(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6246517
(24)【登録日】2017年11月24日
(45)【発行日】2017年12月13日
(54)【発明の名称】飲料水
(51)【国際特許分類】
A23K 20/163 20160101AFI20171204BHJP
A23L 2/52 20060101ALI20171204BHJP
A61K 31/739 20060101ALI20171204BHJP
A61P 37/04 20060101ALI20171204BHJP
A23K 10/30 20160101ALI20171204BHJP
【FI】
A23K20/163
A23L2/00 F
A61K31/739
A61P37/04
A23K10/30
【請求項の数】1
【全頁数】5
(21)【出願番号】特願2013-155645(P2013-155645)
(22)【出願日】2013年7月26日
(65)【公開番号】特開2015-23832(P2015-23832A)
(43)【公開日】2015年2月5日
【審査請求日】2016年4月27日
【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第2項適用 平成25年 1月29日にウォーターポイント株式会社がペット用の飲料水、商品名:パントワンを一般に販売した。 〔刊行物等〕 平成25年 4月 9日にウォーターポイント株式会社がペット用の飲料水、商品名:パントワンWを一般に販売した。
(73)【特許権者】
【識別番号】500082230
【氏名又は名称】小早川 克史
(73)【特許権者】
【識別番号】390025210
【氏名又は名称】杣 源一郎
(73)【特許権者】
【識別番号】500315024
【氏名又は名称】有限会社バイオメディカルリサーチグループ
(73)【特許権者】
【識別番号】508098394
【氏名又は名称】自然免疫応用技研株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100110191
【弁理士】
【氏名又は名称】中村 和男
(72)【発明者】
【氏名】小早川 克史
(72)【発明者】
【氏名】杣 源一郎
(72)【発明者】
【氏名】河内 千恵
(72)【発明者】
【氏名】稲川 裕之
【審査官】
竹中 靖典
(56)【参考文献】
【文献】
特開平11−130692(JP,A)
【文献】
特開平08−198902(JP,A)
【文献】
特開2012−240946(JP,A)
【文献】
特開2010−241945(JP,A)
【文献】
国際公開第2012/023301(WO,A1)
【文献】
特開2010−265184(JP,A)
【文献】
特開平06−065092(JP,A)
【文献】
特開平04−099481(JP,A)
【文献】
国際公開第00/057719(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A23K 10/00 − 50/90
A23L 2/52
A61K 31/739
A61P 37/04
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
パントエア・アグロメランス由来のリポ多糖が0.08μg/ml以上0.8μg/ml以下配合されていてペット用であって、特に嗜好性を発現することを特徴とする飲料水。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ペットなどの動物の飲料水に関し、特に、動物の自然免疫機能を活性化し、かつ、動物に好まれる飲料水に関する。
【背景技術】
【0002】
少子高齢化社会が進むにつれ、ヒトのパートナーとしてイヌやネコの社会的な重要性は高まっている。一方で、現代においては、ヒトと同一化した生活ゆえに、ヒトが直面している環境変化に伴う疾病群、いわゆる現代病が、ペットにも蔓延している。しかも、イヌやネコは度重なる交配による系統作出がなされたため、遺伝的に疾病が生じやすい体質になっている。そのため、ヒトよりも癌や皮膚疾患、心疾患などの各種疾病に罹患しやすい。
【0003】
現在増加しているペットの諸疾患の環境因子としては、食品や水に含まれる化学物質の過剰摂取や、大気中の汚染物質の曝露、自然環境から得てきた成分不足、騒音・光などのストレスにより、健康を支える仕組みのバランスが破綻していることで発症していると考えられる。そのために、身体によいとされる環境をペットにも整えていくことが必要とされている。なかでも、食の機能性を利用して健康を維持することが着目される。食品の三次機能について、整腸作用などが報告され、現在いろいろな製品が利用されている。しかしながら、身体の健康を維持する機能と直結している免疫機能はまだ多くない。
【0004】
