特許第6246218号(P6246218)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ エボニック デグサ ゲーエムベーハーの特許一覧

(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6246218
(24)【登録日】2017年11月24日
(45)【発行日】2017年12月13日
(54)【発明の名称】非対称ビスホスフィット
(51)【国際特許分類】
   C07F 9/6574 20060101AFI20171204BHJP
   C07F 19/00 20060101ALI20171204BHJP
   C07C 47/02 20060101ALI20171204BHJP
   C07C 45/50 20060101ALI20171204BHJP
   C07C 69/67 20060101ALI20171204BHJP
   C07C 67/313 20060101ALI20171204BHJP
   C07F 15/00 20060101ALN20171204BHJP
   C07B 61/00 20060101ALN20171204BHJP
【FI】
   C07F9/6574 ZCSP
   C07F19/00
   C07C47/02
   C07C45/50
   C07C69/67
   C07C67/313
   !C07F15/00 B
   !C07B61/00 300
【請求項の数】18
【全頁数】42
(21)【出願番号】特願2015-536052(P2015-536052)
(86)(22)【出願日】2013年9月27日
(65)【公表番号】特表2015-531402(P2015-531402A)
(43)【公表日】2015年11月2日
(86)【国際出願番号】EP2013070210
(87)【国際公開番号】WO2014056733
(87)【国際公開日】20140417
【審査請求日】2016年8月9日
(31)【優先権主張番号】102012218627.1
(32)【優先日】2012年10月12日
(33)【優先権主張国】DE
(31)【優先権主張番号】102012218625.5
(32)【優先日】2012年10月12日
(33)【優先権主張国】DE
(31)【優先権主張番号】102012218629.8
(32)【優先日】2012年10月12日
(33)【優先権主張国】DE
(31)【優先権主張番号】102012218630.1
(32)【優先日】2012年10月12日
(33)【優先権主張国】DE
(73)【特許権者】
【識別番号】501073862
【氏名又は名称】エボニック デグサ ゲーエムベーハー
【氏名又は名称原語表記】Evonik Degussa GmbH
(74)【代理人】
【識別番号】100114890
【弁理士】
【氏名又は名称】アインゼル・フェリックス=ラインハルト
(74)【代理人】
【識別番号】100099483
【弁理士】
【氏名又は名称】久野 琢也
(72)【発明者】
【氏名】アンドレア クリスティアンゼン
(72)【発明者】
【氏名】ローベアト フランケ
(72)【発明者】
【氏名】ディアク フリダーク
(72)【発明者】
【氏名】ディーター ヘス
(72)【発明者】
【氏名】カトリン マリー デュバラ
(72)【発明者】
【氏名】ベアント ハネバウアー
【審査官】 阿久津 江梨子
(56)【参考文献】
【文献】 特表2011−521991(JP,A)
【文献】 特開昭62−116535(JP,A)
【文献】 特表2004−501927(JP,A)
【文献】 特表平9−512013(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C07F 9/6574
C07C 45/50
C07C 47/02
C07C 67/313
C07C 69/67
C07F 19/00
C07B 61/00
C07F 15/00
CAplus/REGISTRY(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
式(1)
【化1】
の化合物。
【請求項2】
次の方法工程:
i) 2,4−ジメチルフェノールを酸化カップリングして、3,3’,5,5’−テトラメチル−2,2’−ジヒドロキシビフェニルにする;
ii) 3−tert−ブチル−4−ヒドロキシアニソールを酸化カップリングして、5,5’−ジメトキシ−3,3’−ジ−tert−ブチル−2,2’−ジヒドロキシビフェニルにする;
iii) 不活性ガス雰囲気下で、i)の3,3’,5,5’−テトラメチル−2,2’−ジヒドロキシビフェニルと、PCl3との反応により、ホスホロクロリジット誘導体にする;
iv) 不活性ガス雰囲気下で、少なくとも2当量のiii)のホスホロクロリジット誘導体を、1当量のii)の5,5’−ジメトキシ−3,3’−ジ−tert−ブチル−2,2’−ジヒドロキシビフェニルと反応させる
を有する、請求項1に記載の化合物の製造方法。
【請求項3】
方法工程iv)において溶媒混合物を使用する、請求項2に記載の方法。
【請求項4】
方法工程iv)において使用される溶媒混合物は、有機窒素化合物、有機エステル、芳香族化合物から選択される、請求項3に記載の方法。
【請求項5】
前記有機窒素化合物は、ニトリル、アミン、アミドの中から選択される化合物であることを特徴とする、請求項4に記載の方法。
【請求項6】
更に、化合物(1)を固体として分離し、かつ非プロトン性溶媒混合物中に懸濁及び/又は再結晶させる方法工程v)を有する、請求項2から5までのいずれか1項に記載の方法。
【請求項7】
式(2):
【化2】
[式中、Mは、Fe、Ru、Os、Co、Rh、Ir、Ni、Pd、Ptから選択され、Mは付加的に結合していてもよい]による化合物。
【請求項8】
式(3):
【化3】
[式中、Mは、Fe、Ru、Os、Co、Rh、Ir、Ni、Pd、Ptから選択される]による化合物。
【請求項9】
MはRhである、請求項8に記載の化合物。
【請求項10】
式(2)
【化4】
[式中、Mは、Fe、Ru、Os、Co、Rh、Ir、Ni、Pd、Ptから選択され、Mは付加的に結合していてもよい]による化合物、及び/又は
式(3):
【化5】
[式中、Mは、Fe、Ru、Os、Co、Rh、Ir、Ni、Pd、Ptから選択される]による化合物
を有する混合物において、前記混合物は、更にMに結合していない式(1)
【化6】
による化合物を有する、混合物。
【請求項11】
請求項10に記載の混合物を有する組成物において、前記組成物は、前記混合物に加えて、更に、塩基、有機アミン、緩衝剤溶液、エポキシド、イオン交換体から選択される他の成分を有する、組成物。
【請求項12】
前記有機アミンは、少なくとも1つの2,2,6,6−テトラメチルピペリジン単位を有する、請求項11に記載の組成物。
【請求項13】
前記他の成分は、セバシン酸ジ−4−(2,2,6,6−テトラメチルピペリジニル)−エステルである、請求項11に記載の組成物。
【請求項14】
次の方法工程:
a) 請求項1に記載の化合物又は請求項11から13までのいずれか1項に記載の組成物の装入、
b) 一酸化炭素及び水素を有するガス混合物の導入、
c) 少なくとも1つの不飽和化合物又は不飽和化合物の混合物の添加
を有する不飽和化合物又は不飽和化合物の混合物のヒドロホルミル化方法。
【請求項15】
前記不飽和化合物又は不飽和化合物の混合物は、次の:
− スチームクラッキング装置からの炭化水素混合物;
− 触媒を用いて運転するクラッキング装置からの炭化水素混合物;
− オリゴマー化プロセスからの炭化水素混合物;
− 多価不飽和の化合物を有する炭化水素混合物;
− 不飽和カルボン酸誘導体
から選択される、請求項14に記載の方法。
【請求項16】
前記混合物は、2〜30個の炭素原子を有する不飽和化合物を有することを特徴とする、請求項14又は15に記載の方法。
【請求項17】
前記混合物は、2〜8個の炭素原子を有する不飽和化合物を有することを特徴とする、請求項14から16までのいずれか1項に記載の方法。
【請求項18】
前記不飽和カルボン酸誘導体は、脂肪酸エステルの中から選択されることを特徴とする、請求項15に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、非対称ビスホスフィット、その製造方法、並びにそれと金属との、非対称ビホスフィットと金属とからなる錯化合物を含む混合物への反応並びにヒドロホルミル化反応における触媒活性成分としてのその使用に関し、その際、このヒドロホルミル化活性組成物は、金属並びに非対称ビスホスフィットからなる錯化合物の他に、結合されていないビスホスフィット及び少なくとも1つの他の成分を有する。
【0002】
