特許第6246524号(P6246524)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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  • 特許6246524-形鋼梁貫通部の耐火被覆構造 図000002
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6246524
(24)【登録日】2017年11月24日
(45)【発行日】2017年12月13日
(54)【発明の名称】形鋼梁貫通部の耐火被覆構造
(51)【国際特許分類】
   E04B 1/94 20060101AFI20171204BHJP
【FI】
   E04B1/94 C
【請求項の数】5
【全頁数】7
(21)【出願番号】特願2013-168022(P2013-168022)
(22)【出願日】2013年8月13日
(65)【公開番号】特開2015-36489(P2015-36489A)
(43)【公開日】2015年2月23日
【審査請求日】2016年7月29日
(73)【特許権者】
【識別番号】390037154
【氏名又は名称】大和ハウス工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001586
【氏名又は名称】特許業務法人アイミー国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】木寺 智香子
(72)【発明者】
【氏名】齋藤 匡史
(72)【発明者】
【氏名】野原 和美
【審査官】 星野 聡志
(56)【参考文献】
【文献】 特開2013−028982(JP,A)
【文献】 特許第5141592(JP,B2)
【文献】 特開2005−105674(JP,A)
【文献】 特開平10−140705(JP,A)
【文献】 米国特許出願公開第2009/0148660(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E04B 1/94
A62C 3/16
F16L 5/02
E04C 3/08
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ウエブおよび前記ウエブと接続するフランジ部を有し第1方向に延在する形鋼梁と、前記第1方向と交わる第2方向に延在し前記ウエブに設けられる前記ウエブ貫通孔に通される配管とが交差する形鋼梁貫通部の耐火被覆構造であって、
前記第2方向に延在し、前記配管が通される筒状の第1断熱材と、
前記ウエブおよび前記フランジ部に接触するように設けられて前記形鋼梁に保持される第2断熱材とを含み、
前記筒状の第1断熱材は、前記ウエブ貫通孔および前記第2断熱材に形成される第2断熱材貫通孔を貫通し、
前記筒状の第1断熱材の外周が、前記ウエブ貫通孔および前記第2断熱材貫通孔に接触して保持される、形鋼梁貫通部の耐火被覆構造。
【請求項2】
前記第2断熱材は前記ウエブを挟んでその両側に一対設けられる、請求項1に記載の形鋼梁貫通部の耐火被覆構造。
【請求項3】
前記ウエブ貫通孔は、前記ウエブの中央に設けられる、請求項1または2に記載の形鋼梁貫通部の耐火被覆構造。
【請求項4】
前記フランジ部は前記ウエブを挟むよう対をなし、
前記ウエブ貫通孔は、前記一対のフランジ部のいずれか一方側に偏在して設けられる、請求項1または2に記載の形鋼梁貫通部の耐火被覆構造。
【請求項5】
前記第1断熱材の前記第2方向の長さは、前記フランジの長さに等しい、請求項1〜のいずれかに記載の形鋼梁貫通部の耐火被覆構造。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は梁のウエブに配管を通すための孔を設けた形鋼梁貫通部の耐火被覆構造に関し、特に、熱橋を防ぐことができる形鋼梁貫通部の耐火被覆構造に関する。
【背景技術】
【0002】
従来の梁の配管挿通部における耐火被覆構造のような、形鋼梁貫通部の耐火被覆構造が、例えば、特許第5141592号公報(特許文献1)に開示されている。
【0003】
同公報によれば、H形鋼からなる梁のウエブに形成した配管貫通孔周りに、ウエブを両側から挟み込むようにして一対の耐火充填材を取り付けて、ウエブの配管挿通孔と一対の耐火充填材に夫々形成した貫通孔とを互いに重ね合わせ、一対の耐火充填材を包み込むようにして梁に巻き付けた耐火被覆材に、一対の耐火充填材の貫通孔に夫々対向する一対の切り込みを形成して、一方の切り込みから挿入した配管を、配管挿通孔及び貫通孔に挿通させて、他方の切り込みから抜き出した構成を開示している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特許第5141592号(請求項1等)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
