特許第6246419号(P6246419)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ ユニチカ株式会社の特許一覧

特許6246419ポリアミド樹脂組成物およびそれを成形してなる成形体
<>
  • 特許6246419-ポリアミド樹脂組成物およびそれを成形してなる成形体 図000005
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6246419
(24)【登録日】2017年11月24日
(45)【発行日】2017年12月13日
(54)【発明の名称】ポリアミド樹脂組成物およびそれを成形してなる成形体
(51)【国際特許分類】
   C08L 77/00 20060101AFI20171204BHJP
   C08K 3/08 20060101ALI20171204BHJP
   C08K 3/34 20060101ALI20171204BHJP
【FI】
   C08L77/00
   C08K3/08
   C08K3/34
【請求項の数】4
【全頁数】19
(21)【出願番号】特願2017-506547(P2017-506547)
(86)(22)【出願日】2016年3月14日
(86)【国際出願番号】JP2016058001
(87)【国際公開番号】WO2016148109
(87)【国際公開日】20160922
【審査請求日】2017年10月4日
(31)【優先権主張番号】特願2015-52166(P2015-52166)
(32)【優先日】2015年3月16日
(33)【優先権主張国】JP
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】000004503
【氏名又は名称】ユニチカ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100100158
【弁理士】
【氏名又は名称】鮫島 睦
(74)【代理人】
【識別番号】100103115
【弁理士】
【氏名又は名称】北原 康廣
(72)【発明者】
【氏名】木皿 嘉仁
(72)【発明者】
【氏名】迎 弘文
(72)【発明者】
【氏名】祢宜 行成
【審査官】 海老原 えい子
(56)【参考文献】
【文献】 特開2014−80574(JP,A)
【文献】 特開昭54−114534(JP,A)
【文献】 特開2014−198796(JP,A)
【文献】 特開2013−241506(JP,A)
【文献】 特開2004−237551(JP,A)
【文献】 特開平11−293106(JP,A)
【文献】 特開平11−279289(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08L 77/00
C08K 3/08
C08K 3/34
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ポリアミド樹脂(A)100質量部に対して、少なくとも、膨潤性層状珪酸塩(B)1〜10質量部およびメタリック材(C)1〜7質量部を含有し、メタリック材(C)が、平均粒子径が20〜40μmのメタリック材(C1)と平均粒子径が5〜10μmであるメタリック材(C2)からなり、(C2)/(C1)=1.5〜3.0(質量比)であり、メタリック材がアルミニウムおよび/またはパールマイカであることを特徴とするポリアミド樹脂組成物。
【請求項2】
ポリアミド樹脂(A)が、ポリアミド6、もしくは、ポリアミド6とポリアミド11またはポリアミド12との混合物であり、ポリアミド樹脂(A)におけるポリアミド6の含有量が40〜100質量%であることを特徴とする請求項1記載のポリアミド樹脂組成物。
【請求項3】
さらに、黒色顔料または黒色染料(D)をポリアミド樹脂(A)100質量部に対して0.05〜0.8質量部を含有し、メタリック材(C1)と、黒色顔料または黒色染料(D)の含有量の関係が、(C1)/(D)=3〜60の範囲である請求項1〜いずれかに記載のポリアミド樹脂組成物。
【請求項4】
請求項1〜いずれかに記載のポリアミド樹脂組成物からなる成形体。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、フローマークの発生が少なく、輝度および光沢性が高いメタリック調の成形体を得ることができるポリアミド樹脂組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
自動車の内装部品、エンジンカバーや家電製品等の内外装カバーには、ポリアミド樹脂等の熱可塑性樹脂にて成形された成形体が、一般的に用いられている。
このような樹脂成形体の外観には、鋼やアルミニウム合金のようなメタリックな色調が要求される場合がある。特に近年では、樹脂成形体の美観に対する要求が高まり、樹脂成形体の外観には、単にメタリックな色調を有するだけでなく、光沢感を有したうえで高輝感を抑えたものが要求されている。また、メタリックな色調も、銀灰色のものから、やや白みがかった灰白色のものまで、様々な種類が要求されている。
【0003】
このような要求を満たすために、従来、樹脂成形体の表面に、アルミニウム等の金属粉を含有する塗料を塗装する方法、いわゆるメタリック塗装が行われている。しかし、このメタリック塗装は、有機溶剤を用いるために、作業環境面で問題があり、また、生産性に劣りコストが高くなるという問題があった。
【0004】
上記問題を解消する方法として、ポリアミド樹脂等の熱可塑性樹脂に、アルミニウム等の金属粉や、マイカ、ワラストナイト、ガラス等の表面を金属で被覆した光沢性粒子を充填して得られる樹脂組成物を用いることが提案されている。
