(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記目粗し処理が十分に行われているか否かを確認する工程において、前記形状演算手段の演算結果が、予め設定した凹凸度以下の場合に、目粗し処理が不十分である旨を報知する報知手段を備え、
目粗し処理が不十分である場合には、前記報知手段による報知を行うことにより、再度の目粗し処理を促す工程を含む、
ことを特徴とする請求項1又は2に記載のコンクリート構造物に対する補強鉄筋定着方法。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかし、従来の孔壁内面形状の測定方法や計測装置には種々の問題があった。すなわち、目粗し処理を施した孔内にファイバースコープを挿入して、孔壁内面の形状を目視観察する方法や、孔内に手を差し入れて、指先の感触により孔壁内面の形状を確認する方法では、観察者の主観に頼って孔壁内面の形状を確認するため、客観的な評価を行うことができない。特に、指先の感触により孔壁内面の形状を確認する方法では、観察者の熟練度により評価が異なる場合があり、さらに、指先が届かない孔壁内面についてはその形状を確認することができなかった。
【0007】
また、従来の凹凸計測装置は、削孔を行った後に作業場所から削孔装置を取り外し、改めて凹凸計測装置を設置する必要があった。また、装置が特殊かつ大がかりなものとなり、必ずしも使い勝手が良いとは言えなかった。このため、孔壁内面の目粗し処理が確実に行われているか否かの確認が不十分となり、既設コンクリートと補強鉄筋との定着力を設計通りに発揮させることができないおそれがあった。
【0008】
本発明は、上述した事情に鑑み提案されたもので、簡易な装置を用いることにより、簡便な手順でかつ正確に孔壁内面形状を計測して、確実に目粗し処理が行われたことを確認することにより、既設コンクリートと補強鉄筋との定着力を設計通りに発揮させることが可能なコンクリート構造物に対する補強鉄筋定着方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明のコンクリート構造物に対する補強鉄筋定着方法は、上述した課題を解決するために提案されたもので、以下の特徴点を有している。すなわち、本発明のコンクリート構造物に対する補強鉄筋定着方法は、コンクリート構造物の所定位置に補強鉄筋を挿入するための削孔を行う工程と、削孔された孔壁内面に目粗し処理を行う工程と、コンクリート構造物に固定された削孔装置のコアチューブの先端部分に取り付け可能な内面形状計測装置を用いて、目粗し処理を行った孔壁内面形状を計測し、孔壁内面への目粗し処理が十分に行われているか否かを確認する工程と、孔壁内面への目粗し処理が十分に行われている場合に、当該目粗し処理を行った孔内に充填材を注入するとともに、補強鉄筋を挿入する工程とを含むことを特徴とするものである。
【0010】
内面形状計測装置は、孔壁内面に対して円環状にレーザー光を照射する照射部と、孔壁内面に形成されたレーザー光像を撮影する撮像部とを含む測定手段と、測定手段を孔壁内面の長手方向に沿って移動させる移動手段と、当該測定手段の移動距離を計測する移動距離計測手段と、当該測定手段及び移動距離計測手段からの計測信号を受信して所定の演算処理を行うことにより孔壁内面の凹凸形状を求める形状演算手段と、形状演算手段における演算結果を表示する表示手段とを備えている。
【0011】
このような構成からなる孔壁内面形状のコンクリート構造物に対する補強鉄筋定着方法は、例えば、コンクリート構造物の補強工事を行う際に、既設コンクリートに対して削孔を行い、孔内に充填材を注入するとともに、補強鉄筋を挿入する際に、削孔した孔壁内面形に対して十分な目粗し処理が行われていることを確認して、既設コンクリートと補強鉄筋との定着力を設計通りに発揮させるための方法である。この際、コンクリート構造物には、アンカー等により、削孔を行うための削孔装置が固定されている。そこで、本発明の孔壁内面形状の計測装置は、この削孔装置をそのまま利用して、孔壁内面の目粗し処理の状態を計測するようになっている。
【0012】