従来の梁の配管挿通部における耐火被覆構造は上記のように構成されていた。従来の構成においては、例えば、特許文献の図6に示すように、ウエブが配管に当接して熱橋が生じるという問題があった。
【0006】
この発明は、上記のような問題点を解消するためになされたもので、配管とウエブとの当接による熱橋を確実に防ぐことができる、形鋼梁貫通部の耐火被覆構造を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
この発明に係る形鋼梁貫通部の耐火被覆構造は、ウエブおよびウエブに沿って延びるフランジ部を有し第1方向に延在する形鋼梁と、第1方向と交わる第2方向に延在しウエブに設けられるウエブ貫通孔に通される配管とが交差する形鋼梁貫通部の耐火被覆構造である。形鋼梁貫通部の耐火被覆構造は、第2方向に延在し、配管が通される筒状の第1断熱材と、ウエブおよびフランジ部に接触するように設けられて形鋼梁に保持される第2断熱材とを含む。筒状の第1断熱材は、ウエブ貫通孔および第2断熱材に形成される第2断熱材貫通孔を貫通する。筒状の第1断熱材の外周が、ウエブ貫通孔および第2断熱材貫通孔に接触して保持される
【0008】
好ましくは、第2断熱材はウエブを挟んでその両側に一対設けられる。
【0009】
なお、第1断熱材は、少なくともウエブの貫通孔近傍設けられる。
【0010】
さらに好ましくは、フランジ部はウエブを挟むように対をなす。
【0011】
ウエブに設けられた貫通孔は、ウエブの中央に設けられてもよいし、一対のフランジ部のいずれか一方側に偏在して設けられてもよいし、第1断熱材の第2方向の長さは、フランジの長さに等しくてもよい。
【発明の効果】
【0012】
梁のウエブ開口に円筒状の断熱材を挟んで配管を通すようにしたため、梁のウエブと配管とが当接することはない。
【0013】
その結果、配管による熱橋が生じない、梁貫通部の耐火被覆構造を提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
図1】この発明の一実施の形態に係る形鋼梁貫通部の耐火被覆構造を示す断面図である。
図2】一実施の形態に係る形鋼梁貫通部の耐火被覆構造を形成する手順をステップごとに示す斜視図である。
図3図2の各段階に対応する形鋼梁貫通部の断面図である。
図4】形鋼梁貫通部の耐火被覆構造の他の例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、この発明の一実施の形態を、図面を参照して説明する。図1は、この発明の一実施の形態に係る形鋼梁貫通部の耐火被覆構造を示す断面図である。ここでは、床板20の下面に紙面に直交する方向(第1方向)にH形鋼の梁を設け、そのウエブに貫通孔を設け、貫通孔を挿通してH形鋼の延在する第1方向と交わる第2方向(この図では左右方向)に配管を通し、その周囲を耐火被覆構造とする場合について説明する。
【0016】
図1を参照して、床板20の下面に設けられたH形鋼21は一対のフランジ21a,21bと、一対のフランジ21a,21bを接続するウエブ21cとを含み、ウエブ21cには貫通孔21dが設けられている。耐火被覆構造10は、ウエブ21cの貫通孔21dにその外周が当接するように設けられた円筒状の第1断熱材22と、H形鋼のウエブ21cを挟んでその両側に設けられた第2断熱材23a,23bとを含み、第2断熱材23a,23bに設けられた円形の貫通孔23c,23dが円筒状の第1断熱材22を保持する。
【0017】
第2方向に延在する配管30は円筒状の第1断熱材22の内筒22aに配置される。
【0018】
なお、図1においては、第1断熱材22の第2方向の長さはH形鋼21のフランジ21a,21bの幅方向寸法に等しいように示されているが、これに限らず、少なくともウエブの貫通孔21d近傍にあればよい。
【0019】
また、それぞれの第2断熱材23a,23bはその上下をフランジ21a,21bと当接し、幅方向の中央部はウエブ21cに当接し、幅方向のウエブ21cとは反対側は、フランジ21a,21bの幅寸法(第1断熱材の長さ)に合うように形成されているが、これに限らず、ウエブ21cを挟む両側で円筒状の第1断熱材22を保持できればよい。
【0020】
以上のように、この実施の形態においては、H形鋼のウエブの貫通孔に円筒状の断熱材を挟んで配管を通すようにしたため、H形鋼のウエブと配管とが当接することはない。その結果、配管による熱橋が生じない、梁貫通部の耐火被覆構造を提供できる。
【0021】
