特許第6246204号(P6246204)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6246204
(24)【登録日】2017年11月24日
(45)【発行日】2017年12月13日
(54)【発明の名称】難燃性ポリマー組成物
(51)【国際特許分類】
   C08L 23/16 20060101AFI20171204BHJP
   C08L 31/04 20060101ALI20171204BHJP
   C08K 3/06 20060101ALI20171204BHJP
   C08K 5/40 20060101ALI20171204BHJP
   C08K 5/5398 20060101ALI20171204BHJP
   C08K 3/22 20060101ALI20171204BHJP
   C08K 3/38 20060101ALI20171204BHJP
   C08K 5/43 20060101ALI20171204BHJP
   C08J 3/24 20060101ALI20171204BHJP
   B32B 27/18 20060101ALI20171204BHJP
   B32B 25/08 20060101ALI20171204BHJP
【FI】
   C08L23/16
   C08L31/04 C
   C08K3/06
   C08K5/40
   C08K5/5398
   C08K3/22
   C08K3/38
   C08K5/43
   C08J3/24 ZCEQ
   C08J3/24CES
   B32B27/18 B
   B32B25/08
【請求項の数】41
【全頁数】25
(21)【出願番号】特願2015-524568(P2015-524568)
(86)(22)【出願日】2013年7月31日
(65)【公表番号】特表2015-529712(P2015-529712A)
(43)【公表日】2015年10月8日
(86)【国際出願番号】AT2013050149
(87)【国際公開番号】WO2014019008
(87)【国際公開日】20140206
【審査請求日】2016年5月26日
(31)【優先権主張番号】A50308/2012
(32)【優先日】2012年8月2日
(33)【優先権主張国】AT
(73)【特許権者】
【識別番号】515030370
【氏名又は名称】バテグ グミテヒノロギー ゲゼルシャフト ミット ベシュレンクテル ハフツング ウント コンパニー コマンディートゲゼルシャフト
【氏名又は名称原語表記】BATEGU Gummitechnologie GmbH & Co KG
(74)【代理人】
【識別番号】100114890
【弁理士】
【氏名又は名称】アインゼル・フェリックス=ラインハルト
(74)【代理人】
【識別番号】100156812
【弁理士】
【氏名又は名称】篠 良一
(74)【代理人】
【識別番号】100099483
【弁理士】
【氏名又は名称】久野 琢也
(72)【発明者】
【氏名】ゲアハート メスタン
【審査官】 三原 健治
(56)【参考文献】
【文献】 特開平02−113046(JP,A)
【文献】 国際公開第2011/076306(WO,A1)
【文献】 特開平05−194801(JP,A)
【文献】 特開平10−088074(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08L
C08K
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
加工物の被覆に適した難燃性ポリマー組成物であって、以下:
ポリマー成分としての、
a)酢酸ビニル含有熱可塑性ポリマー、並びに
b)二重結合を有する不飽和エラストマー、
ここで、該ポリマー成分は均一なポリマー混合物として存在しており、かつ専ら硫黄架橋系若しくは硫黄含有架橋系により加硫された混合物マトリックスが形成されており、その際、該硫黄架橋系若しくは硫黄含有架橋系は該マトリックス全体に広がっており、かつ該マトリックスに完全に行き渡っているものとする、
及び
c)少なくとも1種の難燃剤又は難燃剤の組合せ物
を含有する、前記組成物。
【請求項2】
前記ポリマー混合物中で、前記酢酸ビニル含有熱可塑性ポリマー部分が未架橋で存在しており、かつ前記二重結合を有する不飽和エラストマー部分が少なくとも部分的に硫黄加硫されており、かつ硫黄橋かけとして、モノスルフィド結合、ジスルフィド結合及び/又はポリスルフィド結合により架橋又は部分架橋されており、その際、前記ポリマー混合物は、他の架橋有していないことを特徴とする、請求項1に記載の組成物。
【請求項3】
前記他の架橋が、ペルオキシド架橋であることを特徴とする、請求項2に記載の組成物。
【請求項4】
前記ポリマー混合物が、前記酢酸ビニル含有ポリマー鎖並びに前記硫黄架橋されたエラストマー鎖からの相互侵入混合物として形成されていること、及び/又は、前記ポリマー成分が、化学的に広い網目状に架橋された立体網目状分子として存在していることを特徴とする、請求項1から3までのいずれか1項に記載の組成物。
【請求項5】
前記硫黄橋かけが、ポリスルフィド結合としてだけではなくモノスルフィド結合及びジスルフィド結合としても形成されており、その際、該ポリスルフィド結合の割合は40%〜50%であり、かつ該モノスルフィド結合及び該ジスルフィド結合の割合は50%〜60%であり、その際、該数値は全架橋密度に対する%として示したものであることを特徴とする、請求項1からまでのいずれか1項に記載の組成物。
【請求項6】
前記ポリマー成分が、相互に、肉眼及び光学顕微鏡で視認可能な相分離のない実質的に単相の混合物を生じること、及び/又は、前記ポリマー混合物が、分散された加硫エラストマー粒子を含んでおらず、0.5μmを上回る平均直径を有するエラストマー粒子又はゴムドメインを含んでいないことを特徴とする、請求項1からまでのいずれか1項に記載の組成物。
【請求項7】
前記加硫されたポリマー混合物若しくは前記組成物が、使用の温度範囲においてのみならず、高められた温度範囲においても、短期間で150〜200℃でも、エラストマー特性を有するか、又は専らエラストマー特性のみを示して熱可塑性を示さず、かつ熱可塑性が目立たないか又は全く存在しないことを特徴とする、請求項1からまでのいずれか1項に記載の組成物。
【請求項8】
前記加硫されたポリマー混合物若しくは前記組成物が、200℃までの温度範囲において、動的示差熱分析により測定される溶融ピークを有しないことを特徴とする、請求項1からまでのいずれか1項に記載の組成物。
【請求項9】
前記加硫されたポリマー混合物若しくは前記組成物が、室温から200℃までの温度範囲において、tanδ<0.3の損失係数(動的せん断負荷における貯蔵弾性率に対する損失弾性率の比)を有することを特徴とする、請求項1からまでのいずれか1項に記載の組成物。
【請求項10】
前記ポリマー成分を混合して均一なブレンドにし、かつ、後に続いて、前記架橋剤、前記難燃剤及びさらなる添加剤及び/又は助剤を、架橋及び/又は加硫を回避しながら、最高で110℃の温度で混入し、その後、成形及び加硫を、高められた温度でかつ任意に加圧下に行い、その際、該加硫をせん断負荷下では行わないことにより製造された若しくは得られる、請求項1からまでのいずれか1項に記載の組成物。
【請求項11】
形の後に、せん断負荷を回避しながら、若しくは動的加硫を回避しながら、静的加硫により得られる、請求項1から10までのいずれか1項に記載の組成物。
【請求項12】
記組成物全体がハロゲン不含であることを特徴とする、請求項1から11までのいずれか1項に記載の組成物。
【請求項13】
前記酢酸ビニル含有ポリマーが、酢酸ビニルのホモポリマー、コポリマー又はターポリマーであり、かつ、ポリ酢酸ビニル(PVAc)又はエチレン酢酸ビニル(EVA)の群から選択されていることを特徴とする、請求項1から12までのいずれか1項に記載の組成物。
【請求項14】
前記酢酸ビニル含有ポリマーが、150℃未満の溶融温度若しくは溶融範囲の開始点を有することを特徴とする、請求項1から13までのいずれか1項に記載の組成物。
【請求項15】
前記酢酸ビニル含有ポリマーが、40〜75質量%の酢酸ビニル割合を有することを特徴とする、請求項1から14までのいずれか1項に記載の組成物。
【請求項16】