例えば、特許文献1には、層状珪酸塩が分子レベルで均一に分散されたポリアミド樹脂に対し、メタリック色を発現する粒子を配合してなるポリアミド樹脂組成物が開示されている。特許文献2には、ポリアミド樹脂、金属フレークを含有するポリアミド樹脂組成物が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】国際公開第99/13006号パンフレット
【特許文献2】特表2001−509524号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、特許文献1、2に記載されたポリアミド樹脂組成物から得られた成形体は、メタリック調の外観は得られるが、アルミニウム粉等のメタリック色を発現する粒子の配向に由来するフローマークが発生したり輝度が低くなったりするという問題があった。
【0007】
本発明は、上記問題を解決するものであって、フローマークの発生が少なく、輝度が高いメタリック調の成形体を得ることができるポリアミド樹脂組成物を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者は、このような課題を解決するために、鋭意研究を重ねた結果、平均粒子径が異なるアルミニウム粉を併用することにより上記目的を達成されることを見出し、本発明に到達した。
すなわち本発明の要旨は下記の通りである。
【0009】
(1)ポリアミド樹脂(A)100質量部に対して、膨潤性層状珪酸塩(B)1〜10質量部およびメタリック材(C)1〜7質量部を含有し、メタリック材(C)が、平均粒子径が20〜40μmのメタリック材(C1)と平均粒子径が5〜10μmであるメタリック材(C2)からなり、(C2)/(C1)=1.5〜3.0(質量比)であることを特徴とするポリアミド樹脂組成物。
【0010】
(2)ポリアミド樹脂(A)が、ポリアミド6、もしくは、ポリアミド6とポリアミド11またはポリアミド12との混合物であり、ポリアミド樹脂(A)におけるポリアミド6の含有量が40〜100質量%であることを特徴とする(1)記載のポリアミド樹脂組成物。
【0011】
(3)メタリック材がアルミニウムおよび/またはパールマイカであることを特徴とする(1)または(2)記載のポリアミド樹脂組成物。
【0012】
(4)さらに、黒色顔料または黒色染料(D)をポリアミド樹脂(A)100質量部に対して0.05〜0.8質量部を含有し、メタリック材(C1)と、黒色顔料または黒色染料(D)の含有量の関係が、(C1)/(D)=3〜60の範囲である(1)〜(3)いずれにかに記載のポリアミド樹脂組成物。
【0013】
(5)(1)〜(4)いずれかに記載のポリアミド樹脂組成物からなる成形体。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、フローマークの発生が少なく、輝度および光沢性が高いメタリック調の成形体を得ることができるポリアミド樹脂組成物を提供することができる。
また、本発明のポリアミド樹脂組成物は、従来からメタリック調ポリアミド樹脂組成物が有する剛性や優れた表面光沢度も兼ね備えている。
【0015】
本発明のポリアミド樹脂組成物は、自動車内装部品等の用途で、形状が複雑な樹脂部品として好適に用いることができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
図1】本発明のポリアミド樹脂組成物からなる成形体の表面のL*の測定方法を示す概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
本発明のポリアミド樹脂組成物は、少なくともポリアミド樹脂(A)と膨潤性層状珪酸塩(B)とメタリック材(C)から構成される。
【0018】
本発明で用いるポリアミド樹脂(A)は、特に限定はされず、例えば、ポリカプロアミド(ポリアミド6)、ポリテトラメチレンアジパミド(ポリアミド46)、ポリヘキサメチレンアジパミド(ポリアミド66)、ポリカプロアミド/ポリヘキサメチレンアジパミドコポリマー(ポリアミド6/66)、ポリウンデカアミド(ポリアミド11)、ポリカプロアミド/ポリウンデカミドコポリマー(ポリアミド6/11)、ポリデカミド(ポリアミド12)、ポリカプロアミド/ポリドデカミドコポリマー(ポリアミド6/12)、ポリヘキサメチレンセバカミド(ポリアミド610)、ポリヘキサメチレンドデカミド(ポリアミド612)、ポリウンデカメチレンアジパミド(ポリアミド116)等の結晶性ポリアミドおよびこれらの混合物、あるいはこれらの重合体等が挙げられる。上記の中でも、メタリック発色性、輝度が優れる点から、ポリアミド6、ポリアミド66、ポリアミド11、ポリアミド12が好ましく、加えて耐光性、耐熱変色性、耐湿熱性が向上する点で、ポリアミド単独、またはポリアミド6と、ポリアミド11および/またはポリアミド12との混合物がより好ましい。
【0019】
ポリアミド樹脂(A)として、ポリアミド6と、ポリアミド11および/またはポリアミド12との混合物を用いる場合、ポリアミド樹脂(A)におけるポリアミド6の含有量が40質量%〜100質量%未満、好ましくは50質量%〜100質量%未満、より好ましくは60質量%〜100質量%未満、さらにより好ましくは70質量%〜100質量%未満である。上記ポリアミド混合物を用いることで、湿熱条件下における、主にポリアミド6に起因するオリゴマ等の析出を抑制できる。ポリアミド6の含有量が少ない場合、耐熱性が不足することがある。
【0020】
