特許第6246230号(P6246230)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6246230インプリントポリマーおよびその製造方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6246230
(24)【登録日】2017年11月24日
(45)【発行日】2017年12月13日
(54)【発明の名称】インプリントポリマーおよびその製造方法
(51)【国際特許分類】
   C08F 2/44 20060101AFI20171204BHJP
   C08F 230/04 20060101ALI20171204BHJP
【FI】
   C08F2/44 B
   C08F230/04
【請求項の数】22
【全頁数】26
(21)【出願番号】特願2015-548869(P2015-548869)
(86)(22)【出願日】2013年12月20日
(65)【公表番号】特表2016-501958(P2016-501958A)
(43)【公表日】2016年1月21日
(86)【国際出願番号】IB2013061196
(87)【国際公開番号】WO2014097248
(87)【国際公開日】20140626
【審査請求日】2016年9月23日
(31)【優先権主張番号】1262617
(32)【優先日】2012年12月21日
(33)【優先権主張国】FR
(73)【特許権者】
【識別番号】515166945
【氏名又は名称】ユニベールシテ ドゥ トゥーロン
(74)【代理人】
【識別番号】110000659
【氏名又は名称】特許業務法人広江アソシエイツ特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】ブランジェ,キャサリン
(72)【発明者】
【氏名】ブリセ,ヒューグ
(72)【発明者】
【氏名】ウドムサップ,ダッダン
【審査官】 岡▲崎▼ 忠
(56)【参考文献】
【文献】 特表2007−520715(JP,A)
【文献】 特表2007−510155(JP,A)
【文献】 特開2010−275403(JP,A)
【文献】 特表2007−532715(JP,A)
【文献】 国際公開第2005/108443(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08F 2/00−2/60
230/00−230/10
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
標的(インプリント実体)の存在下で少なくとも1つの架橋剤と少なくとも1つのモノマーを重合することによって得られ、前記標的の形状を有する少なくとも1つの空洞をその構造内に呈する非導電性インプリントポリマーであって、
重合可能な形態または重合可能でない形態のいずれかで提供される少なくとも1つのレドックスプローブをその構造内に含み、
前記インプリントポリマーは、該ポリマーの構造内に存在する前記レドックスプローブからなる伝達物質を含み、レドックスプローブ以外の他の伝達手段を含まない、非導電性インプリントポリマー。
【請求項2】
前記レドックスプローブが少なくとも1つの重合可能部位を呈し、この場合のモノマーが前記レドックスプローブである、請求項1に記載のインプリントポリマー。
【請求項3】
前記モノマーが、重合可能部位を有するフェロセン型の少なくとも1つの官能基を担持するレドックスモノマーである、請求項2に記載のインプリントポリマー。
【請求項4】
前記レドックスモノマーがビニルフェロセンである、請求項3に記載のインプリントポリマー。
【請求項5】
前記レドックスプローブが、少なくとも2つの重合可能部位を呈し、かつ、架橋剤として作用する、請求項1に記載のインプリントポリマー。
【請求項6】
前記架橋剤が、二官能基、三官能基または四官能基から選択される(メタ)アクリル酸モノマー、ビニルモノマー、スチレンモノマーまたはアリルモノマーである、請求項5に記載のインプリントポリマー。
【請求項7】
前記レドックスプローブが、標的の形状を有する前記空洞に近接して位置している、請求項1〜6の一項に記載のインプリントポリマー。
【請求項8】
前記標的が分子またはイオンである、請求項1〜7のいずれか一項に記載のインプリントポリマー。
【請求項9】
前記標的が、多環芳香族炭化水素(PAH)、ステロイド、活性成分、殺虫剤、除草剤、界面活性剤、食用色素または生物活性分子から選択される分子である、請求項8に記載のインプリントポリマー。
【請求項10】
前記標的がイオンであり、前記ポリマーが重合可能な形態または重合可能でない形態のいずれかで提供される少なくとも1つのリガンドもその構造内に含むことができる、請求項8に記載のインプリントポリマー。
【請求項11】
前記レドックスプローブと標的の形状を有する前記空洞との最小距離が、前記レドックスプローブが前記標的と相互作用しかつ検出信号を発する距離である、請求項1〜10のいずれか一項に記載のインプリントポリマー。
【請求項12】
前記レドックスプローブが、標的の形状を有する前記空洞内に位置している、請求項11に記載のインプリントポリマー。
【請求項13】
請求項1〜12の一項に記載のインプリントポリマーの調製方法であって、
(i)標的と、重合可能な形態または重合可能でない形態のいずれかで提供されるレドックスプローブとの存在下で、架橋剤とモノマーを重合する工程と、
(ii)工程(i)の終わりに得られたポリマー内に存在する前記標的を除去する工程と
を含む方法。
【請求項14】
前記レドックスプローブが少なくとも1つの重合可能部位を呈し、この場合のモノマーがレドックスプローブである、請求項13に記載の方法。
【請求項15】
前記レドックスプローブが少なくとも2つの重合可能部位を呈し、この場合の架橋剤が前記レドックスプローブである、請求項13に記載の方法。
【請求項16】
前記工程(i)が蒸留−沈殿によって行われる、請求項13〜15のいずれか一項に記載の方法。
【請求項17】
標的の検出方法であって、
(i’)標的を含むサンプルを請求項1〜12のいずれか一項に記載のインプリントポリマーと接触させる工程と、
(ii’)該標的を検出する工程と
を少なくとも含む方法。
【請求項18】
前記検出工程(ii’)が、電気的測定または電気化学方法によって行われる、請求項17に記載の方法。
【請求項19】
請求項1〜12のいずれか一項に記載のインプリントポリマーの、センサとしての使用。
【請求項20】
請求項1〜12のいずれか一項に記載のインプリントポリマーの、(バイオ)センサまたは固相抽出支持体を製造するための活性インターフェースとしての使用。
【請求項21】
請求項1〜12のいずれか一項に記載のインプリントポリマーを少なくとも1つ包含する装置。
【請求項22】
前記装置が電気化学センサまたは抽出カラムである、請求項21に記載の装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、少なくとも1つの架橋剤と少なくとも1つのモノマーを重合することによって得られ、標的(target)の形状を有する少なくとも1つの空洞をその構造内に呈する非導電性インプリントポリマーに関する。本発明はまた、インプリントポリマー(imprinted polymer)の調製方法、このようなポリマーを使用する標的の検出方法、および電気化学センサを製造するための活性インターフェース(active interface)としてのこのようなポリマーの使用、又は、固相抽出支持体を製造するための活性インターフェースとしてのこのようなポリマーの使用にも関する。