前記不飽和エラストマーが、ジエンモノマー単位からの、若しくはジエンモノマー単位を有する、ホモポリマー、コポリマー又はターポリマーであることを特徴とする、請求項1から15までのいずれか1項に記載の組成物。
【請求項17】
前記不飽和エラストマーが、1,3−ブタジエン、2−メチル−1,3−ブタジエン(イソプレン)、2,3−ジメチル−1,3−ブタジエン、1,3−ペンタジエン、1,3−シクロペンタジエン、ジシクロペンタジエン、2−メチル−1,3−ペンタジエン、1,3−ヘキサジエン、1,4−ヘキサジエン、1,4−シクロヘキサジエン、テトラヒドロインデン、メチルテトラヒドロインデン、エチリデンノルボルネン若しくは5−エチリデン−2−ノルボルネン(ENB)、5−メチレン−2−ノルボルネン(MNB)、1,6−オクタジエン、5−メチル−1,4−ヘキサジエン、3,7−ジメチル−1,6−オクタジエン、5−イソ−プロピリデン−2−ノルボルネン、5−ビニル−2−ノルボルネン(VNB)の群から選択された、非共役のジエンモノマー単位を有するエチレン−プロピレン−ジエンゴム(EPDM)であることを特徴とする、請求項1から16までのいずれか1項に記載の組成物。
【請求項18】
前記エチレン−プロピレン−ジエンゴム(EPDM)が、エチレン、プロピレン及び5−エチリデン−2−ノルボルネン(ENB)又はジシクロペンタジエン(DCPD)からのターポリマーである、請求項17に記載の組成物。
【請求項19】
前記不飽和エラストマーが、部分水素化アクリロニトリルブタジエンゴム(HNBR)であり、その際、該不飽和エラストマーは、94〜97%の水素化率を有しており、従って、架橋前に主鎖中で、該主鎖中の当初二重結合含有量に対して3〜6%の残存二重結合割合を有していることを特徴とする、請求項1から18までのいずれか1項に記載の組成物。
【請求項20】
硫黄橋かけの構造に関与する硫黄が、前記ポリマー成分の全量に対して0.3phr〜2phr(ゴム100当たりの部)の量で含まれていることを特徴とする、請求項1から19までのいずれか1項に記載の組成物。
【請求項21】
硫黄が、前記ポリマー成分の全量に対して少なくとも0.5phrの量で含まれていることを特徴とする、請求項1から20までのいずれか1項に記載の組成物。
【請求項22】
それぞれ前記組成物全体に対して、前記未架橋の酢酸ビニル含有ポリマーが5〜15質量%の量で含まれており、かつ前記不飽和エラストマーが20〜40質量%の量で含まれていることを特徴とする、請求項1から21までのいずれか1項に記載の組成物。
【請求項23】
前記ポリマー混合物が、ポリマー成分としての、未架橋のエチレン酢酸ビニル(EVA)及び硫黄架橋されたエチレン−プロピレン−ジエンゴム(EPDM)からなり、EVA40〜20質量%対EPDM60〜80質量%の比であることを特徴とする、請求項1から22までのいずれか1項に記載の組成物。
【請求項24】
少なくとも1種のポリオレフィン又はポリプロピレンが、さらなるポリマー成分として含まれていることを特徴とする、請求項1から23までのいずれか1項に記載の組成物。
【請求項25】
前記難燃剤が、前記組成物全体に対して50〜80質量%の量で含まれていることを特徴とする、請求項1から24までのいずれか1項に記載の組成物。
【請求項26】
難燃剤として、水酸化マグネシウム(MDH)、水酸化アルミニウム(ATH)及び/又はホウ酸亜鉛、又はこれらの混合物が添加されていること、及び/又は、前記難燃剤が固体でかつ粉末状又は結晶質であることを特徴とする、請求項1から25までのいずれか1項に記載の組成物。
【請求項27】
以下の組成:
− 酢酸ビニル含有ポリマー:
5〜15質量%、
− 不飽和エラストマー:
20〜40質量%、
− 難燃剤:
50〜80質量%、
− 残分 助剤、添加
を有する、請求項1から26までのいずれか1項に記載の組成物。
【請求項28】
以下の組成:
− 酢酸ビニル含有ポリマーであるエチレン酢酸ビニル(EVA):
5〜15質量%、
− 不飽和エラストマーであるエチレン−プロピレン−ジエンゴム(EPDM):
20〜40質量%、
− 難燃剤:
50〜80質量%、
− 残分 助剤、添加剤
を有する、請求項1から27までのいずれか1項に記載の組成物。
【請求項29】
ショアA50〜75の硬さ及び/又は200〜600%の切断時伸び及び/又は>7N/mmの引裂き抵抗を有することを特徴とする、請求項1から28でのいずれか1項に記載の組成物。
【請求項30】
− まず、前記ポリマー成分、前記架橋剤、前記難燃剤及び任意にさらなる添加剤及び助剤を、架橋及び/又は加硫を回避しながら混合して均一なブレンドにし、
− その後、成形工程を行い、
− そしてその後、早ければ該成形の間か又は該成形の最後に、加硫を、静的な非動的加硫として、せん断負荷を回避しながら行う
ことによる、請求項1から29までのいずれか1項に記載の組成物の製造方法。
【請求項31】
前記混合物の製造を、前記成形の前に、早期の加硫にとって非臨界的な温度及び時間で、最高で125℃の温度で行うこと、及び/又は、前記ブレンド若しくは前記ポリマー成分が前記混合の間に軟化した状態で存在することを特徴とする、請求項30に記載の方法。
【請求項32】
前記成形を、早期の加硫にとって非臨界的な温度及び時間で、最高で130℃の温度で行うことを特徴とする、請求項30又は31に記載の方法。
【請求項33】
前記加硫を、最高で200℃の温度で行い、混合及び/又は成形よりも高い温度で、100〜200barの圧力で行うことを特徴とする、請求項30から32までのいずれか1項に記載の方法。
【請求項34】
請求項1から29でのいずれか1項に記載の組成物を含むか又はこれからなる、難燃性物品。
【請求項35】
基体(2)を有する、振動減衰及び懸架に適した弾性難燃性複合要素(1)であって、少なくとも部分的又は区間的に該基体(2)の外側表面(3)上に、任意に該基体(2)の外側表面(3)全体に、請求項1から29でのいずれか1項に記載の組成物からの被覆(4)が少なくとも1つ具備されている、前記複合要素(1)。
【請求項36】
前記基体(2)が、ポリブタジエンゴム、スチレンブタジエンゴム、アクリロニトリルゴム、エチレン−プロピレン−ジエンゴム、発泡ゴム又はこれらの混合物から、あるいは、天然ゴムから形成されていることを特徴とする、請求項35に記載の複合要素(1)。
【請求項37】
前記被覆(4)が堅固にかつ離れないように前記基体(2)と結合されており、その際、該被覆(4)は該基体(2)に、仕上げ加工、押出、プレス加工、射出成形及び後続の共押出により施与されていることを特徴とする、請求項35又は36に記載の複合要素(1)。
【請求項38】
前記被覆(4)が、10mm未満の厚さを有することを特徴とする、請求項35から37までのいずれか1項に記載の複合要素(1)。
【請求項39】
前記被覆(4)が、前記弾性複合要素(1)の1〜20質量%の質量割合を有することを特徴とする、請求項35から38までのいずれか1項に記載の複合要素(1)。
【請求項40】
前記基体(2)に、補強材として、ガラス繊維、合成樹脂繊維、CFK繊維、GFK繊維、布地若しくは織物が具備されていることを特徴とする、請求項35から39までのいずれか1項に記載の複合要素(1)。
【請求項41】
懸架要素、減衰要素、ガスケット、ホース、マット、成形部材、防護服としての、窓用のエラストマー異形材としての、又はこれらの構成部材としての、請求項34に記載の物品又は請求項35から40までのいずれか1項に記載の弾性複合要素(1)の使用。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ポリマー成分としての酢酸ビニル含有熱可塑性ポリマー及び不飽和エラストマー、並びに少なくとも1種の難燃剤を含有する難燃性ポリマー組成物に関する。さらに本発明は、該組成物の製造方法、該組成物から製造された物品、並びに基体を有する弾性複合要素であって、少なくとも部分的又は区間的に該基体の外側表面上に該組成物からの被覆が具備されている該弾性複合要素に関する。
【0002】
例えばゴムからの弾性要素は、幾つかの用途において部分的に規格若しくは法令に基づいて必要とされるような難燃若しくは防炎特性を、それ自体としては有していない。しかしながら、エラストマー若しくはゴム又は天然ゴムに難燃剤若しくは防炎剤を添加することが知られている。しかしながらその際、このような配合剤の添加により弾性特性が一般に著しく損なわれるため、このようなゴムからなる要素は、所望の静的及び動的特性に関して必要とされる弾性特性を満たすことができないか若しくはそれ以上満たすことができない。従って、懸架要素、又は減衰要素、又は類似の一般に高度な動的負荷を受ける要素として、例えば車両において使用される場合、公知の弾性要素では、必要とされる防炎技術上の規定を十分に満たすことはできない。