触媒の存在で、オレフィン化合物、一酸化炭素及び水素の間での、C原子1つ多いアルデヒドへの反応は、ヒドロホルミル化若しくはオキソ合成(Oxierung)として公知である。この反応での触媒としては、元素の周期表の第VIII族の遷移金属の化合物が頻繁に使用される。公知の配位子は、例えば、それぞれ三価のリンPIIIを有するホスフィン、ホスフィット及びホスホニットの種類からなる化合物である。オレフィンのヒドロホルミル化の水準に関する良好な概観は、B. CORNILS, W.A. HERRMANN, "Applied Homogeneous Catalysis with Organometallic Compounds", Vol. 1 & 2, VCH, Weinheim, New York, 1996又はR. Franke, D. Selent, A. Boerner, "Applied Hydroformylation", Chem. Rev., 2012, DOI: 10.1021/cr3001803に見られる。
【0003】
各触媒活性組成物は、その特別な長所を有している。従って、使用材料及び目的生成物に応じて、多様な触媒活性組成物が使用される。
【0004】
特許公報US 4 694 109及びUS 4 879 416は、ビスホスフィン配位子及び低い合成ガス圧でのオレフィンのヒドロホルミル化におけるその使用を記載している。特にプロペンのヒドロホルミル化の際に、このタイプの配位子によって、高い活性及び高いn/i−選択率(n/i=線状アルデヒド(=n)対分枝アルデヒド(=iso)の比率)が達成される。WO 95/30680には、二座ホスフィン配位子及び接触反応、特にヒドロホルミル化反応におけるその使用を開示している。フェロセン架橋したビスホスフィンは、例えば特許公報US 4 169 861、US 4 201 714及びUS 4 193 943中で、ヒドロホルミル化のための配位子として記載されている。
【0005】
二座及び多座のホスフィン配位子の欠点は、その製造のために必要な比較的高い費用である。従って、このような系を工業的プロセスにおいて使用することはしばしば利益が上がらない。更に、比較的低い活性が生じ、この比較的低い活性は長い滞留時間で反応工学的に補償しなければならない。これは、また、生成物の不所望な副反応を生じさせる。
【0006】
触媒活性組成物中のロジウム−モノホスフィット錯体は、内部に二重結合を有する分枝オレフィンのヒドロホルミル化のために適しているが、末端でオキソ化された化合物についてのn/i−選択率は低い。EP 0 155 508からは、立体障害オレフィン、例えばイソブテンのロジウム触媒によるヒドロホルミル化の際にビスアリーレン置換されたモノホスフィットを使用することは公知である。
【0007】
EP 1 294 731に開示されたビスホスフィットは、n−オクテン混合物のヒドロホルミル化の際に、98%までのオレフィン転化率を有する。しかしながら、ノナナールについての同様に望ましいn/i−選択率は、36.8%〜最大57.6%で、改善の余地がある。これは、この触媒活性組成物の工業的プロセスでの使用は、数時間の代わりに数日が見積もられる耐用時間を要求するために、なおさらである。
【0008】
US 4769498に開示されたような対称に構成されたビスホスフィットの合成及び不飽和化合物のヒドロホルミル化のための、遷移金属含有の触媒活性組成物中でのその使用は、文献公知である。
【0009】
US 4769498にも、US 5723641にも、好ましくは対称に構成されたビスホスフィットを製造し、ヒドロホルミル化のための配位子として使用している。ヒドロホルミル化で使用された対称に構成されたビスホスフィット配位子は、低温で製造される。この低温の維持が必ず必要である、というのも、高い温度は、このUS文献によると、転位を引き起こし、最終的に非対称に構成されたビスホスフィットを生じさせてしまい、これはこの場合に望ましくないとしているためである。
【0010】
WO95/28228並びにUS5512695には、非対称のビスホスフィットの合成が記載されている。この場合、この合成は室温及び/又は高めた温度で実施される。
【0011】
WO 95/28228の第19頁には、非対称配位子Aの合成及びそのヒドロホルミル化における使用が記載されていて、この配位子は、いわゆる(対称の)ビフェホス配位子の非対称のバリエーションである(ビフェホスの非対称異性体を参照)。
【化1】
【0012】
この2つの配位子、つまり対称のビフェホス配位子及びその非対称異性体の使用が、同様にヒドロホルミル化において記述されている。ロジウム接触ヒドロホルミル化(Rhodium-catalyzed Hydroformylation)、P.W.N.M. van Leeuwen et C. Claver編、Kluwer Academic Publishers 2006, AA Dordrecht, NL、第45〜46頁、表2には、比較可能な条件下での2つの配位子のヒドロホルミル化の結果を記載している。この場合、対称のビフェホス配位子(文献箇所の配位子5a)が、非対称異性体(文献箇所の配位子7)よりも明らかに高いn/i−選択率及び高い活性によって優れていることが明確に示されている。プロペンのヒドロホルミル化反応の場合に、対称の配位子は、53のn/i−選択率及び402の反応速度を示すが、それに対して非対称の配位子は1.2のn/i−選択率及び280の反応速度を示しただけである。
【0013】
従って、この非対称に構成されたビスホスフィットは、遷移金属接触によるヒドロホルミル化において配位子として使用する際に、明らかに低い反応性及び低いn−位置選択率を示す;ロジウム接触ヒドロホルミル化(Rhodium-catalyzed Hydroformylation)、P.W.N.M. van Leeuwen et C. Claver編、Kluwer Academic Publishers 2006, AA Dordrecht, NL、第45〜46頁参照。
【0014】
van Leeuwenにより説明されたように、この対称のビスホスフィットは、より高いn/i−選択率の他に、より大きな反応性を示す。カルボニル化されるべき不飽和化合物に関して、高い反応性及びn/i−選択率を達成しようと努めるほかに、それぞれ使用される金属、配位子並びに活性化作用を有する他の成分からなる触媒活性組成物の安定性、具体的には耐用時間は、配位子として使用されるビスホスフィットの展望と共に、絶え間のない研究課題である。このことは、特にオレフィン含有混合物に関して、特別に線状オレフィンの混合物のヒドロホルミル化において当てはまる。
【0015】
US 5364950、更にUS 5763677及び" Catalyst Separation, Recovery and Recycling", v. DJ. Cole-Hamilton, R.P. Tooze編集、2006、NL、第25〜26頁には、いわゆる「被毒ホスフィット(Poisoning Phosphites)」の形成が、副反応又は配位子分解反応として記載されている。この「被毒ホスフィット」は、ヒドロホルミル化反応の間でアリールホスフィット変性されたロジウム錯体を使用する際に形成される。この場合、配位子分解の過程で、アリール基が、ヒドロホルミル化生成物のアルキル基と交換される。
不所望な「被毒ホスフィット」の形成の他に、このホスフィット配位子は、加水分解反応の過程でも、アルデヒド縮合の際に形成される微量の水により分解されることがある。
この配位子の分解反応の結果は、ヒドロホルミル化活性のロジウム錯体種の濃度が時間の経過において低下し、かつ反応性の損失を伴うことである。
一般に、ヒドロホルミル化の連続運転法の場合、1つ又は複数の配位子及び場合により他の成分は、反応の経過の間に後供給する、つまり反応の開始後に付加的に添加しなければならないことは公知である(DE 10 2008 002 187 A1参照)。
【0016】
本発明の技術的課題は、新規配位子を提供することであり、この新規配位子は、不飽和化合物のヒドロホルミル化において、先行技術から予め指摘されていた欠点を示さず、次の特性を有する:
1) 高い活性、
2) ヒドロホルミル化に関して、高いn−位置選択率、
3) 高い耐用時間及び長時間安定性。
【0017】
高い耐用時間は、他の成分の他にこの配位子を有するヒドロホルミル化活性組成物が、この配位子の低い分解傾向及び/又はこの配位子のヒドロホルミル化を阻害する成分、例えばいわゆる「被毒ホスフィット」への低い分解傾向を示すことを意味する。
【0018】
この課題は、式(1):
【化2】
により解決される。
【0019】
本発明は、次の主題を有する:
a) 非対称に構成されたビスホスフィット;
b) その製造方法;
c) 式(2)の少なくとも1つの錯化合物(その際、Mは、元素の周期表の第4族〜第10族の金属(Fe、Ru、Os、Co、Rh、Ir、Ni、Pd、Pt)を表し、かつ付加的に結合していてもよい)並びにa)で挙げられたビスホスフィット(これは金属Mに結合していない)との混合物。
【化3】
d) a)で挙げられたビスホスフィット、元素の周期表の第4族〜第10族の金属(Fe、Ru、Os、Co、Rh、Ir、Ni、Pd、Pt)並びに遊離の、つまり結合していないビスホスフィット及び、塩基、有機アミン、エポキシド、イオン交換体、緩衝系を有する群から選択された少なくとも1つの他の成分を含む組成物。;
e) d)による組成物、一酸化炭素及び水素からなるガス混合物、不飽和化合物及びそれらの不飽和化合物の混合物の使用下で、ヒドロホルミル化のために必要な反応条件下での、不飽和化合物及びそれらの不飽和化合物の混合物のヒドロホルミル化方法;