【背景技術】
【0002】
微小汚染物質(micropollutant)は、所与の媒体において微量濃度で毒性作用を有することができる天然または人類起源の有機またはイオン性化学物質であるものと定義される。水中で、これらの汚染物質は非常に多岐にわたり、殺虫剤、ステロイド、多環芳香族炭化水素(polycyclic aromatic hydrocarbon,PAH)、活性成分、界面活性剤、化粧品、金属イオン、微小毒素(microtoxins)、細菌性毒素などが挙げられる。これらの汚染物質は、特に人間が消費することを目的とした水中での綿密なモニタリングの主題である(非特許文献1)。
【0003】
しかしながら、微量の微小汚染物質の分析は、問題が多いものであることが判明しつつあり、あらかじめ、事前処理を導入してから、蛍光、可視紫外分光法(UV−visible spectroscopy)もしくは質量分析法による検出と組み合わせた液体クロマトグラフィー、または質量分析法と組み合わせたガスクロマトグラフィーなどの検出技術を使用することが必要となる(非特許文献2)。しかしながら、これらの技術は非常に有効ではあるが、研究室でしか使用することができない。更に、それらは、時に非常に長い期間を必要とし、汚染事象中の迅速な介入の可能性を制限するという欠点を呈する。故に、これら毒物のリアルタイムでの現場(in situ)モニタリングには、小型化、速度、低費用および使いやすさを組み合わせたセンサの開発が必要とされる。
【0004】
異なる変換モードを有するセンサの主なカテゴリーは3つあり、光学センサ、圧電センサまたは電気化学センサが挙げられる。
−光学ソリューション(optical solution)は、概して非常に高感度であり、ノイズ/信号比(noise/signal ratio)が大きいために小型化するのが困難である(非特許文献3、4)。
−圧電手段は、液状媒体中で分析を行う場合に使用するには依然として問題が多い(非特許文献5)。
−電気化学センサは、それらに関する限り、ノイズ/信号比が小さいために感度の損失なく小型化が可能であるという利点を呈する。更に、製造コストが低い。しかしながら、複雑なマトリクスの場合、それらを分析し得るには、検体を認識するための特定部位を電気化学センサに導入してその検出および/または定量を向上させる必要があり、これに関連して、分子インプリント電気化学センサ(非特許文献6)およびイオンインプリント電気化学センサ(非特許文献7)が開発されている。
【0005】
プリントセンサ(printed sensor)の原理は、分子インプリントポリマー(molecularly imprinted polymer,MIP)またはイオンインプリントポリマー(ion imprinted polymer,IIP)の使用をベースとしている。
【0006】
インプリントポリマーは、標的分子または標的イオンの存在下で調製される三次元ポリマー網状体であり、架橋剤の存在下での標的(target)と機能性モノマーとの特異的な相互作用によりポリマー網状体がその周りに構築される。インプリント分子またはインプリントイオンの放出は、当該分子またはイオンに相補的な官能基を包含する空洞を生成する(図1)。従って、これらの物質は高い分子認識力またはイオン認識力を呈し、それらの活性は抗体型の生物学的受容体のそれを制限し(非特許文献8)、MIPまたはIIPは抗体よりも安定で、容易かつ安価に製造でき、使用前に非常に長期間保存することができる(非特許文献9)。
【0007】
分子またはイオンインプリント電気化学センサを調製するための2つの合成手段が想定される。
−第一手段では、架橋剤を含まない導電性ポリマー内にインプリントが生成される。導電性ポリマーは認識とトランスデューサ(transducer)の2つの役割を有しており、認識の現象は測定可能な電気信号に変換される。この手段は多数の利点、とりわけ、使用しやすさ、電界生成フィルムの厚さ制御および所与の表面上に検出系を精密に被着させる可能性、を呈する(非特許文献10)。にもかかわらず、それらの使用には電気化学的測定の適用が含まれ、その結果として、例えば、導電性ポリマー内での対イオンの進入/退去が起こり得る。特にポリマー網状体が架橋していない結果として、これらの測定は、インプリントに、そして最終的には、標的を特異的に追跡するセンサの能力に、有害な影響を及ぼす。
−第二手段では、MIPおよびトランスデューサは別個の要素である。この手段は、導電性ポリマーであり得る導電相(非特許文献11)または炭素ペーストをベースとする電極(非特許文献12)内に、事前に調製および架橋されたMIPまたはIIP粒子を配合することからなる。この場合、インプリントを変性させる危険性は低下するが、標的を追跡したMIPまたはIIPと、電極の導電相との間の情報の伝達がより困難になるという不利な点がある。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0008】
【非特許文献1】Directive 98/83/CE of the Council of 3 November 1998,Official Journal of the European Communities
【非特許文献2】P.Plaza−Bolanos et al.,Analytical methods and trends,J.Chrom.A.,1217(2010),6303−6326
【非特許文献3】X.−A.Ton et al.,Biosens.Bioelec.,36(2012),22−28
【非特許文献4】P.Turkewitsch et al.,Anal.Chem.,1998,70,2025−2030
【非特許文献5】C.−Y.Lin et al.,Chem.Eur.J.,2003,9,5107−5110
【非特許文献6】V.Suryanarayanan et al.,Electroanal.,22(2010),1795−1811
【非特許文献7】T.Prasada Rao et al.,Anal.Chim.Acta,578(2006),105−116
【非特許文献8】K.Haupt et al.,Chem.Rev.,100 (2000),2495−2504
【非特許文献9】V.Pichon,J.Chrom.A.,1152(2007),41−53
【非特許文献10】T.L.Panasyuk et al.,Anal.Chem.,71(1999),4609−4613
【非特許文献11】K.Ho et al.,Anal.Chim.Acta,542(2005),90−96
【非特許文献12】N.Kirsch et al.,Analyst.,126(2001),1936−1941
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
従って、この最新技術に関してまだ解決されていない技術的課題は、認識現象を測定可能な電気信号または電気化学信号として効果的に伝達することを可能にする架橋インプリントポリマーを開発することからなる。
【0010】
