特許第6246488号(P6246488)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6246488イオン電流を用いた内燃機関の空燃比制御装置
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6246488
(24)【登録日】2017年11月24日
(45)【発行日】2017年12月13日
(54)【発明の名称】イオン電流を用いた内燃機関の空燃比制御装置
(51)【国際特許分類】
   F02D 45/00 20060101AFI20171204BHJP
   F02D 41/14 20060101ALI20171204BHJP
   F02P 17/12 20060101ALI20171204BHJP
【FI】
   F02D45/00 368F
   F02D41/14 310M
   F02D41/14 310F
   F02P17/00 F
【請求項の数】1
【全頁数】10
(21)【出願番号】特願2013-97216(P2013-97216)
(22)【出願日】2013年5月6日
(65)【公開番号】特開2014-218906(P2014-218906A)
(43)【公開日】2014年11月20日
【審査請求日】2016年4月18日
(73)【特許権者】
【識別番号】000109093
【氏名又は名称】ダイヤモンド電機株式会社
(72)【発明者】
【氏名】泉 光宏
(72)【発明者】
【氏名】鴛海 博
(72)【発明者】
【氏名】新海 竜也
【審査官】 藤村 泰智
(56)【参考文献】
【文献】 特表2005−530087(JP,A)
【文献】 特開2000−054942(JP,A)
【文献】 特開平07−293315(JP,A)
【文献】 特開平07−293296(JP,A)
【文献】 特開平06−323185(JP,A)
【文献】 特開平11−343903(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F02D 41/00 〜 45/00
F02P 17/12
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
点火プラグに高電圧を印加する点火装置と、当該点火プラグに発生するイオン電流を検出するイオン電流検出装置と、内燃機関の排気経路内に備えられるO2センサと、を備え、
前記O2センサの活性時に前記イオン電流検出装置によって検出されるイオン電流のピーク平均値を算出する学習手段と、
イオン電流ピーク基準値と前記学習手段によって算出されるイオン電流ピーク平均値とを比較する比較手段と、
前記O2センサの活性後に関する前記比較手段の結果に基づいて、前記イオン電流又は前記イオン電流ピーク平均値を補正する補正手段と、
前記イオン電流ピーク基準値と前記前記補正後のイオン電流ピーク平均値との比較結果に基づいて前記内燃機関の燃焼状態を判定する判定手段と、を備えることを特徴とする内燃機関の空燃比制御装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、自動車用エンジン等の内燃機関に供給する混合気において、空気と燃料の比率(空燃比:A/F)を制御する空燃比制御装置に関して、内燃機関の燃焼によって発生するイオン電流に基づいて空燃比制御を行うものである。
【背景技術】
【0002】
従来より、火花点火式の内燃機関において、検出した空燃比に基づいて内燃機関に供給される燃料を制御し、燃費や出力の向上を図っている。空燃比を検出する方法としては、Oセンサ、又は、空燃比センサを用いて検出しているが、内燃機関のコールドスタート時のようなOセンサ及び空燃比センサが不活性時の状態にあるときは測定値が安定せず、空燃比制御の精度を維持することができない。この問題を解決するために、内燃機関の燃焼によって点火プラグの電極間に発生するイオン電流を用いて空燃比を検出する方法が提案されており、例えば特開平5−222989号公報(以下「特許文献1」)が知られている。
【0003】