【0003】
従って、被覆により保護された基体が難燃剤を含まないようにするための難燃性被覆が設けられるようになった。このような複合要素は、例えばDE3831894号A1又はWO2010/069842号に記載されている。
【0004】
エラストマーの特性にとって重要であるのは、架橋系である。架橋系によって初めて、流動性のゴムが、典型的なエラストマー特性を有するエラストマー材料へと転化され、これによって熱可塑性ポリマーとの本質的な相違も生じる。架橋の種類や網目密度は、硬さ、弾性率、強さ、切断時伸び、引裂き抵抗、弾性に、そして機械的及び熱的負荷の限度に影響を及ぼす。
【0005】
従来技術からさらに、難燃剤を含有するポリマー組成物、例えばエチレン酢酸ビニルとエチレン−プロピレン−ジエン−モノマー−ゴムとからの混合物が知られている。この混合物はシラン架橋されているが、多くの場合この架橋はペルオキシドにより、又は照射により行われる。このような混合物は、特にケーブルや電線を被覆する際に使用される。例えばEP2343334号A2には、EVA、EPDM及びLLDPEからの難燃性組成物が記載されており、この組成物は、ジクミルペルオキシドにより形成されたペルオキシド架橋系を有している。ペルオキシドはしばしばゴムの架橋に使用される。ペルオキシド架橋は、二重結合を有しないゴムを架橋する場合及び/又は網目の特に高い架橋密度及び緻密性を達成する場合の典型的な架橋種であり、これは、特に高められた温度での、例えば圧縮永久歪みのような機械的特性値にも好影響を与える。架橋密度が大抵の場合に高くかつ架橋が短いと、一般には切断時伸びは同一の硬さの材料よりも低くなる。生成物の表面をそれ以上加工しない場合、ペルオキシド架橋は架橋プロセスの際に空中酸素の排除を必要とする。
【0006】
しかしながら、このような架橋系は、特にさらに多量の難燃剤も含まれている場合に、弾性及び動的特性にとって不利である。
【0007】
特に規格CEN TS 45545-2に準拠し、これに付随する火炎伝播、光学煙濃度、煙ガス毒性及び発熱速度に関する高い要求で以て難燃性を達成するには、ポリマーを選択する際に特別な留意が必要である。煙濃度及び毒性に関する要求により、例えばハロゲン含有ポリマーの使用は排除される。
【0008】
従って本発明の課題は、前記欠点を克服すること、並びに、卓越した防炎技術的特性と良好な機械的特性値とを併せ持ち、かつ難燃剤の充填度が高いのにもかかわらず依然として良好な機械的弾性及び動的特性を有する難燃性ポリマー材料を創作することである。
【0009】
前記課題は、請求項1の特徴により解決される。その際、本発明によれば、前記難燃性ポリマー組成物は、少なくとも1種の酢酸ビニル含有熱可塑性ポリマー、並びに二重結合を有する少なくとも1種の不飽和エラストマーをポリマー成分として含有し、その際、該ポリマー成分は均一なポリマー混合物として存在していることが予定されている。その際、前記ポリマー混合物はペルオキシド系ではなく、専ら硫黄若しくは硫黄含有架橋系により加硫された混合物マトリックスとして形成されており、その際、該硫黄架橋系は該マトリックス全体に広がっており、かつ該マトリックスに完全にすみずみまで行き渡っており若しくは浸透しているか、又は該硫黄橋かけが該マトリックス全体を貫いている。さらに、少なくとも1種の難燃剤又は難燃剤の組合せ物が含まれている。
【0010】
こうした架橋種を選択することにより、ゴムブレンド若しくは混合物の特定の部分的な架橋が生じる。酢酸ビニル含有ポリマーは硫黄により架橋されえず、かつこのポリマー部分は未架橋で存在することに基づいて、意想外にも、系全体の極めて高い難燃剤充填可能性が可能となると同時に、ゴムに典型的な特性、特に高い可逆的な伸びはごくわずかにしか影響を受けない。同時に、未架橋のポリマー部分は難燃性に寄与する。
【0011】
それにより得られる組成物は、該組成物で被覆された動的負荷を受ける部材全体が十分に難燃性を示し、かつ、該被覆が複合要素の動的特性に寿命の間に目立った悪影響を及ぼすことなく特に防炎規格CEN TS 45545-2に準拠するように該部材を保護する。
【0012】
これも、動的架橋された熱可塑性エラストマー(TPE−V)との本質的な相違である。該熱可塑性エラストマーは、連続的な熱可塑性マトリックス中に、微分散された架橋ゴム粒子が導入されている二相系である。これとは異なり、本発明によるポリマー混合物は均一であり、かつ、ポリマー成分は互いに完全に混合されていて、可能な限り一様な混合物マトリックスを形成している。さらに、架橋された熱可塑性エラストマーの場合には、専ら分散されたゴム粒子のみがそれ自体で架橋しており、通常はエラストマー粒子間には硫黄橋かけが存在しない。それとは異なり、本発明による組成物の場合には、マトリックスに完全にすみずみまで行き渡っている硫黄架橋系が形成されている。ここで、1つ以上の硫黄原子と場合により分岐とを有する相応する硫黄橋かけが、前記マトリックス中に存在する不飽和エラストマー鎖の間に形成される。前記酢酸ビニル含有ポリマー鎖の間には硫黄橋かけは形成されえず、何故ならば、二重結合が存在しないためである。前記酢酸ビニル含有ポリマー鎖は未架橋のままであり、特に他のもの、例えばペルオキシドによっても照射によっても架橋されない。それにより、良好な充填可能性が保証される。前記硫黄架橋系は前記マトリックス全体に広がっており、かつ前記硫黄橋かけは該マトリックス全体を完全に貫いており、かつ前記酢酸ビニル含有ポリマーの部分や鎖にもわたっている。このようにして、エラストマー特性が引き続き保持されるか、又は前記組成物の材料全体をエラストマーとみなすことができる。熱可塑性は、完全な硫黄架橋に基づいて目立たないか又は全く存在しない。
【0013】
このようにして、卓越した防炎技術的特性と良好な機械的特性値とを同時に有する、特に被覆として好ましく使用することのできる材料が創作されるため、該被覆で被覆された部材の動的特性は、寿命の間に目立った悪影響を受けない。
【0014】
前記組成物のさらなる好ましい実施形態及び発展形態は、引用形式請求項の特徴により明らかである。
【0015】
前記ポリマー混合物中で、前記酢酸ビニル含有熱可塑性ポリマー部分が未架橋で存在しており、かつ前記二重結合を有する不飽和エラストマー部分が少なくとも部分的に硫黄加硫されており、かつ硫黄橋かけにより、特にモノスルフィド結合、ジスルフィド結合及び/又はポリスルフィド結合により架橋又は部分架橋されており、その際、前記ポリマー混合物は、他の架橋、特にペルオキシド架橋を有しておらず、かつこれを有していないままである場合に好ましい。それにより、好ましい動的特性、特に高度の可逆的な伸びを保持しつつ同時に、さらにより良好な難燃剤充填可能性が生じる。
【0016】
好ましい一実施形態によれば、前記硫黄橋かけが、ポリスルフィド結合としてだけではなくモノスルフィド結合及びジスルフィド結合としても形成されており、その際、該ポリスルフィド結合の割合は40%〜50%、好ましくは45%であり、かつ該モノスルフィド結合及び該ジスルフィド結合の割合は50%〜60%、好ましくは55%であることが予定されている。その際、該パーセンテージは、mol/cm3での全架橋密度に対して示したものである。従って、該ポリスルフィド結合の割合対該モノスルフィド結合及び該ジスルフィド結合の割合のパーセンテージの比は、40〜50:50〜60、特に45:55である。このようにして、高い充填度及び良好なエラストマー特性を達成することができる。
【0017】
前記ポリマー成分が、相互に、特に裸眼及び/又は光学顕微鏡で視認可能な相分離なしに、実質的に、特に肉眼上でも光学顕微鏡上でも単相でかつ均一な混合物を生じる場合に、又はそれが予定されていることによって、ポリマーの、特に弾性−動的特性に関する特に好ましい機械的特性が生じる。これは、前記混合物が好ましいことに単相であるため、該混合物中に及び/又は最終組成物中に、0.5μmを上回る、特に0.1μmを上回る、好ましくは0.01μmを上回る平均粒子径を有するエラストマー粒子、及び/又は、0.5μmを上回る、特に0.1μmを上回る、好ましくは0.01μmを上回る平均直径を有するゴムドメインが存在しないことを意味するものと解釈される。特に、視認可能又は検出可能なポリマー粒子又はゴムドメインは全く存在しない。