本発明の孔壁内面形状のコンクリート構造物に対する補強鉄筋定着方法に用いる孔壁内面形状計測装置は、目粗し処理の状態を計測するために、削孔装置のコアチューブの先端部分に、削孔ビットや目粗しビットに代えて測定手段を取り付ける。この測定手段は、孔壁内面に対して円環状のレーザー光を発射し、孔壁内面に形成されたレーザー光像を撮影することにより、レーザー光像の径を計測する。
【0013】
そして、移動手段の機能により、測定手段を孔壁内面の長手方向に沿って移動させながら、移動するレーザー光像の径を計測し、移動距離計測手段の機能により測定手段の移動距離を計測するとともに、形状演算手段の機能により所定の演算を行って、孔壁内面の凹凸形状を求める。演算結果(孔壁内面の凹凸形状)は、表示手段の機能により、コンピュータに付帯した表示装置等の表示画面に表示することができる。
【0014】
また、前記した構成からなる孔壁内面形状のコンクリート構造物に対する補強鉄筋定着方法では、補強鉄筋を孔内の略中央位置に保持する補強鉄筋保持部材を備えることにより、孔内に充填材を注入するとともに、補強鉄筋を挿入する工程において、補強鉄筋保持部材により補強鉄筋を孔内の略中央位置に保持することが可能である。
【0015】
また、前記した構成からなる孔壁内面形状のコンクリート構造物に対する補強鉄筋定着方法では、目粗し処理が十分に行われているか否かを確認する工程において、形状演算手段の演算結果が、予め設定した凹凸度以下の場合に、目粗し処理が不十分である旨を報知する報知手段を備えることにより、再度の目粗し処理を促す工程を含むことが可能である。
【0016】
このような構成からなる孔壁内面形状のコンクリート構造物に対する補強鉄筋定着方法では、計測結果が予め設定した凹凸度以下の場合、すなわち、目粗し処理が不十分である場合に、報知手段の機能により、その旨の報知を行い、再度の目粗し処理を促すことにより、確実に目粗し処理を行うことができるようになる。
【発明の効果】
【0019】
本発明の孔壁内面形状のコンクリート構造物に対する補強鉄筋定着方法によれば、作業者の手作業で孔壁内面の目粗し状態を確認するのではなく、非接触式の測定手段を用いて孔壁内面の目粗し状態を確認するため、客観的に孔壁内面の目粗し状態を評価することができる。したがって、確実に目粗し処理が行われたことを確認することにより、既設コンクリートと補強鉄筋との定着力を設計通りに発揮させることが可能となる。
【0020】
さらに、削孔を行った後の削孔装置を除去することなく、目粗しビットを測定手段に置き換えて孔壁内面の形状を計測するため、装置構成が簡便となり、作業効率を向上させることができる。
【0021】
また、補強鉄筋保持部材を備えた構成とすることにより、充填材を注入するとともに、補強鉄筋を挿入する工程において、補強鉄筋保持部材により補強鉄筋を孔内の略中央位置に保持することができる。
【0022】
また、目粗し処理が不十分な場合に、その旨の報知を行い、再度の目粗し処理を促す工程を含んだ構成とした場合には、目粗し処理が不十分な箇所を容易に認識することができ、既設コンクリートと補強鉄筋との定着力が十分発揮できないという事態を事前に防止することができる。
【0023】
また、目粗し処理が不十分な場合に、再度、自動的に目粗し処理を行う工程を含んだ構成とした場合には、孔壁内面の全体にわたって適切な目粗し処理を施すことができ、さらに一層確実に、既設コンクリートと補強鉄筋との定着力を確保することができる。
【発明を実施するための形態】
【0025】
以下、図面を参照して、本発明に係る孔壁内面形状のコンクリート構造物に対する補強鉄筋定着方法(以下、補強鉄筋定着方法と称する)の実施形態を説明する。
図1〜
図7は本発明の実施形態に係る補強鉄筋定着方法を説明するもので、
図1は補強鉄筋定着方法の手順を示すフローチャート、
図2は補強鉄筋定着方法の手順を示す模式図、
図3は充填材の注入及び補強鉄筋の挿入工程を示す模式図、
図4は補強鉄筋保持部材を示す横断面図、
図5は補強鉄筋定着方法に用いる計測装置の全体構成を示す側面図、
図6は測定手段の構成を示す模式図、
図7は目粗し工程における削孔装置の構成を示す側面図である。
【0026】
<補強鉄筋定着方法の概要>
本発明の実施形態に係る補強鉄筋定着方法は、主要な工程として、削孔工程と、目粗し処理工程と、目粗し状態確認工程と、充填材注入/補強鉄筋挿入工程とを含んでいる。さらに、再度の目粗し処理を促す工程、又は再度の目粗し処理を自動的に行う工程を含ませることが可能である。
【0027】
<補強鉄筋定着方法の具体的手順>