f) 次の:
f1) d)による少なくとも1つの組成物;
f2) 一酸化炭素及び水素からなるガス混合物;
f3) 基質としての少なくとも1つの不飽和化合物;
f4) 基質からの少なくとも1つのヒドロホルミル化生成物
からなる多相反応混合物。
【0020】
非対称ビスホスフィット(1)の製造のための本発明による方法は、次の工程を有する:
i) 2,4−ジメチルフェノールを酸化カップリングして、3,3′,5,5′−テトラメチル−2,2′−ジヒドロキシビフェニルにする;
ii) 3−tert−ブチル−4−ヒドロキシアニソールを酸化カップリングして、5,5′−ジメトキシ−3,3′−ジ−tert−ブチル−2,2′−ジヒドロキシビフェニルにする;
iii) 不活性ガス雰囲気下で、i)の3,3′,5,5′−テトラメチル−2,2′−ジヒドロキシビフェニルと、PCl3との反応により、ホスホロクロリジット誘導体にする;
iv) 不活性ガス雰囲気下で、少なくとも2当量のiii)のホスホロクロリジット誘導体を、1当量のii)の5,5′−ジメトキシ−3,3′−ジ−tert−ブチル−2,2′−ジヒドロキシビフェニルと反応させる。
【0021】
この方法の1実施態様の場合に、方法工程iv)で溶媒混合物を使用する。
【0022】
この方法の1実施態様の場合に、方法工程iv)での反応を、有機窒素化合物、有機エステル、芳香族化合物から選択される非プロトン性溶媒混合物の使用下で行う。
【0023】
この方法の好ましい実施態様の場合に、有機窒素化合物は、ニトリル、アミン、アミドから選択される化合物である。
【0024】
この方法の特に好ましい実施態様の場合に、方法工程iv)において、アセトニトリル、トリエチルアミン、ジメチル−アミノブタン、ジ−イソ−プロピルエチルアミン、N−メチルピロリドン、ピリジン、酢酸エチル、トルエンから選択される溶媒を使用する。
【0025】
この方法の特に好ましい実施態様の場合に、方法工程iv)を非プロトン性−極性溶媒、又は少なくとも1つの非プロトン性−極性溶媒を有する混合物中で行う。
【0026】
非プロトン性溶媒の概念とは、本願明細書の範囲内で、イオン化可能なプロトンを分子中に含まない非水溶媒であると解釈され、この非プロトン性溶媒は、非プロトン性−無極性溶媒と、非プロトン性−極性溶媒とに区別される(Thieme Roempp online参照)。
【0027】
非プロトン性−無極性溶媒又は無極性非プロトン性溶媒の名称のもとには、脂肪族及び芳香族並びにハロゲン化された炭化水素(アルカン、アルケン、アルキン、ベンゼン、脂肪族又は芳香族側鎖を有する芳香族化合物)、過ハロゲン化された炭化水素、例えば四塩化炭素及びヘキサフルオロベンゼン、テトラメチルシラン及び二硫化炭素がまとめられる。
【0028】
非プロトン性−無極性溶媒は、低い比誘電率(εr<15)、低い双極子モーメント(μ<2.5D)及び低いETN値(0.0〜0.3;ETN=溶媒極性の経験的なパラメータの標準化した値)によって特徴付けられる。非プロトン性−無極性溶媒は、親油性及び疎水性である。この分子間では、ファン・デル・ワールス相互作用が支配する。
【0029】
非プロトン性−極性溶媒又は双極性非プロトン性溶媒の概念のもとにまとめられる溶媒は、著しく分極化する官能基を有し、従って、ある程度持続する双極子モーメントを有し、これが、副次的なファン・デル・ワールス相互作用に更に付け加わる。従って、極性物質に対するその溶解能力は、一般に、非プロトン性−無極性溶媒よりもよい。非プロトン性−極性溶媒の例は、ケトン、例えばアセトン、エーテル、エステル、N,N−二置換アミド、例えばジメチルホルムアミド、第3級アミン、ピリジン、フラン、チオフェン、1,1,1−トリクロロエタン、ニトロアルカン、例えばニトロメタン、ニトリル、例えばアセトニトリル、スルホキシド、例えばジメチルスルホキシド、スルホン、ヘキサメチルリン酸トリアミド、液体二酸化硫黄、オキシ塩化セレン。これらは、大きな誘電率(εr>15)、双極子モーメント(μ>2.5D)及び0.3〜0.5の範囲内のETN値を有する。
【0030】
本発明による方法の1実施態様は、化合物(1)を固体として分離し、非プロトン性溶媒混合物中に懸濁させる付加的な方法工程v)を有する。
方法工程v)の他の実施態様の場合には、固体として分離された化合物(1)を非プロトン性溶媒混合物中で再結晶させる。
【0031】
本発明による方法の特に好ましい実施態様の場合には、方法工程v)をアセトニトリルに75℃で又はトルエンに35℃で懸濁を行う。
【0032】
本発明による方法の特に好ましい実施態様の場合には、方法工程v)を、トルエン/ヘプタン又はキシレン/ヘプタンからなる非プロトン性溶媒混合物中で再結晶を行う。
【0033】
式(1)による化合物の他に、式(2)による化合物も請求される。この化合物は、式(1)の化合物を有する。
【0034】
式(2)の化合物:
【化4】
[式中、Mは、Fe、Ru、Os、Co、Rh、Ir、Ni、Pd、Ptから選択され、Mは付加的に結合していてもよい]。
【0035】
この場合、Co、Rh、Ru、Ir、Feが好ましく;Rhが特に好ましい。
【0036】
式(2)による化合物は、実施例に開示されているように、ヒドロホルミル化の際にin situで形成される。
【0037】
本発明の特別な実施態様の場合には、式(3)による化合物が存在する:
【化5】
[式中、Mは、Fe、Ru、Os、Co、Rh、Ir、Ni、Pd、Ptから選択される]。
【0038】
この場合、Co、Rh、Ru、Ir、Feが好ましく;Rhが特に好ましい。
【0039】
純粋な化合物の他に、これらを有する混合物も請求される。
【0040】
混合物は、式(2)及び/又は(3)による化合物を有し、その際、この混合物は、更に、Mに配位されていない式(1)による化合物を有する。
【0041】
この混合物の他に、組成物も請求される。
【0042】
この組成物は上述の混合物を有し、この組成物は、この混合物に加えて更に、塩基、有機アミン、緩衝剤溶液、イオン交換体、エポキシドから選択される他の成分を有する。
US 4567306、US 5364950、US 5741942及びUS 5763677は、これらの他の成分の例を開示している。
【0043】
好ましい実施態様の場合には、他の成分の、立体障害の第2級アミンとして、一般式Iの化合物が使用される
【化6】
[式中、Ra、Rb、Rc、Rd、Re及びRfは、同じ又は異なる炭化水素基であり、これらの基は相互に結合していてもよい]。
【0044】
好ましい実施態様の場合には、この有機アミンは、式Iaの構造を有する:
【化7】
[式中、Rは、これが2,2,6,6−テトラメチルピペリジン自体のように、H、有機基R、ヒドロキシル基又はハロゲンである]。
【0045】
この有機基Rは、ヘテロ原子、例えば酸素原子を介して、2,2,6,6−テトラメチルピペリジン構造単位と結合する有機基であることもできる。特に、この有機基は、ポリマー構造を有するか又は1〜50個の炭素原子及び場合によりヘテロ原子を有する有機基であることができる。特に好ましくは、この有機基は、カルボニル基、例えばケト基、エステル基又は酸アミド基を有する。この、場合によりヘテロ原子を有する有機基は、特に、置換又は非置換の、脂肪族、脂環式、脂肪族−脂環式、複素環式、脂肪族−複素環式、芳香族、芳香族−芳香族又は脂肪族−芳香族の、1〜50個の炭素原子を有する炭化水素基であることができ、その際、この置換された炭化水素基は、第1級、第2級又は第3級アルキル基、脂環式基、芳香族基、−N(R12、−NHR1、−NH2、フルオロ、クロロ、ブロモ、ヨード、−CN、−C(O)−R1、−C(O)H又は−C(O)O−R1、−CF3、−O−R1、−C(O)N−R1、−OC(O)−R1及び/又は−Si(R13から選択される置換基を有していてもよく、この場合、R1は一価の、好ましくは1〜20個の炭素原子を有することができる炭化水素基である。複数の炭化水素基R1が存在する場合には、これらは同じ又は異なることができる。これらの置換基は、好ましくは、それ自体が反応に影響を与えない置換基に限定される。特に好ましい置換基は、ハロゲン、例えば塩素、臭素又はヨウ素、アルキル基、例えばメチル、エチル、プロピル、イソプロピル、ブチル、sec−ブチル、t−ブチル、ネオペンチル、sec−アミル、t−アミル、イソオクチル、t−オクチル、2−エチルヘキシル、イソノニル、イソデシル又はオクタデシル、アリール基、例えばフェニル、ナフチル又はアントラシル、アルキルアリール基、例えばトリル、キシリル、ジメチルフェニル、ジエチルフェニル、トリメチルフェニル、トリエチルフェニル又はp−アルキルフェニル、アラルキル基、例えばベンジル又はフェニルエチル、脂環式基、例えばシクロペンチル、シクロヘキシル、シクロオクチル、シクロヘキシルエチル又は1−メチルシクロヘキシル、アルコキシ基、例えばメトキシ、エトキシ、プロポキシ、ブトキシ又はペントキシ、アリールオキシ基、例えばフェノキシ又はナフトキシ、−OC(O)R1又は−C(O)R1、例えばアセチル、プロピオニル、トリメチルアセトキシ、トリエチルアセトキシ又はトリフェニルアセトキシ、及び3つの炭化水素基を有するシリル基−Si(R13、例えばトリメチルシリル、トリエチルシリル又はトリフェニルシリルから選択することができる。特に、式IIaの化合物が好ましく、この化合物は、基Rとして、2,2,6,6−テトラメチルピペリジン基及び場合により更に−N(R12、−NHR1及び/又は−NH2基を含むような基を有する。
