(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記報知部は、前記超音波の音線方向が前記生体組織の移動方向と一致するように、操作者が前記超音波プローブを動かすべき方向及び角度を把握するための情報を報知する請求項1に記載の超音波診断装置。
前記歪み算出部は、前記超音波プローブによって取得された時間的に異なる同一音線上の二つのエコー信号の波形を比較し、該二つのエコー信号の間における前記生体組織に対する圧迫とその弛緩に伴う波形の変形度合に基づいて、前記生体組織における各部の歪みを算出する請求項1〜10のいずれか一項に記載の超音波診断装置。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本発明の実施形態について図面に基づいて説明する。
(第一実施形態)
先ず、第一実施形態について説明する。
図1に示す超音波診断装置1は、超音波プローブ2、送受信ビームフォーマ(beamformer)3、エコーデータ処理部4、表示処理部5、表示部6、操作部7、制御部8及び記憶部9を備える。前記超音波診断装置1は、コンピュータ(computer)としての構成を備えている。
【0011】
前記超音波プローブ2は、アレイ状に配置された複数の超音波振動子(図示省略)を有して構成され、この超音波振動子によって被検体に対して超音波を送信し、そのエコー信号を受信する。前記超音波プローブ2は、本発明における超音波プローブの実施の形態の一例である。
【0012】
前記送受信ビームフォーマ3は、前記超音波プローブ2から所定の走査条件で超音波を送信するための電気信号を、前記制御部8からの制御信号に基づいて前記超音波プローブ2に供給する。また、前記送受信ビームフォーマ3は、前記超音波プローブ2で受信したエコー信号について、A/D変換、整相加算処理等の信号処理を行ない、信号処理後のエコーデータを前記エコーデータ処理部4へ出力する。
【0013】
前記エコーデータ処理部4は、
図2に示すように、Bモードデータ作成部41及び物理量データ作成部42を有する。前記Bモードデータ作成部41は、前記送受信ビームフォーマ3から出力されたエコーデータに対し、対数圧縮処理や包絡線検波処理等のBモード処理を行い、Bモードデータを作成する。Bモードデータは、前記記憶部9に記憶されてもよい。
【0014】
前記物理量データ作成部42は、前記送受信ビームフォーマ3から出力されたエコーデータに基づいて、被検体における各部の弾性に関する物理量を算出して物理量データを作成する(物理量算出機能)。前記物理量データ作成部42は、例えば特開2008−126079号公報に記載されているように、一の走査面における同一音線上の時間的に異なるエコーデータに相関ウィンドウを設定し、この相関ウィンドウ間で相関演算を行なって前記弾性に関する物理量を画素毎に算出し、一フレーム分の物理量データを作成する。従って、二フレーム分のエコーデータから一フレーム分の物理量データが得られ、後述するように弾性画像が作成される。前記物理量データは、前記記憶部に記憶されてもよい。
【0015】
前記物理量データ作成部42は、前記相関ウィンドウ間の相関演算により、生体組織に対する圧迫とその弛緩に伴うエコー信号の波形の変形度合を生体組織の歪みとして算出する。従って、ここでは、前記弾性に関する物理量は歪みであり、前記物理量データとして歪みデータが得られる。
【0016】
本例では、後述するように心臓や血管の拍動によって肝臓が変形することによる歪みが算出される。ここで、前記物理量データ作成部42によって得られる歪みは、超音波の音線方向における歪みである。肝臓の変形方向(移動方向)と超音波の音線方向とが異なっている場合、実際の歪みにおける音線方向の成分の歪みが、前記物理量データ作成部42によって算出される。従って、肝臓の変形方向と超音波の音線方向との角度が大きくなるほど、前記物理量データ作成部42によって算出される歪みと実際の歪みとの差が大きくなる。
【0017】
前記物理量データ作成部42は、本発明における歪み算出部の実施の形態の一例である。また、物理量算出機能は、本発明における歪み算出機能の実施の形態の一例である。