次に、本発明の実施形態に係る補強鉄筋定着方法の具体的方法について説明する。本発明の実施形態に係る補強鉄筋定着方法は、削孔工程と、目粗し処理工程と、目粗し状態確認工程と、充填材注入/補強鉄筋挿入工程とからなる。また、再度の目粗し処理を促す工程、再度の目粗し処理を自動的に行う工程を含ませることができる。
【0028】
すなわち、
図1に示すように、削孔工程として、コンクリート構造物の所定位置に補強鉄筋を挿入するための削孔を行い(S1)、目粗し処理工程として、削孔された孔壁内面に目粗し処理を行う(S2)。続いて、目粗し状態確認工程として、コンクリート構造物に固定された削孔装置のコアチューブの先端部分に取り付け可能な内面形状計測装置を用いて、目粗し処理を行った孔壁内面形状を計測し(S3)、孔壁内面への目粗し処理が十分に行われているか否かを確認する(S4)。
【0029】
そして、孔壁内面への目粗し処理が十分に行われていると確認された場合には、充填材注入/補強鉄筋挿入工程として、目粗し処理を行った孔内に充填材300を注入するとともに、補強鉄筋200を挿入する(S5)。
【0030】
また、目粗し状態確認工程(S4)に続いて、再度の目粗し処理を促す工程として、目粗し処理が不十分である場合には、報知手段43による報知を行い(S6)、再度の目粗し処理を促す(S2)ことが好ましい。なお、再度の目粗し処理は、自動的に行うことが可能である。
【0031】
上述した各工程を図示すると、
図2に示すように、所定位置への削孔(A)、孔内壁面の目粗し処理(B)、目粗し状態の確認(C)、充填材注入/補強鉄筋挿入(D)を実施する。すなわち、コンクリート構造物の所定位置に削孔を行い(A)、孔内に目粗しビット180を挿入して、孔壁内面70に目粗し面71を形成する(B)。続いて、孔内に測定手段20を挿入して、目粗し面71にレーザー光25を照射することにより、孔壁内面70に対する目粗し状態を確認する(C)。そして、目粗し処理が十分に行われている場合には、孔内に充填材300を注入するとともに、補強鉄筋200を挿入する(D)。
【0032】
次に、
図3を参照して、充填材注入/補強鉄筋挿入工程について、さらに詳細に説明する。
図3に示す例は、コンクリート構造物の下面側から上向きに削孔を行い、孔内の目粗し処理を行った後に、充填材300の注入及び補強鉄筋200の挿入を行う工程を示しているが、コンクリート構造物の側面側から横向きに削孔を行う場合も、同様の工程で、充填材300の注入及び補強鉄筋200の挿入を行うことができる。また、削孔内に充填材300を注入した後に、補強鉄筋200を挿入しているが、削孔内に補強鉄筋200を挿入した後に、充填材300を注入してもよい。充填材300の注入と補強鉄筋200の挿入のどちらをさきに行うかは、削孔の向き(略鉛直方向、略水平方向)、充填材300の性状(流動性、硬化時間等)、作業現場の状況等を勘案して、適宜実施することができる。
【0033】
充填材注入/補強鉄筋挿入工程では、
図3に示すように、孔内に充填材300の注入管310を挿入するとともに、注入管310の先端部から充填材300を吐出させて、孔内の奥側から適宜深さまで充填材300を注入する(A)。続いて、充填材300を注入した孔内に補強鉄筋200を挿入する(B)。この際、充填材300は、補強鉄筋200の挿入に伴い、孔の奥側から入口側へ押し出される。
【0034】
孔内の適宜位置(例えば、最奥部)まで補強鉄筋200を挿入したら、孔の入口側において、補強鉄筋200の外周部の適宜位置に、補強鉄筋保持部210を配置して(C)、充填材300が硬化するまで放置する。そして、充填材300が硬化したら、補強鉄筋保持部210を取り除き、補強鉄筋200と孔入口側との隙間を充填材300等で埋めて、表面仕上げを行う(D)。
【0035】
<補強鉄筋保持部材>
上述したように、充填材300を注入する際に、補強鉄筋200を保持するための補強鉄筋保持部材220を用いることが好ましい。補強鉄筋保持部材220は、
図3(C)に示すように、孔の入口付近において、補強鉄筋200の外周部を支持するための部材である。この補強鉄筋保持部材220は、孔の内径及び補強鉄筋200の外径に応じて、大きさ及び形状を適宜設定するが、例えば、楔形状とすることができる。すなわち、補強鉄筋保持部材220は、孔内壁面と補強鉄筋200の外周部に当接して、補強鉄筋200を孔の略中心部に支持できる大きさ及び形状である必要がある。