上記特許文献1において、排気ガス中の酸素濃度によって燃料噴射量を制御するエンジン制御装置において、点火後の燃焼室内のイオン電導度を測定するイオンセンサを備え、燃焼時の空燃比を求め、空燃比を制御する空燃比制御装置で回転数または出力トルクの変動から失火を判定し、失火限界まで空燃比をリーンにすることを特徴とする空燃比制御装置が提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平5−222989号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、上記従来の内燃機関の空燃比制御装置では次のような問題が生じている。即ち、特許文献1では、Oセンサが不活性の始動時であっても希薄空燃比制御が可能になると共に、Oセンサを活性化するためのヒータを必要としないため、内燃機関の負荷を軽減できる効果があるが、イオン電流を検出するイオン電流検出装置の構成素子の個体差によって検出されるイオン電流値の大きさが変化するため、イオン電流に基づいて空燃比に対する燃焼状態を正確に判定することは困難となる問題が生じる。このような正確に燃焼状態が判定できないと、現在の空燃比に対して燃料が不足している等と誤った判断をしてしまい、本来は不要な燃料を消費してしまうことが生じる。
【0006】
本発明は上記の課題に鑑みなされたもので、イオン電流を検出するイオン電流検出装置の構成素子の個体差によって検出されるイオン電流値の大きさが変化しても、イオン電流に基づいた空燃比に対する内燃機関の燃焼状態を正確に判定することができる内燃機関の空燃比制御装置を提供することを目標とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するために本発明は次のような構成とする、即ち、点火プラグに高電圧を印加する点火装置と、当該点火プラグに発生するイオン電流を検出するイオン電流検出装置と、内燃機関の排気経路内に備えられるO2センサと、を備え、
前記O2センサの活性時に前記イオン電流検出装置によって検出されるイオン電流のピーク平均値を算出する学習手段と、イオン電流ピーク基準値と前記学習手段によって算出されるイオン電流ピーク平均値とを比較する比較手段と、前記O2センサの活性後に関する前記比較手段の結果に基づいて、前記イオン電流又は前記イオン電流ピーク平均値を補正する補正手段と、前記イオン電流ピーク基準値と前記前記補正後のイオン電流ピーク平均値との比較結果に基づいて前記内燃機関の燃焼状態を判定する判定手段と、を備えることとする。
【発明の効果】
【0009】
上記の通り、1次コイルと2次コイルが電磁結合されて点火プラグに高電圧を印加する点火装置と、当該点火プラグに発生するイオン電流を検出するイオン電流検出装置と、内燃機関の排気経路内に備えられるOセンサと、を備える内燃機関の空燃比制御装置において、前記Oセンサの活性期間に前記イオン電流検出装置によって検出されるイオン電流のピーク平均値を算出する学習手段と、当該学習手段によって算出されるイオン電流ピーク平均値とイオン電流ピーク基準値とを比較する比較手段と、当該比較手段の結果に基づいて、前記Oセンサの活性後に前記イオン電流検出装置によって検出されるイオン電流を補正する補正手段と、を備え、当該補正手段によって補正したイオン電流波形から前記内燃機関の燃焼状態を判定することで、イオン電流を検出するイオン電流検出装置の構成素子の個体差によって検出されるイオン電流値の大きさが変化しても、イオン電流に基づいて空燃比に対する燃焼状態を正確に判定する内燃機関の空燃比制御装置が実現できる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】本発明の第1の実施例とするイオン電流検出手段を備えた内燃機関用の点火装置の回路構成を示す図である。
図2】実施例1とする空燃比制御装置を備えた内燃機関の構成を示す図である。
図3】実施例1とする基準のイオン電流波形と検出したイオン電流波形との関係を示す特性図である。
図4】実施例1とするコールドスタートからの燃焼における内燃機関の空燃比の挙動を示すタイムチャートである。
図5】実施例1とする補正前のイオンパラメータと補正後のイオンパラメータとを示す特性図である。
図6】実施例1とする空燃比制御装置の処理を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下に、本発明の実施の形態を示す実施例を図1乃至図6に基づいて説明する。
【実施例1】
【0012】
本発明の第1の実施例とするイオン電流検出手段を備えた内燃機関用の点火装置の回路構成を示す図を図1に、空燃比制御装置を備えた内燃機関の構成を示す図を図2に、基準のイオン電流波形と検出したイオン電流波形との関係を示す特性図を図3に、コールドスタートからの燃焼における内燃機関の空燃比の挙動を示すタイムチャートを図4に、補正前のイオンパラメータと補正後のイオンパラメータとを示す特性図を図5に、空燃比制御装置の処理を示すフローチャートを図6にそれぞれ示す。