【0018】
これに関連して、前記加硫されたポリマー混合物が、専らエラストマー特性のみを示して熱可塑性を示さない場合に若しくはそのようなことが特に好ましく、又は、前記加硫されたポリマー混合物若しくは前記組成物が、使用の温度範囲においてのみならず、高められた温度範囲においても、特に短期間で150〜200℃でも、特に主にエラストマー特性を有する場合に若しくはそのようなことが特に好ましい。これも、架橋された熱可塑性エラストマー(TPE−V)との本質的な相違である:
動的加硫により製造された架橋熱可塑性エラストマー(TPE−V)は、比較的低温での、例えば室温での使用範囲において十分なエラストマー特性を有しており、この範囲では古典的なエラストマーと同等の挙動を示す。しかしながら、高められた加工範囲では該エラストマーは主に熱可塑性を示し、それに応じて流動性であり、かつ可塑性若しくは熱変形性を示し、かつ特徴的な溶融点若しくは溶融範囲若しくは軟化範囲を有する。ここで、その特性は、熱可塑性の、未架橋の、例えばポリプロピレン−又は酢酸ビニル−ポリマーマトリックスにより決定されている。その中に埋め込まれた自己架橋したエラストマー粒子は、ある程度の弾性特性を生じるが、熱変形性や流動性には実質的な影響を及ぼさない。
【0019】
それに対して本発明による組成物は、使用範囲においても高められた温度範囲においても、関連する温度範囲全体にわたって、ほぼ専らエラストマー若しくはゴム弾性特性のみを有している。なぜならば、それに対して決定的な役割を果たす硫黄橋かけが物体に完全に行き渡っているためである。温度が上昇すると、この物体は確かにより軟らかくなるが、決して流動性を示さず、従って融点若しくは溶融範囲を有しない。前記加硫されたポリマー混合物若しくは前記組成物は、それに応じて、200℃までの温度範囲において、動的示差熱分析により測定される溶融ピークも有しない。加硫後は、熱変形も第二の成形工程も不可能である。
【0020】
従って、熱可塑性エラストマーは、好ましい本発明による組成物よりも熱的及び動的な負荷への耐久性がはるかに低く、かつ、高められた温度でクリープ傾向を示す。
【0021】
好ましい加硫されたポリマー混合物若しくは組成物は、さらに、室温から約200℃までの温度範囲において、ISO 4664の「エラストマー又は熱可塑性エラストマー −動的特性の測定」により測定された、tanδ<0.3の損失係数(動的せん断負荷における貯蔵弾性率に対する損失弾性率の比)を有する。これは、TPE−Vが一般に加工される温度範囲において、本発明による組成物の弾性特性は粘性特性よりも勝っているため、さらなる成形がもはや不可能であることを示す。
【0022】
特に好ましい本発明による組成物は、前記ポリマー成分を混合して均一なブレンドにし、かつ、特に後に続いて、前記硫黄架橋剤、前記難燃剤及び任意にさらなる添加剤及び/又は助剤を、いかなる架橋及び/又は加硫をも厳格に回避しながら、好ましくは最高で110℃の温度で混入することにより製造されるか若しくは得られる。その後でようやく、成形工程及び加硫が、特に高められた温度及び任意に加圧下に行われる。加硫はせん断負荷下では行われず、従って、動的加硫の場合のような強力な混合下では行われない。
【0023】
加硫温度は、好ましくは特にEPDM/EVAの場合には200℃未満の温度であり、好ましくは130〜170℃の温度範囲である。これも、架橋が動的加硫によりすでに混合の間に高められた温度でかつ強力なせん断負荷下で生じる、架橋された熱可塑性エラストマーとのさらなる相違である。それとは異なり、本発明による組成物の場合には、加硫はすでに混合の間に回避され、かつ、硫黄架橋は、特に成形の最後に、特に成形後になってようやく、高められた温度で、しかしながらせん断負荷下ではなく、行われる。このようにして、前記組成物のゴムに典型的な特性は、難燃剤含有量が高い場合であっても好影響を受ける。
【0024】
従ってそのように有利に生じた組成物は、「静的」加硫により、特に成形後に得られる。静的加硫の概念とは、この場合、いかなるせん断負荷をも回避しながら、若しくは動的加硫を回避しながら行われる加硫と解釈される。
【0025】
本発明によれば、これに関連して、好ましい本発明による組成物の製造方法も提案され、その際、まず、前記ポリマー成分、前記硫黄架橋剤、前記難燃剤及び任意にさらなる添加剤及び助剤が、架橋及び/又は加硫を回避しながら混合されて均一なブレンドにされ、その後それに引き続き、少なくとも1つの成形工程が、例えば射出成形(IM)により行われる。その後にようやく、早ければ前記成形の間か又は前記成形の最後に、特に完全に成形し終わった後に、加硫が、静的な非動的加硫として、せん断負荷を回避しながら行われる。
【0026】
これに関連して、早期の加硫を回避するのに特に好ましいのは、混合物製造の工程が、成形前に、臨界的な温度未満でかつ臨界的な時間以内で、特に最高で125℃の、好ましくは50℃〜最高で110℃の範囲の温度で実施される場合である。前記ブレンド若しくは前記ポリマー成分は、混合物製造の間に好ましくは軟化した状態で存在する。
【0027】
同様に早すぎる架橋若しくは加硫を回避するためのもう1つの好ましい方法実施は、成形も、臨界的な温度未満でかつ臨界的な時間以内で、特に最高で130℃の、特に70℃〜100℃の範囲の温度で行うことを予定している。
【0028】
その後、本来の加硫が、好ましくは最高で200℃の温度で、特に130〜170℃の範囲の温度で行われる。好ましくは、架橋は、混合及び/又は成形よりも高い温度で、特に100〜200barの圧力でも生じる。
【0029】
前記方法工程若しくは方法実施により、所望の特徴を有する好ましい組成物が生じるか若しくは得られる。
【0030】
本発明による方法と比較して、公知の「動的加硫」の場合には、このようなポリマー混合物は高いせん断負荷下に混合され、かつその際に同時に、従って成形の前に加硫される。このようにして、小さな液滴が不飽和エラストマーから生じ、該液滴内で架橋が生じる。その際、高せん断負荷下での強力な処理によって前記液滴の持続的な分離がもたらされ、かつ、個々のエラストマー液滴間には結合若しくは硫黄橋かけが生じなくなる。このようにして、均一な熱可塑性マトリックスが、未架橋の酢酸ビニル含有ポリマー、例えばEVAから生じ、かつ該熱可塑性マトリックス中に、加硫されたエラストマー、例えばEPDMからの、孤立しかつ該熱可塑性マトリックス中に分散された小さな島状物が存在している。個々のそれぞれのエラストマー粒子間には、結合、特に硫黄橋かけは全く存在していない。従って、そのようにして得られた混合体のマトリックス全体に浸透し、かつこの物体に完全に行き渡っている硫黄橋かけや硫黄橋かけ網目も存在しておらず、その反対に、硫黄橋かけは専らそれぞれのエラストマー粒子に限られている。
【0031】
それとは異なり、好ましい本発明による方法によれば、孤立した、自己架橋したエラストマー粒子は全く形成されず、前記酢酸ビニル含有ポリマーの鎖と前記硫黄架橋されたエラストマー鎖とからの相互侵入混合物が存在している。前記ポリマー成分は、化学的に広い網目状に架橋された立体網目状分子として存在しており、その際、材料を分解せずに該架橋を解くことはできない。前記ポリマー混合物は、その中に分散された加硫エラストマー粒子を含んでおらず、特に、0.5μmを上回る、特に0.1μmを上回る、好ましくは0.01μmを上回る平均(粒子)直径を有するエラストマー粒子又はゴムドメインを含んでいない。
【0032】
煙濃度及び毒性に関する要求を改善するためには、全てのポリマー成分、特に組成物全体がハロゲン不含である場合に好ましい。
【0033】
好ましい一実施変法によれば、前記酢酸ビニル含有ポリマーが、酢酸ビニルのホモポリマー、コポリマー又はターポリマーであり、特にポリ酢酸ビニル(PVAc)又はエチレン酢酸ビニル(EVA)の群から選択されていることが予定されている。
【0034】
前記酢酸ビニル含有ポリマーが、40〜75質量%の酢酸ビニル含有量を有する(LP試験指示No.015、Lanxess)場合に、良好な化学的特性と同時に特に低い煙ガス濃度が得られる。
【0035】
エチレン酢酸ビニルは、多くの場合、ケーブル分野で使用される。極性の酢酸ビニル基により、耐炎性と同時に耐油性が改善される。煙ガス濃度はわずかであり、かつ煙ガスは毒性を有していない。エチレン酢酸ビニルは、同時に、卓越した耐候性、耐UV性、耐オゾン性及び耐熱性を有する。