ポリアミド6と、ポリアミド11および/またはポリアミド12との混合物は、ポリアミド6の単独重合体と、ポリアミド11および/またはポリアミド12の単独重合体を混合したものであっても、共重合体としたものであってもよい。好ましくは、入手性の観点から、混合体、特に、溶融混合体である。
【0021】
ポリアミド樹脂(A)が、ポリアミド6と、ポリアミド11および/またはポリアミド12からなる共重合体である場合、6−アミノカプロン酸単位と、11−アミノウンデカン酸単位および/または12−アミノドデカン酸単位とから構成される共重合体であることが好ましい。すなわち、ポリアミド樹脂(A)は、ポリアミド6/ポリアミド11コポリマー(ナイロン6/11)、またはポリアミド6/ポリアミド12コポリマー(ナイロン6/12)、またはポリアミド6/ポリアミド11/ポリアミド12コポリマー(ナイロン6/11/12)であることが好ましい。
【0022】
ポリアミド樹脂(A)の分子量の指標である相対粘度は、特に制限されないが、96質量%濃硫酸を溶媒とし、温度25℃、濃度1g/dlの条件で測定した相対粘度は、1.5〜3.5、好ましくは1.7〜3.2、より好ましくは、1.9〜3.0である。相対粘度が1.5未満であると、得られるポリアミド樹脂組成物の成形体は、耐光性、耐熱変色性、耐湿熱性が劣ることがある。一方、相対粘度が、3.5を超えると、流動性が劣り、混練が困難となったり、成形性が低下するため、輝度が劣ったりすることがある。
【0023】
本発明のポリアミド樹脂組成物は、膨潤性層状珪酸塩(B)を含有する。膨潤性層状珪酸塩(B)を含有させることにより、輝度やフリップフロップ性を高めることができる。フリップフロップ性とは、メタリック色特有の指標であり、観察角度による色調の大きさを指し、この変化が大きいほど、より金属調に見える。フリップフロップ性は高いことが好ましい。
【0024】
本発明で用いる膨潤性層状珪酸塩(B)は、天然に産出するものでも人工的に合成あるいは変成されたものでもよく、例えばスメクタイト族(モンモリロナイト、バイデライト、ヘクトライト、ソーコナイト等)、バーミキュライト族(バーミキュライト等)、雲母族(フッ素雲母、白雲母、パラゴナイト、金雲母、レピドライト等)、脆雲母族(マーガライト、クリントナイト、アナンダイト等)、緑泥石族(ドンバサイト、スドーアイト、クッケアイト、クリノクロア、シャモナイト、ニマイト等)が挙げられる。本発明においては、膨潤性フッ素雲母やモンモリロナイトやヘクトライトが特に好適に用いられる。これらは単独で用いてもよいし、2種以上を併用してもよい。
【0025】
本発明において好適に用いられる膨潤性フッ素雲母は次式で示される構造式を有するものである。
Ma(MgXLib)SiOYFZ
(式中で、Mはイオン交換性のカチオンを表し、具体的にはナトリウムやリチウムが挙げられる。a、b、X、YおよびZはそれぞれ係数を表し、0≦a≦0.5、0≦b≦0.5、2.5≦X≦3、10≦Y≦11、1.0≦Z≦2.0である。)
【0026】
膨潤性フッ素雲母の製造法としては、例えば、酸化珪素、酸化マグネシウムおよび各種フッ化物を混合し、その混合物を電気炉またはガス炉中で1400〜1500℃の温度範囲で完全に溶融し、その冷却過程中反応容器内で膨潤性フッ素雲母を結晶成長させる溶融法が挙げられる。また、タルク〔MgSi10(OH)〕を出発物質として用い、これにアルカリ金属イオンをインターカレーションして膨潤性を付与し、膨潤性フッ素雲母を得る方法もある(特開平2−149415号公報)。この方法では、所定の配合比で混合したタルクと珪フッ化アルカリを、磁性ルツボ内で700〜1200℃の温度下に短時間加熱処理することによって、膨潤性フッ素雲母を得ることができる。この際、タルクと混合する珪フッ化アルカリの量は、混合物全体の10〜35質量%の範囲とすることが好ましい。この範囲を外れる場合、膨潤性フッ素雲母の生成収率が低下する傾向にある。
【0027】
本発明において好適に用いられるモンモリロナイトは次式で表されるもので、天然に産出するものを水ひ処理等を用いて精製することにより得ることができる。
MaSi(Al−aMg)O10(OH)・nH
(式中で、Mはナトリウム等のカチオンを表し、0.25≦a≦0.6である。また層間のイオン交換性カチオンと結合している水分子の数はカチオン種や湿度等の条件によって様々に変わりうるので、式中ではnHOで表した。)
【0028】
またモンモリロナイトにはマグネシアンモンモリロナイト、鉄モンモリロナイト、鉄マグネシアンモンモリロナイト等の同型イオン置換体の存在が知られており、これらを用いてもよい。
【0029】
本発明において好適に用いられるヘクトライトは次式で表されるもので、天然に得られるものであってもよいし、合成により得られるものであってもよい。
Na0.66(Mg5.34Li0.66)Si20(OH)・nH
ヘクトライトは珪酸塩を主成分とする負に帯電した珪酸塩層とその層間に介在するイオン交換能を有するカチオンとからなる構造を有するものであり、その他の膨潤性層状珪酸塩と比較すると、水酸基を多く含むため層間に水分子が入り込みやすく(すなわち、親水性が高く)、膨潤しやすい。加えて、その他の膨潤性層状珪酸塩と比較すると、粒径も小さい。
【0030】
本発明のポリアミド樹脂組成物は、得られる成形体の輝度を向上させるために、メタリック材(C)を含有するものであるが、メタリック材(C)とともに、特定量の膨潤性層状珪酸塩(B)を同時に含有することが必要である。膨潤性層状珪酸塩(B)を含有することにより、メタリック材(C)の分散性を向上させることができ、メタリック材(C)の分散性が向上することによって、クリア感が向上する。メタリック材(C)の含有量が少なくても、効率良く成形体のクリア感を高めることができる。
