の中央部分は、下方へ折り曲げられてU字形状に形成され、他方の連結部32の中央部分は、上方へ折り曲げられて逆U字形状に形成されている。スペーサー30を構成するOリング部31と連結部32は、ポリプロピレン(PP)、ポリアセタール、フッ素樹脂等の合成樹脂材等のように摺動性(滑り易い)を有する樹脂により形成されている。このスペーサー30は、ベース12よりも柔らかい合成樹脂材が用いられている。
【0017】
Oリング部31の内周縁には、
図3に示すように、折り返して形成される嵌合部31aが設けられ、また、この嵌合部31aの内周面には、内側に突出する突起部31bが設けられている。この嵌合部31aにより、Oリング部31は、ベース12に設けられた貫通穴の周方向に回動自在に嵌め込まれている。また、突起部31bにより、Oリング部31の穴が化粧パネル11に設けられた貫通穴16よりも僅かに小さくなっている。
【0018】
Oリング部31の厚みt1は、
図4及び
図5に示すように、ベース12と化粧パネル11との間の間隔t2よりも薄くなっている。これは、つまみ21が偏心した状態で回転したときでも、つまみ21の回転がスムーズになるようにするためである。つまり、Oリング部31が化粧パネル11との間に隙間(t2−t1)を有することで、つまみ21を突起部31bに接触させた状態で回転した場合、Oリング部31が同一方向に僅かに移動することができ、つまみ21の回転がスムーズとなる。
【0019】
スペーサー30は、前述した合成樹脂材を溶融し、溶融した合成樹脂材を金型に注入して、3つのOリング部31とOリング部31の相互を繋ぐ連結部32とが一体に成形されたものである。
図6に示すように、金型において、溶融した合成樹脂材(矢印)を流入する樹脂流入口(ゲート)32aの位置は、両端に位置するOリング部31と連結部32との繋ぎ目としている。樹脂流入口32aをOリング部31よりも細く形成された連結部32側とすることで、溶融した合成樹脂材が流れ易くなる。
【0020】
主操作部9(操作部)は、
図3に示すように、本体ケース1の前部の内側に収容され、前面に開口を有する基板ケース14と、基板ケース14の開口を覆うように設けられ、複数の加熱コイルに対応して複数の貫通穴を有するベース12と、ベース12を覆うように設けられ、ベース12の複数の貫通穴に対向する位置に当該貫通穴よりも小さい貫通穴16を有する化粧パネル11と、化粧パネル11の各貫通穴16及びベース12の各貫通穴に、回転自在でかつ押圧操作で手前側への突出と引き込みとの切り替えが自在なつまみ21を有し、つまみ21の回転量に応じて火力を調節する火力調節部20とを備えている。
【0021】
火力調節部20は、
図3に示すように、基板ケース14内の基板13に装着されたエンコーダ15と、エンコーダ15が間隙を有して挿入された円筒形状の固定軸22と、固定軸22の外周面に取り付けられたバネ23と、エンコーダ15が挿入される挿入穴24aを有し、エンコーダ15と固定軸22との間の隙間に挿入される可動軸24と、中空部21a内に可動軸24が嵌め込まれ、ベース12の貫通穴と化粧パネル11に設けられた貫通穴16に回転自在に挿入されたつまみ21とで構成されている。
【0022】
つまみ21をバネ23の付勢力に抗して奥に押したときには、可動軸24がエンコーダ15と固定軸22との間の隙間に挿入されて、つまみ21が引き込み状態となる。また、引き込み状態のつまみ21を再び押したときには、つまみ21と可動軸24とがバネ23の付勢力によって手前側に移動し、つまみ21が化粧パネル11から突出する。
【0023】
化粧パネル11から突出したつまみ21を時計方向あるいは反時計方向の何れかの方向に回転させた場合には、可動軸24と共にエンコーダ15が同一方向に回転する。このエンコーダ15の回転量に応じて火力が設定される。火力を設定している際に、つまみ21を摘んでいる指の力加減により、つまみ21が偏心した場合には、つまみ21が、化粧パネル11の貫通穴16に接触することなく、Oリング部31の突起部31bに接触しながら回転する。この時、Oリング部31が同一方向に僅かに移動するので、つまみ21の回転がスムーズとなる。また、Oリング部31が移動した際には、Oリング部31間に設けられた連結部32がバネとして作用し、Oリング部31の僅かな移動による変形を規制して元の状態に戻す。
【0024】
以上のように実施の形態によれば、互いに連結部32により連結された各Oリング部31を、ベース12に設けられた複数の貫通穴に周方向に回動自在に嵌め込んでいる。この構成により、つまみ21の回転時に、つまみ21が偏心したとしても、Oリング部31の内周縁に設けられた突起部31bに接触して、そのOリング部31自体が同一方向に回動する。このため、つまみ21が化粧パネル11の貫通穴16に擦れるようなことがなくなり、つまみ21に傷が付くようなことがない。また、つまみ21の擦れ傷による意匠の悪化を抑えることができる。さらに、つまみ21が偏心したとしても、Oリング部31の内周縁に設けられた突起部31bに接触するので、つまみ21の擦れる操作感の悪化を軽減できる。
【0025】
また、ベース12の複数の貫通穴に対応して設けられたOリング部31とOリング部31の相互を繋ぐ連結部32とが一体に形成され、また、各連結部32の中央部分が互いに反対方向に折り曲げられている。この構成により、スペーサー30をベース12に取り付ける際、Oリング部31の上下方向の向きを気にすることなくベース12の貫通穴に嵌めることができ、作業性がよい。
【0026】
また、スペーサー30を合成樹脂材で成形しているので、形状を自在に作れ、Oリング部31の回動性も合成樹脂材の材料選定により変更できる。また、スペーサー30自体を軽くしたり、重めにしたり選択の自由度が増す。
【0027】
なお、実施の形態では、連結部32の厚みをOリング部31と同一とし、連結部32の幅をOリング部31の幅よりも細くしているが、これに代えて、連結部32の厚みを前記Oリング部の板厚よりも薄く形成してもよい。また、連結部32の幅と厚みの両方をOリング部31よりも小さくしてもよい。このように連結部32を形成しても、つまみ21の偏心回転により、Oリング部31が移動しても、バネとして作用する。
【0028】
また、実施の形態では、樹脂流入口32aの位置を、両端に位置するOリング部31と連結部32との繋ぎ目としたが、これに代えて、
図7に示すようにしてもよい。この
図7は
図6の変形例を示すスペーサーの平面図である。
つまり、樹脂流入口32aの位置を、中央に位置するOリング部31と2本の連結部32との繋ぎ目としてもよい。この場合も、溶融した合成樹脂材が流れ易くなる。
【符号の説明】
【0029】
1 本体ケース、2 天板、3 副操作部、4 吸気口、5 排気口、6 グリル扉、7 支持枠、8a、8b、8c 載置位置表示部、9 主操作部、11 化粧パネル、12 ベース、13 基板、14 基板ケース、15 エンコーダ、16 貫通穴、20 火力調節部、21 つまみ、21a 中空部、22 固定軸、23 バネ、24 可動軸、24a 挿入穴、30 スペーサー、31 Oリング部、31a 嵌合部、31b 突起部、32 連結部、32a 樹脂流入口。