特許第6246487号(P6246487)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許62464873次元的基板用の高密度マスク及びその製造方法
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6246487
(24)【登録日】2017年11月24日
(45)【発行日】2017年12月13日
(54)【発明の名称】3次元的基板用の高密度マスク及びその製造方法
(51)【国際特許分類】
   C23C 14/04 20060101AFI20171204BHJP
   H05K 3/14 20060101ALI20171204BHJP
   H05K 1/02 20060101ALI20171204BHJP
   G02C 7/04 20060101ALN20171204BHJP
【FI】
   C23C14/04 A
   H05K3/14 B
   H05K1/02 B
   !G02C7/04
【請求項の数】18
【外国語出願】
【全頁数】17
(21)【出願番号】特願2013-91216(P2013-91216)
(22)【出願日】2013年4月24日
(65)【公開番号】特開2013-229605(P2013-229605A)
(43)【公開日】2013年11月7日
【審査請求日】2016年2月4日
(31)【優先権主張番号】13/455,209
(32)【優先日】2012年4月25日
(33)【優先権主張国】US
(73)【特許権者】
【識別番号】510294139
【氏名又は名称】ジョンソン・アンド・ジョンソン・ビジョン・ケア・インコーポレイテッド
【氏名又は名称原語表記】Johnson & Johnson Vision Care, Inc.
(74)【代理人】
【識別番号】100088605
【弁理士】
【氏名又は名称】加藤 公延
(74)【代理人】
【識別番号】100130384
【弁理士】
【氏名又は名称】大島 孝文
(72)【発明者】
【氏名】プラビーン・パンドジラオ−エス
(72)【発明者】
【氏名】ジェームズ・ダニエル・リオール
(72)【発明者】
【氏名】アダム・トナー
【審査官】 今井 淳一
(56)【参考文献】
【文献】 特開2011−098487(JP,A)
【文献】 特開平03−264685(JP,A)
【文献】 特開平04−069617(JP,A)
【文献】 特表2009−506200(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H05K 3/14
H05K 1/02
G02C 7/04
C23C 14/04
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
非平面状の基材と組み合わせて使用される1つ又は2つ以上のコンタクトレンズ用のシャドーマスクを製造するための方法であって、
内部に機械加工された1つ又は2つ以上の非平面状の型枠を有するマンドレルを製造する工程であって、前記1つ又は2つ以上の非平面状の型枠が、マスクされる非平面状の基材の形状に対応している、工程と、
前記マンドレル中の前記1つ又は2つ以上の非平面状の型枠内に1つ又は2つ以上のシャドーマスクブランクを形成する工程と、
前記1つ又は2つ以上のシャドーマスクブランクを前記マンドレルから剥離する工程と、
前記1つ又は2つ以上のシャドーマスクブランクに所定のパターンを機械加工して1つ又は2つ以上のシャドーマスクを形成する工程であって、前記所定のパターンが前記1つ又は2つ以上のシャドーマスクのサイズよりも大幅に小さい特徴部を有するものである、工程と、を含み、
マンドレルを製造する前記工程が、ほぼ平行な前面及び後面を有するほぼ円筒形の構造体を作製することと、前記1つ又は2つ以上の非平面状の型枠を前記前面に機械加工することとを含む、方法。
【請求項2】
前記1つ又は2つ以上の非平面状の型枠を前記前面に機械加工することが、前記1つ又は2つ以上の非平面状の型枠を旋盤によって切削することを含む、請求項1に記載の1つ又は2つ以上のシャドーマスクを製造するための方法。
【請求項3】
前記1つ又は2つ以上の非平面状の型枠を前記前面に機械加工することが、前記1つ又は2つ以上の非平面状の型枠をターンミルによって切削することを含む、請求項1に記載の1つ又は2つ以上のシャドーマスクを製造するための方法。
【請求項4】
前記1つ又は2つ以上の非平面状の型枠を前記前面に機械加工することが、前記1つ又は2つ以上の非平面状の型枠を回転移動によって切削することを含む、請求項1に記載の1つ又は2つ以上のシャドーマスクを製造するための方法。
【請求項5】
前記1つ又は2つ以上の非平面状の型枠を前記前面に機械加工することが、前記1つ又は2つ以上の非平面状の型枠をダイヤモンドターニングによって切削することを含む、請求項1に記載の1つ又は2つ以上のシャドーマスクを製造するための方法。
【請求項6】
前記1つ又は2つ以上の非平面状の型枠を前記前面に機械加工することが、前記1つ又は2つ以上の非平面状の型枠を放電加工によって切削することを含む、請求項1に記載の1つ又は2つ以上のシャドーマスクを製造するための方法。
【請求項7】
前記1つ又は2つ以上の型枠内に1つ又は2つ以上のシャドーマスクブランクを形成する前記工程が、電着プロセスを含む、請求項1に記載の1つ又は2つ以上のシャドーマスクを製造するための方法。
【請求項8】
前記電着プロセスが、ニッケルを前記1つ又は2つ以上のフィルムとして150μm(150ミクロン)未満の厚さに電気メッキすることを含む、請求項7に記載の1つ又は2つ以上のシャドーマスクを製造するための方法。
【請求項9】
前記1つ又は2つ以上のシャドーマスクブランクを前記マンドレルから剥離する前記工程が、前記1つ又は2つ以上のシャドーマスクブランクを前記マンドレルから物理的に分離することを含む、請求項1に記載の1つ又は2つ以上のシャドーマスクを製造するための方法。
【請求項10】
前記1つ又は2つ以上のシャドーマスクブランクを前記マンドレルから剥離する前記工程が、前記マンドレルを化学的に除去することを含む、請求項1に記載の1つ又は2つ以上のシャドーマスクを製造するための方法。
【請求項11】
前記1つ又は2つ以上のシャドーマスクブランクに所定のパターンを機械加工する前記工程が、前記パターンの前記特徴部をレーザーミクロ機械加工することを含む、請求項1に記載の1つ又は2つ以上のシャドーマスクを製造するための方法。