【0036】
これに関連して、前記酢酸ビニル含有ポリマーが、150℃未満、好ましくは100℃未満の溶融温度若しくは溶融範囲の開始点を有し、かつ任意に、典型的なゴム加工温度で低い粘度を有する場合に好ましい。このようにして、良好な混合を達成すると同時に、加硫を完全に回避することができる。
【0037】
前記不飽和エラストマーは、好ましくは、ジエンモノマー単位からの、若しくはジエンモノマー単位を有する、ホモポリマー、コポリマー又はターポリマーであり、特に、エチレン、プロピレン及びジエン含有ターモノマーからなるターポリマーであり、好ましくは、該ターポリマーに対して少なくとも2〜12質量%のターモノマー割合を有するターポリマーである(ASTM D 6047による)。このようにして、硫黄架橋に必要な二重結合が調達され、かつ動的−弾性特性が得られる。
【0038】
これに関連して、前記不飽和エラストマーが、不飽和側基を有するゴム、特にエチレン−プロピレン−ジエンゴム(EPDM)である場合に特に好ましい。エチレン−プロピレン−ジエン−モノマーゴム(EPDM)は、燃焼の際にその煙ガス濃度及び毒性が低いことに関連して大きな利点を有しているが、しかしながらそれ自体は耐炎性を示さない。しかしながら、EPDMゴムにはフィラー及び可塑剤を高充填することができるため、固形及び液状の防炎剤を高い割合で取り込むことが可能である。EPDMゴムはさらに、硬さや機械的特性値を広範囲で調節することができる。さらに、EPDMゴムは、耐候性、耐UV性、耐オゾン性及び耐熱性に関して利点をもたらし、かつ、保護層として、動的負荷を受ける保護すべき、例えば天然ゴムからの部材の老化を最小化することができる。
【0039】
その中に、1,3−ブタジエン、2−メチル−1,3−ブタジエン(イソプレン)、2,3−ジメチル−1,3−ブタジエン、1,3−ペンタジエン、1,3−シクロペンタジエン、ジシクロペンタジエン、2−メチル−1,3−ペンタジエン、1,3−ヘキサジエン、1,4−ヘキサジエン、1,4−シクロヘキサジエン、テトラヒドロインデン、メチルテトラヒドロインデン、エチリデンノルボルネン若しくは5−エチリデン−2−ノルボルネン(ENB)、5−メチレン−2−ノルボルネン(MNB)、1,6−オクタジエン、5−メチル−1,4−ヘキサジエン、3,7−ジメチル−1,6−オクタジエン、5−イソ−プロピリデン−2−ノルボルネン、5−ビニル−ノルボルネンの群から選択された非共役ジエンモノマー単位が含まれていることが好ましい。
【0040】
その際、エチレン−プロピレン−ジエン−モノマーゴム(EPDM)が、エチレン、プロピレン及び5−エチリデン−2−ノルボルネン(ENB)又はジシクロペンタジエン(DCPD)からのターポリマーであり、好ましくは、該ターポリマーに対して少なくとも2〜12質量%のターモノマー割合を有している(ASTM D 6047による)場合に特に好ましい。
【0041】
EPDMの二重結合含有率は他のジエンゴムに対して比較的低いため、経済的に合理的な加硫速度を達成するためには、より多量の加硫促進剤を使用しなければならない。硫黄や、多くの場合極性である加硫促進剤若しくは加硫促進剤残留物に対するEPDMの溶解性は低い。従って、このために大抵は複数の加硫促進剤の組合せ物が使用され、それによりブルーミングが回避される。
【0042】
さらに油及び脂肪に対する保護が必要とされる場合には、前記不飽和エラストマーが、不飽和主鎖を有するRグループのゴムであり、特に部分水素化アクリロニトリルブタジエンゴム(HNBR)であることも可能である。
【0043】
このHNBRは、NBRの部分水素化により製造される。二重結合の割合が低いため、前記ゴムは保護層混合物のためのベースとして、防炎性特性、例えば煙ガス濃度に関して良好な値を達成すると同時に、卓越した機械的動的特性値をもたらすという利点を提供する。難燃剤の使用に関しては、EPDMと同一の条件が有効である。
【0044】
好ましい硫黄架橋系を形成させるためには、前記部分水素化された不飽和エラストマーが94〜97%の水素化率を有しており、従って、架橋前に主鎖中で、該主鎖中の当初二重結合含有量に対して3〜6%の残存二重結合割合を有している場合に有利である(ASTM D 5670-95、D. Brueck, Kautschuk und Gummi, Kunststoffe 42(1989) 2/3も参照のこと)。
【0045】
硫黄及び硫黄供与体を用いた架橋は、主鎖中又は側鎖中のいずれかに二重結合が存在していることを前提としている。硫黄、硫黄供与体及び加硫促進剤の量比や加硫促進剤の種類によって、硫黄架橋の長さや網目密度が決まる。
【0046】
しばしば用いられる加硫促進剤は、例えばスルフェンアミド、例えばN−シクロヘキシル−2−ベンゾチアジルスルフェンアミド(CBS)、チアゾール、例えば2−メルカプトベンゾチアゾール(MBT)、ジチオカルバミン酸塩、例えばジベンジルジチオカルバミン酸亜鉛(ZBEC)、グアニジン、例えばジフェニルグアニジン(DPG)又はチオリン酸塩である。
【0047】
硫黄供与体として、例えばチウラム、カプロラクタムジスルフィド又はホスホリルポリスルフィドが使用される。
【0048】
架橋密度若しくは網目密度若しくは全架橋密度は、前記保護層混合物の弾性特性を一緒になって決定づける。これらは、Flory-Rehnerの式による平衡膨潤により求めることができる(P.J. Flory und J. Rehner, J. Chem. Phys., 11(1943)521)。
【0049】
架橋は、モノスルフィド結合、ジスルフィド結合及びポリスルフィド結合の部分若しくは硫黄橋かけから構成されている。硫黄橋かけの長さの厳密な測定は、チオール−アミン法により実施することができる。該方法により、硫黄橋かけの長さ分布に関する評価が可能である(B. Savile und A. A. Watson, Rubber Chem. Technol. 40 (1967) 100 und D.S. Campbell, Rubber Chem. Technol. 43 (1970) 210)。
【0050】
弾性及び動的特性に好影響を及ぼす架橋系を形成させるためには、好ましくは、硫黄橋かけの構造に関与する硫黄が、前記ポリマー成分の全量に対して0.3〜2phr(ゴム100当たりの部)の量で含まれていることが予定されていてよい。
【0051】
全体で、硫黄が前記ポリマー成分の全量に対して少なくとも0.5phrの量で含まれている場合に好ましい。
【0052】
好ましい組成物は、それぞれ該組成物の全質量に対して、前記未架橋の酢酸ビニル含有ポリマーが5〜15質量%、好ましくは7〜12質量%の量で含まれており、かつ前記不飽和エラストマーが20〜40質量%、特に20〜30質量%、好ましくは21〜29質量%の量で含まれていることを特徴とする。
【0053】
これに関連して、前記ポリマー混合物が、2種のみのポリマー成分としての、未架橋のエチレン酢酸ビニル(EVA)及び硫黄架橋されたエチレン−プロピレン−ジエンゴム(EPDM)のみからなり、特にEVA40〜20質量%対EPDM60〜80質量%、好ましくはEVA約20〜30質量%対EPDM70〜80質量%、好ましくはEVA約21〜29質量%対EPDM71〜79質量%、特にEVA約25質量%対EPDM75質量%の比である場合に特に好ましく、その際、該数値はそれぞれ純粋なポリマー成分の互いの比に対する、又は、フィラー、添加剤、難燃剤を除いたポリマーEVA+EPDMの量(=100質量%)に対する質量%に関して示したものである。このようにして、前記ポリマー成分の完全混合物及びほぼ単相の系が得られる。
【0054】
好ましい一発展形態においては、少なくとも1種のポリオレフィン、特にポリエチレン、好ましくはLLDPE又はポリプロピレンが、さらなるポリマー成分として含まれていることも可能である。このようにして、ポリマー混合物の特性を所望の方向に制御することができる。
【0055】
特に好ましい組成物は、以下の通りである:
− 酢酸ビニル含有ポリマー 5〜15質量%、
− 不飽和エラストマー 20〜40質量%、
− 難燃剤 50〜80質量%、
− 残分 助剤、添加剤等。
【0056】
これに関して、前記酢酸ビニル含有ポリマーがエチレン酢酸ビニル(EVA)であり、かつ前記不飽和エラストマーがエチレン−プロピレン−ジエンゴム(EPDM)である場合に特に好ましい。
【0057】