【0046】
式Iによる構造単位を有する第2級アミンとしては、更に特に好ましくは、構造式Ib〜Igを有する次に記載する化合物又はその誘導体を使用することができる。
【化8】
[式中、n=1〜20、好ましくは1〜10]
【化9】
[式中、n=1〜12、好ましくは8]
【化10】
[式中、n=1〜17、好ましくは13]
【化11】
【0047】
2つ又はそれ以上の立体障害アミンを有する混合物も使用することができる。
この組成物は、上述した混合物を有し、この組成物は、この混合物に加えて更に、2,2,6,6−テトラメチルピペリジン単位を有する少なくとも1つのアミンを有する。
特に、本発明による方法の場合に、好ましくは、式Ibを有するアミンの、セバシン酸ジ−4−(2,2,6,6−テトラメチルピペリジン)エステルが使用される。
本発明による組成物中で特に好ましい金属はロジウムである。
【0048】
更に、この組成物を使用する、不飽和化合物及びそれらの不飽和化合物の混合物をヒドロホルミル化する方法が請求される。
【0049】
不飽和化合物又は不飽和化合物の混合物のヒドロホルミル化方法は、次の方法工程を有する:
a) 式(1)、(2)及び/又は(3)による化合物、又は式(1)、(2)及び(3)の化合物を、塩基、有機アミン、緩衝剤溶液、イオン交換体、エポキシドから選択される他の成分と一緒に有する組成物の装入、
b) 一酸化炭素及び水素を有するガス混合物の導入、
c) 少なくとも1つの不飽和化合物又は不飽和化合物の混合物の添加。
【0050】
本発明による方法でヒドロホルミル化される不飽和化合物は、石油化学加工プラント中で生じる炭化水素混合物を有する。これには、例えば、いわゆるC4カットが属する。C4カットの典型的な組成(このC4カットから、多価不飽和の炭化水素の大部分を除去し、かつ本発明による方法で使用することができる)は、次の表1に列挙されている(DE 10 2008 002188参照)。
【表1】
【0051】
説明:
− HCC4:スチームクラッキング装置(高過酷度;High Severity)のC4カットから、触媒の付加的調整なしで1,3−ブタジエンの水素化の後に得られる、典型的なC4混合物。
− HCC4/SHP:1,3−ブタジエンの残分を選択的水素化プロセス/SHPで更に低減させた組成物HCC4
− Raff.I(ラフィネートI):スチームクラッキング装置(高過酷度)のC4カットから、1,3−ブタジエンを、例えばNMP抽出精留によって分離した後に得られる、典型的なC4混合物。
− Raff.I/SHP:1,3−ブタジエンの残分を選択的水素化プロセス/SHPで更に低減させた組成物Raff.I。
− CC4:触媒によるクラッキング装置から得られるC4カットの典型的な組成物。
− CC4/SHP:1,3−ブタジエンの残分を選択的水素化プロセス/SHPで更に低減させたC4カットの組成物。
【0052】
この方法の1実施態様の場合に、c)のもとでの不飽和化合物又はその混合物は、次のものから選択される:
− スチームクラッキング装置からの炭化水素混合物;
− 触媒を用いて運転するクラッキング装置、例えばFCCクラッキング装置からの炭化水素混合物;
− 均一相又は不均一相でのオリゴマー化プロセス、例えばOCTOLプロセス、DIMERSOLプロセス、フィッシャー・トロプシュプロセス、Polygasプロセス、CatPolyプロセス、InAlkプロセス、Polynaphthaプロセス、Selectopolプロセス、MOGDプロセス、CODプロセス、EMOGASプロセス、NExOCTANEプロセス又はSHOPプロセスからの炭化水素混合物;
− 多価不飽和の化合物を有する炭化水素混合物;
− 不飽和カルボン酸誘導体。
【0053】
この方法の1実施態様の場合に、この混合物は、2〜30個の炭素原子を有する不飽和化合物を有する。
【0054】
この方法の1実施態様の場合に、この混合物は、2〜8個の炭素原子を有する不飽和化合物を有する。
【0055】
この方法の他の実施態様の場合に、この混合物は、多価不飽和の炭化水素を有する。特別な実施態様の場合に、この混合物はブタジエンを有する。
【0056】
本発明による方法においてヒドロホルミル化される不飽和化合物は、更に不飽和カルボン酸誘導体を有する。特別な実施態様の場合に、この不飽和カルボン酸誘導体は、脂肪酸エステル類から選択される。
【0057】
本発明による方法の実施は、実施例に詳細に開示された多様な実施態様で行われる。
【0058】
本発明による多相反応混合物は、一酸化炭素及び水素からなるガス混合物の他に、上述したような少なくとも1つの不飽和化合物を有し、かつスチームクラッキング装置、触媒を用いて運転するクラッキング装置又はオリゴマー化プロセスに由来するか、又は一価不飽和の及び/又は多価不飽和の炭素化合物又は不飽和カルボン酸誘導体の他のソースを含む炭化水素混合物の他に、次の実施例に記載されているようなこれらの不飽和化合物の少なくとも1つのヒドロホルミル化生成物、及び上述されたようなそれぞれ使用された組成物を有する。
【図面の簡単な説明】
【0059】
図1】論理計算による本発明による化合物(3)の特性決定の結果を示す。
図2】本発明による化合物(3)の全ての計算された座標、距離及び角度を示す。
図3】本発明による化合物(1)による、連続運転する試験装置中でのヒドロホルミル化試験の結果を示す。
図4】比較化合物のビフェホスによる、連続運転する試験装置中でのヒドロホルミル化試験の結果を示す。
【0060】
図面の記載:錯化合物(3)の算定
式(2)及び(3)の本発明による錯化合物は、ヒドロホルミル化反応の間にin situで形成される。
【0061】
本発明の特別な実施態様の場合に、結合していないビスホスフィット(1)の他に、錯化合物(2)及び(3)が存在する。
【0062】
金属としてロジウムを有する、配位子(1)のヒドリドカルボニル錯体である、本発明による化合物(3)の特性決定は、理論計算によって行った。この結果は、図1の添付図面に示されている。
【0063】
この構造計算を、BP86関数及びdef−SV(P)−基本原理を用いて実施した。
このモデル構造についての構造計算は、Turbomoleプログラムパッケージ(R. Ahlrichs, M. Baer, M. Haeser, H. Horn, C. Koelmel, Chem. Phys. Lett, 1989, 162, 16; TURBOMOLE V6.3 201 1 , a development of University of Karlsruhe and Forschungszentrum Karlsruhe GmbH, 1989-2007, TURBOMOLE GmbH, since 2007. http://www.turbomole.com)を用いて、密度関数理論(DFT)を基礎として行った。BP86関数(S. H. Vosko, L. Wilk, M. Nusair, Can. J. Phys. , 1980, 58, 1200; A. D. Becke, Phys. Rev. A, 1988, 38, 3098; J. Perdew, Phys. Rev. B, 1986, 33, 8822)及びdef−SV(P)−基本原理(A. Schaefer, H. Horn and R. Ahlrichs, J. Chem. Phys., 1992, 97, 2571)を使用した。
【0064】
図2の添付図面は、化合物(3)の全ての計算された座標、距離及び角度を提供する。
【0065】
図3及び4は、連続運転する試験装置中でのヒドロホルミル化試験を示す。第1の試験列(図3)では、本発明による化合物(1)を試験した。選択された反応条件下で、80%〜90%のアルデヒド収率が生じる。この状態を試験終了まで一定に保持することができた。n−ペンタナールと2−メチルブタナールとの分配率、又は位置選択率は、92%対8%であった。
【0066】
第2の試験列(図4)では、同じ試験条件で、比較化合物のビフェホスを使用した。この選択された反応条件下で、アルデヒド収率は、当初70%〜80%から150h後に40〜50%に低下した。n−ペンタナールと2−メチルブタナールとの分配率、又は位置選択率は、95%対5%であった。つまり、この配位子は、本発明による配位子(1)よりも明らかに低い長時間安定性を示す。しかしながら、この長時間安定性は、大規模工業プロセスにとって重要である、というのもこの長時間安定性は経済性に著しく影響を及ぼすためである。
【0067】
従って、本発明による配位子は、明らかに改善された安定性及び活性により優れている。この結果は意外である、というのも、Rhodium-catalyzed Hydroformylation, P.W.N.M. van Leeuwen et C. Claver編, Kluwer Academic Publishers 2006, AA Dordrecht, NL、第45〜46頁に既に記載されていたように、非対称に置換されたビスホスフィットは、対称に置換されたビスホスフィットと比べて、活性及び選択性を明らかに失うとされていたためである。