本発明の技術的課題は、より特定的には、更なる伝達手段(電気化学、蛍光など)を使用する必要なく、認識現象を測定可能な電気信号または電気化学信号として直接伝達することにより標的を直接検出することを可能にすることによって、インプリントセンサの役割を満たすインプリントポリマーを開発することにある。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明者らが提供する解決手段は、信号伝達手段としてレドックスプローブ(redox probe)をその構造内に包含する新規なインプリントポリマーであり、本発明者らは、認識部位に近いレドックスプローブの存在がその検出感度を著しく改善することを観察した。本発明者らによって開発されたインプリントポリマーはまた、高い安定性と使用前の長い保存期間を呈する。更に、このポリマーは、経済的に有利なプロセスにより簡便に製造可能である。
【0012】
本発明のインプリントポリマーはまた、標的が必ずしもレドックス特性を示さずとも、あらゆるタイプの標的と共に使用可能であるという利点を呈し、標的の検出はレドックスプローブを介して行われる。
【0013】
よって、本発明は、標的の存在下で少なくとも1つの架橋剤と少なくとも1つのモノマーを重合することによって得られる非導電性インプリントポリマーであって、前記標的の形状を有する少なくとも1つの空洞をその構造内に呈し、かつ、重合可能な形態または重合可能でない形態のいずれかで提供される少なくとも1つのレドックスプローブをその構造内に含む、非導電性インプリントポリマーに関する。
【0014】
本発明の意味において、レドックスプローブは、酸化および/または還元可能な化合物を意味するものと理解される。
【0015】
好ましくは、レドックスプローブは、標的の形状を有する空洞に近接して位置している。「近接」は、レドックスプローブが、標的と相互作用して検出信号の形態で電気化学的応答を提供することができる最小距離を意味する。電気化学的応答を得ることにより、レドックスプローブを、標的の形状を有する空洞に近接してまたはその近辺にあるものとみなすことができる。換言すると、レドックスプローブは、本発明のインプリントポリマー内に位置しているので、標的と相互作用して検出信号の形態で電気化学的応答を提供することができる。有利には、レドックスプローブは、標的の形状を有する空洞内に位置し、この空洞の一部を形成する。
【0016】
有利な実施形態によれば、本発明のインプリントポリマーは、ポリマー構造内に存在するレドックスプローブ以外の伝達手段(電気化学、蛍光など)を含まない。
【0017】
本発明の意味において、標的は、空洞(インプリント)を形成するのに使用でき、かつ、後にこの空洞と特定の方法で相互作用し得る実体を意味するものと理解され、この標的は分子またはイオンのいずれかであることができる。よって、空洞は標的のための認識部位として作用する。よって、この空洞は、形状および/または官能性の点で標的と相補的である。従って、本発明のインプリントポリマーは、分子インプリントポリマー(MIP)またはイオンインプリントポリマー(IIP)のいずれかであり得る。
【0018】
標的が分子である場合、この分子は、多環芳香族炭化水素(PAH)、ステロイド、活性成分、殺虫剤、除草剤、界面活性剤、食用色素(カロテノイド、リボフラビン、タルトラジンまたはアマランスなど)、染料(アゾ染料、ポリメチン染料またはフタロシアニンなど)または生物活性分子(ポリペプチド、タンパク質、酵素、ホルモンまたはサイトカインなど)から選択することができる。
【0019】
標的がPAHである場合、前記PAHは、アセナフテン、アセナフチレン、アントラセン、ベンズ[a]アントラセン、ベンゾ[a]ピレン、ベンゾ[e]ピレン、ベンゾ[b]フルオランテン、ベンゾ[e]ピレン、ベンゾ[g,h,i]ピレン、ベンゾ[j]フルオランテン、ベンゾ[f]フルオランテン、ベンゾ[k]フルオランテン、クリセン、コロネン、コランヌレン(corannulene)、シクロペンタ[c,d]ピレン、ジベンゾ[a,e]ピレン、ジベンズ[a,c]アントラセン、ジベンズ[a,h]アントラセン、ジベンゾ[a,h]ピレン、ジベンゾ[a,i]ピレン、ジベンゾ[a,l]ピレン、フルオランテン、フルオレン、インデノ[1,2,3−cd]ピレン、オバレン、ペンタセン、ペリレン、フェナントレン、ピレン、テトラセン、トリフェニレンまたはゼトレンであり得る。
【0020】
標的が殺虫剤である場合、前記殺虫剤は、ダニ駆除剤、殺菌剤、殺鳥剤(corvicide)もしくはカラス忌避剤、防カビ剤、防虫剤、軟体動物駆除剤、殺線虫剤、殺寄生虫剤、殺鼠剤、または殺モグラ剤であり得る。
【0021】
標的が除草剤である場合、前記除草剤は、シアン化カルシウム(Ca(CN))、硫化鉄(FeSO)もしくは塩素酸カルシウム(NaClO)から選択される無機除草剤、またはグリホセート、ジニトロアニリン(トルイジン、ベンフルラリン、ブトラリン、フルクロラリン、ニトラリン、オリザリン、ペンジメタリン、トリフルラリン)、置換尿素(クロロトルロン(chlorotoluron)、クロロクスロン、シクルロン、ジウロン、エチジムロン、フェヌロン、イソプロチュロン、リヌロン、モノリヌロン、メタベンズチアズロン、メトブロムロン、メトクスロン、モヌロン、チアザフルロン、テブチウロン、チアザフルロン、シデュロン、ネブロン)、トリアジン(アトラジン、シアナジン、メトプロトリン(methoprotryne)、プロパジン、ターブチラジン、シマジン、シメトリン(simetryn)、セクブメトン、ターブメトン、アメトリン、デスメトリン、プロメトリン、ターブトリン)、イミダゾリノン(イマザメタベンズ、イマザピル)、スルホニル尿素(アミドスルフロン、アジムスルフロン、クロルスルフロンなど)、ジフェニルエーテル(アシフルオルフェン−ナトリウム、アクロニフェン、ビフェノックス、ボロモフェンオキシム、クロメトキシフェン、ジクロホップ−メチル、フルオロジフェン、ホメサフェン、ラクトフェン、ニトロフェン、オキシフルオルフェン)、合成植物ホルモン(2,4−D、2,4−MCPA、トリクロピル、ジクロルプロップ、MCPP(メコプロップ)、2,3,6−TBA(2,3,6−トリクロロ安息香酸)、ジカンバ、ピクロラム、クロピラリド、フルレノ−ル)、ニトロ染料(DNBP(ジノセブ)、DNOC(ジニトロ−オルト−クレゾール)、ジノターブ)、PCP(ペンタクロロフェノール)、カルバメート(アシュラム、バルバン、クロルブファム、クロルプロファム、プロファム、カルベタミド)、チオカルバメート(ブチレート、シクロエート、ジ−アレート(di−allate)、トリアレート(tri−allate)、S−エチル−N,N−ジプロピルチオカルバメート、モリネート(molinate)、プロスルホカルブ、ベルノレート(vernolate)、ペブレート(pebulate)、チオベンカルブ(thiobencarb))、ジチオカルバメート(ナトリウムメチルアミノメタンジチオエート、ナバム)、ビスカルバメート(デスメジファム、フェンメジファム、カルブチラート)、四級アンモニウム(ジコート(diquat)、パラコート、ジフェンゾコート)、ホップ/ジム(fop/dim)およびピノキサデン(アロキシジムナトリウム、クロジナホップ−プロパルギル(clodinafop−propargyl))から選択される有機除草剤であり得る。