【0036】
なお、
図4に示すように、補強鉄筋保持部材220により補強鉄筋200の外周部の少なくとも3箇所を支持すれば、補強鉄筋200を孔の略中心部に位置させることができるが、補強鉄筋保持部材220の設置数は3箇所に限られず、2箇所又は4箇所以上であってもよい。また、補強鉄筋保持部材220は、可撓性及び弾性を有するゴムやプラスチックにより製造することができる。
【0037】
この補強鉄筋保持部材220は、特に、
図3に示すように、上方に向かって削孔した孔内に補強鉄筋200を挿入する際に、好適に使用することができる。すなわち、補強鉄筋保持部材220により補強鉄筋200を適正位置に保持することができる。
【0038】
<補強鉄筋>
本実施形態で使用する補強鉄筋200は、その両端部に定着体210が取り付けられている。この定着体210は、補強鉄筋200の本体部の直径の1.7倍から1.8倍程度の最大直径を有しており、補強鉄筋200への取付側(ネジ込み側)から外端部に向かって17〜19°程度の角度のテーパー面を有している。すなわち、定着体210は、補強鉄筋200の本体部から外端部へ向かって拡径している。また、詳細には図示しないが、補強鉄筋200の両端部には、外端部に向かって縮径するテーパーネジ部(雄ネジ部)を設けてあり、定着体210には、テーパーネジ部(雄ネジ部)をねじ込むための雌ネジ部を設けてある。そして、定着体210の雌ネジ部に、補強鉄筋200の両端部に設けたテーパーネジ部(雄ネジ部)をねじ込むことにより、補強鉄筋200の両端部に定着体210を取り付けて、両者を一体とすることができる。このように補強鉄筋200の両端部に定着体210を取り付けることにより、補強鉄筋200の定着力を向上させることができる。
【0039】
<充填材>
本発明の実施形態に係る補強鉄筋定着方法で使用する充填材300は、一般的なグラウト材を用いることができる。特に、上向き削孔した孔内に補強鉄筋200を挿入する際に、充填材300が垂れ落ちることがない程度の可塑性を有することが好ましく、これにより、孔内に充填材300を行き渡らせることができる。したがって、充填材300の注入不良による補強鉄筋200の定着低下が生じることがない。
【0040】
<孔壁内面形状の計測装置の概要>
本発明の実施形態に係る補強鉄筋定着方法に用いる孔壁内面形状の計測装置は、例えば、目粗し処理を施した孔壁内面の凹凸形状を測定して、目粗し処理が適切に行われているか否かを評価する際に使用する装置である。すなわち、コンクリート構造物に対して耐震補強等の補強工事を行うには、削孔ビットを備えた削孔装置により既設コンクリートに対して削孔を行い、形成された孔内に補強鉄筋200を挿入するとともに充填材300を注入する。この際、既設コンクリートと補強鉄筋200との定着力を向上させるために孔壁内面に目粗し処理を施すことが好ましい。目粗し処理を施すには、削孔装置のコアチューブの先端部に取り付けた削孔ビットを目粗しビットに交換して、孔内で目粗しビットを回転させながら挿脱すればよい。
【0041】
本発明の実施形態に係る補強鉄筋定着方法に用いる孔壁内面形状の計測装置は、目粗し処理が終了した後に、既設コンクリートに固定された削孔装置の目粗しビットに代えて、コアチューブの先端部に測定手段を取り付けることにより、孔壁内面の形状を計測するための装置である。
【0042】
<孔壁内面形状の計測装置の具体的構成>
本発明の実施形態に係る孔壁内面形状の計測装置10は、
図5に示すように、測定手段20、移動手段(ステッピングモータ31、進退雌ネジ部171等)、移動距離計測手段41、形状演算手段42、表示手段50を主要な構成要素とし、さらに、報知手段43、再目粗し指示手段44を備えることが可能である。
【0043】
<削孔装置>
上述したように、本発明の実施形態に係る孔壁内面形状の計測装置10は、コンクリート構造物110に対して耐震補強等の補強工事を行う際に、コンクリート構造物の壁面や床面等にアンカー120等を用いて固定した削孔装置100の一部を利用することができる(
図7参照)。
【0044】
この削孔装置100は、