【0031】
膨潤性層状珪酸塩(B)の含有量は、ポリアミド樹脂(A)100質量部に対し、1〜10質量部であることが必要であり、2〜9質量部であることが好ましく、3〜8質量部であることがより好ましい。膨潤性層状珪酸塩(B)を所定量含有させることにより、輝度やフリップフロップ性や剛性が向上する。膨潤性層状珪酸塩(B)の含有量が1質量部未満の場合、輝度やフリップフロップ性や剛性が低下するので好ましくない。一方、含有量が10質量部を超える場合、得られる成形体の平滑性が低下し表面光沢度が低下するので好ましくない。
【0032】
また、膨潤性層状珪酸塩(B)を所定量含有させることにより、得られる成形体は、ある角度から成形体を直視した際、立体部の各部において金属感を有した状態で観察される。すなわち、より金属的な立体感が備わった成形体とすることができる。膨潤性層状珪酸塩(B)の含有量が1質量部未満では、金属的な立体感が得られない。
【0033】
本発明のポリアミド樹脂組成物は、得られる成形体の輝度および光沢性の向上とフローマークの低減を目的としているため、ポリアミド樹脂組成物に対して、適正なサイズのメタリック材を併用する必要がある。一般に、粒径が小さいものを用いるとフローマークが発生しにくいが輝度が向上しにくく、粒径が大きいものを用いると輝度は向上するがフローマークが発生しやすい傾向がある。本発明においては、特定の粒子径を有するアルミニウム粉等のメタリック材を併用することによって、輝度の向上とフローマークの低減を両立することが可能となった。また、前述した膨潤性層状珪酸塩(B)と併用することにより、特にメタリック発色性や輝度が向上し、さらに十分な剛性を得ることができる。
【0034】
本発明のポリアミド樹脂組成物には、平均粒子径が大きいメタリック材(C1)と平均粒子径が小さいメタリック材(C2)を含有することが必要である。
【0035】
メタリック材(C1)の平均粒子径は、20〜40μmである。メタリック材(C1)の平均粒子径が40μmを超える場合、フローマークの低減効果が得られないので好ましくない。一方、メタリック材(C1)の平均粒子径が20μm未満の場合、輝度が低下するので好ましくない。メタリック材(C1)の厚みは、0.2〜0.9μmであることが好ましい。メタリック材(C1)の厚みが0.2μm未満の場合、溶融混練の過程においてメタリック材が変形してしまい十分な輝度が得られない場合がある。一方、メタリック材(C1)の厚みが0.9μmを超える場合、メタリック材が配向しやすくなり十分な輝度が得られない場合がある。
【0036】
メタリック材(C2)の平均粒子径は5〜10μmである。メタリック材(C2)の平均粒子径が10μmを超える場合、フローマーク低減効果が得られないので好ましくない。一方、メタリック材(C2)の平均粒子径が5μm未満の場合、輝度が低下するので好ましくない。また、メタリック材(C2)の厚みは、0.1〜0.5μmであることが好ましい。メタリック材(C2)の厚みが0.1μm未満の場合、溶融混練の過程においてメタリック材が変形してしまい十分な輝度が得られない場合がある。一方、メタリック材(C2)の厚みが0.5μmを超える場合、メタリック材が配向しやすくなり十分な輝度が得られない場合がある。
【0037】
メタリック材の平均粒子径は、レーザ回折・散乱式粒度分布測定装置、例えば、マイクロトラック2(日機装社製)により測定することができる。また、メタリック材の平均厚みは、成形品断面の電子顕微鏡によるメタリック材(例えば、)アルミニウム粉50個測定の単純平均により算出することができる。
【0038】
メタリック材(C1)とメタリック材(C2)の合計の含有量は、ポリアミド樹脂(A)100質量部に対し、1〜7質量部であることが必要であり、好ましくは2〜4質量部、より好ましくは2〜3.5質量部である。タリック材料(C1)とメタリック材(C2)の合計の含有量が1質量部未満の場合、得られる成形体は、十分な輝度が得られないので好ましくなく、一方、7質量部を超える場合、得られる成形体の平滑性が低下し表面光沢度が低下するので好ましくない。
【0039】
メタリック材(C1)/メタリック材(C2)](質量比)は1.5〜3.0の範囲であることが必要で、1.5〜2.5(質量比)であることがより好ましい。(C2)/(C1)が1.5〜3.0(質量比)であることにより、輝度を向上させながら、フローマークを低減することが可能となる。(C2)/(C1)が1.5未満、または2.5、さらには3.0を超える場合は、輝度が低下し、フローマークの発生の抑制効果が不十分となる傾向があるので好ましくない。
【0040】
メタリック材(C)は、公知のものを用いることができる。前記メタリック材(C)としては、例えば、アルミニウム、パールマイカ、鉄、ニッケル、クロム、スズ、亜鉛、インジウム、チタン、シリコン、および銅よりなる一群の金属の何れか、もしくは複数、もしくはこれらの一群の金属を用いた合金、もしくはこれらの一群の金属またはその合金の酸化物、窒化物、硫化物、または炭化物の何れかからなる金属粉顔料が挙げられる。好ましくは、アルミニウム、パールマイカ、それらの混合物、特に、それらの混合物またはアルミニウム、中でもアルミニウムである。
【0041】