【請求項12】
前記パターンの前記特徴部が、1μm(1ミクロン)の幅を有しうる、請求項11に記載の1つ又は2つ以上のシャドーマスクを製造するための方法。
【請求項13】
前記1つ又は2つ以上のシャドーマスクブランクに所定のパターンを機械加工する前記工程が、レーザーアブレーションを用いることを含む、請求項1に記載の1つ又は2つ以上のシャドーマスクを製造するための方法。
【請求項14】
前記1つ又は2つ以上のシャドーマスクブランクに所定のパターンを機械加工する前記工程が、化学エッチングを用いることを含む、請求項1に記載の1つ又は2つ以上のシャドーマスクを製造するための方法。
【請求項15】
前記1つ又は2つ以上のシャドーマスクブランクに所定のパターンを機械加工する前記工程が、プラズマエッチングを用いることを含む、請求項1に記載の1つ又は2つ以上のシャドーマスクを製造するための方法。
【請求項16】
コンタクトレンズ用のシャドーマスクを製造するために使用されるシャドーマスクブランクを形成するためのマンドレルであって、
第1の面と第2の面とを有するほぼ円筒形の構造体であって、前記第1の面と前記第2の面とがほぼ平行である、構造体と、
前記ほぼ円筒形の構造体の前記第1の面に協働可能に付随する1つ又は2つ以上の取り付け機構であって、前記1つ又は2つ以上の取り付け機構が、前記マンドレルを機械加工工具に固定するように構成されている、取り付け機構と、
前記ほぼ円筒形の構造体の前記第2の面に機械加工された1つ又は2つ以上の型枠であって、前記1つ又は2つ以上の型枠が、マスクされる非平面状の基材と一致する非平面状のパターンを有する、型枠と、を含む、マンドレル。
【請求項17】
前記マンドレルが金属材料を含む、請求項16に記載のシャドーマスクブランクを形成するためのマンドレル。
【請求項18】
前記金属材料がアルミニウムを含む、請求項17に記載のシャドーマスクブランクを形成するためのマンドレル。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、マスク並びに該マスクを製造するための装置及び方法に関し、より詳細には、最高の公差を有する複雑な3次元的基材用の精密マスク、並びにこれらの高密度精密マスクを製造するための装置及び方法に関する。
【背景技術】
【0002】
電子装置の小型化が進むのにともなって、多様な用途においてウェアラブル又は埋め込み型のマイクロ電子装置が創出される可能性が益々高まっている。こうした用途としては、体内の化学プロセスの諸側面の観測、様々な機構(自動的に、又は測定値に応じて、又は外部制御信号に応じてなど)による調節された量の薬物又は治療薬の投与、及び臓器又は組織の性能の強化などが挙げられる。こうした装置の例としては、グルコース注入ポンプ、ペースメーカー、除細動器、補助人工心臓及び神経刺激装置が挙げられる。新規な、特に有用な応用分野の1つに、ウェアラブルな眼科用レンズ及びコンタクトレンズがある。例えば、ウェアラブルなレンズに、電子的に調節可能な焦点を有するレンズアセンブリを組み込むことで眼の性能を強化又は向上させることができる。別の例では、調節可能な焦点を有するか又は有さないウェアラブルコンタクトレンズに前角膜(涙膜)中の特定の化学物質の濃度を検出するための電子センサを組み込むことができる。レンズアセンブリにおける埋め込み型の電子部品の使用により、電子部品に電力供給及び/又は再励起する方法として、また、電子部品同士を相互接続するため、内部及び外部の感知及び/又は観測を行うため、並びに電子部品及びレンズの全体的機能の制御を行うために、電子部品と通信する潜在的必要性が生じる。
【0003】
人の眼は、数百万の色を識別する能力、光条件の変化に対して容易に適応する能力、及び、高速のインターネット接続を上回る速度で信号又は情報を脳に伝達する能力を有する。コンタクトレンズ及び眼内レンズなどのレンズは、現在、近視、遠視及び乱視などの視力障害を補正する目的で使用されている。しかしながら、更なる要素を組み込んだ、適切に設計されたレンズを使用することで、視力障害を補正するのみばかりか、視力の向上を図ることができる。
【0004】
従来のコンタクトレンズは、上記に簡単に述べた様々な視力の問題を解消するための特定の形状を有するポリマー構造である。機能性の向上を図るため、これらのポリマー構造に各種の回路及び要素を組み込む必要がある。例えば、制御回路、マイクロプロセッサ、通信装置、電力供給装置、センサ、アクチュエータ、発光ダイオード、及び小型アンテナを特別に設計された光電子要素を介してコンタクトレンズに組み込むことで、視力を補正するだけでなく、視力を向上させ、更に本明細書に述べられるような更なる機能性を与えることができる。電子及び/又は電動式コンタクトレンズは、ズームイン及びズームアウト機能により、又は単純にレンズの屈折能力を変化させることにより、視力を向上させるように設計することができる。電子及び/又は電動式コンタクトレンズは、色及び解像度を向上させ、文字情報を表示し、会話をリアルタイムで字幕に翻訳し、ナビゲーションシステムからの視覚的キューを与え、画像処理及びインターネットアクセスを与えるように設計することができる。こうしたレンズは装用者が低光量条件下でも見えるように設計することもできる。適切に設計された電子部品及び/又はレンズ上の電子機器の適切な配置により、可変焦点光学レンズを用いることなく、例えば網膜に画像を投影することが可能となり、新規な画像ディスプレーを提供し、更には目覚ましアラートを提供することも可能となる。これらの機能若しくは同様の機能のいずれかに代えるか、又はこれに加えて、コンタクトレンズに装用者のバイオマーカー及び健康指標を非侵襲的に監視するための要素を組み込むこともできる。例えば、レンズに組み込まれたセンサによって涙膜の成分を分析することにより、糖尿病患者が血液を採取する必要なくして、血糖値を監視することが可能となる可能性がある。更に、適宜構成されたレンズには、コレステロール、ナトリウム及びカリウムの濃度、並びに他の生物学的マーカーを監視するためのセンサを組み込むことができる。これを無線データ送信器と組み合わせることにより、医師が患者の血液成分をほぼ即時に把握することが可能となり、患者が検査機関に赴いて血液を採取するために時間を浪費する必要がなくなる。更に、レンズに組み込まれたセンサを利用して眼に入射する光を検出することにより、周辺光条件を補償する、又は瞬きのパターンを調べることができる。
【0005】