図7に示すように、コンクリート構造物110の壁面や床面等に、アンカー120等を用いて固定されたベース部材130と、ベース部材130から立設した棒状の案内部材140と、案内部材140に対して進退可能に取り付けたモータ150と、モータ150の回転軸の先端部に取り付けたコアチューブ160とを備えている。そして、コアチューブ160の先端部に削孔ビットや目粗しビット180を取り付けて、モータ150の回転力により削孔ビットや目粗しビット180を回転させながら、削孔ビットや目粗しビット180をコンクリート構造物110へ向かって進退させることにより、削孔及び孔壁内面70の目粗し処理を行うことができる。
【0045】
なお、コアチューブ160は両端にそれぞれ雌ネジ部と雄ネジ部とを備えており、隣合うコアチューブ160の雌ネジ部と雄ネジ部とを噛み合わせることにより、チューブの長さを延長することができる。また、削孔を行う孔径に合わせて、種々の外径の削孔ビットや目粗しビット180が用意されている。また、モータ150を内蔵した筐体151と、案内部材140との間には、モータ150を案内部材140の長手方向に移動させるための進退機構を設けてある。
【0046】
進退機構は、例えば、案内部材140の外周面に螺旋状の案内雄ネジ部141を設け、モータ150を内蔵した筐体151と一体に設けられたモータ支持部材170に、案内雄ネジ部141に噛み合って回転する進退雌ネジ部171を設け、筐体151の進退雌ネジ部171を回転させることにより、モータ支持部材170を案内部材140に沿って進退させることができる。なお、進退雌ネジ部171の駆動は、
図3に示すように、ギア(図示せず)を介して進退雌ネジ部171と回転ハンドル172とを連結し、回転ハンドル172を回転させることにより進退雌ネジ部171を回転させる機構により行うことができる。なお、進退機構は、上述した例に限定されるものではなく、モータ150を案内部材140の長手方向(孔壁内面70の長手方向)に沿って移動させることができれば、どのような機構の装置を用いてもよく、例えば、進退雌ネジ部171を回転させる駆動装置(モータ)を用いた電動式であってもよい。
【0047】
<測定手段>
測定手段20は、コンクリート構造物110に固定された削孔装置100のコアチューブ160の先端部分に取り付け可能な装置であり、孔壁内面70に対して円環状にレーザー光25を照射する照射部と、孔壁内面70に形成されたレーザー光像(光リング26)を撮影する撮像部とを含んでいる。
【0048】
この測定手段20は、
図6に示すように、レーザーダイオード等からなる発光素子21と、発光素子21から発光されたレーザー光を反射して円環状に照射する円錐ミラー(又は円錐プリズム)22と、孔壁内面70に照射したレーザー光を撮影するデジタルカメラ等の撮像装置23を備えている。当該構成では、発光素子21及び円錐ミラー(又は円錐プリズム)が照射部として機能し、撮像装置23が撮像部として機能する。このような構成を備えた測定手段20は、孔壁内面70に沿ってレーザー光を円周方向に走査する必要がなく、照射部の構造が単純なものとなるばかりでなく、計測時間を短縮することができる。
【0049】
さらに詳細に説明すると、
図6に示すように、発光素子21にはレーザー駆動回路24が接続されている。レーザー駆動回路24は、パーソナルコンピュータ40からの駆動信号により駆動され、発光素子21からレーザー光25を発射する。発光素子21から発射されたレーザー光25は、孔壁内面70において円環状の光リング26を形成する。そして、この光リング26を撮像装置23により撮影する。撮像信号はイメージプロセッサ27を介してパーソナルコンピュータ40に入力される。
【0050】
なお、測定手段20とパーソナルコンピュータ40とを電気的に接続する接続ケーブル190は、コアチューブ160内に挿通されて、孔外へ導出される。また、測定手段20は、透光性を有する保護チューブ内に収納されている(
図5参照)。
【0051】
<移動手段>
移動手段は、測定手段20を孔壁内面70の長手方向に沿って移動させるための装置である。本実施形態では、上述したモータ150の進退手段と同様の機構を移動手段として利用することができる。例えば、案内部材140の外周面に螺旋状の案内雄ネジ部141を設け、測定手段20を支持するための測定手段支持部材30に、案内雄ネジ部141に噛み合って回転する進退雌ネジ部171を設け、測定手段支持部材30の進退雌ネジ部171を回転させることにより、測定手段20を案内部材140に沿って移動させることができる。なお、測定手段支持部材30には、測定手段20を取り付けるコアチューブ160を保持するためコアチューブ保持部60が一体に設けられている。