【0018】
後述するようにBモード画像に関心領域Rが設定された場合、前記物理量データ作成部42は、関心領域R内を対象にして、前記歪みの算出を行なってもよい。
【0019】
前記表示処理部5は、
図3に示すように、Bモード画像データ作成部51、移動検出部52、角度算出部53、弾性画像データ作成部54、画像表示処理部55を有する。前記Bモード画像データ作成部51は、前記Bモードデータについてスキャンコンバータ(scan converter)による走査変換を行ない、エコーの信号強度に応じた輝度を示す情報を有するBモード画像データに変換する。前記Bモード画像データは例えば256階調の輝度を示す情報を有する。
【0020】
前記移動検出部52は、前記Bモード画像データに基づいて、Bモード画像における生体組織の移動を検出する(移動検出機能)。詳細は後述する。前記移動検出部52は、本発明における移動検出部の実施の形態の一例である。また、前記移動検出機能は、本発明における移動検出機能の実施の形態の一例である。
【0021】
前記角度算出部53は、前記超音波プローブ2によって送受信される超音波の音線方向と前記移動検出部52で検出された前記生体組織の移動方向との角度を算出する(角度算出機能)。前記角度算出部53は、本発明における角度算出部の実施の形態の一例である。また、前記角度算出機能は、本発明における角度算出機能の実施の形態の一例である。
【0022】
前記弾性画像データ作成部54は、前記物理量データを、色を示す情報に変換するとともに、スキャンコンバータによる走査変換を行ない、歪みに応じた色を示す情報を有する弾性画像データを作成する(弾性画像データ作成機能)。前記弾性画像データ作成部54は、物理量データを階調化し、各階調に割り当てられた色を示す情報からなる弾性画像データを作成する。前記弾性画像データ作成部54は、本発明における弾性画像データ作成部の実施の形態の一例である。また、前記弾性画像データ作成機能は、本発明における弾性画像データ作成機能の実施の形態の一例である。
【0023】
前記画像表示処理部55は、前記関心領域Rにおいて前記Bモード画像データ及び前記弾性画像データを所定の割合で合成し、前記表示部6に表示する画像の画像データを作成する。そして、前記画像表示処理部55は、
図4に示すように、前記画像データに基づいて、前記関心領域Rにおいて、Bモード画像データと弾性画像データとが合成されたカラー合成弾性画像CEIを有する画像Iを前記表示部6に表示させる(画像表示制御機能)。
【0024】
前記画像Iは、Bモード画像BIに設定された前記関心領域Rに、前記カラー合成弾性画像CEIが表示された画像である。前記カラー合成弾性画像CEIは、背景のBモード画像が透過したカラー画像である。前記カラー合成弾性画像CEIは、前記Bモード画像データと前記弾性画像データとの合成割合に応じた透過度を有する。前記カラー合成弾性画像CEIは、歪みに応じた色を有し、生体組織の弾性を示す弾性画像である。
【0025】
前記Bモード画像データ及び前記弾性画像データは、前記記憶部10に記憶されてもよい。また、Bモード画像データ及び前記弾性画像データが合成された前記画像データは、前記記憶部10に記憶されてもよい。
【0026】
また、前記画像表示処理部55は、前記角度算出部53によって算出された角度に基づく情報を前記表示部6に表示させる。詳細は後述する。前記画像表示処理部55は、本発明における報知部の実施の形態の一例である。
【0027】
前記表示部7は、例えばLCD(Liquid Crystal Display)や有機EL(Electro−Luminescence)ディスプレイなどである。
【0028】
前記操作部8は、操作者が指示や情報を入力するためのキーボード及びポインティングデバイス(図示省略)などを含んで構成されている。
【0029】
前記制御部8は、CPU(Central Processing Unit)等のプロセッサーである。この制御部8は、前記記憶部9に記憶されたプログラムを読み出し、前記超音波診断装置1の各部を制御する。例えば、前記制御部8は、前記記憶部9に記憶されたプログラムを読み出し、読み出されたプログラムにより、前記送受信ビームフォーマ3、前記エコーデータ処理部4及び前記表示処理部5の機能を実行させる。