【0013】
図1において、点火装置70は、1次コイル10、2次コイル12、鉄芯14、イグナイタ20、及び、イオン電流検出装置60から構成され、当該1次コイル10は1次巻線を100ターン前後巻き回し、当該2次コイル12は2次巻線を12000ターン前後巻き回し、当該鉄芯14は珪素鋼板を重ね合わせて形成されている。また、イグナイタ20は金属製リードフレーム上にIGBT(絶縁ゲートバイポーラトランジスタ)からなる半導体部品を配置して周囲を絶縁樹脂でモールドして形成されている。さらに、当該イオン電流検出回路60はバイアス電源として作用するコンデンサ64と燃焼時に検出されるイオン電流を検出信号に変換するオペアンプ66とから構成されている。
【0014】
また、前記1次コイル10の低圧側は自動車に搭載されるバッテリ電源30と接続され、前記1次コイル10の高圧側は前記イグナイタ20のコレクタ端子と接続されている。さらに、前記イグナイタ20のゲート端子はECU50と接続され、前記イグナイタ20のエミッタ端子は接地されている。
【0015】
また、前記2次コイル12の低圧側は前記イオン電流検出回路60の第1のダイオード(ツェナーダイオード)62aのカソード側と接続され、前記2次コイル12の高圧側は空気と燃料の混合気を燃焼させる高電圧を放出すると共に、混合気の燃焼によって発生するイオン電流を検出する点火プラグ40と接続されている。さらに、当該第1のダイオード(ツェナーダイオード)62aのアノード側は第2のダイオード62bのアノード側と接続され、当該第2のダイオード62bのカソード側は接地されている。
【0016】
また、前記第1のダイオード(ツェナーダイオード)62aはバイアス電源として機能する前記コンデンサ64が並列に接続され、前記コンデンサ64のプラス側は前記2次コイル12に、前記コンデンサ64のマイナス側は前記第2のダイオード62bのアノード側に接続されている。さらに、前記第1のダイオード(ツェナーダイオード)62aと前記第2のダイオード62bの接続部は抵抗68aを介して前記オペアンプ66の反転入力端子と接続され、前記オペアンプ66の出力端子は前記ECU50に接続されている。
【0017】
また、前記オペアンプ66は反転入力端子と出力端子に対して検出抵抗68bが並列に接続され、前記オペアンプ66の非反転入力端子及び負電源端子は接地されると共に正電源端子は前記電源30が接続されている。さらに、前記オペアンプ66の反転入力端子と前記抵抗68aの接続部は前記第3のダイオード62cのカソード側と接続され、当該第3のダイオード62cのアノード側は接地されている。
【0018】
図2において、内燃機関170はエンジンブロックに形成された複数のシリンダ110から構成されている。それぞれの当該シリンダ110の下部に備えられたピストン120と、当該ピストン120の上下方向の運動を回転方向の運動に変換するクランク122と、それぞれの当該クランク122を連動して回転させるためのクランクシャフト124とを備えている。また、前記シリンダ110内への燃料と空気の混合気を供給するための吸気経路130と、前記シリンダ110内からの燃焼後の排気ガスを排出するための排気経路150とを備えている。さらに、当該吸気経路130には当該内燃機関170の運転状態に応じて燃料を噴射するインジェクション140を備え、当該排気経路150には排気ガス中の酸素量を測定するOセンサ160を備えている。
【0019】
また、前記Oセンサ160はヒータ(図示しない)によってある程度の温度まで温められて活性化される。さらに、前記Oセンサ160は前記排気経路150に備えられているが、エンジンから触媒までの間の上流センサと当該触媒からマフラーまでの間の下流センサを備えられ、本実施例で説明するOセンサは当該エンジンから当該触媒までの間の当該上流センサを指している。
【0020】
また、前記吸気経路130にはそれぞれの前記シリンダ110内への吸気量を調整する吸気バルブ132を備え、前記排気経路150にはそれぞれの前記シリンダ110内からの排気ガスの量を調整する排気バルブ152が備えられている。さらに、それぞれの前記シリンダ110上部には前記吸気バルブ132の開閉動作を行うための吸気カム134と、前記排気バルブ152の開閉動作を行うための排気カム154とを備えている。
【0021】