パールマイカはマイカを二酸化チタンで被覆したものであり、この二酸化チタンの厚みを次第に増加していくと、色相が金色、赤色、紫色、青色及び緑色に反射する色が変化する。二酸化チタン以外の金属酸化物であっても、夫々の種類に応じた適度の厚さのコーティングによってパールマイカ顔料を形成することができる。また、マイカを酸化鉄、酸化チタン+酸化鉄で被覆して、黄色もしくは金色に着色したタイプもある。本発明樹脂組成物に用いるパールマイカとしては、天然マイカや合成マイカの表面に、二酸化チタン、酸化鉄その他クロム、コバルト、錫、ジルコニウム等の金属酸化物の薄膜をコーティングして干渉色効果を付与したパールマイカを使用することができる。特に、本発明の樹脂組成物において使用されるパール顔料は、マイカの表面に二酸化チタンを210〜400nmの薄膜状に被覆したものが特に望ましい。
【0042】
本発明のポリアミド樹脂組成物には、その特性を大きく損なわない限りにおいて、顔料、染料、可塑剤、滑剤、離型剤、帯電防止剤等を添加することができる。本発明のポリアミド樹脂組成物にこれらを混合する方法は特に限定されない。また特に難燃性を補助するために、縮合リン酸エステル、ポリリン酸、窒素化合物系難燃剤等を添加してもよい。
【0043】
黒色顔料または黒色染料(D)を含有することができる。黒色顔料または染料を含有することにより得られる成形体のメタリック感の重厚感が増し、より金属調が強くなるという効果がある。
【0044】
前記黒色顔料としては、特に制限はなく、カーボンブラック、アセチレンブラック、ランプブラック、ボーンブラック、黒鉛、鉄黒、アニリンブラック、シアニンブラック、チタンブラック等が挙げられる。中でも、本発明の効果を損なわず、上記効果を容易に発現できることから、カーボンブラックが好ましい。
【0045】
前記黒色染料としては、特に制限はなく、ニグロシンを含むアジン系染料およびアントラキノンを含む多環縮合染料等が挙げられる。中でも、取扱いが簡便な点で、アジン系染料が好ましく、例えば、NYB27620B(山陽化工社製)、Orient Spirit BlackSB(オリエント化学工業社製)、Spirit Black No.850(住友化学社製)、Nigrosine Base LK(BASF社製)等の市販品を用いることができる。上記黒色顔料または黒色染料(D)は、単独で用いてもよいし、併用してもよい。
【0046】
前記アジン系染料の中では、特にニグロシンが好ましい。ニグロシンとしては、COLOR INDEXにC.I.SOLVENT BLACK 5およびC.I.SOLVENT BLACK 7として記載されているような黒色アジン系縮合混合物が挙げられる。このようなニグロシンの合成は、例えば、アニリン、アニリン塩酸塩およびニトロベンゼンを、塩化鉄の存在下、反応温度160〜180℃で酸化および脱水縮合することにより行い得るものである。さらに、このようにして得られたニグロシンを精製し、アニリンやジフェニルアミンを0.1%未満にした精製ニグロシンがより好ましい。このようなニグロシンとして、オリエント化学工業社製のCramity81やNUBIAN BLACKシリーズが市販されている。
【0047】
黒色顔料または黒色染料(D)を使用する場合、黒色顔料または黒色染料(D)は、平均粒子径0.005〜10μm、好ましくは0.01〜1μmのものを使用するようにする。その粒径が大きすぎると成形品表面の光沢性を阻害する問題があり、小さすぎると分散不良により成形品表面に凝集物が現れたり重厚感が得られなという問題が生じる。
【0048】
黒色顔料または黒色染料(D)の含有量は、ポリアミド樹脂(A)100質量部に対し、0.05〜0.8質量部、好ましくは0.1〜0.7質量部、より好ましくは0.1〜0.5質量部である。黒色顔料または黒色染料(D)の含有量が0.05質量部未満では、得られる成形体での重厚感が得られない。一方、0.8質量部を超えると、成形体は、鉛調の鈍い光沢感を有するようになり、輝度が低下する。
【0049】
平均粒子径が5〜10μmであるメタリック材(C2)と黒色顔料または黒色染料(D)の含有量の関係が、(C2)/(D)=3〜60の範囲、好ましくは3.5〜40、より好ましくは3.75〜30、さらにより好ましくは4〜20(質量比)である。メタリック感、輝度を向上させながら、バランスよく重厚感を増すことが可能となる。(C2)/(D)が小さすぎると、重厚感は増すものの、輝度が不足することがある。(C2)/(D)が大きすぎると重厚感が不足することがある。
【0050】
黒色以外の有色顔染料も含有することができ、青色、白色、茶色、シアン色、緑色、紫色、マゼンタ色、赤色、黄色、並びにそれらの混合でよい。有色顔料の適当な分類としては、アントラキノン、フタロシアニンブルー、フタロシアニングリーン、ジアゾ、モノアゾ、ピラントロン、ペリレン、ヘテロ環イエロー、キナクリドン、及び(チオ)インディゴイドを挙げることができる。
【0051】
次に、本発明のポリアミド樹脂組成物の製造方法を説明する。
本発明において、ポリアミド樹脂組成物は、例えば、ポリアミド樹脂(A)と、膨潤性層状珪酸塩(B)と、メタリック材(C)とを溶融混練することによって製造することができる。
【0052】
また別の方法として、膨潤性層状珪酸塩(B)の存在下に、ポリアミド樹脂(A)を構成するモノマー成分の重合反応をおこなって得られるポリアミド樹脂(A)と、膨潤性層状珪酸塩(B)との混合物を用いて、この混合物とメタリック材(C)とを溶融混合してポリアミド樹脂組成物を製造することができる。
【0053】
膨潤性層状珪酸塩(B)の存在下に、ポリアミド樹脂(A)を構成するモノマー成分の重合反応を行うことにより、膨潤性層状珪酸塩(B)をポリアミド樹脂(A)に均一に分散することができ、得られる成形体が有する光沢度を一層高めることができる。重合反応に用いる上記モノマーとしては、アミノカルボン酸やそのラクタムを用いることができる。
【0054】