【0052】
進退雌ネジ部171を回転させる機構は、どのようなものであってもよいが、ギア(図示せず)を介して進退雌ネジ部171とステッピングモータ31等の駆動手段を連結し、ステッピングモータ31を駆動することにより、測定手段支持部材30及びコアチューブ保持部60を案内部材140に沿って(測定手段20を孔壁内面70の長手方向に沿って)移動させることができる。なお、上述した進退機構と同様に、ギアを介して進退雌ネジ部171と回転ハンドル172とを連結し、回転ハンドル172を回転させて進退雌ネジ部171を回転させる機構を設けることにより、測定手段20を孔壁内面70の長手方向に沿って移動させてもよい(
図7参照)。
【0053】
移動距離計測手段41は、測定手段20の移動距離を計測するための機器及びプログラムからなる。例えば、移動距離計測手段41は、測定手段20の移動に伴い進退雌ネジ部171が回転すると、進退雌ネジ部171の回転数信号を発信する機構を設けるとともに、進退雌ネジ部171の1回転あたりの移動距離を設定しておけばよい。このような構成からなる移動距離計測手段41では、受信した回転数信号に基づいて、測定手段20の移動距離を計測するようになっている。
【0054】
また、ステッピングモータ31により進退雌ネジ部171を回転する機構とした場合には、ステッピングモータ31の回転数信号(回転ステップ信号)を発信する機構を設けるとともに、ステッピングモータ31の回転ステップと移動距離との関係を設定しておけばよい。この場合にも、上述した機構と同様に、受信した回転数信号(回転ステップ信号)に基づいて、測定手段20の移動距離を計測することができる。
【0055】
<形状演算手段>
形状演算手段42は、測定手段20及び移動距離計測手段41からの計測信号を受信して所定の演算処理を行うことにより孔壁内面70の凹凸形状を求めるためのプログラムからなる。例えば、パーソナルコンピュータ40に形状演算プログラムをインストールし、CPU等のハードウェアが形状演算プログラムの命令に従って動作することにより、形状演算手段42の機能が発揮される。また、形状演算手段42は、形状演算プログラムに相当する論理回路により構成することもできる。
【0056】
上述したように、発光素子21から発光したレーザー光25を円錐ミラー22等で反射して孔壁内面に円環状に照射することにより、レーザー光像(光リング26)が形成され、この円環状のレーザー光像(光リング26)を撮像装置23で撮影してイメージ情報を得ることができる。形状演算プログラムは、基本的な演算処理として、取得したイメージ情報と、その移動距離とに基づいて、孔壁内面70の断面形状を得るものである。また、測定手段20の移動速度、発光素子21におけるレーザー光25の出射角度等、種々のパラメータを設定することにより、一層正確に孔壁内面70の形状を演算することができる。
【0057】
具体的には、発光素子21から円錐ミラー22等を介して孔壁内面70に照射された円環状のレーザー光25により帯状の断面線(光切断面/光リング26)が形成される。この断面線(光切断面/光リング26)を撮像装置23の撮像素子で撮影し、孔壁内面70に形成された座標を算出し、算出した座標データに基づいて断面線(光切断面/光リング26)の形状を得ることができる。そして、測定手段20を、孔壁内面70の長手方向に沿って移動させることにより、断面線(光切断面)が孔壁内面70の長手方向に連なり、孔壁内面70の全体にわたって形状を計測することができる。なお、円周方向及び孔壁内面70の長手方向における撮像間隔は、孔の内径や要求される測定精度等に応じて適宜設定することができる。
【0058】
<表示手段>
表示手段50は、形状演算手段42における演算結果を表示するための装置であり、例えば、パーソナルコンピュータ40に付帯した液晶ディスプレイにより構成することができる。すなわち、形状演算手段42における演算結果(孔壁内面70の形状)は、液晶ディスプレイの表示画面に表示される。また、プリンタ等の印刷手段により、演算結果(孔壁内面70の形状)を印刷してもよい。
【0059】
<報知手段>