装置の適当な組み合わせにより、潜在的に無制限の機能性が提供されうるが、光学等級のポリマーの小片上に余分な要素を組み込むには多くの困難をともなう。一般的に、こうした要素をレンズ上に直接製造することは多くの理由により困難であり、また、非平面状の表面に平面状の装置を実装して相互に接続することは困難である。一定の縮尺での製造も困難である。レンズ上又はレンズ内に配置される要素は、眼の液体環境からこうした要素を保護する一方で、小型化され、わずか約1.5平方センチメートル足らずの透明なポリマー上に集積化される必要がある。更なる要素によって厚みが増したコンタクトレンズを装用者にとって快適かつ安全なものとすることにも困難がともなう。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
コンタクトレンズなどの眼科用装置の面積及び体積の制約、並びに装置が使用される環境を考慮すると、装置を物理的に実現するためには、その大部分が光学プラスチックからなる非平面状の表面に多数の電子要素を実装して相互接続することを含む、多くの問題を克服しなければならない。したがって、3次元形状を形成し、この3次元形状に高い精度及び高い再現性で相互接続及びオフセットを金属化するか又は他の何らかの方法で形成することが求められている。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の3次元基板用の高密度マスク、及び高密度マスクの製造方法は、上記に簡単に述べた難点を克服するものである。
【0008】
一態様に基づけば、本発明は、非平面状の基材と組み合わせて使用される1つ又は2つ以上のシャドーマスクを製造するための方法に関する。本方法は、内部に機械加工された1つ又は2つ以上の型枠を有するマンドレルを製造する工程であって、その1つ又は2つ以上の型枠が、マスクされる非平面状の基材の形状に対応している、工程と、前記マンドレルの前記1つ又は2つ以上の型枠内に1つ又は2つ以上のシャドーマスクブランクを形成する工程と、前記1つ又は2つ以上のシャドーマスクブランクを前記マンドレルから剥離する工程と、前記1つ又は2つ以上のシャドーマスクブランクに所定のパターンを機械加工して1つ又は2つ以上のシャドーマスクを形成する工程であって、前記所定のパターンが前記1つ又は2つ以上のシャドーマスクのサイズよりも大幅に小さい(substantially similar)特徴部を含むものである工程と、を含む。
【0009】
別の態様によれば、本発明は、シャドーマスクブランクを形成するためのマンドレルに関する。本マンドレルは、ほぼ平行な第1の面と第2の面と、マンドレルを機械加工工具に固定するように構成され、前記ほぼ円筒形状の構造の前記第1の面に協働可能に付随した1つ又は2つ以上の取り付け機構と、マスクされる非平面状の基材と一致する非平面状のパターンを有する、前記ほぼ円筒形状の構造の前記第2の面に機械加工された1つ又は2つ以上の型枠と、を有する。
【0010】
所定のパターンを形成する遮蔽された領域及び開放された領域を形成するマスクは、非平面状又は3次元的な表面又は基材上に相互接続を形成するために用いられるプロセスにおいて有用な装置である。一般的な意味において、3次元的基材の所定の領域に材料を成膜することを可能とする単純なマスクによれば、例えば電動式眼科用装置上の電気的相互接続のような特定の特徴部を形成するために用いられる後の材料除去プロセスを最適化することができる。この用途又はマスクの使用は、大きな領域を遮蔽又は露出させるにはその精巧性が限定されており、これは主としてマスクの品質によるところが大きい。しかしながら、本発明の装置及び方法に基づけば精密マスクを製造することが可能であり、これを使用して電動式眼科用途において用いられるような極めて複雑な3次元的基材に細密な特徴部を形成することができる。
【0011】
本発明に基づくマスク又はシャドーマスクを製造するための方法は、多くの工程を含む。第1の工程は、マンドレルを製造又は形成することを含む。マンドレルは、マスクされる物品又は要素の所望の内部断面形状及び特徴部を表すように形成された1つ又は2つ以上の型枠又は型枠ウェルを好ましくは有する。本発明に基づくマスク又はシャドーマスクの製造又は形成における次の工程では、マンドレルの前記1つ又は2つ以上の型枠内に1つ又は2つ以上のシャドーマスクブランクを製造することを行う。シャドーマスクブランクは、所望のパターンがシャドーマスクブランクに切削又は機械加工された後、シャドーマスクとなる。前記1つ又は2つ以上のシャドーマスクブランクは、電鋳を含む成膜プロセスなどの任意の数の適当な技術を用いて製造することができる。本発明に基づくマスク又はシャドーマスクを製造するプロセスにおける次の最後の工程では、前記1つ又は2つ以上のシャドーマスクブランクを含むメッキ板をマンドレルから剥離し、内部にパターンを形成して特定のシャドーマスクを形成することを行う。パターンの形成は、レーザーアブレーションを含む任意の数の精密機械加工プロセスを用いて行うことができる。
【0012】
本明細書に基づいて製造及び/又は使用されるマンドレルは、マスクされる3次元的表基材と正確に対応した1つ又は2つ以上の型枠を有してよく、これらの型枠は多くの形態に構成することができる。例えばマンドレル上の1つ又は2つ以上の型枠は、型枠の密度が高くなるように配列することができる。別の言い方をすれば、1個のマンドレル上の設計の数が増えるようにマンドレル上の型枠の構成を改変することができる。マンドレル上の型枠の構成は、プロセスの再現性が高められるように改変することもできる。別の言い方をすると、マンドレルのこの構成は、シャドーマスクブランクのマンドレルからの剥離をより容易とするように改変することができる。他の多くの構成を用いて様々な機能を得ることができる点には注意を要する。
【0013】
マスクの精度は、マンドレルの型枠の精度によって主として決まる。マンドレルの型枠は、3次元的基材の形状に正確に一致することが好ましい。したがって、本発明において用いられるプロセスにより、極めて高い精度でマンドレルに型枠を機械加工することが可能となる。更に、マンドレルは、プロセス全体の効率も同様に高められるように設計されることが好ましい。
【0014】
本発明に基づく高密度マスク及び高密度マスクの製造方法によれば、更なる後処理作業を行うことなく、細密な非平面状又は3次元的基材をマスクしてその上に精密な特徴部を形成するための手段が提供される。本明細書に記載されるマスク及びプロセスは、細密な要素を製造するためのコスト効率が高く、効率のよい手段を提供するものである。