良好な難燃作用を生じさせるために、前記難燃剤が、前記組成物全体に対して50〜80質量%、好ましくは51〜79質量%、好ましくは60〜70質量%、好ましくは61〜69質量%の量で含まれていることが予定されていてよい。所望の防炎規格に確実に適合するために、難燃剤の割合は極めて高い。それにもかかわらず、機械的パラメータ、特に、前記組成物の動的及び弾性特性はさほど影響を受けることはなく、意想外にも引き続き保持される。このようにして、前記組成物を被覆として基体に施与することができること、及び、基体の好ましい機械的特性、− 特に動的及び弾性特性 −が引き続き保持され、かつ該基体が該被覆により同時に難燃性及び防炎性を示すことも保証される。
【0058】
材料特性への影響を出来るだけわずかにしながら良好な防炎特性を達成するためには、難燃剤として、水酸化マグネシウム(MDH)、水酸化アルミニウム(ATH)、三酸化アンチモン、ナノクレイ及び/又はホウ酸亜鉛、好ましくはこれらの2種以上からの相乗作用を示す混合物が添加されていることが有利であることが実証された。その際、特に、前記難燃剤は固体でかつ粉末状又は結晶質である。しかしながら、前記難燃剤は、その効果を達成するためには多量に添加されねばならず、従って、このように加工された混合物の機械的特性、例えば引張強さ、切断時伸び、引裂き抵抗、弾性に極めて悪影響を及ぼす。
【0059】
前記難燃性若しくは防炎性の被覆のさらなる所望の若しくは必要とされる特性を達成するために、さらに、該被覆にさらなる配合剤、例えばフィラー若しくは染料、例えば特にカーボンブラック、加工助剤、老化防止剤等が添加されていることが提案される。可塑剤が使用される場合には、その極性に基づいて非極性ゴムとの相容性がごく限られた範囲であるリン酸エステルが使用される。
【0060】
本発明による組成物は、好ましくは以下の特性値を有し、即ち、ショアA50〜75、好ましくは55〜65の硬さ(DIN ISO 7619-1)及び/又は200〜600%、好ましくは350〜600%の切断時伸び(DIN 53504)及び/又は>7N/mm、好ましくは>9N/mmの引裂き抵抗(DIN ISO 34-1 B)を有する。このことから、難燃剤の割合が高いにもかかわらず、動的−弾性特性にとって重要な特性値が引き続き保持され、かつ満たされることが明らかである。
【0061】
本発明はさらに、難燃性物品に関する。前記物品は、例えば成形部材として、専ら本発明による組成物からなることができる。また、そのような物品は、例えば基体上、例えば織物上の被覆の形で、前記組成物を部分的にのみ含むこともできる。
【0062】
同様に本発明は、基体を有する、振動減衰及び懸架に適した弾性複合要素であって、少なくとも部分的又は区間的に該基体の外側表面上に、任意に該基体の外側表面全体に、本発明による組成物からの被覆が少なくとも1つ具備されている前記弾性複合要素に関する。
【0063】
前記基体が、主にゴムから、例えばポリブタジエンゴム、スチレンブタジエンゴム、アクリロニトリルゴム、エチレン−プロピレン−ジエンゴム、発泡ゴム又はこれらの混合物から、好ましくは天然ゴムから形成されていることが予定されていることが好ましい。前記弾性要素の基体の必要とされる弾性若しくは動的特性は、さらに好ましくは、自他公知の様式で前記基体にさらに、フィラー、補強剤、可塑性、加硫促進剤、架橋剤、老化防止剤等が添加されていることにより強化若しくは支持される。
【0064】
好ましい一発展形態によれば、前記被覆が堅固にかつ離れないように前記基体と結合されており、その際、該被覆は該基体に、好ましくは仕上げ加工(Konfektion)、押出、プレス加工、射出成形及び後続の共押出により施与されていることが予定されている。上記方法により、単純でかつ確実な様式で、前記基体と難燃性若しくは防炎性の被覆とからなる弾性複合要素を、該基体と該被覆との間に相応して確実な結合を作り上げながら提供することができる。前記複合要素を単段法で製造することに加えて、特に前記基体のために選択された材料にも前記被覆のために選択された材料にも適合させて、多段法を選択することができる。使用する材料を考慮して、さらに本発明によれば、好ましくは、前記製造を200℃未満、特に130℃〜170℃の温度で実施することが提案される。
【0065】
前記被覆の厚さは10mm未満、特に1〜5mmと比較的わずかで十分であることが証明された。それにもかかわらず、前記基体の弾性特性の障害は、たとえ生じたとしてもせいぜいわずかであって、難燃特性が確実に達成される。
【0066】
前記基体の弾性特性の障害が無視できるほどわずかである好ましい複合要素は、前記被覆が前記弾性複合要素の1〜20質量%、特に2〜16質量%の質量割合を有することを特徴とする。
【0067】
本発明によれば、前記基体に、補強材、例えば繊維、特にガラス繊維、合成樹脂繊維、CFK繊維、GFK繊維、布地若しくは織物等が具備されていることが予定されていてよい。
【0068】
本発明はさらに、懸架要素、減衰要素、ガスケット、ホース、マット、成形部材、防護服等としての、又はこれらの構成部材としての、先行する請求項に記載の弾性複合要素の好ましい使用に関する。前記物品は、好ましくは、特に窓用の特にエンドレス異形材として形成されたエラストマー異形材として、若しくはフレームとガラスとの間のガスケットとしても使用可能である。
【図面の簡単な説明】
【0069】
図1】本発明の一実施形態による複合ばねの模式断面図である。
図2】本発明の一実施形態による緩衝器若しくはソケットの模式断面図である。
図3】本発明の一実施形態によるベローの模式断面図である。
図4】本発明の一実施形態による空気ばねのローリングローブの模式断面図である。
図5】本発明の一実施形態による枕ばねのフラットベアリングの模式断面図である。
図6】本発明の一実施形態による緩衝器の模式断面図である。
図7】本発明の一実施形態によるソケット若しくはガイドブッシュの模式断面図である。
図8】本発明の一実施形態によるベアリング若しくはブッシュの模式断面図である。
図9】本発明の一実施形態による緩衝器若しくはシーリング要素の模式断面図である。
図10】本発明の一実施形態による緩衝器若しくはシーリング要素の模式断面図である。
図11】本発明の一実施形態による深絞りばね若しくは補助ばねの模式断面図である。
図12】本発明の一実施形態による層状ばね若しくは補助ばねの模式断面図である。
図13】本発明の一実施形態による中空ばねの模式断面図である。
図14】本発明の一実施形態による中空ばねの模式断面図である。
図15】本発明の一実施形態による緩衝器若しくは補助ばねの模式断面図である。
図16】本発明の一実施形態によるホースの部分模式断面図である。
【実施例】
【0070】
本発明による組成物についての例:
例示的配合物:
【表1】
【0071】
例Aに記載した防炎性若しくは難燃性の被覆は、好ましい組成物に関する基本的な質的及び量的配合を示す。前記配合物は良好な燃焼特性が顕著であり、その際、特に燃焼時のわずかな煙ガス濃度が達成可能である。このような被覆は特に、例えば人間が燃焼時に生じるガスや発煙に曝されるような弾性要素若しくは部材において使用される。
【0072】
以下の例1〜5は、詳細な例示的配合物を示す:
【表2】
【0073】
シラン処理した水酸化Mgを含有する例配合物4は、シラン処理にもかかわらず、例配合物1よりも改善された強さ特性を有している。例配合物5は、例配合物1に対して、より低温で水の脱離が生じるという点で異なる難燃挙動を示す。
【0074】
例配合物1〜5及びそれから製造された試験板はいずれも、単独でそれ自体で規格CEN TS 45545-2の要求を満たし、かつ、2mm〜10mm、好ましくは4〜6mmの厚さ範囲のカバー層として、好ましくは、例えばNR、SBRをベースとする動的に負荷を受ける部材や静的に負荷を受ける物品をも、防炎技術的に保護することができる。共加硫、及びそれにより生じるコア材料との良好な結合性によって、成形物品全体の動的特性、例えば懸架特性に影響を及ぼすことなく、全寿命の間により確実な保護が保証される。
【0075】
例配合物1〜5から製造された組成物で被覆された複合体1も、防炎規格CEN TS 45545-2に全て適合する。
【0076】
例配合物1からの本発明による組成物の製造:
例示的な例配合物1の製造を、練りロール機か又は密閉式混合機のいずれかにおいて行う:
練りロール機で作業する場合には、以下の順序で進行する:
EPDM及びEVAを、平滑な圧延シートが形成されるまで互いに混合する。その際、ロール冷却なしで作業する。均一性を保証するために、配合剤を添加する前に混合物シートを交互に3回、左及び右からロール幅の約3/4まで約45°の角度で切断し、そのようにして取り除いた混合物を再度もう一方の側に施与するが、これを以下で左右3回の切り返しと称する。他の混合物成分の混入プロセスを開始する前に、ロールの水冷却部のスイッチを入れる。固体及び液体の配合剤の添加を、連続的に少量でかつ間隙調整を固定して行う。ゴムが全ての材料を取り込んだら、再度3回の切り返しにより左右で均質化する。この圧延シートをロールから取り出し、室温で10分間中間貯蔵することで、混合物及びロールの冷却を達成する。加硫促進剤を硫黄と一緒に添加する。混合物が加硫促進剤と硫黄を取り込んだら、この混合物を再度左右で3回切り返す。次いで、この混合物を完全にロールから取り出し、6回落下させる。交互に、この圧延シートを、ロール方向に、及びロール方向に対して横に施与する。その後、この圧延シートを所望のシート厚で取り出す。
【0077】
密閉式混合機を用いて作業する場合には、以下の順序で進行する:
ミキシングチャンバを混合プロセスの開始前に50℃±5℃に調温する。まず、EPDM及びEVAを充填し、ラムを下げて120秒間混練する。その後、固体及び液体の配合剤の添加を行う。ラムを下げ、再度120秒間混練する。引き続き、ラムを清掃し、混合物を再度、最大60秒間、又はミキシングチャンバ中の材料温度が100℃に達するまで、混合し、引き続き排出する。混合物の冷却及び均質化を、後接続された練りロール機でストックブレンダーを用いて行う。入口での冷却水温度は最高で約30℃である。混合物が約80℃±5℃の温度に達したら、加硫促進剤を添加する。再度、ストックブレンダーを用いて均質化した後(5サイクル)、混合物シートをロールから取り出し、さらに加工するまで輸送用台車上で貯蔵する。
【0078】
例配合物1を、LH 50 A型(1961年製)の密閉式混合機中で、上述の方法に従って、接するブレードの回転数30rpmで製造した。この混合物を100℃で排出した後、この混合物を上記のように練りロール機(Berstorff 1500 mm)で冷却し、加硫促進剤を混入した。厚さ4mmの混合物シートをこのロールから取り出し、さらに加工するまで輸送用台車上で貯蔵した。
【0079】
組成物1の加硫を、電気プレス中で、155℃、圧力200barで15分間行ったが、但し、いかなる場合にも成形後に、そしていかなるせん断負荷をも回避しながら行った。
【0080】
例配合物1からそのようにして得られた組成物の機械的特性値:
ショアA(DIN ISO 7619-1):67
切断時伸び(DIN 53504):350%
引裂き抵抗(DIN ISO 34-1 B):10N/mm
特に、引裂き抵抗が高い値であると、このカバー層によって、保護すべき部材の歪みに永続的に耐えるという利点を有する。さらに、70℃で40%の圧縮永久歪み(DIN ISO 815-B)を達成した。
【0081】
例配合物1からそのようにして得られた組成物の防炎値:
防炎技術的特性の評価をCEN TS 45545-2により行い、その際、以下の値が達成された:
煙ガス濃度(ISO 5669-2):Ds,max=220
煙ガス毒性(ISO 5669-2):CIT(4分後):0.051/CIT(8分後):0.074
発熱速度(ISO 5660-1):MARHE=81kW/m2
例配合物1からそのようにして得られた組成物の硫黄橋かけ分析:
例配合物1を用いて、架橋密度測定を平衡膨潤により行った。試料として2mmの試験板を使用し、加硫を155℃、200barで15分間、電気プレス中で実施した。この試験体は、加硫物板から打ち抜きにより製造したものであり、直径約8mmであった。
【0082】
この方法では、硫黄橋かけにより形成される架橋密度[mol/cm3]の他に、フィラー網目の網目密度も把握する(例えばB. Saville, A.A. Watson, Rubber Chem. Technol. 40(1967) 100を参照のこと)。その際、全架橋密度のみならず、モノスルフィド結合、ジスルフィド結合及びポリスルフィド結合の分布も調べた。
【0083】
全架橋密度を、膨潤測定を用いて三重測定として、以下のパラメータで実施した:膨潤剤:トルエン20ml、加硫物の初期質量(ポリマー及びフィラーに対して):約0.05g〜0.2g;室温。試験所要時間を、重量測定により試験を行う膨潤プロセスの平衡の達成により決定した。それぞれ三重測定を実施した。架橋密度の評価及び算出をFlory-Rehnerの式により行い、その際、0.3の、濃度に依存しないフローリー・ハギンズパラメータ(c)を用いた。モノスルフィド架橋密度S1及びジスルフィド架橋密度S2を測定するために、加硫物を、室温で2時間にわたって、ピペリジン/ヘプタン混合物中でのイソプロパンチオールを用いた分解反応に供した。この反応を保護ガス(N2)下に行った。この分解反応の後に、試料材料を石油エーテルですすぎ、膨潤測定を行った。S1橋かけ及びS2橋かけにより決定される架橋密度が求められた。この結果を全架橋密度から減じることにより、ポリスルフィドSx橋かけの割合が求められる。
【0084】
モノスルフィド架橋密度S1を測定するために、加硫物を、真空下に2日間にわたって、ピペリジン中でのヘキサンチオールを用いた分解反応に供した。石油エーテルですすいだ後、上記のように、S1によってのみ与えられる残存する架橋密度を決定した。この結果を前述の測定値から減じることにより、S2及びSxの割合が求められる。
【0085】
この方法の相対測定誤差は、約1.5×10-5mol/cm3の架橋密度に対する平均測定限界において、結合タイプ1つ当たり平均で約±5%であった。
全架橋密度:2.2±0.0×10-4mol/cm3
S1 0.9±0.0×10-4mol/cm3
S2 0.3±0.1×10-4mol/cm3
Sx 1.0±0.1×10-4mol/cm3
そのようにして得られた組成物を成形に供し、かつその後で加硫することができ、そして、この形で、さらなる処理工程なしで難燃性物品として、例えば異形材として直接使用することができる。しかしまた、そのようにして得られた組成物を複合要素へとさらに加工した後で初めて加硫して、完成した最終生成物にすることもできる。
【0086】
本発明による複合要素1についての例:
本発明による複合要素1を、以下に、図で模式的に示した例示的でかつ非限定的と解釈されるべき実施例をもとに詳説する。
【0087】
図1は、本発明による弾性複合要素の第一実施形態としての複合ばねの模式断面図を示す;
図2は、図1と類似の表示で、緩衝器若しくはソケットにより形成された複合要素の模式断面図を示す;
図3は、ベローにより形成された複合要素の模式断面図を示す;
図4は、複合要素としての空気ばねのローリングローブの模式断面図を示す;
図5は、複合要素としての枕ばねのフラットベアリングの模式断面図を示す;
図6は、複合要素としての緩衝器の模式断面図を示す;
図7は、複合要素としてのソケット若しくはガイドブッシュの模式断面図を示す;
図8は同様に、複合要素としてのベアリング若しくはブッシュの模式断面図を示す;
図9及び10はそれぞれ、複合要素としての緩衝器若しくはシーリング要素の種々の実施形態の模式断面図を示す;
図11は、複合要素としての深絞りばね若しくは補助ばねの模式断面図を示す;
図12は、複合要素としての層状ばね若しくは補助ばねの模式断面図を示す;
図13及び14はそれぞれ、複合要素としての中空ばねの種々の実施形態の模式断面図を示す;
図15は、複合要素としての緩衝器若しくは補助ばねの模式断面図を示す;
図16は、複合要素としてのホースの部分模式断面図を示す。
【0088】
これらの図において弾性複合要素1の種々の実施形態を示したが、その際、いずれも主にゴムからなる基体2からなっており、その際、この弾性複合要素1は動的負荷に耐えうるものである。さらに、これらの図に示した複合要素1は、それぞれ少なくとも部分的にその外側表面3上に本発明による難燃性若しくは防炎性の被覆4を有しており、この被覆は、特にそれぞれの複合要素1の外側に面した部分範囲に配置されている。
【0089】
基体2の種々の形態についての材料組成の例は、図の説明により与えられる。
【0090】
図1には、複合要素1としての複合ばねの模式断面図が示されており、その際、基体2中には金属ねじ要素5が配置されている。表面3の露出した部分範囲若しくは外側にある範囲に、さらに、本発明による特徴を有する難燃性若しくは防炎性の被覆4が予定されている。