この実施の形態においては、さらに、H形鋼21の下面、第1断熱材22、および第2断熱材23a,23bを覆うように第3断熱材24が設けられている。第3断熱材24は所定の厚さを有し、H形鋼21の下側のフランジ21bの下部と、第1断熱材22の第2方向の両端面と、第2断熱材23a、23bの両側端面と、それに連続した床板20の一部の下面を覆うように設けられる。
【0022】
なお、配管30を貫通させるために、第3断熱材24についても第1断熱材の円筒の内径に等しい貫通孔24a,24bが設けられている。
【0023】
この実施の形態においては、さらに、H形鋼21、第1断熱材22、および、第2断熱材23a,23bを覆うように第3断熱材24を設けたため、H形鋼の両側における耐火性能をさらに向上できる。
【0024】
なお、この第3断熱材は、設置場所の状況により、H形鋼の左右一方側のみに設けてもよい。
【0025】
次に、図1に示したH形鋼の梁貫通部の耐火被覆構造を形成する方法について図2および図3を参照して説明する。図2図1に示したH形鋼の貫通孔の耐火被覆構造を形成する手順をステップごとに示す斜視図であり、図3は、図2に示した各段階に対応したH形鋼の貫通孔を挿通して配管が延在する第2方向の断面図である。
【0026】
図2および図3を参照して、まず、所定の位置(ここでは、ウエブ21cの上下方向の中心よりやや下側)に貫通孔21dを有するH形鋼21を準備する(図2および図3において(A)、以下、「図2および図3において」という記載を省略する)。次いで、ウエブ21cの貫通孔21dを覆うように、第2方向における断面が矩形状の一対の第2断熱材23a,23bをウエブ21cの両側から図中矢印で示すように挿入してウエブ21cを挟む(B)。ここで、第2断熱材23a,23bには、それぞれ、貫通孔21dと整合するように同一の寸法の貫通孔23c,23dが設けられている。図に示すように、ここでは、第2断熱材23a,23bはその上下をフランジ21a,21bと当接し、幅方向の中央部はウエブ21cに当接し、幅方向のウエブ21cとは反対側は、フランジ21a,21bの幅寸法(第1断熱材22の長さ)に合うように形成されている。
【0027】
次に、第2断熱材23a,23bのそれぞれの貫通孔23c,23d、および、ウエブ21cの貫通孔21dを貫通するように、円筒状の第1断熱材22を図中矢印で示すように挿入する(C)。ここで、第1断熱材22の外径寸法は、第2断熱材23a,23bのそれぞれの貫通孔23c,23d、および、ウエブ21cの貫通孔21dの内径寸法と同じである。また、ここでは、第1断熱材22の第2方向の長さは、上下のフランジ21a,21bの長さ(第2断熱材23a,23bの第2方向の厚さにウエブ21cの厚さを加えた寸法)に等しい。
【0028】
最後に、H形鋼21の下側フランジ21b、第1断熱材22、第2断熱材23、および、床板20の下面を覆うように設けられる。
【0029】
ここで、図2および図3(D)に示すように、第3断熱材24の所定の位置には、配管30を貫通させるための貫通孔24a,24bが設けられている。この貫通孔24a、24b、第1断熱材22の内筒22a内に配管30が配置される。
【0030】
次に、上記実施の形態の変形例について図4を参照して説明する。上記実施の形態においては、ウエブ21cの上下方向の中心よりやや下側に貫通孔21dを有するH形鋼に耐火被覆構造を設けた場合について説明したが、変形例においては、ウエブ21cの上下方向の中心、又は、中心よりやや上側に貫通孔21dを有するH形鋼に耐火被覆構造を設けている。
【0031】
図4(A)はウエブ21cの上下方向の中心に貫通孔を設けた場合のH形鋼をその第2方向から見た状態を示す図であり、図4(B)はウエブ21cの上下方向の中心よりやや上側に貫通孔21dを有する場合を示す図である。
【0032】
ウエブに設けた貫通孔の位置以外については先の実施の形態と同様であるので、具体的な説明については省略する。
【0033】
なお、上記実施の形態においては、梁としてH形鋼を用いた場合について説明したが、これに限らず、I形鋼や、C形鋼を用いてもよい。
【0034】
以上、図面を参照してこの発明の実施形態を説明したが、この発明は、図示した実施形態のものに限定されない。図示した実施形態に対して、この発明と同一の範囲内において、あるいは均等の範囲内において、種々の修正や変形を加えることが可能である。
【産業上の利用可能性】
【0035】
この発明によれば、配管による熱橋が生じない梁貫通部の耐火被覆構造を提供できるため、梁貫通部の耐火被覆構造として有利に利用される。
【符号の説明】
【0036】
10 耐火被覆構造、20 床板、21 H形鋼、21a,21b フランジ、21c ウエブ、21d 貫通孔、22 第1断熱材、23a,23b 第2断熱材、24 第3断熱材、24a,24b 貫通孔、30 配管。
図1
図2
図3
図4