また、それぞれの前記吸気カム134を連動して回転させるための吸気カムシャフト136と、それぞれの前記排気カム154を連動して回転させるための排気カムシャフト156とを備えている。さらに、前記クランクシャフト124、当該吸気カムシャフト136、及び、当該排気カムシャフト156はタイミングベルトによって連動して駆動している。
【0022】
また、それぞれの前記シリンダ110上部には前記シリンダ110内に供給された混合気に火花を飛ばすと共に、混合気の燃焼によって発生するイオン電流を検出するための電極を有した前記点火プラグ40が備えられている。さらに、それぞれの前記点火プラグ40は前記電源30の電圧を数十kVの電圧へと昇圧させる前記点火装置70と電気的に接続されている。
【0023】
また、前記点火装置70は前記イグナイタ20へ適切な点火タイミングに応じた点火信号を供給すると共に前記イオン電流検出装置60から入力される検出信号に基づいて燃焼状態を判定する前記ECU50と電気的に接続されている。さらに、前記ECU50は前記Oセンサ160から前記排気経路150内を通過する排気ガスの酸素量の測定結果が入力されている。
【0024】
次に図3に示す特性図に基づいて、前記Oセンサ160の活性期間に検出されるイオン電流を説明する。
【0025】
図3において、X軸は時間を、Y軸はイオン電流値の大きさを示す。また、前記Oセンサ160活性期間の前記イオン電流検出装置60で検出されたイオン電流波形を破線で示し、前記Oセンサ160活性期間の基準となるイオン電流波形を実線で示す。さらに、イオン電流は前記内燃機関170の燃焼中は検出できず、燃焼後に前記点火プラグ40から検出され、検出されたイオン電流はピーク値まで上昇し、その後減少していく。
【0026】
しかし、前記イオン電流検出装置60を構成する前記第1、第2、及び、第3のダイオード62a,62b,62c、前記コンデンサ64、前記オペアンプ66、前記抵抗68a、並びに、前記検出抵抗68bの個体差によって検出されるイオン電流に対する検出信号の大きさが変化する。このため、同じ燃焼状態でも取り付けられる前記点火装置70の個体差によって検出されるイオン電流に差が生じる。図3においては基準となるイオン電流と比べて小さいイオン電流が検出されることを例とした。
【0027】
次に図4に示すタイムチャートに基づいて、コールドスタートからの燃焼における内燃機関の空燃比の挙動を説明する。
【0028】
図4において、前記内燃機関170のコールドスタート時はリッチとなる空燃比の混合気で燃焼が行われており、セルモータによるクランキングが終了し前記内燃機関170の燃焼が安定するとリーンとなる空燃比の混合気で燃焼が行われる。また、前記Oセンサ160が前記ヒータによってある程度の温度となり活性する期間の付近では14.5前後の空燃比で燃焼が行われ、前記ECU50が前記内燃機関170の空燃比から前記Oセンサ160の活性化を判断する。
【0029】
また、前記内燃機関170のコールドスタート時点での前記Oセンサ160は不活性となっており、前記Oセンサ160が前記ヒータによって活性するまで始動後数秒間(8秒前後)かかる。さらに、前記Oセンサ160が活性する期間に前記内燃機関170が32回燃焼行程を行い、前記内燃機関170が32回燃焼行程を行うのに0.7秒前後かかる。
【0030】
次に図5に示す特性図に基づいて、弱リーン制御中に検出されるイオン電流の補正前と補正後のパラメータ特性を説明する。
【0031】
図5において、図5(a)は前記Oセンサ160の活性期間の前記内燃機関170の32回分の燃焼から検出したイオン電流のピーク値(以下「イオンピーク値」)の平均値によって補正した弱リーン制御中のイオン電流のパラメータ特性であり、前記イオン電流検出装置60を構成する電気素子の個体差によって上下するイオンパラメータが基準とするイオンパラメータに対して近似する。しかし、図5(b)に示すイオンピーク値の平均値による補正前の弱リーン制御中のイオン電流のパラメータ特性は、前記イオン電流検出装置60を構成する電気素子の個体差によって上下するイオンパラメータが基準とするイオンパラメータに対してばらつく。
【0032】
次に図6に示すフローチャートに基づいて、空燃比制御装置の処理を説明する。
【0033】