【図面の簡単な説明】
【0015】
本発明の前述の特徴及び利点並びに他の特徴及び利点は、以下の付属の図面に示される本発明の好ましい実施態様のより詳細な説明から明らかとなるであろう。
図1A】本発明に基づく1個のシャドーマスクブランクを有する第1の例示的なマンドレルを示す図。
図1B】本発明に基づく1個のシャドーマスクブランクを有する第1の例示的なマンドレルを示す図。
図1C】本発明に基づく1個のシャドーマスクブランクを有する第1の例示的なマンドレルを示す図。
図2A】本発明に基づく複数のシャドーマスクブランクを有する第2の例示的なマンドレルを示す図。
図2B】本発明に基づく複数のシャドーマスクブランクを有する第2の例示的なマンドレルを示す図。
図2C】本発明に基づく複数のシャドーマスクブランクを有する第2の例示的なマンドレルを示す図。
図3A】本発明に基づく複数のシャドーマスクブランクを有する例示的なマンドレルアセンブリを示す図。
図3B】本発明に基づく複数のシャドーマスクブランクを有する例示的なマンドレルアセンブリを示す図。
図3C】本発明に基づく複数のシャドーマスクブランクを有する例示的なマンドレルアセンブリを示す図。
図3D】本発明に基づく複数のシャドーマスクブランクを有する例示的なマンドレルアセンブリを示す図。
図4】本発明に基づくマスクを用いて相互連結を配置することが可能な表面を有する例示的な3次元的基材を示す図。
図5】本発明に基づく図4に示される基材上に配置された例示的なシャドーマスクを示す図。
図6】本発明に基づくシャドーマスクを用いて相互連結が成膜された図4に示される基材を示す図。
図7】光学要素及び電子部品の両方を有するコンタクトレンズを示す図。
【発明を実施するための形態】
【0016】
本明細書において簡単に述べるように、所定のパターンを形成する遮蔽された領域及び開放された領域を形成するマスクは、非平面状又は3次元的な表面又は基材上に例えば電気的相互接続のようなパターンを形成するために用いられるプロセスにおいて有用な装置である。多くの用途において、マスクの使用は、大きな領域を遮蔽又は露出させるにはその精巧性が限定されており、これは主としてマスクの品質によるところが大きい。しかしながら、本発明の装置及び方法に基づけば精密マスクを製造することが可能であり、これを使用して電動式眼科用途において用いられるような極めて複雑な3次元的表面に相互接続特徴部などの特徴部を形成することができる。
【0017】
本発明に基づいてマスク又はシャドーマスクを製造又は形成する第1の例示的な工程では、マンドレルの製造を行う。マンドレルには、機械加工された被機械加工物を成形するために使用される物体、機械加工される材料を保持若しくは他の何らかの方法で固定する工具、又は他の動く工具を固定するために用いることができる工具などの多くの定義がある。本明細書において使用され、下記に詳細に説明されるように、マンドレルとは、その上にシャドーマスクを製造することが可能な土台型である。より詳細には、マンドレルとは、その内部又はその上に1つ又は2つ以上のシャドーマスクブランクを形成することが可能な要素である。
【0018】
例示的なマンドレルは、その一方の平坦面に機械旋盤又は同様の装置に取り付けるための1つ又は2つ以上のシャフトを有し、その他方の平坦面に平らな表面を有するほぼディスク又は円筒形状の構造を有している。真空チャックを有する機械と組み合わせて機能する取り付け機構などの、標準的な機械旋盤用の取り付けシャフト以外の他の取り付け機構を本発明に基づいて使用することも可能である点には注意を要する。マスクされる3次元的表面又は基材の正確なパターンが、マンドレルの平坦面上に、入り組んだ、かつ/又は複雑な幾何形状を形成するための任意の適当な機械加工技術によって1乃至それ以上の回数だけ複製される。基本的にマンドレルは、いったん機械加工されるとマスクされる物品の所望の内部断面形状及び特徴部を表す1つ又は2つ以上のパターン又は型枠を有することになる。マスクされる3次元的表面のパターンは、旋盤の使用など、入り組んだパターンを機械加工するための任意の適当な技術を用いてマンドレルの平坦面に機械加工することができるが、このことは本明細書において詳細に説明するような1つ又は2つ以上の取り付け用のシャフトの必要性を説明するものである。
【0019】
例示的なマンドレルはほぼディスク又は円筒形状の構造を有するが、所定の型枠を内部に機械加工することができるものであればマンドレルは任意の適当な形状を有しうる点には注意を要する。例えば非円形の構造を使用することができる。
【0020】
マンドレルのサイズ、個々のシャドーマスクブランクのサイズ、及び1個のマンドレル上に製造されるシャドーマスクブランクの所望の数によって、何個の型枠又は型枠ウェルがマンドレルの平坦面に機械加工されるかが決まる。マンドレル1個につき1個のみの型枠が望ましいか又は必要である場合、マンドレルは、ディスク状の構造ではなく、マンドレルの反対側の面の中心に1本の取り付けシャフトが配置された円筒形状の構造を有することが好ましい。しかしながら、1個のマンドレル上に複数の型枠又は型枠ウェルが望ましいか又は必要である場合には、マンドレルは、マンドレルの反対側の面のそれぞれの型枠又は型枠ウェルの背後の中心に1本の取り付けシャフトが配置されたディスク形状の構造を好ましくは必要とする。例えば、13個の型枠がマンドレルに機械加工される場合には、それぞれの型枠の真後ろの中心に1本ずつ配置された13本の取り付けシャフトが必要とされる。上記に述べたように、例えば真空チャックを有する機械と組み合わせて機能するもののような他の取り付け機構を用いることも可能である。このような中心配置は、型枠の機械加工が旋盤などの回転工具を使用して行われる場合に必要とされる。回転工具では、型枠が対称となるためには、取り付けシャフトは型枠の中心に一致しなければならない。各型枠が中心に配置されたそれぞれの取り付けシャフトを有することに加えて、マンドレルは、例えばその外周の近くのようにマンドレルの中心から離れた位置に型枠を機械加工する際に揺らぎが導入されないように軽量の材料で、かつ応力、歪み及び繰り返しの使用による摩耗に耐えるだけの充分な強度を有する材料から形成されることが好ましい。例示的な一実施形態では、マンドレルは、アルミニウムなどの軽量で強度重量比が高く、比較的安価な金属材料から製造することができる。更に、アルミニウムは機械加工が容易であり、又、別の実施形態では化学的に容易に溶解されることから、複雑な型枠をほぼ正確に製造することができる。