【0068】
本発明による配位子(1)は、触媒活性組成物中で、今まで先行技術に記載された配位子よりも明らかに改善された長時間安定性により優れていて、従って設定された課題を満たしている。触媒活性組成物の最適な長時間安定性は、特に大規模工業での適用において重要である、というのも配位子はヒドロホルミル化反応において大規模工業的には後から供給することができるが、いずれの後供給も大規模工業プロセスの経済性に不利な影響を及ぼしかつ場合により採算が取れなくなるためである。
【0069】
実施例
一般的な反応式
【化12】
略語:
VE水=脱塩水
KPG=実験室用精密ガラス機器
ACN=アセトニトリル
EtOAc=酢酸エチル
acac=アセチルアセトナート
NEt3=トリエチルアミン
TIPB=1,2,4,5−テトライソプロピルベンゼン
【0070】
2,2′−ビス(3,5−ジメチルフェノール)(5)の合成
前駆体として使用したビフェノール(5)は、次の合成手順によって製造した。
【化13】
【0071】
KPG撹拌機、中間器具及びガラス撹拌機を備えた500mlのシュレンク器具中で、硫酸鉄(II)七水和物1.42g(0.005mol)及び2,4−ジメチルフェノール12.35g(0.1mol)を、VE水150ml及びシクロヘキサン5ml中に装入し、40℃に温めた。100mlのビーカーガラス中でペルオキソ二硫酸ナトリウム25.36g(0.146mol)をVE水80ml中に溶かした。この反応の開始時に少量のNa228溶液をフェノールに添加した。引き続き10分ごとにこの溶液を少量添加した。30分後にNa228溶液の添加を完了した。5時間の反応時間後に、反応溶液にシクロヘキサン300ml及び水200mlを添加し、20分間撹拌し、次いで温かいまま分液漏斗に移した。
この有機相を分離し、乾燥するまで濃縮した。生成物(5)は69%の収率(10.6g)で得ることができた。
【0072】
引き続く全ての調製は、保護ガス下で標準シュレンク技術を用いて行った。溶媒は、使用前に適切な乾燥手段で乾燥させた(Purification of Laboratory Chemicals, W. L. F. Armarego (Autor), Christina Chai (Autor), Butterworth Heinemann (Elsevier), 6. Auflage, Oxford 2009)。生成物の特性決定は、NMR分光器を用いて行った。化学シフト(δ)はppmで記載されている。31P−NMRシグナルの照合は、SR31P=SR1H・(BF31P/BF1H)=SR1H・0.4048によって行った。(Robin K. Harris, Edwin D. Becker, Sonia M. Cabral de Menezes, Robin Goodfellow, and Pierre Granger, Pure Appl. Chem., 2001 , 73, 1795-1818; Robin K. Harris, Edwin D. Becker, Sonia M. Cabral de Menezes, Pierre Granger, Roy E. Hoffman and Kurt W. Zilm, Pure Appl. Chem., 2008, 80, 59-84)。31P−NMRを用いて配位子(1)の含有率を決定し、この場合、この非対称配位子は、2つのリンシグナルによって特徴付けられる。
【0073】
2,2′−ビス(3,5−ジメチルフェノール)クロロホスフィット(6)の合成
【化14】
【0074】
磁気撹拌機を備えた安全化した(sekurierten)2Lのシュレンク器具中に、三塩化リン440mlを装入した。第2の安全化した1Lのシュレンク器具中に、2,2′−ビス(3,5−ジメチルフェノール)120gを計り入れ、撹拌しながら乾燥トルエン500mlを添加した。このビフェノール−トルエン懸濁液を、4時間内で63℃で三塩化リンに供給した。完全に添加した後、この反応混合物をこの温度で一晩中撹拌した。翌朝に、この溶液を温かい状態(45℃)で濃縮し、生成物は96.5%の収率(153g)で得ることができた。31P−NMR:175.59(94.8% 2,2′−ビス(3,5−ジメチルフェノール)クロロホスフィット)、4.4% 異なるPCl化合物類、0.8% P−H化合物。
【0075】
純粋な配位子を製造するための本発明による合成変法
【化15】
【0076】
変法1:ACN/NEt3
1000mlのシュレンク器具中で、保護ガス下で、2,2′−ビス(3,5−ジメチルフェニル)クロロホスフィット38.75g(0.121mol)を脱ガスしたACN150ml中に溶かし、35℃に温めた。第2のシュレンク器具(500ml)中で、3,3′−ジ−tert−ブチル−5,5′−ジメトキシ−[1,1′−ビフェニル]−2,2′−ジオール20.1g(0.056mol)を脱ガスしたACN150ml中に溶かし、撹拌しながら、脱ガスしたトリエチルアミン40.9ml(0.29mol)を添加した。次いで、ビフェノール/トリエチルアミン溶液を、クロロホスフィット溶液にゆっくりと滴加した。1時間の後反応時間の後、この反応溶液を45℃で一晩中撹拌した。
この固体を、脱ガスしたACN中に75℃で1.5時間懸濁させ、分離し、温かいACNで後洗浄した。引き続き、この生成物を乾燥トルエン中に35℃で1.5時間懸濁させ、後洗浄した。目的生成物(1)を白色固体(33g、66%)として得ることができた。31P−NMR(202.4MHz、トルエン−d8):142.5及び140.9(100%)。
【0077】
変法2:EtOAc/NEt3
100mlのシュレンク器具中で、保護ガス下で、2,2′−ビス(3,5−ジメチルフェニル)クロロホスフィット7.3g(21.0mmol)を脱ガスした酢酸エチル15ml中に溶かし、35℃に温めた。第2のシュレンク器具(100ml)中で、3,3′−ジ−tert−ブチル−5,5′−ジメトキシ−[1,1′−ビフェニル]−2,2′−ジオール3.9g(9.5mmol)をNEt3 7.0ml中に溶かした。引き続き、ビフェノール/トリエチルアミン溶液を、20分間でクロロホスフィット溶液にゆっくりと滴加した。この溶液を、更に1時間35℃で撹拌し、引き続き45℃で一晩中撹拌した。
この固体を、脱ガスしたACN中に75℃で1.5時間懸濁させ、分離し、温かいACNで後洗浄した。引き続き、この生成物を乾燥トルエン中に35℃で1.5時間懸濁させ、分離した。
目的生成物(1)を白色固体(5.0g、58%)として得ることができた。31P−NMR(202.4MHz、トルエン−d8):142.5及び140.9(100%)。
【0078】
変法3:EtOAc/ピリジン
250mlのシュレンク器具中で、保護ガス下で、2,2′−ビス(3,5−ジメチルフェニル)クロロホスフィット10.07g(31.0mmol)を脱ガスした酢酸エチル20ml中に溶かし、45℃に温めた。第2のシュレンク器具(50ml)中で、3,3′−ジ−tert−ブチル−5,5′−ジメトキシ−[1,1′−ビフェニル]−2,2′−ジオール5.54g(15mmol)を酢酸エチル26ml及び脱ガスしたピリジン5.2ml中に溶かした。引き続き、ビフェノール/ピリジン溶液を、30分間でクロロホスフィット溶液にゆっくりと滴加した。この溶液を45℃で一晩中撹拌した。
翌日に、この溶液を濾過し、固体をACNで洗浄した。目的生成物を白色固体(4.2g、31%)として得ることができた。31P−NMR(202.4MHz、トルエン−d8):142.2及び141.1(100%)。
【0079】
変法4:−20℃での低温試験の実施
250mlのシュレンク器具中で、保護ガス下で、2,2′−ビス(3,5−ジメチルフェニル)クロロホスフィット8.0g(0.025mol)を脱ガスしたACN30ml中に溶かし、−20℃に冷却した。第2のシュレンク器具(100ml)中で、3,3′−ジ−tert−ブチル−5,5′−ジメトキシ−[1,1′−ビフェニル]−2,2′−ジオール4.32g(0.012mol)を脱ガスしたACN30ml中に溶かし、撹拌しながら、脱ガスしたトリエチルアミン8.5mlを添加した。次いで、ビフェノール/トリエチルアミン溶液を、クロロホスフィット溶液に−20℃でゆっくりと滴加した。完全に添加した後、更に4時間−20℃で更に撹拌した。一晩中、この反応溶液を、翌朝まで−10℃で撹拌した。この手順を、日中では−20℃及び夜間では−10℃での反応温度で、3日間繰り返し実施した。引き続き、この反応バッチを、3時間内で室温にした。
引き続き、この溶液を濾過し、固体を冷たいACNで洗浄した。目的生成物を白色固体(7.6g、70%)として得ることができた。31P−NMR(202.4MHz、トルエン−d8):142.5及び140.9(100%)。
【0080】
この非対称ビスホスフィット(1)は、従って、全く意外にもかつ先行技術に反して、低温でも良好な収率でかつ卓越した純度で得ることができた。
【0081】