【0022】
レドックスプローブが重合可能でない形態で提供される場合、レドックスプローブは、重合に関与することなく、出発混合物中に配合され得る。「捕捉(trapping)」について言及すると、この場合のレドックスプローブは、ポリマー網状体に共有結合していない。
【0023】
レドックスプローブが重合可能な形態で提供される場合、レドックスプローブは少なくとも1つの重合可能部位を有し、本発明のモノマーはレドックスプローブであり得る。その場合、レドックスモノマー(レドックスプローブ)は三次元網状体の実際の構成に関与するモノマーの形態で導入される(図2)。
【0024】
レドックス系が2つ以上の重合可能部位を呈する場合、架橋剤はレドックスプローブであり得る。その際、レドックスプローブは三次元網状体の実際の構成に関与するモノマーの形態で導入される(図2)。
【0025】
その際、レドックスプローブは、
0個の重合部位を有する場合、重合可能でない形態で存在し、
1つの重合部位を有する場合、重合可能な形態で存在し、モノマーとして作用し、または、
少なくとも2つの重合部位を有する場合、重合可能な形態で存在し、架橋剤として作用する、
化学的実体であり得る。
【0026】
レドックスプローブは、例えば、メタロセン(フェロセン、ルテノセンもしくはコバルトセン)、テトラチアフルバレンおよびその誘導体、またはアントラキノンおよびその誘導体から選択可能である。有利には、レドックスプローブは、例えば、メタロセン(フェロセンおよびコバルトセン)、またはテトラチアフルバレンおよびその誘導体から選択可能である。
【0027】
有利な実施形態によれば、レドックスプローブは、好ましくは、三次元網状体の実際の構成に関与するレドックスモノマーである。前記レドックスモノマーは、好ましくは、重合可能部位を有するフェロセン型の少なくとも1つの官能基を担持するレドックスモノマーであり、前記重合可能部位は、好ましくはビニル、(メタ)アクリル酸またはアリル部位から選択される。本発明の重合可能部位は、有利にはビニルフェロセン(VFc)である。
【0028】
架橋剤は、好ましくは二(di)官能基、三(tri)官能基または四(tetra)官能基から選択される(メタ)アクリル酸、ビニル、スチレンまたはアリルモノマーであるのが有利である。本発明の好ましい実施形態によれば、架橋剤は、アルキルジ−(alkyl di−)、トリ(tri−)またはテトラ(tetra−)(メタ)アクリレート、アリルジ−、トリまたはテトラ(メタ)アクリレート、アリールジ−、トリまたはテトラ(メタ)アクリレート、アルキレングリコールジ−、トリまたはテトラ(メタ)アクリレート、およびより好ましくは、エチレングリコールジ(メタ)アクリレート(ED(M)A)、テトラメチレンジ(メタ)アクリレート、ビスフェノールAジ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、ペンタエリトリトールトリアクリレート(PETRA)およびテトラアクリレート、テトラエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、トリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、3−(アクリロイルオキシ)−2−ヒドロキシプロピルメタクリレート、ジアリルジグリコールジカーボネート、ジアリルマレエート、ジアリルフマレート、ジアリルイタコネート、ジアリルスクシネート、ジアリルフタレート、トリアリルイソシアヌレート、トリアリルメラミン、ジビニルベンゼン、ジビニルオキサレート、ジビニルマロネート、ジビニルエーテル、ジビニルスルホン、N,N’−メチレンビスアクリルアミド(MBA)およびそれらの混合物である。
【0029】
本発明の意味において、
−アルキルは、少なくとも1つの炭素原子、好ましくは1〜30の炭素原子を有する飽和した直鎖または分岐鎖脂肪族炭化水素基を意味するものと理解される。有利には、用語「アルキル」は、1〜12の炭素原子、好ましくは1〜6の炭素原子を有する直鎖または分岐鎖脂肪族炭化水素基を示す。用語「分岐鎖」は、少なくとも1つの低級アルキル基、例えばメチルまたはエチルが線状アルキル鎖によって担持されることを意味する。アルキル基として、メチル、エチル、n−プロピル、イソプロピル、n−ブチル、t−ブチルおよびn−ペンチル基などが挙げられる。
−アリールは、少なくとも1つの芳香環に由来する官能基または置換基を意味するものと理解される。芳香環は、非局在化π系を含む平坦な単環または多環基に相当し、ここで当該環の各原子はp軌道を含み、p軌道は互いに重なり合っている。
【0030】
標的がイオンである場合、前記イオンは、好ましくは以下の元素のうちの1つのイオンであり、Ni(ニッケル)、Pb(鉛)、Cu(銅)、Cd(カドミウム)、Co(コバルト)、Zn(亜鉛)、Fe(鉄)、Ag(銀)、Hg(水銀)、As(ヒ素)、Pd(パラジウム)、Mn(マンガン)、Rh(ロジウム)、Al(アルミニウム)、Sm(サマリウム)、Zr(ジルコニウム)、Th(トリウム)、Nd(ネオジム)、Eu(ユウロピウム)、Dy(ジスプロシウム)、Cr(クロム)、I(ヨウ素)、Yt(イットリウム)、Tl(タリウム)またはPt(白金)が挙げられる。
【0031】
標的がイオンである場合、本発明のインプリントポリマーは、重合可能な形態または重合可能でない形態のいずれかで提供される少なくとも1つのリガンドもその構造内に含むことができる。
【0032】
リガンドが重合可能でない形態で提供される場合、以下の化合物から選択可能であり、4−ビニルピリジン、2−ビニルピリジン、1−ビニルイミダゾール、アクリルアミド、(メタ)クリル酸、2−ヒドロキシエチルメタクリレート、N−イソプロピルアクリルアミド、2−(ジエチルアミノ)メチルメタクリレート、スチレン、1,4−ジヒドロキシアントラキノン、ジチゾン、ジメチルグリオキシム、5−ドデシルサリチルアルドキシム、8−ヒドロキシキノリン、8−アミノキノリン、8−メルカプトキノリン、アセチルアセトン、アセトアルデヒドチオセミカルバゾン、ベンズアルデヒドチオセミカルバゾン、バニリンベンジジン、1,5−ジフェニルカルバゾン、アンモニウムピロリジンジチオカルバメート、N,N’−ジエチルチオ尿素、5,7−ジクロロキノリン−8−オール、4−(2−ピリジルアゾ)レゾルシノール、4−(2−チアゾリルアゾ)レゾルシノール、1−(2−ピラジルアゾ)−2−ナフトール、1−(2−チアゾリルアゾ)−2−ナフトール、サレン、8−ヒドロキシキノリン−5−スルホン酸、ピロリジン−1−ジチオカルボン酸、1−(2−チアゾリルアゾ)−2−ナフトール、3,4−ジヒドロキシ−9,10−ジオキソ−2−アントラセンスルホン酸(アリザリンレッドS)のナトリウム塩、2−エチルヘキシルベンズイミダゾリルスルフィド、オクチルベンゾチアゾリルスルフィド、ヂアゾアミノベンゼン、キナルジン酸、6−[(ヒドロキシアミノ)メチリデン]シクロヘキサ−2,4−ジエン−1−オン(サリチルアルドキシム)、5−(4−カルボキシフェニルアゾ)−8−ヒドロキシキノリン、ホルムアミドオキシムまたはネオクプロインが挙げられる。
【0033】