【0030】
前記制御部8は、前記送受信ビームフォーマ3の機能のうちの全て、前記エコーデータ処理部4の機能のうちの全て及び前記表示処理部5の機能のうちの全ての機能をプログラムによって実行してもよいし、一部の機能のみをプログラムによって実行してもよい。前記制御部8が一部の機能のみを実行する場合、残りの機能は回路等のハードウェアによって実行されてもよい。
【0031】
なお、前記送受信ビームフォーマ3、前記エコーデータ処理部4及び前記表示処理部5の機能は、回路等のハードウェアによって実現されてもよい。
【0032】
前記記憶部9は、HDD(Hard Disk Drive:ハードディスクドライブ)や、RAM(Random Access Memory)やROM(Read Only Memory)等の半導体メモリ(Memory)などである。前記超音波診断装置1は、前記記憶部9として、前記HDD、前記RAM及び前記ROMの全てを有していてもよい。また、前記記憶部9は、CD(Compact Disk)やDVD(Digital Versatile Disk)などの可搬性の記憶媒体であってもよい。
【0033】
前記制御部8によって実行されるプログラムは、前記HDDや前記ROMなどの非一過性の記憶媒体に記憶されている。また、前記プログラムは、前記CDや前記DVDなどの可搬性を有し非一過性の記憶媒体に記憶されていてもよい。
【0034】
さて、本例の超音波診断装置1の作用について説明する。前記送受信ビームフォーマ3は、前記超音波プローブ2から被検体の生体組織へ超音波を送信させる。本例では、前記超音波プローブ2によって被検体の肝臓へ超音波を送信する。
【0035】
前記送受信ビームフォーマ3は、Bモード画像データを作成するための超音波と、弾性画像データを作成するための超音波とを交互に送信させてもよい。前記超音波プローブ2から送信された超音波のエコー信号は、前記超音波プローブ2によって受信される。
【0036】
ここで、肝臓は、心臓や血管の拍動によって変形を繰り返す。このように変形が繰り返されている肝臓から得られるエコー信号に基づいて、変形を歪みとしてとらえた弾性画像が作成される。具体的には、エコー信号が取得されると、前記Bモードデータ作成部41がBモードデータを作成し、前記物理量データ作成部42が歪みを算出して物理量データを作成する。さらに、前記Bモード画像データ作成部51が、前記Bモードデータに基づいてBモード画像データを作成し、前記弾性画像データ作成部54が、前記歪みデータに基づいて弾性画像データを作成する。そして、前記画像表示処理部55が、前記
図4に示すように、前記Bモード画像データ及び前記弾性画像データが合成されたカラー合成弾性画像CEIを有する画像Iを前記表示部6に表示させる。ここでは、前記画像Iはリアルタイムの画像である。
【0037】
また、前記画像表示処理部55は、前記画像Iとともに、
図5に示すようにインジケータInを前記表示部6に表示させる。このインジケータInは、破線L1と実線L2とからなる。前記インジケータInの表示について、
図6のフローチャートに基づいて説明する。
【0038】
先ず、ステップS1では、前記移動検出部52が前記Bモード画像BIにおける生体組織の移動を検出する。前記移動検出部52は、前記関心領域Rにおける生体組織の移動を検出する。具体的に説明する。例えば、前記移動検出部52は、
図7に示すように、先ず前記関心領域Rにおいて設定された複数の領域r1〜r9の各々において、前記Bモード画像における生体組織の移動を検出する。前記移動検出部52は、同一断面についての時間的に異なる二フレームのBモード画像データのうち、一方のBモード画像データにおける前記複数の領域rの各々が、他方のBモード画像データにおいてどの部分に移動したかを、相関演算による画像の類似度を用いた手法など公知の手法によって求める。
【0039】
なお、
図7では、前記関心領域Rが九つの領域r1〜r9に分割されているが、領域の数はこれに限られるものではない。
【0040】