配位子(1)の精製:
配位子を多様な溶媒中に懸濁させる(上述の実施例を参照)他に、配位子を再結晶によって精製することも可能である。この再結晶は、WO 2012095255に従って行った。o−キシレンの他に、トルエンも再結晶のために同様の方法で使用することができる。
【0082】
ヒドロホルミル化実験のための作業手順
試験の記載 − 一般
この試験は、Parr Instrument社の100mlのオートクレーブ中で実施した。このオートクレーブは、電気式ヒータを備えている。圧力調整は、質量流量計及び圧力調節器によって行う。試験時間の間に、注入ポンプによって正確に定義された出発物質量を反応条件下で注入することができる。毛管状導管及びHPLC弁を介して試験時間の間に試料を取り出し、GC分析によってもLC−MS分析によっても調査することができる。
【0083】
試験の記載 − 長時間安定性
Rh前駆体(Rh(acac)(CO)2)(acac=アセチルアセトナート)及び配位子を、安息香酸イソノニル40ml中でオートクレーブ中に装入する。このRh濃度は、全体で使用した反応質量を基準として100ppmである。配位子過剰量は、ロジウムを基準として、4:1のモル比であった。
他の成分として、配位子に対して2:1の比率で、アミンとして化合物(Ib)を添加する。GC標準として、1,2,4,5−テトライソプロピルベンゼン0.5gを添加した。
反応温度は120℃である。反応圧力は、合成ガス(H2:CO=50:50体積%)20barである。
【0084】
オレフィンとして、注入ポンプを用いて、約1日の間隔で、それぞれシス−2−ブテン4mlを計量添加した。GC試料は、1、2、4時間後及び次の計量供給の前に取り出した。
【0085】
次の配位子を、その安定性に関して試験した:
【化16】
【0086】
結果 − 長時間安定性
比活性は、k1次対k0(つまり反応の時点0(反応開始)のk値)の比によって決定され、かつ試験稼働時間の間の比活性低下を記述する。
このk値1次は、時間に対する(−In(1−転化率))のプロットから得られる。
【0087】
【表2】
* 本発明による
結果: 配位子ビフェホス及び(8)を有する触媒(表2;番号1〜4、9〜12)の活性低下は、配位子(1)を有する触媒よりも明らかに著しい。注目すべきは、配位子(1)の比活性が、二倍近くの反応時間後(表2;番号8)で、いまだに極めて良好なn/i選択率で、半分の反応時間の後の他の2つの配位子(表2;番号4及び12)の場合よりもいまだに2倍を超えていることである。この挙動は、連続運転するヒドロホルミル化装置中での長時間試験(図3及び4参照)において確認される。従って、非対称配位子を製造でき、かつヒドロホルミル化活性組成物中で使用でき、この配位子は、全く意外でありかつ先行技術に対して極めて好ましい特性を有し、技術的課題を解決する。
【0088】
本発明による結果 − 基質バリエーション
実施例1
Parr Instruments社の100mlのオートクレーブ中で、120℃でかつ30barでプロペン5.3gをヒドロホルミル化した。前駆体として、トルエン43.89g中のRh(acac)(CO)2 0.0054gを装入した。配位子として、触媒バッチ溶液中の配位子(1)0.0701gを使用した。有機アミンとして、化合物(Ib)0.0372g及びGC標準としてTIPB0.5016gを添加した。出発物質は、予め設定された反応温度に達した後に計量供給した。この反応の間に、圧力を、質量流量計を用いた合成ガス調節によって一定に保持した。試料を、反応混合物から20時間後に取り出した。ブタナール89.6mol%、2−メチルプロパナール7.9mol%及びプロパン2.3mol%が形成された。n−ブタナールの位置選択率は、92.0%であった。
【0089】
実施例2
Parr Instruments社の100mlのオートクレーブ中で、120℃でかつ20barでシス−2−ブテン5.6gをヒドロホルミル化した。前駆体として、トルエン48.8g中のRh(acac)(CO)2 0.0056gを装入した。配位子として、触媒バッチ溶液中の配位子(1)0.0779gを使用した。有機アミンとして、化合物(Ib)0.0416g及びGC標準としてTIPB0.5760gを添加した。出発物質は、予め設定された反応温度に達した後に計量供給した。この反応の間に、圧力を、質量流量計を用いた合成ガス調節によって一定に保持した。試料を、反応混合物から20時間後に取り出した。ペンタナール80.0mol%、2−メチルブタナール5.2mol%及びn−ブタン3.7mol%が形成された。n−ペンタナールの位置選択率は、94.0%であった。
【0090】
実施例3
Parr Instruments社の100mlのオートクレーブ中で、120℃でかつ20barでイソブテン6.3gをヒドロホルミル化した。前駆体として、トルエン39.8g中のRh(acac)(CO)2 0.0046gを装入した。配位子として、触媒バッチ溶液中の配位子(1)0.0636gを使用した。有機アミンとして、化合物(Ib)0.0339g及びGC標準としてTIPB0.4701gを添加した。出発物質は、予め設定された反応温度に達した後に計量供給した。この反応の間に、圧力を、質量流量計を用いた合成ガス調節によって一定に保持した。試料を、反応混合物から20時間後に取り出した。3−メチルブタナール72.9mol%、ピバリンアルデヒド0.1mol%及びイソブタン4.4mol%が形成された。
【0091】
実施例4
Parr Instruments社の100mlのオートクレーブ中で、120℃でかつ20barで次の組成物を有するC−4−混合物6.7をヒドロホルミル化した:イソブタン2.9mol%、n−ブタン9.9mol%、1−ブテン28.7mol%、イソブテン43.5mol%、2−ブテン14.6mol%及び1,3−ブタジエン0.2mol%。前駆体として、トルエン42.38g中のRh(acac)(CO)2 0.0049gを装入した。配位子として、触媒バッチ溶液中の配位子(1)0.0697gを使用した。有機アミンとして、化合物(Ib)0.0374g及びGC標準としてTIPB0.5069gを添加した。出発物質は、予め設定された反応温度に達した後に計量供給した。この反応の間に、圧力を、質量流量計を用いた合成ガス調節によって一定に保持した。試料を、反応混合物から20時間後に取り出した。この搬出物は、3−メチルブタナール32.86%(転化率 イソブテン75.6mol%)、n−ペンタナール39.0mol%及び2−メチルブタナール1.8mol%(転化率 ブテン76.5mol%、n−ペンタナールについての位置選択率95.6%)を有していた。水素化生成物として、搬出物中にイソブタン4.7mol%及びn−ブタン11.3mol%が見られた。
【0092】
実施例5
Parr Instruments社の100mlのオートクレーブ中で、120℃でかつ20barで次の組成物を有するC−4−混合物6.5gをヒドロホルミル化した:イソブタン5.9mol%、n−ブタン15.6mol%、1−ブテン52.9mol%、イソブテン0.1mol%、2−ブテン24.8mol%及び1,3−ブタジエン0.5mol%。前駆体として、トルエン45.05g中のRh(acac)(CO)2 0.0052gを装入した。配位子として、触媒バッチ溶液中の配位子(1)0.0727gを使用した。有機アミンとして、化合物(Ib)0.0377g及びGC標準としてTIPB0.5314gを添加した。出発物質は、予め設定された反応温度に達した後に計量供給した。この反応の間に、圧力を、質量流量計を用いた合成ガス調節によって一定に保持した。試料を、反応混合物から20時間後に取り出した。この搬出物は、3−メチルブタナール0.14mol%、n−ペンタナール69.5mol%及び2−メチルブタナール3.67mol%(転化率 ブテン94.2mol%、n−ペンタナールについての位置選択率96.5%)を有していた。水素化生成物として、搬出物中にイソブタン5.64mol%及びn−ブタン18.55mol%が見られた。
【0093】
実施例6
Parr Instruments社の100mlのオートクレーブ中で、120℃でかつ20barで次の組成物を有するC−4−混合物7.0gをヒドロホルミル化した:この出発物質はイソブタン5.9mol%、n−ブタン22.1mol%、1−ブテン45.5mol%、イソブテン2.1mol%、2−ブテン17.1mol%及び1,3−ブタジエン0.2mol%を有する。前駆体として、トルエン40.81g中のRh(acac)(CO)2 0.0047gを装入した。配位子として、触媒バッチ溶液中の配位子(1)0.0659gを使用した。有機アミンとして、化合物(Ib)0.0342g及びGC標準としてTIPB0.4814gを添加した。出発物質は、予め設定された反応温度に達した後に計量供給した。この反応の間に、圧力を、質量流量計を用いた合成ガス調節によって一定に保持した。試料を、反応混合物から20時間後に取り出した。この搬出物は、3−メチルブタナール1.5mol%(転化率 イソブテン71.6mol%)、n−ペンタナール61.9mol%及び2−メチルブタナール2.9mol%(転化率 ブテン93.3mol%、n−ペンタナールについての位置選択率95.5%)を有していた。水素化生成物として、搬出物中にイソブタン5.3mol%及びn−ブタン23.4mol%が見られた。