リガンドが重合可能な形態で提供される場合、以下の化合物から選択可能であり、N−(4−ビニルベンジル)イミノ二酢酸、1−ヒドロキシ−4−(プロップ−2’−エニロキシ)−9.10−アントラキノン、1−ヒドロキシ−2−(プロップ−2’−エニル)−9,10−アントラキノン、5−ビニル−8−ヒドロキシキノリン、N−(6,7,9,10,12,13,15,16−オクタヒドロ−5,8,11,14,17−ペンタオキサベンゾシクロペンタデセン−2−イル)アクリルアミド(ベンゾ−15−クラウン−5−アクリルアミド)、4−[(E)−2−(4’−メチル−2,2’−ビピリジン−4−イル)ビニル]フェニルメタクリレート、4−ビニルフェニルアゾ−2−ナフトール、N−メタクリロイル−L−ヒスチジン、N−メタクリロイル−L−システイン、N−メタクリロイル−L−システインメチルエステル、N−メタクリロイル−(L)−グルタミン酸、N−メタクリロイル−2−メルカプトエチルアミン、6−(4−ビニルフェニルカルバモイル)ピリジン−2−カルボン酸、ピリジン−2,6−ジカルボン酸ビス(4−ビニルフェニル)アミド、サレンまたは(4−エテニルフェニル)−4−ホルメート−6−フェニル−2,2’−ビピリジンが挙げられる。
【0034】
好ましい実施形態によれば、本発明のインプリントポリマーは、0.6μmから6μmまでの間で様々であり得るサイズの架橋微粒子の形態で提供される。
【0035】
本発明の別の主題は、インプリントポリマーの調製方法であって、
(i)標的および重合可能な形態または重合可能でない形態のいずれかで提供されるレドックスプローブの存在下で架橋剤とモノマーを重合する工程であって、前記レドックスプローブが重合可能な形態で存在するときには前記モノマーが前記レドックスプローブであることができ、レドックスプローブが2つ以上の重合可能部位を呈するときには前記架橋剤が前記レドックスプローブであることができる、工程と、
(ii)工程(i)の終わりに得られたポリマー内に存在する該標的を除去する工程と
を含む方法である。
【0036】
有利な実施形態によれば、重合工程は、ラジカル重合、重縮合またはゾルーゲル手段によって行われる。重合工程はまた、イオン重合によって行われる。次のような重合技術、バルク、懸濁、分散、乳化および沈殿重合を使用することができる。好ましくは、溶媒の蒸留が重合反応と同時に生じる蒸留−沈殿重合を使用することができる。
【0037】
蒸留−沈殿重合の場合、工程(i)は、アセトニトリル、トルエン、アセトン、エタノール、メタノール、n−ヘキサン、テトラヒドロフラン、酢酸エチル、エチルメチル、シクロヘキサン、2−メトキシエタノール、ジメチルスルホキシド、N,N’−ジメチルホルムアミド、クロロホルム、1,2−ジクロロエタン、ジクロロメタン、シクロヘキサノール、ベンジルアルコールまたは酢酸エチルから選択される溶媒中で行われる。
【0038】
溶媒は、ポリマー粒子のサイズおよびそれらの多孔率を調整することを可能にする。好ましい実施形態によれば、本発明の溶媒は、極性溶媒または極性溶媒/非極性溶媒混合物(95/5〜70/30の比)である。好ましくは、本発明の溶媒は、アセトニトリルまたはアセトニトリル/トルエン混合物(任意には95/5〜80/20の割合であり、好ましくは80/20の比である)である。
【0039】
有利には、工程(i)は、反応媒体を60℃〜100℃の第一温度で加熱し、次いで、好ましくは100℃〜150℃の温度でそれを還流に付して蒸留を行うことによる蒸留−沈殿重合によって行われる。
【0040】
重合段階は、熱またはUVラジカル開始剤の存在下で行うことができる。熱またはUV開始剤の例としては、アゾビスイソブチロニトリル(AIBN)、ベンゾイルペルオキシド、アセチルペルオキシド、ラウロイルペルオキシド、アゾビスイソブチロニトリル、t−ブチルペルアセテート、クミルペルオキシド、t−ブチルペルオキシド、t−ブチルヒドロペルオキシド、2,2−ジメトキシ−2−フェニルアセトフェノン、フェノチアジン、1,1’−アゾビス(シクロヘキサンカーボニトリル)、2,2’−アゾビス(2−メチルプロピオンアミジン)ジヒドロクロリド、2,2’−(2−メチルプロピオニトリル)、過硫酸カリウムまたはH/TEMED(N,N,N’,N’−テトラメチレンジアミン)混合物および好ましくはアゾビスイソブチロニトリル(AIBN)が挙げられる。
【0041】
有利な実施形態によれば、標的を除去する工程(ii)は、ジクロロメタン、アセトン、イソプロパノール、メタノール、N,N−ジメチルホルムアミド、ジメチルスルホキシド、N−メチルピロリドン、クロロホルム、トルエン、エタノール、2−メトキシエタノール、1,2−ジクロロエタン、酢酸エチル、ジエチルエーテル、EDTA(エチレンジアミン四酢酸)を含む酸性溶液(HCl、HSO、HNO)または塩基性溶液(NaOH、KOH)、またはそれらの混合物から選択される洗浄溶液を用いて、工程(i)の終わりに得られたポリマーを洗浄することによって行われる。洗浄は、1〜48時間、好ましくは24時間の期間行うことができ、2〜4回、好ましくは3回反復することができる。
【0042】
好ましくは、工程(ii)は、撹拌しながら行われる。
【0043】
標的の検出方法は、本発明の一部を形成し、
(i’)標的を含むサンプルを本発明に従って規定されるようなインプリントポリマーと接触させる工程と、
(ii’)好ましくは電気的測定(導電性、インピーダンス)によってまたは電気化学的方法(クロノポテンショメトリ(chronopotentiometry)、クロノアンペロメトリもしくはボルタンメトリ(voltammetry))によって、該標的を検出する工程と
を少なくとも含む。
【0044】
インプリントポリマーの構造内に存在する空洞は、標的のためのハウジングとして機能し、より一般的には(標的の)認識部位と称され、レドックスプローブは、標的と相互作用して検出信号の形態で電気化学的応答を提供することができるように配置される。レドックスプローブは、典型的には、前記空洞に近接して、またはその内部に位置し、それにより標的の検出を可能にする。
【0045】
本発明のインプリントポリマーは、(生物)医学、食品加工および環境分野における検出、固相抽出、分子、精製および分子やイオンの放出制御に用途を有する。
【0046】
本発明のインプリントポリマーは、特に、
センサとして、好ましくはインプリントセンサとして、より具体的には分子および/またはイオンの検出分野におけるセンサ内の認識領域として、
(バイオ)センサを製造するための活性インターフェースとして、
分子およびイオンの固相抽出用カラムを製造するための固相抽出支持体として、
クロマトグラフィーのために、
疑似免疫測定(pseudo−immunoassay)のために、
人工抗体を製造するために、
エナンチオマーを分離するために、
有機合成のために、
触媒作用のために、
使用可能である。
【0047】
特に好ましい実施形態によれば、本発明のインプリントポリマーは、センサとして、およびより具体的にはセンサ内の認識領域として使用される。その際、使用される用語は、インプリントセンサである。
【0048】
別の主題は、本発明に従って規定されるような少なくとも1つのインプリントポリマーを包含する装置であって、電気化学的(バイオ)センサまたは抽出カラムである装置である。
【0049】
先の規定に加え、本発明はまた、本発明のインプリントポリマーを製造するための方法の非限定例について、このようなポリマーの評価について、および添付の図面について言及する以下の詳細な説明から生じる他の規定も含む。