前記移動検出部52は、前記複数の領域r1〜r9の各々についての移動の検出により、
図8に示すように、前記複数の領域r1〜r9の各々についての移動ベクトルv1〜v9を得る。前記移動検出部52は、前記移動ベクトルv1〜v9の平均ベクトルVav(図示省略)を算出する。この平均ベクトルVavの算出により、前記関心領域Rにおける生体組織の移動が検出される。
【0041】
次に、ステップS2では、前記角度算出部53が、超音波の音線方向と前記移動検出部52で検出された前記関心領域Rにおける生体組織の移動方向との角度θを算出する。前記生体組織の移動方向は、前記ステップS1において算出された前記平均ベクトルVavの方向である。
【0042】
次に、ステップS3では、前記画像表示処理部55は、前記ステップS2において算出された角度θに基づいて、前記インジケータInを前記表示部6に表示させる。このインジケータInにおいて、前記破線L1は超音波の音線方向であり、前記実線L2は前記平均ベクトルVavの方向(前記生体組織の移動方向)である。
図9に示すように、前記破線L1と前記実線L2によって形成される角は、前記角度θである。前記インジケータInは、本発明における角度に基づく情報であり、超音波の音線方向と生体組織の移動方向との角度を示す情報であり、超音波の音線方向と生体組織の移動方向との一致度を示す情報である。
【0043】
前記インジケータInが表示されることにより、操作者は、超音波の音線方向と生体組織の移動方向とのずれを認識することができる。従って、操作者は、前記破線L1が前記実線L2と一致するように、前記超音波プローブ2の角度等を調節することにより、超音波の音線方向と生体組織の移動方向とを一致させることができる。従って、前記インジケータInは、前記超音波の音線方向が前記生体組織の移動方向と一致するように、操作者が前記超音波プローブを動かすべき方向及び角度を把握するための情報であると云える。
【0044】
より詳細には、前記ステップS1〜S3の処理は繰り返し行われ、前記インジケータInの表示は更新される。従って、操作者によって前記超音波プローブ2の角度等が調節されて前記角度θが変わると、前記
図9に示すように前記実線L2が、前記破線L1との交点を中心にして回動する。これにより、操作者は、前記インジケータInを見ながら、超音波の音線方向と生体組織の移動方向とが一致するまで、前記超音波プローブ2の角度等を調節することができる。超音波の音線方向と生体組織の移動方向とが一致することにより、生体組織の弾性をより正確に反映したカラー合成弾性画像CEIを表示させることができる。
【0045】
前記破線L1は、音線の方向であるので、前記表示部6において、上下方向に固定して表示される。このような方向に表示される前記破線L1の位置を零度とすると、前記実線L2は、
図10に示すように、前記破線L1に対して時計回りの方向に90度の位置まで表示され、前記破線L1に対して反時計回りの方向に90度の位置まで表示される。時計回りの方向がプラスの方向であり、反時計回りの方向がマイナスの方向である。従って、角度θは、−90≦θ≦+90である。
【0046】
次に、第一実施形態の変形例について説明する。前記画像表示処理部55は、前記インジケータInの代わりに、前記角度θを示す文字を前記表示部6に表示させてもよい。例えば、前記画像表示処理部55は、
図11に示すように、前記角度θを示す文字として、「+X°」の文字CHを表示させる(θ=X°)。
【0047】
前記文字CHは、本発明において、超音波の音線方向と生体組織の移動方向との角度を示す情報の実施の形態の一例であり、超音波の音線方向と生体組織の移動方向との一致度を示す情報の実施の形態の一例である。また、前記文字CHは、本発明において、前記超音波の音線方向が前記生体組織の移動方向と一致するように、操作者が前記超音波プローブを動かすべき方向及び角度を把握するための情報の実施の形態の一例でもある。
【0048】
前記画像表示処理部55は、前記インジケータInの代わりに、前記超音波プローブ2を動かすべき方向及び角度を、前記表示部6に文字で表示させてもよい。前記超音波プローブ2を動かすべき方向及び角度は、超音波の音線方向と生体組織の移動方向とが一致するように、前記超音波プローブ2を動かすべき方向及び角度である。