【0091】
複合要素1としての、図2に模式的に示された緩衝器若しくは模式的に示されたソケットにおいても、弾性材料から、主にゴムからなる基体2に、同様にこの基体2の表面3の部分範囲にわたって被覆4が形成されている。
【0092】
図3に示されている複合要素1としてのベローにおいては、このベローの外側に面した表面3の実質的に全体に被覆4が具備されていることが見て取れ、その際、このベローの基体は2で示されている。
【0093】
同様に、空気ばねのローリングローブの図4による表示において、基体2にはこの基体の外側表面の全体に被覆4が具備若しくは形成されていることが見て取れる。
【0094】
図5に模式的に示されている複合要素1としてのフラットベアリングにおいても同様に、基体2には実質的にこの基体の表面全体に本発明による被覆4が形成されていることが見て取れる。
【0095】
それに対して、図6に模式的に示されている緩衝器若しくはベアリングの場合、部分範囲にのみ被覆4が弾性基体2上に予定若しくは形成されている。
【0096】
図7によるソケット若しくはガイドブッシュにおいても、基体2にはこの基体の外側に面した表面3の実質的に全体に被覆4が具備されていることが見て取れ、その際、さらにインサート6が予定されている。
【0097】
同様に、図8に示されているソケットにおいて、基体2にはこの基体の外側に面した表面3上に被覆4が形成されており、その際、さらにもう1つのインサート6が予定されている。
【0098】
図9及び10には、複合要素1としての緩衝器の種々の実施形態が示されており、その際、図9による構成においても基体2は被覆4で被覆されており、図10による構成においても基体2は被覆4で被覆されている。
【0099】
図11に示されている深絞りばね若しくは補助ばねにおいても、基体2には少なくとも部分的に被覆4が具備されている。
【0100】
図12に示されている層状ばね若しくは補助ばねについても同様であり、その際、基体2にはそれぞれ被覆4が具備若しくは形成されている。
【0101】
図13及び14の模式図においても、基体2の種々の構成にはそれぞれ外側に面した表面3の実質的に全体に被覆4が形成されていることが見て取れる。
【0102】
図15に模式的に示されている軸ばね若しくは補助ばねについても同様であり、その際、またも弾性基体2には被覆4が具備されている。
【0103】
さらに、図16には複合要素1としての弾性ホースの部分範囲が模式的に示されており、その際、弾性基体2には防炎目的で被覆4が具備されている。
【0104】
特にこれらの図に示されているねじ要素、緩衝器要素若しくは衝撃吸収器要素としての、ホース又はベアリング要素としての、弾性複合要素1の用途若しくは使用範囲の他に、基体2と本発明による難燃性若しくは防炎性の被覆4とからなるこのような要素は、ガスケットとして、成形部材として、マットとして、又は防護服の形で、例えば防護手袋としても使用されることができる。
【0105】
複合要素1の基体2についての例:
種々の使用目的での、主にゴムから形成されている基体2の形成について、以下に、このために使用することのできる材料特性の幾つかの例配合物を示すが、その際、別段の記載がない限り、パーセント表示はそれぞれ質量に関するものである。
【0106】
【表3】
【0107】
【表4】
【0108】
上記の表には、種々のショアAの硬さを有する基体2についての種々の実施例GK1〜GK7が挙げられている。
【0109】
GK1、2及び3による実施例は、例えば図1図5図6図12又は図15に示されているような、動的若しくは高動的な運転において、例えば軸ばね及び枕ばねに使用するための高弾性ゴム材料である。
【0110】
GK4、5及び6による弾性要素の基体2は、特に例えば鉱油のような外部不純物に対する高い耐久性が顕著であり、かつ、例えば図7図8又は図11による実施例の場合のように、例えばソケット又はベアリングに関連して使用される。
【0111】
例7の場合、良好なエネルギー吸収特性を有する弾性複合要素1の基体2が提供され、その際、このような材料特性は、特に図13及び14に示されている中空ねじに利用される。
【0112】
本発明による複合要素1の製造方法:
動的負荷を受ける難燃性の複合要素1の製造は、当業者に公知の種々の製造方法により行うことができる。被覆4の必要な層厚は、カレンダリング又は押出により、又はダイレクトインジェクション(IM)、又は被覆すべき下部構造体若しくは基体2へのプレス加工(TM、CM)により、達成可能である。
【0113】
被覆4の施与は、多様な圧縮法で行うことができる:まず一つには、押出(例えばBarwell)又はストリップ裁断により製造されたゴム混合物の予備成形体に、直接、練りロール機から、組成物の保護層混合物を仕上げ加工により施与することができる。次いで、この半製品を圧縮成形法で一緒に加硫することができる。
【0114】
また、表面3の相応の前処理、例えば溶剤での洗浄及び/又は粗面化及び場合によりバインダーでの被覆の後に、予備加硫された又は加硫された物品に、未加硫の本発明による組成物若しくは被覆4を被覆又はオーバーモールド成形し、かつこれを保護すべき物品若しくは基体2上で加硫することもできる。
【0115】
強度を向上させるインサートを有するか又は有しない面状製品は、例えば本発明による防炎性混合物からのカレンダリングウェブで被覆され、かつ加圧下にプレス機又はオートクレーブ中で加硫することができる。
【0116】
例えば押出によりホース又は異形材を製造する場合には、本発明による防炎性混合物を第二の押出機を用いて連続的に、押し出された保護すべきコア若しくは基体2上に施与し、そしてこれらを一緒に加硫することができる。
【0117】
この場合、好ましい硫黄架橋系によって、他の全ての方法と同様に、基体2及び施与された保護混合物の加硫速度を、最適な共加硫、ひいては最適な結合が可能となるように適合させることができる。同時に、押出の際に常用の全ての連続的な加硫ライン、例えばUHF、HL、IR、塩浴を使用することができる。
【0118】
加硫は、200℃未満の温度で、好ましくは130〜170℃で行う。加硫時間は、製造方法と部材の形状とに依存する。一緒に共加硫する場合には、使用されるコア材料の加硫特性によっても加熱条件が決まり、その際、これは業者に公知である。
【0119】
複合要素1の製造例:
以下の製造例において、複合要素1として、寸法100×100×50mmの弾性ベアリングを製造する。基体2のコア混合物は天然ゴム混合物であり、これは加硫状態で以下の特性を有する:
硬さ:ショアA60(DIN ISO 7619-1)
引張強さ:18N/mm2(DIN 53504)
切断時伸び:470%(DIN 53504)
ばね剛性:1702N/mm
【0120】
ばね剛性の測定を、万能試験機で、2枚の平行平面の圧力板の間で行う。ばね剛性の測定を、速度200mm/分で20mmのピッチまで5回撓ませる前に行う。ばね剛性を5〜10mmのピッチで線形範囲で求める。
【0121】
コア混合物を予備加硫し、完成したコア若しくは基体2は寸法92×92×42mmを有する。成形及び予備加硫を、温度155℃、加熱40分間及び圧力200barで、CM法で電気加熱式プレス中で行う。離型したコアをアセトンで清浄化し、厚さ4mmの保護層(例配合物1)をこの基体2に全面に施与(仕上げ加工)する。この複合体の最終的な成形及び加硫を、CM法で、温度155℃、加熱15分間及び圧力200barで行う。加硫後、この複合要素1を室温で冷却し、余剰分を機械で除去する。コア材料と例混合物1とからなる複合ベアリングについて、ばね剛性を測定する(コア材料についての条件を参照のこと)。
【0122】
複合要素1のばね剛性は1680N/mmであるため、基体2のばね剛性をごくわずかに下回るに過ぎない。さらに、CEN TS 45545-2の範囲内で、ISO 5660-1によるこの複合体の発熱速度を求めたところ、MARHE=66kW/m2である。
【符号の説明】
【0123】
1 複合要素、 2 基体、 3 外側表面、 4 本発明による難燃性若しくは防炎性の被覆、 5 金属ねじ要素、 6 インサート
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
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図16