ポリアミド樹脂(A)が、2種以上のアミノカルボン酸単位から構成される共重合体である場合は、膨潤性層状珪酸塩(B)の存在下に、2種以上のアミノカルボン酸(ラクタム)の共重合反応をおこなって得られる膨潤性層状珪酸塩を含有したポリアミド樹脂と、メタリック材とを溶融混合して製造することが好ましい。
【0055】
また、ポリアミド樹脂(A)が、アミノカルボン酸単位から構成される重合体の2種以上の溶融混合物である場合は、2種以上の重合体のうちの少なくとも1つの重合体の重合反応を、膨潤性層状珪酸塩(B)の存在下におこなって得られる、膨潤性層状珪酸塩を含有したポリアミド樹脂と、他の重合体(または膨潤性層状珪酸塩を含有した他の重合体)と、メタリック材とを溶融混合してポリアミド樹脂組成物を製造することが好ましい。膨潤性層状珪酸塩(B)の存在下に重合反応をおこなうアミノカルボン酸としては、膨潤性層状珪酸塩(B)を均一に分散させる効果が高いことから、6−アミノカプロン酸やε−カプロラクタムであることが好ましい。
【0056】
ポリアミド樹脂(A)として、アミノカルボン酸単位から構成される重合体の2種以上の溶融混合物を用いる場合、それらは十分に溶融混練されていることが好ましい。溶融混練が不十分であると、例えば溶融混合する2種のポリアミド樹脂の溶融粘度差が大きい場合、あるいは融点差が大きい場合、相互のポリアミド樹脂に均一に混合することなく、海島構造を呈することがある。そのような場合、特に本発明においては、成形体を得る際、含有するメタリック材を均一に配向させることが難しくなるため、部分的に輝度が損なわれたり、輝度に斑が生じたりする等の不都合が生じることがある。なお、ポリアミド樹脂(A)として、2種以上のアミノカルボン酸単位から構成される共重合体を用いる場合、このような懸念は低減する。
【0057】
膨潤性層状珪酸塩(B)の存在下に、アミノカルボン酸(ラクタム)を重合する方法としては、膨潤性層状珪酸塩(B)とアミノカルボン酸(ラクタム)とをオートクレーブに仕込んだ後、水等の開始剤を用い、温度240〜300℃、圧力0.2〜3MPa、1〜15時間の範囲内で溶融重縮合法する方法が挙げられる。ラクタムとしてε−カプロラクタムを用いる場合は、温度250〜280℃、圧力0.5〜2MPa、3〜5時間の範囲で重合することが好ましい。
【0058】
重合後のポリアミド樹脂に残留しているアミノカルボン酸(ラクタム)を除去するために、ポリアミド樹脂のペレットに対して熱水による精練をおこなうことが好ましい。精製方法としては、例えば、90〜100℃の熱水中で8時間以上の処理する方法が挙げられる。
【0059】
膨潤性層状珪酸塩を含有したポリアミド樹脂と、メタリック材(C)とを溶融混合をおこなう場合、公知の溶融混練押出機を用いることができる。溶融混練押出機へのメタリック材(C)の供給方法としては、前記膨潤性層状珪酸塩含有ポリアミド樹脂にメタリック材(C)を混合したものを、主ホッパーより一括投入してもよいが、メタリック材(C)の破砕あるいは折損を極力抑制するため、メタリック材(C)を押出機途中よりサイドフィーダーにて供給することが好ましく、なるべく押出機下流にて供給することがより好ましい。
【0060】
前記膨潤性層状珪酸塩含有ポリアミド樹脂とメタリック材(C)とは、十分に溶融混練されていなくてもよく、その後の射出成形加工において、作業に支障がでない範囲で混合できていればよい。必要に応じて、前記膨潤性層状珪酸塩含有ポリアミド樹脂とメタリック材(C)とをドライブレンドしたものを直接射出成形機に供給してもよく、射出成形機において溶融混練して、射出成形をおこなうこともできる。
【0061】
メタリック材(C)は外部応力に対し脆いものであるため、樹脂組成物の製造や成形体の成形において、溶融混練時のスクリュー剪断応力をメタリック材(C)に極力与えないことが、得られる成形体の光沢度を向上させる上で好ましい。
【0062】
本発明の成形体は、上記本発明のポリアミド樹脂組成物を成形してなるものである。成形方法としては、射出成形、ブロー成形、押出成形、インフレーション成形、およびシート加工後の真空成形、圧空成形、真空圧空成形等の方法が挙げられ、中でも、射出成形法が好ましい。射出成形法としては、一般的な射出成形法のほか、ガス射出成形、射出プレス成形等も採用できる。
【0063】
本発明のポリアミド樹脂組成物に適した射出成形条件として、例えば、シリンダ温度を樹脂組成物の融点または流動開始温度以上、好ましくは190〜270℃とし、さらに、金型温度を樹脂組成物の(融点−20℃)以下とする条件が挙げられる。成形温度が低すぎると成形体にショートが発生する等成形性が不安定になったり、得られる成形体の表面光沢度が失われたりすることがある。逆に、成形温度が高すぎるとポリアミド樹脂組成物が分解し、得られる成形体の強度が低下したり、表面光沢度が低下したりする要因となる場合がある。
【0064】
本発明の成形体、特に射出成形法により得られた成形体は、輝度が高いものであるが、射出成形時の各種条件、たとえば、樹脂温度、射出速度、射出圧、金型温度をバランス良く設定することにより、組成物の金型内での流動性、さらには、ポリアミド樹脂組成物中での膨潤性層状珪酸塩(B)、メタリック材(C)の分散性に影響を与える。たとえば、射出速度を高速とした場合には、メタリック材(C)の配向が乱れてしまい、輝度が低下する傾向があるため、射出速度は低速から中速とした方がよい。
【産業上の利用可能性】
【0065】