【0049】
また、前記角度θや、前記超音波プローブ2を動かすべき方向及び角度が、音声で知らされてもよい。この場合、
図12に示すように、超音波診断装置1における制御部8が、スピーカー10から、前記音声を出力させる。この場合、前記制御部8は、本発明における報知部の実施の形態の一例である。
【0050】
(第二実施形態)
次に、第二実施形態について説明する。ただし、第一実施形態と同一事項については説明を省略する。
【0051】
本例では、複数の前記領域r1〜r9の各々に、超音波の音線の方向と、前記ベクトルv1〜v9の各々の方向との角度θ1〜θ9に応じた透過度を有する合成超音波画像UI1〜EI9が表示される。
図13のフローチャートに基づいて説明する。
【0052】
先ず、ステップS11では、前記移動検出部52は、前記ステップS1と同様に、前記複数の領域r1〜r9の各々において、前記移動ベクトルv1〜v9を得る。ただし、本例では、前記移動検出部52は、前記平均ベクトルVavを算出しなくてもよい。
【0053】
次に、ステップS12では、前記角度算出部53は、超音波の音線方向と前記移動ベクトルv1との角度θ1、超音波の音線方向と前記移動ベクトルv2との角度θ2、超音波の音線方向と前記移動ベクトルv3との角度θ3、超音波の音線方向と前記移動ベクトルv4との角度θ4、超音波の音線方向と前記移動ベクトルv5との角度θ5、超音波の音線方向と前記移動ベクトルv6との角度θ6、超音波の音線方向と前記移動ベクトルv7との角度θ7、超音波の音線方向と前記移動ベクトルv8との角度θ8、超音波の音線方向と前記移動ベクトルv9との角度θ9を算出する。−90≦θ1〜θ9≦+90である。
【0054】
次に、ステップS13では、前記画像表示処理部55は、前記複数の領域r1〜r9の各々において、前記角度θ1〜θ9に応じたBモード画像BIの透過度を有するカラー合成弾性画像CEIのデータを作成する。従って、前記複数の領域r1〜r9の各々について、カラー合成弾性画像CEI1〜CEI9のデータが作成される。
【0055】
例えば、前記弾性画像データ作成部54は、角度θ1〜θ9の絶対値が大きくなるほど、前記Bモード画像データの合成割合を大きくするとともに前記弾性画像データの合成割合を小さくする。これにより、Bモード画像の透過度が高くなる。一方、前記弾性画像データ作成部54は、角度θ1〜θ9の絶対値が小さくなるほど、前記Bモード画像データの合成割合を小さくするとともに前記弾性画像データの合成割合を大きくする。これにより、Bモード画像の透過度が低くなる。
【0056】
従って、前記Bモード画像データの合成割合は、前記θ1〜θ9が零度である場合に最小となり、前記θ1〜θ9の絶対値が90度である場合に最大となる。一方、前記弾性画像データの合成割合は、前記θ1〜θ9が零度である場合に最大となり、前記θ1〜θ9の絶対値が90度である場合に最小となる。
【0057】
前記角度θ1〜θ9に応じたBモード画像BIの透過度を有するカラー合成弾性画像CEI1〜CEI9のデータが作成されると、このデータに基づいて、前記画像表示処理部55は、
図14に示すように、前記複数の領域r1〜r9(
図14では符号省略)の各々に、カラー合成弾性画像CEI1〜CEI9を表示させる。図においては、ドット(dot)の密度(ドットの濃淡度合)がBモード画像の透過度を表わしている。具体的には、ドットの密度が高い(ドットが濃い)ほどBモード画像BIの透過度が低く、ドットの密度が低い(ドットが薄い)ほどBモード画像BIの透過度が高い。
【0058】
前記カラー合成弾性画像CEI1〜CEI9は、本発明における角度に応じた画像の実施の形態の一例である。また、前記カラー合成弾性画像CEI1〜CEI9は、本発明において、前記超音波の音線方向と前記生体組織の移動方向との角度を示す情報の実施の形態の一例であり、前記超音波の音線方向と前記生体組織の移動方向との一致度を示す情報の実施の形態の一例である。
【0059】
