【実施例】
【0028】
例1:液状スズ(II)アルコキシド(Sn(OR)
2)の調製方法に用いられる化学物質:
1.無水塩化スズ(II)、純度>98%、Aldrich社より購入。分子量=189.62g/モル、沸点=652℃、融点=246℃
2.ジエチルアミン((C
2H
5)NH)。分子量=73.14g/モル、沸点=55℃、融点=−50℃、密度=0.707g/mL(25℃)。使用前にナトリウム(Na)又は水素化カルシウム(CaH
2)と共に1時間還流し、蒸留することによって精製しなければならない。乾燥させたジエチルアミンは、窒素若しくはアルゴン下に保つか、又はモレキュラーシーブと共に容器中に保存する。
3.N−ブタノール(n−C
4H
9OH)。分子量=74.12g/モル、沸点=116〜118℃、融点=−90℃、密度=0.81g/mL(25℃)。使用前にナトリウム(Na)と共に1時間還流し、蒸留することによって精製しなければならない。乾燥させたn−ブタノールは、窒素若しくはアルゴン下に保つか、又はモレキュラーシーブと共に容器中に保存する。
4.N−ヘキサノール(n−C
6H
13OH)。分子量=102.17g/モル、沸点=156〜157℃、融点=−52℃、密度=0.814g/mL(25℃)。使用前にナトリウム(Na)と共に1時間還流し、蒸留することによって精製しなければならない。乾燥させたn−ヘキサノールは、窒素若しくはアルゴン下に保つか、又はモレキュラーシーブと共に容器中に保存する。
5.N−オクタノール(n−C
8H
17OH)。分子量=130.23g/モル、沸点=196℃、融点=−15℃、密度=0.827g/mL(25℃)。使用前にナトリウム(Na)と共に1時間還流し、蒸留することによって精製しなければならない。乾燥させたn−オクタノールは、窒素若しくはアルゴン下に保つか、又はモレキュラーシーブと共に容器中に保存する。
6.N−ヘプタン(n−C
7H
16)。分子量=100.20g/モル、沸点=98℃、融点=−91℃、密度=0.684g/mL(25℃)。使用前にナトリウム(Na)と共に1時間還流し、蒸留することによって精製しなければならない。乾燥させたn−ヘプタンは、窒素若しくはアルゴン下に保つか、又はモレキュラーシーブと共に容器中に保存する。
【0029】
本発明を十分に理解するために、以下のさらなる詳細を与える。
【0030】
例2:液状スズ(II)n−ブトキシド(Sn(O−n−C
4H
9)
2)の調製:
1.三つ口丸底フラスコに電磁式撹拌棒、オーブン乾燥ガス入口及び滴下漏斗を取り付ける。これを電磁式撹拌機の上に置く。ガス入口に体積測定制御式窒素又はアルゴン源をプラスチックチューブによって連結する。
2.無水塩化スズ(II)4.84g(25.01ミリモル)を前記反応フラスコに加える。
3.乾燥n−ヘプタン(約100mL)を25〜38℃の温度範囲において反応容器中に加える。この混合物を30〜60分間よく撹拌する。
4.次いで乾燥ジエチルアミン(5.43mL、52.53ミリモル)を15〜20℃の温度範囲において反応容器中に加える。この反応混合物を3〜6時間撹拌する。
5.乾燥n−ヘプタン(約50mL)中の乾燥n−ブタノール4.81mL(52.53ミリモル)の溶液を25〜38℃の温度範囲において反応混合物に加える。得られた溶液をさらに12時間撹拌する。
6.この反応混合物を窒素又はアルゴン下で濾過し、固体状残渣を乾燥n−ヘプタン(100〜200mL)で充分洗浄する。
7.濾液を回転式蒸発器中で濃縮し、蒸発乾固させる。
8.スズ(II)n−ブトキシドの残渣を高真空ポンプを用いてさらに3〜6時間乾燥させる。
9.スズ(II)n−ブトキシド4.89gが粘性がある黄褐色の液体として得られた。収率73.79%。
【0031】
例3:液状スズ(II)n−ヘキソキシド(Sn(O−n−C
6H
13)
2)の調製:
1.三つ口丸底フラスコに電磁式撹拌棒、オーブン乾燥ガス入口及び滴下漏斗を取り付ける。これを電磁式撹拌機の上に置く。ガス入口に体積測定制御式窒素又はアルゴン源をプラスチックチューブによって連結する。
2.無水塩化スズ(II)4.84g(25.01ミリモル)を前記反応フラスコに加える。
3.乾燥n−ヘプタン(約100mL)を25〜38℃の温度範囲において反応容器中に加える。この混合物を30〜60分間よく撹拌する。