【0021】
上記に述べた例示的な実施形態では、1つ又は2つ以上の型枠は、精密かつ/又は入り組んだ/細密な特徴部を製造するための任意の数の技術を用いて製造することができる。上記に述べたように、旋盤又はターンミル及びロータリートランスファーマシンなどの他の回転式機械は、ダイヤモンドターニング(diamond point turning)として知られるプロセスにおいて前記1つ又は2つ以上の型枠を製造するための天然又は合成ダイアモンド先端工具を備えていてよい。ダイヤモンドターニングは、機械加工の最初の段階が一連のコンピュータ数値制御旋盤を使用して行われる多段階プロセスである。一連の連続した旋盤のそれぞれは、その前のものよりも精密となっている。一連の工程の最後の工程では、ダイアモンド先端工具を使用してサブナノメーターレベルの表面仕上げ及びサブマイクロメーターレベルの型枠の精度が得られる。別の例示的な実施形態では、前記1つ又は2つ以上の型枠は、放電加工を用いて製造することができる。放電加工は、放電を利用して材料を除去することで所定の形状又は型枠を形成することにより所定の形状を得る製造プロセスである。
【0022】
本発明に基づくマスク又はシャドーマスクを製造又は形成するための次の例示的な工程では、マンドレルの前記1つ又は2つ以上の型枠又は型枠ウェル内に1つ又は2つ以上のシャドーマスクブランクを製造することを行う。シャドーマスクブランクは、下記に詳しく説明するように、シャドーマスクブランクに所望のパターンが切削された後、シャドーマスクとなる。前記1つ又は2つ以上の型枠は、マスクされる3次元的表面又は基材と正確に一致するため、マンドレルの型枠はシャドーマスクブランクの鋳型である。本発明の例示的な一実施形態に基づけば、シャドーマスクブランクは電気メッキ又は電鋳プロセスによってマンドレルの各型枠内に製造することができる。電鋳は、電気メッキプロセスを用いて薄い部品を製造する金属成形プロセスである。電鋳は、製造される部品が最高の公差又は複雑性を有する場合に用いられる。電気メッキは、溶液中の金属イオンが電界によって移動することで基材の型枠上に金属の被膜をコーティング又はメッキし、メッキが完了した後にこれを型枠から剥離するプロセスである。プロセスの性質により、この技術によれば高い忠実度の構造の製造が可能である。別の言い方をすれば、電鋳によって、収縮又は歪みをいっさい生じることなく型枠が正確に複製される。任意の数の金属材料を用いてシャドーマスクブランクを製造することができる。例示的な一実施形態では、シャドーマスクブランクは、約50ミクロン〜約150ミクロンの全体の厚さを有するニッケルで製造することができる。シャドーマスクブランクの厚さは用途に応じて変わりうるものであり、したがってシャドーマスクブランクを形成するプロセスは電鋳から別の適当な方法に変更されうる点には注意を要する。
【0023】
本発明に基づくマスク又はシャドーマスクを製造又は形成する次の最後の例示的な工程では、前記1つ又は2つ以上のシャドーマスクブランクのメッキ板をマンドレルから剥離し、内部にパターンを形成してシャドーマスクを形成することを行う。メッキ板は、マンドレルの化学的除去又は2個の要素の物理的分離など、様々な方法でマンドレルから剥離することができる。マンドレルの化学的除去の例示的な一実施形態によれば、マンドレルと反応するがメッキ層とは反応しない化学物質によってマンドレル自体を溶解することができる。例示的な実施形態では、シャドーマスクブランクは、手によって、又はロボットマニピュレータによってマンドレルから物理的に分離してから、固定台に置き、内部に所望のパターンを形成することによりシャドーマスクを形成することを含む更なる処理を行う。物理的な分離を促進するため、マンドレルを振盪、振動、軽く叩く、又は他の何らかの方法により揺動させることで物理的に分離することができる。所望のパターンは例えば電気的相互接続などの特定の用途に対応する。このパターンは、レーザー機械加工、レーザーアブレーション、プラズマエッチング及び/又は化学エッチングを含む任意の適当な手段を用いた任意の適当な方法で形成することができる。例示的な一実施形態では、パターンはレーザーミクロ機械加工することによってシャドーマスクに形成される。したがって、シャドーマスクブランクをマンドレルから剥離した後、これらをレーザー機械加工システムに適合した保持固定台上に置く。現在利用可能なレーザーシステムの精度は、極めて入り組んだパターンのマイクロ加工を可能とする。例えば、1ミクロンと小さい特徴部のパターン幅を実現することが可能である。
【0024】
前記1つ又は2つ以上のシャドーマスクが完成した時点で、シャドーマスクを、これらを取り付けるか又は一時的に固定するためのレーザーミクロ機械加工固定台又は機構から、最終製品を形成するためにマスクされる表面又は基材に移す。例えば、最終製品が電動式コンタクトレンズのインサート上の電気的相互接続用の基材として用いられる場合、シャドーマスクの開口部から相互接続材料を基材上に成膜することを可能とするシャドーマスクを、特殊な固定部材によって前方光学要素に固定することができる。基材と適合する任意の好適な成膜プロセスを用いることができる。
【0025】
図1A、1B及び1Cを参照すると、その一方の平坦面104に1個の型枠又は型枠ウェル102が機械加工された例示的なマンドレル100(図1A)、1個のシャドーマスクブランク108を有するシャドーマスクブランクメッキ板106が形成された例示的なマンドレル100(図1B)、及びマンドレル100から分離されたシャドーマスクブランクメッキ板106(図1C)が示されている。上記に述べたように、シャドーマスクブランク108をシャドーマスクブランクメッキ板106から剥離することによって下記に詳しく述べるようにシャドーマスクを形成することができる。例えばレーザー機械加工などのマスクブランクからマスクを製造するために用いられるプロセスを用いてマスクブランク又はマスクをシャドーマスクブランクメッキ板106(form the shallow mask blank plate 106)から剥離することができる。この例示的な実施形態では、マンドレル100は、1個のみの型枠102が内部に機械加工されているためにほぼ円筒形状を有している。マンドレル100を旋盤に固定するための取り付けシャフト110が破線で示されている。上記に述べたように、例えば放電加工などの別のプロセスを用いて型枠102を機械加工する場合には取り付けシャフトは必要とされない。図の例示的な実施形態では、型枠102はマスクが用いられる3次元的基材と一致する多くの層及び面を有している。図1A、1B及び1Cは説明を目的としたものであって、実際の型枠の細部のレベルを必ずしも示していない点には注意を要する。マンドレル100は好ましくはアルミニウムからなり、シャドーマスクブランク108は好ましくはニッケルからなる。シャドーマスクブランク108及びシャドーマスク自体は、本明細書に述べられるような任意の適当なプロセスを用いて製造することが可能である。