図6において、前記内燃機関170はセルモータによるクランキングから始動し(S1)、前記ECU50は前記内燃機関170の始動から8秒前後経過した前記Oセンサ160の活性期間の32回の燃焼からイオン電流を検出する(S2)。また、前記ECU50は(S2)で検出したイオン電流から図3に示す32回分のイオンピーク値の平均値を算出し(S3)、前記ECU50は(S3)で算出したイオンピーク値の平均値と前記ECU50内に記憶されているイオンピーク基準値との比率(図3内に記載)を算出する(S4)。さらに、前記ECU50は(S4)で算出した比率に基づいてイオン電流に対する補正値を算出し(S5)、前記ECU50は(S5)で算出した補正値に基づいて前記Oセンサ160が活性後の前記内燃機関170の弱リーン制御中に検出されるイオン電流を補正する(S6)。
【0034】
また、前記ECU50は(S6)で補正されたイオン電流から前記内燃機関170の燃焼状態を判定し(S7)、前記内燃機関170の燃焼状態に応じて空燃比が決定され、前記インジェクション140からの燃料噴射量を変更する。
【0035】
上記構成により、前記Oセンサ160の活性期間の前記内燃機関170の32回分の燃焼から検出したイオンピーク値の平均値とイオンピーク基準値との比率から算出した補正値に基づいて前記Oセンサ160が活性後の前記内燃機関170の弱リーン制御中に検出されるイオン電流を補正することで、前記イオン電流検出装置60の構成素子の個体差によって検出されるイオン電流値の大きさが変化しても、イオン電流に基づいて空燃比に対する燃焼状態を正確に判定する内燃機関の空燃比制御装置が実現できる。また、前記内燃機関170が始動する毎に改めて前記Oセンサ160の活性期間の前記内燃機関170の32回分の燃焼から検出したイオンピーク値の平均値を算出することで、前記内燃機関170の始動直前に前記点火装置70を交換する作業を行っても前記点火装置70の個体差によるイオン電流のバラツキを反映した燃焼状態の判定ができる。
【0036】
なお、上記実施例1の変形例として、前記イオン電流検出装置60の回路構成及び前記内燃機関170の構成はあくまで一例であり、前記点火プラグ40の電極間に発生するイオン電流を検出する構成であれば任意の構成に変更してもよい。また、イオンピーク値の平均値は前記内燃機関170の32回の燃焼から算出したが、設計事情によって任意の燃焼回数から算出してもよい。さらに、前記Oセンサ160が前記ヒータによって活性が完了するまで前記内燃機関170の始動から8秒前後としたが、前記内燃機関170を運転させる環境(気温)によって変動するものとし、前記内燃機関170の空燃比が14.5前後となると前記ECU50は前記Oセンサ160が活性したと判断するものとする。
【0037】
また、前記Oセンサ160の活性期間の前記内燃機関170の32回分の燃焼から検出したイオンピーク値の平均値とイオンピーク基準値との比率を考慮して前記Oセンサ160が活性後の前記内燃機関170の弱リーン制御中に検出されるイオン電流から前記内燃機関170の燃焼状態の判定を行う構成としてもよい。さらに、前記Oセンサ160が活性後の前記内燃機関170の弱リーン制御中に検出されるイオン電流を補正する補正値は前記Oセンサ160の活性期間の前記内燃機関170の32回分の燃焼から検出したイオンピーク値の平均値とイオンピーク基準値との比率から算出したが、前記Oセンサ160の活性期間の前記内燃機関170の32回分の燃焼から検出したイオンピーク値の平均値とイオンピーク基準値との差分から算出する等の他の比較方法を用いてもよい。
【0038】
また、前記Oセンサ160の活性期間中の前記内燃機関170の少なくとも1回(空燃比が14.5となるタイミング)の燃焼から検出したイオンピーク値とイオンピーク基準値との比率から算出した補正値に基づいて前記Oセンサ160が活性後の前記内燃機関170の弱リーン制御中(エンジン始動開始から約20秒まで)に検出されるイオン電流を補正する構成としてもよい。
【符号の説明】
【0039】
10:1次コイル
12:2次コイル
14:鉄芯
20:イグナイタ
30:電源
40:点火プラグ
50:ECU
60:イオン電流検出装置
62a:第1のダイオード(ツェナーダイオード)
62b:第2のダイオード
62c:第3のダイオード
64:コンデンサ
66:オペアンプ
68a:抵抗
68b:検出用抵抗
70:点火装置
110:シリンダ
120:ピストン
122:クランク
124:クランクシャフト
130:吸気経路
132:吸気バルブ
134:吸気カム
136:吸気カムシャフト
140:インジェクション
150:排気経路
152:排気バルブ
154:排気カム
156:排気カムシャフト
160:Oセンサ
170:内燃機関
図1
図2
図3
図4
図5
図6