4.次いで乾燥ジエチルアミン(5.43mL、52.53ミリモル)を15〜20℃の温度範囲において反応容器中に加える。この反応混合物を3〜6時間撹拌する。
5.乾燥n−ヘプタン(約 50mL)中の乾燥n−ヘキサノール6.59mL(52.53ミリモル)の溶液を25〜38℃の温度範囲において反応混合物に加える。得られた溶液をさらに12時間撹拌する。
6.この反応混合物を窒素又はアルゴン下で濾過し、固体状残渣を乾燥n−ヘプタン(100〜200mL)で充分洗浄する。
7.濾液を回転式蒸発器中で濃縮し、蒸発乾固させる。
8.スズ(II)n−ヘキソキシドの残渣を高真空ポンプを用いてさらに3〜6時間乾燥させる。
9.スズ(II)n−ヘキソキシド6.97gが粘性がある黄褐色の液体として得られた。収率86.73%。
【0032】
例4:液状スズ(II)n−オクトキシド(Sn(O−n−C
8H
17)
2)の調製:
1.三つ口丸底フラスコに電磁式撹拌棒、オーブン乾燥ガス入口及び滴下漏斗を取り付ける。これを電磁式撹拌機の上に置く。ガス入口に体積測定制御式窒素又はアルゴン源をプラスチックチューブによって連結する。
2.無水塩化スズ(II)4.84g(25.01ミリモル)を前記反応フラスコに加える。
3.乾燥n−ヘプタン(約100mL)を25〜38℃の温度範囲において反応容器中に加える。この混合物を30〜60分間よく撹拌する。
4.次いで乾燥ジエチルアミン(5.43mL、52.53ミリモル)を15〜20℃の温度範囲において反応容器中に加える。この反応混合物を3〜6時間撹拌する。
5.乾燥n−ヘプタン(約50mL)中の乾燥n−オクタノール8.27mL(52.53ミリモル)の溶液を25〜38℃の温度範囲において反応混合物に加える。得られた溶液をさらに12時間撹拌する。
6.この反応混合物を窒素又はアルゴン下で濾過し、固体状残渣を乾燥n−ヘプタン(100〜200mL)で充分洗浄する。
7.濾液を回転式蒸発器中で濃縮し、蒸発乾固させる。
8.スズ(II)n−オクトキシドの残渣を高真空ポンプを用いてさらに3〜6時間乾燥させる。
9.スズ(II)n−オクトキシド7.00gが粘性がある黄褐色の液体として得られた。収率74.18%。
【0033】
液状スズ(II)アルコキシドの合成からの生成物、それらの分子式、物理的外観、収率及び溶解性を
図1及び表4〜5にまとめる。
【0034】
【表4】
【0035】
【表5】
【0036】
本発明において報告されたように合成された液状スズ(II)アルコキシドのIR特徴データを、固体状スズ(II)アルコキシドのものと比較して、
図2及び表6に示す。
【0037】
【表6】
【0038】
GC−MS及びLC−MS技術によって分析した液状スズ(II)アルコキシドの分子量を表7に示す。
【0039】
【表7】
【0040】
1H−NMR特徴データを
図3及び表8に示し、
13C−NMR特徴データを
図4及び表9に示す。
【表8】
【表9】
【0041】
結論として、液状のスズ(II)n−ブトキシド、スズ(II)n−ヘキソキシド及びスズ(II)n−オクトキシドを製造するための合成方法は、次の重要な工程によって満足できる程度に達成することができる:
1)SnCl
2・HNEt
2の高収率での生成における塩基又はリガンドとしての働きをするのに充分な、無水塩化スズ(II)の2乃至3モル当量のジエチルアミン、及び
2)メタノール及びエタノール等のアルコールの代わりのn−ヘプタン等の非極性非プロトン性溶媒の使用。
n−ヘプタンの分子は、スズ(II)アルコキシドを溶媒和させることができ、それによって反応の間のその自己凝集を防止する。非極性非プロトン性溶媒系を用いる別の重要な利点は、可溶性のスズ(II)アルコキシドからのEt
2NH・HCl副生成物の沈殿及び分離を促進するということである。従って、触媒又は開始剤として使用する前のスズ(II)アルコキシドのさらなる精製は必要ない。最後に、
3)無水塩化スズ(II)の約2〜3モル当量の適量のアルコールの使用は、スズ(II)アルコキシドと橋架けアルコールとの間の凝集を減少させる。この方法から製造されたスズ(II)アルコキシドは、粘性がある黄褐色の液体であり、室温において通常の有機溶媒中に可溶であり、反応性が有意に変化することなく窒素又はアルゴン下で長時間貯蔵することができる。さらに、本方法からの生成物は、余分な精製なしで触媒又は開始剤として用いることができ、ニート(生)で又は溶液の形で用いることができる。