この第二実施形態では、前記カラー合成弾性画像CEI1〜CEI9を含む前記画像Iは、リアルタイムの画像であってもよいし、前記記憶部9に記憶されたBモード画像データ(またはBモードデータ)及び弾性画像データ(または物理量データ)に基づいて作成された画像であってもよい。
【0060】
本例によれば、操作者は、前記カラー合成弾性画像CEI1〜CEI9を観察することにより、前記複数の領域r1〜r9の各々において、超音波の音線方向と生体組織の移動方向とのずれを認識することができる。具体的には、操作者は、前記カラー合成弾性画像CEI1〜CEI9において、Bモード画像BIの透過度が低いほど、超音波の音線方向と生体組織の移動方向とのずれが少ないと認識することができる。従って、操作者は、Bモード画像BIの透過度によって、前記カラー合成弾性画像CEI1〜CEI9のうち、どの画像が生体組織の弾性をより正確に反映した画像であるかを把握することができる。これにより、操作者は、肝臓の全体の弾性を知りたい場合など、腫瘤等の局所的な弾性を知りたいわけではない場合、Bモード画像の透過度が高い領域のカラー合成弾性画像を参考にして、弾性を知ることができる。
【0061】
次に、第二実施形態の変形例について説明する。前記画像表示処理部55は、複数の前記領域r1〜r9のうち、前記角度θ1〜θ9が所定の角度θth以上である領域については、前記カラー合成弾性画像CEI1〜CEI9を表示させない。すなわち、前記画像表示処理部55は、複数の前記領域r1〜r9のうち、前記角度θ1〜θ9が所定の角度θth未満であるという基準を満たさない領域については、前記カラー合成弾性画像CEI1〜CEI9を表示させない。例えば、前記角度θ6,θ8が、前記所定の角度θth以上である場合、前記画像表示処理部55は、
図15に示すように、カラー合成弾性画像CEI6,CEI8を表示させない。
【0062】
前記所定の角度θthは、例えば生体組織の弾性を正確に反映しておらず、弾性を知るために必要ではないカラー合成弾性画像が得られる角度に設定される。前記所定の角度θthは、本発明における所定の閾値の実施の形態の一例である。また、所定の角度θth未満であるという基準は、本発明における所定の閾値に関する基準の実施の形態の一例である。
【0063】
(第三実施形態)
次に、第三実施形態について説明する。ただし、第一、第二実施形態と同一事項については説明を省略する。
【0064】
本例の超音波診断装置の表示処理部5は、
図16に示すように、Bモード画像データ作成部51、移動検出部52、角度算出部53、弾性画像データ作成部54、画像表示処理部55のほか、移動量画像データ作成部56を有する。この移動量画像データ作成部56は、前記移動検出部52によって検出された生体組織の移動量のデータを、色を示す情報に変換するとともに、スキャンコンバータによる走査変換を行ない、前記移動量に応じた色を示す情報を有する移動量画像データを作成する。前記移動量画像データ作成部56は、前記移動量のデータを階調化し、各階調に割り当てられた色を示す情報からなる移動量画像データを作成する。前記移動量画像データ作成部56は、本発明における移動量画像データ作成部の実施の形態の一例である。
【0065】
本例の作用について説明する。本例では、移動量画像データに基づく画像が表示された後に、この画像に基づいて弾性画像を表示する関心領域Rの位置が決定される。そして、その後に前記関心領域Rにカラー合成弾性画像CEIが表示される。具体的に、
図17のフローチャートに基づいて説明する。
【0066】
先ず、ステップS21では、前記表示部6に前記移動量画像データに基づく画像が表示される。この画像は、前記移動量画像データとBモード画像データとが合成されたカラー合成移動量画像CMIである。カラー合成移動量画像CMIは、
図18に示すように、Bモード画像BIの表示領域に設定された複数の領域r1〜r16(
図18では図示省略)の各々に表示されたカラー合成移動量画像CMI1〜CMI16からなる。
【0067】
前記カラー合成移動量画像CMI1〜CMI16の表示について詳細に説明する。先ず、前記超音波プローブ2による超音波の送受信が行われ、Bモード画像データが作成される。前記移動検出部52は、上記各実施形態と同様に、時間的に異なる二フレームのBモード画像データに基づいて、前記複数の領域r1〜r16の各々において、Bモード画像における生体組織の移動を算出し、移動ベクトルv1〜v16(図示省略)を得る。