【図面の簡単な説明】
【0050】
図1】MIPを調製するための原理の概略図である。
図2】MIP内へのレドックスプローブの導入を示す。
図3】ポリEDMA、フェロセン、MIP6およびNIP6のFTIRスペクトルを示す。
図4】MIP5およびNIP5ポリマー粒子のSEM画像を示す。
図5】MIP6およびNIP6ポリマー粒子のSEM画像を示す。
図6】トルエン中での、本発明のMIP5ポリマーおよび対応する非インプリントポリマーNIP5の吸着等温線を示す。
図7】水/アセトニトリル(99/1、v/v)混合物中での、本発明のMIP5ポリマーおよび対応するNIP5ポリマーの吸着等温線を示す。
図8】BaP標的添加前後に、NIP5ポリマーを用いた示差パルスボルタンメトリ(DPV)において観察された信号を示す。
図9】BaP標的添加前後に、MIP5ポリマーを用いた示差パルスボルタンメトリ(DPV)において観察された信号を示す。
図10】MIP6ポリマーへのBaPの吸着動態を時間の関数として示す。
図11】様々なポリマーの吸着能力(Q)をBaP溶液の初期濃度の関数として示す。
図12】接触から4時間後の、BaPの不在下(上の曲線)および存在下(下の曲線)でのNIP6のSWVボルタモグラムを示す。
図13】接触から4時間後の、BaPの不在下(上の曲線)および存在下(底部曲線)でのMIP6のSWVボルタモグラムを示す。
【発明を実施するための形態】
【0051】
液状媒体中での、多環芳香族炭化水素(PAH)、ベンゾ[a]ピレン(BaP)のファミリーから選択される標的の検出に関する応用例に関連して、本発明を以下に説明する。しかしながら、本発明は、レドックスプローブが標的と反応して検出信号を与え得るものであれば、標的(分子またはイオン)の性質および/または媒体の性質がいかなるものであっても、より一般的に適用される。
【0052】
[I. インプリントポリマーの調製]
本発明の分子インプリントポリマー(MIP)は、多環芳香族炭化水素(PAH)、ベンゾ[a]ピレン(BaP)のファミリーから選択される標的の存在下、ビニルフェロセン(VFc)(レドックスモノマー)とエチレングリコールジメタクリレート(EDMA)(架橋剤)から調製される(スキーム1)。
【0053】
[スキーム1:本発明のインプリントポリマーの合成]
【化1】
【0054】
[I−1. インプリントポリマーの合成方法]
本発明のインプリントポリマーは、蒸留−沈殿重合によって調製される(F.Bai et al.,Macromolecules,2004,Vol.37,9746−9752)。
【0055】
装置は、100mL丸底フラスコ、ディーン・スターク装置(合成用に使用する溶媒と同じものまたは溶媒混合物を充填)および還流冷却器からなる。ビニルフェロセン(VFc)、エチレングリコールジメタクリレート(EDMA)、および、標的であるベンゾ[a]ピレン(BaP)を、マグネティックスターラを備えた丸底フラスコに導入する。
【0056】
その後、溶媒を添加し(異なる溶媒混合物を試験した。表1参照)、丸底フラスコを超音波に供して固体を溶解する。
【0057】
100μLの溶液を可視紫外分光分析(UV−visible spectroscopy analysis)のために取り出す(導入された正確な量を定量)。溶液を10分間ガス抜きする。
【0058】
開始剤アゾビスイソブチロニトリル(AIBN)を溶液に加え、次いで溶媒を5分間ガス抜きする。
【0059】
100rpmの速度で撹拌を一定に保ちつつ、溶液を80℃の温度で30分間加熱し、次いで、温度をおよそ115℃まで上げる。蒸留をこの温度で30分間行い、ディーン・スターク装置を空にし、合成溶媒の容量の半分に等しい量を留去する。
【0060】
【表1】

【0061】
その後、本発明のインプリントポリマーを洗浄して、重合中にインプリント調製に使用した標的を取り除く。
【0062】
BaP標的の放出は、10mLのジクロロメタンとポリマーを撹拌しながら24時間接触させることによって行う。この操作を3回反復(24時間を3サイクル)すると、効率は93%である。
【0063】
並行して、非インプリントポリマー(NIP)を、標的の存在を除き本発明のMIPと同条件下で調製した。結果として、これらのポリマーは標的の形状を有する空洞を有していない。
【0064】
[I−2. インプリントポリマーの特性決定]
[(1). 赤外線分析]
分子インプリントポリマーMIP6および非インプリントポリマーNIP6を赤外線(Nexus−ThermoNicolet装置)で特性決定する。サンプルをKBrペレットの形態で調製する。MIP6およびNIP6のFTIRスペクトルをポリEDMAおよびフェロセンのFTIRスペクトルと比較することにより、EDMAをベースとするポリマーマトリクス中にVFcレドックスプローブが正しく配合されたことを実証することができる。EDMAおよびフェロセンのピーク特性はMIP6およびNIP6の両方にみられる(図3)。
【0065】
[(2). 走査電子顕微鏡法(SEM)による分析]
MIP5/NIP5およびMIP6/NIP6ポリマーの粒子を走査電子顕微鏡法(SEM)(Gemini(登録商標)Supra 40VP装置)によって観察する。図4は、左側にMIP5ポリマー粒子(平均サイズ:2.45μm;変動係数:25%)を、右側にNIP5ポリマー粒子(平均サイズ:1.7μm;変動係数:39%)を示す。図5は、左側にMIP6ポリマー粒子(平均サイズ:1.5μm;変動係数:26%)を、右側にNIP6ポリマー粒子(平均サイズ:1.8μm;変動係数:45%)を示す。変動係数(CV)は、粒子サイズ分布に関する情報を与えるものであり、
すなわち、
CV(%)=(標準偏差×100)/平均サイズ(100個を超える粒子)
である。
【0066】
MIPポリマー粒子の方がNIPポリマーよりもより球状かつ均質である。よって、BaP標的は、媒体の溶解度パラメータに作用することによってポリマー鎖の沈殿を促進する。非極性溶媒(トルエン)の量の増加もまた、粒子表面の形態を改変する。
【0067】
[II. インプリントポリマーの特性評価]
[II−1. MIPの吸着特性:吸着等温線]
原理:
インプリントポリマーの標的分子(BaP)に関する吸着能力は、吸着等温線によって評価される。この方法は、既知量のポリマーを、標的分子を含む溶液と接触させ、ポリマーにより吸着される量を測定することからなる。吸着能力(結合能力、Qと表す)は、ポリマーにより吸着される標的分子の最大量(標的のmg(ミリグラム)/ポリマー樹脂のg(グラム)、または標的のμ(マイクロ)mol(モル)/ポリマー樹脂のg(グラム)で表す)である。この値は、インプリント効果を決定するべく非インプリントポリマーに関して得られる値と比較されるものである。
【0068】
インプリント係数(imprint factor)は、非インプリントポリマーの最大吸着能力に対するインプリントポリマーの最大吸着能力の比である。
【0069】
実験部分:
10mgのポリマーを30mLのガラスフラスコに導入する。その後、0.1mg.L−1から20.0mg.L−1までの間で様々である濃度を有する10mLのBaP溶液を加える。接触操作を24時間200rpmの速度でオービタルスターラを用いて行う。上澄みを0.45μmPTFEフィルターでろ過し、UV可視分光法によって分析して、ポリマーにより吸着されるBaP量を測定する。吸着量/ポリマーのg(グラム)を平衡濃度(上澄みの濃度)の関数としてプロットする。