【0094】
実施例7
Parr Instruments社の100mlのオートクレーブ中で、120℃でかつ20barで次の組成物を有するC−4−混合物7.1gをヒドロホルミル化した:イソブタン3.5mol%、n−ブタン13.0mol%、1−ブテン47.3mol%、イソブテン13.9mol%、2−ブテン21.6mol%及び1,3−ブタジエン0.4mol%。前駆体として、トルエン43.88g中のRh(acac)(CO)2 0.0048gを装入した。配位子として、触媒バッチ溶液中の配位子(1)0.0680gを使用した。有機アミンとして、化合物(Ib)0.0363g及びGC標準としてTIPB0.5092gを添加した。出発物質は、予め設定された反応温度に達した後に計量供給した。この反応の間に、圧力を、質量流量計を用いた合成ガス調節によって一定に保持した。試料を、反応混合物から20時間後に取り出した。この搬出物は、3−メチルブタナール10.1mol%(転化率 イソブテン72.8mol%)、n−ペンタナール63.2mol%及び2−メチルブタナール3.2mol%(転化率 ブテン96.3mol%、n−ペンタナールについての位置選択率95.2%)を有していた。水素化生成物として、搬出物中にイソブタン3.5mol%及びn−ブタン15.1mol%が見られた。
【0095】
実施例8
Parr Instruments社の100mlのオートクレーブ中で、120℃でかつ20barで次の組成物を有するC−4−混合物5.8gをヒドロホルミル化した:イソブタン0.1mol%、n−ブタン27.6mol%、1−ブテン27.9mol%、イソブテン0.1mol%及び2−ブテン44.0mol%。前駆体として、トルエン43.77g中のRh(acac)(CO)2 0.0051gを装入した。配位子として、触媒バッチ溶液中の配位子(1)0.0699gを使用した。有機アミンとして、化合物(Ib)0.0373g及びGC標準としてTIPB0.5166gを添加した。出発物質は、予め設定された反応温度に達した後に計量供給した。この反応の間に、圧力を、質量流量計を用いた合成ガス調節によって一定に保持した。試料を、反応混合物から20時間後に取り出した。この搬出物は、n−ペンタナール59.9mol%及び2−メチルブタナール3.3mol%(転化率 ブテン91.7mol%、n−ペンタナールについての位置選択率94.7%)を有していた。水素化生成物として、搬出物中にイソブタン0.1mol%及びn−ブタン31.7mol%が見られた。
【0096】
実施例9
Parr Instruments社の100mlのオートクレーブ中で、120℃でかつ20barで次の組成物を有するC−4−混合物6.0gをヒドロホルミル化した:n−ブタン63.6mol%、1−ブテン1.0mol%及び2−ブテン35.8mol%。前駆体として、トルエン35.88g中のRh(acac)(CO)2 0.0041gを装入した。配位子として、触媒バッチ溶液中の配位子(1)0.0573gを使用した。有機アミンとして、化合物(Ib)0.0306g及びGC標準としてTIPB0.4235gを添加した。出発物質は、予め設定された反応温度に達した後に計量供給した。この反応の間に、圧力を、質量流量計を用いた合成ガス調節によって一定に保持した。試料を、反応混合物から20時間後に取り出した。この搬出物は、n−ペンタナール29.7mol%及び2−メチルブタナール1.9mol%(転化率 ブテン85.3mol%、n−ペンタナールについての位置選択率94.0%)を有していた。
【0097】
実施例10
Parr Instruments社の100mlのオートクレーブ中で、120℃でかつ20barでn−オクテン5.0gをヒドロホルミル化した。前駆体として、トルエン41.29g中のRh(acac)(CO)2 0.0049gを装入した。配位子として、触媒バッチ溶液中の配位子(1)0.0669gを使用した。有機アミンとして、化合物(Ib)0.0378g及びGC標準としてTIPB0.5030gを添加した。出発物質は、予め設定された反応温度に達した後に計量供給した。この反応の間に、圧力を、質量流量計を用いた合成ガス調節によって一定に保持した。試料を、反応混合物から20時間後に取り出した。この搬出物は、アルデヒド54.2mol%を含む(n−ノナナールに対する位置選択率90.9%)。水素化生成物として、搬出物中にn−オクタン3.9mol%及びノナノール3.2mol%が見られる。
【0098】
実施例11
Parr Instruments社の100mlのオートクレーブ中で、120℃でかつ20barで1,3−ブタジエン7.0gをヒドロホルミル化した。前駆体として、トルエン46.82g中のRh(acac)(CO)2 0.0054gを装入した。配位子として、触媒バッチ溶液中の配位子(1)0.0770gを使用した。有機アミンとして、化合物(Ib)0.0413g及びGC標準としてTIPB0.5599gを添加した。出発物質は、予め設定された反応温度に達した後に計量供給した。この反応の間に、圧力を、質量流量計を用いた合成ガス調節によって一定に保持した。試料を、反応混合物から20時間後に取り出した。搬出物は、n−ブタン0.2mol%、n−ブテン11.3%及びアルデヒド12.9%及び4−ビニル−シクロヘキセン11.5mol%を含む。1−3−ブタジエンについての全転化率は37.2%である。
【0099】
実施例12
Parr Instruments社の100mlのオートクレーブ中で、120℃でかつ20barでオレイン酸メチルエステル5.6gをヒドロホルミル化した。前駆体として、トルエン44.06g中のRh(acac)(CO)2 0.0052gを装入した。配位子として、触媒バッチ溶液中の配位子(1)0.0689gを使用した。有機アミンとして、化合物(Ib)0.0375g及びGC標準としてTIPB0.5260gを添加した。出発物質は、予め設定された反応温度に達した後に計量供給した。この反応の間に、圧力を、質量流量計を用いた合成ガス調節によって一定に保持した。試料を、反応混合物から20時間後に取り出した。1H−NMRスペクトル及び13C−NMRスペクトルから、49.5mol%のアルデヒド収率が算出された。末端アルデヒドに対する位置選択率は、20.6mol%である。二重結合の割合は、35.9mol%である。
【0100】
実施例13
Parr Instruments社の100mlのオートクレーブ中で、120℃でかつ20barで、次の組成物を有する触媒によるクラッキング装置からの炭化水素混合物6.9gをヒドロホルミル化した:プロパン1.5mol%、プロペン0.8mol%、イソブタン28.1mol%、n−ブタン8.1mol%、1−ブテン16.4mol%、イソブテン16.9mol%、2−ブテン28.2mol%、1,3−ブタジエン0.5mol%及びC5−オレフィン及びC5−炭化水素の割合。前駆体として、トルエン43.39g中のRh(acac)(CO)2 0.0048gを装入した。配位子として、触媒バッチ溶液中の配位子(1)0.0672gを使用した。有機アミンとして、化合物(Ib)0.0359g及びGC標準としてTIPB0.5035gを添加した。出発物質は、予め設定された反応温度に達した後に計量供給した。この反応の間に、圧力を、質量流量計を用いた合成ガス調節によって一定に保持した。試料を、反応混合物から20時間後に取り出した。
搬出物は、プロパン1.3mol%、ブタナール0.7mol%、イソブタン27.5mol%、n−ブタン9.6mol%、3−メチルブタナール13.1mol%(イソブテン転化率77.4%)、ペンタナール39.1mol%、2−メチルブタナール2.1mol%(転化率n−ブテン96.9%、n−ペンタナールに対する位置選択率95.0%)。
【0101】
実施例14
Parr Instruments社の100mlのオートクレーブ中で、120℃でかつ50barでエテン1.8gをヒドロホルミル化した。前駆体として、トルエン42.68g中のRh(acac)(CO)2 0.0050gを装入した。配位子として、触媒バッチ溶液中の配位子(1)0.0668gを使用した。有機アミンとして、化合物(Ib)0.0363g及びGC標準としてTIPB0.5095gを添加した。出発物質は、予め設定された反応温度に達した後に計量供給した。この反応の間に、圧力を、質量流量計を用いた合成ガス調節によって一定に保持した。試料を、反応混合物から20時間後に取り出した。プロパナールに対する転化率は98.7%である。
【0102】
比較例 − 非対称及び対称の配位子
多様な基質を用いた本発明による非対称配位子(1)の試験の他に、更に対称配位子及び相応する非対称異性体を、比較可能な条件で試験した。
まず、先行技術で既に述べた対称のビフェホス配位子及びその非対称の異性体を試験した。化合物(9)は、WO95/28228の19頁の合成手法と同様に製造した。
【0103】
【化17】
【0104】
これらの試験は、次の手法によって実施した:
実施例15