報知手段43は、目粗し処理が十分に行われているか否かを確認する工程において、形状演算手段42の演算結果が、予め設定した凹凸度以下の場合に、目粗し処理が不十分である旨を報知するためのプログラム及び装置からなる。報知手段43は、どのような構成であってもよいが、例えば、表示手段50における形状表示において、該当箇所(凹凸度が設定値以下の箇所)を通常とは異なる表示色(例えば赤色)で表示すればよい。
【0060】
<再目粗し指示手段>
再目粗し指示手段44は、報知手段43により目粗し処理が不十分である旨の報知が行われた場合に、当該目粗し処理が不十分な範囲において、目粗しビット180を駆動して目粗し処理を行うためのプログラムからなる。この再目粗し指示手段44を設ける場合に、測定手段20を取り付けたコアチューブ160の先端側又は基端側の少なくとも一方に、孔壁内面70の目粗し処理を行うための目粗しビット180を取り付けてもよい。
【0061】
なお、測定手段20及び目粗しビット180を同時に取り付けると、測定手段20における計測が不正確となったり、最悪の場合、測定手段20が故障したりする可能性もある。したがって、孔壁内面70の形状計測を行った後に、コアチューブ160の先端部に取り付けた測定手段20に代えて目粗しビット180を取り付け、取得したデータに基づいて、目粗し処理が不十分である箇所に対して、再度、自動的に目粗し処理を行うことが好ましい。この場合、目粗し処理が不十分な箇所は、形状演算手段42における演算結果で座標情報として特定することができる。
【0062】
<落下防止ストッパー>
本実施形態の測定手段20は、精密な光学センサーであるため、衝撃を与えないようにする必要がある。そこで、本実施形態では、コアチューブ160に落下防止ストッパー161を取り付けることが好ましい。この落下防止ストッパー161は、例えば、コアチューブ160の外周面から外方へ向かって突出する棒状の部材であり、孔の開口部の外面に接触することにより、それ以上、コアチューブ160が孔内へ進入できない構成となっている。
【0063】
なお、落下防止ストッパー161を取り付ける位置は、孔の深さに応じて、測定手段20の先端部が孔底に接触しないように設定する。また、落下防止ストッパー161は、例えば、コアチューブ160の外周面に設けたネジ穴にネジ込む構成とすることができ、この場合には、孔径に応じて長さの異なる落下防止ストパーを交換して使用することにより、確実にコアチューブ160が孔内へ進入することを防止できる。
【0064】
<目粗し処理状態の計測>
コンクリート構造物110に対して耐震補強等の補強工事を行う際には、コンクリート構造物110にアンカー120等を用いて削孔装置100を固定する。そして、コアチューブ160の先端部に削孔ビット(図示せず)を取り付け、モータ150を駆動して削孔ビット(コアチューブ160)を回転させるとともに、進退機構を駆動して削孔ビットをコンクリート構造物110に対して略直角方向に移動させることにより、所望の深さの孔を掘削する。その後、コアチューブ160の先端部に取り付けた削孔ビットを目粗しビット180に交換し、モータ150を駆動して目粗しビット180(コアチューブ160)を回転させるとともに、進退機構を駆動して目粗しビット180をコンクリート構造物に対して略直角方向に移動させることにより、孔壁内面70に対して目粗し処理を施す(目粗し面71を形成する)。
【0065】
目粗し処理が完了した後に、削孔装置100の一部を利用して孔壁内面形状の計測装置10を構成する。この際、コアチューブ160の先端部に測定手段20を取り付け、移動手段を駆動し、測定手段20を孔壁内面70に沿って長手方向に移動させることにより、孔壁内面70(目粗し面71)の形状を計測する。すなわち、上述したように、発光素子21から円錐ミラー22等を介して孔壁内面70に照射された円環状のレーザー光25により帯状の断面線(光切断面/光リング26)を形成し、この断面線(光切断面/光リング26)を撮像装置23の撮像素子で撮影して、所定の演算処理を行うことにより、孔壁内面70(目粗し面71)の形状を計測する。
【0066】
孔壁内面70(目粗し面71)の形状は、表示手段50の表示画面に表示されるので、作業者は、孔壁内面70の目荒し状態を把握することができる。この際、孔壁内面70(目粗し面71)の目粗し状態は、立体的に表示されるので、孔壁内面70(目粗し面71)の形状を直感的に認識することができる。