【0070】
結果:
[(1). トルエン中での吸着(Absorption)等温線(図6)]
合成されたMIP5ポリマーおよび対応するNIP5ポリマーのトルエン中での吸着等温曲線を図6に示す。図中、Cは平衡でのBaP濃度を表す。
【0071】
以下の事項が明白である。
(一) 吸着能力は低BaP濃度で大幅に増大し、平衡濃度がBaPのおよそ5mg.L−1に達するとその最大値に到達すること。
(二) MIP5ポリマーの最大吸着能力は0.31±0.01mg.L−1であり、NIP5ポリマーの最大吸着能力は0.08±0.1mg.L−1であり、よって、本発明のインプリントポリマーは非インプリントポリマーよりも吸着能力が高いこと。
(三) MIP5/NIP5インプリント係数は3.9であり、よってMIP5ポリマーはNIP5ポリマーよりも3.9倍多くBaPを吸着すること。
【0072】
[(2). 99/1(v/v)水/アセトニトリル混合物中での吸着等温線(図7)]
本発明のインプリントポリマーの性能を、適用媒体と同様の媒体、すなわち水中で評価した。BaPはそれほど水に可溶性ではないため、試験は99/1(v/v)水/アセトニトリル混合物中で行う。
【0073】
結果を図7に示す。図中、Cは平衡でのBaP濃度を表す。
【0074】
本発明のMIP5ポリマーに関し、吸着は、低BaP濃度で非常に迅速に増大し、およそ1mg.L−1の濃度でプラトーに達する。最大能力は6.5mg.L−1である。NIP5ポリマーの場合、プラトーには3mg.L−1で到達し、能力は3.2mg.L−1である。よって、インプリント係数は2.05である。
【0075】
水性媒体中での最大吸着能力は、結果として、有機媒体中の吸着能力よりも20倍大きい。
【0076】
[II−2. 従来技術に記載されるインプリントポリマーと本発明のインプリントポリマーとの性能比較]
文献に提示された結果と本発明のMIP5ポリマーによって得られた結果を以下の表2において比較する。
【0077】
標的を定量するための技術、実験が行われる媒体、使用するモノマーおよび重合手段の関数としての、吸着能力(Q)及びインプリント係数値を表2において比較する。
【0078】
【表2】
【0079】
本発明のMIP5ポリマーのインプリント効果は、文献に報告されるものと同じ程度である。よって、レドックスモノマーの存在はMIP粒子の特異的認識を妨げるものではない。
【0080】
[II−3. 電気化学特性]
[(1). 示差パルスボルタンメトリ(differential pulse voltammetry,DPV)による電気化学的試験]
原理:
示差パルスボルタンメトリ(differential pulse voltammetry,DPV)において、低振幅の線状電位勾配を、典型的には50ms(ミリ秒)の短期間、毎150〜200ms印加する。各パルスの印加直前および短期間(10〜20ms)の各パルスの直後に電流を測定する。記録された信号は、電位Eの関数としての、これら2つの測定間の電流差であり、結果として、ピークの出現を有する微分曲線が得られる。この技術により、ファラデー電流/容量性電流比が増大し得、故に感度が増大し得る。
【0081】
獲得パラメータ
初期電位 −0.100V
頂点電位 0.000V
最終電位 1.000V
パルス振幅 0.05V
パルス期間 50ms
高さ 1mV
期間 100ms
走査速度 0.01mV/秒
点の数 およそ2100
【0082】
[(2). 作用電極の調製]
炭素ペーストを、MIP5ポリマーまたはNIP5ポリマーと、4:1の重量比で混合する。混合物を少量の溶媒(ジクロロメタン)で均質化する。混合物がかなり流動性である場合、中空の作用電極(メトローム電極)内に入れ、真空で乾燥させる。余剰分を、電極表面を研磨することによって取り除く。
【0083】
[(3). 測定に使用する電極]
作用電極 表面積0.070cmの固体電極(炭素ペースト+ポリマー比4/1w/w電極)
参照電極 飽和塩化第一水銀電極(KCl:0.242V)
対電極 白金電極(直径1cm)
【0084】
[(4). 実施する実験]
炭素ペースト/MIP5ポリマー(またはNIP5ポリマー)混合物を含む電極を、5mLの電界液(アセトニトリル中0.1mg.L−1のテトラブチルアンモニウムヘキサフルオロホスフェート)を含有する電気化学セル内に置く。フェロセンのレドックス信号を、両タイプの作用電極(MIP5ポリマーおよびNIP5ポリマー)について、およそ0.43Vで観察する(図8および図9)。この信号の安定化を得るには、4時間30分という正常な期間が必要である(作用電極と溶液との平衡のための時間)。4時間30分後、BaP標的を溶液に直接加え、次いで規則的な間隔で測定を行う。
【0085】
[(4)−1. 炭素ペースト/NIP5ポリマー電極(図8)]
「NIPのみ」は、4時間30分の安定化後の炭素ペースト中のNIP5ポリマーのボルタモグラムを表す。
「添加直後NIP+BaP」は、BaP標的添加直後に記録されたボルタモグラムを表す。
「0.5時間後NIP+BaP」は、BaP標的添加から30分後に記録されたボルタモグラムを表す。
【0086】
第一曲線は、BaP標的添加からおよそ30秒後に記録され(添加直後NIP+BaP曲線)、その後8時間まで規則的な間隔で記録される(30分後に記録された0.5時間後NIP+BaP曲線)。NIPポリマーとBaP標的を一緒にした際のNIPポリマー中のフェロセンのボルタモグラムの外観の変更はみられない。
【0087】
[(4)−2. 炭素ペースト/MIP5ポリマー電極(図9)]
炭素ペーストと混合したMIP5ポリマーを電極中に導入することによって同じ実験を行う。フェロセンのレドックス信号はおよそ0.43Vで観察される。
【0088】
「MIP5のみ」曲線は、4時間30分の安定化後の、炭素ペースト中のMIP5ポリマーのボルタモグラムを表す。
【0089】
「添加直後MIP+BaP」曲線は、BaP標的添加直後に記録されたボルタモグラムを表す。
【0090】
「1.5時間後MIP+BaP」曲線から「8時間後MIP+BaP」曲線までは、規則的な間隔で記録されたボルタモグラムを表す。
【0091】
BaPの存在下での電気化学的応答の即座の変動が観察され、これは30秒から生じる。BaP標的添加後のMIP5およびNIP5ポリマー間に見られるボルタモグラムの変動は、BaP標的添加前後に電極、接続またはポテンショスタットに関する干渉がなく、実験が同じプロトコールに従って行われる限り、インプリント効果に関連するものである。
【0092】
[II−4. HPLC−UVによるMIP5/NIP5およびMIP6/NIP6ポリマーの特性についての比較試験]
2つの特性、干渉分子の存在下での標的分子の吸着および感度を比較する。
【0093】
[(1). 吸着特性]
吸着は、既知量のポリマーと既知濃度の標的の溶液とを接触させることによって行われる(吸着試験の場合にはBaPのみ、感度試験の場合にはBaP+別のPAH)。混合物を250rpmの速度でオービタルスターラにより撹拌する。5時間の接触時間の後、上澄みをHPLC−UVによって分析して、残存する各実体の量と吸着量を測定する。本試験で使用される8種のPAHをスキーム2に示す。