免疫にはワクチンに代表されるように、新たに抗原を特異的に認識する獲得免疫と、すべての動植物が生まれながらに持っている異物を識別し、排除する自然免疫に分けられる。自然免疫は侵入異物を排除するだけでなく、変成タンパク質や酸化脂質、癌化した細胞、アポトーシスした細胞、アミロイドβなど、生体に不要な物質や細胞をも認識し、排除している。生体内で生じるこれらの異物が適切に排除されていれば、種々の疾病の発症原因は激減し、健康状態が保たれていると考えられる。これらの異物排除は自然免疫システムが担っており、特にそのプロフェッショナルな細胞がマクロファージである。
【0005】
マクロファージの異物を認識して排除する機能を活性化する食品成分は既に複数知られている。中でも、最も微量で効果が高いものとして、リポ多糖がある(例えば、特許文献1参照)。このリポ多糖は小麦粉をパントエア菌で発酵しパントエア菌を培養した物から熱抽出した物として製造されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】国際公開第2005/030938号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかし、特定のリポ多糖が動物に好まれることは従来知られておらず、健康維持のためにリポ多糖が動物にとって好ましいことは確かではあるものの、動物が積極的に摂取するに至っていなかった。
【0008】
本発明は、上記問題点に鑑み、動物の自然免疫機能を活性化し、かつ、動物に好まれる飲料水を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明の飲料水は、
パントエア・アグロメランス由来のリポ多糖が
0.08μg/ml以上0.8μg/ml以下配合されてい
てペット用であって、特に嗜好性を発現することを特徴とする
。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、動物の自然免疫機能を活性化し、かつ、動物に好まれる飲料水を提供することができる。本発明の飲料水は動物に好んで飲用されるため、習慣的に飲用されるようになり、継続的に安定して動物の健康を維持することができる。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、添付図面を参照しながら本発明を実施するための形態について詳細に説明する。
【0017】
我々は、リポ多糖を含む水の動物に対する効果を調べていたところ、驚くべき事に動物が特定のリポ多糖を含有する水をより好むことを見いだした。そこで、鋭意研究したところ、リポ多糖が、0.08〜0.8μg/ml含む水に動物の嗜好性が高まることを見いだした。
【実施例1】
【0018】
[嗜好性評価試験]
サンプルとしては、RO水(逆浸透膜によって生成した純水)と、LPS-RO水(パントエア・アグロメランス由来のリポ多糖入りRO水(含有リポ多糖量=0.4μg/ml))を用いた。
【0019】
マウス(C57BL/6、雄、日本クレア社)の体重を測定し、5匹をケージにいれた(室温24±2℃、湿度50.0〜70.0%、12時間/日の人工照明)。体重を測定したのち、それぞれ、RO水及びLPS-RO水を入れた給水瓶を一つのケージにセットした。給水瓶の位置の記憶による飲水量の偏りをなくすため、8日目まで毎日吸水瓶の位置を交換した。開始から3日目まではマウスの飲水への慣らし期間とした。給水開始から4日目から8日目までは毎日吸水瓶交換時に減水量を測定した。その後は、14日目に減水量(消費量)を測定した。
【0020】
[結果]
4日目〜8日目までの毎日と、14日目の結果を
図1に示した。
図1においては、LPS-RO水を略してLPSと表記した。飲水開始14日目ではLPS-RO水の累計の減水量(消費量)はRO水よりも54%多くなっていた。統計解析を行ったところ、4日目〜8日目、14日目の結果におけるウィルコクスン符号付順位和検定で、p=0.028となり、有意差をもってLPS-RO水が飲まれたことが認められた。
【実施例2】
【0021】
[嗜好性を発現するLPS濃度の検討]
サンプルとしては、RO水と、LPS-RO水(含有リポ多糖量は0.04, 0.08, 0.2, 0.8, 1.6μg/ml)を調整して用いた。マウス(C57BL/6、雄、日本クレア社)の体重を測定し、2匹をケージにいれた(室温24±2℃、湿度50.0〜70.0%、12時間/日の人工照明)。それぞれ、RO水およびLPS-RO水を入れた給水瓶を一つのケージにセットした。給水瓶の位置の記憶による飲水量の偏りをなくすため、8日目まで毎日吸水瓶の位置を交換した。給水開始から7日目まで毎日吸水瓶交換時に減水量を測定した。
【0022】
[結果]
1〜7日目の減水量(消費水量)はRO水を100%としたとき、LPS-RO水
0.04μg/mlと1.6μg/mlでは効果が見られなかったが、0.08〜0.8μg/mlの間の濃度で嗜好性が高まることが認められた。
図2にLPS-RO水の7日目の消費飲料のRO水を基準とした一日あたりの相対的消費量(%)を示した。
図2においては、LPS-RO水を略してLPSと表記した。
【0023】
なお、本発明は上記実施例に限定されるものではない。
【0024】
動物がペットであることによってペットの健康を継続的に安定して維持することができる。
【0025】
動物がヒトであることによってヒトの健康を継続的に安定して維持することができる。