【0026】
上記に述べたように、マンドレルは、1個のシャドーマスクメッキ層上に複数のシャドーマスクブランクを形成するためのほぼディスク形状の構造を含む、任意の数の形態を有しうる。図2A、2B及び2Cを参照すると、その一方の平坦面204に複数の型枠又は型枠ウェル202が機械加工された例示的なディスク形状のマンドレル200(図2A)、複数のシャドーマスクブランク208を有するシャドーマスクブランクメッキ板206が形成された例示的なマンドレル200(図2B)、及びマンドレル200から分離されたシャドーマスクブランクメッキ板206(図2C)が示されている。レーザー機械加工などのブランクからマスクを製造するために用いられるものと同じプロセスを用いて、この図では高密度シャドーマスクブランクであるシャドーマスクブランク208をシャドーマスクブランクメッキ板206から剥離することによってシャドーマスクを形成することができる。この例示的な実施形態では、マンドレル200は、内部に機械加工される複数の型枠202が収まるようにほぼディスク形状を有している。型枠202のサイズ、型枠202の数、及びマンドレル200のサイズはいずれも互いに関係、又は依存している。複数の型枠202は、任意の適当な構成で配列することができる。この構成は、多くの理由により、又は多くの設計上のパラメータを取り入れるために改変することが可能である。例えば、この構成を密度が高められるように改変することができる。別の言い方をすると、この構成はマンドレルの設計の数が増えるように改変することができる。この構成はまた、プロセスの再現性が高められるように改変することもできる。別の言い方をすると、この構成は、シャドーマスクブランクのマンドレルからの剥離をより容易とするように改変することができる。破線で示されるような、マンドレル200を旋盤に固定するための取り付けシャフト210が、反対側の平坦面上のそれぞれの型枠202の背後の中心に配置されている。上記に述べたように、例えば放電加工などの別のプロセスを用いて複数の型枠202を機械加工する場合には取り付けシャフトは必要とされない。図の例示的な実施形態では、型枠202はそれぞれ、マスクが用いられる3次元的基材と一致する同じ層及び面のパターンを有しているが、1個のマンドレル上に異なる型枠を用いることも可能である。この場合もやはり、マンドレル200は好ましくはアルミニウムからなり、シャドーマスクブランク208は好ましくはニッケルからなる。シャドーマスクブランク208及びシャドーマスク自体は、本明細書に述べられるような任意の好適なプロセスを用いて製造することが可能である。この場合もやはり、図2A、2B及び2Cは説明を目的としたものであって、実際の型枠の細部のレベルを必ずしも示していない点には注意を要する。
【0027】
別の例示的な実施形態によれば、上記に述べた例示的な実施形態の両方の特定の特徴を1つの新たな設計に組み合わせることができる。図3A、3B、3C及び3Dは、この別の例示的なマンドレルアセンブリの設計を示している。図3Aは、複数のスルホール開口部302を内部に有するほぼディスク形状の構造300を示している。このようなほぼディスク形状の構造300は、上記に述べたようにアルミニウムなどの任意の数の材料から製造することができる。スルホール開口部302は、1個の型枠又は型枠ウェル306を内部に有する1個のマンドレル構造304を受容するようなサイズに構成されている。1個のマンドレル構造304は、図1A及び1Bに示されるものと同じであってよい。基本的には、ほぼディスク形状の構造300と1個のマンドレル構造304との組み合わせによってマンドレルアセンブリ308が形成される。1個のマンドレル構造304及びほぼディスク形状の構造300は、例えばネジ山のような、互いを着脱可能に取り付けるための任意の適当な手段を有しうる。このように各要素同士が相互に連結されることにより、様々な型枠306を1個のマンドレルアセンブリ308に組み込むことができる。別の言い方をすると、1個のアセンブリ上に異なる型枠を用いることにより異なるマスクブランクを形成することができる。図3Cは、シャドーマスクブランクメッキ板310及び付随するシャドーマスクブランク312を有するマンドレルアセンブリ308を示し、図3Dは、マンドレルアセンブリ308から剥離されたシャドーマスクブランクメッキ板310を示している。上記に述べたように、図3A、3B及び3Cは説明を目的としたものであって、実際の型枠の細部のレベルを必ずしも示していない点には注意を要する。
【0028】
図3B及び3Cのマンドレルでは破線によってシャフトが示されていないが、何らかの取り付け手段を用いてマンドレルを製造することが好ましい。例えば、旋盤に取り付けるための1本のシャフト又は真空チャックを用いることができる。
【0029】
本発明のシャドーマスクは、3次元的基材を含む任意の数の基材上で用いることができる。図4はそのような例示的な基材400を示している。上記に述べたように、基材400は、例えば可変光学電子眼科用レンズなどの眼科用装置又はシステムの要素でありうる。図4は、基材400にわたった切断面を示すことにより、基材の3次元的態様の様々な特性を示している。基材400は、外側部分又は縁部402、中央部分又は中央領域404、並びに中間特徴部406及び408を有している。図に示されるように、これらの中間特徴部406及び408のそれぞれは、それ自身の局所的な3次元的トポロジーを有している。基材400を眼科用レンズに用いることができる例示的な実施形態では、縁部領域402から中央領域404までの高さの差は最大で4mmであり、中間特徴部406と408とは、0.001〜0.5mmの間で変化する局所的な高さの差を有してよく、その側壁の傾きは約2〜約90°まで変化している。眼科用装置用の基材400に着目した例示的な実施形態は、本発明に基づくマスク及びマスクの製造方法を説明するうえで有用であるが、基本的にあらゆる3次元的基材が、本明細書に述べられるシャドーマスク及びシャドーマスクの製造方法と整合することは当業者には直ちに明らかであろう。しかしながら、特筆すべきは、眼科用装置の基材が本質的に極めて細密なものであること、したがって、このような最高の公差のマスク及びマスクの製造方法が求められていることである。