本発明の成形体は、フローマークの発生が少なく、輝度が高いメタリック調の成形体であるため、各種自動車部品、電気、電子部品に好適に用いることができる。本発明の成形体は、特に樹脂部品として、金属光沢等、輝度に優れるため、自動車部品としては、インストルメントパネルでのスピードメーター、タコメーター、燃料計、水温計、距離計等の各種計器類、カーステレオ、ナビゲーションシステム、エアコン周りの各種スイッチ、ボタン、センターコンソールでのシフトレバー、サイドブレーキの握り部、ドアトリム、アームレスト、ドアレバー等、特に自動車内装部品で、意匠性を高めるための金属または従来の樹脂製部品の置換え材としての使用が可能である。電気、電子部品としては、パソコン周辺の各種部品および筐体、携帯電話部品および筐体、その他OA機器部品等の電化製品用樹脂部品で用いることができる。また、重厚感が増しているため、特に自動車部品でのシフトレバー、サイドブレーキの握り部、ドアトリム、アームレスト、ドアレバー等で用いることができる。
【0066】
実施例
以下、実施例により本発明を具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例により限定されるものではない。
【0067】
1.評価方法
(1)試験片1および2の作製
得られたポリアミド樹脂組成物を用いて、東芝機械社製EC−100II型射出成形機にて、樹脂温度260℃、金型温度100℃、保圧30MPa、射出速度100mm/秒、射出圧力100MPa、冷却時間10秒の条件で射出成形をおこない、縦90mm×横50mm×厚さ2mmの板状成形体(試験片1)および縦80mm×横60mm×厚さ1mmの中央部に曲率半径50mmの凸部を有する板状成形体(板状部分と凸部が直径50mmの円形状で接している板状成形体、試験片2)を得た。なお、金型は短辺方向中央にサイドゲート1点を有するものを用いた。
【0068】
(2)輝度
試験片1について、変角分光色差計(村上色彩技術研究所製変角分光測色システムGSP−2型)を用い、図1のように、試料法線に対して入射角度−45°として、受光角度を40°、0°として、L*値(D65/2光源、視野2°)を測定した。それぞれのL*値を、L*40、L*0とし表2中にまとめた。
【0069】
輝度の指標であるL*40は、160以上、より厳しくは180以上を合格とした。
【0070】
(3)フリップフロップ値
フリップフロップ値は、メタリック発色の変化度として、L*0とL*40との比で表した。フリップフロップ値は、金属調発色の指標を表し、4以上を合格とした。
【0071】
(4)フローマーク
試験片2において、凸部頂部の裾部を観察し、周辺と色調が変化している部分(フローマーク)があるかどうかを確認した。
○:周辺部分に比べて色調が変化している部分がない。
×:周辺部分に比べて色調が変化している部分がある。
【0072】
(5)表面光沢度
JIS Z8741に基づき、光沢度計(日本電色社製グロスメーターVG7000型)を用い、入射角60°で試験片1の表面光沢度の測定を行った。
光沢度は、85%以上、より厳しくは90%以上の場合を合格とした。
【0073】
(6)曲げ弾性率
曲げ弾性率は、ISO178に準拠して測定した。
曲げ弾性率は、3GPa以上を合格とした。
【0074】
2.原料
(1)ポリアミド樹脂モノマー成分
・ε−カプロラクタム(宇部興産社製)
【0075】
(2)膨潤性層状珪酸塩
・B−1:膨潤性フッ素雲母、コープケミカル社製「ME−100」、平均粒子径6.0μm、陽イオン交換容量110ミリ当量/100g
・B−2:モンモリロナイト、ホージュン社製「ベンゲルHV」、平均粒子径5.0μm、陽イオン交換容量70ミリ当量/100g
・B−3:ヘクトライト、Elementis Specialities「Bentone HC」、陽イオン交換量:80ミリ当量/100g
【0076】
(3)メタリック材
・C1−1:アルミペースト 旭化成ケミカルズ社製「シルビーズM200−BP」(平均粒子径20μm、平均厚み0.4μm、アルミ成分90%、ポリエチレングリコール10%)
・C1−2:アルミペースト 旭化成ケミカルズ社製「シルビーズM350−BP」(平均粒子径35μm、平均厚み0.4μm、アルミ成分90%、ポリエチレングリコール10%)
・C1−3:パールマイカ 日本光研工業社製「TWINCLE PEARL SXE」(粒径37μm、酸化チタン被覆合成マイカ)
・C2−1:アルミペースト 旭化成ケミカルズ社製「シルビーズM050−AP」(平均粒子径5μm、平均厚み0.1μm、アルミ成分90%、ポリエチレングリコール10%)
・C2−2:アルミペースト 旭化成ケミカルズ社製「シルビーズM100−BP」(平均粒子径10μm、平均厚み0.2μm、アルミ成分90%、ポリエチレングリコール10%)
・C2−3:パールマイカ 日本光研工業社製「TWINCLE PEARL SXA」(粒径9μm、酸化チタン被覆合成マイカ)
【0077】
(4)黒色顔料
・D−1:カーボンブラック(コロンビア社製「Raven5000」、一次粒子径:11nm)
【0078】
(5)黒色染料
・D−2:ニグロシン(オリヱント化学工業社製「Cramity81」)
【0079】
(6)黒色以外の顔料
・E−1:青顔料、群青(ウルトラマリンブルー)
【0080】
膨潤性層状珪酸塩含有ポリアミド6樹脂(P−1)〜(P−8)の製造
【0081】
製造例1
ε−カプロラクタム100質量部に対して、亜リン酸0.4質量部、膨潤性層状珪酸塩(B−1)(フッ素雲母)4.5質量部、水5質量部を仕込み、80℃で1時間攪拌した後、260℃、0.7MPa下で1時間攪拌し、次いで260℃、常圧で1時間攪拌し、重合を行い、膨潤性層状珪酸塩(B−1)を5質量%(この質量%は、得られたポリアミド6樹脂100質量部に対する質量%である(以下、同様)含有するポリアミド6樹脂(P−1)を得た。