Parr Instruments社の100mlのオートクレーブ中で、120℃でかつ20barでシス−2−ブテン5.7gをヒドロホルミル化した。前駆体として、ジフィル(Diphyl)(ジフェニルオキシド約73.5%及びジフェニル26.5%の混合物)51.5g中のRh(acac)(CO)2 0.0054gを装入した。配位子として、触媒バッチ溶液中の対応する配位子0.0779gを使用した。有機アミンとして、化合物(Ib)0.0416g及びGC標準としてTIPB0.5760gを添加した。出発物質は、予め設定された反応温度に達した後に計量供給した。
この反応の間に、圧力を、質量流量計を用いた合成ガス調節によって一定に保持した。試料を、反応混合物から12時間後に取り出した。
【0105】
この結果は、表3中に示されている。
【表3】
【0106】
対称ビフェホスの非対称異性体(配位子9;番号2)は、対称ビフェホス配位子よりも明らかに低い活性並びに著しく低い選択率を特徴とする。これは、先行技術と一致する。この2つの配位子、つまり対称ビフェホス配位子及びその非対称異性体の使用は、既に、Rhodium-catalyzed Hydroformylation、P.W.N.M. van Leeuwen et C. Claver編, Kluwer Academic Publishers 2006, AA Dordrecht, NLに記載されている。この第45〜46頁の表2には、比較可能な条件下での2つの配位子のヒドロホルミル化の結果が示されている。この場合、対称のビフェホス配位子(文献箇所の配位子5a)が、非対称異性体(文献箇所の配位子7)よりも明らかに高いn/i−選択率及び高い活性によって優れていることが明確に示されている。プロペンのヒドロホルミル化反応の場合に、対称の配位子は、53のn/i−選択率及び402の反応速度を示すが、それに対して非対称の配位子は1.2のn/i−選択率及び280の反応速度を示しただけである。これは、表3の独自の結果により再確認することができた。
【0107】
更に、本発明による配位子(1)及びその対称異性体(10)を比較可能な条件下で試験した。次の試験は、実施例2の手法により実施した。配位子だけを交換した。表4には、本発明による配位子(1)及びその対称異性体、配位子(9)を用いたシス−2−ブテンのヒドロホルミル化の結果が示されている。
【0108】
【化18】
【0109】
【表4】
【0110】
本発明による非対称配位子(1)(番号1)は、94%の極めて良好なn−ペンタナール位置選択率及び良好なアルデヒド収率を示す。その対称異性体(番号2)は、それに対して、単に90%の低いペンタナール選択率及び明らかに低い活性、つまり収率を示す。
【0111】
この結果は意外である、というのも先行技術に記載されているように、非対称に置換されたビスホスフィットは対称に置換されたビホスフィットと比較して活性及び選択率を明らかに失うとされ、かつ配位子のビフェホス及びその非対称異性体(9)を用いた上述の比較試験によっても確認されたためである。従って、本発明による非対称配位子(1)は、先行技術とは完全に反対に、極めて良好な選択率及び活性により優れている。更に、本発明による配位子(1)は、連続運転する装置中で次の長時間試験において示されたように極めて長期間安定性の配位子である。
【0112】
比較試験 − 長時間安定性
第1の試験列では、本発明による化合物(1)を試験した。第2の試験列では、同じ試験条件で、比較化合物のビフェホスを使用した。
【0113】
【化19】
【0114】
ブテン/ブタン混合物のヒドロホルミル化を、連続運転する試験装置中で実施した。
この試験装置は、主に、反応器に由来する気相用の、後続する縮合器及び相分離容器(気/液)を備えた20リットル入り圧力反応器並びに相分離容器からの気相を再び反応帯域に返送する循環ガス圧縮装置からなる。この循環ガスの一部は、相分離後に廃ガスとして、反応系から搬出される。
反応器系中での最適なガス分配を実現するために、ここでは孔を備えたガス分配リングを用いた。
取り付けられた加熱装置及び冷却装置によって、反応器を温度調節することができる。
【0115】
このヒドロホルミル化の前に、反応器系を窒素を用いて酸素不含にパージした。引き続き、この反応器に触媒溶液12リットルを充填した。
この触媒溶液は、安息香酸イソノニル12kg、Rh(acac)(CO)2 4.5g、ビスホスフィット配位子(1)63g、アミンIIb 200gから構成され、予め容器内で混合された。この安息香酸イソノニルは予め窒素でストリッピングして、この溶媒から酸素及び水を除去した。
引き続き、この反応器系を合成ガスを用いて窒素不含にパージした。窒素含有率が<10体積%に低下した後で、この反応器系を合成ガスで1.0MPaに加圧し、引き続き120℃に加熱した。
運転温度に達した後に、この反応器系を合成ガスで1.7MPaの反応圧力にもたらした。
その後に、出発物質の添加を開始した。粗製ブタンをガス状で循環ガス中に入れるために、粗製ブタンを蒸発器を介して送った。
【0116】
次の流量を調節した:
粗製ブタン(35%の2−ブテン及びn−ブタン及び1−ブテン約1%の濃度の混合物)0.3kg/h、合成ガス(50体積%のH2及び50体積%のCO)75Nl/h。化合物(1)及びアミンIIbの毎日の計量供給のために、予め窒素を用いたストリッピングにより残留するC4炭化水素を除去(<3%)したn−ペンタナール中のビスホスフィット配位子Iの1.4%溶液を作製した。アミンIIbは、化合物(1)に対して3倍のモル過剰量で使用した。この溶液の安定性を改善するために、ビスホスフィット配位子(1)の前にアミンIIbを溶液に添加した。
【0117】
この反応生成物を、連続的に循環ガス流を介して反応器から取り出し、凝縮器中で50℃で部分的に凝縮させた。この凝縮した相が連続的に相分離容器から流出した。収率の測定のために、反応器の前後で循環ガスから試料を取り出し、ガスクロマトグラフィーにより分析した。
上記の配位子溶液の毎日の計量供給によって、転化率及び位置選択率を一定に保持することができた。
反応器内容物の決定のために、反応器から試料を取り出し、液体クロマトグラフィー(HLPC)によって試験した。
【0118】
選択された反応条件下で、80%〜90%のアルデヒド収率が生じた。この状態を試験終了まで一定に保持することができた。n−ペンタナールと2−メチルブタナールとの分配率、又は位置選択率は、92%対8%であった。
この試験の固定層中で、ロジウム分解は記録されなかった。
【0119】
この結果は、図3中に示されている。
図3は、本発明による非対称配位子(1)を用いた粗製ブタンのヒドロホルミル化における1500時間の長時間試験を示す。全体の試験時間の間に、一定の高い活性、つまり平均して80%のアルデヒド収率を、更に極めて良好な位置選択率で保証することができた。
【0120】
第2の試験列において、本発明による化合物(1)の代わりに、比較化合物のビフェホス55gを使用した。この結果は、図4中に示されている。
【0121】
この選択された反応条件下で、アルデヒド収率は、当初70%〜80%から150h後に40〜50%に低下した。n−ペンタナールと2−メチルブタナールとの分配率、又は位置選択率は、95%対5%であった。
この試験の固定層中で、ロジウム分解は記録されなかった。
【0122】
図4は、対称の比較配位子のビフェホスを用いた粗製ブタンのヒドロホルミル化における250時間の長時間試験を示す。この場合、本発明による配位子と比較して、長期間続く活性は保証されなかった。この選択された反応条件下で、アルデヒド収率は、当初70%〜80%から150h後に40〜50%に低下した。位置選択率は、更に極めて良好であった。つまり、この配位子は、明らかに低い長期間安定性を示す。
【0123】
従って、本発明による非対称配位子(1)は、対称の比較配位子のビフェホスよりも明らかに改善された安定性によって優れている。
【0124】
本発明による配位子(1)は、触媒活性組成物中で、今まで先行技術に記載された配位子よりも明らかに改善された長時間安定性により優れていて、従って設定された課題を満たしている。触媒活性組成物の最適な長時間安定性は、特に大規模工業での適用において重要である、というのも配位子はヒドロホルミル化反応において大規模工業的には後から供給することができるが、いずれの後供給も大規模工業プロセスの経済性に不利な影響を及ぼしかつ場合により採算が取れなくなるためである。従って、できる限り長期間安定性で、この長期間安定性の他に良好な活性及び良好なn/i−選択率によって優れている配位子を使用することが重要である。この課題は、本発明による配位子(1)により満たされる。
図1
図2-1】
図2-2】
図2-3】
図2-4】
図2-5】
図2-6】
図2-7】
図2-8】
図2-9】
図2-10】
図2-11】
図2-12】
図2-13】
図2-14】
図2-15】
図2-16】
図2-17】
図2-18】
図2-19】
図2-20】
図2-21】
図2-22】
図2-23】
図2-24】
図2-25】
図2-26】
図2-27】
図2-28】
図2-29】
図2-30】
図2-31】
図2-32】
図2-33】
図2-34】
図2-35】
図2-36】
図2-37】
図2-38】
図2-39】
図2-40】
図3
図4