【0094】
[スキーム2 感度試験で使用するPAH]
【化2】
【0095】
BaPのみが存在する場合には定組成溶離(100%アセトニトリル、分析時間:15分)を使用する。選択性試験に使用される溶離勾配は、分析時間を1時間として表3に提示される。
【0096】
【表3】
【0097】
[(2). HPLC−UV分析条件]
カラム Lichrospher(登録商標)PAH(5μm)(Merck KGaA)
検出器 Hitachi L−2455 DAD
オーブン温度 30℃
射出容量 50μL
流速 0.5ml/分
【0098】
8種のPAHを99/1(v/v)水/アセトニトリル混合物に導入する。
【0099】
[(3). 吸着動態]
MIP6ポリマーを、1.25mg.L−1(すなわち、5μmol.L−1)に等しい濃度のBaP溶液と接触させる。接触時間の間、上澄みを分析する。およそ4時間(参照時間)の接触時間の後、吸着は最大かつ一定である(図10)。
【0100】
[(4). 吸着等温線]
BaP濃度の関数としての吸着の増大、次いでプラトー(plateau)が観察され、このプラトーは吸着能力(Q)に相当する(図11)。インプリント係数(非インプリントポリマーの吸着能力に対するインプリントポリマーの吸着能力の比)も測定する。MIP5、MIP6、NIP5およびNIP6ポリマーに関して得られる結果を表4に要約する。
【0101】
【表4】
【0102】
従来技術から知られている吸着能力(Q)の値は5.8μg.g−1〜7mg.g−1である(R.J.Krupadam et al.,Sensors and Actuators B:Chemical,2007,Vol.26,pp444−451;F.L.Dickert et al.,Anal.Chem.,1999,Vol.71,pp4559−4563;L.H.Wei et al.,Journal of Environmental Science and Health,Part.A,2010,Vol.45,pp211−223;J.P.Lai et al.,Analytica Chimica Acta,2004,Vol.522,No.2,137−144;R.J.Krupadam et al.,Water Research,2010,Vol.44,No.3,681−688)。吸着能力の比較は、本発明のMIPが良好なBaP認識特性を呈することを示す。
【0103】
[(5). 吸着等温線のモデル]
上記で生成された等温線をモデル化して吸着現象を解釈することができる(E.Corton et al.,Journal of NonCrystalline Solids,2007,Vol.353,No.8−10,pp974−980;G.Limousin et al.,Applied Geochemistry,2007,Vol.22,No.2,pp249−275)。均一な吸着の場合、吸着パラメータを直接評価することができる。均一でない吸着の場合、評価は、低濃度での高アフィニティの吸着の寄与と高濃度での低アフィニティの吸着の寄与とを一般化することに基づく。最初の工程では、2つのモデル、単純なラングミュア(Langmuir)およびフロイントリッヒ(Freundlich)、を試験する。
【0104】
[(5)−1. 単純なラングミュアモデル]
このモデルは以下の5つの仮定に基づく。
仮定1: 吸着能力が最大値(Qmax)を有し得ること。
仮定2: 全ての部位が等価であること。
仮定3: 各部位が1つの分子だけに占有されること。
仮定4: エネルギーと立体障害が吸着量に依存しないこと。
仮定5: 表面活性係数が1に等しい(均一な吸着である)こと。
【0105】
線形化の後、Q=吸着量(または吸着能力)およびC=遊離量(または平衡濃度)であることを考慮すると、次式が成り立つ。ここで、K=吸着アフィニティ係数、Q=平衡吸着能力である。
【数1】
【0106】
[(5)−2. フロイントリッヒモデル]
このモデルは、不均一な表面上での非理想的多層吸着に関する経験的関数、すなわち、
【数2】

【数3】

に基づくものであり、ここで、a=フロイントリッヒ吸着係数、m=不均一性指数(0<m<1)である。
【0107】
2つのモデルを得られた実験値に適用した後、相関係数および平衡定数を決定し、表5に要約する。
【0108】
【表5】
【0109】
MIP5を除き、ポリマーはラングミュアモデルに近い吸着挙動を呈する。しかしながら、Q値は実験値から離れており、よって、より良好に実験値にアプローチするには(より良好な相関係数を得るには)他のモデル(例えば、ラングミュア−フロイントリッヒ)を適用する必要がある。
【0110】
[(6). 選択性]
およそ0.45μmol.L−1の各実体の濃度でBaPおよび他のPAHを含む溶液とポリマーを接触させることによって、選択性の測定を行い、吸着能力を測定する。
【0111】
各実体に関する吸着結果から様々な係数を測定する。結果を表6および表7に要約する。
【0112】
分布係数(K)は、平衡濃度での吸着能力の、この平衡濃度(C)に対する比である。
【数4】
【0113】
選択性係数(k)は、干渉分子の分布係数に対する標的の分布係数の比である。
【数5】
【0114】
相対選択性係数k’は、NIPのkに対するMIPのkの比である:
【数6】
【0115】
【表6】
【0116】
【表7】

【0117】
一般的に、インプリント係数は1より大きい。これは、MIPがPAHに関してより良好な吸着能力を有していることを示す。対選択性係数(k’)は1に近い。
【0118】
[(7). 電気化学特性]
インプリントポリマーの電気化学特性を評価するために、MIP6およびNIP6ポリマーの粒子を導電性マトリクス(炭素ペースト)と混合し、次いでこの混合物を直径5mmの中空作用電極内に載置する。使用する技術は矩形波ボルタンメトリ(square wave voltammetry,SWV)である。
【0119】
まず初めに、電極を真空下で乾燥し、次いで有機媒体(0.1M テトラブチルアンモニウムヘキサフルオロホスフェート、またはTBAPF/アセトニトリル)中で分析を行う。信号が安定するまで、ボルタモグラムを2時間規則的に記録し、次にBaP溶液を加えてポリマーを飽和させる。記録は22時間行う。マグネティックバーで溶液を撹拌し続ける。各測定の1分30秒前に撹拌を一時停止する。MIP6およびNIP6ポリマーに関して得られる結果を図12および図13に提示する。
【0120】
[(8). 機器]
ポテンショスタット: ポテンショスタット/ガルバノスタットモデル273A(EG&G Princeton Applied Research社製)
【0121】
[(9). 実験パラメータ]
30秒間0.000Vで平衡
初期電位 0.000V
頂点電位 1.000V
パルス振幅 0.15V
パルス期間 50ms
高さ 2mV
期間 100ms
走査速度 20mV/秒
【0122】
NIP6の場合、BaP添加から22時間後、強度に僅かな低下がみられるが、効果はMIPよりも小さい。MIPについては、BaP添加から4時間後に酸化電位のシフトおよび強度の低下がみられる。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13