【0030】
このような基材400用に本発明に基づいて製造されるすべてのシャドーマスクは、基材400の正確な形状と好ましくは一致する。別の言い方をすると、本発明に基づいて作製されるシャドーマスクは、基材の形状と正確に一致することが好ましく、基材と表面同士が可能なかぎり近接して配置されなければならない。図5を参照すると、基材400上に配置された例示的なシャドーマスク500が示されている。シャドーマスク500は特定の基材400の形状と一致しており、基材400上への材料の成膜が必要なすべての領域に切欠き502を有している。シャドーマスク500は、本明細書において述べられるような任意の数の成膜技術と組み合わせて用いることができる。上記に述べたように、基材400が眼科用装置の構成要素である場合、シャドーマスク500を用いて基材400上に導電トレース/相互接続を形成することができる。シャドーマスク500の切欠き502は、導電トレース/相互接続の所望のパターンに好ましく対応していなければならない。
【0031】
付随する切欠き502を有するシャドーマスク500をその一致した3次元的基材400上に配置及び位置合わせした時点でシャドーマスキングプロセスは完了し、金フィルムのスパッタリング成膜を含む、薄膜形成に適した任意の技術を用いることができる。この例示的な説明では金フィルムについて記載するが、金属フィルム、誘電体フィルム、高誘電率(High-k)フィルム、導電性及び非導電性フィルムを含む、マスク成膜に適合した多くのフィルムの使用が可能である点には注意を要する。
【0032】
基材400上の切欠き502に対応した領域及びシャドーマスク500自体の上に適当な厚さの金フィルムを成膜する成膜プロセスが行われた後、図6に示されるように、導電トレース/相互接続600が直接形成された基材400が結果として形成される。シャドーマスク500は、導電トレース/相互接続が必要とされない領域において3次元的基材400を直接遮蔽した。しかしながら切欠き502に対応する領域では、基材400の表面上に導電トレース/相互接続特徴部600が形成されている。
【0033】
導電トレース/相互接続特徴部600が上記に述べた方法によって形成された後、特定の例示的な実施形態では、レーザーアブレーション処理を再び用いることができる。シャドーマスク500によって形成された導電トレース/相互接続特徴部600がレーザーアブレーションによって得られる精度のものではない場合、形成された導電トレース/相互接続特徴部600をレーザーアブレーションの使用によって「トリミング」するか又は更に形成することができる。特定の例示的な実施形態では、所望の仕上げられた製品に極めて近い特徴部がシャドーマスキングにより形成された後、レーザーアブレーションによってわずかな変更が加えられるため、このようなトリミングによってスループットが改善されうる。
【0034】
本発明に基づいたマスク及びマスクの製造方法は任意の基材に対して使用することができるが、例示的な実施形態は、眼科用装置又はシステムの構成要素となりうる基材に関して述べた。このような眼科用装置又はシステムの1つとして電動式又は電子コンタクトレンズがある。したがって、完全を期すために、例示的な電動式又は電子コンタクトレンズについて本明細書に簡単な説明を記載する。
【0035】
例示的な電動式又は電子コンタクトレンズは、1つ又は2つ以上の視力障害を有する患者の視力を補正かつ/又は向上させるか、又は他の有用な眼科的機能を行ううえで必要な要素を有する。更に、本発明の電動式又は電子コンタクトレンズは、単純に通常の視力を向上する目的で使用することもでき、又は広範な機能性を与えることもできる。電子コンタクトレンズは、コンタクトレンズに埋め込まれるか又は任意の適当な機能性を与えるためにレンズなしで電子部品を単純に埋め込んだ、組み立てられた前方光学要素である可変焦点光学レンズとして構成することができる。例示的な電子レンズは、上述したような任意の数のコンタクトレンズに組み込むことができるが、説明を簡単にするため、本開示では、1回使用、1日使い捨て用の視力障害を補正するための電子コンタクトレンズについて主に述べる。
【0036】
ここで図7を参照すると、光学的要素及び電子的要素の両方を含むために、電気的及び機械的相互接続が必要とされるコンタクトレンズ700が示されている。コンタクトレンズ700は、視力の補正及び/又は向上機能を有しても有さずともよく、又は任意の適当な機能性を与える埋め込まれた電子部品の基材として単純に機能しうる光学領域702を有している。図の例示的な実施形態では、光学領域702を形成するポリマー/プラスチックは拡張されており、電子部品が取り付けられる基材704を形成している。半導体ダイ706及び電池708などの電子的要素が、基材704に機械的かつ電気的に接続されている。導電トレース712が基材704上の電子的要素706及び708を電気的に相互接続している。図の例示的な実施形態では、導電トレース712aが半導体ダイ706を前方光学電極714に接続し、導電性トレース712bが半導体ダイ706を後方光学電極716に接続している。接着層718を使用して前方光学要素と後方光学要素とを接続することができるが、他の任意の適当な手段を使用してこれら2層を接続することも可能であり、あるいは設計において単一層のみを使用してもよい。
【0037】
上記に述べた導電トレース712は、本明細書に述べたマスク及びマスキング技術を用いて好ましくは製造される。導電トレース712はシャドーマスクの開口部と対応している。精密な導電トレース712を得るためには、マスクは精密な切欠きを有するとともに、3次元的表面又は基材に一致していなければならない。別の言い方をすれば、マスクが基材又は表面を正確に反映することが好ましく、切欠きが特徴部に正確に一致していることにより、更なる処理工程を必要としない。別の言い方をすれば、本発明に基づいて製造されたマスクによれば、成膜された特徴部のパターンを「きれいにする」ために更なる処理をいっさい必要としない。例えば、従来のマスクが用いられた場合、成膜された特徴部のパターン(導電性相互接続トレース)のラインをきれいにするためにレーザーアブレーションを必要としうるのに対して、本発明によれば、マスクが本質的に精密であることにより、よりきれいでより精密なラインが得られる。