【0068】
前記移動ベクトルv1〜v16が得られると、前記移動量画像データ作成部56は、これら移動ベクトルv1〜v16における移動量に応じた表示形態を有する移動量画像データを作成する。また、前記角度算出部53は、超音波の音線方向と前記移動ベクトルv1〜v16の各々との角度θ1〜θ16を算出する(−90≦θ1〜θ16≦+90)。
【0069】
次に、前記画像表示処理部55は、前記移動量画像データと前記Bモード画像データとを所定の割合で合成して、カラー合成移動量画像CEIのデータを作成する。前記画像表示処理部55は、前記複数の領域r1〜r16の各々において、前記角度θ1〜θ16に応じたBモード画像BIの透過度を有するカラー合成移動量画像CMIのデータを作成する。従って、前記複数の領域r1〜r16の各々について、カラー合成移動量画像CMI1〜CMI16が作成される。前記各実施形態と同様に、前記カラー合成移動量画像CMI1〜CMI16も、前記角度θ1〜θ16の絶対値が大きくなるほど、Bモード画像BIの透過度が高くなる。
【0070】
前記カラー合成移動量画像CMI1〜CMI16のデータが作成されると、このデータに基づいて、前記画像表示処理部55は、前記
図18に示すように、前記複数の領域r1〜r16の各々に、前記カラー合成移動量画像CMI1〜CMI16を表示させる。ここでも、ドットの濃淡度合が、Bモード画像BIの透過度を表わしている。前記カラー合成移動量画像CMI1〜CMI16は、本発明における角度に応じた画像の実施の形態の一例である。また、前記カラー合成移動量画像CMI1〜CMI16は、本発明において、前記超音波の音線方向と前記生体組織の移動方向との角度を示す情報の実施の形態の一例であり、前記超音波の音線方向と前記生体組織の移動方向との一致度を示す情報の実施の形態の一例である。
【0071】
次に、ステップS22では、操作者は、前記カラー合成移動量画像CMI1〜CMI16を観察して、生体組織の弾性をより正確に反映したカラー合成弾性画像CEIを得ることができる位置に、関心領域Rを設定する。具体的には、操作者は、前記カラー合成移動量画像CMI1〜CMI16において、Bモード画像BIの透過度がより低い領域に関心領域Rを設定する。例えば、
図19に示すように、領域r6,r7,r10,r11のカラー合成移動量画像CMI6,CMI7,CMI10,CMI11におけるBモード画像BIの透過度が他よりも低い場合、前記カラー合成移動量画像CMI6,CMI7,CMI10,CMI11が表示された領域r6,r7,r10,r11に関心領域Rを設定する。
【0072】
前記ステップS22において関心領域Rが設定されると、ステップS23では、Bモード画像データを作成するための超音波の送受信のほかに、弾性画像データを作成するための超音波の送受信が行われる。そして、
図20に示すように、前記関心領域Rに、前記カラー合成弾性画像CEIが表示される。
【0073】
本例によれば、操作者は、前記カラー合成移動量画像CMI1〜CMI16を観察することにより、前記複数の領域r1〜r16の各々において、超音波の音線方向と生体組織の移動方向とのずれを認識することができる。具体的には、操作者は、前記カラー合成移動量画像CMI1〜CMI16において、Bモード画像BIの透過度が低いほど、超音波の音線方向と生体組織の移動方向とのずれが少ないと認識することができる。従って、操作者はBモード画像BIの透過度がより低い領域に関心領域Rを設定することにより、この関心領域Rにおいて、生体組織の弾性をより正確に反映した弾性画像を得ることができる。
【0074】
以上、本発明を前記各実施形態によって説明したが、本発明はその主旨を変更しない範囲で種々変更実施可能なことはもちろんである。例えば、前記超音波の音線方向が前記生体組織の移動方向と一致するように、操作者が前記超音波プローブを動かすべき方向を示す矢印と、動かす量(角度)を示す文字等が、前記表示部6に表示されてもよい。