【0082】
製造例2
ε−カプロラクタム100質量部に対して、亜リン酸0.4質量部、膨潤性層状珪酸塩(B−1)0.9量部、水5質量部を仕込み、80℃で1時間攪拌した後、260℃、0.7MPa下で1時間攪拌し、次いで260℃、常圧で1時間攪拌し、重合を行い、膨潤性層状珪酸塩(B−1)を1質量%含有するポリアミド6樹脂(P−2)を得た。
【0083】
製造例3
ε−カプロラクタム100質量部に対して、亜リン酸0.4質量部、膨潤性層状珪酸塩(B−1)9.2質量部、水5質量部を仕込み、80℃で1時間攪拌した後、260℃、0.7MPa下で1時間攪拌し、次いで260℃、常圧で1時間攪拌し、重合を行い、膨潤性層状珪酸塩(B−1)を10質量%含有するポリアミド6樹脂(P−3)を得た。
【0084】
製造例4
ε−カプロラクタム100質量部に対して、亜リン酸0.4質量部、膨潤性層状珪酸塩(B−2)(モンモリロナイト)4.5質量部、水5質量部を仕込み、80℃で1時間攪拌した後、260℃、0.7MPa下で1時間攪拌し、次いで260℃、常圧で1時間攪拌し、重合を行い、膨潤性層状珪酸塩(B−2)を5質量%含有するポリアミド6樹脂(P−4)を得た。
【0085】
製造例5
ε−カプロラクタム100質量部に対して、亜リン酸0.4質量部、膨潤性層状珪酸塩(B−3)(ヘクトライト)4.5質量部、水5質量部を仕込み、80℃で1時間攪拌した後、260℃、0.7MPa下で1時間攪拌し、次いで260℃、常圧で1時間攪拌し、重合を行い、膨潤性層状珪酸塩(B−3)を5質量%含有するポリアミド6樹脂(P−5)を得た。
【0086】
製造例6
ε−カプロラクタム100質量部に対して、亜リン酸0.4質量部、膨潤性層状珪酸塩(B−1)0.45質量部、水5質量部を仕込み、80℃で1時間攪拌した後、260℃、0.7MPa下で1時間攪拌し、次いで260℃、常圧で1時間攪拌し、重合を行い、膨潤性層状珪酸塩(B−1)を0.5質量%含有するポリアミド6樹脂(P−6)を得た。
【0087】
製造例7
ε−カプロラクタム100質量部に対して、亜リン酸0.4質量部、膨潤性層状珪酸塩(B−1)10質量部、水5質量部を仕込み、80℃で1時間攪拌した後、260℃、0.7MPa下で1時間攪拌し、次いで260℃、常圧で1時間攪拌し、重合を行い、膨潤性層状珪酸塩(B−1)を11質量%含有するポリアミド6樹脂(P−7)を得た。
【0088】
製造例8
ε−カプロラクタム100質量部に対して、亜リン酸0.4質量部、水5質量部を仕込み、80℃で1時間攪拌した後、260℃、0.7MPa下で1時間攪拌し、次いで260℃、常圧で1時間攪拌し、重合を行い、ポリアミド6樹脂(P−8)を得た。
【0089】
ポリアミド樹脂(P−9)および(P−10)
・ポリアミド樹脂(P−9):ポリアミド11、アルケマ社製「BMN O」
・ポリアミド樹脂(P−10): ポリアミド12、アルケマ社製「AMN O TLD」
【0090】
上記ポリアミド樹脂(P−1)〜(P−8)の組成を下記表1にまとめた。
【表1】
【0091】
実施例1
製造例1で得られた膨潤性層状珪酸塩含有ポリアミド樹脂(P−1)105質量部と、メタリック材(アルミニウム粉)(C1−1)1質量部と、メタリック材(アルミニウム粉)((C2−1)を2質量部になるように一括混合し、単軸押出機の主ホッパーより投入し、溶融混練をおこない、ダイスよりストランド状に押出しした後、冷却、ペレタイズし、ポリアミド樹脂組成物ペレットを得た。溶融混練は、樹脂温度260℃、スクリュー回転200rpm、吐出量30kg/時間にておこなった。
【0092】
得られたポリアミド樹脂組成物を用い、上記試験片を作製した後、上記各種評価を行った。それらの結果を表2−1および表2−2に示す。
【0093】
実施例2〜21、比較例1〜11
表2−1および表2−2に記載の配合量で各成分を配合した以外は実施例1と同様にして、ポリアミド樹脂組成物ペレットを得た。
【0094】
得られたポリアミド樹脂組成物を用い、上記試験片を作製した後、上記各種評価を行った。それらの結果を表2−1および表2−2に示す。
【0095】
【表2-1】
【表2-2】
【0096】
実施例1〜21のポリアミド樹脂組成物は、輝度およびフリップフロップ値が高く、フローマークの発生が少なかった。また、剛性や表面光沢度にも優れていた。
【0097】
比較例1のポリアミド樹脂組成物は、アルミニウム粉の(C2)/(C1)が小さかったため、フローマークが発生した。
【0098】
比較例2、3のポリアミド樹脂組成物は、1種類のアルミニウム粉のみを用いたため、フローマークが発生した。
【0099】
比較例4のポリアミド樹脂組成物は、アルミニウム粉C2−1(5μm)しか用いていないため輝度の評価に劣っていた。
【0100】
比較例5のポリアミド樹脂組成物は、アルミニウム粉C2−1(5μm)のみで、その含有量が1質量部)と少なかったため、輝度が低かった。
【0101】
比較例6のポリアミド樹脂組成物は、C2/C1のアルミニウム粉C2−1(5μm)の含有量が多かったため、輝度の評価に劣っていた。
【0102】
比較例7および比較例9のポリアミド樹脂組成物は、膨潤性層状珪酸塩の含有量が少なかったため、フリップフロップ値が低かった。
【0103】
比較例8のポリアミド樹脂組成物は、膨潤性層状珪酸塩の含有量が多かったため、表面光沢度が低くかった。
【0104】
比較例10のポリアミド樹脂は、アルミニウム粉の含有量が少なかったため、輝度が低かった。
【0105】
比較例11のポリアミド樹脂は、アルミニウム粉の含有量が多かったため、表面光沢が低かった。
図1