【0038】
ここで図示及び説明した実施形態は、最も実用的で好適な実施形態と考えられるが、当業者であれば、ここに図示及び開示した特定の設計及び方法からの変更はそれ自体当業者にとって自明であり、本発明の趣旨及び範囲から逸脱することなく使用できることは明らかであろう。本発明は、説明及び図示される特定の構造に限定されるものではないが、付属の特許請求の範囲に含まれうるすべての改変例と一貫性を有するものとして解釈されなければならない。
【0039】
〔実施の態様〕
(1) 非平面状の基材と組み合わせて使用される1つ又は2つ以上のシャドーマスクを製造するための方法であって、
内部に機械加工された1つ又は2つ以上の型枠を有するマンドレルを製造する工程であって、前記1つ又は2つ以上の型枠が、マスクされる非平面状の基材の形状に対応している、工程と、
前記マンドレル中の前記1つ又は2つ以上の型枠内に1つ又は2つ以上のシャドーマスクブランクを形成する工程と、
前記1つ又は2つ以上のシャドーマスクブランクを前記マンドレルから剥離する工程と、
前記1つ又は2つ以上のシャドーマスクブランクに所定のパターンを機械加工して1つ又は2つ以上のシャドーマスクを形成する工程であって、前記所定のパターンが前記1つ又は2つ以上のシャドーマスクのサイズよりも大幅に小さい特徴部を有するものである、工程と、を含む、方法。
(2) マンドレルを製造する前記工程が、ほぼ平行な前面及び後面を有するほぼ円筒形の構造体を作製することと、1つ又は2つ以上の非平面状の型枠を前記前面に機械加工することとを含む、実施態様1に記載の1つ又は2つ以上のシャドーマスクを製造するための方法。
(3) 前記1つ又は2つ以上の非平面状の型枠を前記前面に機械加工することが、前記1つ又は2つ以上の非平面状の型枠を旋盤によって切削することを含む、実施態様2に記載の1つ又は2つ以上のシャドーマスクを製造するための方法。
(4) 前記1つ又は2つ以上の非平面状の型枠を前記前面に機械加工することが、前記1つ又は2つ以上の非平面状の型枠をターンミルによって切削することを含む、実施態様2に記載の1つ又は2つ以上のシャドーマスクを製造するための方法。
(5) 前記1つ又は2つ以上の非平面状の型枠を前記前面に機械加工することが、前記1つ又は2つ以上の非平面状の型枠を回転移動によって切削することを含む、実施態様2に記載の1つ又は2つ以上のシャドーマスクを製造するための方法。
【0040】
(6) 前記1つ又は2つ以上の非平面状の型枠を前記前面に機械加工することが、前記1つ又は2つ以上の非平面状の型枠をダイヤモンドターニング(diamond point turning)によって切削することを含む、実施態様2に記載の1つ又は2つ以上のシャドーマスクを製造するための方法。
(7) 前記1つ又は2つ以上の非平面状の型枠を前記前面に機械加工することが、前記1つ又は2つ以上の非平面状の型枠を放電加工によって切削することを含む、実施態様2に記載の1つ又は2つ以上のシャドーマスクを製造するための方法。
(8) 前記1つ又は2つ以上の型枠内に1つ又は2つ以上のシャドーマスクブランクを形成する前記工程が、電着プロセスを含む、実施態様1に記載の1つ又は2つ以上のシャドーマスクを製造するための方法。
(9) 前記電着プロセスが、ニッケルを前記1つ又は2つ以上のフィルムとして150μm(150ミクロン)未満の厚さに電気メッキすることを含む、実施態様8に記載の1つ又は2つ以上のシャドーマスクを製造するための方法。
(10) 前記1つ又は2つ以上のシャドーマスクブランクを前記マンドレルから剥離する前記工程が、前記1つ又は2つ以上のシャドーマスクブランクを前記マンドレルから物理的に分離することを含む、実施態様1に記載の1つ又は2つ以上のシャドーマスクを製造するための方法。
【0041】
(11) 前記1つ又は2つ以上のシャドーマスクブランクを前記マンドレルから剥離する前記工程が、前記マンドレルを化学的に除去することを含む、実施態様1に記載の1つ又は2つ以上のシャドーマスクを製造するための方法。
(12) 前記1つ又は2つ以上のシャドーマスクブランクに所定のパターンを機械加工する前記工程が、前記パターンの前記特徴部をレーザーミクロ機械加工することを含む、実施態様1に記載の1つ又は2つ以上のシャドーマスクを製造するための方法。
(13) 前記パターンの前記特徴部が、1μm(1ミクロン)の幅を有しうる、実施態様12に記載の1つ又は2つ以上のシャドーマスクを製造するための方法。
(14) 前記1つ又は2つ以上のシャドーマスクブランクに所定のパターンを機械加工する前記工程が、レーザーアブレーションを用いることを含む、実施態様1に記載の1つ又は2つ以上のシャドーマスクを製造するための方法。
(15) 前記1つ又は2つ以上のシャドーマスクブランクに所定のパターンを機械加工する前記工程が、化学エッチングを用いることを含む、実施態様1に記載の1つ又は2つ以上のシャドーマスクを製造するための方法。
【0042】
(16) 前記1つ又は2つ以上のシャドーマスクブランクに所定のパターンを機械加工する前記工程が、プラズマエッチングを用いることを含む、実施態様1に記載の1つ又は2つ以上のシャドーマスクを製造するための方法。
(17) シャドーマスクブランクを形成するためのマンドレルであって、
第1の面と第2の面とを有するほぼ円筒形の構造体であって、前記第1の面と前記第2の面とがほぼ平行である、構造体と、
前記ほぼ円筒形の構造体の前記第1の面に協働可能に付随する1つ又は2つ以上の取り付け機構であって、前記1つ又は2つ以上の取り付け機構が、前記マンドレルを機械加工工具に固定するように構成されている、取り付け機構と、
前記ほぼ円筒形の構造体の前記第2の面に機械加工された1つ又は2つ以上の型枠であって、前記1つ又は2つ以上の型枠が、マスクされる非平面状の基材と一致する非平面状のパターンを有する、型枠と、を含む、マンドレル。
(18) 前記マンドレルが金属材料を含む、実施態様17に記載のシャドーマスクブランクを形成するためのマンドレル。
(19) 前記金属材料がアルミニウムを含む、実施態様18に記載のシャドーマスクブランクを形成するためのマンドレル。
図1A
図1B
図1C
図2A
図2B
図2C
図3A
図3B
図3C
図3D
図4
図5
図6
図7